説明

情報ロケータ

【課題】複数の異なる環境に質問して、前記環境内のオブジェクトを捜し、前記オブジェクトの前記環境内でのより正確な位置を定めるためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】複数のトランシーバが各環境内に配置され、制御ユニットが各トランシーバを選択的に動作させるために設けられる。識別タグは、前記オブジェクトに付され、選択されたトランシーバからの質問信号の送信は、非可聴高周波数で行われる。次に、前記タグは、前記質問信号に応答してリターン信号を前記トランシーバを介して前記制御ユニットへ返送する。前記タグと電子的に相互作用するハンドヘルド・モバイル・ロケータによって前記環境の追跡サーチを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大まかにいえばオブジェクトを捜すためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、多数の異なる環境のいずれかに、または特定の環境内での多数の異なる位置のいずれかにあるオブジェクト(ターゲット)を捜すためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、異なる環境を同時にまたは順次サーチしてオブジェクト(ターゲット)の一つの環境内での特定の位置を突き止めるためのシステムおよび方法として有用であるが、それに限られない。
【背景技術】
【0002】
何かを紛失もしくは置き忘れると、それを見つけるのに時間がかかることが多く、結果的にいらいらする。しかも、紛失した物品がオペレーションに必須のツールであれば、そのサーチに費やす間、そのオペレーションが妨げられる。緊急の場合、物品(物)のサーチに時間を浪費することは許されない。少なくとも、それは不適当である。
【0003】
数学的観点からは、置き忘れや紛失等、位置が未知の何かを見つけるのは簡単なことである。既知のポイントからターゲットの未知の位置までの方向および距離をともかく決定するだけでよい。しかし、工学的観点からは、この方向および距離情報の決定に必要な測定値を得ることは、難しい問題である。特に、物品(物)を紛失した環境によって、オブジェクトを捜すシステムが有効に機能するために必要な多くの動作条件が定まる。
【0004】
何かを捜す必要がある時、二以上の環境が含まれる場合が多い。例えば、病棟、ウィング(wing)、および病室間または内等、ある位置から他の位置へ多くの人や物が絶えず移動する医療施設(例えば、病院)である。物が紛失したり、置き忘れられるのは当然である。紛失または置き忘れたオブジェクトのサーチ範囲が一つの大きい環境である場合には、問題が増幅されるだけだが、複数の異なる環境がある場合には、おそらくより厄介である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したことを考慮して、複数の異なる環境に同時にまたは順次質問し、特定の物品、人または物が一つ環境(例えば、病室)内に存在するか否かを決定して、オブジェクトを捜すためのシステムおよび方法を提供することが、本発明の目的である。本発明の別の目的は、一つの限定された環境において、方向および距離情報を測定してオブジェクトを捜すことを容易にするシステムおよび方法を提供することである。さらに、別の目的は、オペレーション環境に対するシステム・アナリシス(systems analysis)機能を提供することである。本発明の別の目的は、オブジェクトを探すのに費やされる時間を最小限にして、代わりにその時間を生産的に使用してオペレーション効率を改善することである。本発明のさらに別の目的は、環境に質問して、紛失もしくは置き忘れたオブジェクトを捜すためのシステムおよび方法であって、使用が容易で、実現が簡単で、かつ比較的コスト効率が良いシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、複数の環境内のタグ付きオブジェクトを捜すためのシステムは、複数のトランシーバを含んでいる。具体的には、各トランシーバは、各環境(例えば、病室)内の既知のポイントに、各環境内へ質問信号を送信するように配置される。本発明の目的のためには、質問信号は、捜すべきオブジェクトに何らかの形で付される識別タグまたはラベルと相互作用する非可聴高周波数であることが好ましい。より具体的には、トランシーバは、タグまたはラベルと相互作用するためにタグまたはラベルに同調させることが好ましい。いずれにせよ、この質問信号とタグ間の相互作用により、リターン信号が生成されてトランシーバへ返送される。
【0007】
本発明によると、オブジェクト・タグからトランシーバへ向けられるリターン信号は、トランシーバに対する距離および方向情報であって、タグ(ラベル)の環境内での位置に関する距離および方向情報を含んでいる。さらに、リターン信号は、オブジェクトが何であるかという情報および任意の適当な日付/時間情報等それが付されるオブジェクトに関する識別情報を含んでいる。この点を考慮して、本発明は、オブジェクトが患者カルテ、個人ファイル、管理文書、IV(点滴)スタンド等の移動可能アセット、装置、または人(例えば、患者や医療従事者)でもあると想定している。さらに、本発明においても想定されるように、タグは、それが付されるオブジェクトに関する更新された識別情報を提供するように周期的にプログラムすることができる。
【0008】
本発明の一実施例では、リターン信号は、タグから簡単に反射させることができる。別の実施例では、タグは、トリガされると質問信号の受信に応答してリターン信号を発する発生器(emitter)を含むことができる。リターン信号に含まれる距離情報は、いくつかの周知の方法のいずれかにより得ることができる。例えば、周知の「ソナー」技術を使用することができる。さらに、リターン信号自体の強度を距離の表示として使用することができる。本システムで信号強度を使用して、サーチ・エリアを突き止めることが必要なら、比較的制限された信号範囲の質問信号用非可聴高周波数信号が実際に役立つ。
【0009】
リターン信号内に含まれる方向情報について、いくつかの周知の技術のいずれかを使用することができる。本発明の簡単なバージョンにおいて、方向は、方位角データ(すなわち、基準方位角からの角度θ)のみを含む必要がある。より高性能なバージョンにおいては、方位角(θ)と仰角情報(すなわち、水平からの角度α)の両方を使用する。
【0010】
中央制御ユニットは、システムが動作中に質問すべき環境に近接する都合の良い場所に設けられる。次に、質問信号は、複数の選択された環境のいずれかまたは全てに送信することができる。タグ付きオブジェクトからのリターン信号は、質問信号の送信により生成され(すなわち、発生または反射され)、次に、紛失または置き忘れたオブジェクトを捜すために使用することができる。
【0011】
オブジェクトの位置のより正確な表示が必要な本発明の代替実施例では、本システムは、前記したコンポーネントの他にハンドヘルド・モバイル・ロケータ(hand−held mobile locator)も含む。より具体的には、多数の環境があることがある。さらに、環境自体がオブジェクト(例えば、ファイル・ルーム(file room)内のファイルやカルテ)を分りにくくすることがある。このような場合、最初にオブジェクト(ターゲット)が見つかる環境を捜し、次にオブジェクトを捜すことが好ましい。特定の環境の最初の分離は、大体、本発明について前記したとおりに行われる。しかし、リターン信号内の方向および距離情報は、意図せずに、または意図的に、使用できないことがある。それでも、リターン信号は、正確ではないが、置き忘れたオブジェクト(ターゲット)が特定の限定された環境内にあることを示すことができる。
【0012】
本発明によると、モバイル・ロケータは、オブジェクトが存在する環境が識別されてさえいればいつでも使用することができる。このように、正しい環境が識別されていることを知った上で、モバイル・ロケータを使用してオブジェクトの環境内での位置のより正確な表示を提供することができる。そうするために、モバイル・ロケータは、トランシーバと中央制御ユニットに関して前記したのと同様にタグと電子的に相互作用することができる。しかし、この場合、モバイル・ロケータは、捜すべきオブジェクトから予め定められた距離内でのみ動作する必要がある。例えば、モバイル・ロケータは、タグとモバイル・ロケータ間の距離が約91.4cm(3フィート)よりも小さい範囲内で、識別タグを電子的に検出できなければならない。モバイル・ロケータは、その受信距離を漸減させるように制御されることにより、オブジェクトの位置をより正確に決定することができることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のシステムの略図である。
【図2】本発明が動作する典型的な環境の斜視図である。
【図3】本発明の代替実施例が動作する別の環境の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の構造とその動作の両方について、本発明の新規な特徴の他、本発明自体も、詳細な説明と、同じ参照文字が同じ部分を示す添付図面からよく分かる。
まず、図1には、本発明によるシステムの略図が示され、全体が10として示されている。図1には、システム10が複数の異なるトランシーバ14a−dに電子的に接続されるマスタ制御ユニット12を含んでいることが示されている。さらに、図1には、各トランシーバ14a−dは、それぞれ異なる環境16a−d内に配置されていることが示されている。図示する様々な環境16は、本開示のための典型例にすぎない。当業者なら分るように、環境16は、部屋、ホール、ビル全体その他の限定されたエリアでもよい。
【0015】
環境16a内のトランシーバ14aを例として使用してより詳細に、トランシーバ14aが送信機18と受信機20の両方を含むことが示されている。この組合せは、送信機18および受信機20を環境16a内に別々に配置できることを示している。しかし、それらは単一ユニット(すなわち、トランシーバ14a)として一体化されることが好ましいので、この説明では、時々単にトランシーバ14という。
【0016】
例えば、図1は、何らかの理由で一時的に紛失または置き忘れた環境16a内のオブジェクト22を示している。重要なのは、オブジェクト22に付されたタグ(ラベル)24が示されていることである。さらに、本発明において、オブジェクト22は、消耗品(例えば、注射器、スポンジおよびIV(点滴)バッグ)等の任意のタイプの物品、あるいは患者カルテ、個人ファイルまたは一つの場所から別の場所へ運ぶことができる他のタイプの文書等の物でよいことが分かる。さらに、オブジェクト22は、患者、医師、看護婦またはサポート・スタッフ等の人でもよい。また、オブジェクト22は、ある位置から別の位置へ移動可能な緊急用カート、エコー・マシンまたは人工呼吸器等の移動車両でもよい。しかも、オブジェクト22は、たぶん、環境16aから環境16cへ等、異なる環境16a−d間を移動可能である。
【0017】
図1に示すように、各トランシーバ14a−dは、その各環境16内へ質問信号26を送信することができる。質問信号26は、信号範囲が多少制限された非可聴高周波数搬送波を有することが好ましい。それでも、信号範囲は、質問される(モニタされる)環境16を適切にカバーする必要がある。いずれにせよ、質問信号26がタグ24に入射すると、タグ24からリターン信号28が反射、または発生される。次に、リターン信号28は、タグ24からトランシーバ14(受信機20)へ返送される。そこから(すなわち、トランシーバ14から)、リターン信号28に含まれる情報は、制御ユニット12へ返送される。
【0018】
リターン信号28は、タグ24(すなわち、オブジェクト22)とリターン信号28を起動した特定のトランシーバ14との間の空間関係に関する距離および方向情報を含むことが、本発明のシステム10のために好ましい。また、リターン信号28は、オブジェクト22に関する特定の識別情報を含むことができる。例えば、識別情報は、オブジェクト22(例えば、人、物品または物)の性質の他、時間/日付情報も含んでもよい。それは、また、オブジェクト22および環境16内でのその機能に関する情報を含んでもよい。
【0019】
図2には、オブジェクト22が本発明で想定する典型的な環境16a(例えば、病院内の病室)内に示されている。特に、環境16a内のオブジェクト22を捜すのに必要な典型的な数学的測定値が示されている。本開示では球座標が使用されているが、本システム10では、直交座標や円柱座標等の他の数学的取扱いをすることができることが分かる。本例では、ライン30は、トランシーバ14とタグ24(すなわち、オブジェクト22)との間の空間関係を特定している。詳しくいうと、ライン30は、距離「d」、並びに仰角「α」および方位角「θ」により定まるトランシーバ14からの方向によって特定される。同時に、これら三つの測定値「d、α、およびθ」は、環境16内でオブジェクト22を捜すために必要なリターン信号28内に含まれる方向および距離値から成る。また、前記したように、リターン信号28は、オブジェクト22のタイプ、および特定の性質を識別するのに必要な情報も含んでいる。
【0020】
本システム10で想定されているように、距離「d」は、いくつかの周知の方法のいずれかにより決定することができる。一例として、リターン信号28の強度を距離「d」のインジケータ(indicator)として使用することができる。質問信号26の信号範囲は制限してよい。もし制限するなら、リターン信号28の強度変化が、特定エリアにモニタリングを制限するために有効に使用することができる。距離「d」を決定するための別の技術は、長く使用されている「ソナー」に関する技術である。距離「d」の決定に加えて、質問信号26を特定のタグ24またはある分類のタグ24に同調させてもよい。
【0021】
本発明のシステム10の動作中、環境16a−dのいずれかの内で紛失または置き忘れたオブジェクト22は、マスタ制御ユニット12を動作させることにより見つけられる、すなわち捜すことができる。特に、制御ユニット12は、質問信号26により全ての環境16a−dに同時に質問することができ、あるいは選択的に特定の別々の環境16に質問することができる。いずれにせよ、質問信号26は、トランシーバ14a−dから各環境16a−d内へ送信される。次に、応答リターン信号28は、有用な情報のいくつかを提供する。一例として、リターン信号28によって、オブジェクト22を捜す特定の環境16を分離することができる。また、それは、特定の環境16内のオブジェクト22を捜すのに必要な距離および方向情報(すなわち、「d」、「α」、および「θ」)を提供する。
【実施例2】
【0022】
図3には、本システム10の代替実施例の動作が示され、モバイル・ロケータ32がユーザ34に保持されていることが示されている。本発明で想定しているように、リターン信号28は、意図せずに、あるいは意図的に、使用可能な距離および/または方向情報を含まなくてもよい。それでもなお、リターン信号28は、環境16内のオブジェクト(ターゲット)22の存在を表示することができる。その場合、環境16内にオブジェクト22があると決定されると、モバイル・ロケータ32を環境16内で移動させてオブジェクト22をより正確に捜すことができる。
【0023】
前記したように、本発明において、モバイル・ロケータ32がタグ24またはオブジェクト22と相互作用できることが分る。しかも、当業者ならば当該技術において公知の任意のアイデンティフィケーション・ビーコン(identification beacon)技術を使用できることが分る。いずれにせよ、モバイル・ロケータ32は、制御ユニット12ではなくタグ24と直接相互作用することが好ましい。この点を考慮して、モバイル・ロケータ32は、典型的にはロケータ32から約91.4cmから152.4cm(3から5フィート)以下の制限された範囲「r」を有することができる。さらに、ロケータ32は、距離「r」をこの範囲内で変化するように制御することができる。その目的は、範囲「r」を漸減することができ、ユーザ34がサーチ距離を有効に低減するのに役立てることである。例えば、オブジェクト22を捜す環境16として環境16dが識別されると、ユーザ34は、モバイル・ロケータ32を環境16dに持ち込むことができる。そこで、ユーザ34は、オブジェクト22が存在すると確信してモバイル・ロケータ32を動作させることができる。次に、ユーザ34は、オブジェクト22が範囲「r」内にあるとモバイル・ロケータ32が表示するまで環境16d内を移動する。その後、ロケータ32は、オブジェクト22の所在に関するより正確な情報を得るために範囲「r」を減少するように制御することができる。
【0024】
ここに示され詳細に説明された特定の情報ロケータは、十分に、オブジェクトを捜し前記した利点を提供することができるが、それは、本発明の現時点で好ましい実施例の説明に役立つものにすぎず、特許請求の範囲に記載のない限り、ここに示された詳細な構造および設計に限定することを意図していない。
【符号の説明】
【0025】
10 システム
12 マスタ制御ユニット
14、14a、14b、14c、14d トランシーバ
16、16a、16b、16c、16d 環境
18 送信機
20 受信機
22 オブジェクト
24 タグ
26 質問信号
28 リターン信号
30 ライン
32 モバイル・ロケータ
34 ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の限定された環境に質問して、一つの環境内でオブジェクトを捜すためのシステムであって、前記システムは、
各々が各環境内の位置に配置され、前記環境内へ質問信号を選択的に送信する複数の送信機と、
各々が各環境内の各送信機に実質的に隣接配置され、前記質問信号に応答する識別タグからリターン信号を受信する複数の受信機と、
各送信機および各受信機に電子的に接続され、前記質問信号を送信し前記リターン信号を受信して、前記オブジェクトを捜す前記環境を識別するための中央制御ユニットと、
前記オブジェクトの前記環境内で動作し、識別タグと電子的に相互作用して前記オブジェクトの前記環境内での正確な位置を定めるためのモバイル・ロケータと、
を含むシステム。
【請求項2】
複数の環境に質問して、オブジェクトを捜す一つの環境を識別するためのシステムであって、前記システムは、
前記オブジェクトに取付けられたタグと、
前記環境内のある位置から質問信号を送信するための手段と、
前記タグからリターン信号を受信するための手段であって、前記リターン信号は、前記タグに入射する前記質問信号に応答して前記タグにより定まり、さらに、前記リターン信号は、前記送信手段の位置に対する前記オブジェクトの方向および距離データを含む手段と、
前記質問信号を選択的に送信しかつ前記リターン信号を受信して前記オブジェクトの前記環境を捜すための制御手段と、
を含むシステム。
【請求項3】
複数の環境に質問して、識別タグが付されたオブジェクトを捜す方法であって、前記方法は、
ある位置から各環境内へ質問信号を選択的に送信するステップであって、前記質問信号は、非可聴高周波数であるステップと、
前記タグからリターン信号を受信するステップであって、前記リターン信号は、前記タグに入射する前記質問信号に応答して前記タグにより定まり、さらに、前記リターン信号は、前記オブジェクトを捜すための、前記送信手段の位置に対する前記オブジェクトの方向および距離データを含み、前記リターン信号は、前記オブジェクトを識別する識別情報を含むステップと、
前記環境内でモバイル・ロケータを動作させ、前記識別タグと電子的に相互作用させて、前記オブジェクトの前記環境内での正確な位置を定めるステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−122204(P2010−122204A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185419(P2009−185419)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(509123644)
【Fターム(参考)】