説明

微細炭素繊維の磁性体除去装置及び磁性体除去方法

【課題】 生成された後の微細炭素繊維から効果的に鉄分等の磁性体を除去する。
【解決手段】 微細炭素繊維の磁性体除去装置1に関して、生成された微細炭素繊維をエアと共に流入させる流入部20と、エア中に存する磁性体を除去処理する磁性体除去槽2と、磁性体の除去された微細炭素繊維を流出させる流出部30とを備える。そして、前記磁性体除去槽2に、前記微細炭素繊維を含む前記エアの気流中に磁石を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成された微細炭素繊維に混合された磁性体を除去する微細炭素繊維の磁性体除去装置及び磁性体除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブに代表される微細炭素繊維を生成する代表的な方法として、特許文献1に開示の気相成長法が知られている。気相成長法は、ベンゼン等の炭素源を気相中で熱分解させて、遷移金属化合物に含まれる鉄などの金属微粒子を触媒として成長させる生成方法である。かかる気相成長法には、熱分解帯域に配された基板上に金属微粒子を散布し、そこから微細炭素繊維を成長させる基板法、浮遊する金属微粒子から微細炭素繊維を成長させる浮遊法などがある。
【0003】
近時、用途によっては、生成された微細炭素繊維から黒鉛質以外の成分を極力除去した微細炭素繊維を入手したいとの要請が高まってきており、かかる要請は、気相成長法により生成された微細炭素繊維についても例外ではない。
【0004】
ところが、気相成長法は、上記のように触媒として金属微粒子、特に鉄微粒子を使用するため、生成された微細炭素繊維には触媒として使用した鉄分が繊維内に残存する。この繊維内に残存する鉄分は、例えば2400℃以上の高温熱処理により繊維外へと昇華させることが可能であるが、昇華した鉄分を気体のまま排出することは困難であるため、生成された微細炭素繊維においては、再凝固した鉄分が単体で存在するか、微細炭素繊維の表面に付着した状態で存在することとなってしまう。
【0005】
したがって、磁性体としての鉄分単体および鉄分の付着した微細炭素繊維を同時に除去する方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平6−146116号公報
【0007】
しかしながら、従来、生成された後の微細炭素繊維から磁性体を除去する手法については、今まで研究されておらず、有効な磁性体除去手法が存在しないのが実状である。
【0008】
そこで、本件発明の発明者は、生成後の微細炭素繊維から、磁性体を除去する手法を思案した。本件発明の発明者は、当初既存の磁選機を使用して磁性体を除去することを思案した。
【0009】
例えば、磁石面を流下させ、磁性体を磁石に保持させる方法である。この場合、磁選機としては、ドラム式、グリッド式、スクリーン式又はストレーナ式を使用することが考えられる。また、他の手法として、微細炭素繊維を、磁石面の下側を通過させ、通過の際に磁性体をピックアップする手法も思案した。この場合、使用する磁選機としては、リフティングマグネット又は吊り下げ式のものが考えられる。さらに、微細炭素繊維を、磁石と磁石の間を通過させる手法も思案した。この場合、対極式ドラムセパレータを使用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、当初思案した手法は、次のような不都合な点が種々ある。
【0011】
第1に磁石面を流下させて磁性体のみを保持させる手法では、着磁させるために必要な磁力と、その後に微細炭素繊維を離脱させる磁力のバランスを取ることが困難で、このバランスを取ろうとすれば、装置が極めて高価となる。加えて、着磁後に微細炭素繊維のみを離脱させる工程では、磁石を空中で高速移動させ、このときの空気抵抗を利用して微細炭素繊維を離脱させることになるが、高速移動させるためのコストが嵩む。
【0012】
この点、磁石と磁石の間を通過させる、対極式ドラムセパレータを使用する手法についても、ほぼ同様の不都合がある。
【0013】
また、リフティングマグネット又は吊り下げ式の磁選機を使用する手法にあっては、磁性体のみを着磁させるための磁力を得ることが極めて困難である。即ち、磁力を強くしすぎれば、微細炭素繊維も着磁させ、磁石の着磁力を即低下させてしまう。
【0014】
そこで、本発明では、生成された後の微細炭素繊維から効果的に鉄分などの磁性体を除去することができる微細炭素繊維の磁性体除去装置及び磁性体除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、第1に上記課題を解決するため、生成後の微細炭素繊維に混在される磁性体を除去する磁性体除去装置であって、生成された微細炭素繊維をエアと共に流入させる流入部と、前記流入部より流入された微細炭素繊維及びエア中に存する磁性体を除去処理する磁性体除去槽と、磁性体が除去された微細炭素繊維を流出させる流出部と、を備え、前記磁性体除去槽には、微細炭素繊維を含むエアの気流中に磁石が配置されている磁性体除去装置を採用した。
【0016】
なお、ここでいう磁性体とは、鉄分などの磁性物その物の他、表面に磁性物が所定の量以上に付着した微細炭素繊維を含んでいる。即ち、前記磁性体除去装置は、磁性物その物を除去の対象としていることに加え、所定量以上に磁性物が付着した微細炭素繊維をも除去の対象としている。
【0017】
かかる磁性体除去装置において、本発明では、前記磁性体除去槽は、その内部に流入されたエアの気流を渦状に形成させるサイクロンであり、前記流入部は、前記磁性体除去槽の外周壁にその略接線方向に延出して設けられ、前記流出部は、周方向に沿って排出口の形成された円筒体を前記磁性体除去槽の半径方向の中心部に配置され、エアの気流中に含まれる微細炭素繊維を、前記排出口から前記円筒体の内側に排出させている。
【0018】
また、本発明では、前記流出部の円筒体には、エアの気流中に含まれる微細炭素繊維を前記排出口へ案内するガイド部が周方向に複数配置され、これらガイド部は、前記円筒体の外周面から外側方、かつ、周方向におけるエアの気流の上流側に向けて延びていることを特徴としている。
【0019】
さらに、本発明では上記の磁性体除去装置において、前記磁性体除去槽には、前記磁石を抜き差しさせる差込孔が形成されていることを特徴としている。
【0020】
そして、本発明では上記磁性体除去装置において、前記磁石が複数設けられ、これら磁石は、前記磁性体除去槽の外部にて連結部材を介して一体的に連結されて磁石ユニットが構成されている。
【0021】
また、第2に、本発明では上記課題を解決するために、生成後の微細炭素繊維に混在される磁性体を除去する磁性体除去方法であって、前記微細炭素繊維を含むエアの気流中に磁石を配置させ、前記微細炭素繊維に混合された磁性体を前記磁石に着磁させて磁性体を除去する磁性体除去方法を採用した。なお、当該磁性体除去方法においても、除去の対象としているのは、鉄分などの磁性物その物の他、表面に磁性物が所定の量以上に付着した微細炭素繊維である。
【0022】
そして、この磁性体除去方法において、前記磁石を所定の時間毎にエアの気流から取り出して、前記磁石に着磁された磁性体を前記磁石から排除する磁性体排除工程を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、気流中に磁石を配置するという構成を取るので、装置の構造を簡素にできる。また、磁性体除去槽として、サイクロンを使用することで、限られたスペースでエアの流路を長く形成でき、装置をコンパクトにできる。これにより、低廉なコストで、微細炭素繊維から磁性体を除去できる。
【0024】
また、サイクロンへの流入部を、略接線方向に延出して設けることで、流入されたエアはサイクロン内で周方向に流動することに加えて、流出部をサイクロンの中心部に設けることで、自然にサイクロン内部に渦状の気流を形成できる。
【0025】
そして、流出部を、周方向に沿って排出口の形成された円筒体として、エアの気流中に含まれる微細炭素繊維を排出口から円筒体の内側に排出させるように構成することで、サイクロンの軸方向に、微細炭素繊維をエアと共に取り出すことができる。しかも、円筒体の外周面に本発明にかかるガイド部を設けることで、形成された渦を乱すことなく効果的に排出させる。なお、流入部、流出部をこのように設けることで、当該磁性体除去装置をエア回路の一部に組み込むことが可能となる。
【0026】
また、磁石に磁性体が着磁すると、次第に着磁力が低下する。本発明では、磁石を磁性体除去槽に対して抜き差し可能とすることで着磁した磁性体を除去することができ、磁性体除去機能を維持させることができる。
【0027】
なお、磁石として、軸方向の中間部分に複数の着磁部を備えた棒磁石を採用することで、容易に磁性体除去の効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の磁性体除去装置1の平面図であり、図2は、図1におけるII−II断面を示す磁性体除去装置1の縦断面図である。さらに、図3は、磁性体除去装置1を磁性体除去槽2の軸方向における中間位置で切断した磁性体除去装置1の横断面図である。
【0030】
これら図1〜図3において、磁性体除去装置1は、生成されたカーボンナノチューブ等の微細炭素繊維から、鉄分等の磁性物や、磁性物が所定量以上に表面に付着した微細炭素繊維を除去するための装置である。なお、以下では、鉄分等の磁性物その物に加え、このような磁性物が表面に付着した微細炭素繊維を含めて磁性体として説明する。
【0031】
この磁性体除去装置1は、内部に流入された微細炭素繊維から磁性体を除去する筒状の磁性体除去槽2と、磁性体除去槽2の外周壁3に配されて、当該磁性体除去槽2の内部にエアと共に微細炭素繊維を流入せしめる流入部20と、その半径方向の中心部に配置され、エアと共に磁性体除去槽2から微細炭素繊維を流出させる流出部30とを備えている。さらに、磁性体除去装置1は、複数の棒磁石41から構成され、微細炭素繊維に混在する磁性体を微細炭素繊維から選別して着磁させる磁石ユニット40を具備している。
【0032】
磁性体除去槽2は、その内部にて、導入されたエアの気流を渦状に形成させるサイクロンであり、図2に示すように、上部4A及び下部4Bが開放された円筒状に形成されている。磁性体除去槽2の開放された上部4Aには、外周壁3から外側方に張り出すフランジ部9が形成されている。そして、上部4Aは、天面板5がその全周にわたってフランジ部9とボルト6及びナット7で締め付けられて、密閉されている。一方、磁性体除去槽2には、開放された下部4Bから下方に向けて延びる接続部10が、磁性体除去槽2と一体に形成されている。この接続部10は、下方に向けて先細りとなる逆円錐状に形成され、下端に接続用のフランジ11が形成されている。接続部10は、このフランジ部11が、その下流に配された配管12と、そのフランジ部13にボルト6とナット7により締め付けられて接続される。
【0033】
磁性体除去槽2の外周壁3に設けられた流入部20は、外周壁3の略接線方向に向けて延びる配管により構成されている。そして、流入部20の先端にはその外側方に張り出すフランジ部21が形成されている。流入部20は、このフランジ部21が、上流側の配管25のフランジ部26とボルト6及びナット7で締め付けられて配管25と接続される。なお、この流入部20はその高さが、図2に示すように、磁性体除去槽2の高さとほぼ同寸に形成されている。
【0034】
一方、流出部30は、内部が空洞の円筒体31を磁性体除去槽2の半径方向の中心部に配置して構成した部位である。流出部30を構成する円筒体31の周面には、この円筒体31の内外を貫通する複数の排出口32が周方向に関して均等に配されるようにして形成されている。そして、磁性体除去槽2の内部側をなす円筒体31の外周面には、微細炭素繊維を含むエアを排出部へ案内するガイド板33が各排出口32同士の間にそれぞれ配置されている。これらガイド板33は、円筒体31の外周面から半径方向外側に延び、しかも、磁性体除去槽2内にて形成される、渦状のエアの上流側に若干湾曲しつつ傾けられている。なお、この流出部30の上部の開口部は、円盤状の蓋材35により周縁がボルト6及びナット7で締め付けられて、密閉されている。
【0035】
さらに、磁性体除去槽2の天面板5には、外周壁3と、流出部30をなす円筒体31との間の領域に、磁性体除去槽2の内外を貫通させた複数の差込孔8が形成されている。これら差込孔8は、当該所鉄槽の全周にわたり等間隔に配されるようにして、半径方向の内外に2重に形成されている。これら差込孔8には、磁石ユニット40を構成している棒磁石41がそれぞれ挿入される。
【0036】
磁石ユニット40は、図4に示すように、複数の棒磁石41と、これら棒磁石41の軸方向の一端側に接合されたリング状の連結部材43により構成されている。各棒磁石41は、連結部材43の外縁側及び内縁側の双方において、全周にわたって等間隔をなして配されている。そして、各棒磁石41は、連結部材43と直交するようにしてその一面側から相互に平行に延びている。なお、棒磁石41の周方向における棒磁石41同士のピッチは、磁性体除去槽2の天面板5に形成された差込孔8のピッチと同寸に形成されている。
【0037】
磁石ユニット40を構成する各棒磁石41は、この図4に示すように、円柱状の単位棒磁石45を、これらの軸方向に複数接合させて形成されたものである。各単位棒磁石45は、N極同士、及びS極同士がそれぞれ接合されている。このように単位棒磁石45の同極同士を接合して棒磁石41を形成することで、棒磁石41の軸方向においてN極とS極とが交互に配置される。これにより、図4に示した棒磁石41のように、N極からS極に向かう磁界が棒磁石41の全長の中に複数形成される。そして、棒磁石41の軸方向について複数の各N極及びS極を設けることにより、磁性体を着磁させる複数の着磁部42を棒磁石41の全長に形成させている。なお、この棒磁石41の長さは、磁性体除去槽2の高さと少なくとも同寸に形成され、磁性体除去槽2の高さ方向に関し、棒磁石41の長さに不足が無いように形成されている。
【0038】
かかる磁石ユニット40は、各棒磁石41が磁性体除去槽2の天面板5に形成された差込孔8に抜き差し可能であり、磁性体除去槽2に対し自在に着脱できるように構成されている(図5参照)。各棒磁石41を天面板5の差込孔8から挿入させて、磁石ユニット40を磁性体除去槽2に装着させると、各棒磁石41は、磁性体除去槽2の軸方向に対して平行となる。また、磁石ユニット40を装着させると、リング状の連結部材43が磁性体除去槽2の天面板5に突き当てられ、磁性体除去槽2の内部で、各棒磁石41が磁性体除去槽2の軸方向に関し、その全域を占めるように配置される。そして、各棒磁石41が磁性体除去槽2の軸方向に関して、複数の着磁部42を配置させる。
【0039】
以上の構成を備えた磁性体除去装置1は、以下のようにして微細炭素繊維に混在する磁性体を除去する。
【0040】
磁性体除去処理の対象となる微細炭素繊維をエアと共に流入部20から磁性体除去槽2の内部に流入させる。この流入部20は、磁性体除去槽2の外周壁3においてその略接線方向に延びているため、磁性体除去槽2に流入されたエアは、磁性体除去槽2内部で自然と周方向に流動する。さらに、この磁性体除去槽2では、半径方向の中心部に排出口32の形成された流出部30が形成されているため、エアの流入された外周壁3側の圧力が相対的に高く、中心側の圧力が低くなる。このため、図6に示すように、磁性体除去槽2に流入されたエアの気流は、中心に向けて渦状に形成される。
【0041】
そして、上述したように流入部20の高さは、磁性体除去槽2の高さとほぼ同寸に形成されているため、磁性体除去槽2の内部で形成される渦状の気流は、磁性体除去槽2の軸方向に関し、その内部に配置された棒磁石41の長さと同寸の範囲か又は、棒磁石41の長さよりも狭い範囲を占めるように形成される。即ち、図7に示すように、渦状の気流の占める領域Rは、棒磁石41の長さLに対応する、磁性体除去槽2の天面板5と、棒磁石41の下端との間に含まれる範囲に形成される。このように渦状の気流を形成させることにより、微細炭素繊維を含むエアが棒磁石41の下側を素通りすることを防止し、磁性体を棒磁石41に確実に着磁させている。
【0042】
磁性体を含むエアは、複数の棒磁石41の配された磁性体除去槽2の内部で渦状の気流に形成されることで、流入部20の配された外周壁3から流出部30の設けられた中心部へ流れる途中で、棒磁石41の着磁部42に幾度にもわたり接触する。そして、エアが棒磁石41の着磁部42に接触する毎に、エアに含まれている磁性体は、着磁部42に着磁されてエアから取り除かれる。
【0043】
なお、微細炭素繊維自体も僅かに磁性を帯びており、流動過程で棒磁石41に着磁される。しかし、微細炭素繊維の棒磁石41への着磁力は、磁性体のそれに比して遙かに小さい。このため着磁された微細炭素繊維は、渦状の気流により着磁部42から離脱させられ、棒磁石41には、磁性体のみが着磁される。
【0044】
また、微細炭素繊維は、その表面に鉄分などの磁性物が付着しているものも存在する。このような微細炭素繊維のうち、所定量以上の磁性物が表面に付着した微細炭素繊維も除去しなければならないことがある。表面に磁性物の付着した微細炭素繊維は、磁性物の付着量に応じて棒磁石41へ着磁される力が異なる。即ち、付着量が多ければ、着磁される力は大きく、少なければ、着磁される力は小さい。磁性物が表面に比較的多く付着した微細炭素繊維は、エアにより磁石から離脱されることはなく、棒磁石41に着磁されたまま維持される。一方、磁性体が少量しか付着されていない微細炭素繊維は、エアによって棒磁石41から離脱され、エアと共に排出口32へ送られる。
【0045】
かかる作用により、磁性物その物の他、所定量以上の磁性物が表面に付着した微細炭素繊維をも除去している。
【0046】
その後、磁性体除去槽2の中心部に配された流出部30まで到達すると、円環部の外周面に配された複数のガイド板33により、微細炭素繊維を含むエアは、排出口32へ案内される。そして、微細炭素繊維を含むエアは排出口32を通って磁性体除去槽2から円筒体31の内側へ流出される。流出した微細炭素繊維を含むエアは、接続部10を介して下流側の配管12へ流される。以上の作用を通じて、磁性体を含まない微細炭素繊維を得ることができる。
【0047】
なお、下流側の配管12から接続部10を介して磁性体除去槽2へエアを流入させると、流出部20から流出された微細炭素繊維を再度磁性体除去槽へ送り込むことができ、磁性体除去槽2にて繰り返し磁性体除去作用を付与させることができ、さらに効果的に磁性体を除去することができる。
【0048】
また、この磁性体除去装置1は、磁性体除去槽2内のエアの流速を調節すれば、流速に応じた、磁性物の付着量の異なる微細炭素繊維を除去することができる。すなわち、流速を大きくすることで、これに伴い着磁力の大きな微細炭素繊維を棒磁石41から離脱させることができる一方で、流速を小さくすれば、これに伴い着磁力の小さな微細炭素繊維しか棒磁石41から離脱させることができない。かかる作用を利用して除去させたい磁性体を選択することができる。
【0049】
以上に説明した磁性体除去装置1では、時間の経過と共に、着磁部42に着磁される磁性体の量が多くなる。着磁部42に着磁される磁性体が一定以上となると、この磁性体が磁界の形成を阻害する。このため、棒磁石41の着磁力が時間の経過と共に低下する。
【0050】
この磁性体除去装置1では、かかる不都合を次のようにして回避している。
【0051】
上述したように、磁石ユニット40は、差込孔8から抜き出すことができるように構成されている。一定時間磁性体除去作用を行った後、磁石ユニット40を抜き出し、図8に示すように、磁石ユニット40の棒磁石41を除磁器50に挿入させる。
【0052】
この除磁器50は、磁石ユニット40に設けられた棒磁石41の数に対応する除磁孔が形成されている。除磁器50はオーステナイトステンレスで形成され、棒磁石41を除磁孔に挿入すると、棒磁石41の磁界が分断され、挿入している間だけ、棒磁石41から磁気を消去する。このため、棒磁石41を除磁器50の除磁孔に挿入すると、着磁部42に着磁された磁性体は着磁部42から排除される。
【0053】
本磁性体除去装置1では、磁性体除去作用の途中で、棒磁石41から磁性体を排除させる工程を設けることができるため、磁石ユニット40の各棒磁石41の磁力を常に維持させることができ、確実に磁性体を除去できる。
【0054】
なお、以上に説明した磁性体除去装置1では、磁石ユニット40に棒磁石41を2重に設けたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、1重に設けたもの、又は3重以上に設けたものを用いてもよい。また、周方向に設ける棒磁石41の数も、この例では、内側及び外側いずれも24本の棒磁石41を配置した場合について説明したが、棒磁石41の数は、磁性体除去槽2としてのサイクロンの径に応じて、適宜のピッチとなるように設ければよい。また、内側と外側の棒磁石41の数も相互に異なるように設けても構わない。例えば、外側と内側の周方向における棒磁石41間のピッチをそろえるために、外側に多くの棒磁石41を配置する場合である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の磁性体除去装置の平面図。
【図2】図1におけるII−II断面を示す磁性体除去装置の縦断面図。
【図3】磁性体除去装置を、その磁性体除去槽の軸方向における中間位置で切断した磁性体除去装置1の横断面図。
【図4】磁石ユニットをその連結部材の周方向に対して直交する方向で切断した部分断面図。
【図5】磁石ユニットを磁性体除去槽に対して着脱可能であることを示す説明図。
【図6】磁性体除去槽内に形成される渦状の気流を磁性体除去槽の上からみた状態を示す説明図。
【図7】磁性体除去槽内に形成される渦状の気流を側方からみた状態を示す説明図。
【図8】除磁器に磁石ユニットを挿入した状態を示す除磁器の断面図。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・・・磁性体除去装置
2・・・・・・磁性体除去槽
3・・・・・・外周壁
5・・・・・・天面部
8・・・・・・差込孔
10・・・・・接続部
20・・・・・流入部
30・・・・・流出部
31・・・・・円筒体
32・・・・・排出口
33・・・・・ガイド板
40・・・・・磁石ユニット
41・・・・・棒磁石
42・・・・・着磁部
43・・・・・連結部材
45・・・・・単位棒磁石
50・・・・・除磁器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成後の微細炭素繊維に混在される磁性体を除去する磁性体除去装置であって、
生成された微細炭素繊維をエアと共に流入させる流入部と、
前記流入部より流入された微細炭素繊維及びエア中に存する磁性体を除去処理する磁性体除去槽と、
磁性体が除去された微細炭素繊維を流出させる流出部と、を備え、
前記磁性体除去槽には、微細炭素繊維を含むエアの気流中に磁石が配置されていることを特徴とする磁性体除去装置。
【請求項2】
前記磁性体除去槽は、その内部に流入されたエアの気流を渦状に形成させるサイクロンであり、
前記流入部は、前記磁性体除去槽の外周壁にその略接線方向に延出して設けられ、
前記流出部は、周方向に沿って排出口の形成された円筒体を前記磁性体除去槽の半径方向の中心部に配して設け、エアの気流中に含まれる微細炭素繊維を、前記排出口から前記円筒体の内側に排出させていることを特徴とする請求項1に記載の磁性体除去装置。
【請求項3】
前記流出部の円筒体には、エアの気流中に含まれる微細炭素繊維を前記排出口へ案内するガイド部が周方向に複数配置され、
これらガイド部は、前記円筒体の外周面から外側方、かつ、周方向におけるエアの気流の上流側に向けて延びていることを特徴とする請求項2に記載の磁性体除去装置。
【請求項4】
前記磁性体除去槽には、前記磁石を抜き差しさせる差込孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の磁性体除去装置。
【請求項5】
前記磁石が複数設けられ、
これら磁石は、前記磁性体除去槽の外部にて連結部材を介して一体的に連結されて磁石ユニットが構成されていることを特徴とする請求項4に記載の磁性体除去装置。
【請求項6】
生成後の微細炭素繊維に混在される磁性体を除去する磁性体除去方法であって、
前記微細炭素繊維を含むエアの気流中に磁石を配置させ、
前記微細炭素繊維に混合された磁性体を前記磁石に着磁させて磁性体を除去することを特徴とする磁性体除去方法。
【請求項7】
前記磁石を所定の時間毎にエアの気流から取り出して、前記磁石に着磁された磁性体を前記磁石から排除する磁性体排除工程を備えたことを特徴とする請求項6に記載の磁性体除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−327915(P2006−327915A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157310(P2005−157310)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【Fターム(参考)】