説明

心房細動の予防または治療のための薬物の製造における5HT4受容体アンタゴニストの使用

【課題】哺乳動物における心臓疾患の予防または治療のための薬物の提供。
【解決手段】
50mgから約120mg未満まで(遊離塩基として測定した)の量のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される固体担体を含む、錠剤、トローチ剤またはロゼンジ剤であるか、または粉末またはペレットの形態でハードゼラチンカプセル中に入れられている、ヒト経口投与用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心房リモデリングのようなある種の心臓血管症状の治療または予防におけるある種の化合物の使用、ならびに、明示した投与量および/または投与計画を使用する心房細動の治療または予防における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
概論
心房細動(AF)は、臨床環境において最もよく直面する不整脈である。それは、塞栓性発作の危険性が大きく、死亡リスクの増大に関連している。(症状が心房の心悸亢進などを含み得る)AFは、不応性または伝導遮断の解剖学的部位の空間不均一性を有するような異常な心房組織の如き「サブストレート」と相互作用する、心房異所性収縮(不規則な心拍)または心房性頻拍(粗動)のような「トリガー」により開始される症状である。該細動は、心房の周囲の連続環状経路中を伝わる興奮の波面からなる。一度興奮すると、心房組織は、再び興奮し得る状態に回復するのにかなり長い時間を要し、この時間は、「不応期」(AERP=心房有効不応期)と称される。かくして、不応期が、興奮波面が360°一周する時間よりも長い場合には、該波面が非興奮性「不応」物にあたり、細動は止まることができ、心臓は洞調律に戻る。他方、AF小波は、「リエントリー」を受け、心房細動が時折ほとんど不定に続く。発作性AF患者は、しばしば、慢性(持続性または永久)AFに進行する。実際、上記トリガーおよびサブストレートと相互依存して、促進因子は、該疾患の進行および永続化を引き起こす。心房リモデリングと称される促進因子は、時折、AFエピソードの再発により引き起こされる種々の構造的、細胞的、電気生理学的、および神経ホルモン的変化(例えば、交換神経系および/またはレニン−アンギオテンシン系の活性)により引き起こされる。いくつかの抗不整脈薬は、ある程度、心房不応期の増大および/または心房「伝導速度」の増大もしくは低下により作用する。心房不応期の増大は、心房波長を増大させ、かくして、リエントリー小波の数を減少させ、AFを減少/緩和させる。輪回運動リエントリーについての波長=伝導速度×不応期。論評については、Tse HF and Lau CP, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., May 1998, 25(5), 293-302;Lau CP and Tse HF, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., Dec 1997, 24(12), 982-3;および Janse MJ , Eur. Heart. J., May 1997, 18 (Suppl. C), C12−C18 を参照のこと。
【0003】
AF患者の研究により、構造的/解剖学的変化がAFを持続する傾向にあり得る心房において生じ得ることが示されたが、構造的リモデリングと不整脈の慢性性との関係はよく理解されていない。該変化は、主に、順応性のある特徴(心筋細胞の脱分化)および順応性のない特徴(置換性線維形成による細胞の変性)に関係している(線維形成とは、例えば、結合組織の増加を意味する)。心房拡張および/または膨大も生じ得る。これらの構造的変化は、一般に、遷延性持続性AFの間に観察されるが、必ずしもそうとは限らない(論評については、Thijssen VL et al., Cardiovasc Pathol 2000 Jan-Feb; 9(1):17-28;および Janse MJ, Eur Heart J 1997 May; 18 Suppl C:C12-8 を参照のこと)。他方、持続性心房細動の環境において、有意な左心房および左心房付属器の機能的および解剖学的リモデリング(例えば、膨大)は、一の研究において、選択的カルジオバージョン前にワルファリン抗凝血作用を受けている患者により経験される期間と同様の期間である1〜2ヶ月の持続性心房細動の結果として生じないことが見出された(Weigner MJ et al., Heart 1999 Nov; 82(5):555-8)。
【0004】
「心房リモデリング」は、心房の機械的および細胞的変化(構造的/解剖学的変化)および/または心房の電気生理学的(電気的)変化がしばしばAFの発生の結果として生じる過程であるが、心房リモデリングは、必ずしも、特に、発作性AF患者における心房細動の結果であるわけではなく、すなわち、その必然的な結果ではない(心房細動および心房リモデリングの論評については、Thijssen VL et al., Cardiovasc. Pathol., Jan-Feb 2000, 9(1), 17-28;Tse HF and Lau CP, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., May 1998, 25(5), 293-302(特に、pp. 293-295 および 299-300 を参照);Lau CP and Tse HF, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., Dec 1997, 24(12), 982-3;および Janse MJ, Eur. Heart. J., May 1997, 18 (Suppl. C), C12-C18 を参照のこと)。これらのリモデリング変化は、しばしば、AFを持続させる傾向にある。構造的/解剖学的変化については上記した。
【0005】
本明細書において言及される「電気生理学的(電気的)心房リモデリング」は、a)心房有効不応期(AERP)または心房不応性の修飾(特に、短縮)、b)該不応期の速度順応の修飾(例えば、正常な速度順応の消失、その結果、心拍数の遅延の後、不応期が予想通り延長しない)、および/またはc)活動電位の修飾(例えば、期間の短縮、構造の変化など)を包含または意味する。好ましくは、電気生理学的(電気的)心房リモデリングは、心房有効不応期(AERP)または心房不応性の修飾(特に、短縮)を意味する。所望により、電気的心房リモデリングはまた、心房伝導速度の修飾(特に、遅延)および/または分散、例えば、不応性の分散の修飾(特に、増大)を包含し得る。「分散」とは、組織の空間的に近い領域間の不応期(例えば、AERP)のような1つまたはそれ以上の電気的現象の大きさの差異を意味する。
【0006】
心房有効不応期(AERP)、および/またはAERPの減少もしくは増加は、当業者によく知られている慣用技術により測定され得る。例えば、AERPは、例えば、A. Bril, B. Gout et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 276, 637-646 に開示されているような慣用的な単一外刺激技術を使用して測定され得る。この刊行物(および、本願の下記実施例2)に従って、洞調律よりも20%短い基本サイクル長での8−刺激系列に次いで、単一の早期外刺激(4ミリ秒、閾値電流の1.5倍)が、心房応答が得られなくなるまで、心房ペーシングから漸次短くなる連結間隔で導入される。AERPは、組織における広汎性応答を誘発しない最長連結間隔を表す。
【0007】
同様のまたは別のAERP測定法については、論評書 Tse HF and Lau CP, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., May 1998, 25(5), 293-302(特に、p. 299を参照のこと)において引用された参考文献(例えば、参考文献14、16、17、63、64および66)を参照のこと。例えば、このTse 1998 論評書の参考文献66(E. G. Daoud et al., Circulation., 1996, 94, 1600-1606)には、心房ERPが、ペーシング系列間に1秒間の休止を入れて8拍の間、350ミリ秒および500ミリ秒の基本的駆動サイクル長での5ミリ秒工程において増分技法により測定され得ることが記載されている;AERPは、心房捕獲を引き起こさない最長S1−S2連結間隔と定義されている;前AF心房ERPは、所望により、3回測定して平均値をとることができる。別法として、Tse 1998 論評書の参考文献63(よく引用されている1995年の書 M.C.E.F. Wijffels et al., Atrial fibrillation begets atrial fibrillation: A study in awake chronically instrumented goats, Circulation, 1995, 92(7), 1954-68)および後の書 M.C.E.F. Wijffels et al., Circulation, 1997, 96, 3710-3720 には、それらの方法の節において、広範囲に及ぶ心房ペーシング頻度(S11ペーシング間隔、120〜600ミリ秒)の間(例えば、左または右心房付属器で)AERPを測定する方法が開示されている。このWijffels法では、5番目の基本(S12)間隔ごとにその後、(拡張期)閾値の四倍の単一早期刺激(S2)を内挿する。(AERPよりも短い)不応期内のウェルから始まり、S12連結間隔は、1分の工程(複数)において増加する。広汎性(早期)心房応答を引き起こす最短のS12間隔がAERPとしてとられる。不応期を測定するこのWijffels法は、早く(通常、<30秒しか要しない)、かつ、試験刺激の連結間隔がペーシングされた心拍数の定常状態を妨げることなく急速に増加させられ得るので再現性/信頼性がある。
【0008】
ヒトおよびブタにおいて、5−HT4受容体は心房に存在する(例えば、A. J Kaumann et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol (1990), 342: 619-622;A.J. Kaumann et al., Br J Pharmacol (1990) 100: 879-885 を参照のこと)。5−HT4受容体のサブタイプ(5−HT4A)は、最近、ヒト心房において(O. Blondel et al, FEBS Letters, 412, 1997, pp. 465-474)、およびブタ心房において明確に特徴付けられた。この5−HT4A受容体は心室には存在しない。5−HT受容体についての命名法は一般的に D Hoyer, Neuropharmacology, 1997, 36(4/5), 419 を参照こと。
【0009】
WO 91/16045 および EP 0 526 540 B1(SmithKline Beecham)には、心臓5−HT4受容体アンタゴニストが心房細動のような心房性不整脈の治療および発作発生の低下に使用され得ることが開示されている。A.J. Kaumann, Trends Pharmacol. Sci., 1994, 15(12), 451-455;A.J. Kaumann, et al., Br. J. Pharmacol., 1994, 111 (Proc. Suppl. Jan), p.26P;S.S. Hegde et al., FASEB J., 1996, 10(12) 1398-1407;R. Pino et al., Cardiovascular Research (Netherlands), Dec 1998, 40(3), 516-522;A.J. Kaumann et al., Naunyn-Schmiedeberg's Archives Pharmacol., 1994, 349(4), 331-337 も参照のこと;本願の優先日の後に公表された J.B. Crammer et al., Basic Res. Cardiol. (Germany), 2001, 96(1), 82-90 のごく最近の書と比較してみる。
【0010】
WO 93/18036(SmithKline Beecham)には、5−HT4アンタゴニストとして多数の縮合インドール化合物が開示されており、第17〜18頁には実施例3としてN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)およびその好ましい塩酸塩(SB 207266−A)が挙げられている。これらの化合物は、胃腸障害、心臓血管障害およびCNS障害、特に、過敏性腸症候群の治療または予防において使用するためのものであることが開示されている。WO 93/18036 には、また、第6〜7頁の概括的な記載において、「5−HTに関連する心房細動および他の心房不整脈を予防する特異的心臓5−HT4受容体アンタゴニストが発作の発生を減少させることも予想される」ことが漠然と述べられている。5HT4受容体について他の5HT受容体と比べて非常に選択的である化合物SB 207266について、米国特許 5,852,014、EP 0 884 319 A2、L.M. Gaster et al, J. Med. Chem., 1995, 38, 4760-4763 および Drugs of the Future, 1997, 22(12), 1325-1332 も参照のこと。(SB207266の効力および選択性もまた本願において後に記載する5HT4受容体アンタゴニストおよび選択試験結果により示される)。SB 207266の合成法の改良について、WO 98/07728、WO 98/11067;WO 00/03983;およびWO 00/03984 を参照のこと。
【0011】
SB 207266の構造は以下のとおりである:
【化1】

【0012】
他の5HT4アンタゴニストは、WO 94/27965(Syntex)に開示されており、名称がN−(2−(4−(3−(8−アミノ−7−クロロ−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)−3−オキソプロピル)ピペリジン−1−イル)エチル)−メタンスルホンアミドである、これらの化合物の1つであるRS 100302(Roche)は、ブタの心房粗動および心房細動モデルを治療するのに有効であることが示唆されている(M.M. Rahme et al., Circulation, 1999, vol. 100(19), pp. 2010-2017)。Rahmeの書において、第2011頁におけるプロトコールでは、AFまたはAFLが、ブタにおいて、いずれもの他の製剤を用いることなく短い(60秒の)急速心房ペーシングにより引き起こされたことが注目される;AFが誘発されない場合、挫滅損傷が右心房フリーウォールをもたらす。さらに、Rahme における60秒ペーシングプロトコールが、哺乳動物種に依存して生じるのに数時間または数日を要する心房リモデリングを誘発するのに十分ではなかったことが注目される。急速心房ペーシングは、A. Goette et al., 1996, Circulation, 94, 2968-2974 により記載されているように、および/または、下記実施例1および2に示す実験にて示されるように、組織のリモデリングを生じるのに約3〜4時間実施することが必要である。同様に、Rahme に開示されている心房挫滅損傷は、物理的に、リエントラント回路を生じ得るが、リモデリングは生じない。したがって、Rahme には、心房リモデリングの治療のための5−HT4アンタゴニストの使用は開示されていない。
【0013】
他の5HT4アンタゴニストが RD Clark et al Bioorg Med Chem Lett 1994, 4(20), 2481-4;Clark, 同書, 1995, 5(18), 2119-2122(例えば、RS100235)に開示されている。
【0014】
WO 93/05038(SmithKline Beecham)には、実施例1において8−アミノ−7−クロロ−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジル)メチルである、非常に活性かつ選択的な5HT4アンタゴニストであるSB 204070を包含する一連の5HT4アンタゴニストが開示されている。この化合物の塩酸塩(SB 204070−A)について、L.M. Gaster et al, J. Med. Chem, 1993, 36, 4121-4123 を参照のこと。WO 93/05038に開示されている他の5HT4アンタゴニストは、実施例52に示されているSB 207710[8−アミノ−7−ヨード−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジル)メチル]およびその塩酸塩;および実施例14において示されているSB 205800[N−(l−ブチル−4−ピペリジル)メチル−8−アミノ−7−クロロ−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボキサミド]を包含する。SB 204070、SB 207710、およびSB 205800の構造は、以下のとおりである:
【0015】
【化2】

【0016】
5HT4アンタゴニストを開示している他のスミスクライン・ビーチャム(SmithKline Beecham)の刊行物としては、WO 93/16072;WO 94/10174;WO 94/27987;WO 95/04737 が挙げられる。
【0017】
名称が1−メチル−1H−インドール−3−カルボン酸(1−(2−((メチルスルホニル)アミノ)エチル)−4−ピペリジニル)メチルエステル、または1−メチル−1H−インドール−3−カルボン酸[1−[2−[(メチルスルホニル)アミノ]エチル]−4−ピペリジニル]メチルであるGR 113808は、グラクソ・ウェルカム(Glaxo Wellcome)からの別の活性かつ選択的な5HT4アンタゴニストである。名称が5−フルオロ−2−メトキシ−1H−インドール−3−カルボン酸[1−[2−[(メチルスルホニル)アミノ]エチル]−4−ピペリジニル]メチルであるGR 125487は、別の活性かつ選択的な5HT4アンタゴニストである:5−HT4Aおよび5−HT3A受容体でのそのpKiは、各々、10.0および<6.5である。GR 113808およびGR 125487について、Grossman et al, Br. J. Pharmacol., 1994, 111, 332;EP 501322 A1 および EP 501322 B1 を参照のこと。GR 113808については EP 501322 B1 の実施例1を、GR 125487およびその塩酸塩、メタンスルホン酸塩およびマレイン酸塩についてはEP 501322 B1の実施例12、21および22を参照のこと。GR 113808およびGR 125487の化学構造は以下のとおりである:
【0018】
【化3】

【0019】
名称が[2−(3−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)フェニル]カルバミン酸[1−[2−[(メチルスルホニル)アミノ]エチル]−4−ピペリジニル]メチルであるGR 138897は、グラクソ・ウェルカムからの別の活性かつ選択的な5HT4アンタゴニストである:5−HT4Aおよび5−HT3A受容体でのそのpKiは、各々、10.3および<5.0である。GR 138897の合成について、WO 93/20071 の実施例1および3およびクレーム8〜10、ならびに、米国特許 5,618,827 およびEP 0 640 081 B1 を参照のこと。また、(Z)−2−ブテン二酸塩およびメタンスルホン酸塩について、WO 93/20071 の実施例2および4およびクレーム9〜10を参照のこと。GR 138897の化学構造は以下のとおりである:
【0020】
【化4】

【0021】
名称が
1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、すなわち、
1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.1 sup(3,7)]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、または
1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.1]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、または
N−[2−(4−(1−アダマンチルカルボニルアミノ)−1−ピペリジニル)エチル]−1−(2−プロピル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド
であるLY−353433は、イーライ・リリィ(Eli Lilly)により開発されている活性かつ選択的な5−HT4アンタゴニストである。Cohen ML et al., Drug Development Research, 43: 193-199, Apr 1998(LY 353433の活性ヒドロキシル化代謝物LY−343031およびLY−343032の開示を含む);Cohen ML, et al. J. Pharmacology and Experimental Therapeutics, 277: 97-104, Apr 1996 を参照のこと、また、EP 732333 A1 を参照のこと(例えば、EP 732333 A1 の第13頁の実施例27およびクレーム5を参照のこと)。LY−353433の構造は以下のとおりである:
【0022】
【化5】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
発明
心房リモデリングの治療(例えば、治療または予防)に使用できる新規化合物または化合物群を発見することが望まれている。
【0024】
急速心房速度および/または心房ペーシング、特に、慢性の急速心房速度または慢性の心房ペーシング(例えば、動物実験環境における心房ペーシング)は、
心房有効不応期(AERP)を減少させる心房リモデリング(特に、電気的モデリング)が生じる状態である。実験的には、かかる電気的リモデリングは、AFの発生を促進するのに重要な役割を果たすことが示されている。本発明者らは、この度、5−HT4受容体アンタゴニスト(阻害剤)、特に、SB 207266が、心房有効不応期(AERP)におけるこの減少を少なくとも部分的に逆転する能力を有する、すなわち、AERPを増大させる能力を有するという知見を得た。したがって、SB 207266のような5−HT4受容体アンタゴニストは、心房リモデリングを緩和し、および/または心房を、リモデリング、特に、電気的リモデリングから保護することが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かくして、本発明の第1の態様によると、例えば、ヒトのような哺乳動物おける、心房リモデリングの予防または治療のための薬物の製造における5−HT4受容体アンタゴニスト使用が提供される。
【0026】
本発明は、また、心房リモデリングの治療または予防を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)におけるかかる治療または予防の方法であって、かかる哺乳動物に有効量の5−HT4受容体アンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、例えば、ヒトのような哺乳動物における心房リモデリングの予防または治療において使用するための5−HT4受容体アンタゴニストを提供する。
【0028】
好ましくは、本発明は、上記で定義した電気生理学的(電気的)心房リモデリングの予防または治療を含む。さらに好ましくは、本発明は、心房有効不応期(AERP)を増加させることによる、および/または少なくとも部分的にAERPの減少から保護するかまたは該減少を逆転することによる、例えば、哺乳動物における、電気的(電気生理学的)心房リモデリングの予防または治療を含む。
【0029】
本発明は、全ての態様において、心房細動により増強される心房リモデリング、例えば、再発性心房細動により増強される心房リモデリングの予防または治療を含むことができる。本発明の全ての態様において、治療される哺乳動物(ヒト)は、心房細動の患者であるかまたは心房細動に対して感受性のある患者、特に、持続性または永久心房細動の患者[例えば、長期(例えば、>1年または>5年または≧48時間かつ≦1年、または≧48時間かつ<6ヶ月)患者]であり得る。持続性または永久心房細動の長期(例えば、>1年または>5年)患者は、上記した心房リモデリング問題を有すると考えられる。別法として、該哺乳動物(例えば、ヒト)は、発作性心房細動の患者であるか、または、発作性心房細動に対して感受性のある患者である。
【0030】
好ましくは、または、別法としては、本発明の全ての態様において、当該薬物/治療または予防の方法/5−HT4受容体アンタゴニスト(例えば、SB 207266 またはその医薬上許容される塩)は、発作性または持続性AF(好ましくは、持続性AF)を有する哺乳動物(例えば、ヒト/患者)における心房細動の症候性再発の阻害(例えば、予防)のためのもの、かかる阻害のもの、またはかかる阻害において使用するためのものである。[したがって、本発明は、発作性または持続性心房細動を有する哺乳動物における心房細動の症候性再発の阻害のための薬物の製造における5−HT4受容体アンタゴニストの使用;および/または発作性または持続性心房細動を有する哺乳動物における心房細動の症候的発作を阻害する方法であって、該哺乳動物に有効量の5−HT4受容体アンタゴニストを投与することを含む方法を提供する]。
【0031】
発作性、持続性および永久AFは、AFの重篤度を定義する用語であり、当業者には理解されている。
【0032】
「発作性AF」は、<48時間の個々のエピソードの平均期間を有するAFのエピソードを包含するかまたはそれを意味する。発作性AFエピソードは、自然に止まり得るか、または、5HT4アンタゴニストおよび/または他の抗不整脈薬により正常洞調律(NSR)に変えられ得る。発作性AFの大部分は、潜在的な心臓血管疾患がなく、かつ、心房リモデリングがない、単独のAFである。発作性AFは、すばやく止められないと持続性AFになる。
【0033】
「持続性AF」、例えば、症候的持続性AFは、通常、発作性AFよりも期間が長く、≧48時間かつ≦1年、より好ましくは、≧48時間かつ<6ヶ月の個々のエピソードの平均期間を有するAFのエピソード、例えば、症候性エピソードを包含するか、または、それを意味する。持続性AFは、通常、自然に止まるか、または、通常、NSRに戻すために電気的または薬理学的カルジオバージョンを必要とする。しばしば、心房電気的リモデリングが現れ、左心房拡張が生じることがあり、左心室機能不全もまた生じることがある。
【0034】
「永久AF」は、持続性AFよりも長い個々のエピソードの平均期間(例えば、>1年間もしくは>5年間、または永久的期間)を有するAFのエピソードを包含するか、またはそれを意味する。それは、通常、電気的カルジオバージョンに対して応答せず、根深い電気的リモデリングに関連しており、通常、潜在的なCV疾患(虚血性心疾患、心筋症および/または高血圧症など)を伴う。
【0035】
所望により、本発明のいずれもの態様において、本発明は、急速心房速度(心房ペーシング)(例えば、実験的慢性心房ペーシング)により増強された心房リモデリングの予防または治療を含むことができる。治療される哺乳動物(例えば、ヒト)は、急速心房速度(心房ペーシング)、例えば、異常に急速な心房速度の患者またはそれに対して感受性のある患者であり得る。
【0036】
本発明の態様のいずれかにおいて使用される5−HT4受容体アンタゴニストは、概論において言及されたもののいずれかを包含することができる。かくして、例えば、本発明において使用される5−HT4受容体アンタゴニストは、5−HT4受容体アンタゴニストを開示していることを概論において言及した特許公報のいずれかのクレームのいずれか(例えば、クレーム1など)により含まれる化合物を含むことができ(例えば、WO 93/18036、WO 93/05038、WO 93/16072;WO 94/10174;WO 94/27987;WO 95/04737;WO 93/20071、EP 501322 B1、WO 94/27965、および/または EP 732333 A1)、および/または、例えば、5−HT4受容体アンタゴニストを開示していることを概論において言及した刊行物(例えば、特許または定期刊行物)に明確に例示されている5−HT4受容体アンタゴニストを含むことができる。以下に記載するとおり、これらの5−HT4受容体アンタゴニスト刊行物を包含するがそれらに限定されない本明細書において引用した全ての刊行物は、個々の刊行物が十分に開示されているかの如く具体的かつ個別的に出典明示により本明細書の一部とすることが明示されているかのように出典明示により本明細書の一部とする。
【0037】
本明細書に記載されない他の5−HT4受容体アンタゴニストは、以下に詳細に記載する5−HT4アンタゴニスト試験を使用して見出すことができる。
【0038】
5−HT4受容体アンタゴニストおよび類似誘導体の医薬上許容される塩(例えば、HCl塩)、溶媒和物、水和物、複合体および/またはプロドラッグは、「5−HT4受容体アンタゴニスト」の定義の範囲内に含まれる。適当な医薬上許容される塩は、当業者に明白であり、例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸;および有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸を用いて形成された酸付加塩が挙げられる。
【0039】
5−HT4受容体アンタゴニストは、好ましくは、5−HT4Aおよび/または5−HT4B受容体のアンタゴニストである。5−HT4A受容体は、O. Blondel et al, FEBS Letters, 412, 1997, pp. 465-474 において特徴付けられているものであり得る。該5−HT4B受容体は、O. Blondel et al, J. Neurochem., 1998, 70(6), pp. 2253-2261 および/または WO 99/28456(INSERM)において特徴付けられているものであり得る。5−HT4受容体の他のスプライスバリアントは、例えば、WO 99/28456に開示されている5−HT4Cおよび5−HT4Dを包含する。
【0040】
好ましくは、5−HT4受容体アンタゴニストは、ヒト心房に存在するこれらの5−HT4受容体のアンタゴニスト意味し、好ましくは、ヒト心臓において実質的にはヒト心房にのみ存在するこれらの5−HT4受容体のアンタゴニストを意味する、心臓5−HT4受容体アンタゴニストである。(例えば、Kaumann et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol (1990), 342: 619-622;A.J. Kaumann et al., Br J Pharmacol (1990) 100: 879-885, O. Blondel et al, FEBS Letters, 412, 1997, pp. 465-474;O. Blondel et al, J. Neurochem., 1998, 70(6), pp. 2253-2261;および WO 99/28456 を参照のこと)。5−HT4Aおよび5−HT4B受容体はこのような受容体である。
【0041】
実際、この度、本発明者らにより、5−HT4B受容体がヒト心房において発現される主たる5−HT4受容体アイソフォームであることが見出された。少量の5−HT4Aおよび5HT4C受容体アイソフォームはヒト心房中にて見出されるが、5−HT4Dは検出できない。また、予備データは、慢性(持続性)AFヒト患者の心房における5−HT4B受容体発現が、急性(発作性)AFヒト患者の心房と比較して実質的に増加することを示唆している。また、SB 207266は、5−HT4Bアンタゴニストであることが見出された。[したがって、本発明は、また、(A)持続性心房細動の患者またはそれに対して感受性のある患者であるヒトにおける心房リモデリングおよび/または心房性不整脈(例えば、心房細動)の予防または治療のための薬物の製造における5−HT4B受容体アンタゴニストの使用;(B)持続性心房細動の患者またはそれに感受性のある患者である、心房リモデリングおよび/または心房性不整脈(例えば、心房細動)の治療または予防を必要とするヒトにおけるかかる治療または予防の方法であって、かかるヒトに有効量の5−HT4B受容体アンタゴニストを投与することを含む方法;および/または(C)持続性心房細動の患者であるかまたはそれに対して感受性のあるヒトにおける心房リモデリングおよび/または心房性不整脈(例えば、心房細動)の予防または治療において使用するための5−HT4B受容体アンタゴニストを提供する。好ましくは、アンタゴニストは、ヒト(例えば、心房)5−HT4B受容体のアンタゴニストである。]
【0042】
好ましくは、本発明の態様のいずれかにおいて、5−HT4(例えば、5−HT4Aおよび/または5−HT4B)受容体アンタゴニストは、選択的5−HT4(例えば、5−HT4Aおよび/または5−HT4B)受容体アンタゴニストである。かかるアンタゴニストは、例えば、他の5−HT受容体よりも少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも25倍、より好ましくは、少なくとも100倍強く5−HT4(例えば、5−HT4Aおよび/または5−HT4B)受容体を結合および/または阻害することができる。選択性は、公知の試験法により測定することができる。5−HT受容体命名法については、例えば、D Hoyer, Neuropharmacology, 1997, 36(4/5), 419 およびそこに引用されている参考文献を参照のこと。
【0043】
好ましくは、5−HT4(例えば、5−HT4Aおよび/または5−HT4B)受容体アンタゴニストは、WO 93/18036の(実施例を含む)明細書および/またはクレーム中に開示されている化合物を含む。例えば、WO 93/18036のクレーム1のとおり、5−HT4受容体アンタゴニストは、式(I):
【化6】

[式中、
Xは、O、S、SO、SO2、CH2、CHまたはNRであり(ここで、Rは、水素またはC1-6アルキルである);
Aは、炭素原子2〜4個の飽和または不飽和ポリメチレン鎖であり;
1およびR2は、水素またはC1-6アルキルであり;
3は、水素、ハロ、C1-6アルキル、アミノ、ニトロまたはC1-6アルコキシであり;
4は、水素、ハロ、C1-6アルキルまたはC1-6アルコキシであり;
Yは、OまたはNHであり;
Zは、下位式(a)、(b)または(c):
【化7】

【化8】

【化9】

(式中、
1は、1、2、3または4であり;n2は、0、1、2、3または4であり;n3は、2、3、4または5であり;
qは、0、1、2または3であり;pは、0、1または2であり;mは、0、1または2であり;
5は、水素、C1-12アルキル、アラルキルであるか、または、R5は、(CH2)z−R10であり(ここで、zは、2または3であり、R10は、シアノ、ヒドロキシル、C1-6アルコキシ、フェノキシ、C(O)C1-6アルキル、COC65、−CONR1112、NR11COR12、SO2NR1112またはNR11SO212から選択され、ここで、R11およびR12は、水素またはC1-6アルキルである);
6、R7およびR8は、独立して、水素またはC1-6アルキルであり;
9は、水素またはC1-10アルキルである)
で示される基である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、またはCO−Y結合を複素環式バイオアイソステアーに置き換えた式(I)で示される化合物を含み得る。
【0044】
CO−Y結合を複素環式バイオアイソステアーに置き換えた場合、該バイオアイソステアーは、WO 93/18036 の第3頁、第11〜25行に開示されているものであり得る。しかしながら、好ましくは、このバイオアイソステアーは存在しない;すなわち、好ましくは、YはOまたはNHである。
【0045】
好ましくは、XはOである。好ましくは、Aは、 −(CH2)3−である。好ましくは、R1およびR2は、独立して、水素またはメチルである。R3が水素であり、R4が水素またはハロであるのが好ましい。(比較:WO 93/18036 のクレーム2〜5)。
【0046】
アリール(例えば、R5がアラルキルである場合)としては、ハロ、C1-6アルキルおよびC1-6アルコキシから選択される置換基1個またはそれ以上により置換されていてもよいフェニルおよびナフチルが挙げられる。R5がアラルキルである場合、このアラルキルとしては、置換されていてもよいベンジル、例えば、フェニル環がハロ、C1-6アルキルおよびC1-6アルコキシから選択される置換基1個またはそれ以上により置換されているベンジルを挙げることができる。(比較:WO 93/18036のクレーム9および第3頁、第6〜7行)。
【0047】
好ましくは、Zは、下位式(a)で示されるものである。下位式(a)において、(CH2)n1は、 アザサイクルの炭素原子で結合される。好ましくは、n1は、1である。好ましくは、q=3であり、下位式(a)は、6員アザサイクルを含み、すなわち、Zは、
【化10】

であり、この場合、好ましくは、(CH2)n1は、アザサイクルの4位で結合される。より好ましくは、Zは、R5によりN−置換された4−ピペリジルメチルである(すなわち、Zは、
【化11】

である)。ZがR5によりN−置換された4−ピペリジルメチルである場合、N−置換基R5が、C2またはC3またはそれ以上のアルキル(すなわち、C2-12アルキルまたはC3-12アルキル)であるか、または置換されていてもよいベンジルであるか;またはN−置換基R5が、EP-A-501322の式(I)にて定義されており、かつ、EP-A-501322の特定の例に関する(CH2)nR4により置換されるのが好ましい。最も好ましくは、Zは、(1−(n−ブチル)−4−ピペリジル)メチル、すなわち、
【化12】

である。(比較:WO 93/18036のクレーム1および7〜9ならびに第4頁、第6行〜第5頁、第10行)。
【0048】
好ましくは、本発明において、5−HT4受容体アンタゴニストは、遊離形態またはその医薬上許容される塩としての、
(a) WO 93/18036 に記載されている実施例1〜46のうちの一、
(b) WO 93/05038 に記載されている実施例1〜54のうちの一、
(c) WO 93/20071 のクレーム6または実施例1〜38に記載されている化合物のうちの一、または
(d) EP 501322 B1 のクレーム9または実施例1〜23に記載されている化合物のうちの一
から選択される化合物を含む。
【0049】
別法として、本発明において、5−HT4受容体アンタゴニストは、遊離塩基形態またはその医薬上許容される塩としての、
(a) WO 94/27965に記載されている実施例1〜15の化合物のうちの一またはRS100235またはRS100302、または
(b) EP 732333 A1 に記載されている実施例1〜38のうちの一
から選択される化合物を含むことができる。
【0050】
本発明において、5−HT4受容体アンタゴニストが
(i) N−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266);
(ii) N−(2−(4−(3−(8−アミノ−7−クロロ−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)−3−オキソプロピル)ピペリジン−1−イル)エチル)−メタンスルホンアミド(RS 100302);
(iii) 1−メチル−1H−インドール−3−カルボン酸(1−(2−((メチルスルホニル)アミノ)エチル)−4−ピペリジニル)メチルエステル(GR 113808);または
(iv) 1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、すなわち、
1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.1 sup(3,7)]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、または
1−(1−メチルエチル)−N−(2−(4−((トリシクロ[3.3.1.1]デカ−1−イルカルボニル)アミノ)−1−ピペリジニル)エチル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド、または
N−[2−(4−(1−アダマンチルカルボニルアミノ)−1−ピペリジニル)エチル]−1−(2−プロピル)−1H−インダゾール−3−カルボキサミド(LY−353433);
またはその医薬上許容される塩
を含むのが特に好ましい。
【0051】
別法として、5−HT4受容体アンタゴニストが
(v) 8−アミノ−7−クロロ−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジル)メチル(SB 204070)またはその医薬上許容される塩、例えば、その塩酸塩、
(vi) 8−アミノ−7−ヨード−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジル)メチル(SB 207710)またはその医薬上許容される塩、例えば、その塩酸塩、
(vii) N−(1−ブチル−4−ピペリジル)メチル−8−アミノ−7−クロロ−1,4−ベンゾジオキサン−5−カルボキサミド(SB 205800)またはその医薬上許容される塩、
(viii) [2−(3−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)フェニル]カルバミン酸[1−[2−[(メチルスルホニル)アミノ]エチル]−4−ピペリジニル]メチル(GR 138897)またはその医薬上許容される塩、例えば、その(Z)−2−ブテン二酸塩またはメタンスルホン酸塩;または
(ix) 5−フルオロ−2−メトキシ−1H−インドール−3−カルボン酸[1−[2−[(メチルスルホニル)アミノ]エチル]−4−ピペリジニル]メチル(GR 125487)またはその医薬上許容される塩、例えば、その塩酸塩、メタンスルホン酸塩またはマレイン酸塩
を含むのが好ましい。
【0052】
5−HT4受容体アンタゴニストが、(i)SB 207266、(v)SB 204070、(vi)SB 207710、(vii)SB 205800、(viii)GR 138897または(iv)LY−353433;またはその医薬上許容される塩を含むのがさらに好ましい。アンタゴニストが上記定義の(i)、(v)、(vi)、(vii)または(viii)、またはその医薬上許容される塩を含むのがさらに好ましい。
【0053】
最も好ましい5−HT4受容体アンタゴニストは、N−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩、特に、その塩酸塩(SB 207266−A)である。SB 207266は5HT4B受容体をアンタゴナイズすることが見出された。
【0054】
本発明の第二の態様は、心房有効不応期(AERP)の減少および/または心房不応性の望ましくない修飾に関連する心房細動以外の疾患または症状の予防または治療のための薬物の製造における5−HT4受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0055】
本発明の第二の態様は、また、心房有効不応期(AERP)の減少および/または心房不応性の望ましくない修飾に関連する心房細動以外の疾患または症状の治療または予防を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)におけるかかる治療または予防の方法であって、かかる哺乳動物に有効量の5−HT4受容体アンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0056】
本発明の第二の態様は、また、心房有効不応期(AERP)の減少および/または心房不応性の望ましくない修飾に関連する心房細動以外の疾患または症状において使用するための5−HT4受容体アンタゴニストを提供する。
【0057】
本発明の第三の態様は、心房有効不応期(AERP)の増大および/または心房不応性の有益な修飾が望まれる心房細動以外の疾患または症状に罹患しているかまたは該疾患もしくは症状に感受性のある哺乳動物(例えば、ヒト)におけるかかる増大および/または修飾のための薬物の製造における5−HT4受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0058】
本発明の第三の態様は、また、心房有効不応期(AERP)の増大および/または心房不応性の有益な修飾を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)における、かかる増大および/または修飾が望まれる心房細動以外の疾患または症状に罹患しているかまたは該疾患もしくは症状に感受性のある哺乳動物におけるかかる増大および/または修飾の方法であって、かかる哺乳動物に有効量の5−HT4受容体アンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0059】
本発明の第三の態様は、また、心房有効不応期(AERP)の増大および/または心房不応性の有益な修飾が望まれる心房細動以外の疾患または症状に罹患しているかまたは該疾患または症状に感受性のある哺乳動物(例えば、ヒト)における該増大および/または修飾のための5−HT4受容体アンタゴニストを提供する。
【0060】
第四の態様は、心房ペーシング(例えば、慢性心房ペーシング)または心房ペーシング(例えば、慢性心房ペーシング)のエピソードに関連する心房細動以外の疾患または症状の予防または治療のための薬物の製造における5−HT4受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0061】
一の実施態様において、本発明の第二、第三および第四の態様では、当該疾患または症状は、心房性不整脈以外のものである。好ましくは、これらの第二および第三の態様では、当該疾患または症状は心臓(例えば、心房)疾患または症状であり、および/または、当該疾患または症状はヒトのような哺乳動物におけるものである。
【0062】
医薬組成物(処方物)
5−HT4受容体アンタゴニストを使用するためには、それらは、通常、標準的な製薬プラクティスに従って医薬組成物に処方されるであろう。
【0063】
5−HT4受容体アンタゴニスト(または「阻害剤」)は、好都合には、薬物投与のために慣用的に使用される経路のいずれか、例えば、非経口、経口、局所または吸入により投与され得る。5−HT4受容体アンタゴニストは、慣用的な手順に従ってそれと標準的な医薬上許容される担体とを配合することにより調製される慣用的な投与剤形で投与され得る。5−HT4受容体アンタゴニストは、また、公知の第二の治療上活性な化合物と合わせて慣用的な投与量で投与され得る。これらの手順は、所望の製剤に適するように、成分を混合すること、造粒すること、および圧縮または溶解することを含み得る。医薬上許容される担体の形態および特徴は、配合されるべき活性成分の量、投与経路および他のよく知られている可変項目により決定されると認められるであろう。当該担体は、処方物の他の成分と適合し、かつ、そのレシピエントにとって有害ではないという意味で「許容」されなければならない。
【0064】
したがって、本発明は、また、医薬上許容される担体と合わせて(例えば、SB 207266またはその医薬上許容される塩を含むかまたはそのものである)5−HT4受容体アンタゴニストを含む、例えば、本発明の方法/使用のいずれかに使用するための、医薬組成物を提供する。
【0065】
使用される医薬上許容される担体は、例えば、固体または液体のいずれであってもよい。固体担体の例は、ラクトース、白土、シュークロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などである。同様に、当該担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような当該技術分野によく知られている遅延物質を単独でまたはワックスと一緒に含むことができる。
【0066】
広範囲に及ぶ種々の医薬剤形を使用することができる。かくして、固体担体を使用する場合、当該製剤は、錠剤化されるか、または、粉末もしくはペレット形態でハードゼラチンカプセル中に入れられるか、また、トローチ剤もしくはロゼンジ剤の形態であり得る。固体担体の量は、幅広く様々な値をとるが、好ましくは、約25mg〜約1gである。液体担体を使用する場合、当該製剤は、シロップ剤、乳剤、ソフトゼラチンカプセル剤、無菌注射用液剤、例えば、アンプル剤または非水性液体懸濁剤の剤形である。
【0067】
ヒト経口投与のためのSB 207266についての2つの特に好ましい経口組成物は、以下のとおりである:
【表1】

HPMC=ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0068】
第二(右側)の組成物における投与量は容易に20mgに増加させることができる。第二の組成物は造粒工程の結果である。
【0069】
SB 207266についてのこれらおよび他の適当な経口組成物を下記実施例4、5、6、7および8に記載する。
【0070】
投与計画ならびに投与経路および方法
5−HT4受容体アンタゴニスト(「阻害剤」)は、好ましくは、非経口的に、すなわち、静脈内、筋肉内、皮下、鼻内、直腸内、膣内または腹腔内投与により投与される。静脈内形態の非経口投与が一般的に好ましい。かかる投与に適当な投与剤形は慣用技法により調製され得る。
【0071】
5−HT4受容体アンタゴニスト(「阻害剤」)は、また、経口投与され得る。かかる投与に適当な投与剤形は、慣用技法により調製され得る。
【0072】
5−HT4受容体アンタゴニストは、また、吸入により、すなわち、鼻内および経口吸入投与により投与され得る。エアゾール製剤のようなかかる投与に適当な投与剤形は、慣用技法により調製され得る。
【0073】
5−HT4受容体アンタゴニストは、また、局所的に、すなわち、非全身投与により投与され得る。これは、当該化合物が血流に有意に入らないような、5−HT4受容体アンタゴニストの表皮または口腔への外用ならびにかかる化合物の耳、目および鼻への滴下を含む。
【0074】
SB 207266またはその医薬上許容される塩のような5−HT4受容体アンタゴニスト(「阻害剤」)について本明細書で記載する全ての使用の方法について、1日経口投与計画は、好ましくは、全体重1kgにつき約0.1〜約80mg、好ましくは、約0.2〜30mg/kg、より好ましくは、約0.5mg/kg〜15mg/kgである。1日非経口(例えば、静脈内)投与計画は、好ましくは、全体重1kgにつき約0.1〜約80mg、好ましくは、約0.2〜約30mg/kg、より好ましくは、約0.5mg/kg〜15mg/kgである。1日局所投与計画は、好ましくは、0.1mg〜150mgであり、1日に1〜4回、好ましくは、2または3回投与される。1日吸入投与計画は、好ましくは、1日あたり約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。
【0075】
上記の好ましい投与量範囲に基づいて、かつ、下記実施例1および2において示されるミニブタ実験におけるインビボ結果に基づいて、静脈内投与されるSB−207266の0.3および1.0mg/kgの投与量が心房細動および心房リモデリングを治療するのに有効であった場合、SB 207266またはその医薬上許容される塩を投与することを含む心房性不整脈(例えば、心房細動および/または心房リモデリング)の予防または治療のために以下の投与量範囲が好ましい。1日経口または非経口(例えば、静脈内)投与計画は、特に、ヒトのような哺乳動物において、好ましくは、全体重1kgにつき約0.1mg〜1.0mg(例えば、0.1〜1.0mg/kg)、より好ましくは、約0.2mg/kg〜1.0mg/kg(例えば、0.2〜1.0mg/kg)、さらにより好ましくは、0.3〜1.0mg/kg、最も好ましくは、約0.5mg/kg〜1.0mg/kg(例えば、0.5〜1.0mg/kg)である。別法として、1日経口または非経口投与計画は、全体重1kgにつき約0.2mg〜約0.5mg、例えば、全体重1kgにつき約0.2mg〜0.3mgであり得る。例えば、約70〜75kgの体重のヒトについて、0.3〜1.0mg/kgの1日経口または非経口(例えば、静脈内)投与計画は、1日あたりの約(21〜22.5)〜(70〜75)mgに相当し;約0.2mg/kg〜1.0mg/kgは、1日あたりの(約14〜15)〜(70〜75)mgに相当し;約0.5mg/kg〜1.0mg/kgは、1日あたりの(約35〜37.5)〜(70〜75)mgに相当し;約0.2mg/kg〜約0.5mg/kgは、1日あたりの(約14〜15)〜(約35〜37.5)mgに相当し;約0.2mg/kg〜0.3mg/kgは、1日あたりの(約14〜15)〜(21〜22.5)mgに相当する。
【0076】
ヒト経口または非経口(例えば、静脈内)投与についての好ましい1日投与量は、
a)5〜20mg(例えば、上記のSB 207266の第二の特定の経口組成物において)、特に、20mg、
b)50mg、
c)80mg
である。
【0077】
投与量は、SB 207266遊離塩基の重量として測定されており、SB 207266の塩については、塩を形成するために遊離塩に添加されるいずれもの酸の重量は排除されている。
【0078】
したがって、本発明の第五の態様は、全体重1kgにつき約0.1mg〜1.0mg(遊離塩基として測定)のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩の1日経口または非経口投与計画を哺乳動物に投与することによる哺乳動物(例えば、ヒト)における心房細動の治療または予防のための薬物の製造におけるSB 207266またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0079】
本発明の第五の態様は、また、心房細動の治療または予防を必要とする哺乳動物におけるかかる治療または予防の方法であって、かかる哺乳動物に全体重1kgにつき約0.1mg〜1.0mg(遊離塩基として測定)のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩の1日経口または非経口投与計画を投与することを含む方法を提供する。
【0080】
また、哺乳動物(例えば、ヒト)に全体重1kgにつき約0.1mg〜1.0mg(遊離塩基として測定)のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩の1日経口または非経口投与計画を投与することによる哺乳動物における心房細動の治療または予防に使用するためのSB 207266またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0081】
本発明の(例えば、第一〜第五の態様に制限することなく)全ての態様において、1日経口または非経口投与計画は、好ましくは、全体重1kgにつき約0.1mg〜1.0mg、より好ましくは、約0.2mg/kg〜1.0mg/kg、さらにより好ましくは、0.3〜1.0mg/kg、例えば、約0.5mg/kg〜1.0mg/kg(全て、遊離塩基として測定した)のSB 207266またはその塩である。別法として、または、加えて、1日経口または非経口投与計画は、全体重1kgにつき約0.2mg〜約0.5mg、例えば、約0.2mg〜0.3mg(遊離塩基として測定)のSB 207266またはその塩であり得る。
【0082】
より好ましくは、本発明の全ての態様において、1日投与計画は、SB 207266またはその塩20mg、50mgまたは80mg(遊離塩基として測定)のヒトへの経口または非経口(好ましくは、経口)投与を含む。これらの1日投与量は、1日1回単一用量として投与することができるか、または、合計で所定の1日投与量を投与するその日の同一回数または異なる回数で2つまたはそれ以上の少量の投与量として投与することができる。
【0083】
したがって、本発明の第6の態様は、ヒトにN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩20mg、50mgまたは80mg(遊離塩基として測定)の1日経口または非経口(好ましくは、経口)投与量を投与することによるヒトにおける心房細動の治療または予防のための薬物の製造におけるSB 207266またはその塩の使用を提供する。
【0084】
心房細動の治療または予防を必要とするヒトにおけるかかる治療または予防の方法であって、かかるヒトにSB 207266またはその塩20mg、50mgまたは80mg(遊離塩基として測定)の1日経口または非経口投与量を投与することを含む方法もまた提供される。
【0085】
ヒトにSB 207266またはその塩20mg、50mgまたは80mg(遊離塩基として測定)の1日経口または非経口投与量を投与することによるヒトにおける心房細動の治療または予防における使用のためのSB 207266またはその医薬上許容される塩もまた提供される。
【0086】
本発明の全ての態様において、5−HT4受容体アンタゴニスト(例えば、SB 207266またはその医薬上許容される塩)を症候性心房細動(AF)、および/または発作性もしくは持続性(好ましくは、永久)AFの患者に使用または投与されるのが好ましい。
【0087】
ヒト1日経口または非経口投与量20、50および/または80mgおよび1日投与量約0.2mg/kg〜1.0mg/kgは、SB 207266の投与の心臓血管副作用および/または他の副作用を最小にするかまたは減少させるように設計される。予備実験は、(哺乳動物において約1.6〜1.7mg/kg/日またはそれ以上に相当する)約120mgまたはそれ以上のSB 207266のヒト1日経口投与量がある種の副作用を引き起こすかもしれず、そこで、好ましくは、SB 207266のこのように高い投与量は回避すべきであることを示している。
【0088】
したがって、1日経口または非経口投与計画が、好ましくは、全体重1kgにつきSB 207266またはその塩約1.5mg未満、より好ましくは、約0.2mg/kg〜約1.5mg/kg、より好ましくは、約0.5〜約1.5mg/kg、例えば、約1.0mg/kg〜約1.5mg/kg(例えば、1.0〜1.5mg/kgまたは1.0〜1.3mg/kg)(全て遊離塩基として測定)であるのが好ましい。したがって、本発明は、また、(A)全体重1kgにつき約1.0mg〜約1.5mg(例えば、1.0〜1.5mgまたは1.0〜1.3mg)のSB 207266またはその塩の1日経口または非経口投与計画を哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することによる哺乳動物における心房細動の治療または予防のための薬物の製造におけるSB 207266またはその医薬上許容される塩の使用;(B)心房細動の治療または予防を必要とする哺乳動物におけるかかる治療または予防の方法であって、かかる哺乳動物に全体重1kgにつき約1.0mg〜約1.5mgのSB 207266またはその医薬上許容される塩の1日経口または非経口投与計画を投与することを含む方法;および/または(C)哺乳動物(例えば、ヒト)に全体重1kgにつき約1.0mg〜約1.5mgのSB 207266またはその塩の1日経口または非経口投与計画を投与することによる哺乳動物における心房細動の治療または予防において使用するためのSB 207266またはその医薬上許容される塩を提供する;全ての重量は、遊離塩基として測定した。
【0089】
好ましくは、本発明の全ての態様において、薬物/治療または予防の方法/5−HT4受容体アンタゴニスト(例えば、SB 207266またはその医薬上許容される塩)は、発作性または持続性AF(好ましくは、持続性AF)の患者における心房細動の症候性再発の阻害において有用である。
【0090】
持続性AFの患者においてSB 207266を使用する心房細動の症候性再発の阻害のための好ましいプロトコールを下記実施例3に詳細に記載する。
【0091】
初回量
SB 207266の使用/投与に関して、通常、より敏速に十分な治療応答を得るのが望ましい。これを得るために、初期の大きい「初回量」(例えば、経口投与量)のSB 207266またはその塩を使用して、より迅速に治療濃度を達することができる。
【0092】
SB 207266の定常状態血漿濃度は、1日1回の投与の約4〜5日後にのみ達成されることが見出された(4日目の濃度は、定常状態血漿濃度の約90%であることが見出された)。排出半減期T1/2は約20〜24時間であることが見出された。AFのエピソードの後に正常洞調律に変えられた(カルジオバージョン処置された)心房細動/リモデリングの患者がカルジオバージョン後まもなくAFの再発を有するかもしれないので、定常状態濃度を得るための期間の延長は望ましくないと考えられる。1日1回の経口投与後の蓄積の程度は、約1.5倍であると考えられる。したがって、SB 207266の投与の1日目に1日投与量の約1.5倍(「初回量」)の投与の結果、より早く、仮性定常状態血漿濃度が得られる。例えば(理論により束縛されることなく)、定常状態血漿濃度の90%は、以下に示すモデリングに部分的に基づいて、初回量の投与の約24時間またはそれ以下の時間後に達成可能であると考えられる。これは、例えば、最初の投与後の早い時期にカルジオバージョン処置させることにより、および/またはカルジオバージョン後まもなく細動に逆戻りする患者の変化を減少させることにより、および/または該患者の入院期間を減少させることにより、カルジオバージョン後のAF患者に対して治療利益を有する。
【0093】
予備的な個体群薬物動態学的モデリングの結果、2つの計画(1日目120mgに次いで7日間1日1回80mg対8日間1日1回80mg)についてシミュレートされたSB−207266血漿濃度対時間プロフィールを示す図5が得られた。図5におけるシミュレーションは、維持量の1.5倍の初回計画の後、定常状態条件が24時間までに迅速に達成され、これにより、各患者についての遠隔測定モニターリング期間を減少させる一方、目標定常状態の10%以内に最大SB−207266血漿濃度を維持したままであることを示している。初回計画による遠隔測定モニターリング期間の低下の可能性は、医療費および患者にとっての便宜における利益と関連する入院治療からより早く患者を解放させることができる。
【0094】
これらの理由のために、好ましくは、SB 207266またはその医薬上許容される塩は、1日目に、1日維持量の約1.2〜約2.0倍(好ましくは、約1.25倍〜約1.75倍、例えば、約1.5倍)の初回量が投与され、次いで、翌日から1日維持量が投与される。
【0095】
したがって、本発明の全ての態様において、薬物、方法またはアンタゴニストは、1日維持量の約1.2倍〜約2.0倍の初回量での1日目のSB 207266またはその塩の投与、次いで、翌日からのSB 207266または塩の1日維持量での投与のためであるか、または、該投与を使用する。好ましくは、初回量は、1日維持量の約1.25倍〜約1.75倍であり、より好ましくは、1日維持量の約1.5倍である。好ましくは、1日維持量は、本発明の第五の態様および/または第6の態様において定義した1日経口または非経口投与量または投与計画を含む。
【0096】
加えて、本発明の第七の態様によると、1日維持量の約1.2倍〜約2.0倍の初回量での1日目のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその塩の投与、次いで、翌日からのSB 207266またはその塩の1日維持量での投与による哺乳動物(例えば、ヒト)における心房性不整脈(例えば、心房リモデリングおよび/または心房細動を含む)の予防または治療のための薬物の製造におけるSB 207266またはその医薬上許容される塩の使用が提供される。
【0097】
本発明の第七の態様は、また、心房性不整脈(例えば、心房リモデリングおよび/または心房細動を含む)の治療または予防を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)におけるかかる治療または予防の方法であって、かかる哺乳動物に有効量のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩を投与することを含み、1日目に1日維持量の約1.2倍〜約2.0倍の初回量のSB 207266またはその塩を投与し、翌日から1日維持量のSB 207266または塩を投与することを含む方法を提供する。
【0098】
本発明の第七の態様は、また、1日目の1日維持量の約1.2倍〜約2.0倍の初回量のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその塩の投与、次いで、翌日から1日維持量のSB 207266または塩の投与による哺乳動物(例えば、ヒト)における心房性不整脈(例えば、心房リモデリングおよび/または心房細動)の予防または治療において使用するためのSB 207266またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0099】
好ましくは、初回量は、1日維持量の約1.25倍〜約1.75倍であり、より好ましくは、1日維持量の約1.5倍(例えば、1.5倍)である。
【0100】
好ましくは、1日維持量は、本発明の第五の態様および/または第6の態様において定義した1日経口または非経口投与量または投与計画を含む。
【0101】
初回量が1日維持量の1.5倍である場合、および、哺乳動物がヒトである場合、初回量は、好ましくは、30mg、75mgまたは120mgであり、1日維持量は、各々、20mg、50mgまたは80mgである。20mg、50mgまたは80mgの用量/投与量は、本発明の第五の態様および/または第六の態様に従うものであってよく、例えば、ヒト1日経口または非経口用量/投与量であり得る。これらの用量の例およびそれらを使用することができる方法については、下記実施例3におけるプロトコールを参照のこと。
【0102】
好ましくは、副作用の危険を最小限にするために、SB 207266またはその塩の初回量は、哺乳動物において<1.6〜1.7mg/kg(遊離塩基として測定)である(ヒトにおいては<120mgである)。
【0103】
本発明の全ての態様において、1日維持量は、患者において臨床上望ましい期間、例えば、1日〜数年間まで(例えば、哺乳動物の全余命の間);例えば、約(2または3または5日間、1または2週間、または1ヶ月間)以上、および/または、例えば、約(5年間、1年間、6ヶ月間、1ヶ月間、1週間、または3または5日間)まで投与することができる。約3〜約5日間、または約1週間〜約1年間の1日維持量の投与が典型的である。
【0104】
好ましくは、初回量は、哺乳動物において不整脈性(例えば、心房細動性)エピソードの間じゅう投与され、該哺乳動物が初回量が効果を現すのに十分な期間の後に正常洞調律にない場合には、維持量の投与前に、該哺乳動物をカルジオバージョン処置して正常洞調律に戻す。したがって、好ましくは、本発明の使用、方法、化合物またはアンタゴニストは、哺乳動物における不整脈性(例えば、心房細動性)エピソードの間じゅうの初回量の投与のためであるか、または該投与を使用し、哺乳動物が初回量が効果を現すのに十分に期間の後に正常洞調律にない場合には哺乳動物をカルジオバージョン処置して正常洞調律に戻した後に維持量を投与するためであるか、または該投与を使用する。以下にさらに詳細に記載する。
【0105】
任意のカルジオバージョンを包含する好ましい投与方法
本発明の第八の態様は、不整脈性(例えば、心房細動性)エピソードを経験している哺乳動物の治療方法であって、
(a) 本発明の第五の態様および/または第六の態様による投与量もしくは投与計画および/または本発明の第七の態様において定義した初回量のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩を投与すること、
(b) 工程(a)における用量、投与量または投与計画が少なくとも部分的に効果を現すのに十分な期間待つこと、
(c) 任意に、哺乳動物が正常洞調律に戻ったか否かを測定すること、
(d) 工程(b)の期間の後に哺乳動物が正常洞調律にない場合には哺乳動物をカルジオバージョン処置して正常洞調律に戻すこと、
(e) 任意に、必要に応じて、さらなる用量のSB 207266またはその塩を投与すること
を含む方法を提供する。
【0106】
好ましくは、工程(a)および/または(e)において、SB 207266またはその塩の経口投与を用いる。
【0107】
好ましくは、工程(b)における期間は、約0.25〜約8時間であり、より好ましくは、約0.5〜約4時間、より好ましくは、約1〜約4時間、さらに好ましくは、約1〜約3時間であり、例えば、約2時間である。これは、工程(a)における経口投与について特に好ましい。最大血漿濃度(Cmax)は、SB 207266の経口投与の約2時間後であることが見出された。
【0108】
工程(d)において、カルジオバージョンは、薬理学的および/またはDCカルジオバージョンを含むことができ;好ましくは、工程(d)において、DCカルジオバージョンを使用する。
【0109】
好ましくは、工程(a)は、本発明の第七の態様に従って初回量のSB 207266またはその塩を投与することを含み、工程(e)は、所望により、必要に応じて、本発明の第七の態様に従って翌日からの1日維持量のSB 207266またはその塩を投与することを含む。
【0110】
好ましくは、工程(e)は、所望により、必要に応じて、本発明の第五の態様および/または第六の態様に従って投与量または投与計画のSB 207266またはその塩を投与することを含む。
【0111】
所望により、必要に応じて、工程(e)において、期間を超えてSB 207266またはその塩を複数回投与することができる。
【0112】
好ましくは、本発明の第八の態様による方法は、本発明の第八の態様による治療の方法が効果を現す期間の前、該期間の間じゅう、および/または該期間の後に哺乳動物への(例えば、ワルファリンの投与を含む)抗凝血療法の投与を含む。
【0113】
本発明の全ての態様において、哺乳動物は、好ましくは、5−HT4アンタゴニスト(例えば、SB 207266またはその塩)が投与される期間のある程度の間(例えば、ほとんど)または全ての間、(例えば、ワルファリン投与を含む)抗凝血療法を受ける。したがって、本発明の全ての態様において、使用/方法/アンタゴニスト/化合物は、好ましくは、哺乳動物へのアンタゴニストおよび(例えば、ワルファリンの投与を含む)抗凝血療法の共投与のためのものである。
【0114】
本明細書にて引用した特許および特許出願を包含するがこれらに限定されない全ての刊行物は、個々の刊行物が十分に開示されているかの如く具体的かつ個別的に出典明示により本明細書の一部とすることが明示されているかのように出典明示により本明細書の一部とする。
【0115】
ここで、本発明は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定しようとするものではない以下の実施例により記載される。実施例のいくつかは、以下の図により例示される:
【0116】
「心房細動/心房リモデリング/心房ペーシングにおける5−HT4アンタゴニスト;プロトコール − 心房刺激電極を付けた、麻酔したミニブタ」なる表題の図1は、実施例1および2による、ミニブタにおける5−HT誘発性心房細動および心房リモデリングの実験的発生および5−HT4アンタゴニスト(AB 207266)でのその処置において使用されるプロトコールの略図を示す。
【0117】
「心房細動/心房リモデリング/心房ペーシングにおける5−HT4アンタゴニスト;ビヒクル処置群(n=7)」なる表題の図2は、7匹のミニブタのビヒクル処置群における、急速心房ペーシングおよび5−HTにより誘発されるかまたは引き起こされる心房ERPおよび心房細動の発生率の変化を示す。
【0118】
「心房細動/心房リモデリング/心房ペーシングにおける5−HT4アンタゴニスト;SB−207266処置群(n=7)」なる表題の図3は、SB−207266で処置した7匹のミニブタの群における、急速心房ペーシングおよび5−HTにより誘発されるかまたは引き起こされる心房ERPおよび心房細動の発生率の変化を示す。
【0119】
図4Aは、図1を別の形式で示したものであり、実施例2に記載されるような、ミニブタにおける5−HT誘発性心房細動および心房リモデリングにおいて用いられるプロトコールの主な時点を示す略図である。
【0120】
図4Bは、図4Aのミニブタプロトコールを使用した場合の、3時間の急速心房ペーシングの不在下または存在下、かつ、SB 207266の不在下でのセロトニン(5−HT)のAERPに対する効果を示すグラフである。
【0121】
図5は、2つの計画(1日目120mgに次いで7日間1日1回80mg対8日間1日1回80mg)についてのシミュレートされたSB−207266血漿濃度対時間プロフィールを示す。
【実施例】
【0122】
SB 207266 − N−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド − は、概論において記載した合成方法、すなわち、WO 93/18036;WO 98/07728、WO 98/11067;WO 00/03983;および WO 00/03984 のうちの1つまたはそれ以上に記載した合成方法を使用して製造する。
【0123】
実施例1 − SB−207266を用いた実験的心房細動/心房リモデリング試験結果
SB−207266(0.3および1.0mg/kg、静脈内)の抗不整脈効果を、麻酔したユカタン(Yucatan)ミニブタにおける5−HT誘発性心房性不整脈のモデルにおいてAFの誘発能について評価した。図1に示すように、AF誘発の前に、動物を3時間の急速心房ペーシング(サイクル長200ミリ秒)および同時の心房刺激部位での5−HT(4mg/時)の局所適用により感作させた。プログラムされた刺激およびバースト電気的ペーシングの間じゅうの心房有効不応期(AERP)およびAF誘発能を測定した。
【0124】
ビヒクル処置群および薬物処置群の両方の群において、該ビヒクルまたは薬物の適用前、急速心房ペーシングおよび5−HTの適用によりAERPが111.6±2.6から90.9±2.1ミリ秒に低下した − 図1における黒い菱形(◆)および図2における左側の棒グラフを参照のこと。心房ペーシング無しで5−HTを添加した場合にはAERPの小さい減少が見られた − 図1における白い菱形(◇)を参照のこと。図2および図3における右側の棒グラフにおいて示されるように、ペーシングの10連続バースト(20ミリ秒サイクル長で2秒バースト)により引き起こされるプレドラッグAF誘発能(AFの発生率%)は、安定性があり、かつ、再現性がある(76±8、69±7、73±4%、ビヒクル群におけるn=7、図2)。
【0125】
図3において示されるように、心房ペーシングおよび5−HTの適用の後のSB−207266の適用は、0.3および1.0mg/kgで、各々、90.0±2.7から102.3±2.7および110.0±3.6ミリ秒へのAERPの用量依存性増加を引き起こした(ビヒクルに対してp<0.01)。同時に、AF誘発能は、0.3および1.0mg/kgで、各々、薬物の不在下での64±6%から46±11および30±9%へ低下した(p<0.01)。
【0126】
これらの結果は、SB−207266が心房不応性の選択的延長(AERPの延長)に関連する急速心房ペーシングにより引き起こされる心房リモデリング(またはAF)の予防または治療において効果的な特性を有することを示唆している。
【0127】
実施例2 − SB−207266を用いた実験的心房細動/心房リモデリング試験結果のより詳細な記載
以下は、上記実施例1において記載した実験手法、結果、検討および結論のより詳細な記載である。図1〜3を再度引用し、さらに、図4Aおよび4Bを引用する。
【0128】
実施例2 −材料および試験系
材料。以下の技術的装置を使用してこの実験を行った:
・麻酔剤気化器:英国、ハーロウ、メディシールド2番のボイル・インターナショナル(Boyle International)。
・人工呼吸ポンプ:Model 613、米国、マサチューセッツ州、サウス・ナティックのハーバード(Harvard)。
・加熱パッド水ポンプ:Model TP−420、米国、ニューヨーク州のゲイマー・インダストリーズ(Gaymar Industries)。
・血液ガス分析装置:ABL 500、デンマーク国、コペンハーゲン・エヌ・ブイのラジオメーター(Radiometer)。
・圧力変換器:Model P23 ID、米国、オハイオ州、クリーヴランドのゴールド・エレクトロニクス(Gould Electronics)。
・薬物注入:ドイツ国のベー・ブラウン・メルスンゲン・アクチエン・ゲゼルシャフト(B Braun Melsungen AG)。
・電気生理学的刺激:S8800刺激装置およびSIU−5刺激単離単位、米国、マサチューセッツ州クィンシーのグラス・インストゥルメント・カンパニー(Grass Instrument Co.)。
・チャート紙レコーダー:TA−5000ポリレコーダー、ゴールド・エレクトロニクス。
・デジタルテープレコーダー:DTR 1800 Biologic、Claix、仏国。
【0129】
動物。チャールズ・リバー(Charles River)(仏国、サン−オービン・レ・エルボー)から雄性ユカタンミニブタ(体重12〜17kg)を入手し、実験の前に2週間の順化期間にわたって静止状態を維持した。
【0130】
動物の外科的調製。ミニブタ(仏国、チャヘルズ・リバー)を断食させ、前投薬(ジアゼパム2mg/kg+ケタミン15mg/kg、筋肉内)した後、25%O2および75%N2Oの混合気体中にてイソフルラン吸入(導入のために5%、次いで、技術的な調製のために0.5〜1.5%)により麻酔を導入した。ペントバルビタールナトリウムの静脈内注入(12mg/kg/時)を用いて長期麻酔を維持した。動脈血液ガスおよびpHを正常範囲内に維持する(ABL 500分析装置)ために、左開胸術の間じゅう人工呼吸器(Harvard pump 613)を用いて人工呼吸を施した。動脈圧を測定するため(P23 ID変換器)および薬物投与のために、各々、大腿動脈および大腿静脈中に流体充填カテーテルを入れた。標準的なECGパラメーターのモニターリングのために心電図の誘導II、IIIおよび胸部誘導を設置した。次なる刺激(A8800刺激装置およびSIU−5ユニット)のため、および心房心電図の測定のために2組の電極を左心房壁に突き刺した。
【0131】
実施例2 − 実験手順
心房組織の感作。急速心房ペーシング(3時間にわたって200ミリ秒サイクル長)により左心房付属器を感作させて、組織の初期電気的リモデリングを生じさせた[A. Goette et al., 1996, Circulation, 94, 2968-2974]。次いで、刺激用電極の近くに設置したセルロースパッチを使用して5−HT(セロトニン)の溶液(4mg/時、心房ペーシングの最後の30分前に開始する)を局所的に適用し、実験の最後までこの5−HT適用を維持した。セルロースパッチは、5−HTを組織と接触させ続ける。この感作期間の後、5−HTの定常的な局所適用の下にて、基底心房不応性およびAFの誘発能を測定した(図1における網目領域、図2および図3における網目を付した「プレドラッグ」棒グラフ、および図4Aにおける−90分から0分までの陰影を付けた枠を参照のこと)。
【0132】
電気生理学的実験。従前に開示されている慣用的な単一外刺激技術[A. Bril, B. Gout et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 276, 637-646]を使用して心房有効不応期(AERP)を測定した。すなわち、洞調律よりも20%短い基本サイクルでの8−刺激系列に次いで、単一の早期外刺激(4ミリ秒、閾値電流の1.5倍)を、心房応答が得られなくなるまで、心房ペーシングから漸次短くなる連結間隔で導入した。AERPは、組織における広汎性応答を誘発しない最長連結間隔を表す。
【0133】
AERPの決定後、心房細動(AF)攻撃誘発を開始した。受攻窓内で導入された2秒バーストの刺激による心房ペーシング(基本サイクル長20ミリ秒サイクル長、2ミリ秒間、拡張期閾値の2倍)によりAFを誘発した(AERP + 10ミリ秒)。AFは、心房心電図にて測定された少なくとも1秒の不規則な電気的活性であると定義された。
【0134】
実験設計および投薬。動物の再現性のある基底応答(3連続AF攻撃誘発)の評価の後、ミニブタをランダムに割り当てて、AERPおよ次なるAF攻撃誘発の測定の15分前に10分間にわたって、無菌蒸留水(ビヒクル群、n=7)、または漸増用量のSB−207266(0.3および1.0mg/kg、n=7)を静脈内投与した。SB−207266を無菌蒸留水に溶解し、毎日、適当な薬物溶液を調製した。ビヒクルでの処置は、薬物溶液のために使用したと同様の量の蒸留水(10ml)に相当した。各投与量のSB−207266を45分間隔で投与して、前のバーストペーシング攻撃誘発から動物を回復させた。該プロトコールの主な時点を示している模式的略図を図1および図4Aに示す。
【0135】
SB−207266の血漿濃度の評価。各AF攻撃誘発のために、薬物のボーラス投与の最後の5分後にEDTA(6%)上に血液試料を集め(時点15分、図4Aにおけるアステリスクを参照のこと)、遠心分離(1500×g、4℃で10分)にかけた。次なる分析のために血漿試料を−80℃で貯蔵した。ビヒクル群の血漿試料は集めなかった。SB−207266の血漿濃度の測定は、該ブタにおける5ng/mlのこのアッセイのためのLLQを用いてLC/MS/MSにより行った。
【0136】
実施例2 − データ取り扱いおよび分析
測定および計算。チャート紙ポリレコーダー(TA−5000)にて全てのパラメーターをモニターし、当該プロトコールの全体にわたってデジタルレコーディングを行った(DTR 1800)。測定されると、ECGから心拍数が算出され、脈圧から平均動脈血圧が算出された。バゼット(Bazett)の式(QTc=QT(ミリ秒)/RR(秒)1/2)に従って補正QT時間を決定した。AF誘発能を10連続バーストにより得られた応答のパーセンテージで表し、10バースト刺激のシーケンスの間に記録されたAFエピソードの平均期間を秒で表した。
【0137】
統計学的分析。値は、平均±SEMで表す。分散の分析(ANOVA)、次いで、多重対比較のためのNewman-Keuls検定を使用して比較を行った。薬物効果は、反復測定のためにANOVAを使用して測定した。バースト刺激に応答するAFの誘発能を、Kruskal-Wallis順位和検定を用いて分析した。全ての統計は、Statistica 5.1 release Package(米国オクラホマ州タルサのスタットソフト,インコーポレイテッド(StatSoft, Inc.))を使用して行った。
【0138】
実施例2 − 結果
ミニブタにおける5−HT誘発性心房細動。このモデルにおいて、バースト刺激に応答してAFが発生するのに好都合であるのに十分な心房組織における電気的リモデリングを生じさせるために、5−HTの局所適用前に3時間急速心房ペーシングを適用することが必要であった。この目的のために、AERPの変化に対する、急速心房ペーシング単独、5−HT単独、およびペーシングと5−HTとの併用を包含する様々な干渉の効果を研究した。急速心房ペーシング(200ミリ秒基本サイクル長)の3時間後、AERPは、110.7±4.6ミリ秒から93.6±3.6ミリ秒へ有意に減少した(n=7;p<0.01)。局所適用として3時間単独で投与した5−HTは、AERPを有意に変化させなかった(対照における110.2±1.9ミリ秒に対して104.0±6.5ミリ秒、n=6)。急速心房ペーシング後の5−HTの適用は、(ペーシング単独についての93.6±3.6ミリ秒と比較して)91.8±3.3ミリ秒であり、AERPの有意なさらなる減少を引き起こさなかった。図1および図4Bにおけるグラフならびに図2おける左側の棒グラフを参照のこと。
【0139】
図2における右側の棒グラフにて示すように、急速右心房ペーシングおよび5−HTの同時適用に付したブタにおいて、ビヒクル処置群にて行った連続AF攻撃誘発は、安定かつ再現性のあるAF誘発能を示した(ペーシングの10回バーストからの正の応答71±5%、5回攻撃誘発に対して69〜74%の範囲)。バーストペーシングに応答して測定されたAFエピソードの平均期間は、2.5±0.5秒(1.2〜6.7秒の範囲)であり、下記表1に示すとおり、連続AF攻撃誘発の間安定であった。
【0140】
SB−207266の5−HT誘発性AFに対する効果。感作されたブタにおける漸増用量のSB−207266(0.3および1.0mg/kg)の静脈内投与は、0.3mg/kgおよび1.0mg/kgで、各々、プレドラッグ値の90±3ミリ秒から102±3ミリ秒および110±4ミリ秒へAERPの用量依存性増加を誘発した(ビヒクルに対してp<0.01)。急速心房ペーシングおよび5−HT適用により引き起こされるAERPの減少は、1.0mg/kgのSB−207266の投与後に完全に回復された(図3の左側棒グラフを参照のこと)。同時に、処置前の64±6%から0.3mg/kgでの46±11%(ビヒクルに対してp=0.139)および1.0mg/kgでの30±9%(p<0.01)へのAF誘発能の用量に関連する減少が観察された(図3の右側棒グラフを参照のこと)。AFエピソードの平均期間は、薬物処置前の1.9±0.4秒から0.3mg/kgのSB−207266の投与後の1.1±0.4秒へ、わずかであるが、有意に減少させた(ビヒクルに対してp<0.05)。下記表1に示すように、より高い用量ではAFの平均期間のさらなる減少は観察されなかった。
【0141】
SB−207266の血漿濃度。SB−207266の各ボーラス投与の最後の5分後に回収した血漿試料中にてSB−207266の循環濃度を測定した。0.3mg/kgのSB−207266を用いて観察されたSB−207266の血漿レベルは、137.7±15.2ng/ml(n=6)であり、1.0mg/kg(n=5)では562.3±40.1ng/mlに達した。
【0142】
【表2】

【0143】
実施例2 − 考察
本実験の結果は、5−HTが急速心房ペーシングと比較してAERPに対して最小効果を示すことを示している。ヤギにおいて、急速心房ペーシング開始の時点でAERPが6時間後に減少したこと(生理学的速度適用)、およびこの減少が経時的にさらに観察されたことが示されている[M.C.E.F. Wijffels et al., Circulation, 1997, 96, 3710-3720]。本発明者らの結果は、ミニブタにおける3時間の急速心房ペーシングは、電気的リモデリングを特徴付けるAERPの安定な減少を得るのに十分であるということを示している。加えて、本発明者らの結果は、5−HTの、単独で、または急速心房ペーシングの存在下での適用がAERPをほとんど変えなかったということを示している。これは、5−HTがAFに至らしめる電気生理学的メカニズムに直接関与していないかもしれないが、AFにおける促進役割を果たすかもしれないということを示唆している。
【0144】
5−HTはAERPおよびAF発生に対する最小限の効果を誘発したが、5−HT4受容体アンタゴニストであるSB−207266の静脈内投与は、用量に依存して、AERP減少を予防/阻害(または逆転)し、かつ、AF誘発能から保護する。これらの結果は薬物の血漿濃度に関与することが示される。これらの結果は、5−HT4受容体の、例えば、SB−207266を投与することによる阻害(アンタゴニズム)が心房の抗細動効果に至らしめると思われるということを示唆している。
【0145】
実施例2 − 結論
SB−207266は、急速心房ペーシングおよび5−HTの局所適用を合わせたことにより引き起こされるAERPの減少を有意に逆転し、AFエピソードの発生率を有意に減少させることが示された。これらの結果は、SB−207266および5HT4受容体アンタゴニストが一般に、5−HTおよび心房ペーシングの存在下にて観察された心房電気的リモデリングの逆転を特徴付けている心房ERPの回復(増加)に関連している心房細動の減少/治療に効果的であるかもしれないということを示唆している。
【0146】
実施例2(および実施例1)に記載したSB−207266についての結果は、本明細書に記載した化合物のいずれかのような5−HT4受容体アンタゴニストの投与/使用による心房リモデリングおよび/または心房細動のような心房不整脈の新規の治療または予防法を例示していると考えられる。
【0147】
実施例3 − SB 207266の経口投与を使用するヒトにおける心房細動および/または心房リモデリングの治療または予防のためのプロトコール
ここで、SB 207266またはその塩を使用する心房リモデリングおよび/または心房細動の治療または予防のための現行の好ましいプロトコールを詳細に記載する。
【0148】
このプロトコールは、症候性持続性心房細動(AF)患者へのSB 207266または塩(以下、「SB 207266」と記す)の投与を記載している。目的は、これらの持続性AF患者における心房細動の症候性再発の阻害である。カルジオバージョン(例えば、CDカルジオバージョン)を必要とする、≧48時間かつ<6ヶ月間の期間の症候性持続性AF患者が適当である。持続性AFの症状としては、例えば、心悸亢進などが挙げられる。患者は、好ましくは、以下のいずれかである:
・患者は、治療の開始前の≧3週間、治療的抗凝血処置(例えば、ワルファリン)を受けるか、または
・治療的抗凝血処置の不在下にて≧3週間、患者は、凝血塊に対してネガティブである経食道的心エコー図法(TEE)を受け、aPTTが安定となり、かつ、治療範囲内になるまで、静脈内ヘパリンを受けた。
【0149】
患者は、好ましくは、かかる治療的抗凝血処置後、または、静脈内ヘパリンに加えてTEEの後、SB 207266を受ける。
【0150】
SB 207266(例えば、遊離塩基としてであるが、より好ましくは、塩酸塩SB 207266−A)は、一般的に、20mg、50mgまたは80mg uid(遊離塩基として測定)の1日経口投与量で投与される。しかしながら、SB 207266の投与の1日目には、一般的に、1日維持治療のための割り当てられた投与量の1.5倍(1.5×)の単一経口初回量で投与される。したがって、好ましくは、30mg、75mgまたは120mgの単一経口初回量が1日目に投与され、次いで、翌日から、各々、20mg、50mgまたは80mgの1日量が投与される。
【0151】
初日1.5×初回量のSB 207266の投与の約2時間後、依然として心房細動のままである(および/または、薬理学的なカルジオバージョン処置されていない)患者は、好ましくは、直流(DC)カルジオバージョンを受ける。以下の一相または二相カルジオバージョンアルゴリズのいずれかに従うことができる。
【0152】
【表3】

【0153】
上記シーケンスの一を使用して3回目のショックの後に患者が正常洞調律(NSR)に戻らない場合、医者は、自分の判断で、様々なエネルギーでさらなる試みを続けることができる。成功したカルジオバージョンは、≧1時間のNSRの維持であると定義される。
【0154】
NSRへの成功したDCカルジオバージョンに次いで、SB 207266の患者への投与は、1日1回を、6ヶ月間またはそれよりも短期間もしくは長期間続けることができる。自然に正常洞調律(NSR)に戻るこれらの患者は、SB 207266を1日1回、(例えば)6ヶ月間受けることもできる。この1日処置の間じゅうAFの再発を経験する患者は、DCカルジオバージョン処置されて洞調律に戻ることができ、SB 207266を受け続けることができる。
【0155】
患者は、好ましくは、SB 207266を投与する期間じゅう抗凝血療法(例えば、ワルファリン)を続けるべきである。
【0156】
したがって、最も好ましいプロトコールは、以下のとおりである:
【表4】

【0157】
AFの「症候性再発」は、心悸亢進のエピソードまたは患者に典型的な他の症状を含むかまたは意味する。これは、さらに、心房細動の証拠を示しているECG(例えば、12−リードECG)記録、または事象レコーダーに記録されており、医者により吟味されてもよい調律ストリップのいずれかにより確立され得る。
【0158】
実施例4、5、6、7および8 − SB 207266医薬組成物
【0159】
実施例4
ヒト経口投与のための、SB 207266に関する好ましい経口組成物は以下のとおりである:
【表5】

【0160】
実施例5
ヒト経口投与のための、SB 207266に関するさらに好ましい経口組成物は以下のとおりである:
SB−207266 5.0mg
微結晶性セルロース 50.0mg
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース) 12.5mg
デンプングリコール酸ナトリウム 12.5mg
リン酸二カルシウム 167.5mg
ステアリン酸マグネシウム 2.5mg

錠剤の重量 250mg
この組成物における投与量は、容易に20mgに増加させることができる。この組成物は、造粒過程の結果である。
【0161】
実施例6
実施例5の錠剤は、SB 207266の投与量を5mgから20、60または80mg(遊離塩基として測定した)まで増加させることにより、かつ、それに応じて、250mg錠剤重量を一定に維持したままリン酸二カルシウムの量を減少させることにより変えることができる。
【0162】
実施例7 − 10、25、および40mg強度(純粋な遊離塩基として測定した)を有するSB−207266−A錠剤
10、25または40mg(遊離塩基として測定した)の量のSB 207266の塩酸塩(SB 207266−A)を含有する錠剤を以下の表における組成に従って調製した。これらの錠剤は、実施例3に記載した治療プロトコールにおいて必要とされる、各々、20、50および80mgの合計1日量のために1日に2個の錠剤を使用して、該プロトコールにおいて使用されるように設計した。
【0163】
【表6】

【0164】
実施例7のSB−207266−A錠剤を、プラスチック製の子供に安全なインダクションシールキャップを有する高密度ポリエチレン(HDPE)ビンに詰める。
【0165】
当該処方物は、不溶性の主賦形剤である第二リン酸カルシウム・二水和物(またはリン酸二カルシウム)を使用する湿式造粒プロセスを用いた。第二リン酸カルシウム・二水和物は、添加して造粒溶媒を分散させ、全圧縮性を補助する微結晶性セルロースと一緒に主希釈剤である。 添加される結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、造粒は、慣用的なミキサー造粒器にて行われる。顆粒混合物を乾燥させ、篩にかけ、次いで、崩壊剤としてのデンプングリコール酸ナトリウムおよび滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと混合して、圧縮混合物を形成する。適当なロータリー錠剤プレス器にて錠剤を生成し、その形状が楕円形または円形のいずれかであり得る。
【0166】
実施例7 − 製造工程、工程間制御、および組立工程の詳細
SB−207266−A、微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム・二水和物、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを一緒にブレンドする。高剪断ミキサー−造粒器中にて混合しながら、該ブレンド粉末に精製水を添加する。該顆粒を流動層乾燥器中にて乾燥させ、次いで、ミキサーに移し、それらをデンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムとブレンドする。滑沢剤処理した混合物を、ロータリー錠剤プレス器を用いて錠剤コアに圧縮する。該錠剤コアを、Opadry White YS−1−7003の水性分散液を用いてフィルムコーティングする。
【0167】
手順:
1.0 造粒
1.1 適当な高剪断ミキサー−造粒器中にてSB−207266、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび第二リン酸カルシウム・二水和物をブレンドする。
1.2 精製水を添加して造粒を行う。
1.3 流動層乾燥器中にて顆粒を乾燥させる。
1.4 乾燥顆粒を、適当なミルを用いてステンレス鋼スクリーンに通す。
1.5 顆粒の収量を決定する。
2.0 圧縮混合物の製造
2.1 乾燥顆粒と所望量のデンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムとをブレンドする。
2.2 圧縮混合物の収量を測定する。
3.0 錠剤圧縮
3.1 圧縮混合物を適当な錠剤マシーンに移す。
3.2 錠剤を圧縮する。
3.3 圧縮錠剤の収量を測定する。
4.0 フィルムコーティング
4.1 錠剤コアを適当なコーティングマシーンに移す。
4.2 コアを回転させ、Opadryの水性分散液にスプレーする。
4.3 放出試験試料をバッチからランダムに取り、適当に標識する。
5.0 ビン詰め
5.1 HDPEビンに適当な充填カウントまで充填し、適当に自動化された装置を用いて子供に安全なキャップをインダクションシールして装着する。
【0168】
実施例8
実施例7の変更において、20mg、50mgおよび80mgのSB−207266(塩酸塩としてであるが、所定の投与量は遊離塩基として測定される)を含有する処方物を使用して、実施例7における総錠剤重量256.25mgおよび他の賦形剤の使用量を維持しているが、SB 207266の量の変化に応じて第二リン酸カルシウム・二水和物の使用量を調節しながら錠剤を調製することができる。これらの錠剤は円形または楕円形であり得る。
【0169】
SB 207266の5−HT4受容体アンタゴニスト活性および活性についての試験
1) モルモット結腸
この動物モデルは、Wardle KA and Sanger GJ (1993), Br J Pharmacol; 110 1593-1599 に記載されている。
【0170】
体重250〜400gの雄性モルモットを使用する。遠位結腸部位から長さ約3cmの縦走筋−筋層間神経叢標本を得る。これらを、O2中5%CO2を通気し、37℃に維持したKrebs溶液を含有する単離組織浴中にて0.5g負荷の下に吊るす。全て実験において、Krebs溶液は、また、5−HT1受容体、5−HT2受容体および5−HT3受容体での効果を遮断するように、10-7Mのメチオテピンおよび10-6Mのグラニセトロンを含有する。
【0171】
30秒の接触時間および15分投与サイクルを用いて5−HTについての単純濃度−応答曲線を作成した後、5−HTの濃度を、最大約40〜70%の筋肉収縮を得るように選択する(約10-9M)。次いで、この濃度の5−HTと一緒に該組織を15分ごとに投与する。いくつかの実験においては、別法として、この組織をほぼ同等の効果を有する濃度のニコチン受容体刺激物質であるジメチルフェニルピペラジニウム(DMPP)と一緒に投与した。5−HT(適宜、DMMP)に対する一貫性のある応答を得た後、次いで、該浴溶液に漸増濃度の推定5−HT4受容体アンタゴニストを添加する。次いで、この化合物の効果は、5−HTまたはDMPPにより誘起される収縮の減少パーセンテージとして測定される。このデータから、50%まで収縮を減少させるアンタゴニストの−log濃度として定義されるpIC50値を決定する。5−HTに対する応答を低下させるがDMPPに対する応答を低下させない化合物は、5−HT4受容体アンタゴニストとして作用すると考えられる。
【0172】
SB 207266は、特に良好な活性を有する。
【0173】
5−HT1、5−HT2および5−HT3受容体アンタゴニストの存在下、5−HTは、9.2±0.06(n=14)のpEC50により特徴付けられるコリン作動性により媒介される単相性収縮を生じる。漸増濃度のSB−207266−A(SB207266のHCl塩)(10-10〜10-8M、n=6)は、最大応答に対する影響はなく5−HT曲線の平行な右側シフトを生じる。見かけのpA2は、一単位とは有意には異ならない勾配を有する10.4±0.1であった。高濃度(3×10-8Mおよびそれ以上)では、5−HTに対する最大応答は、濃度依存的に減少した。*DMPP誘起収縮(アセチルコリン放出、したがって、ムスカリン受容体媒介収縮を誘起するニコチン受容体アゴニスト)は、高濃度(10-5M)の化合物によってさえ影響を受けなかったので、SB−207266−Aのこの効果は、局所麻酔作用またはコリン作動性受容体での直接的アンタゴニズムによるものではなかった。
【0174】
SB−207266−Aを、また、5−HT4受容体部分アゴニストBIMU 1により誘起された収縮に対して試験した。これらの実験において、SB−207266−Aは、濃度−応答曲線において先の右側シフトを生じることなくBIMU 1に対する最大応答を低下させた。
【0175】
SB−207266−Aのアンタゴニスト効果は洗い流しにより逆転できるので、SB−207266−Aに関して観察された見かけの克服不可能な活性は、5−HT4受容体の不可逆性遮断によるものではなかった。(最大5−HT誘起性収縮を低下させる)最も高い濃度では、5−HTに対する応答は、90分以内に回復した。かかるプロフィールは、可逆性アンタゴニストのものと一致する。
【0176】
2) 子ブタ心房
子ブタ心房自発拍動スクリーン(Naunyn-Schmiedeberg's Arch. Pharmacol 342, 619-622)にて化合物を試験する。
SB−207266−A(10-7M)は、5−HT単独での対照曲線と比較して最大応答の明らかな低下を伴って右に曲線をシフトさせた。SB−207266−A(HCl塩としてのSB 207266)の推定pKb(−log10b)は10.1(n=2)であった。
【0177】
3) ラット食道
ラット食道食道粘膜筋板を Baxter et. al. Naunyn-Schmiedeberg's Arch. Pharmacol., 343, 439-446 (1991) に従って設置する。該粘膜筋板の内平滑筋管を単離し、酸素を送り込んだ(95%O2/5%CO2)37℃のタイロード液中にて記録する等尺性緊張のために載置する。全ての実験は、パルギリン前処理調製物(15分間100μM、次いで、洗い流し)中、および、コカイン(30μM)の存在下にて行われる。カルバコール(3μM)で食道組織を前収縮させた後に5−HTに対する弛緩応答が得られる。
【0178】
カルバコール収縮標本において、5−HTは、8.1±0.03(n=18)のpEC50の濃度依存性弛緩を生じる。5−HT4受容体が神経性にあるモルモット結腸モデルと対照的に、ここでは、受容体は平滑筋上にある。ラット食道標本において、SB−207266−Aは、克服不可能なアンタゴニストとして濃度依存的に作用し、5−HTにより誘起される最大応答を低下させた。SB−207266−Aは最大応答を抑制したので、信頼のおけるpA2推定を決定することができなかった。しかしながら、最も低い有効濃度のSB−207266−Aを用いて得られたデータは、≧10.0のpA2と一致する。5−HT4受容体アンタゴニストとしてのSB−207266−Aの高い選択性を考慮して(先のモルモット単離結腸データ、および次の放射性リガンド結合選択性分析を参照のこと)、見かけの克服不可能なアンタゴニズムは、化合物の受容体からの遅い解離によるものであると考えられる。これは、ラット食道における低い5−HT4受容体貯蔵および5−HT自体と比較して5−HT4受容体でのSB−207266−Aの高親和性のために生じる。
【0179】
4) 子ブタ海馬5−HT4受容体への結合
125I標識5−HT4−アンタゴニストSB−207710の結合の阻害からSB−207266−Aの子ブタ海馬5−HT4受容体に対する親和性を測定した[Brown AM, Young TJ, Patch TL, Cheung CW, Kaumann AJ, Gaster LM and King FD (1993), Br J Pharmacol; 110, 10P]。この放射性リガンドは、子ブタ海馬膜に対して高い親和性(KD=86±11pM、たんぱく質1mgあたりBmax=16±3fmol(n=4))を有するが、SB−207710のpKiは、5−HT1A、5−HT1Cおよび5−HT2受容体で6またはそれ以下である。加えて、5−HT3選択性リガンドグラニセトロンは、この標本において放射性リガンドの5−HT3受容体への無視できる結合しか示さない5以下のpKiをもって海馬における[125I]−SB−207710結合を阻害する。この系において、5−HTは、適度な親和性(pKi 6.6±0.1(n=9))をもって5−HT4受容体に結合する。SB−207266−Aは、他の組織における機能的応答のアンタゴニズムから測定されたpA2/pKB推定値よりもわずかに低い値である9.48±0.06(n=3)のpKiをもって125I標識SB−207710の結合を阻害した。
【0180】
5) インビトロにおけるSB−207266−A(HCl塩としてのSB 207266)の選択性
SB−207266−Aを種々の非5−HT4受容体結合アッセイにて評価した。結果を下記表に示す。ラット胃底についての機能的実験は、5−HT2B受容体に対する親和性が7.47であることを明らかにする。明らかに、試験された他の受容体に対する5−HT4受容体に対する選択性の数次数の大きさがある。
受容体結合実験 pKd
5−HT1A <5.00
5−HT1D <5.00
5−HT1E <5.00
5−HT2A 5.89
5−HT2C 5.57
5−HT3 5.94
アルファ1 <5.52
2 5.63
3 5.53
GABA >5.00
BDZ >5.00
1 5.40
アヘン剤カッパ (pKi)>6
アヘン剤ミュー (pKi)>6
アヘン剤デルタ (pKi)>6
【0181】
4) イヌ胃嚢における5−HT誘発性運動性
“Stimulation of canine motility by BRL 24924, a new gastric prokinetic agent”, Bermudez et al, J. Gastrointestinal Motility, 1990, 2(4), 281-286 に記載されているインビボ方法において阻害について化合物を試験する。
【0182】
あらかじめ調製したハイデンハイン胃嚢を有するイヌを一夜絶食させる。各イヌについて、予め、5−HTの用量変動実験を行って、再現性のあるコリン作動により媒介される緊張性および相動性の収縮性の増大を誘起する最小静脈内(iv)用量を確かめる(通常、5または10ug.kg-1)。各実験について、5−HTを30分おきに静脈内投与する。2つの一貫した応答の後、5−HTの3回目の注射の15分前に、アンタゴニストを静脈注射するか、または、ゼラチンカプセル剤にて経口投与する。
【0183】
静脈内および経口ともに、SB−207266−Aは、5−HTに対する収縮応答を用量依存性アンタゴナイズする[ID50 1.3(信頼限界(CL)0.1−14.0)ug.kg-1 静脈内、9.6(CL0.7−128)ug.kg-1 経口]。さらにまた、いずれもの用量でのSB−207266−Aの基礎運動性に対する効果はなかった。5−HT1、5−HT2および5−HT3受容体アンタゴニストについて一貫したまたは有意な効果はなかった。
【0184】
SB−207266−Aの作用期間を静脈内投与後に測定した。1および3ug.kg-1の低い用量で、効果は可変的であり、かつ、明らかに可逆的であるが、 10および100ug.kg-1では、アンタゴニズムは、実験期間よりも長く続いた(285分間)。
【0185】
5) 麻酔した子ブタにおけるアンタゴニズム
これらの実験において、5−HT4受容体により媒介される応答である5−HT誘起性頻拍に対するアンタゴニズムを評価する。全ての実験は、迷走神経を切断した2〜5日齢の子ブタにおいて行った。0.1、0.3または1.0ug.kg-1の投与量で静脈内投与されたSB−207266−A(HCl塩としてのSB 207266)は、用量依存的に5−HT誘起性頻拍をアンタゴナイズした(各々、n=2)。5−HTのこの5−HT4受容体媒介効果を実質的にアンタゴナイズする用量(0.3、1.0ug.kg-1静脈内)で、実験期間じゅうのアンタゴニズムからの回復は不完全である。
【0186】
抗不安薬活性についてのインビボ試験
ラットにおける社会的相互作用試験
ラット(雄性、スプレーグ・ドーリー種、チャールズ・リバー(Charles River)、250〜300g)を8匹ずつの群で、5日間、保持室に収容する。次いで、それらを実験日の前に4日間実験室に隣接する部屋に1匹ずつ収容する。実験日の午前10時に開始して15分おきに、組にしたラットにビヒクル、試験化合物またはベンゾジアゼピン抗不安薬であるクロルジアゼポキシドを経口投与する。30分後、それらを(初めて出会った)重量マッチドペアメートと一緒に別室の社会的相互作用ボックスに入れる。このボックスは54cm×37cm×26cmの白色のパースペックスで作られており、前面が透明なパースペックス製であり、蓋はない。床は、24個の正方形に分割されており、このボックスは、明るく照明されている(115ルックス)。活性な社会的相互作用行動(毛づくろい、嗅ぐ動作、乗り越えるかまたはもぐり込むこと、服従、噛みつき、マウンティングおよびボクシング)を、次の15分間、遠隔ビデオモニターリングにより機械的にスコア付けして合計相互作用スコアを得る。各ラットが横断した正方形の数もまたスコア付けし、合計する。各試験が終わった後、このボックスを注意深く拭く。
【0187】
SB−207266−A(SB 207266のHCl塩)(0.01、1、10mg.kg-1)の投与の1時間後に合計相互作用スコアの有意な増加が観察された。この効果の大きさは、正の対照であるクロルジアゼポキシド(CDP;5mg.kg-1経口)のものよりも多少小さいが、有意に小さくはない。SB−207266−Aの効果は、試験の間じゅう、歩行運動の変化を伴わず、したがって、抗不安薬と一致する。
【0188】
心房リモデリング/心房細動の予防および/または治療が5−HT4受容体のアンタゴニズムを介して生じることを証明する試験
当業者が、本発明のいくつかまたは全ての態様により提供される予防または治療が5−HT4受容体のアンタゴニズムを介して生じることを証明したい場合、(慣用的であるかまたは当業者によく知られている)以下の試験の一方または両方を任意に行うことができる:
【0189】
(1)心房中で発現される5−HT4受容体を自然にまたは人工的に有しない哺乳動物(例えば、イヌ)(例えば、心房中で発現される5−HT4受容体を自然に有しないイヌ)に5−HT−4 アンタゴニストを投与する。5−HT4アンタゴニストの投与により、試験動物において誘発される心房リモデリングが少なくとも部分的に逆転されない(および/または、AF発生が減少または阻害されない)場合、心房リモデリング(またはAF)の予防または治療は、5−HT4受容体のアンタゴニズムを介して行われる。
【0190】
(2)十分量の、シサプリドのような5−HT4受容体の存在下である以外は実施例1および/または2に示されるブタモデルを使用して5−HT4アンタゴニストを投与する。投与した5−HT−4 アンタゴニストが、例えば、AERPを増加させることにより、少なくとも部分的に、成功裏に心房リモデリングを逆転させない(および/または、例えば、AF発生を減少させない)場合、心房リモデリング(またはAF)の予防または治療は、5−HT4受容体のアンタゴニズムを介して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】実施例1および2による、ミニブタにおける5−HT誘発性心房細動および心房リモデリングの実験的発生および5−HT4アンタゴニスト(AB 207266)でのその処置において使用されるプロトコールの略図を示す。
【図2】7匹のミニブタのビヒクル処置群における、急速心房ペーシングおよび5−HTにより誘発されるかまたは引き起こされる心房ERPおよび心房細動の発生率の変化を示す。
【図3】SB−207266で処置した7匹のミニブタの群における、急速心房ペーシングおよび5−HTにより誘発されるかまたは引き起こされる心房ERPおよび心房細動の発生率の変化を示す。
【図4A】図1を別の形式で示したものであり、実施例2に記載されるような、ミニブタにおける5−HT誘発性心房細動および心房リモデリングにおいて用いられるプロトコールの主な時点を示す略図である。
【図4B】図4Aのミニブタプロトコールを使用した場合の、3時間の急速心房ペーシングの不在下または存在下、かつ、SB 207266の不在下でのセロトニン(5−HT)のAERPに対する効果を示すグラフである。
【図5】2つの計画(1日目120mgに次いで7日間1日1回80mg対8日間1日1回80mg)についてのシミュレートされたSB−207266血漿濃度対時間プロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mgから約120mg未満まで(遊離塩基として測定した)の量のN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される固体担体を含む、錠剤、トローチ剤またはロゼンジ剤であるか、または粉末またはペレットの形態でハードゼラチンカプセル中に入れられている、ヒト経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
SB 207266またはその塩が50mgから80mgまで(遊離塩基として測定)の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
SB 207266またはその塩が50mgまたは80mg(遊離塩基として測定)の量で存在する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
SB 207266またはその塩が80mg(遊離塩基として測定)の量で存在する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
SB 207266またはその塩が50mg(遊離塩基として測定)の量で存在する、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
錠剤である、請求項1、2、3、4または5記載の組成物。
【請求項7】
全体重1kgにつき約1.0から約1.5mgまで(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在するN−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される固体担体を含む、錠剤、トローチ剤またはロゼンジ剤であるか、または粉末またはペレットの形態でハードゼラチンカプセル中に入れられている、ヒト経口投与用医薬組成物。
【請求項8】
SB 207266またはその医薬上許容される塩が全体重1kgにつき1.0から1.5mgまで(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
SB 207266またはその医薬上許容される塩が全体重1kgにつき1.0から1.3mgまで(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
SB 207266またはその医薬上許容される塩が全体重1kgにつき約1.0mg(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項11】
SB 207266またはその医薬上許容される塩が全体重1kgにつき約1.5mg(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項12】
ヒトが約70〜75kgの体重である、請求項7、8、9、10または11記載の組成物。
【請求項13】
SB 207266またはその医薬上許容される塩が全体重1kgにつき1.0mg(遊離塩基として測定)の1日経口投与計画をヒトに投与するのに適した量で存在し、ヒトが約70〜75kgの体重である、請求項7記載の組成物。
【請求項14】
錠剤である、請求項7、8、9、10、11、12または13記載の組成物。
【請求項15】
N−[(1−nブチル−4−ピペリジニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−2H−[1,3]オキサジノ[3,2−a]インドール−10−カルボキサミド(SB 207266)またはその医薬上許容される塩がその塩酸塩である、請求項1〜14いずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
固体担体が25mg〜1gの量で存在する、請求項1〜15いずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
ヒトにおける心房細動の予防または治療において使用するための、請求項1〜16いずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
ヒトにおける電気的(電気生理学的)心房リモデリングの予防または治療において使用するための、請求項1〜16いずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
ヒトにおける電気的(電気生理学的)心房リモデリングの治療において使用するための、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
心房有効不応期(AERP)を増大させることによる、および/または少なくとも部分的にAERPの減少から保護するかもしくは該減少を逆転することによる、ヒトにおける電気的(電気生理学的)心房リモデリングの予防または治療において使用するための、請求項18または19記載の組成物。
【請求項21】
心房有効不応期(AERP)の減少および/または心房不応性の望ましくない修飾に関連する、心房性不整脈以外の、ヒトにおける心臓疾患または症状の予防または治療において使用するための、請求項1〜16いずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
心房有効不応期(AERP)の増大または心房不応性の有益な修飾が望ましい、心房性不整脈以外の心臓疾患もしくは症状を患っているか、またはそれに感受性があるヒトにおける、かかる増大および/または修飾のための、請求項1〜16いずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
心臓疾患または症状が心房疾患または症状である、請求項21または22記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−145869(P2007−145869A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62210(P2007−62210)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【分割の表示】特願2002−517100(P2002−517100)の分割
【原出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(594153247)ラボラトワール・グラクソスミスクライン・ソシエテ・パール・アクシオン・シンプリフィエ (2)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】