心血管リスク評価装置
【課題】血中酸素飽和度低下に対する心血管リスク評価の指標を取得する。
【解決手段】被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得部300と、被験者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得部400と、低酸素時取得部が取得する測定結果と、非低酸素時取得部が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標検出部700と、を備える。
【解決手段】被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得部300と、被験者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得部400と、低酸素時取得部が取得する測定結果と、非低酸素時取得部が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標検出部700と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の心血管リスクを評価する心血管リスク評価装置に関し、特に、被検者の血中酸素飽和度と血圧の関係性から心血管リスクを評価する心血管リスク評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は、無呼吸発作時の血中酸素飽和度の低下に伴う急激な血圧上昇により、心血管系に甚大な圧負荷を与える。この圧負荷が脳血管障害や心筋梗塞などの心血管イベントの有力な候補機序とされており、この血圧上昇に関する情報を基に患者の心血管リスクを評価することは、種々の疾患の管理に極めて重要である。
【0003】
OSA患者の心血管リスクを推定する従来方法として、血中酸素飽和度を連続的に計測し、予め決められた閾値から下回った値を時間積分する方法が提案される(特許文献1(特開2009−66269号公報)。また、特許文献2(特開昭62−155829号公報)では、血中酸素飽和度の低下時に自動的に血圧を測定する方法が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66269号公報
【特許文献2】特開昭62−155829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、閾値から下回った血中酸素飽和度の時間積分値(IAD)が大きいほど、心血管イベント発生のリスクが高いと判断する。しかし、血中酸素飽和度の低下が同程度でも、これに対する血圧上昇量は各個人で異なるので、IADでは心血管系に対する圧負荷を正確に評価できず、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できない。
【0006】
特許文献2(特開昭62−155829号公報)では、単に無呼吸時の血圧を測定するのみで、酸素飽和度の低下に対する血圧上昇の反応性は把握することができず、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できない。
【0007】
それゆえに本発明の目的は、血中酸素飽和度低下に対する圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できる心血管リスク評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う、心血管リスク評価装置は、被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得手段と、被検者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得手段と、低酸素時取得手段が取得する測定結果と、非低酸素時取得手段が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標取得手段と、取得される指標を出力部に出力させる手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者の低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度が測定される時に測定される血圧とを含む測定結果と、非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度が測定される時に測定される血圧とを含む測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置のハードウェア構成図である。
【図2】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置の機能構成図である。
【図3】本実施の形態に係る低酸素時取得部の機能構成図である。
【図4】本実施の形態に係る指標検出部の機能構成図である。
【図5】本実施の形態に係るメモリ部の内容例を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る測定データ記憶部の内容例を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る指標記憶部の内容例を示す図である。
【図8】(A)と(B)はフローチャートと関連するグラフである。
【図9】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置の外観図である。
【図10】(A)と(B)は酸素感受性を示す図である。
【図11】低酸素感受性と平均頚動脈肥厚(mean IMT)との相関性を示す図である。
【図12】差分血圧と夜間高血圧を説明する図である。
【図13】本実施の形態に係る表示例を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る情報処理装置の構成図である。
【図15】本実施の形態に係る変形例による手首装着タイプの心血管リスク評価装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0012】
(心血管リスク評価装置)
図1には、本実施の形態に係る心血管リスク評価装置1のハードウェア構成が示され、図2〜4には心血管リスク評価装置1の全体機能と、各機能の構成が示され、図5〜図7には、図1のメモリ部39の内容例が示され、図8には処理フローチャートが示され、図9には心血管リスク評価装置1の測定時の使用態様が装置の外観とともに模式的に示される。
【0013】
(外観)
図1および図9を参照して、心血管リスク評価装置1は、本体部10、被検者の血圧測定部位、たとえば上腕に巻付けるためのカフ20、本体部10とカフ20とを接続するためのエアチューブ24、および血中酸素飽和度の測定部位、たとえば指先に装着するためのセンサユニット50を備える。本体部10とセンサユニット50とは、配線51を介して電気的に接続される。
【0014】
本体部10の表面10Aには、測定結果などを表示するための表示部40と、ユーザ(代表的には被検者)からの指示の入力を受付けるための操作部41とが配置される。操作部41は、たとえば、電源のON/OFFを切替えるために操作されるスイッチ41A、被検者を識別するために操作されるスイッチ41B、測定開始および停止の指示を入力するために操作されるスイッチ41Cおよびスイッチ41D、ならびに過去の測定データによる情報を読出して表示する指示を入力するために操作されるスイッチ41Eを含む。表示部40は、たとえば液晶等のディスプレイにより構成される。本体部10の左側面10Bには、上述のエアチューブ24および配線51が接続される。
【0015】
(ハードウェア構成)
図1を参照して、心血管リスク評価装置1のカフ20は、空気が内包される空気袋21を含む。空気袋21は、エアチューブ24を介して、本体部10に内蔵されたエア系25と接続される。
【0016】
エア系25は、空気袋21内の圧力(以下、「カフ圧」という)を検出するための静電容量型の圧力センサ32と、空気袋21に空気を供給するためのポンプ33と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁34とを含む。
【0017】
センサユニット50は、いわゆるパルスオキシメータに相当し、少なくとも2つの異なる中心波長を持つ赤外線を発光する発光素子501,502と、発光素子501,502から照射され測定部位を透過した赤外線量を検出するための受光素子503とを含む。
【0018】
本体部10は、発光素子501,502の発光動作を制御する発光素子駆動回路52、受光素子503の出力を波長別に増幅してAD(Analog/Digital)変換する増幅・AD変換回路53を備える。
【0019】
さらに本体部10は、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)1000、電源部42、各種データおよびプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含むメモリ部39、タイマ43、情報処理装置46とCPU1000との通信を制御する通信I/F(インターフェイス)44、およびSDメモリカード(Secure Digital memory card)など各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU1000の制御の元にアクセスする外部I/F45を備える。ここでは、情報処理装置46は、通信機能、データ処理機能および表示などのデータ出力機能を備える装置であればよく、限定されるものではない。
【0020】
また、本体部10は、エア系25に関連して、発振回路35、ポンプ33を駆動するためのポンプ駆動回路36、排気弁34を駆動するための弁駆動回路37を備える。
【0021】
ポンプ駆動回路36は、CPU1000から与えられる制御信号に基づいて、ポンプ33の駆動を制御する。弁駆動回路37は、CPU1000から与えられる制御信号に基づいて、排気弁34の開閉制御を行なう。
【0022】
圧力センサ32は、カフ圧により容量値が変化し、その容量値を指す信号は、圧力センサ32が内蔵するアンプ(増幅回路)により増幅された後に、出力される。発振回路35は、圧力センサ32の出力信号に基づき、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU1000に出力する。CPU1000は、発振回路35から得られる信号を圧力に変換することにより、カフ圧を検知する。
【0023】
電源部42は、操作部41からの電源ONの指示によりCPU1000に電力を供給する。CPU1000は供給される電力を各部に出力する。
【0024】
(機能構成)
図2には、心血管リスク評価装置1のCPU1000が有する機能構成が、その周辺回路とともに示される。図2を参照してCPU1000は、血圧測定部100、酸素飽和度測定制御部200、低酸素時取得部300、血中酸素飽和度の平均を算出する平均算出部401を含む非低酸素時取得部400、メモリ部39にデータを格納をするための記憶処理部500、メモリ部39からデータを読出すための読出部600、心血管リスク評価のための指標を検出する指標検出部700、表示部40の表示情報を生成するためのVRAM(Video Random Access Memory)などを有する表示情報生成部800、表示部40の表示制御のためのデジタル信号処理回路などを有する表示制御部850、操作部41によるユーザの操作を受付け操作に対応する指示(指令)を各部へ出力する操作受付部900を含む。これらの各部は、メモリ部39に格納されるプログラム・データおよび/または回路モジュールを用いて構成される。
【0025】
血圧測定部100は、カフ圧制御部101と血圧算出部102を含む。カフ圧制御部110は、ポンプ駆動回路36および弁駆動回路37の動作を制御することによりカフ20のカフ圧を調整する。血圧測定部100は、発振回路35の出力信号を入力し、入力信号の発振周波数を検出して、検出した発振周波数を圧力値信号に換算する。圧力値信号をHPF(High Pass Filter)処理することにより容積脈波信号を抽出して出力するHPF部と、圧力値信号をLPF(Low Pass Filter)処理することにより圧力絶対値信号(以下、カフ圧信号という)を抽出して出力するLPF部とを含む。
【0026】
血圧算出部102は、HPF部により抽出された容積脈波信号を入力し、入力した容積脈波信号を所定手順に従い処理することにより、最高血圧(収縮期血圧SBP(systolic blood pressure))および最低血圧(拡張期血圧DBP(Diastolic blood pressure))を算出するとともに、周知の手順に従い、脈拍数を算出する。血圧の算出手順は、ここではカフ20で測定部位を所定圧まで加圧し、その後徐々に減圧する過程で検出されるカフ圧に基づき血圧を測定するオシロメトリック法に従うと想定するが、算出方法は限定されない。
【0027】
酸素飽和度測定制御部200は、タイマ43の出力する時間に同期したクロック信号を出力するクロック201、脈波振幅算出部202、脈波振幅比較部203、および酸素飽和度算出部204を含む。
【0028】
酸素飽和度測定制御部200は、発光素子501,502が2つの波長の赤外線を交互に発光するように、クロック201が規定するタイミングで発光素子駆動回路12を制御する。被検者の測定部位を透過して受光素子503に到達した赤外線は、受光素子503によって検出される。その際、動脈内圧の拍動に伴う動脈容積変化が、透過光量の変化として受光素子503の出力に反映される。これを光電脈波(以下、単に「脈波」)という。脈波信号が受光素子503から増幅・AD変換回路13に送られると、クロック201が規定するタイミングで波長の異なる脈波が別個に増幅・AD変換される。AD変換された脈波信号は、脈波振幅算出部202に送られる。
【0029】
脈波振幅算出部202は、増幅・AD変換回路13より得られる脈波を1拍単位で検出し、それぞれの脈波の振幅を算出する。脈波振幅比較部203は、脈波振幅算出部202により算出された2つの波長の脈波振幅の比を求める。酸素飽和度算出部204は、算出された脈波振幅の比に基づいて、血液中酸素飽和度を算出する。酸素飽和度算出部204は、予めメモリ部39に記憶されている脈波振幅比と酸素飽和度との関係に基づいて、被検者の血中酸素飽和度を算出する。血中酸素飽和度は、たとえば5秒ごとに算出され、算出された血中酸素飽和度データは、CPU1000の内部メモリにポインタiとともに記録されるものとする。
【0030】
本実施の形態において、発光素子501,502、受光素子503、発光素子駆動回路12、増幅・AD変換回路13および酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定部として機能する。なお、本発明に従った心血管リスク評価装置1において採用される、酸素飽和度測定部の構成、および、血中酸素飽和度算出方法は、上記に限定されるものではない。
【0031】
図3を参照して、低酸素時取得部300は、閾値決定部301、比較部305を含む判定部302、低酸素量算出部303、判定部302の出力に基づきトリガ信号TR(以下、トリガTRと略す)を出力するトリガ出力部304、およびトリガTRを監視しながら測定開始の指示信号ITを出力するインターバル判定部306を含む。トリガ出力部304は、比較分305の比較結果に基づき、トリガTRを出力することにより血圧測定部100に血圧測定を開始させる。
【0032】
図4を参照して、指標検出部700は、差分血圧算出部701、低酸素感受性算出部702および夜間高血圧判定部703を含む。
【0033】
(メモリ構成)
図5を参照して、メモリ部39は、各被検者に対応して測定データ記憶部391と、指標記憶部392とを有する。
【0034】
図6を参照して測定データ記憶部391は、データベースの形式で測定データを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータ、および1つまたは複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において測定(または算出)された血中酸素飽和度(後述の低酸素量Spまたは平均MSp)、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PL、ならびにフラグFを含む。フラグFは、当該レコードRの血中酸素飽和度が、低酸素量Spおよび平均MSpのいずれであるかを識別するためのものである。
【0035】
図7を参照して、指標記憶部392は、データベースの形式で心血管評価指標のデータを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータと、1または複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において差分血圧算出部701により算出された差分血圧DF、低酸素感受性算出部702により算出された低酸素感受性OSおよび夜間高血圧判定部703による判定の結果を指す判定値NHを含む。判定値NHは、当該時間に測定された収縮期血圧SBPから被検者は夜間高血圧に該当すると判定されると“1”がセットされ、該当しないと判定されると“0”がセットされる。
【0036】
図6と図7では、レコードRを用いて、これらデータは関連付けされて格納されるとしているが、関連付けることができればレコードRを用いた格納形式に限定されない。
【0037】
図8の(A)のフローチャートを参照して測定処理について説明する。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000が当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。図8の(B)のグラフは、図8の(A)の測定処理における時間経過に従う被検者の血中酸素飽和度の変化を示す。グラフは横軸に経過時間がとられ、縦軸に血中酸素飽和度(%)がとられている。
【0038】
測定に際して被検者は、図9に示すようにカフ20とセンサユニット50を装着していると想定する。被検者のOSAの心血管リスクを評価するために、被検者は睡眠の前に測定開始のためにスイッチ41Cを操作し、起床したときに測定終了のためにスイッチ41Dを操作すると想定する。
【0039】
まず、被検者がスイッチ41Cを操作すると、操作受付部900は当該操作を受付けて操作に従う測定開始指示を出力する。このとき、被検者によりスイッチ41Bが操作されて当該被検者のIDデータが入力される。
【0040】
測定指示が入力されると、酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度の算出を開始する。血中酸素飽和度はたとえば5秒毎に算出されて、血中酸素飽和度SpO2(i)としてCPU1000の内部メモリに記録される。ここで、睡眠開始直後の所定期間(図8の(B)の期間T1よりも短い期間)では、被検者は一般的に通常の呼吸、すなわちOSAの状態にはないので、血中酸素飽和度SpO2(i)は十分な酸素量を指す。
【0041】
低酸素時取得部300の閾値決定部301は、血中酸素飽和度が低酸素量を指示するか否か、すなわち無呼吸発作を判定するための閾値THを決定する(ステップS1)。具体的には、測定指示を入力してから上述の所定期間(たとえば、1分間)において内部メモリに格納される血中酸素飽和度SpO2(i)の平均値を算出し、平均値から10を引いた値を閾値THと決定する(ステップS1)。この決定方法はあくまでも一例であり、これに限定されない。このように、被検者毎に無呼吸発作判定の閾値THを決めてもよく、または、被検者に共通して適用される閾値THを予め決定しておいてもよい。
【0042】
閾値決定部301により閾値THが決定されると、決定された閾値THは判定部302に与えられる。判定部302では血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH未満を指すか否かが判定される(ステップS3)。
【0043】
具体的には、比較部305は、内部メモリから血中酸素飽和度SpO2(i)を測定順番に従って、すなわちポインタiの値に従って読出し、読出した血中酸素飽和度SpO2(i)と閾値THとを比較する。比較結果に基づき、判定部302は、血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH未満であるか、以上であるかを判定する。未満であると判定すると(ステップS3でYES)、トリガ出力部304に対しトリガTRの出力指示を与え、低酸素量算出部303に対し算出指示を与える。
【0044】
トリガ出力部304は、当該指示に応答してトリガTRを血圧測定部100に出力する。血圧測定部100はトリガTRに応答して無呼吸発作に応じた血圧測定を開始する。血圧測定開始によりカフ20の内圧が所定圧まで加圧される、その後に徐々に減圧される。この減圧過程で検出されるカフ圧に基づき血圧測定データ(収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PL)が算出される。なお、血圧測定は加圧過程で行われてもよい。算出された血圧測定データは記憶処理部500に出力される(ステップS15)。また、低酸素量算出部303は、与えられる算出指示に応答して無呼吸発作時の低酸素量Sp(i)を算出し、算出した低酸素量Sp(i)を記憶処理部500に出力する(ステップS17)。
【0045】
ここで、低酸素量Sp(i)は、内部メモリの血中酸素飽和度SpO2(i)の1回の無呼吸発作の間の最低値を指す。低酸素量算出部303は、内部メモリに時系列に格納されている血中酸素飽和度SpO2(i)に基づき、算出指示を入力した時に格納される血中酸素飽和度SpO2(i)と前回測定(格納)された血中酸素飽和度SpO2(i−1)とを用いて最低値を判断する。たとえば、図8の(B)のグラフの星マークにおいて血中酸素飽和度SpO2(i)の最低値、すなわち低酸素量Sp(i)を検出する。無呼吸発作が生じると、その後、グラフの矢印で示すように当該無呼吸発作が起こっている間の最低値である低酸素量Sp(i)が複数回取得される。そして、各低酸素量Sp(i)が測定される時に測定される血圧測定データが取得される。
【0046】
記憶処理部500は、与えられる血圧測定データと低酸素量Sp(i)とタイマ43が出力する現在の時間データTとを関連付けて、当該被検者のIDデータに対応する測定データ記憶部391にレコードRとして格納する(ステップS19)。このとき格納されるレコードRのフラグFには、低酸素期間の測定データであることを指示するために“0”がセットされる。
【0047】
その後、操作受付部900の指示信号に基づき、CPU1000は、被検者により操作部41の測定終了のスイッチ41Dの操作がなされたか否かが判定される(ステップS21)。スイッチ41Dの操作がされたと判定されると(ステップS21でYES)、指標検出部700は、操作受付部900からの指示信号に従い、低酸素感受性など心血管リスク評価のための指標を算出し、記憶処理部500に出力する。記憶処理部500は、入力する指標とタイマ43からの時間データとを関連付けしたレコードRを、当該被検者のIDデータに対応する指標記憶部392に格納する(ステップS23)。表示情報生成部800は、記憶部500からレコードRを読出し、レコードRの指標を表す画像情報を生成し表示制御部850に出力する。表示制御部850は、画像情報を表示部40に表示させる(ステップS25)。その後、処理は終了する。ここでは、取得される指標を表示部に40に出力させるようにしたが、プリンタ、音声部などの出力部に出力させるようにしてもよい。
【0048】
スイッチ41Dが操作されないと判定されると(ステップS21でNO)、処理はステップS3に戻り、以降の処理が同様に繰り返される。なお、指標算出手順の詳細は後述する。
【0049】
一方、ステップS3において、閾値TH以上であると判定されると(ステップS3でNO)、インターバル血圧測定のための処理が開始される。つまり、インターバル判定部306は、被検者の状態が、無呼吸発作の低酸素期間ではない非低酸素期間であるかを判定する(ステップS5)。
【0050】
具体的には、インターバル判定部306は、トリガTRを監視し、測定開始時間から、または前回の測定開始の指示信号ITの出力時間から、トリガTRが出力なされない期間が一定期間(たとえば、30分)継続したか否かを、タイマ43の出力に基づき判定する。一定期間継続したと判定すると(ステップS5でYES)、ITを血圧測定部100と非低酸素時取得部400に出力する。
【0051】
血圧測定時には、カフ20で測定部位を加圧・減圧することにより被検者の睡眠を妨げる可能性があるから、ここでは、インターバル血圧測定は30分毎に行うとしているが、30分に限定されない。また、インターバルの間隔は可変に設定できるようにしてもよい。
【0052】
血圧測定部100は、指示信号ITの入力に応答して、血圧測定を開始し、取得した血圧測定データを記憶処理部500に出力し(ステップS7)、また、非低酸素時取得部400の平均算出部401は指示信号ITの入力に応答して、内部メモリから最近に格納された(たとえば、過去1分間に格納された)血中酸素飽和度SpO2(i)を読出し、読出した血中酸素飽和度SpO2(i)から平均MSp(i)を算出し、算出した平均MSp(i)を記憶処理部500に出力する(ステップS9)。
【0053】
記憶処理部500は、与えられる血圧測定データと、平均MSp(i)とタイマ43が出力する現在の時間データTとを関連付けて、メモリ部39の当該被検者のIDデータに対応する測定データ記憶部391にレコードRとして格納する(ステップS19)。平均MSp(i)は、当該血圧測定データが測定された時に測定された血中酸素飽和度SpO2(i)と見なされる。ここでは、平均値としたが、代表値であればよく、中央値、最頻値などであってもよい。このとき格納されるレコードRのフラグFには、非低酸素期間の測定データ(平均MSp(i))であることを指示するために“1”がセットされる。その後、ステップS21の処理に移行する。
【0054】
一方、一定期間継続していないと判定されると(ステップS5でNO)、血圧測定の開始および血中酸素飽和度SpO2(i)の平均MSp(i)算出はなされずに、ステップS21の処理に移行する。
【0055】
ここでは、CPU1000は、被検者が睡眠中であるか否かを、操作受付部900が受付ける操作部41のスイッチ操作に基づき判定する機能を備えるが、判定手法はこれに限定されない。たとえば、タイマを用いて判定してもよい。または、カフ20またはセンサユニット50に、測定部位への脱着を検出するセンサを取り付け、当該センサの出力に基づき判定してもよい。または、被検者の体温を測定するようにして、睡眠中は体温が低下することに着目して、体温変化に基づき判定してもよい。
【0056】
本フローチャートに従う処理では、低酸素時取得部300により、被検者の血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値THよりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度である低酸素量Sp(i)と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む1以上の測定結果が取得される。また、非低酸素時取得部400により、被検者の血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH以上である非低酸素期間において測定される血圧と当該血中測定の時に測定される血中酸素飽和度(平均MSp(i))とを含む1以上の測定結果が取得される。指標検出部700は、このようにして取得される測定結果を用いて指標を算出する。
【0057】
(指標の算出)
ステップS23において、指標検出部700は、メモリ部39の被検者の測定データ記憶部391からレコードRを読出し、読出したレコードRのデータに基づき、指標を算出する。つまり、低酸素時取得部300が取得する1以上の測定結果のレコードRのデータ、非低酸素時取得部400が取得する1以上の測定結果のレコードRのデータとに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する。
【0058】
差分血圧算出部701は、心血管リスク評価の指標として、上述の関係に基づき、非低酸素状態で測定される血圧と低酸素状態で測定される血圧との差分を算出する。低酸素感受性算出部702は、心血管リスク評価の指標として、上述の関係に基づき、被検者の低酸素感受性を取得する。低酸素感受性は、一定量の酸素飽和度の低下に対する血圧上昇の程度を表す。夜間高血圧判定部703は、上述の関係に基づき、被検者の血圧は夜間高血圧に該当するか否かを判定する。
【0059】
ここでは、血中酸素飽和度の低酸素に由来する血圧負荷に関連した心血管リスクの評価指標として上記の3種類を挙げているが、指標は、これらに限定されるものではない。
【0060】
〈低酸素感受性〉
低酸素感受性算出部702は、測定データ記憶部391から読出したレコードRのデータに基づき、たとえば、図10のグラフ(縦軸に血圧、横軸に血中酸素飽和度SpO2)に示すように、血中酸素飽和度(低酸素量Sp(i)および平均MSp(i))と関連付けされた収縮期血圧SBPから、両者の関係を示す回帰直線の式(関係式という)を算出する。図10から、低酸素時取得部300が取得する測定結果と、非低酸素時取得部400が取得する測定結果との差分を示す関係式が得られる。低酸素感受性算出部702は、関係式が示す直線の傾きを低酸素感受性として算出する。図10のデータは、図8の(A)のフローチャートに従って、発明者らの実験により、2名の被検者から取得されたデータを指す。なお、回帰直線の関係式を算出する方法は、統計学上一般に広く用いられる方法を適用することができる。図10の(A)は、低酸素感受性が高い場合を例示し、(B)は低い場合を例示する。
【0061】
本算出法は一例であり、低酸素感受性は、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値とインターバル血圧(平均MSp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値どうしの2点を結ぶ直線の式(関係式)の傾きから求めてもよい。または、トリガ血圧の最大3点平均値とインターバル血圧の最小3点平均値の2点を結ぶ直線の関係式の傾きから求めてもよく、その他の方法でもよい。
【0062】
このようにして算出された指標(低酸素感受性の値ならびに図10に示す散布図など)は、表示情報生成部800および表示制御部850を介して表示部に表示される。この際、低酸素感受性は絶対値として表示してもよいし、正常値と比較する形式で表示してもよく、病態の程度(心血管系のリスク(脳卒中の可能性)の程度)を表すレベル表示としてもよい。
【0063】
発明者らは、図10の(A)の被検者は、図10の(B)の被検者よりも、低酸素感受性の値が大きく、血中酸素飽和度の低下に対して血圧上昇がより顕著であることに着目して、低酸素感受性の値が大きいほど、無呼吸発作時における心血管系への圧負荷は大きく、心血管系に対するリスクが高いことが予想される、との知見を得た。
【0064】
これを実証するために、発明者らは、低酸素感受性と動脈硬化の程度を表す頚動脈肥厚の平均値(mean IMT)との相関性を、46名の被検者からの測定データを図11のグラフにプロットして検証した。図11のグラフは縦軸(y軸)に頚動脈肥厚の平均値をとり、横軸(x軸)に低酸素感受性をとる。図11に示すように、両者は有意に相関することから、低酸素感受性は睡眠時無呼吸患者における心血管リスクを評価(推定)するための良好な指標であることが示された。
【0065】
〈差分血圧と夜間高血圧〉
差分血圧算出部701は、測定データ記憶部391から読出したレコードRのデータに基づき、図12のグラフ(縦軸に血圧、横軸に血中酸素飽和度SpO2)に示すように、血中酸素飽和度(低酸素量Sp(i)および平均MSp(i))と関連付けされた収縮期血圧SBPから上述と同様に直線の関係式を算出する。図12では、2名の被検者について図8の(A)のフローチャートに従う実験により測定された直線L1とL2が示される。この直線は図10に示す直線と同様に、たとえば、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値とインターバル血圧(平均MSp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値どうしの2点を結ぶ直線を指す。
【0066】
差分血圧算出部701は、直線の関係式からトリガ血圧とインターバル血圧との差を、差分血圧DFとして算出する。図12によれば、関係式が示す傾き(低酸素感受性)が大きい直線L1の差分血圧DF(L1)は大きく、傾き(低酸素感受性)が小さい直線L2の差分血圧DF(L2)は小さいことから、低酸素感受性と差分血圧は相関関係を有することがわかる。
【0067】
夜間高血圧判定部703は、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値と、夜間高血圧の基準値(125mmHg)とを比較し、比較結果に基づき、当該平均値は125mmHg以上であると判定すると、被検者は夜間高血圧であると推定し判定値NH(=“1”)を出力し、125mmHg未満であると判定すると、夜間高血圧ではないと推定し判定値NH(=“0”)を出力する。
【0068】
(表示例)
図13には、表示部40における測定結果の表示例が示される。図13を参照して、表示部40には測定結果として、収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数、差分血圧および低酸素感受性の値が表示されるともに、夜間高血圧に該当するか否かのマークが表示される。収縮期血圧、拡張期血圧および脈拍数は、測定期間中の平均値を指すが、最高値の収縮期血圧が測定されたときの収縮期血圧、拡張期血圧および脈拍数であってもよい。さらに、表示部40には、これらの測定データの測定時刻も表示される。表示においては、指標とともに、指標による薬剤処方に関するアドバイスをしてもよい。
【0069】
(情報処理装置)
図14には、情報処理装置46の一例が示される。情報処理装置46は、心血管リスク評価装置1による測定データを処理するデータ処理装置としての機能を有する。
【0070】
情報処理装置46は、CPU461、プログラム・データを格納するメモリ462、ハードディスク463、表示部464、ユーザの操作を受付ける操作部465、プリンタ466、心血管リスク評価装置1を含む外部装置と通信するための通信I/F(Interface)467、SDメモリカード47などの各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU461の制御の下にアクセスする外部I/F468を備える。
【0071】
心血管リスク評価装置1により測定されたデータは、通信I/F467を介して受信する。または、測定データが記録されたSDメモリカード47が外部I/F468に装着されて、SDメモリカード47から読出すことにより取得する。このようにして受信または取得された測定データは、メモリ462などに格納される。
【0072】
CPU461は、メモリ462に格納された測定データに基づき、上述の各種指標を算出する指標検出部461Aおよび算出された指標の表示情報を生成する表示情報生成部461Bを備える。生成された表示情報は表示部464に表示される。なお、表示情報を心血管リスク評価装置1に送信して、心血管リスク評価装置1の表示部40に表示するようにしてもよい。
【0073】
このように、心血管リスク評価装置1の外部の装置、たとえば医家の情報処理装置46で測定データの取得、指標の算出および表示が可能である。
【0074】
本発明における心血管リスク評価装置1が行なう図8の(A)のフローチャートに従う方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。たとえば、図1の構成では、CPU1000を備えてコンピュータの機能を有する心血管リスク評価装置1には、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU1000は、外部I/F45を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。また、図14の構成では、情報処理装置46には、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU461は、外部I/F48を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0075】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPUにより読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0076】
(変形例)
図8の(A)の処理は、被検者の“睡眠中”に行われると想定したが、睡眠中に限定されない。たとえば、被検者が覚醒している状態において、周期的に呼吸を停止する期間と呼吸する期間とを繰返すことで測定データを取得するようにしてもよい。
【0077】
また、図8の(A)では、インターバル血圧測定はトリガ血圧測定しつつ、トリガ血圧測定をしない期間で実施するようにしたが、インターバル血圧測定による非低酸素時の測定データは別途取得してもよい。つまり、被検者が覚醒した安静状態において、非低酸素時の測定データを取得するようにしてもよい。
【0078】
また、閾値THは、低酸素感受性が高い被検者については低い値に設定し、低酸素感受性が低い被検者については高い値を設定するようにしてもよい。
【0079】
本実施の形態では、心血管リスク評価装置1は机上に据え置くタイプであったが、図15に示すように手首装着タイプであってもよい。図15では、血圧測定部位は手首部分となる、手首にカフ20が巻付けられて、本体部10とカフ20は一体的に構成される。本体部10の筐体表面には、操作部41に対応する各種スイッチが設けられる。
【0080】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 心血管リスク評価装置、46 情報処理装置、50 センサユニット、100 血圧測定部、200 酸素飽和度測定制御部、204 酸素飽和度算出部、300 低酸素時取得部、301 閾値決定部、302 判定部、303 低酸素量算出部、304 トリガ出力部、305 比較部、306 インターバル判定部、391 測定データ記憶部、392 指標記憶部、400 非低酸素時取得部、401 平均算出部、461A,700 指標検出部、461B,800 表示情報生成部、701 差分血圧算出部、702 低酸素感受性算出部、703 夜間高血圧判定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の心血管リスクを評価する心血管リスク評価装置に関し、特に、被検者の血中酸素飽和度と血圧の関係性から心血管リスクを評価する心血管リスク評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は、無呼吸発作時の血中酸素飽和度の低下に伴う急激な血圧上昇により、心血管系に甚大な圧負荷を与える。この圧負荷が脳血管障害や心筋梗塞などの心血管イベントの有力な候補機序とされており、この血圧上昇に関する情報を基に患者の心血管リスクを評価することは、種々の疾患の管理に極めて重要である。
【0003】
OSA患者の心血管リスクを推定する従来方法として、血中酸素飽和度を連続的に計測し、予め決められた閾値から下回った値を時間積分する方法が提案される(特許文献1(特開2009−66269号公報)。また、特許文献2(特開昭62−155829号公報)では、血中酸素飽和度の低下時に自動的に血圧を測定する方法が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66269号公報
【特許文献2】特開昭62−155829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、閾値から下回った血中酸素飽和度の時間積分値(IAD)が大きいほど、心血管イベント発生のリスクが高いと判断する。しかし、血中酸素飽和度の低下が同程度でも、これに対する血圧上昇量は各個人で異なるので、IADでは心血管系に対する圧負荷を正確に評価できず、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できない。
【0006】
特許文献2(特開昭62−155829号公報)では、単に無呼吸時の血圧を測定するのみで、酸素飽和度の低下に対する血圧上昇の反応性は把握することができず、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できない。
【0007】
それゆえに本発明の目的は、血中酸素飽和度低下に対する圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得できる心血管リスク評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う、心血管リスク評価装置は、被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得手段と、被検者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得手段と、低酸素時取得手段が取得する測定結果と、非低酸素時取得手段が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標取得手段と、取得される指標を出力部に出力させる手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者の低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度が測定される時に測定される血圧とを含む測定結果と、非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度が測定される時に測定される血圧とを含む測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、圧負荷を考慮した心血管リスク評価の指標を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置のハードウェア構成図である。
【図2】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置の機能構成図である。
【図3】本実施の形態に係る低酸素時取得部の機能構成図である。
【図4】本実施の形態に係る指標検出部の機能構成図である。
【図5】本実施の形態に係るメモリ部の内容例を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る測定データ記憶部の内容例を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る指標記憶部の内容例を示す図である。
【図8】(A)と(B)はフローチャートと関連するグラフである。
【図9】本実施の形態に係る心血管リスク評価装置の外観図である。
【図10】(A)と(B)は酸素感受性を示す図である。
【図11】低酸素感受性と平均頚動脈肥厚(mean IMT)との相関性を示す図である。
【図12】差分血圧と夜間高血圧を説明する図である。
【図13】本実施の形態に係る表示例を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る情報処理装置の構成図である。
【図15】本実施の形態に係る変形例による手首装着タイプの心血管リスク評価装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0012】
(心血管リスク評価装置)
図1には、本実施の形態に係る心血管リスク評価装置1のハードウェア構成が示され、図2〜4には心血管リスク評価装置1の全体機能と、各機能の構成が示され、図5〜図7には、図1のメモリ部39の内容例が示され、図8には処理フローチャートが示され、図9には心血管リスク評価装置1の測定時の使用態様が装置の外観とともに模式的に示される。
【0013】
(外観)
図1および図9を参照して、心血管リスク評価装置1は、本体部10、被検者の血圧測定部位、たとえば上腕に巻付けるためのカフ20、本体部10とカフ20とを接続するためのエアチューブ24、および血中酸素飽和度の測定部位、たとえば指先に装着するためのセンサユニット50を備える。本体部10とセンサユニット50とは、配線51を介して電気的に接続される。
【0014】
本体部10の表面10Aには、測定結果などを表示するための表示部40と、ユーザ(代表的には被検者)からの指示の入力を受付けるための操作部41とが配置される。操作部41は、たとえば、電源のON/OFFを切替えるために操作されるスイッチ41A、被検者を識別するために操作されるスイッチ41B、測定開始および停止の指示を入力するために操作されるスイッチ41Cおよびスイッチ41D、ならびに過去の測定データによる情報を読出して表示する指示を入力するために操作されるスイッチ41Eを含む。表示部40は、たとえば液晶等のディスプレイにより構成される。本体部10の左側面10Bには、上述のエアチューブ24および配線51が接続される。
【0015】
(ハードウェア構成)
図1を参照して、心血管リスク評価装置1のカフ20は、空気が内包される空気袋21を含む。空気袋21は、エアチューブ24を介して、本体部10に内蔵されたエア系25と接続される。
【0016】
エア系25は、空気袋21内の圧力(以下、「カフ圧」という)を検出するための静電容量型の圧力センサ32と、空気袋21に空気を供給するためのポンプ33と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁34とを含む。
【0017】
センサユニット50は、いわゆるパルスオキシメータに相当し、少なくとも2つの異なる中心波長を持つ赤外線を発光する発光素子501,502と、発光素子501,502から照射され測定部位を透過した赤外線量を検出するための受光素子503とを含む。
【0018】
本体部10は、発光素子501,502の発光動作を制御する発光素子駆動回路52、受光素子503の出力を波長別に増幅してAD(Analog/Digital)変換する増幅・AD変換回路53を備える。
【0019】
さらに本体部10は、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)1000、電源部42、各種データおよびプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含むメモリ部39、タイマ43、情報処理装置46とCPU1000との通信を制御する通信I/F(インターフェイス)44、およびSDメモリカード(Secure Digital memory card)など各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU1000の制御の元にアクセスする外部I/F45を備える。ここでは、情報処理装置46は、通信機能、データ処理機能および表示などのデータ出力機能を備える装置であればよく、限定されるものではない。
【0020】
また、本体部10は、エア系25に関連して、発振回路35、ポンプ33を駆動するためのポンプ駆動回路36、排気弁34を駆動するための弁駆動回路37を備える。
【0021】
ポンプ駆動回路36は、CPU1000から与えられる制御信号に基づいて、ポンプ33の駆動を制御する。弁駆動回路37は、CPU1000から与えられる制御信号に基づいて、排気弁34の開閉制御を行なう。
【0022】
圧力センサ32は、カフ圧により容量値が変化し、その容量値を指す信号は、圧力センサ32が内蔵するアンプ(増幅回路)により増幅された後に、出力される。発振回路35は、圧力センサ32の出力信号に基づき、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU1000に出力する。CPU1000は、発振回路35から得られる信号を圧力に変換することにより、カフ圧を検知する。
【0023】
電源部42は、操作部41からの電源ONの指示によりCPU1000に電力を供給する。CPU1000は供給される電力を各部に出力する。
【0024】
(機能構成)
図2には、心血管リスク評価装置1のCPU1000が有する機能構成が、その周辺回路とともに示される。図2を参照してCPU1000は、血圧測定部100、酸素飽和度測定制御部200、低酸素時取得部300、血中酸素飽和度の平均を算出する平均算出部401を含む非低酸素時取得部400、メモリ部39にデータを格納をするための記憶処理部500、メモリ部39からデータを読出すための読出部600、心血管リスク評価のための指標を検出する指標検出部700、表示部40の表示情報を生成するためのVRAM(Video Random Access Memory)などを有する表示情報生成部800、表示部40の表示制御のためのデジタル信号処理回路などを有する表示制御部850、操作部41によるユーザの操作を受付け操作に対応する指示(指令)を各部へ出力する操作受付部900を含む。これらの各部は、メモリ部39に格納されるプログラム・データおよび/または回路モジュールを用いて構成される。
【0025】
血圧測定部100は、カフ圧制御部101と血圧算出部102を含む。カフ圧制御部110は、ポンプ駆動回路36および弁駆動回路37の動作を制御することによりカフ20のカフ圧を調整する。血圧測定部100は、発振回路35の出力信号を入力し、入力信号の発振周波数を検出して、検出した発振周波数を圧力値信号に換算する。圧力値信号をHPF(High Pass Filter)処理することにより容積脈波信号を抽出して出力するHPF部と、圧力値信号をLPF(Low Pass Filter)処理することにより圧力絶対値信号(以下、カフ圧信号という)を抽出して出力するLPF部とを含む。
【0026】
血圧算出部102は、HPF部により抽出された容積脈波信号を入力し、入力した容積脈波信号を所定手順に従い処理することにより、最高血圧(収縮期血圧SBP(systolic blood pressure))および最低血圧(拡張期血圧DBP(Diastolic blood pressure))を算出するとともに、周知の手順に従い、脈拍数を算出する。血圧の算出手順は、ここではカフ20で測定部位を所定圧まで加圧し、その後徐々に減圧する過程で検出されるカフ圧に基づき血圧を測定するオシロメトリック法に従うと想定するが、算出方法は限定されない。
【0027】
酸素飽和度測定制御部200は、タイマ43の出力する時間に同期したクロック信号を出力するクロック201、脈波振幅算出部202、脈波振幅比較部203、および酸素飽和度算出部204を含む。
【0028】
酸素飽和度測定制御部200は、発光素子501,502が2つの波長の赤外線を交互に発光するように、クロック201が規定するタイミングで発光素子駆動回路12を制御する。被検者の測定部位を透過して受光素子503に到達した赤外線は、受光素子503によって検出される。その際、動脈内圧の拍動に伴う動脈容積変化が、透過光量の変化として受光素子503の出力に反映される。これを光電脈波(以下、単に「脈波」)という。脈波信号が受光素子503から増幅・AD変換回路13に送られると、クロック201が規定するタイミングで波長の異なる脈波が別個に増幅・AD変換される。AD変換された脈波信号は、脈波振幅算出部202に送られる。
【0029】
脈波振幅算出部202は、増幅・AD変換回路13より得られる脈波を1拍単位で検出し、それぞれの脈波の振幅を算出する。脈波振幅比較部203は、脈波振幅算出部202により算出された2つの波長の脈波振幅の比を求める。酸素飽和度算出部204は、算出された脈波振幅の比に基づいて、血液中酸素飽和度を算出する。酸素飽和度算出部204は、予めメモリ部39に記憶されている脈波振幅比と酸素飽和度との関係に基づいて、被検者の血中酸素飽和度を算出する。血中酸素飽和度は、たとえば5秒ごとに算出され、算出された血中酸素飽和度データは、CPU1000の内部メモリにポインタiとともに記録されるものとする。
【0030】
本実施の形態において、発光素子501,502、受光素子503、発光素子駆動回路12、増幅・AD変換回路13および酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定部として機能する。なお、本発明に従った心血管リスク評価装置1において採用される、酸素飽和度測定部の構成、および、血中酸素飽和度算出方法は、上記に限定されるものではない。
【0031】
図3を参照して、低酸素時取得部300は、閾値決定部301、比較部305を含む判定部302、低酸素量算出部303、判定部302の出力に基づきトリガ信号TR(以下、トリガTRと略す)を出力するトリガ出力部304、およびトリガTRを監視しながら測定開始の指示信号ITを出力するインターバル判定部306を含む。トリガ出力部304は、比較分305の比較結果に基づき、トリガTRを出力することにより血圧測定部100に血圧測定を開始させる。
【0032】
図4を参照して、指標検出部700は、差分血圧算出部701、低酸素感受性算出部702および夜間高血圧判定部703を含む。
【0033】
(メモリ構成)
図5を参照して、メモリ部39は、各被検者に対応して測定データ記憶部391と、指標記憶部392とを有する。
【0034】
図6を参照して測定データ記憶部391は、データベースの形式で測定データを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータ、および1つまたは複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において測定(または算出)された血中酸素飽和度(後述の低酸素量Spまたは平均MSp)、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PL、ならびにフラグFを含む。フラグFは、当該レコードRの血中酸素飽和度が、低酸素量Spおよび平均MSpのいずれであるかを識別するためのものである。
【0035】
図7を参照して、指標記憶部392は、データベースの形式で心血管評価指標のデータを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータと、1または複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において差分血圧算出部701により算出された差分血圧DF、低酸素感受性算出部702により算出された低酸素感受性OSおよび夜間高血圧判定部703による判定の結果を指す判定値NHを含む。判定値NHは、当該時間に測定された収縮期血圧SBPから被検者は夜間高血圧に該当すると判定されると“1”がセットされ、該当しないと判定されると“0”がセットされる。
【0036】
図6と図7では、レコードRを用いて、これらデータは関連付けされて格納されるとしているが、関連付けることができればレコードRを用いた格納形式に限定されない。
【0037】
図8の(A)のフローチャートを参照して測定処理について説明する。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000が当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。図8の(B)のグラフは、図8の(A)の測定処理における時間経過に従う被検者の血中酸素飽和度の変化を示す。グラフは横軸に経過時間がとられ、縦軸に血中酸素飽和度(%)がとられている。
【0038】
測定に際して被検者は、図9に示すようにカフ20とセンサユニット50を装着していると想定する。被検者のOSAの心血管リスクを評価するために、被検者は睡眠の前に測定開始のためにスイッチ41Cを操作し、起床したときに測定終了のためにスイッチ41Dを操作すると想定する。
【0039】
まず、被検者がスイッチ41Cを操作すると、操作受付部900は当該操作を受付けて操作に従う測定開始指示を出力する。このとき、被検者によりスイッチ41Bが操作されて当該被検者のIDデータが入力される。
【0040】
測定指示が入力されると、酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度の算出を開始する。血中酸素飽和度はたとえば5秒毎に算出されて、血中酸素飽和度SpO2(i)としてCPU1000の内部メモリに記録される。ここで、睡眠開始直後の所定期間(図8の(B)の期間T1よりも短い期間)では、被検者は一般的に通常の呼吸、すなわちOSAの状態にはないので、血中酸素飽和度SpO2(i)は十分な酸素量を指す。
【0041】
低酸素時取得部300の閾値決定部301は、血中酸素飽和度が低酸素量を指示するか否か、すなわち無呼吸発作を判定するための閾値THを決定する(ステップS1)。具体的には、測定指示を入力してから上述の所定期間(たとえば、1分間)において内部メモリに格納される血中酸素飽和度SpO2(i)の平均値を算出し、平均値から10を引いた値を閾値THと決定する(ステップS1)。この決定方法はあくまでも一例であり、これに限定されない。このように、被検者毎に無呼吸発作判定の閾値THを決めてもよく、または、被検者に共通して適用される閾値THを予め決定しておいてもよい。
【0042】
閾値決定部301により閾値THが決定されると、決定された閾値THは判定部302に与えられる。判定部302では血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH未満を指すか否かが判定される(ステップS3)。
【0043】
具体的には、比較部305は、内部メモリから血中酸素飽和度SpO2(i)を測定順番に従って、すなわちポインタiの値に従って読出し、読出した血中酸素飽和度SpO2(i)と閾値THとを比較する。比較結果に基づき、判定部302は、血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH未満であるか、以上であるかを判定する。未満であると判定すると(ステップS3でYES)、トリガ出力部304に対しトリガTRの出力指示を与え、低酸素量算出部303に対し算出指示を与える。
【0044】
トリガ出力部304は、当該指示に応答してトリガTRを血圧測定部100に出力する。血圧測定部100はトリガTRに応答して無呼吸発作に応じた血圧測定を開始する。血圧測定開始によりカフ20の内圧が所定圧まで加圧される、その後に徐々に減圧される。この減圧過程で検出されるカフ圧に基づき血圧測定データ(収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PL)が算出される。なお、血圧測定は加圧過程で行われてもよい。算出された血圧測定データは記憶処理部500に出力される(ステップS15)。また、低酸素量算出部303は、与えられる算出指示に応答して無呼吸発作時の低酸素量Sp(i)を算出し、算出した低酸素量Sp(i)を記憶処理部500に出力する(ステップS17)。
【0045】
ここで、低酸素量Sp(i)は、内部メモリの血中酸素飽和度SpO2(i)の1回の無呼吸発作の間の最低値を指す。低酸素量算出部303は、内部メモリに時系列に格納されている血中酸素飽和度SpO2(i)に基づき、算出指示を入力した時に格納される血中酸素飽和度SpO2(i)と前回測定(格納)された血中酸素飽和度SpO2(i−1)とを用いて最低値を判断する。たとえば、図8の(B)のグラフの星マークにおいて血中酸素飽和度SpO2(i)の最低値、すなわち低酸素量Sp(i)を検出する。無呼吸発作が生じると、その後、グラフの矢印で示すように当該無呼吸発作が起こっている間の最低値である低酸素量Sp(i)が複数回取得される。そして、各低酸素量Sp(i)が測定される時に測定される血圧測定データが取得される。
【0046】
記憶処理部500は、与えられる血圧測定データと低酸素量Sp(i)とタイマ43が出力する現在の時間データTとを関連付けて、当該被検者のIDデータに対応する測定データ記憶部391にレコードRとして格納する(ステップS19)。このとき格納されるレコードRのフラグFには、低酸素期間の測定データであることを指示するために“0”がセットされる。
【0047】
その後、操作受付部900の指示信号に基づき、CPU1000は、被検者により操作部41の測定終了のスイッチ41Dの操作がなされたか否かが判定される(ステップS21)。スイッチ41Dの操作がされたと判定されると(ステップS21でYES)、指標検出部700は、操作受付部900からの指示信号に従い、低酸素感受性など心血管リスク評価のための指標を算出し、記憶処理部500に出力する。記憶処理部500は、入力する指標とタイマ43からの時間データとを関連付けしたレコードRを、当該被検者のIDデータに対応する指標記憶部392に格納する(ステップS23)。表示情報生成部800は、記憶部500からレコードRを読出し、レコードRの指標を表す画像情報を生成し表示制御部850に出力する。表示制御部850は、画像情報を表示部40に表示させる(ステップS25)。その後、処理は終了する。ここでは、取得される指標を表示部に40に出力させるようにしたが、プリンタ、音声部などの出力部に出力させるようにしてもよい。
【0048】
スイッチ41Dが操作されないと判定されると(ステップS21でNO)、処理はステップS3に戻り、以降の処理が同様に繰り返される。なお、指標算出手順の詳細は後述する。
【0049】
一方、ステップS3において、閾値TH以上であると判定されると(ステップS3でNO)、インターバル血圧測定のための処理が開始される。つまり、インターバル判定部306は、被検者の状態が、無呼吸発作の低酸素期間ではない非低酸素期間であるかを判定する(ステップS5)。
【0050】
具体的には、インターバル判定部306は、トリガTRを監視し、測定開始時間から、または前回の測定開始の指示信号ITの出力時間から、トリガTRが出力なされない期間が一定期間(たとえば、30分)継続したか否かを、タイマ43の出力に基づき判定する。一定期間継続したと判定すると(ステップS5でYES)、ITを血圧測定部100と非低酸素時取得部400に出力する。
【0051】
血圧測定時には、カフ20で測定部位を加圧・減圧することにより被検者の睡眠を妨げる可能性があるから、ここでは、インターバル血圧測定は30分毎に行うとしているが、30分に限定されない。また、インターバルの間隔は可変に設定できるようにしてもよい。
【0052】
血圧測定部100は、指示信号ITの入力に応答して、血圧測定を開始し、取得した血圧測定データを記憶処理部500に出力し(ステップS7)、また、非低酸素時取得部400の平均算出部401は指示信号ITの入力に応答して、内部メモリから最近に格納された(たとえば、過去1分間に格納された)血中酸素飽和度SpO2(i)を読出し、読出した血中酸素飽和度SpO2(i)から平均MSp(i)を算出し、算出した平均MSp(i)を記憶処理部500に出力する(ステップS9)。
【0053】
記憶処理部500は、与えられる血圧測定データと、平均MSp(i)とタイマ43が出力する現在の時間データTとを関連付けて、メモリ部39の当該被検者のIDデータに対応する測定データ記憶部391にレコードRとして格納する(ステップS19)。平均MSp(i)は、当該血圧測定データが測定された時に測定された血中酸素飽和度SpO2(i)と見なされる。ここでは、平均値としたが、代表値であればよく、中央値、最頻値などであってもよい。このとき格納されるレコードRのフラグFには、非低酸素期間の測定データ(平均MSp(i))であることを指示するために“1”がセットされる。その後、ステップS21の処理に移行する。
【0054】
一方、一定期間継続していないと判定されると(ステップS5でNO)、血圧測定の開始および血中酸素飽和度SpO2(i)の平均MSp(i)算出はなされずに、ステップS21の処理に移行する。
【0055】
ここでは、CPU1000は、被検者が睡眠中であるか否かを、操作受付部900が受付ける操作部41のスイッチ操作に基づき判定する機能を備えるが、判定手法はこれに限定されない。たとえば、タイマを用いて判定してもよい。または、カフ20またはセンサユニット50に、測定部位への脱着を検出するセンサを取り付け、当該センサの出力に基づき判定してもよい。または、被検者の体温を測定するようにして、睡眠中は体温が低下することに着目して、体温変化に基づき判定してもよい。
【0056】
本フローチャートに従う処理では、低酸素時取得部300により、被検者の血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値THよりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度である低酸素量Sp(i)と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む1以上の測定結果が取得される。また、非低酸素時取得部400により、被検者の血中酸素飽和度SpO2(i)が閾値TH以上である非低酸素期間において測定される血圧と当該血中測定の時に測定される血中酸素飽和度(平均MSp(i))とを含む1以上の測定結果が取得される。指標検出部700は、このようにして取得される測定結果を用いて指標を算出する。
【0057】
(指標の算出)
ステップS23において、指標検出部700は、メモリ部39の被検者の測定データ記憶部391からレコードRを読出し、読出したレコードRのデータに基づき、指標を算出する。つまり、低酸素時取得部300が取得する1以上の測定結果のレコードRのデータ、非低酸素時取得部400が取得する1以上の測定結果のレコードRのデータとに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する。
【0058】
差分血圧算出部701は、心血管リスク評価の指標として、上述の関係に基づき、非低酸素状態で測定される血圧と低酸素状態で測定される血圧との差分を算出する。低酸素感受性算出部702は、心血管リスク評価の指標として、上述の関係に基づき、被検者の低酸素感受性を取得する。低酸素感受性は、一定量の酸素飽和度の低下に対する血圧上昇の程度を表す。夜間高血圧判定部703は、上述の関係に基づき、被検者の血圧は夜間高血圧に該当するか否かを判定する。
【0059】
ここでは、血中酸素飽和度の低酸素に由来する血圧負荷に関連した心血管リスクの評価指標として上記の3種類を挙げているが、指標は、これらに限定されるものではない。
【0060】
〈低酸素感受性〉
低酸素感受性算出部702は、測定データ記憶部391から読出したレコードRのデータに基づき、たとえば、図10のグラフ(縦軸に血圧、横軸に血中酸素飽和度SpO2)に示すように、血中酸素飽和度(低酸素量Sp(i)および平均MSp(i))と関連付けされた収縮期血圧SBPから、両者の関係を示す回帰直線の式(関係式という)を算出する。図10から、低酸素時取得部300が取得する測定結果と、非低酸素時取得部400が取得する測定結果との差分を示す関係式が得られる。低酸素感受性算出部702は、関係式が示す直線の傾きを低酸素感受性として算出する。図10のデータは、図8の(A)のフローチャートに従って、発明者らの実験により、2名の被検者から取得されたデータを指す。なお、回帰直線の関係式を算出する方法は、統計学上一般に広く用いられる方法を適用することができる。図10の(A)は、低酸素感受性が高い場合を例示し、(B)は低い場合を例示する。
【0061】
本算出法は一例であり、低酸素感受性は、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値とインターバル血圧(平均MSp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値どうしの2点を結ぶ直線の式(関係式)の傾きから求めてもよい。または、トリガ血圧の最大3点平均値とインターバル血圧の最小3点平均値の2点を結ぶ直線の関係式の傾きから求めてもよく、その他の方法でもよい。
【0062】
このようにして算出された指標(低酸素感受性の値ならびに図10に示す散布図など)は、表示情報生成部800および表示制御部850を介して表示部に表示される。この際、低酸素感受性は絶対値として表示してもよいし、正常値と比較する形式で表示してもよく、病態の程度(心血管系のリスク(脳卒中の可能性)の程度)を表すレベル表示としてもよい。
【0063】
発明者らは、図10の(A)の被検者は、図10の(B)の被検者よりも、低酸素感受性の値が大きく、血中酸素飽和度の低下に対して血圧上昇がより顕著であることに着目して、低酸素感受性の値が大きいほど、無呼吸発作時における心血管系への圧負荷は大きく、心血管系に対するリスクが高いことが予想される、との知見を得た。
【0064】
これを実証するために、発明者らは、低酸素感受性と動脈硬化の程度を表す頚動脈肥厚の平均値(mean IMT)との相関性を、46名の被検者からの測定データを図11のグラフにプロットして検証した。図11のグラフは縦軸(y軸)に頚動脈肥厚の平均値をとり、横軸(x軸)に低酸素感受性をとる。図11に示すように、両者は有意に相関することから、低酸素感受性は睡眠時無呼吸患者における心血管リスクを評価(推定)するための良好な指標であることが示された。
【0065】
〈差分血圧と夜間高血圧〉
差分血圧算出部701は、測定データ記憶部391から読出したレコードRのデータに基づき、図12のグラフ(縦軸に血圧、横軸に血中酸素飽和度SpO2)に示すように、血中酸素飽和度(低酸素量Sp(i)および平均MSp(i))と関連付けされた収縮期血圧SBPから上述と同様に直線の関係式を算出する。図12では、2名の被検者について図8の(A)のフローチャートに従う実験により測定された直線L1とL2が示される。この直線は図10に示す直線と同様に、たとえば、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値とインターバル血圧(平均MSp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値どうしの2点を結ぶ直線を指す。
【0066】
差分血圧算出部701は、直線の関係式からトリガ血圧とインターバル血圧との差を、差分血圧DFとして算出する。図12によれば、関係式が示す傾き(低酸素感受性)が大きい直線L1の差分血圧DF(L1)は大きく、傾き(低酸素感受性)が小さい直線L2の差分血圧DF(L2)は小さいことから、低酸素感受性と差分血圧は相関関係を有することがわかる。
【0067】
夜間高血圧判定部703は、トリガ血圧(低酸素量Sp(i)に関連付けされた収縮期血圧SBP)の平均値と、夜間高血圧の基準値(125mmHg)とを比較し、比較結果に基づき、当該平均値は125mmHg以上であると判定すると、被検者は夜間高血圧であると推定し判定値NH(=“1”)を出力し、125mmHg未満であると判定すると、夜間高血圧ではないと推定し判定値NH(=“0”)を出力する。
【0068】
(表示例)
図13には、表示部40における測定結果の表示例が示される。図13を参照して、表示部40には測定結果として、収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数、差分血圧および低酸素感受性の値が表示されるともに、夜間高血圧に該当するか否かのマークが表示される。収縮期血圧、拡張期血圧および脈拍数は、測定期間中の平均値を指すが、最高値の収縮期血圧が測定されたときの収縮期血圧、拡張期血圧および脈拍数であってもよい。さらに、表示部40には、これらの測定データの測定時刻も表示される。表示においては、指標とともに、指標による薬剤処方に関するアドバイスをしてもよい。
【0069】
(情報処理装置)
図14には、情報処理装置46の一例が示される。情報処理装置46は、心血管リスク評価装置1による測定データを処理するデータ処理装置としての機能を有する。
【0070】
情報処理装置46は、CPU461、プログラム・データを格納するメモリ462、ハードディスク463、表示部464、ユーザの操作を受付ける操作部465、プリンタ466、心血管リスク評価装置1を含む外部装置と通信するための通信I/F(Interface)467、SDメモリカード47などの各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU461の制御の下にアクセスする外部I/F468を備える。
【0071】
心血管リスク評価装置1により測定されたデータは、通信I/F467を介して受信する。または、測定データが記録されたSDメモリカード47が外部I/F468に装着されて、SDメモリカード47から読出すことにより取得する。このようにして受信または取得された測定データは、メモリ462などに格納される。
【0072】
CPU461は、メモリ462に格納された測定データに基づき、上述の各種指標を算出する指標検出部461Aおよび算出された指標の表示情報を生成する表示情報生成部461Bを備える。生成された表示情報は表示部464に表示される。なお、表示情報を心血管リスク評価装置1に送信して、心血管リスク評価装置1の表示部40に表示するようにしてもよい。
【0073】
このように、心血管リスク評価装置1の外部の装置、たとえば医家の情報処理装置46で測定データの取得、指標の算出および表示が可能である。
【0074】
本発明における心血管リスク評価装置1が行なう図8の(A)のフローチャートに従う方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。たとえば、図1の構成では、CPU1000を備えてコンピュータの機能を有する心血管リスク評価装置1には、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU1000は、外部I/F45を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。また、図14の構成では、情報処理装置46には、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU461は、外部I/F48を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0075】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPUにより読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0076】
(変形例)
図8の(A)の処理は、被検者の“睡眠中”に行われると想定したが、睡眠中に限定されない。たとえば、被検者が覚醒している状態において、周期的に呼吸を停止する期間と呼吸する期間とを繰返すことで測定データを取得するようにしてもよい。
【0077】
また、図8の(A)では、インターバル血圧測定はトリガ血圧測定しつつ、トリガ血圧測定をしない期間で実施するようにしたが、インターバル血圧測定による非低酸素時の測定データは別途取得してもよい。つまり、被検者が覚醒した安静状態において、非低酸素時の測定データを取得するようにしてもよい。
【0078】
また、閾値THは、低酸素感受性が高い被検者については低い値に設定し、低酸素感受性が低い被検者については高い値を設定するようにしてもよい。
【0079】
本実施の形態では、心血管リスク評価装置1は机上に据え置くタイプであったが、図15に示すように手首装着タイプであってもよい。図15では、血圧測定部位は手首部分となる、手首にカフ20が巻付けられて、本体部10とカフ20は一体的に構成される。本体部10の筐体表面には、操作部41に対応する各種スイッチが設けられる。
【0080】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 心血管リスク評価装置、46 情報処理装置、50 センサユニット、100 血圧測定部、200 酸素飽和度測定制御部、204 酸素飽和度算出部、300 低酸素時取得部、301 閾値決定部、302 判定部、303 低酸素量算出部、304 トリガ出力部、305 比較部、306 インターバル判定部、391 測定データ記憶部、392 指標記憶部、400 非低酸素時取得部、401 平均算出部、461A,700 指標検出部、461B,800 表示情報生成部、701 差分血圧算出部、702 低酸素感受性算出部、703 夜間高血圧判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得手段と、
被検者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得手段と、
前記低酸素時取得手段が取得する測定結果と、前記非低酸素時取得手段が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標取得手段と、
取得される前記指標を出力部に出力させる手段と、を備える、心血管リスク評価装置。
【請求項2】
前記指標取得手段は、
前記低酸素時取得手段が取得する測定結果と、前記非低酸素時取得手段が取得する測定結果との差分を示す関係式から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する、請求項1に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項3】
前記指標取得手段は、
前記関係式から、非低酸素状態で測定される血圧と低酸素状態で測定される血圧との差分を取得する、請求項2に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項4】
被検者が睡眠中であるか否かを判定する手段と、
前記低酸素時取得手段は、被検者が睡眠中と判定される場合の低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する、請求項2または3に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項5】
前記非低酸素時取得手段は、前記睡眠中と判定される場合の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する、請求項4に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項6】
被検者の血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定手段と、
被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、をさらに備え、
前記低酸素時取得手段は、
前記酸素飽和度測定手段により測定される血中酸素飽和度と前記閾値とを比較する比較手段を、含み、
前記比較手段の比較結果に基づき、前記血圧測定手段に血圧測定を開始させる、請求項2から5のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項7】
前記酸素飽和度測定手段は、所定間隔で、血中酸素飽和度を測定し、
前記比較手段は、
所定間隔で測定される各血中酸素飽和度に基づき、当該血中酸素飽和度が前記閾値よりも低いか否かを判別するための判別手段を、有し、
前記低酸素時取得手段は、
前記判別手段により低いと判別されるとき、前記血圧測定手段に血圧測定を開始させる手段、を含む、請求項6に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項8】
前記指標取得手段は、
前記心血管リスク評価の指標として、前記関係式に基づき、被検者の低酸素感受性を取得する、請求項2から7のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項9】
前記低酸素時取得手段は、非低酸素期間において測定される被検者の血中酸素飽和度から前記閾値を算出する、請求項2から8のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項10】
心血管リスクの評価指標を出力するプログラムであって、
血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得するステップと、
血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得するステップと、
取得される低酸素期間の測定結果と、取得される非低酸素期間の測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、心血管リスク評価の指標を取得するステップと、
取得される前記指標を出力部に出力させるステップと、をプロセッサに実行させる、プログラム。
【請求項1】
被検者の血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する低酸素時取得手段と、
被検者の血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する非低酸素時取得手段と、
前記低酸素時取得手段が取得する測定結果と、前記非低酸素時取得手段が取得する測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する指標取得手段と、
取得される前記指標を出力部に出力させる手段と、を備える、心血管リスク評価装置。
【請求項2】
前記指標取得手段は、
前記低酸素時取得手段が取得する測定結果と、前記非低酸素時取得手段が取得する測定結果との差分を示す関係式から、被検者の心血管リスク評価の指標を取得する、請求項1に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項3】
前記指標取得手段は、
前記関係式から、非低酸素状態で測定される血圧と低酸素状態で測定される血圧との差分を取得する、請求項2に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項4】
被検者が睡眠中であるか否かを判定する手段と、
前記低酸素時取得手段は、被検者が睡眠中と判定される場合の低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する、請求項2または3に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項5】
前記非低酸素時取得手段は、前記睡眠中と判定される場合の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得する、請求項4に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項6】
被検者の血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定手段と、
被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、をさらに備え、
前記低酸素時取得手段は、
前記酸素飽和度測定手段により測定される血中酸素飽和度と前記閾値とを比較する比較手段を、含み、
前記比較手段の比較結果に基づき、前記血圧測定手段に血圧測定を開始させる、請求項2から5のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項7】
前記酸素飽和度測定手段は、所定間隔で、血中酸素飽和度を測定し、
前記比較手段は、
所定間隔で測定される各血中酸素飽和度に基づき、当該血中酸素飽和度が前記閾値よりも低いか否かを判別するための判別手段を、有し、
前記低酸素時取得手段は、
前記判別手段により低いと判別されるとき、前記血圧測定手段に血圧測定を開始させる手段、を含む、請求項6に記載の心血管リスク評価装置。
【請求項8】
前記指標取得手段は、
前記心血管リスク評価の指標として、前記関係式に基づき、被検者の低酸素感受性を取得する、請求項2から7のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項9】
前記低酸素時取得手段は、非低酸素期間において測定される被検者の血中酸素飽和度から前記閾値を算出する、請求項2から8のいずれかに記載の心血管リスク評価装置。
【請求項10】
心血管リスクの評価指標を出力するプログラムであって、
血中酸素飽和度が閾値よりも小さい低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得するステップと、
血中酸素飽和度の非低酸素期間において測定される血中酸素飽和度と当該血中酸素飽和度の測定の時に測定される血圧とを含む測定結果を取得するステップと、
取得される低酸素期間の測定結果と、取得される非低酸素期間の測定結果とに基づく血中酸素飽和度と血圧の関係から、心血管リスク評価の指標を取得するステップと、
取得される前記指標を出力部に出力させるステップと、をプロセッサに実行させる、プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−239807(P2012−239807A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115845(P2011−115845)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】
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