説明

心疾患の新規治療

心不全およびそれに関連する疾患の治療のための新規な治療法が提供される。特に、心筋細胞の生存能力を向上させ、心筋梗塞を防止するためにビンカアルカロイドが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全およびそれに関連する疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は、最も広まっている心臓血管系疾患であり、それによって多くの患者が入院し、また、その死亡率は非常に高い。米国国立衛生研究所(NIH)の推定によると、480万人のアメリカ人がうっ血性心不全に罹患しており、それは「新たな流行病」と呼ばれている。その数は2007年までに2倍になると推定されている。毎年、平均55万例が新たに、しばしば致命的な病状であると診断されている。単純な定義では、心不全は、心臓のポンプ能の障害(左心室収縮機能不全)によって心臓が正常に機能しない慢性の病気である。しかしながら、この診断が本当に表すものは、心膜、心筋、心内膜、または大きな血管のいずれかの心臓の異常から実質的に発生し得る複雑な臨床的症候群である。しかし心不全患者の大半は、左心室機能障害による症状を有している。心臓の左心室への障害は、心室からの血液の駆出能を制限し、その結果、心筋が肥大し、弱くなる。これによって、もはや房を介して血液をくみ上げるために効果的に圧縮することができなくなる。
【0003】
呼吸困難(呼吸窮迫)、喘息、足首の浮腫、および疲労は、患者が日常生活の正常な活動を行う能力に影響を与えるが、それらが心不全の臨床的症状発現の特徴である。顕著に、心不全の臨床像が悪くなると、頻繁な通院、複数回の入院、結果として副作用を伴う複数の薬物療法、活動の制限など、患者の生活を支配し、心肺系に重大な機能的能力障害を持つ患者のクオリティ・オブ・ライフに影響を与えている。末期心不全の予後は悪い。数十年の研究にも関わらず、機械的な補助器や総合的な人工心臓のいずれも、広く使用されてはいない。こうした形態の治療にはいくつかの重大な技術的制限があるためである。
【0004】
急性心不全か、慢性心不全かのいずれにかかわらず、新たな症例の比率が急速に増加していることに鑑みれば、治療は主に、心臓の性能を向上させるための併用治療とともに、基礎となる原因に照準をあてる。治療的処置としては、ベータ遮断薬、利尿剤、ジゴキシン、抗不整脈薬、抗凝血薬、埋め込み式除細動器、および心室ペーシングなど多くの医薬品を用いた療法、左心室補助器による治療、ならびに心臓移植(ドナー心臓の不足により可能性は限られている)が含まれる。
【0005】
近年以来、心疾患の幹細胞治療を用いて、冠状動脈性心疾患、うっ血性心不全、および心筋症で苦しむ患者のクオリティー・オブ・ライフを向上させ、重篤な狭心症(胸痛)および息切れなどの症状を緩和している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、心不全を治療するためのシステムおよび方法を提供する。それは、治療的に有効な薬剤としてのビンカアルカロイド、またはその機能的アナログもしくは等価物を、心臓機能の向上または維持と合わせて、心筋細胞の再活性化および/または増殖を誘発するように、心臓へ直接的または間接的に送達することを含む。ビンカアルカロイドの等価物としては、チューブリンダイマー結合などの、ビンカアルカロイドと類似の生物学的特性を共有するプロドラッグ類、代謝物質類、ならびに化合物類があげられる。例えば、Lobertら、Biochemistry 35 (1996)、6806-6814を参照されたい。
【0007】
本発明は、心不全に罹患しているもしくは罹患する危険性のある患者において、症状(上掲参照)を軽減する−阻害することも含む−ため、および延命するための薬剤および関連する組成物を提供する。本発明の薬剤および組成物は、心不全に対する予防的、治療的、緩和的、サポート的、および/または回復的方法での「治療」のために用いられる。
【0008】
本発明は、関連する組成物および方法を含む、心筋の性能を向上させるためのチューブリン結合性薬剤を用いる、システムを提供する。好ましい薬剤としては、ビンカアルカロイドがあげられ、好ましくは、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびそれらの薬学的に許容可能な塩および誘導体からなる群より選択される。
【0009】
本発明はまた、好ましくはビンカアルカロイドなどのチューブリン結合性薬剤と、心臓機能を向上させるための他の治療手段、例えば、幹細胞、心筋細胞、移殖心臓、または埋込み式電気除細動器(ICD)などの移殖物との組み合わせ製剤および併用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1−4】図1〜4は、様々なビンカアルカロイド(図1〜3)およびドキソルビシン(図4)がインビトロで分化した心筋細胞の生存能力および生存率に及ぼす影響を示す図である。実施例1に記載したように、EBが生じ、心臓細胞が分化した。14日目に、図に示すようにEBをビンカアルカロイドおよびドキソルビシンで処理した。処理前ならびに処理の48時間後および72時間後に顕微鏡写真を撮影した。実施例2および3に示すように、心臓細胞を表す蛍光領域を測定および計算した。Cor.Atは、インビトロで分化した心筋細胞を表し、MEFはマウス胚線維芽細胞を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は概して、心不全、心筋梗塞または心筋症などの心疾患の治療のためのビンカアルカロイドおよびそれと等価なチューブリン結合性薬剤に関する。本発明は、微小管を妨害することによって細胞成長を阻止し、そのため癌治療に用いられている、ある種の有糸分裂抑制剤であるビンカアルカロイドが心筋細胞の生存能力および生存率を実質的に向上させるという驚くべき観察に基づいている;実施例2および図1〜3を参照されたい。
【0012】
ビンカアルカロイドの最も有名なメンバーは、ビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンブラスチンであり、それらは、本発明において好ましく用いられる。しかしながら、本発明は、ビンカアルカロイドの、生物学的に活性のある誘導体または機能的アナログまで、例えば、ビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンブラスチンのアナログまたは誘導体にまで及ぶことが理解される。ビンカアルカロイドの「アナログ」および「誘導体」と言う語は、ビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンブラスチンのような生物学的機能の一部もしくは全て、特に、心筋細胞の生存能力を向上させる能力を持つ分子を意味する。この生物学的機能は添付の実施例によって試験することができる。化学的誘導体およびアナログの調製方法は当業者にとって公知であり、例えば、Beilstein、Handbook of Organic Chemistry、Springer edition New York Inc、175 Fifth Avenue、New York、N.Y. 10010 U.S.A.やOrganic Synthesis、Wiley、New York、USA.に記載がある。ビンカアルカロイドの誘導体は当業者にとって公知であり、文献に記載がある。例えば、国際出願WO2005/055939およびWO2008/033930は、ビンカアルカロイドの誘導体ならびにそれらの調製方法を開示しており、国際出願WO2007/098091は、ビンカアルカロイドN−オキシドアナログを記載している。
【0013】
本明細書において用いられている用語「治療」は、心不全の治療的治療、または障害の発症前に施される防止的もしくは予防的治療を含むことを意図している。
【0014】
ビンカアルカロイドと等価であり、したがって、本発明の教示において有用であり得る更なる薬剤としては、限定されないが、コルヒチン、ステガナシン、ポドフィロトキシン、ノコダゾール、コンブレタスタチン、キュラシンA、ドラスタチン、2−メトキシエストラジオール、およびジヒドロキシ−ペンタメトキシフラボン、ならびにそれらのいずれかの誘導体があげられる。既知のチューブリン結合性薬剤の誘導体としては、例えば、(ポリ)フルオロベンゼン、フルオロピリジン、またはフルオロニトロベンゼン部分(moiety)が中心構造に組み込まれるか添加されたもの、が含まれる。そのための方法が、国際出願WO00/035865に開示されている。
【0015】
本発明において、心疾患の治療のために使用される、ビンカアルカロイドとそれと等価な推定の薬物、さらには、物質の心臓毒性を、下記の方法によって同定することができる。その方法は:
(a)インビトロで分化した心筋細胞を含む試験サンプルを、心筋細胞の分化前、分化中、または分化後に、心疾患に罹患した細胞、組織または臓器の細胞の表現型に実質的に対応する、心筋細胞のあらかじめ定義された疾患表現型を誘発する化合物の存在下で、試験物質と接触させるステップ;
(b)前記試験サンプル中の前記細胞の前記表現型の応答性の変化を判定するステップを含み、
(i)前記疾患表現型の発症または進行を阻止する、または遅らせる応答性変化は、有用な薬物の指標となり、;そして
(ii)前記疾患表現型の発症または進行を高める応答性変化は、前記化合物の毒性の指標となる。
【0016】
本発明の方法は、国際出願WO2005/108598に記載の原理などによって行うことができる。この開示の全ての内容を引用によって本明細書中に援用する。それは概して、インビトロで幹細胞から分化し、治療すべき疾患に似た表現型の表示を誘発した細胞中の活性のアッセイに基づいて、推定の薬物の治療的または毒性の効果を判定するためのアッセイシステムを開示している。好ましくは、前記疾患は、心不全または心筋症であり、前記表現型は、心筋細胞の生存である。実施例3に記載するように、疾患表現型を誘発する化合物として、ドキソルビシンなどの、既知の心臓毒性可能性を示す化合物を用いてもよい。
【0017】
試験物質に関して、所望の任意の物質を用いてよい。例えば、国際出願WO2005/108598で言及されている試験化合物および物質を参照されたい。しかしながら、ビンカアルカロイドおよび他のチューブリン結合性薬剤に由来する物質を用いることが有利である。なぜなら、それらは、実施例において例示したビンカアルカロイドと類似の効果を発揮する可能性が大きいと考えられるからである。したがって、上記ビンカアルカロイドを試験し、必要であれば、心臓作用性の特性について改善すればよい。
【0018】
本明細書において用いられている「心臓作用性」は、心臓の機能に影響を及ぼす薬物または他の物質に関する。本発明の目的において、心臓作用性薬剤は、実施例2および/または3に記載のアッセイにおいて、ここに例示した3つのビンカアルカロイドのいずれか1つと実質的に同じまたは類似の影響を心筋細胞に及ぼす物質である。したがって、ビンカアルカロイドの誘導体、および、例えばビンクリスチンと等価な他のチューブリン結合性薬剤も心臓作用性であると想定される。
【0019】
このような状況で、本発明はまた、上で定義したようなチューブリン結合性薬剤と、および幹細胞またはインビトロで分化した心筋細とを含有し、さらに分化を促進する化合物、培養培地、および/または試験物質を任意に含有する、キットおよび組成物に関する。当該キットおよび組成物の適切な補足的成分は、例えば、国際出願WO2005/108598およびWO2005/005621に開示されている。本発明のキットは、心臓作用性の薬物候補、および所与の化合物の毒性の同定および検討に好ましく用いることができる。上掲文献も参照されたい。
【0020】
インビボ投与した後、物質を代謝させ、排泄または代謝によって削除されて、1以上の活性もしくは非活性の代謝物質となるようにする(Meyer, J. Pharmacokinet. Biopharm. 24 (1996), 449-459)。したがって、本発明の方法で同定および取得した実際のビンカアルカロイドまたは薬物を使用するよりむしろ、プロドラッグとしての対応する製剤を使用することにしてもよい。それは、患者の体内において患者の代謝によって活性形態に変換される。プロドラッグを適用する際にとればよい予防措置および薬物については、文献に記載がある。例えば、Ozama, J. Toxicol. Sci. 21 (1996), 323-329を参照されたい。
【0021】
治療に適用するために、治療的に有効な量の薬剤は通常、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤されることになる。本明細書において用いられている用語「治療的に有効な量」は、少なくとも部分的に望ましい効果、例えば、心臓組織の再生および/または温存を得るために必要な量である。そのような量は、治療されている特定の障害、障害の重篤度、年齢、体調、身長、体重といった個々の対象の特徴、その他併用している療法に依存することになり、担当の医師または獣医師によって決められるであろう。好ましくは、薬剤は局所投与される。そうした投与は、例えば、1以上の心膜内注射もしくは移植物によってその部位に直接的に、または送達システムを用いて達成することができる。別法として、もし心臓組織内の薬剤の量を増加させるならば、望ましい効果を得るために全身性の注射などの他の投与形態を用いてもよい。
【0022】
心膜内および静脈内投与用組成物をはじめとした医薬組成物を調製するための方法および薬学的担体は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (2000) by the University of Sciences in Philadelphia、ISBN 0-683-306472等の教科書に記載されているように、当該技術分野において公知である。好適な薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤としては、標準的な溶液、食塩水、分散媒、フィラー、水溶液、抗菌および抗黴剤、ならびに吸収促進剤があげられる。活性成分と不適合性でない限り、あらゆる従来の媒体もしくは薬剤が、本発明の医薬組成物において使用可能である。治癒を促進し、または炎症を阻害する能力を有している心臓作用性化合物などの補助活性成分を組成物に組み込んでもよい。例えば、医薬組成物は、限定されないが、インスリン、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、ベータセルリン、形質転換成長因子アルファもしくは形質転換成長因子ベータ等の1以上の他のサイトカインをさらに含んでもよい。一実施形態において、医薬組成物は、治療的に有効な量の他の化学療法用化合物、特に癌治療において用いられるものを含んでいない。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態において、薬剤は、幹細胞治療および細胞もしくは臓器の移植に用いられる。実施例2から明らかなように、ビンカアルカロイドは、インビトロで分化した心筋細胞の生存性を実質的に向上させている。心筋細胞の生存能力および生存性はまた、胎児性もしくは幹細胞由来心筋細胞の移植ならびに心臓移植の成功にとって重要な特徴である。さらに、心筋細胞の生存能力は、心臓手術、例えば、心臓組織にストレスを与え、傷つけ得るステントおよび心臓ペースメーカー埋め込みにおいて重要である。したがって、本発明はまた、ビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤と、幹細胞、心筋細胞、移殖心臓、ステント、心臓ペースメーカー、または埋込み式電気除細動器(ICD)から選択される移植物との組み合わせ製剤および併用にも関する。
【0024】
このような状況で、本発明はまた、前記ビンカアルカロイドまたは薬剤を含まない培養培地と比較して、細胞、組織および臓器の生存能力および生存性をそれぞれ維持もしくは向上させるのに十分な量のビンカアルカロイドまたはそれと等価な薬剤を含有する細胞、組織および臓器培養培地に関する。好ましくは、当該細胞、組織および臓器はそれぞれ、幹細胞または心筋細胞、心臓組織および心臓である。
【0025】
医薬組成物は、経口、直腸、経皮、皮膚、眼、鼻、肺または非経口投与にとって好適な形態にすればよい。経口投与に好適な医薬製剤が好ましい。そしてそれは、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、粒剤、飲用溶液、リポソーム剤、ナノ粒子剤、ナノカプセル剤、マイクロカプセル剤、マイクロ錠剤、ペレット剤または粉末剤の形態でよい。また、カプセルもしくはサシェに封入された粒剤、カプセルもしくはサシェに封入されたマイクロ錠剤、カプセルもしくはサシェに封入されたペレット剤、カプセルもしくはサシェに封入されたナノ粒子剤、またはカプセルもしくはサシェに封入された粉末の形態でもよい。薬物は、ナノ粒子、ペレットまたはマイクロ錠剤の形態で存在することが好ましく、それらは任意にサシェまたはカプセルに封入されていてもよい。
【0026】
好ましくは、すべての固体経口剤型は、腸溶コーティング錠が施されていてもよい。それは、例えば、錠剤、マイクロ錠剤、ペレット等に施されていればよいが、それらを含有するカプセル剤に施されていてもよい。
【0027】
注射(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内)による非経口投与の場合、製剤はこれに最適な形態で存在する。注射に適した全ての通例の液体担体を使用することができる。Remington(2000)の上掲文献も参照されたい。例えば、ビンカアルカロイド塩の安定な注射可能医薬組成物(例えば、実施例2および図1〜3も参照されたい)は、溶液1mlあたり、約0.2〜約2mgの1以上の薬学的に許容可能なビンカアルカロイド塩;約0.1〜約1.0mgの薬学的に許容可能なエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)塩;水溶液のpHを約3.0〜約5.5に維持するのに必要な量の酢酸塩緩衝剤;および約1.5〜約2.5mgのメチルパラベン、プロピルパラベンおよびその混合物から選択される保存剤を含む水溶液の形態とすることができる。投与単位当たりの量で1〜500mg、好ましくは10〜300mg、そして最も好ましくは10〜200mgの薬剤の量に相当する、および/または、それと等価であるビンカアルカロイドまたは誘導体が、薬学的組成物中に存在することが好ましい。特に当該医薬組成物は、約0.1〜10mg/平方メートル(m)、好ましくは、0.5〜5mg/m、より好ましくは約1.0〜2.5/m、そして最も好ましくは約1.4mg/mのビンクリスチンを静脈内投与(最大投与量2.0mg)と同等の投与量で投与するよう設計されていることが好ましい。この投与量で投与した結果、投与量―強度が0.1〜1.0mg/m/週、好ましくは0.4〜0.7mg/m/週となることが予測される。血液学的毒性が存在する場合、既述したように投与量を減らすことができる。例えば、McKelveyら、Cancer 38(1976)、1484-1493を参照されたい。しかしながら、最初のクールでは最高量で投与してよい。軽度の神経毒性(すなわち、感覚異常もしくは腱反射の低下)が存在する場合、ビンカアルカロイドの投与量を50%に減少させてもよい。この状況において、本発明の範囲内で行った実験によれば、ビンカアルカロイドは、1E−6および1E−5mg/mlの量で既にそれらの心臓作用性の効果を発揮し、基準細胞タイプがまだ実質的に効果を受けない濃度で最大活性に達する。よって、医師は、チューブリン構造に対する既知の効果による薬剤の副作用を避け、あるいは最小限にしながら、かなり広範囲な濃度で、ビンカアルカロイドおよびそれと等価なチューブリン結合性薬剤を、心疾患の治療において投与および使用することができる。
【0028】
本発明で想定される投与には、薬剤を送達するのに好適なあらゆる製剤の投与が含まれる。例えば、等張水溶液、懸濁液、ゲル、および薬剤を含浸させたポリマーなど、または、薬剤の局所投与の場合、例えば、水溶性クリーム、軟膏、ゲル、ローション、スプレー、マイクロスフェア、リポソーム、創傷包帯、および薬剤を含浸させた全身ポリマー包帯もしくは縫合糸などによる投与が含まれる。
【0029】
本発明の薬剤は、液体、固体、半固体、マトリクス、粉末および/または粒子を含む賦形剤を含み、結果として生物吸収性、生物分解性または安定性を有する、あらゆる好適な方法で好適な手段を用いて送達することができる。超音速で組織に汲み上げられる薬用粉末、埋込バイオチップ、およびナノ分子輸送系統を含むエマージングテクノロジーも使用することができる。結果として、賦形剤は、薬剤を用いて、もしくは用いずに、いずれかの好適な手段を用いて、侵襲性がないか、もしくは侵襲を最少にした方法で、カテーテル、膜、レーザーもしくは他の手術器具を用いて、所与の部位に送達され得る。好適な送達経路としては、限定されないが、筋肉内、皮下、経皮、経口、経皮吸収、経鼻、経眼、心膜内、心筋への直接注射、左心室腔を介して経皮的に、または心外膜を介して外科手術的に、ならびに輸液で埋込み式および/または外部ポンプを用いて心膜へ送達されるものがある。
【0030】
本発明の医薬組成物および治療方法は、機械装置、電気生理学的治療形態、および薬理学的薬剤を含む、既存の心不全治療方法を補足するものである。ビンカアルカロイドを使用して、心筋を再活性化および修復することができるので、全てではないが大部分の患者、顕性の不全を持つ患者に使用でき、同様に左心機能不全をもつ無症状の患者に使用できると考えられる。当該システムは、侵襲性を最小限にした使いやすい手技と組み合わせることができる。この治療の結果、心筋細胞が再活性化しているので、それは標準的なケアとなると考えられる。
【0031】
さらに、本発明について行われる実験で得られた結果に鑑みれば、本発明はまた、好ましくはドキソルビシンなどのDNAインターカレーション化合物から選択される、抗腫瘍薬の心筋細胞ならびに一般的には心臓組織に対する副作用を中性化する/中和する上記チューブリン結合性薬剤に関する。実施例3を参照されたい。したがって、本発明は一般的に、チューブリン結合性薬剤、特に、心筋細胞の生存能力を増加させるための組成物の調製のためのビンカアルカロイドおよびそれらの誘導体の使用、および心疾患に罹患した対象における心筋細胞、心臓組織または心臓移植の生存能力を増加させる方法に関する。前記方法は、治療的に有効な量のビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0032】
これらおよびその他の態様が本発明の明細書および実施例に開示され、包含されている。本発明において採用されるべき材料、方法、使用および化合物のいずれかに関するさらに別の文献は、公開されているライブラリおよびデータベースから、例えば、電子機器を用いて検索することができる。例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)および/または国立衛生研究所の国立医学図書館(the National Library of Medicine at the National Institutes of Health)によって管理されている公開のデータベース「メドライン("Medline")」を使用してもよい。欧州分子生物学研究所(the European Molecular Biology Laboratory)(EMBL)の一部である欧州バイオインフォマティクス研究所(the European Bioinformatics Institute)(EBI)のもののような、さらに別のデータベースおよびウェブアドレスが当業者に公知であり、インターネットの検索エンジンを用いて取得することが可能である。後向き研究および現在の認識の研究に有用なバイオテクノロジーの特許情報および関連する特許情報の調査の概観がBerks、TIBTECH 12 (1994)、352-364に提供されている。
【0033】
本明細書の本文中にいくつかの文献を援用する。全ての引用文献(本願全体において引用している参照文献、発行されている特許、公開特許出願および製造元の仕様書、説明書など)の全ての内容を引用によってここに援用する。しかしながら、引用したあらゆる文献が実際に本発明に対する従来技術であると認めるものではない。
【0034】
上記開示は一般的に、本発明を記載している。以下の特別の実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。それらは、説明の目的のためだけに提供されているものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、いかなる点でも本発明の範囲をさらに限定するものであると解釈すべきではない。ここで用いたような従来の方法の詳細な説明は、引用文献中に見出すことができる。「診断と治療のメルクマニュアル」第17版(“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy” Seventeenth Ed. ed by Beers and Berkow (Merck & Co., Inc. 2003)も参照されたい。
【0036】
本発明の実施には、他に記載がなければ、当該技術分野である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技法を用いる。
【0037】
幹細胞技術に関する一般的な技法に関する更なる詳細については、実施者は、標準的なテキストやレヴュー、例えば、テラトカルシノーマと胚性幹細胞:実践的アプローチ(Teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach)(E. J. Robertson, ed., IRL Press Ltd. 1987); マウス発生における技法への手引き(Guide to Techniques in Mouse Development)(P. M. Wassermanら, eds., Academic Press 1993);インビトロでの胚性幹細胞分化(Wiles, Meth. Enzymol. 225 (1993), 900);胚性幹細胞の特性と使用(Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy)(Rathjenら、Reprod. Fertil. Dev. 10 (1998), 31)を参照することができる。幹細胞の分化については、Robertson、Meth。 Cell Biol。 75 (1997)、173;および Pedersen, Reprod. Fertil. Dev. 10 (1998), 31を参照することができる。上で既述した幹細胞のソースの他に、さらなる引例が提供されている。EvansとKaufman, Nature 292 (1981), 154-156; Handyside ら、Roux’s Arch. Dev. Biol., 196 (1987), 185-190; Flechonら、J. Reprod. Fertil. Abstract Series 6 (1990), 25; Doetschmanら、Dev. Biol. 127 (1988), 224-227; Evansら、Theriogenology 33 (1990), 125-128; Notarianniら、J. Reprod. Fertil. Suppl., 43 (1991), 255-260; Gilesら、Biol. Reprod. 44 (Suppl. 1) (1991), 57; Strelchenkoら、Theriogenology 35 (1991), 274; Sukoyanら、Mol. Reprod. Dev. 93 (1992), 418-431; Iannacconeら、Dev. Biol. 163 (1994), 288-292を参照されたい。
【0038】
分子遺伝子学および遺伝子工学の方法は、現行版の分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(Sambrookら、(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press); DNAクローニングI、II巻(DNA Cloning, Volumes I and II)(D. N. Glover ed., 1985);オリゴヌクレオチドの合成(Oligonucleotide Synthesis)(M. J. Gait ed., 1984);核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); 転写と翻訳(Transcription And Translation)(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);動物細胞の培養(Culture Of Animal Cells)(R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); 哺乳動物細胞への遺伝子伝達ベクター(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)(Miller & Calos編);分子生物学の現在のプロトコルおよび分子生物学のショートプロトコル第三編(Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Edition)(F. M. Ausubelら編); および組換えDNA方法(R. Wu ed., Academic Press)、哺乳動物細胞への遺伝子伝達ベクター(Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells)(J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); 酵素学の方法第154巻および155巻(Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155)(Wuら編); 固定化細胞および酵素(Immobilized Cells And Enzymes)(IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);論文、酵素学における方法(the treatise, Methods In Enzymology)(Academic Press, Inc., N.Y.);細胞分子生物学における免疫化学的方法(Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology)(Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);実験免疫学のハンドブック第I〜IV巻(Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV)(D. M. WeirとC. C. Blackwell編、1986)に記載がある。この開示において言及されている試薬、クローニングベクター、およびキットは、BioRad、Stratagene、InvitrogenおよびClontechから市販されているものを利用可能である。細胞培養および培地回収のための一般的な技法は、大規模な哺乳動物細胞の培養(Large Scale Mammalian Cell Culture)(Huら、Curr. Opin. Biotechnol. 8 (1997)、148);無血清培地(Serum-free Media)(Kitano, Biotechnology 17 (1991), 73); 大規模な哺乳動物細胞の培養(Large Scale Mammalian Cell Culture)(Curr. Opin. Biotechnol. 2 (1991), 375) ;および哺乳動物の懸濁培養(Suspension Culture of Mammalian Cells)(Birchら、Bioprocess Technol. 19 (1990)、251)に概説されている。培地およびそれらが培養環境に及ぼす影響についての他の観察がMarshall McLuhanとFred Allenによって成されている。
【0039】
実施例1:心臓作用性化合物の同定
高密度細胞懸濁液からの「胚様体」(EB)の発生および心臓細胞の分化は、基本的には、国際出願WO2005/005621の実施例1に記載のように行った。その開示の全ての内容を引用によって本明細書中に援用する。要約すれば、マウス胚性幹細胞(ES細胞、クローンD3、ATCC CRL 1934)を、緑色蛍光タンパク質の遺伝子を含有するpαMHC−GFPベクターを用いて、心臓α−ミオシン重鎖(α−MHC)プロモーターの制御下で、安定にトランスフェクトした。このベクターを得るために、マウスα−ミオシン重鎖遺伝子(Genbank 471441)のプロモーター領域を含有する5.5kbのフラグメントをpEGFP−1ベクター(Clontech Laboratories)のポリリンカー中に導入した。
【0040】
ES細胞を、10cmのペトリ皿(Falcon、Becton Dickinson)上で、15%FCS(Gibco、Invitrogen、バッチコントロールされている)および1×10U/mlのLIF(Chemicon)を添加したDMEM(Gibco、Invitrogen)中、フィーダー細胞(標準的なプロトコルにしたがって作製した不活性化マウス胚性線維芽細胞;国際出願WO2005/005621の明細書を参照されたい)の層上で密度1.4×10で培養した。細胞を37℃、7%CO、湿度95%でインキュベートした。トリプシン処理を行って、単一の細胞懸濁液とし、フィーダー細胞をコーティングした新鮮な10cm皿上に1.4×10の密度で播種することによって2日に1回分割した。
【0041】
1以上のペトリ皿のES細胞をトリプシン処理して、単一の細胞懸濁液を取得し、遠心分離によって回収した(800g、5分間)。細胞を、2×10個/mlの密度となるように、20%(v/v)のウシ胎児血清(FBS、Invitrogen、バッチコントロールされている)を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、Invitrogen)中に再懸濁させた。
【0042】
EBを作製するために、ES細胞を懸濁液中で、密度2×10個/mlで、6cmペトリ皿(Greiner、Darmstadt、Germany)中、20%FCS(Invitrogen、Karlsruhe、Germany)を添加した4mlのIMDM中で、37℃、5%CO、湿度95%で、振動台(ロッキングテーブル、GFL 3006, GFL, Braunschweig, Germany)上で50rpm、6時間回転させて培養した。6時間後、懸濁液を、20%FCSを含むIMDMを用いて1:10に希釈し、更に12〜16時間、好ましくは、合計で18時間、T25細胞培養フラスコ(Falcon, Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)中で、振動台で37℃、5%CO、湿度95%でインキュベートした。次の日、EB懸濁液をCOPASセレクト粒子ソーター(Union Biometrica, Geel, Belgium)に移し、製造元の説明書にしたがって、単一のEBを96ウェルU字形マイクロタイタープレート(Greiner)のウェルに分類した。1ウェルにつき200μlのIMDM中20%FCSでEBを培養し、37℃、5%CO、湿度95%でインキュベートした。5日目および10日目、培地を新鮮な培地と交換した。14日目、心臓細胞を表す蛍光領域を、10倍のAchroplan対物レンズ、GFP用HQフィルターセット(AF Analysentechnik、Tubingen、Germany)およびSensicam 12ビット冷却撮像システム(PCO Imaging、Kelheim、Germany)を備えたZeiss Axiovert 200Mを用いた蛍光顕微鏡検査によって検出した。さらに、あるいは別法として、低密度の細胞懸濁液からEBの作製、引き続いて心臓細胞の分化を、国際出願WO2005/005621の実施例2およびプロトコル2に記載のようにして行った。
【0043】
国際出願WO2005/005621の実施例3および4に記載のようにして試験化合物のアッセイを行った。対照化合物を、インビトロ胚毒性試験の妥当性の検討のために、欧州代替法評価センター(European Center for the Validation of Alternative Methods)(ECVAM)(Brown、NA 2002; ATLA 30、177−198参照)によって推奨されている化合物リストから選択した。化合物は、EBおよび心筋細胞のそれぞれにおいて分化および/または生存性に有意な変化が認められれば、心臓作用性または胚毒性として判定することができる(スチューデントのt検定)。
【0044】
実施例2:ビンカアルカロイド、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンはインビトロで分化した心筋細胞の生存性を上昇させる
実施例1に記載のようにEBを作製した。5日目、5個のEBを、24ウェル組織培養プレート(Falcon、Becton Dickinson) の各ウェルに、20%FCSを含む2mlのIMDMとなるように移し、37℃、5%CO、湿度95%でインキュベートした。10日目に、培地の半分を新鮮な培地と交換した。14日目に、蛍光顕微鏡検査によってEBが心臓分化しているかどうかを調べ、蛍光領域を持つEBの蛍光顕微鏡写真を、10倍のAchroplan対物レンズ、GFP用HQフィルターセット(AF Analysentechnik)およびSensicam 12ビット冷却撮像システム(PCO Imaging)を備えたZeiss Axiovert 200Mを用いて撮影した。
【0045】
図1〜3に示すように濃度を変えて試験化合物を添加した(溶液:DMSO、DMSOの最終濃度:0.1%)、0.1%のDMSOを陰性対照として使用した。EBを37℃、5%CO、湿度95%で、更に3日インキュベートした。化合物を用いたインキュベーションの48時間後および72時間後、蛍光顕微写真を撮影し、AnalySIS ソフトウェア(Soft Imaging Systems、Munster、Germany)を用いて蛍光領域を計算した。試験化合物を用いて処置した後得られた値と、処置前に得ていた値とを比較した。
【0046】
図1〜3は、72時間後にインビトロで分化した心筋細胞を増加させるための3種の異なるビンカアルカロイド、すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンがES細胞由来の心筋細胞に及ぼす影響を示す図である。さらに図から明らかなように、ビンカアルカロイドの心臓作用性の効果は、基準細胞(reference cell)が種類による影響を本質的に受けない濃度で達成される。したがって、ビンカアルカロイドの副作用が心疾患の治療に有効な濃度で現れる可能性がないので、局所投与の必要はない。
【0047】
実施例3:ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンは心臓毒性化合物を中和する
まず、国際出願WO2005/005621の実施例4によって、ドキソルビシンの心臓毒性効果を同定した。図4も参照されたい。その後、上記実施例2を修正し、ドキソルビン(doxorubin)(ドキソルビシンヒドロクロリド)を、ビンブラスチン、ビンクリスチンまたはビノレルビンとともに、異なる濃度および逆希釈シリーズで細胞培養物に添加する。
【0048】
化合物を用いたインキュベーションの48時間後および72時間後、蛍光顕微写真を撮影し、AnalySISソフトウェア(Soft Imaging Systems、Munster、Germany)を用いて蛍光領域を計算する。試験化合物を用いて処置した後得られた値と、処置前に得ていた値とを比較およびドキソルビシンのみで処置した値と比較する。
【0049】
驚くべきことに、ドキソルビシンの心臓毒性効果は、3種のビンカアルカロイドのいずれによっても中和することができ、そして心臓作用性の効果にとって代わることさえある。したがって、ビンカアルカロイドはまた、ドキソルビシンや他のアントラサイクリン系抗生物質、例えば、ダウノルビシン(Cerubidine、DaunoXome)およびイダルビシン(Idamycin)などの抗癌剤が重篤な心臓障害を引き起こし得る癌の化学療法中の副作用の防止や改善にも有用かもしれない。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビンカアルカロイドまたはそれらの誘導体もしくはアナログ、または薬学的に許容可能なそれらの塩から選択される、心疾患の治療のための薬剤。
【請求項2】
前記心疾患は、心不全、心筋梗塞または心筋症である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記薬剤は、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、またはそれらのいずれかの誘導体からなる群より選択されるビンカアルカロイドである、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記薬剤は、薬学的に許容可能な担体を用いて、医薬組成物として製剤される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
心臓作用性化合物をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
他の種類の化学療法用化合物を含まない、請求項4〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
心疾患の治療のための薬物を同定および取得し、及び物質の心臓毒性を判定するための方法であって、それぞれ、
(a)インビトロで分化した心筋細胞を含む試験サンプルを、心筋細胞の分化前、分化中、または分化後に、心疾患に罹患した細胞、組織または臓器の細胞の表現型に実質的に対応する、心筋細胞のあらかじめ定義された疾患表現型を誘発する化合物の存在下で、試験物質と接触させるステップ;
(b)前記試験サンプル中の前記細胞の前記表現型の応答性の変化を判定するステップを含み、
(i)前記疾患表現型の発症または進行を阻止する、または遅らせる応答性変化は、有用な薬物の指標となり、;そして
(ii)前記疾患表現型の発症または進行を高める応答性変化は、前記化合物の毒性の指標となる、方法
【請求項8】
前記疾患は、心不全または心筋症であり、前記表現型は、心筋細胞の生存である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物は、ドキソルビシンである、請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試験物質は、チューブリン結合性薬剤である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗腫瘍薬の心筋細胞に対する副作用を中性化する/中和するための、請求項1〜3のいずれか一項で定義された薬剤または請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な薬物。
【請求項12】
ビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤と、幹細胞、心筋細胞、移殖心臓、ステント、心臓ペースメーカー、または埋込み式電気除細動器(ICD)から選択される移植物との組み合わせ製剤または併用。
【請求項13】
ビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤を含む、幹細胞培養培地。
【請求項14】
ビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤と、幹細胞またはインビトロで分化した心筋細胞とを含有し;さらに、分化を促進する化合物、培養培地、および/または試験物質を任意に含む、キットまたは組成物。
【請求項15】
心疾患に罹患した対象における、心筋細胞、心臓組織、または移殖心臓の生存能力を増加させる方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、治療的に有効な量のビンカアルカロイドまたはそれと等価なチューブリン結合性薬剤を投与するステップを含む、方法。

【公表番号】特表2011−521918(P2011−521918A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510903(P2011−510903)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003932
【国際公開番号】WO2009/146887
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505460260)
【氏名又は名称原語表記】AXIOGENESIS AG
【住所又は居所原語表記】Nattermannallee 1,Gebaude S20,50829 Koln,Germany
【Fターム(参考)】