説明

性ホルモン依存疾患の予防・治療剤

【課題】性ホルモン依存疾患の予防・治療などの提供。
【解決手段】視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物、例えば視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物は、女性ホルモン依存性癌、子宮内膜症などの性ホルモンに依存した疾患の予防・治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性ホルモン依存疾患の予防・治療剤およびそのスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エストロゲン受容体の機能や分類について多くの知見が得られるようになり、エストロゲンの多様な生物効果の発現に関しては実にさまざまな因子が関与していることが明らかとなった。エストロゲンの作用メカニズムにおいて注目されているのは、エストロゲン受容体の構造内に存在する2つの転写促進部分である。一方はN側のドメイン(A/Bドメイン)に存在しAF-1とよばれ、他方はエストロゲンが結合するAF-2である。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)はAF-2にエストロゲンと競合的に結合する。エストロゲンの複雑な作用の一部は、このAF-1とAF-2の化合物の要求性に関係している。すなわち、乳癌細胞ではエストロゲン作用の発現にAF-1とAF-2がともに必要であり、SERMである乳癌治療薬タモキシフェンは、AF-2の作用を阻止し、乳癌細胞ではエストロゲン拮抗薬として作用する。一方、子宮内膜癌細胞ではその作用にAF-1のみ要求することから、タモキシフェンはエストロゲン作動薬として働く。よって、タモキシフェンは、子宮内膜癌AF-1作動薬であり、乳癌AF-2拮抗薬である。このように、従来、SERMを選択する場合は、AF-1およびAF-2の要求性を指標としてきた。
一方、メタスチン(KiSS-1ペプチド)は、性腺刺激ホルモン(例、FSH、LHなど)分泌促進または抑制作用、性ホルモン〔例、アンドロゲン(例、テストステロン、アンドロステンジオンなど)、エストロゲン(例、エストラジオール、エストロンなど)、プロゲステロンなど〕分泌促進または抑制作用、性腺機能改善作用、排卵誘発または促進作用、性成熟作用などを有する(特許文献1 WO 2004/080479号公報)。マウスにおいてメタスチンが脳室内投与によりGnRHを介してLHおよびFSH分泌を促進すること、メタスチンmRNAが、視床下部内で脳室周囲核(periventricular nucleus)、特に前腹側脳室周囲核(AVPV;anteroventral periventricular nucleus)、視床下部弓状核(ARC;arcuate nucleus)に発現することが組織学的に示されている(非特許文献1 Endocrinology 145巻, 9号, 4073-4077頁, 2004年)。また、卵巣摘除マウスにおいて、ARCではメタスチン発現は上昇、AVPVではメタスチン発現は減少すること、卵巣摘除マウスへのE2投与によりARCではメタスチン発現が減少、AVPVではメタスチン発現が上昇すること、さらに、E2受容体(ERα)欠損マウスでは上記反応は起こらず、ERαとメタスチンが同じ細胞にあることが報告されている(非特許文献2 Endocrinology 146巻, 9号, 3686-3692頁, 2005年)。
GnRH神経の活動は、エストロゲンを含めた性ホルモンの影響を受けることが古くから知られている。GnRHは、視床下部GnRH神経から間欠的(パルス状)または一過的(サージ状)に分泌されることが知られている。サージ状のGnRH分泌は、排卵前に雌で認められる現象であり、パルス状のGnRH分泌は、雄雌共通して認められる現象である。パルスの間隔は動物種によって異なるが、性腺機能を維持する上で、パルス状に分泌されることが重要である。例えば、アカゲザルの視床下部を破壊して内因性GnRHの放出を抑制し、外からGnRHを投与してゴナドトロピンの放出を調べた結果、GnRHを1時間に1回の割合で間欠的に投与するとLHが上昇するが、持続的に投与するとLHが低下することが報告されている(非特許文献3 Science 202巻, 4368号, 631-633頁, 1978年)。
【特許文献1】WO 2004/080479号公報
【非特許文献1】Endocrinology 145巻, 9号, 4073-4077頁, 2004年
【非特許文献2】Endocrinology 146巻, 9号, 3686-3692頁, 2005年
【非特許文献3】Science 202巻, 4368号, 631-633頁, 1978年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、優れた性ホルモンに依存した疾患の予防・治療剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物が、女性ホルモン依存性癌、子宮内膜症などの性ホルモンに依存した疾患の予防・治療剤として有用であることを見出した。さらに、GnRHの発現または産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物も、女性ホルモン依存性癌、子宮内膜症などの性ホルモンに依存した疾患の予防・治療剤として有用であることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は、
〔1〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を用いることを特徴とする、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング方法、
〔2〕視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を用いて、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物またはその塩をスクリーニングする、上記〔1〕記載のスクリーニング方法、
〔3〕視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物が、性ホルモン依存疾患の予防・治療作用を有する化合物である上記〔2〕記載のスクリーニング方法、
〔4〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物が、GnRH神経に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼす化合物である上記〔1〕記載のスクリーニング方法、
〔5〕GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である上記〔4〕記載のスクリーニング方法、
〔5a〕GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、その化合物の投与方法によりGnRHパルスを調節することができる化合物である上記〔4〕記載のスクリーニング方法、
〔6〕GnRHパルスを調節する作用を有する化合物が、GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である上記〔5〕記載のスクリーニング方法、
〔7〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を含有することを特徴とする、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
〔8〕視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を用いることを特徴とする、視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
〔9〕視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を含有することを特徴とする、視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
〔10〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼす化合物またはその塩を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤、
〔11〕作用が、エストロゲン調節作用である上記〔10〕記載の予防・治療剤、
〔12〕化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である上記〔10〕記載の予防・治療剤、
〔13〕性ホルモン依存疾患が、女性ホルモン依存性癌、子宮内膜症、子宮筋腫または思春期早発症である上記〔10〕記載の予防・治療剤、
〔14〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物が、GnRH神経に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼす化合物である上記〔10〕記載の予防・治療剤、
〔15〕GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である上記〔14〕記載の予防・治療剤、
〔16〕GnRHパルスを調節する作用を有する化合物が、GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である上記〔15〕記載の予防・治療剤、
〔17〕GnRH神経に作用を及ぼす化合物を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤、
〔18〕GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である上記〔17〕記載の予防・治療剤、
〔19〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を含有してなるメタスチン発現または(および)産生抑制剤、
〔20〕作用が、エストロゲン調節作用である上記〔19〕記載の抑制剤、
〔21〕化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である上記〔19〕記載の抑制剤、
〔22〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制することを特徴とするLH分泌抑制方法、
〔23〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼすことを特徴とする性ホルモン依存疾患の予防・治療方法、
〔24〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン作用を調節する上記〔23〕記載の予防・治療方法、
〔25〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核において、GnRH神経に作用(直接作用または(および)間接作用を含む)を及ぼす上記〔23〕記載の予防・治療方法、
〔26〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼすことを特徴とするメタスチン発現または(および)産生抑制方法、
〔27〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン作用を調節する上記〔26〕記載の抑制方法、
〔28〕視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制することを特徴とする性ホルモン依存疾患の予防・治療方法、
〔29〕(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせてなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤、
〔30〕化合物が、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン調節作用を有する化合物である上記〔29〕記載の予防・治療剤、
〔31〕化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である上記〔29〕記載の予防・治療剤、
〔32〕(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせて用いる性ホルモン依存疾患の予防・治療方法、
〔33〕化合物が、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン調節作用を有する化合物である上記〔32〕記載の予防・治療方法、
〔34〕化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である上記〔32〕記載の予防・治療方法などに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を用いることを特徴とする、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング方法」で得られる化合物またはその塩は性ホルモン依存疾患の予防・治療に有用である。
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩、特に視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物またはその塩、GnRH神経に作用を及ぼす化合物またはその塩は性ホルモン依存疾患の予防・治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物」は、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に直接的または(および)間接的に何らかの作用を及ぼす化合物であればよい。例えば、エストロゲン調節作用を有する化合物、GnRH神経に何らかの作用(直接的または(および)間接的作用)を及ぼす化合物などが挙げられる。
視床下部弓状核に何らかの作用を及ぼす化合物としては、例えば、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニストまたはアンタゴニスト作用を有する化合物などが挙げられる。
前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物としては、例えば、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニストまたはアンタゴニスト作用を有する化合物などが挙げられる。
「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物」として好ましくは、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物などが挙げられる。
このような化合物としては、例えば、選択的女性ホルモン受容体モジュレーター(選択的エストロゲン受容体モジュレーター;SERM)(例、タモキシフェン、ラロキシフェンなど)、エストロゲン誘導体(例、RU-486、Nafoxidine、Estradiol 3-benzonate 17-n-butyrateなど)、中枢神経系薬(例、中枢神経系の予防治療作用を有する化合物など)などが挙げられる。
性ホルモン依存疾患としては、性ホルモンに依存した疾患であればいずれでもよく、例えば、女性ホルモン依存性癌(例、乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌など)、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症などが挙げられる。
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に何らかの作用を及ぼす化合物としては、例えば、GnRH神経に何らかの作用を及ぼす化合物などが挙げられる。GnRH神経に作用を及ぼす化合物としては、GnRH神経に直接的または(および)間接的に作用を及ぼす化合物であればよく、例えばGnRHパルス(GnRH神経からのGnRHの間欠的分泌)に影響を与える作用を有する化合物などが挙げられる。GnRHパルスに影響を与える作用を有する化合物としては、例えばGnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物などが挙げられる。GnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物としては、例えば、a)GnRHパルスを抑制し、振幅の低下または(および)パルス周期の延長を引き起こす作用を有する化合物、b)GnRHパルスをかく乱し、LH分泌を引き起こさないパルス状ではないGnRHの放出を引き起こす作用を有する化合物、c)GnRHパルスを抑制することにより性腺機能を抑制し、性ホルモン産生の低下を引き起こす作用を有する化合物などが挙げられる。GnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物の具体例としては、テストステロン低下による前立腺癌の増殖抑制作用を有する化合物、前立腺細胞の増殖抑制による前立腺肥大症の改善作用を有する化合物、エストロゲン低下による乳癌の増殖抑制作用を有する化合物、子宮内膜症の症状改善作用を有する化合物などが挙げられる。
投与方法(例、単回投与、連続投与、間欠投与、持続投与など;経口投与、皮下投与、筋肉内投与、脳室内投与、腹腔内投与など)によりGnRHパルスを調節することができる化合物も上記と同様に扱うことができる。
このような化合物として好ましくは、GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物などが挙げられる。
【0008】
「メタスチン」としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドと称する場合がある)などが挙げられ、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、網膜細胞、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、網膜、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL、M1、CTLL-2、HT-2、WEHI-3、HL-60、JOSK-1、K562、ML-1、MOLT-3、MOLT-4、MOLT-10、CCRF-CEM、TALL-1、Jurkat、CCRT-HSB-2、KE-37、SKW-3、HUT-78、HUT-102、H9、U937、THP-1、HEL、JK-1、CMK、KO-812、MEG-01など)に由来するポリペプチドであってもよく、合成ポリペプチドであってもよい。
【0009】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、(i) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜3個(好ましくは1〜2個、好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜3個(好ましくは1〜2個、好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜3個(好ましくは1〜2個、好ましくは、1個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、
(iv) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜3個(好ましくは1〜2個、好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(v) 上記(i)〜(iv)を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
【0010】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、前記の配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、本発明のポリペプチドの有する活性(例、受容体との結合活性または細胞刺激活性、排卵促進作用、性腺刺激ホルモン分泌促進活性、性腺刺激ホルモン分泌抑制活性、性ホルモン分泌促進活性、性ホルモン分泌抑制活性など)などがあげられる。実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。
受容体との結合活性または細胞刺激活性の測定は、公知の方法に準じて行う。
排卵促進作用の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、European Journal of Endocrinology、第138巻、594-600頁、1998年に記載の方法またはそれに準じた方法、後述の実施例に記載の方法などに従って測定することができる。
性腺刺激ホルモン分泌促進活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、Toxicology, 第147巻、15-22頁、2000年に記載の方法またはそれに準じた方法、後述の実施例に記載の方法などに従って測定することができる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列の具体例としては、例えば、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:7で表されるアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、または配列番号:15で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどがあげられる。
【0011】
本発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチン(45-54)と称する場合もある〕、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、マウスメタスチン(43-52)またはラットメタスチン(43-52)と称する場合もある〕、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチンまたはヒトメタスチン(1-54)と称する場合もある〕、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、マウスメタスチンと称する場合もある〕、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ラットメタスチンと称する場合もある〕、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチン(40-54)と称する場合もある〕、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチン(46-54)と称する場合もある〕、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチン(47-54)と称する場合もある〕、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド〔以下、ヒトメタスチン(48-54)と称する場合もある〕などがあげられる。
【0012】
本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、または糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
【0013】
本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドは、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から公知のポリペプチドの精製方法によって製造することもできるし、ポリペプチドをコードするDNAで形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することもできるし、ペプチド合成法に準じて製造することもできる。例えば、WO 00/24890号公報、WO 01/75104号公報、WO02/072816号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
【0014】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)としては、例えば(a)配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表される塩基配列を含有するDNA、(b)配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表される塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性を有するポリペプチドをコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18または配列番号:19で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0015】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、(i) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:17で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(ii) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNA、配列番号:19で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(iii) 配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(iv) 配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:6で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(v) 配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:8で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(vi) 配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:10で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(vii) 配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:12で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(viii) 配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:14で表される塩基配列を含有するDNAなどが、
(ix) 配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0016】
(1)「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を用いる、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング」
「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤」および
「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を含有してなるメタスチン発現または(および)産生抑制剤」
エストロゲンは視床下部弓状核でメタスチンの産生を低下させ、前腹側脳室周囲核においてメタスチンの産生を上昇させることから、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩、好ましくは視床下部弓状核においてエストロゲン調節作用(好ましくはエストロゲンアゴニスト作用)を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲン調節作用(好ましくはエストロゲンアンタゴニスト作用)を有する化合物またはその塩は、メタスチンの発現または(および)産生を抑制し、性ホルモン依存疾患の予防・治療に有用である。
GnRHのパルス状分泌は、正常なLH分泌を引き起こし、これにより性ホルモンが正常に分泌されることより、GnRHのパルス状分泌は雌雄共に性腺機能を維持する上で重要である。よって、GnRH神経に作用を及ぼす化合物、特に「GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物」は、性腺機能を調節し、性ホルモン依存性疾患の予防・治療剤として有用である。「GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物」は、その作用点がGnRHの産生部位にある必要がなく、GnRH神経の投射部位などにあってもよいことより、スクリーニングの際、該作用を示す化合物を得る可能性が高い。
視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核としては、例えば、ヒトや温血動物(例、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核またはこれらを含む組織切片などが用いられる。
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング方法の例として、以下の方法などが挙げられる。
「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物」として、例えば(1)視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物、視床下部弓状核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物、(2)GnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物などが挙げられる。
【0017】
以下(i)〜(vi)において、ERK2のリン酸化量の測定は、公知の方法、例えばWestern blotting法またはそれに準ずる方法などを用いる。
(i)視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物−1
卵巣摘出ラットに対して(i-a)vehicle(試験化合物を溶かす溶媒のみ)を投与した場合と(i-b)試験化合物を投与した場合の視床下部弓状核におけるエストロゲンアゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物、好ましくは視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物を選択する。
具体例として、(i-a')vehicleを投与した卵巣摘出ラットおよび(i-b')試験化合物を投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、視床下部弓状核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのextracellular signal-regulated protein kinase (ERK)2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(i-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(i-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物、好ましくは視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物として選択する。
【0018】
(ii)視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物−2
卵巣摘出ラットに対して(ii-a)エストロゲンを投与した場合と(ii-b)エストロゲンおよび試験化合物を投与した場合の視床下部弓状核におけるエストロゲンアゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物、好ましくは視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物を選択する。
具体例として、(ii-a')エストロゲンを投与した卵巣摘出ラットおよび(ii-b')試験化合物およびエストロゲンを投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、視床下部弓状核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのERK2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(ii-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(ii-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物、好ましくは視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物として選択する。
【0019】
(iii)視床下部弓状核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物
卵巣摘出ラットに対して(iii-a)エストロゲンを投与した場合と(iii-b)試験化合物およびエストロゲンを投与した場合の視床下部弓状核におけるエストロゲンアンタゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物(例、視床下部弓状核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物)を選択する。
具体例として、(iii-a')試験化合物を投与した卵巣摘出ラットおよび(iii-b')試験化合物およびエストロゲンを投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、視床下部弓状核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのERK2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(iii-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(iii-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、視床下部弓状核に作用を及ぼす化合物(例、視床下部弓状核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物)として選択する。
【0020】
(iv)前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物−1
卵巣摘出ラットに対して(iv-a)vehicleを投与した場合と(iv-b)試験化合物を投与した場合の前腹側脳室周囲核におけるエストロゲンアゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物(例、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物)を選択する。
具体例として、(iv-a')vehicleを投与した卵巣摘出ラットおよび(iv-b')試験化合物を投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、前腹側脳室周囲核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのERK2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(iv-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(iv-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物(例、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物)として選択する。
【0021】
(v)前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物−2
卵巣摘出ラットに対して(v-a)エストロゲンを投与した場合と(v-b)エストロゲンおよび試験化合物を投与した場合の前腹側脳室周囲核におけるエストロゲンアゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物(例、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物)を選択する。
具体例として、(v-a')エストロゲンを投与した卵巣摘出ラットおよび(v-b')試験化合物およびエストロゲンを投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、前腹側脳室周囲核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのERK2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(v-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(v-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上促進する試験化合物を、腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物(例、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアゴニスト作用を有する化合物)として選択する。
【0022】
(vi)前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物
卵巣摘出ラットに対して(vi-a)エストロゲンを投与した場合と(vi-b)試験化合物およびエストロゲンを投与した場合の前腹側脳室周囲核におけるエストロゲンアンタゴニスト作用をそれぞれ測定し、比較することにより、前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物、好ましくは前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物を選択する。
具体例として、(vi-a')試験化合物を投与した卵巣摘出ラットおよび(vi-b')試験化合物およびエストロゲンを投与した卵巣摘出ラットより、投与20分後に脳を取り出し、脳より1mmのスライス切片を作製し、前腹側脳室周囲核をそれぞれ切り取る。切片をホモジナイズし、蛋白量5μg当たりのERK2のリン酸化量をそれぞれ測定し比較する。
例えば、上記(vi-b')の場合のERK2のリン酸化量を、上記(vi-a')の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物、好ましくは前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物として選択する。
(vii)GnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物
GnRHパルスの測定は、公知の方法、例えばJ. Reprod. Dev. 43(1), 101-106 (1997)などに記載の方法に準じて行う。具体的には、卵巣を摘出した体重20-30 kgのシバヤギを24時間程度絶食・絶水後、適切な麻酔処置を施した後に脳定位固定装置に45度鼻骨を傾けた状態で固定する。眼窩上孔から背側 2-3 mmの位置に水平に6 cm切開し、さらに前頭骨の正中線に向かって8 cmほど切開して前頭骨を露出する。前頭骨から約4 cmの大きさで三角形の骨片を取り除き、露出した鼻甲介、鼻中隔を取り除く。視交叉に向かって直径10 mmほどのトンネルを掘り、更に手術用顕微鏡を用いて、腹側に穴を広げる。下垂体の手前にある骨を注意深く取り除き、下垂体を被う硬膜に5 mm四方の穴をあける。蝶形骨内の穴に採血用器具(12ゲージの針(上部の穴)と14ゲージ(下部の穴)の針に直径5-6 mmのプラスチックカップを固定したもの)を取り付け、100 IU/mLのヘパリンを含む生理食塩水で中を満たし、1週間程度の回復期間を置く。採血当日、10000IUのヘパリンを3回に分けて静脈内投与する。試験化合物を適当な溶媒に溶解し静脈内投与した後、採血用器具の上部の穴から、鋭利な16ゲージの針を挿入し、下垂体前面の門脈系に4-5箇所の穴をあける。カップに落ちた血液は、採血用器具の下部の穴からポンプで吸引する(0.5 mL/5min以上の速度で採血することができる)。門脈血は5分間隔で採血し、血液はバシトラシン(濃度3 mM、500μL/tube、シグマ)の入ったガラスチューブに回収して氷上に保管し、採血後1時間以内に遠心してサンプルを回収する。メタノールによる抽出を行った後、GnRHの含量をRIAにて測定する。測定したGnRH(例、パルス頻度、パルス振幅、平均GnRH濃度など)がコントロール群(溶媒投与群)と比較して約10%以上低下させる作用を有する化合物を、GnRHのパルス状の放出を制御する作用を有する化合物として選択する。
【0023】
本発明のキットは、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を含有する。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0024】
上記スクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、メタスチン発現または(および)産生を抑制し、性ホルモン依存疾患の予防・治療作用を有する化合物である。該化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を上述の剤として使用する場合、常套手段に従って、例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、乳癌の治療の目的で該化合物を皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0025】
(2)「視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を用いる、視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩のスクリーニング」
メタスチンは、性腺刺激ホルモン(例、FSH、LHなど)分泌促進作用を介して性ホルモン〔例、アンドロゲン(例、テストステロン、アンドロステンジオンなど)、エストロゲン(例、エストラジオール、エストロンなど)、プロゲステロンなど〕分泌促進作用を有することより、視床下部弓状核または前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩は、性ホルモン依存疾患の予防・治療に有用である。
スクリーニング方法の例として、以下の方法などが挙げられる。
卵巣摘出ラットに対して(a)試験化合物を投与した場合と(b)試験化合物およびエストロゲンを投与(好ましくは同時投与)した場合のメタスチンの発現または産生をそれぞれ測定し、比較することにより、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する作用を有する化合物またはその塩を選択する。
メタスチンの発現または(および)産生量としては、メタスチン遺伝子の発現量、メタスチンタンパク質量、メタスチンタンパク質をコードするmRNA量などが挙げられる。
タンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、メタスチンタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
mRNA量の測定は、公知の方法、例えばノーザンハイブリダイゼーション、PCR法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
例えば、上記(b)の場合における発現または産生量を、上記(a)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する作用を有する化合物として選択することができる。
視床下部弓状核、前腹側脳室周囲核、試験化合物としては、上記と同様のものが挙げられる。
本発明のキットとしては、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を含有すればよい。
【0026】
上記スクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、性ホルモン依存疾患の予防・治療作用を有する化合物またはその塩である。
【0027】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する作用を有する化合物またはその塩を上述の性ホルモン依存疾患の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って、例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、乳癌の治療の目的で該化合物を皮下投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0028】
(3)「視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制することを特徴とするLH分泌抑制方法」
メタスチンは、性腺刺激ホルモン(例、FSH、LHなど)分泌促進作用を介して性ホルモン〔例、アンドロゲン(例、テストステロン、アンドロステンジオンなど)、エストロゲン(例、エストラジオール、エストロンなど)、プロゲステロンなど〕分泌促進作用を有することより、視床下部弓状核または前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩は、LH分泌を抑制し、性ホルモン依存疾患の予防・治療に有用である。また視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制する作用を有する化合物またはその塩は、LH分泌抑制剤として有用である。
【0029】
(4)「(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせてなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤」および
「(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせて用いる性ホルモン依存疾患の予防・治療方法」
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩は、メタスチンアンタゴニスト、ホルモン療法剤、抗癌剤(例、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)など(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用することができる。
該化合物は単剤として使用しても優れた性ホルモン依存疾患の予防治療作用を示すが、さらに前記併用薬物の一つまたは幾つかと併用(多剤併用)することによって、その効果をより一層増強させることができる。
「メタスチンアンタゴニスト」としては、例えば、WO 2004/58716号公報記載のN-[4-(3-アミノフェニル)-3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)ピリジン-2-イル]チオフェン-2-カルボキサミド、[(3-{3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)-2-[(2-チエニルカルボニル)アミノ]ピリジン-4-イル}フェニル)アミノ](オキソ)酢酸エチルエステル、N-(3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)-4-{3-[(メトキシアセチル)アミノ]フェニル}ピリジン-2-イル)チオフェン-2-カルボキサミド、N-(3-{3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)-2-[(2-チエニルカルボニル)アミノ]ピリジン-4-イル}フェニル)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボキサミド、N-[3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(3-{[(5-オキソテトラヒドロフラン-2-イル)カルボニル]アミノ}フェニル)ピリジン-2-イル]イソキサゾール-5-カルボキサミド、N-[3-シアノ-6-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(3-{[(5-オキソテトラヒドロフラン-2-イル)カルボニル]アミノ}フェニル)ピリジン-2-イル] -2-フランアミドなどが挙げられる。
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ERダウンレギュレーター(例、フルベストラント等)、ヒト閉経ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン等)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド等)、5α-レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド等)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン等)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン等)、レチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール等)などが挙げられる。LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)が好ましい。
「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビンなどが挙げられる。
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が用いられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)等〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin-like growth factor)-1、IGF-2等〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF-10等〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL-2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)等〕などが挙げられる。
「細胞増殖因子の受容体」としては、前記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体-1またはFGF受容体-2などが挙げられる。
「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標);HER2抗体)、メシル酸イマチニブ、ZD1839またはセツキシマブ、VEGFに対する抗体(例、ベバシツマブ)、VEGF受容体に対する抗体、ゲフィチニブ、エルロチニブなどが挙げられる。
前記の薬剤の他に、L-アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン等)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサン等)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類等)、血管新生阻害薬(例、サリドマイド、SU11248等)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシン等)、セリン・スレオニンキナーゼ阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬(例、アトラセンタン等)、プロテアゾーム阻害薬(例、ボルテゾミブ等)、Hsp90阻害薬(例、17-AAG等)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α−ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害・転移抑制薬(例、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)なども用いることができる。
【0030】
該化合物と併用薬物とを組み合わせることにより、
(1)該化合物または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減することができる、
(2)患者の症状(軽症、重症など)に応じて、該化合物と併用する薬物を選択することができる、
(3)該化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を長く設定することができる、
(4)該化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図ることができる、
(5)該化合物と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる、などの優れた効果を得ることができる。
【0031】
以下、該化合物と併用薬物を併用して使用することを「本発明の併用剤」と称する。
本発明の併用剤は、毒性が低く、例えば、該化合物または(および)上記併用薬物を自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下または臓器内投与または直接病巣に投与することができる。
本発明の併用剤の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機または無機担体物質があげられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤、または液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤等があげられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
本発明の併用剤の使用に際しては、該化合物と併用薬物の投与時期は限定されず、該化合物またはその医薬組成物と併用薬物またはその医薬組成物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
本発明の併用剤の投与形態は、特に限定されず、投与時に、該化合物と併用薬物とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)該化合物と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)該化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の投与の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)該化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)該化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)該化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、該化合物;併用薬物の順序での投与、または逆の順序での投与)などが挙げられる。
本発明の併用剤における該化合物と併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
例えば、本発明の併用剤における該化合物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01〜100重量%、好ましくは約0.1〜50重量%、さらに好ましくは約0.5〜20重量%である。
本発明の併用剤における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01〜100重量%、好ましくは約0.1〜50重量%、さらに好ましくは約0.5〜20重量%である。
本発明の併用剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1〜99.99重量%、好ましくは約10〜90重量%である。
また、該化合物および併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
(5)「GnRH神経に作用を及ぼす化合物を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤」
GnRHのパルス状分泌は、正常なLH分泌を引き起こし、これにより性ホルモンが正常に分泌されることより、GnRHのパルス状分泌は雌雄共に性腺機能を維持する上で重要である。よって、GnRH神経に作用を及ぼす化合物、特に「GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物」は、性腺機能を調節し、性ホルモン依存性疾患の予防・治療剤として有用である。「GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物」は、その作用点がGnRHの産生部位にある必要がなく、GnRH神経の投射部位などにあってもよいことより、スクリーニングの際、該作用を示す化合物を得る可能性が高い。
GnRH神経に作用を及ぼす化合物を性ホルモン依存疾患の予防・治療剤として使用する場合、上記(1)と同様に使用すればよい。
さらに、GnRH神経に作用を及ぼす化合物は、上記(4)と同様に、メタスチンアンタゴニスト、ホルモン療法剤、抗癌剤(例、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)などと併用して使用することができる。
【0032】
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :スレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リジン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
【0033】
本願の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトメタスチン(45-54)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
マウスメタスチン(43-52)およびラットメタスチン(43-52)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトメタスチンのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ヒトメタスチンをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
マウスメタスチンのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
マウスメタスチンをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ラットメタスチンのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ラットメタスチンをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
ヒトメタスチン(40-54)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ヒトメタスチン(40-54)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ヒトメタスチン(46-54)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ヒトメタスチン(46-54)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒトメタスチン(47-54)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトメタスチン(47-54)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトメタスチン(48-54)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
ヒトメタスチン(48-54)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ヒトメタスチン(45-54)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
マウスメタスチン(43-52)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
ラットメタスチン(43-52)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
実施例2で用いられたプローブの塩基配列を示す。
〔配列番号:23〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕
実施例2で用いられたプローブの塩基配列を示す。
【0034】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
卵巣摘除ラットおよび卵巣摘除後エストロゲン投与ラットでのラット視床下部視索前野脳室周囲核(AVPV)および弓状核(ARC)における免疫組織化学によるメタスチン免疫陽性活性の変動
Wistar系成熟雌ラット(7週齢)をsodium pentobarbital (大日本製薬)を腹腔内投与(50mg/kg)して十分に麻酔後、左右の卵巣を摘出し、卵巣摘除ラットと卵巣摘除後17β-estradiol(SIGMA社)を充填したサイラスティックチューブ(内径1.58 mm, 外径2.41 mm, 長さ20 mm; Dow Corning社)を皮下に移植したラットを用意した。手術から12日後、ガイドカニューラ(22G)のステンレスパイプを短く切り、インターナルカニューラを挿入した状態でアロンアルファで固定し、それにコネクターチューブを0.9% 生理食塩水に溶解したコルヒチン(和光純薬工業)5 mg/mlを15μl側脳室へ自然落下にて投与した。投与位置は、ブレグマ後方0.8 mm、下方2.5-3.5 mm、矢状縫合から1.3 mmとした。コルヒチン投与2日後に、ラットの脳を摘出し、5% アクロレイン(東京化成工業)を含む0.07M リン酸緩衝液(pH 7.4)で一晩浸漬固定した。次に30% ショ糖を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に2日以上浸漬した。免疫組織化学はフリーフローティング法で行った。まず、cryomicrotome (YAMATO KOHKI)を用いて、厚さ50 μmの前頭断切片を作製した。次に、切片をPBSに浸して洗浄および浸水化させた後、内因性のペルオキシターゼ活性を0.5% メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含むPBSによる処理(20分)にて失活させ、アルデヒド基を1% 水素化ホウ素ナトリウムを含むPBSによる処理(20分)にて還元した。さらに、1% 正常ウマ血清および0.4% Triton X-100を含むPBS(TNBS)による処理(1時間)にて非特異反応のブロッキングを行った。メタスチンの局在は、avidin biotinylated-horseradish-peroxidase (HRP) complex (ABC)法(Vector Laboratory社)で可視化した。すなわち、切片をメタスチン特異的モノクローナル抗体である抗ラットメタスチン抗体 No. 254(490 ng/ml)を含むTNBSと室温で12時間以上反応させ、PBSで十分洗浄した後、biotinylated anti-mouse IgG (Vector Laboratory社)を含むTNBS(1: 300)と室温で2時間反応させた。PBSで十分洗浄後、ABCと室温で30分間反応させ、その後基質として0.02% 3,3-diaminobenzidine-tetrachloride(同仁化学研究所)および0.006% H2O2を含む50mM Tris-HCl(pH 7.6)で発色反応を行った。発色をPBS洗浄により停止した後、切片をスライドガラスに載せ、脱水・キシレンによる透徹を行いエンテラン・ニュー(メルク・ジャパン株式会社)に封入し、光学顕微鏡で観察した。その結果、エストロゲン投与群のメタスチンの免疫活性は、非投与群に比較してAVPVで増強が見られ、ARCでは低下が認められた。
【0035】
実施例2
ラットAVPVまたは弓状核−正中隆起(ARC-ME)を用いたKiss-1遺伝子発現解析によるスクリーニング法
試験化合物を皮下、経口、静脈または脳室内へ投与した後、ラットを断頭して、直ちに脳を取り出し、ブレインブロッカーを用いて脳スライスを作成する。AVPVおよびARC-ME領域を切り出し、直ちにRNA精製を行わない場合には、液体窒素やドライアイスを用いて急速凍結後、保存する。AVPVおよびARC-ME組織から、RNeasy Mini KitおよびRNase-free DNase Set(キアゲン)を用いて全RNAの精製およびゲノムDNAの除去を行う。方法は、それぞれの添付文書に従う。ここでは、ラット1匹から得たAVPVおよびARC-ME組織1サンプルあたり、2-ME(2-メルカプトエタノール)を添加したRLTバッファーを300μL添加し、ホモジナイズ後、全RNAを精製する。最後に1サンプルあたり30μLの水を添加してRNAを溶出する。
RNAサンプルからの第一鎖cDNA合成は、SuperScriptIII(インビトロジェン)を用いて行う。方法は、添付文書に従う。ここでは、oligo(dT)20プライマーを用いてcDNAを合成する。逆転写反応溶液20μLあたり、8μLのRNAサンプルを添加し、50℃で60分間の逆転写反応を行ってcDNAを得る。最後に反応液中に残存するRNAを分解する為にRNaseHを添加し、37℃で20分間保温する。
ラットKiss-1遺伝子およびラットβ-actin遺伝子の発現量解析には、先に合成したcDNAサンプルと、ラットKiss-1またはラットβ-actin遺伝子の塩基配列と同一または相補的な塩基配列を含むプライマーおよびTaqManプローブを使用し、リアルタイムPCRにより解析する。使用するプライマーおよびプローブの配列は以下の通りである。
ラットKiss-1 解析用
フォワードプライマー:5’-ATGATCTCGCTGGCTTCTTGG-3’(配列番号:20)
リバースプライマー:5’-GGTTCACCACAGGTGCCATTTT-3’ (配列番号:21)
TaqManプローブ:5’-(FAM)-TGCTTCTCCTCTGTGTGGCCTCTTTTG G-(TAMRA)-3’ (配列番号:22)
ラットβ-actin 解析用
フォワードプライマー:5’-ATGAGCTGCCTGACGGTCAG-3’ (配列番号:23)
リバースプライマー:5’-GGAAGGCTGGAAGAGAGCCT-3’ (配列番号:24)
TaqManプローブ:5’-(FAM)-CATCACTATCGGCAATGAGCGGTTCC-(TAMRA)-3’ (配列番号:25)
ここで、(FAM)は6-carboxy-fluorescein、(TAMRA)は6-carboxytetramethyl-rhodamineを意味する。
TaqMan PCRを20μLの反応溶液中で行う場合には、フォワードおよびリバースプライマーを6pmol、TaqManプローブを4pmol、TaqManユニバーサルPCRマスターミックス(アプイライドバイオシステムズ)を10μL、およびcDNA溶液と適当量の水を加える。TaqMan PCRは、ここではアプライドバイオシステムズ社のシーケンスディテクションシステム7900HTで行う。反応は、最初95℃で10分間保持した後、95℃で15秒、60℃で1分間からなる反応サイクルを40回繰り返す。発現量はSDSソフトウェア(アプライドバイオシステムズ)で解析し、ラットβ-actinの発現量を基に各サンプル中のラットKiss-1遺伝子発現量を補正し、ラットAVPVまたはARC-MEでKiss-1遺伝子の発現低下を示す化合物を選択する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を用いることを特徴とする、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項2】
視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を用いて、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物またはその塩をスクリーニングする、請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物が、性ホルモン依存疾患の予防・治療作用を有する化合物である請求項2記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物が、GnRH神経に作用を及ぼす化合物である請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である請求項4記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
GnRHパルスを調節する作用を有する化合物が、GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である請求項5記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核を含有することを特徴とする、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項8】
視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を用いることを特徴とする、視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項9】
視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核を含有することを特徴とする、視床下部弓状核および前腹側脳室周囲核のメタスチンの発現または(および)産生を抑制する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項10】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤。
【請求項11】
作用が、エストロゲン調節作用である請求項10記載の予防・治療剤。
【請求項12】
化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である請求項10記載の予防・治療剤。
【請求項13】
性ホルモン依存疾患が、女性ホルモン依存性癌、子宮内膜症、子宮筋腫または思春期早発症である請求項10記載の予防・治療剤。
【請求項14】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物が、GnRH神経に作用を及ぼす化合物である請求項10記載の予防・治療剤。
【請求項15】
GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である請求項14記載の予防・治療剤。
【請求項16】
GnRHパルスを調節する作用を有する化合物が、GnRHの発現または(および)産生に影響を与えず、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である請求項15記載の予防・治療剤。
【請求項17】
GnRH神経に作用を及ぼす化合物を含有してなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤。
【請求項18】
GnRH神経に作用を及ぼす化合物が、GnRHパルスを調節する作用を有する化合物である請求項17記載の予防・治療剤。
【請求項19】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩を含有してなるメタスチン発現または(および)産生抑制剤。
【請求項20】
作用が、エストロゲン調節作用である請求項19記載の抑制剤。
【請求項21】
化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である請求項19記載の抑制剤。
【請求項22】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制することを特徴とするLH分泌抑制方法。
【請求項23】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼすことを特徴とする性ホルモン依存疾患の予防・治療方法。
【請求項24】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン作用を調節する請求項23記載の予防・治療方法。
【請求項25】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核において、GnRH神経に作用を及ぼす請求項23記載の予防・治療方法。
【請求項26】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼすことを特徴とするメタスチン発現または(および)産生抑制方法。
【請求項27】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン作用を調節する請求項26記載の抑制方法。
【請求項28】
視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてメタスチンの発現または(および)産生を抑制することを特徴とする性ホルモン依存疾患の予防・治療方法。
【請求項29】
(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせてなる性ホルモン依存疾患の予防・治療剤。
【請求項30】
化合物が、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン調節作用を有する化合物である請求項29記載の予防・治療剤。
【請求項31】
化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である請求項29記載の予防・治療剤。
【請求項32】
(i)視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核に作用を及ぼす化合物またはその塩と、(ii)メタスチンアンタゴニストとを組み合わせて用いる性ホルモン依存疾患の予防・治療方法。
【請求項33】
化合物が、視床下部弓状核または(および)前腹側脳室周囲核においてエストロゲン調節作用を有する化合物である請求項32記載の予防・治療方法。
【請求項34】
化合物が、視床下部弓状核においてエストロゲンアゴニスト作用を有し、前腹側脳室周囲核においてエストロゲンアンタゴニスト作用を有する化合物である請求項32記載の予防・治療方法。

【公開番号】特開2007−325581(P2007−325581A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217020(P2006−217020)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】