説明

心機能改善のためのニューレグリンの徐放

本発明は、様々な疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための、ニューレグリンを含む徐放型組成物を提供する。本発明は、ニューレグリンの徐放によって、様々な疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年12月30日出願の米国特許仮出願第60/755,124号及び2006年1月13日出願の第60/758,626号の優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物へのニューレグリンの徐放によって、様々な心臓の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための組成物及び方法に一般に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心臓(心室)肥大は、ストレス増加又は心仕事量に対する需要の増加への重要な適応性生理反応である。肥大への刺激の後に起こる早期の細胞変化の1つは、ミトコンドリアの合成及び筋原線維質量の増大(壁肥厚)であり、個々の細胞のサイズの比例的増加を伴うが、細胞数の増加は全く(又は、最小限しか)伴わない。
【0004】
心室がストレス下にあるとき、初期応答はサルコメア長の増加である。これの後に、総筋肉質量の増加が起こる。過負荷が重度の場合、心筋収縮性は抑制される。その最も軽度の形態では、この抑制は、無負荷の心筋の短縮速度の低下として、又は、等尺性収縮の間の力の発生速度の低下として現れる。心筋収縮性がさらに抑制されるに従い、無負荷心筋の短縮速度のより多大な低下が起こり、今度は、等尺性の力発生及び短縮の低下が付随する。この時点で、循環の補償は心臓拡張及び筋肉質量の増加によってまだ提供することができ、それは、壁応力を正常レベルに維持する傾向がある。収縮性がさらに低下すると、静止時の心臓の送血量及び仕事量の低下及び/又は心室拡張終期の容積及び圧力の上昇に反映される、明白なうっ血性心不全が起こる。
【0005】
肥大から心不全への移行は、細胞組織のいくつかの変化を特徴とする。例えば、正常な肥大性細胞は大きなサイズを有し、よく組織化された収縮単位の増加並びに強い細胞間接着を伴う。対照的に、同様に大きなサイズ及びタンパク質の蓄積を有する病的肥大性細胞は、収縮タンパク質の分裂(サルコメア構造の乱れ)及び劣った細胞間接着(筋線維の乱れ)を示す。ゆえに、病理学的肥大では、サイズの拡大及び収縮タンパク質の蓄積は、サルコメア構造物の無秩序な集合及び頑健な細胞間相互作用の欠如と関連する。
【0006】
心不全は約5,000,000人のアメリカ人が罹患し、550,000人を超える新規患者が毎年その病状と診断される。心不全のための現在の薬物療法は、主にアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤に向けられているが、それらは血管を拡張させ、血圧を低下させ、心臓の仕事量を減少させる血管拡張薬である。死亡率の減少割合は有意であるが、ACE阻害剤による実際の死亡率の減少は平均3%〜4%に過ぎず、いくつかの潜在的な副作用がある。
【0007】
ACE阻害剤は、心臓の収縮力を増加させるジギタリス及び/又は腎臓に血流からより多くのナトリウム及び水を除去させることによって心臓の仕事量を軽減するのを助ける利尿薬などの、他剤と併用して投与されてもいる。しかし、少なくとも1つの研究は、クラスII〜IIIの心不全患者で、プラセボと比較してジギタリスの使用に関連する生存性の差がないことを証明した。さらに、利尿薬は心不全の一部の症状を改善することができるが、それは単独の治療法として適当ではない。
【0008】
さらなる限界は、心不全を予防又は治療するための他の選択肢と関連する。例えば、心臓移植は薬物療法より明らかに高価で侵襲性であり、それは、供与される心臓の入手可能性によってさらに制限される。両室ペースメーカなどの機械的装置の使用は、同様に侵襲性で高価である。ゆえに、現在の療法の欠点を考えると、新しい療法の必要性がある。
【0009】
有望な新しい療法の1つは、心不全に罹っているかそれを発症するリスクのある患者に対する、ニューレグリン(以下、「NRG」と呼ぶ)の投与を含む。NRGは、NRG1、NRG2、NRG3及びNRG4並びにそのアイソフォームを含む、構造的に関係のある成長及び分化因子のファミリーを含む。例えば、NRG1の15以上の異なるアイソフォームが同定され、それらの必須の上皮成長因子(EGF)様ドメインの配列の差に基づいて、α-及びβ型として知られる2つの大きな群に分類された。
【0010】
NRGは、EGFR、ErbB2、ErbB3及びErbB4を含むEGF受容体ファミリーと結合するが、そのそれぞれは、細胞増殖、分化及び生存を含む複数の細胞機能で重要な役割を果たす。それらは、細胞外のリガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質チロシンキナーゼドメインからなるタンパク質チロシンキナーゼ受容体である。NRGがErbB3又はErbB4の細胞外ドメインに結合した後、それはErbB3、ErbB4及びErbB2の間のヘテロダイマー形成又はErbB4自体の間のホモダイマー形成をもたらす構造変化を誘導し、それは細胞膜内の受容体のC末端ドメインのリン酸化をもたらす。リン酸化された細胞内ドメインは細胞内のさらなるシグナルタンパク質と次に結合し、対応する下流側AKT又はERKシグナル伝達経路を活性化し、一連の細胞反応、例えば細胞増殖、細胞分化、細胞アポトーシス、細胞移動又は細胞接着の刺激又は低下を誘導する。これらの受容体の間で、主にErbB2及びErbB4が心臓で発現される。
【0011】
50〜64個のアミノ酸のサイズであるNRG1のEGF様ドメインは、これらの受容体に結合してそれらを活性化するのに十分であることが示された。以前の研究は、ニューレグリン-1β(NRG-1β)が、ErbB3及びErbB4と直接的に高親和性で結合することができることを示した。オーファン受容体ErbB2は、ErbB3又はErbB4ホモダイマーよりも高い親和性で、ErbB3又はErbB4とヘテロダイマーを形成することができる。神経発達の研究は、交感神経系の形成が無傷のNRG-1β、ErbB2及びErbB3シグナル伝達系を必要とすることを示した。NRG-1β又はErbB2又はErbB4の標的破壊は、心臓発達欠陥のために胚致死に導いた。最近の研究は、心血管の発達並びに成体の正常な心機能の維持における、NRG-1β、ErbB2及びErbB4の役割も鮮明にした。NRG-1βは、成体心筋細胞においてサルコメア組織を強化することが示された。組換えNRG-1βEGF様ドメインの短期投与は、心不全の3つの異なる動物モデルにおいて心筋作用の悪化を有意に改善するか、又はそれから保護する。より重要なことに、NRG-1βは心不全動物の生存を有意に長くする。これらの効果は、NRG-1βを、様々な通常疾患による心不全のための広域スペクトルの治療化合物又はリード化合物として有望なものにする。しかし、心不全及び/又は心肥大の予防、治療又は遅延のために臨床場面で用いることができる、NRGを使用する、より効果的な方法の必要性がまだある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(発明の要旨)
NRGの徐放は、他の方法によって投与されるNRGと比較して、心不全及び心肥大の治療におけるNRGの効果を大きく改善する。NRGの徐放は、他の方法によって投与されるNRGと比較して、NRGの有害副作用を減少させる利点も有する。ゆえに、本発明は、NRGタンパク質若しくはその機能的断片、又はNRGタンパク質をコードする核酸若しくはその機能的断片、又は前記NRGの生成及び/又は機能を強化する剤の放出を延長することにより、哺乳動物、特にヒトの様々な心臓の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させる組成物及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法であって、それを必要とする哺乳動物へのNRGの徐放を含む方法が提供される。
哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法の一実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、心細胞内のERKシグナル伝達経路の持続的活性化をもたらす。
それを必要とする哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法の他の実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、心細胞内のAKTシグナル伝達経路の持続的活性化をもたらす。
【0014】
それを必要とする哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法の他の実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、哺乳動物の左心室のEF値及び/又はFS値を高める。
それを必要とする哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法の他の実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、心肥大を予防する。
それらに限定されないが、浸透ポンプ若しくはシリンジポンプ、ポリエチレングリコール(「PEG」)結合及び/又はリポソーム若しくはマイクロスフェアパッケージングを含む、当技術分野で公知である任意の徐放技術を、本発明で用いることができる。
【0015】
本発明の第2の態様では、左心室の内径を低減させるための方法であって、それを必要とする哺乳動物へのNRGの徐放を含む方法が提供される。好ましい一実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVEDD値を、約2%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVEDD値を、約5%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVEDD値を、約10%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVEDD値を、約15%を超えて減少させる。最も好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVEDD値を、約20%を超えて減少させる。
【0016】
他の好ましい実施形態では、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVESD値を、約2%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVESD値を、約5%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVESD値を、約10%を超えて減少させる。より好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVESD値を、約15%を超えて減少させる。最も好ましくは、哺乳動物へのNRGの徐放は、LVESD値を、約20%を超えて減少させる。
【0017】
本発明の第3の態様では、心筋細胞の増殖及び/又は分化を引き起こす方法であって、それを必要とする哺乳動物にNRGを徐放し、それにより心細胞でMAPキナーゼ経路を活性化し、心筋細胞の増殖及び/又は分化を引き起こすことを含む方法が提供される。
本発明の第4の態様では、筋細胞のサルコメア及び細胞骨格の構造のリモデリング、又は細胞間接着を誘導するための方法であって、それを必要とする哺乳動物にNRGを徐放し、それにより心臓細胞のMAPキナーゼ経路を活性化し、細胞構造のリモデリング又は細胞間接着を引き起こすことを含む方法が提供される。
本発明の第5の態様では、それを必要とする哺乳動物の心筋細胞間接着の分離及び/又はサルコメア構造の乱れを治療又は予防するための方法であって、哺乳動物へのNRGの徐放を含む方法が提供される。
【0018】
さらに、NRGのErbB受容体との相互作用は他の疾患及び障害との関係を示唆されたので、NRGの徐放は、他の方法によって投与されるNRGと比較して、そのような他の疾患及び障害の治療におけるNRGの効果を大いに改善することもできる。ゆえに、本発明は、NRGタンパク質若しくはその機能的断片、又はNRGタンパク質をコードする核酸若しくはその機能的断片、又は前記NRGの生成及び/又は機能を強化する剤の放出を延長することにより、哺乳動物、特にヒトの様々な疾患又は障害を予防、治療又は遅延させる組成物及び方法にも関する。そのような疾患及び障害には、一般に中枢神経系及び末梢神経系のそれらが含まれる。他の疾患及び障害の例には、様々な心血管疾患、癌、神経系疾患及び/又は筋疾患、例えば筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ、肢帯)及び多発性硬化症、脊髄損傷、目及び耳の疾患、糖尿病、統合失調症並びにアルツハイマー病が含まれる。
【0019】
本発明は、哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための、NRGの徐放組成物又は製剤も提供する。一実施形態では、組成物又は製剤は、心細胞内のERKシグナル伝達経路の活性化を持続させる。他の実施形態では、組成物又は製剤は、心細胞内のAKTシグナル伝達経路の活性化を持続させる。他の実施形態では、組成物又は製剤は、哺乳動物のEF及び/又はFS値を高める。さらに他の実施形態では、組成物又は製剤は、心肥大を予防する。組成物又は製剤は、それらに限定されないが、浸透圧ポンプ若しくはシリンジポンプ、ポリエチレングリコール(PEG)結合及び/又はリポソーム若しくはマイクロスフェアパッケージングを含む、当技術分野で公知である任意の徐放技術の使用を組み込むことができる。
【0020】
本発明は、NRG組成物又は製剤、及びそれらに限定されないが、浸透圧ポンプ若しくはシリンジポンプ、ポリエチレングリコール(PEG)結合及び/又はリポソーム若しくはマイクロスフェアパッケージングを含む、当技術分野で公知である徐放技術を含むキットも提供する。一部の実施形態では、キットは、哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させる際に;哺乳動物の心肥大を予防、治療又は遅延させる際に;或いは、哺乳動物の左心室の内径を低減させる際に、NRG組成物若しくは製剤及び又は徐放技術を用いるための説明書をさらに含む。
本発明のそれら及び他の態様、目的、利点並びに特徴は、下でより完全に記載される本発明の開示を読むと、当分野の技術者に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施において、本明細書で記載されているものと類似若しくは同等の任意の方法を使用できるが、好ましい方法及び材料は次に記載する。
本発明は、持続的又は変動する量のNRGの徐放によって、哺乳動物の心不全又は心肥大を治療又は予防する方法を提供する。好ましくは、哺乳動物は心不全に患っているか又はそれの発症リスクのあるヒト患者である。
限定を目的としないが開示を明確にするために、以降の本発明の詳しい記載を以下のサブセクションに分割する。本明細書で指摘される全ての刊行物は、それらと関連して刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示、記載するために、参照により組み込まれる。
【0022】
(A.定義)
特に定義されていない場合は、本明細書で用いる全ての技術用語及び学術用語は、本発明が属する分野の技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書で参照した全ての特許、出願、公表出願及び他の刊行物は、その全体において参照により組み込まれる。このセクションで示す定義が本明細書で参照により組み込まれる特許、出願、公表出願及び他の刊行物で示される定義と反するかさもなければ矛盾する場合は、このセクションで示す定義が本明細書で参照により組み込まれる定義に優先する。
【0023】
本明細書で用いるように、本文で明らかに別の指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0024】
本明細書で用いるように、本発明で用いる「ニューレグリン」又は「NRG」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらの組合せと結合してそれらを活性化することができるタンパク質又はペプチド、それらに限定されないが全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメインのみ、ニューレグリンEGF様ドメインを含むポリペプチド、ニューレグリン突然変異体若しくは誘導体、及び以下に詳述する、上の受容体を同じく活性化する任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物を指す。好ましい実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、ErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロダイマーと結合して活性化する。ニューレグリンには、ニューレグリンの活性を模倣するNRG-1、NRG-2、NRG-3、NRG-4タンパク質、ペプチド、断片及び化合物も含まれる。本発明で用いるニューレグリンは、上記のErbB受容体を活性化してそれらの生体反応を調節すること、例えば、乳癌細胞分化及びミルクタンパク質の分泌を刺激すること;神経冠細胞のシュワン細胞への分化を誘導すること;骨格筋細胞においてアセチルコリン受容体の合成を刺激すること;及び/又は心筋細胞の分化、生存及びDNA合成を改善することができる。ニューレグリンには、それらの生物活性を実質的に変化させない保存的なアミノ酸置換を有する変異体も含まれる。適当なアミノ酸の保存的置換は、この分野の技術者に公知であり、一般に、生じる分子の生物活性を変化させることなく形成することができる。この分野の技術者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域の単一のアミノ酸置換は、生物活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watsonら「遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)」、第4版, 1987, The Bejacmin/Cummings Pub. co., p.224を参照)。
ニューレグリンタンパク質は、ニューレグリンタンパク質及びペプチドを包含する。ニューレグリン核酸は、ニューレグリン核酸及びニューレグリンオリゴヌクレオチドを包含する。
【0025】
本明細書で用いるように、「上皮成長因子様ドメイン」又は「EGF様ドメイン」は、その内容が全て本明細書で参照により組み込まれる、WO00/64400、Holmesらの論文(Science, 256:1205-1210 (1992));米国特許第5,530,109号及び5,716,930号; Hijaziらの論文(Int. J. Oncol., 13:1061-1067 (1998)); Changらの論文(Nature, 387:509-512 (1997); Carrawayらの論文(Nature, 387:512-516 (1997)); Higashiyamaらの論文(J. Biochem., 122: 675-680(1997));及びWO97/09425で開示されているように、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらの組合せと結合してそれらを活性化し、EGF受容体結合ドメインと構造的類似性を有する、ニューレグリン遺伝子によってコードされるポリペプチドモチーフを指す。ある実施形態では、EGF様ドメインは、ErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロダイマーと結合してそれらを活性化する。ある実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-1のアミノ酸残基177〜226、177〜237又は177〜240に対応するアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-2の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-3の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-4の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、EGF様ドメインは、米国特許第5,834,229号に記載されているアミノ酸配列Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Proを含む。
【0026】
本明細書で用いるように、特定の疾患を治療するための活性剤の「有効量」は、その疾患と関連する症状を改善するのに、又は何らかの方法で軽減するのに十分な量である。その量は疾患を治療する可能性があるが、一般的に、その疾患の症状を改善するために投与される。
本明細書で用いるように、「活性剤」は、ヒト及び他の動物で疾患の診断、治癒、緩和、治療若しくは予防を目的とするか、さもなければ肉体的及び精神的な健康を高めるための任意の物質を意味する。
本明細書で用いるように、特定の活性剤の投与による特定の障害の症状の「改善」は、その剤の投与に帰すること又は関連付けることができる、恒久的若しくは一時的であれ、永続的若しくは一過性であれ、任意の減少を指す。
【0027】
本明細書で用いるように、「治療する」、「治療」及び「治療すること」は、病状、障害又は疾患の症状が改善されるかさもなければ有益に変化させられる任意の方法を指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に又は部分的に予防する観点から予防的であってもよく、並びに/又は、疾患及び/若しくはその疾患に起因する悪影響の部分的又は完全な治癒の観点から治療的であってもよい。治療はまた、本明細書で、組成物の任意の医薬的使用を包含する。
【0028】
本明細書で用いるように、「ベクター(又はプラスミド)」は、異種DNAをその発現又は複製のために細胞に導入するために用いる個別エレメントを指す。そのような媒体の選択及び使用は、当業者に公知である。発現ベクターには、そのようなDNA断片の発現をもたらすことができる、プロモーター領域などの調節配列と機能的に連結したDNAを発現させることができるベクターが含まれる。ゆえに、発現ベクターは、組換えDNA又はRNA構築物、例えば、プラスミド、ファージ、組換えウイルス又は他のベクターなどの、適当な宿主細胞への導入後にクローン化DNAの発現をもたらすものを指す。適当な発現ベクターは当分野の技術者に公知であり、真核細胞及び/又は原核細胞内で複製可能であるもの及びエピソームのままであるもの若しくは宿主細胞ゲノムに組み込まれるものが含まれる。
【0029】
本明細書で用いるように、「心筋細胞分化」は、DNA合成の10%を超える減少、他の因子によって刺激されるDNA合成の10%を超える抑制、よく組織化されたサルコメア構造及び細胞間接着、MAPキナーゼの持続的活性化及びp21C1P1の発現の増加を特徴とする状態を意味する。さらなる議論はWO00/37095で提供され、その内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0030】
本明細書で用いるように、「駆出分画」又は「EF」は、鼓動の結果として充満した心室から拍出される血液の部分を意味する。それは、以下の式、(LV拡張期容積-LV収縮期容積)/LV拡張期容積、で定義することができる。
本明細書で用いるように、「フラクショナル短縮」又は「FS」は、収縮状態及び弛緩状態の間の左心室の直径の変化の比を意味する。それは、以下の式、(LV拡張末期直径-LV収縮末期直径)/LV拡張末期直径、で定義することができる。
【0031】
本明細書で用いるように、「心不全」は、心臓が、代謝組織の要求に必要とされる速度で血液を拍出しない、心機能の異常を意味する。心不全は、うっ血性心不全、心筋梗塞、頻拍性不整脈、家族性肥大性心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、心筋炎などの広範囲にわたる疾病状態を含む。心不全は多くの因子によって起こることができ、それらに限定されないが虚血性、先天性、リウマチ性又は特発性の形態が含まれる。慢性心肥大は、うっ血性心不全及び心停止の前駆型であるかなり重い病態である。
【0032】
本明細書で用いるように、「心筋梗塞」は、重度の持続的な虚血に起因する心筋の一部の巣状壊死をもたらす、冠状動脈の封鎖又は血流妨害を指す。本明細書で用いるように、「徐放」は、ある期間にわたって活性剤(例えばニューレグリン)の連続的治療レベルを提供することを指す。徐放には、それらに限定されないが、連続的放出、制御放出、遅延型放出、デポー製剤、段階的放出、長期放出、プログラム放出、延長放出、比例放出、遷延放出、リポジトリ、遅滞、緩放出、間隔放出、持続放出、タイムコート、時限放出、遅延作用、徐放作用、時間層作用、長時間作用、延長作用、反復作用、緩作用、持続作用、持続作用投薬及び制御放出などの様々な放出形態が含まれる。徐放、制御放出、時限放出、持続性放出、遅延型放出、長時間作用、拍動送達又は即時放出を得る能力は、当業者が利用できる周知の手法及び技術を用いて達成される。
【0033】
活性剤の放出が継続する時間は、活性剤の特性及び用いる徐放技術によって決まるが、全ての場合、徐放技術を用いない活性剤の投与のそれよりも長い。
本明細書で用いるように、本文で明らかに別途指示がない限り、「マイクロスフェア」は「微小粒子」、「マイクロカプセル」、「ナノスフェア」、「ナノ粒子」及び「ナノカプセル」と同義である。
本明細書で用いるように、「PEG化する」は、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)分子又はポリ(エチレングリコール)の少なくとも1つの誘導体を活性剤又は他の分子に結合することを意味する。
【0034】
本明細書で用いるように、「組織化された又は強化された組織のサルコメア又はサルコメア構造」は、心筋細胞のα-アクチニンの免疫蛍光染色で明らかにされる収縮タンパク質の線状配列を特徴とする状態を意味する。細胞内のα-アクチニンタンパク質の線状配列は、顕微鏡及びその連結した写真撮影によって識別することができる。本明細書で用いるように、「無秩序な又は乱れた配列のサルコメア又はサルコメア構造」は、「組織化された又は強化された組織のサルコメア又はサルコメア構造」の反対を意味する。
【0035】
本明細書で用いるように、「組織化された又は強化された組織の細胞骨格構造」は、心筋細胞のファロイジン染色で明らかにされる線状アクチン線維を特徴とする状態を意味する。この明細書の図で例示するように、細胞内の線状アクチン線維は、顕微鏡及びその連結した写真撮影によって識別することができる。本明細書で用いるように、「無秩序な又は乱れた配列の細胞骨格構造」は、「組織化された又は強化された組織の細胞骨格構造」の反対を意味する。
【0036】
本明細書で用いるように、本文で別途明瞭に指示しない限り、「タンパク質」は、「ポリペプチド」又は「ペプチド」と同義である。
本明細書で用いるように、「MAPキナーゼの持続的活性化」は、MAPキナーゼのリン酸化された状態p42/44が、細胞内で少なくとも21時間維持されることを意味する。さらなる議論はWO00/37095で提供され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
用語「相乗的、「相乗効果」、その他は、本明細書で、1つ以上の治療剤を1つ以上のレチノイン酸化合物と組み合わせることによって得られる、改善された治療効果を記載するために用いる。一部の分野では、相乗効果は相加以上(例えば1+1=3)の効果が意味されるが、薬物療法の分野では、相加的(1+1=2)又は相加未満(1+1=1.6)の効果が相乗的であってよい。例えば、2つの薬剤のそれぞれが、個々に投与したときに心室筋細胞肥大の発症を50%抑制すると仮定した場合、2つの薬剤を併用して心室筋細胞肥大の発症を完全に抑制することは期待されないであろう。多くの場合、受け入れがたい副作用のために、2つの薬剤を一緒に投与することはできない。他の場合でも、一緒に投与するとそれらの薬剤は互いに相殺し、心室筋細胞肥大の発症を50%未満だけしか遅延させない。ゆえに、2つの薬剤が50%を超えて心室筋細胞肥大の発症を遅延させ、有害副作用の受け入れがたい増加を引き起こさない場合、相乗効果が得られると言われる。
【0038】
本明細書で用いるように、「心肥大」は、個々の心室筋細胞のサイズの増加、すなわち、患者の臨床診断をもたらすのに十分な、又は細胞がより大きい(例えば、非肥大細胞よりも2倍以上大きい)と判定されるようにするのに十分な細胞サイズの増加を特徴とする状態を意味する。それには、個々の心細胞中の収縮タンパク質の蓄積及び胚遺伝子発現の活性化が付随することがある。
【0039】
心室筋細胞肥大の存在を判定するための、インビトロ及びインビボの方法が公知である。心室筋細胞肥大のためのインビトロアッセイには、WO00/37095で記載の方法、例えば、細胞サイズの増加及び心房性ナトリウム利尿因子(ANP)の発現の増加が含まれる。細胞サイズの変化が、肥大の程度を判定するためのスコアリングシステムで用いられる。これらの変化は逆位相差顕微鏡で見ることができ、肥大の程度は7〜0の任意のスケールで評価したが、7は完全に肥大した細胞、3は刺激されなかった細胞である。3及び7の状態は、Simpsonらの論文((1982) Circulation Res. 51: 787-801)、図2のそれぞれA及びBで見ることができる。肥大スコア及び細胞表面積(μm2)の間の相関関係は、直線的である(相関係数=0.99)と判定された。フェニレフリン誘導性の肥大では、曝露されない(正常な)細胞は3の肥大スコア及び581μm2の表面積/細胞を有し、完全に肥大した細胞は7の肥大スコア及び1811μm2若しくは正常の約200%の表面積/細胞を有する。4の肥大スコアを有する細胞は771μm2の表面積/細胞、若しくは曝露されない細胞より約30%大きなサイズを有し;5の肥大スコアを有する細胞は1109μm2の表面積/細胞、若しくは曝露されない細胞より約90%大きなサイズを有し;6の肥大スコアを有する細胞は1366μm2の表面積/細胞、若しくは曝露されない細胞より約135%大きなサイズを有する。心室筋細胞肥大の存在は、好ましくは、少なくとも約15%(肥大スコア3.5)以上大きなサイズを示す細胞を含む。肥大誘導因子は、上記のアッセイによって評価される最大の肥大性応答を誘導する能力が異なる。例えば、エンドセリンによって誘導される細胞サイズの最大増加は、約5の肥大スコアである。
【0040】
本明細書で用いるように、「心肥大の抑制」は、肥大状態と比較したときの肥大を示すパラメータの1つの低下を、又は、標準状態と比較したときの肥大を示すパラメータの1つの増加の阻止を意味する。例えば、心室筋細胞肥大の抑制は、肥大状態と比較して細胞サイズの縮小として測定することができる。心室筋細胞肥大の抑制は、肥大状態で観察されるものと比較して細胞サイズの10%以上の減少を意味する。より好ましくは、肥大の抑制は、細胞サイズの30%以上の減少を意味し;最も好ましくは、肥大の抑制は、細胞サイズの50%以上の減少を意味する。フェニレフリンを誘導剤として用いる場合の肥大スコアアッセイと比較して、これらの減少は、それぞれ約6.5以下、5.0〜5.5及び4.0〜5.0の肥大スコアと相関する。異なる剤を誘導剤として用いる場合、抑制は、その誘導因子の存在下で測定される最大細胞サイズ(又は、肥大スコア)と比較して調べられる。
【0041】
心室筋細胞肥大の予防は、完全に肥大を誘導するのに十分な濃度の誘導因子の存在下で、正常細胞と比較した細胞サイズの増加を予防することで判定される。例えば、肥大の予防は、最大刺激濃度の誘導因子の存在下で非誘導細胞より200%未満大きい細胞サイズの増加を意味する。より好ましくは、肥大の予防は、非誘導細胞より135%未満大きい細胞サイズの増加を意味し;最も好ましくは、肥大の予防は、非誘導細胞より90%未満大きい細胞サイズの増加を意味する。フェニレフリンを誘導剤として用いる場合の肥大スコアアッセイと比較して、最大刺激濃度のフェニレフリンの存在下での肥大の予防は、それぞれ約6.0〜6.5、5.0〜5.5及び4.0〜4.5の肥大スコアを意味する。
【0042】
肥大のインビボ判定には、血圧、心拍数、体血管抵抗、収縮性、心拍動力、求心性若しくは拡張性肥大、左室収縮期圧、左室平均有効圧、左室拡張末期圧、心送血量、拍動指数、組織学的パラメータ及び心室のサイズ及び壁厚などの心血管パラメータの測定を含めることができる。インビボでの心室筋細胞肥大の発症及び抑制の判定で利用できる動物モデルには、圧負荷マウスモデル、RVマウス機能障害モデル、トランスジェニックマウスモデル及び心筋梗塞後ラットモデルが含まれる。ヒト患者の心室筋細胞肥大の存在、発症及び抑制を評価するための医学的な方法は公知であり、例えば、拡張期及び収縮期のパラメータの測定、心室質量及び肺静脈流量の推定が含まれる。
【0043】
肥大は、先天性ウイルス性、特発性、心臓栄養性若しくは筋栄養性の原因を含むレチノイン酸に応答性である任意の原因によるものでも、又は、虚血若しくは心筋梗塞などの虚血性攻撃の結果によるものでもよい。一般的に、治療は、特に例えば虚血から心臓損傷が起こった後に、肥大の進行を停止又は遅延させるために実施される。好ましくは、心筋梗塞の治療のために、剤は、肥大を予防又は軽減するために、心筋梗塞の直後に与える。
【0044】
本明細書で用いるように、「活性単位」又は「1単位」は、50%の最大反応を引き起こすことができる規格品の量を意味する。言い換えると、所与の活性剤の活性単位を判定するために、EC50値を測定しなければならない。例えば、製品バッチのEC50値が0.067μg/mlであると仮定すると、それは1単位となる。さらに、その製品の1μgを用いる場合、14.93U(1/0.067)が用いられる。EC50値は当技術分野で公知の任意の方法で測定することができ、その例には、下の実施例で発明者が使用する方法が含まれる。この活性単位の測定は、遺伝子操作製品及び臨床使用薬剤の品質管理にとって重要であり、異なる医薬及び/又は異なるロット番号からの製品の均一な基準による定量化を可能にする。
【0045】
ある実施形態では、下の実施例6、及びそれらの内容が参照により完全に組み込まれるWO03/099300及びSadickらの論文(1996, Analytical Biochemistry, 235:207-14)で詳述されているように、ニューレグリンの単位は、キナーゼ受容体活性化酵素結合免疫吸着検定法(KIRA-ELISA)によりニューレグリンの活性を測定することで判定される。簡潔には、そのアッセイは、接着性乳癌細胞系MCF-7の上でニューレグリン誘導性のErbB2活性化及びリン酸化を測定する。膜タンパク質はトリトンX-100溶解を介して可溶化し、受容体は、ErbB3及びErbB4と交差反応のないErbB2特異抗体(例えばH4)でコーティングしたELISAウェルで捕捉する。次に、受容体リン酸化の程度を、抗ホスホチロシンELISAによって定量化する。
【0046】
(B.ニューレグリン)
本発明は、持続的又は変動する量のNRGの徐放によって、哺乳動物の心不全又は心肥大を治療又は予防する方法を提供する。任意のNRG(例えばNRG-1、NRG-2、NRG-3及びNRG-4、及びそのアイソフォーム)タンパク質、ペプチド又は断片を、本発明の実施で用いることができる。
【0047】
ニューレグリン又はNRGは、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらの組合せと結合してそれらを活性化することができるタンパク質又はペプチド、例えばそれらに限定されないが全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメインのみ、ニューレグリンEGF様ドメインを含むポリペプチド、ニューレグリン突然変異体若しくは誘導体、及び以下に詳述する、上の受容体を同じく活性化する任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物を指す。好ましい実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、ErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロダイマーと結合してそれらを活性化する。本発明で用いるニューレグリンは、上記のErbB受容体を活性化してそれらの生体反応を調節すること、例えば、乳癌細胞分化及びミルクタンパク質の分泌を刺激すること;神経冠細胞のシュワン細胞への分化を誘導すること;骨格筋細胞でアセチルコリン受容体の合成を刺激すること;及び/又は心筋細胞の分化、生存及びDNA合成を改善することができる。受容体結合活性を測定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、ErbB-2及びErbB-4受容体でトランスフェクトした細胞を用いることができる。受容体発現細胞を放射性標識ニューレグリンの超過量とインキュベートした後、細胞をペレット化し、未結合の放射性標識ニューレグリンを含有する溶液は、非標識のニューレグリン溶液を放射性標識ニューレグリンとの競合のために加える前に除去する。EC50は、当技術分野周知の方法によって測定する。EC50は、結合放射性標識リガンドの50%と競合して受容体複合体から分離することができるリガンドの濃度である。EC50値が高いほど、受容体結合親和性は低い。
【0048】
本発明で用いるニューレグリンには、それらに限定されないがニューレグリン-1(「NRG-1」)、ニューレグリン-1(「NRG-2」)、ニューレグリン-1(「NRG-3」)及びニューレグリン-4(「NRG-43」)の全てのアイソフォームを含む、当技術分野で公知の任意のニューレグリン及びそのアイソフォームが含まれる。NRG-1は、例えば、米国特許第5,530,109号、5,716,930号及び7,037,888号; Lemkeの論文(Mol. Cell.,Neurosci. 1996, 7:247-262); Peles及びYardenの論文(1993, BioEssays 15:815-824, 1993); Pelesらの論文(1992, Cell 69, 205-216); Wenらの論文(1992, Cell 69, 559-572, 1992)、Holmesらの論文(1992, Science 256:1205-1210)、Fallsらの論文(1993, Cell 72:801-815)、Marchionniらの論文(1993, Nature 362:312-8)に記載され、それらの内容は参照により完全に組み込まれる。NRG-2は、例えば、Changらの論文(1997, Nature 387:509-512); Carrawayらの論文(1997, Nature 387:512-516); Higashiyamaらの論文(1997, J. Biochem. 122:675-680)、Busfieldらの論文(1997, Mol. Cell. Biol. 17:4007-4014)及び国際特許公開97/09425に記載され、それらの内容は参照により完全に組み込まれる。NRG-3は、例えば、Hijaziらの論文(1998, .Int. J. Oncol. 13:1061-1067)に記載され、その内容は参照により完全に組み込まれる。NRG-4は、例えば、Harariらの論文(1999 Oncogene.18:2681-89)に記載され、それらの内容は参照により完全に組み込まれる。
【0049】
本発明で用いるニューレグリンには、天然のニューレグリンに存在しない1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含むニューレグリン突然変異体又は誘導体が含まれる。好ましくは、置換、削除又は付加されるアミノ酸の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸である。一実施形態では、そのような誘導体は、ペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に1つ以上のアミノ酸欠失、置換又は付加を含む。他の実施形態では、そのような誘導体は、ペプチド全長内の任意の残基において、1つ以上のアミノ酸欠失、置換又は付加を含む。
【0050】
ある実施形態では、アミノ酸置換は保存的又は非保存的なアミノ酸置換であることができる。保存的なアミノ酸置換は、関係するアミノ酸残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質の類似性に基づいて形成される。例えば、無極性の(疎水性の)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれ;正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれ;負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。さらに、グリシン及びプロリンは、鎖配向に影響を及ぼすことができる残基である。非保存的置換は、これらのクラスの1メンバーを他のクラスと交換することを伴う。
【0051】
ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、それらの生物活性を実質的に変化させない保存的なアミノ酸置換を有するニューレグリン誘導体である。適当なアミノ酸の保存的置換は、この分野の技術者に公知であり、一般に、生じる分子の生物活性を変化させることなく形成することができる。この分野の技術者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域の単一のアミノ酸置換は、生物活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watsonらの論文「遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)」第4版、(1987, The Bejacmin/Cummings Pub. co., p.224)を参照)。
【0052】
ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンには、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体を有するアミノ酸置換を有するニューレグリン突然変異体又は誘導体が含まれる。非古典的アミノ酸には、それらに限定されないが、通常のアミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、及びアミノ酸類似体一般が含まれる。
【0053】
本発明で用いるニューレグリンには、ニューレグリン同族体、すなわち、ニューレグリン又はニューレグリンの相互作用ドメインの1つとアミノ酸配列相同性及び/又は構造的な類似点を示し、その結果それがErbB2/ErbB4又はErbB2/ErbB3ヘテロダイマープロテインキナーゼと結合してそれらを活性化することができるポリペプチドが含まれる。一般的に、未変性タンパク質のタンパク質同族体は、未変性タンパク質と少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、85%、86%、87%、88%若しくは89%、さらに好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%若しくは94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を有することができる。
【0054】
この関係において相同性割合は、配列を整列させ、最大の配列相同性割合を達成するために必要に応じてギャップを導入した後の、ペプチドの対応するアミノ酸残基と同一である(すなわち、配列内の所与の位置のアミノ酸残基が同じ残基である)か又は類似している(すなわち、配列内の所与の位置のアミノ酸置換が、上記のように保存的置換である)、候補配列内のアミノ酸残基の割合を意味する。ある実施形態では、ニューレグリン同族体は、天然のニューレグリン配列との配列同一性割合又は配列類似性割合で特徴づけされる。配列同一性及び類似性割合を含む配列相同性は、当技術分野で周知の配列整列技術、好ましくはこの目的ために設計されたコンピュータアルゴリズムを、前記コンピュータアルゴリズムのデフォルトパラメータと用いて、又はそれらを含むソフトウェアパッケージを用いて判定される。
【0055】
コンピュータアルゴリズム及びそのようなアルゴリズムを組み込むソフトウェアパッケージの非限定的な例には、以下のものが含まれる。BLLASTプログラムファミリーは、2つの配列の比較のために利用される数値計算用アルゴリズムの好ましい非限定例を例示する。(例えば、Karlin & Altschulの論文(1990, Proc. Natl. Acad Sci. USA 87:2264-2268(Karlin & Altschulの論文(1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877)で変更された)、Altschulらの論文(1990, J. Mol. Biol. 215:403-410、(NBLAST及びXBLASTを記載))、Altschulらの論文(1997, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402 (Gapped BLAST及びPSI-Blastを記載))。他の好ましい例は、Myers及びMiller (1988 CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムであり、それは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部として利用できる。また、FASTAプログラム(Pearson W.R.及びLipman D.J.、Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:2444-2448, 1988)も好ましく、ウィスコンシン配列解析パッケージの一部として利用できる。別の例としては、2つの配列の間の最良の単一の類似領域を見つけるために、Smith及びWaterman (Advances in Applied Mathematics, 2:482-489, 1981)の「局所相同性」アルゴリズムを用い、比較する2つの配列の長さが異なる場合に好ましいBESTFIT;並びに、Neddleman及びWunsch (J. Mol. Biol. 48:443-354, 1970)のアルゴリズムに従って「最大類似性」を発見することによって2つの配列を整列させ、2つの配列がほぼ同じ長さであり、整列が全長で期待される場合に好ましいGAPが含まれる。
【0056】
同族体の例は、動物、植物、酵母、細菌、などを含む他の種のオルソログタンパク質であろう。同族体は、例えば、未変性タンパク質の突然変異誘発によって選択することもできる。例えば、同族体は、タンパク質間相互作用を検出するアッセイと組み合わせた、部位特異的突然変異によって同定することができる。タンパク質アフィニティークロマトグラフィー、アフィニティーブロッティング、インビトロ結合アッセイ、などの別の方法が、本発明を知る当業者に明らかとなる。
【0057】
2つの異なる核酸又はポリペプチド配列を比較する目的で、本開示では、1配列(試験配列)を他の配列(参照配列)と特定の「割合同一である」と記載することができる。この点で、試験配列の長さが参照配列の長さの90%未満の場合、同一性割合は、Myers及びMillerの論文(Bull. Math. Biol., 51:5-37 (1989))及びMyers及びMillerの論文(Comput. Appl. Biosci., 4(1): 11-17 (1988))のアルゴリズムによって判定される。具体的には、同一性はALIGNプログラムで判定される。デフォルトパラメータを用いることができる。
【0058】
試験配列の長さが参照配列の長さの少なくとも90%である場合、同一性割合は、様々なBLASTプログラムに組み込まれているKarlin及びAltschulの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-77 (1993))のアルゴリズムによって判定される。具体的には、同一性割合は「BLAST2配列」ツールで判定される。Tatusova及びMaddenの論文(FEMS Microbiol. Lett., 174(2): 247-250 (1999))を参照。ペアワイズDNA間比較のために、BLASTN 2.1.2プログラムをデフォルトパラメータ(マッチ(Match):1;ミスマッチ(Mismatch):-2;オープンギャップ(Open gap):5ペナルティ;エクステンションギャップ(extension gap):2ペナルティ;gap x_dropoff:50;エクスペクト(expect):l0;及びワードサイズ(word size):11、フィルター有り)で用いる。ペアワイズタンパク質間配列比較のために、BLASTP 2.1.2プログラムをデフォルトパラメータ(マトリックス(Matrix):BLOSUM62;ギャップオープン(gap open):11;ギャップエクステンション(gap extension):1;x_dropoff:15;エクスペクト(expect):10.0;及びワードサイズ(wordsize):3、フィルター有り)を用いて使用する。
【0059】
本発明で用いるニューレグリンには、ニューレグリンEGFドメイン単独、ニューレグリン活性を模倣し、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらの組合せと結合してそれらを活性化するニューレグリンEGFドメイン又はニューレグリン様遺伝子産物を含むポリペプチドも含まれる。本明細書で用いるように、「上皮成長因子様ドメイン」又は「EGF様ドメイン」は、その内容が全て本明細書で参照により組み込まれる、WO00/64400、Holmesらの論文(Science, 256:1205-1210 (1992));米国特許第5,530,109号及び5,716,930号; Hijaziらの論文(Int. J. Oncol., 13:1061-1067 (1998)); Changらの論文(Nature, 387:509-512 (1997); Carrawayらの論文(Nature, 387:512-516 (1997)); Higashiyamaらの論文(J. Biochem., 122: 675-680(1997));及びWO97/09425で開示されているように、ErbB2、ErbB3、ErbB4又はそれらの組合せと結合してそれらを活性化し、EGF受容体結合ドメインと構造的類似性を有する、ニューレグリン遺伝子によってコードされるポリペプチドモチーフを指す。
【0060】
ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、NRG-1によってコードされるEGF様ドメインを含む。一部の実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、EGF様ドメインは、NRG-1のアミノ酸残基177〜226、177〜237又は177〜240に対応するアミノ酸配列を含む。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、ヒトNRG-1のアミノ酸177〜237に対応するアミノ酸配列
Ser His Leu Val Lys Cys Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Pro Ser Arg Tyr Leu Cys Lys Cys Pro Asn Glu Phe Thr Gly Asp Arg Cys Gln Asn Tyr Val Met Ala Ser Phe Tyr Lys Ala Glu Glu Leu Tyr Gln (配列番号1)を含む。この断片をコードするヒト核酸配列は、
agccatcttg taaaatgtgc ggagaaggag aaaactttct gtgtgaatgg aggggagtgc ttcatggtga aagacctttc aaacccctcg agatacttgt gcaagtgccc aaatgagttt actggtgatc gctgccaaaa ctacgtaatg gcgagcttct acaaggcgga ggagctgtac cag(配列番号2)である。
【0062】
ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、NRG-2によってコードされるEGF様ドメインを含む。ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、NRG-3によってコードされるEGF様ドメインを含む。ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、NRG-4によってコードされるEGF様ドメインを含む。ある実施形態では、本発明で用いるニューレグリンは、米国特許第5,834,229号に記載されているアミノ酸配列Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Proを含む。
【0063】
(C.一般の徐放技術)
本発明は、ニューレグリンの徐放のための組成物及びそれを用いて心不全などの様々な疾患を予防、治療又は遅延させる方法を提供する。ニューレグリンの徐放は、投与スキームの簡略化を可能にし、臨床効果を改善し、例えばニューレグリンの高い血中濃度に関係する、有害事象を軽減する。ある期間にわたるニューレグリンの徐放は、心筋細胞の増殖及び/若しくは分化、筋細胞サルコメア及び細胞骨格構造のリモデリング、又は、細胞間接着のためのある遺伝子の発現を誘導又は維持することができるであろうと考える。
【0064】
ニューレグリンの徐放は、当分野の技術者の判断によって、それらに限定されないが、経口、吸入、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は皮内)経路を含めて、任意の経路で投与することができる。ある実施形態では、ニューレグリンは経口投与される。ある実施形態では、ニューレグリンは静脈内投与される。ある実施形態では、ニューレグリンは筋肉内投与される。好ましい実施形態では、ニューレグリンは哺乳動物の血流に徐放される。
【0065】
ニューレグリンは、当分野の技術者に公知である任意の徐放手段によって、又は、任意の送達装置によって投与することができる。具体的には、当技術分野で公知のペプチドを送達するための任意の徐放手段又は送達装置を、本発明で用いることができる。例には、それらに限定されないが、米国特許第3,845,770号;3,916,899号;3,536,809号; 3,598,123号;及び4,008,719号、5,674,533号、5,059,595号、5,591,767号、5,120,548号、5,073,543号、5,639,476号、5,354,556号、5,639,480号、5,733,566号、5,739,108号、5,891,474号、5,922,356号、5,972,891号、5,980,945号、5,993,855号、6,045,830号、6,087,324号、6,113,943号、6,197,350号、6,248,363号、6,264,970号、6,267,981号、6,376,461号、6,419,961号、6,589,548号、6,613,358号、6,699,500号、6,740,634号、6,838,076号、6,866,866号、7,087,246号に記載のものが含まれ、それぞれは本明細書で参照により組み込まれる。そのような剤形は、様々な割合で所望の放出プロフィールを提供するために、例えばハイドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、浸透膜、浸透圧システム、多層膜コーティング、微小粒子、リポソーム、マイクロスフェア又はそれらの組合せを用いて、ニューレグリンの徐放を提供するために用いることができる。本発明は、それらに限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルキャップ及びキャプレットなどの、制御放出に適応させた経口投与に適当な単一の単位用量剤形も包含する。
【0066】
ニューレグリンの徐放は、ある期間にわたってニューレグリンの連続的治療レベルを提供する。一部の実施形態では、ニューレグリンは1時間、2時間、4時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、20時間、24時間又はそれ以上の期間にわたって放出される。一部の実施形態では、ニューレグリンは1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又はそれ以上の期間にわたって放出される。他の実施形態では、ニューレグリンは1週間、2週間、3週間、4週間又はそれ以上の期間にわたって放出される。他の実施形態では、ニューレグリンは1ヵ月、2ヵ月、4ヵ月、8ヵ月、12ヵ月又はそれ以上の期間にわたって放出される。他の実施形態では、ニューレグリンは1年、2年、3年、4年又はそれ以上の期間にわたって放出される。一部の実施形態では、ニューレグリンは1時間〜2週間、2時間〜2週間、4時間〜24時間、4日間〜10日間の期間にわたって放出される。ニューレグリンが放出される時間は、採用する徐放技術などの様々な因子によって決まってもよい。
【0067】
ニューレグリンの徐放は、血液中のニューレグリンをある期間所望の範囲内に、特に最小有効治療レベル以上及び最小中毒レベル未満のレベルに維持する。徐放ニューレグリン組成物を投与された患者のニューレグリンの血清濃度は、非徐放ニューレグリン組成物(例えば静脈内投与)を投与された患者の血清濃度と、最大血中レベル濃度が起こる(Cmax)ときに比較することができる。好ましい一実施形態では、徐放ニューレグリン組成物を投与される患者は、非徐放ニューレグリン組成物を投与される患者よりも低いニューレグリンの最大血清濃度(Cmax)を有する。好ましくは、徐放ニューレグリン組成物を投与される患者は、非徐放ニューレグリン組成物を投与される患者のCmaxの約90%、80%、70%又は60%未満のCmaxを有する。より好ましくは、徐放ニューレグリン組成物を投与される患者は、非徐放ニューレグリン組成物を投与される患者のCmaxの約50%、40%又は30%未満のCmaxを有する。最も好ましくは、徐放ニューレグリン組成物を投与される患者は、非徐放ニューレグリン組成物を投与される患者のCmaxの約20%、10%以下未満のCmaxを有する。血清中ニューレグリン濃度を測定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、SKBR-3乳癌細胞系などのErbB-2及びErbB-3受容体を発現する細胞を用いることができる。10、5、2.5、1.25、0.625、0.312、0.156、0.078、0.039、0.019及び0.0079ngのニューレグリンを氷上の細胞を含有する異なる試験管に別々に加え、次に、放射性標識ニューレグリン(50,000cpm)を加える。試料溶液を混合し、一晩4℃で放置する。明朝、細胞をペレット化し、上清を吸引した後放射能を計数する。標準曲線を、放射能対非標識ニューレグリン量によって引く。血清中ニューレグリン濃度を測定する場合、ある量の血清を氷上の細胞を含有する試験管に加え、次に放射性標識ニューレグリン(50,000cpm)加え、試料溶液を混合し、一晩4℃で放置する。明朝、細胞をペレット化し、上清を吸引した後放射能を計数する。放射能を計数し、血清中のニューレグリンの量を標準曲線によって計算することができる。
【0068】
様々な徐放プロフィールを、本発明に従って提供することができる。「徐放プロフィール」は、移植/挿入又は他のニューレグリン投与方法の過程で体内で発生するニューレグリン総放出量の50%未満が、投与の最初の24時間以内に発生する放出プロフィールを意味する。本発明の好ましい実施形態では、徐放プロフィールは、(a) 50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から24〜48時間後の時間に起こる、(b)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から48〜96時間後の時間に起こる、(c)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から96〜168時間(1週間)後の時間に起こる、(d)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から1〜2週間後の時間に起こる、(e)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から2〜4週間後の時間に起こる、(f)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から4〜8週間後の時間に起こる、(g)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から8〜16週間後の時間に起こる、(h)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から16〜52週間(1年)後の時間に起こる、及び(i)50%放出点が移植/挿入又は他の投与方法から52〜104週間後の時間に起こる、からなる群から選択される。
【0069】
さらに、本発明の使用は、剤の血漿中濃度の変動程度(「DFL」)を低減させることができる。DFLは、投薬間隔の間に薬剤のどれくらいの血漿レベルが変動するかの測定値である。DFLがゼロ(0)に近いほど、投薬期間に存在する変動は小さい。したがって、DFLの低下は、ピーク及びトラフの血漿レベルの差が縮小したことを示す。好ましくは、徐放組成物を投与される患者は、非徐放組成物を投与される患者のDFLの約90%、80%、70%又は60%のDFLを有する。より好ましくは、徐放組成物を投与される患者は、非徐放組成物を投与される患者のDFLの約50%、40%又は30%のDFLを有する。最も好ましくは、徐放ニューレグリン組成物を投与される患者は、非徐放ニューレグリン組成物を投与される患者のDFLの約20%、10%以下のDFLを有する。
【0070】
生体分子の徐放のための当技術分野で公知の任意の技術を、本発明で用いることができる。一般に、投薬のサイズ及び頻度は、活性剤の薬力学的及び薬物動態学的特性によって決定される。吸収速度が遅いほど、投薬間隔内で血中濃度の変動は小さい。これは、より高い用量をより低い頻度で投与することを可能にする。しかし、体内で易溶である多くの活性剤は、通常急速に吸収され、利用できる薬剤の急激なバーストを提供する。例は、急速放出性のニフェジピン製品を服用する低血圧症患者である。徐放製品の使用は、血圧の急降下及び反射性心頻拍などの他の重要な血行動態の変化を引き起こす初期の高血中濃度を回避させる。
【0071】
さらに、一部の活性剤は、体によって、例えば免疫系、プロテアーゼによって標的にされ、除去又は破壊される。この理由及び他の理由のために短い半減期を有する薬剤は、血中濃度を治療域内に維持するために、しばしば活性剤を頻繁に与える必要がある。投薬頻度及び患者コンプライアンスの間に、逆の相関関係がある。そのような比較的短い半減期の剤のために、徐放製品の使用は、治療的濃度を長期間維持することができる。ゆえに、徐放製品によって提供される日用量数の減少は、コンプライアンスを改善する可能性を有する。具体的な徐放技術が本明細書で開示されるが、本発明は、いかなる特定の徐放技術よりも一般的である。これには、低用量のNRGの徐放が、予想外にも梗塞心臓の機能を改善するという発見が含まれる。さらに、当技術分野で現在知られている、多数の徐放ドラッグデリバリー技術がある。いくつかは好ましい徐放技術として下で一般的に議論するが、それらは単に例示のために提供され、限定することが目的ではない。他の多くの関係のある及び無関係な技術が当技術分野で公知であり、本明細書で開示される本発明の実施で使用することができる。さらに、本明細書で述べる徐放技術の組合せ及び/又は当技術分野で公知である他の徐放技術を、本発明の実施で使用することができる。例えば、徐放ドラッグデリバリー技術に特定の専門知識をもつ多くの会社-例えば、Alza Corp.、Durect Corp.、Gilead Sciences、Baxter Pharmaceuticals、Brookwood Pharmaceuticals及びOctoPlus-は、本発明の実施で使用することができる製品及びサービスを提供する。さらに、特許、公開特許出願及び関連刊行物の検索は、この開示を読む当分野の技術者に、かなりの可能な徐放技術を提供する。ゆえに、当分野の技術者は、本発明の実施で使用するための所望の徐放技術を選択することができる。
【0072】
(C.1.浸透ポンプ)
本発明の一実施形態では、血液中へのNRGの徐放は、浸透ポンプの使用を含む。浸透圧装置は、有益な活性剤を、制御された方法で長期間目標領域に送達する際の有用性を証明した。公知の装置には、錠剤、ピル、カプセル及び植込型装置が含まれる。錠剤及びピルは経口的に摂取することができるが、他のポンプは皮下若しくは腹腔内に移植されるか、又は、静脈内、大脳内若しくは動脈内への注入のためにカテーテルに付着される。
【0073】
一般に、浸透ポンプシステムでは、少なくとも1つの開口部を有する半透膜によってコアが包まれる。半透膜は水に透過性であるが、活性剤には不透過性である。システムが体液にさらされると、水は半透膜を透過して浸透圧性の賦形剤及び活性剤を含有するコアに浸透する。浸透圧がコア内で増加し、剤は、制御された所定の速度で、開口部を通して排出される。
【0074】
多くの浸透ポンプでは、コアは複数の内部区画を有する。例えば、第1の区画は、活性剤を含むことができる。第2の区画は、浸透剤及び/又は「駆動部材」を含む。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,573,776号を参照。この区画は高いモル浸透圧を有することができ、それは、半透膜を通した水のポンプへの流入を引き起こす。水の流入は、第1の区画を圧縮する。これは、例えば、第2の区画で、流体と接触すると膨潤するポリマーを用いることにより達成することができる。したがって、剤は所定の速度で排出される。
【0075】
他の実施形態では、浸透ポンプは活性剤を含有する複数の区画を含むことができ、各区画は同じ剤又は異なる剤を含有する。各区画の剤の濃度並びに放出速度も、同じであるか又は異なることができる。
【0076】
送達速度は、一般に半透膜の透水性によって制御される。ゆえに、ポンプの送達プロフィールは処方される剤とは無関係にあり、剤の分子量又はその物理化学的特性は一般にその送達速度と関係ない。浸透ポンプの動作原理、設計基準及び送達速度に関するさらなる議論は、Theeuwes及びYum、「医用生体工学年報(Annals of Biomedical Engineering)」第4巻、第4号(1976)及びUrquhartらの論文(Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24:199-236 (1984))で提供され、その内容は参照により組み込まれる。
【0077】
浸透ポンプは、当技術分野で公知であり、当分野の技術者ならば、徐放ドラッグデリバリーのための浸透ポンプの提供に経験のある会社から容易に入手できる。例えば、ALZAのDUROS(登録商標)技術は、小さな薬剤、ペプチド、タンパク質、DNA及び他の生体活性巨大分子の1年間までの送達を可能にする、植込型、非生物分解性の、浸透駆動システムであり;ALZAのOROS(登録商標)技術は、浸透を使用して最高24時間までの正確な制御されたドラッグデリバリーを提供する錠剤を具現化し;Osmotica PharmaceuticalのOsmodex(登録商標)システムは、同じか又は異なる放出プロフィールを有する複数の薬剤層を有することができる錠剤を含み;Shire LaboratoriesのEnSoTrol(登録商標)システムは、コア内の薬剤を可溶化し、レーザーによって形成された穴を通して溶解薬剤を浸透によって送達し;Alzet(登録商標)浸透ポンプは、マウス、ラット及び他の実験動物の研究のために用いられる、小型の植込型ポンプである。
【0078】
特許、公開特許出願及び関連刊行物の検索も、この開示を読む当分野の技術者に、かなりの可能な浸透ポンプ技術を提供する。例えば、その内容は本明細書で参照により組み込まれる米国特許第6,890,918号;6,838,093号;6,814,979号;6,713,086号;6,534,090号;6,514,532号;6,361,796号;6,352,721号;6,294,201号;6,284,276号;6,110,498号;5,573,776号;4,200,0984号及び4,088,864号は、浸透ポンプ及びそれらの製造方法を記載する。当分野の技術者ならば、本発明の開示及びこれらの他の特許の開示を考慮して、NRGの徐放のための浸透ポンプを作製することができるであろう。
【0079】
半透膜のための一般的な物質には、当技術分野で浸透膜及び逆浸透膜として知られる半透性ポリマー、例えばセルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸寒天、三酢酸アミラーゼ、βグルカンアセテート、ジメチル酢酸アセトアルデヒド、酢酸エチルカルバメートセルロース、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、酢酸フタル酸セルロース、酢酸メチルカルバメートセルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸ジメチルアミノアセテートセルロース、酢酸エチルカルバメートセルロース、酢酸クロロアセテートセルロース、二パルミチン酸セルロース、二オクタノン酸セルロース、二カプリル酸セルロース、セルロースジペンタレート、酢酸吉草酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、メチルセルロース、酢酸p-トルエンスルホン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアニオン及びポリカチオンの共沈によって形成された架橋選択的半透性ポリマー、半透性ポリマー、弱架橋ポリスチレン誘導体、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)、1までの置換度及び50%までのアセチル含有量を有する酢酸セルロース、1〜2の置換度及び21〜35%のアセチル含有量を有する二酢酸セルロース、2〜3の置換度及び35〜44.8%のアセチル含有量を有する三酢酸セルロースが含まれ、これらは、その内容が本明細書で参照により組み込まれる米国特許第6,713,086号で開示されている。
【0080】
ポンプに存在する浸透圧剤は、外部の流体に対して半透壁越しに浸透圧勾配を示す、任意の浸透効果化合物を含むことができる。有効な剤には、それらに限定されないが、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d-マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、ショ糖、フルクトース、親水性ポリマー、例えばセルロースポリマー、それらの混合物などが含まれ、これらは、その内容が本明細書で参照により組み込まれる米国特許第6,713,086号で開示されている。
【0081】
「駆動部材」は、一般的に、体液と相互作用して膨潤又は膨張する親水性ポリマーである。ポリマーは水中で膨潤し、吸収した水のかなりの部分をポリマー構造内で保持する能力を示す。ポリマーは非常に高い程度に膨潤又は膨張し、通常2〜50倍の体積増加を示す。ポリマーは、非架橋性のもの又は架橋性のものであることができる。本目的に適当な親水性ポリマーは、当技術分野においては公知である。
【0082】
開口部は、活性剤をシステムから放出するのに適当な、任意の手段及び方法を含むことができる。浸透ポンプは、例えばそれに限定されないが、米国特許第4,088,864号で開示されるレーザーの使用を含め、当技術分野で公知の物理的手法によって半透膜に設けた1つ以上の貫通孔又は開口部を含むことができる。或いは、それは、半透膜にゼラチンプラグなどの浸食性のエレメントを組み込むことによって形成することができる。
【0083】
浸透ポンプの具体的な実施形態が上で議論されているが、本発明は、いかなる特定の徐放技術よりも一般的である。これには、NRGの徐放が梗塞心臓の機能を改善し、左心室の内径を小さくするという発見が含まれる。現在当技術分野で公知である多くの変形形態及び異なる種類の浸透ポンプがあり、本明細書で開示される本発明の実施で使用することができる。
【0084】
(C.2.ポリ(エチレングリコール)結合)
本発明の一実施形態では、血液中へのNRGの徐放は、ポリ(エチレングリコール)(以下、「PEG」と称す)などのポリマーへの活性剤の結合を含む。PEGを生物活性剤に結合することは、活性剤を、制御された方法で長期間目標領域に送達する際の有用性を証明した。特に、PEGによるタンパク質の修飾は、治療的活性剤の抗原性を減少させ、それらのインビボ有効性を延長させるために、バイオテクノロジー産業内で広く用いられてきた。例えば、塩化シアヌルを用いてウシのアデノシンデアミナーゼにPEGを結合させることは、免疫原性の低下をもたらす。同様に、ヒト成長ホルモン及び大腸菌L-アスパラギナーゼのPEG付加物は、延長した循環内半減期を有することが示された。
【0085】
PEGを活性剤又は他の分子、例えばリポソームの外表面に結合させることは、活性剤又は他の分子の効力及び半減期を改善し、その毒性を低減させることもできる。特に、水性媒体において、PEG分子は水和され、急速に運動する。この急速な運動は、PEGに大容積を掃き出させ、他の分子、例えば免疫細胞又はプロテアーゼの接近及び干渉を予防させる。ゆえに、PEGと結合すると、PEGポリマー鎖は、結合した分子を免疫応答及び他の排除機構から保護し、活性剤の有効性を持続させることができる。
【0086】
一般に、ポリエチレングリコール分子は、タンパク質上で見られる反応基を介してタンパク質に連結される。通常、リジン残基上又はN末端にあるものなどのアミノ基が、結合のために用いられる。米国特許第5,824,784号及び4,002,531号は、PEGを還元アルキル化によって酵素に結合するためのそのような方法を開示する。米国特許第4,904,584号で開示されるように、追加の結合点を提供するために、リジン残基を他のアミノ酸の代わりに戦略的に置換するか、又はポリペプチド配列に挿入することができる。米国特許第5,932,462号で開示されるように、タンパク質に分枝状又は「複数のアームを有する」PEG誘導体を結合するさらなる方法が当技術分野で公知である。ポリマーをシステイン残基、カルボキシ基、炭水化物及び他の部分に結合するための、当技術分野で公知である他の多くの結合方法がある。例えば、米国特許第5,900,461号は、分子上のアミノ部分の代わりにチオール部分と結合することについて非常に選択的であるさらに1つの活性スルホン部分を有するPEG誘導体及び他のポリマーを開示する。
【0087】
PEGは、巨大分子を特定の関心領域に導くターゲティングリガンド又は部分に、巨大分子を連結するために用いることもできる。米国特許第6,436,386号は、骨成長因子などの活性剤の、骨などのヒドロキシアパタイト表面への送達のために、ヒドロキシアパタイトターゲティング部分に結合した活性剤-ポリマーコンジュゲート体を開示する。
【0088】
PEGコンジュゲート体の調製で使用するために、多種多様なPEG誘導体が利用でき、適当である。例えば、NOF Corp.のSUNBRIGHT(登録商標)シリーズは、様々な方法で薬剤、酵素、リン脂質及び他の生体材料へ結合させるための、メトキシポリエチレングリコールを含む多数のPEG誘導体、並びにメトキシPEGアミン、マレイミド及びカルボン酸などの活性化PEG誘導体を提供し、Nektar TherapeuticsのAdvanced PEGylationも、治療法の安全及び効力を改善するための多様なPEG結合技術を提供する。
【0089】
特許、公開特許出願及び関連刊行物の検索も、この開示を読む当分野の技術者に、かなりの可能なPEG結合技術及びPEG誘導体を提供する。例えば、その内容が完全に参照により組み込まれる米国特許第6,436,386号;5,932,462号;5,900,461号;5,824,784号;4,904,584号及び4,002,531号は、そのような技術及び誘導体、及びそれらの製造方法を記載する。したがって、当分野の技術者ならば、本発明の開示及びこれらの他の特許の開示を考慮して、その徐放のためにPEG、PEG誘導体又は他の何らかのポリマーをNRGに結合させることができるであろう。
【0090】
PEGは、水及び多くの有機溶媒中での溶解性、無毒性、非免疫原性、並びに透明、無色、無臭及び安定した特性を有する公知のポリマーである。PEGの1つの用途は、ポリマーを不溶性分子に共有結合で結合させ、生じるPEG分子コンジュゲート体を溶解性にすることである。これらの理由及びその他のために、PEGが結合のための好ましいポリマーとして選択されたが、それは例示のためだけに採用され、限定することが目的ではない。類似品は、他の水溶性ポリマー、例えばそれらに限定されないが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(プロピレングリコール)などの他のポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(オキシエチル化グリセロール)などのポリ(オキシエチル化ポリオール)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルプルロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸及びポリアミノ酸で得ることができる。当分野の技術者は、所望の投薬量、循環時間、タンパク分解抵抗性及び他の考慮事項に基づいて、所望のポリマーを選択することができる。
【0091】
(C.3.リポソームパッケージング)
本発明の他の実施形態では、血液中へのNRGの徐放は、リポソームへのNRGのパッケージングを含み、それは、有益な活性剤を制御された方法で長期間送達するときの有用性を証明した。リポソームは、封入された水量を含む完全に閉じた二分子膜である。リポソームは、単一の膜二重層を有する単膜小胞又は複数の膜二重層を有する多重膜小胞であることができ、それぞれは水層によって隣接するものから分離される。生じる膜二重層の構造は、脂質の疎水性(無極性)テールが二重層の中心に向き、親水性(極性)ヘッドは水相の方へ向くようになっている。
一般に、リポソームドラッグデリバリーシステムにおいて、活性剤はリポソーム内に封入され、その後、治療される患者に投与される。しかし、活性剤が親油性である場合、それは脂質二重層と結合する可能性がある。
【0092】
免疫系は従来のリポソームを外来の物体として認識し、活性剤のかなりの量が目的の疾患部位に到達する前に、それらを破壊することができる。ゆえに、一実施形態では、リポソームは、単核食細胞系の臓器、主に肝臓及び脾臓による取り込みを回避する柔軟な水溶性ポリマーでコーティングしてもよい。リポソームを包むための適当な親水性ポリマーには、それらに限定されないが、その内容が完全に参照により組み込まれる米国特許第6,316,024号;6,126,966号;6,056,973号;6,043,094号で記載されている、PEG、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド(polyaspartamide)及び親水性のペプチド配列が含まれる。
【0093】
リポソームは、当技術分野で公知である任意の脂質又は脂質組合せで構成することができる。例えば、小胞形成脂質は天然又は合成の脂質であることができ、その例には、米国特許第6,056,973号及び5,874,104号で開示されている、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びスフィンゴミエリンなどのリン脂質が含まれる。小胞形成脂質は、糖脂質、セレブロシド又はカチオン性脂質、例えば1,2-ジオレイルオキシ(dioleyloxy)-3-(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);N-[1[(2,3,-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE);N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);3[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);又は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)でもよく、これらも米国特許第6,056,973号で開示されている。米国特許第5,916,588号及び5,874,104号で開示されているように、コレステロールは、小胞に安定性を付与するために適切な範囲で存在することもできる。
【0094】
他の実施形態では、リポソームは、ターゲティングリガンド又は部分の結合によって、哺乳動物の体内の特定の部位を標的にされる。ターゲティングリガンドは、標的細胞の表面の受容体又は他の化合物によって認識されると考えられている。一般的な標的リガンドには、抗体若しくは抗体フラグメント、細胞受容体リガンド、レクチンなどが含まれる。さらなる議論のために、その内容が参照により完全に組み込まれる米国特許第6,316,024号及び6,294,191号を参照。
【0095】
そのようなターゲティングリガンドは、そのようなリガンドのリポソームへの共有結合性又は非共有結合性の結合のために当技術分野で既知の任意の手段によって、リポソームに結合することができる。例えば、その内容が参照により完全に組み込まれる米国特許第6,316,024号及び6,043,094号で記載されているように、ターゲティングリガンドをリポソームの脂質成分の極性頭部基残基に、又は、リポソーム上で表面被覆を形成するポリマー鎖の自由端に結合することによって、ポリマーコーティングされたリポソームは、活性剤の部位特異送達を達成するように修飾された。そのような結合は、例えば米国特許第5,399,331号で記載されているように、少なくとも1つのマレイミド基及びアミン還元機能を有する架橋剤の使用によるリポソームへのタンパク質の結合;米国特許第4,885,172号;5,059,421号及び5,171,578号で記載されているように、糖タンパク質ストレプトアビジンの使用によるリポソームへのタンパク質の結合;標的リポソームの多糖類によるコーティングによって達成することができ;又は、小胞形成脂質は、親水性ポリマー鎖で誘導体化することができ、それは、米国特許第6,126,966号で記載されているように、アルデヒド基に対して反応性であるヒドラジド又はヒドラジン基の使用により抗体を結合させるために末端を官能化する。末端官能化される基は、ジスルフィド結合により抗体又は他の分子をリポソームに結合させるために、2-ピリジルジチオ-プロピオンアミドであることもできる。
【0096】
本発明のリポソームは、当分野の技術者に公知である標準技術によって製造することができる。例えば、一実施形態では、米国特許第5,916,588号で開示されているように、活性剤の緩衝溶液が調製される。次に、適当な脂質、例えば粉末状の水素化ダイズホスファチジルコリン及びコレステロールをクロロホルムなどに溶解し、ロータリー蒸発によって乾燥させる。このように形成される脂質フィルムを、ジエチルエーテルなどに再懸濁させ、フラスコに入れ、活性剤の緩衝溶液を添加しながら水浴内で超音波処理する。エーテルが蒸発したならば超音波処理を中止し、残りのエーテルが除去されるまで窒素気流を加える。他の標準の製造手順が、米国特許第6,352,716号;6,294,191号;6,126,966号;6,056,973号;5,965,156号及び5,874,104号で記載されている。本発明のリポソームは、それに限定されないが上で引用した文書(その内容は本明細書で参照により組み込まれる)の方法を含め、リポソームを作製するために当技術分野で一般に受け入れられる任意の方法によって作製することができる。
【0097】
リポソームは当技術分野で公知でもあり、徐放ドラッグデリバリー用のリポソームの提供に経験のある会社から容易に入手できる。例えば、静脈内ドラッグデリバリーのためのALZA(旧称Sequus Pharmaceuticals)のSTEALTH(登録商標)リポソーム技術は、免疫系による認識を避けるためにリポソーム上のポリエチレングリコールコーティングを用い;Gilead Sciences(旧称Nexstar)リポソーム技術は、AmBisome(登録商標)に組み込まれ、FDAは真菌感染の治療を承認し;NOF Corp.は、商品名COATSOME(登録商標)及びSUNBRIGHT(登録商標)の下で、多種多様なGMP等級のリン脂質、リン脂質誘導体及びPEG-リン脂質を提供する。
【0098】
特許、公開特許出願及び関連刊行物の検索も、この開示を読む当分野の技術者に、かなりの可能なリポソーム技術を提供する。その内容が本明細書で参照により組み込まれる米国特許第6,759,057号;6,406,713号;6,352,716号;6,316,024号;6,294,191号;6,126,966号;6,056,973号;6,043,094号;5,965,156号;5,916,588号;5,874,104号;5,215,680号及び4,684,479号は、リポソーム及び脂質コーティング微小泡並びにそれらの製造方法を記載する。したがって、当分野の技術者ならば、本発明の開示及びこれらの他の特許の開示を考慮して、NRGの徐放のためのリポソームを作製することができるであろう。
【0099】
リポソームの具体的な実施形態が上で議論されているが、本発明は、いかなる特定の徐放技術よりも一般的である。これには、NRGの徐放が梗塞心臓の機能を改善し、左心室の内径を小さくするという発見が含まれる。現在当技術分野で公知である多くの変形形態及び異なる種類のリポソームがあり、本明細書で開示される本発明の実施で使用することができる。
【0100】
(C.4.マイクロスフェアパッケージング)
本発明の他の実施形態では、血液中へのNRGの徐放は、NRGをマイクロスフェア内へパッケージングすることを含む。マイクロスフェアは、有益な活性剤を、制御された方法で長期間目標領域に送達する際の有用性を証明した。マイクロスフェアは一般に生物分解性であり、皮下、筋肉内及び静脈内の投与のために用いることができる。
【0101】
一般に、各マイクロスフェアは、活性剤及びポリマー分子から構成される。米国特許第6,268,053号で開示されているように、活性剤はポリマー分子によって形成された膜内の中央に位置することができるか、又は、内部構造が活性剤及びポリマー賦形剤のマトリックスを含むので、それは代わりにマイクロスフェア全体に分散されてもよい。一般的に、マイクロスフェアの外面は水に対して透過性であり、そのことは、水性流体がマイクロスフェアに入ること、並びに、可溶化された活性剤及びポリマーがマイクロスフェアから出ることを可能にする。
【0102】
一実施形態では、米国特許第6,395,302号で開示されているように、ポリマー膜は架橋ポリマーを含む。架橋ポリマーの孔径が活性剤の流体力学的径以下の場合、活性剤は基本的にポリマーが分解された場合に放出される。他方、架橋ポリマーの孔径が活性剤のサイズより大きい場合、活性剤は少なくとも部分的に拡散によって放出される。
【0103】
マイクロスフェア膜の他の製造方法が当技術分野で公知で使用され、本明細書で開示される本発明の実施で使用することができる。外膜のための一般的な材料には、以下のカテゴリーのポリマーが含まれる:すなわち、(1)炭水化物ベースのポリマー、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースベースのポリマー、デキストラン、ポリデキストロース、キチン、キトサン及びデンプン(ヘタスターチ(hetastarch)を含む)、及びそれらの誘導体;(2)ポリ脂肪族アルコール、例えばポリエチレンオキシド及びその誘導体、例えばポリエチレングリコール(PEG)、PEG-アクリレート、ポリエチレンイミン、ポリビニルアセテート、及びそれらの誘導体;(3)ポリ(ビニル)ポリマー、例えばポリ(ビニル)アルコール、ポリ(ビニル)ピロリドン、ポリ(ビニル)ホスフェート、ポリ(ビニル)ホスホン酸、及びそれらの誘導体;(4)ポリアクリル酸及びそれらの誘導体;(5)ポリ有機酸、例えばポリマレイン酸、及びそれらの誘導体;(6)ポリアミノ酸、例えばポリリジン、及びポリイミノ酸、例えばポリイミノチロシン、及びそれらの誘導体;(7)コポリマー及びブロックコポリマー、例えばpoloxamer 407又はPluronic L-101(商標)ポリマー、及びそれらの誘導体;(8) tert-ポリマー及びそれらの誘導体;(9)ポリエーテル、例えばポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、及びそれらの誘導体;(10)天然のポリマー、例えばゼイン、キトサン及びプルラン、及びそれらの誘導体;(11)ポリイミド、例えばポリn-トリス(ヒドロキシメチル)メチルメタクリレート、及びそれらの誘導体;(12)界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン、及びそれらの誘導体;(13)ポリエステル、例えばポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノ(スクシンイミジルスクシネート)エステル、及びそれらの誘導体;(14)分枝状及び環状ポリマー、例えば分枝状PEG及びシクロデキストリン、及びそれらの誘導体;並びに(15)ポリアルデヒド、例えばポリ(ペルフルオロプロピレンオキシド-b-ペルフルオロホルムアルデヒド)、及びそれらの誘導体であり、これらは、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,268,053号で開示されている。当分野の技術者に公知である他の一般的なポリマーには、ポリ(ラクチド-コグリコリド、ポリラクチドホモポリマー;ポリグリコリドホモポリマー;ポリカプロラクトン;ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバレレートコポリマー;ポリ(ラクチド-コカプロラクトン);ポリエステルアミド;ポリオルトエステル;ポリ13-ヒドロキシ酪酸;及びポリ無水物が含まれ、これらは、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,517,859号で開示されている。
【0104】
一実施形態では、本発明のマイクロスフェアは、別の分子に結合されるか又はそれでコーティングされる。そのような分子は、ターゲティングを促進し、受容体媒介を強化し、エンドサイトーシス又は破壊からの脱出を可能にすることができる。典型的な分子には、リン脂質、受容体、抗体、ホルモン及び多糖類が含まれる。さらに、1つ以上の切断可能な分子をマイクロスフェアの外面に結合させ、それを、所定部位を目標とさせることができる。次に、適当な生物学的条件下で分子を切断し、標的からマイクロスフェアを放出させる。
【0105】
本発明のマイクロスフェアは、標準の技術によって作製される。例えば、一実施形態では、米国特許第6,268,053号で開示されているように、エネルギー源の存在下で、粒子形成に十分な時間溶液中の活性剤を溶液中のポリマー又はポリマー混合物と混合することによって、量排除が実施される。溶液のpHは、巨大分子の等電点(pI)近くのpHに調節される。次に、溶液を熱、放射線又はイオン化などのエネルギー源に、単独で又は、超音波処理、ボルテキシング、混合若しくは撹拌と組み合わせて曝露させ、微小粒子を形成する。次に、生じる微小粒子を、当業技術者に公知である物理的分離法によって溶液に存在する組み込まれなかった成分から分離し、次に洗浄することができる。他の標準の製造手順が、その内容が完全に参照により組み込まれる米国特許第6,669,961号;6,517,859号;6,458,387号;6,395,302号;6,303,148号;6,268,053号;6,090,925号;6,024,983号;5,942,252号;5,981,719号;5,578,709号;5,554,730号;5,407,609号;4,897,268号及び4,542,025号で記載されている。
【0106】
マイクロスフェアは、当分野の技術者に公知であり、徐放ドラッグデリバリーのためのそのような技術の提供に経験のある会社から容易に入手できる。例えば、Baxter Healthcare Corp.の子会社Epic Therapeuticsは、完全に水ベースの工程で生物浸食性のタンパク質マイクロスフェアを生成するタンパク質-基質ドラッグデリバリーシステムであるPROMAXX(登録商標)を開発し;OctoPlusは、表面浸食に基づくよりはむしろマトリックスの大量分解に基づいて有効成分を放出する架橋デキストランマイクロスフェアである、OctoDEX(登録商標)を開発し;Brookwood Pharmaceuticalsは、ドラッグデリバリーのためのその微小粒子技術の有効性を宣伝している。
【0107】
特許、公開特許出願及び関連刊行物の検索も、この開示を読む当分野の技術者に、かなりの可能なマイクロスフェア技術を提供する。例えば、その内容が完全に参照により組み込まれる米国特許第6,669,961号;6,517,859号;6,458,387号;6,395,302号;6,303,148号;6,268,053号;6,090,925号;6,024,983号;5,942,252号;5,981,719号;5,578,709号;5,554,730号;5,407,609号;4,897,268号及び4,542,025号は、マイクロスフェア及びそれらの製造方法を記載している。当分野の技術者ならば、本発明の開示及びこれらの他の特許の開示を考慮して、NRGの徐放のためのマイクロスフェアを作製、使用することができるであろう。
【0108】
(D.投薬用量及び頻度)
本発明で用いるニューレグリンの量は、疾患又は病状の性質及び重症度、並びに有効成分が投与される経路によって異なる。頻度及び投薬量は、投与される特定の療法(例えば治療剤又は予防剤)、障害、疾患又は病状の重症度、投与経路、並びに患者の年齢、体重、応答及び過去の病歴によって、各患者に特異的な因子に従っても異なる。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定できる。
【0109】
ニューレグリンの例示的な用量には、対象又は試料の1キログラム重量あたりのニューレグリンのミリグラム又はマイクログラム量(例えば、1キログラムにつき約1マイクログラム〜1キログラムにつき約500ミリグラム、1キログラムにつき約100マイクログラム〜1キログラムにつき約5ミリグラム、又は、1キログラムにつき約1マイクログラム〜1キログラムにつき約50マイクログラム)が含まれる。本発明で用いるニューレグリンの徐放のために、患者に投与される投薬量は、活性ペプチドの重量換算で、患者の体重1kgにつき一般的に0.001mg〜15mgである。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重あたりで0.001mg/kg〜15mg/kg、0.005mg/kg〜10mg/kg、0.01mg/kg〜5mg/kg、0.001mg/kg〜4mg/kg、0.005mg/kg〜3mg/kg、0.01mg/kg〜2mg/kg、0.001mg/kg〜1mg/kg、0.005mg/kg〜0.5mg/kg、0.010mg/kg〜0.2mg/kg、0.005mg/kg〜0.050mg/kgである。
【0110】
ニューレグリンの例示的な用量には、対象又は試料の1キログラム重量あたりのニューレグリンの単位(U)又は単位量(例えば、1キログラムにつき約1U〜1キログラムにつき約5000U、1キログラムにつき約10U〜1キログラムにつき約1000U、又は、1キログラムにつき約100U〜1キログラムにつき約500U)も含まれる。本発明で用いるニューレグリンの徐放のために、患者に投与される投薬量は、活性ペプチドの重量換算で、患者の体重1kgにつき一般的に10U〜1000Uである。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重あたりで1U/kg〜10,000U/kg、1U/kg〜5000U/kg、10U/kg〜5000U/kg、10U/kg〜1000U/kg、50U/kg〜2000U/kg、50U/kg〜1000U/kg、50U/kg〜500U/kg、100U/kg〜1000U/kg、100U/kg〜500U/kg、100U/kg〜200U/kgである。
【0111】
一般には、本明細書で記載される病状のための本発明の方法におけるニューレグリンの推奨日用量範囲は、約0.001mg〜約1000mg/日の範囲にある。具体的には、総日用量範囲は、0.001mg/日〜15mg/日、0.005mg/日〜10mg/日、0.01mg/日〜5mg/日、0.001mg/日〜4mg/日、0.005mg/日〜3mg/日、0.01mg/日〜2mg/日、0.001mg/日〜1mg/日、0.005mg/日〜0.5mg/日、0.010mg/日〜0.2mg/日の範囲になければならない。患者を管理する際には、療法はより低い用量で、恐らく約0.1μg〜約1μgで開始し、必要に応じて、患者の全体的応答によって単一用量又は分割用量として約20μg〜約1000μg/日まで増加させることができる。場合によっては、当分野の技術者に明らかとなるように、本明細書で開示する範囲外の有効成分投薬量を用いることが必要なことがある。さらに、臨床医又は治療担当医師が、個々の患者の応答に伴い、どのように、いつ療法を中断、調節又は終了すべきかがわかることに留意されたい。ある実施形態では、ニューレグリンは約1U/日〜約10,000U/日の量で投与される。一部の実施形態では、ニューレグリンは約1U/日〜約5000U/日の量で投与される。一部の実施形態では、ニューレグリンは約10U/日〜約2000U/日の量で投与される。一部の実施形態では、ニューレグリンは約10U/日〜約1000U/日の量で投与される。一部の実施形態では、ニューレグリンは約100U/日〜約200U/日の量で投与される。
【0112】
ニューレグリンは、投薬予定で又は「治療周期」で投与することもできる。治療周期内のニューレグリンの日用量は、上で詳述する。治療周期は、2日、5日、7日、10日、2週間、3週間、4週間、5週間又は6週間持続することができる。
ある実施形態では、ニューレグリンは治療周期の各日のために、毎日投与される。ある実施形態では、ニューレグリンは、治療周期内で3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12日の間、連続して投与される。
ある実施形態では、治療周期においてニューレグリンは周期の1日目に投与され、周期は、1日以上のニューレグリンを投与しない日で終わる。一部の実施形態では、ニューレグリンは治療周期内で3、5、7又は10日の間毎日投与され、その後休止期が続く。
【0113】
(E.併用療法)
一実施形態では、本発明は、心肥大又は心不全を引き起こす薬剤、例えば酢酸フルドロコルチゾン又はherceptinで治療中の患者において、心不全及び心筋症を予防することに役立つ。NRGは、そのような心臓疾患を引き起こす薬剤の前に、同時に又は後に投与することができる。
本発明の他の実施形態では、NRGは、NRGとは異なる肥大誘導経路を抑制する作用をする化合物の有効量と併用投与される。代わりの実施形態では、NRGは、そのような肥大サプレッサー及び/又は追加の成分、それらに限定されないが、うっ血性心不全の場合は、心臓栄養阻害剤、例えばCt-1 (カルディオトロフィン-1)アンタゴニスト、ACE阻害剤、例えばカプトプリル(Capoten(登録商標))及び/又はヒト成長ホルモン及び/又はIGF-I(インスリン様成長因子I)と一緒に、或いは、他の型の心不全若しくは心臓障害の場合は、他の抗肥大性、筋心臓栄養因子、抗不整脈剤又は変力性因子と一緒に投与される。
本発明の他の実施形態では、NRGは、心不全の治療のための現行の治療手段、例えばそれらに限定されないが、ACE阻害剤及び他の血管拡張薬、利尿薬、ジギタリス製剤、β遮断薬、血液抗凝結薬、アンギオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬又はカリウムと併用投与される。
【0114】
アンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの変換を阻止するACE阻害剤は、血管を拡張させ、血圧を低下させ、心臓の仕事量を減少させる血管拡張薬である。本発明の実施形態での使用に適当な血管拡張薬には、それらに限定されないが、以下の薬剤が含まれる:キナプリル(Accupril(登録商標))、ラミプリル(Altace(登録商標))、カプトプリル(Capoten(登録商標))、ベナゼプリル(Lotensin(登録商標))、フォシノプリル(Monopril(登録商標))、リシノプリル(Prinivil(登録商標)又はZestril(登録商標))、エナラプリル(Vasotec(登録商標))、モエキシプリル(Univasc(登録商標))、トランドラプリル及びペリンドプリル。本発明に役立つさらなる血管拡張薬には、それらに限定されないが、硝酸イソソルビド(Isordil(登録商標))、ネシリチド(Natrecor(登録商標))、ヒドララジン(アプレソリーン(登録商標))、硝酸塩及びミノキシジルが含まれる。
【0115】
利尿薬は、腎臓に血流からナトリウム及び水を除去させ、心臓の仕事量を減少させ、その例としては、それらに限定されないが以下の薬剤が含まれる:ヒドロクロロチアジド(HydroDIURIL(登録商標))、クロロチアジド(Diuril(登録商標))、フロセミド(Lasix(登録商標))、ブメタニド(Bumex(登録商標))、スピロノラクトン(Aldactone(登録商標))、トリアムテレン(Dyrenium(登録商標))、メトラゾン(Zaroxolyn(登録商標))、トルセミド、インダパミド、ポリチアジド、アミロライド及び組合せ剤(Dyazide(登録商標))。
【0116】
ジギタリス製剤は心臓の収縮力を増加させ、例としては、それらに限定されないが、ジゴキシン(Lanoxin(登録商標))及びジギトキシンが含まれる。
β遮断薬は、より速く拍動しようとする心臓の傾向を弱め、例としては、それらに限定されないが以下の薬剤が含まれる:カルベジロール(Coreg(登録商標))メトプロロール(Lopressor(登録商標)又はToprol XL(登録商標)、アテノロール、ビソプロロール、ラベタロール、プロプラノロール、ソタロール、ピンドロール、ペンブトロール、アセブトロール、チモロール、ナドロール及びベタキソロール。
【0117】
本発明の実施形態で使用するための血液抗凝結薬には、それらに限定されないが、ワルファリン(Coumadin(登録商標))及びヘパリンが含まれる。
本発明の実施形態はアンギオテンシンII受容体遮断薬を用いることもでき、それは、(ACE阻害剤がそうするように)アンギオテンシンIIのレベルを低下させるのではなく、アンギオテンシンIIが心臓及び血管に影響を及ぼすことを阻止する。本発明での使用に適当なアンギオテンシンII受容体遮断薬には、それらに限定されないが、イオサルタン(Cozaar(登録商標))、バルサルタン(Diovan(登録商標))、イルベサルタン(Avapro(登録商標))、カンデサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン及びオルメサルタンが含まれる。
【0118】
カルシウムチャンネル遮断薬は、一般に、しばしば心不全と関連する高血圧症を治療するために用いられる。本発明での使用に適当なカルシウムチャンネル遮断薬には、それに限定されないが、アムロジピン(Norvasc(登録商標))が含まれる。
本発明の代わりの実施形態では、NRGの徐放は、高血圧症などの心疾患の治療のための薬物療法の投与と併用することもできる。例えば、NRGは、エンドセリン受容体に対する抗体などのエンドセリン受容体アンタゴニスト、及びペプチド若しくは他のそのような小分子アンタゴニスト;カルベジロールなどの3-アドレナリン受容体アンタゴニスト; x、-アドレナリン受容体アンタゴニスト;抗酸化剤;複数の活性(例えば3-遮断薬/a-遮断薬/抗酸化剤)を有する化合物;カルベジロールで見られる複数の機能を提供するカルベジロール様化合物又は化合物の組合せ;成長ホルモン、その他と一緒に投与することができる。
ニューレグリンアゴニストは、単独で又は他の肥大サプレッサー経路アゴニスト若しくは既知の肥大誘導経路に拮抗する分子との併用で、心不全の影響を予防又は軽減するために、心不全の哺乳動物のインビボ治療のための薬剤として役立つ。
【0119】
心臓障害を治療するためのアゴニストの治療製剤が、任意選択の生理的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版、Oslo, A.編、1980)で所望の純度を有するアゴニストを混合することによって、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形で保管のために調製される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに無毒であり、その例としては、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロビンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/或いはツイーン、プルロニックス(Pluronics)又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。アンタゴニストは、様々な非タンパクポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリアルキレンの1つと、米国特許第4,640,835号;4,496,689号;4,301,144号;4,670,417号;4,791,192号又は4,179,337号で示される方法で適切に結合されもする。製剤で用いる担体の量は、重量換算で約1〜99%、好ましくは約80〜99%、最適には90〜99%の範囲でよい。
【0120】
インビボ投与で用いるためのアゴニストは、無菌でなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、当技術分野で既知の方法、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。アゴニストは、通常、凍結乾燥された形態で又は溶液で保存される。
治療アゴニスト組成物は、一般に、無菌取出口を有する容器、例えば皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静注液バッグ又はバイアルに入れる。アゴニストの投与は、緩慢方式だけであり、例えば、以下の経路の1つである:静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内若しくは病巣内経路による注射又は注入、経口投与又は上記の持続放出システムの使用。
【0121】
上記のように、徐放調製物の適当な例には、タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら(1981) J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277及びLanger (1982) Chem. Tech. 12: 98-105に記載のポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L-グルタミン酸及びγエチルL-グルタメートのコポリマー(Sidmanら(1983) Biopolymers 22: 547-556)、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら(1981)前掲)分解性乳酸グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なマイクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。
【0122】
アゴニストは、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、例えばコアセルベーション手法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ[メタアクリル酸メチル]マイクロカプセル)に閉じ込めることもできる。そのような技術は、前掲のレミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)で開示されている。
【0123】
エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日以上の分子放出を可能にするが、あるヒドロゲルは、より短い期間分子を放出する。封入分子が長期間体内に留まる場合、それらは、37℃の湿気にさらされる結果、変性又は凝集を起こし、生物活性の消失及び免疫原性の可能な変化をもたらす可能性がある。関係する機構によって安定化のために、例えば適当な添加剤の使用及び特定のポリマーマトリックス組成物の開発により、合理的な戦略を考案することができる。
【0124】
徐放アゴニスト組成物には、リポソームに閉じ込められたアゴニストも含まれる。アゴニストを含有するリポソームは、当技術分野で公知の方法、例えばDE3,218,121;Epsteinら(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 3688-3692;Hwangら(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030-4034;EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;特願83-118008;米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号;及びEP102,324で開示されているものによって調製される。適当な徐放製剤の具体例は、EP647,449内にある。
【0125】
本発明の他の実施形態では、NRGは、ACE阻害剤(上記)、CT-1阻害剤、ヒト成長ホルモン及び/又はIGF-Iを含め、うっ血性心不全を治療するための他の剤と併用されるか又は一緒に投与される。使用される場合そのような剤の有効量は、臨床医の判断で決まる。投薬量の管理及び調整は、うっ血性心不全の最高の管理を達成するように当分野の技術者に公知の方法で決定され、理想的には、利尿薬又はジギタリスの使用及び低血圧症及び腎機能障害などの病状が考慮される。用量は、さらに、用いる薬剤の種類及び治療患者の特性などの因子によって決まる。一般的に、使用量は、薬剤がアゴニストなしで投与される場合の使用量と同じ用量であるが、副作用の存在、治療する病状、患者の型並びにアゴニスト及び薬剤の型などの因子によってはより低い用量を使用することができ、その場合、剤の総量は治療する病状の有効量を提供するものとする。
具体的な実施形態で示すように、広義に記載するように、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく多数の変更及び/又は修正を本発明に加えることができることが、当分野の技術者によって理解される。現在の実施形態は、したがって、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと考えるべきである。
【0126】
(F.キット)
本発明は、本発明の治療計画を実施するためのキットも提供する。そのようなキットは、本明細書で記載のNRGの治療有効量を、単独で又は他の剤と組み合わせて、医薬として許容し得る形態で、及び、本明細書で記載の徐放技術と組み合わせて1つ以上の容器に含む。医師又は患者による徐放NRG組成物の投与のために、説明書が任意選択で含まれる。
【実施例】
【0127】
(G.実施例)
実施例で示すように、本発明は、NRGの徐放が他の方法によって送達されるNRGと同じくらい効果的にAKT又はERKシグナル伝達経路を活性化し、他の方法によって送達されるNRGよりも大きく梗塞心臓の機能を改善するという発見に存す。しかし、NRGのErbB受容体との相互作用が他の疾患及び障害、例えば中枢及び末梢の神経系の疾患と関連付けされていることを考えると、本発明は、他の疾患及び障害にもより広い適用を有する。他の疾患及び障害の例には、様々な心血管疾患、癌、神経系疾患及び/又は筋疾患、例えば筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ、肢帯)及び多発性硬化症、脊髄損傷、目及び耳の疾患、糖尿病、統合失調症並びにアルツハイマー病が含まれる。
【0128】
本発明は、以下のそれには限定されない実施例を参考に、さらに例示される。実施例は、本発明の作製方法及び使用方法の完全な開示及び記載を当分野の技術者に提供するために提示するものであり、発明者らが彼らの発明と考えるものの範囲を限定するものではなく、また、下の実験が全てであること又は実施した唯一の実験であることを示すものでもない。用いる数字に関して正確を期する努力を払ったが、多少の実験誤差及び偏差は考慮されなければならない。
【0129】
(実施例1)
NRGを異なる方法によって注入した後の正常ラットの左心室におけるAKT及びERKのリン酸化。
左心室の心筋細胞中のシグナル伝達に及ぼすNRGの影響を様々な治療方法と比較するために、静脈内(以下「IV」と称す)、筋肉内(以下「IM」と称す)及びIVグルコース負荷試験(以下「IVGTT」と称す)によってNRGを注入した。
【0130】
体重が180±20グラムのウィスター雄ラット(Shanghai Animal Center of Chinese Academy of Science)に番号を付け、計量し、群に分割した。各群には、3匹のラットが含まれた。1群は、溶媒(10mM Na2HPO4-NaH2PO4、150mM NaCl、0.2%ヒト血清アルブミン(HSA)、5%マンニトール、pH6.0)の4ml/kg(量/体重)のIV注射を投与し、対照とした。他の4群のラットは、溶媒(先に述べたもの)に溶解したNRG(37.3U/mlの組換えヒトNRG断片(ヒトNRG1β2の第177〜237番目のアミノ酸配列、Zensun Science & Technology製-バッチ番号200503002))の4ml/kg(量/体重)のIM注射を投与した。他の4群のラットは、NRG(先に述べたもの)の4ml/kg(量/体重)のIV注射を投与した。他の5群のラットは、2時間のIV注射(IVGTT)によって、NRG(先に述べたもの)の20μl/分間のグルコース負荷試験注入を投与した。ゆえに、各ラット(溶媒群を除く)に投与したNRGの総量は、149.3U/kg体重であった。
【0131】
ラットは、20分、1時間、2時間、4時間及び6時間時に別々に屠殺した。プール後、各群のラットの左心室を冷却溶解緩衝液(50mMトリスpH7.4、5mM EDTA、150mM NaCl、1%トリトンX-100、2mM Na2VO4、50mM NaF、2mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル(無EDTA、Roche))中で細断し、冷却PBSで洗浄した。次に心室を氷水中でホモジナイズし、1.5mlエッペンドルフ試験管を用いて4℃で5分間12,000rpmにより遠心分離した(Kendro Biofuge)。上清を収集し、さらに1度回転させ、-80℃で保存した。使用時に試料を解凍し、再び回転させた。各試料のタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイ(Pierce BCAタンパク質アッセイキット)で測定した。各試料のある量を2倍の試料緩衝液(0.125Mトリスph6.8、20%グリセロール、4% SDS、0.2M DTT、0.012%ブロモフェノールブルー)と混合し、電気泳動のために沸騰させてからPVDF膜(Millipore)へ移した。AKT及びERKのリン酸化、並びに各試料中のAKT及びERKの量は、抗体(ERK抗体及びリン酸化ERK抗体(Santa Cruz Biotechnology);AKT抗体及びリン酸化AKT抗体(Cell Signaling))で検出した。
【0132】
NRGをこれらの異なる方法のそれぞれによって注入したときの正常ラットの左心室におけるAKT及びERKのリン酸化の経過を、図1に示す。溶媒と比較して、IM、IV及びIVGTTによって注入したNRGの全ては、ERKの持続的リン酸化を活性化した。各方法によって誘導されたAKTリン酸化は20分時にピークに達し、1時間時に減少したが、2時間時に再び増加し、4時間〜6時間時に高レベルを維持した。ゆえに、ERK及びAKTのリン酸化を持続させるそれらの能力に関して、NRGを注射する異なる方法の間に明らかな差はない。これは、継続的に注入されるNRGがNRGの注射と同程度に有効であることを示す。ゆえに、IVGTT注入は、悪い心臓状態を治療するための可能な方法である。
【0133】
(実施例2)
異なる方法によりニューレグリンで治療した後の左心室冠状動脈結紮ラット心臓の機能
浸透ポンプは(IVGTTのように)継続的にNRGを送達する方法であるので、浸透ポンプによって注入されたNRGが心筋梗塞(MI)心臓の機能の回復において従来のIV注射と同程度に有効かどうかを試験した。
【0134】
(A.ラット左心室冠状動脈結紮及び心エコー検査)
体重が200±20グラムのウィスター雄ラット(Shanghai Animal Center of Chinese Academy of Science)を、100mg/kg(薬剤/体重)のケタミンの腹腔内注射により麻酔をかけた。首及び胸部を脱毛し、清潔にした。中央前部の首を切開して気管を露出させた。18G套管針を、気管の第3及び第5の軟骨の間の気管に挿入した。針を引き抜いた後、プラスチックカニューレを1〜2cm気管に押し込み、固定してローデントベンチレータ(SAR-830/Pベンチレータ-吸気流速、1ml/100g/呼吸;呼吸数、60呼吸/分)を連結した。左前胸部も切開した。皮膚を遠慮なく切開して第4及び第5本目の肋骨を露出させ、次に、第4肋骨を肘状のモスキート鉗子で切断した。ベンチレータ(先に述べたもの)をカニューレに連結し、オンにし、心臓を露出させて肺及び心臓の状態を確認した。心臓を切開を通して露出させた後に、心膜を引き裂き、左心房及び肺動脈円錐を特定した。それらの間の左心室冠動脈前下行枝を6/0医学縫合糸で強く結紮した後、心臓を胸郭に戻した。胸壁を縫合した。ベンチレータをブロックして肺を満たした。胸腔内の空気を穏やかに引き出した後、胸部の筋肉及び皮膚を縫合した。継続的自発呼吸が再開するまで、ベンチレータをラットから取り出した。
次に、結紮後14日目に、ラットの心機能を心エコー検査(Philips Sonos 7500 S4 probe)によって検査した。30〜50%の駆出分画(以下「EF」)値を有するラットを分離して、グループ分けした(群につき15ラット)。
【0135】
(B.結紮ラットのニューレグリンによる治療。)
左心室冠状動脈結紮の後15日目にラットを計量して、必要とされるNRGの量を決定した。溶媒群のラットは、IV注射により0.4ml/100g(量/体重)の溶媒を投与した。溶媒は5日間1日に1回注射し、2日間停止し、次にまた5日間注射した。
IM及びIV群のラットは、それぞれNRGのIM及びIV注射を投与した(NRGの量は149.3U/kg(タンパク質/体重)であり、量は0.4ml/100gであった)。NRGは5日間1日に1回注射し、2日間停止し、次にまた5日間注射した。
【0136】
さらに下で述べるように、IVGTT群は、グループ分け後5日目に浸透ポンプ(ALZET浸透ポンプ2ML1)を移植した。各ポンプは2mlのNRG溶液を含有し、それは933.1UのNRG(ラットの体重が約250gになっていたので)を含有し、注入速度は約18.7U/kg/時間であった。ゆえに、最大薬剤濃度は、IV注射による約2.67U/kgに匹敵した。
7日後、全てのラットの心機能を心エコー検査(Philips Sonos 7500 S4 probe)によって再度検査した。その翌日、ラットの心機能をさらに確認するために、血液動態パラメータ検査及び解剖学的検査も実施した。
【0137】
(B.1.ラットへの浸透ポンプの移植(全ての工程を無菌で行うべきである))
1mlの滅菌水及び1mlの滅菌0.9%生理食塩水を、フード内で連続してNRGのバイアルに注入した(993.1U、62.5μg)。NRG溶液を滅菌注射器に引き抜いた。注射器の先の鈍くなった針は交換し、注射器内の泡は除去した。ポンプを直立に保持し、針を、直立ポンプの上端の小径孔を通して行けるところまで挿入した。プランジャーをゆっくり押し、溶液がポンプからオーバーフローし始めるまでポンプにNRG溶液を加えた。針を抜き、ポンプを清潔に拭いた。流量調節器の透明キャップをはずし、短いステンレス鋼管を露出させた。次に鋼管を5cmのPE60管の一端に挿入した。注射器針をPE60管の他の端に挿入した。注射器のプランジャーを押して、それが満ちるまでNRG溶液を流量調節器に加えた。次に、流量調節器の長い管を、その白色のフランジがポンプに付くまで、ポンプに挿入した。針を流量調節器から引き抜いてから、ポンプを37℃で一晩、滅菌0.9%生理食塩水に浸した。
【0138】
ラットは、ケタミンで麻酔をかけた(先に述べたように)。ラットの首及び肩の間の領域を脱毛させ、清潔にした。体は、滅菌の湿った布で覆った。次に、肩甲骨の間の皮膚を注意深く切開し、外頸静脈を見つけて分離した。心臓からの静脈の遠位末端を結紮した。外頸静脈の壁に目ばさみで小さな穴をあけ、微鉗子で拡大させた。浸透ポンプに連結したPE60管を、その穴を通して2cm静脈に挿入した。次に、心臓からの静脈の近位端をPE60管と結合させ、管を固定した。PE60管周辺の静脈の遠位末端を固く縛り、さらに管を固定した。止血剤を用いて、切開部から肩甲骨まで皮膚を遠慮なく分離してトンネルを形成した。最後に、さらに皮膚を広げることによって、ラットの背中の肩甲骨中間領域にポケットを形成した。ポンプは、トンネルを通してポケット内へ滑らせ、流量調節器は切開部から遠位を向いていた。次に、皮膚切開部を縫合した。復活後、ラットを動物室に戻し、通常通り飼育した。
【0139】
(C.実験結果)
IVGTT及びIVによるNRG注入後のMI心臓の機能を、下の表1で示す。表1で、「IVS」、「LVEDD」、「PW」、「LVESD」、「EF」、「FS」及び「CC」は、それぞれ心室中隔、左心室拡張終期寸法、後部肉厚、左心室収縮終期寸法、駆出分画、分画短縮及び心臓周期を表す。ここでは、EF及びFSは、心臓の、特に左心室の収縮性を反映する。
EF=(拡張終期容積-収縮終期容積)/拡張終期容積
FS=(拡張終期の寸法-収縮終期の寸法)/拡張終期の寸法
【0140】
表1で、溶媒群のそれらの対応物と比較してIVGTT又はIV群のLVEDD、LVESD、EF及びFSについてはP<0.01であり、非常に有意な差を示す。
【表1】

【0141】
浸透ポンプによって注入されたNRGは、IV群と比較してMIラットの心機能を劇的に強化した。特に、左心室の機能を推定するために用いることのできる心臓の血液ポンピング効率の測定法であるEF値は、IVGTT群では溶媒群のそれより59.18%高く、IV群より34.81%高かった。さらに、左心室の能力を測定する方法でもあるFS値は、IVGTT群では溶媒群のそれより73.79%高く、IV群より44.0%高かった。これらの結果は、NRGの徐放が、心機能を改善するための従来のIV注射よりも有効であることを示す。
【0142】
驚くべきことに、浸透ポンプによって注入されたNRGは、IV群と比較してMIラットの心機能を大きく向上させただけでなく、左心室の内径を低減させた。具体的には、IVGTT群の平均左心室拡張終期寸法(以下「LVEDD」と称す)は、溶媒群のそれより9.98%小さく、IV群より6.03%小さかった。さらに、IVGTT群の左心室収縮終期寸法(以下「LVESD」と称す)は、溶媒群のそれより21.37%小さく、IV群より15.15%小さかった。これらの結果は、継続的にNRGを投与することが左心室容積及び質量を低減させ、それによって左心室の健康及び能力を改善することができることを示す。
【0143】
(実施例3)
ニューレグリンをシリンジポンプ(Zhejiang University Medical Instrument Co. LTD. WZS 50-F2)によって継続的に静脈内注入した後の心筋梗塞性ラットの心臓機能
この例では、ヒト患者でニューレグリンの徐放のためにシリンジポンプが用いられる。シリンジポンプは、ラット尾部の静脈に刺した針によって、溶液を一定の速度で連続的に血流に送ることができる。シリンジポンプでは、注入時間及び速度を制御することは簡単である。治療のための時間及び速度を改善するために、ニューレグリンを1日につき異なる速度で異なる時間シリンジポンプによってMIラットに静脈内注入した。
【0144】
グループ分けしたMIラットは、10日間毎日4ml/kg(量/体重)の溶媒の静脈注射で(A群);又は、10日間毎日10μg/kgのニューレグリン(2.5μg/ml)の静脈注射で(B群);又は、10日の間1.25μg/kg/時間で1日4時間のニューレグリン(0.625μg/ml)の静脈内シリンジポンプ注入で(C群);又は、10日の間2.5μg/kg/時間で1日4時間のニューレグリン(1.25μg/ml)の静脈内シリンジポンプ注入で(D群);又は、10日の間0.625μg/kg/時間で1日8時間のニューレグリン(0.625μg/ml)の静脈内シリンジポンプ注入で(E群);又は、10日の間1.25μg/kg/時間で1日8時間のニューレグリン(1.25μg/ml)の静脈内シリンジポンプ注入で(F群)で処置した。次に、心臓の機能を検査するために、全ての群について心エコー検査を実施した。
【0145】
【表2】

【0146】
表2で示すように、溶媒群と比較して、IVによるニューレグリン(B群)はMIラットのEF値を20.29%高め、4時間/日の静脈内シリンジポンプ注入(C、D群)はIVと同程度に有効であったが、8時間/日の静脈内シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E、F群)はEF値を約37.10%高めた。同時に、溶媒群と比較して、IV注射によるニューレグリン(B群)はMIラットのFS値を23.61%高め、4時間/日の静脈内シリンジポンプ注入(C、D群)はIVと同程度に有効であったが、8時間/日の静脈内シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E、F群)はFS値を約45.49%高めた。驚くべきことに、E群のMIラットにはF群のニューレグリンの半量だけを投与したが、EF又はFS値はほとんど同じである。結果は、ニューレグリンを1日8時間以上シリンジポンプによって連続的に静脈内注入した後、それが心機能を高めることができることを示した。
【0147】
(実施例4)
浸透ポンプによるNRGの徐放皮下注入の後のMIラットの心機能
左心室冠状動脈結紮及びラットへの浸透ポンプの移植は実施例2の場合と同様に実施したが、ポンプに注入したNRGの量は1791.3U(125μg)であり、ポンプは、NRG注入を皮下にするために管を静脈に連結せずに包埋した。注入速度は、37.33U/kg/時間である。
【0148】
IV注入は徐放皮下注入と同時に開始されたので、IV群は7日間NRGで治療された。IV群のNRGの量も、223.95U/kgに変更した。
徐放皮下及びIVによるNRG注入後のMI心臓の機能を、表3で示す。表3で、溶媒群のそれらの対応物と比較してIVGTT及びIV群のLVEDD、LVESD、EF及びFSについてはP<0.01であり、非常に有意な差を示す。
【0149】
【表3】

【0150】
表3は、NRGの徐放皮下注入が、IV群及び溶媒群と比較して、MIラットの心機能を有意に強化したことを示す。溶媒群と比較して、NRGの徐放皮下注入は、MI心臓のEF値を42.77%、FS値を51.75%高めた。上記のように、EF及びFS値は、心臓の血液ポンピング効率を測定する方法であり、左心室の機能を推定するために用いることができる。したがって、これらの結果は、NRGの徐放が、心機能を改善するための従来のIV注射よりもかなり有効であることを示す。
【0151】
NRGの徐放皮下注入は、左心室の内径も低減させた。具体的には、溶媒群と比較して、MI心臓のLVEDDは10.98%減少し、LVESDは18.72%減少した。この実験でのNRGのIV注射は、溶媒と比較して、MI心臓の心機能に明らかな影響を及ぼさなかった。結果は、NRGの徐放皮下注入が左心室の容積及び質量を減少させ、それによって左心室の健康及び能力を改善することができることを示し、そのことは、それを心不全の治療法として用いることもできることを示唆する。
【0152】
(実施例5)
ニューレグリンをシリンジポンプによって継続的に皮下注入した後の心筋梗塞性ラットの心臓機能
ニューレグリンを1日につき異なる速度で異なる時間、シリンジポンプによってMIラットにさらに注入した。
【0153】
グループ分けしたMIラットは、10日間毎日4ml/kg(量/体重)の溶媒の静脈注射で(A群);又は、10日間毎日10μg/kgのニューレグリン(2.5μg/ml)の静脈注射で(B群);又は、10日間毎日10μg/kgのニューレグリン(2.5μg/ml)の皮下注射(HI)で(C群);又は、10日の間2.5μg/kg/時間で1日4時間のニューレグリン(1.25μg/ml)の皮下シリンジポンプ注入で(D群);又は、10日の間1.67μg/kg/時間で1日6時間のニューレグリン(1.11μg/ml)の皮下シリンジポンプ注入で(E群);又は、10日の間1.25μg/kg/時間で1日8時間のニューレグリン(1.25μg/ml)の皮下シリンジポンプ注入で(F群)で処置した。次に、心臓の機能を検査するために、全ての群について心エコー検査を実施した。
【0154】
【表4】

【0155】
表4で示すように、溶媒群と比較して、IVによるニューレグリン(B群)はMIラットのEF値を10.43%高め、皮下注射によるニューレグリン(C群)はMIラットのEF値を7.12%高めたが、4時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(D群)はEF値を12.47%高め、6時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E群)はEF値を一気に22.90%に高め、8時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E群)もEF値を20.10%高めた。これと同時に、溶媒群と比較して、IVによるニューレグリン(B群)はMIラットのFS値を11.24%高め、皮下注射によるニューレグリン(C群)はMIラットのFS値を7.10%高めたが、4時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(D群)はFS値を14.20%高め、6時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E群)はFS値を一気に26.63%に高め、8時間/日の皮下シリンジポンプ注入によるニューレグリン(E群)もFS値を26.04%高めた。結果は、ニューレグリンを1日6時間以上シリンジポンプによって連続的に皮下注入した後、それが心機能を劇的に高めることができることを示した。
【0156】
(実施例6)
NRGのPEG結合及びPEG結合NRGの活性
A、PEG結合及びPEG結合NRGの単離
PEG(mPEG-SPA-5000、NEKTAR)を1mg/ml NRG(PEG:NRG=1:1、モル比)を含有する10mlの20mM PBS(pH8.0)に加え、速やかに混合し、混合物を室温で30分間穏やかに撹拌し、次に、氷酢酸の一定量を加えて結合反応を停止させた。次に、成分を分離するために、混合物をゲル濾過カラム(S100、Pharmacia)に加えた。各ピークの分画を収集し、SDS-PAGEのためにその試料を調製した。電気泳動の後、ゲルをBaI2及びクーマシーブリリアントブルーによって順番に染色し、PEG及びNRGを別々に検出した。
【0157】
BaI2染色したゲルについて図2で示すように、混合物はPEGモノマー、NRG-モノPEG、NRG-ジPEG及びNRG-ポリPEGを含む。混合物をS100ゲル濾過カラムに加えた後、成分はNRG-ポリPEG及びNRG-ジPEG(ピーク1)、NRG-モノPEG及びPEG(ピーク2)にきれいに分離された。
図3のクマシー染色ゲルは、ピーク1及びピーク2がPEGに結合したNRGを含み、ピーク3がNRGだけを含むことをさらに確認した。
【0158】
B、PEG結合NRGの活性の測定
MCF-7細胞を収集、計数、ペレット化し、DMEM(10%血清及び9μg/mlインスリンを含む)で5×104細胞/mlに再懸濁した。100μl細胞懸濁液を96穴プレートの各ウェルに加え、プレートを37℃で一晩インキュベートした。次に細胞をPBSで3回洗浄し、さらに24時間無血清DMEMで増殖させた。
ErbB2抗体H4(Zensun、抗ErbB2モノクローナル抗体)をコーティング緩衝液(50mM Na2CO3-NaHCO3、pH9.6)で6μg/mlに希釈し、96穴プレートに50μl/ウェルで加えた。プレートを4℃で一晩放置し、抗体でコーティングした。
【0159】
DMEMを飢餓させたMCF-7細胞から吸引し、DMEM中のNRG、NRG-モノPEG又はNRG-ジPEGの連続希釈液100μlを、各ウェルに別々に加えた。ブランクとして、DMEMを2つのウェルに加えた。プレートは37℃で20分間インキュベートした。細胞をPBSで1度洗浄した後、100μl/ウェルの溶解緩衝液(25ml溶液につき50mM Hepes、pH8.0、150mM NaCl、2mMオルトバナジウム酸ナトリウム、0.01%チメロサール、1%トリトンX-100及び1プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤)を加え、4℃で30分間溶解した。次にプレートを穏やかに振盪し、細胞を完全に溶解してプレートから取り出し、15000rpmで15分間遠心分離にかけた。
コーティング抗体を有するプレートを洗浄緩衝液(10mM PBS、pH7.4、0.05%ツイーン20)で5回洗浄してから、脱脂乳の5%洗浄緩衝液溶液200μl/ウェルを加えた。プレートを37℃で2時間インキュベートした後、洗浄緩衝液で再び3回洗浄した。
【0160】
90μlの溶解細胞溶液を培養プレートの各ウェルから引き抜き、コーティングしたプレート中の対応ウェルへ移した。37℃で1時間インキュベートした後、細胞溶解物を含むコーティングされたプレートを洗浄緩衝液で再び5回洗浄し、適当な濃度の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)の100μlにより、37℃で1時間処理した。プレートを洗浄緩衝液で再び5回洗浄した後、100μlの新たに調製したHRP基質溶液[50mMクエン酸、100mM Na2PO4、pH5.0、0.2mg/ml 3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、0.003% H2O2]を各ウェルに加えてから、プレートを37℃で10分間インキュベートした。最後に、50μlの2N H2SO4を各ウェルに加えて、HRP活性を破壊した。各ウェルの450nmでのOD値をマイクロプレートリーダー(BIORAD Model 550)で読むと、EC50値は、最大OD値の50%を達成したNRGの濃度であった。EC50値が低いほど、活性は高い。
NRG、NRG-モノPEG及びNRG-ジPEGのEC50値は、表5で示した。
【0161】
【表5】

表5から、NRG-モノPEGのEC50値はNRGのそれと同じであるが、NRG-ジPEGのEC50値は40%高いことを明らかに見ることができる。これは、NRG-モノPEGはインビトロでNRGと同じ活性を有するが、NRG-ジPEGの活性は40%低いことを意味する。
【0162】
(実施例7)
ニューレグリンの徐放は、ニューレグリン投与の副作用を減少させる
この実施例は、長期又は高用量投与と比較して、ニューレグリンの徐放は、ニューレグリン投与に付随する胃腸障害又は心外膜滲出液などの副作用を軽減することができることを示す。
NRG-1βを、それぞれ24匹の健康なアカゲザル(雄12匹雌12匹、体重約5〜7kg)からなる2群のサルに、シリンジポンプによって静脈内投与した。第I群には、14日間、NRG-1βを1μg/kg/時間の速度で1日12時間注入した。この群では、副作用は観察されなかった。第II群には、14日間、1μg/kg/時間の速度で1日24時間注入した。第II群では、サルの心臓で約3〜5mlの心外膜滲出液が観察された。
【0163】
2群の健康な個体に、1日につき同量のNRG-1βを10日間投与した。第I群の8個体には、10日間、NRG-1βを0.3μg/kg/時間の速度で1日4時間注入した。この群では、各個体は、10日の期間中に平均で約2回胃腸障害を経験した。6個体には、10日間、NRG-1βを0.6μg/kg/時間の速度で1日2時間注入した。第II群では、各個体は、10日の期間中に平均で約5回胃腸障害を経験した。
これらの結果は、ニューレグリンの徐放が、長期又は高用量のニューレグリン投与に付随する有害副作用を軽減することができることを示す。これらの結果は、短期又は低い日用量の静脈内又は皮下注入が、24時間ニューレグリン注入の副作用を軽減することができることを示唆する。
【0164】
(実施例8)
心筋梗塞ラットの左心室における徐放されたNRGによる遺伝子発現
この実施例では、心筋梗塞ラットにNRG-1βを注入し、これらのラットの左心室における遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって分析した。溶媒を注入した心筋梗塞ラットと比較して、NRGを注入したラットは異なる遺伝子発現パターンを有する。NRGの徐放の後、サイモシンβ様タンパク質のmRNAレベルは、3.10倍増加し;デフェンシンβ1のmRNAレベルは、2.87倍増加し;増殖関連タンパク質のmRNAレベルは、2.16倍増加し;サイモシンβ4、ラミニンγ1、ミオカルジン、PI3Kγ調節サブユニットのmRNAレベルは、ほとんど全て2倍になり、エラスチン及びPI3KγのmRNAレベルは前とほとんど同じであった。それは、ニューレグリンが心臓の様々なタンパク質の発現レベルを変化させることを示す。
【0165】
本発明の範囲は、実施例の記載に限定されない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の修正及び変更が当分野の技術者にとっては明らかになろう。したがって、本発明の範囲は、例として提示されている具体的実施例によってではなく、添付の請求項によって規定されるべきであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】NRGが筋肉内注射、静脈内注射及び静脈内ブドウ糖負荷試験注入によって注入された後の、ラットの左心室におけるAKT及びERKのリン酸化を経時的に示す図である。「P-AKT」、「P-ERK」及び「NRG」は、リン酸化されたAKT、リン酸化されたERK及びニューレグリンを意味する。「im」、「iv」及び「ivgtt」は、それぞれ筋肉内注射、静脈内注射及び静脈内ブドウ糖負荷試験を意味する。
【図2】PEGを検出するためにBaI2によって染色したゲルを示す図である。図では、「混合物」はそれらの反応後の、PEG及びNRGの混合物の溶液を意味する。「M」、「ピーク1」、「ピーク2」及び「ピーク3」は、タンパク質マーカー並びにS100カラムからの混合液の溶出ピーク分画1、2及び3を表す。「NRG-モノ-PEG」、「NRG-ジ-PEG」及び「NRG-ポリ-PEG」は、それぞれ1つのPEG、2つのPEG及び複数(少なくとも3つ)のPEGに結合したNRGを意味する。
【図3】NRGタンパク質を検出するためにクマシー染色したゲルを示す図である。略記号は、図2の場合と同じである。Mレーンでは、各バンド(下から上へ)の分子量は、それぞれ14.4kD、20.1kD、31.0kD、43.0kD、66.2kD及び97.4kDである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項2】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が心不全である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
心臓でAKTシグナル伝達経路を活性化する方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項15】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化も誘導する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項14記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項14記載の方法。
【請求項25】
心臓でERKシグナル伝達経路を活性化する方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項26】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化も誘導する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項25記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項25記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物のEF値を高める方法であって、哺乳動物へのNRGの徐放を含む、前記方法。
【請求項37】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項36記載の方法。
【請求項46】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項36記載の方法。
【請求項47】
哺乳動物のFS値を高める方法であって、哺乳動物へのNRGの徐放を含む、前記方法。
【請求項48】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項47記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項47記載の方法。
【請求項52】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項47記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項47記載の方法。
【請求項54】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項47記載の方法。
【請求項57】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項47記載の方法。
【請求項58】
心肥大を予防する方法であって、哺乳動物への一定低用量NRGの不断の徐放を含む、前記方法。
【請求項59】
前記哺乳動物への一定低用量ニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記哺乳動物への一定低用量ニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項58記載の方法。
【請求項61】
前記哺乳動物への一定低用量NRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項58記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳動物への一定低用量NRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項58記載の方法。
【請求項63】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項58記載の方法。
【請求項64】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項58記載の方法。
【請求項65】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項64記載の方法。
【請求項67】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項58記載の方法。
【請求項68】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項58記載の方法。
【請求項69】
心筋細胞の増殖及び分化を引き起こす方法であって、哺乳動物に一定低用量ニューレグリンを徐放し、それにより心細胞でMAPキナーゼ経路を活性化し、かつ心筋細胞の増殖及び/又は分化を引き起こすことを含む、前記方法。
【請求項70】
心筋細胞の増殖及び分化を引き起こす方法であって、哺乳動物に一定低用量ニューレグリンを徐放し、それにより心細胞でERK経路を活性化し、かつ心筋細胞の増殖及び分化を引き起こすことを含む、前記方法。
【請求項71】
心筋細胞の増殖及び分化を引き起こす方法であって、哺乳動物に一定低用量ニューレグリンを徐放し、それにより心細胞でAKT経路を活性化し、かつ心筋細胞の増殖及び分化を引き起こすことを含む、前記方法。
【請求項72】
左心室の内径を低減させるための方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項73】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でERKシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が心細胞でAKTシグナル伝達経路の持続的活性化を誘導する、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項72記載の方法。
【請求項77】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が心肥大を予防する、請求項72記載の方法。
【請求項78】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放が浸透ポンプ又はシリンジポンプの使用によって達成される、請求項72記載の方法。
【請求項79】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がポリマーをニューレグリンに結合することによって達成される、請求項72記載の方法。
【請求項80】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記ポリマーがポリ(エチレングリコール)誘導体である、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がリポソームの使用によって達成される、請求項72記載の方法。
【請求項83】
前記哺乳動物へのニューレグリンの徐放がマイクロスフェアの使用によって達成される、請求項72記載の方法。
【請求項84】
前記疾患又は障害が心血管疾患、癌、神経系疾患、筋疾患、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ、肢帯)、多発性硬化症、脊髄損傷、卒中、目及び耳の疾患、糖尿病、統合失調症及びアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項85】
前記ニューレグリンがNRG1、NRG2、NRG3及びNRG4を含む群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項86】
前記ニューレグリンが上皮成長因子様(EGF様)ドメインを含み、前記EGF様ドメインがニューレグリン1遺伝子によってコードされる、請求項1記載の方法。
【請求項87】
ニューレグリンの前記徐放が1日に1分間から24時間のニューレグリンの連続的注射又は注入を含む、請求項1記載の方法。
【請求項88】
ニューレグリンの前記徐放が1日に4時間以上のニューレグリンの連続的静脈内注入又は注射を含む、請求項1記載の方法。
【請求項89】
ニューレグリンの前記徐放が1日に6時間以上のニューレグリンの連続的皮下注入又は注射を含む、請求項1記載の方法。
【請求項90】
哺乳動物の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための徐放組成物であって、浸透ポンプ及びニューレグリンの治療有効量を含む、前記組成物。
【請求項91】
哺乳動物の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための徐放組成物であって、PEG及びニューレグリンの治療有効量を含む、前記組成物。
【請求項92】
哺乳動物の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための徐放組成物であって、リポソーム及びニューレグリンの治療有効量を含む、前記組成物。
【請求項93】
哺乳動物の疾患又は障害を予防、治療又は遅延させるための徐放組成物であって、マイクロスフェア及びニューレグリンの治療有効量を含む、前記組成物。
【請求項94】
哺乳動物の心不全を予防、治療又は遅延させるための方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項95】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のEF値を高める、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記哺乳動物のEF値が約20%超、約30%超、約40%超、約50%超及び約60%超からなる群から選択される割合で高められる、請求項95記載の方法。
【請求項97】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が前記哺乳動物のFS値を高める、請求項94記載の方法。
【請求項98】
前記哺乳動物のFS値が約20%超、約30%超、約40%超、約50%超及び約60%超からなる群から選択される割合で高められる、請求項97記載の方法。
【請求項99】
前記哺乳動物へのNRGの徐放が左心室の内径(LVEDD又はLVESD)を低減させる、請求項94記載の方法。
【請求項100】
前記LVEDD値が約2%超、約5%超、約10%超及び約15%超からなる群から選択される割合で低減される、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記LVESD値が約2%超、約5%超、約10%超、約15%超及び約20%超からなる群から選択される割合で低減される、請求項99記載の方法。
【請求項102】
ニューレグリン治療を受ける哺乳動物の副作用を低減させるための方法であって、哺乳動物へのニューレグリンの徐放を含む、前記方法。
【請求項103】
前記副作用が胃腸障害又は心外膜滲出液である、請求項102記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−522209(P2009−522209A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547836(P2008−547836)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/CN2006/003694
【国際公開番号】WO2007/076701
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(504274712)ゼンサン (シャンハイ) サイエンス アンド テクノロジー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】