説明

患者選択のためのバイオマーカーおよび関連方法

本発明は、ヒト疾病の治療のための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で抗原に対する免疫応答を誘発する方法に関し、患者は、興味対象の患者集団から選択される。本発明はさらに、そのような治療後に対象が予防的または治療的免疫応答を生じ易いか否かを決定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関し、特に例えば感染または癌を原因とする疾病に対する患者の免疫療法に関する。より詳細には、本発明は、そのような免疫療法後、対象が予防的または治療的免疫応答を発生し易いか否かを予測する方法に関する。本発明は、免疫原性組成物、特に、ワクチンで治療されるべき患者の生存率を改善する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答を誘発できる抗原(例えば、ペプチド、タンパク質)を動物系内に導入し、それにより例えば、感染症に対して前記動物を保護することを含む伝統的なワクチン接種技術は長年公知である。これらの技術は更に、生ワクチンおよび不活化ワクチンの両方を開発することを含んでいた。生ワクチンは、一般に、感染体の病原型に指向された免疫応答を刺激することができる、感染体の弱毒化された非病原型である。
【0003】
多数の研究グループは、様々な癌型に対する潜在的な治療モダリティとしてのワクチンの使用も研究してきた。この特定の種類のワクチン戦略は、一般に免疫療法と称されている。
【0004】
近年、組換えワクチン、特に組換え生ワクチンの開発に進歩が見られ、興味対象の外来抗原がコード化され、ベクターから発現されている。中でも、組換えウイルスに基づくベクターは非常に有望視されており、新しいワクチンの開発に重要な役割を果たしている。多くのウイルスは、外来病原体または腫瘍組織からタンパク質を発現し、インビボでこれらの抗原に対する特異的免疫応答を誘発するそれらの能力に関して研究されている。一般に、これらの遺伝子に基づくワクチンは、強力な液性免疫および細胞免疫応答を刺激することができ、ウイルスベクターは、抗原をコードする遺伝子の送達と、抗原提示の促進および増強との両方に関して有効な戦略であり得る。ワクチン担体として使用するために、理想的なウイルスベクターは、安全であり、かつ要求される病原特異的抗原の免疫系に対する効率的な提示を可能にする必要がある。更に、ベクター系は、該ベクター系の大規模生産を可能にする基準を満たす必要がある。かくして今日まで数種のウイルスワクチンベクターが出現したが、それらの全ては、提案された用途に応じて、相対的な利点および限界を有する(組換えウイルスワクチンの再考には、例えばHarrop and Carroll, 2006, Front Biosci., 11, 804-817;Yokoyama et al., 1997, J Vet Med Sci.,59, 311-322を参照されたい)。
【0005】
プラスミドDNAベクターがインビボで動物細胞に直接トランスフェクトできるという1990年初期の観察の後、抗原をコードするDNAを動物に直接導入することによる、DNAプラスミドを用いた免疫応答誘発に基づくワクチン接種技術を開発する相当の研究努力が行われている。DNAワクチン接種と広く称されるそれらの技術は、多数の疾病モデルにおいて保護的免疫応答を引き出すために使用されている。DNAワクチンの再考には、Reyes-Sandoval and Ertl, 2001 (Current Molecular Medicine, 1, 217-243)
を参照されたい。
【0006】
しかしながら、ワクチン分野における一般的な課題は、ワクチン接種した個人において十分に強力な免疫応答を誘発する手段を同定して、感染症および疾病から保護しおよび/または該感染症および疾病を治療することにより、致命的な疾病、例えば癌を有する患者の生存を延長することである。
【0007】
従って、近年、例えばワクチンにより誘発される免疫応答を増大させる役割を果たすであろう、免疫系の重要な所定の局面を刺激することにより作用する、新しい薬物化合物を発見する主な努力が行われている。免疫応答変更因子(IRM)またはアジュバントと称されるこれらの化合物の殆どは、トール様受容体(TLR)を経由した基礎免疫系の機構を介して作用して、様々な重要なサイトカイン生合成(例えば、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子等、例えばSchiller et al., 2006, Exp Dermatol., 15, 331-341
参照)を誘発するように思われる。そのような化合物は、所定の樹状細胞、単球/マクロファージ誘導サイトカインの迅速な放出を刺激し、またB細胞を刺激してIRM化合物の抗ウイルスおよび抗腫瘍活性に重要な役割を果たす抗体を分泌させることが可能であると示されている。
【0008】
代替的に、その殆どがプライムブーストワクチン接種レジメンに基づくワクチン接種戦略が提案されている。これらの「プライムブースト」ワクチン接種プロトコールによれば、免疫系は最初に患者(pafient)にプライミング組成物を投与することにより誘発され、次いで第二のブースティング組成物を投与することにより追加免疫される(例えば、欧州特許第1411974号または米国特許第20030191076号参照)。
【0009】
ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性の機能的活性化および下方調節が、生殖成績(reproductive outcome)に重要な役割を果たし得ることが示されている(Nitrivalas et al.,2001, Human Reproduction, 16, 855-861
)。より詳細には、Thum et al, 2004, Human Reproduction, 19, 2395-2400
は、Intra Vitro Fecondation(IVF)治療後の着床および流産率に対する、末梢血ナチュラルキラー(NK)細胞上の特定のマーカーの発現の絶対数の影響を評価した。著者等は、末梢血中の活性化NK細胞の絶対数の増加が、IVF治療における胚着床率の低下に関連すると断定した。更に、妊娠を達成できる末梢血NK細胞の絶対数が高い女性は、有意なより高い流産率を有する。
【0010】
本出願人は、今般、新規な手段およびワクチン接種戦略を同定した。第一の態様によれば、本発明は、少なくとも一種の抗原を含んでなる免疫原性組成物を投与することによる、患者のヒト疾病を治療する方法に関し、前記患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から選択される。
【0011】
従って、本発明は、少なくとも一種の抗原を含んでなる免疫原性組成物を投与することによる患者のヒト疾病を治療する方法であって、以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から一人の患者を選択し、
−選択された患者に免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法に関し、患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から選択される。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で少なくとも一種の抗原に対する免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法に関し、前記患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から選択される。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法に関し、患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から選択され、高められた免疫応答は、自然免疫応答である。自然免疫応答は、病原体に対する身体の初期免疫防御であり、抗原提示細胞、即ち「APC」を含む多様な細胞から引き出される。これらの細胞は、外来起源の分子(例えば、細菌およびウイルス核酸、タンパク質、炭水化物)を認識する表面受容体および細胞質受容体を発現する。これらのシグナルを検出すると、樹状細胞およびマクロファージが、サイトカイン(インターフェロン、TNF−αおよびIL−12を含む)と、未成熟樹状細胞、マクロファージ、NK細胞および顆粒球等の細胞を攻撃の部位に誘引するケモカインとの放出を含む防御応答を引き出す。このように、自然免疫応答が非特異的な保護を与える一方で、身体は適応応答を生じている。
【0015】
従って、本発明は、ヒト疾病の治療のための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘導する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から一人の患者を選択し、
−前記選択された患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で少なくとも一種の抗原に対する免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から一人の患者を選択し、
−前記選択された患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、高められた免疫応答は自然免疫応答であり、かつ以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から患者を選択し、
−前記選択された患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞のレベルを測定し、
−前記患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で少なくとも一種の抗原に対する免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞のレベルを測定し、
−前記患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾病を治療するための、免疫原性組成物を投与することによる患者内で免疫応答を誘発する(即ち、免疫応答を高める)方法であって、高められた免疫応答は自然免疫応答であり、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞のレベルを測定し、
−前記患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与による、患者が予防的または治療的免疫応答を生じ易いか否かを予測する方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大していることが予測されることを示す方法に関する。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与による、予防的または治療的免疫応答を発生し易い患者を選択する方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大していることを示す方法に関する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与を含んでなる治療に対して正に応答し易いか否かを予測する方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大していることが予測されることを示す方法に関する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与を含んでなる治療に対して正に応答し易い患者を選択する方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大していることを示す方法に関する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与を含んでなる治療方法に治療的に応答するか否かを試験するエクスビボ方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含み、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者が免疫原性組成物に対して予防的または治療的免疫応答を生ずるであろうことを示す方法に関する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与による癌の治療方法に治療的に応答するか否かを試験するエクスビボ方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、ここで活性化NK細胞の低いレベルは、患者が癌の治療方法に治療的に応答するであろうことを示す方法に関する。
【0027】
本願全体において本明細書で使用されているように、単数に対する言及(「a」および「an」)は、文脈が別様に指示しない限り、それらが「少なくとも一つの」、「少なくとも第一の」、「一つまたはそれ以上の」または「複数の」参照化合物またはステップを意味するよう使用される。例えば、用語「細胞( a cell)
」は、その混合物を含む複数の細胞を包含する。より詳細には、「少なくとも一つの」および「一つまたはそれ以上の」は、一つまたは一つより大きい数を意味し、1、2または3が特に優先される。
【0028】
用語「および/または」は、本明細書で使用する場合は常に、「および」、「または」、および「前記用語により接続される要素の全部または任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0029】
本明細書において、用語「約」または「ほぼ」は、20%、好ましくは10%、より好ましくは5%以内であることを意味する。
【0030】
用語「患者」、「対象」は、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを指し、家畜、競技用動物(sport animal)、ヒトを含む霊長類を含むがこれらに限定されるわけではない。
【0031】
本明細書において、用語「治療」または「治療している」は予防および治療を包含する。従って、本発明の免疫原性組成物または方法は治療用途に限定されず、予防用途にも使用され得る。このことは、本明細書で「予防的または治療的免疫応答を発生すること」という表現により補助される。「予防」は即時型疾病(例えば、感染症)の予防に限定されず、更にこれらの感染症の長期の結果、例えば硬変または癌等の予防も包含する。
【0032】
活性化合物の「有効量」または「十分な量」は、臨床的結果を含む有益なまたは所望の結果を達成するに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の投与にて投与されてもよい。「治療的有効量」は、ウイルス感染症に関連した一つまたはそれ以上の症状の緩和、および疾病の予防(例えば、感染症の一つまたはそれ以上の症状の予防)を含むがこれらに限定されない、有益な臨床的結果を達成するに十分な量である。
【0033】
用語「低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される選択された患者」は、活性化NK細胞のレベルが本明細書に開示するように測定され、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者を意味するものと理解するべきである。試験された患者数が1を越える場合、前記患者は患者集団を形成する。
【0034】
本明細書において、用語「活性化NK細胞」は、CD16、CD56およびCD69細胞表面抗原を発現するリンパ球細胞を意味する。好ましい態様によれば、前記活性化NK細胞は更に、CD3表面抗原を発現しない。再考には、Vivier et al., 2008, Nature Immunology, 9, 503-510を参照されたい。代替的に、活性化NK細胞は更に、IL27(Villarino et al, 2005, J Immunol., 174, 7684-91)、Ly108(Zhong and Veilette, 2008, JBC, 283(28), 19255-64)、パーフォリン(Morissette et al., 2007, Respir Res., 8, 62)、グランザイムB(Ida et al, 2003, Eur J Immunol., 33, 3284- 92)、IL21/21R(Frederiksen et al, 2008, Cancer Immunol Immunother., 57, 1439-49;Dodds et al., 2008, Cancer Immunol Immunother., October)、CXCR1(Inngjerdingen et al., 2001, Blood., 97,367-75)、CD244(Gao et al., J Immunol. 2006 Mar 1 ; 176(5) :2758-64)、IL15Rおよび/またはグラニュリシンの発現および/または産生に基づき定義されてもよい。それらの用語は当技術分野で広く使用されている。
【0035】
特別な態様によれば、「患者は治療的に応答するであろう」という表現は、前記患者の生存率が増大することを意味する。
【0036】
本発明によれば、活性化NK細胞のレベルは、例えばフローサイトメトリー(例えば、フローサイトフルオロメトリー)、標的細胞溶解アッセイ、より詳細には三色またはそれ以上のサイトメトリー(例えば、ベクトン・ディッキンソン社、ベックマンコールター社)により測定されてもよい。例えば、非特許文献5 ; Borrego et al, 1993, Eur. J. Immunol., 23, 1039-1043を参照されたい。
【0037】
本発明によれば、活性化NK細胞のレベルは全血サンプルまたは単離された末梢血単核細胞(PBMC)に関して測定されてもよい[例えば、末梢血単核細胞(PBMC)のフィコール・ハイパック(Ficoll- Hypaque)精製によって(Bennett & Breit 1994, J Leukoc Biol., 56(3), 236-40)、またはSigma Accuspin(商標)システム(シグマ・アルドリッチ社)を使用して製造業者の説明書により、等]。
【0038】
本発明の一態様によれば、活性化NK細胞のレベルは、抗体を使用して測定される。
【0039】
本発明の特定の一態様によれば、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0040】
本発明の特定の一態様によれば、前記抗体は、例えば蛍光、放射標識、酵素、ビオチン、または前記抗体で標識された細胞を検出可能とするよう設計された任意の他の方法によりタグ付けされる。これらの技術は広く使用されており、当技術分野にて公知である。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、活性化NK細胞のレベルは、CD16、CD56および/またはCD69に特異的な抗体、好ましくはCD16、CD56およびCD69に特異的な抗体を使用することにより測定される。代替的に、前記活性化NK細胞のレベルは、更にCD3に特異的な抗体を使用することにより測定される。
【0042】
従って、例えば活性化NK細胞のレベルは、末梢血を収集し、細胞をモノクローナル抗体(例えば、抗−CD3、抗−CD4、抗−CD8、抗−CD19、抗−CD56、抗−CD69および/または抗−CD16)と共にインキュベートすることにより測定される。次いで、活性化NK細胞のレベルは、インストルメンテーションラボラトリー−ベックマンコールター社製の機器により、4つの異なる蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネートFITC、フィコエリトリンPE/RD1、ECD、PC5/PE)を認識するHe−Neレーザー光を用いて決定される。
【0043】
活性化NK細胞のレベルは、(i)CD16、CD56およびCD69細胞表面抗原を発現する末梢血リンパ球の百分率(%)、または(ii)全末梢血のマイクロリットル当たりの活性化NK細胞の絶対数のいずれかで表され得る。一態様によれば、前記末梢血リンパ球は、全血から単離され、分析時まで冷凍保管される。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「低いレベルの活性化NK細胞」は、(i)約5%未満、有利には約4.5%未満、好ましくは約4%未満、更により好ましくは約3.5%未満、更により詳細には約3.45%未満の活性化NK細胞のレベル、または(ii)全末梢血のマイクロリットル当たり約75未満、好ましくは約60未満、より好ましくは約50未満の活性化NK細胞、より詳細には約35未満の活性化NK細胞(好ましくは細胞集団中に存在するもの)のいずれかを意味する。
【0045】
本明細書において、用語「免疫原性組成物」「ワクチン組成物」、「ワクチン」または類似した用語は交換可能に使用することができ、患者の免疫系を刺激し/誘発し/増大させて、現在の病状を回復させ、または現在もしくは未来の害もしくは感染(ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染を含む)から保護しもしくはそれらを低減し、例えば腫瘍細胞の増殖もしくは生存を低減し、患者内での病原菌の複製もしくは拡散を低減し、または病状に関連した望ましくない症状(一つまたは複数)を検出可能に低減し、患者の生存時間を延長するのに適した薬剤を意味する。前記免疫原性組成物は、(i)少なくとも一つの標的抗原の全部もしくは一部、および/または(ii)インビボで少なくとも一つの異種ヌクレオチド配列、特に少なくとも一つの標的抗原の全部もしくは一部をコードする異種ヌクレオチド配列の全部もしくは一部を発現する少なくとも一つの組換えベクターを含んでもよい。代替的な態様によれば、本発明の免疫原性組成物は、(iii)少なくとも一種の免疫応答変更因子を単独で、または(i)および/または(ii)との組み合わせにて含んでなる。そのような免疫応答変更因子(IRM)の例としては、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,194,388号;米国特許第2006094683号;国際公開第2004039829号参照)、リポ多糖類、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸複合体(Kadowaki, et al.,10 2001, J. Immunol. 166, 2291-2295)、ならびに樹状細胞および/または単球/マクロファージからのサイトカイン産生を誘発することが知られるポリペプチドおよびタンパク質が挙げられる。そのような免疫応答変更因子(IRM)の他の例は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミンおよび1,2−架橋イミダゾキノリンンアミン等の小有機分子である(例えば、米国特許第4,689,338号;米国特許第5,389,640号;米国特許第6,110,929号;および米国特許第6,331,539号参照)。
【0046】
本明細書において、用語「抗原」は、免疫応答の標的であることが可能な、複合体抗原(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等)を含む任意の物質を指す。抗原は、例えば患者により生じる細胞介在性および/または液性免疫応答の標的であってもよい。用語「抗原」は、例えばウイルス抗原、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲン等の全部または一部を包含する:
【0047】
−ウイルス抗原としては、例えば肝炎ウイルスA、B、C、DおよびE、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、乳頭腫ウイルス、エプスタイン・バーウイルスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コックスサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パボウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、はしかウイルスからの抗原が挙げられ;公知のいくつかのウイルス抗原の非限定的な例としては、以下が挙げられる:tat、nef、gp120もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revまたはそれらの一部および/もしくは組み合わせ等のHIV−I由来の抗原;gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはそれらの一部および/もしくは組み合わせ等のヒトヘルペスウイルス由来の抗原、またはHSVlもしくはHSV2からのICP27、ICP47、ICP4、ICP36等の最初期タンパク質;gBまたはその誘導体等のサイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス由来の抗原;gp350またはその誘導体等のエプスタイン・バーウイルス由来の抗原;gp1、11、111およびIE63等の水痘帯状疱疹ウイルス由来の抗原;肝炎B、肝炎Cまたは肝炎Eウイルス抗原等の肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、HCVのenvタンパク質E1もしくはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ);ヒト乳頭腫ウイルス由来の抗原(例えば、HPV6、11、16、18、例えばL1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ);他のウイルス性病原体由来の抗原、例えば呼吸器多核体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、はしかウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NAもしくはMタンパク質、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ)等。
【0048】
−腫瘍特異的または腫瘍関連抗原としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。そのような癌のより詳細な例には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、および様々な種類の頭頸部癌、腎癌、悪性黒色腫、喉頭癌、前立腺癌が挙げられる。癌抗原は、潜在的に明らかに腫瘍特異的免疫応答を刺激し得る抗原である。これらの抗原のいくつかはコードされているが、必ずしも正常な細胞により発現されるわけではない。これらの抗原は、正常な細胞内で通常サイレントな(即ち、発現されない)もの、低いレベルでまたは分化の所定の段階でのみ発現されるもの、および胚および胎児抗原等、一時的に発現されるものとして特徴付けることができる。他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、変異体p53)、内部欠失または染色体転座から生じた融合タンパク質等の変異体細胞遺伝子によりコードされている。更なる他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスにより支持されるもの等のウイルス遺伝子によりコードされ得る。腫瘍特異的または腫瘍関連抗原のいくつかの非限定的な例としては、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連の抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)ならびにその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ζ鎖、腫瘍抗原のMAGE−ファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGE−ファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えば、MUC−1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100.sup.Pme1117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Igイディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質等のウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBV−コード化核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、ならびにc−erbB−2が挙げられる。
【0049】
−細菌抗原としては、例えば、TBおよびハンセン病を起こすマイコバクテリアからの抗原、肺炎球菌(pneumocci)、好気性グラム陰性菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌感染症(staphyloccocal infection)、連鎖球菌感染症、サルモネラ菌、クラミジア、ナイセリア(neisseriae)が挙げられる。
【0050】
−他の抗原には、例えばマラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、住血吸虫症、フィラリア症からの抗原が挙げられる。
【0051】
−アレルゲンは、感受性の患者においてアレルギー応答または喘息症状を誘発し得る物質を指す。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒、動物の鱗屑埃、真菌胞子および薬物(例えば、ペニシリン)を含み得る。天然の、動物および植物アレルゲンの例としては、以下の属に特異的なタンパク質が挙げられるが、これらに限定されるわけではない:イヌ属(Canis familiaris);ヒョウヒダニ属(例えば、Dermatophagoides farinae);ネコ属(Felis domesticus);ブタクサ属(Ambrosia artemiisfolia;ドクムギ属(例えば、Lolium perenneまたはLolium multiflorum);スギ属(Cryptomeria japonica);アルテルナリア属(Alternaria alternata);アルダー;ハンノキ属(Alnus gultinoasa);カバノキ属(Betula verrucosa);カシ属(Quercus alba);オリーブ属(Olea europa);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);オオバコ属(例えば、Plantago lanceolata);ヒカゲミズ属(例えば、Parietaria officinalis またはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella germanica);ミツバチ属(例えば、 Apis multiflorum);イトスギ属(例えば、Cupressus sempervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus macrocarpa);ビャクシン属(例えば、Juniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus ashei);クロベ属(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ属(例えば、Chamaecyparis obtusa);ゴキブリ類(例えば、Periplaneta americana);カモジグサ属(例えば、Agropyron repens);ライムギ属(例えば、Secale cereale);コムギ属(例えば、Triticum aestivum)/カモガヤ属(例えば、Dactylis glomerata);ウシノケグサ属(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(例えば、Poa pratensisまたはPoa compressa);カラスムギ属(例えば、Avena sativa);シラゲガヤ属(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(例えば、Anthoxanthum odoratum);オオカニツリ属(例えば、Arrhenatherum elatius);コヌカグサ属(例えば、Agrostis alba);アワガエリ属(例えば、Phleum pratense);クサヨシ属(例えば、Phalaris arundinacea);スズメノヒエ属(例えば、Paspalum notatum);モロコシ属(例えば、Sorghum halepensis);ならびにスズメノチャヒキ属(例えば、Bromus inermis)。
【0052】
特別な一態様によれば、前記抗原は、異種ヌクレオチド配列によりコードされ、組換えベクターによりインビボで発現される。
【0053】
特に好ましい態様において、本発明の異種ヌクレオチド配列は、一つまたはそれ以上の以下の抗原の全部または一部をコードする。HBV−PreS1 PreS2および表面envタンパク質、コアおよびpolHIV−gp120 gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef;HPV−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、L1、L2(例えば、国際公開第90/10459号、国際公開98/04705号、国際公開99/03885号参照);HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7(例えば、国際公開2004111082号、国際公開2005051420)号参照;Muc−1(例えば、米国特許第5,861,381号;米国特許第6,054,438号;国際公開第98/04727号;国際公開第98/37095号参照)。
【0054】
本発明の変形によれば、免疫原性組成物は、少なくとも2つの抗原、または少なくとも2つの抗原をコードする異種ヌクレオチド配列、または少なくとも2つの抗原をコードする少なくとも2つの異種ヌクレオチド配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0055】
別の特別な態様によれば、本発明の前記異種ヌクレオチド配列は、HPVのE6初期コード領域、HPVのE7初期コード領域、およびそれらの誘導体または組み合わせからなる群より選択されるHPV抗原(一つまたは複数)の全部または一部をコードする。
【0056】
本発明による組換えベクターによりコードされるHPV抗原は、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチドまたはHPV E6ポリペプチドとHPV E7ポリペプチドの両方からなる群より選択される。本発明は、p53に対する結合が変更されまたは少なくとも有意に低減される任意のHPV E6ポリペプチドの使用、および/またはRbに対する結合が変更されまたは少なくとも有意に低減される任意のHPV E7ポリペプチドの使用を包含する(Hunger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-15 4105 ; Crook et al., 1991, Cell 67, 547-556 ; Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446 ; Phelps et al., 1992, J. Virol. 66, 2148-2427)。本発明の目的に適した非発癌性HPV−16 E6変異体は、ほぼ118位からほぼ122位(+1は、HPV−16 E6ポリペプチドの最初のメチオニン残基を表す)に位置する一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が欠失され、特に残基118〜122(CPEEK)が完全に欠失されていることが好ましい。本発明の目的に適した非発癌性HPV−16 E7変異体は、ほぼ21位からほぼ26位(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)に位置する一つまたはそれ以上のアミノ酸残基が欠失され、特に残基21〜26(DLYCYE)が完全に欠失されていることが好ましい。好ましい態様によれば、本発明で使用する一つまたはそれ以上のHPV−16初期ポリペプチドは、MHCクラスIおよび/もしくはMHCクラスII提示を向上させ、ならびに/または抗HPV免疫を刺激するために更に修飾される。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパク質であり、膜提示によりその核タンパク質の治療的有効性の向上が可能となることが以前に示されている(例えば、国際公開第99/03885号参照)。従って、少なくとも一つのHPV初期ポリペプチドを該ペプチドが細胞膜に固着されるように修飾することが望ましい。膜固着(membrane anchorage)は、HPV初期ポリペプチドに膜固着配列を組み込むことにより、また天然ポリペプチドがそれを欠いている場合、分泌配列(即ち、シグナルペプチド)を組み込むことにより容易に達成することができる。膜固着配列および分泌配列は、当技術分野にて公知である。手短には、分泌配列は、提示される膜または分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)内への通過を開始させる。分泌配列は通常、15〜35の基本的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、これは次に特定のERに位置するエンドペプチダーゼにより除去されて成熟ポリペプチドを与える。膜固着配列は通常、本質的に非常に疎水性であり、ポリペプチドを細胞膜に固着する役割を果たす(例えば、Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY GarlandにおけるBranden and Tooze, 1991参照)。
【0057】
本発明の状況で使用され得る膜固着配列および分泌配列の選択肢は膨大である。それらは、例えば狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質、またははしかウイルスFタンパク質等の、膜固着配列および分泌配列を含んでなる任意の膜固着ポリペプチドおよび/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞ポリペプチドまたはウイルスポリペプチド)から得ることができ、または合成することができる。本発明に従って使用される各初期HPV−16ポリペプチドに挿入される膜固着配列および/または分泌配列は、共通のまたは異なる起源を有し得る。分泌配列の挿入に好ましい部位は、翻訳開始コドンの下流のN末端であり、膜固着配列の挿入に好ましい部位は、例えば終止コドンのすぐ上流のC末端である。
【0058】
本発明で使用されるHPV E6ポリペプチドは、はしかFタンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾されることが好ましい。場合により、または組み合わせにおいて、本発明で使用されるHPV E7ポリペプチドは、狂犬病糖タンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾されることが好ましい。
【0059】
組換えベクターの治療的有効性は、免疫賦活剤ポリペプチド(一つまたは複数)をコードする一つまたはそれ以上の核酸の使用によっても向上され得る。例えば、HPV初期ポリペプチド(一つまたは複数)をカルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 15 1035-1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)または例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(ETA(dIII))等の細菌毒素のトランスロケーションドメイン(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)等のポリペプチドに結合することが有利であり得る。
【0060】
別の好ましい態様によれば、本発明による組換えベクターは、上記に定義した一つまたはそれ以上の初期ポリペプチド(一つまたは複数)、より詳細にはHPV−16および/またはHPV−18初期E6および/またはE7ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0061】
別の特別な好ましい態様によれば、前記本発明の異種ヌクレオチド配列は、MUC1抗原またはその誘導体の全部または一部をコードする。
【0062】
別の特別な態様によれば、本発明の前記異種ヌクレオチド配列は、一つまたはそれ以上の以下の全部または一部をコードする:HCV envタンパク質E1もしくはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7またはそれらの誘導体。別の特別な態様によれば、前記本発明の異種ヌクレオチド配列は、一つまたはそれ以上の融合タンパク質をコードし、ここで構造は、少なくとも一つのNSポリペプチドが天然の構造とは異なる順で出現するという意味で天然ではない。従って、融合タンパク質がNS3ポリペプチド、NS4AポリペプチドおよびNS5Bポリペプチドを含んでなる場合、天然構造は、NS3がN末端に存在し、NS5BがC−末端に存在するNS3−NS4A−NS5Bであろう。対照的に、非天然構造は、NS5B−NS3−NS4A、NS5B−NS4A−NS3、NS4A−NS3−NS5B、NS4A−NS5B−NS3またはNS3−NS5B−NS4Aであり得る。より詳細には、本発明による融合タンパク質は、以下の少なくとも一つを含んでなる:
【0063】
・NS3ポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS4Aポリペプチド;
・NS5BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS3ポリペプチド;
・NS5BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS4Bポリペプチド;
・NS4BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS3ポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS4Aポリペプチド;および/または
・NS5BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS4BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して縮合したNS3ポリペプチド。
【0064】
そのような本発明の融合タンパク質の特定の部分において、各NSポリペプチドは、独立して天然であり、または修飾されていてもよい。例えば、NS4A−NS3部分に含まれるNS4Aポリペプチドは天然であり得る一方で、NS3ポリペプチドは、以下に記載する修飾の少なくとも一つを含んでなる。
【0065】
必要であれば、本発明で使用される核酸分子を、特定の宿主細胞または生物体、例えばヒト宿主細胞または生物体内で、標的抗原(例えば、HPV初期ポリペプチド(一つまたは複数))の高いレベルの発現を提供するよう最適化してもよい。典型的には、コドン最適化は、哺乳動物宿主細胞内で殆ど使用されないコドンに対応する一つまたはそれ以上の「天然」(例えば、HPV)コドンを、同一のアミノ酸をコードする、より頻繁に使用される一つまたはそれ以上のコドンで置き換えることにより実行される。これは従来の変異誘発または化学合成技術(例えば、合成核酸をもたらす)により達成することができる。発現の増大は、部分的な置き換えによっても達成できるため、殆ど使用されないコドンに対応する天然コドンの全てを置き換える必要はない。更に、最適化されたコドン使用の厳守からの多少の逸脱は、制限酵素部位(一つまたは複数)の導入を受け入れることにより為され得る。
【0066】
本明細書において、用語「組換えベクター」は、染色体外ベクター(例えば、エピソーム)、マルチコピーベクターおよび統合ベクター(即ち、宿主染色体に組み込まれた)を含む、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを指す。本発明の状況においては、遺伝子療法に使用されるベクター(即ち、宿主生物体に核酸を送達可能な)、および様々な発現系に使用される発現ベクターが特に重要である。好適な非ウイルスベクターとしては、pREP4、pCEP4(インビトロジェン社)、pCI(プロメガ社)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pVAXおよびpgWiz(ジーンセラピーシステム社;Himoudi et al., 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)等のプラスミドが挙げられる。好適なウイルスベクターは、様々な異なるウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルス等)に由来し得る。本明細書で使用されるように、用語「ウイルスベクター」は、ベクターDNA/RNA、およびそれらから生成されるウイルス粒子を包含する。ウイルスベクターは複製能を有してもよく、または複製欠損もしくは複製障害であるよう遺伝的に不能にされていてもよい。本明細書で使用されるように、用語「複製能を有する」は、特定の宿主細胞、例えば、腫瘍細胞)内でより良好にまたは選択的に複製するよう操作された、複製選択的なウイルスベクターおよび条件付きで複製するウイルスベクターを包含する。
【0067】
一態様において、本発明で使用される組換えベクターは、組換えアデノウイルスベクターである(再考には、"Adenovirus vectors for gene therapy", 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas, Academic Pressを参照されたい)。組換アデノウイルスベクターは、様々なヒトまたは動物源に由来することができ、アデノウイルス血清型1 から51までの任意の血清型を使用することができる。ヒトアデノウイルス2(Ad2)、5(Ad5)、6(Ad6)、11(Ad11)、24(Ad24)および35(Ad35)が特に好ましい。それらのアデノウイルスは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC、メリーランド州ロックビル)から入手可能であり、それらの配列、機構および製造方法を説明する多数の刊行物の患者が存在し、当業者がそれらを適用できるようにしている(例えば、米国特許第6,133,028号;米国特許第6,110,735号;国際公開第02/40665号;国際公開第00/50573号;欧州特許第1016711号;Vogels et al., 2003, J. Virol. 77, 8263-8271参照)。
【0068】
本発明で使用されるアデノウイルスベクターは、複製能を有し得る。当業者は複製能を有するアデノウイルスベクターの多数の例を容易に入手することができる(例えば、Hernandez-Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009- 2024 ; Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759 ; Alemany et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 723-727参照)。例えば、それらは野生型アデノウイルスゲノムからE1A CR2ドメインを削除することにより(例えば、国際公開第00/24408号参照)、ならびに/または天然E1および/もしくはE4プロモーターを、組織、腫瘍もしくは細胞状態特異的なプロモーターと置き換えることにより(例えば、米国特許第5,998,205号、国際公開第99/25860号、米国特許第5,698,443号、国際公開第00/46355号、国際公開第00/15820号および国際公開第01/36650号参照)、操作されてもよい。
【0069】
代替的に、本発明で使用されるアデノウイルスベクターは複製欠損である(例えば、国際公開第94/28152号;Lusky et al., 1998, J. Virol 72, 2022-2032参照)。好ましい複製欠損アデノウイルスベクターは、E1欠失がほぼ459位から3328位まで、またはほぼ459位から3510位まで延びる(GeneBankの受入番号M 73260にて開示されるヒトアデノウイルスタイプ5の配列、およびChroboczek et al., 1992, Virol. 186, 280-285を参照して)E1−欠損(例えば、米国特許第6,136,594号および米国特許第6,013,638号参照)である。クローニング能力は、アデノウイルスゲノムの追加の部分(一つまたは複数)(非必須E3領域または他の必須E2、E4領域の全部または一部)の削除により更に向上され得る。アデノウイルスベクターの任意の位置への核酸の挿入は、Chartier et al. (1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記載されているような相同組換えにより達成することができる。例えば、HPV−16 E6ポリペプチドをコードする核酸をE1領域と置き換えて挿入することができ、HPV−16 E7ポリペプチドをコードする核酸をE3領域と置き換えて挿入することができ、またはその逆も同様である。
【0070】
別の好ましい態様において、本発明で使用されるベクターは、ポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al. "Viruses in Human Gene Therapy" Ed J. M. Hos, Carolina Academic Press参照)。別の好ましい態様によれば、ベクターはワクシニアウイルスからなる群より選択され、好適なワクシニアウイルスには、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563 ; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス(Wyeth)株、およびMVAを含む、それら由来の高度に弱毒化された弱毒化されたウイルス(再考には、Mayr, A., et al., 1975, Infection 3, 6-14参照)およびその誘導体(例えば、MVAワクシニア株575(ECACC V00120707−米国特許第6,913,752号)、NYVAC(国際公開第92/15672号−Tartaglia et al., 1992, Virology, 188, 217-232参照)等)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。MVAゲノムの完全配列の決定と、コペンハーゲンVVゲノムとの比較により、MVAゲノム内に生じた7つの欠失(I〜VII)を正確に同定することができ(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)、これらのいずれも抗原コード核酸の挿入に使用することができる。ベクターは、特にフォウルポックス(例えば、TROVAC、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163参照);カナリアポックス(例えば、ALVAC、国際公開第95/27780号、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159- 163);ピジョンポックス;スワインポックス等のポックスウイルス科の任意の他のメンバーからも得ることができる。例として、当業者は、そのような異種ヌクレオチド配列、特に抗原をコードするヌクレオチド配列を発現可能なポックスウイルスに基づく発現ベクターの生成を記載する国際公開第92 15672号(参照により組み入れられる)を参照することができる。
【0071】
発現に必要な核酸および関連した調節エレメントをポックスウイルスゲノム内に挿入する基本的な技術は、当業者が利用できる多数の文書に記載されている(Paul et al., 2002, Cancer Gene Ther. 9, 470-477 ; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,772,848号;米国特許第4,603,112号;米国特許第5,100,587号および米国特許第5,179,993号)。通常、ウイルスゲノムと、挿入する核酸を支持するプラスミドとの両方に存在する重複配列(即ち、所望の挿入部位)間で相同組換えが進行する。
【0072】
本発明の抗原をコードする核酸は、組換えポックスウイルスが生存可能かつ感染性に留まるように、ウイルスゲノムの非必須座内に挿入されることが好ましい。非必須領域は、非コード化遺伝子間領域、または不活性化もしくは欠失がウイルス増殖、複製もしくは感染を有意に損なわない任意の遺伝子である。ウイルス粒子の生成中に、欠損機能がトランス内に供給されることを条件として、例えばポックスウイルスゲノム内で削除された配列に対応する相補配列を支持するヘルパー細胞株を使用することにより、必須ウイルス座内への挿入も想定することができる。
【0073】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを使用する場合、抗原コード核酸はチミジンキナーゼ遺伝子(tk)内に挿入されることが好ましい(Hruby et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415 ; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530- 537)。しかしながら、他の挿入部位、例えばヘマグルチニン遺伝子内(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L座内、u遺伝子内(Zhou et al., 10 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)、または、様々な自発性欠失もしくは操作された欠失が文献に報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端も適切である(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27 ; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395 ; Panicali et al., 1981,15 J. Virol. 37, 1000-1010 ; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836 ; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286 ; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)。
【0074】
MVAを使用する場合、抗原コード核酸は、同定された欠失I〜VIIの任意の一つ、およびD4R座内に挿入することができるが、欠失IIまたはIII内への挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038 ; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0075】
フォウルポックスウイルスを使用する場合、チロシンキナーゼ遺伝子内への挿入を考慮することができるが、抗原コード核酸は、ORF7〜9間に位置する遺伝子間領域内に導入されることが好ましい(例えば、欧州特許第314569号および米国特許第5,180,675号参照)。
【0076】
特別な一態様によれば、前記組換えベクターは、組換えプラスミドDNAまたは組換えウイルスベクターである。
別の特別な態様によれば、前記組換えウイルスベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。
別の特別な態様によれば、前記組換えウイルスベクターは、組換えワクシニアベクターである。
別の特別な態様によれば、前記組換えワクシニアベクターは、組換えMVAベクターである。
【0077】
本発明で使用される抗原コード核酸は、宿主細胞または生物体内でその発現に適した形態にあることが好ましく、即ち抗原をコードする核酸配列が宿主細胞または生物体内で、その発現に必要な一つまたはそれ以上の調節配列の制御下に配置されていることが好ましい。本明細書で使用されるように、用語「調節配列」は、核酸またはその誘導体の一つ(即ちmRNA)の複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または宿主細胞内への輸送を含む、所定の宿主細胞内での核酸の発現を可能にし、または発現に寄与し、または発現を調節する任意の配列を指す。当業者は、調節配列の選択が、宿主細胞、ベクター、および所望の発現のレベル等の因子に依存し得ることを理解するであろう。抗原をコードする核酸は、真核生物細胞内で抗原核酸の発現を指示する遺伝子発現配列に作動可能に結合している。遺伝子発現配列は、該配列が作動可能に結合する抗原核酸の効率的な転写および翻訳を促進するプロモーター配列、またはプロモーター−エンハンサーの組み合わせ等の、任意の調節ヌクレオチド配列である。遺伝子発現配列は、例えば構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター等の、哺乳動物またはウイルスプロモーターであってもよい。構成的哺乳動物プロモーターとしては、以下の遺伝子のためのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、b−アクチンプロモーターおよび他の構成的プロモーター。真核生物細胞内で構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復(LTR)および他のレトロウイルスからのプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチロシンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターは、誘導性プロモーターも含む。誘導性プロモーターは、誘発因子の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、金属イオンの存在下で、所定の転写および翻訳を促進するよう誘発される。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。一般に、遺伝子発現配列は、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等の、それぞれが転写および翻訳の開始に係わる5′非転写および5′非翻訳配列を含むべきである。特に、そのような5′非転写配列は、作動可能に連結した抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を有するであろう。遺伝子発現配列は場合により、所望によるエンハンサー配列または上流活性化因子配列を含む。ポックスウイルスベクター内で使用するのに好ましいプロモーター(下記参照)としては、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、初期と後期ポックスウイルスプロモーター間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097), Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているような合成プロモーターが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多数の種類の宿主細胞内で核酸の発現を指示する構成的プロモーターと、所定の宿主細胞内でのみ、または特定の事象もしくは外来因子(例えば、温度、栄養素添加物、ホルモンもしくは他のリガンドによる)に応答して発現を指示する構成的プロモーターの使用を包含する。好適なプロモーターは文献に広く記載されており、例えばRSV、SV40、CMVおよびMLPプロモーター等のウイルスプロモーターをより具体的に引用することができる。ポックスウイルスベクター内で使用するのに好ましいプロモーターとしては、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、初期と後期ポックスウイルスプロモーター間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al.(1997, J. Virological Method 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているような合成プロモーターが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0079】
当業者は、本発明の核酸分子の発現を制御する調節エレメントは、転写の適切な開始、調節および/または終止(例えば、polyA転写終止配列)、mRNA輸送(例えば、核極在化シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、および安定性(例えば、イントロンならびに非コード化5′および3′配列)、宿主細胞または生物体への翻訳(例えば、ペプチドシグナル、プロペプチド、三者間リーダー配列(tripartite leader sequence)、リボソーム結合部位、Shine−Dalgamo配列等)のための追加のエレメントを更に含んでなり得ることを理解するであろう。
【0080】
代替的に、本発明で使用される組換えベクターは、少なくとも一つのサイトカインをコードする少なくとも一つの核酸を更に含んでなり得る。好適なサイトカインとしては、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21)およびインターフェロン(例えば、IFNγ、INFα)が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、インターロイキンIL−2が特に好ましい。本発明の組換えワクチンがサイトカイン発現核酸を含む場合、前記核酸は一つもしくはそれ以上の抗原をコードする組換えベクター、または同一のもしくは異なる起源のものであってもよい独立した組換えベクターにより支持され得る。
【0081】
好ましい一態様によれば、本発明で使用される組換えベクターは、MUC1抗原、上記に列挙されている少なくとも一つのサイトカイン、および好ましくはインターロイキン、特にIL2の全部または一部をコードする。本発明で使用される好ましい組換えベクターは、MUC1抗原、上記に列挙されている少なくとも一つのサイトカイン、および好ましくはインターロイキン、特にIL2の全部または一部をコードするMVAである。
【0082】
上述した組換えウイルスベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子は、日常的プロセスにより作製することができる。例示的なプロセスは、
a.ウイルスベクターを好適な細胞株内に導入し、
b.前記細胞株を好適な条件下で培養して前記感染性ウイルス粒子を生成し、
c.生成された感染性ウイルス粒子を前記細胞株の培養物から回収し、
d.場合により前記回収した感染性ウイルス粒子を精製することを含んでなる。
【0083】
アデノウイルスベクターの増殖に適切な細胞は、例えば293細胞、PERC6細胞、HER96細胞、または国際公開第94/28152号、国際公開第97/00326号、米国特許第6,127,175号に開示されている細胞である。
【0084】
ポックスウイルスベクターの増殖に適切な細胞は、鳥の細胞であり、最も好ましくは受精卵から得られる鶏胚から準備された一次鶏胚線維芽細胞(CEF)である。
【0085】
感染性ウイルス粒子は、培養物上澄み、または溶解(例えば、化学的手段、凍結/解凍、浸透圧衝撃、機械的衝撃(mecanic shock)、超音波処理等による)後の細胞から回収されてもよい。ウイルス粒子は、プラーク精製(plaque purification)の連続ラウンドにより単離された後、当技術分野の方法(クロマトグラフ法、塩化セシウム又ショ糖勾配超遠心分離法)を用いて精製されてもよい。
【0086】
所望であれば、本発明による患者のヒト疾病ヒト疾病の治療のための方法または使用(即ち、少なくとも一種の抗原を含んでなる免疫原性組成物の投与による)は、選択された患者において、一つまたはそれ以上の従来の治療的モダリティ(例えば、放射線、化学療法および/または手術)と共に行ってもよい。複数の治療的手法の使用は、選択された患者に、より幅広い治療的介入を提供する。一態様では、本発明による患者のヒト疾病ヒト疾病の治療のための方法または使用は、外科的介入の前または後であってもよい。別の態様では、本発明による患者のヒト疾病の治療のための方法または使用は、放射線治療(例えば、γ線)の前または後であってもよい。当業者は、使用し得る適切な放射線療法プロトコールおよびパラメータを容易に定めることができる(例えば、Perez and Brady, 1992, Principles and Practice of Radiation Oncology, 2nd Ed. JB Lippincott Coを参照;当業者に容易に明らかであろう適切な適応および変更を用いて)。尚別の態様では、本発明の方法または使用は、一種またはそれ以上の薬物(例えば、ウイルス感染症、ウイルス関連の病態、癌等の治療または予防に都合よく使用される薬物)を用いた化学療法に関連する。
【0087】
従って、本発明は、化学療法薬により化学療法を受けている癌患者の治療を改善する方法であって、以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から患者を選択し、
−前記選択された患者に本発明による免疫原性組成物および化学療法薬を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0088】
従って、本発明は、化学療法薬による化学療法治療を受けている癌患者の治療を改善する方法であって、以下の工程:
−患者内のNK細胞のレベルを測定し、
−患者が、本発明の低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前記免疫原性組成物および化学療法薬を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0089】
一態様によれば、前記化学療法薬の投与は、前記免疫原性組成物の投与に先立って行われる。
別の態様によれば、前記化学療法薬の投与は、前記免疫原性組成物の投与後に行われる。
別の態様によれば、前記化学療法薬の投与は、前記免疫原性組成物の投与と同時に行われる。
一態様によれば、前記化学療法薬は、シスプラチンおよび/またはゲムシタビン、またはそれらの等価物である。
【0090】
本発明は更に、細胞傷害性薬物の細胞傷害有効性または放射線治療を改善する方法に関し、該方法は、低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から選択された患者を、本発明による免疫原性組成物で共治療することを含んでなる。
【0091】
別の態様において、本発明の方法または使用は、プライムブースト治療モダリティに従って行われ、該モダリティは、一種またはそれ以上のプライマー組成物と、一種またはそれ以上のブースター組成物との連続投与を含んでなる。一般に、プライミングおよびブースティング組成物は、共通の少なくとも一つの抗原ドメインを含んでなるまたはコードする異なる媒体を使用する。プライミング組成物が最初に宿主生物体に投与され、続いて1日〜12ヶ月の様々な期間の後に、ブースティング組成物が同一の宿主生物体に投与される。本発明の方法は、プライミング組成物の1〜10回の連続投与と、続くブースティング組成物の1〜10回の連続投与とを含んでなってもよい。望ましくは、注入の間隔は、1週間〜6ヶ月の程度である。更に、プライミング組成物およびブースティング組成物は、同一の部位に投与されても、または同一の投与経路もしくは異なる投与経路により別の部位に投与されてもよい。
【0092】
特別な一態様によれば、本発明は、前記ヒト疾病が癌である、上記に記載した方法に関する。
【0093】
好ましい態様によれば、前記癌は、例えば乳癌、結腸癌、腎臓癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、腎癌、悪性黒色腫、喉頭癌、卵巣癌、頸部癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、血液癌、胃癌、骨髄腫である。
【0094】
特別な一態様によれば、本発明は、前記ヒト疾病が感染症である、上記に記載した方法に関する。
【0095】
好ましい態様によれば、前記感染症は、例えばHIV、HCV、HBV、HPV等により誘発される疾病等のウイルス誘発疾病である。
【0096】
更なる態様において、特定の患者集団における患者のヒト疾病を治療する医薬を製造するための、標的抗原の全部または一部を含んでなる免疫原性組成物の使用を提供し、ここで前記集団の患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する。
【0097】
更なる態様において、特定の患者集団における患者内の免疫応答を誘発して(即ち、免疫応答を高めて)、患者のヒト疾病を治療する医薬を製造するための免疫原性組成物の使用を提供し、ここで前記集団の患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する。
【0098】
別の態様において、特定の患者集団における患者内の少なくとも一種の抗原に対する免疫応答を誘発して(即ち、免疫応答を高めて)、患者のヒト疾病を治療する医薬を製造するための免疫原性組成物の使用を提供し、ここで前記集団の患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する。
【0099】
別の態様において、特定の患者集団における患者内の標的抗原に対する免疫応答を誘発して(即ち、免疫応答を高めて)、患者のヒト疾病を治療する医薬を製造するための免疫原性組成物の使用を提供し、ここで前記集団の患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有する。
【0100】
別の態様において、特定の患者集団における患者内の免疫応答を誘発して(即ち、免疫応答を高めて)、患者のヒト疾病を治療する医薬を製造するための免疫原性組成物の使用を提供し、ここで前記集団の患者は、低いレベルの活性化NK細胞を有し、前記高められた免疫応答は、自然免疫応答である。
【0101】
特別な一態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、腫瘍特異的もしくは腫瘍関連抗原および/またはウイルス抗原に指向される。一態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、異なる抗原に指向される。特別な一態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、MUC1抗原の全部または一部に指向される。別の特別な態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、T細胞免疫応答であり、好ましくはCD8+(細胞傷害性Tリンパ球)免疫応答である。別の特別な態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、非特異的免疫応答である。別の特別な態様によれば、前記患者集団における前記「高められた免疫応答」は、自然免疫応答の刺激である。
【0102】
動物またはヒト生物体内への投与後の免疫応答の誘発または刺激の能力は、当技術分野にて標準的な多様なアッセイを用いてインビトロまたはインビボのいずれかで評価することができる。免疫応答の開始および活性化の評価に利用可能な技術の一般的記載に関しては、例えばColigan et al. (1992 and 1994, Current Protocols in Immunology ; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)を参照されたい。細胞免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む、活性化エフェクター細胞により分泌されるサイトカインプロファイルの測定(例えば、ELIスポットによるIL−10もしくはIFNγ産生細胞の定量化)、または免疫エフェクター細胞の活性化状態の測定(例えば、古典的な[H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイ)、または感作された患者における抗原特異的なTリンパ球に関するアッセイ(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的な溶解)、または蛍光MHCおよび/もしくはペプチド多量体(例えば、四量体)による抗原特異的なT細胞の検出により行われてもよい。液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合の競合により測定することができる(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照)。本発明の方法はまた、抗−抗原免疫応答の誘発または増強を反映する抗−腫瘍活性を測定するために、適切な腫瘍誘発剤(例えば、MUC1−発現TC1細胞)でチャレンジした動物モデルにおいて検証することができる。
【0103】
従って、本発明は更に、免疫原性組成物を投与することによるヒト疾病、例えば癌の治療を受けている患者の生存を延長する方法であって、以下の工程:
−低いレベルの活性化NK細胞を有する患者から構成される患者集団から患者を選択し、
−選択された患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0104】
本発明は更に、免疫原性組成物を投与することによる、ヒト疾病、例えば癌の治療を受けている患者の生存率を延長する方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞のレベルを測定し、
−患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0105】
本発明は更に、免疫原性組成物および化学療法薬(上記参照)を投与することによる、ヒト疾病、例えば癌の治療を受けている患者の生存率を延長する方法であって、以下の工程:
−患者内のNK細胞のレベルを測定し、
−患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に免疫原性組成物および化学療法薬を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0106】
別の態様によれば、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与により予防的または治療的免疫応答を発生し易いか否かを予測するためのバイオマーカーとしての活性化NK細胞の使用に関する。
【0107】
より詳細には、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与により予防的または治療的免疫応答を発生し易いか否かを予測するためのバイオマーカーとしての活性化NK細胞のレベルの使用に関し、ここで低いレベルの活性化NK細胞は、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大されていることが予測されることを示す。
【0108】
換言すれば、本発明は、患者が免疫原性組成物の投与後に、より長く生存し易いか否かを予測するためのバイオマーカーとしての活性化NK細胞のレベルの使用に関し、ここで低いレベルの活性化NK細胞は、患者が、より高いレベルの活性化NK細胞を有する治療された患者と比較して、より長い生存率を有することが予測されることを示す。
【0109】
従って、本発明は更に、化学療法薬による化学療法治療を受けている患者が、免疫原性組成物の投与後に予防的または治療的免疫応答を発生し易いか否か(例えば、より長く生存するために)を予測するためのバイオマーカーとしての活性化NK細胞のレベルの使用に関する。
【0110】
従って、本発明は更に、化学療法薬による化学療法治療を受けている患者が、免疫原性組成物の投与後に予防的または治療的免疫応答を発生し易いか否か(例えば、より長く生存するために)を予測するためのバイオマーカーとしての活性化NK細胞のレベルの使用に関し、ここで低いレベルの活性化NK細胞は、患者の予防的または治療的免疫応答の発生し易さが増大されていることが予測されることを示す。
【0111】
従って、本発明は、化学療法薬による化学療法治療を受けている癌患者の治療を改善する方法であって、以下の工程:
−患者内のNK細胞のレベルを測定し、
−前記患者が、本発明の低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前記免疫原性組成物および化学療法薬を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0112】
本発明は更に、免疫原性組成物を投与することによる、ヒト疾病、例えば癌の治療を受けている患者の生存を延長する方法であって、以下の工程:
−患者内のNK細胞のレベルを測定し、
−患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0113】
本発明は更に、免疫原性組成物および化学療法薬(上記参照)を投与することによる、ヒト疾病、例えば癌の治療を受けている患者の生存を延長する方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞のレベルを測定し、
−前記患者が低いレベルの活性化NK細胞を有する場合、患者に前記免疫原性組成物および化学療法薬を投与すること
を含んでなる方法に関する。
【0114】
本発明は、本明細書に記載した方法を実施するための、本明細書に提供した実施例から明らかであろう部品を含むキット(即ち、コンパニオンテスト)も提供する。部品からなるキット(一つまたは複数)は、活性化NK細胞の血清レベルの収集およびまたは測定のための試薬を含んでもよい。そのような試薬は、抗体を含んでもよい。キットは、生物学的サンプルを収集および/または処理する装置を更に含んでもよい。キットは、使用説明書、カットオフ値および/またはそれらの測定のための説明書、ならびにキットを使用して得られたデータを解釈する説明書も含むと思われる。
【0115】
特別な一態様によれば、前記部品からなるキット(一つまたは複数)は、上記に開示した、および/または下記の実施例部分に開示される免疫原性組成物を更に含んでもよい。
【0116】
本発明は更に、臨床試験と活性化NK細胞レベルを監視するコンピュータプログラムおよび/またはアルゴリズムを提供し、そのようなレベルが閾値レベルを上回るかまたは下回るかを決定し、および/または治療レジメンの変更を推薦して、患者の免疫療法に対する応答を改善する。コンピュータプログラムおよび/またはアルゴリズムは、例えばキットまたは機器の形態の必須のハードウェアと共に提供されてもよく、該キットまたは機器はまた生物学的サンプルを受容し、サンプル中に存在する活性化NK細胞の相対的なレベルを測定し得る。上述したコンピュータプログラムおよび/または機器は、適切な説明書、および抗体を含む試薬と共に、内科医または臨床検査室に提供されると思われる。
【0117】
本発明は例証様式にて記載されており、使用した用語は、記載された単語の本質に含まれることを意図し、限定するものではない。上記の教示を考慮すれば、本発明の多数の修正および変更が明らかに可能である。従って、本発明は、付属の請求項の範囲内において、本明細書に詳細に記載されるものとは異なる方法で実施できることを理解するべきである。
【0118】
上記に引用した全ての特許、刊行物およびデータベース事項は、それらの個々の特許、刊行物または事項の各々が参照により組み入れられることを明確に、かつ個別に示された場合と同一の範囲で、それらの全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【実施例】
【0119】
実施例1
免疫原性組成物、有名なワクチンTG4010を使用し、標準的な化学療法と組み合わせて、非小細胞肺癌(NSCLC)患者を治療した。
【0120】
TG4010は、IL2および腫瘍関連の抗原MUC1の両方を発現している組換え修飾ウイルスAnkara(MVA)である。
【0121】
148人の患者を、
−化学療法(d1にシスプラチン75mg/mおよび1日目と8日目にゲムシタビン1250mg/mを3週間毎に6サイクルまで)を単独で(Study Arm 2)、または、
−化学療法をTG4010(Study Arm 1)と一緒に
受容するよう無作為化した。
【0122】
腫瘍は6週間毎に評価された(WHO基準)。終点は、分析の処理を目的とする6ヶ月目における無進行生存(PFS)と、全生存であった。
【0123】
治療の前に血液サンプルを採取し、中央免疫学研究所(central immunology lab)へ直ちに出荷し、該研究所にて血液から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、分析まで冷凍保管した。
【0124】
PBMCはCD16、CD56およびCD69の発現に関して、それらの抗原に特異的なモノクローナル抗体(各々、IM0814、IM2073およびIM2656、全てベックマンコールター社より)を用いて、フローサイトメトリーにより評価された。これらの抗原を発現している細胞の割合は、評価された全リンパ球の%、またはPBMC集団中のCD16+ CD56+ およびCD69+ の数/全血として表すことができる。
【0125】
図1は、ベースラインで<3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球を有する患者[Arm 1(TG4010+化学療法)]が、TG4010ワクチンおよび化学療法の両方で治療された際、>3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球を有する患者(中間生存期間17.1ヶ月)よりも長く生存することを示す(中央生存期間=16.1ヶ月)。
【0126】
同様に、図2のデータは、患者が< または >35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl全血(PBMCを用いた測定値に基づき)に基づいて選択される場合に、同一の結果が達成されることを示す。<35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl全血(PBMCを用いた測定値に基づき)を有する患者は、≧35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/全血(PBMCを用いた測定値に基づき)を有する患者(中央生存期間=9.9ヶ月)よりも長く生存する(中央生期間=19.9ヶ月)。
【0127】
図3および図4のデータは、リンパ球上でのCD16、CD56およびCD69の発現に基づく患者の選択の効果が、ワクチンを受容している患者に限定されることを示す。図3は、ベースラインで< または ≧3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球を有する患者が、同一の生存予想値を有することを示す。図4は、ベースラインで35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl全血を用いた観察を示す。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】肺癌におけるワクチン免疫療法を記載する生存曲線:< または >3.45%の活性化NKを有する患者 グループ1:低いレベルの活性化NK細胞を有する患者におけるワクチン(即ち、免疫原性組成物)+化学療法。低いレベルは、末梢血中の<3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球と定義する。患者48人 グループ2:高いレベルの活性化NK細胞を有する患者におけるワクチン+化学療法。高いレベルは、末梢血中の>3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球と定義する。患者21人有意な差異、log rankによる:p=0.0018O 完了+打ち切り
【図2】肺癌におけるワクチン免疫療法を記載する生存曲線:< または >35の活性化NK/μl全血を有する患者。 グループ1:低いレベルの活性化NK細胞を有する患者におけるワクチン+化学療法。低いレベルは、<35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl末梢血と定義する。患者33人。 グループ2:高いレベルの活性化NK細胞を有する患者におけるワクチン+化学療法。高いレベルは、≧35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl末梢血と定義する。患者の22人。有意な差異、log rankによる:p=0.017O 完了+打ち切り
【図3】肺癌における化学療法を記載する生存曲線:< または >3.45%の活性化NKを有する患者 グループ1:低いレベルの活性化NK細胞を有する患者における化学療法単独(ワクチンなし)。低いレベルは、末梢血中の<3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球として定義する。患者53人。 グループ2:高いレベルの活性化NK細胞を有する患者における化学療法単独(ワクチンなし)。高いレベルは、末梢血中の>3.45%のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球として定義する。患者16人。有意な差異、log rankによる:p=0.30(統計的に有意ではない)O 完了+打ち切り
【図4】肺癌における化学療法を記載する生存曲線:< または >35の活性化NK/μl全血を有する患者。 グループ1:低いレベルの活性化NK細胞を有する患者における化学療法単独(ワクチンなし)。低いレベルは、<35のCD16+ CD56+ CD69+ リンパ球/μl末梢血として定義する。患者45人。 グループ2:化学療法単独(ワクチンなし)。患者16人有意な差異、log rankによる:p=0.08(有意ではない)O 完了+打ち切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性組成物の投与を含んでなる治療方法に対して患者が治療的に応答するか否かを試験するエクスビボ方法であって、以下の工程:
−患者から血液サンプルを取得し、
−活性化NK細胞のレベルを測定することを含んでなり、
ここで、低いレベルの活性化NK細胞は、患者が免疫原性組成物に対する予防的または治療的な免疫応答を生ずることを示す、方法。
【請求項2】
前記患者が化学療法薬でさらに治療される、請求項1に記載のエクスビボ方法。
【請求項3】
免疫原性組成物の投与により患者が予防的または治療的免疫応答を生じ易いか否かを予測するためのバイオマーカーとしての、活性化NK細胞のレベルの使用。
【請求項4】
免疫原性組成物の投与により患者が予防的または治療的免疫応答を生じ易いか否かを予測するためのバイオマーカーとしての、活性化NK細胞のレベルの使用であって、低いレベルの活性化NK細胞は、前記患者の予防的または治療的免疫応答の生じ易さが増大していることが予測されることを示す、使用。
【請求項5】
前記患者が化学療法薬でさらに治療される、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
化学療法薬で化学療法治療を受けている癌患者の治療を改善する方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞レベルを測定し、
−前記患者の活性化NK細胞のレベルが低い場合、患者に一種の免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる、方法。
【請求項7】
免疫原性組成物を投与することによる、ヒト疾病を治療されている患者の生存を延長する方法であって、以下の工程:
−患者内の活性化NK細胞レベルを測定し、
−前記患者の活性化NK細胞のレベルが低い場合、患者に前記免疫原性組成物を投与すること
を含んでなる、方法。
【請求項8】
前記患者が化学療法薬でさらに治療される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が癌を患っている、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が非小細胞肺癌または腎臓癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化NK細胞のレベルが約3.45%未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−525795(P2011−525795A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510891(P2011−510891)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003783
【国際公開番号】WO2009/152939
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】