説明

悪臭中和用のフマル酸のアミノアルキル置換エステルおよびアミド

本発明は、アミノアルキル置換フマル酸塩およびその悪臭中和剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭中和化合物、およびそれらを含有する組成物に関する。より具体的には、本発明は、特定のアミノアルキル置換フマル酸塩の悪臭中和剤としての使用に関する。
【0002】
悪臭は、不快な臭気であり、これらは空気中ならびに繊維、固体表面、皮膚、および毛髪などの基質(substrate)上で発生する。悪臭には、個人または環境のいずれかに起源がある。例えば、汗、尿、および大便の悪臭は個人が起源であり、これに対して厨房および調理の悪臭は環境が起源である。個人的悪臭は、繊維、毛髪、および皮膚上に容易に付着するのに対して、環境的悪臭も、これらの基質上に付着する傾向がある。
【0003】
アミン、チオール、硫化物、短鎖脂肪酸およびオレフィン酸、例えば脂肪酸は、汗悪臭、家屋悪臭、および環境悪臭において認められ、またその原因となっている代表的な化学物質である。これらの種類の悪臭としては、通常、トイレ臭および動物臭に存在するインドール、スカトール、およびメタンエチオール;尿に存在するピペリジンおよびモルホリン;厨房臭およびゴミ臭に存在するピリジンおよびトリエチルアミン;ならびに腋が(axilla)悪臭中に存在する3−メチル−3−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチルへキサン酸または3−メチル−2−ヘキサン酸などの短鎖脂肪酸が挙げられる。腋がにおいて見い出されている化合物は、例えば、参照により本明細書に組み入れてある、Xiao-Nong Zeng et al., Journal of Chemical Ecology, Vol. 17, No. 7, 1991 page 1469 -1492に記載されている。
【0004】
フマル酸エステルの化学反応による悪臭物質への結合能については長年知られている。例えば、米国特許第3077457号は、フマル酸ジブチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジゲラニル、フマル酸ジベンジルなどのフマル酸のジエステルを含む組成物を、空間中に噴霧することによる、空間の脱臭について記載している。これらの組成物は、タバコ煙臭および厨房臭を低減することがわかっている。空気を脱臭するためのC1−3ジアルキルフマラートおよびC2−3ジアルケニルフマラートの使用については、GB1401550に記載されている。いわゆる「スルフヒドリル反応物」、すなわちスルフヒドリル基と化学的に反応する化合物が、米国特許第5601809号に開示されている。この「スルフヒドリル反応物」の例としては、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチルおよびN−エチルマレイミドなどの化合物がある。これらの化合物は、一般に腋が臭に対して有効であることが記述されているが、悪臭に関与する個々の化合物に関する詳細は含まれていない。しかしながら、チオール、すなわちスルフヒドリル基を含む化合物だけでなく、例えば、Xiao−Nong Zengらが記述している多数の酸も、腋が悪臭に関与することはよく知られている。特定の芳香族不飽和カルボン酸エステルをフマル酸アルキルと組み合わせた悪臭中和剤としての使用が、WO02/051788に開示されている。当該技術において知られている化合物は、一定の悪臭を中和する能力を有するが、悪臭に対してさらに効果の大きい他の化合物に対する要求が依然として残っている。
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、悪臭を中和することのできる新しい部類の化合物を発見した。以前の文献には、アミノアルキル置換フマル酸塩、すなわち、複数のヒドロキシ基の少なくとも1個の水素が、第二級または第三級窒素原子を含む炭化水素基で置換されているか、または少なくとも1個のヒドロキシ基が、アルキルアミン基またはジアルキルアミン基によって置換されている、フマル酸の骨格を含む化合物の、悪臭中和剤としての使用については記述されていない。
したがって、本発明は、第一の観点では、アミノアルキル置換フマル酸塩の悪臭中和剤としての使用に関する。
【0006】
より具体的には、本発明は、式(I)のアミノアルキル置換フマル酸塩の悪臭中和剤としての使用に関する:
【化1】

式中、
Zは、−ORまたは−Y−(R−NRであり;
Rは、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、例えばペンチル、1,2−ジメチルプロピルおよびメチルエチル、好ましくはC−Cアルキル、例えばエチルおよびプロピル;直鎖もしくは分枝状C−C18アルコキシアルキル、例えばエトキシエチル、およびメトキシエチル;フェニル;直鎖もしくは分枝状C−C15フェノキシアルキル、例えばフェノキシエチル;または直鎖もしくは分枝状C−C16ベンゾイルオキシアルキル;
【0007】
は、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキル、または、シクロアルキル環が随意にC−Cアルキルで置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであるか;あるいは
は、少なくとも1個の酸素原子を含む直鎖もしくは分枝状C−Cアルキルであるか、少なくとも1個の酸素を含み、かつシクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C12シクロアルキル、または、少なくとも1個の酸素原子を含み、かつシクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであって;
およびRは、独立に、水素;フェニル;直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、例えばエチル、メチル、イソプロピル;または、少なくとも1個の酸素原子を含む直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;
【0008】
およびRは、独立に、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、好ましくはCからCアルキル、例えばメチルおよびエチル;または少なくとも1個の酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;あるいは
およびR、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、3〜6個の環原子を有する脂肪族複素環構造または芳香族複素環構造、例えばピペリジル、を形成しており;該環構造は、1個の酸素原子または追加の窒素原子を随意に含んでもよく、例えばピペラジル、イミダジル、またはモルホリジルであってもよく;ならびに、該環構造は、1または2以上の直鎖もしくは分枝状のC−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、またはC−Cアリール基を有していてもよく;ならびに
(a)nが1であるときには、Yは酸素またはNRであり、但し
は、水素、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキルであるか;あるいは
は、酸素原子で置換された直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、酸素原子で置換されたC−C12シクロアルキル、または酸素原子で置換されたアルキルシクロアルキルであり;
(b)nが2であるときには、Yは窒素である。
【0009】
特に好ましいのは、ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステル、ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル、3−[ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル、ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イル−エチル)エステル、ブト−2−エンジオール酸ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)エステル、およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステルから選択される、式(I)の化合物である。
好ましい一態様においては、本発明による式(I)の化合物は対称であり、すなわちZは−Y−(R−NRであり、かつR=R、R=Rである。
Rが直鎖もしくは分枝状アルキル基である、本発明による化合物が好ましい。
【0010】
本発明者らは、本発明による化合物は、−SH、−SH、−NHR、−NH、または−COOHから選択される官能基を含む悪臭化合物を、前記基との化学反応によって中和し、それによって悪臭を中和することができることを見出した。さらに、アミノアルキル置換フマル酸塩は、化学反応によりアンモニアと反応することができる。驚くべきことに、本発明の化合物は、悪臭化合物に対して、例えば、実施例に示すように、ジヘキシルフマラート(DHF:dihexylfumarate)よりもはるかに活性が強いことがわかった。すなわち、DHFで得られる悪臭低減と同等の低減を達成するのに、本発明の化合物では、より低い濃度しか必要としない。ジヘキシルフマラートは、すでに長年にわたり、悪臭中和剤として使用されており、したがって比較例として選択した。本発明の化合物および悪臭との反応から生じる化合物は、本質的に無臭である。
【0011】
「活性がある(active)」とは、悪臭化合物の%でのヘッドスペース濃度(headspace concentration)の低減を意味する。この低減は、本発明の悪臭中和化合物と悪臭化合物との化学反応によるものと考えられる。ヘッドスペースは、実施例により詳しく述べるように、GC−MSによる試験サンプルの設定体積のヘッドスペースを分析することによって分析した。
本発明による化合物は、消費者製品向けの化合物に直接的に混和するか、または式(I)の化合物を含む組成物、例えば香料などのさらなる添加物を含むアルコール溶液または水溶液などを混和し、次いで、それらを従来技術および方法を使用して消費者製品に混合することによって、広範な消費者製品に組み込むことができる。
【0012】
したがって、本発明は、さらに、式(I)の化合物を活性成分として含む組成物を製造する方法を提供する。本発明はさらに、前記化合物を活性成分として含む、消費者製品の製造方法を提供する。
効果的な悪臭中和に必要な本発明の化合物の量は、かかる化合物を組み込む製品の種類に依存する。それはまた、周囲条件、例えば湿度およびpHなどにも依存する。例えば、消臭スプレーまたは室内消臭スプレーとして使用する場合には、製品は、最終製品の約0.01〜約10重量%、好ましくは約0.1〜約1重量%を含むことができる。室内消臭フィルタ装置、すなわち調理レンジフード(cooker hood)に使用する場合には、化合物の量は、フィルタ重量の約0.1〜約20重量%としてもよい。
【0013】
本発明のさらに別の観点は、基質、例えば皮膚、髪、繊維などに悪臭中和効果を付与する方法であって、基質を、式(I)の化合物を含む消費者製品と接触させるステップを含む方法である。
本発明は、また、本発明のアミノアルキル置換フマル酸塩を含む消費者製品を、閉鎖空間、例えば室、クローゼット、箪笥、および引き出しの中に分散させる方法を含む。この方法は、消費者製品中に式(I)の化合物を組み込むこと、および有効な量の該消費者製品を、例えばスプレー、噴霧(atomising)および/または揮発(volatilising)によって空間に分散させることを含む。
【0014】
本明細書で使用する場合には、「消費者製品」には、例えば、化粧製品、脱臭剤、発汗抑止剤、およびホームケアおよびファブリックケア製品、例えば、エアフレッシュナー、表面清浄剤、洗剤、ファブリックコンディショナ、繊維用のリンスコンディショナおよび衣服(garments)、家具(upholstery)、カーテン、カーペット、吸収剤材料、例えばフィルタへの応用製品が含まれる。製品は、例えば、滴下またはスプレーによって表面に適用するための、液体形態;例えばパウダーまたはコンパクトパウダー、またはキャンドルの形態の固体形態;またはゲルなどの半固体形態とすることができる。
Zが−Y−(R−NR)であり、Yが酸素である、すなわち対称ジエステルである式(I)の化合物は、例えばFR1588375に記載されているように、触媒としてのFe(SOの存在下で、水を除去した状態で、無水マレイン酸と過剰の対応するアルコールを反応させることによって製造することができる。代替的に、塩基、例えばピリジンまたはN,N−ジエチルエタンアミンの存在下で、二塩化フマル酸を2当量のH−Y−R−NRと反応させる。
【0015】
本発明によって定義する、非対称ジエステル(3)は、対応するフマル酸モノエステル(1)を、塩化チオニル、三塩化亜リン酸、三塩化リン酸、または二塩化シュウ酸と反応させて、対応する塩化フマリル(2)を形成し、次いでこれを、スキーム1に示すように、塩基、例えばピリジンまたはN,N−ジエチルエタンアミンの存在下でH−Y−R−NRと反応させることによって得ることができる。また、モノエステル(1)は、無水マレイン酸のH−Zとの反応、および当業者には知られている条件下での、二重結合異性化によって製造することができる。
【0016】
スキーム1:
【化2】

次いで、本発明を、以下の非限定の実施例を参照してさらに説明する。
【0017】
実施例1:ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステル
2−[2−(ジメチルアミノ)−エトキシ]エタノール(13.35g、100mmol、1.9当量)および4−ジメチルアミノピリジン(50mg)を含むトルエン(80ml)の溶液に、フマル酸モノエチルエステルモノクロリド(8.50g、52mmol、1.0当量)を含むトルエン(20ml)の溶液を、23℃で25分間にわたって加える。温度は34℃まで上昇し、オレンジ色の懸濁液が形成される。室温で5時間攪拌の後、混合物を氷で冷却した飽和NaHCO水溶液に注ぎ、生成物をエチルアセテートで抽出する。有機層をHOで3度、次いでブライン(brine)で2度、洗浄する。次いで、MgSO上で乾燥させて、回転式エバポレーター内で濃縮する。残渣をメチルt−ブチルエーテル中に溶解し、その溶液にSiO(6.0g)を添加する。懸濁液を激しく振盪し、次いで濾過して、再び濃縮し、高真空下(23℃、0.05mbar)で乾燥する。これによって、生成物(6.71g、50%)を黄色液体として得る。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例2:ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル
2−[2−(ジメチルアミノ)−エトキシ]エタノール(6.65g、50mmol、2.5当量)および4−ジメチルアミノピリジン(11mg)を含むトルエン(20ml)溶液を−20℃に冷却する。
塩化フマリル(2.3ml、20mmol、1.0当量)および1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(5.0ml、40mmol、2.0当量)を含む別個のトルエン溶液(それぞれ25ml)を、シリンジポンプを介して同時に80分間にわたって滴下添加する。暗色の懸濁液が生成する。完全に添加後、冷却浴を取り除き、23℃で40分間、攪拌を続ける。活性炭(1.0g)を添加し、混合物を塩基性Alの短いパッド上で濾過し、この混合物をさらにトルエン/EtOAc(360ml)で洗浄する。溶液を真空(0.05mbar)で濃縮、乾燥して、黄色油(2.79g、40%)の生成物を得る。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例3:ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イルーエチル)エステル
実施例2に記述した全体手順に従って、4−ジメチルアミノピリジン(cat.)および1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(100mmol)の存在下で、4−(2―ヒドロキシエチル)−モルホリン(105ml)を塩化フマリル(50mmol)とトルエン中で反応させる。生成物は、メチルt−ブチルエーテルからの結晶化の後に、純粋結晶固体として得られた(収率:35%)。
【0022】
【表3】

【0023】
実施例4:ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル
実施例2に記述した全体手順に従って、4−ジメチルアミノピリジン(cat.)および1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(40mmol)の存在下で、N,N−ジメチルアミノエタノール(50mmol)を塩化フマリル(20mmol)とトルエン中で反応させる。生成物は、黄色油として得られる(収率:72%)。
【0024】
【表4】

【0025】
実施例5:3−[ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル
3,3’−イミノビス(N,N−ジメチル−プロピルアミン)(10.66g、55mmol)およびDMAP(54mg)をトルエン(60ml)に溶解する。この溶液に、フマル酸モノエチルエステルモノクロリド(8.15g、50mmol)をトルエン(20ml)に溶解した溶液を、シリンジポンプを介して20分間にわたり添加する。混合物を23℃で3時間、さらに攪拌し、次いで、氷と飽和NaHCO水溶液の混合物に注ぐ。生成物を、EtOAc(100ml)を用いて2度抽出して、有機層をブラインで2度洗浄し、有機層を合わせて、MgSO上で乾燥させる。粗製物(暗色油、2.80g)をメチルt−ブチルエーテルに懸濁させ、SiO(3g)を添加し、混合物を激しく振盪し、次いで濾過、濃縮し、0.01mbar/23℃で乾燥させる。生成物は、褐色油(1.95g、12%)として得られる。
【0026】
【表5】

【0027】
実施例6:チオール中和作用の定量モニタリング
23×75mmヘッドスペースバイアルに、0.20mlのMeOH/H(9:1)中の5mMの試験物質溶液、すなわち、DHF、ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステル(1)、ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル(2)、3−[ビスー(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル(3)、ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イルーエチル)エステル(4)、ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−プロピル)エステル(5)、およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル(6)をそれぞれ充填する。さらに、0.20mlのMeOH/HO9:1の空サンプルを準備する。次いで、ゴム隔壁を含む20mmアルミニウムシールでバイアルをシールし、隔壁を通したカニューレを介して以下に述べる硫黄悪臭混合物(0.20ml)を各サンプルに添加する。
【0028】
硫黄悪臭混合物(MeOH/HO(9:1)中)
濃度(mM)
メチルメルカプタン(A) 0.7
プロプ−2−オン−1−チオール(B) 1.0
1−プロパンチオール(C) 1.0

サンプルは、室温に2時間放置し、次いで、GC−MS装置に接続されたヘッドスペースオートサンプラーを使用して、ヘッドスペース分析に供する。サンプルごとに、250μlのヘッドスペースを、1:200分割比で、Chrompack PoraBOND Qカラム(Varian Inc.製)上に注入した。
【0029】
硫黄悪臭混合物の各単独化合物のピーク領域(MSイオン電流)を、ブランクサンプルからの対応する値と比較して、ヘッドスペース濃度の減少を計算した。これらの結果を以下の表1に記載されている。図1は、ブランクサンプル(1A)、DHFを充填したサンプル(1B)、および化合物8を充填したサンプル(1C)のヘッドスペースの典型的なGC−MSクロマトグラフを示す。
【0030】
【表6】

この実験は、ジアルキルアミノフマラートが、ジヘキシルフマラート(DHF)によりも、大幅に向上した中和作用を有することを示している。
【0031】
実施例7:汗酸中和作用の定量モニタリング
2チャンバサンプル(two chamber sample)を図2に示すように準備した。それは、外部収納としての実施例5に記述したヘッドスペースバイアル(1’)と、内部収納としての標準HPCLオートサンプラーバイアル(2’)とで構成されている。
表示の量のDHFまたは化合物8は、(CHCl溶液として適用され、蒸発させる)ビスコースフィルタ(viscose filter)(3’)に吸収される。次いで、50μgの3−メチルヘキサン酸が紙ディスク(4’)の上に吸収される(5mmφ、CHCl溶液として適用し、蒸発させる)。フィルタ(3’)を収納するネジキャップが、ヘッドスペースバイアル(1’)に配置された、HPLCバイアル(2’)上に緊密にねじ込まれる。ヘッドスペースバイアル(1’)は、ゴム隔壁(5’)を包含するアルミニウムシールで閉止される。サンプルは、16時間、室温で放置され、次いで、実施例5に記述するように、ヘッドスペース分析にかけられる。
【0032】
酸は、DHFまたはブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル(6)をコーティングしたフィルタ(3’)を通過して外側体積(6’)中に拡散しなくてはならない。結果を以下の表2に示す。
【0033】
表2.DHFおよびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル(6)の量の変化による、3−メチルヘキサン酸のヘッドスペース濃度の減少
【表7】

実験から、ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル(6)によって、低い濃度、すなわちジヘキシルフマラート(DHF)が悪臭(3−メチルヘキサン酸)の29%しか中和しない量においても、悪臭のある酸を「完全保持(complete retention)」することがわかる。「完全保持」とは、検出可能な量の酸がフィルタを通過しないことを意味する。
【0034】
実施例7:汗悪臭再構成に対する嗅覚評価
腋が悪臭再構成したエタノール溶液を、1×1cm綿スワッチ(swatch)(100μl、0.1重量%)に適用、次いで、50μlの試験化合物ブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−プロピル)エステル(5)およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−ジメチルアミノ−エチル)エステル(6)(1重量%エタノール溶液)を悪臭処理スワッチに処方する。悪臭強度は、20人の査定者のエキスパートパネルによって、LMS上で評価する。次いで、結果を、ブランクサンプルの悪臭に対する低減%で表す。ラベル付け絶対値尺度(LMS:Labeled Magnitude Scale)は、B.G.Greenらの、「Chemical Senses」、Vol.21、pp323−334、1996に記載されているように、その言語ラベルの疑似対数尺度を特徴とする、知覚強度の意味的尺度である。LMS上の言語ラベルの位置は、フルスケール長の割合として、検出困難:1.4、弱い:6.1、普通:17.2、強い:53.2、想像できる最強:100である。
【0035】
【表8】

この試験は、本発明の化合物を使用することによって、DHFと比較して、実質的に良好な「中和」が得られることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ブランクサンプル(1A)、DHFを充填したサンプル(1B)、および化合物8を充填したサンプル(1C)のヘッドスペースの典型的なGC−MSクロマトグラフを示す図である。
【図2】2チャンバサンプルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルキル置換フマル酸塩の悪臭中和剤としての使用。
【請求項2】
式(I):
【化1】

式中、
nは1または2であり;
Zは、−ORまたは−Y−(R−NRであり;
Rは、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、直鎖もしくは分枝状C−C18アルコキシアルキル、フェニル、直鎖もしくは分枝状C−C15フェノキシアルキル、または直鎖もしくは分枝状C−C16ベンゾイルオキシアルキルであり;
は、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキル、または、シクロアルキル環が随意にC−Cアルキルで置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであるか;あるいは
は、少なくとも1つの酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、少なくとも1つの酸素を含み、かつ、シクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C12シクロアルキル、または、少なくとも1つの酸素原子を含み、かつ、シクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであり;
およびRは、独立に、水素、フェニル、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、または少なくとも1つの酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;
およびRは、独立に、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、または少なくとも1つの酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;あるいは
およびR、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、3〜6個の環原子を含む脂肪族複素環または芳香族複素環構造を形成しており;該環構造は、1個の酸素原子または追加の窒素原子を随意に含むことができ;ならびに、該環構造は、1または2以上の直鎖もしくは分枝状のC−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、またはC−Cアリール基を任意に有していてもよく;ならびに
(a)nが1であるときには、Yは酸素またはNRであって、ここでRは、水素、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキルであるか;あるいはRは、酸素原子で置換された、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、酸素原子で置換されたC−C12シクロアルキル、または酸素原子で置換されたアルキルシクロアルキルであり;および
(b)nが2であるときには、Yは窒素である、
で表されるアミノアルキル置換フマル酸塩の、請求項1に記載の悪臭中和剤としての使用。
【請求項3】
Zが、−Y−(R−NRであり、かつR=R、R=Rである、請求項2に記載の式(I)で表されるアミノアルキル置換フマル酸塩の悪臭中和剤としての使用。
【請求項4】
アミノアルキル置換フマル酸塩が、ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル、3−[ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル、およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イル−エチル)エステルからなる群から選択される、請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
アミノアルキル置換フマル酸塩が、ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステルである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステル、ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル、3−[ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル、およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イル−エチル)エステルからなる群から選択される化合物。
【請求項7】
悪臭中和剤としてアミノアルキル置換フマル酸塩を含む、消費者製品。
【請求項8】
基質に悪臭中和効果を付与する方法であって、前記基質を、アミノアルキル置換フマル酸塩を含む消費者製品と接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
アミノアルキル置換フマル酸塩が、式(I):
【化2】

式中、
nは1または2であり;
Zは、−ORまたは−Y−(R−NRであり;
Rは、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、直鎖もしくは分枝状C−C18アルコキシアルキル、フェニル、直鎖もしくは分枝状C−C15フェノキシアルキル、または直鎖もしくは分枝状C−C16ベンゾイルオキシアルキルであり;
は、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキルまたは、シクロアルキル環が随意にC−Cアルキルで置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであるか;あるいは
は、少なくとも1つの酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、少なくとも1つの酸素を含み、かつシクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C12シクロアルキル、または、少なくとも1つの酸素原子を含み、かつシクロアルキル環がC−Cアルキルによって随意に置換されているC−C13アルキルシクロアルキルであり;
およびRは、独立に、水素、フェニル、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、または少なくとも1個の酸素原子を含む直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;
およびRは、独立に、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキル、または少なくとも1個の酸素原子を含む、直鎖もしくは分枝状C−C10アルキルであり;あるいは
およびR、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、3〜6個の環原子を含む、脂肪族複素環構造または芳香族複素環構造を形成しており;該環構造は、1個の酸素原子または追加の窒素原子を随意に含んでもよく;ならびに該環構造は、1または2以上の直鎖もしくは分枝状のC−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、またはC−Cアリール基を有していてもよく;ならびに
(a)nが1であるときには、Yは酸素またはNRであり、ここでRは、水素、直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、C−C12シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキルであるか;あるいはRは、酸素原子で置換された直鎖もしくは分枝状C−Cアルキル、酸素原子で置換されたC−C12シクロアルキル、または酸素原子で置換されたアルキルシクロアルキルであり;および
(b)nが2であるときには、Yは窒素である、
で表される化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アミノアルキル置換フマル酸塩が、ブト−2−エンジオール酸2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチルエステルエチルエステル、ブト−2−エンジオール酸ビス−[2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エチル]エステル、3−[ビス−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−カルバモイル]−アクリル酸エチルエステル、およびブト−2−エンジオール酸ビス−(2−モルホリン−4−イル−エチル)エステルからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)消費者製品にアミノアルキル置換フマル酸塩を組み込むこと;および
(b)有効な量の消費者製品を空間に分散させること
を含む、消費者製品を空間に分散させる方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−503941(P2007−503941A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525594(P2006−525594)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000525
【国際公開番号】WO2005/021051
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】