情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び光ディスク
【課題】超解像光ディスクの読み取り信号に含まれる非線形成分を補償し、精度良く情報の再生を行う。
【解決手段】各ブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)は、補償機能付きブランチメトリック計算器77により、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値に、仮判定結果に基づきパターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と、入力信号としての波形等価されたRF信号の値とに基づいて計算される。したがって、最尤推定過程において超解像光ディスクのRF信号に含まれる非線形成分が補償される。
【解決手段】各ブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)は、補償機能付きブランチメトリック計算器77により、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値に、仮判定結果に基づきパターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と、入力信号としての波形等価されたRF信号の値とに基づいて計算される。したがって、最尤推定過程において超解像光ディスクのRF信号に含まれる非線形成分が補償される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び光ディスクに係り、さらに詳しくは、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び前記情報再生装置又は情報再生方法に用いられる光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進歩やデータの圧縮技術の向上などにともない、光ディスクの大容量化が要求されている。この要求に対する主な方策としては、情報の再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくし、光学系の解像度を向上させることが考えられる。
【0003】
例えば、DVD(digital versatile disc)などよりも記録容量の大きなBD(blu-ray disc)などの光ディスクに対し情報の再生及び記録を行う光ディスク装置などでは、波長が390nmから420nm程度のレーザ光を、開口数が0.70から0.90程度の対物レンズで集光することにより、光ディスクの記録層上に形成されるレーザ光のスポット径を0.48μm程度まで絞りこみ、例えば0.160μmから0.138μm以下の直径の記録マークによる情報の読み出し、及び書込みが可能になっている。
【0004】
しかしながら、光ディスクに用いられるポリカーボネイト材料の透過性などの問題から、これ以上のレーザ光の短波長化や、対物レンズの高NA化を行うことは困難であるため、最近では、光記録の分野において、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報の再生(以下、「超解像再生」という)が可能な光ディスク(以下、「超解像光ディスク」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0005】
この超解像光ディスクは、レーザ光が照射されると、例えばその光学定数が変化する材料を含む超解像層を有しており、この超解像層に再生用のレーザ光が集光されたときの上記光学定数の変化に起因して光スポット内に微小マスク領域あるいは微小開口領域が形成されることにより超解像再生を可能とするものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている光ディスク装置を用いて超解像光ディスクに記録されている情報を再生した場合には、光ディスクの反射光から得られるRF信号に非線形歪みが生じ再生エラーとなる頻度が高いため、容量の大幅な向上は困難であるという不都合があった。
【0007】
一方、近年では光ディスク装置のデジタル情報再生装置において、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式を採用することが広く行われている。これは、デジタル情報を記録する記録媒体の記録密度が高くなるにつれて、デジタル情報1ビットの読み込み信号を、その隣接するビットによる影響(符号間干渉)無しに読み込みにくくなったことに起因するものである。
【0008】
パーシャルレスポンス方式は、波形等価処理部において積極的に既知の線形な波形干渉を作り込むことにより、等価復号処理による信号性能の劣化を防ぐものであり、最近では、このパーシャルレスポンス方式に、最尤推定法であるML(Maximum Likelihood)方式を組み合わせることにより、高精度な信号処理を可能としたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が実用化されている。
【0009】
しかしながら、光ディスクの読み込み系は、光の回折を用いて信号を読み出すという原理上非線形性を有し、RF信号にはその非線形性に起因するアシンメトリが存在する。また、RF信号には、記録時の熱干渉によって、記録パターンに依存したマーク位置変動に起因する非線形成分も存在する。これらのRF信号に含まれるアシンメトリや非線形成分などは、光ディスクに記録される情報の高密度化を図る際に問題となる。
【0010】
そこで、非特許文献1に示されているように、非線形補償テーブルを用いて、符号間干渉の非線形成分を考慮した状態で、最尤推定を行う方法が提案されている。しかし、非特許文献1に記載された方法は、最尤推定ビット長と非線形補償テーブル長が同等であるため、記録媒体上における光スポット長に対して非線形補償テーブル長が短い場合、つまり、高密度記録の場合にはその非線形補償効果は限定的である。特に、光学系の回折限界を超える高密度記録が行われている超解像再生媒体からの情報再生時や、コマ収差や非点収差などの光スポット径が大きくなる収差の発生時には、その非線形補償効果は十分ではない。
【0011】
そのため、例えば特許文献5に示されているように、あるビット長の線形な符号間干渉予測に加え、より長いビット長において非線形補償テーブルを有し、非線形補償と最尤推定を行う方法が開示されている。しかしながら、本方法では最尤推定を、非線形補償ビット長と同じ範囲行う必要があるため、非線形補償範囲を広くすればするほど、回路規模が飛躍的に大きくなる問題がある。最尤推定を実現するための回路は、概ねビットを1つ増やすごとに状態数が2倍になるため、回路規模も2倍となる。そのため、例えばパターン補償ビットを3ビットずつ付加した場合には、回路規模は10倍以上にもなり、再生装置が高価となってしまう。
【0012】
また、例えば特許文献6には、過去の仮判定結果を用いることで、回路規模を大きく増大させることなく、長い範囲のビット列に対して、非線形補償を行う方法が開示されている。しかしながら、これらの非線形補償による記録密度の増加は1割から2割と小さいものであり、容量の大幅な向上は困難であるという不都合があった。
【0013】
【特許文献1】特開平6−183152号公報
【特許文献2】特開平5−205314号公報
【特許文献3】特開平11−250493号公報
【特許文献4】特開2001−250274号公報
【特許文献5】特開2004−326839号公報
【特許文献6】特開2001−126394号公報
【非特許文献1】Naoki Ide, ”Adaptive Partial-Response Maximum-Likelihood Detection in Optical Recording Media” ISOM2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報再生装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報再生方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の第3の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報記録再生装置を提供することにある。
【0017】
また、本発明の第4の目的は、回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は第1の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;前記記録マークのビットパターン毎の複数の補償値が記録されたパターン補償メモリと;前記PRML方式に応じた複数のステートに対する過去の判定結果を出力する機能を有するパスメモリと;前記複数の補償値のうちの前記過去の判定結果に応じた補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック計算器と;を備える情報再生装置である。
【0019】
これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度は、過去の判定結果に応じた補償値を用いて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0020】
本発明は第2の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の補償値を算出する補償値算出工程と;前記パーシャルレスポンス特性に応じて決まる複数のステートに対する、過去の判定結果に応じた前記補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック値算出工程と;を含む情報再生方法である。
【0021】
これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度は、過去の判定結果に応じた補償値を用いて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0022】
本発明は第3の観点からすると、本発明の情報再生装置に用いられる光ディスクである。これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度はディスクに記録された情報に基づいて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0023】
本発明は第4の観点からすると、光ディスクに対し情報の記録及び再生を行う情報記録再生装置であって、本発明の情報再生装置と;前記光ディスクに対し、回折限界よりも小さいピッチの記録マークで情報を記録する情報記録装置と;を備える情報記録再生装置である。
【0024】
これによれば、情報記録再生装置は本発明の情報記録再生装置を備えている。したがって、尤度の演算精度を向上することが可能となり、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0026】
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23を光ディスク15の半径方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、光ディスク15は、一例として図2に示されるように、1組の透明基板15a,15eに挟まれる形で、情報が記録されている記録層15c、光を反射する反射層15b、及び温度により光学定数が変化する材料を含む超解像層15dを有し、超解像再生が可能な超解像光ディスクであるものとする。
【0027】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15にレーザ光を照射するとともに、光ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、光ディスク15に対応する波長のレーザ光を出射する光源と、該光源からの光を光ディスク15に集光する対物レンズを含み、光ディスク15で反射され対物レンズを介した戻り光を所定位置に導く光学系と、前記所定位置に配置され前記戻り光を受光する複数の受光領域を有する受光器と、対物レンズを微小駆動する駆動系(いずれも図示省略)などを備えている。受光器の各受光領域は、それぞれ受光光量に応じた信号(光電変換信号)を再生信号処理回路28に出力する。また、駆動系は、対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及び対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータを有している。ここでは、一例として光源から出射されるレーザ光の波長を635nm、対物レンズの開口数(NA)を0.6とする。この場合の回折限界は約530nm(レーザ光の波長/2NA)である。
【0028】
ところで、光ピックアップ装置23を用いて光ディスク15に400nmピッチで形成されている記録マーク(記録マーク長=200nm)を再生したときのCNR(キャリア/ノイズ比)と再生パワーPrとの関係が一例として図3に示されている。図3では、再生パワーPrが2mW以上では、CNRが30dBを超えており、超解像再生が可能であることが分かる。なお、以下では、超解像再生が可能な再生パワーを「超解像再生パワー」ともいう。
【0029】
光ディスク15に超解像再生パワーのレーザ光が集光されると、その部分の温度が上昇し、光スポット内に、一例として図4(A)に示されるように、超解像層15dに形成されたビームスポットBS内に微小開口領域HA、あるいは、一例として図4(B)に示されるように微小マスク領域MAが生じる。微小開口領域HA及び微小マスク領域MAは、いずれも光スポットの進行方向と反対の方向に尾を引いた形状を有している。なお、図中の黒丸は光ディスク15に形成された記録マークであり、超解像層15dに微小開口領域HA及び微小マスク領域MAのどちらが生じるかは、超解像層15dの材料や層構成に依存している。
【0030】
微小開口領域HAが生じる場合には、記録マークが微小開口領域HAに含まれるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。一方、微小マスク領域MAが生じる場合には、記録マークが微小マスク領域MAによってマスクされるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。例えば、マスク領域MAが生じる場合には、一例として図5に示されるように、光軸をAXとするレーザ光23aが照射されることによる加熱に起因して超解像層の光学定数が変化する。その結果スポット後方部にマスクMAが形成され、反射層15bからの反射率が低下する。超解像層15dの入射側表面PLでの光強度分布を考えると、図5の曲線L1で示される入射光は対称な光スポット形状をしているが、曲線L2で示される反射光は非対称な光スポット形状(状態)となる。したがって、記録層15cからの情報を、非対称な形状の光スポットで、読み出すことになり、RF信号には位相歪みが生じる。
【0031】
また、超解像層の入射側表面PLにおける反射光の光強度分布の再生パワー依存性が、一例として図6に示されている。なお、図6では、光スポットの中心位置を基準(原点)としている。これによると、再生パワーPrを超解像再生パワーまで上げると、光スポット後方がマスクされ、反射光の光強度分布が後部から削れた形状に変化している。図6に示されるように、超解像光ディスクの記録層に形成される光スポットの形状は、レーザ光の波長を小さくした場合や、レーザ光を記録層に集光する対物レンズのNAを大きくした場合に光ディスクの記録層に形成される光スポットと比較すると、裾の広さは変わらないまま、光スポット強度分布の先端部が鋭くなっているのが特徴である。
【0032】
したがって、超解像光ディスクにおいて記録密度を増加させた場合には、レーザ光の波長や対物レンズNAを大きくして光スポットのスポット系を小さくする場合と比較して、レーザ光の光スポットの裾の広さに起因する広い範囲に符号間干渉が生じる。図7(A)は、例えばDVDなどの光ディスクに、通常の記録密度で記録された情報を再生したときのクロックタイミングと、光ディスクからの反射光の光強度を示す概念図であり、図7(B)は、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を再生したときのクロックタイミングと、光ディスクからの反射光を示す概念図であり、図7(C)は、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を、高NAの対物レンズで集光した場合や、短波長のレーザ光により再生した場合のクロックタイミングと、光ディスクからの反射光を示す概念図である。
【0033】
通常の記録密度で記録された情報を再生したときには、光スポットの符号間干渉が起こる領域PAの範囲は図7(A)に示されるように、約3クロック分であるのに対し、2倍の記録密度で記録された情報を再生したときには、図7(B)に示されるように領域PAの範囲は約5クロック分である。また、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を、高NAの対物レンズで集光した場合や、短波長のレーザ光により再生した場合には、光スポットの符号間干渉が起こる領域PAの範囲は、図7(C)に示されるように約3クロック分である。したがって、超解像光ディスクにおいて、例えば2倍以上の密度で記録された情報の再生を行う場合には、図7(B)に示されるように符号間干渉がおこる領域PAの範囲が、図7(C)に示される場合に比べて長くなり、その分長い範囲にわたって符号間干渉を抑圧する必要性が生じる。
【0034】
また、図6に示されるように、超解像光ディスクに記録する際にもレーザ光の光スポットの裾の広さは変化しないため、単純に光スポットが小さくなるわけではない。したがって、超解像光ディスクに対する高密度記録では、光ディスクの記録層に記録マークを高精度に形成することは非常に困難であり、隣接する又は近接する記録マークによる熱干渉などに起因した記録誤差を生じる場合がある。このような記録誤差は非線形な符号間干渉として再生信号に悪影響を与える。
【0035】
また、ピット部とスペース部によるピットパターンが形成された、再生専用の超解像光ディスクにおいても、ピット部とスペース部とでは、構造の差に起因する熱容量の差があり、光スポットが形成されている部分のピットパターンに応じて超解像層の熱分布が変化する。このため、ピットパターンに応じて光スポット形状が変化することになり、非線形な符号間干渉として再生信号に悪影響を与えることが考えられる。
【0036】
以上述べたように、超解像光ディスクに高密度記録された情報の再生を行うためには、長い範囲にわたる非線形な符号間干渉を抑圧することが重要である。
【0037】
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、アンプ28a、サーボ信号生成回路28b、ウォブル信号生成回路28c、RF信号生成回路28d、及びデコーダ28eなどから構成されている。
【0038】
アンプ28aは、光ピックアップ装置23の受光器からの複数の光電変換信号をそれぞれ電圧信号に変換するとともに、所定のゲインで増幅する。
【0039】
サーボ信号生成回路28bは、アンプ28aの各出力信号に基づいてサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号など)を生成する。ここで生成されたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力される。
【0040】
ウォブル信号生成回路28cは、アンプ28aの各出力信号に基づいてウォブル信号を生成する。
【0041】
RF信号生成回路28dは、アンプ28aの各出力信号に基づいてRF信号を生成する。
【0042】
デコーダ28eは前記ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号は駆動制御回路26に出力される。
【0043】
また、デコーダ28eは前記RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。
【0044】
図8はデコーダ28eのブロック図である。図8に示されるようにデコーダ28eは、ハイパスフィルタ(HPF)60、等価回路61、ADコンバータ(ADC)62、非対称FIRフィルタ63、インターポレータ64、等価回路65、判定帰還型ビタビ復号器66、及びPLL67などを備えている。
【0045】
等価回路61はHPF60の後段に配置され、RF信号生成回路28dから入力され、HPF60により低周波ノイズが除去されたRF信号の、光学系によるMTF(modulation transfer function)の低下により減衰した高域成分を強調し符号間干渉を低減する。なお、等価回路61は、ADC62でのAD変換時にエイリアシングノイズが起こらないように高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF)の役割も兼ねている。
【0046】
ADC62は、等価回路61の後段に配置され、等価回路61の出力信号をデジタル信号に変換(AD変換)する。
【0047】
非対称FIRフィルタ63は、タップ中心を原点として非対称な等価係数を持つFIRフィルタであり、ADC62の出力信号に対してフィルタ処理を行い、前述した超解像光ディスクに形成される光スポットの非対称性に起因するRF信号の位相歪みを補正する。
【0048】
インターポレータ64は、ADC62の出力信号あるいは非対称FIRフィルタ63の出力信号が入力され、前後2つ以上の時間のサンプル値から、クロックタイミングにおけるサンプル値を補間する。
【0049】
PLL67は、インターポレータ64の出力信号から光ディスク15に記録されている信号のクロック(以下「再生クロック」ともいう)を再生し、インターポレータ64に前記クロックタイミングを指示する。すなわち、インターポレータ64とPLL67の組み合わせで、再生クロックに同期したサンプリングが行われる。なお、PLL67における再生クロックと信号クロックの位相比較部分は、スライサを用いて二値化した信号において位相比較を行うものでも良いし、再生信号のレベル値と、再生クロックと信号クロックの位相誤差がない場合の理想信号のレベル値との差より位相差を検出する方法を用いたものでも良い。
【0050】
等価回路65は、インターポレータ64の後段に配置され、インターポレータ64の出力信号に対して、所望のPR(Partial Response)特性に応じた応答となるように波形等価を行う。なお、前記所望のPR特性は、例えばPR(1、2、2、2、1)とする。
【0051】
判定帰還型ビタビ復号器66は、詳細については後述するが、等価回路65の後段に配置され、等価回路65の出力信号に対して、最尤(maximum likelihood)復号方式であるビタビ(Viterbi)復号方式で復号処理を行い2値化データを出力する判定帰還型非線形ビタビ復号器である。すなわち、ここでは、等価回路65と判定帰還型ビタビ復号器66とで、パーシャルレスポンス方式と最尤復号方式とを組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の信号処理を行っている。
【0052】
図1に戻り、前記駆動制御回路26は、対物レンズ60の位置ずれを補正するため、再生信号処理回路28からのサーボ信号に基づいて、光ピックアップ装置23の駆動系の駆動信号を生成する。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0053】
前記バッファRAM34には、光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0054】
前記レーザ制御回路24は、光ピックアップ装置23の光源の発光パワーを制御する。
【0055】
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0056】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、光ピックアップ装置23の光源の発光特性、後述する等価係数情報などが格納されている。
【0057】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0058】
《判定帰還型ビタビ復号器の詳細》
ここで、前述の判定帰還型ビタビ復号器66の詳細について説明する。なお、判定帰還型ビタビ復号器66の説明は、一例として判定帰還型ビタビ復号器66のPRクラスがPR(1,2,2,2,1)、最小反転間隔が2Tであるものとして説明するが、判定帰還型ビタビ復号器66のPRクラスはPR(1,2,2,2,1)に限られるものではなく、例えばPR(1,2,2,1)やPR(1,1)などのあらゆるPRクラスであってもよい。また、判定帰還型ビタビ復号器66の、後述する仮判定は3ビットのビット列を用いて行うが、これに限らず、3ビット以上のビット列を用いてもよい。
【0059】
まず説明の便宜上、判定帰還型ビタビ復号器の説明に先立ち、通常のビタビ復号器についての説明を行う。図9には、通常のビタビ復号器66’のブロック図が示されている。図9に示されるように、ビタビ復号器66’はブランチメトリック計算器70、ACS演算器71、パスメモリ72、出力選択器73、及びパスメトリックメモリ74を備えている。また、上記のように構成されるビタビ復号器66’はPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であるため、その状態遷移図は図10に示されるように、4ビットのビット列でそれぞれ表される10個の状態(ステート)S0000〜S1111と、図10中の矢印で示されるように、各ステートS0000〜S1111に対応する16本の枝(ブランチ)B(n)(n=1,2,…,16)を有している。そして、各ステートS0000〜S1111間の状態遷移は図11に示されるトレリス線図で表すことができる。
【0060】
前記ブランチメトリック計算器70は、現時点(図11の時刻t−1)における各ステートから時刻tにおける各ステートまでのブランチの目標値と、入力信号とのユークリット距離(ブランチメトリックBMt)の計算を行う。詳述すると、各ブランチB(n)での目標値はPRクラスと、各ブランチに相当するビット列により規定される値となり、各ブランチB(n)のブランチメトリックBMt(n)は以下の式(1)で表される。
【0061】
BMt(n)=(PP(n)×PR−RF)2 …(1)
ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12221]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列である。例えば、図10のブランチB(5)に対応するビット列PP(5)は[00110]であり、ブランチB(6)に対応するビット列PP(6)は[01111]であるというように、図10においてブランチB(n)に対応する遷移前の状態を示す4ビットのビット列に、遷移後のビット列の先頭の1ビットを加えた5ビットのビット列である。前記ブランチメトリック計算器70は上記式(1)に基づいて、16個のブランチメトリックBMt(n)を計算する。なお、式(1)中の×は行列の掛け算を示す。
【0062】
図9に戻り、ACS(Add-Compare-Select)演算器71は、パスメトリックメモリ74に記憶された時刻t−1における各ステートS0000〜S1111ごとのパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を読み出して、ブランチメトリック計算器70により計算された時刻t−1から時刻tまでのブランチメトリックBMt(n)に、対応するパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を加算して、加算値PM’(n)を算出する。例えばブランチメトリックBMt(5)やブランチメトリックBMt(4)にはパスメトリックPMt−1(0011)が加算され、ブランチメトリックBMt(9)にはパスメトリックPMt−1(1110)が加算される。すなわち遷移を示すブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)に、遷移もとの各ステートのパスメトリックPMt−1が加算される。
【0063】
そして、図11のトレリス線図の時刻tにおける各ステートS0000〜S1111に合流するパスが2本ある場合には、その2本のパスに対応するパスメトリックどうしを比較して、小さい方のパスメトリックに対応するパスを時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、各ステートS0000〜S1111に合流するパスが1本である場合にはそのパスを無条件に時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、それぞれの判断結果をパスメモリ72に記録する。これによってパスメモリ72には、上記のようにACS演算器71による判断結果が順次記録され過去の生残りパスが履歴として記録される。また、ACS演算器71は並行して生残りパスに対応する加算値PM’(n)を時刻tにおける新たなパスメトリック値として、パスメトリックメモリ74のパスメトリックPM(0000)〜PM(1111)の値を更新する。
【0064】
図12は、パスメモリ72のブロック図である。パスメモリ72は、PRクラスによって決まるステートと同じ数のシフトレジスタを備えている。本実施形態ではPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であるから、10個のシフトレジスタを備えるパスメモリセル900〜9016を有している。各パスメモリセル900〜9016のシフトレジスタは、ACS演算器71での判断結果を1時刻ごとに、次のパスメモリセルへシフトしながら保持する。その際。ACS演算器71から出力された推定結果に従い、選択された生残りパスの1時刻前の状態に対応する推定結果がコピーされる。これにより、後段のパスメモリセルにおいては、判断に伴うパスの選択により生残りパスが次第に少なくなり、最終段のパスメモリセル9016のシフトレジスタに残る推定結果はおおむね同じ結果となる。すなわち、パスマージが完了する。
【0065】
図9に戻り、出力選択器73は、パスメトリックメモリ74の中から、最小のパスメトリック値に対応する、つまり尤も確からしい1本の生残りパスを選択する。そして、パスメモリ72の最終段のパスメモリセル9016からの出力のうち、選択されたパスに対応する値を2値化データ(判定値)として出力する。なお、パスメモリ72のパスメモリセルの数が十分である場合で、RF信号の品質が良好な場合にはパスメモリ内の複数のシフトレジスタの最終段に残る結果はおおむね同じ結果になるため、この場合は出力選択器73は必ずしも必要とはされない。
【0066】
次に、本実施形態に係る判定帰還型ビタビ復号器66について説明する。図13は判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。判定帰還型ビタビ復号器66は、前述した従来のビタビ復号器66’と比較して、ブランチメトリック計算器70が補償機能付きブランチメトリック計算器77に代わり、パスメモリ72が仮判定機能付きパスメモリ76に代わり、パターン補償メモリ75が付加されている点で相違する。以下、判定帰還型ビタビ復号器66について、従来のビタビ復号器66’との相違点を中心に説明する。
【0067】
図14は判定帰還型ビタビ復号器66の仮判定結果出力機能付きパスメモリ76のブロック図である。この仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、パスメモリセルの内容をそれぞれのステートに対応した仮判定結果としてパターン補償メモリ75へと出力する。仮判定結果は、最尤推定中のビットのすぐ後のビット情報を有するため、後方ビットの判定情報として、最尤推定に反映することにより、媒体上でより広い範囲(長いビット長)での非線形補償が可能となる。
【0068】
図15は、仮判定結果の取得を説明するための図である。以下、図15を参照しつつ仮判定結果の取得方法について説明する。図15における時刻tから時刻t−4に対応するステートは最尤推定中の状態遷移部分である。また、時刻t−5から時刻t−9に対応するステートは仮判定結果部分である。図15においてt−1における各ステートから、太線の矢印で示される生き残パスに沿って時間を逆にたどっていくと、各生き残りパスに対応する仮判定ビット列は一つに決まる。すなわち、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111からパスマージが終了した時刻t−9におけるステートS0000までの、生残りパスをたどるルートは一義的に決まり、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111の時刻t−5から時刻t−9までの仮判定ビットは、図15に示されるようにそれぞれ決定される。そして、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、図14と図15を総合するとわかるように、時刻t−5から時刻t−7の各ステートS0000〜S1111に対応する3ビットのビット列B(0000)〜B(1111)を仮判定ビット列としてパターン補償メモリ75に出力する。
【0069】
図16は、パターン補償メモリ75のブロック図である。図16に示されるようにパターン補償メモリ75は、各ブランチB(n)に対応する16のB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116を有しており、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76からの仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)はそれぞれ対応するB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に入力される。そして、各B(n)補償値セット格納メモリ511〜5116からは、入力された仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)に対応する補償値CV(n)が出力される。一例として、図17(A)にはB(1)補償セット格納メモリ511のビット列B(0000)と補償値CV(1)の対応を示すテーブルが示され、図17(B)にはB(6)補償セット格納メモリ516のビット列B(0110)と補償値CV(n)の対応を示すテーブルが示され、図17(C)にはB(12)補償セット格納メモリ5112のビット列B(1100)と補償値CV(12)の対応を示すテーブルが示されている。例えば、図15のトレリス線図に示されるように生残りパスが決定している場合には、B(1)補償値セット格納メモリ511に入力されるビット列B(0000)は(110)である。したがって、B(1)補償値セット格納メモリ511では、図17(A)のテーブルに基づいて補償値CV(1)の値が−0.11と決定される。同様に、B(6)補償値セット格納メモリ516に入力されるビット列B(0110)は(000)であり、B(12)補償値セット格納メモリ5112に入力されるビット列B(1100)は(111)である。したがって、(6)補償値セット格納メモリ516及びB(12)補償値セット格納メモリ5112では、図17(B)及び図17(C)のテーブルに基づいて補償値CV(6)の値が−0.01と決定され、補償値CV(12)の値が−0.08と決定される。そして、一例として上述のように決定された補償値CV(1),CV(6),CV(12)は補償機能付きブランチメトリック計算器77へ出力される。
【0070】
図13に戻り、補償機能付きブランチメトリック計算器77は、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値に、パターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と入力信号としての波形等価されたRF信号の値とのユークリッド距離(ブランチメトリック)の計算を行う。次式(2)は補償機能付きブランチメトリック計算器77によるブランチメトリックの計算式であり、補償機能付きブランチメトリック計算器77は式(2)によりブランチメトリックBMt(n)をそれぞれ計算する。なお、式(2)は各ブランチB(n)に対応する補償値CV(n)項を有している点で式(1)と相違している。
【0071】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(2)
【0072】
上記式(2)により各ブランチメトリックBMt(n)の計算が終了すると、判定帰還型ビタビ復号器66では上述した従来のビタビ復号器66’と同様の方法で、2値化信号が生成される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る光ディスク装置20によると、各ブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)は、補償機能付きブランチメトリック計算器77により、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値にパターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と、入力信号としての波形等価されたRF信号の値とに基づいて計算される。したがって、最尤推定過程においてRF信号に含まれる非線形成分が補償され、結果的に光ディスク15に回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0074】
また、ブランチメトリックBM(n)を、各ブランチB(n)に対応する3ビットのビット列B(0000)〜B(1111)により決まる補償値CV(n)を加味して計算することは、本実施形態のPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であることから、非線形補正ビット数が8ビットであることと等価である。したがって、仮判定ビット列の3ビットを除く5ビット分の回路を持つ復号器により8ビット分の回路を有する復号器とほぼ等価な復号を行うことができ、装置の低価格化を図ることが可能となる。
【0075】
図18(A)はADC62の出力信号のアイパターンを示す図であり、図18(B)は、非対称FIRフィルタ63の出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(A)は判定帰還ビットがない場合、すなわち非線形補正ビット長が5ビットの時の、後述する補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69からの出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(B)は判定帰還ビットが3ビットの場合、すなわち非線形補正ビット長が8ビットのときの、後述する補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力信号のアイパターンを示す図である。図18(A)に示されるアイパターンでは、まったくアイが開いておらず、図18(B)に示されるアイパターンでは、若干アイは開いたものの、十分な状態とはほど遠い上、アシンメトリも大きい。また、図19(A)示されるアイパターンでは、アシンメトリがなくなり、若干アイも開くが、まだ十分ではない。一方、図19(B)に示されるアイパターンでは、きれいにアイが開いて、十分な非線形補償が出来ていることが分かる。すなわち、前述したとおり、光ディスク15の再生時には、長い範囲の非線形補償が必要であり、実現する手段としては、回路規模の面から判定帰還が最適である。なお、非線形フィルタであるボルテラ(Volterra)フィルタを用いて、非線形な符号間干渉を除去する方法も、超解像光ディスクに対するビットエラーレート低減効果が高いが、回路規模の面から考えて判定帰還を用いる本方式が最良である。
【0076】
図20は、従来技術と本発明の効果の比較を示す図である。ビットエラーレートの限界を1×10−4とすると、特許文献1〜4を代表する超解像光ディスクの容量増加効果は1%程度と非常に少ない。また、特許文献6の方式では、4%程度の容量増加が見込めるが、その効果は十分ではない。それと比較し、本発明では実現可能な最短マーク長は170nm以下まで短縮されており、実に1.45倍以上(45%以上)の容量増加が見込める。
【0077】
また、次表1は、最短記録マーク長約162nmでの判定帰還ビット数とエラーレートの関係を示す表である。非線形補償を行わない場合には、ビットエラーレートは2.01×10−2である。非線形補償ありで仮判定ビットがない場合には、4.44×10−3とビットエラーレートが約半分となる。さらに、本方式の仮判定ビットを3ビット以上とした場合には2.67×10−4と、判定帰還は1桁以上のビットエラーレートを低減する効果がある。また、非線形補償長は8ビットあれば十分であり、8ビットと9ビット及び10ビットでは同じ桁数のビットエラーレートとなっている。
【0078】
【表1】
【0079】
また、図21には最短記録マーク長約162nmでの非線形補正ビット数とエラーレートの関係を表すグラフが示されている。非線形補正ビット数が7ビットと8ビットの間にビットエラーレートの大きな改善効果があり、非線形補正ビット数は最低8ビットあることが必要であることが分かる。また、8ビット以上でビットエラーレートが実用上問題なくなる1×10−4台に入っており、8ビット以上のビットパターンに対して補償値を持っていれば良いことが分かる。
【0080】
なお、上記実施形態では、補償値には判定帰還型ビタビ復号器66からの過去の判定結果より計算された線形な符号間干渉予測値と、その時刻に相当する実信号の誤差値を逐次時間平均した平均値を使用することができる。図22には、一例として補償値学習機構30のブロック図が、判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図とともに示されている。
【0081】
補償値学習機構30は、補償値計算器9と、入力信号を判定帰還型ビタビ復号器66での復号時間だけ遅延させる遅延器12と、判定帰還型ビタビ復号器66からの2値化信号にPRクラスに相当する符号間干渉を与えるPR符号間干渉作成器10などを備えている。補償器学習機構30では、判定帰還型ビタビ復号器66からの2値化信号と、遅延器12を介した等価回路65から出力される信号からPR符号間干渉作成器10を介した2値化信号を減算した誤差値(入力信号の非線形成分)とが補償値計算器9に入力され、補償値計算器9では、PR符号間干渉作成器10を介した2値化信号に基づいて、2値化データ列に相当するビットパターンの補償値をパターン補償メモリ75から読み出し、入力された誤差値と補償値との差を導き、その差に所定の定数を掛けた値を補償値に加えて、パターン補償メモリ75の値の書換えを行う。補償学習機構30により、以上の動作が繰り返されることで最適な補償値を得ることが可能となる。
【0082】
なお、例えば1クロック毎など、補償値書換え周期が短い場合、つまり補償値書き換え周期の逆数である補償値書換え周波数が大きい場合、PLL67中の再生クロックを得るためのフィードバックループと干渉をおこす場合があるため、補償値の書換え周波数をPLL67中のフィードバックループのオープンループ交差周波数以下の値にすることが再生安定性の面から望ましい。
【0083】
また、最初から高密度な記録の再生を行う場合には、非線形補正のための補償値情報、またFIRフィルタ63における波形等価係数の適切な値が分かっていないためPLL67が信号より再生クロックを抽出することが出来ず、全く再生が行えない可能性がある。その場合、図27のフローチャートに示されるように、始めに低密度な記録密度について補償値、波形等価係数を学習し、次に少し高密度な記録密度における再生を行い、そこでまた補償値を学習し、波形等価係数を更新する、というように段階的に高密度な再生のための補償値・波形等価係数を求める方法で最終的に高密度な再生においてもPLL67が正常に再生クロックの抽出を行い、正確な再生が可能となる。
【0084】
また、超解像光ディスクに、TOC(Table Of Contents)情報やディスク媒体の一定区間毎にあらかじめ既知のビットパターンで構成される補償値トレーニング用領域を設けておき、補償値トレーニング用領域の再生時に、判定帰還型ビタビ復号器66からの出力を用いる代わりに、既知のビットパターンを用いて補償値を求めても良い。補償値トレーニング領域は、例えば図23(A)に示されるように、光ディスク15の記録領域2の内周部にあるTOC領域1や、図23(B)に示されるように、光ディスク15の、記録領域2に黒点3で示されるように周期的に配置しておくことができる。これにより、判定帰還型ビタビ復号器66から出力されるエラービットの影響を受けずに安定して補償値の学習が可能となる。
【0085】
もちろん、前記トレーニング用領域はROMに対しては製作時にあらかじめ既知のビットパターンを記録しておき、書き換え型・追記型の光ディスクに対しては、あらかじめ記録してあるビットパターンを用いても良いし、既知のビットパターンを記録するトレーニング用の未記録部を用意しておき、用意してある既知のビットパターンを書き込んでも良い。また、その際に前記の通り、高密度におけるPLLの安定性を向上させる目的で複数の記録密度において補償値を学習するため、複数の記録密度におけるトレーニング用領域を準備しておくことで、高密度な再生が可能となる。例えば、図28に示されている光ディスク15におけるTOC領域1に低密度に記録された補償値トレーニング用領域を、光ディスクの別な位置にあるTOC領域2に高密度に記録された補償値トレーニング用領域を設ける事が可能である。
【0086】
また、超解像光ディスク15にその媒体に適した補償値を記録しておき、再生時に光ディスク装置20に読み込んで使用することも可能である。例えば、光ディスク15のウォブル情報やTOC情報に補償値に関する情報(予備補償値情報)が含まれている場合には、CPU40は、ディスクマウント時にその予備補償値に関する情報も光ディスク15から読み出してRAM41に保存し、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨の通知があると、RAM41に保存されている予備補償値に関する情報と再生条件とに基づいて、パターン補償メモリの値を設定するようにしてもよい。
【0087】
超解像層の構成、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び光源の駆動波形などの再生条件により、超解像層の温度分布が変化し、開口部またはマスク部の形状が変化するため、非線形性の発現の仕方が異なる。そのため各パラメータも単数または複数規定して、その時の最適な予備補償値を持つと良い。この場合に、例えば、予備補償値情報が4倍速での再生に対応するものであり、ユーザから16倍速での再生が要求されたときに、予備補償値情報から16倍速での再生に対応する補償値を予測しても良い。
【0088】
また、過去のビタビ復号器からの判定結果より計算された線形な符号間干渉予測値と、その時刻に相当する実信号の誤差値はビットパターンごとに確率分布を持つ。そのため、補償値と同時に、分散値VV(n)も各B(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に記憶しておき、ブランチメトリックBM(n)の計算を次式(3)を用いて行うことで、さらに分散値の影響も考慮に入れた最尤推定が可能となり、ビットエラーを抑える効果を向上させることができる。なお、kは1〜4の定数である。
【0089】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2/(VV(n))k …(3)
【0090】
構成としては、各ブランチB(n)のB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に、補償値CV(n)に加え分散値VV(n)を記憶しておき、補償値CV(n)と同様に仮判定結果、すなわちビット列B(0000)〜B(1111)に基づき分散値VV(n)を補償機能付きブランチメトリック計算器77に伝える。補償機能付きブランチメトリック計算器77は上記の式に従いブランチメトリックBMを計算する。なお、分散値付きのB(6)補償値セット格納メモリ516のテーブルを一例として図24に示す。なお、分散値の代わりに分散値のルートを取った偏差値などを記憶しておいてももちろん良い。また、同様の方式は特開2005−223584号公報に開示されているが、下記の理由により本実施形態における判定帰還型ビタビ復号器66においてその効果は飛躍的に高まる。
【0091】
非線形補償ビット長が短い場合には、中心極限定理によりおのおののビットパターンの等価誤差値の確率分布は足しあわされて正規分布に近くなる。しかし、本発明の判定帰還型非線形ビタビ復号器では補償ビット長を増やすことにより、各ビットパターン特有の確率分布が現れ、分散値に差が出るため効果が高い。もちろんこの分散値考慮も、特許文献6に示されている判定帰還型非線形ビタビ復号器単独では長いビット長の非線形補償の必要性がないため、その効果は薄く、超解像光ディスクの場合に飛躍的に効果が高まる。次表2は分散値を考慮した場合の効果を示す表である。表2に示されるように非線形補正ビット長が短い場合には、ビットエラーレートの低減効果は1割程度と薄いが、非線形補正ビット長を増やすと、ビットエラーレートを半分以下に出来る効果がある。
【0092】
【表2】
【0093】
また、図25には、一例として、非線形成分補正信号出力機構31のブロック図が、判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図とともに示されている。判定帰還型ビタビ復号器66に入力された信号には非線形成分が含まれているが、パターン補償メモリ75の値で、非線形成分を補償することで入力信号から非線形成分を取り除くことが出来る。非線形成分補償器13は、2値化データ列に相当するパターンの補償値をパターン補償メモリ75から読み出し、遅延器12により判定帰還型ビタビ復号器66での復号時間だけ遅延された信号から補償値の値を減算し、非線形成分が補償された再生信号を得ることができる。
【0094】
また、図35には非線形成分補正信号出力機構31の変形例のブロック図が示されている。ここで、出力選択器13bは出力選択器73と同じ機能を持ち、パスメトリックメモリ74の中から、最小のパスメトリック値に対応する、つまり尤も確からしい1本の生残りパスを選択する。ただし、出力選択器73ではパスメモリ76の最終段(例えば図14ではパスメモリセル9016)より判定値を出力している点が異なり、接続を見ると分かるようにパスメモリ76の仮判定出力(例えば図14ではパスメモリセル904)からの出力のうち、選択されたパスに対応する値を2値化データ(仮判定値)として出力する。これにより、仮判定結果はパスメモリ最終段と比較して、エラー率は劣るものの、復号器での判定値出力までのレイテンシは小さいため、PLLループ内の遅れ時間が短縮され、PLLが安定化する。
【0095】
このようにして得られた、再生信号を図26に示すようにクロック抽出用のPLL67に出力することで、PLL67では再生クロックを安定して抽出することが可能となり、ビットエラーを低減することができる。また、本再生信号のアイパターン・ジッタ値などを監視することにより、システムの再生信号品質の指標として使用することが可能である。
【0096】
ここで、PLL67についてさらに解説する。図29にPLL67の詳細ブロック図を示す。スライサ113により、入力されたRF信号は適切な信号レベルで二値化され、エッジ検出位相比較器112へ入る。ここで、VCO(Voltage Controlled Oscillator電圧制御発振器)110からの基準周波数信号とスライサ113より入力された信号について、両者の立ち上がり、立ち下がりエッジの位相差を得る。ループフィルタ111は、PLL67のループ時定数を決定しており、LPF(ローパスフィルタ)やリードラグフィルタなどによって構成されている。以上の構成によりPLL67は再生クロックを抽出する。
【0097】
ここで、PLL67はスライサとエッジ検出の位相比較器を用いている都合上、最短マークのCN比が小さい、高密度記録の再生時や超解像を用いた再生時にはPLLの動作が不安定となり、ビットエラーの増大を招く。そこで、PLL67の代わりに図31に示した相互相関PLL67bを用いることで上記の課題を解決できる。なお、合わせてデコーダ28eの構成も図26に示される構成から図30に示される構成へ変更する。
【0098】
ここで、PR符号間干渉作成器67aは図22のPR符号間干渉作成器10と機能は同じものであるので、PR符号間干渉作成器67bを追加する代わりに、図23のPR符号間干渉作成器10の出力を用いても良い。また、PR符号間干渉作成器67bに用いるPRクラスはなるべく等価回路65で用いるPRクラスに近い方が望ましいが、回路の単純化のためたとえばPR(1)、つまり2値化データそのままをスルーする構成でも十分動作可能である。ただし、後に相互相関演算を用いる都合上、どんなPRクラスを用いる場合にも、信号のDC(直流)成分をカット、つまりたとえばPR(1)では1と0の二値信号を1と−1とする処理をする必要はある。
【0099】
相互相関PLL67bの説明を以下に示す。相互相関位相比較器114によりPR符号間干渉作成器67aと、インターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力の位相比較を行う。なお、図32に相互相関位相比較器114の構成を示す。PR符号間干渉作成器67aからの信号(入力Aとする)は乗算器101aと、遅延器100bにより2T(2クロック)遅延されて、乗算器101bに入力される。また、インターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69からの信号(入力Bとする)は遅延器100aにより1T(1クロック)遅延され、乗算器101aと、乗算器101bに入力される。つまり、それぞれ、1T遅延された入力Aと、入力Bの積と、1T遅延された入力Aと、2T遅延された入力Bの積が演算されて、両者は減算器102により差をとられる。なお、この後LPF(ローパスフィルタ)であるループフィルタ111があることを考慮すると、この動作は1T遅延された入力Aと入力Bの相互相関と、1T遅延された入力Aと2T遅延された入力Bの相互相関の差をとっていることになる。つまり、相互相関位相比較器114とループフィルタ111は、合わせて2つの相互相関演算回路として働いている。
【0100】
【数1】
【0101】
ここで、上記式(4)は、相互相関の演算式である。xが入力A、yが入力B、tが時間、Rが相互相関値である。またkは整数である。ここで、式中のΣ(シグマ)は図31の構成ではループフィルタ111が役割を担う。もし、入力Aと入力B両者の位相差がない場合には、相互相関値は最大となる。そのため相互相関値を最大となるようにPLLをロックすれば良いが、フィードバックループを構成するためには、位相差0で誤差信号0となり、誤差量の符号が認識できる位相誤差信号を得る必要がある。そのため、この構成では、相互相関値は位相誤差量0点を中心として対称であることを利用し、入力Aとプラスに1Tずらした入力Bの相互相関と、入力Aとマイナスに1Tずらした入力Bの相互相関との差を得ることで位相比較を行い、上記の必要な位相誤差信号を得る。つまり式(4)を用いて表すと、位相誤差信号=R(1)−R(−1)としている。以上の動作をまとめた相互相関位相比較器114の動作フローチャートを図33に示す。ループフィルタ111を通った後、VCO110により位相誤差量に応じた周波数の信号が再生されて、RF信号の再生クロックが抽出できる。
【0102】
ここで、相互相関PLL67bの入力にはインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力が利用できるが、特に非線形成分を取り除いた補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力を用いることで、非線形成分を取り除いた信号で位相比較が可能となるため、PLLのより安定した動作が可能となる。
【0103】
なお、図には記載していないが、それぞれインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力と、それに該当するPR符号間干渉作成器67aの出力が時間的に対応するように、適当な遅延器が相互相関PLL67bの前には挿入されている。
【0104】
なお、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力には、再生クロックタイミングの調整にインターポレータ64を用いているデコーダ28e(図30)の構成の場合には、前述の通りインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力を使用できるが、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力には、再生クロックタイミング調整の後段、復号器よりも前段であればよいことを考えると、例えばPLLにより作成された再生クロックがADCのサンプリングクロックとなっている、ADCにおいて再生クロックタイミングの調整を行うデコーダ構成の場合には、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力は、ADCより後段、復号器よりも前段のどの段階であってももちろん良い。
【0105】
また、この構成では復号器69の2値化判定結果を用いる都合上、判定結果が誤っている場合にはPLLが正しく動作しない。よって、復号器69の誤り率を小さくするための非線形補正の補償値や等価回路65における波形等価係数が重要となる。そのため、前述した、始めに低密度な記録密度について補償値、波形等価係数を学習し、次に少し高密度な記録密度における再生を行い、そこでまた補償値を学習し、波形等価係数を更新する、というように段階的に高密度な再生のための補償値・波形等価係数を求める方法や、補償値の書換え周波数をPLL67中のフィードバックループのオープンループ交差周波数以下の値にする方法を用いることでPLLの安定性が高まる。
【0106】
また、既知のビットパターンを記録してある前記トレーニング用領域を光ディスクが持つ場合には、復号器69の2値化判定結果を用いる代わりに、その既知ビットパターンを相互相関PLL67bの入力に用いるとPLLの安定性が高まる。その場合のデコーダ28eの構成例を図34に示す。スイッチ67dにより、復号器69の出力と、トレーニング用領域に記録された既知ビットパターン出力器の出力を切り替えることが可能となっている。これにより、非線形補正の補償値や等価回路65における波形等価係数を学習するため、トレーニング用領域を再生する場合には、既知ビットパターンを用いてPLLを安定させ、適切な補償値や波形等価係数を得ることが可能となる。
【0107】
また、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスをFIRフィルタ63におけるPRクラスと異なるクラスに設定することで、例えば、FIRフィルタ63におけるPRクラスにPR(1,2,2,2,1)、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスもPR(1,2,2,2,1)を用いた場合、2Tマークのキャリアが無くなり、スライサを用いたPLLによる再生クロックの抽出が困難となる。しかし、ここでFIRフィルタ63におけるPRクラスにPR(1,2,2,2,1)、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスを2Tキャリアが存在するPR(0,1,2,1,0)やPR(1,1,2,1,1)というように2つのPRクラスを異なるクラスに設定することで、PLLに供給する信号は2Tマークのキャリアが存在するPR(0,1,2,1,0)やPR(1,1,2,1,1)に相当する信号となり、PLLが正常に動作する。
【0108】
また、PRのビット長はMLのビット長と関係なく、たとえば以下に示すようにMLは5ビットであるが、PR(1,2,3,4,4,3,2,1)のように、PRのビット長についてはMLのビット長以上の8ビットとすることも可能である。その場合には、次式(5)に示すブランチメトリックの計算式を用いることが可能である。ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12344]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列である。CV(n)は各ブランチB(n)に対応する補償値である。この様にブランチメトリックの計算の際のPR特性としては上位5ビット(ML長と同じビット数)を用いる。この状態でパターン補償値を学習する。こうすることで、下位3ビットの分についてはパターン補償値により、符号間干渉が再現される。
【0109】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(5)
【0110】
また、次式(6)に示すブランチメトリックの計算式を用いて、PR特性の下位3ビットのデータは仮判定結果を用いる方法も可能である。ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12344321]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)の上位5ビット(ML長と同じビット数)は各ブランチB(n)に対応するビット列、下位3ビット(残りのビット数)は各ブランチ(n)に対応する3ビットの仮判定ビット列である。CV(n)は各ブランチB(n)に対応する補償値である。
【0111】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(6)
【0112】
以上により、より超解像再生信号に適応した長いPRクラスを用いることが可能となり、さらにビットエラーレートを低減できる。
【0113】
なお、上記実施形態では、情報の再生のみが可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
【0114】
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの光源を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光を発光する複数の光源を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明の情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び光ディスクは、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超解像光ディスクを説明するための図である。
【図3】超解像光ディスクにおける再生パワーとCNRとの関係を説明するための図である。
【図4】図4(A)は微小開口領域を説明するための図であり、図4(B)は微小マスク領域を説明するための図である。
【図5】微小マスク領域の作用を説明するための図である。
【図6】超解像光ディスクにおける反射光の光強度分布と再生パワーとの関係を説明するための図である。
【図7】図7(A)〜図7(B)はクロックタイミングと光ディスクからの反射光の光強度を示す概念図である。
【図8】デコーダ28eのブロック図である。
【図9】ビタビ復号器66’のブロック図である。
【図10】光ディスク装置20に用いられるPRクラスPR(1,2,2,2,1)に対応する状態遷移図である。
【図11】図10の状態遷移図に対応するトレリス線図である。
【図12】パスメモリ72のブロック図である。
【図13】判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。
【図14】仮判定機能付きパスメモリ76のブロック図である。
【図15】仮判定結果の取得を説明するための図である。
【図16】パターン補償メモリ75のブロック図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は補償値CV(n)の決定方法を説明するための図である。
【図18】図18(A)はADC62の出力信号のアイパターンを示す図であり、図18(B)は、非対称FIRフィルタ63の出力信号のアイパターンを示す図である。
【図19】図19(A)は判定帰還ビットがない場合の判定帰還型ビタビ復号器66からの出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(B)は判定帰還ビットが3ビットの場合の判定帰還型ビタビ復号器66の出力信号のアイパターンを示す図である。
【図20】従来技術と本発明の効果の比較を示す図である。
【図21】最短記録マーク長約162nmでの非線形補正ビット数とエラーレートの関係のグラフを示す図である。
【図22】補償値学習機構30を説明するための図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、光ディスク15の各領域を説明するための図である。
【図24】分散値付きのB(6)補償値セット格納メモリ516のテーブル説明するための図である。
【図25】非線形成分補正信号出力機構31のブロック図である。
【図26】デコーダ28eの変形例を示すブロック図である。
【図27】高密度記録を行う際に行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図28】光ディスク15のTOC領域を示す図である。
【図29】PLL67のブロック図である。
【図30】相互相関PLL67bを用いたデコーダ28eのブロック図である。
【図31】相互相関PLL67bのブロック図である。
【図32】相互相関位相比較器114のブロック図である。
【図33】相互相関位相比較器114の動作フローチャートである。
【図34】相互相関PLL67bを用いたデコーダ28eの変形例を示すブロック図である
【図35】非線形成分補正信号出力機構31の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0117】
15…光ディスク、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28d…RF信号生成回路、28e…デコーダ、65…等価回路、66…判定帰還型ビタビ復号器、75…パターン補償メモリ、76…仮判定機能付きパスメモリ、77…補償機能つきブランチメトリック計算器、12…遅延器、13…非線形成分補償器、67…PLL。
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び光ディスクに係り、さらに詳しくは、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び前記情報再生装置又は情報再生方法に用いられる光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進歩やデータの圧縮技術の向上などにともない、光ディスクの大容量化が要求されている。この要求に対する主な方策としては、情報の再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくし、光学系の解像度を向上させることが考えられる。
【0003】
例えば、DVD(digital versatile disc)などよりも記録容量の大きなBD(blu-ray disc)などの光ディスクに対し情報の再生及び記録を行う光ディスク装置などでは、波長が390nmから420nm程度のレーザ光を、開口数が0.70から0.90程度の対物レンズで集光することにより、光ディスクの記録層上に形成されるレーザ光のスポット径を0.48μm程度まで絞りこみ、例えば0.160μmから0.138μm以下の直径の記録マークによる情報の読み出し、及び書込みが可能になっている。
【0004】
しかしながら、光ディスクに用いられるポリカーボネイト材料の透過性などの問題から、これ以上のレーザ光の短波長化や、対物レンズの高NA化を行うことは困難であるため、最近では、光記録の分野において、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報の再生(以下、「超解像再生」という)が可能な光ディスク(以下、「超解像光ディスク」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0005】
この超解像光ディスクは、レーザ光が照射されると、例えばその光学定数が変化する材料を含む超解像層を有しており、この超解像層に再生用のレーザ光が集光されたときの上記光学定数の変化に起因して光スポット内に微小マスク領域あるいは微小開口領域が形成されることにより超解像再生を可能とするものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている光ディスク装置を用いて超解像光ディスクに記録されている情報を再生した場合には、光ディスクの反射光から得られるRF信号に非線形歪みが生じ再生エラーとなる頻度が高いため、容量の大幅な向上は困難であるという不都合があった。
【0007】
一方、近年では光ディスク装置のデジタル情報再生装置において、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式を採用することが広く行われている。これは、デジタル情報を記録する記録媒体の記録密度が高くなるにつれて、デジタル情報1ビットの読み込み信号を、その隣接するビットによる影響(符号間干渉)無しに読み込みにくくなったことに起因するものである。
【0008】
パーシャルレスポンス方式は、波形等価処理部において積極的に既知の線形な波形干渉を作り込むことにより、等価復号処理による信号性能の劣化を防ぐものであり、最近では、このパーシャルレスポンス方式に、最尤推定法であるML(Maximum Likelihood)方式を組み合わせることにより、高精度な信号処理を可能としたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が実用化されている。
【0009】
しかしながら、光ディスクの読み込み系は、光の回折を用いて信号を読み出すという原理上非線形性を有し、RF信号にはその非線形性に起因するアシンメトリが存在する。また、RF信号には、記録時の熱干渉によって、記録パターンに依存したマーク位置変動に起因する非線形成分も存在する。これらのRF信号に含まれるアシンメトリや非線形成分などは、光ディスクに記録される情報の高密度化を図る際に問題となる。
【0010】
そこで、非特許文献1に示されているように、非線形補償テーブルを用いて、符号間干渉の非線形成分を考慮した状態で、最尤推定を行う方法が提案されている。しかし、非特許文献1に記載された方法は、最尤推定ビット長と非線形補償テーブル長が同等であるため、記録媒体上における光スポット長に対して非線形補償テーブル長が短い場合、つまり、高密度記録の場合にはその非線形補償効果は限定的である。特に、光学系の回折限界を超える高密度記録が行われている超解像再生媒体からの情報再生時や、コマ収差や非点収差などの光スポット径が大きくなる収差の発生時には、その非線形補償効果は十分ではない。
【0011】
そのため、例えば特許文献5に示されているように、あるビット長の線形な符号間干渉予測に加え、より長いビット長において非線形補償テーブルを有し、非線形補償と最尤推定を行う方法が開示されている。しかしながら、本方法では最尤推定を、非線形補償ビット長と同じ範囲行う必要があるため、非線形補償範囲を広くすればするほど、回路規模が飛躍的に大きくなる問題がある。最尤推定を実現するための回路は、概ねビットを1つ増やすごとに状態数が2倍になるため、回路規模も2倍となる。そのため、例えばパターン補償ビットを3ビットずつ付加した場合には、回路規模は10倍以上にもなり、再生装置が高価となってしまう。
【0012】
また、例えば特許文献6には、過去の仮判定結果を用いることで、回路規模を大きく増大させることなく、長い範囲のビット列に対して、非線形補償を行う方法が開示されている。しかしながら、これらの非線形補償による記録密度の増加は1割から2割と小さいものであり、容量の大幅な向上は困難であるという不都合があった。
【0013】
【特許文献1】特開平6−183152号公報
【特許文献2】特開平5−205314号公報
【特許文献3】特開平11−250493号公報
【特許文献4】特開2001−250274号公報
【特許文献5】特開2004−326839号公報
【特許文献6】特開2001−126394号公報
【非特許文献1】Naoki Ide, ”Adaptive Partial-Response Maximum-Likelihood Detection in Optical Recording Media” ISOM2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報再生装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報再生方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の第3の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる情報記録再生装置を提供することにある。
【0017】
また、本発明の第4の目的は、回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は第1の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;前記記録マークのビットパターン毎の複数の補償値が記録されたパターン補償メモリと;前記PRML方式に応じた複数のステートに対する過去の判定結果を出力する機能を有するパスメモリと;前記複数の補償値のうちの前記過去の判定結果に応じた補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック計算器と;を備える情報再生装置である。
【0019】
これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度は、過去の判定結果に応じた補償値を用いて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0020】
本発明は第2の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の補償値を算出する補償値算出工程と;前記パーシャルレスポンス特性に応じて決まる複数のステートに対する、過去の判定結果に応じた前記補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック値算出工程と;を含む情報再生方法である。
【0021】
これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度は、過去の判定結果に応じた補償値を用いて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0022】
本発明は第3の観点からすると、本発明の情報再生装置に用いられる光ディスクである。これによれば、波形等価されたRF信号の各ステートに対応する尤度はディスクに記録された情報に基づいて算出される。したがって、尤度の演算過程で非線形性が補償され、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【0023】
本発明は第4の観点からすると、光ディスクに対し情報の記録及び再生を行う情報記録再生装置であって、本発明の情報再生装置と;前記光ディスクに対し、回折限界よりも小さいピッチの記録マークで情報を記録する情報記録装置と;を備える情報記録再生装置である。
【0024】
これによれば、情報記録再生装置は本発明の情報記録再生装置を備えている。したがって、尤度の演算精度を向上することが可能となり、結果的に光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を精度良く再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0026】
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23を光ディスク15の半径方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、光ディスク15は、一例として図2に示されるように、1組の透明基板15a,15eに挟まれる形で、情報が記録されている記録層15c、光を反射する反射層15b、及び温度により光学定数が変化する材料を含む超解像層15dを有し、超解像再生が可能な超解像光ディスクであるものとする。
【0027】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15にレーザ光を照射するとともに、光ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、光ディスク15に対応する波長のレーザ光を出射する光源と、該光源からの光を光ディスク15に集光する対物レンズを含み、光ディスク15で反射され対物レンズを介した戻り光を所定位置に導く光学系と、前記所定位置に配置され前記戻り光を受光する複数の受光領域を有する受光器と、対物レンズを微小駆動する駆動系(いずれも図示省略)などを備えている。受光器の各受光領域は、それぞれ受光光量に応じた信号(光電変換信号)を再生信号処理回路28に出力する。また、駆動系は、対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及び対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータを有している。ここでは、一例として光源から出射されるレーザ光の波長を635nm、対物レンズの開口数(NA)を0.6とする。この場合の回折限界は約530nm(レーザ光の波長/2NA)である。
【0028】
ところで、光ピックアップ装置23を用いて光ディスク15に400nmピッチで形成されている記録マーク(記録マーク長=200nm)を再生したときのCNR(キャリア/ノイズ比)と再生パワーPrとの関係が一例として図3に示されている。図3では、再生パワーPrが2mW以上では、CNRが30dBを超えており、超解像再生が可能であることが分かる。なお、以下では、超解像再生が可能な再生パワーを「超解像再生パワー」ともいう。
【0029】
光ディスク15に超解像再生パワーのレーザ光が集光されると、その部分の温度が上昇し、光スポット内に、一例として図4(A)に示されるように、超解像層15dに形成されたビームスポットBS内に微小開口領域HA、あるいは、一例として図4(B)に示されるように微小マスク領域MAが生じる。微小開口領域HA及び微小マスク領域MAは、いずれも光スポットの進行方向と反対の方向に尾を引いた形状を有している。なお、図中の黒丸は光ディスク15に形成された記録マークであり、超解像層15dに微小開口領域HA及び微小マスク領域MAのどちらが生じるかは、超解像層15dの材料や層構成に依存している。
【0030】
微小開口領域HAが生じる場合には、記録マークが微小開口領域HAに含まれるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。一方、微小マスク領域MAが生じる場合には、記録マークが微小マスク領域MAによってマスクされるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。例えば、マスク領域MAが生じる場合には、一例として図5に示されるように、光軸をAXとするレーザ光23aが照射されることによる加熱に起因して超解像層の光学定数が変化する。その結果スポット後方部にマスクMAが形成され、反射層15bからの反射率が低下する。超解像層15dの入射側表面PLでの光強度分布を考えると、図5の曲線L1で示される入射光は対称な光スポット形状をしているが、曲線L2で示される反射光は非対称な光スポット形状(状態)となる。したがって、記録層15cからの情報を、非対称な形状の光スポットで、読み出すことになり、RF信号には位相歪みが生じる。
【0031】
また、超解像層の入射側表面PLにおける反射光の光強度分布の再生パワー依存性が、一例として図6に示されている。なお、図6では、光スポットの中心位置を基準(原点)としている。これによると、再生パワーPrを超解像再生パワーまで上げると、光スポット後方がマスクされ、反射光の光強度分布が後部から削れた形状に変化している。図6に示されるように、超解像光ディスクの記録層に形成される光スポットの形状は、レーザ光の波長を小さくした場合や、レーザ光を記録層に集光する対物レンズのNAを大きくした場合に光ディスクの記録層に形成される光スポットと比較すると、裾の広さは変わらないまま、光スポット強度分布の先端部が鋭くなっているのが特徴である。
【0032】
したがって、超解像光ディスクにおいて記録密度を増加させた場合には、レーザ光の波長や対物レンズNAを大きくして光スポットのスポット系を小さくする場合と比較して、レーザ光の光スポットの裾の広さに起因する広い範囲に符号間干渉が生じる。図7(A)は、例えばDVDなどの光ディスクに、通常の記録密度で記録された情報を再生したときのクロックタイミングと、光ディスクからの反射光の光強度を示す概念図であり、図7(B)は、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を再生したときのクロックタイミングと、光ディスクからの反射光を示す概念図であり、図7(C)は、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を、高NAの対物レンズで集光した場合や、短波長のレーザ光により再生した場合のクロックタイミングと、光ディスクからの反射光を示す概念図である。
【0033】
通常の記録密度で記録された情報を再生したときには、光スポットの符号間干渉が起こる領域PAの範囲は図7(A)に示されるように、約3クロック分であるのに対し、2倍の記録密度で記録された情報を再生したときには、図7(B)に示されるように領域PAの範囲は約5クロック分である。また、通常記録密度の2倍の密度で記録された情報を、高NAの対物レンズで集光した場合や、短波長のレーザ光により再生した場合には、光スポットの符号間干渉が起こる領域PAの範囲は、図7(C)に示されるように約3クロック分である。したがって、超解像光ディスクにおいて、例えば2倍以上の密度で記録された情報の再生を行う場合には、図7(B)に示されるように符号間干渉がおこる領域PAの範囲が、図7(C)に示される場合に比べて長くなり、その分長い範囲にわたって符号間干渉を抑圧する必要性が生じる。
【0034】
また、図6に示されるように、超解像光ディスクに記録する際にもレーザ光の光スポットの裾の広さは変化しないため、単純に光スポットが小さくなるわけではない。したがって、超解像光ディスクに対する高密度記録では、光ディスクの記録層に記録マークを高精度に形成することは非常に困難であり、隣接する又は近接する記録マークによる熱干渉などに起因した記録誤差を生じる場合がある。このような記録誤差は非線形な符号間干渉として再生信号に悪影響を与える。
【0035】
また、ピット部とスペース部によるピットパターンが形成された、再生専用の超解像光ディスクにおいても、ピット部とスペース部とでは、構造の差に起因する熱容量の差があり、光スポットが形成されている部分のピットパターンに応じて超解像層の熱分布が変化する。このため、ピットパターンに応じて光スポット形状が変化することになり、非線形な符号間干渉として再生信号に悪影響を与えることが考えられる。
【0036】
以上述べたように、超解像光ディスクに高密度記録された情報の再生を行うためには、長い範囲にわたる非線形な符号間干渉を抑圧することが重要である。
【0037】
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、アンプ28a、サーボ信号生成回路28b、ウォブル信号生成回路28c、RF信号生成回路28d、及びデコーダ28eなどから構成されている。
【0038】
アンプ28aは、光ピックアップ装置23の受光器からの複数の光電変換信号をそれぞれ電圧信号に変換するとともに、所定のゲインで増幅する。
【0039】
サーボ信号生成回路28bは、アンプ28aの各出力信号に基づいてサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号など)を生成する。ここで生成されたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力される。
【0040】
ウォブル信号生成回路28cは、アンプ28aの各出力信号に基づいてウォブル信号を生成する。
【0041】
RF信号生成回路28dは、アンプ28aの各出力信号に基づいてRF信号を生成する。
【0042】
デコーダ28eは前記ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号は駆動制御回路26に出力される。
【0043】
また、デコーダ28eは前記RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。
【0044】
図8はデコーダ28eのブロック図である。図8に示されるようにデコーダ28eは、ハイパスフィルタ(HPF)60、等価回路61、ADコンバータ(ADC)62、非対称FIRフィルタ63、インターポレータ64、等価回路65、判定帰還型ビタビ復号器66、及びPLL67などを備えている。
【0045】
等価回路61はHPF60の後段に配置され、RF信号生成回路28dから入力され、HPF60により低周波ノイズが除去されたRF信号の、光学系によるMTF(modulation transfer function)の低下により減衰した高域成分を強調し符号間干渉を低減する。なお、等価回路61は、ADC62でのAD変換時にエイリアシングノイズが起こらないように高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF)の役割も兼ねている。
【0046】
ADC62は、等価回路61の後段に配置され、等価回路61の出力信号をデジタル信号に変換(AD変換)する。
【0047】
非対称FIRフィルタ63は、タップ中心を原点として非対称な等価係数を持つFIRフィルタであり、ADC62の出力信号に対してフィルタ処理を行い、前述した超解像光ディスクに形成される光スポットの非対称性に起因するRF信号の位相歪みを補正する。
【0048】
インターポレータ64は、ADC62の出力信号あるいは非対称FIRフィルタ63の出力信号が入力され、前後2つ以上の時間のサンプル値から、クロックタイミングにおけるサンプル値を補間する。
【0049】
PLL67は、インターポレータ64の出力信号から光ディスク15に記録されている信号のクロック(以下「再生クロック」ともいう)を再生し、インターポレータ64に前記クロックタイミングを指示する。すなわち、インターポレータ64とPLL67の組み合わせで、再生クロックに同期したサンプリングが行われる。なお、PLL67における再生クロックと信号クロックの位相比較部分は、スライサを用いて二値化した信号において位相比較を行うものでも良いし、再生信号のレベル値と、再生クロックと信号クロックの位相誤差がない場合の理想信号のレベル値との差より位相差を検出する方法を用いたものでも良い。
【0050】
等価回路65は、インターポレータ64の後段に配置され、インターポレータ64の出力信号に対して、所望のPR(Partial Response)特性に応じた応答となるように波形等価を行う。なお、前記所望のPR特性は、例えばPR(1、2、2、2、1)とする。
【0051】
判定帰還型ビタビ復号器66は、詳細については後述するが、等価回路65の後段に配置され、等価回路65の出力信号に対して、最尤(maximum likelihood)復号方式であるビタビ(Viterbi)復号方式で復号処理を行い2値化データを出力する判定帰還型非線形ビタビ復号器である。すなわち、ここでは、等価回路65と判定帰還型ビタビ復号器66とで、パーシャルレスポンス方式と最尤復号方式とを組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の信号処理を行っている。
【0052】
図1に戻り、前記駆動制御回路26は、対物レンズ60の位置ずれを補正するため、再生信号処理回路28からのサーボ信号に基づいて、光ピックアップ装置23の駆動系の駆動信号を生成する。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0053】
前記バッファRAM34には、光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0054】
前記レーザ制御回路24は、光ピックアップ装置23の光源の発光パワーを制御する。
【0055】
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0056】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、光ピックアップ装置23の光源の発光特性、後述する等価係数情報などが格納されている。
【0057】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0058】
《判定帰還型ビタビ復号器の詳細》
ここで、前述の判定帰還型ビタビ復号器66の詳細について説明する。なお、判定帰還型ビタビ復号器66の説明は、一例として判定帰還型ビタビ復号器66のPRクラスがPR(1,2,2,2,1)、最小反転間隔が2Tであるものとして説明するが、判定帰還型ビタビ復号器66のPRクラスはPR(1,2,2,2,1)に限られるものではなく、例えばPR(1,2,2,1)やPR(1,1)などのあらゆるPRクラスであってもよい。また、判定帰還型ビタビ復号器66の、後述する仮判定は3ビットのビット列を用いて行うが、これに限らず、3ビット以上のビット列を用いてもよい。
【0059】
まず説明の便宜上、判定帰還型ビタビ復号器の説明に先立ち、通常のビタビ復号器についての説明を行う。図9には、通常のビタビ復号器66’のブロック図が示されている。図9に示されるように、ビタビ復号器66’はブランチメトリック計算器70、ACS演算器71、パスメモリ72、出力選択器73、及びパスメトリックメモリ74を備えている。また、上記のように構成されるビタビ復号器66’はPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であるため、その状態遷移図は図10に示されるように、4ビットのビット列でそれぞれ表される10個の状態(ステート)S0000〜S1111と、図10中の矢印で示されるように、各ステートS0000〜S1111に対応する16本の枝(ブランチ)B(n)(n=1,2,…,16)を有している。そして、各ステートS0000〜S1111間の状態遷移は図11に示されるトレリス線図で表すことができる。
【0060】
前記ブランチメトリック計算器70は、現時点(図11の時刻t−1)における各ステートから時刻tにおける各ステートまでのブランチの目標値と、入力信号とのユークリット距離(ブランチメトリックBMt)の計算を行う。詳述すると、各ブランチB(n)での目標値はPRクラスと、各ブランチに相当するビット列により規定される値となり、各ブランチB(n)のブランチメトリックBMt(n)は以下の式(1)で表される。
【0061】
BMt(n)=(PP(n)×PR−RF)2 …(1)
ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12221]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列である。例えば、図10のブランチB(5)に対応するビット列PP(5)は[00110]であり、ブランチB(6)に対応するビット列PP(6)は[01111]であるというように、図10においてブランチB(n)に対応する遷移前の状態を示す4ビットのビット列に、遷移後のビット列の先頭の1ビットを加えた5ビットのビット列である。前記ブランチメトリック計算器70は上記式(1)に基づいて、16個のブランチメトリックBMt(n)を計算する。なお、式(1)中の×は行列の掛け算を示す。
【0062】
図9に戻り、ACS(Add-Compare-Select)演算器71は、パスメトリックメモリ74に記憶された時刻t−1における各ステートS0000〜S1111ごとのパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を読み出して、ブランチメトリック計算器70により計算された時刻t−1から時刻tまでのブランチメトリックBMt(n)に、対応するパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を加算して、加算値PM’(n)を算出する。例えばブランチメトリックBMt(5)やブランチメトリックBMt(4)にはパスメトリックPMt−1(0011)が加算され、ブランチメトリックBMt(9)にはパスメトリックPMt−1(1110)が加算される。すなわち遷移を示すブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)に、遷移もとの各ステートのパスメトリックPMt−1が加算される。
【0063】
そして、図11のトレリス線図の時刻tにおける各ステートS0000〜S1111に合流するパスが2本ある場合には、その2本のパスに対応するパスメトリックどうしを比較して、小さい方のパスメトリックに対応するパスを時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、各ステートS0000〜S1111に合流するパスが1本である場合にはそのパスを無条件に時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、それぞれの判断結果をパスメモリ72に記録する。これによってパスメモリ72には、上記のようにACS演算器71による判断結果が順次記録され過去の生残りパスが履歴として記録される。また、ACS演算器71は並行して生残りパスに対応する加算値PM’(n)を時刻tにおける新たなパスメトリック値として、パスメトリックメモリ74のパスメトリックPM(0000)〜PM(1111)の値を更新する。
【0064】
図12は、パスメモリ72のブロック図である。パスメモリ72は、PRクラスによって決まるステートと同じ数のシフトレジスタを備えている。本実施形態ではPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であるから、10個のシフトレジスタを備えるパスメモリセル900〜9016を有している。各パスメモリセル900〜9016のシフトレジスタは、ACS演算器71での判断結果を1時刻ごとに、次のパスメモリセルへシフトしながら保持する。その際。ACS演算器71から出力された推定結果に従い、選択された生残りパスの1時刻前の状態に対応する推定結果がコピーされる。これにより、後段のパスメモリセルにおいては、判断に伴うパスの選択により生残りパスが次第に少なくなり、最終段のパスメモリセル9016のシフトレジスタに残る推定結果はおおむね同じ結果となる。すなわち、パスマージが完了する。
【0065】
図9に戻り、出力選択器73は、パスメトリックメモリ74の中から、最小のパスメトリック値に対応する、つまり尤も確からしい1本の生残りパスを選択する。そして、パスメモリ72の最終段のパスメモリセル9016からの出力のうち、選択されたパスに対応する値を2値化データ(判定値)として出力する。なお、パスメモリ72のパスメモリセルの数が十分である場合で、RF信号の品質が良好な場合にはパスメモリ内の複数のシフトレジスタの最終段に残る結果はおおむね同じ結果になるため、この場合は出力選択器73は必ずしも必要とはされない。
【0066】
次に、本実施形態に係る判定帰還型ビタビ復号器66について説明する。図13は判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。判定帰還型ビタビ復号器66は、前述した従来のビタビ復号器66’と比較して、ブランチメトリック計算器70が補償機能付きブランチメトリック計算器77に代わり、パスメモリ72が仮判定機能付きパスメモリ76に代わり、パターン補償メモリ75が付加されている点で相違する。以下、判定帰還型ビタビ復号器66について、従来のビタビ復号器66’との相違点を中心に説明する。
【0067】
図14は判定帰還型ビタビ復号器66の仮判定結果出力機能付きパスメモリ76のブロック図である。この仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、パスメモリセルの内容をそれぞれのステートに対応した仮判定結果としてパターン補償メモリ75へと出力する。仮判定結果は、最尤推定中のビットのすぐ後のビット情報を有するため、後方ビットの判定情報として、最尤推定に反映することにより、媒体上でより広い範囲(長いビット長)での非線形補償が可能となる。
【0068】
図15は、仮判定結果の取得を説明するための図である。以下、図15を参照しつつ仮判定結果の取得方法について説明する。図15における時刻tから時刻t−4に対応するステートは最尤推定中の状態遷移部分である。また、時刻t−5から時刻t−9に対応するステートは仮判定結果部分である。図15においてt−1における各ステートから、太線の矢印で示される生き残パスに沿って時間を逆にたどっていくと、各生き残りパスに対応する仮判定ビット列は一つに決まる。すなわち、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111からパスマージが終了した時刻t−9におけるステートS0000までの、生残りパスをたどるルートは一義的に決まり、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111の時刻t−5から時刻t−9までの仮判定ビットは、図15に示されるようにそれぞれ決定される。そして、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、図14と図15を総合するとわかるように、時刻t−5から時刻t−7の各ステートS0000〜S1111に対応する3ビットのビット列B(0000)〜B(1111)を仮判定ビット列としてパターン補償メモリ75に出力する。
【0069】
図16は、パターン補償メモリ75のブロック図である。図16に示されるようにパターン補償メモリ75は、各ブランチB(n)に対応する16のB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116を有しており、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76からの仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)はそれぞれ対応するB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に入力される。そして、各B(n)補償値セット格納メモリ511〜5116からは、入力された仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)に対応する補償値CV(n)が出力される。一例として、図17(A)にはB(1)補償セット格納メモリ511のビット列B(0000)と補償値CV(1)の対応を示すテーブルが示され、図17(B)にはB(6)補償セット格納メモリ516のビット列B(0110)と補償値CV(n)の対応を示すテーブルが示され、図17(C)にはB(12)補償セット格納メモリ5112のビット列B(1100)と補償値CV(12)の対応を示すテーブルが示されている。例えば、図15のトレリス線図に示されるように生残りパスが決定している場合には、B(1)補償値セット格納メモリ511に入力されるビット列B(0000)は(110)である。したがって、B(1)補償値セット格納メモリ511では、図17(A)のテーブルに基づいて補償値CV(1)の値が−0.11と決定される。同様に、B(6)補償値セット格納メモリ516に入力されるビット列B(0110)は(000)であり、B(12)補償値セット格納メモリ5112に入力されるビット列B(1100)は(111)である。したがって、(6)補償値セット格納メモリ516及びB(12)補償値セット格納メモリ5112では、図17(B)及び図17(C)のテーブルに基づいて補償値CV(6)の値が−0.01と決定され、補償値CV(12)の値が−0.08と決定される。そして、一例として上述のように決定された補償値CV(1),CV(6),CV(12)は補償機能付きブランチメトリック計算器77へ出力される。
【0070】
図13に戻り、補償機能付きブランチメトリック計算器77は、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値に、パターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と入力信号としての波形等価されたRF信号の値とのユークリッド距離(ブランチメトリック)の計算を行う。次式(2)は補償機能付きブランチメトリック計算器77によるブランチメトリックの計算式であり、補償機能付きブランチメトリック計算器77は式(2)によりブランチメトリックBMt(n)をそれぞれ計算する。なお、式(2)は各ブランチB(n)に対応する補償値CV(n)項を有している点で式(1)と相違している。
【0071】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(2)
【0072】
上記式(2)により各ブランチメトリックBMt(n)の計算が終了すると、判定帰還型ビタビ復号器66では上述した従来のビタビ復号器66’と同様の方法で、2値化信号が生成される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る光ディスク装置20によると、各ブランチB(n)に対応するブランチメトリックBM(n)は、補償機能付きブランチメトリック計算器77により、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値にパターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と、入力信号としての波形等価されたRF信号の値とに基づいて計算される。したがって、最尤推定過程においてRF信号に含まれる非線形成分が補償され、結果的に光ディスク15に回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0074】
また、ブランチメトリックBM(n)を、各ブランチB(n)に対応する3ビットのビット列B(0000)〜B(1111)により決まる補償値CV(n)を加味して計算することは、本実施形態のPRクラスがPR(1,2,2,2,1)であることから、非線形補正ビット数が8ビットであることと等価である。したがって、仮判定ビット列の3ビットを除く5ビット分の回路を持つ復号器により8ビット分の回路を有する復号器とほぼ等価な復号を行うことができ、装置の低価格化を図ることが可能となる。
【0075】
図18(A)はADC62の出力信号のアイパターンを示す図であり、図18(B)は、非対称FIRフィルタ63の出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(A)は判定帰還ビットがない場合、すなわち非線形補正ビット長が5ビットの時の、後述する補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69からの出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(B)は判定帰還ビットが3ビットの場合、すなわち非線形補正ビット長が8ビットのときの、後述する補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力信号のアイパターンを示す図である。図18(A)に示されるアイパターンでは、まったくアイが開いておらず、図18(B)に示されるアイパターンでは、若干アイは開いたものの、十分な状態とはほど遠い上、アシンメトリも大きい。また、図19(A)示されるアイパターンでは、アシンメトリがなくなり、若干アイも開くが、まだ十分ではない。一方、図19(B)に示されるアイパターンでは、きれいにアイが開いて、十分な非線形補償が出来ていることが分かる。すなわち、前述したとおり、光ディスク15の再生時には、長い範囲の非線形補償が必要であり、実現する手段としては、回路規模の面から判定帰還が最適である。なお、非線形フィルタであるボルテラ(Volterra)フィルタを用いて、非線形な符号間干渉を除去する方法も、超解像光ディスクに対するビットエラーレート低減効果が高いが、回路規模の面から考えて判定帰還を用いる本方式が最良である。
【0076】
図20は、従来技術と本発明の効果の比較を示す図である。ビットエラーレートの限界を1×10−4とすると、特許文献1〜4を代表する超解像光ディスクの容量増加効果は1%程度と非常に少ない。また、特許文献6の方式では、4%程度の容量増加が見込めるが、その効果は十分ではない。それと比較し、本発明では実現可能な最短マーク長は170nm以下まで短縮されており、実に1.45倍以上(45%以上)の容量増加が見込める。
【0077】
また、次表1は、最短記録マーク長約162nmでの判定帰還ビット数とエラーレートの関係を示す表である。非線形補償を行わない場合には、ビットエラーレートは2.01×10−2である。非線形補償ありで仮判定ビットがない場合には、4.44×10−3とビットエラーレートが約半分となる。さらに、本方式の仮判定ビットを3ビット以上とした場合には2.67×10−4と、判定帰還は1桁以上のビットエラーレートを低減する効果がある。また、非線形補償長は8ビットあれば十分であり、8ビットと9ビット及び10ビットでは同じ桁数のビットエラーレートとなっている。
【0078】
【表1】
【0079】
また、図21には最短記録マーク長約162nmでの非線形補正ビット数とエラーレートの関係を表すグラフが示されている。非線形補正ビット数が7ビットと8ビットの間にビットエラーレートの大きな改善効果があり、非線形補正ビット数は最低8ビットあることが必要であることが分かる。また、8ビット以上でビットエラーレートが実用上問題なくなる1×10−4台に入っており、8ビット以上のビットパターンに対して補償値を持っていれば良いことが分かる。
【0080】
なお、上記実施形態では、補償値には判定帰還型ビタビ復号器66からの過去の判定結果より計算された線形な符号間干渉予測値と、その時刻に相当する実信号の誤差値を逐次時間平均した平均値を使用することができる。図22には、一例として補償値学習機構30のブロック図が、判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図とともに示されている。
【0081】
補償値学習機構30は、補償値計算器9と、入力信号を判定帰還型ビタビ復号器66での復号時間だけ遅延させる遅延器12と、判定帰還型ビタビ復号器66からの2値化信号にPRクラスに相当する符号間干渉を与えるPR符号間干渉作成器10などを備えている。補償器学習機構30では、判定帰還型ビタビ復号器66からの2値化信号と、遅延器12を介した等価回路65から出力される信号からPR符号間干渉作成器10を介した2値化信号を減算した誤差値(入力信号の非線形成分)とが補償値計算器9に入力され、補償値計算器9では、PR符号間干渉作成器10を介した2値化信号に基づいて、2値化データ列に相当するビットパターンの補償値をパターン補償メモリ75から読み出し、入力された誤差値と補償値との差を導き、その差に所定の定数を掛けた値を補償値に加えて、パターン補償メモリ75の値の書換えを行う。補償学習機構30により、以上の動作が繰り返されることで最適な補償値を得ることが可能となる。
【0082】
なお、例えば1クロック毎など、補償値書換え周期が短い場合、つまり補償値書き換え周期の逆数である補償値書換え周波数が大きい場合、PLL67中の再生クロックを得るためのフィードバックループと干渉をおこす場合があるため、補償値の書換え周波数をPLL67中のフィードバックループのオープンループ交差周波数以下の値にすることが再生安定性の面から望ましい。
【0083】
また、最初から高密度な記録の再生を行う場合には、非線形補正のための補償値情報、またFIRフィルタ63における波形等価係数の適切な値が分かっていないためPLL67が信号より再生クロックを抽出することが出来ず、全く再生が行えない可能性がある。その場合、図27のフローチャートに示されるように、始めに低密度な記録密度について補償値、波形等価係数を学習し、次に少し高密度な記録密度における再生を行い、そこでまた補償値を学習し、波形等価係数を更新する、というように段階的に高密度な再生のための補償値・波形等価係数を求める方法で最終的に高密度な再生においてもPLL67が正常に再生クロックの抽出を行い、正確な再生が可能となる。
【0084】
また、超解像光ディスクに、TOC(Table Of Contents)情報やディスク媒体の一定区間毎にあらかじめ既知のビットパターンで構成される補償値トレーニング用領域を設けておき、補償値トレーニング用領域の再生時に、判定帰還型ビタビ復号器66からの出力を用いる代わりに、既知のビットパターンを用いて補償値を求めても良い。補償値トレーニング領域は、例えば図23(A)に示されるように、光ディスク15の記録領域2の内周部にあるTOC領域1や、図23(B)に示されるように、光ディスク15の、記録領域2に黒点3で示されるように周期的に配置しておくことができる。これにより、判定帰還型ビタビ復号器66から出力されるエラービットの影響を受けずに安定して補償値の学習が可能となる。
【0085】
もちろん、前記トレーニング用領域はROMに対しては製作時にあらかじめ既知のビットパターンを記録しておき、書き換え型・追記型の光ディスクに対しては、あらかじめ記録してあるビットパターンを用いても良いし、既知のビットパターンを記録するトレーニング用の未記録部を用意しておき、用意してある既知のビットパターンを書き込んでも良い。また、その際に前記の通り、高密度におけるPLLの安定性を向上させる目的で複数の記録密度において補償値を学習するため、複数の記録密度におけるトレーニング用領域を準備しておくことで、高密度な再生が可能となる。例えば、図28に示されている光ディスク15におけるTOC領域1に低密度に記録された補償値トレーニング用領域を、光ディスクの別な位置にあるTOC領域2に高密度に記録された補償値トレーニング用領域を設ける事が可能である。
【0086】
また、超解像光ディスク15にその媒体に適した補償値を記録しておき、再生時に光ディスク装置20に読み込んで使用することも可能である。例えば、光ディスク15のウォブル情報やTOC情報に補償値に関する情報(予備補償値情報)が含まれている場合には、CPU40は、ディスクマウント時にその予備補償値に関する情報も光ディスク15から読み出してRAM41に保存し、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨の通知があると、RAM41に保存されている予備補償値に関する情報と再生条件とに基づいて、パターン補償メモリの値を設定するようにしてもよい。
【0087】
超解像層の構成、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び光源の駆動波形などの再生条件により、超解像層の温度分布が変化し、開口部またはマスク部の形状が変化するため、非線形性の発現の仕方が異なる。そのため各パラメータも単数または複数規定して、その時の最適な予備補償値を持つと良い。この場合に、例えば、予備補償値情報が4倍速での再生に対応するものであり、ユーザから16倍速での再生が要求されたときに、予備補償値情報から16倍速での再生に対応する補償値を予測しても良い。
【0088】
また、過去のビタビ復号器からの判定結果より計算された線形な符号間干渉予測値と、その時刻に相当する実信号の誤差値はビットパターンごとに確率分布を持つ。そのため、補償値と同時に、分散値VV(n)も各B(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に記憶しておき、ブランチメトリックBM(n)の計算を次式(3)を用いて行うことで、さらに分散値の影響も考慮に入れた最尤推定が可能となり、ビットエラーを抑える効果を向上させることができる。なお、kは1〜4の定数である。
【0089】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2/(VV(n))k …(3)
【0090】
構成としては、各ブランチB(n)のB(n)補償値セット格納メモリ511〜5116に、補償値CV(n)に加え分散値VV(n)を記憶しておき、補償値CV(n)と同様に仮判定結果、すなわちビット列B(0000)〜B(1111)に基づき分散値VV(n)を補償機能付きブランチメトリック計算器77に伝える。補償機能付きブランチメトリック計算器77は上記の式に従いブランチメトリックBMを計算する。なお、分散値付きのB(6)補償値セット格納メモリ516のテーブルを一例として図24に示す。なお、分散値の代わりに分散値のルートを取った偏差値などを記憶しておいてももちろん良い。また、同様の方式は特開2005−223584号公報に開示されているが、下記の理由により本実施形態における判定帰還型ビタビ復号器66においてその効果は飛躍的に高まる。
【0091】
非線形補償ビット長が短い場合には、中心極限定理によりおのおののビットパターンの等価誤差値の確率分布は足しあわされて正規分布に近くなる。しかし、本発明の判定帰還型非線形ビタビ復号器では補償ビット長を増やすことにより、各ビットパターン特有の確率分布が現れ、分散値に差が出るため効果が高い。もちろんこの分散値考慮も、特許文献6に示されている判定帰還型非線形ビタビ復号器単独では長いビット長の非線形補償の必要性がないため、その効果は薄く、超解像光ディスクの場合に飛躍的に効果が高まる。次表2は分散値を考慮した場合の効果を示す表である。表2に示されるように非線形補正ビット長が短い場合には、ビットエラーレートの低減効果は1割程度と薄いが、非線形補正ビット長を増やすと、ビットエラーレートを半分以下に出来る効果がある。
【0092】
【表2】
【0093】
また、図25には、一例として、非線形成分補正信号出力機構31のブロック図が、判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図とともに示されている。判定帰還型ビタビ復号器66に入力された信号には非線形成分が含まれているが、パターン補償メモリ75の値で、非線形成分を補償することで入力信号から非線形成分を取り除くことが出来る。非線形成分補償器13は、2値化データ列に相当するパターンの補償値をパターン補償メモリ75から読み出し、遅延器12により判定帰還型ビタビ復号器66での復号時間だけ遅延された信号から補償値の値を減算し、非線形成分が補償された再生信号を得ることができる。
【0094】
また、図35には非線形成分補正信号出力機構31の変形例のブロック図が示されている。ここで、出力選択器13bは出力選択器73と同じ機能を持ち、パスメトリックメモリ74の中から、最小のパスメトリック値に対応する、つまり尤も確からしい1本の生残りパスを選択する。ただし、出力選択器73ではパスメモリ76の最終段(例えば図14ではパスメモリセル9016)より判定値を出力している点が異なり、接続を見ると分かるようにパスメモリ76の仮判定出力(例えば図14ではパスメモリセル904)からの出力のうち、選択されたパスに対応する値を2値化データ(仮判定値)として出力する。これにより、仮判定結果はパスメモリ最終段と比較して、エラー率は劣るものの、復号器での判定値出力までのレイテンシは小さいため、PLLループ内の遅れ時間が短縮され、PLLが安定化する。
【0095】
このようにして得られた、再生信号を図26に示すようにクロック抽出用のPLL67に出力することで、PLL67では再生クロックを安定して抽出することが可能となり、ビットエラーを低減することができる。また、本再生信号のアイパターン・ジッタ値などを監視することにより、システムの再生信号品質の指標として使用することが可能である。
【0096】
ここで、PLL67についてさらに解説する。図29にPLL67の詳細ブロック図を示す。スライサ113により、入力されたRF信号は適切な信号レベルで二値化され、エッジ検出位相比較器112へ入る。ここで、VCO(Voltage Controlled Oscillator電圧制御発振器)110からの基準周波数信号とスライサ113より入力された信号について、両者の立ち上がり、立ち下がりエッジの位相差を得る。ループフィルタ111は、PLL67のループ時定数を決定しており、LPF(ローパスフィルタ)やリードラグフィルタなどによって構成されている。以上の構成によりPLL67は再生クロックを抽出する。
【0097】
ここで、PLL67はスライサとエッジ検出の位相比較器を用いている都合上、最短マークのCN比が小さい、高密度記録の再生時や超解像を用いた再生時にはPLLの動作が不安定となり、ビットエラーの増大を招く。そこで、PLL67の代わりに図31に示した相互相関PLL67bを用いることで上記の課題を解決できる。なお、合わせてデコーダ28eの構成も図26に示される構成から図30に示される構成へ変更する。
【0098】
ここで、PR符号間干渉作成器67aは図22のPR符号間干渉作成器10と機能は同じものであるので、PR符号間干渉作成器67bを追加する代わりに、図23のPR符号間干渉作成器10の出力を用いても良い。また、PR符号間干渉作成器67bに用いるPRクラスはなるべく等価回路65で用いるPRクラスに近い方が望ましいが、回路の単純化のためたとえばPR(1)、つまり2値化データそのままをスルーする構成でも十分動作可能である。ただし、後に相互相関演算を用いる都合上、どんなPRクラスを用いる場合にも、信号のDC(直流)成分をカット、つまりたとえばPR(1)では1と0の二値信号を1と−1とする処理をする必要はある。
【0099】
相互相関PLL67bの説明を以下に示す。相互相関位相比較器114によりPR符号間干渉作成器67aと、インターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力の位相比較を行う。なお、図32に相互相関位相比較器114の構成を示す。PR符号間干渉作成器67aからの信号(入力Aとする)は乗算器101aと、遅延器100bにより2T(2クロック)遅延されて、乗算器101bに入力される。また、インターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69からの信号(入力Bとする)は遅延器100aにより1T(1クロック)遅延され、乗算器101aと、乗算器101bに入力される。つまり、それぞれ、1T遅延された入力Aと、入力Bの積と、1T遅延された入力Aと、2T遅延された入力Bの積が演算されて、両者は減算器102により差をとられる。なお、この後LPF(ローパスフィルタ)であるループフィルタ111があることを考慮すると、この動作は1T遅延された入力Aと入力Bの相互相関と、1T遅延された入力Aと2T遅延された入力Bの相互相関の差をとっていることになる。つまり、相互相関位相比較器114とループフィルタ111は、合わせて2つの相互相関演算回路として働いている。
【0100】
【数1】
【0101】
ここで、上記式(4)は、相互相関の演算式である。xが入力A、yが入力B、tが時間、Rが相互相関値である。またkは整数である。ここで、式中のΣ(シグマ)は図31の構成ではループフィルタ111が役割を担う。もし、入力Aと入力B両者の位相差がない場合には、相互相関値は最大となる。そのため相互相関値を最大となるようにPLLをロックすれば良いが、フィードバックループを構成するためには、位相差0で誤差信号0となり、誤差量の符号が認識できる位相誤差信号を得る必要がある。そのため、この構成では、相互相関値は位相誤差量0点を中心として対称であることを利用し、入力Aとプラスに1Tずらした入力Bの相互相関と、入力Aとマイナスに1Tずらした入力Bの相互相関との差を得ることで位相比較を行い、上記の必要な位相誤差信号を得る。つまり式(4)を用いて表すと、位相誤差信号=R(1)−R(−1)としている。以上の動作をまとめた相互相関位相比較器114の動作フローチャートを図33に示す。ループフィルタ111を通った後、VCO110により位相誤差量に応じた周波数の信号が再生されて、RF信号の再生クロックが抽出できる。
【0102】
ここで、相互相関PLL67bの入力にはインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力が利用できるが、特に非線形成分を取り除いた補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力を用いることで、非線形成分を取り除いた信号で位相比較が可能となるため、PLLのより安定した動作が可能となる。
【0103】
なお、図には記載していないが、それぞれインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力と、それに該当するPR符号間干渉作成器67aの出力が時間的に対応するように、適当な遅延器が相互相関PLL67bの前には挿入されている。
【0104】
なお、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力には、再生クロックタイミングの調整にインターポレータ64を用いているデコーダ28e(図30)の構成の場合には、前述の通りインターポレータ64または等価回路65または補償信号出力付き判定帰還型非線形ビタビ復号器69の出力を使用できるが、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力には、再生クロックタイミング調整の後段、復号器よりも前段であればよいことを考えると、例えばPLLにより作成された再生クロックがADCのサンプリングクロックとなっている、ADCにおいて再生クロックタイミングの調整を行うデコーダ構成の場合には、相互相関PLL67bへの図31での上側の入力は、ADCより後段、復号器よりも前段のどの段階であってももちろん良い。
【0105】
また、この構成では復号器69の2値化判定結果を用いる都合上、判定結果が誤っている場合にはPLLが正しく動作しない。よって、復号器69の誤り率を小さくするための非線形補正の補償値や等価回路65における波形等価係数が重要となる。そのため、前述した、始めに低密度な記録密度について補償値、波形等価係数を学習し、次に少し高密度な記録密度における再生を行い、そこでまた補償値を学習し、波形等価係数を更新する、というように段階的に高密度な再生のための補償値・波形等価係数を求める方法や、補償値の書換え周波数をPLL67中のフィードバックループのオープンループ交差周波数以下の値にする方法を用いることでPLLの安定性が高まる。
【0106】
また、既知のビットパターンを記録してある前記トレーニング用領域を光ディスクが持つ場合には、復号器69の2値化判定結果を用いる代わりに、その既知ビットパターンを相互相関PLL67bの入力に用いるとPLLの安定性が高まる。その場合のデコーダ28eの構成例を図34に示す。スイッチ67dにより、復号器69の出力と、トレーニング用領域に記録された既知ビットパターン出力器の出力を切り替えることが可能となっている。これにより、非線形補正の補償値や等価回路65における波形等価係数を学習するため、トレーニング用領域を再生する場合には、既知ビットパターンを用いてPLLを安定させ、適切な補償値や波形等価係数を得ることが可能となる。
【0107】
また、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスをFIRフィルタ63におけるPRクラスと異なるクラスに設定することで、例えば、FIRフィルタ63におけるPRクラスにPR(1,2,2,2,1)、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスもPR(1,2,2,2,1)を用いた場合、2Tマークのキャリアが無くなり、スライサを用いたPLLによる再生クロックの抽出が困難となる。しかし、ここでFIRフィルタ63におけるPRクラスにPR(1,2,2,2,1)、PR符号間干渉作成器10におけるPRクラスを2Tキャリアが存在するPR(0,1,2,1,0)やPR(1,1,2,1,1)というように2つのPRクラスを異なるクラスに設定することで、PLLに供給する信号は2Tマークのキャリアが存在するPR(0,1,2,1,0)やPR(1,1,2,1,1)に相当する信号となり、PLLが正常に動作する。
【0108】
また、PRのビット長はMLのビット長と関係なく、たとえば以下に示すようにMLは5ビットであるが、PR(1,2,3,4,4,3,2,1)のように、PRのビット長についてはMLのビット長以上の8ビットとすることも可能である。その場合には、次式(5)に示すブランチメトリックの計算式を用いることが可能である。ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12344]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列である。CV(n)は各ブランチB(n)に対応する補償値である。この様にブランチメトリックの計算の際のPR特性としては上位5ビット(ML長と同じビット数)を用いる。この状態でパターン補償値を学習する。こうすることで、下位3ビットの分についてはパターン補償値により、符号間干渉が再現される。
【0109】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(5)
【0110】
また、次式(6)に示すブランチメトリックの計算式を用いて、PR特性の下位3ビットのデータは仮判定結果を用いる方法も可能である。ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[12344321]Tであり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)の上位5ビット(ML長と同じビット数)は各ブランチB(n)に対応するビット列、下位3ビット(残りのビット数)は各ブランチ(n)に対応する3ビットの仮判定ビット列である。CV(n)は各ブランチB(n)に対応する補償値である。
【0111】
BMt(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF)2 …(6)
【0112】
以上により、より超解像再生信号に適応した長いPRクラスを用いることが可能となり、さらにビットエラーレートを低減できる。
【0113】
なお、上記実施形態では、情報の再生のみが可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
【0114】
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの光源を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光を発光する複数の光源を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明の情報再生装置、情報記録再生装置、情報再生方法、及び光ディスクは、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超解像光ディスクを説明するための図である。
【図3】超解像光ディスクにおける再生パワーとCNRとの関係を説明するための図である。
【図4】図4(A)は微小開口領域を説明するための図であり、図4(B)は微小マスク領域を説明するための図である。
【図5】微小マスク領域の作用を説明するための図である。
【図6】超解像光ディスクにおける反射光の光強度分布と再生パワーとの関係を説明するための図である。
【図7】図7(A)〜図7(B)はクロックタイミングと光ディスクからの反射光の光強度を示す概念図である。
【図8】デコーダ28eのブロック図である。
【図9】ビタビ復号器66’のブロック図である。
【図10】光ディスク装置20に用いられるPRクラスPR(1,2,2,2,1)に対応する状態遷移図である。
【図11】図10の状態遷移図に対応するトレリス線図である。
【図12】パスメモリ72のブロック図である。
【図13】判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。
【図14】仮判定機能付きパスメモリ76のブロック図である。
【図15】仮判定結果の取得を説明するための図である。
【図16】パターン補償メモリ75のブロック図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は補償値CV(n)の決定方法を説明するための図である。
【図18】図18(A)はADC62の出力信号のアイパターンを示す図であり、図18(B)は、非対称FIRフィルタ63の出力信号のアイパターンを示す図である。
【図19】図19(A)は判定帰還ビットがない場合の判定帰還型ビタビ復号器66からの出力信号のアイパターンを示す図であり、図19(B)は判定帰還ビットが3ビットの場合の判定帰還型ビタビ復号器66の出力信号のアイパターンを示す図である。
【図20】従来技術と本発明の効果の比較を示す図である。
【図21】最短記録マーク長約162nmでの非線形補正ビット数とエラーレートの関係のグラフを示す図である。
【図22】補償値学習機構30を説明するための図である。
【図23】図23(A)及び図23(B)は、光ディスク15の各領域を説明するための図である。
【図24】分散値付きのB(6)補償値セット格納メモリ516のテーブル説明するための図である。
【図25】非線形成分補正信号出力機構31のブロック図である。
【図26】デコーダ28eの変形例を示すブロック図である。
【図27】高密度記録を行う際に行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図28】光ディスク15のTOC領域を示す図である。
【図29】PLL67のブロック図である。
【図30】相互相関PLL67bを用いたデコーダ28eのブロック図である。
【図31】相互相関PLL67bのブロック図である。
【図32】相互相関位相比較器114のブロック図である。
【図33】相互相関位相比較器114の動作フローチャートである。
【図34】相互相関PLL67bを用いたデコーダ28eの変形例を示すブロック図である
【図35】非線形成分補正信号出力機構31の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0117】
15…光ディスク、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28d…RF信号生成回路、28e…デコーダ、65…等価回路、66…判定帰還型ビタビ復号器、75…パターン補償メモリ、76…仮判定機能付きパスメモリ、77…補償機能つきブランチメトリック計算器、12…遅延器、13…非線形成分補償器、67…PLL。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;
情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;
前記記録マークのビットパターン毎の複数の補償値が記録されたパターン補償メモリと;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する過去の判定結果を出力する機能を有するパスメモリと;
前記複数の補償値のうちの前記過去の判定結果に応じた補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック計算器と;を備える情報再生装置。
【請求項2】
前記パターン補償メモリは、前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値を補償値として記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記パターン補償メモリは、前記パーシャルレスポンス特性とは異なる、第2のパーシャルレスポンス特性と、記録ビットデータとの畳み込み演算により演算される理想的な再生信号と、前記波形等価された前記RF信号との誤差量の平均値をビットパターン毎に補償値として記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記パターン補償メモリは、前記波形等価誤差量の平均値に加え、前記波形等価誤差量の分散値を補償値として記憶することを特徴とする請求項2に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記パターン補償メモリは、8ビット以上のビットパターンに対応した補償値を記憶することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号との位相比較を行う相互相関演算回路を有する再生クロック信号を抽出するクロック抽出回路を更に備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項7】
前記クロック抽出回路において、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第1の時間遅延した信号について相互相関を演算する第1の相互相関演算回路と、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第2の時間遅延した信号について相互相関を演算する第2の相互相関演算回路とを有し、第1の時間遅延量を第2の時間遅延量より大きく設定すると共に、第1の相互相関演算回路の出力と、第2の相互相関演算回路の出力との差をとる減算器を有することを特徴とする請求項6に記載の情報再生装置。
【請求項8】
前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンと、前記光ディスクから読み取ったRF信号を用いて再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程を実行する請求項1〜7に記載の情報再生装置。
【請求項9】
前記クロック抽出回路において、前記PRML方式で復号した信号の代わりに前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンを用いて再生クロック信号を抽出することを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項10】
前記波形等価されたRF信号を、該RF信号を前記PRML方式で復号するのに要する時間だけ遅延する遅延器と;
前記遅延器により遅延されたRF信号の値と、前記パターン補償メモリに記憶された補償値との差に基づいて、前記RF信号の非線系成分を補償する非線形成分補償器と;を更に備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項11】
前記非線形成分補償器において、前記パスメモリにおける前記複数のステートに対する過去の判定結果を用いて、仮判定を行う出力選択器を有することを特徴とする請求項10に記載の情報再生装置。
【請求項12】
前記非線形成分補償器の出力信号の再生クロック信号に対するジッタ値演算器を備える請求項10又は11に記載の情報再生装置。
【請求項13】
前記非線形成分補償器の出力信号から、再生クロック信号を抽出するクロック抽出回路を更に備える請求項10〜12のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項14】
前記光ディスクには、前記補償値に関する補償値情報が記録されており、前記パターン補償メモリは、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも1つと、前記光ディスクに記録されている補償値情報とから、前記補償値を設定することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項15】
前記パーシャルレスポンス特性のビット長が、最尤推定を行う前記ステートのビット長より長いことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項16】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、
前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;
前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;
前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の補償値を算出する補償値算出工程と;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する、過去の判定結果に応じた前記補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック値算出工程と;を含む情報再生方法。
【請求項17】
前記補償値算出工程では、前記パーシャルレスポンス特性に応じたビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値を補償値として算出することを特徴とする請求項16に記載の情報再生方法。
【請求項18】
前記補償値算出工程では、前記パーシャルレスポンス特性とは異なる、第2のパーシャルレスポンス特性と、記録ビットデータとの畳み込み演算により演算される理想的な再生信号と、前記波形等価された前記RF信号との誤差量の平均値を補償値として算出することを特徴とする請求項16に記載の情報再生方法。
【請求項19】
前記補償値算出工程では、前記波形等価誤差量の平均値に加え、前記波形等価誤差量の分散値を補償値として算出することを特徴とする請求項17に記載の情報再生方法。
【請求項20】
位相比較のため、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号の相互相関演算工程を有する再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程と;を更に備える請求項16〜19のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項21】
前記クロック抽出工程において、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第1の時間遅延した信号について相互相関を演算する第1の相互相関演算工程と、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第2の時間遅延した信号について相互相関を演算する第2の相互相関演算工程を有し、第1の時間遅延量を第2の時間遅延量よりも大きく設定すると共に、第1の相互相関演算工程の出力と、第2の相互相関演算工程の出力との差をとる減算工程を有することを特徴とする請求項20に記載の情報再生方法。
【請求項22】
前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンと、前記光ディスクから読み取ったRF信号を用いて再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程と;を更に含む請求項16〜21のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項23】
前記クロック抽出工程において、前記PRML方式で復号した信号の代わりに前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンを用いて再生クロック信号を抽出することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項24】
前記光ディスクから読み取ったRF信号を、該RF信号を前記PRML方式で復号するのに要する時間だけ遅延する遅延工程と;
前記遅延工程で遅延されたRF信号の値と前記補償値との差に基づいて、前記RF信号の非線形成分を補償する非線系成分補償工程と;
前記非線形成分補償工程で非線系成分が補償されたRF信号から、再生クロックを抽出する工程と;を更に含む請求項16〜23のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項25】
前記非線系成分補償工程において、前記過去の判定結果を用いて、RF信号の仮判定を行う出力選択工程を有することを特徴とする請求項24に記載の情報再生方法。
【請求項26】
前記パーシャルレスポンス特性のビット長が、最尤推定を行う前記ステートのビット長より長いことを特徴とする請求項16〜25のいずれか一項に記載の信号再生方法。
【請求項27】
前記補償値算出工程において、低密度な記録密度での補償値を求める第1の補償値算出工程と、第1の補償値算出工程により求めた補償値を用いて情報の再生を行い、高密度な記録密度における補償値を求める第2の補償値算出工程と、を含む請求項16〜25のいずれか一項に記載の信号再生方法。
【請求項28】
請求項14に記載の情報再生装置に用いられる光ディスクであって、
回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;
前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に最適な再生パワー又は線速度、及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも1つと;
前記ビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値及び分散値のうちの少なくとも1つに関する情報が記録された光ディスク。
【請求項29】
請求項28に記載の光ディスクであって、前記平均値及び分散値のうちの少なくとも1つに関する情報がウォブルに記録された光ディスク。
【請求項30】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の情報再生装置を用いる光ディスクであって、
既知のビットパターンからなるビットパターン毎の前記波形等価器における波形等価誤差量の平均値又は分散値学習用領域を有するか、もしくは前記既知のビットパターンを記録するための未記録部を有する光ディスク。
【請求項31】
請求項30に記載の光ディスクであって、複数の記録密度における前記波形等価誤差量の平均値又は分散値学習用領域を有するか、もしくは前記既知のビットパターンを記録するための未記録部を有する光ディスク。
【請求項32】
光ディスクに対し情報の記録及び再生を行う情報記録再生装置であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の情報再生装置と;
前記光ディスクに対し、回折限界よりも小さいピッチの記録マークで情報を記録する情報記録装置と;を備える情報記録再生装置。
【請求項1】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;
情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;
前記記録マークのビットパターン毎の複数の補償値が記録されたパターン補償メモリと;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する過去の判定結果を出力する機能を有するパスメモリと;
前記複数の補償値のうちの前記過去の判定結果に応じた補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック計算器と;を備える情報再生装置。
【請求項2】
前記パターン補償メモリは、前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値を補償値として記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記パターン補償メモリは、前記パーシャルレスポンス特性とは異なる、第2のパーシャルレスポンス特性と、記録ビットデータとの畳み込み演算により演算される理想的な再生信号と、前記波形等価された前記RF信号との誤差量の平均値をビットパターン毎に補償値として記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記パターン補償メモリは、前記波形等価誤差量の平均値に加え、前記波形等価誤差量の分散値を補償値として記憶することを特徴とする請求項2に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記パターン補償メモリは、8ビット以上のビットパターンに対応した補償値を記憶することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号との位相比較を行う相互相関演算回路を有する再生クロック信号を抽出するクロック抽出回路を更に備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項7】
前記クロック抽出回路において、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第1の時間遅延した信号について相互相関を演算する第1の相互相関演算回路と、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第2の時間遅延した信号について相互相関を演算する第2の相互相関演算回路とを有し、第1の時間遅延量を第2の時間遅延量より大きく設定すると共に、第1の相互相関演算回路の出力と、第2の相互相関演算回路の出力との差をとる減算器を有することを特徴とする請求項6に記載の情報再生装置。
【請求項8】
前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンと、前記光ディスクから読み取ったRF信号を用いて再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程を実行する請求項1〜7に記載の情報再生装置。
【請求項9】
前記クロック抽出回路において、前記PRML方式で復号した信号の代わりに前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンを用いて再生クロック信号を抽出することを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項10】
前記波形等価されたRF信号を、該RF信号を前記PRML方式で復号するのに要する時間だけ遅延する遅延器と;
前記遅延器により遅延されたRF信号の値と、前記パターン補償メモリに記憶された補償値との差に基づいて、前記RF信号の非線系成分を補償する非線形成分補償器と;を更に備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項11】
前記非線形成分補償器において、前記パスメモリにおける前記複数のステートに対する過去の判定結果を用いて、仮判定を行う出力選択器を有することを特徴とする請求項10に記載の情報再生装置。
【請求項12】
前記非線形成分補償器の出力信号の再生クロック信号に対するジッタ値演算器を備える請求項10又は11に記載の情報再生装置。
【請求項13】
前記非線形成分補償器の出力信号から、再生クロック信号を抽出するクロック抽出回路を更に備える請求項10〜12のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項14】
前記光ディスクには、前記補償値に関する補償値情報が記録されており、前記パターン補償メモリは、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも1つと、前記光ディスクに記録されている補償値情報とから、前記補償値を設定することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項15】
前記パーシャルレスポンス特性のビット長が、最尤推定を行う前記ステートのビット長より長いことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項16】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、
前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;
前記RF信号を、予め選択された前記PRML方式のパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;
前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の補償値を算出する補償値算出工程と;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する、過去の判定結果に応じた前記補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック値算出工程と;を含む情報再生方法。
【請求項17】
前記補償値算出工程では、前記パーシャルレスポンス特性に応じたビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値を補償値として算出することを特徴とする請求項16に記載の情報再生方法。
【請求項18】
前記補償値算出工程では、前記パーシャルレスポンス特性とは異なる、第2のパーシャルレスポンス特性と、記録ビットデータとの畳み込み演算により演算される理想的な再生信号と、前記波形等価された前記RF信号との誤差量の平均値を補償値として算出することを特徴とする請求項16に記載の情報再生方法。
【請求項19】
前記補償値算出工程では、前記波形等価誤差量の平均値に加え、前記波形等価誤差量の分散値を補償値として算出することを特徴とする請求項17に記載の情報再生方法。
【請求項20】
位相比較のため、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号の相互相関演算工程を有する再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程と;を更に備える請求項16〜19のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項21】
前記クロック抽出工程において、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第1の時間遅延した信号について相互相関を演算する第1の相互相関演算工程と、前記光ディスクから読み取ったRF信号と、該RF信号を前記PRML方式で復号した信号を第2の時間遅延した信号について相互相関を演算する第2の相互相関演算工程を有し、第1の時間遅延量を第2の時間遅延量よりも大きく設定すると共に、第1の相互相関演算工程の出力と、第2の相互相関演算工程の出力との差をとる減算工程を有することを特徴とする請求項20に記載の情報再生方法。
【請求項22】
前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンと、前記光ディスクから読み取ったRF信号を用いて再生クロック信号を抽出するクロック抽出工程と;を更に含む請求項16〜21のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項23】
前記クロック抽出工程において、前記PRML方式で復号した信号の代わりに前記光ディスクに記録されている既知のビットパターンを用いて再生クロック信号を抽出することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項24】
前記光ディスクから読み取ったRF信号を、該RF信号を前記PRML方式で復号するのに要する時間だけ遅延する遅延工程と;
前記遅延工程で遅延されたRF信号の値と前記補償値との差に基づいて、前記RF信号の非線形成分を補償する非線系成分補償工程と;
前記非線形成分補償工程で非線系成分が補償されたRF信号から、再生クロックを抽出する工程と;を更に含む請求項16〜23のいずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項25】
前記非線系成分補償工程において、前記過去の判定結果を用いて、RF信号の仮判定を行う出力選択工程を有することを特徴とする請求項24に記載の情報再生方法。
【請求項26】
前記パーシャルレスポンス特性のビット長が、最尤推定を行う前記ステートのビット長より長いことを特徴とする請求項16〜25のいずれか一項に記載の信号再生方法。
【請求項27】
前記補償値算出工程において、低密度な記録密度での補償値を求める第1の補償値算出工程と、第1の補償値算出工程により求めた補償値を用いて情報の再生を行い、高密度な記録密度における補償値を求める第2の補償値算出工程と、を含む請求項16〜25のいずれか一項に記載の信号再生方法。
【請求項28】
請求項14に記載の情報再生装置に用いられる光ディスクであって、
回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;
前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に最適な再生パワー又は線速度、及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも1つと;
前記ビットパターン毎の波形等価誤差量の平均値及び分散値のうちの少なくとも1つに関する情報が記録された光ディスク。
【請求項29】
請求項28に記載の光ディスクであって、前記平均値及び分散値のうちの少なくとも1つに関する情報がウォブルに記録された光ディスク。
【請求項30】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の情報再生装置を用いる光ディスクであって、
既知のビットパターンからなるビットパターン毎の前記波形等価器における波形等価誤差量の平均値又は分散値学習用領域を有するか、もしくは前記既知のビットパターンを記録するための未記録部を有する光ディスク。
【請求項31】
請求項30に記載の光ディスクであって、複数の記録密度における前記波形等価誤差量の平均値又は分散値学習用領域を有するか、もしくは前記既知のビットパターンを記録するための未記録部を有する光ディスク。
【請求項32】
光ディスクに対し情報の記録及び再生を行う情報記録再生装置であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の情報再生装置と;
前記光ディスクに対し、回折限界よりも小さいピッチの記録マークで情報を記録する情報記録装置と;を備える情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−176898(P2008−176898A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100145(P2007−100145)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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