説明

患者結果(OutcomeofPatients)を予測するトール様受容体2(TLR−2)ハプロタイプ

【課題】炎症状態及び/又はグラム陽性菌感染症を有するか若しくはその発症の危険がある対象についての予後を得るための方法及びキットを提供すること。
【解決手段】1以上のSNPsについての対象のトール様受容体2(TLR−2)の遺伝子型の判定、該判定された遺伝子型と炎症状態から回復する対象の能力に対応する多型についての既知の遺伝子型との比較、及び、それらの予後に基づく対象の同定、を含む方法及びキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、炎症状態若しくはグラム陽性菌感染症にあるか又はそれらが発症するリスクがある対象の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子型は、炎症性及び感染性疾患における対象結果の予測に役割を果たすことが示されている(MCGUIRE W. et al. Nature (1994) 371: 508-10; NADEL S. et al. Journal of Infectious Diseases (1996) 174: 878-80; MIRA JP. et al. JAMA (1999) 282: 561-8; MAJETSCHAK M. et al. Ann Surg (1999) 230: 207-14; STUBER F. et al. Crit Care Med (1996) 24: 381-4; STUBER F. et al. Journal of Inflammation (1996) 46: 42-50; 及び、WEITKAMP JH. et al. Infection (2000) 28: 92-6)。更に、細菌内毒素及び人工心肺(CPB)のような、感染性及び非感染性刺激は、夫々、血液凝固システムを活性化し、そして、全身性炎症反応症候群(SIRS)を誘発する。
【0003】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、(抗炎症過程に関して)亢進した炎症、(抗凝固過程に関して)亢進した凝固、及び、低下した線維素溶解によって特徴付けられる(Beutler B. (2001) Biochem Soc Trans 29: 853-9; Bochud PY. et al. (2003) J Immunol 170: 3451-4; Kang TJ. et al. (2002) Cytokine 20: 56-62; Knaus WA. et al. (1991) Chest 100: 1619-36; Lorenz E.et al. (2000) Infect Immun 68: 6398-401;及び、Sorensen TI. et al. (1988) N Engl J Med 318: 727-32)。トール様受容体2(TLR‐2)は、ペプチドグリカンに対する生得的免疫におけるパターン認識受容体であり、そして、グラム陽性菌に対する宿主免疫反応の開始において重要な役割を有している(Beutler B. (2001) Biochem Soc Trans 29: 853-9)。グラム陽性菌細胞壁からのペプチドグリカンとTLR‐2の結合は、細胞内シグナル反応を開始させ、その結果、核因子κB(NFκB)の活性化及び炎症促進性サイトカインの誘導をもたらす。TLR‐2転写物におけるコドン677のトリプトファンがアルギニンに置換されている多型は、らい腫性ハンセン病に対する感受性、並びに、ライ菌への反応におけるNFκB活性化の減少及び血清中IL−12濃度の減少と関連している(Bochud PY. etal. (2003) J Immunol 170 :3451-4 ; Kang TJ. et al. (2002) Cytokine 20: 56-62)。コドン753のアルギニンがグリシンに置換されている第二の多型は、ライム病菌及び梅毒トレポネーマからの細菌ペプチドに対するTLR‐2の反応性の減少、及び、感染性ショックの集団におけるブドウ球菌感染症への感受性と関連している(Lorenz E. etal. (2000) Infect Immun 68: 6398-401)。
【0004】
細菌内毒素及び人工心肺(CPB)のような感染性及び非感染性刺激は、血液凝固システムを活性化し、そして、全身性炎症反応症候群(SIRS)を誘発することが知られている。
【0005】
ヒトTLR‐2配列は、第4番染色体に位置し、2.6kbに及ぶ。代表的なヒトTLR‐2 mRNA配列は、受入番号NM_003264(2621bp)としてGenBankに収載されている。更に、TLR‐2転写開始点の上流に、TLR‐2配列(配列番号1)が見出されており、dbSNP受入番号rs4696480としてGenBankに収載されている。SNPは、配列番号1によって表されるTLR‐2配列内の位置201に位置している(TLR‐2転写開始点との関係では、‐16934に相当する)。この同じ多型部位は、以前に、‐16933として同定されたが(Sutherland AM. et al. Crit Care Med. (2005) 33 (3): 特定の頁は不明)、後に、番号が振り直された。SNP‐16934に対する別の参照番号はIIPGA‐TLR2_540である(www. innateimmunity. net/ IIPGA/ IIPGASNPs ; SNP information was retrieved from the Innate Immunity PGA, NHLBI Program in Genomic Applications. Riva A. and Kohane IS. A Web-Based Tool to Retrieve Human Genome Polymorphisms from Public Databases AMIA 2001 Annual conference, Washington DC, November 2001)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒト トール様受容体2(TLR−2)配列中の特定の一塩基多型(SNPs)が、炎症状態からの対象結果の予測因子で有り得るという、驚くべき発見に部分的には基づいている。
【0007】
本発明は、TLR−2 SNPが、炎症状態の対象における改善された予後又は対象結果と関連するという、驚くべき発見に部分的には基づいている。更に、TLR−2 SNPは、対象結果の指標として、対象スクリーニングのために、又は、炎症状態からの回復の予測のために有用である。
【0008】
本発明は、炎症状態からの回復可能性減少と関連する所与のSNP部位における特定のヌクレオチド(すなわち、「リスク遺伝子型」)、又は、炎症状態からの回復可能性増加と関連する所与のSNP部位における特定のヌクレオチド(すなわち、「プロテクティブ遺伝子型」)の同定に、部分的には基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある対象に関する予後又は回復能力の予測を得るための方法であって、該対象のTLR−2配列の1以上の多型部位を含む該対象における遺伝子型(但し、該遺伝子型は該対象が炎症状態から回復する能力の指標をなす)を判定することを含む方法が実現される。
【0010】
本発明のもう一つの態様によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある対象に関する予後又は回復能力の予測を得るための方法であって、該対象のTLR−2配列の1以上の多型部位を含む該対象における遺伝子型(但し、該遺伝子型は該対象が炎症状態から回復する能力の指標をなす)の判定ステップを含む方法が実現される。前記方法は、前記遺伝子型を判定する前に、対象の遺伝子配列情報を獲得するステップを更に含んでもよく、そして、前記方法は、遺伝子配列情報を含む前記対象から生物学的試料を獲得するステップを更に含んでもよい。更に、前記方法は、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者の同定を含んでもよい。
【0011】
本発明のもう一つの態様によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある対象に関する予後又は回復能力の予測を得るための方法が実現され、該方法は、以下のステップのうち任意の1以上を含む:
(a) 炎症状態を有するかその発症の危険がある患者の同定;
(b) 前記対象からの生物学的試料の獲得;
(c) 前記対象の遺伝子配列情報の獲得;
(d) 前記対象のTLR−2配列の1以上の多型部位を含む前記対象の遺伝子型の判定(但し、該遺伝子型は該対象が炎症状態から回復する能力の指標をなす)。
【0012】
前記多型部位は、SNP −16934(配列番号1の位置201)又はそれと連鎖不平衡にある多型部位で有り得る。前記SNP −16934と連鎖不平衡にある多型部位は、D’値≧0.5(又はr≧0.5)で有り得る。前記方法は、前記判定された遺伝子型と既知の遺伝子型との比較を更に含む(但し、該既知遺伝子型は、(i) 前記対象型の炎症状態;又は、(ii) 別の炎症状態、からの回復についての予測指標として既知である)。前記方法は、前記対象についての前記TLR−2配列情報の判定を更に含み、そして、前記方法は、前記対象から得られた核酸試料からの前記遺伝子型の判定を更に含んでもよい。遺伝子型の判定は、制限酵素断片長鎖多型分析;シークエンシング;ハイブリダイゼーション;オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ;ライゲーションローリングサークル増幅;5’ヌクレアーゼアッセイ;ポリメラーゼプルーフリーディング法;アレル特異的PCR;及び、配列データの読み取り、の1以上を含み得る。
【0013】
前記対象のリスク遺伝子型は、炎症状態から回復する可能性の減少又は芳しくない結果となるリスクの増加の指標と成り得る。前記対象が重症である場合、前記リスク遺伝子型は、重篤な心血管又は呼吸性の機能障害の予後の指標と成り得る。前記リスク遺伝子型は、配列番号1の位置201において少なくとも一つのTヌクレオチドを含み得る。
【0014】
前記対象のプロテクティブ遺伝子型は、炎症状態から回復する可能性の増加の指標と成り得る。前記対象が重症である場合、前記プロテクティブ遺伝子型は、心血管又は呼吸性の機能障害の重篤性が弱まる予後の指標と成り得る。前記プロテクティブ遺伝子型は、配列番号1の位置201においてホモ接合性のAヌクレオチドを含み得る。
【0015】
本発明のもう一つの態様によれば、対象の炎症状態からの回復の予後と相関するTLR−2配列における多型を同定する方法が実現され、該方法は、
(a) 炎症状態の対象(複数)グループからのTLR−2配列情報の獲得;
(b) 前記対象の前記TLR−2配列中の少なくとも一つの多型性のヌクレオチド位置の同定;
(c) 前記グループ中の個々の対象についての、前記多型部位における遺伝子型の判定;
(d) 前記炎症状態からの、前記グループ中の個々の対象の回復能力の判定;及び、
(e) ステップ(c)で判定された遺伝子型と、ステップ(d)で判定された前記回復能力との関連付け、
とを含み、それにより、回復と関連する該TLR−2多型を同定する。
【0016】
前記炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、吸引間質性肺炎(aspiration pneumanitis)、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、子癇前症、子癇、HELP症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、汎発性強皮症、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、硬変 から成る群より選択され得る。
【0017】
前記遺伝子型の判定は、当業者既知の任意の技術により達成され得る:制限酵素断片長鎖多型分析;シークエンシング;ハイブリダイゼーション;オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ;ライゲーションローリングサークル増幅;5’ヌクレアーゼアッセイ;ポリメラーゼプルーフリーディング法;アレル特異的PCR; マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析計−マイクロシークエンス解析;ジーンチップハイブリダイゼーションアッセイ; 及び、配列データの読み取り、のうちの1以上を含み得るがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明のもう一つの態様によれば、炎症状態から回復する対象の能力の予測を可能にするための、該対象のTLR‐2配列内における多型部位内の規定されたヌクレオチド位置における遺伝子型を判定するためのキットが提供され、該キットは、TLR‐2多型部位における変化したヌクレオチドを識別し得る制限酵素、又は、該TLR‐2多型部位と十分な相補性を有し且つ該変化したヌクレオチドを識別し得る標識化オリゴヌクレオチド、を含む。前記キットは、以下のうちの1以上を含んでもよい:パッケージ;遺伝子型判定のためのキットの使用説明書;バッファー、ヌクレオチド及び酵素のような試薬類。本書で使用されるキットには、以下のうちの任意の組み合わせを含んでよい:TLR‐2多型部位における変化したヌクレオチドを識別し得る制限酵素;及び/又は、該TLR‐2多型部位と十分な相補性を有し且つ該変化したヌクレオチドを識別し得る標識化オリゴヌクレオチド、及び/又は、該TLR‐2多型部位を含む領域を増幅するのに適したオリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチドのセット。前記キットはまた、以下のうちの1以上を含んでもよい:パッケージ;遺伝子型判定のためのキットの使用説明書;バッファー、ヌクレオチド及び酵素のような試薬類;及び/又は、容器。
【0019】
前記制限酵素を有するキットは、多型部位を包含する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド若しくは複数オリゴヌクレオチドのセット、重合剤、及び、遺伝子型を決定するためのキットの使用説明書も含み得る。
【0020】
本発明のもう一つの態様によれば、炎症状態からの対象の回復能力の予測を可能にするための、該対象のTLR‐2配列内における多型部位内の規定されたヌクレオチド位置における遺伝子型を判定するためのキットが提供され、該キットは、該多型部位における変化したヌクレオチドを識別し得る制限酵素、又は、該多型部位と十分な相補性を有し且つ該変化したヌクレオチドを識別し得る標識化オリゴヌクレオチドをパッケージ内に含む。前記多型部位は配列番号1の位置201又は配列番号2の位置540に相当し得る。
【0021】
本発明のもう一つの態様によれば、本書に記載された前記方法に従ったTLR‐2多型の同定に使用され得るオリゴヌクレオチドが提供され、該オリゴヌクレオチドは、配列番号1によって規定される配列の一つの領域又はその相補鎖と、通常のハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリダイズする特徴を有するオリゴヌクレオチドである。
【0022】
本発明のもう一つの態様によれば、配列番号1の一部又はその相補鎖を含むオリゴヌクレオチドプライマーが提供され、ここで、該プライマーは10〜54ヌクレオチド長であり且つ該プライマーは配列番号1の領域又はその相補鎖に特異的にハイブリダイズし本書に記載されたTLR‐2多型を特異的に同定し得る。或いは、前記プライマーは、16〜24ヌクレオチド長であってもよい。
【0023】
本発明のもう一つの態様によれば、(a)対象からTLR−2配列情報を得るステップ、及び、(b)該配列中の1以上の多型であって対象が炎症状態から回復する能力を示し得る1以上の多型の個性を決定するステップ、を含む対象スクリーニングのための方法が実現される。
【0024】
本発明のもう一つの態様によれば、(a)炎症状態を発症する危険又は炎症状態を現に有していることに基づき対象を選択するステップ、(b)該対象からTLR−2配列情報を得るステップ、及び、(c)該配列中の1以上の多型であって対象が炎症状態から回復する能力を示す多型を検出するステップ、を含む対象スクリーニングのための方法が実現される。
【0025】
本発明のもう一つの態様によれば、炎症状態の治療に有用であることが既知か又は推測される薬剤候補の効果を判定するために対象グループを選択するための方法が実現され、該方法は、各対象についてのTLR−2配列中の1以上の多型部位の遺伝子型判定(但し、該遺伝子型は、対象が炎症状態から回復する能力の指標である)及びその遺伝子型に基づいた対象の分類を含む。前記方法はまた、前記対象(複数)又は対象(複数)の下位集合(subset)への前記候補薬剤の投与、及び、各対象が炎症状態から回復する能力の判定を含んでもよい。前記方法はまた、対象の遺伝子型に基づいて、前記候補薬剤に対する該対象の反応を比較する更なるステップを含んでもよい。前記候補薬剤に対する反応は、前記炎症状態から各対象が回復する能力を判定することにより決定してもよい。
【0026】
リスク遺伝子型は、配列番号1の位置201において少なくとも一つのTヌクレオチドを有していてよく、そしてまた、配列番号1の位置201においてTのホモ接合性であってもよい。
【0027】
リスク遺伝子型は、炎症状態から回復しない危険性(リスク)が増大する指標であり得る。
【0028】
非リスク遺伝子型又はプロテクティブ遺伝子型は、配列番号1の位置201においてAのホモ接合性であってよい。
【0029】
本発明のもう一つの態様によれば、グラム陽性菌感染の治療に有用であることが既知か又は推測される薬剤候補の効果を判定するために対象グループを選択するための方法が実現され、該方法は、各対象についてのTLR‐2配列中の1以上の多型部位の遺伝子型判定(但し、該遺伝子型は、対象のグラム陽性菌感染発症の可能性の指標である)及びその遺伝子型に基づいた対象の分類を含む。
【0030】
前記方法はまた、前記対象(複数)又は対象(複数)の下位集合への前記候補薬剤の投与、及び、各対象がグラム陽性菌感染から回復する能力の判定を含んでもよい。前記方法は、前記対象の遺伝子型に基づいた、前記候補薬剤に対する対象の反応についての比較を更に含んでもよい。
【0031】
本発明のもう一つの態様によれば、治療を必要としている対象におけるグラム陽性菌感染を治療するための方法が実現され、該方法は、抗生物質の該対象への投与を含む(但し、該対象はTLR−2のリスク遺伝子型を有する)。
【0032】
本発明のもう一つの態様によれば、治療を必要とする対象におけるグラム陽性菌感染を治療するための方法が実現され、該方法は、そのTLR−2配列中にリスク遺伝子型を有する対象の選択、そして該対象への抗生物質の投与を含む。
【0033】
本発明のもう一つの態様によれば、抗生物質でグラム陽性菌感染を治療するための方法が実現され、該方法は、TLR−2リスク遺伝子型を有する対象の同定を含む(但し、TLR−2のリスク遺伝子型の対象の同定は、グラム陽性菌感染の増大可能性を予測する)。
【0034】
前記抗生物質は、グラム陽性菌特異的抗生物質であってもよく、そして更に、リネゾリド(ザイボックス(登録商標)); クロキシシリン(cloxicillin); メテシリン(methecillin); ナフシリン; オキサシリン; バンコマイシン; タゾバカム(tazobacam); イミペネム; カルベネム(carbenem); メロペネム; クリンダマイシン; リファンピン; セファロスポリン; マクロライド; キヌプリスチン−ダルホプリシン(dalfoprisin); トリメトプリム−スルファメタキサゾール(sulfamethaxazol); リファンピン; アモキシシリン; ペニシリン; ゲンタマイシン; セフトリアキソン; アンピシリン; セフォタキシム; ドキシサイクリン; シプロフロキサシン; エリスロマイシン、及び、メトロニダゾール、から選択されてもよい。
【0035】
本発明のもう一つの態様によれば、グラム陽性菌感染治療に対する医薬品の製造のための抗生物質の使用が可能になる(但し、治療される前記対象は、TLR−2のリスク遺伝子型を有する)。
【0036】
本発明のもう一つの態様によれば、対象の下位集合におけるグラム陽性菌感染治療に対する医薬品の製造のための抗生物質の使用が可能になる(但し、該対象の下位グループは、TLR−2のリスク遺伝子型を有する)。
【0037】
本発明のもう一つの態様によれば、対象におけるグラム陽性菌感染の発症リスクを判定する方法が実現され、該方法は、対象のトール様受容体2(TLR−2)配列内の多型部位における該対象の遺伝子型の判定を含む(但し、該遺伝子型は、該対象のグラム陽性菌感染リスクの指標である)。
【0038】
前記方法は、前記対象についての前記TLR−2配列情報の判定を更に含んでもよく、そして、そのような遺伝子型判定は、前記対象からの核酸試料についてなされてよい。前記方法は、前記患者からの核酸試料の獲得を更に含んでもよい。前記対象の前記遺伝子型は、対象のグラム陽性菌感染発症リスクの指標であり、そして、該TLR−2リスク遺伝子型は配列番号1の位置201に存在するものでよく、そして、該TLR−2リスク遺伝子型は配列番号1の位置201において少なくとも一つのAヌクレオチドを有してよい。逆に、前記TLR−2プロテクティブ遺伝子型は、配列番号1の位置201においてTヌクレオチドのホモ接合性であってよい。
【0039】
本発明のもう一つの態様によれば、配列番号1及び配列番号2の配列を含むヒト標的配列、該標的配列の相補鎖、又は、該標的配列のRNA相当物 に含まれる配列と特異的にハイブリダイズする凡そ10から凡そ400ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが提供される(但し、該オリゴヌクレオチドは、該TLR−2配列における多型の遺伝子型判定において、使用可能である)。前記遺伝子型は、リスク又はプロテクティブ遺伝子型であってよい。
【0040】
本発明のもう一つの態様によれば、配列番号1及び配列番号2の配列を含むヒト標的配列、該標的配列の相補鎖、又は、該標的配列のRNA相当物 に含まれる配列と特異的にハイブリダイズする凡そ10から凡そ400ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが提供される(但し、該ハイブリダイゼーションは、該TLR−2配列における多型の遺伝子型判定において、実施可能である)。前記遺伝子型は、リスク又はプロテクティブ遺伝子型であってよい。
【0041】
本発明のもう一つの態様によれば、以下の(a)及び(b)を含む群から選択されるオリゴヌクレオチドプローブが提供される:
(a) 高ストリンジェントな条件(high stringency conditions)下で、位置201にTを有する配列番号1を含む核酸分子とはハイブリダイズせず、位置201にAを有する配列番号1を含む核酸分子とハイブリダイズするプローブ;及び、
(b) 高ストリンジェントな条件(high stringency conditions)下で、位置201にAを有する配列番号1を含む核酸分子とはハイブリダイズせず、位置201にTを有する配列番号1を含む核酸分子とハイブリダイズするプローブ。
【0042】
本発明のもう一つの態様によれば、固体支持体に付着させられた核酸分子のアレイが提供され、該アレイは、位置201の前記ヌクレオチドがAである配列番号1から成る核酸分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(但し、該オリゴヌクレオチドが、位置201の前記ヌクレオチドがTである配列番号1から成る核酸分子と実質的にハイブリダイズしない条件下において)を含む。
【0043】
本発明のもう一つの態様によれば、固体支持体に付着させられた核酸分子のアレイが提供され、該アレイは、位置201の前記ヌクレオチドがTである配列番号1から成る核酸分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(但し、該オリゴヌクレオチドが、位置201の前記ヌクレオチドがAである配列番号1から成る核酸分子と実質的にハイブリダイズしない条件下において)を含む。
【0044】
前記オリゴヌクレオチドは、以下の1以上のものを更に含んでもよい:検出可能な標識;消光剤(クエンチャー);移動度修飾因子;前記標的配列の5’又は3’側に位置する近接する非標的配列。
【0045】
本発明のもう一つの態様によれば、表1Bにおける、前記TLR−2遺伝子型関連より選択される複数の数値的に符号化された遺伝子型関連を含む、コンピューターで読み取り可能な媒体が提供される(但し、該複数の各関連は、炎症状態から回復する能力又はグラム陽性菌感染感受性を表す値である)。
【0046】
上記同定された配列位置は、示されているように、前記TLR−2配列のセンス鎖を基準としている。対象結果を判定するためにアンチセンス鎖について解析を行い得ることは、当業者には明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
1. 定義
本明細書中において、広範に使用される多くの用語があるが、以下の定義は本発明の理解を促進する目的で提供されるものである。
【0048】
「遺伝物質(Genetic material)」は、任意の核酸を含み、一本鎖又は2本鎖型のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドで有り得る。
【0049】
「プリン」は、融合ピリミジン及びイミダゾール環を含む複素環の有機化合物であり、プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)の親化合物として機能する。「ヌクレオチド」は、一般に、ペントース、通常、リボース又はデオキシリボースと共有結合したプリン(R)又はピリミジン(Y)塩基である。なお、この糖は、1以上のリン酸基を保持する。核酸は、一般に、3’‐5’リン酸ジエステル結合により結合したヌクレオチドのポリマーである。本書で使用する場合、「プリン」は、プリン塩基、即ちA及びGを指称するために使用するが、広義では、ポリヌクレオチド鎖の成分としての、ヌクレオチドモノマー、即ち、デオキシアデノシン−5’−リン酸及びデオキシグアノシン−5’−リン酸をも意味するものとする。
【0050】
「ピリミジン」は、ヌクレオチド塩基、即ちシトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)を構成する単環式有機塩基である。本書で使用する場合、「ピリミジン」は、ピリミジン塩基、即ちC、T及びUを指称するために使用されるが、広義では、プリンヌクレオチドと共にポリヌクレオチド鎖の成分をなすピリミジンヌクレオチドモノマーをも意味するものとする。
【0051】
記号Mによって表されるヌクレオチドは、A又はCの何れかであってよく、記号Wによって表されるヌクレオチドは、T又はAの何れかであってよく、記号Yによって表されるヌクレオチドは、C又はTの何れかであってよく、また、記号Rによって表されるヌクレオチドは、G又はAの何れかであってよい。
【0052】
「多型性部位(polymorphic site)」又は「多型部位(polymorphism site)」又は「多型(polymorphism)」又は「一塩基多型部位」(SNP部位)は、本書で使用される場合、所定の配列内において相違が生じている遺伝子座(座位)ないし位置である。「多型」は、集団内において、2以上の遺伝子の型又は遺伝子内の位置の型(アレル)が、最も稀な型の存在が突然変異だけで説明できない程の頻度で、生じていることである。多型性アレルは、宿主において、いくらかの淘汰における利点を享受している可能性がある。好ましい多型性部位は、選択された母集団において1%以上の頻度、好ましくは10%又は20%以上の頻度でそれぞれ現れる少なくとも2つのアレルを有する。多型部位は、ある核酸配列内の既知の位置であってもよく、本書に記載した方法によって存在が特定されてもよい。多型は、コーディング領域及び非コーディング領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び、イントロン)の両者において、出現してよい。
【0053】
通常、集団遺伝学において使用される用語「連鎖」とは、同一染色体においてその遺伝子座が近接していることによる、対立遺伝子でない(nonallelic)2以上の遺伝子の共遺伝を指し、それにより、減数分裂後も、それらの遺伝子は非連鎖遺伝子で期待される50%より高い頻度で随伴したままになる。しかしながら、減数分裂の間の、個々の染色分体間の物理的交差により組み換えが生じてもよい。「組み換え」は一般にDNAの大きな区域の間で生じ、そのため、近接した区域のDNAと遺伝子が組み換えイベント(交差)において同時に移動させられることが見込まれる。逆に、所与の染色体において離れて存在するDNA領域は、互いに近接したDNA領域と比較して交差の過程で別々になる可能性が高い。一塩基多型(SNPs)のような多型性分子マーカーは、染色体における位置的マーカーとして減数分裂の組み換えイベントを追跡するのに有用である。
【0054】
本書において使用される場合「リスク遺伝子型」とは、本書に記載されたTLR−2配列内の1以上の多型部位における対立遺伝子(アレル)変異体(遺伝子型)であって、炎症状態から回復する可能性の減少又は芳しくない結果となるリスクの増加の指標である。リスクアレルが少なくとも1コピー存在するならば、前記リスク遺伝子型は、一倍体遺伝子型又は二倍体遺伝子型の何れかについて判定されてもよい。そのような「リスクアレル」又は「リスク遺伝子型」は、SNP−16934(配列番号1の位置201)(トール様受容体2)におけるTヌクレオチドであってよい。リスク遺伝子型は、炎症状態から回復しないリスクの増加の指標であってよい。リスクアレルを1コピー(ヘテロ接合体)又は2コピー(ホモ接合体)保有する対象は、対象が炎症状態から回復しないリスクの度合いがホモ接合体でヘテロ接合体を上回るかもしれないが、前記「リスク遺伝子型」を有するとみなされる。
【0055】
「クレード(clade)」は、系統学的に近い関係にあるハプロタイプの群である。例えば、ハプロタイプが系統(進化的な)樹で表される場合、一つのクレードは同じ枝内に含まれる全てのハプロタイプを含む。
【0056】
本書では、「ハプロタイプ」とは、染色体上の密接に連鎖する遺伝子座のアレルのセット又はマーカーセットのパターン(それらは一緒に遺伝する傾向にある)を言う。したがって、同一の小さい染色体区画上のアレル群は、一緒に伝達される傾向にある。所与の染色体区画上にあるハプロタイプは、一般的に、組み換えが生じない限り一緒に子孫に伝達される。組み換えが存在しない場合、ハプロタイプは、マッピングにおいて単一の高度に多型性な遺伝子座のアレルとして扱われ得る。「ハプロタイプ」は、図1で表された表(ハプロタイプマップ)中の列として示される。
【0057】
一般に、試料及びそのサブタイプ中の核酸の検出は、特異的な核酸ハイブリッド形成法に依存する(ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは「高厳密性」条件下で該試料中の核酸にアニールし、該首尾よくアニールしたプローブは引き続いて検出される)(Spiegelman, S., Scientific American, Vol. 210, p. 48 (1964) )。高厳密性条件下のハイブリッド形成は、第一に、ハイブリッド形成に使用される方法に依存する。高厳密性のハイブリッド形成はまた、高厳密性のPCR、DNAシークエンス、一本鎖高次構造多型解析、及び、in situハイブリッド形成法のような、分子生物学者により日常的に使用されている多数の技術の成功に頼っている。ノーザン及びサザンブロット法とは対照的に、これらの技術は、通常、相対的に短いプローブ(例えば、通常、PCR及びシークエンスについては凡そ16ヌクレオチド以上の長さ、並びに、in situハイブリッド形成法については凡そ40ヌクレオチド以上の長さ)で実施される。これらの技術で使用される前記高厳密性条件は、分子生物学分野の当業者に周知されており、そして、それらの例は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N., 1998 中に見出され、これは参照に本書に組み込まれる。
【0058】
本書において、「連鎖不平衡(linkage disequilibrium)」(LD)とは、遺伝子座におけるアレル頻度から予想されるよりも大きな割合で、連鎖したアレルの確実な結合が、集団内で生じていることを言う。例えば、SNPのような連鎖マーカーの特定のアレルと関連した又は連鎖マーカーの特定のアレル間における疾患遺伝子の優先的出現は、LDにあるとみなされる。この不平衡の識別は、一般に、前記疾患染色体のほとんどが同じ変異を保有し、また、調べられるべき前記マーカーが前記疾患遺伝子に相対的に近接していることを意味する。したがって一つ目の遺伝子座の前記遺伝子型が二つ目の遺伝子座(又は3番目の遺伝子座など)とLDにあるのであれば、一つの遺伝子座についてだけアレルを判定すれば、必然的に、他の遺伝子座のアレルも判定可能である。LDについて遺伝子座を評価する場合、高度に連鎖不平衡にある所与の集団内のそれらの部位(すなわち、D’の絶対値≧0.5又はr≧0.5)は、目的の(すなわち、目的の前記状態と関連する)アレルの個性を予測するのに潜在的に有用である。或いは、高度の連鎖不平衡は、D’の絶対値≧0.7若しくはr≧0.7によって、又は、D’の絶対値≧0.8又はr≧0.8によって表されてもよい。したがって、高度にLDにある二つのSNPsは、目的のアレル又は疾患アレルの個性を判定するのに同等に有用で有り得る。それゆえ、一つのSNPのアレルの個性を知ることは、LDにあるもう一つのSNPにおけるアレルの個性を代理しているものと想定してよい。したがって、この単一遺伝子座の前記遺伝子型の判定は、それとLDにある任意の遺伝子座の前記遺伝子型の個性を提供し、より高い連鎖不平衡にあるほど恐らく二つのSNPsは互換的に使用されてよい。
【0059】
さらなる部位が前記TLR−2配列内の多型部位として同定されてもよいが、それらの多型は、前記TLR−2配列のSNP−16934(配列番号1の位置201)位置の前記多型と連鎖しそれ故に対象の予後の指標と成り得てもよい。
【0060】
更に連鎖したSNP部位が判定され得ることが当業者に認識されるであろう。TLR−2についての前記ハプロタイプが、予想極大化アルゴリズムを有するプログラム(すなわちPHASE)を用いて、正常対象における前記TLR−2配列の前記SNPs又はTLR−2配列を調べることにより創出され得る。構築されたTLR−2ハプロタイプは、SNP−16934(配列番号1の位置201)と連鎖不平衡(LD)にあるSNPsの組み合わせを見出すために使用されてよい。そのため、個体の前記ハプロタイプは、SNP−16934(配列番号1の位置201)とLDにある他のSNPsを遺伝子型判定することにより判定され得る。
【0061】
配列内の多型位置の数的命名は、下の表1Aにおいて同じ多型が異なる番号付けで表されているように、番号の付け方や選ばれた配列に依存して異なる命名がなされてよいことは、当業者には認識されるであろう。更に、挿入又は欠失のような集団内の配列変異により、相対的位置が変化し得、そして、多型部位における及びその周囲の特定のヌクレオチドについての数的命名が変化し得る。
【0062】
ヒト トール様受容体2(TLR−2)配列は、本書で配列番号1として規定され、GenBank dbSNP アクセッション番号rs4696480に収載された配列を含む。−16934又は配列番号1の位置201の前記主要な(メジャー)及び主要でない(マイナー)アレルは以下の通りである:該最もよく見られるヌクレオチド(主要なアレル)はであり、該主要でないアレルはである。
【0063】
下の表1Aは、配列番号1の位置201のWによって表される配列内の且つTLR−2遺伝子の転写開始点からの相対的な遺伝子位置(−16934)(配列番号2の位置540のWにも相当する)内の、関連するSNP位置に加えて、TLR−2のSNP T−16934A(rs4696480)の隣接配列を示している。
【0064】
【表1−A】

【0065】
上の表1A内の及び配列番号2内の所与の配列は、当業者がプライマー及びプローブ又はTLR−2 SNPアレル及び/又は本書に記載されたような遺伝子型を同定するための他のオリゴヌクレオチドを設計するのに有用であろう。
【0066】
下の表1Bは、TLR−2 SNPsと、炎症状態から回復する能力又は予測される患者結果を表す値との関連を示している(但し、前記アレルは、ヘテロ接合体についての中間的な値を加算して生成している)。しかし、前記炎症状態患者スコア又はグラム陽性菌感染感受性患者スコアが優性/劣性の関係にあるかもしれず、それによりヘテロ接合体はホモ接合体の者と同じスコアとなることも、当業者に認識されるであろう。前記関係は、テストされる集団に依存し得る。
【0067】
【表1−B】

【0068】
「アレル(対立遺伝子)」は、染色体上の特定の遺伝子座における所与の遺伝子の1以上の変わり得る任意の型として定義される。異なるアレルは、髪の色又は血液型のような遺伝する形質における変異を形成する。二倍体細胞又は生物においては、アレル対のメンバー(即ち、所与の遺伝子の2つのアレル)は、一対の相同染色体において対応する位置(座位ないし遺伝子座)を占有する。特定の遺伝子に関し、これらアレルが遺伝的に同一であれば、当該(二倍体)細胞又は生物は「ホモ接合体」と指称され、遺伝的に異なる場合は、当該(二倍体)細胞又は生物は「ヘテロ接合体」と指称される。一個体において、アレルの一つの型(主要な)は、もう一つの型(主要でない)よりも、多く発現されてよい。「遺伝子」が単純にヌクレオチド配列の区域として見なされる場合、アレルとは、該配列の特定位置における変化し得るヌクレオチドの各々である。例えば、CCT[C/T]CCATのようなCT多型は、C及びTの二つのアレルを有する。
【0069】
「遺伝子」は、特定の機能的産物をコードする特定の染色体の特定の位置に位置するヌクレオチドの規則正しい配列であるが、当該コード領域に近接する非翻訳・非転写配列も含み得る。そのような非コード配列は、コード配列の転写・翻訳に必要な制御配列又はイントロン等を含み得る。
【0070】
「遺伝子型」は、生物の遺伝的構成として定義されるが、通常特定の状態と関連する1つの遺伝子又は2〜3の遺伝子又は1つの遺伝子の1つの領域(例えば、特定の表現型の原因をなす遺伝子座)に関する。遺伝子領域は、一塩基多型の場合には、単一のヌクレオチドと同じ小部分で有り得る。
【0071】
「表現型」は、生物の観察可能な性質として定義される。
【0072】
「一塩基多型」(SNP:スニップ)は、1つの塩基によって占有される多型性部位において生じるが、これは、複数のアレル配列間で相違する部位に相当する。この部位の前後には、通常、アレルの高保存配列(例えば、母集団の1/100ないし1/1000未満の構成員において変化する配列)が存在する。一塩基多型は、通常、多型性部位における1つの塩基の他の塩基による置換によって生じる。「トランジション」は、1つのプリンの他の1つのプリンによる置換又は1つのピリミジンの他の1つのピリミジンによる置換である。「トランスバージョン」は、1つのプリンの1つのピリミジンによる置換又は1つのピリミジンの1つのプリンによる置換である。また、一塩基多型は、基準アレル(reference allele)に関連する1つのヌクレオチドの削除(「−」又は「del」によって表す)又は1つのヌクレオチドの挿入(「+」又は「ins」によって表す)からも生じ得る。更に、所与の配列内における挿入又は削除により、相対的な位置関係が変化され、従って当該配列内における他の多型の位置番号も変化し得ることは、当業者であれば認識できるであろう。
【0073】
「全身性炎症反応症候群」ないし(SIRS)は、敗血性全身性炎症反応(即ち、敗血症ないし腐敗症又は敗血性ショック)及び非敗血性全身性炎症反応(即ち、術後の反応)の両者を含むものとして定義される。「SIRS」は、更に、ACCP(アメリカ胸部内科学会)ガイドラインに応じ、(A)温度>38℃又は<36℃、(B)心拍数>90拍/分、(C)呼吸数>20息/分、及び、(D)白血球数>12,000/mm又は<4,000/mmの条件のうちの2又は3以上が存在するものとして定義される。以下の記載においては、「SIRS」基準のうちの2つ、3つ又は4つの存在が、28日間の観察期間の間毎日記録された。
【0074】
「敗血症ないし腐敗症(sepsis)」は、少なくとも2つの「SIRS」基準の存在として定義され、既知の又は疑いのある感染源である。敗血症ショックは、腐敗症と、ブリュッセル基準による1つの更なる臓器の機能不全と、昇圧剤投与の必要性との3つによって定義されている。
【0075】
本書で使用する場合の患者の結果又は予後とは、炎症状態から回復する患者の能力ないし可能性をいうものとする。炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト−ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、硬変 からなる群から選択され得る。
【0076】
対象結果又は予後の評価は、種々の方法により遂行することができる。例えば、“APACHE II”スコアは、cute hysiology nd hronic ealth valuation(急性生理機能及び慢性健康評価)として定義され、本書においては、生の臨床及び実験変数(データ)から毎日計算した。ヴィンセント(Vincent JL. Ferreira F. Moreno R., systems for assessing organ dysfunction and survival. Critical Care Clinics. 16:353-366, 2000)は、APACHEスコアについて以下のように要約している:「(APACHEスコアは)1981年、クナウス(Knaus)et al.によって初めて開発された。APACHEスコアは、世界中で最も一般的に使用されるICU生存予測モデルとなった。APACHE IIスコアは、オリジナルのプロトタイプを修正・簡略化したバージョンであるが、12の常用生理学的尺度の初期値、年齢及び以前の健康状態に基づいたポイントスコアを使用して、疾患の重症度の一般的尺度を提供する。記録される値(複数)は、ICUにおける対象の最初の24時間の間に得られる最悪の値(複数)である。スコアは、疾患特異的死亡率(APACHE II予測致死リスク)を評価するために、34の入院診断の1つに適用される。APACHE IIスコアの可能な最大値は71であり、大きなスコアは、死亡との関連性が大きかった。APACHE IIスコアは、臨床試験に入る際の疾患の重症度により、腐敗症の対象を含む重病対象の種々のグループ間での等級分類及び比較のために広く使用された」。
【0077】
「ブリュッセルスコア」スコアは、ベースラインと比較した臓器の機能障害を評価するための方法である。ブリュッセルスコアが2以上の場合(即ち、中度、重度、又は極重度)、臓器不全が、その特定の日に存在するものとして記録された(後掲 表2A参照)。以下の記載では、観察期間中の死亡を補正するために、生存しており且つ臓器不全から免れている日数(DAF)が、以前に記載した方法で計算された。例えば、急性肺障害は、以下のようにして計算された。急性肺障害は、対象が以下の4つの基準を全て充足した場合に存在するものとして定義される。この4つの基準とは、1)機械による人工呼吸の必要、2)急性肺障害と一致する胸部X線写真における両側の肺の浸潤(の存在)、3)PaO/FiO比が300未満、4)鬱血性心不全の臨床的証拠の不存在か又は肺動脈カテーテルが臨床目的のために適用される場合は肺毛細管楔入圧が18mmHg(1)未満、である。急性肺障害の重症度は、28日間の観察期間にわたって生存しており且つ急性肺障害から免れている日数を測定することによって評価される。急性肺障害は、前記ヒトがブリュッセルスコアで定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして記録される。生存しており且つ急性肺障害から免れている日数は、所定の観察期間(28日間)の間に急性肺障害が発症した後で対象が生存しており且つ急性肺障害を免れている日数として計算される。従って、生存しており且つ急性肺障害から免れている日数のより低いスコアは、急性肺障害がより深刻であることを示す。生存しており且つ急性肺障害から免れている日数が、急性肺障害の単なる存在又は不存在よりも好まれる理由は、急性肺障害は急性死亡率が大きく、(28日以内の)早期の死亡は死亡した対象における急性肺障害の存在又は不存在の計算を妨げることである。心血管系、腎臓、神経系、肝臓及び凝固の機能障害は、前記ヒトがブリュッセルスコアによって定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして同様に定義された。生存しており且つステロイドから免れている日数は、ヒトが生存し且つ外因性副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)で治療されていない日数である。生存しており且つ昇圧剤から免れている日数は、ヒトが生存し且つ静脈内昇圧剤(例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、フェニレフリン)で治療されていない日数である。生存しており且つ国際標準化比(INR:International Normalized Ratio)>1.5から免れている日数は、ヒトが生存し且つINR>1.5ではない日数である。
【0078】
【表2−A】

【0079】
分散分析(ANOVA)は、測定のセット間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0080】
フィッシャー正確(Fisher exact)検定は、異なるグループで測定された特徴の比率及び割合の間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0081】
2. 一般的方法
本発明の一側面は、炎症状態の発症の危険を有するか又は既に炎症状態を有する対象の同定ないし対象の選択を含み得る。例えば、大手術を受けた又は大手術の予定ないし計画のある対象は、炎症状態の発症の危険があるとみなすことができる。更に、対象は、医療分野で既知の診断方法及び臨床評価を用いて炎症状態を有すると決定されてもよい。炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、吸引間質性肺炎(aspiration pneumanitis)、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、子癇前症、子癇、HELP症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、汎発性強皮症、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、硬変 から成る群より選択され得る。
【0082】
対象が炎症状態を発症する危険を有するか又は既に有していると同定されると、遺伝子配列情報は、当該対象から得ることができる。或いは、遺伝子配列情報は、当該対象から既に(上記同定前に)得られたものであってもよい。例えば、対象は、他の目的のために生物学的試料を既に提供していてもよく、全部又は一部が決定され且つ将来の使用のために保存された遺伝子配列を有していてもよい。遺伝子配列情報は、種々の異なる方法で得ることができ、遺伝物質を含有する生物学的試料の採取を伴ってもよい。とりわけ、遺伝物質は、1以上の目的の配列を含み得る。身体試料を採取するための及び当該試料から遺伝物質を抽出するための多くの方法が当業者には知られている。遺伝物質は、血液、組織及び毛髪及びその他の試料から抽出することができる。生物物質からDNA及びRNAを分離単離するための方法は多数知られている。典型的には、DNAは生物試料から単離され得る。この場合、まず生物試料が溶解され、次いで、時間の長さが変化可能な種々の多段階プロトコールの何れか1つに応じてライセートからDNAが単離される。DNA単離法は、フェノールの使用を伴い得る(サンブルック(Sambrook J.)et al., "Molecular Cloning", Vol.2, pp.9.14-9.23, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)及びAusubel, Frederick. et al., "Current Protocols in Molecular Biology", Vol.1, pp. 2.2.1-2.4.5, John Wiley & Sons, Inc. (1994))。典型的には、生物試料を界面活性剤溶液で溶解し、ライセートのタンパク質成分を12〜18時間タンパク質分解酵素で消化する。次に、ライセートをフェノールで抽出して細胞成分の大部分を除去し、残余の水相を更に処理してDNAを単離する。ヴァンネス(Van Ness)et al.(米国特許第5,130,423号)に記載されたような他の方法では、非腐食性フェノール誘導体を用いて核酸を単離する。得られた調製物は、RNAとDNAの混合物である。
【0083】
DNA単離の他の方法では、非腐食性カオトロピック試薬を用いる。この方法は、グアニジン塩、尿素及びヨウ化ナトリウムの使用を基礎とするのであるが、カオトロピック水溶液中での生物試料の溶解及びそれに続く低級アルコールによる未精製DNAフラクションの沈殿を伴う。沈殿された未精製DNAフラクションの最終精製は、カラムクロマトグラフィー(アナレクツ(Analects), (1994) Vol. 22, No.4, ファルマシア・バイオテック社)又はコーラー(Koller)(米国特許第5,128,247号)に記載されたような未精製DNAのポリアニオン含有タンパク質への曝露を含む幾つかある方法のうち何れか1つによって達成することができる。
【0084】
ボットウェル(Botwell), D.D.L.(Anal. Biochem. (1987) 162: 463-465)に記載されているDNA単離の更なる方法は、6M塩酸グアニジン中における細胞の溶解、2.5倍量のエタノールの添加による酸性pHでのライセートからのDNAの沈殿、及びエタノールでのDNAの洗浄を伴う。
【0085】
チョムジンスキー(Chomezynski)(米国特許第5,945,515号)によって記載された方法のような、RNAとDNAの両方を単離するための他の方法も当業者には数多く知られている。チョムジンスキーの方法では、僅かに20分程度で遺伝物質を効率的に抽出することができる。エバンズ(Evans)とヒュー(Hugh)(米国特許第5,989,431号)は、中空膜フィルターを用いたDNAの単離方法を記載している。
【0086】
対象の遺伝子配列情報が当該対象から得られたら、当該情報に対し、TLR−2配列中の1以上の多型の個性又は遺伝子型を検出ないし決定するために更に評価を行うことができる。得られた遺伝物質が目的の配列を含有するとすれば、とりわけ、目的の対象の前記TLR−2遺伝子型であって配列番号1の位置201に対応する(1つの)ヌクレオチドを含む遺伝子型の決定に関心がもたれるであろう。また、この目的の配列は、更に、他のTLR−2遺伝子多型を含み得、又は目的の多型を包囲する配列の幾つかを含み得る。ヌクレオチド個性の検出若しくは決定、又は1以上の一塩基多型の遺伝子型決定(SNP遺伝子型決定)は、当業者には既知の多数の方法ないしアッセイの任意の1つによって達成することができる。多くのDNA遺伝子型判定の方法論は、アレルの識別及びSNPsの検出に有用である。更に、アレル識別の反応又はアッセイは、1以上の検出方法により検出されてもよい。前記の大部分のSNP遺伝子型判定の反応又はアッセイは、4つの広範なグループ(アレル特異的ハイブリッド形成法、プライマー伸長法、オリゴヌクレオチド連結、及び、侵入型切断)のうちの1つに該当し得る。さらに、各々の型の反応産物を分析/検出する多数の方法が存在する(例えば、蛍光、発光、質量測定、電気泳動法等)。更に、反応は、溶液中で、又は、スライドガラス、チップ、ビーズ等のような固形支持体上で生じ得る。
【0087】
一般に、アレル特異的ハイブリッド形成法は、ハイブリッド形成法により、一つのヌクレオチド位置において相違する二つのDNA標的間の差異を識別し得るハイブリダイゼーションプローブを含む。通常、プローブは、該プローブ配列の中心位置に多型性塩基があるように設計され、それにより、最適化されたアッセイ条件下で、完全に対応するプローブ標的ハイブリッドは安定であり、1塩基のミスマッチがあるハイブリッドは不安定となる。結合の検出及びアレル識別の戦略は「分子標識(molecular beacon)」の使用であり、それにより、ハイブリダイゼーションプローブ(分子標識)は3’及び5’レポーター並びに消光剤分子を有し、介在配列に対する適切な結合標的を欠くような相補的な3’及び5’配列の該プローブは、ヘアピンループを形成するであろう。前記ヘアピンループは前記レポーターと消光剤とを近接させ、その結果フルオロフォア(レポーター)の消光がもたらされ蛍光の発光が減少する。しかしながら、前記分子標識が前記標的にハイブリッド形成した場合は前記フルオロフォアと消光剤が十分に分離され蛍光が前記フルオロフォアから発光される。
【0088】
同様に、プライマー伸長反応法(すなわちミニ配列決定、アレル特異的伸長、又は、単純PCR増幅)は、アレルの識別反応において有用である。例えば、ミニ配列決定において、プライマーは、SNPのすぐ上流にあるその標的DNAにアニールし、そして、多型性部位に相補的な単一ヌクレオチドへと伸長する。前記ヌクレオチドが相補的でない場合、伸長は起こらない。
【0089】
オリゴヌクレオチド連結アッセイは、SNPごとに二つのアレル特異的プローブと一つの共通連結プローブを必要とする。前記共通連結プローブは、アレル特異的プローブに隣接してハイブリッド形成し、適切なアレル特異的プローブの完全対応がある場合には、連結酵素がアレル特異的プローブと前記共通プローブとを結合させる。完全対応でない場合には、前記連結酵素が前記アレル特異的プローブと前記共通プローブとを結合させることが出来ない。
【0090】
或いは、侵襲性切断法は、インベーダープローブと呼ばれるオリゴヌクレオチドと、1ヌクレオチドの重複で前記標的DNAにアニールするアレル特異的プローブとを、必要とする。前記アレル特異的プローブが前記多型性部位に相補的である場合、前記インベーダーオリゴヌクレオチドの3’末端の重複は、前記アレル特異的プローブの5’腕を遊離するフラップ エンドヌクレアーゼによって認識及び切断される構造を形成する。
【0091】
アレルの識別及び検出のための多数の他の方法が当業者既知であることが認識されることであろうし、また、それらのうち幾つかは以下に詳述する。配列プライマー伸長法ミニ配列決定、タグマイクロアレイ、及び、アレル特異的伸長法、のような反応が、マイクロアレイにおいて実行可能であることも認識されるであろう。
【0092】
SNP遺伝子型判定法は以下を含むがこれらに限定されるものではない:
【0093】
制限フラグメント長多型(RFLP)ストラテジー ―RFLPゲル解析は、1つの遺伝子の複数の多型部位における複数のアレル間の識別に使用することができる。要約すれば、DNAの短セグメント(典型的には数百塩基対)をPCRで増幅する。可能であれば、一方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断し、他方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断しない特異的な制限酵素が選択される。この制限酵素で、PCR増幅したDNAをインキュベートした後、反応生成物をゲル電気泳動法を用いて分離する。そのため、このゲルを検査したとき現れる2つのより低分子量のバンド(電気泳動中、分子は、分子量がより小さいほど一層下方にゲル内を進行する。)は、元のDNA試料が選択された制限酵素によって切断可能なアレルを有していたことを示す。これに対し、(PCR産物の分子量に関し)より大きい分子量のバンドが1つしか観察されない場合は、もとのDNA試料は、選択された制限酵素によっては切断不能なアレル変異体を有していたことを示す。最後に、より大きい分子量の1つのバンドとより小さい分子量の2つのバンドの両方が観察される場合は、元のDNA試料は、両方のアレルを含んでいた、従って、対象はこの一塩基多型に対しヘテロ接合体であったことを示す;
【0094】
シークエンシング(塩基配列決定法) ― 例えばシークエンシングのためのマクサム−ギルバート法(マクサムAM及びギルバートW. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(4): 560-564)は、末端で標識されたDNAの特異的化学的切断を伴う。この方法では、標識された同じDNAの4つの試料が、それぞれ異なる化学反応にかけられて、特異的な塩基個性の1以上のヌクレオチドにおいてDNA分子の優先的な切断が実行される。部分的切断のみが得られるように条件ないし状態が調節されるため、DNAフラグメントは各試料において生成されるが、その長さは、当該切断にかけられる(1又は複数の)ヌクレオチドのDNA塩基配列内での位置に依存する。部分的切断が行われた後、各試料は、異なる長さのDNAフラグメントを含むが、各フラグメントは、4つのヌクレオチドのうちの同じ1又は2のフラグメントで終端する。とりわけ、第1の試料では、個々のフラグメントはCで終端し、第2の試料では、個々のフラグメントはC又はTで終端し、第3の試料では、それぞれGで終端し、第4の試料では、それぞれA又はGで終端する。これら4つの反応の産物が、ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によりサイズによって分離されるならば、DNA配列は、放射性バンドのパターンから読み取ることができる。この方法により、標識部位から少なくとも100塩基のシークエンシングが可能となる。他の方法としては、サンガー等によって刊行されたシークエンシングのジデオキシ法(Sanger et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(12): 5463-5467)がある。サンガー法は、DNAポリメラーゼの酵素活性に基づいて種々の長さの配列依存性フラグメントを合成する。フラグメントの長さは、ジデオキシヌクレオチド塩基特異的ターミネーターのランダム導入によって決定される。次に、これらのフラグメントは、マクサム−ギルバート法の場合のようにゲルで分離され、視覚化され、配列が決定される。これらの方法を洗練しシークエンシング手順を自動化するために様々な改良が試みられた。また、RNAシークエンシング法も知られている。例えば、脳心筋炎ウイルスRNAのシークエンシングのためにジデオキシヌクレオチドと共に逆転写酵素が使用された(ツィンメルン(Zimmern)D.及びケースベルク(kaesberg)P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(9): 4257-4261)。ミルズ(Mills)DR.及びクラーマー(Kramer)FR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(5): 2232-2235)は、連鎖停止反応機構においてRNAのシークエンシングを行うためのQβレプリカーゼ及びヌクレオチドアナログイノシンの使用を記載している。RNAシークエンシングのための直接的化学的方法も知られている(ピアッティ(Peattie)DA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(4): 1760-1764)。その他の方法としては、例えば、ドニス(Donis)−ケラー(Keller)et al.(1977, Nucl. Acids Res. 4: 2527-2538)、シモンクシッツ(Simoncsits)A. et al.(Nature (1977) 269(5631): 833-836)、アクセルロッド(Axelrod)VD. et al.(Nucl. Acids Res. (1978) 5(10): 3549-3563)、及びクラーマーFR.及びミルズDR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(11): 5334-5338)等がある。これらの文献は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。核酸配列は、レーザーによって切断されたヌクレオチドの自然蛍光の刺激によって読み取ることもできるが、このシングルヌクレオチドは蛍光増強マトリックスに含有されている(米国特許第5,674,743号);
ミニ配列決定反応においては、SNPに隣接した標的DNAにアニールするプライマーが、DNAポリメラーゼによって、前記多型部位に相補的な単一ヌクレオチドに、伸長する。この方法は、DNAポリメラーゼによる、ヌクレオチド取り込みの高度な正確さに基づく。前記プライマー伸長産物を解析するための様々な技術が存在する。例えば、前記ミニ配列決定反応における標識された若しくは非標識のヌクレオチド、dNTPと組み合わされたddNTP、又は、ddNTP単独の使用は、前記産物の検出のために選択される方法に依存する;
【0095】
SNPs同定のためのハイブリダイゼーション法については、米国特許第6,270,961号及び同第6,025,136号に記載されている;
【0096】
鋳型指向性色素ターミネーター取込蛍光分極検出(template-directed dye-terminator incorporation with fluorscent polarization-detection)(TDI−FP)法は、(FREEMAN BD. et al. J Mol Diagnostics (2002) 4 (4): 209-215)によって、大規模スクリーニングについて記載されている;
【0097】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)―は、ポリメラーゼ連鎖反応単位複製配列ストランドにアニールしたプローブと検出用オリゴヌクレオチドのライゲーションに基づき、酵素免疫法により検出される(ビヤエルモサ(Villahermosa)ML. J Hum Virol (2001) 4(5): 238-48; ロンパネン(Romppanen)EL. Scand J Clin Lab Invest (2001) 61(2): 123-9; イアノネ(Iannone)MA. et al. Cytometry (2000) 39(2): 131-40);
【0098】
ライゲーション−ローリングサークル増幅法(L−RCA)もまた、チー(Qi)X. et al. Nucleic Acids Res (2001) 29(22): E116に記載されているように、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた;
【0099】
5’ヌクレアーゼアッセイもまた、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(アイディン(Aydin)A. et al. Biotechniques (2001) (4): 920-2, 924, 926-8);
【0100】
例えば、5’エキソヌクレアーゼ活性又はTaqMan(商標)アッセイ(Applied Biosystems)は、Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性に基づいている(ここで、該ポリメラーゼは、前記標的DNAとハイブリッド形成し且つ蛍光シグナルを生成するオリゴヌクレオチドプローブを、置換及び切断する)。前記多型部位において異なる二つのプローブが必要となる(但し、一つのプローブは前記主要なアレルに相補的であり前記他のプローブは前記主要でないアレルに相補的である)。これらのプローブが、該プローブの蛍光を消光するために蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により前記フルオロフォアと相互作用する無傷の前記消光剤である場合には、該プローブは、前記5’末端に付着する異なる蛍光色素と前記3’末端に付着する失活剤とを有している。前記PCRアニーリング過程の間に、前記ハイブリダイゼーションプローブは、標的DNAとハイブリッド形成する。前記伸長過程において、前記5’蛍光色素は、Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により切断され、前記レポーター色素の蛍光の増大がもたらされる。ミスマッチなプローブは、断片無しに置換される。ミスマッチなプローブは、断片化無しに置換される。試料の前記遺伝子型は、二つの異なる色素の前記シグナル強度の測定により、判定される;
【0101】
ポリメラーゼプルーフリーディング法は、WO 0181631に記載されているように、SNPsの個性の決定に使用される;
【0102】
酵素増幅‐電子的変換による一塩基対変異の検出(Detection of single base pair DNA mutations by enzyme-amplified electronic transduction)は、PATOLSKY F et al. Nat Biotech. (2001) 19 (3): 253-257に、記載されている;
【0103】
ジーンチップ技術もまた、一塩基多型識別において知られており、これにより多数の多型を単一アレイ上で同時に調べることが可能である(EP 1120646 and Gilles PN. etal.Nat. Biotechnology (1999) 17 (4): 365-70)。例えば、そのようなアレイに基づいた一つの遺伝子型判定プラットフォームが、微粒子ベースtag-itハイスループット遺伝子型判定アレイである(Bortolin S. et al. Clinical Chemistry (2004) 50 (11): 2028-36)。この方法は、ゲノムDNAを、アレル特異的伸長プライマーとユニバーサルタグ付加遺伝子型判定プライマーのPCRにより増幅する。そして、その産物を、tag-itアレイ上で仕分けし、Luminex xMAPシステムを用いて検出する。
【0104】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析計もまた、マイクロシークエンス産物の解析を介して一塩基多型の遺伝子型判定において有用である(Haff LA. and Smirnov IP. Nucleic Acids Res. (1997) 25 (18): 3749-50; Haff LA. and Smirnov IP. Genome Res. (1997) 7: 378-388; Sun X. et al. Nucleic Acids Res. (2000) 28 e68; Braun A. et al. Clin. Chem. (1997) 43: 1151-1158; Little DP. et al. Eur.J. Clin. Chem. Clin. Biochem. (1997) 35: 545-548; Fei Z. et al. Nucleic Acids Res. (2000) 26: 2827-2828; 及び、Blondal T. et al.Nucleic
Acids Res. (2003) 31 (24):e155);又は
【0105】
アレル特異的PCR法もまた一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(ホーキンス(Hawkins)JR. et al. Hum Mutat (2002) 19(5): 543-553)。
【0106】
また、対象の配列データが既に分かっている場合は、(遺伝情報の)獲得は、当該対象の核酸配列データをデータベースから検索し、多型部位における当該対象の核酸配列を読み取ることにより当該多型部位における核酸又は遺伝子型の個性を決定ないし検出することを含んでもよい。
【0107】
1又は複数の多型の個性が決定ないし検出されると、当該目的多型の遺伝子型に基づき対象結果ないし予後に関する指標又は炎症状態から回復する対象の能力の指標が得られてよい。本出願では、トール様受容体2(TLR−2)配列における多型が、予後を得るために又は前記対象が炎症状態から回復する能力に関して判定するために使用される。対象の予後を判定するための方法又は対象スクリーニングのための方法は、炎症状態から回復する対象の能力(ないし可能性)を判定するために有用であり得る。また、単独の多型部位又は複数の多型部位の組み合わせは、それらが炎症状態から回復する対象の能力を示すものとして判定された多型と連鎖しているならば、炎症状態から回復する対象の能力の指標として使用することも可能である。前記方法は、更に、多型について判定された遺伝子型と既知遺伝子型との比較を含んでもよい(該比較は、対象について同じ炎症状態又は別の炎症状態から回復する予後を示す)。したがって、炎症状態から対象が回復する能力についての判定は、前記多型部位について判定された遺伝子型に基づいてなされてよい。
【0108】
対象結果ないし予後が決定されると、そのような情報は、可能な治療方針の選択を支援し、対象をモニターすべき程度及び当該モニターの頻度の決定に役立つので、内科医及び外科医によって関心が持たれ得る。究極的には、治療の決定は、特定の対象に特異的な要因及び対象の治療に携わる内科医又は外科医の経験に基づく要因の双方に応じて為され得る。
【0109】
改善された応答には、前記治療剤の投与に続く改善を含んでもよく、それにより、前記対象は、生存可能性の増加、臓器障害若しくは臓器不全(ブリュッセルスコア)の可能性の減少、APACHE IIスコアの改善、生存していて且つ昇圧剤、イノトロープから免れている日数(の改善)、及び、全身性機能障害(心血管の、呼吸性、人工呼吸の、中枢神経系の、凝固の[INR>1.5]、腎臓の、及び/又は、肝臓の)の減少に至る。
【0110】
上述のように、遺伝子配列情報ないし遺伝子型情報は(一つの)対象から獲得可能であるが、該配列情報は、TLR−2遺伝子中の1以上の一塩基多型部位を含む。同様に、上述したように、1以上の対象の、TLR−2遺伝子における1以上の一塩基多型の配列個性も検出ないし決定することができる。更に、対象結果ないし予後は、上述のように、評価することができる。例えば、APACHE IIスコアリングシステム又はブリュッセルスコアを使用して、治療前後における対象のスコアを比較することにより、対象結果ないし予後を評価することができる。対象結果ないし予後が評価されたら、対象結果ないし予後は、1以上の一塩基多型配列の個性と関連付けることができる。対象結果ないし予後の関連付けは、更に、複数の対象の対象結果スコア及び1若しくは複数の多型の統計解析を含むことができる。
【0111】
同様に、対象のTLR−2遺伝子型が決定ないし検出されると、−16934 TLR−2 SNPの前記遺伝子型に基づいて、対象に関してグラム陽性菌感染の発症可能性の指標が獲得され得る。本発明では、トール様受容体2(TLR−2)配列における多型が、予後を得るために又はグラム陽性菌感染の発症についての判定を行うために使用される。対象のグラム陽性菌感染の発症の可能性を判定する方法。前記方法は、更に、抗生剤とりわけグラム陽性菌特異的抗生剤の投与を含んでいてもよい。更に、そのような薬剤を投与するための決定は、感染のタイプ(例えば、グラム陽性又は陰性)を判定するための前記患者についての培養前になされてもよい。グラム陰性菌特異的抗生剤は、リネゾリド(ザイボックス(登録商標));クロキシシリン;メチシリン;ナフシリン;オキサシリン;バンコマイシン;タゾバカム;イミペネム;カルベネム;メロペネム;クリンダマイシン;リファンピン;セファロスポリン;マクロライド;キヌプリスチン‐ダルホプリシン;トリメトプリム−スルファメタキサゾール;リファンピン;アモキシシリン;ペニシリン;ゲンタマイシン;セフトリアキソン;アンピシリン;セフォタキシム;ドキシサイクリン;シプロフロキサシン;エリスロマイシン;及び、メトロニダゾール から選択されてよい。これらの薬剤は、対象におけるリスク同定のためにTLR−2遺伝子型判定の後に、一般的方法又は製造業者の推奨するプロトコールに従って投与されてよい。
【0112】
臨床上の表現型
第一次結果(primary outcome)変数は、病院を退院するまでの生存(日数)であった。第二次結果(secondary outcome)変数は、生存していて且つ心血管(cardiovascular)、呼吸器(respiratory)、腎臓(renal)、肝臓(hepatic)、血液学的(hematologic)、及び、神経学的(neurologic) 器官系の障害から免れている日数、並びに、生存していて且つSIRS、敗血症の発生、及び、敗血性ショックの発生から免れている日数であった。4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つに対象が合致した場合、SIRSであるとみなした。SIRS診断基準は、1)高熱(>38℃)又は低体温(<36℃)、2)頻脈(β遮断薬非存在下で心拍数>100拍/分)、3)頻呼吸(呼吸数>20呼吸/分)又は機械換気の必要、及び、4)白血球数>11,000/μL (Anonymous. Critical Care Medicine (1992) 20 (6): 864-74)。SIRS診断基準に合致した暦上の日より、対象を、このコホートに含めた。
【0113】
記録された対象の基礎統計には、年齢、性別、入院のための内科若しくは外科的診断(APACHE III診断コード(KNAUS WA et al. Chest(1991) 100 (6): 1619-36)に従った)、及び、入院時APACHE IIスコアが含まれた。以下の付加的データを、臓器不全、SIRS、敗血症、及び、敗血性ショックを評価するために、28日間における各24時間(午前8時から午前8時)について記録した。
【0114】
ブリュッセル(Brussels)診断基準(表2A)(RUSSELL JA et al. Critical Care Medicine (2000) 28 (10): 3405-11)を用いて少なくとも中等度の臓器不全の証拠がある場合に、各器官系における臨床的に重要な臓器不全が、24時間の間に存在するものと規定した。各臓器不全変数について各24時間の間、必ずしもデータが有効であるわけではないので、我々は、以前に定義した(Anonymous. New England Journal of Medicine (2000) 342 (18): 1301-8)ように、「進展(carry forward)」仮定を用いた。簡潔に述べると、変数の測定がなされなかった任意の24時間について、我々は、その前の24時間の「存在」又は「不存在」を、進展(carried forward)した。任意の変数が、決して測定できなかった場合は、正常であるものと仮定した。
【0115】
更に、心血管、呼吸器、及び、腎臓 の機能を評価するために、我々は各24時間の、昇圧剤のサポート、機械換気、及び、腎臓のサポートの各々についても記録した。昇圧剤の使用は、ド−パミン>5μg/kg/min又は任意の用量のノルエピネフリン、エピネフリン、バソプレッシン、若しくはフェニレフリンとして規定した。機械換気は、挿管及び陽性気道内圧(すなわち、T-piece及びマスク 換気は、換気とはみなさない)の必要性として規定した。腎臓のサポートは、血液透析、腹膜透析、又は、任意の連続的な腎臓サポート様式(例えば、veno‐静脈血液透析)として規定した。さらに、呼吸機能障害の重症度を、包含診断基準を満たす時間における、急性肺障害の発生の測定により評価した。急性肺障害は、PaO/FiO比<300、胸部X線写真における広汎性浸潤パターン、及び、CVP<18mm Hgを有するものとして定義した。
【0116】
以前に報告した(BERNARD GR et al. New England Journal of medicine (1997) 336 (13): 912-8)ように、28日の観察期間における臓器不全の期間を評価し、及び、死亡に関わる臓器不全スコアを補正するため、生存していて且つ臓器不全から免れている日数(DAF)が算出された。簡潔に説明すると、各変数について各24時間の間、対象が生きていて臓器不全を免れている場合(正常か弱い臓器不全、表2A)は、DAFを1としてスコアリングした。24時間の間、対象が臓器不全(中程度、重度、又は、極度)を起こすか又は生存していない場合は、DAFが0であるとスコアリングした。ICU入院した後の各28日、各対象において、このようにスコアリングをおこなった。ゆえに、各変数について有り得る最も低いスコアは0であり、また、有り得る最も高いスコアは28であった。より低いスコアは、生存していて且つ臓器不全から免れたのがより少ない日数であるために、より重い臓器不全を示している。
【0117】
同様に、生存していて且つSIRSから免れている日数(DAF SIRS)を計算した。各24時間の間、4つのSIRS診断基準の各々についての存在又は非存在を記録した。各24時間の期間のSIRSの存在は、4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つを有することによって規定した。敗血症については、24時間の間、4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つを有すること、且つ、既知の若しくは疑わしい感染を有することによって、存在するものと規定した(Anonymous. Critical Care Medicine (1992) 20 (6): 864-74)。混入(コンタミネーション)又はコロニー形成のために陽性であると判断される培養物は、除外した。敗血性ショックは、同一の24時間の間の、敗血症の存在と低血圧(収縮期血圧<90mmHg又は昇圧剤の必要性)の存在の併存として規定した。
【0118】
微生物学
感染していることが疑われる任意の患者について微生物学的培養を行った。これがSIRSの危篤状態の患者コホートの場合は、ほとんどの患者で培養を行った。混入又はコロニー形成が疑われる陽性培養菌は、除外した。臨床的に不適切であると見なされる陽性培養菌も、除外した。培養菌は、グラム陽性、グラム陰性、真菌、又は、その他として分類した。培養菌の採取源は、呼吸器、消化管、皮膚、軟部組織若しくは創傷、尿生殖器、又は、血管内であった。
【0119】
ハプロタイプ及びhtSNPsの選択
非位相(unphased)の白人遺伝子型データ(www. innateimmunity. net/ IIPGA/ IIPGASNPs (Riva A. and Kohane IS. A Web-Based Tool to Retrieve Human Genome Polymorphisms from Public Databases AMIA 2001 Annual conference, Washington DC, November 2001) )を用いて、PHASEソフトウエア(STEPHENS M. et al. Am J Hum Genet (2001) 68: 978-89)によりハプロタイプを推測した(図1)。そして、TLR−2の主要なハプロタイプ クレードを同定するために、MEGA2(KUMAR S. et al. (2001) 17: 1244-5)を用いて系統樹を推測した(図2)。ハプロタイプは系統樹にしたがって分類し、そして、ハプロタイプ構造をハプロタイプタグSNPs(htSNPs)を選択するために調べた(JOHNSON GC. et al. Nat Genet (2001) 29: 233-7; and GABRIEL SB. et al. Science (2002) 296: 2225-9)。(複数の)htSNPsが、白人におけるTLR−2の主要ハプロタイプクレードを同定するものとして選択された。一つのhtSNPが、白人におけるTLR2の二つの主要ハプロタイプクレードを同定するものとして選択された(rs4696480、−16934;TLR2遺伝子の転写開始点からの相対位置)。それから、主要なクレードを規定するために我々の患者コホートにおいて、このSNPについて遺伝子型を決定した。「タグ」SNPs(tSNPs)又は「ハプロタイプタグ」SNPs(htSNPs)は、クレードを特異的に規定し、そして、該クレードのハプロタイプ内にある全てのSNPsのマーカーとして機能する。
【0120】
血液収集/遺伝子型判定過程
全血より、そのバフィーコートを抽出し、試料を1.5 mlのクラリオチューブに移し、そして、−80℃で貯蔵した。DNAは、QIAamp DNA Blood Maxi Kit(Qiagen商標)を用いて、末梢血試料のバフィーコートから抽出した。遺伝子型の解析は、臨床情報無しに、ブラインドで行われた。ABI Prism7900HTシークエンス検出システム(Applied Biosystems,Inc.-Livak KJ. (1999) Genet Anal 14: 143-9)で特異的蛍光ラベル‐ハイブリダイジェーションプローブを用いたリアルタイム ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により、多型の遺伝子型を同定した。簡潔に説明すると、ABI Prism7900HTは、5’ヌクレアーゼアッセイ(ここでのPCR反応は、蛍光発生レポーター色素及び蛍光発生消光剤で標識されたアレル特異的プローブを含む)を使用する。前記プローブの標的が増幅されているのであれば、前記プローブは、Taq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により切断され、前記レポーター色素が遊離し、そして、特異的蛍光の強度が増加される。ミスマッチなプローブは、効率的に切断されず、よって、認識し得るような最終的な蛍光性シグナルには寄与しない。一つの特異的色素蛍光の増加は、該色素特異的なアレルについてホモ接合性であることを示している。両方のシグナルにおける増加は、ヘテロ接合性を表している。Coriell Cell Repository(細胞バンク)から得られたリンパ球株化細胞からのDNAが、遺伝子型同定の正確さを確実にするために使用された。G5110A、A5218C及びA6235における、これらの株化細胞の遺伝子型は、ABI Prism7900HTシークエンス検出システムを用いて判定され、そして、www. innateimmunity. net/ IIPGA/ IIPGASNPs (Riva A. and Kohane IS. A. and Kohane IS. A Web-Based Tool to Retrieve Human Genome Polymorphisms from Public Databases AMIA 2001 Annual conference, Washington DC, November 2001)により提供されたダイレクトシークエンスで判定された同一の株化細胞の該遺伝子型と比較された。
【0121】
データ収集
データは、28日間又は退院するまでの間、記録された。生の臨床的及び実験上の変数は、Glasgow Comaスコアの例外と共に、各24時間の間の、最悪な又は最も異常な変数を用いて、記録された。入院日の欠落データは正常値を割り当て、そして、その日以降の欠落データはその前日の値を進展(carrying forward)することにより置換した。個体群統計学的及び微生物学的データを記録した。各対象についてデータ収集が完了した際に、全ての記録から全ての対象識別名を除去し、そして、該対象ファイルに独特の無作為の数字(該数字は血液試料と交差して関連付けられている)を割り当てた。前記完了した生データファイルは、標準的定義を用いた記述的な重症度の疾患スコア(すなわち、APACHE II、及び、生存しており且つブリュッセル診断基準を用いて計算された臓器不全から免れた日数)を算出するために変換された。χ二乗検定を、28日の死亡率とハプロタイプクレードとの関連をテストするために用いた。ベースラインの記述的特徴は、χ二乗検定及び適当な分散分析を用いて、比較した。
【0122】
統計解析
我々は、コホート研究デザインを用いた。2分の割合の結果(28日の死亡率、SIRS発症時の敗血症及びショック)を、優性遺伝モデルを想定したχ二乗検定を用いて、ハプロタイプクレード間で比較した。ハプロタイプクレード間の連続的結果変数における差異を、分散分析を用いて試験した。Kaplan-Meier解析と共にコックス回帰モデルを用いて、他の混乱要因(年齢、性、及び、内科的 vs. 外科的診断)を調整して、28日の死亡率をハプロタイプクレード間で更に比較した。ハプロタイプクレード相対的リスクを計算した。この解析は、全部のコホートにおいて行われ、そして次に、SIRS発症時に敗血症である対象及びSIRS発症時に敗血症ショックである対象のサブグループにおいて行われた。遺伝子型の分布は、Hardy-Weinbergの平衡(GUO SW. and THOMPSON EA. (1992) 48: 361-72)について調べた。我々は、平均値、及び、95%信頼区間について報告する。統計学的有意性は、p<0.05と定めた。以下の実施例で算出したように、前記p値は、3つの異なる統計学的方法(分散分析、又は、Kruskal-Wallisテスト*、又は、イェーツ連続性補正を伴うχ二乗検定)に由来している。例えば、ベースライン及び3時間の間のサイトカインのデータについてのP値は、Kruskal-Wallisテスト(ノンパラメトリック分析)に基づき、そして、対応するILlraについてのP値は、全ての遺伝子型を比較する分散分析法(パラメトリック分析)を用いて得られた。前記データは、Windows(登録商標)用SPSS 11.5及びSigmaStat 3.0ソフトウェア(SPSS Inc、シカゴ、イリノイ州、2003)を用いて解析された。
【実施例】
【0123】
実施例1: グラム陽性菌感染感受性についてのトール様受容体2(TLR−2)ハプロタイプ
聖パウロ病院のICUに入院した252人の連続した重症患者を、治験組み入れのために、選別した。これらのうち、223人の白人患者が首尾よく遺伝子型判定され、本研究のためのコホートを形成した。
【0124】
ハプロタイプクレード推論
Coriell Cell Repository(細胞バンク)の23人の白人についてTLR2の完全シークエンスによりハプロタイプをPHASEソフトウエアを用いて推論し、そして、二つの主要ハプロタイプクレードをMEGA2ソフトウエアを用いて同定した(図1及び2)。これらのハプロタイプクレードは、我々の重症患者コホートにおける前記「ハプロタイプタグ」SNP(htSNP) T‐16934A(rs4696480)を遺伝子型判定することにより解析可能であった。この多型のマイナーTアレルは、TLR2遺伝子において見出されたハプロタイプの47%を包含するクレードの目印となる(図1)。この多型の遺伝子型頻度は、その他の入手可能なwww. innateimmunity. net/IIPGA/IIPGASNPs(SNP information was retrieved from the Innate Immunity PGA, NHLBI Program in Genomic Applications. Riva A. and Kohane IS. A Web-Based Tool to Retrieve Human Genome Polymorphisms from Public Databases AMIA 2001 Annual conference, Washington DC, November 2001)からの白人のデータより推論される頻度に類似しており、また、Hardy-Weinberg平衡にあった(表3)。
【0125】
【表3】

【0126】
異なるクレードからのハプロタイプ間よりも一つのクレード内のハプロタイプ間ではより小さい差異となるので、わずかな情報ロスで遺伝子型判定の潜在的量をほぼ30倍にするため(1つの遺伝子型判定されたSNPsが28に)、単一ハプロタイプクレードに基づいたアプローチを、結果と多型との関連を調べるのに選択した(Kareco TRJ. and Walley KR. (2003) American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 167: A427)。T‐16934A SNPは、TLR2ハプロタイプ系統樹の主要な分枝点に位置し、それ故、TLR2ハプロタイプは、凡そ同サイズの二つのクレードへと分割されている(図2)。ハプロタイプ6は、16934Aアレルによって規定されるクレード内の他のハプロタイプと密に関連しているようには見えないものの、‐16934Aアレルによって規定されるクレード内に属する。これは、歴史のある時点での、‐16934Tアレルから‐16934Aアレルへの、このハプロタイプにおける復帰変異の結果かもしれない。
【0127】
ハプロタイプ患者結果
遺伝子型判定が成功した223人の白人患者コホートの個体は、少なくともSIRS診断基準4のうち2を有していたが、TLR−2 T−16934A遺伝子型は、年齢、性別、入院のための内科vs.外科診断、入院時の疾患重症度における差異との間で有意な関連は見られなかった(APACHE II スコアによって算出された)(表4)。
【0128】
【表4】

【0129】
我々の重症患者コホートにおいて、TLR2−16934A/A遺伝子型は、本研究の入院時の敗血症の増加率と関連していた。−16934Aアレルがホモ接合性である患者の79%が観察期間の第1日目に敗血症になったのに対し、−16934Tアレルがヘテロ接合性かホモ接合性の患者では60%のみであった(Fisher's exact、p<0.007)。−16934A/A遺伝子型の患者は、第1日目に敗血症になることにおいて1.3の相対危険度を有していた(95% CI=1.1−1.6)。
【0130】
TLR−2 T−16934A遺伝子型が、我々の重症患者コホートにおいて、グラム陽性培養菌の発生を予測するものであることが見出された。グラム陽性培養菌の患者の40%がTLR2遺伝子の位置−16934においてAアレルのホモ接合性であったのに対し、グラム陽性培養菌を有しない患者では22%のみが位置−16934においてAアレルのホモ接合性であった(Fisher's exact、p<0.02)。−16934Aアレルがホモ接合性である患者は、グラム陽性培養菌を有する可能性が−16934Aアレルがホモ接合性でない患者の2倍であった(RR=2.0、 95% CI=1.1−3.4)。さらに、陽性血液培養物と、A/A及びA/T遺伝子型との間に特異的な関連がみられた。陽性血管内培養物の患者の99%は、位置−16934においてA/A又はA/T遺伝子型であるのに対し、その他の出所(呼吸器、消化管、皮膚若しくは軟部組織、又は、尿生殖器)に由来する陽性培養物を有する患者の74%のみがA/A又はA/T遺伝子型であった(Fisher's exact、p<0.05)。
【0131】
実施例2: 炎症状態からの回復能力についてのトール様受容体2(TLR‐2)ハプロタイプ解析
SIRSである638人のICU患者コホートにおいて、TLR−2 T−16934Aを調べた。患者の25%がAAホモ接合性であり、患者の48%がATヘテロ接合性であり、そして、患者の27%がTTホモ接合性であった。Aアレルの頻度は49%でありTアレルの頻度は51%であり、そして、これらアレルはこの集団においてHardy-Weinberg平衡にあった(表5)。TLR−2 −16934AA、AT及びTTの間で、年齢、性別、APACHE II スコア、及び、入院における内科vs.外科の分布において、差異はなかった(表5)。
【0132】
【表5】

【0133】
遺伝子型によるベースライン特性(年齢、性別、%外科、APACHE II スコア)の差異はなかった。
【0134】
TLR−2 −16934AA vs. TLR−2 −16934AT vs.TLR−2 −16934TTの患者で、有意な、生存の連続的減少が見られた(P値=0.0359)。28日目において、AA遺伝子型の患者は71%の生存率で、AT遺伝子型の患者は65%の生存率で、TT遺伝子型の患者は60%の生存率であった(表6、図3)。そのため、TLR2リスク遺伝子型を有するSIRS患者(すなわちTLR2−16934T含有リスクハプロタイプを1コピー以上保持する者)は、生存率が減少した。
【0135】
【表6】

【0136】
ICU入院時の敗血症罹患率が、TLR−2 −16934遺伝子型の TT(76%)、AT(81%)及びAA(85%)の患者において、統計学的に有意に(p=0.025)、連続して増加していた(表6、図4)。
【0137】
TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ心血管系障害から免れている日数(P=0.019)、生存しており且つ昇圧剤(昇圧薬)の使用を免れている日数(p=0.041)、及び、生存しており且つ変力作用薬剤(イノトロープ)の使用を免れている日数(p=074)、との高い有意な関連が見られた(表6、図5)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ心血管系障害から免れている日数、生存しており且つ昇圧剤の使用を免れている日数、及び、生存しており且つ変力作用薬剤の使用を免れている日数が少なくなることから示されるように、より大きな心血管系障害を有していた。ゆえに、TLR−2リスク遺伝子型のSIRS患者(すなわち、1以上の、TLR2−16934T含有リスクハプロタイプを有する者)は、心血管系障害における統計学的に有意な増加、変力作用薬剤(イノトロープ)の必要性の増加、及び、昇圧剤の必要性の強い傾向を示した。
【0138】
TLR−2 −16934A/T遺伝子型と、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数(p=0.095)、及び、生存しており且つステロイド使用を免れている日数(p=0.064)との間に、関連する傾向が存在した(表6、図6)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数がより少なく、そして、生存しており且つステロイド使用を免れている日数がより少ないことから示されるように、より大きい全身性炎症反応を示した。
【0139】
TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ血液凝固を免れている日数との間に統計学的に有意な関連(p=0.048)、及び、TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つINR>1.5を免れている日数との間に関連する傾向(p=0.072)が存在した(表6、図7)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ血液凝固障害を免れている日数がより少なく、そして、生存しており且つINR>1.5を免れている日数がより少ないことから示されるように、より大きい血液凝固障害を示した。
【0140】
TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ腎臓のサポートを免れている日数との間に関連する傾向(p=0.082)が存在し、及び、TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ肝機能障害を免れている日数との間に有意な関連(p=0.035)が存在した(表6、図8)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ腎臓のサポートから免れている日数が少なくなることから示されるように、より大きな腎機能障害を有しており、また、生存しており且つ肝機能障害から免れている日数が少なくなることから示されるように、より大きな肝機能障害を有していた。
【0141】
敗血症下位集団(subgroup)
前記方法において規定したように全て敗血症である重症白人患者513人の下位集団における前記TLR−2 T−16934A遺伝子多型を、我々は調べた。患者の26%がAAホモ接合性で、48%がATヘテロ接合性で、そして、26%がTTホモ接合性であった。前記Aアレルの頻度は50%であり、また、Tアレルの頻度も50%であり、そして、これらのアレルはHardy-Weinberg平衡にあった(表7)。TLR−2 −16934 AA、AT又はTT 遺伝子型群の間の、年齢、性別、APACHE IIスコア、内科vs.外科入院状態の分布、の差異はなかった(表7)。
【0142】
【表7】

【0143】
遺伝子型によるベースライン特性(年齢、性別、%外科、APACHE II スコア)の差異はなかった。
【0144】
TLR−2 −16934 AA、AT及びTT遺伝子型群間の28日間の生存における連続的減少の傾向が存在した(P=0.089)。前記AA遺伝子型の患者は70%の生存率であり、前記AT遺伝子型の患者は62%の生存率であり、そして、前記TT遺伝子型の患者は60%の生存率であった(表8、図9)。
【0145】
【表8】

【0146】
TLR−2 −16934A/T遺伝子型と、生存しており且つ昇圧剤の使用を免れている日数(p=0.049)、及び、生存しており且つ心血管系障害を免れている日数(p=0.041)との間に、有意な関連が存在した(表8、図10)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ心血管系障害、昇圧剤(昇圧薬)の使用、及び、変力作用薬剤(イノトロープ)の使用 を免れている日数が少なくなることから示されるように、より大きな心血管系障害を有していた。
【0147】
TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数(p=0.082)、及び、生存しており且つステロイド使用を免れている日数(p=0.092)との間に、関連する傾向が存在した(表8、図11)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数がより少なく、そして、生存しており且つステロイド使用を免れている日数がより少ないことから示されるように、より大きい全身性炎症反応を示した。
【0148】
TLR−2 −16934T/A遺伝子型と生存しており且つ血液凝固(p=0.084)、INR>1.5(p=0.060)、及び、肝機能障害(p=0.066)、を免れている日数との間に、関連する傾向が存在した(表8、図12)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ血液凝固障害を免れている日数がより少なく、そして、生存しており且つINR>1.5を免れている日数がより少ないことから示されるように、より大きい血液凝固障害を示した。
【0149】
TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ呼吸障害を免れている日数との間に関連する傾向(p=0.071)が存在し、及び、TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ機械的換気を免れている日数との間に関連する傾向(p=0.099)が存在した(表8、図13)。前記TLR−2 −16934Tアレル(AT又はTT)を保有する患者は、生存しており且つ呼吸障害から免れている日数が少なくなり、また、生存しており且つ機械的換気から免れている日数が少なくなることから示されるように、より大きな呼吸障害を有していた。
【0150】
実施例3:生物学的に真実味のあるコホート(Biological Plausibility Cohort)に関するトール様受容体2(TLR−2)ハプロタイプ解析
本実施例では、人工心肺手術後の患者(生物学的に真実味のあるコホート)における非敗血症性の全身性炎症反応症候群において、前記T−16934A多型のアレルについて研究した。前記リスクハプロタイプ −16934Tが、血清IL−8濃度(炎症促進性サイトカイン)、又は、血清IL−10濃度若しくはインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)濃度(IL−10及びIL−1raは、抗炎症性サイトカインである)における差異と関連しているか否かについて、評価がなされた。
【0151】
生物学的に真実味のあるコホートの参入基準
人工心肺を必要とする待機的冠動脈バイパス術を最初から予定されていた白人患者が、含まれていた(n=91)。緊急の又は緊急事態の人工心肺手術を受けた患者は、ショックのような他の引き金に対する炎症反応を示しているかもしれないので、含まれていない。弁手術又は反復心臓手術を受けた患者は、これらの患者が異なる手術前病態生理学的状態にあって且つしばしば手術及び人工心肺の合計時間がより長いため、我々は含めていない。前記ABI TaqManプロトコールを用いて、88人の患者が、TLR−2 T−16934Aについて首尾よく遺伝子型判定された(Applied Biosystems, Inc.-Livak KJ.(1999) Genet Anal 14: 143-9)。
【0152】
生物学的に真実味のあるコホートの臨床表現型
麻酔の誘導と全身性及び肺動脈カテーテル(我々の施設において臨床目的で日常的に挿入されるもの)の設置後に、血清IL−8、IL−10及びIL1raのLUMINEX(Oliver KG. et al. (1998) Clinical Chemistry 44 (9): 2057-60)を用いたベースライン測定のために、人工心肺前に血液を得た。
【0153】
前記生物学的に真実味のあるコホートにおけるベースライン特性は、年齢、性別、喫煙状態、糖尿病の存在、高血圧症の存在、手術前の駆出率、人工心肺の持続時間、及び、クロス‐クランプとアプロチニン使用の持続時間であった。
【0154】
前記生物学的に真実味のあるコホートにおける前記一次結果変数は、手術後のIL‐8、IL‐10及びインターロイキン1受容体拮抗薬(IL‐1ra)濃度(手術前0時間から手術後3時間)において変化した。データにおける差異は、Kruskal Wallisテスト(Myles Hollander & Douglas A. Wolfe (1973). Nonparametric statistical inference. New York: John Wiley & Sons. Pages 115-120)を用いて調べた。差異がp<0.05であるとき有意であるとした。これら測定の前記一次分布は、高濃度において歪んでいた。したがって、我々は、これらのデータをログ変換した。ログ変換データにおける差異は、分散分析(ANOVA)を用いて調べた。全ての統計学的テストは、SPSS統計ソフトウェアパッケージ、バージョン11.5(SPSS、シカゴ、イリノイ州)を用いて行った。
【0155】
研究の理論的根拠
TLR−2 −16934Tアレル(該アレルは、より悪い全身性炎症反応症候群、より低い生存率、及び、SIRS及び敗血症である重症患者におけるより大きな臓器障害と関連する)についての前記臨床所見の確認のため及び該所見の生物学的な真実味性の証拠についての試験のために、我々は、(対象を)独立した人種に変えた。90人の白人患者について、人工心肺手術の直前と後に、調べた。人工心肺は、前記全身性炎症反応症候群の定義を満たす炎症反応と関連しており、また、炎症性サイトカインの発現の増加とも相関する。この白人88人の集団において、前記AA、AT及びTT遺伝子型頻度が、各々、17、57及び14であることが、判明した。この集団はまた、Hardy-Weinberg平衡にあった。年齢、性別分布、喫煙者、糖尿病者、高血圧症の存在、手術前駆出率、バイパス時間、クロス‐クランプ時間、及び、アプロチニンの使用において、遺伝子型による患者間での有意差は存在しなかった(表9)。
【0156】
【表9】

【0157】
そして、TLR−2 T−16934Aと血清IL‐8、IL‐10及びIL‐1ra濃度との関連性は、人工心肺後に、評価した。
【0158】
TLR−2 T−16934Aと、心血管系手術に対するIL−8反応性
TLR−2 −16934の遺伝子型に従った、患者の血清IL‐8の有意な増加が認められた(AA、AT、及び、TT のIL‐8: 各々、41±8pg/ml、89±18pg/ml、及び、102±61pg/ml、p=0.048 、TLR−2−16934ATとTLR−2 −16934AAの比較での手術後0〜3時間のlog血清IL−8濃度の差についての直線モデル、表10を参照)。
【0159】
【表10】

【0160】
前記TLR−2 −16934Tアレルは、人工心肺後の炎症促進性サイトカイン(IL−8)の増加と関連していた。これらの所見は、高濃度のIL−8とTLR−2 −16934Tアレルが有意に関連するので、TLR−2 −16934Tと生存率の減少及び臓器不全の増加との間の重症SIRS患者における相関についての我々の知見に対する生物学的な真実味性を支持及び提供する。これらの結果はまた、TLR−2 −16934Aである患者における感染とりわけグラム陽性菌感染の増加という我々の知見を支持する(これらの患者は、心血管系手術後の血清IL−8濃度の低下をきたすためであり、また、IL−8は感染反応に重要なサイトカインである)。
【0161】
TLR−2 T−16934Aと、心血管系手術に対するIL−10反応性
TLR−2 T−16934A と血清IL−10濃度の関係が、人工心肺の前と後とで評価された。TLR−2 −16934AAである患者と比較してTLR−2 −16934Tアレルを保有する患者において、人工心肺後0から3時間の血清IL−10濃度が統計学的に有意に増加していた(TLR−2 −16934AA、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TT: 各々4±2、13±6、17±10 pg/ml (平均±該平均の標準誤差)、p=0.034、TLR−2 −16934ATと比較したTLR−2 −16934AAの手術後0から3時間のlog血清IL−10濃度における差異に関する直線モデル、表11)。
【0162】
【表11】

【0163】
血清IL−10濃度は、平均±該平均の標準誤差(SE)として示されている。TLR−2 −16934AAである患者と比較してTLR−2 −16934Tアレルを保有する患者において、人工心肺後0から3時間の血清IL−10濃度が統計学的に有意に増加していた(TLR−2 −16934AA、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TT: 各々4±2、13±6、17±10 pg/ml (平均±該平均の標準誤差)、p=0.034、TLR−2 −16934AAと比較したTLR−2 −16934TTの手術後0から3時間のlog血清IL−10濃度における差異に関する直線モデル)。
【0164】
TLR−2 T−16934Aと、心血管系手術に対するインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)反応性
TLR−2 −16934TTである患者と比較してTLR−2 −16934Aアレルを保有する患者において、人工心肺後0から3時間の血清IL−1ra濃度が統計学的に有意に増加していた(TLR−2 −16934AA、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TT: 各々28787±5298、33305±2217、17354±7289 pg/ml (平均±該平均の標準誤差)、p=0.03、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TTと比較したTLR−2 −16934AAの手術後0から3時間のlog血清IL−1ra濃度における差異に関する直線モデル、表12)。
【0165】
【表12】

【0166】
血清IL−1ra濃度は、平均±該平均の標準誤差(SE)として示されている。TLR−2 −16934TTである患者と比較してTLR−2 −16934Aアレルを保有する患者において、人工心肺後0から3時間の血清IL−1ra濃度が統計学的に有意に増加していた(TLR−2 −16934AA、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TT: 各々28787±5298、33305±2217、17354±7289 pg/ml (平均±該平均の標準誤差)、p=0.03、TLR−2 −16934AT、TLR−2 −16934TTと比較したTLR−2 −16934AAの手術後0から3時間のlog血清IL−1ra濃度における差異に関する直線モデル)。
【0167】
TLR−2 −16934TとSIRSの患者コホートにおける好ましくない患者結果との関連は、TLR−2 −16934Tと非敗血症性の全身性炎症反応症候群であって類似しているが完全に独立したコホート(すなわち全身性炎症反応症候群が心血管系手術及び人工心肺によって誘発された患者)における血清IL−8濃度との有力な関連により更に妥当性が認められる。我々は、TLR−2 −16934Tアレルと、手術後の炎症促進性サイトカイン応答(血清IL−8により反映される)の増大との関連について、証拠を見出した。IL−8は主要な炎症促進性サイトカインであるので、前記TLR−2 −16934Tアレルと患者における血清IL−8濃度の前記増加は、生物学的真実味を増すことになる。
【0168】
前記人工心肺後のサイトカイン(IL−8)濃度増加は、サイトカインの急速な増加及び/又は放出を、並びに、この反応がTLR−2 −16934Tアレルを有する患者で増幅される事を、示している。
【0169】
IL−10は、手術後及び敗血症後に増加する抗炎症性サイトカインであり、また、敗血症での生存率の減少のような悪い患者結果のマーカーである。TLR−2 −16934AAの患者と比較したTLR−2 −16934Tアレル(AT/TT)(TLR−2リスク遺伝子型とも呼ばれる)を保有する患者における心血管系手術後のIL−10の大幅な増加という知見はまた、前記TLR−2 −16934Tアレル(AT/TT)を保有するSIRS患者の生存率の低下と臓器不全の増加という我々の知見に対して、生物学的真実味をもたらす。
【0170】
インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)は、敗血症後に増加する抗炎症サイトカインである。インターロイキン1受容体アンタゴニストは、インターロイキン1受容体に結合し、インターロイキン1β(強力な炎症促進性サイトカイン)が結合しその炎症促進作用を及ぼすのを阻害する。そのため、IL−1raの血清濃度の増加は、IL−1βの作用を減弱させる。そのため、TLR−2 −16943Tアレルを有する患者における減少した反応は、TLR−2 16943Tアレルを保有する患者において惹起された刺激(すなわち心血管系手術)に対する全般的な炎症反応が増大することの生物学的真実味を、更にもたらす。
【0171】
生存率及び臓器不全との前記関連が別個の(separate)コホートにおいて見られたのに対し、血清IL−1raについての前記知見は、一つの独立した(independent)患者コホート(該患者は、心血管系手術を受けている)に由来する。
【0172】
SIRSのような炎症状態にある対象、及び、リスク遺伝子型を保有する対象は、非リスク又はプロテクティブ遺伝子型のヒトよりも、より有意に治療の恩恵を受けることが見込まれる。
【0173】
臨床的な意味(Clinical Implications)
敗血症、重度の敗血症、又は、SIRSの対象は、それらのTLR−2 −16934(配列番号1の位置201)遺伝子型又はこのSNPと連鎖不平衡にある多型部位の遺伝子型を判定するために、遺伝子型判定されてもよい。対象は、それから、彼らの死についての特有のリスク又は彼らのグラム陽性菌感染発症の感受性に関して、遺伝子型によりリスクカテゴリーに分類され得る。
【0174】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で図解や実施例により詳細に記載されているものであるが、本発明の教示する見地において本付加請求項の精神又は範囲から逸脱することなしに改変及び修飾がなされてもよいことは、当業者には明白であろう。本書で参照された全ての特許、特許出願、及び、刊行物は、参照により、本書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】トール様受容体(TLR−2)についてのハプロタイプ及びハプロタイプクレードを示した図である。
【図2】TLR−2 ハプロタイプクレードについての、非ルート式(unrooted)系統樹である。
【図3】TLR−2 −16934AA、TLR−2 −16934AT、及び、TLR−2 −16934TTの患者に関する28日間に渡るKaplan‐Meier法の生存曲線である。
【図4】TLR−2 −16934遺伝子型と、ICU入院時における敗血症の頻度との相関を示したグラフである。
【図5】TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ昇圧剤から免れている日数、生存しており且つ変力作用薬剤から免れている日数、及び、生存しており且つ心血管系障害から免れている日数との関連を示したグラフである。
【図6】前記TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数、及び、生存しており且つステロイド使用を免れている日数との関連を示したグラフである。
【図7】TLR−2 −16934A/T遺伝子型と、生存しており且つ血液凝固から免れている日数との関連、及び、TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つINR>1.5を免れている日数との関連を示したグラフである。
【図8】TLR−2 −16934A/T遺伝子型と、生存しており且つ腎臓サポートから免れている日数との関連、及び、TLR−2 −16934A/T遺伝子型と生存しており且つ肝臓障害から免れている日数との関連を示したグラフである。
【図9】TLR−2−16934AA、TLR−2−16934AT、及び、TLR−2−16934TTである患者の28日間の間のKaplan‐Meier法の生存曲線である。
【図10】敗血症を伴う重症患者における、TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ昇圧剤から免れている日数、及び、生存しており且つ心血管系障害から免れている日数との関連を示したグラフである。
【図11】敗血症を伴う重症患者における、TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ3/4 SIRS診断基準を免れている日数、及び、生存しており且つステロイド使用を免れている日数との関連を示したグラフである。
【図12】敗血症を伴う重症患者における、TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ血液凝固から免れている日数、生存しており且つINR>1.5から免れている日数、及び、生存しており且つ肝臓障害から免れている日数との関連を示したグラフである。
【図13】敗血症を伴う重症患者における、TLR−2 −16934T/A遺伝子型と、生存しており且つ呼吸障害から免れている日数、及び、生存しており且つ機械換気から免れている日数との関連を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症状態を有するかその発症の危険がある対象に関する予後を得るための方法であって、該対象のトール様受容体2(TLR−2)配列の多型部位における該対象の遺伝子型(但し、該遺伝子型は該対象が該炎症状態から回復する能力の指標をなす)を判定することを含む方法。
【請求項2】
前記多型部位が、配列番号1の位置201にあるか又はそれと連鎖不平衡にある多型部位にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定された遺伝子型と、(i)前記対象の炎症状態の型;又は(ii)他の炎症状態、からの回復の予測指標として知られている既知遺伝子型とを比較することを、更に含む請求項1〜2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記対象についての前記TLR−2配列情報の決定を更に含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子型判定が、前記対象からの核酸試料について行われることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者からの核酸試料の獲得を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子型判定が、(a) 制限酵素断片長鎖多型分析; (b) シークエンシング; (c) ハイブリダイゼーション; (d) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ; (e) ライゲーションローリングサークル増幅;(f) 5’ヌクレアーゼアッセイ; (g) ポリメラーゼプルーフリーディング法; (h) アレル特異的PCR;及び、(i) 配列データの読み取り のうちの1以上を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象のリスク遺伝子型が、炎症状態から回復する可能性の減少又は芳しくない結果となるリスクの増加の指標であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が重症であり、且つ、前記リスク遺伝子型が重篤な心血管又は呼吸性の機能障害の予後の指標であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リスク遺伝子型が、配列番号1の位置201に少なくとも一つのTヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者のプロテクティブ遺伝子型が、炎症状態から回復する可能性の増加の指標であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が重症であり、且つ、前記プロテクティブ遺伝子型が心血管又は呼吸性の機能障害の重篤性が弱まる予後の指標であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロテクティブ遺伝子型が、配列番号1の位置201においてAヌクレオチドのホモ接合性であることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症状態が、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、吸引間質性肺炎(aspiration pneumanitis)、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、子癇前症、子癇、HELP症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、汎発性強皮症、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、硬変 から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症状態が、SIRSであることを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
対象の炎症状態からの回復の予後と相関するTLR−2配列における多型を同定する方法であって、
(a) 炎症状態の対象(複数)グループからのTLR−2配列情報の獲得;
(b) 前記対象(複数)中の前記TLR−2配列中の少なくとも一つの多型性のヌクレオチド位置の同定;
(c) 前記グループ中の個々の対象についての、前記多型部位における遺伝子型の判定;
(d) 前記炎症状態からの、前記グループ中の個々の対象の回復能力の判定;及び、
(e) ステップ(c)で判定された遺伝子型と、ステップ(d)で判定された前記回復能力との関連付け、
を含み、それにより、回復と関連する該TLR−2多型を同定することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記炎症状態が、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、吸引間質性肺炎(aspiration pneumanitis)、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、子癇前症、子癇、HELP症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、汎発性強皮症、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、硬変 から成る群より選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
炎症状態から回復する対象の能力の予測を可能にするための、該対象のTLR‐2配列内における多型部位内の規定されたヌクレオチド位置における遺伝子型を判定するためのキットであって、
(a) 該多型部位における変化したヌクレオチドを識別し得る制限酵素;又は、
(b) 該多型部位における変化したヌクレオチドと十分な相補性(該変化したヌクレオチド配列と特異的にハイブリット形成が可能なような)を有し、それにより該多型部位の遺伝子型を判定し得る標識化オリゴヌクレオチド;及び、
(c) 任意的には、該遺伝子型判定のためのキットの使用説明書、
を含むキット。
【請求項19】
多型部位が配列番号1の位置201に該当することを特徴とする請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記多型部位を包含する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド若しくは複数オリゴヌクレオチドのセットを、更に含むことを特徴とする請求項18又は19に記載のキット。
【請求項21】
重合剤を更に含むことを特徴とする請求項20に記載のキット。
【請求項22】
炎症状態の治療に有用であることが既知か又は推測される薬剤候補の効果を判定するために対象グループを選択するための方法であって、各対象についての該TLR‐2配列中の1以上の多型部位の遺伝子型判定(但し、該遺伝子型は、該炎症状態から対象が回復する能力の指標である)及びその遺伝子型に基づいた対象の分類を含む方法。
【請求項23】
前記対象(複数)又は対象(複数)の下位集合(subset)への前記候補薬剤の投与、及び、各対象が前記炎症状態から回復する能力の判定を、更に含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象の遺伝子型に基づいて、前記候補薬剤に対する該対象の反応を比較することを、更に含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
グラム陽性菌感染の治療に有用であることが既知か又は推測される薬剤候補の効果を判定するために対象グループを選択するための方法であって、各対象についての該TLR‐2配列中の1以上の多型部位の遺伝子型判定(但し、該遺伝子型は、対象のグラム陽性菌感染発症の可能性の指標である)及びその遺伝子型に基づいた対象の分類を含む方法。
【請求項26】
前記対象(複数)又は対象(複数)の下位集合への前記候補薬剤の投与、及び、各対象が前記グラム陽性菌感染から回復する能力の判定を、更に含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象の遺伝子型に基づいて、前記候補薬剤に対する該対象の反応を比較することを、更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療を必要としている対象におけるグラム陽性菌感染を治療するための方法であって、抗生物質の該対象への投与を含む方法(但し、該対象はTLR−2のリスク遺伝子型を有する)。
【請求項29】
治療を必要としている対象におけるグラム陽性菌感染を治療するための方法であって、
(a) そのTLR−2配列中にリスク遺伝子型を有する対象の選択、及び、
(b) 該対象への抗生物質の投与
を含む方法。
【請求項30】
抗生物質でのグラム陽性菌感染の治療のために対象を選択する方法であって、TLR‐2リスク遺伝子型を有する対象の同定を含む方法(但し、TLR−2リスク遺伝子型を有する対象の同定は、グラム陽性菌感染の可能性増大を予測する)。
【請求項31】
前記抗生物質がグラム陽性菌特異的抗生物質であることを特徴とする請求項28〜30に記載の方法。
【請求項32】
前記グラム陽性菌特異的抗生物質が、リネゾリド; クロキシシリン(cloxicillin); メテシリン(methecillin); ナフシリン; オキサシリン; バンコマイシン; タゾバカム(tazobacam); イミペネム; カルベネム(carbenem); メロペネム; クリンダマイシン; リファンピン; セファロスポリン; マクロライド; キノロン; トリメトプリム−スルファメタキサゾール(sulfamethaxazol); リファンピン; アモキシシリン; ペニシリン; ゲンタマイシン; セフトリアキソン; アンピシリン; セフォタキシム; ドキシサイクリン; シプロフロキサシン; エリスロマイシン、及び、メトロニダゾールから選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療される前記対象がTLR−2のリスク遺伝子型を有することを特徴とするグラム陽性菌感染治療に対する医薬品の製造のための抗生物質の使用。
【請求項34】
対象の下位集合におけるグラム陽性菌感染治療に対する医薬品の製造のための抗生物質の使用(但し、該対象の下位集団(集合)は、TLR−2のリスク遺伝子型を有する)。
【請求項35】
前記TLR−2リスク遺伝子型が配列番号1の位置201に存在することを特徴とする請求項28〜34の何れか一項に記載の方法又は使用。
【請求項36】
前記TLR−2リスク遺伝子型が配列番号1の位置201において少なくとも一つのAヌクレオチドを有することを特徴とする請求項35に記載の方法又は使用。
【請求項37】
前記TLR−2プロテクティブ遺伝子型が配列番号1の位置201においてTヌクレオチドのホモ接合性であることを特徴とする請求項35に記載の方法又は使用。
【請求項38】
前記抗生物質がグラム陽性菌特異的抗生物質であることを特徴とする請求項33又は34に記載の使用。
【請求項39】
前記グラム陽性菌特異的抗生物質が、リネゾリド; クロキシシリン(cloxicillin); メテシリン(methecillin); ナフシリン; オキサシリン; バンコマイシン; タゾバカム(tazobacam); イミペネム; カルベネム(carbenem); メロペネム; クリンダマイシン; リファンピン; セファロスポリン; マクロライド; キヌプリスチン−ダルホプリシン(dalfoprisin); トリメトプリム−スルファメタキサゾール(sulfamethaxazol); リファンピン; アモキシシリン; ペニシリン; ゲンタマイシン; セフトリアキソン; アンピシリン; セフォタキシム; ドキシサイクリン; シプロフロキサシン; エリスロマイシン、及び、メトロニダゾールから選択されることを特徴とする請求項38に記載の使用。
【請求項40】
対象におけるグラム陽性菌感染の発症リスクを判定する方法であって、該対象のトール様受容体2(TLR−2)配列内の多型部位における該対象の遺伝子型の判定を含む方法(但し、該遺伝子型は、該対象のグラム陽性菌感染リスクの指標である)。
【請求項41】
前記多型部位が、配列番号1の位置201にあることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象についての前記TLR−2配列情報の同定を更に含むことを特徴とする請求項40〜41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記遺伝子型判定が、前記対象からの核酸試料についてなされることを特徴とする請求項40〜42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者から核酸試料を得ることを更に含む請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記遺伝子型判定が、(a) 制限酵素断片長鎖多型分析; (b) シークエンシング; (c) ハイブリダイゼーション; (d) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ; (e) ライゲーションローリングサークル増幅;(f) 5’ヌクレアーゼアッセイ; (g) ポリメラーゼプルーフリーディング法; (h) アレル特異的PCR;及び、(i) 配列データの読み取り のうちの1以上を含むことを特徴とする請求項40〜44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象の前記遺伝子型が、対象のグラム陽性菌感染発症リスクの指標であることを特徴とする請求項40〜45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記リスク遺伝子型が、配列番号1の位置201において少なくとも一つのAヌクレオチドを有することを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記プロテクティブ遺伝子型が、配列番号1の位置201においてTヌクレオチドのホモ接合性であることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
配列番号1の配列から成るヒト標的配列、該標的配列の相補鎖、又は、該標的配列のRNA相当物 に含まれる配列と特異的にハイブリダイズする凡そ10から凡そ400ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド(但し、該オリゴヌクレオチドは、多型の遺伝子型判定において使用可能である)。
【請求項50】
配列番号1の配列から成るヒト標的配列、該標的配列の相補鎖、又は、該標的配列のRNA相当物 に含まれる配列と特異的にハイブリダイズする凡そ10から凡そ400ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド(但し、該ハイブリダイゼーションは、多型の遺伝子型判定において実施可能である)。
【請求項51】
(a)及び(b)から成る群より選択されるオリゴヌクレオチドプローブ:
(a) 高ストリンジェントな条件(high stringency conditions)下で、位置201にTを有する配列番号1を包含する核酸分子とはハイブリダイズせず、位置201にAを有する配列番号1を包含する核酸分子とハイブリダイズするプローブ;及び、
(b) 高ストリンジェントな条件(high stringency conditions)下で、位置201にAを有する配列番号1を包含する核酸分子とはハイブリダイズせず、位置201にTを有する配列番号1を包含する核酸分子とハイブリダイズするプローブ。
【請求項52】
固体支持体に付着させられた核酸分子のアレイであって、位置201の前記ヌクレオチドがAである配列番号1から成る核酸分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(但し、該オリゴヌクレオチドが、位置201の前記ヌクレオチドがTである配列番号1から成る核酸分子と実質的にハイブリダイズしない条件下において)を含むアレイ。
【請求項53】
固体支持体に付着させられた核酸分子のアレイであって、位置201の前記ヌクレオチドがTである配列番号1から成る核酸分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(但し、該オリゴヌクレオチドが、位置201の前記ヌクレオチドがAである配列番号1から成る核酸分子と実質的にハイブリダイズしない条件下において)を含むアレイ。
【請求項54】
検出可能な標識、消光剤、移動度修飾因子、前記標的配列の5’又は3’側に位置する近接する非標的配列 のうち1以上のものを更に含むことを特徴とする請求項49〜53の何れか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項55】
表1B中の前記TLR−2遺伝子型関連より選択される複数の数値的に符号化された遺伝子型関連を含む、コンピューターで読み取り可能な媒体(但し、該複数の各関連は、炎症状態から回復する能力又はグラム陽性菌感染の発症リスクを表す値である)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−527718(P2007−527718A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501084(P2007−501084)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000357
【国際公開番号】WO2005/085274
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(503265094)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (17)
【Fターム(参考)】