説明

性機能不全の治療における、任意でPDE5阻害剤と組み合わせた、3−α−アンドロスタンジオールの使用

本発明は、男性および/または女性の性機能不全の分野に関する。具体的には本発明は、好ましくは5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤と組み合わせた、3-α-アンドロスタンジオールの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性および/または女性の性機能不全の分野に関する。本発明は特に、好ましくは5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤と組み合わせた、3-α-アンドロスタンジオールの頓用に関する。
【背景技術】
【0002】
男性の性機能不全(MSD)とは、性的関心欠損症(ISD)、勃起不全(ED)すなわちインポテンス、および早漏(premature ejaculation;PE、早漏(rapid ejaculation)、早漏(early ejaculation)、または早漏(ejaculatio praecox)としても知られる)、および無オルガスム症を含む、男性の性機能のさまざまな障害または機能障害を意味する。EDは、シルデナフィル、バルデナフィル、およびタダラフィルなどのPDE5阻害剤を使用した治療が成功している。PEについて現在成功している治療は、陰茎における感覚を低減する麻酔クリーム(リドカイン、プリロカイン、および配合剤など)、ならびにパロキセチン、フルオキセチン、およびセルトラリンなどのSSRI系抗うつ薬を含む。現在、ISDについて成功している投薬法は知られていない。
【0003】
女性の性機能不全(FSD)とは、性行為に対する関心の欠如、性的興奮への到達またはその持続の度重なる失敗、十分な興奮後にオルガスムに到達できないことを含む、性機能のさまざまな障害もしくは機能障害を意味する。最近の研究では、米国では女性の43%が性機能不全を有すると推定されている[1]。性欲低下(罹患率22%)および性的興奮異常(罹患率14%)は、女性の性機能不全の最も一般的なカテゴリーに属する。これらのカテゴリーは、研究者および治療専門家に対して実用的な定義および受け入れられている語彙(accepted lexicon)を提供するのに好都合である。しかしながら、これらの障害が相互に完全に独立したものであると仮定することは正しくない可能性がある。これらの障害が重複しうることおよび相互に依存する可能性があることを、症例研究および疫学研究の両方が実証している。場合によっては、他の障害に至る一次障害を同定することが可能でありうるが、多くの場合は不可能であろう。
【0004】
3-α-アンドロスタンジオールは、米国特許第6,242,436 B1号(特許文献1)に、アンドロゲン補充療法(repletion therapy)の代替法として、およびヒトにおけるアンドロゲンの減少/枯渇に関連する問題に関して記載されている。この置換の目的とは、3-α-アンドロスタンジオールの投与による、生理的血清濃度以下のジヒドロテストステロン(DHT)の補充にあると記載されている。また、アンドロゲンの減少/枯渇に関連する問題を減少させる作用機構も、米国特許第6,242,436 B1号(特許文献1)によれば、DHTの補充にある。アンドロゲンの枯渇は、性的動機付けを低下させる場合がある。しかしながら、性的動機付けの低下は、アンドロゲン濃度の異常には起因しないことが多い。
【0005】
男性および/または女性の性的障害の治療に関しては、成功の度合いが大きいまたは小さいいくつかの異なる治療が提案されており、かつ使用されている。例えば、国際公開公報第2005/107810号(特許文献2)には、性行為に関して特定の順序および時間枠で成分が放出されなければならない、テストステロンおよび5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤の使用について記載されている。この治療は有望な結果を提供するが、使用される時間枠は、性行為を見越した状況では望ましくないほど長いと見なされている。さらに、国際公開公報第2005/107810号(特許文献2)に記載された治療は、やや複雑である。なぜなら、活性成分の剤形に依存して、活性成分は、特定の順序および/または時間枠で投与されなければならないからである。正しい時点における正しい活性成分の服用をそれほど正確に行えない人の場合は、性機能不全を治療するという目的は、達成されないかまたは部分的にしか達成されない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,242,436 B1号
【特許文献2】国際公開公報第2005/107810号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、3-α-アンドロスタンジオールの投与が、MSDの男性およびFSDの女性における、性的動機付けの亢進および性的なきっかけに対する関心の亢進を誘導することを開示する。これらの3-α-アンドロスタンジオールの投与に依存した動機付けおよび関心の亢進は、事前の生理的アンドロゲン濃度に依存せず;3-α-アンドロスタンジオールの投与は、アンドロゲンレベルが正常(すなわち生理的)であるかまたは同様に生理的レベル以下である男性および女性において、性的動機付けおよび性的刺激に対する関心を高める。
【0008】
本発明はさらに、3-α-アンドロスタンジオール(舌下テストステロンと比較して)およびPDE5阻害剤の使用によって、活性成分の摂取と性行為との間の時間枠が短縮可能であることを開示する。さらに態様の1つでは、活性成分を同時に投与することができ、それによって成分のうち1つの服用を完全に忘れるかまたは時間内の服用を忘れるリスクを最小化する。得られる結果は、国際公開公報第2005/107810号に記載された化合物によって得られる結果と同等である。3-α-アンドロスタンジオールは、テストステロンと比較するとずっと弱いアンドロゲンであり、しかも3-α-アンドロスタンジオールは(同じくテストステロンと比較して)異なる受容体であるGABAA受容体に対する作用を有すると示唆されている[2]ので、これは驚くべきことであると見なされている。テストステロンに対する3-α-アンドロスタンジオールの別の利点とは、テストステロンが投与されず、かつしたがってエストラジオールへと還元される可能性がないので、男性化に対する副作用がより低く、かつ癌のリスクがより低いことである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様では、本発明は、性機能不全の治療用の医薬の調製における、3-α-アンドロスタンジオールの使用を提供する。性機能不全という用語は、男性および/または女性の性機能不全を意味する。
【0010】
3-α-アンドロスタンジオールは、5α-アンドロスタン3α,17β-ジオールとしても知られ、かつテストステロンの代謝物の1つである。テストステロンは、5α-還元酵素によって5α-ジヒドロテストステロン(DHT)へと変換され得る。次にDHTは、3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(3-酸化還元酵素および3α-ヒドロキシステロイド-酸化還元酵素としても知られる。以下、3α-HSD還元酵素)によって、3-α-アンドロスタンジオールへとさらに変換される。テストステロンからDHTへの変換は一方向性であり;DHTから3-α-アンドロスタンジオールへの変換は両方向性であり:3α-HSD酸化酵素は、3-α-アンドロスタンジオールをDHTへと変換することも可能である。3α-HSD還元酵素/酸化酵素の平衡は、テストステロン、DHT、および3-α-アンドロスタンジオールなどの循環ステロイドホルモンのみならず、エストロゲン、成長ホルモン、およびストレス関連グルココルチコイドによっても自己制御されているようである[3]。3α-HSD還元酵素には、ヒトでは3種類のイソ型が存在し、そのうち2種類は脳内でも認められる(AKR 1C2およびAKR 1C3としても知られるh3α-HSD2および3)。
【0011】
本発明では、遊離の3-α-アンドロスタンジオールのレベルは好ましくは、正常血清レベルの少なくとも10〜100倍、および好ましくは5〜100倍の最高血漿レベルであるべきであり[4](すなわち、女性では0.6〜6 ng/l、および好ましくは0.3〜6 ng/l、ならびに男性では2.2〜22 ng/l、および好ましくは1.1〜22 ng/l)、これは典型的には3-α-アンドロスタンジオールの投与から1〜60分後に生じる。
【0012】
3-α-アンドロスタンジオールは好ましくは、投与を受ける対象の血液循環中で3-α-アンドロスタンジオールの急激かつ迅速な上昇を示す製剤として投与される。したがって本発明は、担体としてシクロデキストリンを含む舌下製剤などの舌下製剤の形態で3-α-アンドロスタンジオールが提供される使用を提供する。適切な投与経路の別の例は、シクロデキストリン製剤、または他の通常の賦形剤および希釈剤などを使用しても実施可能である、頬粘膜(buco-mucosally)経路または鼻内経路である。製剤の典型的な例は、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンに含まれる状態で投与されるが、本質的に全ての3-α-アンドロスタンジオールを1回の短いバーストの間に放出する3-α-アンドロスタンジオールを含む製剤の調製に関して、他のβシクロデキストリンおよび他の通常の賦形剤および希釈剤などが当技術分野の範囲に含まれる。該バーストは典型的には、投与後の短い期間(例えば60〜120秒以内、より好ましくは60秒以内)であり、約1〜60分後に3-α-アンドロスタンジオールの最高血液レベルに達し、適用時から少なくとも180分間、持続する。
【0013】
循環中の3-α-アンドロスタンジオールは、SHBG(ステロイドホルモン結合グロブリン)と、およびアルブミンと結合している。本発明で定義する3-α-アンドロスタンジオールの最高血漿レベルが存在すること、ならびに遊離の3-α-アンドロスタンジオールすなわちアルブミンおよびSHBGと結合していない画分として計算されることは重要である。したがって、投与される3-α-アンドロスタンジオールの用量は、アルブミンおよびSHBGを飽和させるのに十分なほど高くすべきである(すなわち3-α-アンドロスタンジオールの濃度は、SHBGもしくはアルブミンと3-α-アンドロスタンジオールとの完全な結合を上回るのに十分なほど高くなくてはならない)か、またはSHBG上の3-α-アンドロスタンジオール結合部位に対する競合因子の使用などの、アルブミンもしくはSHBGとの結合を回避する別の方法を設計しなければならない。
【0014】
3-α-アンドロスタンジオールに基づく他の性機能不全の治療とは対照的に、本明細書に記載された使用(および方法)は、治療を受ける対象における3-α-アンドロスタンジオールレベルの一時的な上昇を目的としている。他の方法は、3-α-アンドロスタンジオールのレベル(またはDHTなどのその代謝物のレベル)を回復/置換/補充して、正常対象に見られるような正常(すなわち生理的)レベルにすることを目的としている。好ましい態様では、3-α-アンドロスタンジオールは、投与を受ける対象の血液循環中で短期間(数時間)の超生理的ピークの3-α-アンドロスタンジオールが得られるように適用される。その後、該レベルはベースライン(すなわち投与前のレベル)に戻る。
【0015】
第2の態様では、本発明は、性機能不全の治療用の医薬の調製における、3-α-アンドロスタンジオールおよび5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤の使用を提供する。性機能不全という用語は、男性および/または女性の性機能不全を意味する。
【0016】
上記で概説したように、現在の治療に伴う問題の1つは、活性成分の摂取と性行為との間の大きな時間遅延である。本発明の3-α-アンドロスタンジオールの態様では、該時間遅延を約4時間から約1時間へと短縮する。これにより、約3時間減少する。
【0017】
多数のPDE5阻害剤が利用可能である。PDE5阻害剤の一例は、化学的にはピペラジン,1-[[3-(1,4-ジヒドロ-5-メチル-4-オキソ-7-プロピルイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-2-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-エチル-の一塩酸塩と表記される塩酸バルデナフィルである。活性成分である塩酸バルデナフィルに加えて、個々の錠剤は、微結晶性セルロース、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、黄色酸化鉄、および赤色酸化鉄を含む。他の例には、化学的に、1-[[3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1Hピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-4-エトキシフェニル]スルホニル]-4-メチルピペラジンのクエン酸塩と表記されるクエン酸シルデナフィルがある。活性成分であるクエン酸シルデナフィルに加えて、個々の錠剤は以下の成分を含む:微結晶性セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、乳糖、トリアセチン、およびFD & C 青色二号アルミニウムレーキ。他の例には、化学的に、ピラジノ[1',2':1,6]ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン,6-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-,(6R,12aR)-と表記されるタダラフィルがある。活性成分であるタダラフィルに加えて、個々の錠剤は以下の成分を含む:クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、酸化鉄、乳糖一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、二酸化チタン、およびトリアセチン。
【0018】
PDE5阻害剤の数は現在でも増え続けており、他の非制限的な例には以下がある:E-4021、E-8010、E-4010、AWD-12-217(ザプリナスト)、AWD 12-210、UK-343,664、UK-369003、UK-357903、BMS-341400、BMS-223131、FR226807、FR-229934、EMR-6203、Sch-51866、IC485、TA-1790、DA-8159、NCX-911、もしくはKS-505a、または国際公開公報第96/26940号に開示された化合物。
【0019】
その最大効果(すなわちその活性)が少なくとも部分的に重複/一致しかつ好ましくは完全に重複するように活性成分が投与/放出されることが好ましいことは、当業者には明らかである。テストステロンおよび3-α-アンドロスタンジオールに関して、最大効果とは、性愛刺激に対する関心および性的動機付けの最大の亢進を意味する。PDE5阻害剤に関して最大効果とは、自律神経系のNANC(非アドレナリン・非コリン作動性)経路の活性の最大の亢進である。この目的は、さまざまな戦略を用いることによって達成可能である。1つの非制限的な例を提供する。
【0020】
好ましい態様では、該3-α-アンドロスタンジオールおよび該PDE5阻害剤は、本質的に同時に放出される。「本質的に同時に」という用語は、好ましくは3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤が、投与を受ける対象において、相互に30分以内に、好ましくは25〜30分以内に、より好ましくは20〜25分以内に、さらにより好ましくは15〜20分以内に、または10〜15分間以内に、それらの最高血清レベルに達すること、および最も好ましくは2種類の化合物が、対象において相互に0〜10分以内に放出されることを意味すると理解されるべきである。
【0021】
上記で概説したように、3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤の最適な効果に関しては、両化合物の最大効果が一致することが望ましい。しかしながら、たとえ最大効果が部分的に重複するだけであるとしても、望ましい効果(例えばFSDの治療)がもたらされる。3-α-アンドロスタンジオールの効果には、約1〜60分間の時間差が存在し(かつ3-α-アンドロスタンジオールの経口投与によりこれがさらに長くなる可能性がある)、かつ3-α-アンドロスタンジオールの効果は約3時間にわたって持続する。典型的にはバルデナフィルおよびシルデナフィルなどのPDE5阻害剤は投与の約1時間後にその最高血漿濃度(シルデナフィルでは少なくとも35 ng/ml、バルデナフィルでは2 μg/l、およびタダラフィルでは40 μg/lとなるべきである)に達し、かつその効果は後にも存在する。3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を本質的に同時に放出することによって、それらの効果は少なくとも部分的には一致する。3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤をそれらの放出が遅延するように製剤化できることは、当業者に明らかである。例えば活性成分は、2時間後に溶解するコーティングとともにまたはそれにより被覆された状態で、提供される。このような場合、活性成分は、性行為の2〜3時間前に摂取されなければならない。他の変形形態は当業者によって容易に実施され、かつこれは本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本明細書における性機能不全への言及は、男性および/または女性の性機能不全を含む。男性の性機能不全不全への言及は、性的関心欠損症(ISD)、勃起不全(ED)、および早漏(PE)を含む。女性の性機能不全への言及は、性的欲求低下障害(HSDD)、女性の性的興奮障害(FSAD)、および女性のオルガスム障害(FOD)を含む。
【0023】
本発明に関して、選択される投与経路は、侵襲性が最も低い経路(例えば経口、頬粘膜、または鼻内)である。性行動に対する意欲は、侵襲的な投与経路による負の影響を受けないようにすべきである。
【0024】
本明細書に記載された使用は、性機能不全の治療用の方法における使用のための3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤として代替的に製剤化され得る。
【0025】
好ましい態様では、本発明は、女性の性機能不全の治療用の医薬の調製における、3-α-アンドロスタンジオールおよび5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤の使用を提供する。さらに別の好ましい態様では、該女性の性機能不全は、女性の性的興奮障害(FSAD)、および/または性的欲求低下障害(HSDD)、および/または女性のオルガスム障害(FOD)である。
【0026】
さらに別の好ましい態様では、該性機能不全は、男性の性機能不全である。
【0027】
本発明は、3-α-アンドロスタンジオールを含む薬学的組成物も提供する。
【0028】
3-α-アンドロスタンジオールは好ましくは、舌下製剤の形態、例えば担体としてシクロデキストリンを含む舌下製剤の形態で提供される。適切な投与経路の別の例は頬粘膜経路または鼻内経路であり、これはシクロデキストリン製剤または他の通常の賦形剤および希釈剤などを使用しても実施可能である。好ましい態様では、薬剤は舌下投与用に設計され、さらにより好ましい該組成物は、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンなどのシクロデキストリンを含む。調製される3-α-アンドロスタンジオール試料(0.1〜0.5 mgの3-α-アンドロスタンジオール用)の典型的で非制限的な例は、0.1〜0.5 mgの3-α-アンドロスタンジオール、5 mgのヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(担体)、5 mgのエタノール、および5 mlの水からなるが、これらの物質の個々の量は増減する場合もある。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を含む薬学的組成物を提供する。PDE5阻害剤を含む薬学的組成物は好ましくは、少なくとも25 mgのシルデナフィル(または5 mgのバルデナフィルもしくは5 mgのタダラフィル)、および最大で100 mgのシルデナフィル(または20 mgのバルデナフィルもしくは20 mgのタダラフィル)、または同等の投与量の他のPDE5阻害剤を含む。これらの用量は、患者の体重によって変動する場合があり、かつ好ましくは医師によって決定される。
【0030】
好ましい態様では、本発明は、3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を含む薬学的組成物であって、該3-α-アンドロスタンジオールおよび該PDE5阻害剤を本質的に同時に放出するように設計されている、薬学的組成物を提供する。該薬学的組成物は、3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤が投与時に(投与直後に)放出されるように、または3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤が一定の時間(例えば2時間)が経過した後に放出されるように、設計することができる。これは、該2成分の使用される処方に依存する。
【0031】
活性成分(例えば、3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤)は、錠剤、カプセル剤、多粒子剤(multi-particulate)、ゲル剤、フィルム剤、液剤、または懸濁剤の形態などの任意の適切な形態で存在してもよく、かつ希釈剤および/または賦形剤および/または結合剤および/または崩壊剤および/または潤滑剤および/または着色剤を含んでもよい。直接放出または遅延放出などの、異なる種類の放出パターンを適用することもできる。
【0032】
異なる活性成分の効果が少なくとも部分的に一致しかつ好ましくは完全に一致しなければならないので、本発明は好ましくは、投与に関する指示書も提供する。したがって本発明は、3-α-アンドロスタンジオールを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、PDE5阻害剤を含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキットであって、該キットが該組成物の投与に関する指示書をさらに含む、パーツのキットも提供する。
【0033】
本発明は、本明細書に記載された薬学的組成物、すなわち3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を含む薬学的組成物を含む、パーツのキットも提供する。
【0034】
本発明のパーツのキットの効果をさらに高めるために、該キットは、認知的介入および認知的刺激の手段をさらに含んでもよい。このような情報は、任意のデータ記憶媒体(紙、CD、DVD)で提示されてもよく、受動的であっても双方向的であってもよく、または該認知的刺激の目的で少なくとも部分的に設計されたウェブサイトにリンクされていてもよい。場合によっては、該認知的刺激情報を意識下に、例えば潜在意識的に提示することが好ましい。
【0035】
本明細書に記載された、活性成分の組み合わせは、他の適切な活性成分をさらに伴ってもよい。
【0036】
本発明はさらに、性機能不全を患う男性または女性に3-α-アンドロスタンジオールとPDE5阻害剤との組み合わせの有効量を提供することによって、該男性または該女性を治療する方法を提供する。
【0037】
本発明を、以下の非制限的な例において、さらに詳細に説明する。
【0038】
実験パート
実験1
FSDにおける3-α-アンドロスタンジオールおよびシルデナフィル
FSDの女性における、官能的な映画の抜粋への反応時のVPAに対する3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤(シルデナフィル)の併用投与の有効性
二重盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、女性の性機能不全(FSD)をもつ女性16人の集団に、以下を、異なる3日の実験日に投与する:
1.3-α-アンドロスタンジオール(0.1 mg)およびシルデナフィル(10 mg)
2.3-α-アンドロスタンジオール(0.1 mg)のみ
3.プラセボ。
【0039】
ニュートラルなおよび官能的な映画の抜粋への反応時の膣のパルス振幅を、薬物の投与の直後および薬物の投与の1時間後に測定する。3日の実験日には(少なくとも)3日間の期間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、シルデナフィルまたはプラセボのいずれかからなる1種類のカプセル剤と、3-α-アンドロスタンジオールまたはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。カプセル剤と液剤の両方が同時に、試験の1時間前に摂取される。舌下3-α-アンドロスタンジオールの効果は、それらの時間差(0〜1時間)が類似しているために、高シルデナフィル血清濃度と重複する(シルデナフィルのTmax=30〜120分;T1/2=3.5時間)。
【0040】
実験セッションの際、VPAを測定するために、対象にタンポン形の膣プローブ(フォトプレチスモグラフ)が挿入されなければならない。次に対象は、10分間のニュートラルな映画の断片と、これに続く5分間の官能的な映画の断片を眺める。これらのベースライン測定の後に、上記の4種類の併用投薬のうち1種類を対象に投与する。投薬後に、別の一連のニュートラルな映画の断片(5分間)および官能的な映画の断片(5分間)が示される。次に膣プローブを取り外す。4時間後に、ニュートラルな映画の断片(5分間)および官能的な映画の断片(5分間)への反応時に再度VPA測定を行う。血圧(仰臥位および立位)、脈拍、呼吸速度、ならびに体温は、実験日を通してモニターする。
【0041】
実験後にスクリーニング受診が行われる。このスクリーニング受診では、対象は、Flevo病院(Almere)の婦人科のレジデントにより、FSDの診断のためおよび試験参加の適格性の判定のための問診および検査を受ける。対象は、質問票すなわち女性性機能指数(FSFI)に記入することが求められる。対象は、妊娠または授乳、膣感染症、膣および/または外陰部の大手術、未検出の重い婦人科疾患もしくは未解明の婦人科の愁訴を除外するためのスクリーニングを受ける。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)が測定される。心血管状態が検査され、ECGによって重大な異常がないか調査を受ける。内分泌学的、神経学的、または精神医学的な疾患の病歴および/または治療歴を有する対象。標準的な血液化学検査および血液病学検査が行われる。参加者は、実験日前日の晩および実験日当日にアルコールまたは向精神薬を摂取しないよう求められる。月経期間中は、対象の試験は実施されない。
【0042】
実験2
MSDにおける3-α-アンドロスタンジオールおよびシルデナフィル
MSDの男性における、官能的な映画の抜粋への反応時の男性性機能に対する3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤(シルデナフィル)の併用投与の有効性
二重盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、男性の性機能不全(MSD)をもつ男性16人の集団に、以下を、異なる3日の実験日に投与する:
1.3-α-アンドロスタンジオール(0.5 mg)およびシルデナフィル(10 mg)
2.3-α-アンドロスタンジオール(0.5 mg)のみ
3.プラセボ。
【0043】
薬物投与の直後および薬物投与の1時間後に、ニュートラルなおよび官能的な映像による視聴覚刺激(VSTR)への反応時の陰茎の腫脹(tumescence)および堅さ(rigidity)を測定し、続いてすぐに振動触覚刺激射精潜時間(vibrotactile stimulation ejaculatory latency time;VTS-ELT)および射精後勃起不応時間(postejaculatory erectile refractory time)を測定する。3日の実験日には(少なくとも)3日間の期間、間隔を空ける。全ての薬物投与に関して、対象は、シルデナフィルまたはプラセボのいずれかからなる1種類のカプセル剤と、3-α-アンドロスタンジオールもしくはプラセボのいずれかを含む1種類の液剤との投与を受ける。カプセル剤および液剤の両方を同時に、試験の1時間前に摂取される。舌下3-α-アンドロスタンジオールの効果は、それらの時間差(0〜1時間)が類似しているために、高シルデナフィル血清濃度と重複する(シルデナフィルのTmax=30〜120分;T1/2=3.5時間)。
【0044】
実験後にスクリーニング受診が行われる。このスクリーニング受診では、対象は、Flevo病院(Almere)の婦人科のレジデントにより、MSDの診断のためおよび試験参加の適格性の判定のための問診および検査を受ける。対象は、質問票すなわち国際勃起機能スコア(IIEF)質問票に記入するよう求められる。体重、身長、血圧(仰臥位および立位)が測定される。心血管状態が検査され、ECGによって重大な異常がないか調査を受ける。参加者は、実験日前日の晩および実験日当日にアルコールまたは向精神薬を摂取しないよう求められる。
【0045】
実験3
FSDの動物モデル
雌の性機能に対する3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤の併用投与の有効性
3-α-アンドロスタンジオールおよびシルデナフィルの投与が、雌ラットの性行動に及ぼす効果を調べる。具体的には、雌ラットの求交尾的(proceptive)行動(勧誘行動(soliciting)、社会的相互作用時間、匂いをかぐ行動(sniffing))、および受容(receptive)行動(ロードシス)を、注射および性的に活発な雄ラット1匹と一緒に放置した後の3時間にわたって、評点化する。
【0046】
32匹の健康で性的に活発な成体雌ラットの集団を対象に、盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、実験を実施する。雌と雄のラットの両方を、それらの(最初の)試験日前の2週間にわたって個別に飼育する。全ての薬物およびプラセボを、1回の腹腔内注射で投与する。薬物の用量は、文献に基づいて決定される。個々のラットについて、1週間の間隔を設けて、2回のみの処置を行う。
【0047】
実験4
MSDの動物モデル
雄の性機能に対する3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤の併用投与の有効性
3-α-アンドロスタンジオールおよびシルデナフィルの投与が、雄ラットの性行動に及ぼす効果を調べる。具体的には、雄ラットの乗駕潜時、乗駕回数、挿入潜時、挿入回数、射精潜時、および射精後間隔を、注射および性的に活発な雌ラット1匹と一緒に放置した後の3時間にわたって、評点化される。
【0048】
32匹の健康で性的に活発な成体雄ラットの集団を対象に、盲検無作為割付プラセボ対照クロスオーバーデザインで、実験を実施する。雌と雄のラットの両方を、それらの(最初の)試験日前の2週間にわたって個別に飼育する。全ての薬物およびプラセボを、1回の腹腔内注射で投与する。薬物の用量は、文献に基づいて決定される。個々のラットについて、1週間の間隔を設けて、2回のみの処置を行う。
【0049】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
性機能不全の治療用の医薬の調製における、3-α-アンドロスタンジオールの使用。
【請求項2】
性機能不全の治療用の医薬の調製における、3-α-アンドロスタンジオールおよび5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤の使用。
【請求項3】
3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤が本質的に同時に放出される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
性機能不全が男性の性機能不全である、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
性機能不全が女性の性機能不全である、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
3-α-アンドロスタンジオールを含む、薬学的組成物。
【請求項7】
3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を含む、薬学的組成物。
【請求項8】
3-α-アンドロスタンジオールおよびPDE5阻害剤を本質的に同時に放出するように設計されている、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
3-α-アンドロスタンジオールを含む少なくとも1種類の薬学的組成物と、PDE5阻害剤を含む少なくとも1種類の組成物とを含むパーツのキットであって、該キットが組成物の投与に関する指示書をさらに含む、パーツのキット。
【請求項10】
請求項7記載の薬学的組成物を含む、パーツのキット。

【公表番号】特表2010−509212(P2010−509212A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535227(P2009−535227)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050534
【国際公開番号】WO2008/054214
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(506379231)エモーショナル ブレイン ビー.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】