説明

情報ボード及び情報ボードシステム

【課題】映写手段を後側に配置するプロジェクター方式の情報ボードに、X,Y,Z軸方向の指示体の操作に伴う抵抗値を検知する従来の感圧抵抗膜方式センサを採用しようとすると、非透過性であったために表示できず、タッチパネルではZ軸方向の抵抗値が検知できないと共に全体として無色透明なので前側ではまぶしいだけとなることを解消する。
【解決手段】指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値を検知すると共に、見者側と反対側に配置された映写手段からの出力光が映写される情報ボード3について、光透過性でその透過率が20〜70%とした感圧抵抗シート3Aと、この感圧抵抗シート3Aの両面に各々ドットスペーサSを介して積層した透明電極シート3B,3Bとを有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子ペン、指、指し棒など接触させた部位を指示する指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値を検知すると共に、見者側と反対側に配置された映写手段からの出力光が映写されるリアプロジェクション用の情報ボードに関して、映写手段の出力光により見者がまぶしくならず、かつ明確に表示するできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、黒板に代わって、ボード上に様々なデータを映写しつつ該ボード上で使用する例えば電子ペン、指、指し棒など接触させた部位を指示する指示体の操作に伴った電気的変化を検知し、この検知結果を映写するデータに反映させる、いわゆる電子黒板と称される情報ボードシステムが普及しつつある。
【0003】
情報ボードシステムは、例えばパーソナルコンピュータなどの情報生成手段と、この情報生成手段で生成されたデータを出力光として映写する映写手段と、この映写手段の出力光が映写される情報ボードと、からなる。情報ボードは、情報生成手段と接続され、指示体の操作に伴う、X,Y,Z軸方向の抵抗値を検知し、これら検知した抵抗値のデータを該情報生成手段に対して出力する。
【0004】
上記構成の情報ボードシステムは、筆者が情報ボードの前側で該情報ボード上に指示体として例えば指で文字を書くと、指の移動量や押圧力といった操作に伴う抵抗値が該情報ボードで検知され、この検知結果が情報生成手段に出力され、該情報生成手段において例えば他のプレゼンテーションデータと該検知結果とから映写すべきデータを生成し、このプレゼンテーションデータと指で書いた文字のデータを出力光として映写手段から情報ボードの前側(筆者側かつ見者側)から映写する。
【0005】
上記情報ボードは、上記のとおり、指示体のX,Y軸方向の移動操作に関する抵抗値、Z軸方向の押圧操作に関する抵抗値、を各々検知する点では、いわゆる三次元センサ、特にこの種の場合は例えば特許文献1に示される感圧抵抗膜方式センサの技術が応用されている。以下、Z軸方向(シートの厚み方向)の押圧の値に応じてZ軸方向の抵抗値が変化するものを感圧抵抗膜方式センサという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3727642号公報
【0007】
特許文献1には、感圧抵抗シートと、該感圧抵抗シートをその厚み方向の両側から挟むように配置した、該感圧抵抗シートに向かった面に導電性を有する一対の導電性シートとを備えた触覚センサが示されている。また特許文献1における触覚センサを用いた応用装置としては、例えばロボット、介護用の椅子やベッドなどが挙げられている。
【0008】
特許文献1の触覚センサにおける上記感圧抵抗シートは、その面に沿うX軸方向とY軸方向に抵抗を有すると共に、その厚み方向の感圧に応じてZ軸方向にも抵抗を有するとされ、具体的には、カーボンを混入させたポリエチレンフィルムが記載されている。また、特許文献1において、感圧抵抗シートは(Z軸方向も含めて)X,Y軸方向にも所定の抵抗値が得られるならば、シリコンゴムと金属又はカーボン粒子からなる複合材料を用いたり、その他材料を使用しても構わないと記載されている。
【0009】
また、特許文献1において、導電性シートは、PET(PolyEthyleneTerephthalate)表面にアルミが蒸着されたアルミPET、PI(PolyImide)に導電膜を張ったフレキシブルプリント基板などを使用することが記載されている。
【0010】
ところで、本発明の対象用途である情報ボードシステムは、前記のとおり例えば特許文献1に開示されるような感圧抵抗膜方式センサが用いられるが、この感圧抵抗膜方式センサと情報ボードとの違いは、特許文献1では本来のセンサとして機能することのみが開示されているが、情報ボードにおいてはセンサとしての機能のみならず、表示機能をも要求される点である。特許文献1は、透過、非透過の透過機能について触れていない。
【0011】
従来の、映写手段が情報ボードの見者側及び筆者側(以下、これを前側という)に設ける情報ボードシステムでは、感圧抵抗膜方式センサに要求される表示機能を満たす条件としては、前側から映写される出力光を適度の反射率でもって反射させるので、非透過性の感圧抵抗膜方式センサの転用は容易である。
【0012】
ところが、従来の情報ボードシステムは、映写手段が前側に設けられるため、筆者が映写手段からの出力光を遮ってしまう、すなわち情報ボード上に影を作ってしまうという問題があった。
【0013】
それならば、映写手段を情報ボードに対して前側とは反対側(以下、これを後側という)に設けて、後側から情報ボードに向けて出力光を映写すればよいのであるが、そうすると、情報ボードが非透過の感圧抵抗膜方式センサの構成であると、次の不具合がある。
【0014】
すなわち、感圧抵抗膜方式センサは、一方面からの(又は表裏面の相対的な)X,Y,Z軸方向の感圧を想定し、かつ本来のセンサとしての機能だけを満たせばよいので、透過性(透光性、透明性)は何ら考慮する必要がなく、後加工が不要で調達が容易で安価なセンサ用の材料もまた非透過性(非透光性、非透明性)のものがほとんどで、結局のところ、情報ボードとして採用して後側に映写手段を設けても筆者を含め見者が映写された出力光を見ることができない。
【0015】
それでは、モニタ画面の前面に設けられた透明ないわゆるタッチパネル(タッチパッド)と称される技術を応用することも考えられるが、このタッチパネルは該パネルに接触の検知と、接触が検知されたX,Y座標位置からX軸方向、Y軸方向へ操作した際の電気的変化を検知するという二次元のものであるため、3次元の、特にZ軸方向の指示体の押圧力(量)を該パネルで検知することができず、押圧量を検知しようとすると、この押圧量を検知することのできる特別ないわゆる電子ペンが必要となり、指や指し棒では押圧量を検知することができない。
【0016】
また、タッチパネルは、モニタ画面の表示に影響を与えないようにほぼ無色透明で透過率としてはほぼ100%であるから、情報ボードとして転用したとしても、押圧量が検知できないことに加えて、映写手段からの出力光をそのまま透過してしまい、見者(や筆者)がまぶしいだけとなる。
【0017】
さらに、タッチパネルと非透過の感圧抵抗膜方式センサとを組み合わせて情報ボードを構成しようとしても、まず、タッチパネルのほぼ透明である点を感圧抵抗膜方式センサに採用しようとしても、また、感圧抵抗膜方式センサの3次元の抵抗値を検知する点をタッチパネルに採用しようとしても、いずれにおいても目的とするX,Y,Z軸方向の抵抗値を検知する情報ボードとする場合は感圧抵抗シートが必須となり、この感圧抵抗シートが非透過性であることから映写手段を後側に配置する情報ボードとすることが困難である。
【0018】
つまり、タッチパネルの概略的な構成は、感圧抵抗膜方式センサの構成において感圧抵抗シートを省略したような構成である。換言すると感圧抵抗膜方式センサには、タッチパネルのようにほぼ無色透明な導電性シートが採用され得るということになる。そして、感圧抵抗膜方式センサの導電性シートをタッチパネルのようにほぼ無色透明なものとしても、結局のところ感圧抵抗シートが非透過性であるために全体として非透過性となり、後側に映写手段を設けて情報ボードとして採用することができないのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
解決しようとする問題は、従来の感圧抵抗膜方式センサでは感圧抵抗シートが非透過性であったために映写手段を後側に配置しても前側で見ることができず情報ボードとして機能しない点、タッチパネルではZ軸方向の抵抗値が検知できない点及び全体として無色透明なので後側に映写手段を配置した場合に前側ではまぶしいだけとなる点、並びに従来の感圧抵抗膜方式センサとタッチパネルとを組み合わせても感圧抵抗シートが非透過性なために全体として不透明となり後側に映写手段を配置して使用する情報ボードにはできない点、である。
【0020】
本発明の目的は、特許文献1におけるセンサ応用技術で、感圧抵抗シートを透過性のあるシートとした情報ボードシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記問題を解決するために、本発明は、指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値を検知すると共に、見者側と反対側に配置された映写手段からの出力光が映写されるリアプロジェクション用の情報ボードにおいて、光透過性でその透過率が20〜70%の感圧抵抗シートと、この感圧抵抗シートの両面に各々ドットスペーサを介して積層された透明電極シートと、を有することを主要な構成とする。
【0022】
また、本発明の情報ボードシステムは、本発明の情報ボードと、この情報ボードを介した見者側とは反対側に配置される映写手段と、情報ボードと映写手段とに接続され、指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値に基づいて映写手段から出力される映写用データに変換する情報生成手段と、を備えることを主要な構成とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の情報ボード及び情報ボードシステムは、感圧抵抗シートの透過率が20〜70%であることから、映写手段を後側に配置して使用しても該映写手段の出力光が直接的に見者や筆者の目に入らずまぶしくなることがなく、また、情報ボード上に筆者が影を作ることもないので、該情報ボード上の情報が見者に見やすくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の情報ボードを採用した本発明の情報ボードシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の情報ボードの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の情報ボードは、以下の形態で実施可能である。図1に示すように情報ボードシステム1は、指示体PのX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値を検知すると共に、後側(見者側と反対側)に配置された映写手段2からの出力光が映写される情報ボード3と、映写手段2と情報ボード3とに接続され、情報ボード3から出力される指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値に基づいて映写手段2へ出力する映写用データに変換して出力光の情報を生成する情報生成手段4と、を備えている。
【0026】
ここで、指示体Pは、例えば指や指し棒でもよく、また、情報生成手段4に接続されて該情報生成手段4と協働する何らかの機能を有する電子ペンでもよい。すなわち、情報ボード3は、それ自体にX,Y,Z軸方向の抵抗値を検知する構成とされているから、指示体Pとしては該情報ボードに接触させて操作するものであれば何でも採用できる。
【0027】
映写手段2は、本例ではリアプロジェクション用の、つまり出力光を左右反転させずにそのまま正投影するものが用いられる。これに対して通常の(情報ボードの前側に配置する)プロジェクターは、予め出力光を左右反転させるものが用いられる。
【0028】
情報生成手段4は、本例では、パーソナルコンピュータを想定している。この情報生成手段4から映写手段2へは、パーソナルコンピュータの付属モニタに出力される信号が別ラインで出力される。一方、情報ボード3から情報生成手段4へは、パーソナルコンピュータの付属入力デバイスの代わりとして該情報ボード3上の指示体Pの操作に伴う抵抗値という電気信号が入力される。
【0029】
情報ボード3は、光透過性でその透過率が20〜70%とされた感圧抵抗シート3Aと、この感圧抵抗シート3Aの両面に各々ドットスペーサSを介して積層された一対の透明電極シート3B,3Bと、を有している。
【0030】
感圧抵抗シート3Aは、平面方向であるX,Y軸方向に抵抗を有すると共に、厚み方向であるZ軸方向にも抵抗を有し、この電気的特性を有する詳細構成としては特許文献1における開示内容と同様であり、概略としては図示しないが例えば後述するように構成されている。
【0031】
本願の感圧抵抗シート3Aは、特許文献1におけるセンサを、情報ボードシステム1の情報ボード3に特化して使用可能な構成とすべく透過率が20〜70%としていることにある。
【0032】
感圧抵抗シート3Aは、特許文献1における電気的特性を損なうことなく、かつ透過率20〜70%の条件を満たすべく、例えば基材として元来的に透過性を有するポリエステル生地材料にCNT(CarbonNanoTube)を含有した薄灰色のインクをコーティングして構成する。なお、このとき、基材に対するCNTインクのコーティング厚みや回数を電気的特性を損なわないように調整して透過率の条件を満たすようにしている。
【0033】
また、感圧抵抗シート3Aは、基材として、ポリエステル生地の代わりに絹の生地、綿の生地、ナイロン生地等の材料も採用でき、さらに、生地材料以外にはマットフィルム、ゴムシート等、元来的に透過性で白に近い色あるいは薄い色を有すると共に0.05〜2.0mm程度の厚みを有するものであれば採用できる。
【0034】
さらに、上記感圧抵抗シート3Aの基材にコーティングするインクは、CNTだけでなく、透明性の導電性ポリマー、グラファイト、ITO(IndiumTinOxide)粉末を含有したものも採用できる。
【0035】
感圧抵抗シート3Aを上記のように構成することで、元来的に導電性を有しない透過性基材に対して、電気的特性を持たせることができると共に、透過率の条件を満たすようにすることができるようになる。
【0036】
感圧抵抗シート3Aの透過率を20〜70%とする理由について説明する。透過率は、マクベス透過濃度計TD904で測定した値である。反射率はマクベス反射濃度計RD−19で測定した値である。吸収率は全体光100%より反射率%と透過率%を差し引いた値である。
【0037】
本発明の情報ボード3は、後側に配置した映写手段2からの出力光を映写して、前側に位置する見者や筆者が見る構成であるが、本願発明者等の研究では、情報ボード3全体としての透過率が極端に高い、例えば透過率100%では、見者は光源としての映写手段2の出力光そのものを見ることになり、まぶしいだけであることを知見した。
【0038】
情報ボード3の透過率は、感圧抵抗シート3A、ドットスペーサS、透明電極シート3B,3B、という共に透過率100%ではない構成を積層する関係で、およそ90%より高くなることはあり得ず、その一方で、前記積層する関係で極端に透過率が低くなることはあり得る。なお、本願発明者等の研究では、情報ボード3としての実用透過率の下限値は、後述のとおり10%であることを知見している。
【0039】
したがって、感圧抵抗シート3Aは、情報ボード3として後に透明電極シート3B,3B及びドットスペーサSが積層されることを見越して、透過率の下限値を20%としており、20%より低いと、情報ボード3としての全体の透過率が低くなる可能性があり、映写手段2からの出力光が遮られ、映写された像の明るさが暗く、使用環境が明るい部屋などであると前側の見者や筆者が映写された像を認識しにくくなる。
【0040】
また、感圧抵抗シート3Aの透過率が20%より低いということは、例えば本例ではCNTインクのコーティングの厚みが厚い又は回数が多いことを意味するから、電気特性として過剰な検知反応による誤動作を生じる可能性がある。
【0041】
一方、感圧抵抗シート3Aは、情報ボード3として後に透明電極シート3B,3B及びドットスペーサSが積層されることを見越して、透過率の上限値を70%としており、70%より高いと、情報ボード3としての全体の透過率がさほど低くならない可能性があり、透過率が高いと、光源としての映写手段2の出力光が見えるだけとなり、まぶしくかつ映写された像の全体が認識しにくくなる。
【0042】
また、感圧抵抗シート3Aの透過率が70%より高いということは、例えば本例ではCNTインクのコーティングの厚みが薄い又は回数が少ないことを意味するから、必要とする電気特性を得られず、この場合も誤動作を生じる可能性がある。
【0043】
なお、感圧抵抗シート3Aに電気的特性を持たせるための概略構成は次のとおりである。感圧抵抗シート3Aの周辺部には、X方向に電流を流すための対をなす第1電極部と、Y方向に電流を流すための対をなす第2電極部とが設けられる。また、感圧抵抗シート3Aの4隅部には、A電極とB電極とC電極とD電極とがそれぞれ設けられる。
【0044】
対をなすうちの、一方の第1電極部はA電極とC電極とで構成され、他方の第1電極部がB電極とD電極とで構成される。また、対をなすうちの、一方の第2電極部が、A電極とB電極とで構成され、他方の第2電極部が、C電極とD電極とで構成されている。
【0045】
透明電極シート3B,3Bは、感圧抵抗シート3Aの厚み方向の表裏各面に、後述のドットスペーサSを介してそれぞれ設けられ、感圧抵抗シート3AのZ軸方向の抵抗に対して電流を流す電極として機能させる構成とされている。そして、情報ボード3における感圧抵抗シート3Aの上記条件を満たす場合の透明電極シート3B,3Bは、情報ボード3全体として感圧抵抗シート3Aの透過率の上記範囲内となる無色透明の例えば次の構成とすればよい。
【0046】
透明電極シート3B,3Bは、例えば本例では、基材となるポリエステルフィルム(透明=透過率ほぼ100%)に格子状の金属パターンを設けて導電性を持たせ、このときの該透明電極シート3B,3Bの透過率が約75〜80%のものを採用している。このとき、上記条件範囲内の感圧抵抗シート3Aを含む情報ボード3全体としての透過率は、該感圧抵抗シート3Aの透過率の条件範囲内にあるので、透明電極シート3B,3Bが情報ボード3の表示機能を損うことがない。
【0047】
また、透明電極シート3B,3Bは、情報ボード3全体の透過率が感圧抵抗シート3Aの透過率の範囲外とならないのであれば、上記の構成の他、基材をPIとして、この基材に格子状パターンの導電膜を設けたフレキシブルプリント基板を採用してもよい。
【0048】
ドットスペーサSは、情報ボード3における前側の透明電極シート3Bから押圧がかからないとき、透明電極シート3B,3B間を絶縁状態にするためのものであり、例えば数ミリから数十ミクロンの球状の樹脂でなり、透明電極シート3B,3Bの面に対して均一的に配置されて設けられる。
【0049】
上記構成の情報ボード3による指示体Pの操作に伴う抵抗値の検知原理については、特許文献1に詳細に説明されているので(本発明では、電気的特性に関しては特許文献1と同様であると共に電気的特性に関する点を特徴としていないので)割愛し、以下に本発明の情報ボードシステム1及び情報ボード3のさらに別の構成について説明する。
【0050】
例えば情報ボード3全体に関しては、感圧抵抗シート3Aの両面にドットスペーサSを介して透明電極シート3B,3Bを積層した状態での透過率が10%以上となる構成としてもよい。
【0051】
この場合、感圧抵抗シート3Aの透過率は上記のとおり20〜70%の範囲内であることは必須であるが、情報ボード3の全体の透過率を、本願発明者等が知見した実用透過率の下限値である10%以上とし、情報ボード3をそのように構成することで、情報ボード3全体の表示の品質が低下することを抑制できる。
【0052】
すなわち、(感圧抵抗シート3Aの透過率が20〜70%であって)情報ボード3全体の透過率が10%以上であるならば、必然的に透明導電性シート3B,3Bの、基材とする材料と導電材料及びドットスペーサSの割合や平均間隔が考慮、調整されることとなり、電気的特性を損なうことなく、映写された像がまぶしくないと共に見やすくなる。
【0053】
さらに、情報ボード3の別の態様としては、感圧抵抗シート3Aについて、反射率が60%以下でヘイズ値が60%以上の基材に対して透明導電剤を設けてなる構成としてもよい。
【0054】
この場合、感圧抵抗シート3A全体としての透過率は上記のとおり20〜70%を満たすことは必須であるが、特に前記透過率の条件を満たすために、採用する基材について規定することで、前記範囲内で同じ透過率の感圧抵抗シート3Aであっても、さらにまぶしくなくかつ見やすくなる。
【0055】
感圧抵抗シート3Aの基材の反射率は、マクベス反射濃度計RD−19を用いて測定した数値である。一方、感圧抵抗シート3Aの基材のヘイズ値とは、くもり価と称され、光がどの程度散乱して透過するかを表し、JIS K 7361−1のヘイズ測定器(スガ試験機製 ヘイズメーター:HGM−2B)により測定した数値である。
【0056】
感圧抵抗シート3Aの基材の反射率が60%より高い場合、基材の透過率が40%より低くなり画面が暗くなる。画面を明るくするためにCNTインクのコーティングの厚みが薄く又は回数を少なくして、吸収率を低くすると必要となる電気特性を得ることができない。
【0057】
また、感圧抵抗シート3Aの基材のヘイズ値が60%より低いと、基材で光が散乱しにくいことを意味するから、光の透過を前提とする本発明においては、散乱しないそのままの映写手段2の出力光を見者が見ることになり、まぶしいだけとなると共に、輝度斑が激しくなる。
【0058】
そして、感圧抵抗シート3Aの基材の、反射率が60%より高くて、ヘイズ値が60%より低いと、全体としては輝度の低い(暗い)散乱の少ない出力光を見者が見ることとなり、明確に表示させることができない。
【0059】
さらに、感圧抵抗シート3Aの基材が、条件範囲外にあることに起因した全体が暗くなる点を、それ以上暗くならないように抑制しようとすると、どうしても例えばCNTインクのコーティングの厚みを薄く又は回数を極端に少なくする必要が生じるから、必要となる電気特性を得ることができない可能性もある。
【0060】
また、透明電極シート3Bに関する別の構成としては、表面抵抗値が感圧抵抗シート3Aの表面抵抗値の下限値より低く透過率が60%以上とされているものを採用することで、良好な電気特性を得られると共に、より明確に表示させることができるようになる。
【0061】
例えば、本例における感圧抵抗シート3AはXY方向の表面抵抗値が200〜数十kΩ/m2 の抵抗値で厚さ方向(Z軸方向)の抵抗値は強い圧力(指圧500g)がかかったときには抵抗値が低く(200Ω)なり、弱い圧力(指圧50g)がかかったときには抵抗値が高く(2000Ω)なる。なお、Z軸方向の抵抗値の測定方法は、抵抗膜を透明金属格子電極で上下にはさみ、指先で500g及び50gの加重をかけたときの透明金属格子電極間の抵抗値を測定することで行った。
【0062】
このとき、透明電極シート3Bの表面抵抗値が感圧抵抗シートの表面抵抗値の下限値と同等(例えば本例では200Ω/m2 )であると、この透明電極シート3B自体の抵抗値であるのか、弱い圧力がかかったのか、の区別が付かなくなり、誤検知を生じる可能性がある。
【0063】
そして、透明電極シート3Bの表面抵抗値を、感圧抵抗シート3Aの表面抵抗値の下限値より低くする場合、導電性を良好にする必要があり、このようにしようとすると、例えば基材上に設けた格子状の金属パターンの面積を増加させることになる。当然のことながら、金属パターンの面積が増加すれば、透過率は低くなり、感圧抵抗シート3Aの透過率が20〜70%を満たしても、情報ボード3としての透過率は金属パターンの面積が増加した該透明電極シート3Bにより低下することとなる。
【0064】
したがって、透明電極シート3Bは、電気特性と透過率とのバランスを考慮して、感圧抵抗シート3Aの表面抵抗値の下限値より低くすると共に、透過率は60%以上を維持するようにしており、こうすることで、より確実に動作させることができると共に、見者がまぶしくなく、明確に映写されることとなる。
【0065】
以上の構成の本発明の情報ボードシステム1及び情報ボード3は、図1に示すように、例えば、指示体Pとして指で強く押して操作した部分は、該情報ボード3において高い抵抗値が検知され、情報生成手段4でその抵抗値を太い線で表示する情報の信号に変換すると共に情報生成手段4にて用意した例えば画像のデータを映写手段2に出力し、情報ボード3の後側に配置した映写手段2から出力光が映写される。
【0066】
このとき、例え見者が映写手段2の光源と、情報ボード3を介して一直線上にあっても、本発明の情報ボード3であれば、まぶしいことはなく、また、該情報ボード3が全体的に明るいので表示された像を明確に見ることができる。筆者もまた同様に、見者より映写手段2に近い位置にあってもまぶしいことはなく、明確に像が表示されているから、操作が確実に行える。
【符号の説明】
【0067】
1 情報ボードシステム
2 映写手段
3 情報ボード
3A 感圧抵抗シート
3B 透明電極シート
S ドットスペーサ
4 情報生成手段
P 指示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値を検知すると共に、見者側と反対側に配置された映写手段からの出力光が映写されるリアプロジェクション用の情報ボードにおいて、光透過性でその透過率が20〜70%の感圧抵抗シートと、この感圧抵抗シートの両面に各々ドットスペーサを介して積層された透明電極シートと、を有したことを特徴とする情報ボード。
【請求項2】
感圧抵抗シートの両面にドットスペーサを介して透明電極シートを積層した状態での透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1記載の情報ボード。
【請求項3】
感圧抵抗シートは、反射率が60%以下でヘイズ値が60%以上の基材に対して透明導電剤を設けてなることを特徴とする請求項1又は2記載の情報ボード。
【請求項4】
透明電極シートは、表面抵抗値が感圧抵抗シートの表面抵抗値の下限値より低くされると共に、透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報ボード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの情報ボードと、この情報ボードを介した見者側とは反対側に配置される映写手段と、前記情報ボードと前記映写手段とに接続され、指示体のX,Y,Z軸方向の操作に伴う抵抗値に基づいて前記映写手段から出力される映写用データに変換する情報生成手段と、を備えたことを特徴とする情報ボードシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−175372(P2011−175372A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37727(P2010−37727)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業「大型表示パネル用3Dセンサーの高精細化・高機能化」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505091905)ゼネラルテクノロジー株式会社 (117)
【出願人】(506183775)有限会社イーダブルシステム (2)
【Fターム(参考)】