説明

患者に薬剤を投与するためのシステム及び方法

患者に薬剤を投与するシステム及び方法に関する。システムは液状薬剤を入れた持ち運び可能な薬剤容器5と、薬剤容器5に付着するために個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータを付帯した第1の識別要素5aを作成するための識別要素作製装置3と、第1の識別要素5aから第1のデータを読み取るための読み取り装置6と、供給装置であってその中に挿入された薬剤容器5,14から薬剤を患者に供給するための供給装置11と、を有し、読み取り装置6は、患者9に割り当てられた第2の識別要素10に付着又は付帯した第2のデータを同様に読み取ることが可能でありかつ供給装置11に接続されており、かつ、供給装置11の内部の制御ユニット16は、第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致する場合、供給装置11の複数の供給ユニット12a−12eの1つの供給手順を起動するための第1の制御信号13を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬剤を投与するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者、特に集中的なケアを受けている患者は、例えば静脈を介したり供給チューブを介したりするなど、1又は複数の供給装置を用いて薬剤及び可能であれば人工的食物を与えられることが知られている。例えば、供給装置は、前もって計測された患者の血液中の血糖値に応じて患者の血液中に存在するインスリン値を予め設定可能なレベルに維持するインスリン供給装置又は輸液ポンプとすることができる。同様にして、少なくとも1つの食物供給装置により直接的又は間接的に血液中に供給される食物の少なくとも1つの栄養価のための供給装置が、患者に対して管理されるようにできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このタイプの供給装置は、通常、薬剤及び/又は栄養価を投与するためのシステムに組み込まれた場合であっても、供給装置を用いた供給に基づいた数値を医者又は他の医療スタッフにより入力されることが必要がある。ここでは例えば、投与量、供給を行うべき時間間隔、間欠的供給等が、その後に行われるはずの例えばインスリン供給のベースとして入力され得る。
【0004】
この供給に先立って、患者から血液サンプルが採取されるが、これは通常、手動で行われ医療スタッフの介入を必要とする。同様に、引き続いて供給を実行するために、輸液ポンプ等の供給装置の入力機能についての必要な専門的知識を備えた更なる医療スタッフが必要とされる。
【0005】
さらに、輸液ポンプ等の、このタイプの供給装置は、供給速度が単位時間当たりの容積(ml/h)の形式で表示される。これに対して、供給される薬剤溶液については薬剤における投薬単位が用いられる。この結果、投薬単位をポンプの供給速度に変換することが必要である。これは、担当する医者の仕事である。このタイプの変換の欠点は、しばしば計算ミスを生じることであり、それは、供給速度の誤った入力につながり、そして患者に対する間違ったインスリン投与を行うこととなる。
【0006】
投薬単位を輸液ポンプに入力可能とすることも想定できる。しかしながらこれは、投与される薬剤の活性物質の濃度と薬剤の特性に関する情報を考慮する必要がある。これまでは、活性物質の濃度に関する情報においても、投薬単位及びその変換値の供給速度への入力においても、薬剤の主要な活性物質のみが考慮されてきた。このようなやり方は、しばしば、1つだけの又は基本的に1つだけの特定薬剤が投与される場合には、十分である。
【0007】
体内に薬剤溶液を供給するための多様な形態の供給装置又は供給機器が知られている。例えば、複数の輸液ポンプ及び/又は注入ポンプを具備する機器/システムが知られており、それらの各々が、薬剤の少なくとも1つの特定の活性物質を含む溶液を体内に供給する。その結果、薬剤溶液の混合物が生成されることになる。
【0008】
このタイプの輸液ポンプシステムは、しばしば、集中的な治療を必要とする患者の場合に用いられる。この場合、輸液ポンプは、薬剤供給において薬剤の連続的で正確な投薬を行う特性を備えている。投薬においてこれらのポンプの最適な調整を行うために、ポンプは共通の分類システムに組み込まれており、この分類システムは通常、中央制御ユニット、操作ユニット及び警告ユニットを備えている。例えばシリンジ内に存在する既に調製された薬剤を実際の輸液ポンプへ搬送する間、しばしば、投与量と患者に関する混同が生じるおそれがある。例えば、このタイプのシリンジは所定量の薬剤がそれらの中に入れられているが、医療スタッフが間違った輸液ポンプに割り当ててしまい、間違った患者に投与されてしまう可能性がある。この結果、患者は、間違った薬剤及び/又は間違った量の薬剤投与されてしまうことになる。このタイプの問題は、特に、多数の患者がその担当者により彼らの輸液ポンプに薬剤を供給されるときに生じ、また、薬剤シリンジを具備する多数の輸液ポンプが、中央の薬剤調製ステーションから供給されなければならないときに生じる。特に、血液を分析される多数の患者に共通の分析装置としてしばしば用いられる血液分析装置に関して、各輸液ポンプへの輸送中の個々のシリンジ及びそれらに関係する患者において、実行される血液分析から生じる薬剤の混同のリスクがある。
【0009】
これらのことから、本発明の目的は、個々の患者及び患者の供給装置に対する正しい薬剤の割当に関して高度の信頼性が得られる、多数の患者に薬剤を投与するために利用可能なシステム及び方法を構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1によるシステム及び請求項8による方法に関して実現される。
【0011】
本発明の重要な概念は、薬剤を多数の患者に、特に選択された患者に投与するためのシステムにおいて、次の特徴を有することである。
− 少なくとも1つの液状薬剤を入れた少なくとも1つの持ち運び可能な薬剤容器;
− 前記薬剤容器に付着するために個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータを付帯した少なくとも1つの第1の識別要素を作成するための識別要素作製装置;、
− 前記第1の識別要素から前記第1のデータを読み取るための少なくとも1つの読み取り装置;
− 供給装置であってその中に挿入された前記薬剤容器から薬剤を前記患者に供給するための少なくとも1つの供給装置;
− 前記読み取り装置は、前記患者に割り当てられた第2の識別要素に付着又は付帯した第2のデータを同様に読み取ることが可能でありかつ前記供給装置に接続されている;
− 前記供給装置の内部の制御ユニットは、前記第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致する場合、前記供給装置の複数の供給ユニットの少なくとも1つの供給手順を起動するための第1の制御信号を送信する。
【0012】
このタイプのシステムは、薬剤のために設けられた薬剤容器中の調製された薬剤を、患者の個々の供給装置に搬送することにおいて、正しい割当に関する高い信頼性を実現する。データを付着又は付帯する識別要素を用いることにより、薬剤をその中に収容しているこのタイプの薬剤容器の混同は、生じ得ないからである。異なるデータを読み取り比較することにより薬剤の混同は事実上排除される。
【0013】
このために、個人に関するデータの一致に関して第1と第2のデータを比較するために、供給装置の内部に第1の比較ユニットがある。これは、個人すなわち患者、調製された薬剤を割り当てられた個人として既に薬剤の調製をされた、第1のデータによる患者が、個人に取り付けられたアームバンド等から読み取られた第2のデータの個人に関するデータと比較されることを意味する。このことは、正しい薬剤が正しい患者に割り当てられることを確保する。なぜなら、そうでない場合は制御ユニットは供給手順を起動する投与信号を出さないからである。これは、例えばインスリンポンプである供給装置が、起動できないことを意味する。例えばインスリンポンプは、事実上、例えばシリンジ等の関係する薬剤容器による正しい薬剤を受け取りかつシリンジと患者に付与されている個人に関するデータの一致を確認したときにのみ起動されることができる。
【0014】
供給装置の内部の第2の比較ユニットは、第1のデータのうちの薬剤に関するデータを、供給装置の記憶ユニットに格納された薬剤に関する第2のデータと比較するために設けられる。これは、供給装置の記憶ユニットの内部に前もって保存されている薬剤成分を、使用されるシリンジの薬剤の薬剤成分と比較することを可能とする。それにより、非現実的な薬剤成分により誤って調製された薬剤が患者に投与されることを回避できる。実際に、例えば、供給装置の第2の比較ユニットは、薬剤容器の識別要素に付着された第1のデータのうちの薬剤に関する第1のデータが、薬剤に関する第2のデータについて許容可能かつ適切であるとして記憶ユニットの内部に保存されていたパラメータすなわちデータ範囲内であるときにのみ、供給手順を可能とする。このようにして、患者は、患者の病状を悪化させたり死に至らせたりする可能性がある成分の薬剤を誤って投与されることを回避される。この場合、正しい薬剤を各患者に割り当てることの高い信頼性も実現される。
【0015】
利点として、予め調製された薬剤の各成分は、識別要素のために、自動的に識別要素作製装置へ送られることができる。それにより、成分の組成や分量が担当者により見過ごされないことを確保する。
【0016】
好適な実施例においては、薬剤に関する第1及び/又は第2のデータの少なくとも一部を選択するための、供給装置の選択ユニットが設けられる。この選択ユニットは、薬剤に関する正しいデータが選択されるように用いられることを目的とする。この目的のために、識別要素により薬剤容器上に配置された薬剤に関する第1のデータ、又は、供給装置の記憶ユニットの内部に保存されている薬剤に関する第2のデータのいずれかを拠り所とすることにより、この、より有益な薬剤成分を任意に選択することができる。これに替えて、薬剤に関する選択された第2のデータ又は薬剤に関する選択された第1のデータのパラメータは、最近生じた事象にのみ基づいた他の投与量による変更された薬剤成分を投与可能とするために、変更することができる。
【0017】
好適な実施例においては、制御ユニットの第2の制御信号の受信に応じて供給手順の起動を遮断するための遮断ユニットが設けられる。制御ユニットは、第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致しないときにこの第2の制御信号を送信する。
【0018】
このタイプの遮断ユニットは、データの不一致が確認された場合、供給装置が患者に対する薬剤の供給手順を起動するための手順を継続できないようにすることを目的とする。これは、データの不一致が確認された場合、機器による手順の停止が自動的に生じることを意味する。この結果、個々の患者に対する薬剤の正しい割当における高度の信頼性が実現される。特に、病院内の別々の部屋において別々の輸液ポンプに対して薬剤容器の割当を行う結果として多数の薬剤の割当が行われる場合における間違った患者に対する間違った薬剤の割当のリスクが、これにより排除される。なぜなら、輸液ポンプ又は供給装置は、単にこのような薬剤の割当を許容しないからである。遮断ユニットにより、この手順の結果が実際に実現される。
【0019】
識別要素は、バーコードラベル、データマトリクスコードラベル及び/又はトランスポンダであることが好適である。これらのラベルは、薬剤容器の外面に接着により固定できる。この場合、バーコードラベル及びデータマトリクスコードラベルは、識別要素作製装置から印刷され、トランスポンダは、書き込み装置を用いてトランスポンダ上にデータが保存される。このトランスポンダは、その後、供給装置で読み取り装置を用いて読み取ることができる。一方、バーコード及びデータマトリクスコードラベルは、バーコードスキャナ又はデータマトリクスコードスキャナを用いて読み取ることができる。
【0020】
供給装置がインスリンポンプであり、供給ユニットが複数のインスリンユニットの1つであり、かつ薬剤容器がシリンジであることが、好適である。
【0021】
患者に薬剤を投与する方法は、次のステップを有することが好適である。
− 持ち運び可能な薬剤容器の中に少なくとも1つの液状薬剤を調製するステップ;
− 識別要素作製装置を用いて個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータを付帯する少なくとも1つの第1の識別要素を作成するステップ;
− 前記薬剤容器に前記第1の識別要素を付着するステップ;
− 少なくとも1つの読み取り装置を用いて前記第1の識別要素から第1のデータを読み取るステップ;
− 前記患者に割り当てられた第2の識別要素に付着又は付帯している第2のデータを読み取るステップ;
− 第1の比較ユニットを用いて前記第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致するか比較するステップ;
− 前記供給装置に対する制御ユニットの第1の制御信号を用いて、前記供給装置により薬剤を前記患者へ供給するための供給手順を起動するステップ。
【0022】
このタイプの方法は、読み取りデータの自己作動すなわち自動比較を可能とすることにより、読み取りデータの一致があったときにのみ、手順が継続され、そして患者に対する薬剤の供給手順が可能となる。この結果、正しい患者に対する正しい薬剤の割当が高度の信頼性で実現されることにより、間違った薬剤の投与、そしてさらには患者の望ましくない症状を回避できる。
【0023】
本発明の方法による好適な実施例においては、第3のデータの読み取りステップが設けられる。第3のデータは、患者を治療する者に割り当てられた第3の識別要素に付着又は付帯されるもので、権限のある担当者すなわち医療スタッフ内の者が、薬剤を患者に正しく割り当てて投与する。よって、他の者は、供給装置を構成する投与機器を操作することはない。この結果、権限なく供給装置が起動されて薬剤が供給されることに対する保護が実現される。
【0024】
同様にして、第1のデータのうち薬剤に関する第1のデータを、供給装置の記憶ユニットに保存された薬剤に関する第2のデータと比較するステップを設けることが好適である。このステップでは、識別要素に保存された薬剤に関するデータを、記憶ユニットに保存された薬剤に関するデータと比較することが、確保される。そしてこのようにして、薬剤容器の内部の薬剤成分が、投与される薬剤のあるべき許容された薬剤成分範囲内に対応しているか否かを確認することができる。
さらなる好適な実施例は、従属項に記載されている。有益かつ有用な特徴は、図面に関連する以下の説明で示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施例に沿ったその機能シーケンスにおける、本発明によるシステムの概略構成図である。
【図2a】図2aは、本発明の実施例に沿った本発明による方法を示す図である。
【図2b】図2bは、本発明の実施例に沿った本発明による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるシステムの一実施例の構成図である。個人及び治療方法に関する個々のデータとともに薬剤成分が、キーボード2を用いて医療スタッフによりコンピュータ装置1に入力される。
【0027】
その後、個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータの少なくとも一部を含むバーコード5aが、バーコードプリンタの形態で存在する識別要素作製装置3の内部で印刷される。このバーコードはラベルの形態で印刷され、そして例えば、個人に関するデータとしての患者識別番号、薬剤に関するデータとしての薬剤の名称及びその濃度、治療に関するデータとしての例えば投薬持続時間等の種々の投薬パラメータを含む。
【0028】
例えば、バーコードラベルは、バーコード又はデータマトリックスコードに加えて、「ハンス・ミュラー」、「アドレナリン」、「2mg/50」の印字を有してもよい。これは、シリンジ5に入れられる薬剤アドレナリンが2mg/50の投与量であることを意味する。同時に、薬剤が、薬剤調製ステーション4で調製され、シリンジ5に入れられる。その後又はその前に、バーコード5aが接着面を用いてシリンジ5に接着固定される。
【0029】
その後、バーコードラベル5aは、読み取り装置6でバーコードスキャナ7により読み取られ、その結果、個人、薬剤及び/又は治療に関するデータが、供給装置11の内部で読み取られる。
【0030】
同時に、患者9のアームバンド10上に付帯されて同様に患者に関するデータを含むバーコードが、別の又は同じバーコードスキャナ8によりアームバンド10から読み取られる。
【0031】
読み取られたデータは、その後、好適には供給装置11の内部に配置された第1の比較ユニット15へ送られる。第1の比較ユニット15は、例えばバーコードによりアームバンド10上に付帯された個人に関するデータと、薬剤調製ステーション4により調製された薬剤を参照してコンピュータ装置1により元々作成されたバーコードラベル5a上の個人に関するデータとを比較する。
【0032】
個人に関するデータ、さらに任意に薬剤に関するデータの一致が、第1の比較ユニット15内で確認されたならば、第1の比較ユニット15から制御ユニット16に対して適切な信号が送られ、制御ユニット16は、使用する輸液シリンジ14に対して第1の制御信号13を制御ラインを介して送る。これにより、輸液シリンジ14に圧縮動作をさせるために供給ユニット12bを起動する。
【0033】
患者に投与される異なる薬剤を入れた異なるシリンジを、それぞれ異なる供給ユニット12a、12b、12c、12d及び12eに配置可能であることに注目すべきである。この場合、輸液シリンジ14は、前もって調製された薬剤を入れたシリンジ5である。
【0034】
第1の比較ユニットが、個人に関するデータ及び任意に薬剤に関するデータが一致しないと確認したならば、制御ユニット16が遮断ユニット20に対して適切な信号を送ることにより、手順を終了させるとともに、この遮断ユニットにより供給装置11全体の遮断を行う。これにより、個人が間違った薬剤を割り当てられないことを確保する。なぜなら、薬剤は個人に関するデータを付帯し、個人すなわち患者9のアームバンドは、それに一致しなければならない個人に関するデータを付帯しているからである。
【0035】
同時に又は先立って、看護師の個人関連データを含む第3のデータが、看護師のアームバンドからバーコードスキャナ7又はバーコードスキャナ8を用いて読み込まれる。これらの第3のデータは、例えば記憶ユニット19に格納可能な永続的に保存されたデータと比較するために用いられる。これにより、その看護師がその機器すなわちこの供給装置11を操作するアクセス権限を有していることを確認する。ここで他の個人関連データが含まれていることが確認された場合、例えばこの看護師がインスリンを投与する権限を有していない理由で確認された場合、制御ユニット信号に従って、遮断ユニット20が起動され、供給装置11の手順を終了させる。
【0036】
第1のデータのうち薬剤に関するデータは、記憶ユニット19に格納された薬剤に関する第2のデータと比較される。この比較は、第2の比較ユニット18内で実行される。このタイプの比較において、バーコードスキャナ7により読み取られた薬剤に関する第1のデータと、記憶ユニット19からの薬剤に関する第2のデータの間の相違が確認された場合、又は、薬剤に関する第1のデータが薬剤に関する第2のデータに設けられた範囲外である場合、ユーザ又は看護師が、ディスプレイユニット及び入力ユニット17により、彼又は彼女がなお治療を継続したいか否か、及び、彼又は彼女がどちらのデータを実行したいかについて、問い合わせを受ける。その結果、看護師は、治療を継続するために、薬剤に関する第1のデータ又は薬剤に関する第2のデータを選択することができる。
【0037】
もちろん、その後又は同時に、看護師は、ディスプレイ及び入力ユニット17を用いて供給装置11のパラメータを変更することができる。これにより例えば、投与される薬剤の量を変更することができる。これにより、制御ユニット16による一定のデータ交換が行われ、続いて供給装置12bを起動する。
【0038】
ユーザ又は看護師は、第2の比較ユニット18による比較中に、薬剤に関するデータセットの1つ又は薬剤に関する第1若しくは第2のデータに関する決定を個々にしたい場合、選択ユニット21を用いて適切な誤り信号が制御ユニット16に送られ、制御ユニット16は、選択されたデータに従って輸液シリンジ14が挿入されている供給ユニット12bを起動する。それにより供給手順が開始され、適切な場合、それを継続する。
【0039】
例えばインスリンである薬剤の投与が行われた後、投与パラメータ及び供給手順全体並びにシーケンス全体の自動化書面が自動的に作成される。これは、コンピュータ装置1で行われることが好ましい。これは、矢印22で示されるように例えば無線LANを用いて実行可能である。
【0040】
本発明による方法は、図2a及び図2bの本発明の実施例により示される。
【0041】
ステップ25において、入力されたパラメータ及びデータに従って薬剤の調製が行われる。その後、ステップ26において、薬剤容器に付着させるバーコードラベルの自動作成が行われる。
【0042】
その後、ステップ27において、識別要素としてのバーコードラベルの付着が、例えば接着面を用いて行われる。
【0043】
シリンジが、インスリンポンプの形態である供給装置に運ばれた後、バーコードラベルに付帯した、好適には暗号化されている第1のデータの読み取り(ステップ28)が行われる。同時に、好適には暗号化されているバーコードラベルの形態のアームバンド上に存在する第2のデータの読み取り(ステップ29)が行われる。
【0044】
ステップ30において、第1のデータと第2のデータが一致するかについての比較が行われることにより、不一致の場合はステップ31において全ての手順を終了させる。該当するデータ、特に個人に関するデータが確認された場合は、第3のデータの読み取り(ステップ32)が行われ、ステップ33において、インスリンポンプの中に既に保存されているデータと比較される。これらは、担当者がアクセス権限を有するか否かを確認するための担当者に関するデータである。これが確認されない場合、ステップ34において、治療許可が認められず、終了する。
【0045】
一方、その看護師が担当者としてアクセス権限を有しかつ治療権限を有すると確認された場合、ステップ35において、薬剤に関する第1のデータが薬剤に関する第2のデータと一致するか比較される。これは、シリンジ上に示されている薬剤に関するバーコードのデータが、インスリンポンプ内に既に保存されている薬剤に関するデータ範囲から、望ましくない態様で相違していないことを確認するためである。この種の比較が、一致しない結果となった場合、ステップ36において手順の終了が行われる。
【0046】
ステップ35において、この比較における確認がなされたならば、ステップ37において、供給ユニットの1つに投与信号が送られ、供給手順の起動が行われる。その後、ステップ38において、供給パラメータの表示が行われる。
【0047】
ステップ39において、計測された参照血糖値が変更された場合、更新された調製により、サイクルは、矢印40で示すように最初から開始される。
【0048】
出願書類中に開示された全ての特徴は、それらが個別に又は組合せにより従来技術と比較して新規である限りにおいて、本発明に本質的であると主張される。
【符号の説明】
【0049】
1 コンピュータ装置
2 キーボード
3 識別要素作製装置
4 薬剤調製ステーション
5 シリンジ
5a バーコード
6 読み取り装置
7 第1のバーコードスキャナ
8 第2のバーコードスキャナ
9 患者
10 アームバンド
11 供給装置
12a、12b、12c、12d、12e 供給ユニット
13 制御信号
14 輸液シリンジ
15 第1の比較ユニット
16 制御ユニット
17 入力ユニット
18 第2の比較ユニット
19 記憶ユニット
20 遮断ユニット
21 選択ユニット
22 矢印
25 薬剤の調製
26 バーコードラベルの作成
27 バーコードラベルの付着
28 第1のデータの読み取り
29 第2のデータの読み取り
30 第1と第2のデータの比較
31 不一致の場合の手順全体の終了
32 第3のデータの読み取り
33 第3のデータと既に保存されているデータの比較
34 治療の不認可による手順の終了
35 薬剤に関する第1と第2のデータの比較
36 手順の終了
37 供給ユニットの1つへ投与信号の送信
38 供給パラメータの表示
39 計測された血糖値の変更の場合の更新された調製
40 矢印−最初からサイクルを開始

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に薬剤を投与するためのシステムにおいて、
少なくとも1つの液状薬剤を入れた少なくとも1つの持ち運び可能な薬剤容器(5)と、
前記薬剤容器(5)に付着するために個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータを付帯した少なくとも1つの第1の識別要素(5a)を作成するための識別要素作製装置(3)と、
前記第1の識別要素(5a)から前記第1のデータを読み取るための少なくとも1つの読み取り装置(6)と、
供給装置であってその中に挿入された前記薬剤容器(5,14)から薬剤を前記患者に供給するための少なくとも1つの供給装置(11)と、を有し、
前記読み取り装置(6)は、前記患者(9)に割り当てられた第2の識別要素(10)に付着又は付帯した第2のデータを同様に読み取ることが可能でありかつ前記供給装置(11)に接続されており、かつ、
前記供給装置(11)の内部の制御ユニット(16)は、前記第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致する場合、前記供給装置(11)の複数の供給ユニット(12a−12e)の少なくとも1つの供給手順を起動するための第1の制御信号(13)を送信する、システム。
【請求項2】
個人に関するデータの一致に関して前記第1と第2のデータを比較するための、前記供給装置(11)の内部の第1の比較ユニット(15)を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のデータのうち薬剤に関するデータを、前記供給装置(11)の記憶ユニット(19)に格納された薬剤に関する第2のデータと比較するための、前記供給装置(11)の内部の第2の比較ユニット(18)を特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記薬剤に関する前記第1及び/又は第2のデータの少なくとも一部を選択するための、供給装置(11)の選択ユニット(21)を特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2のデータが少なくとも一部において一致しないときに送信される、前記制御ユニット(16)の第2の制御信号の受信に応じて供給手順の開始を遮断するための遮断ユニット(22)を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記識別要素(5a)がバーコードラベル、データマトリクスコードラベル及び/又はトランスポンダである、請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記供給装置がインスリンポンプ(11)であり、前記供給ユニットが複数のインスリンポンプユニット(12a−12d)の1つでありかつ前記薬剤容器がシリンジ(5)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
患者に薬剤を投与する方法であって、
持ち運び可能な薬剤容器(5)の中に少なくとも1つの液状薬剤を調製するステップ(25)と、
識別要素作製装置(3)を用いて個人、薬剤及び/又は治療に関する第1のデータを付帯する少なくとも1つの第1の識別要素(5a)を作成するステップ(26)と、
前記薬剤容器(5)に前記第1の識別要素(5a)を付着するステップ(27)と、
少なくとも1つの読み取り装置(6)を用いて前記第1の識別要素(5a)から第1のデータを読み取るステップ(28)と、
前記患者(9)に割り当てられた第2の識別要素(10)に付着又は付帯している第2のデータを読み取るステップ(29)と、
第1の比較ユニット(15)を用いて前記第1と第2のデータが少なくとも部分的に一致するか比較するステップ(30)と、
前記供給装置(11)に対する制御ユニット(16)の第1の制御信号(13)を用いて、前記供給装置(11)により薬剤を前記患者(9)へ供給するための供給手順を起動するステップ(37)と、を有する方法。
【請求項9】
前記患者を治療する人に割り当てられた第3の識別要素に付着又は付帯された第3のデータを読み取るステップ(32)を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のデータのうちの薬剤に関する第1のデータを、前記供給装置(11)の記憶ユニット(19)に保存された前記薬剤に関する第2のデータと比較するステップ(35)を特徴とする請求項8又は9に記載の方法。





【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2013−517871(P2013−517871A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550479(P2012−550479)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053246
【国際公開番号】WO2011/107569
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(595141166)ベー.ブラウン メルズンゲン アーゲー (6)
【Fターム(参考)】