説明

患者における薬物の有効性を予測する方法

本発明は、個体において腫瘍を処置するための複数の薬物の相対的有効性を予測する方法であって、腫瘍の分子特性決定及び脱制御された標的遺伝子のパーセンテージに本質的に基づいて複数の薬物のスコアを算出することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、特に、癌治療におけるオーダーメイド医療の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌を有する患者の治療的ケアは、主に、標準プロトコルに従って使用する必要がある外科手術、放射線治療及び化学療法に基づいている。治療的外科手術は、全ての腫瘍塊を除去することからなる。しかしながら、腫瘍の観測可能部分を切除した後に残存病変を全く残さないようにすることは、経験のある外科医でさえも常に保証できない。この理由から、外科手術は、一般的に、放射線治療及び/又は化学療法と組み合わせて使用される。化学療法及び/又は放射線治療は、ネオアジュバント治療又は補助療法若しくはアジュバント治療として、あるいは、外科手術が不可能である場合では単独で使用することができる。ネオアジュバント治療は、通常、腫瘍塊が非常に大きく、外科手術の前に縮小させる必要がある場合に使用される。補助療法又はアジュバント化学療法は、残存腫瘍病変を処置するために、そして、局所再発又は転移再発を抑制するために使用される。腫瘍が手術不能期で検出される場合は、治療的ケアは化学療法及び/又は放射線治療にのみ基づく。外科手術は、この状況でわずかに使用されるだけであり、苦痛緩和を目的とする。
【0003】
どのような場合においても、化学療法の選択は、常に下記の問題をもたらす:この種の癌にどのような薬物又は薬物の組み合わせが適合するか?この患者に最も適合する治療戦略は何か?選択された薬物を用いて治療有用性を観測する機会は何か?
【0004】
現在の医療行為は、既存の治療プロトコルに従って患者を処置することからなる。大抵の場合、治療プロトコルの選択は、病理解剖学的及び臨床的データに基づいている。これらのプロトコルには、第一、第二、さらには第三の治療方針が適用される。ある患者が治療不全又は転移期である場合、患者を、第一に、原性腫瘍の位置、疾患の進展、患者の生体機能の状態及び臨床試験中の薬物のある特定の禁忌を主に規定する、広範な選択基準を一般的に用いる臨床試験に組み入れる。どのような治療アプローチ(標準又は臨床試験)であろうと、処置される集団の一部だけに処置が効果的である一方で、残りの患者には効果がなく、処置中であっても疾患が進行する。
【0005】
この状況を改善するために、何年も前から、医師や研究者が、所定の患者に対して処置の有効性を予測するためのマーカーを同定し、患者の各々の処置への適合を可能にするために尽力している。それ故、オーダーメイド医療の構想は、腫瘍の病理解剖学的、臨床的特性、特に、生物学的特性に従って治療判断を適応させることからなる。
【0006】
癌を有するどんな患者にも有用な解決策が示されない、いくつかの例が知られている。
【0007】
第一のアプローチは、Her2/Neu受容体標的モノクローナル抗体のトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))を最初に使用する、いわゆる「テストコンパニオン」アッセイであった。乳癌では、この受容体の増幅/過剰発現が観察される場合に限りこの薬物が投与される。しかしながら、この過剰発現は治療効果を保証するものではない。Herceptin(登録商標)耐性のいくつかは、例えば、Akt経路の活性化により解明することができる。mTOR阻害剤(Akt経路を標的とする)が結合すると、Herceptin感受性が復活する可能性がある。それにもかかわらず、一部の患者については、その受容体が増幅しない場合に治療有用性が観察された。
【0008】
Her2受容体の発現レベルの測定は、テストコンパニオンの最初の例であり、多くの製薬会社又は研究者が、オーダーメイド医療の最初の例として考えられるこのモデルを再現させるために尽力している。以下の例は、下記の所定の薬物:
・EGFR受容体の突然変異又は増幅及びエルロチニブ/ゲフィチニブ;
・突然変異c−Kit/PDGFRa及びイマチニブ;
・Bcr−Ablの転移及びイマチニブ;
・HER2の増幅及びHER2阻害剤;
・TOP2Aの増幅及びアントラサイクリン;
・PTENの欠損及びmTOR阻害剤;
・FGFR1の増幅及びFGFR1阻害剤;
・ERCC1陰性処置及び白金塩;
・RAS突然変異及び結腸癌の処置など
が効果的でありうる患者選択の構想を説明するのに適している。
【0009】
乳癌の場合では、Mamaprint(登録商標)(Agendia社により開発)又はOncotypeDX(登録商標)(Genomic Health社)試験などの予後分子シグナチャー(signature)が利用可能である。これらのシグナチャーは、補助化学療法が必要であるか否かを決定するために使用される。しかし、これらの試験によって補助化学療法が必要であることが結論付けられるが、これらから最適な治療を選択することはできない。
【0010】
手短に言えば、オーダーメイド医療の構想は、所定の治療に応答する機会を増やすために生物学的基準に基づいて患者を選択することに対応する。現在、これらのテストコンパニオンは、むしろ標的治療による処置で使用され、所定の処置が効果的である可能性がある患者を選択することができるが、所定の患者に対して最良の治療を選択することができるわけではない。これが、主な概念的相違であり、これまでに提案された他のマーカーと比較される本発明の一番の関心事である。
【0011】
遺伝子コピー数の非常に大きな異常(増幅又は欠損)は、遺伝子発現のレベルを変化させる。このゲノム脱制御の機構は、多くの癌の腫瘍発生に関与している。EGFR遺伝子の増幅は、肺癌の約30%で見出される。EGFRの増幅の阻害は、この同じ病変において有意な利益をもたらす。同様に、MYCNは、神経芽細胞腫の約25%で増幅され、いくつかの研究によりこの病変においてこの異常の予後値が示された。HER、PTEN、PUTSなどの他の癌遺伝子/抗癌遺伝子(腫瘍抑制遺伝子)が、しばしば他の種類の腫瘍において増幅/欠失する。
【0012】
乳癌は、高頻度の染色体異常を示す。遺伝子HER2(ErbB2)は、その症例の10〜20%で増幅される。この増幅は、Her2タンパク質の高発現と関連し、腫瘍の形質転換に関与している。この異常を標的化することに基づく治療戦略は、HER2陽性乳癌を有する患者において有益であることが示された。さらに、トポイソメラーゼIIをコードする遺伝子は、乳癌の約7%で増幅される。この増幅は、トポイソメラーゼIIを標的とする薬物クラスであるアントラサイクリンに対する良好な感受性と相関する。乳癌において、他の異常がしばしば観察された。A1B1遺伝子が、その症例の10%で増幅され、これにより、IGFRによるAKTの活性化を介して腫瘍発生が引き起こされる。FGF1R遺伝子は、症例の10%で増幅される。in vitroにおいて、このタンパク質を、チロシンキナーゼ阻害剤を用いて標的化することで細胞増殖の減少がもたらされる。同様に、遺伝子EGFR、IGF1Rの増幅又はPTENの欠損は、それぞれ、EGFR、IGF1R又はmTOR標的化分子により処置することができる。
【0013】
科学文献において、A. Potti等のある研究は、十分に確立された細胞株(NCI60パネル)の実験から選択された遺伝子発現の分析に基づいて、薬物有効性、主として細胞毒性を予測することを提案している。これらのデータから、各試験分子に対する応答に関連する発現プロファイルを同定することができ、この予測をヒトの腫瘍に置き換える。しかしながら、このアプローチが、分子予測により分子を選択することができた場合であっても、最良の薬物選択するために、所定の患者に対して各分子の有効性を比較することができない。さらに、当業者は、in vivo予測を実施するためのin vitroモデルの限界を知っている。これらのアプローチは、固有の腫瘍特性に基づいて所定の患者に対する個々の標的治療を選択するよりむしろ、所定の化学療法に対する患者コホートを高める傾向がある。
【0014】
しかしながら、癌処置において、適切な化学療法の選択は極めて重要な課題である。実際、多くの化学療法は極めて重大な有害作用を有し、誤選択(即ち、治療有効性のない処置)は、癌を進行させる可能性がある。
【0015】
今日、癌を有する所定の個体に対して最適な治療戦略を選択するのに効果的なマーカーはない。従って、癌処置の分野で、所定の個体に対して最適な化学療法戦略の選択を可能にする、オーダーメイド医療の方法が強く求められている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、患者において癌を処置するための複数の薬物の相対的有効性を予測する方法であって、
− 患者由来の腫瘍又は転移試料の分子異常を、同じ患者由来の正常試料と比較して特性決定すること、ここで、腫瘍における脱制御された遺伝子を決定する;
− 複数の薬物の各薬物についての標的遺伝子を含むデータベースを準備すること;
− 患者由来の腫瘍試料における各薬物についての標的遺伝子の中の脱制御された遺伝子のパーセンテージに原則基づいて複数の薬物の薬物ごとのスコアを決定すること、ここで、より高いスコアが、患者における腫瘍の処置について薬物のより高い相対的有効性を予測している、を含む方法に関する。好ましくは、正常試料は、原発腫瘍に対する正常な組織学的対応物である。
【0017】
特に、腫瘍試料の分子異常を特性決定する工程は、正常試料と比較し、腫瘍において差異的に発現される遺伝子を決定すること、及び/又は、遺伝子コピー数の増加又は減少を決定すること、及び/又は、遺伝子の突然変異の存在を検出することを含む。好ましくは、腫瘍試料の分子異常を特性決定する工程は、差異的に発現される遺伝子及び/又は遺伝子コピー数の増加又は減少の倍率変化(F)を決定すること、そして、場合により、差異的に発現される遺伝子の遺伝子転写(Int)の強度をさらに決定することを含む。
【0018】
好ましくは、各薬物についての標的遺伝子は、データベースにおいて、メジャー(major)標的遺伝子(MC)、マイナー(minor)標的遺伝子(Mc)及び耐性遺伝子(CR)に分類される。
【0019】
第一の実施態様においては、所定の薬物についてのスコア(W)は、下記のアルゴリズム:
【数1】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、患者の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
zは、所定の薬物の標的遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数であり;
Σは、合計であり;
Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての脱制御された各標的遺伝子の倍率変化であり;
nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数を指す]
により決定される。
【0020】
好ましくは、Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であり、そして、nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数のいずれかである。
【0021】
第二の実施態様においては、所定の薬物についてのスコア(W)は、下記のアルゴリズム:
【数2】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、患者の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
Σは、合計であり;
CMは、所定の薬物についてのメジャー標的遺伝子を指し;
Cmは、所定の薬物についてのマイナー標的遺伝子を指し;
CRは、所定の薬物についての耐性遺伝子を指し;
CM、nCm及びnCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値を有する、脱制御された標的遺伝子数であり;
CM、FCm及びFCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値より大きい各遺伝子の倍率変化であり;
、q及びqは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての任意の増倍係数であり;
、z及びzは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数である]
により決定される。
【0022】
第三の実施態様においては、所定の薬物についてのスコア(W)は、下記のアルゴリズム:
【数3】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びzの意味は、上述のアルゴリズムと同じであり、そして、PCM、PCm及びPCRは、それぞれ、所定の薬物についての、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子に関する、個体の腫瘍において脱制御された遺伝子のパーセンテージである]
により決定される。
【0023】
第四の実施態様においては、所定の薬物についてのスコア(W)は、下記のアルゴリズム:
【数4】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びz、並びに、存在する場合のPCM、PCm及びPCRの意味は、上述のアルゴリズムと同じであり、そして、IntCM、IntCm及びIntCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての強度である]
の一つにより決定される。
【0024】
第五の実施態様においては、所定の薬物についてのスコア(W)は、下記のアルゴリズム:
【数5】


[式中、W、Σ、CM、CR、FCM、FCR、q、q、z及びz、並びに、存在する場合のPCM、PCR、IntCM及びIntCRの意味は、上述のアルゴリズムと同じである]
の一つにより決定される。
【0025】
好ましくは、第二〜五の実施態様においては、FCM、FCm及びFCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であり、そして、nCM、nCm及びnCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数のいずれかである。さらに好ましくは、定義された閾値は、少なくとも2又は2より大きい倍率変化である。
【0026】
さらに、第二〜五の実施態様においては、標的遺伝子についての増倍係数は、メジャー標的遺伝子(q)については、10〜1,000、マイナー標的遺伝子(q)については、0.1〜10、耐性遺伝子(q)については、10〜1,000を含みうる。
【0027】
さらには、第二〜五の実施態様においては、突然変異に関連する増倍係数z、z及びzは、突然変異が存在しない場合は、1であり、突然変異の機能的影響に依存して、10〜1,000を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施例1の患者の2005年10月の胸部スキャナーである。
【図2】図2は、実施例1の患者の2008年11月の胸部スキャナーである。
【図3】図3は、実施例1の患者の2009年4月の胸部スキャナーである。
【図4】図4は、実施例1の患者の2009年7月の胸部スキャナーである。
【図5】図5は、実施例3の患者の2010年1月及び3月の胸部スキャナーである。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、個体レベルに応じて、最適な治療を選択するための新しい構想を提供する。薬物の選択は、処置される個体の腫瘍の、同じ個体由来の正常試料と比較した生物学的特性に基づいている。各薬物についての脱制御された標的遺伝子又はmicroRNAのパーセンテージに原則基づくスコアに基づいて、特定の腫瘍を処置するために個体に対する薬物の相対的有効性を予測することができる。
【0030】
一般的構想
本発明の目的は、最適な治療戦略の選択の水準を適用することである。最適な治療戦略を選択するために、本発明の方法は、一方で、処置される腫瘍の生物学的データ全体を考慮し、他方で、複数の薬物、好ましくは、全ての既存の薬物(登録又は開発中のいずれか)を考慮する。スコアは、所定の対象について処置される特定の腫瘍の生物学的特性に基づいて、薬物ごとに決定される。このスコアにより、様々な薬物を潜在的有効性が低下する順に順序付けすることができる。医師は、これらのスコアを使用して、所定の対象に対して最適な薬物又は薬物の組み合わせを選択することができる。各薬物と腫瘍の生物学的特性によって決まるスコアを関連付けることができるこのアプローチ法が、本発明の基礎を成す。従って、本発明は、オーダーメイド医療における今日のニーズを満たす可能性が高い。
【0031】
本方法は、登録された薬物及び開発された薬物(例えば、使用又は臨床試験の暫定的承認)の両方で使用することができる。
【0032】
従って、この構想は、多くの個体群から得られる全体的な結果に依存することなく、腫瘍の固有の特性に依存し、患者に対し個体レベルでの患者の治療選択を考慮することからなる。
【0033】
本発明は、以下に詳述する3つの基本的なポイントの組み合わせに基づいており、それを組み合わせて、癌を有する個体ごとに戦略の選択を最適化する:
− 第一のポイントは、個体について所定の腫瘍を特徴付ける生物学的又は遺伝学的異常(増幅、欠損、突然変異、遺伝子発現、microRNA発現など)の可能な限り包括的な分析に対応する。
− 第二のポイントは、薬物と関連することが知られている遺伝子の同定からなる。
− 第三のポイントは、各薬物と個体において処置される腫瘍で検出された異常との関連性を確立することに対応する。アルゴリズムは、薬物と関連することが知られている腫瘍特性及び遺伝子を考慮して、薬物ごとのスコアを算出するために見出された。
【0034】
本発明の方法は、利用可能な薬物をスコア基準で順序付けし、個体において所定の腫瘍に対する潜在的治療有効性を示すことから、治療選択の指針となりうるであろう。
【0035】
本方法の利点の一つは、個体を薬物に曝露させることなく、個体への複数の薬物の相対的有効性を予測することができることである。複数の薬物とは、少なくとも又は約10、20、30、40、50若しくは100個の異なる薬物を意図する。実際に、ある薬物群が処置に有用である場合でも、患者の処置において各薬物によって処置を試すことは想定されえない。本方法は、患者に対して可能性のある全ての治療戦略の検討及び最適な選択を可能にする。
【0036】
実際に、複数の薬物についてのスコアから、検討される個体の腫瘍を処置するための複数の薬物の相対的有効性を決定することができる。実際に、他の薬物よりも高いスコアを有する薬物は、腫瘍の処置により高い有効性を有すると予測される。処置するとは、薬物が、腫瘍の増殖を止める若しくは遅延させる、及び/又は、腫瘍のサイズをそれが消失するまで減少させることができることを意図する。また、処置するとは、転移、再発又はぶり返しを回避することも意図する。
【0037】
別の利点は、本方法が癌の種類に依存しないことである。本発明の方法は、血液腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫)及び膀胱、乳、胃(stomach)、甲状腺、前立腺、精巣、肝臓、膵臓、骨、膵臓、腎臓、子宮内膜、メラノーマ、肺、胃(gastric)、結腸直腸、前立腺、頭又は頸部腫瘍、脳、神経芽細胞腫及び卵巣癌などの任意の種類の癌に使用することができる。
【0038】
好ましい実施態様においては、患者又は個体はヒトである。
【0039】
腫瘍の特性決定
腫瘍の特性決定は、個体について所定の腫瘍を特徴付ける生物学的又は遺伝学的異常(増幅、欠損、突然変異、遺伝子発現など)の可能な限り包括的な分析に対応する。特に、異常は、患者由来の腫瘍において、同じ患者の正常組織と比較して決定される。好ましくは、腫瘍試料及び正常試料は、同じ種類の組織から準備される。腫瘍の特性決定のために、いくつかの技術が利用可能であり、これらを組み合わせることができる。
【0040】
第一の技術は遺伝子解析である。この解析は、CGH(比較ゲノムハイブリダイゼーション)により実施することができ、これにより、同じ個体の腫瘍DNAと正常DNAを比較して、染色体異常、即ち、染色体の消失又は増加を検出することができる。この技術は当業者に良く知られている。この知識の例として、下記の報告又は参考図書を引用することができる:Davies等(2005, Chromosome Research, 13, 237-248)。この技術は、また、転座を同定する手助けにもなりうる。それは、凍結生検又は腫瘍のパラフィン包埋材料を用いて容易に実施することができる。CGHの結果は、腫瘍材料と正常組織のコピー数の比で表される。閾値0.5は、増加又は消失を示すと認められている。この比が大きくなるほど、異常の大きさがより重大となる。従って、重大な異常は、生物学的レベルに大きな影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、染色体異常は、遺伝子発現の脱制御の原因のごく一部を示すだけである。この理由から他の技術が必要となる。CGHは、腫瘍生検又は生物検体において腫瘍試料の存在を確認することができる別の利点を有し、これによりいつでも異常を検出することができる。
【0041】
機能的ゲノム解析を可能にする第二の技術は、mRNA及びmicroRNAの測定に対応する。これらのRNAについての発現レベルの変動の決定は、腫瘍組織と対応する正常組織における発現レベルを比較することにより実施する。例えば、結腸腺癌の場合では、対応する正常組織は正常な大腸粘膜組織である。遺伝子発現解析は、非依存性脱制御又は染色体異常に起因する脱制御の研究を可能にする。実際に、遺伝子の形質転換活性の調節は複雑であり、多様なレベルの調節(トランス/シス転写因子、プロモーター、クロマチン調節など)が関与している。一般的に、全ての脱制御(過剰発現又は過小発現)は、腫瘍/正常の比が少なくとも2であると考えられる。「倍率変化」と呼ばれるこの閾値は、従って、正の値>2又は負の値<−2を有することができる。同じ概念を、遺伝子の転写後調節、従って、タンパク質発現において重要な役割を担うmicroRNAに適用する。使用することができる技術は、ノーザン解析、mRNA又はcDNAマイクロアレイ、RT−PCT(特に、定量RT−PCR)などを含む。転写レベルは、mRNAレベル又はコードタンパク質レベルで決定することができる。タンパク質発現は、ウエスタンブロット、イムノアッセイ、プロテオミクスツール又は質量分析により評価することができる。
【0042】
これら2種類のCGH及びRNA発現決定の解析は、遺伝子の突然変異状態の解析により補うことができる。実際に、機能性の増加又は喪失をもたらす突然変異の存在は、遺伝子発現又は遺伝子コピー数の変動に常に関係することなく、腫瘍の生態に重要な効果を及ぼす。多くの突然変異が、感受性又は耐性の増加を誘導することにより処置の活性に直接効果を及ぼすことが知られている。例えば、EGFRのチロシンキナーゼドメインにおける突然変異は、しばしば、EGFRを阻害する小分子に対する感受性に関連しており、KRAS遺伝子における突然変異は、EGFR標的モノクローナル抗体による処置への耐性に関連している。突然変異状態に加えて、いくつかのSNPを検出することもできる。実際に、SNPは、薬物に対する機能性の増加若しくは喪失、耐性又は毒性にも関連しうる。突然変異状態は、当技術分野で知られている任意の方法、例えば、配列決定、ミクロ配列決定又はハイブリダイゼーションにより決定することができる。
【0043】
手短に言えば、ハイスループットゲノム技術を使用して、処置される個体由来の所定の腫瘍の生物学的異常を、可能な限り最も包括的な方法で特性決定することができる。腫瘍ごとの実験データを、アルゴリズムの適用に使用される基礎ファイルにまとめて、薬物ごとにスコアを算出することができる。これらのファイルは、正常組織(強度1又はI1)及び腫瘍組織(強度2又はI2)についての、遺伝子のコピー数、突然変異、倍率変化又はシグナル強度(転写数又は遺伝子のコピー数に比例)を含む。機能的ゲノム解析により、ゲノム全体をカバーする44,000以上(例えば、244,000)のRNA配列を同時に測定することができる。好ましくは、濾過を用いて、2より大きい若しくは小さい比又は倍率変化を有するプローブのみを保持することができ、その強度I1及びI2の平均は、蛍光の100ユニットより大きい(任意ユニット)。
【0044】
本明細書において、用語「分子異常」は、遺伝子発現の違い(mRNA、microRNA若しくはタンパク質発現のいずれか)、遺伝子コピー数の増加若しくは減少又は突然変異の存在を指す。
【0045】
本発明の特定の実施態様においては、腫瘍の包括的な特性決定は、薬物データベースの標的遺伝子の特性決定に置き換えられる。この実施態様においては、特定のアレイを作製して、データベースの全ての標的遺伝子の遺伝子発現レベルを決定することができる。
【0046】
薬物データベース
本発明の方法のために、データベースの薬物ごとの標的遺伝子リストを含むデータベースを準備する必要がある。前に説明したとおり、薬物に対する標的遺伝子は、薬物の作用機序に関与する、薬物代謝に関与する、薬物の存在下で遺伝子発現が修飾される、薬物耐性に関連する、薬物毒性に関連すると実証された任意の遺伝子でありうるが、これらに限定されない。各薬物と関連する遺伝子を同定するために、公開データベース(例えば、CTD、DrugBank、PubMedなど)での検索に基づいてデータベースを作成することができる。例えば、ヒト(ID 9606)に限定される薬物及びその分子標的(遺伝子)を選択するために、データベースを、CTD(The Comparative Toxicogenomics Database、http://ctd.mdibl.org/)データに基づいて構築することができる。これらのデータは、LocusLink(遺伝子記号、RefSeq NM、遺伝子の説明)からの遺伝子情報と照合することができる。最後に、利用可能な刊行物から、データベース内のそれぞれの薬物/遺伝子相互作用を特定し、相互作用の種類を決定することができる:いくつかの正の相互作用(標的、感受性、薬物活性化因子、薬物担体、毒性リバーサ(toxicity reverser)…)、いくつかの負の相互作用(耐性、毒性、薬物代謝、アポトーシス、死…)。
【0047】
同定された遺伝子は、様々な役割及び重要性を有しうる。従って、好ましい実施態様においては、標的遺伝子は3つのカテゴリー:メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子に分類される。公開データ(公開文献及びデータバンク)からこれらの遺伝子を同定すること、そして、3つのカテゴリーへ分類することは、本発明の不可欠な部分をなす。メジャー標的遺伝子は、薬物の作用機序と明確な因果関係を有することが実証された遺伝子である。例えば、HER2遺伝子は、トラスツズマブのメジャー標的遺伝子として考えられ、VEGFA遺伝子は、ベバシズマブのメジャー標的遺伝子として考えられる。所定の薬物は、一つ以上のメジャー標的遺伝子を有することができる。また、このカテゴリーは、薬物代謝に関与することが知られている遺伝子も包含するが、この場合の薬物は、活性代謝物が生成する場合においてのみ活性となることが知られている。マイナー標的遺伝子は、薬物の作用機序と直接関連することはないが、その調節レベルが薬物存在下で変化することが見出された遺伝子である。耐性遺伝子は、薬物に対して直接耐性を誘導することが知られている遺伝子だけではなく、主要な毒性と関連する遺伝子も含む。例えば、ERCC1遺伝子は、白金塩の使用に対する耐性の標的遺伝子である。例えば、いくつかのシトクロムP450アイソフォームは、主要な毒性と関連している。
【0048】
本発明の特定の実施態様においては、検討された標的遺伝子は、下記の2つのカテゴリー:メジャー標的遺伝子及び耐性遺伝子にのみ属しうる。
【0049】
第一の薬物データベースが発明者らにより確立され、これは表1に開示される。いつかの薬物について、標的遺伝子が分類された。
【0050】
薬物に対して標的遺伝子を分類することで、及び/又は、新規な薬物、新規な標的遺伝子を追加することで、及び/又は、組み合わせたデータ(例えば、薬物と放射線治療との組み合わせ若しくは薬物同士の組み合わせ)を含めることで、薬物データベースは時間を追って増加しうる。
【0051】
薬物データベースがより完全なものであるほど、予測はより正確なものとなる。しかしながら、予備データベースが準備でき次第すぐに、薬物の相対的有効性を予測する本方法を実施してもよい。
【0052】
アルゴリズム
アルゴリズムは、薬物と関連することが知られている腫瘍特性及び遺伝子を考慮して、薬物ごとのスコアを算出するために見出された。この算出は、例えば、Rベースのスクリプトを使用して特定のソフトウェアにより実施することができ、薬物についての標的遺伝子ファイルと個体の腫瘍の生物学的研究から得られたゲノム解析のデータを統合するファイルとの頻度及び関連性を決定することができる。
【0053】
アルゴリズムは、下記パラメーター:
1)薬物の標的遺伝子の脱制御の総パーセンテージ。従って、この薬物についての脱制御された遺伝子のパーセンテージを決定するために、所定の薬物についての標的遺伝子のリストを脱制御された遺伝子のリストと比較する。例えば、所定の薬物について10個の標的遺伝子が同定され、そして、所定の腫瘍について、10個の標的遺伝子の4個が脱制御されたことが見出された場合、この薬物についての脱制御された遺伝子のパーセンテージは40%である。
2)倍率変化(Fc)及び平均強度(AvgInt)により定義される標的遺伝子の脱制御の程度及び識別(例えば、過剰又は過小発現)。これらのパラメーターは、標的遺伝子をまとめて又はカテゴリー(例えば、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性標的遺伝子)ごとに定義することができる。
3)所定の薬物に効果を及ぼすことが知られている、標的遺伝子における突然変異の存在
を考慮することができる。
【0054】
アルゴリズムは、処置される対象についての腫瘍の特性決定を考慮して、データベースの薬物ごとにスコアを算出するために使用される。
【0055】
本方法で使用することができる第一の基本アルゴリズムは、以下:
【数6】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、個体の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
zは、標的遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数であり;
Σは、合計であり;
Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての脱制御された各標的遺伝子の倍率変化であり;
nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数を指す]
のとおりである。
【0056】
このアルゴリズムの特定の実施態様においては、Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であり、そして、nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数を指すことができる。
【0057】
当然のことであるが、アルゴリズムは、増倍係数を導入するなどして、標的遺伝子(例えば、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子又は耐性標的遺伝子)のカテゴリーを考慮することによりさらに複雑となりうる。
【0058】
このようなさらに複雑なアルゴリズムは、以下:
【数7】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、個体の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
Σは、合計であり;
CMは、所定の薬物についてのメジャー標的遺伝子を指し;
Cmは、所定の薬物についてのマイナー標的遺伝子を指し;
CRは、所定の薬物についての耐性遺伝子を指し;
CM、nCm及びnCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値を有する、脱制御された標的遺伝子数であり;
CM、FCm及びFCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値より大きい各遺伝子の倍率変化であり;
、q及びqは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての増倍係数であり;
、z及びzは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数である]
であることができる。
【0059】
例えば、標的遺伝子についての増倍係数は、メジャー標的遺伝子については、10〜1,000、マイナー標的遺伝子については、0.1〜10、そして、耐性遺伝子については、10〜1,000を含みうる。増倍係数については、その他の値も除外されることはない。
【0060】
突然変異に関連する増倍係数は、突然変異が存在しない場合は1である。突然変異の機能的影響に依存して、係数zは、例えば、10〜1,000を含みうる。突然変異に関連する増倍係数については、その他の値も除外されることはない。
【0061】
好ましい実施態様においては、定義された閾値は、少なくとも2又は2より大きい倍率変化である。しかしながら、より低い閾値についての検討は、倍率変化1.5がいくつかの遺伝子において重要でありうることから、本方法では除外されることはない。
【0062】
特定の実施態様においては、FCM、FCm及びFCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であることができ、そして、nCM、nCm及びnCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数を指すことができる。
【0063】
代わりの複雑なアルゴリズムでは、式は、以下:
【数8】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びzの意味は、上述のアルゴリズムと同じであり、そして、PCM、PCm及びPCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について、個体の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての遺伝子のパーセンテージである]
であることができる。
【0064】
同様に、好ましい実施態様においては、定義された閾値は、少なくとも2又は2より大きい倍率変化である。しかしながら、より低い閾値についての検討は、倍率変化1.5がいくつかの遺伝子において重要でありうることから、本方法では除外されることはない。
【0065】
特定の実施態様においては、FCM、FCm及びFCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であることができ、そして、nCM、nCm及びnCRは、定義された閾値を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数を指すことができる。
【0066】
特定の実施態様においては、アルゴリズムは、平均強度又は強度変動を考慮することができる。このパラメーターは、遺伝子の転写レベルの指標である。実際に、倍率変化が2で同じである場合、遺伝子脱制御は、例えば、200/100と200,000/100,000で比較されるように、転写の強度に依存して異なる重要性を有しうると考慮することができる。
【0067】
従って、なおさらに複雑なアルゴリズムは、以下:
【数9】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びz、並びに、存在する場合のPCM、PCm及びPCRの意味は、上述のアルゴリズムと同じであり、そして、IntCM、IntCm及びIntCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての強度である]
の一つであることができる。「Int」は、腫瘍試料における遺伝子の転写強度、即ち、個体由来の腫瘍試料と正常試料間の遺伝子の転写の差異であることができる。
【0068】
さらなる実施態様においては、本方法は、マイナー標的遺伝子を考慮することなしに、メジャー標的遺伝子及び耐性遺伝子に重点を置くことができる。この実施態様においては、アルゴリズムは、以下:
【数10】


[式中、W、Σ、CM、CR、FCM、FCR、q、q、z及びz、並びに、存在する場合のPCM、PCR、IntCM及びIntCRの意味は、上述のアルゴリズムと同じである]
の一つであることができる。
【0069】
好ましくは、選択されたアルゴリズムは、2つのモデル:後ろ向きモデル(例えば、化学療法が実施された腫瘍及び処置に応答することが知られている腫瘍);並びに、スコアと関連付けて特定の処置の有効性を評価することができる前向きモデルを用いて実証される。
【0070】
アルゴリズムの検証試験の間に、いくつかの可変数、特に、増倍係数、平均強度の検討の有無、倍率変化の閾値を改良することができる。さらに、この工程の間に、CGH又は機能的ゲノム解析又はその両方を使用することが望ましいかを決定することができる。
【0071】
本方法は、また、処置される個体の腫瘍の特性、特に、腫瘍の生物学的及び遺伝学的異常に基づいて薬物ごとのスコアを算出することが最終目的であるため、提案されうる他の変更アルゴリズムを考慮してもよい。
【0072】
本発明のさらなる態様及び利点は、以下の実施例において開示されるが、これは例示として考えるべきであり、本発明の範囲を限定するものでない。
【実施例】
【0073】
実施例1
診断時、肺癌の70%は末期である。これらは、臨床転帰不良で手術が不可能である。
【0074】
本発明の方法は、ある患者の症例において、実施者が最適な処置を選択するために使用されている。
【0075】
患者は、58歳の白人男性であった。患者は、非小細胞肺癌(NSCLC)(cT4、N0、M1)に罹患していた。9種類の治療方針、即ち、シスプラチン−ジェムザール、タキソテール、ナベルビン、タキソール−カルボプラチン、縦隔放射線治療、イレッサ、アリムタ、タルセバ及びHKI272(pan Her阻害剤)が用いられた。HKI272の場合では、患者を臨床試験に組み入れた。
【0076】
HKI272は、2005年10月に開始した。図1は、縦隔リンパ節(C1)及び副腎結節(C2)のNMRを示す。HKIは、有効であった;患者を、ほぼ3年間試験下においた。しかしながら、HKI272で37か月後、疾患の進行が観察された(図2)。新たな鎖骨下筋転移が見られた。これは、今日の腫瘍学における最も大きな問題の一つであり、たとえ初期応答があったとしても、処置に対して二次的な耐性を引き起こすことが多い。従って、HKI272処置を停止する判断は、新たな転移が生じたときに行った。実施者が、当時、HKI272がこの患者に有用な最後の治療方針であると考えていたことに言及することが重要である。
【0077】
鎖骨下筋転移を切除し、分子プロファイリングを完成するために使用した。プロファイリングの特徴は:
1.腫瘍組織対正常肺組織の比較(T対N);
2.比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)(T対N);
3.遺伝子発現(GE)比較(T対N);
4.microRNA(miRNA)プロファイリング(T対N);
5.EGFR、p53、CTNNB1、AKT1、BRAF、KRAS、HRAS、NRAS、PIK3CA、FBXW7、EGFR、ERBB2、KIT、NOTCH1、PTEN、STK11、TP53、APC、MET、RB1、FGFR2、FGFR3、JAK2、TSC1、TSC2、CDKN2A、CDKN2A、TOP1、TOP2A、PDGFRA、VHL、CDK4、JAK1、TYKを含む遺伝子の配列決定
6.関連する突然変異は、これらのいずれの遺伝子においても発見されなかった(例えば、EGFR又は他の遺伝子の突然変異なし)。従って、この患者の場合、突然変異はアルゴリズムに影響を与えなかった。遺伝子発現により得られた関連する結果のみ使用した。
【0078】
次いで、薬物の有効性を予測するために、本発明のアルゴリズムをこれらのデータに適用した。薬物ごとのスコアを、選択したデータに基づいて算出した。使用するアルゴリズムは、以下:
【数11】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、個体の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
zは、この実施例において、突然変異は検出されなかったことから、1であり;
Σは、合計であり;
Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての脱制御された各標的遺伝子の倍率変化であり;
nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数を指す]
のとおりである。
【0079】
表2は、算出したスコアを示す。以前の治療方針で使用した薬物が、低いスコア、即ち、シスプラチンの場合108、ジェムザールの場合70、タキソテールの場合77、タキソールの場合147、カルボプラチンの場合82、イレッサの場合66、そして、アリムタの場合73で関連付けられることを観察することができる。
【0080】
2008年12月に、HKI272を停止し、ゼローダ(3600mg/日、1日目〜14日目、21日毎)とラパチニブ(1250mg/日)との併用処置を開始した。この処置の開始時に、患者の疾患は急速に進行し、健康の悪化が見られた。患者においてEGFが15倍過剰発現し、HKI272の継続が必要であったことから、たとえEGFRで突然変異が検出されなかったとしても、抗HER1及び抗HER2阻害剤であるラパチニブは適切であった。実際に、腫瘍におけるEGFの過剰発現が、EGFRの持続的な活性化を誘導し、この理由から、同じスペクトルをカバーするために、HKI272から別の抗EGFRへの変更を保証する論理が明らかであった。ゼローダ(スコア555)が、アルゴリズムのスコアに基づいて選択された。
【0081】
疾患は安定であったが、再発性の麻痺が観察された。従って、2009年2月に、最も大きいアルゴリズムスコアを示したチオテパ(スコア713)を添加することを決定した。ゼローダ(3600mg/日、5日/週、4週のうち3週)、ラパチニブ(1250mg/日)とチオテパ(15〜30mg/日、1及び2日目、4週間毎)の併用処置の2か月後、疾患は安定していた(図3)。11か月でも疾患は安定しており(図4)、再発性麻痺がさらに生じることなく、患者は良好な全身状態を呈した。
【0082】
さらに、本方法は、将来の治療用併用を決定することができる。実際に、癌処置の間に耐性が現れることが多い。少なくとも3つの他の薬物、即ち、フォテムスチン(スコア627)、リツキシマブ(スコア761)及びトラベクテジン(trabectidin)(スコア376)は高スコアであり、ゼローダ、ラパチニブ及びチオテパの併用に耐性が生じた場合に使用することができる。
【0083】
薬物を選択するために本方法を使用することにより、予期しない結果が得られた。実際に、特定の患者について薬物の潜在的有効性を予測するスコアなしで、実施者がゼローダ及びチオテパの両方を選択することはないであろう。実際に、肺癌、特に、NSCLCにおいてこれらの薬物の適応はない。本方法は、患者を良好な全身状態で14か月間安定させることができたが、一方で、生命予後は、ゼローダ及びチオテパの併用処置の開始わずか数週間であった。
【0084】
結論として、本実施例は、実施者が個体のデータに基づいて適切な薬物を選択することを助けるための、本発明の方法の価値を明確に示した。
【0085】
遡及的に、新規な予測方法を使用することにより、全体に不十分である、以前の治療方針の全てが、記載のように非常に低い予測スコアで関連付けられたことが明確に実証された。これは、まさに、薬物の有効性の予測決定を提供することができるこの革新的方法の目的であり、そして、この実施例において、使用した有効性の低い薬物の全てが低いスコアで関連付けられることから、その構想の正当性が十分に実証される。
【0086】
他の患者でこの新しい手順を実験して、本方法の高付加価値は、各患者がユニークな薬物の併用を必要とすることを実証することである。従って、本方法は、個体に合わせた処置の選択の分野に関連性が高いと考えられる。
【0087】
実施例2
患者は64歳であった。彼は気管支腺癌T4に罹患しており、骨及び胸膜転移を有する。2つの治療方針が、即ち、シスプラチン−アリムタ及びタルセバが用いられた。第一の治療方針は疾患進行を伴ったが、第二のものは有効ではなく急速な進行をもたらした。
【0088】
正常な気管支粘膜の生検及び腫瘍生検を実施し、それを用いて、配列決定、CGH、microRNA解析及びゲノム発現解析により突然変異解析を行った。
【0089】
CGHプロファイルは、多数の変化(欠損又は増加)を含んでおり、生検が腫瘍状態であることが規定された。
【0090】
実施例1に列挙したような遺伝子を含む突然変異解析から、BRAF遺伝子(B−Rafプロト−癌遺伝子セリン/トレオニン−プロテインキナーゼ、GeneID 673)の突然変異G464Vが同定される。この突然変異は、内因性の有糸分裂シグナル伝達で活性化されることが想定される。従って、ソラフェニブを用いた処置が考えられる。
【0091】
ゲノム発現解析に基づいて、実施例1に詳述するようにスコアを算出し、これを、いくつかの関連薬物についてのみ以下の表に示す。
【0092】
【表1】





【0093】
従って、治療有効性をもたらさない2つの治療方針で使用される薬物が、低いスコア、即ち、シスプラチンでは80、アリムタでは156及びタルセバでは143で関連付けられることを観察することができる。従って、本発明の方法では、そのような処置の選択を避けるべきである。
【0094】
2010年1月から、スコア290で関連付けられるビノレルビンが患者の処置に選択された。当所、患者は非常に増悪な全身状態であった。3か月後、疾患は安定し、その後、進行した。結論として、最高のスコアで関連付けられる薬物を選択したわけではないが、選択した薬物は有効であり、3か月の延命が達成された。
【0095】
実施例3
患者は、2007年5月に、両側肺転移及び無症候性脳転移を伴う初代気管支腺癌と診断された。外科的処置を2008年11月に実施し、2つの治療方針、即ち、第一の方針としてシスプラチン−ゲムシタビン、そして第二の方針としてアリムタの13サイクルを用いた。第一の方針は、部分応答、その後の疾患の進行をもたらし、第二の方針は疾患の進行のみをもたらした。
【0096】
正常気管支生検及び肺転移生検を実施し、それを用いて、配列決定、CGH、microRNA解析及びゲノム発現解析により突然変異解析を行った。
【0097】
CGHプロファイルは、多数の異常(ゲノム全体にわたる欠損及び増加)を含み、これは、生検が腫瘍状態であることを示した。
【0098】
実施例1に列挙したような遺伝子を含む突然変異解析からは、いずれの突然変異の同定も得られなかった。
【0099】
ゲノム発現解析に基づいて、実施例1に詳述するようにスコアを算出し、これを、いくつかの関連薬物についてのみ以下の表に示す。
【0100】
【表2】







【0101】
まず最初に、第一及び第二の治療方針で使用する薬物に関連付けられるスコアは低い(ゲムシタビン=129;シスプラチン=80及びアリムタ=0)。これらのスコアは、観察される臨床データと一致する。
【0102】
しかしながら、このスコア表に基づいて、384スコアで関連付けられるアバスチンが選択された。処置を2010年1月に開始し、図5のスキャナーに示すように2つの処置サイクル後に重要な応答が観察された。この重要な応答から、本方法及び確かな効果が患者にとって有効であることが認められる。
【0103】
実施例4
患者は59歳であった。彼は、副腎転移を伴う非小細胞気管支癌に罹患している。2つの治療方針、即ち、シスプラチン−アリムタの3サイクル及びタキソテール−シスプラチン−アバスチンの3サイクルが用いられた。これらの治療方針は、第一段階として安定化を、その後、疾患の進行段階をもたらした。
【0104】
正常及び腫瘍気管支生検を実施し、それを用いて、配列決定、CGH、microRNA解析及びゲノム発現解析により突然変異解析を行った。
【0105】
CGHプロファイルを図6に示すが、これは11番染色体に染色体異常を含んでいる。
【0106】
実施例1に列挙したような遺伝子を含む突然変異解析からは、いずれの突然変異の同定も得られなかった。
【0107】
ゲノム発現解析に基づいて、実施例1に詳述するようにスコアを算出し、これを、いくつかの関連薬物についてのみ以下の表に示す。
【0108】
【表3】





【0109】
従って、以下のスコアは、第一及び第二の治療方針の薬物に関連付けられる:シスプラチン(48)、アリムタ(88)、タキソテール(107)及びアバスチン(0)。これらのスコアは、臨床データと一致する。
【0110】
しかしながら、他の薬物はより良好なスコア、例えば、トラベクテジン(512)、ゲムツズマブ(232)及びヒドロキシウレア(179)で関連付けられる。
【0111】
実施例5
患者は、肺転移を伴う横紋筋肉腫に罹患しており、この患者で、本方法が、あらゆる種類の腫瘍において治療有効性を予測するのに効果的であることを証明する。これは、臀部筋の線維粘液肉腫由来の進化の転移性疾患である。この初期の腫瘍は、2006年に治療的外科手術で切除された。その後、患者は、2007年に腹膜中皮の転移を発症した。6サイクルのアリムタ及びシスプラチンの併用処置は、実際には応答不良であったため、その後、患者は胸膜切除を受けた。その後、新たな肺の転移性病変が、手術ができない込み入った位置に検出された。
【0112】
正常な筋生検及び肺転移生検を実施し、それを用いて、配列決定、CGH及びゲノム発現解析により突然変異解析を行った。
【0113】
CGHプロファイルから16番染色体の重大な増幅が示された。それは、PDGA遺伝子座の増幅に相当する。
【0114】
実施例1に列挙したような遺伝子を含む突然変異解析からは、いずれの突然変異の同定も得られなかった。
【0115】
ゲノム発現解析に基づいて、実施例1に詳述するようにスコアを算出し、これを、いくつかの関連薬物についてのみ以下の表に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
注目すべきは、ニロチニブは324の大きいスコアに関連付けられ、PDGFRA及びPDGFRBの経路において活性であることが知られている。従って、発明者らは、PDGF経路をさらに厳密に研究することで以下の結果を得た。
【0118】
【表5】


非常に大きな活性化を観察することができる。
【0119】
CGH及び遺伝子発現プロファイルから、PDGF経路が、この病変についての腫瘍発生の重要な推進力として示されることが裏付けられる。実際に、PDGFDは、腫瘍では正常組織に比べて18倍過剰発現しており、受容体β−βを活性化する。また、PDGFRBが3倍過剰発現することについても言及することが重要である。PDFGAは8倍過剰発現し、受容体PDGFRAは10倍過剰発現する。
【0120】
まとめると、ニロチニブは、両方の受領体を阻害することから標的治療の良好な候補であると考えられる。
【0121】
患者は、ニロチニブ処置の規制認可の承認を待っている。彼の主治医は、この治療法の選択を承認した。
【0122】
結論として、試験患者は全員治療不全であった。その患者全員に対しては、もはや選択する治療法はなく、彼らの全身状態から臨床試験への移行は指し止められた。癌科医師の承認及び依頼文書に基づいてこの方法が適用された。本方法は、以前の治療方針で使用された薬物を低いスコアで関連付けすることができ、低いスコアと治療有効性との良好な相関性を説明することができる。遡及的に、専門家は、そのような戦略を適用することができる可能性がある場合に、効果的でない薬物の使用を避けることができ、患者にとって時間の節約につながることを想定することができる。試験患者が非常に特異なプロファイルを示したことから、オーダーメイド医療の構想の有効性が提供されたことに留意すべきである。同じ組織型の正常細胞及び腫瘍細胞を患者で比較することができる限り、方法をあらゆる種類の腫瘍に適用することができる。別の利点としては、コンパニオンテストに基づく現在用いられている方法は、所定の異常を有する限られた患者にのみ適用することができるが、本方法は、全ての患者に対して、ある解決策に可能性のある治療効果を与えることを提供することができる。
【0123】
【表6】

























































































































































































































































































































【0124】
【表7】








































【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において癌を処置するための複数の薬物の相対的有効性を予測する方法であって、
− 患者由来の腫瘍試料の分子異常を、同じ患者由来の正常試料と比較して特性決定すること、ここで、腫瘍における脱制御された遺伝子を決定する;
− 複数の薬物の各薬物についての標的遺伝子を含むデータベースを準備すること;
− 患者由来の腫瘍試料における各薬物についての標的遺伝子の中の脱制御された遺伝子のパーセンテージに原則基づいて複数の薬物の薬物ごとのスコアを決定すること、ここで、より高いスコアが、患者における腫瘍の処置について薬物のより高い相対的有効性を予測している、を含む方法。
【請求項2】
腫瘍試料の分子異常を特性決定する工程が、正常試料と比較し、腫瘍において差異的に発現される遺伝子を決定すること、及び/又は、遺伝子コピー数の増加又は減少を決定すること、及び/又は、遺伝子の突然変異の存在を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍試料の分子異常を特性決定する工程が、差異的に発現される遺伝子及び/又は遺伝子コピー数の増加又は減少の倍率変化(F)を決定すること、そして、場合により、差異的に発現される遺伝子の遺伝子転写(Int)の強度をさらに決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各薬物についての標的遺伝子が、データベースにおいて、メジャー標的遺伝子(MC)、マイナー標的遺伝子(Mc)及び耐性遺伝子(CR)に分類される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
所定の薬物についてのスコア(W)が、下記のアルゴリズム:
【数12】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、患者の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
zは、所定の薬物の標的遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数であり;
Σは、合計であり;
Fc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての脱制御された各標的遺伝子の倍率変化であり;
nCFc>2は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数を指す]
により決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Fc>2が、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であり、そして、nCFc>2が、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、2より大きい倍率変化を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数のいずれかである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定の薬物についてのスコア(W)が、下記のアルゴリズム:
【数13】


[式中、
Wは、所定の薬物についてのスコアであり;
Pは、患者の腫瘍において脱制御された、所定の薬物についての標的遺伝子のパーセンテージであり;
Σは、合計であり;
CMは、所定の薬物についてのメジャー標的遺伝子を指し;
Cmは、所定の薬物についてのマイナー標的遺伝子を指し;
CRは、所定の薬物についての耐性遺伝子を指し;
CM、nCm及びnCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値を有する、脱制御された標的遺伝子数であり;
CM、FCm及びFCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子について定義された閾値より大きい各遺伝子の倍率変化であり;
、q及びqは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての任意の増倍係数であり;
、z及びzは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子における突然変異の存在に関連する任意の増倍係数である]
により決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
所定の薬物についてのスコア(W)が、下記:
【数14】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びzの意味は上記で定義のとおりであり、そして、PCM、PCm及びPCRは、それぞれ、所定の薬物についての、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子に関する、個体の腫瘍において脱制御された遺伝子のパーセンテージである]
のアルゴリズムにより決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
所定の薬物についてのスコア(W)が、下記のアルゴリズム:
【数15】


[式中、W、Σ、CM、Cm、CR、FCM、FCm、FCR、q、q、q、z、z及びz、並びに、存在する場合のPCM、PCm及びPCRの意味は上記で定義のとおりであり、そして、IntCM、IntCm及びIntCRは、それぞれ、メジャー標的遺伝子、マイナー標的遺伝子及び耐性遺伝子についての強度である]
の一つにより決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
所定の薬物についてのスコア(W)が、下記のアルゴリズム:
【数16】


[式中、W、Σ、CM、CR、FCM、FCR、q、q、z及びz、並びに、存在する場合、PCM、PCR、IntCM及びIntCRの意味は、上記で定義のとおりである]
の一つにより決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CM、FCm及びFCRが、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される各標的遺伝子の倍率変化であり、そして、nCM、nCm及びnCRが、定義された閾値を有する、所定の薬物についての標的遺伝子数、又は、定義された閾値を有する、所定の薬物についての過剰発現される標的遺伝子数のいずれかである、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
定義された閾値が、少なくとも2又は2より大きい倍率変化である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
標的遺伝子についての増倍係数が、メジャー標的遺伝子(q)については、10〜1,000、マイナー標的遺伝子(q)については、0.1〜10、耐性遺伝子(q)では、10〜1,000を含みうる、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
突然変異に関連する増倍係数z、z及びzが、突然変異が存在しない場合は、1であり、突然変異の機能的影響に依存して、10〜1,000を含みうる、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533103(P2012−533103A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518969(P2012−518969)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059648
【国際公開番号】WO2011/003911
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512005737)
【氏名又は名称原語表記】WORLDWIDE INNOVATIVE NETWORK
【Fターム(参考)】