説明

心臓弁の寸法を制御するシステム及び方法

本発明による方法は、最初に、心臓の組織構成要素の第1目標部位に、アンカー固定構成要素を取付ける。次に、心臓の組織構成要素の第2目標部位に、ロック構成要素を取付ける。この後、引張り部材をアンカー固定構成要素に結合させ、引張り部材をロック構成要素に結合させる。次に、引張り部材を作動させることによって、第1目標部位と第2目標部位の間の距離を調節する。続いて、ロック構成要素を使って、引張り部材を適所に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本願は2005年12月15日出願の米国特許仮出願第60/750,559号の優先権を主張するものであり、かかる出願の全体はここに引例に挙げることにより以下に完全に明示されているものとする。
【0002】
本発明は、広義には、心臓弁修復術の分野に関するものであり、特に、心臓弁の寸法を制御するシステム及びその方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
先進国と発展途上国の両方において、心臓血管疾患は死因の約50%となっている。実際、心臓疾患を原因とする死の危険は、エイズや種々の種類の癌を全て組合わせた症候に起因する死の危険よりも高い。世界的に、心臓血管疾患を原因として年間1200万人が死亡している。心臓血管疾患は米国では第1の死因であり、年間95万人を死に追いやっている。また、心臓血管疾患が原因で疾患や生活の質の低下を余儀なくされる人の数も相当なものになっている。米国だけでも約6千万人が何らかの形態の心臓疾患に罹っている。よって、広範は形態の心臓疾患を治療し、治癒し、回復を図るための装置や措置を進歩させる必要性は多大である。
【0004】
正常な心機能は、本来、心臓の4つのチャンバに血液を渡す心臓の4個の弁の各々を適切に機能させることに依存している。心臓の4つのチャンバは上位チャンバである右心房と左心房、及び、下位チャンバである右心室と左心室からなる。4個の弁は、これらチャンバに流れ込む血液を制御しているが、三尖弁、僧帽弁、肺動脈弁、及び、大動脈弁からなる。心臓弁は複雑な構造体であり、弁を開閉するのに多数の構成要素の相互作用に依存している。より詳細に説明すると、4個の心臓弁は線維組織から構成された複数の弁膜尖すなわち小葉からなり、小葉が心臓壁に付着して、弁を通る血流を制御するのを助けている。僧帽弁は2個の小葉を含んでおり、三尖弁は3個の小葉を含んでいる。大動脈弁及び肺動脈弁はそれぞれ、「弁膜尖」と呼ぶほうが適当である3個の小葉を含んでいるが、この呼び名はこれら小葉の半月形状に由来するものである。
【0005】
心臓周期は、4つのチャンバの内部で酸素添加血液と脱酸素血液の両方を汲出して分配することに関与している。心収縮期すなわち心臓周期の規則的収縮期には、肺で酸素濃度を高めた酸素添加血液が心臓の左心房すなわち左上位チャンバに入る。心拡張期すなわち心臓周期の休止段階では、左心房圧が左心室圧を超過し、従って、酸素添加血液が逆止弁である僧帽弁を通って左心室に流入する。左心室の収縮により酸素添加血液が大動脈弁と通して大動脈に汲出されてから、体内に渡される。心収縮期に左心室が収縮すると、僧帽弁が閉じて、酸素添加血液が大動脈に渡される。脱酸素血液が体内から右心房を経由して帰還する。このような脱酸素血液は三尖弁を通って右心室に流入する。右心室が収縮すると、三尖弁が閉じて、脱酸素血液が肺動脈弁を通して汲出される。脱酸素血液は肺血管床に向かわされて酸素添加され、ここまでの心臓周期が繰返される。
【0006】
心臓の種々の構成要素によって実施される心臓周期は複雑で、入り組んだプロセスである。心臓の各種構成要素のうちの1個の障害が、又は、心臓周期を実施する際の障害が1種類以上の多数の異なる種類の心疾患の原因となることが多い。最もありふれた心疾患症状の1つに僧帽弁逆流がある。僧帽弁逆流は深刻さに応じて多段階に区分される。年齢が55歳を越えると、心臓エコー図を撮ると、男女のほぼ20%に。或る程度の僧帽弁逆流が見られる。僧帽弁逆流又は僧帽逆流は、僧帽弁がきつく閉鎖しないために血液が心臓に逆流するのを許してしまう症候である。
【0007】
図1は正常な僧帽弁101を示す。図1に示すように、僧帽弁101は僧帽輪105、前僧帽弁小葉110、後僧帽弁小葉115、腱索120、内側乳頭筋135、及び、外側乳頭筋140からなる。「僧帽弁輪」という語は、左心房床と連続している弁小葉付着部の楕円領域のことを指して言う。僧帽弁輪05は前僧帽輪125と後僧帽輪10から構成されている。僧帽輪105はサドル状で、サドルの基部が内側と外側の位置にある。前僧帽輪125に付着しているのが前僧帽弁小葉110であり、後僧帽輪130に付着しているのが後僧帽弁小葉115である。前僧帽弁小葉110及び後僧帽弁小葉115が合流している領域は外側交連145及び内側交連150と表現されている。
【0008】
正常な僧帽弁では、心房圧が心室圧を超過すると、弁小葉が心室の中に向けて解放状態となる。心室圧が上昇すると、小葉が合流して閉鎖し、弁輪の領域を覆う。よって、図1に示す図では、心拡張期は前僧帽弁小葉110及び後僧帽弁小葉115が開いて、僧帽弁101を通して血液が流動することができるようにする。これとは逆に、心収縮期には、前僧帽弁小葉110及び後僧帽弁小葉115は互いに重なり合って僧帽弁101を閉鎖し、血液の逆流すなわち血液の環流が左心房に流入するのを阻止する。
【0009】
僧帽弁と同様に、房室弁の機能は小葉、腱索、及び、乳頭筋などの複数の構成要素の複雑な相互作用を含んでいる。これら構成要素のうちの1つが、又は、複雑な相互作用の諸機能のうちの1つが不全状態となると、僧帽弁還流を生じる結果となることがある。例えば、小葉組織が過剰であったり、小葉組織が不適切であったり、又は、小葉の運動が制限されると、僧帽逆流を生じる恐れがある。長期化した僧帽弁逆流、深刻な僧帽弁逆流、又は、その両方が生じた結果として左心室の負担過剰が起こる。左心室を酷使すると左心室拡大や機能不全に至り、心不全を生じることがある。僧帽弁逆流は、矯正されなければ致命傷となる恐れのある進行性疾患である。
【0010】
依然として虚血性僧帽逆流(IMR)の外科治療の足枷となっているのは、最適とは言えない臨床結果と長期にわたる非常に高い致死性である。僧帽弁修復術は僧帽逆流を起こす大半の原因疾患については弁置換術よりも好ましいが、IMR症状を有する患者には依然として挑戦課題でしかない。現況では、IMR疾患に対する標準的僧帽修復術の代表的なものは小リングを用いた弁輪形成術である。この難しい疾患に対処する目的で、より新規な修復術が提案されている。
【0011】
ハイド(Hyde)に交付された米国特許第7,087,064号(特許文献1)は僧帽弁逆流治療のための従来技術を記載しており、具体例として、経皮的に配置することができるリガチャ(ligature)の使用が挙げられている。図2は、特許文献1のリガチャが僧帽弁に配置された図である。特許文献1に記載されているように、リガチャは経皮的に血管、静脈、又は、動脈を通して心臓の中に配置される。配置後は、リガチャが僧帽弁の両側の僧帽弁線維弁輪に取付けられる。直径が僧帽弁輪のものよりも小さいリガチャの設置は、僧帽弁の周辺を窄ませ、整形し、又は、収縮させるように作用する。
【0012】
特許文献1の受動的なリガチャによる方法の代替例として、中隔−側面弁輪締付け処置(SLAC: Septal-Lateral Annular Cinching)に中央経弁輪縫合を併用した試験的技術が或る疑いのない効果を示している。SLACは、心臓機能不全を治療しながら鬱血性心不全を回避する従来技術と比べて潜在的な利点を提示している。僧帽弁治療の従来の取組みと装置は、弁の正常な機能を改変する結果となることが多かった。例えば、弁の後小葉を固定することにより、従って、双小葉の弁を単小葉の弁に変換することにより、僧帽弁逆流を治療する。非制限的な例として、リングを用いた弁輪形成術は急性虚血性僧帽逆流を阻止することができるが、弁輪形成術はまた、正常な僧帽弁輪及び後小葉の力動を廃する。リングを用いた弁輪形成術及びその他の類似技術は僧帽弁の性能劣化の原因となる恐れがあり、例えば、弁輪の柔軟性喪失や経弁勾配の発生などの性能劣化がある。この種の技術は僧帽弁の正常な機能を変更又は変化させる。他方で、SLACは僧帽弁及び僧帽弁小葉の生理学的力動を保存するために実施される。更に、SLACは、適切な機能を得るために生理学的僧帽弁輪組織形態を維持するのに役立つ。
【0013】
近年の研究の1つが動物の心臓の急性虚血性僧帽逆流を治療する目的で従来のSLAC施術の採用に重点を置いており、SLAC術により供与される潜在的な利点を示す。ティー・エー・ティメック(Timek)ほか著、胸部心臓血管外科ジャーナル2002年5月刊行123(5)号、881〜888頁の論文を参照のこと。研究結果は、僧帽弁輪の中隔−側面直径寸法が平均で22%(+/−10%)低減することを示している。この研究の結論を言うと、上述のように寸法低減することで急性虚血性僧帽逆流を緩和すると同時に、僧帽弁輪及び後小葉の力動をほぼ正常にすることができるようになる。この研究の前提条件となっているのは、SLACが他の医療術の付属技術であれ、単独であれ、いずれにせよ、虚血性僧帽逆流の外科治療の簡単な方法の代表的なものであり、生理学的弁輪機能及び小葉機能を保存するのに役立つことである。
【0014】
これとは別な従来のSLAC術がレアリヴァスケズ(Realyvasquez)に交付された米国特許出願公開第2005/0143811号(特許文献2)に開示されている。は、経皮配備を利用してSLACを実施することを開示している。図3は特許文献2に開示されているSLAC術を実施するために利用される従来の装置を示す図である。図3に示す装置50は特許文献2には、左右心房間の隔壁を貫き通す経皮血管内カテーテルを利用して配送されるものと記載されている。装置の配送が完了してしまうと、2個のワイヤ補強式ステント52が配備され、拡張を許容される。ステント52の前部は、複数の歯がワイヤに固定された状態で、一時的に弁輪に取付けられる。後部は、同様の複数の歯を使って後弁輪に固定される。ステントが適切な位置にくると、血管内を配送された係留具が前後両方の弁輪取付け位置について、ワイヤがそれぞれの位置で再補強される。
【0015】
特許文献2に開示されている装置50はラチェット機構60を含んでいる。このラチェット機構は、装置50を配送したカテーテルによって作動状態にされる。特許文献2は、ラチェット機構60に取付けられたカテーテルが反時計方向に回転させられて、ラチェット機構60を作動状態にすると説明している。ラチェット機構60の回転は、2個のワイヤ補強式ステント52を装置50の中心に向けて移動させるように作動する。特許文献2は、前後両方の弁輪に取付けられた2個のワイヤ補強式ステント42の間の距離を短くすることが、中隔−側面弁輪締付け処置の効果を達成するのに役立つことを開示している。
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,087,064号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0143811号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
先行技術の装置はいずれもそれぞれの意図した目的には好適であるが、多数の欠陥を有しており、介在する心臓病医、心臓血管外科医、及び、このような医者が手術を施す患者の要求に適わずにいる。明らかに、欠陥のある心臓弁を矯正する目的で、観血を最小に抑える装置及びこれに付随する技術の必要が依然として存在する。特に、房室弁の中隔−側面直径距離を制限する目的で、観血を最小に抑える装置及びこれに付随する技術が必要である。更に、観血を最小に抑える装置及びこれに付随する技術は、拍動する心臓に実装することができなければならない。胸腔鏡による内視術及び経皮術を含む種々の方法で実施することができる、房室弁の中隔−側面直径を制限することができる装置を供与することは多いに望ましい。
【0018】
よって、弁性能を向上させる装置及び方法を提供するのが有利である。
【0019】
更に、心臓弁の寸法を制限する装置及び方法を提供するのが有利である。
【0020】
また、拍動する心臓の心臓弁の直径を制限することにより僧帽弁逆流を矯正する装置及び方法を提供することが有利である。
【0021】
更に、観血を最小に抑える仕方で実装される拍動する心臓の心臓弁の直径を制限する装置及び方法を提供するのが有利である。
【0022】
更にまた、拍動する心臓の心臓弁の直径を制限する目的で、心臓の外側から長いアーム又は操縦可能なニードルを使って配送される装置を提供するのが有利である。
【0023】
更に、拍動する心臓の房室弁の中隔−側面直径を減少させることができる装置を提供するのが有利である。
【0024】
更にまた、心臓弁の直径をより長期にわたって減少させることができる装置を提供するのが有利である。
【0025】
また、以前に施された外科手術で使用された構成要素に容易に接近して、医者が後日に心臓弁の寸法を更に制限することができるようにした、心臓弁の寸法を減少させる方法を提供するのが有利である。
【0026】
更に、より長期に亘って寸法減少処置を繰返すことができる、心臓弁の寸法を減少させる方法を提供するのが有利である。
【0027】
更にまた、心臓弁の生理学的力動を変えることなく、拍動する心臓弁の組織形態を改善する装置及び方法を提供するのが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、心臓弁の寸法を制御する方法及び装置を説明している。本発明の例示の実施形態は、心臓弁の組織形態を改善する方法を提示している。この方法はまず、心臓の組織構成要素上の第1目標部位にアンカー固定構成要素を取付ける処置を含んでいる。次に、心臓の組織構成要素上の第2目標部位にロック構成要素が取付けられる。この後、引張り部材がアンカー固定構成要素に連結されてから、引張り部材がロック構成要素に連結される。次に、引張り部材を作動させることで、第1目標部位と第2目標部位の間の距離が調節される。続いて、ロック構成要素を使って、引張り部材が適所に固定される。
【0029】
本発明の上述の目的、特徴、及び、利点と、その他の目的、特徴、及び、利点とは、添付の図面に関連づけて後段の明細書を読めば、一層明瞭となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、弁組織形態を改善することを目的とした、観血を最小に抑えた装置及び方法を提供することにより、先行技術の欠点に対処するものである。本件に開示されている弁組織形態を改善する医療装置及び医療法は、心臓の弁の内側の2つの目標部位の間の距離を減少させることができるようにするものである。心臓の弁の内側の2つの目標部位の間の距離を減少させることで、弁性能を向上させ、改修し、又は、その両方を実施することができる。
【0031】
本発明の例示の実施形態は弁組織形態を向上させる方法を提供する。この方法はまず、心臓の組織構成要素上の第1目標部位にアンカー固定構成要素を取付ける処置を含んでいる。次に、心臓の組織構成要素上の第2目標部位にロック構成要素が取付けられる。この後、引張り部材がアンカー固定構成要素に連結されてから、引張り部材はロック構成要素に連結される。次に、引張り部材を作動させることで、第1目標部位と第2目標部位の間の距離が調節される。続いて、ロック構成要素を使って、引張り部材が適所に固定される。
【0032】
弁の組織形態を改善する方法の例示の実施形態を利用して僧帽弁逆流を治療することができるが、場合によっては、僧帽弁逆流を矯正することができる。例えば、また、だからと言ってそれに限定するわけではないが、第1目標部位と第2目標部位の間の距離を短縮することで、僧帽弁の中隔−側面直径(septal-lateral diameter)を減じることができる。このように僧帽弁の中隔−側面直径を減じることで、心収縮期には僧帽小葉を重なり合わせることができるようにすることで、僧帽弁性能を無欠にするのを支援することができる。更に、中隔−側面直径を減じることで、心収縮期に左心室から左心房に血液が環流するのを阻止し、又は、そのような還流を緩和するのを助けることができる。
【0033】
これに加えて、僧帽弁の組織形態を改善するために、本発明が提供することのできる方法及び装置を利用して、僧帽弁以外の各種心臓弁の性能を向上させることができる。弁組織形態を向上させる方法の例示の実施形態を利用して、大動脈弁逆流を治療し、場合によっては、大動脈弁逆流を矯正することができる。弁組織形態を改善する方法の変形実施形態を利用して、肺動脈弁及び三尖弁の性能を向上させることができる。
【0034】
本発明による弁の組織形態を改善する方法は、拍動する心臓に実施することができる、観血を最小に抑えた処置である。更に、本発明による弁の組織形態を改善する方法は、胸腔鏡を使った内視による配備、血管内配送配備、経皮配備などを含む種々の処置又はこれらの処置の組合せにより実施される。本件に記載されている、弁の組織形態を改善する方法及びその方法に付随する装置の実施形態は具体例であり、代表例として提示されているにすぎないことを、当業者は認識すべきである。
【0035】
本発明の例示の実施形態では、近位端部及び遠位端部が設けられているアンカー固定構成要素を備えている締付け装置が提示されている。アンカー固定構成要素の近位端部には、心臓の組織構成要素と連結した取付け具が設けられている。ロック構成要素にも、心臓の組織構成要素と連結した取付け具が設けられている。締付け装置は引張り部材も備えている。アンカー固定構成要素は心臓の組織構成要素上の第1目標部位に設置することができるようになっており、ロック構成要素は心臓の組織構成要素上の第2目標部位に設置することができるようになっており、引張り部材はアンカー固定構成要素及びロック構成要素の両方に連結される。引張り部材は第1目標部位と第2目標部位の間の距離を調節するように作動されてから、ロック構成要素によって固定される。
【0036】
例示の実施形態では、引張り部材を作動させるのに引張り部材を引張ることで、第1目標部位と第2目標部位の間の距離を減じる態様で距離調節するように図っている。例えば、また、限定するわけではないが、医者が引張り部材を引張れば、距離を減じるとともに引張り部材を適所に固定することができる。
【0037】
締付け装置の例示の実施形態はアンカー固定構成要素、ロック構成要素、及び、引張り部材をそれぞれ1個以上ずつ有している。これら構成要素材は、本発明による弁の組織形態を改善する方法で活用される。例示の実施形態では、締付け装置の種々の構成要素材は生体適合性素材から構成されている。生体適合性素材の具体例として、生体適合性金属又は生体適合性重合体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の範囲から外れなければ、広範な生体適合性素材から締付け装置が構成されてもよいことを、当業者は認識すべきである。
【0038】
アンカー固定構成要素は組織に取付け可能な装置である。例示の実施形態では、アンカー固定構成要素は、近位端部と遠位端部とを有している。用語「近位」は、本明細書において、ある位置が別の位置よりも比較的近くにあることを説明するのに使用され、複数の近くの位置全体の範囲を含み、ある位置が別の位置に直接隣接し又は当接することを含む。用語「遠位」は、本明細書において、ある位置が別の位置から比較的遠くにあることを説明するのに使用される。従って、本明細書において、用語「近位」及び「遠位」は、空間的関係を言及するのに使用され、血液の流れの上流側又は下流側の位置を説明するために使用されているのではない。
【0039】
例示の実施形態では、アンカー固定構成要素の近位端部は、組織に係合させることができることが可能である。例えば、また、限定するわけではないが、アンカー固定構成要素の近位端部の面又は棒状部は、アンカー固定構成要素の本体部に対して或る角度を成している。この面又は棒状部の角度により、面又は棒状部に組織構成要素に対する接合部すなわち掴み部を有することができる。変形実施形態では、アンカー固定構成要素は、組織面を刺し通すことができる傘型の近位端部を有する。また別な実施形態は、組織面に埋め込むことができる脚部を有するアンカー固定構成要素である。アンカー固定構成要素の近位端部は、組織面に取付けることができる種々の構成要素材で代用されることを、当業者は認識すべきである。
【0040】
例示の実施形態では、固定システムの中心部は、ロッド、ワイヤ、又はその他の多数の好適な細長い部材である。アンカー固定構成要素の遠位側は、係合部材又は係合面である。このような係合部材は、引張り部材又はロッドと連結するように設計されている。連結部材の好ましい実施形態は、ループ、ネジ留め面、フック、クランプ、結合用開口、又はその他の多数の好適な構成要素である。アンカー固定構成要素は、カテーテルを使って血管内を配送されてもよいし、又は、長いアーム式配送装置又は操縦可能なニードルを使って心臓チャンバの出入窓を通して配送されてもよい。本発明の各方法を実施するために使用される装置及び器具は、実施態様ごとに異なっていてもよいことを、当業者は認識すべきである。例えば、長いアーム装置は、或る部材を観血を最小に抑えて配送することができる多数の異なる種類の装置で代用することができることが、当業者には分かるだろう。
【0041】
図4Aは、本発明によるアンカー固定構成要素又は固定装置400Aの例示の実施形態を示す図である。図4Aに示すアンカー固定構成要素400Aは、その近位端部に取付け部材405を有している。この取付け部材405は、組織構成要素に係合することができ且つそれを刺し通すことができる。図4Aに示す例示の実施形態では、取付け部材405は、傘型構造体である。固定装置400Aの中心部分は、ロッド部材410である。
【0042】
図4Aに示す固定装置400Aはまた、その遠位端部に係合部材415を有している。この係合部材415は、引張り部材又はその他の媒体を連結し、その終端部となり、又は、それを固定することができる。図4Aの例示の実施形態に示すように、係合部材415はピグテール(pigtail)形状部材であるのがよい。ピグテール形状部材が有利である理由は、ピグテール形状部材を組織構成要素の中を通して挿入した後、係合部材415を展開させることができるからである。例示の実施形態では、係合部材415を実質的に平坦な形態で組織構成要素の中に挿入し、ピグテール形状に展開させる。当業者は、本発明の範囲から逸脱しない限り、係合部材415が種々の形態を有していてもよいことを認識すべきである。
【0043】
図4Bは、本発明による変形実施形態のアンカー固定構成要素400Bを示す図である。図4Bに示す変形実施形態のアンカー固定構成要素400Bは、その近位端部に、ロッド形状の部材である取付け部材420を有している。このロッド形状の取付け部材420は、組織面と接合される。アンカー固定構成要素400Bの例示の実施形態は、2つの係合部材430、435を有している。係合部材430、435は、図4Bに示すように、引張り部材に結合させることができるピグテール形状部材であるのがよい。限定するわけではないが、一例において、いったん係合部材430を心臓チャンバ内に位置決めしたら、係合部材430を引張り部材に結合させ、係合部材435を上記引張り部材と異なる引張り部材に結合させる。図4A及び4Bに示すアンカー固定構成要素400A、400Bの2つの実施形態は代表例として提示されており、アンカー固定構成要素は種々の変形例の装置で実現されてもよいことを、当業者は認識すべきである。
【0044】
図5は、本発明によるアンカー固定構成要素の係合部材505の、展開前における例示の実施形態を示す。図5に示す係合部材505は、実質的に平坦な形状で配送されることが可能である。係合部材505の例示の実施形態は、操縦可能なニードル内で又はその他適当な配送装置内で配送されるのがよい。このように、係合部材505は実質的に平坦な形状で組織構成要素に刺し通すことが可能である。いったん係合部材505を組織構成要素に刺し通したら、係合部材505を展開させるのがよい。例えば、限定するわけではないが、係合部材505を左心室から左心房の中まで後僧帽弁輪を刺し通す。例示の実施形態では、係合部材505が左心房内に位置したら、係合部材505を管腔の中から押出し、ピグテール形状部材を形成する。このピグテール形状部材は、後で引張り部材を係合部材505に取付けるのに必要な構造を有している。
【0045】
図6Aは、本発明の例示の実施形態によるロック構成要素605の例示の実施形態を示す図である。例示の実施形態では、ロック構成要素605は心臓の外面に係合し、又は、三角形部位又はその他の領域の軟骨に係合する。ロック構成要素605の係合を可能にする刺し通し構成要素は、フック、傘部、接合面、複数の拡張可能な脚部、又は、その他適当な構成要素である。ロック構成要素605は、引張り部材610を固定するロックシステムを有し、このロックシステムは、引張り部材610に係合している時に引張り部材610の移動を阻止して、弁の直径を制限するのがよい。図6Aに示す例示の実施形態では、ロック構成要素605は、ピン圧縮システムを構成するロックシステム630を有している。図示のように、ロックシステム630のピンは、引張り部材610を固定したりかかる固定を解除したりするように移動可能に位置決めされるのがよい。
【0046】
例示の実施形態では、ロック構成要素605は、心臓の組織構成要素上の多数の適当な目標部位のところに取付けられる。例えば、限定するわけではないが、一実施形態では、ロック構成要素605は、アンカー固定構成要素が僧帽弁輪に取付けられている箇所と実質的に反対側に位置する僧帽弁輪上の目標部位に取付けられる。ロック構成要素605は、組織構成要素を刺し通す刺し通し構成要素、例えば620、625を有し、刺し通し構成要素は、ロック構成要素605を組織構成要素に固定する。図6Aに示す例示の実施形態では、刺し通し構成要素620、625は、前僧帽弁輪の近くで且つ大動脈壁に隣接した左心房壁を刺し通す。
【0047】
ロック構成要素605は、引張り部材610が通ることができる導管を有している。例示の実施形態では、引張り部材610は、ロック構成要素605の中に通され、左心房に入る。この例示の実施形態では、引張り部材610は、アンカー固定構成要素400A(図4A)の係合部材415に連結される係合遠位端部を有している。引張り部材610をアンカー固定構成要素400Aに結合させたら、引張り部材610を、アンカー固定構成要素400A(図4A)とロック構成要素605との間の距離が減少するように前進させる。この距離を所望量だけ減少させた後、ロック構成要素605のロックシステム630は、引張り部材610を適所に固定する。例示の実施形態では、本発明に従って弁形態を改善する方法を実施する外科医は、引張り部材610を患者の体外の位置から引張り、引張り部材610をロック構成要素605で適所に固定する。
【0048】
例示の実施形態では、ロック構成要素605による固定を解除することも可能である。従って、ロック構成要素605とアンカー固定構成要素400Aとの間の距離を後で変更することを望むならば、引張り部材610のロック構成要素605による固定を解除する。限定しない例では、引張り部材610を前進させ、ロック構成要素605とアンカー固定構成要素400Aとの間の距離を更に減少させ、引張り部材を再び適所に固定させる。
【0049】
図6Bは、本発明の例示の実施形態によるロック構成要素605の変形実施形態を示す図である。図6Bに示すように、ロック構成要素605の変形実施形態は、引張り部材610を前進させるネジ構成要素615を組込んでいる。それにより、外科医は、ネジ構成要素615を患者の体外の位置から前進させて、引張り部材を前進させ、ロック構成要素605とアンカー固定構成要素400A(図4A)との間の距離を減少させることができる。引張り部材610を所望の距離だけ前進させたとき、ネジを解放する。次いで、静止したネジ構成要素615は、引張り部材610をロックして維持する。加えて、ネジ構成要素615に再び接触して、引張り部材610を更に前進させ、引張り部材610を新しい位置にロックしてもよい。
【0050】
図7は、本発明のアンカー固定構成要素705の例示の実施形態を示す図である。図7に示す例示の実装例では、アンカー固定構成要素705が後僧帽弁輪720を貫いて移植されている。例えば、また、限定するわけではないが、アンカー固定構成要素705は、カテーテルを使って血管内を配送される。更に、アンカー固定構成要素705を圧縮形態で配送し、後で、適所でいったん展開させる。限定しない例では、アンカー固定構成要素705を左心室の中に配送する。次に、アンカー固定構成要素705を目標部位のところで左心室から後僧帽弁輪720に挿入する。従って、アンカー固定構成要素705の係合部材710を目標部位のところで後僧帽弁輪720に刺し通す。係合部材710が後僧帽弁輪を刺し通して左心房730に入ったら、アンカー固定構成要素705の取付け部材715を後僧帽弁輪720に取付ける。このように、アンカー固定構成要素705が後僧帽弁輪720の上に引掛けられ、係合構成要素710が左心房730の中に突出する。
【0051】
弁の形態を改善する方法の変形実施形態では、アンカー固定構成要素705を左心房730の中を通して配送する。限定しない例では、アンカー固定構成要素705をカテーテルに取付け、左心房730の中に経皮的に配置する。アンカー固定構成要素705を左心房730の中に導入した後、アンカー固定構成要素705を目標部位のところで後僧帽弁輪720に刺し通す。例示の実施形態では、アンカー固定構成要素705の取付け部材715を目標部位のところで後僧帽弁輪720に刺し通し、左心室の中に突出させる。このように、アンカー固定構成要素705を目標部位のところで後僧帽弁輪720の上に引掛ける。
【0052】
図7に示す例示の実施形態が、本発明によるアンカー固定構成要素の移植の一例を示すに過ぎないことを、当業者は認識すべきである。例えば、限定するわけではないが、僧帽弁の後側に関して、アンカー固定構成要素を後僧帽弁輪の上又はその近位の心筋の上の任意の箇所に配置することが可能である。僧帽弁の前側に関して、アンカー固定構成要素を前僧帽弁輪の上、それに近接した心筋の上、又は前僧帽弁輪に近接した線維性三角形領域の上の任意箇所に配置することが可能である。
【0053】
図8は、本発明の例示の実施形態による締付け装置800の例示の実施形態を示す図である。図8に示す締付け装置800の例示の実施形態は、2対のアンカー固定構成要素及びロック構成要素を移植する。図8に示す図は、左心房810の中に突出しているアンカー固定構成要素の係合部材805を示す。ロック構成要素815を種々の目標部位に位置決めすることができ、かかる位置決めは、大動脈弁の近くの左心房810の壁への取付けを含む。図8に示すように、例示の実施形態では、ロック構成要素815は、左心房の外部に位置している。ロック構成要素815は、引張り部材820をロック構成要素815の中の導管の中を通して受入れることが可能である。引張り装置820をロック構成要素815の中に通し、左心房815に入ったら、引張り部材820の係合端部825をアンカー固定構成要素の係合部材805に結合させる。引張り部材820とアンカー固定構成要素820とを結合させた後、引張り部材820を引き、僧帽弁830の中隔−側面直径(septal-lateral diameter)を減少させる。図8に示す例示の実施形態では、かかる減少工程を心臓の外側で行う。当業者なら認識することであるが、胸腔鏡手術による配置、血管内配送による配置、及び経皮的配送な配置等の観血を最小にする多数の技術により、心臓の外側から各処置を実施することができる。加えて、変形実施形態では、本発明の方法の工程を、遠隔装置を介して行ってもよい。例えば、限定するわけではないが、外科医が遠隔装置を使って、引張り部材820を調節するとともに僧帽弁830の中隔−側面直径を減少させることが可能である。
【0054】
例えば、また、限定するわけではないが、引張り部材820は、患者の体外で長いアーム装置の中を通って延びるのがよい。従って、外科医は、引張り部材820を患者の体外で引張ることができ、それにより、僧帽弁830の中隔−側面直径を減少させる。
【0055】
本発明により、引張り部材によって連結されているロック構成要素及びアンカー固定構成要素の1つの組又はいくつかの組を房室弁内に実装できることを、当業者は認識すべきである。いくつかの実装例では、引張り部材によって連結されている1組だけのロック構成要素及びアンカー固定構成要素が実装される。一般に、引張り部材によって連結されている2組から10組の範囲のロック構成要素及びアンカー固定構成要素が、房室弁内に実装される。
【0056】
図8に示すように、僧帽弁830は、2個の引張り部材によって連結されている2組のロック構成要素及びアンカー固定構成要素を有している。第2の組は、僧帽弁830の反対側に実装されている。係合部材835は、後僧帽弁輪の係合部材805の反対側に位置決めされている。他方の組と同様、ロック構成要素840は、引張り部材845が通され、引張り部材は、係合部材835に結合されている。図8に示す例示の実施形態では、2組のロック構成要素及びアンカー固定構成要素は、引張り部材820、845が互いに十分平行に延びるように位置決めされている。この形態により、僧帽弁830の直径が減少したときの僧帽弁830の対称性を維持するのを助ける。第1の引張り部材820と同様、第2の引張り部材845は、患者の体外に延ばされ、外科医が引張り部材の体外部分を引張ることによって、中隔−側面直径を減少させることができる。引張り部材820、845の両方を、僧帽弁830の中隔−側面直径を減少させるに十分引張ったら、引張り部材820、845をそれぞれのロック構成要素815、849によって固定する。引張り部材820、845のロックにより、僧帽弁830を所望の寸法に維持することを確保する。
【0057】
本発明の例示の実施形態によると、ロック構成要素による固定を解除することができる。このようにして、治療を受けている心臓弁の寸法を再調節することが可能である。限定しない例では、弁の直径を或る量だけ減少させ、引張り部材をロック構成要素によって適所に固定する。次いで、治療を受けている弁の機能レベルを判定する試験を実施するのがよい。機能が所望のレベルにない場合、引張り部材をロック構成要素による固定を解除し、更に引張り、適所に再固定する。従って、本発明の例示の実施形は、比較的長い期間にわたって弁寸法を漸進的に減少させることを可能にする。一実施形態では、患者が、ロック構成要素に接近して引張り部材を更に引くことによって弁直径を更に減少させる追加の外科手術を受けてもよい。
【0058】
本発明の締付け装置を、心臓の4個の弁の任意のものに実装することができる。当業者なら認識することであるが、各種の弁は、弁自体に特別な締付け装置の実装を必要とする場合があり、構成要素の配置及び配送を、4個の弁の各々の固有の特性を補償するように変えるのがよい。
【0059】
図9は、大動脈弁930に実装される本発明による締付け装置900の例示の実施形態を示す図である。図9に示す例示の実施形態の締付け装置900は、大動脈根910の大動脈弁輪905に実装されている。図9の例示の実施形態に示すように、締付け装置900は、大動脈弁輪905に刺し通すアンカー固定構成要素915を有している。大動脈弁輪905のほぼ反対側に、大動脈弁輪905に刺し通すロック構成要素920が設けられる。例示の実施形態では、引張り部材925をロック構成要素920に通してから、引張り部材925をアンカー固定構成要素915の係合部材に結合させる。引張り部材925を係合部材に結合させたら、引張り部材925を、アンカー固定構成要素915とロック構成要素920との間の距離を減少させるように前進させる。引き続いて、引張り部材925をロック構成要素920によって適所に固定する。これにより、大動脈弁の弁膜尖をより完全に閉鎖させることを可能にし、大動脈弁930の機能を改善させることができる。
【0060】
図10は、半月弁1020に実装された本発明による締付け装置1000の例示の実施形態を示す平面図である。本発明により可能になる締付け装置1000を、半月弁、大動脈弁、肺動脈弁のいずれかに実装することがでる。図10に示すように、アンカー固定構成要素1005及びロック構成要素1010は、引張り部材1015が半月弁1020の一部を横断するように、半月弁の弁輪上に構成されている。従って、引張り部材1015を前進させると、半月弁1020の直径を減少させる。
【0061】
図11は、半月弁1105に実装された本発明による締付け装置1100の例示の実施形態を示す平面図である。図11に示す締付け装置1100は、3組のアンカー固定構成要素、ロック構成要素、及び引張り部材を有している。当業者なら理解することであるが、これらの構成要素の組数とその実装は、処置すべき特定の心臓弁及び解決すべき特定の弁膜状況に応じて変化する。いくつかの実施形態では、心臓弁の機能不全がそれほど深刻ではないことがあり、その場合、心臓弁の直径の望ましい減少量は比較的小さい。このような実施形態では、限られた組の構成要素が、締付け装置に採用される。その他の実施形態では、弁が極めて対称であることが望ましいことがあり、その場合、作動弁の完全な対称性を達成してそれを維持する目的で、複数組の構成要素が配置される。図11に示す例示の実施形態は、3組のロック構成要素、アンカー固定構成要素、及び引張り部材を有する締付け装置が、半月弁に実装されていることを示す。これら3組の構成要素の配置により、半月弁の直径の対称的な減少を確保し、半月弁の機能及び動作の向上を確保する。
【0062】
図12は、三尖弁1205に実装された本発明による締付け装置1200の例示の実施形態を示す図である。図12に示す例示の実施形態の締付け装置1200は、三尖弁1205の弁輪1230に実装されている。図12の例示の実施形態に示すように、締付け装置1200は、2個のアンカー固定構成要素1210、1215を有している。僧帽弁に使用される締付け装置の実施形態と同様、三尖弁1205に好適なアンカー固定構成要素1210、1215を種々の異なる仕方で配送することができる。限定するわけではないが、例えば、アンカー固定構成要素を右心室1220までカテーテルを介して経皮的に配送する。アンカー固定構成要素1215を右心室1220の中まで配送したら、アンカー固定構成要素1215を三尖弁1205の弁輪1230に刺し通して、右心房1225の中に突出させる。変形例として、アンカー固定構成要素1215を右心房1225に配送してから、三尖弁1205の弁輪1230に刺し通し、アンカー固定構成要素1215の取付け部材を右心室1220の中に露出させてもよい。
【0063】
アンカー固定構成要素を三尖弁1205の弁輪1230と右心室1220との間に取付ける機能に加えて、アンカー固定構成要素を弁輪1230と右心房1225の壁との間に取付けるのがよい。図12に示すように、アンカー固定構成要素1210は、三尖弁1205の弁輪1230と右心房1225との間に取付けられている。アンカー固定構成要素を取付けるこの方法により、追加の配送方法を可能にする。例えば、アンカー固定構成要素1210を、長いアーム装置を介して配送し、移植する。アンカー固定構成要素1210を移植する外科医は、心臓動脈に通じている開口、例えば開口1235の付近にアンカー固定構成要素1210を移植することがないように注意しなければならない。当業者なら認識することであるが、本発明の範囲から逸脱することなしに、アンカー固定構成要素を種々の異なる仕方で配送し且つ移植してもよい。
【0064】
ロック構成要素1240は、三尖弁1205の弁輪1230のほぼ反対側に設けられるのがよい。例示の実施形態では、ロック構成要素11240を右心房1225の壁まで長いアーム装置を介して配送する。次いで、ロック構成要素1240を右心房1225の壁に刺し通す。例示の実施形態では、引張り部材1245をロック構成要素1240及び三尖弁1205の弁輪1230に通す。次いで、引張り部材1245をアンカー固定構成要素1210、1215の係合部材に結合させる。引張り部材1245を結合させたら、引張り部材1245を、アンカー固定構成要素1210、1215間とロック構成要素1240との間の距離を減少させるように前進させる。引き続いて、引張り部材1245をロック構成要素1240によって適所に固定する。これにより、三尖弁1205の小葉をより完全に閉鎖させることによって、三尖弁1205の機能を向上させる。
【0065】
図13は、三尖弁1205に実装された本発明による締付け装置1300の例示の実施形態を示す平面図である。図13に示すように、締付け装置1300は、2組のロック構成要素、アンカー固定構成要素、及び引張り部材を有している。しばしば、三尖弁の直径を、三尖弁1205の3枚の小葉の接合線箇所が実質的に不規則になるようないくつかの方向に減少させることによって、不完全な三尖弁を改善する。
【0066】
図13に示すように、アンカー固定構成要素1305を三尖弁1205の弁輪の僧帽弁に近い側に配置する。次に、弁輪のほぼ反対側で、アンカー固定構成要素1305を引張り部材1315によってロック構成要素1310に結合させる。加えて、アンカー固定構成要素1320を弁輪の大動脈弁に近い側に配置する。同様に、弁輪のほぼ反対側で、アンカー固定構成要素1320をロック構成要素1325に三尖弁1205の引張り部材1330によって結合させる。引張り部材1315、1330を前進させると、三尖弁1205の直径を減少させる。従って、三尖弁1205の小葉をより完全に閉鎖させることができ、三尖弁1205の機能を改善させることができる。
【0067】
本発明を好ましい形態で開示してきたが、添付の特許請求の範囲に明示されている本発明の真髄及び精神とその均等物から逸脱せずに、本発明に多数の修正、付加、削除を施すことができることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】正常な僧帽弁101を示す図である。
【図2】従来技術に開示されている従来の弁矯正装置を示す図である。
【図3】従来技術に開示されている中隔−側面弁輪締付け処置(SLAC)を実施するために使用される従来の装置を示す図である。
【図4A】本発明によるアンカー固定構成要素の例示の実施形態400Aを示す図である。
【図4B】本発明によるアンカー固定構成要素の変形実施形態400Bを示す図である。
【図5】本発明による、配置前の固定具としての係合部材505の例示の実施形態を示す図である。
【図6A】本発明によるロック構成要素の例示の実施形態605を示す図である。
【図6B】本発明によるロック構成要素の変形実施形態605を示す図である。
【図7】本発明によるアンカー固定構成要素の例示の実施形態705を示す図である。
【図8】本発明による締付け装置の例示の実施形態800を示す図である。
【図9】本発明により大動脈弁930に実装された締付け装置の例示の実施形態900を示す図である。
【図10】本発明により半月弁に実装された締付け装置の例示の実施形態を示す平面図である。
【図11】本発明により半月弁に実装された締付け装置の例示の実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明により三尖弁1205に実装された締付け装置の例示の実施形態1200を示す図である。
【図13】本発明により三尖弁1205に実装された締付け装置の例示の実施形態1300を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の組織形態を改善する方法であって、
心臓の組織構成要素上の第1目標部位にアンカー固定構成要素を取付ける工程と、
心臓の組織構成要素上の第2目標部位にロック構成要素を取付ける工程と、
引張り部材をアンカー固定構成要素に連結する工程と、
前記引張り部材をロック構成要素に連結する工程と、
前記引張り部材を作動させることで、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を調節する工程と、
前記ロック構成要素を使って、前記引張り部材を適所に固定する工程とを含んでいる、方法。
【請求項2】
前記ロック構成要素は、固定動作及び固定解除動作を行うことができる、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項3】
固定解除することで前記ロック構成要素から前記引張り部材を解放する工程と、
前記引張り部材を前進させることにより、前記第1部位と前記第2部位の間の距離を更に調節する工程と、
前記ロック構成要素を使って、前記引張り部材を固定する工程とを更に含んでいる、請求項2に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項4】
引張り部材を調節する前記工程は、前記引張り部材を作動させて前進させることにより前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を減じる工程を含んでいる、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項5】
第1目標部位にアンカー固定構成要素を取付ける前記工程はカテーテルを使って実施される、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項6】
第2目標部位にロック構成要素を取付ける前記工程は長いアーム装置を使って実施される、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項7】
引張り部材を作動させることで第1目標部位と第2目標部位の間の距離を調節する前記工程は、患者の体外から実施される、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項8】
第1目標部位と第2目標部位の間の距離を調節する前記工程は、観血を最小に抑えるアプローチを利用して実施される、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項9】
ロック構成要素を使って引張り部材をロック式に工程する前記工程は、患者の体外から実施される、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項10】
前記第1目標部位は心臓の後僧帽弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項11】
前記第2目標部位は心臓の前僧帽弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項12】
前記第1目標部位は心臓の大動脈弁の大動脈弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項13】
前記第2目標部位は心臓の大動脈弁の大動脈弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項14】
前記第1目標部位は心臓の三尖弁の弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項15】
前記第2目標部位は心臓の三尖弁の弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項16】
前記1目標部位は心臓の肺動脈弁の弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項17】
前記2目標部位は心臓の肺動脈弁の弁輪に位置する、請求項1に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項18】
締付け装置であって、
心臓の組織構成要素と連結可能な取付け部材を有する近位端部、及び、遠位端部を有するアンカー固定構成要素と、
心臓の組織構成要素と連結可能な取付け部材を有するロック構成要素と、
引張り部材と、を有し、
前記アンカー固定構成要素は、心臓の組織構成要素の第1目標部位に位置決め可能であり、前記ロック構成要素は、心臓の組織構成要素の第2目標部位に位置決め可能であり、
前記引張り部材は、前記アンカー固定構成要素と前記ロック構成要素の両方に結合され、前記第1目標部位と前記第2目標部位との間の距離を調節するように作動され、前記ロック構成要素によって固定される、締付け装置。
【請求項19】
前記引張り部材は、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を減少させるために、前記引張り部材を前進させることによって、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を調節するように作動される、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項20】
前記ロック構成要素による固定は、解除可能である、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項21】
前記引張り部材は、前記ロック構成要素による固定から解除され、更に前進させられ、前記ロック構成要素によって再固定される、請求項20に記載の締付け装置。
【請求項22】
前記第1目標部位は、後僧帽弁輪に位置し、前記第2目標部位は、前僧帽弁輪に位置する、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項23】
前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離は、中隔−側面直径である、請求項22に記載の締付け装置。
【請求項24】
前記第1目標部位は、大動脈弁輪に位置し、前記第2目標部位は、大動脈弁輪に位置する、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項25】
前記第1目標部位及び前記第2目標部位は、大動脈根における心臓洞と大動脈管の接合部の近位に位置する、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項26】
前記第1目標部位及び前記第2目標部位は、肺動脈弁の近位に位置する、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項27】
前記第1目標部位及び前記第2目標部位は、三尖弁の近位に位置する、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項28】
前記アンカー固定構成要素は、血管内を配送可能である、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項29】
前記ロック構成要素は、長いアーム装置を使って配送可能である、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項30】
前記引張り部材は、患者の体外から前進可能である、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項31】
前記ロック構成要素は、患者の体外から作動可能である、請求項18に記載の締付け装置。
【請求項32】
心臓弁の組織形態を改善する方法であって、
心臓の組織構成要素上の第1目標部位にアンカー固定構成要素を取付ける工程を含んでおり、前記アンカー固定構成要素は係合部材を備えており、前記方法は、
心臓の組織構成要素上の第2目標部位にロック構成要素を取付ける工程と、
係合遠位端部が設けられたワイヤを前記ロック構成要素に通す工程と、
前記アンカー固定構成要素の前記係合部材に前記ワイヤの前記係合遠位端部を連結する工程と、
前記ワイヤを前進させることにより、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を減じる工程と、
前記ロック構成要素を使って、前記ワイヤを適所に固定する工程とを更に含んでいる、方法。
【請求項33】
前記ロック構成要素は固定動作及び固定解除動作を実施することができる、請求項32に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項34】
固定解除して前記ワイヤを前記ロック構成要素から解放する工程と、
前記ワイヤを前進させることにより、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を更に減じる工程と、
前記ロック構成要素を使って前記ワイヤを適所に固定する工程とを更に含んでいる、請求項33に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項35】
前記第1目標部位は心臓の後僧帽弁輪上に位置している、請求項32に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項36】
前記第2目標部位は心臓の前僧帽弁輪上に位置している、請求項32に記載の心臓弁の組織形態を改善する方法。
【請求項37】
中隔−側面弁輪締め付け装置であって、
心臓の組織構成要素と連結可能な取付け部材を有する近位端部、及び、係合部材を有する遠位端部を有するアンカー固定構成要素と、
心臓の組織構成要素と連結可能な取付け部材を有するロック構成要素と、
係合遠位端部を有するワイヤと、を有し、
前記アンカー固定構成要素は、心臓の組織構成要素の第1目標部位に位置決め可能であり、前記ロック構成要素は、心臓の組織構成要素の第2目標部位に位置決め可能であり、
前記ワイヤは、前記ロック構成要素の中を通され、前記ワイヤの係合遠位端部は、前記アンカー固定構成要素の近位端部に結合可能であり、
前記ワイヤは、前記第1目標部位と前記第2目標部位の間の距離を減少させるように前進可能であり、前記ロック構成要素によって固定可能である、中隔−側面弁輪締付け装置。
【請求項38】
前記ロック構成要素による固定は、解除可能である、請求項37に記載の中隔−側面弁輪締付け装置。
【請求項39】
前記ワイヤは、前記ロック構成要素による固定から解除され、更に前進させられ、前記ロック構成要素によって再固定される、請求項38に記載の中隔−側面弁輪締付け装置。
【請求項40】
前記弁輪は僧帽弁輪である、請求項37に記載の中隔−側面弁輪締付け装置。
【請求項41】
心臓弁の組織形態を改善する方法は、
心臓の後僧帽弁輪にアンカー固定構成要素を取付ける工程を含んでおり、前記アンカー固定構成要素は係合部材を備えており、前記方法は、
心臓の前僧帽弁輪にロック構成要素を取付ける工程と、
係合遠位端部が設けられた引張り部材を前記ロック構成要素に通す工程と、
前記引張り部材の前記係合遠位端部を前記アンカー固定構成要素の前記係合部材に連結する工程と、
前記引張り部材を前進させることにより、前記後僧帽弁輪と前記前僧帽弁輪の間の距離を減じる工程と、
前記ロック構成要素を使って前記引張り部材を適所に固定する工程とを更に含んでいる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−519784(P2009−519784A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545998(P2008−545998)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/062192
【国際公開番号】WO2007/100409
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504466834)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】