心房細動を処置する方法
本発明は、心房細動および/または心房粗動の処置または予防のための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法に関する。心室および心房の調律およびレートを調節するための方法もまた提供される。本発明はまた、このような併用投与に適した薬学的処方物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2009年12月21日に出願された米国仮特許出願第61/288,739号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、治療有効量またはそれ以下の量の、ラノラジンまたは薬学的に許容されるその塩およびドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩の共投与により、心房細動および/または心房粗動を処置および/または予防する方法に関する。本発明はまた、このような共投与に適した薬学的処方物にも関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
心房細動(AF)は、もっともまん延している不整脈であり、この発症率は年齢とともに増加する。80歳の年齢を過ぎたすべての人々の8%は、この種類の異常な心臓調律を経験し、AFは、心臓調律の障害のための入院の3分の1の割合を占めると見積もられている。米国単独でも、220万人を超える人々が、AFに罹患していると考えられる。非特許文献1。心房細動は、無症候性のことが多いが、動悸または胸痛の原因となり得る。延長した心房細動は、うっ血性心不全および/または卒中発作(stroke)の発症をもたらすことが多い。心不全は、心臓が低減した心臓効率を埋め合わせようと試みるために発症する一方、卒中発作は、血栓が心房内に形成し、血流へと運ばれ、脳内に留まる場合に生じ得る。肺塞栓もまたこのように発生し得る。
【0004】
AFを処置するための現行の方法として、電気的および/または化学的心臓除細動(cardioversion)およびレーザー除去が挙げられる。抗凝血剤、例えばワルファリン、ダビガトラン、およびヘパリンなどが、卒中発作を回避するために通常処方される。レート制御と調律制御(rate and rhythm control)との間の選択に関して、現在いくつかの議論が生じているが(非特許文献2を参照されたい)、レート制御は、βブロッカー、強心性配糖体、およびカルシウムチャネルブロッカーの使用により通常達成される。
【0005】
もっとも一般的な抗不整脈薬の1つは、アミオダロンであり、これは、一般的に、急性AFおよび/または慢性AFを含めた、急性不整脈と慢性不整脈との両方に対して投与される。残念なことに、アミオダロンは、毒性の高い薬物であり、広範囲な望ましくない副作用を有する。これらの影響の中でもっとも危険なものは、間質性肺疾患の発症である。甲状腺機能低下と甲状腺機能亢進との両方の甲状腺毒性が、眼および肝臓における影響として見られることが多い。さらに、多くの患者(8〜18%)が、許容できない副作用が原因で、1年後にアミオダロンの使用を中断している。
【0006】
ドロネダロン、すなわち、アミオダロンの非ヨウ素化誘導体は、心房細動および/または心房粗動(AFL)を有する患者の循環器系入院および死亡率を低減するが、臨床におけるその抗AF効力は、アミオダロンのものより劣る2、3。数回の大規模な治験後4〜8、発作性または持続性のAFまたはAFLを有する患者における循環器系入院の危険性を低減するために、米国食品医薬品局(FDA)は、2009年7月にドロネダロン(400mg BID)を認可した。臨床研究では、ドロネダロン400、600、または800mgの毎日2回(BID)の用量を、AF/AFLを有する患者で試験した。ドロネダロン400mg BIDは、再発性心房細動の危険性の有意な低減を伴うが、ドロネダロン600mg BIDおよび800mg BIDの用量は、効果的ではなく、乏しい耐容性を示した。したがって、ドロネダロンの抗不整脈の効力を増大させる方法が極めて望ましい。
【0007】
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせが、他の心臓の状態のうちで、心房不整脈の著しい抑制につながる強力な電気生理学的作用をもたらす相乗作用を有することがここに判明した。例えば、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、AV結節性伝導および心室頻拍性不整脈の低減に相乗作用を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fusterら、Circulation、2006年、114巻(7号):e257〜354頁
【非特許文献2】Royら、N Engl J Med、2008年、358巻:25号;2667〜2677頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、患者へのドロネダロンおよびラノラジンの共投与により、心室および/または心房レートおよび/または調律の制御が提供されるという驚くべきおよび予期しない発見に基づく。レートおよび調律を制御する能力は、患者の心房細動および/または心房粗動、ならびに全体に渡り記載されている様々な他の心臓の状態を処置および予防するために有用である。共投与は、ドロネダロンが治療有効用量で投与され、ラノラジンが治療有効用量で投与された場合に有用であることがさらに企図される。ドロネダロンおよびラノラジンのそれぞれの治療用量、例えば相乗的有効量よりも少ない量で投与された場合には、ドロネダロンおよびラノラジンの相乗的作用により、これらの一方または両方のいずれかが効果的であり得ることがさらに企図される。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、心房細動および/または心房粗動の処置および/または予防を必要とする患者における心房細動および/または心房粗動の処置および/または予防のための方法を対象とする。本方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の共投与を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0012】
別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0013】
別の態様では、本発明は、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされた、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされた、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。
【0014】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、トルサード・ド・ポワンツ心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツ心室頻拍を低減または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0019】
別の態様では、本発明は、電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0020】
別の態様では、本発明は、上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈の処置または予防を必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0021】
別の態様では、本発明は、入院および死亡の予防を必要とする患者における入院および死亡を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、患者は、心房細動および/または心房粗動を患っている。
【0022】
別の態様では、本発明は、卒中発作および心不全の予防を必要とする患者における卒中発作および心不全を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0023】
別の態様では、本発明は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物を対象とする。
【0024】
本発明の別の態様では、相乗的治療有効量のドロネダロンおよび相乗的治療有効量のラノラジンの共投与を含む、心房細動の処置の方法が提供される。2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位(combined dosage unit)で、別々にまたは一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0025】
本発明の別の態様では、ドロネダロンの望ましくない副作用を低減するための方法が提供される。本方法は、相乗的治療有効用量のドロネダロンおよび相乗的治療有効用量のラノラジンの共投与を含む。すでに述べたように、この2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位で、別々または一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常は、ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0026】
図全体に渡り使用される場合、「Ran5」という用語は、ラノラジン5μM(マイクロモル濃度)を指し、「Dron10」という用語は、ドロネダロン10μMを指す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、異なる心房および心室領域からの活動電位持続時間(APD)に対するラノラジンおよびドロネダロンの単独またはこれらの薬剤の組み合わせによる作用を示す図である。図示されているのは、500ms(ミリ秒またはmsec)の周期長(CL)で刺激した冠状動脈灌流した心房および心室試料における、代表的な活動電位およびAPD50およびAPD90に対する作用の総括データである。n=7〜8。CT=分界稜、PM=櫛状筋、M cell=M細胞領域、Epi=心外膜。Ran5=ラノラジン5μM、Dron10=ドロネダロン10μM。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。† Dron10に対してp<0.05、‡ウォッシュアウトに対してp<0.05。
【図2】図2は、ラノラジンおよびドロネダロンが、心房における有効不応期(ERP)の延長および再分極後の不応性(PRR、心房におけるERPとAPD70との間の差および心室におけるERPとAPD90との間の差;ERPは、心房ではAPD70〜75に相当し、心室ではAPD90に相当する)の発症を誘発することを示す図である。CL=500ms。心室データは、心外膜から得たものであり、心房データは内心膜性櫛状筋(PM)からの得たものであった。n=7〜8。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡ Dron10に対してp<0.05。#それぞれのERPに対してp<0.05。
【図3】図3は、ラノラジンおよびドロネダロンが、単独または組み合わせて、強力な心房選択的なレート依存性のVmax阻害を引き起こすことを示す図である。A:対照に対する%として、500msの周期長(CL)でペーシングさせた心房および心室の心臓試料のVmax(左パネル)。B:対照において500msのCLで記録されたVmax値に対する%としての、500から300msのCLへ加速した後の、心房および心室の活動電位のVmax。「心房」は、PMおよびCTデータを組み合わせたものを示す。「心室」は、心室のくさび状試料(wedge preparation)からのEpiおよびM細胞データを組み合わせたものを示す。n=7〜8。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡Dron10に対してp<0.05。#それぞれの心房の値に対してp<0.05。
【図4】図4は、急速活性化レート(rapid activation rate)でのドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによる、最大活動電位上向き速度(maximal action potential upstroke velocity)(Vmax)の心房選択的な相乗的低下を示す図である。図示されているのは、500から300msのCLへのペーシングレート(pacing rate)の加速中記録された活動電位(AP)のトレースおよび対応するVmax値である。ラノラジンのレート依存性の心房選択性の一因となる機序:急速活性化レート(心房における活動電位の後期段階3の延長が原因)での、心室ではなく心房における心臓拡張期間隔の消失が、薬物誘導性ブロックからのナトリウムチャネルの回復のレートを低下させ、これにより、それらの薬物がVmaxに対する心房選択的作用に寄与する。
【図5】図5は、冠状動脈灌流した心房および心室試料における伝導時間に対する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独または組み合わせによる作用を示す図である。冠状動脈灌流した心房および心室試料からのECG記録の「P波」および「QRS」群の持続時間を測定することによって、伝導時間を見積もった。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡ Dron10に対してp<0.05。n=6〜7。
【図6】図6は、興奮性(すなわち、興奮の拡張期閾値、DTE)を低下させる、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)の単独または組み合わせによる作用を示す図である。DTE測定値は、内心膜性の櫛状筋(心房)および心外膜(心室)から得た。*対照(C)に対してp<0.05;†ウォッシュアウトに対してp<0.05;‡対照、Ran5、ウォッシュアウト、およびDron 10に対してp<0.05。n=5〜9。
【図7】図7は、1:1活性化を可能にするもっとも短い周期長(CL)を延長させる、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)の単独または組み合わせによる心房選択的作用を示す図である。*それぞれの対照に対して<0.05;†ウォッシュアウトおよびDronに対してP<0.05。‡Ranに対してP<0.05。#それぞれの心房値に対してp<0.001。
【図8】図8は、ドロネダロン(10μM)とラノラジン(5μM)との組み合わせが、冠状動脈灌流した右心房において、持続性AFを終結させ、そして/またはその誘発を予防するのに効果的であることを示す図である。A:持続性のアセチルコリン(Ach)(0.5μM)媒介性AFは、上記薬物の組み合わせにより終結する。AFは、最初に粗動に変換され、次いで洞調律(sinus rhythm)に変換される。B:ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ACh(1μM)を用いた前処置後のAFの急激なペーシング誘発を、ナトリウムチャネル(Vmax低減を参照されたい)を抑制することによって防止する。周期長(CL)500から130msへのペーシングレートの加速は、1:1応答の不全につながる。
【図9】図9は、肺静脈(PV)スリーブ試料におけるレートの急激な変化後のVmaxに対するラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの相乗的作用を示す図である。A:5000から300msへの周期長(CL)の変化後の記録されたVmaxトレース。B:Vmax変化の複合データを示すグラフ。CL5000から300msへの変化またはレートは、対照の条件下でVmaxの13%の低減を誘発し、ラノラジン(5μM)もしくはドロネダロン(10μM)単独またはこれらの組み合わせ後では、それぞれ19、20および50%の低減を誘発する。*対照に対してp<0.05。#ラノラジンまたはドロネダロン単独に対してp<0.05。
【図10】図10は、PVスリーブ試料における、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)およびこれらの組み合わせによる、ブロックからのナトリウムチャネルの回復のレートを示す図である。n=4。300msのS1−S1におけるS1−S2の関数としてのVmax値が図示されている。ラノラジンまたはドロネダロンを単独で使用した場合と比較して、薬物の組み合わせによるブロック後に、ブロックからの回復は、著しく遅くなっている。*対照、ラノラジン単独およびドロネダロン単独に対してp<0.05。
【図11】図11は、ラノラジン(5μM)とドロネダロン(10μM)との組み合わせが、PVスリーブ試料における、遅延後脱分極(delayed afterdepolarization)(DAD)誘導性誘発活性を消滅させることを示す図である。A:イソプロテレノール(1μM)および高カルシウム(5.4mM)は、DADが後に続く誘発反応を誘導した。B:ラノラジン(5μM)は、誘発拍動を排除するが、顕著なDADは持続する。C:ラノラジンのウォッシュアウトは、DADが後に続く誘発反応を回復させる。D:ドロネダロン(10μM)は、誘発反応を排除するが、DADは持続する。E:ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、すべてのDADおよび誘発活性を消滅させ、2:1の活性化不全(activation failure)を誘発する。F:薬物の組み合わせの継続した存在下で、刺激強度の増加は、1:1活性化を回復させるが、DAD活性は回復させない。基本的周期長(BCL)=120ms。
【図12】図12は、ラノラジン(5μM)とドロネダロン(5μM)との組み合わせが、PVスリーブ試料におけるDAD誘導性誘発活性を排除することを示す図である。A:イソプロテレノール(1μM)および高カルシウム(5.4mM)は、DAD誘導性誘発活性を生じさせる。B:ラノラジン(5μM)は、誘発拍動を排除するが、DADは持続する。C:ラノラジンのウォッシュアウトは、誘発活性を回復させる。D.ドロネダロン(5μM)は、誘発反応の数を低減する。1回の誘発拍動の後にDADが持続する。E:ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、すべてのDADおよび誘発活性を消滅させ、2:1の活性化不全を誘発する。F:薬物の組み合わせの継続した存在下で、刺激強度の増加は、1:1活性化を回復させるが、DAD活性は回復させない。基本的周期長(BCL)=150ms。
【図13】図13は、モルモットの単離した心臓において、S−H間隔(AV結節性伝導)およびAV結節性Wenckebach型周期長を増加させる、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる相乗的作用を示す図である。3、4および5(ヘルツ)HzにおけるS−H間隔のベースライン値は、それぞれ35±2、42±2および51±2msであった。Ran:ラノラジン(3μM、n=14):Dron:ドロネダロン(0.3μM、n=14);実験的に測定したラノラジンおよびドロネダロンの個別の作用の計算合計値、Σ(R+D)とは有意に異なる。;*、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの作用についての実験測定値は、計算値Σ(R+D)とは有意に異なる、p<0.01。
【図14】図14は、モルモットの単離した心臓における自然の(内因性の)心房レート(SAR)に対する、ドロネダロン(D)、ラノラジン(R)、ドロネダロンにラノラジンを加えたもの(R+Dの組み合わせ物)およびベラパミル(V)の作用を示す図である。対照(薬物なし)SARの値は、R、D、R+D、およびV処置群について、それぞれ、225±7(n=5)、231±6(n=4)、240±9(n=5)および225±3(n=3)拍/分(またはbpm)であった。*、V処置群では、それ自体の対照とは有意差があった、p<0.01。
【図15】図15は、Dron(A、n=8)、Ran(B、n=4)、およびDron(0.3および10μM、C)の存在下におけるRanまたはRan(6および10μM、D)の存在下におけるDronのいずれかについての、濃度−応答の関係示す図である。*、対照(DronまたはRan単独)、またはDron単独(C)もしくはRan単独(D)のいずれかと有意に異なる、p<0.05。
【図16】図16は、メスのウサギの単離した心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの、単独および組み合わせの場合における、心室活動電位持続時間(MAPD90)に対する作用(図3に示したデータの再プロット)示す図である。パネルA:ラノラジンは、ドロネダロンの非存在下および存在下(0.3および10μM)で、MAPD90の類似の相対的増加を引き起こした。パネルB:ドロネダロンは、ラノラジン(6および10μM)により引き起こされたMAPD90の増加を減弱させた。LVは、左心室を指す。
【図17】図17は、10μMの高濃度ドロネダロンが、IKr阻害剤であるE−4031により引き起こされるトルサード・ド・ポワンツ(TdP)の発生を、心臓の4/6から1/6へと低下させたことを示す図である。ラノラジン(10μM)は、0.3μMドロネダロンと一緒に、60nMのE−4031の存在下でのTdPの発症率を低下させた。Ctrlは、対照を指し、Washは、ウォッシュアウトを指す。
【図18】図18は、IKr阻害剤であるE−4031(60ナノモル濃度(nM))が、自然のおよび3秒休止で引き起こされたTdPのエピソードを誘発したことを示す図である。ドロネダロン(0.1〜0.3μM)は、TdPを終結させなかった。A:対照;B:E−4031(60nM);C:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.1μM);およびD:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.3μM)。
【図19】図19は、この心臓において、E−4031により引き起こされたTdPが、ドロネダロン(6〜10μM)により終結されなかったことを示す図である。しかし、ラノラジン(6〜10μM)をドロネダロン(10μM)と組み合わせて使用した場合、TdPは消滅した。E:E−4031(60nM)およびドロネダロン(6μM);F:E−4031(60nM)およびドロネダロン(10μM);G:E−4031(60nM)、ドロネダロン(10μM)、およびラノラジン(6〜10μM)。
【図20】図20は、E−4031(60nM)により引き起こされたTdPが、ドロネダロン(0.3μM)で終結されなかったが、ラノラジン(6μM)およびドロネダロン(0.3μM)の組み合わせにより消滅したことを示す図である。A:対照;B:E−4031(60nM);C:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.3μM);D:E−4031(60nM)、ドロネダロン(0.3μM)、およびラノラジン(6μM)。
【図21】図21は、アセチルコリン(ACh)の存在下、電気誘発性の心房細動(AF)の発症率を低減する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用を示す図である。高濃度ラノラジン(10〜30μM)は、AChの存在下で、AFの発症率を低減した(左パネル)。ドロネダロン(0.3μM)の存在下、より低いおよび治療関連濃度のラノラジン(6〜10μM)は、AChの存在下、AFの発症率を低下させた。Flecは、フレカイニドを指す。
【図22】図22は、ドロネダロンおよびラノラジンが、アセチルコリン(ACh)の存在下、期外収縮誘発性AF(すなわち、S1S2の電気的刺激により引き起こされたもの)を消滅させたことを示す図である。心臓において、薬物の非存在下(対照、A)および0.6μM ACh(B)、0.6μM AChに0.3μMドロネダロンを加えたもの(C)および0.6μM AChに0.6μMドロネダロンと、3または6μMラノラジン(それぞれDおよびE)との組み合わせを加えたものの存在下で得た、左心房の単相性活動電位(MAP)の代表的な記録。
【図23】図23は、ドロネダロンが、hNaV1.5を発現するHEK293細胞の、後期Na+エンハンサーであるテフルトリン(10μM)への曝露により誘導された後期Na+を低下させたことを示す図である。後期Na+の最大半量の阻害を引き起こすドロネダロンの濃度は、4μMであると算出された。
【図24】図24は、ドロネダロン(Dron、30および100nM)が、モルモット左心室から単離した単一筋細胞(n=7)における、イソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、異なる濃度のドロネダロン(すなわち、10nM、30nM、および100nM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【図25】図25は、ラノラジン(Ran、3および6μM)が、モルモット左心室から単離した単一の筋細胞(n=7)におけるイソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、異なる濃度のラノラジン(すなわち、3μMおよび6μM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【図26】図26は、ドロネダロン(100nM)とラノラジン(3μM)との組み合わせが、モルモット左心室から単離した単一の筋細胞(n=5)におけるイソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。ドロネダロンおよびラノラジンの作用は相加的であった。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、ドロネダロン(100nM)、ラノラジン(3μM)、ならびにドロネダロン(100nM)およびラノラジン(3μM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
1.定義および一般的パラメータ
本発明の明細書において使用される場合、以下の単語および句が使用されている文脈で他の範囲が示されていない限り、以下の単語および句は以下に記載の意味を有すると一般的に意図される。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、文脈が明らかに別のことを指示していない限り、単数形態、「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、組成物における「薬学的に許容されるキャリア」への言及は、2つ以上の薬学的に許容されるキャリアなどを含む。
【0030】
「含む」は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、その他を排除するわけではないことを意味することを意図する。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用された場合、意図する使用のための組み合わせに対して、任意の本質的な意義を持つ他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書中で定義されるような要素から基本的になる組成物であれば、単離方法および精製方法からの微量の混入物ならびに薬学的に許容されるキャリア、例えばリン酸緩衝食塩水、保存剤などを排除することはない。「からなる」は、他の成分の複数の微量要素を、および本発明の組成物を投与するための相当の方法ステップ(substantial method steps)を排除することを意味する。これらの移り変わる用語のそれぞれにより定義された実施形態は、本発明の範囲内である。
【0031】
「ドロネダロン」または「Dron」は、米国特許第5,223,510号に記載されている。これは、化合物、N−{2−ブチル−3−[4−(3−ジブチルアミノプロポキシ)ベンゾイル]ベンゾフラン−5−イル}を指し、以下の化学式を有する。
【0032】
【化1】
全体に渡り使用されているドロネダロンは、遊離塩基または薬学的に許容される塩の両方を指す。一実施形態ではドロネダロンは、その塩酸塩形態で存在し、以下の化学式を有する。
【0033】
【化2】
「ラノラジン」または「Ran」は、米国特許第4,567,264号において記載されている。これは、化合物(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミドおよび薬学的に許容されるその塩を指す。その二塩酸塩形態において、ラノラジンは、以下の式で表される。
【0034】
【化3】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、様々な生理学的に許容される有機および無機の対イオンから誘導される化合物の塩を指す。このような対イオンは、当技術分野で周知であり、単なる例として、分子が酸性の官能基を含有する場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウム、例えばテトラアルキルアンモニウムなどが挙げられ、分子が塩基性の官能基を含有する場合、有機または無機の酸の塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、硝酸塩 臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびシュウ酸塩などが挙げられる。適切な薬学的に許容される塩は、またRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1418頁(1985年)およびP. Heinrich Stahl、Camille G. Wermuth編、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use;2002年において列挙されたものを含む。酸付加塩の例として、例えばヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの酸から、および有機酸、例えばアルギン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、安息香酸、カンファースルホン酸(camphorsulfuric)、クエン酸、エンボン酸(パモン酸)、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロン酸、ガラクツロン酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、イソニコチン酸、イソチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、糖酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルフィニル(sulfinilic)酸、トリフルオロ酢酸およびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などと共に形成されるものが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属および有機塩基と共に形成される塩基付加塩の例として、クロロプロカイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)、およびプロカイン、ならびに内部で形成される塩が挙げられる。生理学的に許容不可能なアニオンまたはカチオンを有する塩は、生理学的に許容される塩および/または非治療用、例えば、インビトロの状況における使用のための調製に対して有効な中間体として本発明の範囲内である。
【0035】
本発明は、ラノラジンとドロネダロンとの両方の塩を使用することを明確に企図し、ドロネダロンおよび/またはラノラジン(ranolzine)の塩の混合物をさらに企図する。
【0036】
特定の実施形態では、ラノラジンおよび/またはドロネダロンは、本明細書で使用する場合、十分にイオン化されておらず、共結晶の形態であってもよいことが企図されている。一実施形態では本発明は、ラノラジンおよび/またはドロネダロンの共結晶を含む共結晶組成物であって、上記共結晶が、ラノラジンおよび/またはドロネダロンと、共結晶形成剤(co−crystal former)とを含む共結晶組成物を提供する。「共結晶」という用語は、ラノラジンおよび/またはドロネダロンと、1つ以上の共結晶形成剤、例えば薬学的に許容される塩などとを含む結晶材料を指す。特定の実施形態では、共結晶は、遊離型(すなわち、遊離分子、双性イオン、水和物、溶媒和物など)または塩(塩水和物および溶媒和物を含む)と比較して、改善された特性を有することができる。さらなる実施形態では、この改善された特性は、溶解度の増加、溶解の増加、生物学的利用能の増加、用量応答の増加、吸湿性の低下、通常はアモルファス化合物の結晶形態、塩処理が困難または塩形成不可能な化合物の結晶形態、形態多様性の低下、より所望される形態などからなる群から選択される。共結晶を作製するおよび特徴づけるための方法は、当業者には十分である。
【0037】
「治療有効量」という用語は、このような処置を必要とする哺乳動物に投与された場合、以下に定義されるように、処置を達成するのに十分な、ラノラジンまたはドロネダロンなどの化合物の量を指す。治療有効量は、使用する治療薬の具体的な活性、患者の疾患状態の重症度、および患者の年齢、健康状態、他の疾患状態の存在、ならびに栄養状態に応じて異なることになる。さらに、患者が受ける場合がある他の薬剤(medication)が、投与する治療薬の治療有効量を決定することになる。一部の実施形態では、「治療有効量」という用語は、相乗的有効量または相乗的治療量を指す。
【0038】
「相乗的」とは、ラノラジンと組み合わせて投与した場合(または逆もまた同様)、ドロネダロンの治療上の効果が、単独で投与された場合に予想されるドロネダロンおよびラノラジンの相加的な治療上の効果を超えることを意味する。「相乗的治療量」という用語は、通常、薬物のうちの1つのまたは両方の標準的治療量よりも少ない量を指し、所望の効果に必要とされる量は、薬物が単独で使用される場合よりも少ないことを意味する。相乗的治療量は、1つの薬物が標準的治療用量で与えられ、別の薬物が標準的治療用量より少ない量で投与される場合も含む。例えばラノラジンを治療用量で与え、ドロネダロンを標準的治療用量より少ない量で与えることによって、相乗的結果を得ることができる。
【0039】
「処置」または「処置する」という用語は、哺乳動物などの被験体における疾患または状態の任意の処置を意味し、これには、以下が含まれる:1)疾患もしくは状態に対する予防または保護、すなわち、臨床症状が生じないようにすること;2)疾患もしくは状態の阻害、すなわち臨床症状の発生を止めるまたは抑制すること、ならびに/または3)疾患もしくは状態の緩和、すなわち、臨床症状の後退を引き起こすこと。
【0040】
本明細書で使用する場合、「予防する」という用語は、予防的処置を必要とする患者の予防的処置を指す。予防的処置は、適切な用量の治療薬を、病気(ailment)を患う危険性のある被験体に提供し、これにより病気の発症を実質的に防ぐことによって、達成することができる。
【0041】
ヒト医療において、最終的な誘導的事象(または複数の事象)は、未知であり、潜在的である可能性があり、または事象(または複数の事象)が発生してから十分に後になるまで患者に確認されないので、「予防する」と「抑制する」とを区別することは常に可能ではないことを当業者であれば理解されよう。したがって、本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、「処置」の要素として、本明細書中で定義された「予防する」と「抑制する」との両方を包含することを意図する。「保護」という用語は、本明細書で使用する場合、「予防」を含むことを意図する。
【0042】
「罹りやすい」という用語は、示された状態が少なくとも1回発生したことのある患者を指す。
【0043】
「患者」という用語は、通常「哺乳動物」を指し、これには、限定なしで、ヒト、サル、ウサギ、マウス、飼い慣らした動物、例えばイヌおよびネコ、家畜、例えばウシ、ウマ、またはブタ、ならびに実験動物が含まれる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容されるキャリア」には、任意のおよびすべての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、有効成分と不相容性である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。補助的有効成分も、組成物内に組み込むことができる。
【0045】
「心房細動」または「AF」は、心臓の2つの上部腔所(chamber)(右心房および左心房)が、周期的に拍動および収縮する代わりに震える場合に生じる。心電図によると、AFは、多くの場合、心臓の2つの下部腔所(右心室および左心室)の速い拍動をもたらす、極めて混乱した心房の電気的活性を特徴とする。AFを有する患者が経験する症状として、動悸、疲労、および呼吸困難(息切れ)が挙げられる。
【0046】
不整脈の症状および期間に基づき、3種類のAFがある:a)発作性AF:始まってから7日以内に自然に終結する(発作性AFは、始まってから自然に停止する)再発性AF(2回を超えるエピソード);b)持続性AF:7日より長引くか、または薬理学的または電気的心臓除細動(電気ショック)による終結を必要とする、持続するAF;およびc)永久的AF:長期に渡るAF(1年よりも長い期間)であり、処置の後、または患者および医師が、洞調律を回復させるさらなる努力をすることなしにAFを存続させることを決定した場合でも、正常な洞調律を維持できない。
【0047】
「心房粗動」とは、心臓の心房において生じる異常な心臓調律である。心房粗動が最初に生じた場合、これは通常、速い心拍または頻拍(230〜380拍/分(bpm))を伴い、上室性頻拍症のカテゴリーに入る。この調律は循環器疾患(例えば高血圧、冠動脈疾患、および心筋症)を有する個体において生じることがもっとも多いが、別段正常な心臓を有する人々において自然に生じることもある。これは通常安定した調律ではないが、多くの場合悪化して心房細動(AF)となる。
【0048】
「電気的および構造的リモデリング」は両方とも、AFの病因に寄与する。電気的誘発因子(電位の後)および不整脈惹起性基質(arrhythmogenic substrate)(再入)が、AFの開始および維持の2つの主な原因である。「電気的リモデリング」は、イオンチャネル(主にナトリウム、カルシウム、およびカリウムチャネル)の機能不全により引き起こされる。「構造的リモデリング」は、線維芽細胞が増殖および分化して、筋線維芽細胞となり、そして結合組織の堆積が増強することによって引き起こされる。構造的リモデリングは、心臓の筋束の間の電気的解離および心房の電気伝導における不均一性をもたらす。よって、心房組織の炎症および/または線維増多(fibrosis)が、AFにつながる環境を作り出す。心房の電気的および構造的リモデリングが、AFの永続化につながる。それ故、「AFがAFを引き起こす」。AFのエピソードの延長は、多くの場合心房の力学的機能不全を引き起こし、これが有害な血流力学的結果をもたらし、心不全の一因となり得る。
【0049】
「心室細動」は、急激な一定しない電気的刺激により心臓が拍動することによって、心臓内のポンプ腔(pumping chamber)(すなわち心室)が、血液をポンピングするというより、むしろ無益に震える場合に生じる。心室細動は、血圧が急落して、重要な器官への血液供給が切断されるので、即時の医学的な注意を必要とする。心室細動を有する人は、数秒のうちに虚脱となり、すぐに呼吸をしなくなるか、または脈がなくなる。症状として、胸痛、急速な心拍(頻拍)、めまい、吐き気、息切れ、および意識の喪失または失神が挙げられる。何が心室細動を引き起こすのか常に公知であるわけではないが、心室細動の大部分のケースは、「心室頻拍」または「VT」と呼ばれる急速な心拍から始まる。
【0050】
「トルサード・ド・ポワンツ(またはTdP)心室頻拍」は、心電図(ECG)上では、はっきりと異なる特徴を示す、特定の様々な心室頻拍を指す。トルサード・ド・ポワンツのECG記録は、等電性ベースラインの周囲のQRS群の特徴的なねじれを有する急速な、多形の心室頻拍を明示している。トルサード・ド・ポワンツはまた、動脈圧の低下も伴い、失神を起こす可能性がある。「トルサード・ド・ポワンツ」は稀な心室の不整脈であるが、変質して「心室細動」となる可能性があり、これは医学的介入なしには、突然死につながることになる。トルサード・ド・ポワンツは、長期のQT症候群を伴い、この症候群はQT間隔の延長をECG上に見ることができる状態である。長いQT間隔によって、患者は、R−on−T現象を生じさせやすくなる。R−on−T現象とは、心室脱分極を表すR波が、再分極の終わりの相対的不応期(T波の後半で表される)と同時に生じるものである。R−on−Tは、トルサードを起動することができる。長いQT症候群は、刺激波動/活動電位を運搬するイオンチャネルの先天性変異として遺伝性のものか、またはこれら心臓のイオン電流をブロックする薬物の結果として得たものかのいずれかである可能性がある。
【0051】
トルサード・ド・ポワンツの一般的原因として、下痢、低マグネシウム血症、および低カリウム血症が挙げられる。これは、栄養不良の個体および慢性アルコール依存症に一般的に見られる。薬物相互作用、例えばエリスロマイシンまたはモキシフロキサシンなどを、ニトロイミダゾールなどの阻害剤、栄養補助食品、および様々な薬剤(medication)、例えばメサドン、リチウム、三環式抗うつ剤またはフェノチアジンなどと同時に服用した場合もまた、この原因となり得る。この原因はまた、一部の抗不整脈薬剤、例えばソタロール、プロカインアミド、およびキニジンの副作用である可能性もある。トルサード・ド・ポワンツへの傾向がより高くなることに関わる要因として、以下が挙げられる:クラスIAの抗不整脈、クラスIIIの抗不整脈、低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症、低酸素、アシドーシス、心不全、左心室肥厚、緩慢心拍、女性の性別、低体温、くも膜下出血。
【0052】
「AV伝導」または「房室伝導」は、「房室結節」または「AV結節」を介した心房から心室への刺激波動の前方への伝導であり、心電図ではP−R間隔により表される。AV結節は、心房腔および心室腔を電気的に接続する心臓の電気制御システムの一部であり、心拍と協調している。AV結節は、心臓の心房と心室との間の特定化された組織の領域であり、具体的には、冠状静脈洞の開口付近の心房中隔の後下部にあり、心房から心室への正常な電気的刺激を伝導する。正常な心臓調律の間の「AV伝導」は、2つの異なる経路を介して生じる。第1の経路は、伝導速度がゆっくりだが、不応期が短く、これに対して第2の経路は、伝導速度が速いが、不応期が長い。
【0053】
「調節する」という用語は、増加または低下させること、別の方法で制御を提供することを意味する。
【0054】
「心室および/または心房レートを調節する」ことにより、AFを顕著に改善することが示されている。通常、これは、ペースメーカーの使用により達成されており、この場合ペースメーカーは、心房拍動を検出し、正常な遅延(0.1〜0.2秒)の後に、これがその前に起こらない限り、心室拍動を引き起こす。これは、右心房の電極(感知用)および心室の電極(感知およびペーシング用)を有する単一のペーシングリードを用いて達成することができる。「心房レート」は、心房拍動のみのレート(単位時間あたりの拍動で測定)に特異的である。ペースメーカーはまた、心室および/または心房の調律をモニターし、調節することができる。「心室および/または心房の調律」とは、心室拍動または心房拍動のいずれかの拍動から拍動への時間周期を指す。
【0055】
「共投与する」または「共投与」とは、2種以上の治療薬を一度に一緒に投与することを指す。2種以上の治療薬は、単一の剤形もしくは「組み合わせた投与単位」に共処方する(coformulate)ことができ、または別々に処方し、続いてこれらを合わせて、通常、静脈内投与または経口投与用の組み合わせた投与単位とすることができる。
【0056】
「静脈内投与」とは、静脈または「静脈内」に直接物質を投与することである。他の投与経路と比較して、静脈内の(IV)経路は、流体および薬剤を全身に渡り送達するためのもっとも速い手段である。注入ポンプは、流速および送達される総量に渡って正確な制御を可能にすることができるが、流速の変化が、重大な結果を生じさせない場合、またはポンプが利用可能でない場合、点滴は、多くの場合、患者の高さよりも上にバッグを配置し、速度を制御するためのクランプを使用して、単に流れたままにしておく。あるいは、患者が高流速を必要とし、IVアクセスデバイスの直径がこれを収容するのに十分大きい場合には、高速注入器を使用することもできる。これは、流体バッグの回りに配置することによって、流体を患者へと強制的に送る、可膨張性カフ、または注入されている流体を加温することもできる類似の電気的デバイスのいずれかである。患者が、特定の回数しか薬剤を必要としない場合には、断続的な注入を使用する。これは、追加の流体を必要としない。これは、静脈内点滴(ポンプまたは重力点滴する)と同じ技法を使用することができるが、薬剤の全用量が与えられた後で、管はIVアクセスデバイスから切り離す。一部の薬剤は、またIVプッシュまたはボーラスにより与えられる。これは、シリンジをIVアクセスデバイスに接続し、薬剤を直接注入する(静脈を刺激したり、急激過ぎる作用を引き起こしたりする可能性がある場合はゆっくりと)という意味である。薬をIV管の流体の流れ(fluid stream)に注入したら、薬が管から患者に確実に入るようにするいくつかの手段が存在しなければならない。通常これは、流体の流れが正常に流れるようにし、これによって、薬が血流へと運搬されるようにすることによって達成される。しかし、注入に続いて、第2の流体の注入「フラッシュ」が時々使用されることによって、薬をより迅速に血流へと押し進める。
【0057】
「経口投与」とは、口を介して物質を摂取する投与経路であり、口腔、唇下(sublabial)および舌下投与、ならびに腸内投与、および呼吸器を介した投与を含むが、ただし、薬剤が口腔粘膜のいずれかと直接接触しないように、例えば管を介して投与される場合は除く。治療薬の経口投与のための典型的な形態として、錠剤またはカプセル剤の使用が挙げられる。
【0058】
「徐放性処方物」とは、体内で治療薬を長期間に渡りゆっくりと放出するように設計された処方物であり、これに対して「即時放出性処方物」とは、体内で短期間に治療薬が急速に放出されるように設計された処方物である。場合によっては、即時放出性処方物は、治療薬が体内の所望のターゲット(例えば胃)に到達した際にのみ放出されるようにコーティングすることもできる。
【0059】
いくつかのより一般的な「ドロネダロンの望ましくない副作用」として、下痢、体力の欠如または喪失、腹腔痛または胃痛、酸性胃または過酸症(acid or sour stomach)、おくび、水疱形成、痂皮形成、過敏、そう痒、または皮膚の発赤、割れ皮膚、乾燥皮膚、または鱗屑性皮膚(scaly skin)、胸焼け、消化不良、皮膚のかゆみ、吐き気、発疹、皮膚の赤みまたは変色、皮膚発疹、痂皮で覆われた、鱗屑性、および浸出性の皮膚発疹、じんま疹、そう痒、または赤み、胃の不快感、胃の不調(upset)、または疼痛、腫脹、および嘔吐が挙げられる。いくつかのあまり一般的でない、または稀な副作用として、胸痛または不安、頭部ふらふら感(lightheadedness)、めまい、または失神、息切れ、緩徐なまたは不規則な心拍、異常な疲れ、味覚の変化、太陽光への皮膚の過敏性の増加、味覚の喪失および激しい日焼けが挙げられる。
【0060】
2.方法
一般的に、本発明は、心房細動および/または心房粗動を処置または予防する方法に関する。本方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩との共投与を含む。一実施形態では、ラノラジンまたはドロネダロンの一方または両方のいずれかを相乗的有効量で投与する。この2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位で、別々にまたは一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0061】
実施例においてさらに論じられているように、本明細書中で提示されているのは、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせによって、AFの開始および維持に関連する誘発因子および基質(substrate)の両方を排除する効き目があるという作用の証拠である。また実施例において同様に示されているように、本明細書中に記載されている併用療法は、心房細動または粗動の状態に罹りやすい患者における心房細動または粗動を予防するのに有用である。
【0062】
ラノラジンは、後期ナトリウム流(INa)を阻害し、心臓拡張期の弛緩を改善することが前臨床研究および臨床研究において示された抗虚血剤および抗狭心症剤である。前臨床試験において、ラノラジンはまた、細胞のカルシウム過負荷を防止し、虚血中の心臓の電気的および力学的機能不全を低減することが示された。
【0063】
いくつかの最近の試験の結果は、ラノラジンが、心房の不整脈活動を低減することを実証した。Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁;Songら、Am J Physiol、2008年;294巻:H2031〜2039頁;Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁を参照されたい。ラノラジンは、心室組織よりも心房組織においてより大きなナトリウムチャネルの阻害を引き起こすと報告された(Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁)。臨床関連の濃度である5および10μMのラノラジンは、心房における活動電位持続時間を延長した(APD90、90%の再分極における活動電位持続時間)が、心室心筋におけるAPDに対する作用は、最小または皆無であった(Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁)。ラノラジン(5および10μM)は、活動電位の上向き上昇の最大速度(Vmax)および心房心筋および肺静脈スリーブの伝導速度の有意な使用依存性の(すなわち、ラノラジンの作用は、より高度なレートのペーシングにおいてより大きかった)低下を引き起こしたが、心室心筋においては低下を引き起こさなかった(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁、Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁、およびSicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)。ラノラジンは、心房組織のより高度なペーシングレートで有効不応期を増大させ、再分極後の不応性を誘導し、組織の興奮性の喪失を引き起こした。(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁、Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁、Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)およびKurriarら、J Cardiovasc Electrophysiol、2009年;20巻:796〜802頁。
【0064】
これらのデータは、ラノラジンは、心房の頻拍および細動の開始および存続の両方を終結させるおよび低減するのに効果的であり、実際にラノラジンは、心房の興奮性を有意に低下させ、心房心筋およびイヌの肺静脈スリーブおよびブタの心臓において、アセチルコリン誘発性細動の予防および終結の両方を行ったことを示唆している。Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁、Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁、およびKumarら、J Cardiovasc Electrophysiol、2009年;20巻:796〜802頁。ラノラジンはまた、単離した心房の筋細胞の後期INa誘導性の遅延後脱分極および誘発活性を消滅させ(Songら、Am J Physiol、2008年;294巻:H2031〜2039頁)、心臓拡張期の脱分極および不整脈活動の開始を低下させた。Songら、Am J Physiol、2009年。
【0065】
ラノラジンは、誘発因子(遅延後脱分極、興奮性、および誘発活性)ならびに心房の頻拍および細動を起動および支持する電気的基質(急速な伝導および高度なレートの電気的活性を支持することができる心房組織)の両方を低減するようである。心房組織内の特定のイオンチャネル電流のラノラジンによる阻害(最大INa、IKr、および後期INa)は、これらの抗不整脈作用に関与している。最初に、ラノラジンによる最大INaの心房選択的低減は、電気的刺激伝導(伝導速度)および興奮性を低減する。第2に、ラノラジンによる遅延型整流器(rectifier)の電流IKrの阻害は、心房の活動電位の再分極のすでに緩徐な終末期をさらに遅延させ、これによって、上向きの続発性活動電位の活性化のためのNa+チャネルの利用可能性を低減する。
【0066】
これらの作用は、心房の有効不応期の延長に貢献し、組織の再分極後の不応性の誘発をもたらす。電気的刺激に不応性の組織は、電気的活性の再入または速いレートの刺激、例えば心房の頻拍および細動の間に生じるものなどのいずれかを支持することができない。したがって、レート依存性の心房の不応性の増加を引き起こすラノラジンの作用は、心房細動を支持することが可能な興奮性基質を低減する。
【0067】
最後に、ラノラジンによる後期INaの低減は、特に延長した心房再分極の状態で、細胞のカルシウム負荷の低減および心房における誘発活性の抑制に貢献し、したがってAFの開始を予防し得る(Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁;Songら、2008年)。延長した心房のAPDは、AF発生に伴ういくつかの疾患、例えばうっ血性心不全(Liら、Circulation、2000年;101巻:2631〜2638頁)、心房拡張(Verheuleら、Circulation、2003年;107巻:2615〜2622頁)、高血圧(Kistlerら、Eur Heart J、2006年;27巻:3045〜3056頁)、および長期のQT症候群(Kirchhofら、J Cardiovasc. Electrophysiol、2003年;14巻:1027〜1033頁)において生じ得る。
【0068】
しかし、AFは、心房の再分極の短縮を一般的に伴う。ナトリウムイオン流入の全体は、正常な条件下で、初期のINaに対して、後期INaに渡りはるかに小さい。APDが短縮するにつれて、この差は増大すると予想される。その結果、後期INaの特異的阻害は、細胞内のナトリウム濃度(初期のINa阻害と比較して)に有意に影響を及ぼすとは限らない。ラノラジンは、心室における強力な後期INaブロッカーであるにもかかわらず(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁)、イヌの右心房および肺静脈試料におけるその抗AF作用は、初期のINaのその阻害に主に起因する(Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁およびSicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)。要約すれば、前臨床試験からの強力な証拠は、ラノラジンは、ヒトの心房細動を抑制するのに効果的となり得ることを示唆している。
【0069】
上述した通り、ドロネダロンは、循環器系の入院および死亡を低減することが示された最初の抗不整脈薬である。ドロネダロンは、洞調律を維持することにおいて穏やかな効力を有する。実施例において例示されているように、ラノラジンの抗不整脈作用とドロネダロンの抗不整脈作用との間に有意な相乗作用が存在する。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれの薬物の単独よりも有意に大きな作用を有する。例えば、イヌの灌流した右心房の試料において、ラノラジン単独またはドロネダロン単独で、持続性AFを、それぞれ29%または17%低減したのに対して、2つの薬物の組み合わせは、持続性AFを90%抑制したことが判明した。本明細書中に提示されたこれらおよび他のデータは、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれかの薬物単独よりも、AFの発症率および期間を低減するのにより効果的な潜在力を有することを示した。この併用療法は、調律制御およびレート制御の両方を組み込んでいる。
【0070】
したがって、一実施形態では、本発明は、心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。一実施形態では、心房レートが高度な場合、例えば400超拍/分または600拍/分である場合、AV伝導は遅延される。これは、心房細動の間の心室レートの制御を提供するのに有利となり得ることが企図される(実施例、パート2および図13Aを参照されたい)。別の実施形態では、心房レートは低減する。これは、AFの間のように心房レートが増加する場合、心室レートの制御を提供する薬物の組み合わせの作用を確認するものである(実施例、パート2および図13Bを参照されたい)。さらなる別の実施形態では、心拍は、洞調律の間、有意に低下しない。
【0071】
別の実施形態では、心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法が提供される。一実施形態では、患者の洞調律が維持される。
【0072】
さらなる別の実施形態では、心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法が提供される。
【0073】
実施例において示されている通り、トルサード・ド・ポワンツ(torsades de points)の心室頻拍の誘発は、併用療法(実施例、パート2および図17〜20を参照されたい)により低減する。したがって、一実施形態では、本発明は、トルサード・ド・ポワンツの心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツの心室頻拍を低減または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0074】
心房細動を予防することによって、電気的および構造的の両リモデリングを調節することが企図される。なぜなら、これは、心房細動がさらなる心房細動を引き起こし、細動が構造的リモデリングを引き起こすからである。ラノラジンおよびドロネダロンにより提供される心房調律の制御(すなわち、調律制御)は、電気的および構造的リモデリングによる、時々発生する自己終結性のエピソードから永久的AFへの心房の頻脈性不整脈の進行を予防する。さらに、心房レートおよびNa/Ca負荷の低減は、酸化ストレスを低減し、細胞死を低下させ、炎症を低減し、線維増多を制限する(Van Wagoner D.、J Cardiovasc Pharm、52巻:306〜313頁、2008年)と予想される。したがって、本発明はまた、電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0075】
ラノラジンとドロネダロンを組み合わせることによって、任意の所望しない副作用を低減することができることもまた企図される。例えば、すでにドロネダロン療法を受けている患者へのラノラジンの共投与は、ドロネダロンの副作用を低減する。併用投与の相乗的作用は、治療上の効果を達成するのに必要なドロネダロンの量を低減することを可能にし、これによって望ましくない副作用の発症率の低減をもたらすことになる。よって、一実施形態では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0076】
さらに、ラノラジンで治療中の患者へのドロネダロンの共投与により、ラノラジン療法を行っている患者において時々見られるQT間隔の延長を低減することが企図される(実施例、パート2および図15Dおよび16Bを参照されたい)。したがって、一実施形態では、本発明は、患者において、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。逆の場合には、ドロネダロンはQT間隔の延長も引き起こすことができ、よって、ドロネダロンをラノラジンと共に投与することによってQT間隔の低減が見られることが企図される。
【0077】
上述のように、ラノラジンの投与によって、ドロネダロンの治療有効量が低減することが企図される。よって、本発明は、一実施形態では、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0078】
イヌモデル(図1〜12)におけるデータは、心房細動におけるラノラジンおよびドロネダロンの相乗的作用に焦点を合わせているが、図6は、ラノラジンおよびドロネダロンが心室DTEを増加させた(E波の減速時間)ことを示している。これは、本明細書中に記載されている併用療法が、心室興奮性、したがって、心室頻拍性不整脈を低減することができることを示唆している。さらに、図13は、AV結節性伝導に対するラノラジンおよびドロネダロンの相乗的作用を示し、それはまた、心室レート制御における組み合わせの有用性も示唆している。なお、さらに、図15〜20は、この組み合わせが、催不整脈性の危険(proarrhythmic risk)を提示しないことを示しており、これは、この組み合わせが心室頻拍性不整脈を処置するのに有用であることを示唆している。図24〜26は、心室筋細胞におけるDADに対するラノラジンおよびドロネダロンの効果を示しており、これは、心室頻拍性不整脈における組み合わせの有用性を示唆している。
【0079】
したがって、本発明はまた、それを必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0080】
さらに、併用療法は、心房細動に加えて心室細動を低減することが企図されている。したがって、一実施形態では、本発明は、心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0081】
上述されているように、延長した心房細動は、うっ血性心不全および/または卒中発作の発症をもたらすことが多い。さらに、心房細動を有する患者は、入院および死亡の危険性が増大する。したがって、心房細動および心室の不整脈を処置および予防した結果として、併用療法は、入院および死亡、心不全の発症、および卒中発作の発症率を低減することが予想される。心房細動を低減または予防することによって、塞栓および血液凝固の形成が減弱または低減することがさらに企図される。したがって、一態様において、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の共投与によって、患者におけるうっ血性心不全および/または卒中発作を予防する方法を対象とする。
【0082】
2.1投薬
記載した方法の正にすべてについて、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩のいずれかの少なくとも1つが、他の薬物と共投与した結果として治療上効果的となる、標準的治療用量より少ない量で投与されることが企図される。しかし、ドロネダロンおよびラノラジンは、両方とも治療有効量で投与してもよいこともまた企図されている。一部の実施形態では、ドロネダロンを相乗的有効用量で投与し、ラノラジンを標準的治療有効用量で投与する。他の実施形態では、ラノラジンを標準的治療用量より少ない量で投与し、ドロネダロンを標準的治療有効用量で投与する。さらなる他の実施形態では、ラノラジンとドロネダロンとの両方を標準的治療用量より少ない量で投与する。「相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩」という表現は、ラノラジンおよびその治療的に許容される塩およびドロネダロンまたはその治療的に許容される塩の標準的治療用量、および標準的治療用量より少ない量のすべての可能な組み合わせを包含することを意図する。
【0083】
一部の実施形態では、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、別々に投与される。
【0084】
ラノラジンおよびドロネダロンは、単回用量または複数回用量のいずれかにより、類似の有用性を有する、一般に認められた薬剤の投与方法、例えば参照により組み込まれた特許および特許出願に記載されているものなどのいずれかにより患者に与えることができ、これらの投与方法には、口腔、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口による投与、または含浸もしくはコーティングしたデバイス、例えばステント、または例えば、動脈挿入用の円柱状ポリマーを介したものが含まれる。一実施形態では、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、静脈内に投与される。
【0085】
一実施形態では、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、経口的に投与される。ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、例えば錠剤においてなど、組み合わせた投与単位として投与することもできる。
【0086】
上述されているように、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、相乗的治療量または相乗的有効量で投与することができる。したがって、一部の実施形態では、投与するラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量は、毎日約50mg〜約3000mg、または毎日約50mg〜約2500mg、または毎日約50mg〜約2000mg、または毎日約50mg〜約1500mgである。さらに、投与するドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量は、毎日約50mg〜約800mg、または毎日約50mg〜約700mg、または毎日約50mg〜約600mg、または毎日約50mg〜約500mg、または毎日約50mg〜約400mgである。これら日用量の総計は、1日1回または1日2回のいずれかで患者に投与することができる。
【0087】
さらに、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、徐放性処方物として投与され、そして/またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、即時放出性または徐放性処方物として投与されることが企図されている。これは、次のセクションでより完全に論じられている。
【0088】
次いで、一実施形態では、処置中の患者は、ドロネダロンの維持用量範囲の400〜800mg(典型的な用量は毎日2回400mgである)をすでに摂取している。次いでこの投与計画に、約300mg〜約1000mgのラノラジンを追加する。通常、用量は、以下のようにして投与されてもよい:毎日2回1000mg(2×500mg)、毎日2回750mg(2×375mg)、毎日2回500mg(1×500mg)、毎日2回375mg(1×375mg)、または毎日2回600mg(2×300mg)。治療用量のラノラジンを投与することで、これによりドロネダロンの量は、約50から約300mgに、または約毎日200mgに減少させることができ、これによって有害事象の発症率が大きく低減することができる。
【0089】
3.有効成分および組成物
3.1ラノラジン
米国特許第4,567,264号は、ラノラジン、(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミド、および薬学的に許容されるその塩、ならびに不整脈、異型(variant)および運動誘発性アンギナ、および心筋梗塞を含めた循環器疾患の処置におけるこれらの使用を開示している。
【0090】
この特許はまた、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、Tween80および0.9%食塩水をさらに含む、ラノラジン二塩酸塩の静脈内(IV)処方物を開示している。
【0091】
米国特許第5,506,229号は、心臓麻痺、心筋もしくは骨格筋または脳組織への低酸素または再灌流傷害を含めた物理的または化学的侵襲を受ける組織の処置のための、および移植における使用のための、ラノラジンおよび薬学的に許容されるその塩およびエステルの使用を開示している。制御放出処方物(controlled release formulation)を含めた経口のおよび非経口の処方物が開示されている。特に、米国特許第5,506,229号の実施例7Dは、放出制御ポリマーでコーティングされた、ラノラジンおよび微結晶性セルロースのミクロスフェアを含めた、カプセル剤形態の制御放出処方物について記載している。この特許はまた、約5重量%のブドウ糖を含有するIV溶液1ミリリットル当たり、一番低くて5mgのラノラジンを含むIVラノラジン処方物を開示している。さらに、約4重量%のブドウ糖を含有するIV溶液1ミリリットル当たり、一番高くて200mgのラノラジンを含有するIV溶液が開示されている。
【0092】
ラノラジンおよび薬学的に許容されるその塩およびエステルに対して現在好ましい投与経路は、経口である。典型的な経口投与剤形は、圧縮錠剤、粉末混合物もしくは粒状体を充填した硬ゼラチンカプセル、または溶液もしくは懸濁物を充填した軟ゼラチンカプセル(ソフトゲル)である。米国特許第5,472,707は、極低温液体ラノラジンを、硬ゼラチンカプセルまたはソフトゲル用の充填溶液として使用している高用量経口処方物を開示している。
【0093】
米国特許第6,503,911号は、徐放性処方物が、胃の酸性の環境と、腸全体に渡るより塩基性の環境との両方を介して進む間に、十分なラノラジンの血漿レベルを得るという問題を克服する徐放性処方物を開示し、アンギナおよび他の循環器疾患の処置のために必要な血漿レベルを得るのに非常に効果的であることが証明された。
【0094】
米国特許第6,852,724号は、不整脈 異型および運動誘発性アンギナならびに心筋梗塞を含めた循環器疾患を処置する方法を開示している。
【0095】
米国特許出願公開第2006/0177502号は、ラノラジンが、35〜50%存在する、好ましくは40〜45%ラノラジンが存在する経口の徐放剤形を開示している。一実施形態では本発明のラノラジン徐放性処方物として、pH依存性結合剤;pHに依存しない結合剤;および1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipient)が挙げられる。適切なpH依存性結合剤として、これらに限らないが、強力な塩基を用いて部分的に中和されたメタクリル酸コポリマー、例えばEudragit(登録商標)(Eudragit(登録商標)L100−55、Eudragit(登録商標)L100−55の擬似ラテックスなど)が挙げられ、この強力な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムであり、メタクリル酸コポリマーを約1〜20%、例えば約3〜6%の程度まで中和するのに十分な量で用いられる。pHに依存しない適切な結合剤として、これらに限らないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えばMethocel(登録商標)El0M Premium CRグレードのHPMCまたはMethocel(登録商標)E4M Premium HPMCが挙げられる。適切な薬学的に許容される添加剤として、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)pH101)が挙げられる。
【0096】
3.2ドロネダロン
米国特許第5,223,510号は、ドロネダロン、N−(2−ブチル−3−(p−(3−(ジブチルアミノ)プロポキシ)ベンゾイル)−5−ベンゾフラニル)メタンスルホンアミド、薬学的に許容されるその塩、ならびに狭心症、高血圧、不整脈、および大脳循環不全の処置におけるこれらの使用を開示している。
【0097】
ドロネダロン塩酸塩は、一般的に使用されているドロネダロンの薬学的に許容される塩の一例である。
【0098】
米国特許第6,939,865号は、活性成分(active principle)としてドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩と、組成物のpHを3〜5の間に維持することが可能な生理学的に許容される緩衝液と、生理学的に許容される水可溶性β−シクロデキストリン誘導体とを含む薬学的組成物を開示している。緩衝液は、以下から選択される緩衝系を含む溶液である:酢酸/酢酸アルカリ金属塩(alkali metal acetate)、フマル酸/フマル酸アルカリ金属塩(alkali metal fumarate)、コハク酸/コハク酸アルカリ金属塩(alkali metal succinate)、クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩(alkali metal citrate)、酒石酸/酒石酸アルカリ金属塩(alkali metal tartarate)、乳酸/乳酸アルカリ金属塩(alkali metal lactate)、マレイン酸/マレイン酸アルカリ金属塩(alkali metal maleate)、メタンスルホン酸/メタンスルホン酸アルカリ金属塩(alkali metal methanesulphonate)、またはリン酸モノアルカリ金属塩(monoalkali metal phosphate)。この組成物は、注射溶液の形態の非経口投与のためのものである。
【0099】
米国特許第7,022,343号は、以下1)〜4)を含む液体薬学的組成物を開示している:1)活性成分としてのドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩、2)少なくとも50重量%の水を含む水性溶媒、3)溶剤中に分散したまたは可溶化した、生体適合性、生分解性、合成、水可溶性および共有結合反応性のマクロマーであり、このマクロマーは、重合することで、組織に適用後1カ月未満の期間内に分解する、対応した(compliant)組織付着性ハイドロゲルを形成し、分子1個につき平均少なくとも1つの親水性ドメインと、カーボネート連結を含む少なくとも1つの生分解性領域と、少なくとも2つの重合性基とを含むマクロマー、および4)重合開始剤。この組成物は、信頼できる適用のためのものであり、特に心臓のバイパスまたは他の心臓手術と関連した、ドロネダロンの心臓または血管の組織への局所制御放出が開発されてきた。ドロネダロンは、抗不整脈薬物が送達されるべき組織に付着し、次いで生物分解するハイドロゲルの中に組み込まれる。抗不整脈薬物を含有するハイドロゲル組成物およびパッチは、インビトロまたはインビボで形成することができる。好ましいハイドロゲルは、適用後組織に付着し、7〜10日以内に生分解する。もっとも好ましいハイドロゲルは、炎症または線維増多の誘発が最小の合成ポリマーで形成されたものである。ハイドロゲルは、組織にゲルをスプレーするもしくは塗ることによって、または適用部位における放出のための定義された投与量の薬物を提供する「パッチ」形態で、ドラッグデリバリーが所望される組織に直接適用することができる。
【0100】
米国特許第7,323,493号は、活性成分として、ドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩と、ポロキサマーから選択される薬学的に許容される非イオンの親水性界面活性剤とを、必要に応じて1つ以上の薬学的添加剤と組み合わせて含む薬学的組成物であって、この非イオン性親水性界面活性剤が、塩基形態の活性成分の5%〜15重量%の割合で存在する、薬学的組成物を開示している。この組成物は、錠剤、顆粒剤、ゼラチンカプセル剤、または散剤の形態の経口投与のためのものである。
【0101】
一実施形態では、本発明の方法は、ドロネダロンを含む錠剤を使用する。この錠剤は、ヒプロメロース、デンプン、クロスポビドン、ポロキサマー407、ラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを必要に応じてさらに含む。この錠剤はまた必要に応じてラノラジンを含んでもよい。
【0102】
3.3薬学的処方物
上述されているように、ドロネダロンおよびラノラジンは、共投与することができる。これは、2つの有効成分を別々に処方することができるが、同様の時間(すなわち、一緒に投与するか、または一方の後に他方を投与するかのいずれか)で投与することができることを意味する。共投与されるとはまた、ドロネダロンおよびラノラジンを、組み合わせた投与単位内に共処方してもよいことを意味する。したがって、一実施形態では、本発明は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物を対象とする。
【0103】
別の実施形態では、処方物は、相乗的有効量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩および/またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を含む。特定の実施形態では、処方物は、静脈内投与または経口投与のいずれかのために処方する。さらなる他の実施形態では、2つの有効成分を、組み合わせた投与単位に共処方する。なお、さらなる他の実施形態では、この2つの有効成分は、共投与のために別々に処方される。
【0104】
3.4共処方物(coformulation)
本発明の特定の実施形態では、ラノラジンおよびドロネダロンは、経口投与に適した組み合わせた投与単位または単一剤形へと共処方する。特定の実施形態では、ラノラジンは、徐放性処方物として処方する。特定の実施形態では、ドロネダロンは、即時放出用または徐放用に処方する。
【0105】
一実施形態では、処方物は、錠剤の形態またはカプセル剤の形態である。実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約10mg〜約800mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約25mg〜約600mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約25mg〜約400mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約50mg〜約200mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。
【0106】
一実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約50mg〜約1000mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約100mg〜約750mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約150mg〜約375mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。
【0107】
このようなある実施形態では、ラノラジン組成物は、ドロネダロン組成物を含有する錠剤の一部分とは別個ではあるがそれと接触している錠剤の一部分に配置する。単一剤形は、ラノラジン組成物およびドロネダロン組成物を多層錠剤へと単に圧縮するステップを含むことができ、または従来の他の単一剤形、例えばカプセル剤へと従来法で加工されることを理解されよう。本発明における使用に適した多層錠剤およびカプセル剤は、標準的な機械類を使用して、当技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。
【0108】
錠剤は、2つの層、すなわちドロネダロンを含む、即時放出用または徐放用に処方される第1の層と、ラノラジンを含む、徐放用に処方される第2の層とを含んでもよい。あるいは、多層錠剤は、内層と外層とを含んでもよく、内層は、徐放性ラノラジン処方物を含み、外層は、即時放出性または徐放性のドロネダロン層を含む。別の実施形態では、ラノラジンおよびドロネダロンを、カプセル中に共処方し、このカプセル剤は、ドロネダロンの即時放出または徐放およびラノラジンの徐放を可能にする。例えば、カプセル剤は、ドロネダロンおよびラノラジンの両方の顆粒剤を含有してもよく、顆粒剤は、ドロネダロンが即時放出または徐放用に利用できラノラジンが徐放用に処方されるように処方されている。あるいは、カプセル剤は、ドロネダロンの即時放出性または徐放性液体処方物およびラノラジンの徐放性固体処方物を含有することもできる。しかし、このような実施形態は、例示的であり、本発明の処方物を限定することを意図していない。
【0109】
多層錠は、必要に応じて1つ以上の副成分と共に、加圧または成形により作製することができる。圧縮錠は、有効成分を、易流動性の形状、例えば粉末または顆粒の中で、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性な賦形剤、保存剤、界面活性剤または分散剤と混合させて、適切な機械内で圧縮することにより調製することができる。湿製錠(molded tablet)は、不活性な液体賦形剤で湿らせた、粉末化した有効成分の混合物を適切な機械内で成形することによって作製することができる。錠剤は、必要に応じてコーティングするか、または刻みをいれることもできる。
【0110】
錠剤は、口当たりのよい調製物を提供するための、甘味剤、香味剤、着色剤および保存料含めた1つ以上の薬剤を含有してもよい。錠剤の製造に適した、無毒性の薬学的に許容される添加剤を有効成分と混合して含有する錠剤は、許容される。これら添加剤は、例えば、不活性賦形剤、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;整粒剤および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えばセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム;および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど、ステアリン酸またはタルクであってよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または消化管における分解および吸着を遅らせ、これによって、より長い期間に渡り持続する作用を得るために、マイクロカプセル封入を含めた公知の技法によってコーティングされていてもよい。例えば、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを単独で、または蝋と共に採用することもできる。
3.5追加の処方物
本発明により同様に企図されている処方物は、注射による投与のためのものでもよく、これには、水性懸濁物または油性懸濁物、またはゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油との乳剤、ならびにエリキシル剤、マンニトール、ブドウ糖、または無菌水性溶液、および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。食塩水中の水性溶液はまた、従来から注射に使用されているが、本発明の状況ではあまり好ましくない。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど(およびこれらの適切な混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油もまた採用することができる。例えばレシチンなどのコーティング剤の使用により、分散物の場合には必要な粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により、適した流動度を維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。ラノラジンおよびドロネダロンを別に投与するため、同じ処方物が企図される。
【0111】
無菌注射液剤は、必要量の成分を、適切な溶媒中に、上に列挙した様々な他の成分と共に組み込み、必要に応じてこれに続いて濾過滅菌法を行うことにより調製する。一般的に、分散物は、様々な滅菌した有効成分を、塩基性の分散媒体および上に列挙されたもののうちの他の必要成分を含有する無菌のビヒクルへと組み込むことによって調製する。無菌注射液剤の調製のための無菌の散剤の場合、調製の好ましい方法は、有効成分の散剤と、さらに以前に無菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分とを生成する真空乾燥および凍結乾燥の技法である。
【0112】
したがって、心房細動のための新規の組み合わせの投与および本発明の他の方法のための器具の理想の形態は、(1)使える状態にある2つの作用物質を含有する2つのコンパートメントを含むシリンジまたは(2)使える状態である2つのシリンジを含有するキットのいずれかからなる。
【0113】
ラノラジンとドロネダロンとを含む薬学的組成物の作製において、有効成分は、通常添加剤またはキャリアで希釈し、および/またはカプセル、サッシェ、ペーパーまたは他の容器の形態となり得るようなキャリア内に封入する。添加剤が、賦形剤としての働きをする場合、これは、固体、半固体、または液体物質(上記の通り)であってよく、有効成分のためのビヒクル、キャリアまたは媒体としての作用をする。したがって、組成物は、例えば、10重量%までの活性化合物、軟質ゼラチンカプセルおよび硬質ゼラチンカプセル、無菌注射液剤、および無菌の包装された散剤を含む、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体としてまたは液体媒体中)、軟膏剤の形態とすることができる。
【0114】
適切な添加剤の一部の例として、ラクトース、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネートアルギネート、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。処方物は、滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;保存料、例えばメチル−およびプロピルヒドロキシ−ベンゾエート;甘味剤;ならびに香味剤をさらに挙げることができる。
【0115】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の手順を採用することによって、患者への投与後の、有効成分の急速放出、徐放または遅延放出を得られるように処方することができる。上述のように、ラノラジンの生体利用効率の低減を考えると、徐放性処方物が、一般的に好ましい。経口投与用の制御放出ドラッグデリバリーシステムとして、ポリマーコーティングされた貯蔵所または薬物ポリマーマトリックス処方物を含有する浸透圧ポンプシステムおよび溶解システム(dissolutional system)が挙げられる。制御放出システムの例が、米国特許第3,845,770号;第4,326,525号;第4,902,514号;および第5,616,345号において与えられている。
【0116】
組成物は、単位剤形内に処方するのが好ましい。「単位剤形」または「組み合わせた投与単位」という用語は、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単一の投与量(unitary dosage)に適合した、物理的に別個の単位(discrete unit)を指し、各単位は、適切な薬学的添加剤と一緒に所望の治療効果を生じさせるように計算された既定量の活性物質を含有する(例えば、錠剤、カプセル剤、アンプル)。本発明の活性薬剤は、広い投与量範囲に渡り効果的であり、薬学的有効量で一般的に投与する。しかし、実際に投与する各活性薬剤の量は、処置を受ける状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物およびこれらの相対的な活性、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度などを含めた、関連状況を考慮して医師によって決定されることになることは、理解されよう。
【0117】
錠剤などの固体組成物を調製するため、主要な有効成分を薬学的添加剤と混合することによって、本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体予備処方組成物を形成する。これら予備処方組成物を均一と言及する場合、これは、組成物が同等に効果的な単位剤形、例えば錠剤、丸剤およびカプセル剤に容易に小分けされ得るように、有効成分が組成物全体に渡り均等に分散しているという意味である。
【0118】
本発明の錠剤または丸剤は、コーティングされるか、または別の方法で調合される(compounded)ことによって、延長作用という利点が生じる剤形を得ることができるか、または胃の酸性状態から保護することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与量構成要素および外部投与量構成要素を含むことができ、後者は、前者を覆う外被の形態で存在する。ラノラジンおよび共投与される薬剤(複数可)は腸溶層によって分離することができ、その腸溶層は、胃の中で分解に耐えて、内部の構成要素をそのままの状態で十二指腸に移ることを可能にするか、または内部の構成要素の放出を遅延させるように働く。多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸と、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む様々な材料を、このような腸溶層またはコーティング剤に使用することができる。
【0119】
本発明の追加の実施形態として、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含むキットが挙げられる。
【0120】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下に続く実施例において開示された技法は、本発明を実施する上でよく機能することが本発明者によって発見された技法を表すもので、したがってこの実施のための好ましい方法を構成すると考えることができることは、当業者には理解されるはずである。しかし、当業者は、開示された特定の実施形態では多くの変更を行うことができ、しかも本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに、同じまたは同様の結果を得ることができることは、本発明の開示を考慮すれば、理解されるはずである。
【実施例】
【0121】
本発明において使用されているドロネダロンは、当技術分野で周知であり、市販されている。ラノラジンもまた市販されており、または従来の方法、例えば、全体の開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,567,264号において開示された方式によって調製することができる。さらに、全体に渡り使用している略語は、以下の意味を有する:
μM マイクロモル濃度
cm センチメートル
kg キログラム
mA ミリアンペア
min 分
mm ミリメートル
mM ミリモル濃度
ms ミリ秒
MΩ メガオーム。
【0122】
(実施例1)
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによるナトリウムチャネル依存性パラメータの心房選択的低下および心房細動の抑制:相乗的作用
単離したイヌの心房を使用した実験研究において、ラノラジンの別個の適用および慢性のアミオダロンは、ナトリウムチャネル電流(INa)依存性パラメータの心房選択的低下を起こし、AFを効果的に抑制することが示された9〜13。慢性のアミオダロンと急性のラノラジン(比較的に低濃度で)との組み合わせは、INa依存性パラメータの著しい心房選択的低下およびAFの非常に効果的な抑制を引き起こした14。本発明の研究では、急性ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、慢性のアミオダロンと急性のラノラジンとの組み合わせの相乗作用と類似の相乗作用を有し、これによって、効き目のある心房選択的電気生理学的作用をもたらし、心房不整脈の著しい抑制につながるという仮説を試験した。
【0123】
方法
冠状動脈灌流した心房試料および心室試料
単離した冠状動脈灌流したイヌの右心房(RA)および左心室(LV)の試料(約3×1.5×1cm)を使用して、実験を実施した。試料の単離および灌流は、以前に記載した通りであった9、15、16。簡単に説明すると、麻酔下の(ペントバルビタールナトリウム)成長した雑種犬(20〜30kg)から取り出した心臓から試料を切り離した。右心室の縁が結合した、折り畳まれていないRAをカニューレ処置し、右冠動脈の開口部を介して冷たい心停止液(4〜8℃)を灌流し、LVウェッジは、左冠状動脈の前室間動脈(left anterior descending artery)の対角枝(diagonal branch)を介して灌流した。灌流されなかった組織を剃刀ブレードで取り出した。切断した心室枝および心房枝を、絹糸を使用して結紮した。次いで試料を、温度制御された槽に移し、ローラーポンプの使用によりTyrode溶液で動脈灌流した。Tyrode溶液の組成(単位mM)は:NaCl 129、KCl 4、NaH2PO4 0.9、NaHCO3 20、CaCl2 1.8、MgSO4 0.5、およびD−グルコース5.5であり、95%O2および5%CO2(37±0.50C、pH=7.35)で緩衝化した。
【0124】
40kHzのサンプリングレートで浮動ガラス微小電極を使用して膜貫通活動電位(AP)記録を得た。試料が漬けられたTyrode溶液中に配置したAg/AgCl半電池からなる2つの電極を使用して、心房のまたは心室の、冠状動脈灌流した試料の2つの対側から1.0〜1.5cmの位置で、擬似心電図(ECG)を記録した。伝導時間は、10%の「P波」および「QRS」振幅を表すレベルにおいて、心房の「P波」および心室の「QRS群」の持続時間により概算した。興奮性の心臓拡張期の閾値(DTE)は、0.01mAステップで刺激強度を増加させることによって決定した。ペーシング周期長(CL)500ms(5msステップ;DTEの2倍(2 times DTE))における基本的拍動10回ごとに、毎回その後で早期の刺激を次第に、より短いS1−S2間隔で送達することによって、有効不応期(ERP)を測定した。ERPが、心室内の90%再分極(APD90)において測定された活動電位持続時間および心房内の70%再分極(APD70)において測定されたAPDを上回った時点で再分極後の不応性(PRR)が認められた。心室のERPは、APD90と一致するのに対して、心房のERPは、全般的にAPD70〜75と一致する9。1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1は、500msのCLから開始してペーシングCLを次第に短くすることによって測定した。
【0125】
安定したAP記録は、激しく収縮している灌流した試料において容易には得ることができなかった。実験条件あたりの、APの上向き値の記録されたもっとも大きな最大上昇レート(Vmax)を統計比較のために用いた。少なくとも100mVの振幅を有するAPのみが、分析において考慮された。もっとも大きなVmax判定基準を使用した。なぜならこれは、もっとも大きな振幅およびもっともネガティブな静止膜電位に関連するもので、完全またはほぼ完全な貫通を表すからである。Vmaxの使用依存性低下を決定する際に、各実験について500msのCLにおけるVmax値に値を標準化し、次いで平均した。
【0126】
ピークINaに対するこれらの依存性のため、Vmax、DTE、PRR、および伝導時間ならびに1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1間隔は、INa依存性パラメータと呼ばれている。
【0127】
実験プロトコル
冠状動脈灌流した試料に対する平衡期間は、30〜120分であった。5μMラノラジン、10μMドロネダロン(ラノラジンの30分ウォッシュアウトの後)、およびこれらの薬剤の組み合わせに、少なくとも20分間この試料を曝露した。時間制御実験において、電気生理学的パラメータを変化させる薬物のそれぞれの効果における定常状態を達成するには、20分間で十分であった。他に指示されない限り周期長(CL)500および300msにおいて記録を取った。Vmax、QRS、DTE、およびCTの変化を、500から300msのCLへの加速後、心房の15から25番目の拍動およびLVの16から20番目の拍動を測定し、平均した。定常状態は15拍以内で達成された。1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1ペーシングレートを決定する場合、刺激強度はDTE×2であり、500msのCLで決定された。
【0128】
ラノラジン、ドロネダロン、およびこれらの組み合わせの抗AF能力を評価するため、本発明者らは、アセチルコリン(ACh、1.0μM)媒介性AFモデルを使用した。AChの存在下、早期の電気的刺激(PES)または急速なペーシング(CL=50〜80ms)は、イヌの冠状動脈灌流した右心房試料の100%において持続性AFを誘発する9。AFの誘発を予防する(シリーズ1)上記薬物の効果を評価した。別のセットの試料において、持続性AFを終結させる(シリーズ2)これら薬剤の能力を評価した。第1のシリーズでは、5μMラノラジン、10μMドロネダロン、またはこれら薬剤の組み合わせを用いた灌流開始から20〜30分後、AChを灌流液に添加した。続いてこれに不整脈を電気的に誘発する試みが行われた。第2のシリーズでは、ACh媒介性の持続性AFの間(不整脈開始から5〜6分後の時点)、灌流液に上記薬剤を添加した。薬物がAFを終結した場合、本発明者らは、急速なペーシングを用いて不整脈を再誘発するよう試みた。
【0129】
上面を液で洗い流した肺静脈スリーブの試料
肺静脈(PV)スリーブ試料(約2.0×1.5cm)を、イヌの左心房から単離した。試料の厚さは、約2mmであった。左の上肺溝PVを、大部分の実験で優先的に使用した。試料を小さな組織浴(tissue bath)に配置し、および以下の組成物(mM)のTyrode溶液で上面を液で洗い流した(superfused):129 NaCl、4 KCl、0.9 NaH2PO4、20 NaHCO3、1.8 CaCl2、0.5 MgSO4、5.5 グルコース、95%O2/5%CO2(35±0.5℃)で緩衝化。基本的周期長(BCL)1000msで、平衡期間(1h)の間、先端以外は絶縁された銀バイポラー電極を介して送達される電気パルス(1〜3msの持続時間、心臓拡張期の閾値強度の2.5倍)を使用してこのPV試料を刺激した。高インプットインピーダンス増幅システム(World Precision Instruments、モデルKS−700、New Haven、CT)に接続した、3M KCl(10〜20MΩDC抵抗)を充填したガラス微小電極を使用して、膜貫通電位を記録した(サンプリングレート40kHz)。以下のパラメータを測定した:DTE、Vmax、および1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1。アセチルコリン(ACh、1μM)、イソプロテレノール(1μM)、高カルシウムまたはこれらの組み合わせを使用することによって、後期段階3 EAD、DADおよび誘発活性を誘発した。副交感神経系のおよび交感神経の刺激の組み合わせが、PVスリーブ試料における後期段階の3 EADの発症を促進することが示されたのに対して17、18、交感神経の刺激は、DADの発症の原因となる状態であるカルシウム過負荷をもたらすことが公知である19、20。DADまたはEADは、次第により速いレートで導入される20拍の連続刺激、これに続く休止を使用して引き出された。
【0130】
薬物
ドロネダロンおよびラノラジンは、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)および蒸留水にそれぞれ溶解して、10mMの保存溶液とした。アセチルコリンおよびイソプロテレノール(共に、SIGMA、MO)を蒸留水に溶解して、それぞれ10および1mMの保存溶液とした。
【0131】
統計
複数の群のための一元配置分散分析(ANOVA)または反復したANOVA測定を使用して統計分析を実施し、続いて必要に応じて、Bonferroni検定を実施した。すべてのデータを平均値±SDとして表す。統計的有意性は、p<0.05と仮定した。
【0132】
結果
冠状動脈灌流した右心房および左心室の試料
ラノラジン(5μM)は、心房においてAPD90を適度に延長したが、心室試料におけるAPD90では統計的に有意な変更を引き起こさなかった(図1)。APD50は、心房または心室のいずれにおいてもラノラジンにより変化しなかった(図1)。ラノラジンのウォッシュアウトにより、APD90値は、対照レベルまで戻った。心房において、ドロネダロン(10μM)は、再分極を短縮し、CTにおけるAPD50の短縮に対して統計的有意に達した(図1)。心室試料において、ドロネダロンは、わずかにAPDを延長させたが、統計的有意に達しなかった。10μMドロネダロン含有溶液への5μMラノラジンの添加は、心房のAPD90を延長させたが、その一方で心室における統計的に有意でない短縮を引き起こした(図1)。APD50は、心房または心室のいずれにおいても、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせにより変化しなかった。
【0133】
別々に適用された場合、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)は両方とも、心房のAPD70よりも長くERPを延長させ、PRRの発症につながった(図2)。PRRの程度は、ドロネダロンの後よりもラノラジンの後の方が大きかった。心室ERPは、ラノラジンまたはドロネダロンのいずれかにより変化しなかった。ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、心房におけるERPの有意な相乗的延長を引き起こしたが、心室におけるERPを変化させず、したがって著しい心房特異的PRRをもたらした(図2)。
【0134】
500msのCLで測定したVmaxは、心房においてラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)により低減したが、心室では低減しなかった(図3および4)。このペーシング周期長では、これらの薬物の組み合わせは、心房および心室の両方においてVmaxの低下につながったが、これは前者において圧倒的であった。心房では、ドロネダロンおよびラノラジンのそれぞれを単独で使用した場合よりも、これら薬物を組み合わせた場合の方が、500から300msのCLへのペーシングレートの増加は、はるかに大きなVmaxの低下を引き起こした(図3および4)。心室では、このペーシングレートの加速は、試験したすべての条件下で、Vmaxの穏やかな低減にしかつながらなかった。
【0135】
心房における「P波」および心室における「QRS群」の持続時間を使用して見積もった伝導時間は、500msのCLにおいて、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)のいずれかによって、心房および心室において有意に変化しなかった(図5)。これら薬物の組み合わせは、500msのCLにおける「P波」および「QRS群」の統計的に有意な延長をもたらした。より速いペーシングレート(CL=300ms)では、心房の伝導時間は、ラノラジンにより統計的に有意に増加したが、心房ではドロネダロンにより有意に増加せず、どちらの薬剤も心室心筋における伝導時間に有意な変更を引き起こさなかった。300msのCLでは、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、心房および心室の両方において有意な伝導の遅延を起こしたが、非常により明白な遅延は、心室よりも心房で起きた。
【0136】
CL500および300msのペーシングにおいて、心房または心室のいずれかにおいて、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)のいずれかにより、DTEは有意に影響を受けなかった(図6)。これらの薬物を組み合わせた場合、試験した両方のペーシングレートにおいて、心房および心室の両方において、DTEは有意に増加した。組み合わせの効果は、心房の中で、および300msのCLにおいてもっとも明白であった(図6)。
【0137】
別のナトリウムチャネル媒介性パラメータである、1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1間隔は、心房および心室の両方において、ラノラジンにより増加したが、ドロネダロンにより増加しなかった(図7)。ラノラジンは、このパラメータにおいて、心室よりも心房においてより大きな増加を引き起こした。ドロネダロンとラノラジンとを組み合わせた場合、もっとも短いS1−S1間隔は、心房および心室の両方において有意に増加したが、変化の程度は、心室よりも心房ではるかに大きかった。
冠状動脈灌流した右心房の心房細動
持続性AFは1μMのAChの存在下、100%の心房において誘発された9。冠状動脈灌流した心房試料の、比較的低濃度のラノラジン(5μM)を用いた前処置は、2/7心房において持続性AFの誘発を阻止した(表1)。別の心房試料において、5μMのラノラジンは、5つの心房のうち1つの心房においてのみ持続性AFを終結させるのに効果的であった(表2)。ドロネダロン(10μM)単独では、AFの誘発を予防することにおいて、および持続性AFを終結させるのに効果的でなかった(表1および2)。ドロネダロン(10μM)およびラノラジン(5μM)を組み合わせた場合、持続性AFの誘発を予防するための成功率は、著しく増加した(表1によると8/9心房において)。この薬物の組み合わせは、10個の心房のうちの6つの心房において持続性AFを終結させた(表2)。AFは、薬物の組み合わせに曝露された6つの試料のいずれにおいても再誘発は可能でなかった。しかし、6つの心房のうちの2つの心房において、持続性の心房粗動または頻拍(CL≧160ms)は、急速なペーシングおよび/またはPESにより誘発することができた。
【0138】
表1:単離したイヌの冠状動脈灌流した右心房における、心房の興奮性およびACh媒介性の持続性AFの誘発に対する、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)、およびこれらの組み合わせの効果
【0139】
【表1】
提示した活動電位持続時間(APD)および有効不応期(ERP)データは、冠状動脈灌流した心房の櫛状筋領域から、500msのCL(n=5〜15)において得た。*対照に対して<0.05;†アセチルコリン単独(ACh、1.0μM)に対してP<0.05。‡ラノラジン+AChおよびドロネダロン+AChに対してP<0.05。もっとも短いS1−S1=1:1活性化を可能にするもっとも短いCL(周期長500msで決定した2×刺激強度閾値で)。
【0140】
表2:単離したイヌの冠状動脈灌流した右心房における、持続性のACh媒介性AFを終結させその再誘発を予防する、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)、およびこれらの組み合わせの効果
【0141】
【表2】
上面を液で洗い流した肺静脈
図9は、PVスリーブ試料のペーシングレートの急激な変化後のVmaxに対する、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの相乗的作用を例示している。パネルAは、基本的周期長(BCL)の5000から300msへの変化後のVmaxトレースを示し、パネルBは、Vmax変化の複合データを示している。5000から300msのCLのレート変化は、対照条件下ではVmaxにおいて13%の低減を誘発し、ラノラジン(5μM)もしくはドロネダロン(10μM)単独またはこれらの組み合わせ後では、それぞれ19、20および50%の低減を誘発した。
【0142】
図10は、Vmaxの回復レートに対する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる効果を例示しており、これは、PVスリーブ試料におけるナトリウムチャネルからの薬物のブロック解除を反映している。グラフは、300msのCLにおけるS1−S2の関数としてVmaxを示している。ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせへの試料の曝露は、ラノラジンまたはドロネダロン単独の場合よりも、Vmaxのはるかに大きな低減およびはるかに遅い回復をもたらした。
【0143】
300msのCLにおいて、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)は、単独で、興奮性の心臓拡張期の閾値(DTE)の有意な変化を引き起こさなかった。DTEは、ラノラジンおよびドロネダロン添加後、それぞれ0.21±0.07から0.24±0.09mAおよび0.26±0.09mA(n.s)に増加した。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、DTEにおいて、0.21±0.07から0.53±0.11mAへの有意な増加を引き起こした(p<0.05、n=4)。
【0144】
PVスリーブ試料において、1:1応答を可能にするもっとも短いペーシングCLは、未処置の対照で116±8msであり、ラノラジン(5μM)で121±13msであり、ドロネダロン(10μM)の後では120±12msであり、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの後では200±67msであった(p<0.05、n=4)。したがって、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、興奮性を低減し、PVスリーブにおいて、1:1活性化を可能にするCLの相乗的増加を誘発した。
【0145】
以前の研究は、ラノラジン(10μM)は、PVスリーブのACh、イソプロテレノール、または高度な[Ca2+]o+急速ペーシングへの曝露により引き出される、後期段階3の初期の後脱分極(EAD)、遅延後脱分極(DAD)および誘発活性を単独で抑制することを示した11。本発明の研究では、急速なペーシングレートにおける20拍の連続拍動に加えた、イソプロテレノールおよび/または高カルシウムに続いて誘発されるDADおよび誘発活性が、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)単独により低減したが、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせへの曝露により消滅した(図11〜12)(n=6)。
【0146】
考察
本発明者らのデータは、AFの実験モデルにおいてナトリウムチャネル依存性パラメータを低下させ、AFおよび誘発活性を抑制するドロネダロン(10μM)とラノラジン(5μM)との組み合わせの強力な心房選択的作用を実証している。ドロネダロン(10μM)またはラノラジン(5μM)を単独で使用した場合、心房および心室の両方における電気生理学的変化は、わずかであるか、または皆無のいずれかであり、これらの抗AF効力は低かった。両薬剤の優れた安全性プロファイルを考慮して、本発明者らの結果は、ラノラジンおよびドロネダロンの相乗的心房選択的作用は、安全でありしかも効果的である、AFのための独自の併用療法を提供することができることを示唆している。
【0147】
心房細動の発症および維持の原因となる機序
AFの開始には、誘発因子および基質の両方の発生が関与している。PV筋のスリーブは、発作性AFの開始に関与している期外収縮の供給元であることが多いことはよく認められている26。AFに対して誘発因子としての役割を果たす異所性の活性は、再入、DAD誘導性または後期段階3 EAD誘導性誘発活性の結果として発生し得る11、27。再入の開始に対する主要な基質は、ERPの短縮に続発する、波長の低減に関与する。AFの維持は、電気的および構造的の両リモデリングにより促進される。電気的リモデリングは、心房の活動電位の短縮により引き起こされるERPのさらなる短縮に関与する28。したがって、AFの管理に対する薬理学的手法は、ERPを延長することが可能な機序を標的とする29。本発明の研究は、AFの開始および維持に関連する誘発因子および基質の両方を排除するラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの強力な作用の証拠を提示している。
【0148】
ドロネダロンの電気生理学および抗不整脈の効力
急性ドロネダロンが生み出すと報告されている、APDを変化させる作用は、可変ではあるが、一般的に少ないか、またはまったくない30〜34。APDは、イヌおよびモルモットの心臓から単離した上面を液で洗い流した心室試料において、10μMまでのドロネダロンの濃度において変化しなかった30、31。イヌの左心室の上面を液で洗い流した組織スライス試料において、高濃度のドロネダロン(30μM)はAPD90を短縮しなかった(300〜800msのCL)か、またはわずかなAPD90の短縮(2000msのCLにおけるM細胞試料中の7%短縮)を引き起こした34。上面を液で洗い流したウサギの心臓試料において、急性ドロネダロンは、心室のAPDを延長させたが、心房のAPDを短縮した32。したがって、急性ドロネダロンのAPD(図1)の作用についての本発明者らのデータは、以前に報告されたものと全般的に一致している。
【0149】
心室および心房のERPは、インビボのイヌにおける急性ドロネダロン後、23%まで延長されると報告され、両腔所におけるERP延長の程度は同様であった35。インビボで慢性AVブロックを有するイヌにおいて、ドロネダロンは、心室ERPを変化させなかった36。本発明者らの現在のインビトロの調査において、ドロネダロンは、心房および心室のERPを両方とも延長させたが、心房において優先的に延長させた(それぞれ9および4%延長)。ドロネダロンによる心房ではなく心室におけるERP延長は、同等のAPD90の延長を伴った(図2)。したがって心室ではなく、心房におけるERPの増加は、PPRの発生によるものである。したがってドロネダロンは、ERPを延長させる心房選択的作用を生み出す。
【0150】
急性ドロネダロン(10μM)は、ウサギの、心房と心室との両方の上面を液で洗い流した試料(1000msのCL)において、Vmaxの比較的に小さな低減を生み出すことが報告されている33。さらに急速なペーシングレート(125msのCL)で、10μMドロネダロンは、上面を液で洗い流したウサギ心房試料において、Vmaxを16%だけしか低減しなかった33。ドロネダロン(10μM)は、上面を液で洗い流したモルモット乳頭筋においてVmaxを14%低下させた(1000msのCLで)31。イヌの心室筋およびプルキンエ線維の上面を液で洗い流した試料において、ドロネダロン(10μM)への急性の曝露は、Vmaxを有意に低減しなかった(また1000msのCLで)30。したがって、本発明者らの研究の中で観察されたVmaxに対する急性ドロネダロンの相対的な穏やかな作用は、以前に報告されたものと一致する。
【0151】
興味深いことに、いくつかの臨床研究が、洞調律の長期維持に対するドロネダロンの抗AF効力を示してきたが4、5、本発明者らは、いずれの実験モデル(急性または慢性)においてもAFに対するドロネダロンの効力を評価している任意の省略なしの刊行物を発見することができなかった。本発明者らはまた、急性ドロネダロンの抗AF能力を試験したいかなる臨床研究をも認識していない。したがって、本発明者らは、AFを抑制する急性ドロネダロンの作用は比較的弱いという本発明者らの結果を、任意の以前の前臨床研究または臨床研究と比較することができない。急性ドロネダロンは、動物モデルにおいて、虚血/再灌流に関連した心室不整脈37および長いQT症候群36を効果的に抑制することが示されている。
【0152】
利用できる臨床データは、AF患者における洞調律の維持に対するドロネダロンの長期間の効力は、アミオダロンのものより劣っていることを示している2、3。DIONYSOS治験におけるアミオダロンとドロネダロンとの間の直接比較は、AFの再発率はドロネダロンで63%であり、アミオダロンで42%であった(6カ月の追跡調査で)ことを示した。組み合わせたEURIDISおよびADONIS治験において、AFの再発は、1年の追跡調査で、プラシーボを摂取した患者の75%と比較して、ドロネダロンで処置した患者の64%において生じた5。AFを洞調律へと変換するドロネダロンの作用に関連するデータは、比較的少ない。ドロネダロンを用いた持続性AFの変換率は、薬物処置開始後第5〜7日目に測定した場合、プラシーボアームにおける3.1%に対して、5.8〜14.8%(800〜1600mg/日)の範囲であった4。本発明の研究における、AFを抑制する急性ドロネダロンの比較的弱い作用は、臨床におけるAFに対するその薬物の非常に穏やかな作用と一致している。AFを抑制するおよびその誘発を予防するドロネダロンの作用の著しい増強は、本発明者らの実験モデルにおいてラノラジンと組み合わせた場合、臨床における同様の増強の良い前兆である。
【0153】
本発明者らは、Vmax、DTE、ERP、伝導時間、および1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1を含めたナトリウム−チャネル依存性パラメータを抑制するドロネダロンのかなり軽度の心房選択的作用を観察した。これは、著しい心房選択的電気生理学的作用を引き起こす慢性アミオダロンと対照的である10、12。心臓の電気生理学的作用における主要な差が、急性アミオダロン対慢性アミオダロンについて指摘されてきたが、急性ドロネダロン対慢性ドロネダロンについてはこれが当てはまらないようであることは注目に値することである30、38。これは、ドロネダロンの排出の半減期がアミオダロンよりもはるかに速いことに一部起因している可能性がある(約24時間に対して数カ月)38。
【0154】
ラノラジンの電気生理学および抗不整脈の効力
本発明者らは、5μMのラノラジンが、イヌの心房試料において穏やかな電気生理学的作用を引き出し、心室試料における作用はわずかから皆無であることを以前に報告した9、15。この濃度のラノラジンは、十分にその薬物の治療範囲内である(2〜10μM)。これらの知見は、現在の研究において確かめられている。APD90はわずかではあったが、心房において5μMラノラジンにより統計的に有意に延長し、500msのCLでは心室には何の変化もなかった9。ナトリウムチャネル依存性パラメータは、心房においてラノラジン(5μM)により穏やかに低下し、心室では実際に何の変化もなかった。ラノラジンはまた、インビボでのブタにおけるERPの延長を心房で優勢に引き起こすことが示された13。
【0155】
5μMラノラジンの抗AF効力は、本発明者らの以前の研究においてACh媒介性AFモデルで試験しなかった。処置範囲の上端のより高濃度のラノラジンは、イヌの心房のインビトロ(10μMでの)9モデルおよびブタの心房のインビボ(約9μMの血漿濃度)13モデルにおける、迷走神経刺激を介した(vagally−mediated)AFの実験モデルにおいて強力な抗AF作用を発揮することを示した。AFの虚血−再灌流−イソプロテレノールモデルにおいて、5μMラノラジンは、心房試料の60%においてAFの誘発を予防することが観察された9。上面を液で洗い流した肺静脈試料において、10μMラノラジンは、細胞内カルシウム依存性DADおよび後期段階3 EAD誘導性誘発活性を効果的に抑制した11。ラノラジンはまた、患者における新しいAFの発症を低減し、AFを終結させることを示した39〜41。最近の研究は、「単回経口投与(pill−in−the−pocket)」法として使用される単一の高用量(2000mg)のラノラジンが、発作性AFおよび構造的心疾患を有する患者18人中13人においてAFを終結させるのに効果的であったことを示している41。便秘以外の有害作用は指摘されなかった。72%の変換率は、他に報告された「単回経口投与」法と同等であり、このことは、高い経口用量のラノラジンが、新しいまたは発作性AFを変換するための安全な薬剤として有用性を有し得ることを示唆している41。
抗不整脈療法のための薬物の組み合わせ:効力および安全性
本発明者らは、開口した、および不活化された状態のナトリウムチャネルブロックの組み合わせは、相乗的心房選択性ナトリウムチャネル阻害を生じさせることができ、したがって、心室において顕著な電気生理学的作用を引き出すことなく、AFに効果的となり得ると仮定した。この仮説の検証に従い14、本発明者らは、ドロネダロンは、アミオダロンと同類であり、同様の電気生理学的プロファイルを有するという点において、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせを考慮した38。本明細書中で論じた結果は、この概念の検証も提供し、大部分開口した、および不活化された状態のナトリウムチャネルブロッカーの組み合わせは、INa依存性パラメータを選択的に阻害し、したがってAFの誘発および再誘発を終結および予防する強力な心房選択的作用を発揮する相乗的作用へとつながり得るという仮説を支持するさらなる証拠を提示する(表1)。
【0156】
AF薬剤の薬理学的管理における重大な懸案事項は、心室不整脈および/または器官毒性の誘発に対する危険性である21。ナトリウムチャネルブロッカーは、特に構造的心疾患(例えばうっ血性心不全、心筋梗塞、肥厚など)を有する患者において、悪性の心室不整脈を誘発することが公知である。IKrブロッカーは、トルサード・ド・ポワンツ(Torsade de Pointes)(TdP)として公知の多形心室頻拍を誘発することが公知である。アミオダロンは、AF心臓除細動後の洞調律の長期的維持に対して最善の選択であると一般的に考えられている。アミオダロンは、まれにしか心室催不整脈(pro−arrhythmia)を生じさせず、心室に構造的欠陥のある患者に対して一般的に安全であるが、その一方で心外性合併症を引き起こす(処置の第1年目に15%まで、より長い期間の処置では50%まで42)。アミオダロン分子中のヨウ素部分が、主としてこれら有害作用の原因であると考えられている。ヨウ素化されていないアミオダロン誘導体であるドロネダロンは、アミオダロンの心外性毒性の危険性を低減することを意図して設計された。ドロネダロンは、AF患者において、アミオダロンと比較して、より安全であると一般的に考えられている3。しかし、重篤なうっ血性心不全(New York Heart Association(NYHA)クラスIIIおよびIV)が前から存在する患者において、ドロネダロンは、心不全症状を悪化させ、死亡率の増加につながった7。アミオダロンがまた、進行型心不全(NYHAクラスIV)を有する患者の死亡率を増加させることは注目に値することである43。ドロネダロンの臨床有用性は、その抗AF効力に限らない。ドロネダロンは、卒中発作の発症率を低減し、AF患者のレート制御特性を有することが示されている6、44。
【0157】
急性および長期間の両方の、ラノラジンの臨床使用は、構造的心疾患を有する患者においてさえも重大な有害作用を伴わなかった45、46。ドロネダロンとラノラジンとを組み合わせる論理的根拠は、安全性に関して、アミオダロンよりもドロネダロンが優れていることに基づく3、5。アミオダロンとラノラジンとの組み合わせと同様に14、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、強力な心房選択的抗AF作用を起こすが、有害作用を伴う可能性はあまりない。
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、AFを終結させることよりも、AF開始を予防することにおいてより効果的であった(表1および2を参照されたい)。これは、実験状況および臨床実践場面の両方において、大部分の抗AF薬剤に当てはまるように見え、この抗AF薬剤には、ラノラジン9およびドロネダロンが含まれる4。
【0158】
結論
イヌの心臓試料において、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ナトリウムチャネル依存性パラメータの強力な心房選択的阻害を引き起こし、心室において電気生理学的パラメータの変化をほとんど引き起こさないか全く引き起こさない濃度で、心房の不整脈を効果的に抑制する。これらの実験データは、個々の薬物に対して使用可能である臨床上の安全性データと一緒になって、この併用療法の潜在的な有効性および安全性を評価するように特に設計された臨床研究が保証されたことを示唆している。
【0159】
(実施例2)
パート1.モルモットの単離した心臓におけるドロネダロンおよびラノラジンの相乗的な変時作用および変伝導作用
麻酔
体重300〜350gの、いずれの性別のモルモット(Hartley)に、イソフルラン吸入により麻酔をかけた。
【0160】
モルモット心臓単離
モルモットの胸を切開し、心臓をすばやく取り出し、氷冷した改質Krebs−Henseleit(K−H)溶液中ですすいだ。改質K−H溶液の含有物は、(単位mM)117.9 NaCl、4.8 KCl、2.5 CaCl2、1.18 MgSO4、1.2 KH2PO4、0.5 Na2EDTA、0.14 アスコルビン酸、5.5 ブドウ糖、2.0 ピルビン酸(ナトリウム塩)、および25 NaHCO3であった。このK−H溶液に、95%のO2−5%のCO2ガスを持続性に供給し、pHを7.4の値に調整した。
【0161】
単離した心臓の灌流
Langendorff法によって心臓の灌流を行うために、切断した大動脈をガラスカニューレ上に移し、結紮法で固定した。37.0±0.5℃に温めた改質K−H溶液を用いて、10ml/分の一定流量で、大動脈の逆行性灌流をすぐに開始した。カニューレ内のサイドポートを使用して、灌流ラインを圧力トランスデューサ(AD Instruments、Australia)に接続して、冠状動脈の灌流圧(CPP)を測定した。左心室からの流体の流出を促進するため、僧帽弁のリーフレットを細いスプリングハンドル式ハサミで切り込んだ。心臓は、実験で心拍を測定するために自然に拍動するようにさせておくか、またはAV伝導時間を測定するための実験では、外部電極を使用して一定のレートでペーシングさせた。解剖および計測手段装備(instrumentation)が完了した後、心拍または刺激−ヒス束(S−H)間隔およびCPPを持続的にモニターした。各心臓は、薬物投与前の20〜40分間にかけて平衡化させておいた。実験の介入は、常に対照の測定の前後に行った。
【0162】
除外基準
研究から心臓を除外する基準は、1)50mmHg以上の安定したCPPが存在しないこと、2)安定した自発性心拍が得られないこと(心拍測定に対して)または心臓を一定レートでペーシングできないこと(S−H間隔測定に対して)、および3)実験中の心臓の劣化(CPPなどの測定されたパラメータの対照値の薬物投与前と薬物投与後との間の差>25%により示された通り)。薬物に応答するのに適した状態に心臓を維持するため、実験の全期間を、2時間に制限した。コンピュータに接続したPower Lab取得システム(AD Instruments、Australia)を使用して、各実験全体を通してCPPを持続性にモニターし、記録した。CPPの増加は、小血管の閉塞による薬物沈殿、薬物誘発性血管収縮、または虚血誘発性心筋拘縮のいずれかを示唆する一方、CPPの低下は、薬物誘発性心筋拘縮、薬物誘発性の血管拡張または心臓の計測手段を装備中の血管へのダメージのいずれかを示唆している。CPPに対する薬物の作用はこれらの研究において何も指摘されなかった。
心臓の電気的活性の測定
自発性心拍測定
自発性心房レート(spontaneous atrial rate)に対する薬物の作用を測定するため、各心臓の心房を切除しないで、そのままの状態にしておいた。テフロン(登録商標)コーティングした単極電極を右心房に配置することによって、心房の脱分極を記録した。徐々に濃度が増すドロネダロンおよびラノラジンに曝露する前に(対照)および曝露中に、自発性心拍を、実験全体を通して持続的に記録した。各濃度の薬物の非存在下(対照)および存在下で、1分間の心拍の平均を計算し、プロットした。
【0163】
S−H間隔
S−H間隔に対する薬物作用の記録を容易にするため、洞房結節の領域を含めた左および右心房の組織の部分を、取り出し、これら両方の自発性心拍を低下させ、電極配置に対して心房中隔を曝露した。テフロン(登録商標)コーティングされた二極電極を、心房内中隔の壁に配置し、心臓をペーシングさせた。心臓は、固定レート3.2Hzで電気的にペーシングさせた。刺激は、刺激発生器(モデル48、Grass Instruments、W.Warwick、RI)により提供され、刺激単離ユニットを介して、3msの持続時間の方形波パルスとして、および少なくとも2倍の(twice)閾値強度で、心臓まで送達された。
【0164】
AVジャンクション近くの心房中隔の右側に配置されたテフロン(登録商標)コーティングされた単極電極を使用してヒス束電気記録図を記録した。信号は、10ms/cmのスイープスピードで、オシロスコープスクリーン(Tektronix Inc.、Beaverton、OR)上に、およびコンピュータモニター上に、持続的にリアルタイムで示された。第1のペーシング人工物から、ヒス束信号の最大上行性動揺までの持続時間をS−H間隔として使用した。
【0165】
単離した、灌流した心臓の実験のための実験プロトコル
実験開始のときに、食塩水を心臓に灌流し、心拍またはS−H間隔のいずれか、およびCPPが、少なくとも5〜10分間にわたって一定のままになるまでこれを続けた。
【0166】
ドロネダロン(Dron)、ラノラジンまたはこれらの組み合わせを、様々な濃度で、心臓に注入した。各濃度のDronを約20分間注入することによって、記録する定常状態の応答を可能にしたのに対して、各濃度のラノラジン(Ran)を10分間注入することによって、記録する定常状態の応答を可能にした。次いで薬物投与を中断し、食塩水投与を開始することによって、薬物ウォッシュアウトを始めた。
【0167】
モルモット左心室から単離した単一筋細胞においてイソプロテレノールで誘発させた遅延後脱分極(DAD)による振幅の測定
コラゲナーゼ消化によりモルモット心臓から筋細胞を単離した。現在のクランプ方式におけるパッチクランプ技法を使用して筋細胞活動電位を記録した。1Hzの周波数で、毎10秒ごとに適用される、連続した8つの脱分極パルスを使用して活動電位を刺激した。DADは、50nMイソプロテレノール(ISO)を用いた筋細胞の灌流により引き出した。DADの振幅を電子工学的に測定した。ISOの存在下で、薬物処置がDADの振幅を低減することができるかどうか決定するために、試験品(ラノラジン、ドロネダロン、またはこれらの組み合わせのいずれか)を、ISOの継続した存在下で、筋細胞灌流浴槽中に添加した。
【0168】
パート2.メスのウサギの単離した心臓におけるドロネダロンおよびラノラジンの単独および組み合わせによる効力および安全性
実験試料
各ウサギは、6mg/kgのキシラジンおよび40mg/kgのケタミンの筋肉内注射を使用して鎮静させ、そして次いでケタミン(15mg/kg)+キシラジン(4mg/kg)の1.5ml食塩水中「カクテル」を使用して麻酔下においた。ケタミン/キシラジンカクテルを、i.v.ボーラスとして周縁の耳静脈を介して投与した。感覚消失を確かめた後、胸部を開き、心臓をすばやく切除した。心臓は、改質Krebs−Henseleit(K−H)生理食塩水溶液中に室温で配置した。K−H溶液は以下を含有した(単位:mmol/L):NaCl 118、KCl 2.8、KH2PO4 1.2、CaCl2 2.5、MgSO4 0.5、ピルベート 2.0、グルコース 5.5、Na2EDTA 0.57およびNaHCO3 25。この溶液に持続的に95%O2および5%CO2のガスを供給し、そのpHを7.4に調整した。大動脈を急速にカテーテル処置し、Langendorff法により、36〜36.5℃に温めたK−H溶液を用いて、20mL/分の割合で、ローラーポンプ(Gilson Minipuls3、Middleton、WI)により、心臓を灌流した。大動脈のカテーテルのサイドポートから、CPPを測定した(Biopac MP 150圧力トランスデューサ、Goleta、CAを使用して)。左心室(LV)の腔所からの流体の流出を容易にするため、細いスプリングハンドル式ハサミで僧帽弁のリーフレットを切り込んだ。右心房の壁を部分的に取り出した。
【0169】
完全なAVブロックが、AV結節領域の温熱切除により誘発された。自発性心室レート(すなわち、心室補充収縮調律)は、AV結節除去が成功した後の数拍/分であった。テフロン(登録商標)コーティングされた二極電極を、右心室中隔に配置して、心臓をペーシングさせた。幅3msおよび閾値振幅の3倍の電気的刺激を、Grass S48刺激器(W.Warwick、RI)を使用して、実験全体を通して1Hzの周波数で、ペーシング電極に送達した。
【0170】
心室ペーシング開始後、30〜40分の平衡遅延により、心拍(およびCPP)が、優れた品質の単相性活動電位(MAP)記録を記録するための本質的な実験条件である、定常状態を達成することが可能となった。実験プロトコルの全期間は、2.5時間に制限され、この時間の間試料は、優れた安定度を示した。
【0171】
信号記録およびプロセシング
Harvard Apparatus Inc.(Holliston、MA)製の単相性活動電位(MAP)電極およびECG電極を、心拍(拍/分、またはbpm)、左心室MAPを記録するために使用し、そして二極ECG MAP電極は、その電極(electroide)をLV心外膜表面との接触を保つためのバネを有する円形ホルダー(circular holder)に結合させた、圧接(pressure contact)Ag−AgCl電極であった。2つのMAP電極を心房−心室弁のレベルの下の心外膜の心室自由壁上に配置し、基底のMAPの記録用に1つは底部に、アピカルMAPの記録用に1つは、尖部に配置した。電極信号を増幅し、実験全体を通して目視で監視するようオシロスコープ上に表示した。薬物濃度が変わる前に、薬物への各応答が定常状態に達することを保証するため、MAP持続時間(脱分極の開始から100%再分極まで)は、各薬物の注入期間全体を通して、スクリーン上のキャリパーを使用して測定した。信号は、その後の分析のためコンピュータハードディスクに保存した。Biopac増幅システムに結合した、単離した心臓のECG器具(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を使用して、二極心電図(ECG)を作製した。圧力トランスデューサ(BiopacまたはPowerLab)圧力測定システムを使用して、冠状動脈の灌流圧力を測定した。MAP、ECG、およびCPP信号をリアルタイムで適切に増幅させ、濾過し、サンプリングし、デジタル化し(Biopac MP150、Goleta、CAを使用)、コンピュータスクリーン上に表示した。すべての信号は、その後の分析用にコンピュータハードディスクに保存した。
【0172】
オリジナルMAPプロファイルを重ね合わせて平均信号を得、次いでSpike−II(Cambridge Electronic Design、GB)ソフトウエアへ移して、再分極が90%完了した(すなわち、MAPD90値)レベルでの、MAPの持続時間を測定した。
【0173】
ウサギ単離心臓研究に対する除外基準
以下の問題のいずれかは、研究から試料を排除する原因となった:(1)不安定なCPPまたは心拍;(2)持続性の早期心室波形(PVC)またはAV結節除去後の心室頻拍;(3)心臓への巨視的な解剖学的ダメージ;または(4)MAP信号の不安定さ。すべての試料の約10%が除外された。
【0174】
統計分析
データをプロットし、Prismバージョン5(Graph Pad Software、San Diego、CA)を使用して分析し、平均値±SEMとして表現した。同じ心臓における介入前および介入後の測定値の有意差を、反復測定の一元配置分散分析(ANOVA)、続いてStudent−Newman−Kaul検定を行って判定した。異なる群の心臓から、異なるレートで処置値を得た場合、反復測定の二元ANOVAを使用した。対応のあるまたは対応のないスチューデントt検定を使用して、同一でありまたは異なる実験からそれぞれ得た2つの平均の値の間の統計差を判定した。
【0175】
結果
モルモット心臓におけるドロネダロン、ラノラジンおよびそれらの組み合わせの、AV結節性伝導(S−H間隔)に対する作用
ラノラジンは、β−アドレナリン作用性レセプターの弱いアンタゴニスト(その活性化はAV伝導を増加できる)であり、弱い電圧依存性およびレート依存性ナトリウムチャネルブロッカーであるが、AV結節性伝導を変化させることは示されていない。ドロネダロンは、L型カルシウム電流、ならびにナトリウム電流を低下することができ、これらの作用は、AV伝導の遅延をもたらし得る。両薬物を単独および組み合わせた場合の作用を決定するため、S−H間隔の持続時間(AV結節を介した電気的刺激伝導の速度の代理となるもの)を、薬物(複数可)の非存在下および存在下で測定した。ドロネダロンまたはラノラジンのいずれかは、第2度AVブロック(すなわち、拍動の降下)を引き起こすことなく、AV伝導のわずかな遅延を引き起こした。図13に示されているように、ドロネダロン(0.3μM)またはラノラジン(3μM)は、3、4および5Hzのペーシングレート(n=14および13、p<0.05、図13A)におけるS−H間隔が、小さいが、対照(薬物なし)と比較して有意な増加を引き起こした。薬物の組み合わせのもっとも大きな作用は、最高のペーシングレート(すなわち、5Hz)において観察された。ドロネダロンまたはラノラジンの組み合わせは、S−H間隔(n=7、対照に対してp<0.01、図13A)のはるかに大きな増加を引き起こした。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせによって引き起こされたS−H間隔のこの増加は、両薬物の個々の作用の計算した合計(すなわち、Σ(R+D)、図13A)より有意に大きかった(p<0.01)。この結果は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、心房細動の場合のように、心房レートが高度である場合にAV伝導を遅延させるより大きな作用を有することができることを示唆している。この作用は、心房細動の間の心室レートの制御を提供するのに有益となり得る。
【0176】
ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせはまた、AV伝導の第2度ブロックが単離した心臓において生じることが観察された、心房のペーシングレートを低下させた。データは、第2度AV結節性伝導ブロックに伴うWenckebach周期長として表現されている(図13B)。Wenckebach周期長は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによって有意に増加した(n=7心臓、対照(薬物なし)に対してp<0.01、図13B)。この所見は、心房細動の間のように心房レートが増加した場合の心室レートの制御を提供する薬物の組み合わせの作用を裏付けるものである。
【0177】
モルモット心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの自発性心房レート(ネガティブな変時作用)に対する作用
薬物の非存在下における対照の平均心房レート(n=17心臓)は231±4bpmであった(図14)。ラノラジン(RanまたはR、3μM)、ドロネダロン(DronまたはD、0.3μM)およびその2つの組み合わせは、同じ心臓から記録された対照の自発性心房レートにおいて、小さいが有意ではない(p>0.05)低下を引き起こした(図14)。対照的に、カルシウムチャネル阻害剤ベラパミル(V、10μM)は、自発性心房レートを、225±3から25±24拍/分へと有意に低下させた(n=3、p<0.01、図14)。この所見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、洞調律の間、心拍を低下させないことを示唆している。
【0178】
メスのウサギ心臓における、単相性活動電位持続時間(MAPD)を増加させるラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせについての濃度−応答の関係
ドロネダロンは単独でMAPD90のわずかではあるが有意な増加を引き起こした(図15A)。ラノラジン(0.1〜100μM)は、MAPD90における177±10から215±6msへのはるかに大きな増加22±6%を引き起こした(n=4、p<0.01、図15B)。ラノラジンの作用に対する心臓の過敏性は、ドロネダロンにより増加しなかった(図15C、16A)。それどころか、心室活動電位の持続時間を増加させる6および10μMラノラジンの作用は、濃度依存性方式においてドロネダロンにより減弱された(図15D、16B)。この所見は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ラノラジン単独よりも、心室活動電位持続時間およびQT間隔のより小さな延長を引き起こすことができることを示唆している。したがって、ドロネダロンをラノラジンと組み合わせることによって、ラノラジンによるQT間隔の延長に伴う任意の潜在的危険性を低減することができる(ただし、ラノラジンによるQT間隔の延長は、催不整脈であるとまだ示されていない)。
【0179】
E−4031で処置したウサギ単離心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる抗不整脈作用
E−4031、すなわちN−[4−[[1−[2−(6−メチル−2−ピリジニル)エチル]−4−ピペリジニル]カルボニル]フェニル]メタンスルホンアミド(Tocris Bioscience、Ellisville、Missouriから入手可能)と命名されたIKr阻害剤は、メスのウサギ心臓において、濃度60nMで、トルサード・ド・ポワンツ(TdP)心室頻拍(薬物の非存在下で観察されていない)の発症率を著しく増加させ(図17〜20)、E−4031の存在下、初期の後脱分極の発生を低減する(EAD;活動電位の最終の再分極以前に、1つ以上の脱分極としてMAP記録に見られる)(図18〜20)。ドロネダロン(0.3〜10μM)は、TdP(図17A)およびEAD(図18C、Dおよび19F)の発症率、特に心臓のペーシングの3秒の休止後のTdP(図18B、D)を低下させたが、消滅させはしなかった。ドロネダロンとラノラジン(6および10μM)との組み合わせは、ドロネダロン単独へは最大に応答しなかった心臓において、60nMのE−4031の存在下、TdPのエピソードをさらに低減し、さらに消滅させた(図17、19、および20)。この知見は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ドロネダロン単独よりも、TdP心室頻拍の誘発を予防するのにより効果的であることを示している。
【0180】
アセチルコリンで処置したウサギ単離心臓における、心房細動に対するラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用
早期の、プログラムされた心房の電気的刺激(すなわち、S1S2プロトコル)は、アセチルコリン(0.6〜1μM)に曝露した12の心臓のうちの12の心臓(100%)において非持続性心房細動(AF)を引き起こした(図21、22)。ラノラジン単独では、10および30μMの高濃度でのみAFエピソードの誘発性を低下させた(図21、左のパネル)。ドロネダロン(0.3μM)単独では、5つの心臓のうち1つのみが、誘発性のAFを消滅させた(図21、右のパネル)。0.3μMドロネダロン存在下(図21、右パネル)、ラノラジン(6μM)は、AFの誘発性を40%までさらに低下させ(5つの心臓のうち2つ)、AFの持続時間を低減した(図22)。フレカイニド(ここでは、ACh誘発性AFを終結させることが公知のポジティブコントロールとして使用)は、試験したすべての5つの心臓において、AChの存在下で、AFのすべてのエピソードを消滅させた(図21、右のパネル)。この知見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれの薬物を単独で使用するよりも、AFを誘発するアセチルコリンの作用を防止するのにはるかにより効果的であることを示唆している。アセチルコリンは、心臓の副交感神経系のニューロトランスミッターであるため、アセチルコリン活性化された過分極の電流IKAch、Adoは、AFを有する患者の心房細胞で増加することが報告されているため、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、疾患を罹りやすい患者において、AFの発症率を低減するのに有益となり得る。
【0181】
後期ナトリウム電流(後期INa)を低減するドロネダロンの作用
ラノラジンは、心臓において後期INaを低減することが実証されたが、これは、抗狭心症および抗不整脈作用の主な機序として一般に認められている。ドロネダロンの後期INaに対する作用は報告されていない。したがって、本発明者らは、ヒト心臓ナトリウムチャネル遺伝子NaV1.5を発現するHEK293細胞を、後期INaエンハンサーテフルトリンとともにインキュベーションすることにより誘発される後期INaに対するドロネダロンの作用を決定した。ドロネダロンは、濃度依存的方式により、テフルトリン誘導性の後期INaを低減した(図23)。この結果は、ラノラジンと同様に、ドロネダロンは後期INaを低減することができることを示している。したがって、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、後期INaを低減すると予測することができる。心臓における後期INaの低減は、心房細動の患者および動物モデルにおいて、心房不整脈の低減に関係するものであった。
【0182】
イソプロテレノール(Iso)で誘発させた遅延後脱分極(DAD)の振幅を減少させる、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用
カテコールアミンおよびβ−アドレナリン作用性受容体アゴニストイソプロテレノールが、心臓の筋細胞において、Na+およびCa2+過負荷につながり得るL−型カルシウムチャネル電流および後期Na+電流(後期INa)の増加を引き起こすことは公知である。認められた、Ca2+過負荷の催不整脈の結果は、遅延後脱分極(DAD)の発生への傾向である。DADは、心臓における異所性不整脈の活性の公知の誘発因子である。ドロネダロン(図24)およびラノラジン(図25)は両方とも、単独および組み合わせて(図26)、モルモット心臓の心室から単離した筋細胞において、イソプロテレノール(50nM)誘導性DADの振幅を低減した。ドロネダロン(100nM)およびラノラジン(3μM)の作用は、相加的であった。同様に、30nMドロネダロンおよび3μMラノラジンの作用も相加的であった(示されていない)。この所見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、心房および心室の両方の不整脈へとつながる異所性の電気的活性(すなわち、DAD)の誘発因子の1つを低減する有益な作用を有することができることを示している。カテコールアミン誘発性の頻脈性不整脈は、心不全および虚血性心疾患を有する患者において、一般的であるので、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、これら疾患を有する患者の不整脈の発症率を減少させることができる。
【0183】
【数2】
【0184】
【数3】
【0185】
【数4】
【0186】
【数5】
【0187】
【数6】
【0188】
【数7】
【0189】
【数8】
【0190】
【数9】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2009年12月21日に出願された米国仮特許出願第61/288,739号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、治療有効量またはそれ以下の量の、ラノラジンまたは薬学的に許容されるその塩およびドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩の共投与により、心房細動および/または心房粗動を処置および/または予防する方法に関する。本発明はまた、このような共投与に適した薬学的処方物にも関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
心房細動(AF)は、もっともまん延している不整脈であり、この発症率は年齢とともに増加する。80歳の年齢を過ぎたすべての人々の8%は、この種類の異常な心臓調律を経験し、AFは、心臓調律の障害のための入院の3分の1の割合を占めると見積もられている。米国単独でも、220万人を超える人々が、AFに罹患していると考えられる。非特許文献1。心房細動は、無症候性のことが多いが、動悸または胸痛の原因となり得る。延長した心房細動は、うっ血性心不全および/または卒中発作(stroke)の発症をもたらすことが多い。心不全は、心臓が低減した心臓効率を埋め合わせようと試みるために発症する一方、卒中発作は、血栓が心房内に形成し、血流へと運ばれ、脳内に留まる場合に生じ得る。肺塞栓もまたこのように発生し得る。
【0004】
AFを処置するための現行の方法として、電気的および/または化学的心臓除細動(cardioversion)およびレーザー除去が挙げられる。抗凝血剤、例えばワルファリン、ダビガトラン、およびヘパリンなどが、卒中発作を回避するために通常処方される。レート制御と調律制御(rate and rhythm control)との間の選択に関して、現在いくつかの議論が生じているが(非特許文献2を参照されたい)、レート制御は、βブロッカー、強心性配糖体、およびカルシウムチャネルブロッカーの使用により通常達成される。
【0005】
もっとも一般的な抗不整脈薬の1つは、アミオダロンであり、これは、一般的に、急性AFおよび/または慢性AFを含めた、急性不整脈と慢性不整脈との両方に対して投与される。残念なことに、アミオダロンは、毒性の高い薬物であり、広範囲な望ましくない副作用を有する。これらの影響の中でもっとも危険なものは、間質性肺疾患の発症である。甲状腺機能低下と甲状腺機能亢進との両方の甲状腺毒性が、眼および肝臓における影響として見られることが多い。さらに、多くの患者(8〜18%)が、許容できない副作用が原因で、1年後にアミオダロンの使用を中断している。
【0006】
ドロネダロン、すなわち、アミオダロンの非ヨウ素化誘導体は、心房細動および/または心房粗動(AFL)を有する患者の循環器系入院および死亡率を低減するが、臨床におけるその抗AF効力は、アミオダロンのものより劣る2、3。数回の大規模な治験後4〜8、発作性または持続性のAFまたはAFLを有する患者における循環器系入院の危険性を低減するために、米国食品医薬品局(FDA)は、2009年7月にドロネダロン(400mg BID)を認可した。臨床研究では、ドロネダロン400、600、または800mgの毎日2回(BID)の用量を、AF/AFLを有する患者で試験した。ドロネダロン400mg BIDは、再発性心房細動の危険性の有意な低減を伴うが、ドロネダロン600mg BIDおよび800mg BIDの用量は、効果的ではなく、乏しい耐容性を示した。したがって、ドロネダロンの抗不整脈の効力を増大させる方法が極めて望ましい。
【0007】
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせが、他の心臓の状態のうちで、心房不整脈の著しい抑制につながる強力な電気生理学的作用をもたらす相乗作用を有することがここに判明した。例えば、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、AV結節性伝導および心室頻拍性不整脈の低減に相乗作用を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fusterら、Circulation、2006年、114巻(7号):e257〜354頁
【非特許文献2】Royら、N Engl J Med、2008年、358巻:25号;2667〜2677頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、患者へのドロネダロンおよびラノラジンの共投与により、心室および/または心房レートおよび/または調律の制御が提供されるという驚くべきおよび予期しない発見に基づく。レートおよび調律を制御する能力は、患者の心房細動および/または心房粗動、ならびに全体に渡り記載されている様々な他の心臓の状態を処置および予防するために有用である。共投与は、ドロネダロンが治療有効用量で投与され、ラノラジンが治療有効用量で投与された場合に有用であることがさらに企図される。ドロネダロンおよびラノラジンのそれぞれの治療用量、例えば相乗的有効量よりも少ない量で投与された場合には、ドロネダロンおよびラノラジンの相乗的作用により、これらの一方または両方のいずれかが効果的であり得ることがさらに企図される。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、心房細動および/または心房粗動の処置および/または予防を必要とする患者における心房細動および/または心房粗動の処置および/または予防のための方法を対象とする。本方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の共投与を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0012】
別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0013】
別の態様では、本発明は、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされた、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。別の態様では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされた、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。
【0014】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、トルサード・ド・ポワンツ心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツ心室頻拍を低減または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0019】
別の態様では、本発明は、電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0020】
別の態様では、本発明は、上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈の処置または予防を必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0021】
別の態様では、本発明は、入院および死亡の予防を必要とする患者における入院および死亡を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、患者は、心房細動および/または心房粗動を患っている。
【0022】
別の態様では、本発明は、卒中発作および心不全の予防を必要とする患者における卒中発作および心不全を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0023】
別の態様では、本発明は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物を対象とする。
【0024】
本発明の別の態様では、相乗的治療有効量のドロネダロンおよび相乗的治療有効量のラノラジンの共投与を含む、心房細動の処置の方法が提供される。2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位(combined dosage unit)で、別々にまたは一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0025】
本発明の別の態様では、ドロネダロンの望ましくない副作用を低減するための方法が提供される。本方法は、相乗的治療有効用量のドロネダロンおよび相乗的治療有効用量のラノラジンの共投与を含む。すでに述べたように、この2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位で、別々または一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常は、ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0026】
図全体に渡り使用される場合、「Ran5」という用語は、ラノラジン5μM(マイクロモル濃度)を指し、「Dron10」という用語は、ドロネダロン10μMを指す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、異なる心房および心室領域からの活動電位持続時間(APD)に対するラノラジンおよびドロネダロンの単独またはこれらの薬剤の組み合わせによる作用を示す図である。図示されているのは、500ms(ミリ秒またはmsec)の周期長(CL)で刺激した冠状動脈灌流した心房および心室試料における、代表的な活動電位およびAPD50およびAPD90に対する作用の総括データである。n=7〜8。CT=分界稜、PM=櫛状筋、M cell=M細胞領域、Epi=心外膜。Ran5=ラノラジン5μM、Dron10=ドロネダロン10μM。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。† Dron10に対してp<0.05、‡ウォッシュアウトに対してp<0.05。
【図2】図2は、ラノラジンおよびドロネダロンが、心房における有効不応期(ERP)の延長および再分極後の不応性(PRR、心房におけるERPとAPD70との間の差および心室におけるERPとAPD90との間の差;ERPは、心房ではAPD70〜75に相当し、心室ではAPD90に相当する)の発症を誘発することを示す図である。CL=500ms。心室データは、心外膜から得たものであり、心房データは内心膜性櫛状筋(PM)からの得たものであった。n=7〜8。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡ Dron10に対してp<0.05。#それぞれのERPに対してp<0.05。
【図3】図3は、ラノラジンおよびドロネダロンが、単独または組み合わせて、強力な心房選択的なレート依存性のVmax阻害を引き起こすことを示す図である。A:対照に対する%として、500msの周期長(CL)でペーシングさせた心房および心室の心臓試料のVmax(左パネル)。B:対照において500msのCLで記録されたVmax値に対する%としての、500から300msのCLへ加速した後の、心房および心室の活動電位のVmax。「心房」は、PMおよびCTデータを組み合わせたものを示す。「心室」は、心室のくさび状試料(wedge preparation)からのEpiおよびM細胞データを組み合わせたものを示す。n=7〜8。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡Dron10に対してp<0.05。#それぞれの心房の値に対してp<0.05。
【図4】図4は、急速活性化レート(rapid activation rate)でのドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによる、最大活動電位上向き速度(maximal action potential upstroke velocity)(Vmax)の心房選択的な相乗的低下を示す図である。図示されているのは、500から300msのCLへのペーシングレート(pacing rate)の加速中記録された活動電位(AP)のトレースおよび対応するVmax値である。ラノラジンのレート依存性の心房選択性の一因となる機序:急速活性化レート(心房における活動電位の後期段階3の延長が原因)での、心室ではなく心房における心臓拡張期間隔の消失が、薬物誘導性ブロックからのナトリウムチャネルの回復のレートを低下させ、これにより、それらの薬物がVmaxに対する心房選択的作用に寄与する。
【図5】図5は、冠状動脈灌流した心房および心室試料における伝導時間に対する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独または組み合わせによる作用を示す図である。冠状動脈灌流した心房および心室試料からのECG記録の「P波」および「QRS」群の持続時間を測定することによって、伝導時間を見積もった。*それぞれの対照(C)に対してp<0.05。†ウォッシュアウトに対してp<0.05。‡ Dron10に対してp<0.05。n=6〜7。
【図6】図6は、興奮性(すなわち、興奮の拡張期閾値、DTE)を低下させる、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)の単独または組み合わせによる作用を示す図である。DTE測定値は、内心膜性の櫛状筋(心房)および心外膜(心室)から得た。*対照(C)に対してp<0.05;†ウォッシュアウトに対してp<0.05;‡対照、Ran5、ウォッシュアウト、およびDron 10に対してp<0.05。n=5〜9。
【図7】図7は、1:1活性化を可能にするもっとも短い周期長(CL)を延長させる、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)の単独または組み合わせによる心房選択的作用を示す図である。*それぞれの対照に対して<0.05;†ウォッシュアウトおよびDronに対してP<0.05。‡Ranに対してP<0.05。#それぞれの心房値に対してp<0.001。
【図8】図8は、ドロネダロン(10μM)とラノラジン(5μM)との組み合わせが、冠状動脈灌流した右心房において、持続性AFを終結させ、そして/またはその誘発を予防するのに効果的であることを示す図である。A:持続性のアセチルコリン(Ach)(0.5μM)媒介性AFは、上記薬物の組み合わせにより終結する。AFは、最初に粗動に変換され、次いで洞調律(sinus rhythm)に変換される。B:ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ACh(1μM)を用いた前処置後のAFの急激なペーシング誘発を、ナトリウムチャネル(Vmax低減を参照されたい)を抑制することによって防止する。周期長(CL)500から130msへのペーシングレートの加速は、1:1応答の不全につながる。
【図9】図9は、肺静脈(PV)スリーブ試料におけるレートの急激な変化後のVmaxに対するラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの相乗的作用を示す図である。A:5000から300msへの周期長(CL)の変化後の記録されたVmaxトレース。B:Vmax変化の複合データを示すグラフ。CL5000から300msへの変化またはレートは、対照の条件下でVmaxの13%の低減を誘発し、ラノラジン(5μM)もしくはドロネダロン(10μM)単独またはこれらの組み合わせ後では、それぞれ19、20および50%の低減を誘発する。*対照に対してp<0.05。#ラノラジンまたはドロネダロン単独に対してp<0.05。
【図10】図10は、PVスリーブ試料における、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)およびこれらの組み合わせによる、ブロックからのナトリウムチャネルの回復のレートを示す図である。n=4。300msのS1−S1におけるS1−S2の関数としてのVmax値が図示されている。ラノラジンまたはドロネダロンを単独で使用した場合と比較して、薬物の組み合わせによるブロック後に、ブロックからの回復は、著しく遅くなっている。*対照、ラノラジン単独およびドロネダロン単独に対してp<0.05。
【図11】図11は、ラノラジン(5μM)とドロネダロン(10μM)との組み合わせが、PVスリーブ試料における、遅延後脱分極(delayed afterdepolarization)(DAD)誘導性誘発活性を消滅させることを示す図である。A:イソプロテレノール(1μM)および高カルシウム(5.4mM)は、DADが後に続く誘発反応を誘導した。B:ラノラジン(5μM)は、誘発拍動を排除するが、顕著なDADは持続する。C:ラノラジンのウォッシュアウトは、DADが後に続く誘発反応を回復させる。D:ドロネダロン(10μM)は、誘発反応を排除するが、DADは持続する。E:ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、すべてのDADおよび誘発活性を消滅させ、2:1の活性化不全(activation failure)を誘発する。F:薬物の組み合わせの継続した存在下で、刺激強度の増加は、1:1活性化を回復させるが、DAD活性は回復させない。基本的周期長(BCL)=120ms。
【図12】図12は、ラノラジン(5μM)とドロネダロン(5μM)との組み合わせが、PVスリーブ試料におけるDAD誘導性誘発活性を排除することを示す図である。A:イソプロテレノール(1μM)および高カルシウム(5.4mM)は、DAD誘導性誘発活性を生じさせる。B:ラノラジン(5μM)は、誘発拍動を排除するが、DADは持続する。C:ラノラジンのウォッシュアウトは、誘発活性を回復させる。D.ドロネダロン(5μM)は、誘発反応の数を低減する。1回の誘発拍動の後にDADが持続する。E:ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、すべてのDADおよび誘発活性を消滅させ、2:1の活性化不全を誘発する。F:薬物の組み合わせの継続した存在下で、刺激強度の増加は、1:1活性化を回復させるが、DAD活性は回復させない。基本的周期長(BCL)=150ms。
【図13】図13は、モルモットの単離した心臓において、S−H間隔(AV結節性伝導)およびAV結節性Wenckebach型周期長を増加させる、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる相乗的作用を示す図である。3、4および5(ヘルツ)HzにおけるS−H間隔のベースライン値は、それぞれ35±2、42±2および51±2msであった。Ran:ラノラジン(3μM、n=14):Dron:ドロネダロン(0.3μM、n=14);実験的に測定したラノラジンおよびドロネダロンの個別の作用の計算合計値、Σ(R+D)とは有意に異なる。;*、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの作用についての実験測定値は、計算値Σ(R+D)とは有意に異なる、p<0.01。
【図14】図14は、モルモットの単離した心臓における自然の(内因性の)心房レート(SAR)に対する、ドロネダロン(D)、ラノラジン(R)、ドロネダロンにラノラジンを加えたもの(R+Dの組み合わせ物)およびベラパミル(V)の作用を示す図である。対照(薬物なし)SARの値は、R、D、R+D、およびV処置群について、それぞれ、225±7(n=5)、231±6(n=4)、240±9(n=5)および225±3(n=3)拍/分(またはbpm)であった。*、V処置群では、それ自体の対照とは有意差があった、p<0.01。
【図15】図15は、Dron(A、n=8)、Ran(B、n=4)、およびDron(0.3および10μM、C)の存在下におけるRanまたはRan(6および10μM、D)の存在下におけるDronのいずれかについての、濃度−応答の関係示す図である。*、対照(DronまたはRan単独)、またはDron単独(C)もしくはRan単独(D)のいずれかと有意に異なる、p<0.05。
【図16】図16は、メスのウサギの単離した心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの、単独および組み合わせの場合における、心室活動電位持続時間(MAPD90)に対する作用(図3に示したデータの再プロット)示す図である。パネルA:ラノラジンは、ドロネダロンの非存在下および存在下(0.3および10μM)で、MAPD90の類似の相対的増加を引き起こした。パネルB:ドロネダロンは、ラノラジン(6および10μM)により引き起こされたMAPD90の増加を減弱させた。LVは、左心室を指す。
【図17】図17は、10μMの高濃度ドロネダロンが、IKr阻害剤であるE−4031により引き起こされるトルサード・ド・ポワンツ(TdP)の発生を、心臓の4/6から1/6へと低下させたことを示す図である。ラノラジン(10μM)は、0.3μMドロネダロンと一緒に、60nMのE−4031の存在下でのTdPの発症率を低下させた。Ctrlは、対照を指し、Washは、ウォッシュアウトを指す。
【図18】図18は、IKr阻害剤であるE−4031(60ナノモル濃度(nM))が、自然のおよび3秒休止で引き起こされたTdPのエピソードを誘発したことを示す図である。ドロネダロン(0.1〜0.3μM)は、TdPを終結させなかった。A:対照;B:E−4031(60nM);C:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.1μM);およびD:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.3μM)。
【図19】図19は、この心臓において、E−4031により引き起こされたTdPが、ドロネダロン(6〜10μM)により終結されなかったことを示す図である。しかし、ラノラジン(6〜10μM)をドロネダロン(10μM)と組み合わせて使用した場合、TdPは消滅した。E:E−4031(60nM)およびドロネダロン(6μM);F:E−4031(60nM)およびドロネダロン(10μM);G:E−4031(60nM)、ドロネダロン(10μM)、およびラノラジン(6〜10μM)。
【図20】図20は、E−4031(60nM)により引き起こされたTdPが、ドロネダロン(0.3μM)で終結されなかったが、ラノラジン(6μM)およびドロネダロン(0.3μM)の組み合わせにより消滅したことを示す図である。A:対照;B:E−4031(60nM);C:E−4031(60nM)およびドロネダロン(0.3μM);D:E−4031(60nM)、ドロネダロン(0.3μM)、およびラノラジン(6μM)。
【図21】図21は、アセチルコリン(ACh)の存在下、電気誘発性の心房細動(AF)の発症率を低減する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用を示す図である。高濃度ラノラジン(10〜30μM)は、AChの存在下で、AFの発症率を低減した(左パネル)。ドロネダロン(0.3μM)の存在下、より低いおよび治療関連濃度のラノラジン(6〜10μM)は、AChの存在下、AFの発症率を低下させた。Flecは、フレカイニドを指す。
【図22】図22は、ドロネダロンおよびラノラジンが、アセチルコリン(ACh)の存在下、期外収縮誘発性AF(すなわち、S1S2の電気的刺激により引き起こされたもの)を消滅させたことを示す図である。心臓において、薬物の非存在下(対照、A)および0.6μM ACh(B)、0.6μM AChに0.3μMドロネダロンを加えたもの(C)および0.6μM AChに0.6μMドロネダロンと、3または6μMラノラジン(それぞれDおよびE)との組み合わせを加えたものの存在下で得た、左心房の単相性活動電位(MAP)の代表的な記録。
【図23】図23は、ドロネダロンが、hNaV1.5を発現するHEK293細胞の、後期Na+エンハンサーであるテフルトリン(10μM)への曝露により誘導された後期Na+を低下させたことを示す図である。後期Na+の最大半量の阻害を引き起こすドロネダロンの濃度は、4μMであると算出された。
【図24】図24は、ドロネダロン(Dron、30および100nM)が、モルモット左心室から単離した単一筋細胞(n=7)における、イソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、異なる濃度のドロネダロン(すなわち、10nM、30nM、および100nM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【図25】図25は、ラノラジン(Ran、3および6μM)が、モルモット左心室から単離した単一の筋細胞(n=7)におけるイソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、異なる濃度のラノラジン(すなわち、3μMおよび6μM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【図26】図26は、ドロネダロン(100nM)とラノラジン(3μM)との組み合わせが、モルモット左心室から単離した単一の筋細胞(n=5)におけるイソプロテレノール(Iso、50nM)誘導性の遅延後脱分極(DAD)の振幅を低減したことを示す図である。ドロネダロンおよびラノラジンの作用は相加的であった。各矢印は、DADを示す。DADの振幅は、電子工学的に算出した。下のグラフは、ドロネダロン(100nM)、ラノラジン(3μM)、ならびにドロネダロン(100nM)およびラノラジン(3μM)によるDADのパーセント阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
1.定義および一般的パラメータ
本発明の明細書において使用される場合、以下の単語および句が使用されている文脈で他の範囲が示されていない限り、以下の単語および句は以下に記載の意味を有すると一般的に意図される。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、文脈が明らかに別のことを指示していない限り、単数形態、「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、組成物における「薬学的に許容されるキャリア」への言及は、2つ以上の薬学的に許容されるキャリアなどを含む。
【0030】
「含む」は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、その他を排除するわけではないことを意味することを意図する。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用された場合、意図する使用のための組み合わせに対して、任意の本質的な意義を持つ他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書中で定義されるような要素から基本的になる組成物であれば、単離方法および精製方法からの微量の混入物ならびに薬学的に許容されるキャリア、例えばリン酸緩衝食塩水、保存剤などを排除することはない。「からなる」は、他の成分の複数の微量要素を、および本発明の組成物を投与するための相当の方法ステップ(substantial method steps)を排除することを意味する。これらの移り変わる用語のそれぞれにより定義された実施形態は、本発明の範囲内である。
【0031】
「ドロネダロン」または「Dron」は、米国特許第5,223,510号に記載されている。これは、化合物、N−{2−ブチル−3−[4−(3−ジブチルアミノプロポキシ)ベンゾイル]ベンゾフラン−5−イル}を指し、以下の化学式を有する。
【0032】
【化1】
全体に渡り使用されているドロネダロンは、遊離塩基または薬学的に許容される塩の両方を指す。一実施形態ではドロネダロンは、その塩酸塩形態で存在し、以下の化学式を有する。
【0033】
【化2】
「ラノラジン」または「Ran」は、米国特許第4,567,264号において記載されている。これは、化合物(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミドおよび薬学的に許容されるその塩を指す。その二塩酸塩形態において、ラノラジンは、以下の式で表される。
【0034】
【化3】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、様々な生理学的に許容される有機および無機の対イオンから誘導される化合物の塩を指す。このような対イオンは、当技術分野で周知であり、単なる例として、分子が酸性の官能基を含有する場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウム、例えばテトラアルキルアンモニウムなどが挙げられ、分子が塩基性の官能基を含有する場合、有機または無機の酸の塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、硝酸塩 臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびシュウ酸塩などが挙げられる。適切な薬学的に許容される塩は、またRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1418頁(1985年)およびP. Heinrich Stahl、Camille G. Wermuth編、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use;2002年において列挙されたものを含む。酸付加塩の例として、例えばヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの酸から、および有機酸、例えばアルギン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、安息香酸、カンファースルホン酸(camphorsulfuric)、クエン酸、エンボン酸(パモン酸)、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロン酸、ガラクツロン酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、イソニコチン酸、イソチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、糖酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルフィニル(sulfinilic)酸、トリフルオロ酢酸およびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などと共に形成されるものが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属および有機塩基と共に形成される塩基付加塩の例として、クロロプロカイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)、およびプロカイン、ならびに内部で形成される塩が挙げられる。生理学的に許容不可能なアニオンまたはカチオンを有する塩は、生理学的に許容される塩および/または非治療用、例えば、インビトロの状況における使用のための調製に対して有効な中間体として本発明の範囲内である。
【0035】
本発明は、ラノラジンとドロネダロンとの両方の塩を使用することを明確に企図し、ドロネダロンおよび/またはラノラジン(ranolzine)の塩の混合物をさらに企図する。
【0036】
特定の実施形態では、ラノラジンおよび/またはドロネダロンは、本明細書で使用する場合、十分にイオン化されておらず、共結晶の形態であってもよいことが企図されている。一実施形態では本発明は、ラノラジンおよび/またはドロネダロンの共結晶を含む共結晶組成物であって、上記共結晶が、ラノラジンおよび/またはドロネダロンと、共結晶形成剤(co−crystal former)とを含む共結晶組成物を提供する。「共結晶」という用語は、ラノラジンおよび/またはドロネダロンと、1つ以上の共結晶形成剤、例えば薬学的に許容される塩などとを含む結晶材料を指す。特定の実施形態では、共結晶は、遊離型(すなわち、遊離分子、双性イオン、水和物、溶媒和物など)または塩(塩水和物および溶媒和物を含む)と比較して、改善された特性を有することができる。さらなる実施形態では、この改善された特性は、溶解度の増加、溶解の増加、生物学的利用能の増加、用量応答の増加、吸湿性の低下、通常はアモルファス化合物の結晶形態、塩処理が困難または塩形成不可能な化合物の結晶形態、形態多様性の低下、より所望される形態などからなる群から選択される。共結晶を作製するおよび特徴づけるための方法は、当業者には十分である。
【0037】
「治療有効量」という用語は、このような処置を必要とする哺乳動物に投与された場合、以下に定義されるように、処置を達成するのに十分な、ラノラジンまたはドロネダロンなどの化合物の量を指す。治療有効量は、使用する治療薬の具体的な活性、患者の疾患状態の重症度、および患者の年齢、健康状態、他の疾患状態の存在、ならびに栄養状態に応じて異なることになる。さらに、患者が受ける場合がある他の薬剤(medication)が、投与する治療薬の治療有効量を決定することになる。一部の実施形態では、「治療有効量」という用語は、相乗的有効量または相乗的治療量を指す。
【0038】
「相乗的」とは、ラノラジンと組み合わせて投与した場合(または逆もまた同様)、ドロネダロンの治療上の効果が、単独で投与された場合に予想されるドロネダロンおよびラノラジンの相加的な治療上の効果を超えることを意味する。「相乗的治療量」という用語は、通常、薬物のうちの1つのまたは両方の標準的治療量よりも少ない量を指し、所望の効果に必要とされる量は、薬物が単独で使用される場合よりも少ないことを意味する。相乗的治療量は、1つの薬物が標準的治療用量で与えられ、別の薬物が標準的治療用量より少ない量で投与される場合も含む。例えばラノラジンを治療用量で与え、ドロネダロンを標準的治療用量より少ない量で与えることによって、相乗的結果を得ることができる。
【0039】
「処置」または「処置する」という用語は、哺乳動物などの被験体における疾患または状態の任意の処置を意味し、これには、以下が含まれる:1)疾患もしくは状態に対する予防または保護、すなわち、臨床症状が生じないようにすること;2)疾患もしくは状態の阻害、すなわち臨床症状の発生を止めるまたは抑制すること、ならびに/または3)疾患もしくは状態の緩和、すなわち、臨床症状の後退を引き起こすこと。
【0040】
本明細書で使用する場合、「予防する」という用語は、予防的処置を必要とする患者の予防的処置を指す。予防的処置は、適切な用量の治療薬を、病気(ailment)を患う危険性のある被験体に提供し、これにより病気の発症を実質的に防ぐことによって、達成することができる。
【0041】
ヒト医療において、最終的な誘導的事象(または複数の事象)は、未知であり、潜在的である可能性があり、または事象(または複数の事象)が発生してから十分に後になるまで患者に確認されないので、「予防する」と「抑制する」とを区別することは常に可能ではないことを当業者であれば理解されよう。したがって、本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、「処置」の要素として、本明細書中で定義された「予防する」と「抑制する」との両方を包含することを意図する。「保護」という用語は、本明細書で使用する場合、「予防」を含むことを意図する。
【0042】
「罹りやすい」という用語は、示された状態が少なくとも1回発生したことのある患者を指す。
【0043】
「患者」という用語は、通常「哺乳動物」を指し、これには、限定なしで、ヒト、サル、ウサギ、マウス、飼い慣らした動物、例えばイヌおよびネコ、家畜、例えばウシ、ウマ、またはブタ、ならびに実験動物が含まれる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容されるキャリア」には、任意のおよびすべての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、有効成分と不相容性である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。補助的有効成分も、組成物内に組み込むことができる。
【0045】
「心房細動」または「AF」は、心臓の2つの上部腔所(chamber)(右心房および左心房)が、周期的に拍動および収縮する代わりに震える場合に生じる。心電図によると、AFは、多くの場合、心臓の2つの下部腔所(右心室および左心室)の速い拍動をもたらす、極めて混乱した心房の電気的活性を特徴とする。AFを有する患者が経験する症状として、動悸、疲労、および呼吸困難(息切れ)が挙げられる。
【0046】
不整脈の症状および期間に基づき、3種類のAFがある:a)発作性AF:始まってから7日以内に自然に終結する(発作性AFは、始まってから自然に停止する)再発性AF(2回を超えるエピソード);b)持続性AF:7日より長引くか、または薬理学的または電気的心臓除細動(電気ショック)による終結を必要とする、持続するAF;およびc)永久的AF:長期に渡るAF(1年よりも長い期間)であり、処置の後、または患者および医師が、洞調律を回復させるさらなる努力をすることなしにAFを存続させることを決定した場合でも、正常な洞調律を維持できない。
【0047】
「心房粗動」とは、心臓の心房において生じる異常な心臓調律である。心房粗動が最初に生じた場合、これは通常、速い心拍または頻拍(230〜380拍/分(bpm))を伴い、上室性頻拍症のカテゴリーに入る。この調律は循環器疾患(例えば高血圧、冠動脈疾患、および心筋症)を有する個体において生じることがもっとも多いが、別段正常な心臓を有する人々において自然に生じることもある。これは通常安定した調律ではないが、多くの場合悪化して心房細動(AF)となる。
【0048】
「電気的および構造的リモデリング」は両方とも、AFの病因に寄与する。電気的誘発因子(電位の後)および不整脈惹起性基質(arrhythmogenic substrate)(再入)が、AFの開始および維持の2つの主な原因である。「電気的リモデリング」は、イオンチャネル(主にナトリウム、カルシウム、およびカリウムチャネル)の機能不全により引き起こされる。「構造的リモデリング」は、線維芽細胞が増殖および分化して、筋線維芽細胞となり、そして結合組織の堆積が増強することによって引き起こされる。構造的リモデリングは、心臓の筋束の間の電気的解離および心房の電気伝導における不均一性をもたらす。よって、心房組織の炎症および/または線維増多(fibrosis)が、AFにつながる環境を作り出す。心房の電気的および構造的リモデリングが、AFの永続化につながる。それ故、「AFがAFを引き起こす」。AFのエピソードの延長は、多くの場合心房の力学的機能不全を引き起こし、これが有害な血流力学的結果をもたらし、心不全の一因となり得る。
【0049】
「心室細動」は、急激な一定しない電気的刺激により心臓が拍動することによって、心臓内のポンプ腔(pumping chamber)(すなわち心室)が、血液をポンピングするというより、むしろ無益に震える場合に生じる。心室細動は、血圧が急落して、重要な器官への血液供給が切断されるので、即時の医学的な注意を必要とする。心室細動を有する人は、数秒のうちに虚脱となり、すぐに呼吸をしなくなるか、または脈がなくなる。症状として、胸痛、急速な心拍(頻拍)、めまい、吐き気、息切れ、および意識の喪失または失神が挙げられる。何が心室細動を引き起こすのか常に公知であるわけではないが、心室細動の大部分のケースは、「心室頻拍」または「VT」と呼ばれる急速な心拍から始まる。
【0050】
「トルサード・ド・ポワンツ(またはTdP)心室頻拍」は、心電図(ECG)上では、はっきりと異なる特徴を示す、特定の様々な心室頻拍を指す。トルサード・ド・ポワンツのECG記録は、等電性ベースラインの周囲のQRS群の特徴的なねじれを有する急速な、多形の心室頻拍を明示している。トルサード・ド・ポワンツはまた、動脈圧の低下も伴い、失神を起こす可能性がある。「トルサード・ド・ポワンツ」は稀な心室の不整脈であるが、変質して「心室細動」となる可能性があり、これは医学的介入なしには、突然死につながることになる。トルサード・ド・ポワンツは、長期のQT症候群を伴い、この症候群はQT間隔の延長をECG上に見ることができる状態である。長いQT間隔によって、患者は、R−on−T現象を生じさせやすくなる。R−on−T現象とは、心室脱分極を表すR波が、再分極の終わりの相対的不応期(T波の後半で表される)と同時に生じるものである。R−on−Tは、トルサードを起動することができる。長いQT症候群は、刺激波動/活動電位を運搬するイオンチャネルの先天性変異として遺伝性のものか、またはこれら心臓のイオン電流をブロックする薬物の結果として得たものかのいずれかである可能性がある。
【0051】
トルサード・ド・ポワンツの一般的原因として、下痢、低マグネシウム血症、および低カリウム血症が挙げられる。これは、栄養不良の個体および慢性アルコール依存症に一般的に見られる。薬物相互作用、例えばエリスロマイシンまたはモキシフロキサシンなどを、ニトロイミダゾールなどの阻害剤、栄養補助食品、および様々な薬剤(medication)、例えばメサドン、リチウム、三環式抗うつ剤またはフェノチアジンなどと同時に服用した場合もまた、この原因となり得る。この原因はまた、一部の抗不整脈薬剤、例えばソタロール、プロカインアミド、およびキニジンの副作用である可能性もある。トルサード・ド・ポワンツへの傾向がより高くなることに関わる要因として、以下が挙げられる:クラスIAの抗不整脈、クラスIIIの抗不整脈、低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症、低酸素、アシドーシス、心不全、左心室肥厚、緩慢心拍、女性の性別、低体温、くも膜下出血。
【0052】
「AV伝導」または「房室伝導」は、「房室結節」または「AV結節」を介した心房から心室への刺激波動の前方への伝導であり、心電図ではP−R間隔により表される。AV結節は、心房腔および心室腔を電気的に接続する心臓の電気制御システムの一部であり、心拍と協調している。AV結節は、心臓の心房と心室との間の特定化された組織の領域であり、具体的には、冠状静脈洞の開口付近の心房中隔の後下部にあり、心房から心室への正常な電気的刺激を伝導する。正常な心臓調律の間の「AV伝導」は、2つの異なる経路を介して生じる。第1の経路は、伝導速度がゆっくりだが、不応期が短く、これに対して第2の経路は、伝導速度が速いが、不応期が長い。
【0053】
「調節する」という用語は、増加または低下させること、別の方法で制御を提供することを意味する。
【0054】
「心室および/または心房レートを調節する」ことにより、AFを顕著に改善することが示されている。通常、これは、ペースメーカーの使用により達成されており、この場合ペースメーカーは、心房拍動を検出し、正常な遅延(0.1〜0.2秒)の後に、これがその前に起こらない限り、心室拍動を引き起こす。これは、右心房の電極(感知用)および心室の電極(感知およびペーシング用)を有する単一のペーシングリードを用いて達成することができる。「心房レート」は、心房拍動のみのレート(単位時間あたりの拍動で測定)に特異的である。ペースメーカーはまた、心室および/または心房の調律をモニターし、調節することができる。「心室および/または心房の調律」とは、心室拍動または心房拍動のいずれかの拍動から拍動への時間周期を指す。
【0055】
「共投与する」または「共投与」とは、2種以上の治療薬を一度に一緒に投与することを指す。2種以上の治療薬は、単一の剤形もしくは「組み合わせた投与単位」に共処方する(coformulate)ことができ、または別々に処方し、続いてこれらを合わせて、通常、静脈内投与または経口投与用の組み合わせた投与単位とすることができる。
【0056】
「静脈内投与」とは、静脈または「静脈内」に直接物質を投与することである。他の投与経路と比較して、静脈内の(IV)経路は、流体および薬剤を全身に渡り送達するためのもっとも速い手段である。注入ポンプは、流速および送達される総量に渡って正確な制御を可能にすることができるが、流速の変化が、重大な結果を生じさせない場合、またはポンプが利用可能でない場合、点滴は、多くの場合、患者の高さよりも上にバッグを配置し、速度を制御するためのクランプを使用して、単に流れたままにしておく。あるいは、患者が高流速を必要とし、IVアクセスデバイスの直径がこれを収容するのに十分大きい場合には、高速注入器を使用することもできる。これは、流体バッグの回りに配置することによって、流体を患者へと強制的に送る、可膨張性カフ、または注入されている流体を加温することもできる類似の電気的デバイスのいずれかである。患者が、特定の回数しか薬剤を必要としない場合には、断続的な注入を使用する。これは、追加の流体を必要としない。これは、静脈内点滴(ポンプまたは重力点滴する)と同じ技法を使用することができるが、薬剤の全用量が与えられた後で、管はIVアクセスデバイスから切り離す。一部の薬剤は、またIVプッシュまたはボーラスにより与えられる。これは、シリンジをIVアクセスデバイスに接続し、薬剤を直接注入する(静脈を刺激したり、急激過ぎる作用を引き起こしたりする可能性がある場合はゆっくりと)という意味である。薬をIV管の流体の流れ(fluid stream)に注入したら、薬が管から患者に確実に入るようにするいくつかの手段が存在しなければならない。通常これは、流体の流れが正常に流れるようにし、これによって、薬が血流へと運搬されるようにすることによって達成される。しかし、注入に続いて、第2の流体の注入「フラッシュ」が時々使用されることによって、薬をより迅速に血流へと押し進める。
【0057】
「経口投与」とは、口を介して物質を摂取する投与経路であり、口腔、唇下(sublabial)および舌下投与、ならびに腸内投与、および呼吸器を介した投与を含むが、ただし、薬剤が口腔粘膜のいずれかと直接接触しないように、例えば管を介して投与される場合は除く。治療薬の経口投与のための典型的な形態として、錠剤またはカプセル剤の使用が挙げられる。
【0058】
「徐放性処方物」とは、体内で治療薬を長期間に渡りゆっくりと放出するように設計された処方物であり、これに対して「即時放出性処方物」とは、体内で短期間に治療薬が急速に放出されるように設計された処方物である。場合によっては、即時放出性処方物は、治療薬が体内の所望のターゲット(例えば胃)に到達した際にのみ放出されるようにコーティングすることもできる。
【0059】
いくつかのより一般的な「ドロネダロンの望ましくない副作用」として、下痢、体力の欠如または喪失、腹腔痛または胃痛、酸性胃または過酸症(acid or sour stomach)、おくび、水疱形成、痂皮形成、過敏、そう痒、または皮膚の発赤、割れ皮膚、乾燥皮膚、または鱗屑性皮膚(scaly skin)、胸焼け、消化不良、皮膚のかゆみ、吐き気、発疹、皮膚の赤みまたは変色、皮膚発疹、痂皮で覆われた、鱗屑性、および浸出性の皮膚発疹、じんま疹、そう痒、または赤み、胃の不快感、胃の不調(upset)、または疼痛、腫脹、および嘔吐が挙げられる。いくつかのあまり一般的でない、または稀な副作用として、胸痛または不安、頭部ふらふら感(lightheadedness)、めまい、または失神、息切れ、緩徐なまたは不規則な心拍、異常な疲れ、味覚の変化、太陽光への皮膚の過敏性の増加、味覚の喪失および激しい日焼けが挙げられる。
【0060】
2.方法
一般的に、本発明は、心房細動および/または心房粗動を処置または予防する方法に関する。本方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩との共投与を含む。一実施形態では、ラノラジンまたはドロネダロンの一方または両方のいずれかを相乗的有効量で投与する。この2つの薬剤は、別個のまたは組み合わせた投与単位で、別々にまたは一緒に投与することができる。別々に投与する場合、ラノラジンは、ドロネダロンの投与前または投与後に投与することができるが、通常ラノラジンは、ドロネダロンの前に投与することになる。
【0061】
実施例においてさらに論じられているように、本明細書中で提示されているのは、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせによって、AFの開始および維持に関連する誘発因子および基質(substrate)の両方を排除する効き目があるという作用の証拠である。また実施例において同様に示されているように、本明細書中に記載されている併用療法は、心房細動または粗動の状態に罹りやすい患者における心房細動または粗動を予防するのに有用である。
【0062】
ラノラジンは、後期ナトリウム流(INa)を阻害し、心臓拡張期の弛緩を改善することが前臨床研究および臨床研究において示された抗虚血剤および抗狭心症剤である。前臨床試験において、ラノラジンはまた、細胞のカルシウム過負荷を防止し、虚血中の心臓の電気的および力学的機能不全を低減することが示された。
【0063】
いくつかの最近の試験の結果は、ラノラジンが、心房の不整脈活動を低減することを実証した。Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁;Songら、Am J Physiol、2008年;294巻:H2031〜2039頁;Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁を参照されたい。ラノラジンは、心室組織よりも心房組織においてより大きなナトリウムチャネルの阻害を引き起こすと報告された(Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁)。臨床関連の濃度である5および10μMのラノラジンは、心房における活動電位持続時間を延長した(APD90、90%の再分極における活動電位持続時間)が、心室心筋におけるAPDに対する作用は、最小または皆無であった(Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁)。ラノラジン(5および10μM)は、活動電位の上向き上昇の最大速度(Vmax)および心房心筋および肺静脈スリーブの伝導速度の有意な使用依存性の(すなわち、ラノラジンの作用は、より高度なレートのペーシングにおいてより大きかった)低下を引き起こしたが、心室心筋においては低下を引き起こさなかった(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁、Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁、およびSicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)。ラノラジンは、心房組織のより高度なペーシングレートで有効不応期を増大させ、再分極後の不応性を誘導し、組織の興奮性の喪失を引き起こした。(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁、Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁、Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)およびKurriarら、J Cardiovasc Electrophysiol、2009年;20巻:796〜802頁。
【0064】
これらのデータは、ラノラジンは、心房の頻拍および細動の開始および存続の両方を終結させるおよび低減するのに効果的であり、実際にラノラジンは、心房の興奮性を有意に低下させ、心房心筋およびイヌの肺静脈スリーブおよびブタの心臓において、アセチルコリン誘発性細動の予防および終結の両方を行ったことを示唆している。Burashnikovら、2007年;116巻:1449〜1457頁、Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁、およびKumarら、J Cardiovasc Electrophysiol、2009年;20巻:796〜802頁。ラノラジンはまた、単離した心房の筋細胞の後期INa誘導性の遅延後脱分極および誘発活性を消滅させ(Songら、Am J Physiol、2008年;294巻:H2031〜2039頁)、心臓拡張期の脱分極および不整脈活動の開始を低下させた。Songら、Am J Physiol、2009年。
【0065】
ラノラジンは、誘発因子(遅延後脱分極、興奮性、および誘発活性)ならびに心房の頻拍および細動を起動および支持する電気的基質(急速な伝導および高度なレートの電気的活性を支持することができる心房組織)の両方を低減するようである。心房組織内の特定のイオンチャネル電流のラノラジンによる阻害(最大INa、IKr、および後期INa)は、これらの抗不整脈作用に関与している。最初に、ラノラジンによる最大INaの心房選択的低減は、電気的刺激伝導(伝導速度)および興奮性を低減する。第2に、ラノラジンによる遅延型整流器(rectifier)の電流IKrの阻害は、心房の活動電位の再分極のすでに緩徐な終末期をさらに遅延させ、これによって、上向きの続発性活動電位の活性化のためのNa+チャネルの利用可能性を低減する。
【0066】
これらの作用は、心房の有効不応期の延長に貢献し、組織の再分極後の不応性の誘発をもたらす。電気的刺激に不応性の組織は、電気的活性の再入または速いレートの刺激、例えば心房の頻拍および細動の間に生じるものなどのいずれかを支持することができない。したがって、レート依存性の心房の不応性の増加を引き起こすラノラジンの作用は、心房細動を支持することが可能な興奮性基質を低減する。
【0067】
最後に、ラノラジンによる後期INaの低減は、特に延長した心房再分極の状態で、細胞のカルシウム負荷の低減および心房における誘発活性の抑制に貢献し、したがってAFの開始を予防し得る(Sicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁;Songら、2008年)。延長した心房のAPDは、AF発生に伴ういくつかの疾患、例えばうっ血性心不全(Liら、Circulation、2000年;101巻:2631〜2638頁)、心房拡張(Verheuleら、Circulation、2003年;107巻:2615〜2622頁)、高血圧(Kistlerら、Eur Heart J、2006年;27巻:3045〜3056頁)、および長期のQT症候群(Kirchhofら、J Cardiovasc. Electrophysiol、2003年;14巻:1027〜1033頁)において生じ得る。
【0068】
しかし、AFは、心房の再分極の短縮を一般的に伴う。ナトリウムイオン流入の全体は、正常な条件下で、初期のINaに対して、後期INaに渡りはるかに小さい。APDが短縮するにつれて、この差は増大すると予想される。その結果、後期INaの特異的阻害は、細胞内のナトリウム濃度(初期のINa阻害と比較して)に有意に影響を及ぼすとは限らない。ラノラジンは、心室における強力な後期INaブロッカーであるにもかかわらず(Antzelevitchら、Circulation、2004年;110巻:904〜910頁)、イヌの右心房および肺静脈試料におけるその抗AF作用は、初期のINaのその阻害に主に起因する(Burashnikovら、Circulation、2007年;116巻:1449〜1457頁およびSicouriら、Heart Rhythm、2008年;5巻:1019〜1026頁)。要約すれば、前臨床試験からの強力な証拠は、ラノラジンは、ヒトの心房細動を抑制するのに効果的となり得ることを示唆している。
【0069】
上述した通り、ドロネダロンは、循環器系の入院および死亡を低減することが示された最初の抗不整脈薬である。ドロネダロンは、洞調律を維持することにおいて穏やかな効力を有する。実施例において例示されているように、ラノラジンの抗不整脈作用とドロネダロンの抗不整脈作用との間に有意な相乗作用が存在する。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれの薬物の単独よりも有意に大きな作用を有する。例えば、イヌの灌流した右心房の試料において、ラノラジン単独またはドロネダロン単独で、持続性AFを、それぞれ29%または17%低減したのに対して、2つの薬物の組み合わせは、持続性AFを90%抑制したことが判明した。本明細書中に提示されたこれらおよび他のデータは、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれかの薬物単独よりも、AFの発症率および期間を低減するのにより効果的な潜在力を有することを示した。この併用療法は、調律制御およびレート制御の両方を組み込んでいる。
【0070】
したがって、一実施形態では、本発明は、心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。一実施形態では、心房レートが高度な場合、例えば400超拍/分または600拍/分である場合、AV伝導は遅延される。これは、心房細動の間の心室レートの制御を提供するのに有利となり得ることが企図される(実施例、パート2および図13Aを参照されたい)。別の実施形態では、心房レートは低減する。これは、AFの間のように心房レートが増加する場合、心室レートの制御を提供する薬物の組み合わせの作用を確認するものである(実施例、パート2および図13Bを参照されたい)。さらなる別の実施形態では、心拍は、洞調律の間、有意に低下しない。
【0071】
別の実施形態では、心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法が提供される。一実施形態では、患者の洞調律が維持される。
【0072】
さらなる別の実施形態では、心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法が提供される。
【0073】
実施例において示されている通り、トルサード・ド・ポワンツ(torsades de points)の心室頻拍の誘発は、併用療法(実施例、パート2および図17〜20を参照されたい)により低減する。したがって、一実施形態では、本発明は、トルサード・ド・ポワンツの心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツの心室頻拍を低減または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0074】
心房細動を予防することによって、電気的および構造的の両リモデリングを調節することが企図される。なぜなら、これは、心房細動がさらなる心房細動を引き起こし、細動が構造的リモデリングを引き起こすからである。ラノラジンおよびドロネダロンにより提供される心房調律の制御(すなわち、調律制御)は、電気的および構造的リモデリングによる、時々発生する自己終結性のエピソードから永久的AFへの心房の頻脈性不整脈の進行を予防する。さらに、心房レートおよびNa/Ca負荷の低減は、酸化ストレスを低減し、細胞死を低下させ、炎症を低減し、線維増多を制限する(Van Wagoner D.、J Cardiovasc Pharm、52巻:306〜313頁、2008年)と予想される。したがって、本発明はまた、電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0075】
ラノラジンとドロネダロンを組み合わせることによって、任意の所望しない副作用を低減することができることもまた企図される。例えば、すでにドロネダロン療法を受けている患者へのラノラジンの共投与は、ドロネダロンの副作用を低減する。併用投与の相乗的作用は、治療上の効果を達成するのに必要なドロネダロンの量を低減することを可能にし、これによって望ましくない副作用の発症率の低減をもたらすことになる。よって、一実施形態では、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0076】
さらに、ラノラジンで治療中の患者へのドロネダロンの共投与により、ラノラジン療法を行っている患者において時々見られるQT間隔の延長を低減することが企図される(実施例、パート2および図15Dおよび16Bを参照されたい)。したがって、一実施形態では、本発明は、患者において、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩により引き起こされるQT間隔の延長を低減するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を患者に投与するステップを含む方法を対象とする。逆の場合には、ドロネダロンはQT間隔の延長も引き起こすことができ、よって、ドロネダロンをラノラジンと共に投与することによってQT間隔の低減が見られることが企図される。
【0077】
上述のように、ラノラジンの投与によって、ドロネダロンの治療有効量が低減することが企図される。よって、本発明は、一実施形態では、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0078】
イヌモデル(図1〜12)におけるデータは、心房細動におけるラノラジンおよびドロネダロンの相乗的作用に焦点を合わせているが、図6は、ラノラジンおよびドロネダロンが心室DTEを増加させた(E波の減速時間)ことを示している。これは、本明細書中に記載されている併用療法が、心室興奮性、したがって、心室頻拍性不整脈を低減することができることを示唆している。さらに、図13は、AV結節性伝導に対するラノラジンおよびドロネダロンの相乗的作用を示し、それはまた、心室レート制御における組み合わせの有用性も示唆している。なお、さらに、図15〜20は、この組み合わせが、催不整脈性の危険(proarrhythmic risk)を提示しないことを示しており、これは、この組み合わせが心室頻拍性不整脈を処置するのに有用であることを示唆している。図24〜26は、心室筋細胞におけるDADに対するラノラジンおよびドロネダロンの効果を示しており、これは、心室頻拍性不整脈における組み合わせの有用性を示唆している。
【0079】
したがって、本発明はまた、それを必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量と同量のラノラジンまたは薬学的に1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0080】
さらに、併用療法は、心房細動に加えて心室細動を低減することが企図されている。したがって、一実施形態では、本発明は、心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を患者に共投与するステップを含む方法を対象とする。
【0081】
上述されているように、延長した心房細動は、うっ血性心不全および/または卒中発作の発症をもたらすことが多い。さらに、心房細動を有する患者は、入院および死亡の危険性が増大する。したがって、心房細動および心室の不整脈を処置および予防した結果として、併用療法は、入院および死亡、心不全の発症、および卒中発作の発症率を低減することが予想される。心房細動を低減または予防することによって、塞栓および血液凝固の形成が減弱または低減することがさらに企図される。したがって、一態様において、本発明は、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の共投与によって、患者におけるうっ血性心不全および/または卒中発作を予防する方法を対象とする。
【0082】
2.1投薬
記載した方法の正にすべてについて、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩のいずれかの少なくとも1つが、他の薬物と共投与した結果として治療上効果的となる、標準的治療用量より少ない量で投与されることが企図される。しかし、ドロネダロンおよびラノラジンは、両方とも治療有効量で投与してもよいこともまた企図されている。一部の実施形態では、ドロネダロンを相乗的有効用量で投与し、ラノラジンを標準的治療有効用量で投与する。他の実施形態では、ラノラジンを標準的治療用量より少ない量で投与し、ドロネダロンを標準的治療有効用量で投与する。さらなる他の実施形態では、ラノラジンとドロネダロンとの両方を標準的治療用量より少ない量で投与する。「相乗的治療量のドロネダロンおよびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩」という表現は、ラノラジンおよびその治療的に許容される塩およびドロネダロンまたはその治療的に許容される塩の標準的治療用量、および標準的治療用量より少ない量のすべての可能な組み合わせを包含することを意図する。
【0083】
一部の実施形態では、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、別々に投与される。
【0084】
ラノラジンおよびドロネダロンは、単回用量または複数回用量のいずれかにより、類似の有用性を有する、一般に認められた薬剤の投与方法、例えば参照により組み込まれた特許および特許出願に記載されているものなどのいずれかにより患者に与えることができ、これらの投与方法には、口腔、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口による投与、または含浸もしくはコーティングしたデバイス、例えばステント、または例えば、動脈挿入用の円柱状ポリマーを介したものが含まれる。一実施形態では、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、静脈内に投与される。
【0085】
一実施形態では、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、経口的に投与される。ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、例えば錠剤においてなど、組み合わせた投与単位として投与することもできる。
【0086】
上述されているように、ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩およびラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、相乗的治療量または相乗的有効量で投与することができる。したがって、一部の実施形態では、投与するラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量は、毎日約50mg〜約3000mg、または毎日約50mg〜約2500mg、または毎日約50mg〜約2000mg、または毎日約50mg〜約1500mgである。さらに、投与するドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量は、毎日約50mg〜約800mg、または毎日約50mg〜約700mg、または毎日約50mg〜約600mg、または毎日約50mg〜約500mg、または毎日約50mg〜約400mgである。これら日用量の総計は、1日1回または1日2回のいずれかで患者に投与することができる。
【0087】
さらに、ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩は、徐放性処方物として投与され、そして/またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩は、即時放出性または徐放性処方物として投与されることが企図されている。これは、次のセクションでより完全に論じられている。
【0088】
次いで、一実施形態では、処置中の患者は、ドロネダロンの維持用量範囲の400〜800mg(典型的な用量は毎日2回400mgである)をすでに摂取している。次いでこの投与計画に、約300mg〜約1000mgのラノラジンを追加する。通常、用量は、以下のようにして投与されてもよい:毎日2回1000mg(2×500mg)、毎日2回750mg(2×375mg)、毎日2回500mg(1×500mg)、毎日2回375mg(1×375mg)、または毎日2回600mg(2×300mg)。治療用量のラノラジンを投与することで、これによりドロネダロンの量は、約50から約300mgに、または約毎日200mgに減少させることができ、これによって有害事象の発症率が大きく低減することができる。
【0089】
3.有効成分および組成物
3.1ラノラジン
米国特許第4,567,264号は、ラノラジン、(±)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−4−[2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)−プロピル]−1−ピペラジンアセトアミド、および薬学的に許容されるその塩、ならびに不整脈、異型(variant)および運動誘発性アンギナ、および心筋梗塞を含めた循環器疾患の処置におけるこれらの使用を開示している。
【0090】
この特許はまた、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、Tween80および0.9%食塩水をさらに含む、ラノラジン二塩酸塩の静脈内(IV)処方物を開示している。
【0091】
米国特許第5,506,229号は、心臓麻痺、心筋もしくは骨格筋または脳組織への低酸素または再灌流傷害を含めた物理的または化学的侵襲を受ける組織の処置のための、および移植における使用のための、ラノラジンおよび薬学的に許容されるその塩およびエステルの使用を開示している。制御放出処方物(controlled release formulation)を含めた経口のおよび非経口の処方物が開示されている。特に、米国特許第5,506,229号の実施例7Dは、放出制御ポリマーでコーティングされた、ラノラジンおよび微結晶性セルロースのミクロスフェアを含めた、カプセル剤形態の制御放出処方物について記載している。この特許はまた、約5重量%のブドウ糖を含有するIV溶液1ミリリットル当たり、一番低くて5mgのラノラジンを含むIVラノラジン処方物を開示している。さらに、約4重量%のブドウ糖を含有するIV溶液1ミリリットル当たり、一番高くて200mgのラノラジンを含有するIV溶液が開示されている。
【0092】
ラノラジンおよび薬学的に許容されるその塩およびエステルに対して現在好ましい投与経路は、経口である。典型的な経口投与剤形は、圧縮錠剤、粉末混合物もしくは粒状体を充填した硬ゼラチンカプセル、または溶液もしくは懸濁物を充填した軟ゼラチンカプセル(ソフトゲル)である。米国特許第5,472,707は、極低温液体ラノラジンを、硬ゼラチンカプセルまたはソフトゲル用の充填溶液として使用している高用量経口処方物を開示している。
【0093】
米国特許第6,503,911号は、徐放性処方物が、胃の酸性の環境と、腸全体に渡るより塩基性の環境との両方を介して進む間に、十分なラノラジンの血漿レベルを得るという問題を克服する徐放性処方物を開示し、アンギナおよび他の循環器疾患の処置のために必要な血漿レベルを得るのに非常に効果的であることが証明された。
【0094】
米国特許第6,852,724号は、不整脈 異型および運動誘発性アンギナならびに心筋梗塞を含めた循環器疾患を処置する方法を開示している。
【0095】
米国特許出願公開第2006/0177502号は、ラノラジンが、35〜50%存在する、好ましくは40〜45%ラノラジンが存在する経口の徐放剤形を開示している。一実施形態では本発明のラノラジン徐放性処方物として、pH依存性結合剤;pHに依存しない結合剤;および1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipient)が挙げられる。適切なpH依存性結合剤として、これらに限らないが、強力な塩基を用いて部分的に中和されたメタクリル酸コポリマー、例えばEudragit(登録商標)(Eudragit(登録商標)L100−55、Eudragit(登録商標)L100−55の擬似ラテックスなど)が挙げられ、この強力な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムであり、メタクリル酸コポリマーを約1〜20%、例えば約3〜6%の程度まで中和するのに十分な量で用いられる。pHに依存しない適切な結合剤として、これらに限らないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えばMethocel(登録商標)El0M Premium CRグレードのHPMCまたはMethocel(登録商標)E4M Premium HPMCが挙げられる。適切な薬学的に許容される添加剤として、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)pH101)が挙げられる。
【0096】
3.2ドロネダロン
米国特許第5,223,510号は、ドロネダロン、N−(2−ブチル−3−(p−(3−(ジブチルアミノ)プロポキシ)ベンゾイル)−5−ベンゾフラニル)メタンスルホンアミド、薬学的に許容されるその塩、ならびに狭心症、高血圧、不整脈、および大脳循環不全の処置におけるこれらの使用を開示している。
【0097】
ドロネダロン塩酸塩は、一般的に使用されているドロネダロンの薬学的に許容される塩の一例である。
【0098】
米国特許第6,939,865号は、活性成分(active principle)としてドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩と、組成物のpHを3〜5の間に維持することが可能な生理学的に許容される緩衝液と、生理学的に許容される水可溶性β−シクロデキストリン誘導体とを含む薬学的組成物を開示している。緩衝液は、以下から選択される緩衝系を含む溶液である:酢酸/酢酸アルカリ金属塩(alkali metal acetate)、フマル酸/フマル酸アルカリ金属塩(alkali metal fumarate)、コハク酸/コハク酸アルカリ金属塩(alkali metal succinate)、クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩(alkali metal citrate)、酒石酸/酒石酸アルカリ金属塩(alkali metal tartarate)、乳酸/乳酸アルカリ金属塩(alkali metal lactate)、マレイン酸/マレイン酸アルカリ金属塩(alkali metal maleate)、メタンスルホン酸/メタンスルホン酸アルカリ金属塩(alkali metal methanesulphonate)、またはリン酸モノアルカリ金属塩(monoalkali metal phosphate)。この組成物は、注射溶液の形態の非経口投与のためのものである。
【0099】
米国特許第7,022,343号は、以下1)〜4)を含む液体薬学的組成物を開示している:1)活性成分としてのドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩、2)少なくとも50重量%の水を含む水性溶媒、3)溶剤中に分散したまたは可溶化した、生体適合性、生分解性、合成、水可溶性および共有結合反応性のマクロマーであり、このマクロマーは、重合することで、組織に適用後1カ月未満の期間内に分解する、対応した(compliant)組織付着性ハイドロゲルを形成し、分子1個につき平均少なくとも1つの親水性ドメインと、カーボネート連結を含む少なくとも1つの生分解性領域と、少なくとも2つの重合性基とを含むマクロマー、および4)重合開始剤。この組成物は、信頼できる適用のためのものであり、特に心臓のバイパスまたは他の心臓手術と関連した、ドロネダロンの心臓または血管の組織への局所制御放出が開発されてきた。ドロネダロンは、抗不整脈薬物が送達されるべき組織に付着し、次いで生物分解するハイドロゲルの中に組み込まれる。抗不整脈薬物を含有するハイドロゲル組成物およびパッチは、インビトロまたはインビボで形成することができる。好ましいハイドロゲルは、適用後組織に付着し、7〜10日以内に生分解する。もっとも好ましいハイドロゲルは、炎症または線維増多の誘発が最小の合成ポリマーで形成されたものである。ハイドロゲルは、組織にゲルをスプレーするもしくは塗ることによって、または適用部位における放出のための定義された投与量の薬物を提供する「パッチ」形態で、ドラッグデリバリーが所望される組織に直接適用することができる。
【0100】
米国特許第7,323,493号は、活性成分として、ドロネダロンまたは薬学的に許容されるその塩と、ポロキサマーから選択される薬学的に許容される非イオンの親水性界面活性剤とを、必要に応じて1つ以上の薬学的添加剤と組み合わせて含む薬学的組成物であって、この非イオン性親水性界面活性剤が、塩基形態の活性成分の5%〜15重量%の割合で存在する、薬学的組成物を開示している。この組成物は、錠剤、顆粒剤、ゼラチンカプセル剤、または散剤の形態の経口投与のためのものである。
【0101】
一実施形態では、本発明の方法は、ドロネダロンを含む錠剤を使用する。この錠剤は、ヒプロメロース、デンプン、クロスポビドン、ポロキサマー407、ラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを必要に応じてさらに含む。この錠剤はまた必要に応じてラノラジンを含んでもよい。
【0102】
3.3薬学的処方物
上述されているように、ドロネダロンおよびラノラジンは、共投与することができる。これは、2つの有効成分を別々に処方することができるが、同様の時間(すなわち、一緒に投与するか、または一方の後に他方を投与するかのいずれか)で投与することができることを意味する。共投与されるとはまた、ドロネダロンおよびラノラジンを、組み合わせた投与単位内に共処方してもよいことを意味する。したがって、一実施形態では、本発明は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物を対象とする。
【0103】
別の実施形態では、処方物は、相乗的有効量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩および/またはドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩を含む。特定の実施形態では、処方物は、静脈内投与または経口投与のいずれかのために処方する。さらなる他の実施形態では、2つの有効成分を、組み合わせた投与単位に共処方する。なお、さらなる他の実施形態では、この2つの有効成分は、共投与のために別々に処方される。
【0104】
3.4共処方物(coformulation)
本発明の特定の実施形態では、ラノラジンおよびドロネダロンは、経口投与に適した組み合わせた投与単位または単一剤形へと共処方する。特定の実施形態では、ラノラジンは、徐放性処方物として処方する。特定の実施形態では、ドロネダロンは、即時放出用または徐放用に処方する。
【0105】
一実施形態では、処方物は、錠剤の形態またはカプセル剤の形態である。実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約10mg〜約800mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約25mg〜約600mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約25mg〜約400mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約50mg〜約200mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。
【0106】
一実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約50mg〜約1000mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約100mg〜約750mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。さらに別の実施形態では、錠剤またはカプセル剤は、約150mg〜約375mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む。
【0107】
このようなある実施形態では、ラノラジン組成物は、ドロネダロン組成物を含有する錠剤の一部分とは別個ではあるがそれと接触している錠剤の一部分に配置する。単一剤形は、ラノラジン組成物およびドロネダロン組成物を多層錠剤へと単に圧縮するステップを含むことができ、または従来の他の単一剤形、例えばカプセル剤へと従来法で加工されることを理解されよう。本発明における使用に適した多層錠剤およびカプセル剤は、標準的な機械類を使用して、当技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。
【0108】
錠剤は、2つの層、すなわちドロネダロンを含む、即時放出用または徐放用に処方される第1の層と、ラノラジンを含む、徐放用に処方される第2の層とを含んでもよい。あるいは、多層錠剤は、内層と外層とを含んでもよく、内層は、徐放性ラノラジン処方物を含み、外層は、即時放出性または徐放性のドロネダロン層を含む。別の実施形態では、ラノラジンおよびドロネダロンを、カプセル中に共処方し、このカプセル剤は、ドロネダロンの即時放出または徐放およびラノラジンの徐放を可能にする。例えば、カプセル剤は、ドロネダロンおよびラノラジンの両方の顆粒剤を含有してもよく、顆粒剤は、ドロネダロンが即時放出または徐放用に利用できラノラジンが徐放用に処方されるように処方されている。あるいは、カプセル剤は、ドロネダロンの即時放出性または徐放性液体処方物およびラノラジンの徐放性固体処方物を含有することもできる。しかし、このような実施形態は、例示的であり、本発明の処方物を限定することを意図していない。
【0109】
多層錠は、必要に応じて1つ以上の副成分と共に、加圧または成形により作製することができる。圧縮錠は、有効成分を、易流動性の形状、例えば粉末または顆粒の中で、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性な賦形剤、保存剤、界面活性剤または分散剤と混合させて、適切な機械内で圧縮することにより調製することができる。湿製錠(molded tablet)は、不活性な液体賦形剤で湿らせた、粉末化した有効成分の混合物を適切な機械内で成形することによって作製することができる。錠剤は、必要に応じてコーティングするか、または刻みをいれることもできる。
【0110】
錠剤は、口当たりのよい調製物を提供するための、甘味剤、香味剤、着色剤および保存料含めた1つ以上の薬剤を含有してもよい。錠剤の製造に適した、無毒性の薬学的に許容される添加剤を有効成分と混合して含有する錠剤は、許容される。これら添加剤は、例えば、不活性賦形剤、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;整粒剤および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えばセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム;および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど、ステアリン酸またはタルクであってよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または消化管における分解および吸着を遅らせ、これによって、より長い期間に渡り持続する作用を得るために、マイクロカプセル封入を含めた公知の技法によってコーティングされていてもよい。例えば、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを単独で、または蝋と共に採用することもできる。
3.5追加の処方物
本発明により同様に企図されている処方物は、注射による投与のためのものでもよく、これには、水性懸濁物または油性懸濁物、またはゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油との乳剤、ならびにエリキシル剤、マンニトール、ブドウ糖、または無菌水性溶液、および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。食塩水中の水性溶液はまた、従来から注射に使用されているが、本発明の状況ではあまり好ましくない。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど(およびこれらの適切な混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油もまた採用することができる。例えばレシチンなどのコーティング剤の使用により、分散物の場合には必要な粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により、適した流動度を維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。ラノラジンおよびドロネダロンを別に投与するため、同じ処方物が企図される。
【0111】
無菌注射液剤は、必要量の成分を、適切な溶媒中に、上に列挙した様々な他の成分と共に組み込み、必要に応じてこれに続いて濾過滅菌法を行うことにより調製する。一般的に、分散物は、様々な滅菌した有効成分を、塩基性の分散媒体および上に列挙されたもののうちの他の必要成分を含有する無菌のビヒクルへと組み込むことによって調製する。無菌注射液剤の調製のための無菌の散剤の場合、調製の好ましい方法は、有効成分の散剤と、さらに以前に無菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分とを生成する真空乾燥および凍結乾燥の技法である。
【0112】
したがって、心房細動のための新規の組み合わせの投与および本発明の他の方法のための器具の理想の形態は、(1)使える状態にある2つの作用物質を含有する2つのコンパートメントを含むシリンジまたは(2)使える状態である2つのシリンジを含有するキットのいずれかからなる。
【0113】
ラノラジンとドロネダロンとを含む薬学的組成物の作製において、有効成分は、通常添加剤またはキャリアで希釈し、および/またはカプセル、サッシェ、ペーパーまたは他の容器の形態となり得るようなキャリア内に封入する。添加剤が、賦形剤としての働きをする場合、これは、固体、半固体、または液体物質(上記の通り)であってよく、有効成分のためのビヒクル、キャリアまたは媒体としての作用をする。したがって、組成物は、例えば、10重量%までの活性化合物、軟質ゼラチンカプセルおよび硬質ゼラチンカプセル、無菌注射液剤、および無菌の包装された散剤を含む、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体としてまたは液体媒体中)、軟膏剤の形態とすることができる。
【0114】
適切な添加剤の一部の例として、ラクトース、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネートアルギネート、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。処方物は、滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;保存料、例えばメチル−およびプロピルヒドロキシ−ベンゾエート;甘味剤;ならびに香味剤をさらに挙げることができる。
【0115】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の手順を採用することによって、患者への投与後の、有効成分の急速放出、徐放または遅延放出を得られるように処方することができる。上述のように、ラノラジンの生体利用効率の低減を考えると、徐放性処方物が、一般的に好ましい。経口投与用の制御放出ドラッグデリバリーシステムとして、ポリマーコーティングされた貯蔵所または薬物ポリマーマトリックス処方物を含有する浸透圧ポンプシステムおよび溶解システム(dissolutional system)が挙げられる。制御放出システムの例が、米国特許第3,845,770号;第4,326,525号;第4,902,514号;および第5,616,345号において与えられている。
【0116】
組成物は、単位剤形内に処方するのが好ましい。「単位剤形」または「組み合わせた投与単位」という用語は、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単一の投与量(unitary dosage)に適合した、物理的に別個の単位(discrete unit)を指し、各単位は、適切な薬学的添加剤と一緒に所望の治療効果を生じさせるように計算された既定量の活性物質を含有する(例えば、錠剤、カプセル剤、アンプル)。本発明の活性薬剤は、広い投与量範囲に渡り効果的であり、薬学的有効量で一般的に投与する。しかし、実際に投与する各活性薬剤の量は、処置を受ける状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物およびこれらの相対的な活性、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度などを含めた、関連状況を考慮して医師によって決定されることになることは、理解されよう。
【0117】
錠剤などの固体組成物を調製するため、主要な有効成分を薬学的添加剤と混合することによって、本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体予備処方組成物を形成する。これら予備処方組成物を均一と言及する場合、これは、組成物が同等に効果的な単位剤形、例えば錠剤、丸剤およびカプセル剤に容易に小分けされ得るように、有効成分が組成物全体に渡り均等に分散しているという意味である。
【0118】
本発明の錠剤または丸剤は、コーティングされるか、または別の方法で調合される(compounded)ことによって、延長作用という利点が生じる剤形を得ることができるか、または胃の酸性状態から保護することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与量構成要素および外部投与量構成要素を含むことができ、後者は、前者を覆う外被の形態で存在する。ラノラジンおよび共投与される薬剤(複数可)は腸溶層によって分離することができ、その腸溶層は、胃の中で分解に耐えて、内部の構成要素をそのままの状態で十二指腸に移ることを可能にするか、または内部の構成要素の放出を遅延させるように働く。多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸と、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む様々な材料を、このような腸溶層またはコーティング剤に使用することができる。
【0119】
本発明の追加の実施形態として、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩および相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含むキットが挙げられる。
【0120】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下に続く実施例において開示された技法は、本発明を実施する上でよく機能することが本発明者によって発見された技法を表すもので、したがってこの実施のための好ましい方法を構成すると考えることができることは、当業者には理解されるはずである。しかし、当業者は、開示された特定の実施形態では多くの変更を行うことができ、しかも本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに、同じまたは同様の結果を得ることができることは、本発明の開示を考慮すれば、理解されるはずである。
【実施例】
【0121】
本発明において使用されているドロネダロンは、当技術分野で周知であり、市販されている。ラノラジンもまた市販されており、または従来の方法、例えば、全体の開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,567,264号において開示された方式によって調製することができる。さらに、全体に渡り使用している略語は、以下の意味を有する:
μM マイクロモル濃度
cm センチメートル
kg キログラム
mA ミリアンペア
min 分
mm ミリメートル
mM ミリモル濃度
ms ミリ秒
MΩ メガオーム。
【0122】
(実施例1)
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによるナトリウムチャネル依存性パラメータの心房選択的低下および心房細動の抑制:相乗的作用
単離したイヌの心房を使用した実験研究において、ラノラジンの別個の適用および慢性のアミオダロンは、ナトリウムチャネル電流(INa)依存性パラメータの心房選択的低下を起こし、AFを効果的に抑制することが示された9〜13。慢性のアミオダロンと急性のラノラジン(比較的に低濃度で)との組み合わせは、INa依存性パラメータの著しい心房選択的低下およびAFの非常に効果的な抑制を引き起こした14。本発明の研究では、急性ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、慢性のアミオダロンと急性のラノラジンとの組み合わせの相乗作用と類似の相乗作用を有し、これによって、効き目のある心房選択的電気生理学的作用をもたらし、心房不整脈の著しい抑制につながるという仮説を試験した。
【0123】
方法
冠状動脈灌流した心房試料および心室試料
単離した冠状動脈灌流したイヌの右心房(RA)および左心室(LV)の試料(約3×1.5×1cm)を使用して、実験を実施した。試料の単離および灌流は、以前に記載した通りであった9、15、16。簡単に説明すると、麻酔下の(ペントバルビタールナトリウム)成長した雑種犬(20〜30kg)から取り出した心臓から試料を切り離した。右心室の縁が結合した、折り畳まれていないRAをカニューレ処置し、右冠動脈の開口部を介して冷たい心停止液(4〜8℃)を灌流し、LVウェッジは、左冠状動脈の前室間動脈(left anterior descending artery)の対角枝(diagonal branch)を介して灌流した。灌流されなかった組織を剃刀ブレードで取り出した。切断した心室枝および心房枝を、絹糸を使用して結紮した。次いで試料を、温度制御された槽に移し、ローラーポンプの使用によりTyrode溶液で動脈灌流した。Tyrode溶液の組成(単位mM)は:NaCl 129、KCl 4、NaH2PO4 0.9、NaHCO3 20、CaCl2 1.8、MgSO4 0.5、およびD−グルコース5.5であり、95%O2および5%CO2(37±0.50C、pH=7.35)で緩衝化した。
【0124】
40kHzのサンプリングレートで浮動ガラス微小電極を使用して膜貫通活動電位(AP)記録を得た。試料が漬けられたTyrode溶液中に配置したAg/AgCl半電池からなる2つの電極を使用して、心房のまたは心室の、冠状動脈灌流した試料の2つの対側から1.0〜1.5cmの位置で、擬似心電図(ECG)を記録した。伝導時間は、10%の「P波」および「QRS」振幅を表すレベルにおいて、心房の「P波」および心室の「QRS群」の持続時間により概算した。興奮性の心臓拡張期の閾値(DTE)は、0.01mAステップで刺激強度を増加させることによって決定した。ペーシング周期長(CL)500ms(5msステップ;DTEの2倍(2 times DTE))における基本的拍動10回ごとに、毎回その後で早期の刺激を次第に、より短いS1−S2間隔で送達することによって、有効不応期(ERP)を測定した。ERPが、心室内の90%再分極(APD90)において測定された活動電位持続時間および心房内の70%再分極(APD70)において測定されたAPDを上回った時点で再分極後の不応性(PRR)が認められた。心室のERPは、APD90と一致するのに対して、心房のERPは、全般的にAPD70〜75と一致する9。1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1は、500msのCLから開始してペーシングCLを次第に短くすることによって測定した。
【0125】
安定したAP記録は、激しく収縮している灌流した試料において容易には得ることができなかった。実験条件あたりの、APの上向き値の記録されたもっとも大きな最大上昇レート(Vmax)を統計比較のために用いた。少なくとも100mVの振幅を有するAPのみが、分析において考慮された。もっとも大きなVmax判定基準を使用した。なぜならこれは、もっとも大きな振幅およびもっともネガティブな静止膜電位に関連するもので、完全またはほぼ完全な貫通を表すからである。Vmaxの使用依存性低下を決定する際に、各実験について500msのCLにおけるVmax値に値を標準化し、次いで平均した。
【0126】
ピークINaに対するこれらの依存性のため、Vmax、DTE、PRR、および伝導時間ならびに1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1間隔は、INa依存性パラメータと呼ばれている。
【0127】
実験プロトコル
冠状動脈灌流した試料に対する平衡期間は、30〜120分であった。5μMラノラジン、10μMドロネダロン(ラノラジンの30分ウォッシュアウトの後)、およびこれらの薬剤の組み合わせに、少なくとも20分間この試料を曝露した。時間制御実験において、電気生理学的パラメータを変化させる薬物のそれぞれの効果における定常状態を達成するには、20分間で十分であった。他に指示されない限り周期長(CL)500および300msにおいて記録を取った。Vmax、QRS、DTE、およびCTの変化を、500から300msのCLへの加速後、心房の15から25番目の拍動およびLVの16から20番目の拍動を測定し、平均した。定常状態は15拍以内で達成された。1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1ペーシングレートを決定する場合、刺激強度はDTE×2であり、500msのCLで決定された。
【0128】
ラノラジン、ドロネダロン、およびこれらの組み合わせの抗AF能力を評価するため、本発明者らは、アセチルコリン(ACh、1.0μM)媒介性AFモデルを使用した。AChの存在下、早期の電気的刺激(PES)または急速なペーシング(CL=50〜80ms)は、イヌの冠状動脈灌流した右心房試料の100%において持続性AFを誘発する9。AFの誘発を予防する(シリーズ1)上記薬物の効果を評価した。別のセットの試料において、持続性AFを終結させる(シリーズ2)これら薬剤の能力を評価した。第1のシリーズでは、5μMラノラジン、10μMドロネダロン、またはこれら薬剤の組み合わせを用いた灌流開始から20〜30分後、AChを灌流液に添加した。続いてこれに不整脈を電気的に誘発する試みが行われた。第2のシリーズでは、ACh媒介性の持続性AFの間(不整脈開始から5〜6分後の時点)、灌流液に上記薬剤を添加した。薬物がAFを終結した場合、本発明者らは、急速なペーシングを用いて不整脈を再誘発するよう試みた。
【0129】
上面を液で洗い流した肺静脈スリーブの試料
肺静脈(PV)スリーブ試料(約2.0×1.5cm)を、イヌの左心房から単離した。試料の厚さは、約2mmであった。左の上肺溝PVを、大部分の実験で優先的に使用した。試料を小さな組織浴(tissue bath)に配置し、および以下の組成物(mM)のTyrode溶液で上面を液で洗い流した(superfused):129 NaCl、4 KCl、0.9 NaH2PO4、20 NaHCO3、1.8 CaCl2、0.5 MgSO4、5.5 グルコース、95%O2/5%CO2(35±0.5℃)で緩衝化。基本的周期長(BCL)1000msで、平衡期間(1h)の間、先端以外は絶縁された銀バイポラー電極を介して送達される電気パルス(1〜3msの持続時間、心臓拡張期の閾値強度の2.5倍)を使用してこのPV試料を刺激した。高インプットインピーダンス増幅システム(World Precision Instruments、モデルKS−700、New Haven、CT)に接続した、3M KCl(10〜20MΩDC抵抗)を充填したガラス微小電極を使用して、膜貫通電位を記録した(サンプリングレート40kHz)。以下のパラメータを測定した:DTE、Vmax、および1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1。アセチルコリン(ACh、1μM)、イソプロテレノール(1μM)、高カルシウムまたはこれらの組み合わせを使用することによって、後期段階3 EAD、DADおよび誘発活性を誘発した。副交感神経系のおよび交感神経の刺激の組み合わせが、PVスリーブ試料における後期段階の3 EADの発症を促進することが示されたのに対して17、18、交感神経の刺激は、DADの発症の原因となる状態であるカルシウム過負荷をもたらすことが公知である19、20。DADまたはEADは、次第により速いレートで導入される20拍の連続刺激、これに続く休止を使用して引き出された。
【0130】
薬物
ドロネダロンおよびラノラジンは、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)および蒸留水にそれぞれ溶解して、10mMの保存溶液とした。アセチルコリンおよびイソプロテレノール(共に、SIGMA、MO)を蒸留水に溶解して、それぞれ10および1mMの保存溶液とした。
【0131】
統計
複数の群のための一元配置分散分析(ANOVA)または反復したANOVA測定を使用して統計分析を実施し、続いて必要に応じて、Bonferroni検定を実施した。すべてのデータを平均値±SDとして表す。統計的有意性は、p<0.05と仮定した。
【0132】
結果
冠状動脈灌流した右心房および左心室の試料
ラノラジン(5μM)は、心房においてAPD90を適度に延長したが、心室試料におけるAPD90では統計的に有意な変更を引き起こさなかった(図1)。APD50は、心房または心室のいずれにおいてもラノラジンにより変化しなかった(図1)。ラノラジンのウォッシュアウトにより、APD90値は、対照レベルまで戻った。心房において、ドロネダロン(10μM)は、再分極を短縮し、CTにおけるAPD50の短縮に対して統計的有意に達した(図1)。心室試料において、ドロネダロンは、わずかにAPDを延長させたが、統計的有意に達しなかった。10μMドロネダロン含有溶液への5μMラノラジンの添加は、心房のAPD90を延長させたが、その一方で心室における統計的に有意でない短縮を引き起こした(図1)。APD50は、心房または心室のいずれにおいても、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせにより変化しなかった。
【0133】
別々に適用された場合、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)は両方とも、心房のAPD70よりも長くERPを延長させ、PRRの発症につながった(図2)。PRRの程度は、ドロネダロンの後よりもラノラジンの後の方が大きかった。心室ERPは、ラノラジンまたはドロネダロンのいずれかにより変化しなかった。ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、心房におけるERPの有意な相乗的延長を引き起こしたが、心室におけるERPを変化させず、したがって著しい心房特異的PRRをもたらした(図2)。
【0134】
500msのCLで測定したVmaxは、心房においてラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)により低減したが、心室では低減しなかった(図3および4)。このペーシング周期長では、これらの薬物の組み合わせは、心房および心室の両方においてVmaxの低下につながったが、これは前者において圧倒的であった。心房では、ドロネダロンおよびラノラジンのそれぞれを単独で使用した場合よりも、これら薬物を組み合わせた場合の方が、500から300msのCLへのペーシングレートの増加は、はるかに大きなVmaxの低下を引き起こした(図3および4)。心室では、このペーシングレートの加速は、試験したすべての条件下で、Vmaxの穏やかな低減にしかつながらなかった。
【0135】
心房における「P波」および心室における「QRS群」の持続時間を使用して見積もった伝導時間は、500msのCLにおいて、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)のいずれかによって、心房および心室において有意に変化しなかった(図5)。これら薬物の組み合わせは、500msのCLにおける「P波」および「QRS群」の統計的に有意な延長をもたらした。より速いペーシングレート(CL=300ms)では、心房の伝導時間は、ラノラジンにより統計的に有意に増加したが、心房ではドロネダロンにより有意に増加せず、どちらの薬剤も心室心筋における伝導時間に有意な変更を引き起こさなかった。300msのCLでは、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、心房および心室の両方において有意な伝導の遅延を起こしたが、非常により明白な遅延は、心室よりも心房で起きた。
【0136】
CL500および300msのペーシングにおいて、心房または心室のいずれかにおいて、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)のいずれかにより、DTEは有意に影響を受けなかった(図6)。これらの薬物を組み合わせた場合、試験した両方のペーシングレートにおいて、心房および心室の両方において、DTEは有意に増加した。組み合わせの効果は、心房の中で、および300msのCLにおいてもっとも明白であった(図6)。
【0137】
別のナトリウムチャネル媒介性パラメータである、1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1間隔は、心房および心室の両方において、ラノラジンにより増加したが、ドロネダロンにより増加しなかった(図7)。ラノラジンは、このパラメータにおいて、心室よりも心房においてより大きな増加を引き起こした。ドロネダロンとラノラジンとを組み合わせた場合、もっとも短いS1−S1間隔は、心房および心室の両方において有意に増加したが、変化の程度は、心室よりも心房ではるかに大きかった。
冠状動脈灌流した右心房の心房細動
持続性AFは1μMのAChの存在下、100%の心房において誘発された9。冠状動脈灌流した心房試料の、比較的低濃度のラノラジン(5μM)を用いた前処置は、2/7心房において持続性AFの誘発を阻止した(表1)。別の心房試料において、5μMのラノラジンは、5つの心房のうち1つの心房においてのみ持続性AFを終結させるのに効果的であった(表2)。ドロネダロン(10μM)単独では、AFの誘発を予防することにおいて、および持続性AFを終結させるのに効果的でなかった(表1および2)。ドロネダロン(10μM)およびラノラジン(5μM)を組み合わせた場合、持続性AFの誘発を予防するための成功率は、著しく増加した(表1によると8/9心房において)。この薬物の組み合わせは、10個の心房のうちの6つの心房において持続性AFを終結させた(表2)。AFは、薬物の組み合わせに曝露された6つの試料のいずれにおいても再誘発は可能でなかった。しかし、6つの心房のうちの2つの心房において、持続性の心房粗動または頻拍(CL≧160ms)は、急速なペーシングおよび/またはPESにより誘発することができた。
【0138】
表1:単離したイヌの冠状動脈灌流した右心房における、心房の興奮性およびACh媒介性の持続性AFの誘発に対する、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)、およびこれらの組み合わせの効果
【0139】
【表1】
提示した活動電位持続時間(APD)および有効不応期(ERP)データは、冠状動脈灌流した心房の櫛状筋領域から、500msのCL(n=5〜15)において得た。*対照に対して<0.05;†アセチルコリン単独(ACh、1.0μM)に対してP<0.05。‡ラノラジン+AChおよびドロネダロン+AChに対してP<0.05。もっとも短いS1−S1=1:1活性化を可能にするもっとも短いCL(周期長500msで決定した2×刺激強度閾値で)。
【0140】
表2:単離したイヌの冠状動脈灌流した右心房における、持続性のACh媒介性AFを終結させその再誘発を予防する、ラノラジン(5μM)、ドロネダロン(10μM)、およびこれらの組み合わせの効果
【0141】
【表2】
上面を液で洗い流した肺静脈
図9は、PVスリーブ試料のペーシングレートの急激な変化後のVmaxに対する、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの相乗的作用を例示している。パネルAは、基本的周期長(BCL)の5000から300msへの変化後のVmaxトレースを示し、パネルBは、Vmax変化の複合データを示している。5000から300msのCLのレート変化は、対照条件下ではVmaxにおいて13%の低減を誘発し、ラノラジン(5μM)もしくはドロネダロン(10μM)単独またはこれらの組み合わせ後では、それぞれ19、20および50%の低減を誘発した。
【0142】
図10は、Vmaxの回復レートに対する、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる効果を例示しており、これは、PVスリーブ試料におけるナトリウムチャネルからの薬物のブロック解除を反映している。グラフは、300msのCLにおけるS1−S2の関数としてVmaxを示している。ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせへの試料の曝露は、ラノラジンまたはドロネダロン単独の場合よりも、Vmaxのはるかに大きな低減およびはるかに遅い回復をもたらした。
【0143】
300msのCLにおいて、ラノラジン(5μM)およびドロネダロン(10μM)は、単独で、興奮性の心臓拡張期の閾値(DTE)の有意な変化を引き起こさなかった。DTEは、ラノラジンおよびドロネダロン添加後、それぞれ0.21±0.07から0.24±0.09mAおよび0.26±0.09mA(n.s)に増加した。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、DTEにおいて、0.21±0.07から0.53±0.11mAへの有意な増加を引き起こした(p<0.05、n=4)。
【0144】
PVスリーブ試料において、1:1応答を可能にするもっとも短いペーシングCLは、未処置の対照で116±8msであり、ラノラジン(5μM)で121±13msであり、ドロネダロン(10μM)の後では120±12msであり、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの後では200±67msであった(p<0.05、n=4)。したがって、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、興奮性を低減し、PVスリーブにおいて、1:1活性化を可能にするCLの相乗的増加を誘発した。
【0145】
以前の研究は、ラノラジン(10μM)は、PVスリーブのACh、イソプロテレノール、または高度な[Ca2+]o+急速ペーシングへの曝露により引き出される、後期段階3の初期の後脱分極(EAD)、遅延後脱分極(DAD)および誘発活性を単独で抑制することを示した11。本発明の研究では、急速なペーシングレートにおける20拍の連続拍動に加えた、イソプロテレノールおよび/または高カルシウムに続いて誘発されるDADおよび誘発活性が、ラノラジン(5μM)またはドロネダロン(10μM)単独により低減したが、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせへの曝露により消滅した(図11〜12)(n=6)。
【0146】
考察
本発明者らのデータは、AFの実験モデルにおいてナトリウムチャネル依存性パラメータを低下させ、AFおよび誘発活性を抑制するドロネダロン(10μM)とラノラジン(5μM)との組み合わせの強力な心房選択的作用を実証している。ドロネダロン(10μM)またはラノラジン(5μM)を単独で使用した場合、心房および心室の両方における電気生理学的変化は、わずかであるか、または皆無のいずれかであり、これらの抗AF効力は低かった。両薬剤の優れた安全性プロファイルを考慮して、本発明者らの結果は、ラノラジンおよびドロネダロンの相乗的心房選択的作用は、安全でありしかも効果的である、AFのための独自の併用療法を提供することができることを示唆している。
【0147】
心房細動の発症および維持の原因となる機序
AFの開始には、誘発因子および基質の両方の発生が関与している。PV筋のスリーブは、発作性AFの開始に関与している期外収縮の供給元であることが多いことはよく認められている26。AFに対して誘発因子としての役割を果たす異所性の活性は、再入、DAD誘導性または後期段階3 EAD誘導性誘発活性の結果として発生し得る11、27。再入の開始に対する主要な基質は、ERPの短縮に続発する、波長の低減に関与する。AFの維持は、電気的および構造的の両リモデリングにより促進される。電気的リモデリングは、心房の活動電位の短縮により引き起こされるERPのさらなる短縮に関与する28。したがって、AFの管理に対する薬理学的手法は、ERPを延長することが可能な機序を標的とする29。本発明の研究は、AFの開始および維持に関連する誘発因子および基質の両方を排除するラノラジンとドロネダロンとの組み合わせの強力な作用の証拠を提示している。
【0148】
ドロネダロンの電気生理学および抗不整脈の効力
急性ドロネダロンが生み出すと報告されている、APDを変化させる作用は、可変ではあるが、一般的に少ないか、またはまったくない30〜34。APDは、イヌおよびモルモットの心臓から単離した上面を液で洗い流した心室試料において、10μMまでのドロネダロンの濃度において変化しなかった30、31。イヌの左心室の上面を液で洗い流した組織スライス試料において、高濃度のドロネダロン(30μM)はAPD90を短縮しなかった(300〜800msのCL)か、またはわずかなAPD90の短縮(2000msのCLにおけるM細胞試料中の7%短縮)を引き起こした34。上面を液で洗い流したウサギの心臓試料において、急性ドロネダロンは、心室のAPDを延長させたが、心房のAPDを短縮した32。したがって、急性ドロネダロンのAPD(図1)の作用についての本発明者らのデータは、以前に報告されたものと全般的に一致している。
【0149】
心室および心房のERPは、インビボのイヌにおける急性ドロネダロン後、23%まで延長されると報告され、両腔所におけるERP延長の程度は同様であった35。インビボで慢性AVブロックを有するイヌにおいて、ドロネダロンは、心室ERPを変化させなかった36。本発明者らの現在のインビトロの調査において、ドロネダロンは、心房および心室のERPを両方とも延長させたが、心房において優先的に延長させた(それぞれ9および4%延長)。ドロネダロンによる心房ではなく心室におけるERP延長は、同等のAPD90の延長を伴った(図2)。したがって心室ではなく、心房におけるERPの増加は、PPRの発生によるものである。したがってドロネダロンは、ERPを延長させる心房選択的作用を生み出す。
【0150】
急性ドロネダロン(10μM)は、ウサギの、心房と心室との両方の上面を液で洗い流した試料(1000msのCL)において、Vmaxの比較的に小さな低減を生み出すことが報告されている33。さらに急速なペーシングレート(125msのCL)で、10μMドロネダロンは、上面を液で洗い流したウサギ心房試料において、Vmaxを16%だけしか低減しなかった33。ドロネダロン(10μM)は、上面を液で洗い流したモルモット乳頭筋においてVmaxを14%低下させた(1000msのCLで)31。イヌの心室筋およびプルキンエ線維の上面を液で洗い流した試料において、ドロネダロン(10μM)への急性の曝露は、Vmaxを有意に低減しなかった(また1000msのCLで)30。したがって、本発明者らの研究の中で観察されたVmaxに対する急性ドロネダロンの相対的な穏やかな作用は、以前に報告されたものと一致する。
【0151】
興味深いことに、いくつかの臨床研究が、洞調律の長期維持に対するドロネダロンの抗AF効力を示してきたが4、5、本発明者らは、いずれの実験モデル(急性または慢性)においてもAFに対するドロネダロンの効力を評価している任意の省略なしの刊行物を発見することができなかった。本発明者らはまた、急性ドロネダロンの抗AF能力を試験したいかなる臨床研究をも認識していない。したがって、本発明者らは、AFを抑制する急性ドロネダロンの作用は比較的弱いという本発明者らの結果を、任意の以前の前臨床研究または臨床研究と比較することができない。急性ドロネダロンは、動物モデルにおいて、虚血/再灌流に関連した心室不整脈37および長いQT症候群36を効果的に抑制することが示されている。
【0152】
利用できる臨床データは、AF患者における洞調律の維持に対するドロネダロンの長期間の効力は、アミオダロンのものより劣っていることを示している2、3。DIONYSOS治験におけるアミオダロンとドロネダロンとの間の直接比較は、AFの再発率はドロネダロンで63%であり、アミオダロンで42%であった(6カ月の追跡調査で)ことを示した。組み合わせたEURIDISおよびADONIS治験において、AFの再発は、1年の追跡調査で、プラシーボを摂取した患者の75%と比較して、ドロネダロンで処置した患者の64%において生じた5。AFを洞調律へと変換するドロネダロンの作用に関連するデータは、比較的少ない。ドロネダロンを用いた持続性AFの変換率は、薬物処置開始後第5〜7日目に測定した場合、プラシーボアームにおける3.1%に対して、5.8〜14.8%(800〜1600mg/日)の範囲であった4。本発明の研究における、AFを抑制する急性ドロネダロンの比較的弱い作用は、臨床におけるAFに対するその薬物の非常に穏やかな作用と一致している。AFを抑制するおよびその誘発を予防するドロネダロンの作用の著しい増強は、本発明者らの実験モデルにおいてラノラジンと組み合わせた場合、臨床における同様の増強の良い前兆である。
【0153】
本発明者らは、Vmax、DTE、ERP、伝導時間、および1:1活性化を可能にするもっとも短いS1−S1を含めたナトリウム−チャネル依存性パラメータを抑制するドロネダロンのかなり軽度の心房選択的作用を観察した。これは、著しい心房選択的電気生理学的作用を引き起こす慢性アミオダロンと対照的である10、12。心臓の電気生理学的作用における主要な差が、急性アミオダロン対慢性アミオダロンについて指摘されてきたが、急性ドロネダロン対慢性ドロネダロンについてはこれが当てはまらないようであることは注目に値することである30、38。これは、ドロネダロンの排出の半減期がアミオダロンよりもはるかに速いことに一部起因している可能性がある(約24時間に対して数カ月)38。
【0154】
ラノラジンの電気生理学および抗不整脈の効力
本発明者らは、5μMのラノラジンが、イヌの心房試料において穏やかな電気生理学的作用を引き出し、心室試料における作用はわずかから皆無であることを以前に報告した9、15。この濃度のラノラジンは、十分にその薬物の治療範囲内である(2〜10μM)。これらの知見は、現在の研究において確かめられている。APD90はわずかではあったが、心房において5μMラノラジンにより統計的に有意に延長し、500msのCLでは心室には何の変化もなかった9。ナトリウムチャネル依存性パラメータは、心房においてラノラジン(5μM)により穏やかに低下し、心室では実際に何の変化もなかった。ラノラジンはまた、インビボでのブタにおけるERPの延長を心房で優勢に引き起こすことが示された13。
【0155】
5μMラノラジンの抗AF効力は、本発明者らの以前の研究においてACh媒介性AFモデルで試験しなかった。処置範囲の上端のより高濃度のラノラジンは、イヌの心房のインビトロ(10μMでの)9モデルおよびブタの心房のインビボ(約9μMの血漿濃度)13モデルにおける、迷走神経刺激を介した(vagally−mediated)AFの実験モデルにおいて強力な抗AF作用を発揮することを示した。AFの虚血−再灌流−イソプロテレノールモデルにおいて、5μMラノラジンは、心房試料の60%においてAFの誘発を予防することが観察された9。上面を液で洗い流した肺静脈試料において、10μMラノラジンは、細胞内カルシウム依存性DADおよび後期段階3 EAD誘導性誘発活性を効果的に抑制した11。ラノラジンはまた、患者における新しいAFの発症を低減し、AFを終結させることを示した39〜41。最近の研究は、「単回経口投与(pill−in−the−pocket)」法として使用される単一の高用量(2000mg)のラノラジンが、発作性AFおよび構造的心疾患を有する患者18人中13人においてAFを終結させるのに効果的であったことを示している41。便秘以外の有害作用は指摘されなかった。72%の変換率は、他に報告された「単回経口投与」法と同等であり、このことは、高い経口用量のラノラジンが、新しいまたは発作性AFを変換するための安全な薬剤として有用性を有し得ることを示唆している41。
抗不整脈療法のための薬物の組み合わせ:効力および安全性
本発明者らは、開口した、および不活化された状態のナトリウムチャネルブロックの組み合わせは、相乗的心房選択性ナトリウムチャネル阻害を生じさせることができ、したがって、心室において顕著な電気生理学的作用を引き出すことなく、AFに効果的となり得ると仮定した。この仮説の検証に従い14、本発明者らは、ドロネダロンは、アミオダロンと同類であり、同様の電気生理学的プロファイルを有するという点において、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせを考慮した38。本明細書中で論じた結果は、この概念の検証も提供し、大部分開口した、および不活化された状態のナトリウムチャネルブロッカーの組み合わせは、INa依存性パラメータを選択的に阻害し、したがってAFの誘発および再誘発を終結および予防する強力な心房選択的作用を発揮する相乗的作用へとつながり得るという仮説を支持するさらなる証拠を提示する(表1)。
【0156】
AF薬剤の薬理学的管理における重大な懸案事項は、心室不整脈および/または器官毒性の誘発に対する危険性である21。ナトリウムチャネルブロッカーは、特に構造的心疾患(例えばうっ血性心不全、心筋梗塞、肥厚など)を有する患者において、悪性の心室不整脈を誘発することが公知である。IKrブロッカーは、トルサード・ド・ポワンツ(Torsade de Pointes)(TdP)として公知の多形心室頻拍を誘発することが公知である。アミオダロンは、AF心臓除細動後の洞調律の長期的維持に対して最善の選択であると一般的に考えられている。アミオダロンは、まれにしか心室催不整脈(pro−arrhythmia)を生じさせず、心室に構造的欠陥のある患者に対して一般的に安全であるが、その一方で心外性合併症を引き起こす(処置の第1年目に15%まで、より長い期間の処置では50%まで42)。アミオダロン分子中のヨウ素部分が、主としてこれら有害作用の原因であると考えられている。ヨウ素化されていないアミオダロン誘導体であるドロネダロンは、アミオダロンの心外性毒性の危険性を低減することを意図して設計された。ドロネダロンは、AF患者において、アミオダロンと比較して、より安全であると一般的に考えられている3。しかし、重篤なうっ血性心不全(New York Heart Association(NYHA)クラスIIIおよびIV)が前から存在する患者において、ドロネダロンは、心不全症状を悪化させ、死亡率の増加につながった7。アミオダロンがまた、進行型心不全(NYHAクラスIV)を有する患者の死亡率を増加させることは注目に値することである43。ドロネダロンの臨床有用性は、その抗AF効力に限らない。ドロネダロンは、卒中発作の発症率を低減し、AF患者のレート制御特性を有することが示されている6、44。
【0157】
急性および長期間の両方の、ラノラジンの臨床使用は、構造的心疾患を有する患者においてさえも重大な有害作用を伴わなかった45、46。ドロネダロンとラノラジンとを組み合わせる論理的根拠は、安全性に関して、アミオダロンよりもドロネダロンが優れていることに基づく3、5。アミオダロンとラノラジンとの組み合わせと同様に14、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、強力な心房選択的抗AF作用を起こすが、有害作用を伴う可能性はあまりない。
ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、AFを終結させることよりも、AF開始を予防することにおいてより効果的であった(表1および2を参照されたい)。これは、実験状況および臨床実践場面の両方において、大部分の抗AF薬剤に当てはまるように見え、この抗AF薬剤には、ラノラジン9およびドロネダロンが含まれる4。
【0158】
結論
イヌの心臓試料において、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ナトリウムチャネル依存性パラメータの強力な心房選択的阻害を引き起こし、心室において電気生理学的パラメータの変化をほとんど引き起こさないか全く引き起こさない濃度で、心房の不整脈を効果的に抑制する。これらの実験データは、個々の薬物に対して使用可能である臨床上の安全性データと一緒になって、この併用療法の潜在的な有効性および安全性を評価するように特に設計された臨床研究が保証されたことを示唆している。
【0159】
(実施例2)
パート1.モルモットの単離した心臓におけるドロネダロンおよびラノラジンの相乗的な変時作用および変伝導作用
麻酔
体重300〜350gの、いずれの性別のモルモット(Hartley)に、イソフルラン吸入により麻酔をかけた。
【0160】
モルモット心臓単離
モルモットの胸を切開し、心臓をすばやく取り出し、氷冷した改質Krebs−Henseleit(K−H)溶液中ですすいだ。改質K−H溶液の含有物は、(単位mM)117.9 NaCl、4.8 KCl、2.5 CaCl2、1.18 MgSO4、1.2 KH2PO4、0.5 Na2EDTA、0.14 アスコルビン酸、5.5 ブドウ糖、2.0 ピルビン酸(ナトリウム塩)、および25 NaHCO3であった。このK−H溶液に、95%のO2−5%のCO2ガスを持続性に供給し、pHを7.4の値に調整した。
【0161】
単離した心臓の灌流
Langendorff法によって心臓の灌流を行うために、切断した大動脈をガラスカニューレ上に移し、結紮法で固定した。37.0±0.5℃に温めた改質K−H溶液を用いて、10ml/分の一定流量で、大動脈の逆行性灌流をすぐに開始した。カニューレ内のサイドポートを使用して、灌流ラインを圧力トランスデューサ(AD Instruments、Australia)に接続して、冠状動脈の灌流圧(CPP)を測定した。左心室からの流体の流出を促進するため、僧帽弁のリーフレットを細いスプリングハンドル式ハサミで切り込んだ。心臓は、実験で心拍を測定するために自然に拍動するようにさせておくか、またはAV伝導時間を測定するための実験では、外部電極を使用して一定のレートでペーシングさせた。解剖および計測手段装備(instrumentation)が完了した後、心拍または刺激−ヒス束(S−H)間隔およびCPPを持続的にモニターした。各心臓は、薬物投与前の20〜40分間にかけて平衡化させておいた。実験の介入は、常に対照の測定の前後に行った。
【0162】
除外基準
研究から心臓を除外する基準は、1)50mmHg以上の安定したCPPが存在しないこと、2)安定した自発性心拍が得られないこと(心拍測定に対して)または心臓を一定レートでペーシングできないこと(S−H間隔測定に対して)、および3)実験中の心臓の劣化(CPPなどの測定されたパラメータの対照値の薬物投与前と薬物投与後との間の差>25%により示された通り)。薬物に応答するのに適した状態に心臓を維持するため、実験の全期間を、2時間に制限した。コンピュータに接続したPower Lab取得システム(AD Instruments、Australia)を使用して、各実験全体を通してCPPを持続性にモニターし、記録した。CPPの増加は、小血管の閉塞による薬物沈殿、薬物誘発性血管収縮、または虚血誘発性心筋拘縮のいずれかを示唆する一方、CPPの低下は、薬物誘発性心筋拘縮、薬物誘発性の血管拡張または心臓の計測手段を装備中の血管へのダメージのいずれかを示唆している。CPPに対する薬物の作用はこれらの研究において何も指摘されなかった。
心臓の電気的活性の測定
自発性心拍測定
自発性心房レート(spontaneous atrial rate)に対する薬物の作用を測定するため、各心臓の心房を切除しないで、そのままの状態にしておいた。テフロン(登録商標)コーティングした単極電極を右心房に配置することによって、心房の脱分極を記録した。徐々に濃度が増すドロネダロンおよびラノラジンに曝露する前に(対照)および曝露中に、自発性心拍を、実験全体を通して持続的に記録した。各濃度の薬物の非存在下(対照)および存在下で、1分間の心拍の平均を計算し、プロットした。
【0163】
S−H間隔
S−H間隔に対する薬物作用の記録を容易にするため、洞房結節の領域を含めた左および右心房の組織の部分を、取り出し、これら両方の自発性心拍を低下させ、電極配置に対して心房中隔を曝露した。テフロン(登録商標)コーティングされた二極電極を、心房内中隔の壁に配置し、心臓をペーシングさせた。心臓は、固定レート3.2Hzで電気的にペーシングさせた。刺激は、刺激発生器(モデル48、Grass Instruments、W.Warwick、RI)により提供され、刺激単離ユニットを介して、3msの持続時間の方形波パルスとして、および少なくとも2倍の(twice)閾値強度で、心臓まで送達された。
【0164】
AVジャンクション近くの心房中隔の右側に配置されたテフロン(登録商標)コーティングされた単極電極を使用してヒス束電気記録図を記録した。信号は、10ms/cmのスイープスピードで、オシロスコープスクリーン(Tektronix Inc.、Beaverton、OR)上に、およびコンピュータモニター上に、持続的にリアルタイムで示された。第1のペーシング人工物から、ヒス束信号の最大上行性動揺までの持続時間をS−H間隔として使用した。
【0165】
単離した、灌流した心臓の実験のための実験プロトコル
実験開始のときに、食塩水を心臓に灌流し、心拍またはS−H間隔のいずれか、およびCPPが、少なくとも5〜10分間にわたって一定のままになるまでこれを続けた。
【0166】
ドロネダロン(Dron)、ラノラジンまたはこれらの組み合わせを、様々な濃度で、心臓に注入した。各濃度のDronを約20分間注入することによって、記録する定常状態の応答を可能にしたのに対して、各濃度のラノラジン(Ran)を10分間注入することによって、記録する定常状態の応答を可能にした。次いで薬物投与を中断し、食塩水投与を開始することによって、薬物ウォッシュアウトを始めた。
【0167】
モルモット左心室から単離した単一筋細胞においてイソプロテレノールで誘発させた遅延後脱分極(DAD)による振幅の測定
コラゲナーゼ消化によりモルモット心臓から筋細胞を単離した。現在のクランプ方式におけるパッチクランプ技法を使用して筋細胞活動電位を記録した。1Hzの周波数で、毎10秒ごとに適用される、連続した8つの脱分極パルスを使用して活動電位を刺激した。DADは、50nMイソプロテレノール(ISO)を用いた筋細胞の灌流により引き出した。DADの振幅を電子工学的に測定した。ISOの存在下で、薬物処置がDADの振幅を低減することができるかどうか決定するために、試験品(ラノラジン、ドロネダロン、またはこれらの組み合わせのいずれか)を、ISOの継続した存在下で、筋細胞灌流浴槽中に添加した。
【0168】
パート2.メスのウサギの単離した心臓におけるドロネダロンおよびラノラジンの単独および組み合わせによる効力および安全性
実験試料
各ウサギは、6mg/kgのキシラジンおよび40mg/kgのケタミンの筋肉内注射を使用して鎮静させ、そして次いでケタミン(15mg/kg)+キシラジン(4mg/kg)の1.5ml食塩水中「カクテル」を使用して麻酔下においた。ケタミン/キシラジンカクテルを、i.v.ボーラスとして周縁の耳静脈を介して投与した。感覚消失を確かめた後、胸部を開き、心臓をすばやく切除した。心臓は、改質Krebs−Henseleit(K−H)生理食塩水溶液中に室温で配置した。K−H溶液は以下を含有した(単位:mmol/L):NaCl 118、KCl 2.8、KH2PO4 1.2、CaCl2 2.5、MgSO4 0.5、ピルベート 2.0、グルコース 5.5、Na2EDTA 0.57およびNaHCO3 25。この溶液に持続的に95%O2および5%CO2のガスを供給し、そのpHを7.4に調整した。大動脈を急速にカテーテル処置し、Langendorff法により、36〜36.5℃に温めたK−H溶液を用いて、20mL/分の割合で、ローラーポンプ(Gilson Minipuls3、Middleton、WI)により、心臓を灌流した。大動脈のカテーテルのサイドポートから、CPPを測定した(Biopac MP 150圧力トランスデューサ、Goleta、CAを使用して)。左心室(LV)の腔所からの流体の流出を容易にするため、細いスプリングハンドル式ハサミで僧帽弁のリーフレットを切り込んだ。右心房の壁を部分的に取り出した。
【0169】
完全なAVブロックが、AV結節領域の温熱切除により誘発された。自発性心室レート(すなわち、心室補充収縮調律)は、AV結節除去が成功した後の数拍/分であった。テフロン(登録商標)コーティングされた二極電極を、右心室中隔に配置して、心臓をペーシングさせた。幅3msおよび閾値振幅の3倍の電気的刺激を、Grass S48刺激器(W.Warwick、RI)を使用して、実験全体を通して1Hzの周波数で、ペーシング電極に送達した。
【0170】
心室ペーシング開始後、30〜40分の平衡遅延により、心拍(およびCPP)が、優れた品質の単相性活動電位(MAP)記録を記録するための本質的な実験条件である、定常状態を達成することが可能となった。実験プロトコルの全期間は、2.5時間に制限され、この時間の間試料は、優れた安定度を示した。
【0171】
信号記録およびプロセシング
Harvard Apparatus Inc.(Holliston、MA)製の単相性活動電位(MAP)電極およびECG電極を、心拍(拍/分、またはbpm)、左心室MAPを記録するために使用し、そして二極ECG MAP電極は、その電極(electroide)をLV心外膜表面との接触を保つためのバネを有する円形ホルダー(circular holder)に結合させた、圧接(pressure contact)Ag−AgCl電極であった。2つのMAP電極を心房−心室弁のレベルの下の心外膜の心室自由壁上に配置し、基底のMAPの記録用に1つは底部に、アピカルMAPの記録用に1つは、尖部に配置した。電極信号を増幅し、実験全体を通して目視で監視するようオシロスコープ上に表示した。薬物濃度が変わる前に、薬物への各応答が定常状態に達することを保証するため、MAP持続時間(脱分極の開始から100%再分極まで)は、各薬物の注入期間全体を通して、スクリーン上のキャリパーを使用して測定した。信号は、その後の分析のためコンピュータハードディスクに保存した。Biopac増幅システムに結合した、単離した心臓のECG器具(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を使用して、二極心電図(ECG)を作製した。圧力トランスデューサ(BiopacまたはPowerLab)圧力測定システムを使用して、冠状動脈の灌流圧力を測定した。MAP、ECG、およびCPP信号をリアルタイムで適切に増幅させ、濾過し、サンプリングし、デジタル化し(Biopac MP150、Goleta、CAを使用)、コンピュータスクリーン上に表示した。すべての信号は、その後の分析用にコンピュータハードディスクに保存した。
【0172】
オリジナルMAPプロファイルを重ね合わせて平均信号を得、次いでSpike−II(Cambridge Electronic Design、GB)ソフトウエアへ移して、再分極が90%完了した(すなわち、MAPD90値)レベルでの、MAPの持続時間を測定した。
【0173】
ウサギ単離心臓研究に対する除外基準
以下の問題のいずれかは、研究から試料を排除する原因となった:(1)不安定なCPPまたは心拍;(2)持続性の早期心室波形(PVC)またはAV結節除去後の心室頻拍;(3)心臓への巨視的な解剖学的ダメージ;または(4)MAP信号の不安定さ。すべての試料の約10%が除外された。
【0174】
統計分析
データをプロットし、Prismバージョン5(Graph Pad Software、San Diego、CA)を使用して分析し、平均値±SEMとして表現した。同じ心臓における介入前および介入後の測定値の有意差を、反復測定の一元配置分散分析(ANOVA)、続いてStudent−Newman−Kaul検定を行って判定した。異なる群の心臓から、異なるレートで処置値を得た場合、反復測定の二元ANOVAを使用した。対応のあるまたは対応のないスチューデントt検定を使用して、同一でありまたは異なる実験からそれぞれ得た2つの平均の値の間の統計差を判定した。
【0175】
結果
モルモット心臓におけるドロネダロン、ラノラジンおよびそれらの組み合わせの、AV結節性伝導(S−H間隔)に対する作用
ラノラジンは、β−アドレナリン作用性レセプターの弱いアンタゴニスト(その活性化はAV伝導を増加できる)であり、弱い電圧依存性およびレート依存性ナトリウムチャネルブロッカーであるが、AV結節性伝導を変化させることは示されていない。ドロネダロンは、L型カルシウム電流、ならびにナトリウム電流を低下することができ、これらの作用は、AV伝導の遅延をもたらし得る。両薬物を単独および組み合わせた場合の作用を決定するため、S−H間隔の持続時間(AV結節を介した電気的刺激伝導の速度の代理となるもの)を、薬物(複数可)の非存在下および存在下で測定した。ドロネダロンまたはラノラジンのいずれかは、第2度AVブロック(すなわち、拍動の降下)を引き起こすことなく、AV伝導のわずかな遅延を引き起こした。図13に示されているように、ドロネダロン(0.3μM)またはラノラジン(3μM)は、3、4および5Hzのペーシングレート(n=14および13、p<0.05、図13A)におけるS−H間隔が、小さいが、対照(薬物なし)と比較して有意な増加を引き起こした。薬物の組み合わせのもっとも大きな作用は、最高のペーシングレート(すなわち、5Hz)において観察された。ドロネダロンまたはラノラジンの組み合わせは、S−H間隔(n=7、対照に対してp<0.01、図13A)のはるかに大きな増加を引き起こした。ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせによって引き起こされたS−H間隔のこの増加は、両薬物の個々の作用の計算した合計(すなわち、Σ(R+D)、図13A)より有意に大きかった(p<0.01)。この結果は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、心房細動の場合のように、心房レートが高度である場合にAV伝導を遅延させるより大きな作用を有することができることを示唆している。この作用は、心房細動の間の心室レートの制御を提供するのに有益となり得る。
【0176】
ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせはまた、AV伝導の第2度ブロックが単離した心臓において生じることが観察された、心房のペーシングレートを低下させた。データは、第2度AV結節性伝導ブロックに伴うWenckebach周期長として表現されている(図13B)。Wenckebach周期長は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせによって有意に増加した(n=7心臓、対照(薬物なし)に対してp<0.01、図13B)。この所見は、心房細動の間のように心房レートが増加した場合の心室レートの制御を提供する薬物の組み合わせの作用を裏付けるものである。
【0177】
モルモット心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの自発性心房レート(ネガティブな変時作用)に対する作用
薬物の非存在下における対照の平均心房レート(n=17心臓)は231±4bpmであった(図14)。ラノラジン(RanまたはR、3μM)、ドロネダロン(DronまたはD、0.3μM)およびその2つの組み合わせは、同じ心臓から記録された対照の自発性心房レートにおいて、小さいが有意ではない(p>0.05)低下を引き起こした(図14)。対照的に、カルシウムチャネル阻害剤ベラパミル(V、10μM)は、自発性心房レートを、225±3から25±24拍/分へと有意に低下させた(n=3、p<0.01、図14)。この所見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、洞調律の間、心拍を低下させないことを示唆している。
【0178】
メスのウサギ心臓における、単相性活動電位持続時間(MAPD)を増加させるラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせについての濃度−応答の関係
ドロネダロンは単独でMAPD90のわずかではあるが有意な増加を引き起こした(図15A)。ラノラジン(0.1〜100μM)は、MAPD90における177±10から215±6msへのはるかに大きな増加22±6%を引き起こした(n=4、p<0.01、図15B)。ラノラジンの作用に対する心臓の過敏性は、ドロネダロンにより増加しなかった(図15C、16A)。それどころか、心室活動電位の持続時間を増加させる6および10μMラノラジンの作用は、濃度依存性方式においてドロネダロンにより減弱された(図15D、16B)。この所見は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ラノラジン単独よりも、心室活動電位持続時間およびQT間隔のより小さな延長を引き起こすことができることを示唆している。したがって、ドロネダロンをラノラジンと組み合わせることによって、ラノラジンによるQT間隔の延長に伴う任意の潜在的危険性を低減することができる(ただし、ラノラジンによるQT間隔の延長は、催不整脈であるとまだ示されていない)。
【0179】
E−4031で処置したウサギ単離心臓における、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる抗不整脈作用
E−4031、すなわちN−[4−[[1−[2−(6−メチル−2−ピリジニル)エチル]−4−ピペリジニル]カルボニル]フェニル]メタンスルホンアミド(Tocris Bioscience、Ellisville、Missouriから入手可能)と命名されたIKr阻害剤は、メスのウサギ心臓において、濃度60nMで、トルサード・ド・ポワンツ(TdP)心室頻拍(薬物の非存在下で観察されていない)の発症率を著しく増加させ(図17〜20)、E−4031の存在下、初期の後脱分極の発生を低減する(EAD;活動電位の最終の再分極以前に、1つ以上の脱分極としてMAP記録に見られる)(図18〜20)。ドロネダロン(0.3〜10μM)は、TdP(図17A)およびEAD(図18C、Dおよび19F)の発症率、特に心臓のペーシングの3秒の休止後のTdP(図18B、D)を低下させたが、消滅させはしなかった。ドロネダロンとラノラジン(6および10μM)との組み合わせは、ドロネダロン単独へは最大に応答しなかった心臓において、60nMのE−4031の存在下、TdPのエピソードをさらに低減し、さらに消滅させた(図17、19、および20)。この知見は、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、ドロネダロン単独よりも、TdP心室頻拍の誘発を予防するのにより効果的であることを示している。
【0180】
アセチルコリンで処置したウサギ単離心臓における、心房細動に対するラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用
早期の、プログラムされた心房の電気的刺激(すなわち、S1S2プロトコル)は、アセチルコリン(0.6〜1μM)に曝露した12の心臓のうちの12の心臓(100%)において非持続性心房細動(AF)を引き起こした(図21、22)。ラノラジン単独では、10および30μMの高濃度でのみAFエピソードの誘発性を低下させた(図21、左のパネル)。ドロネダロン(0.3μM)単独では、5つの心臓のうち1つのみが、誘発性のAFを消滅させた(図21、右のパネル)。0.3μMドロネダロン存在下(図21、右パネル)、ラノラジン(6μM)は、AFの誘発性を40%までさらに低下させ(5つの心臓のうち2つ)、AFの持続時間を低減した(図22)。フレカイニド(ここでは、ACh誘発性AFを終結させることが公知のポジティブコントロールとして使用)は、試験したすべての5つの心臓において、AChの存在下で、AFのすべてのエピソードを消滅させた(図21、右のパネル)。この知見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、いずれの薬物を単独で使用するよりも、AFを誘発するアセチルコリンの作用を防止するのにはるかにより効果的であることを示唆している。アセチルコリンは、心臓の副交感神経系のニューロトランスミッターであるため、アセチルコリン活性化された過分極の電流IKAch、Adoは、AFを有する患者の心房細胞で増加することが報告されているため、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、疾患を罹りやすい患者において、AFの発症率を低減するのに有益となり得る。
【0181】
後期ナトリウム電流(後期INa)を低減するドロネダロンの作用
ラノラジンは、心臓において後期INaを低減することが実証されたが、これは、抗狭心症および抗不整脈作用の主な機序として一般に認められている。ドロネダロンの後期INaに対する作用は報告されていない。したがって、本発明者らは、ヒト心臓ナトリウムチャネル遺伝子NaV1.5を発現するHEK293細胞を、後期INaエンハンサーテフルトリンとともにインキュベーションすることにより誘発される後期INaに対するドロネダロンの作用を決定した。ドロネダロンは、濃度依存的方式により、テフルトリン誘導性の後期INaを低減した(図23)。この結果は、ラノラジンと同様に、ドロネダロンは後期INaを低減することができることを示している。したがって、ドロネダロンとラノラジンとの組み合わせは、後期INaを低減すると予測することができる。心臓における後期INaの低減は、心房細動の患者および動物モデルにおいて、心房不整脈の低減に関係するものであった。
【0182】
イソプロテレノール(Iso)で誘発させた遅延後脱分極(DAD)の振幅を減少させる、ラノラジンおよびドロネダロンの単独および組み合わせによる作用
カテコールアミンおよびβ−アドレナリン作用性受容体アゴニストイソプロテレノールが、心臓の筋細胞において、Na+およびCa2+過負荷につながり得るL−型カルシウムチャネル電流および後期Na+電流(後期INa)の増加を引き起こすことは公知である。認められた、Ca2+過負荷の催不整脈の結果は、遅延後脱分極(DAD)の発生への傾向である。DADは、心臓における異所性不整脈の活性の公知の誘発因子である。ドロネダロン(図24)およびラノラジン(図25)は両方とも、単独および組み合わせて(図26)、モルモット心臓の心室から単離した筋細胞において、イソプロテレノール(50nM)誘導性DADの振幅を低減した。ドロネダロン(100nM)およびラノラジン(3μM)の作用は、相加的であった。同様に、30nMドロネダロンおよび3μMラノラジンの作用も相加的であった(示されていない)。この所見は、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、心房および心室の両方の不整脈へとつながる異所性の電気的活性(すなわち、DAD)の誘発因子の1つを低減する有益な作用を有することができることを示している。カテコールアミン誘発性の頻脈性不整脈は、心不全および虚血性心疾患を有する患者において、一般的であるので、ラノラジンとドロネダロンとの組み合わせは、これら疾患を有する患者の不整脈の発症率を減少させることができる。
【0183】
【数2】
【0184】
【数3】
【0185】
【数4】
【0186】
【数5】
【0187】
【数6】
【0188】
【数7】
【0189】
【数8】
【0190】
【数9】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動および/または心房粗動の処置または予防を必要とする患者における心房細動および/または心房粗動を処置または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、組み合わせた投与単位として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせた投与単位が錠剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
投与される前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約3000mgである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
投与される前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約1500mgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩が、徐放性処方物として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約800mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約600mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約400mgである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、即時放出性処方物または徐放性処方物として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、毎日2回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、毎日1回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項17】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項18】
ラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩によって引き起こされる、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を該患者に投与するステップを含む方法。
【請求項19】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩によって引き起こされる、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を該患者に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項21】
心房レートが高度である場合、AV伝導が遅延される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
心房レートが低下する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
洞調律の間、心拍が有意に低下しない、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項25】
前記患者の洞調律が維持される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項27】
前記患者が、心房細動を患っている、請求項20、24、または26に記載の方法。
【請求項28】
トルサード・ド・ポワンツ心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツ心室頻拍を低減または予防するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項29】
心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項30】
電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項31】
上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈の処置または予防を必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項32】
心房細動および/または心房粗動を患っている患者の入院および/または死亡を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項33】
卒中発作および/またはうっ血性心不全の予防を必要とする患者における卒中発作および/またはうっ血性心不全を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項34】
相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物。
【請求項35】
静脈内投与用に処方される、請求項34に記載の薬学的処方物。
【請求項36】
経口投与用に処方される、請求項35に記載の薬学的処方物。
【請求項37】
錠剤形態またはカプセル剤形態である、請求項36に記載の薬学的処方物。
【請求項38】
前記錠剤またはカプセル剤が、約10mg〜約800mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項37に記載の処方物。
【請求項39】
前記錠剤またはカプセル剤が、約25mg〜約600mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項38に記載の処方物。
【請求項40】
前記錠剤またはカプセル剤が、約25mg〜約400mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項39に記載の処方物。
【請求項41】
前記錠剤またはカプセル剤が、約50mg〜約200mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項40に記載の処方物。
【請求項42】
前記錠剤またはカプセル剤が、約50mg〜約1000mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項37に記載の処方物。
【請求項43】
前記錠剤またはカプセル剤が、約100mg〜約750mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項42に記載の処方物。
【請求項44】
前記錠剤またはカプセル剤が、約150mg〜約375mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項43に記載の処方物。
【請求項45】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、徐放用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【請求項46】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、即時放出用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【請求項47】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、徐放用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【請求項1】
心房細動および/または心房粗動の処置または予防を必要とする患者における心房細動および/または心房粗動を処置または予防するための方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは前記1種もしくは複数のその塩が、組み合わせた投与単位として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせた投与単位が錠剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
投与される前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約3000mgである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
投与される前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約1500mgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩が、徐放性処方物として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約800mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約600mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与される前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩の量が、毎日約50mg〜約400mgである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、即時放出性処方物または徐放性処方物として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、毎日2回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩およびドロネダロンまたは1種もしくは複数のその塩が、毎日1回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の望ましくない副作用を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項17】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩の治療有効用量を低減するための方法であって、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数のその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項18】
ラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩によって引き起こされる、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を該患者に投与するステップを含む方法。
【請求項19】
ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩によって引き起こされる、患者におけるQT間隔の延長を低減するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を該患者に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
心室および/または心房レートの調節を必要とする患者における心室および/または心房レートを調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項21】
心房レートが高度である場合、AV伝導が遅延される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
心房レートが低下する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
洞調律の間、心拍が有意に低下しない、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
心室および/または心房の調律の調節を必要とする患者における心室および/または心房の調律を調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項25】
前記患者の洞調律が維持される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
心室および/または心房の調律およびレートの制御を必要とする患者における心室および/または心房の調律およびレートの制御を提供するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項27】
前記患者が、心房細動を患っている、請求項20、24、または26に記載の方法。
【請求項28】
トルサード・ド・ポワンツ心室頻拍の低減または予防を必要とする患者におけるトルサード・ド・ポワンツ心室頻拍を低減または予防するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項29】
心室細動を罹りやすい患者における心室細動を予防する方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項30】
電気的および構造的リモデリングの調節を必要とする患者における電気的および構造的リモデリングを調節するための方法であって、該方法は、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項31】
上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈の処置または予防を必要とする患者における上室性頻拍性不整脈または心室頻拍性不整脈を処置または予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項32】
心房細動および/または心房粗動を患っている患者の入院および/または死亡を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項33】
卒中発作および/またはうっ血性心不全の予防を必要とする患者における卒中発作および/またはうっ血性心不全を予防する方法であって、相乗的治療量のドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を共投与するステップを含む方法。
【請求項34】
相乗的治療量のラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩、およびドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的処方物。
【請求項35】
静脈内投与用に処方される、請求項34に記載の薬学的処方物。
【請求項36】
経口投与用に処方される、請求項35に記載の薬学的処方物。
【請求項37】
錠剤形態またはカプセル剤形態である、請求項36に記載の薬学的処方物。
【請求項38】
前記錠剤またはカプセル剤が、約10mg〜約800mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項37に記載の処方物。
【請求項39】
前記錠剤またはカプセル剤が、約25mg〜約600mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項38に記載の処方物。
【請求項40】
前記錠剤またはカプセル剤が、約25mg〜約400mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項39に記載の処方物。
【請求項41】
前記錠剤またはカプセル剤が、約50mg〜約200mgのドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項40に記載の処方物。
【請求項42】
前記錠剤またはカプセル剤が、約50mg〜約1000mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項37に記載の処方物。
【請求項43】
前記錠剤またはカプセル剤が、約100mg〜約750mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項42に記載の処方物。
【請求項44】
前記錠剤またはカプセル剤が、約150mg〜約375mgのラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩を含む、請求項43に記載の処方物。
【請求項45】
前記ラノラジンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、徐放用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【請求項46】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、即時放出用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【請求項47】
前記ドロネダロンまたは1種もしくは複数の薬学的に許容されるその塩が、徐放用に処方される、請求項37に記載の処方物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−515007(P2013−515007A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544937(P2012−544937)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061257
【国際公開番号】WO2011/084733
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061257
【国際公開番号】WO2011/084733
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
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