説明

情報再生装置及び情報再生方法

【課題】 シンクマークの有無に係らず符号語の先頭位置を検出できる情報再生装置及び情報再生方法を提供することである。
【解決手段】 実施形態によれば、記録媒体から読み出した情報を再生する情報再生装置は、前記記録媒体から読み出した情報に含まれる複数の符号語候補について低密度パリティチェック検査行列のパリティ合格率を計算する計算手段と、前記計算手段により計算されたパリティ合格率に基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された符号語候補を繰り返し復号による反復処理で復号する復号手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は情報再生装置及び情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置等の情報再生装置において、記憶媒体に記録されたユーザデータを再生する際にはセクタ毎の符号語の先頭位置を検出しなければならない。符号語とは、RLL変調されたユーザデータと、そのユーザデータから生成されたECCとから構成される。符号語の先頭位置の検出には記憶媒体に書き込まれたシンクマークが利用される。つまり、記憶媒体上の各セクタ内のシンクマークを検出することで符号語の先頭位置が検出される。シンクマークはユーザデータとは異なりECC符号は採用されず、1ビットの誤りがあっても検出できるようにエラートレラントコードが採用されている。記憶媒体から読み出された一定長のデータがシンクマークであるか否かの判定は記憶媒体から読み出されたデータからシンクマークと同じビット長のデータ列を抽出し、シンクマークパターンと比較することにより行われる。両者が所定のビット数以上一致すれば、当該データ列はシンクマークであると判定できる。シンクマークパターンとの一致判定はこのようなハミング距離による判定の他、ユークリッド距離による判定なども用いられる。
【0003】
近年、ハードディスク装置等の情報再生装置においては、高密度にデータを記録することが求めらている。そのため、ビット誤りが発生しやすく、非ECC符号であるシンクマークが検出されない場合がある。シンクマークが検出されないと、ユーザデータを再生することができない。従来、シンクマークが検出されなかった場合の対処として、セクタデータの先頭位置を推定し、推定値に従って算出した信頼度情報が閾値を満たすか否かに応じてセクタデータの先頭位置を決定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の情報再生装置は、信頼度情報が閾値を満たすまでセクタデータの先頭位置の推定を繰り返さなければならず、符号語の先頭位置を決定できない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、シンクマークの有無に係らず符号語の先頭位置を検出できる情報再生装置及び情報再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、記録媒体から読み出した情報を再生する情報再生装置は、前記記録媒体から読み出した情報に含まれる複数の符号語候補について低密度パリティチェック検査行列のパリティ合格率を計算する計算手段と、前記計算手段により計算されたパリティ合格率に基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された符号語候補を繰り返し復号による反復処理で復号する復号手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る情報再生装置の典型的な構成を示すブロック図。
【図2】シンクマークの検出の一例を示す図。
【図3】図1に示されるリードライトブロック32内の記憶媒体から読み出されたデータを再生する構成を示す典型的なブロック図。
【図4】図3に示される符号語先頭位置検出回路510のブロック図。
【図5】第1の実施形態に係るLDPC復号過程でのパリティチェックを示す図。
【図6】図3に示される判定回路604によるパリティ合格率を用いた符号語の先頭位置の検出を示す図。
【図7】第2の実施形態に係るスプリットセクタのフォーマットの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る情報再生装置の一例としてのハードディスクドライブ2の典型的な構成を示すブロック図である。ハードディスクドライブ2は、ホストシステムとしてのホストコントローラ6からの要求に応じて記録媒体12の記録面上にデータ(符号語及びシンクマークを含む)の書き込み、或いは当該記録面からデータを読み出すための記録装置であり、主にディスク12、ヘッド16、及びリード・ライトブロック32から構成される。
【0011】
ディスク12は、ヘッド16によって読み出される幾つかのデータ領域から構成される。例えば、図示しないホストから送られてくるユーザデータが書き込まれるユーザデータ領域111、ヘッド16の位置を特定したりヘッド16が目的の位置に移動するためのサーボデータが書き込まれているサーボ領域110から構成される。
【0012】
リード・ライトブロック32は、ヘッド16を介してディスク12に書き込まれたデータまたはディスク12から読み出されたデータに対して幾つかの信号処理を行う。例えばディスク12に書き込むためのデータの符号化、ディスク12から読み出されたデータの復号化、さらにその復号化を行う際に読み出されたデータの誤りの訂正などがリード・ライトブロック32で行われる。
【0013】
スピンドルモータ(SPM)14は、モータドライバ24に接続されておりディスク12を固定している。スピンドルモータ(SPM)14は一定の速度でディスク12を回転させる。この回転はCPUバス36を介して接続されているCPU22からの制御に従いモータドライバ24によって駆動される。
【0014】
ボイスコイルモータ(VCM)20は、CPUバス36を介して接続されるCPU22からの制御に基づきモータドライバ24によって駆動される。VCM20はヘッド16を固定するアクチュエータ18と接続されている。VCM20が駆動することによって、ヘッド16がディスク12上の目標のトラックに移動する。目標のトラックはCPU22によって制御され、この制御は当該トラックを目標とする範囲内に整定するための制御である。
【0015】
ヘッドIC26は、ヘッド16によってディスク12から読み出されたアナログ信号を増幅する。当該アナログ信号はリード・ライトIC28に送られる。リード・ライトIC28に含まれるリード・ライトブロック32で上述したような処理が行われ、処理されRた信号はディスクコントローラ(HDC)38を介して接続されるホストコントローラ6に送られる。
【0016】
CPUバス36には、モータドライバ24、ヘッドIC26、リード・ライトIC28、HDC38、及びRAM40が接続されている。RAM40には、例えばCPU22が使用する種々の変数が格納されている。RAM40の記憶領域の一部は、CPU22のワーク領域として使用される。
【0017】
次に図2を参照し、ディスク12のデータフォーマットを説明する。図1に示されるサーボトラック112に沿ってディスク12に記録されているデータを直線上に展開したものが図2に示されている。2つのサーボ領域110間のユーザデータ領域111には複数のセクタ120〜120が記録される。各セクタはプリアンブル202、シンクマーク204、符号語206、ポストアンブル210から構成され、固定のデータ長である。符号語206は、ユーザデータ220とECC222から構成される。LDPC符号を採用した情報再生装置においては、図のように、誤り訂正符号(ECC)222をRLL変調されたユーザデータ220の中に分散的に配置して符号語を構成していることが多い。なお、ユーザデータ領域111の円周方向の長さはディスク12の内周と外周で異なるため、1つのユーザデータ領域111に含まれるセクタ数nはディスク12の内周と外周で異なっている。
【0018】
説明の便宜上、図2では整数個のセクタがユーザデータ領域111に記録される例を示すが、実際にはユーザデータ領域111のデータ長はセクタのデータ長の整数倍ではなく、端数が生じ、1つのセクタが2つに分割され、サーボ領域110を挟んで2つのユーザデータ領域に記録されることもある。このようなセクタはスプリットセクタと称される。スプリットセクタのデータフォーマットについては後述する。
【0019】
プリアンブル202は、ディスク12から読み出されたデータを再生する際(以下、再生時と称す)に使用されるPLL回路の同期信号が含まれている。シンクマーク204は、上述したように再生時に符号語の先頭位置を検出するためのコードが含まれる。ユーザデータ220は、例えばパソコンのようなホストシステムからのデータであり、512バイトなどの固定のビット長である。
【0020】
ECC222はエラー訂正用のデータであり、このビット長を長くすることで強力な訂正能力をもつことができる。ECC222はリードライトブロック32でライト時に冗長なビットとして記録され、リード時にデータの誤りを訂正するために使用される。また、パリティとは異なりデータの誤りを検出するだけでなくデータの誤りを訂正するためにも使用される。ポストアンブル210は本願とは関係ないPRMLのML判定を終了させるために追加されるものである。
【0021】
このように、ユーザデータ領域111内の各セクタには符号語206の前にシンクマーク204が配置されているので、シンクマーク204を検出することで符号語206の先頭位置を検出することができることが分かる。
【0022】
図3は、第1の実施形態におけるディスク12から読み出されるデータを再生する際の典型的な機能を示すブロック図である。ディスク12から読み出されたデータはヘッドIC26で増幅され、増幅されたアナログ信号は連続時間フィルタ(CTF)/アナログディジタル変換器(ADC)506に入力される。CTF/ADC506は、ヘッドIC26から入力された信号の波形等化しアナログ信号をデジタル信号に変換する。CTF/ADC506から出力された信号は畳み込み復号器の一種であるビタビ復号器(最尤復号器)508によって軟判定の誤り訂正復号が行われる。LDPC符号を用いた記録再生系でのビタビ復号器は、LDPC復号の反復処理のために、二値の硬判定を行なうビタビ復号器ではなく、“0”らしさ、または“1”らしさを出力する軟判定ビタビ復号器を用いる。そのため、ビタビ復号器20は軟判定値を出力する。ビタビ復号器508からの軟判定値出力はLDPC復号器512に入力されるとともに、ある閾値で硬判定され(0または1のどちらかに判定され)、符号語先頭位置検出回路510に入力される。
【0023】
詳細は図4を参照して後述するが、符号語先頭位置検出回路510は、シンクマークを検出するとともに、低密度パリティチェック(以下、LDPCとも称する)の検査行列を用いたパリティ合格率に基づき符号語を検出し、両検出結果に基づいて符号語の先頭位置を検出する。
【0024】
符号語先頭位置検出回路510によって検出された符号語の先頭位置の情報、及びビタビ復号器508によって得られた復号対象系列の軟判定値はLDPC復号器512に入力され、繰り返し誤り訂正復号器の一種であるLDPC復号が行われる。LDPC復号が成功すると、LDPC復号器512はエラー訂正された符号語206を出力する。符号語206はRLL復調器514に入力されRLL復調が行われ、ディスク12に記録されたデータが再生される。RLL復調器514によって復調された再生信号は、例えばATA(IDE)バスを介して図示しないホストに送られる。以上のように、ディスク12から読み出されたデータが復号化され、データが再生される。
【0025】
次に図4を参照し、第1の実施形態の符号語先頭位置検出回路510について詳しく説明する。
【0026】
図4は、図3に示される符号語先頭位置検出回路510の機能を説明するブロック図である。符号語先頭位置検出回路510はパリティ合格率計算回路602、判定回路604、シンクマーク検出回路606から構成される。
【0027】
ビタビ復号器508によって復号化された出力系列は、パリティ合格率計算回路602及びシンクマーク検出回路606に入力される。パリティ合格率計算回路602及びシンクマーク検出回路606によって検出された検出結果は判定回路604に入力され、シンクマーク検出回路606の検出結果の正当性がパリティ合格率に基づいて検証される。検証回路604により検証されたシンクマークの検出結果である符号語206の先頭位置は、図3に示されるLDPC復号器512に送られる。
【0028】
図2を参照してシンクマーク検出回路606の検出動作について説明する。シンクマーク検出回路606はプリアンブル202を検出すると、ディスク12から読み出されたデータからシンクマークと同じビット長のデータ列P(i=1,2,…)を順次抽出する。すなわち、データ列Pはシンクマークの候補である。シンクマーク検出回路606は候補Pが抽出される毎に候補Pをシンクマークパターンと比較し、両者が所定のビット数以上一致するかどうか判定する。シンクマークパターンと所定のビット数以上一致する候補P(図2の例ではP)が検出されると、シンクマーク検出回路606はディスク12から読み出されたデータからのシンクマーク候補の抽出、シンクマークの検出を終了する。両者の一致判定にはこのようなハミング距離による判定の他に、ユークリッド距離による判定などを用いてもよい。
【0029】
なお、候補とシンクマークパターンとの一致判定は候補Pを入力する毎に行い、候補がシンクマークと所定のビット数以上一致するまで続けるのではなく、予め所定個数の候補Pを入力して、所定個数の候補の中でシンクマークパターンと最も一致する候補を検出するようにしてもよい。
【0030】
パリティ合格率計算回路602で行われるパリティ合格率の計算方法について図5を参照して説明する。
【0031】
図5はLDPC復号器512での復号過程でのパリティチェックの様子を示す。復号系列402はビタビ復号器508から送られてくる出力系列の一部であり、その長さはユーザデータ220とECC222をあわせた長さで、硬判定された、0または1からなる系列である。r乃至rの各々はn行のパリティチェック検査行列404の各行に対応している。パリティチェック検査行列404は“1”または“0”の要素から構成される。検査行列は、“1”が立っている位置に該当する復号系列の位置の硬判定結果を使って、行方向にパリティチェックを行ない、パリティ方程式が満たされているかどうかを判別する。硬判定結果が間違っていれば、パリティチェック結果はNGとなる可能性が高い。復号系列に誤りがなければパリティチェック結果はすべてOKとなる。誤りがあっても訂正可能な範囲の誤り数であれば、LDPC復号を繰り返していくうちにパリティチェック結果はだんだんOKとなる数が増えていき、最終的に誤りがなくなれば全てOKとなる。パリティチェック合格率とは検査行列の総行数に対するパリティチェック結果がOKの行数の割合である。復号系列が符号語そのものであり、訂正可能な誤り数であれば、LDPC復号を繰り返していくうちにパリティチェック結果はすべてOKとなり、すなわち合格率は1となる。
【0032】
LDPC復号器512はビタビ復号器508の出力をLDPC復号する。LDPC復号が1回行われる毎にパリティチェックが行われる。誤りが無い、あるいは誤りがあるが訂正可能な数以下である場合は、LDPC復号を正常に終了する。誤りが訂正可能な数以下ではない場合は、LDPC復号が繰り返される。繰り返し回数は上限が決まっている。
【0033】
パリティ合格率計算回路602はLDPC復号器からパリティチェック結果を受け取り、上述したパリティ合格率を計算する。
【0034】
例えば、パリティチェック検査行列404の総行数がnで、パリティチェック結果406のOKの行がkであった場合、パリティ合格率は100×k/n(%)で求められる。
【0035】
次に、図6を参照してパリティ合格率を用いた符号語206を検出する方法を説明する。
【0036】
説明の便宜上、図6では、図2と同様な部分は図示省略する。
【0037】
LDPC復号器512はプリアンブル202を検出すると、復号系列から符号語と同じビット長のデータ列C(j=1,2,…)を順次抽出する。すなわち、データ列Cは符号語の候補である。LDPC復号器512は候補Cが抽出される毎に候補CをLDPC復号し、パリティチェックを行う。合格率はLDPC復号1回毎に計算しても良いし、LDPC復号を所定回数、あるいは誤りが無くなるまで繰り返した後に1つだけ計算する構成にしても良い。実際の製品では、モードを設けて選択できるようにすることもできる。検査行列の各行のパリティチェック結果はパリティ合格率計算回路602に供給される。パリティ合格率計算回路602は符号語の候補C毎のパリティ合格率を計算する。図6の例では、符号語の候補C毎(j=1〜6)のパリティ合格率はそれぞれ53%、57%、42%、51%、44%、95%であるとする。
【0038】
パリティ合格率計算回路602は符号語の候補C毎のパリティ合格率に基づいて符号語206と見なすことができる候補Cを決定する。決定方法の具体例、例えば3つの決定方法を説明する。
【0039】
第1の決定方法では、LDPC復号器512が復号系列から符号語と同じビット長のデータ列C(j=1,2,…)を抽出する毎にパリティ合格率計算回路602はパリティ合格率を計算する。候補Cのパリティ合格率が閾値以上の場合は、当該候補Cを符号語として検出する。候補Cのパリティ合格率が閾値以上でなければ、パリティ合格率計算回路602は次の候補Cのパリティ合格率を計算し、閾値を越えているかどうか判定する。この例では閾値を90%に設定したとすると、候補Cまでパリティ合格率の計算及び閾値との比較が繰り返され、パリティ合格率が95%である候補Cが符号語であると決定する。閾値はファームウェアによりユーザが任意の値を設定できるとする。
【0040】
第2の判定方法では、候補Cの入力毎に計算・比較を順次行う第1の判定方法とは異なり、予め所定個数の候補Cを入力して、全部の候補についてのパリティ合格率が求められる。これらのパリティ合格率の中で唯1つのパリティ合格率が閾値を越えた場合は、その候補に基づいて符号語206を決定する。具体的には、例えば閾値を90%に設定したとすると、図6に示されるように、候補Cのパリティ合格率(95%)のみが閾値を越えているため、候補Cが符号語206であると決定する。
【0041】
第3の判定方法では、第2の判定方法と同様に、予め所定個数の候補Cを入力して、全部の候補についてのパリティ合格率が求められる。これらのパリティ合格率の中で最大の値を示す候補を符号語であると決定する。具体的には、例えば図6に示されるように候補Cのパリティ合格率(95%)が6つのパリティ合格率の中で最大であるため、候補Cのパリティ合格率に基づいて符号語206が決定される。
【0042】
以上のように、パリティ合格率計算回路602は符号語の候補C毎のパリティ合格率を用いて符号語206を決定できるが、決定方法はこの3つに限らず、同様な効果を奏する種々の他の方法を用いてもよい。
【0043】
図4に戻り、第1の実施形態の符号語先頭位置検出回路510についてさらに具体的に説明する。
【0044】
上述したように、判定回路604はパリティ合格率計算回路602によって決定された符号語206とシンクマーク検出回路606によって検出されたシンクマークの検出結果とに基づいて符号語の先頭位置を決定する。
【0045】
判定回路604による符号語の先頭位置の決定方法の具体例、例えば、2つの決定方法を説明する。
【0046】
第1の判定方法では、パリティ合格率計算回路602によって決定された符号語206の先頭位置と、シンクマーク検出回路606により検出されたシンクマークの末尾位置が一致する場合において、判定回路604はシンクマーク204が検出され、符号語の先頭位置が特定されたと判定する。パリティ合格率計算回路602によって決定された符号語206の先頭位置と、シンクマーク検出回路606により検出されたシンクマークの末尾位置が一致しない場合は、いずれかの検出結果が誤りを含んでいるとして、符号語の先頭位置が検出されない。
【0047】
第2の判定方法では、パリティ合格率計算回路602によって計算されたパリティ合格率と、シンクマーク検出回路606のシンクマーク検出精度(例えばシンクマークパターンとシンクマークの候補(図2を参照)の間で何ビット一致しているかを示す)とに所定の演算処理を施して得られた演算結果が閾値を越えた場合、シンクマーク検出回路606の検出結果を正しいと見なし、シンクマーク204が検出され、符号語の先頭位置が特定されたと判定する。
【0048】
以上の2つの判定方法以外にもパリティ合格率計算回路602及び従来型シンクマーク検出回路606から得られる信号に基づいて同様な効果を奏する種々の他の判定方法を用いてもよい。
【0049】
以上説明したように、第1実施形態による符号語先頭位置検出回路510は、シンクマーク候補とシンクマークパターンとを比較することによりシンクマークパターンに最も一致するシンクマーク候補を検出するシンクマーク検出回路606と、符号語候補をLDPC復号した際のパリティ合格率から符号語と見なせる符号語候補を求めるパリティ合格率計算回路602とを含み、両回路の出力に基づいて符号語の先頭位置を特定している。そのため、記録密度が増加し、シンクマークの検出誤りが生じたとしても、符号語の先頭位置を精度良く特定することができる。さらに、シンクマークの検出精度を向上させることができるので、従前と同じ検出精度でよい場合は、シンクマークのビット長を短くすることができ、記録密度の増加に貢献できる。
【0050】
第1実施形態の変形例を以下説明する。
【0051】
例えば、上述の説明ではパリティ合格率計算回路602は常にパリティ合格率を計算しているが、特定の条件が満たされる場合のみ、パリティ合格率を計算するように構成してもよい。例えば、シンクマーク検出回路606によってシンクマークの検出に失敗した場合、シンクマーク検出回路606によるシンクマークの検出のリトライが実行されるが、リトライ時にのみパリティ合格率計算回路602によってパリティ合格率を用いた符号語206の検出が行われるようにしてもよい。または、シンクマーク検出回路606によってシンクマークの検出に失敗した場合、シンクマーク検出回路606によるリトライを行わずにパリティ合格率計算回路602のみにより符号語206の先頭位置を検出してもよい。
【0052】
次に、ユーザデータ領域111の最後のセクタが当該ユーザデータ領域111内には収まらずに、サーボ領域110を挟んで後続のユーザデータ領域111にまで及ぶ、すなわちスプリットセクタの場合の符号語の先頭位置の検出方法について図7を参照して説明する。
【0053】
例えば、図7に示すように、ユーザデータ領域111内の最後のセクタ120はサーボ領域110によって2つのスプリットセクタに分割される。スプリットセクタの各々には、プリアンプル202A、202B、シンクマーク204A、204B、符号語206A、206B、ポストアンブル210A、210Bが記録される。したがって、図4に示されるシンクマーク検出回路606は、スプリットセクタ各々のシンクマーク204A、204Bを検出する。
【0054】
一方、パリティ合格率を用いて符号語を検出する場合、1セクタ全体の符号語しか検出できない。したがって、スプリットされているセクタについては、シンクマーク204Aおよび204Bの2つのシンクマークの検出を、パリティ合格率と合わせて判定することで、シンクマークの検出精度を向上させることができる。
【0055】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同様の構成や機能については説明を省略する。
【0056】
第1の実施形態では、パリティ合格率計算回路602による符号語の先頭位置の特定は、シンクマーク検出回路606によるシンクマーク204の検出結果を検証する、あるいは補うものであったが、シンクマーク検出回路606によるシンクマーク204の検出を一切行わずに、パリティ合格率計算回路602のみにより符号語206の先頭位置を特定してもよい。この場合、図2及び図7に示されるセクタデータのフォーマットに関してシンクマーク204は記録される必要が無い。シンクマークの記録の有無はファームウェアによりユーザが任意に設定できるとする。
【0057】
第2の実施形態はこのようにディスク12にシンクマーク204を記録しない場合の符号語206の先頭位置を検出する方法を提供する。つまり、第2の実施形態の符号語先頭位置検出回路510は第1実施形態のパリティ合格率計算回路602のみからなり、符号語の候補C毎のパリティ合格率に基づいて符号語206と見なすことができる候補Cを決定し、その候補の先頭位置を検出する。
【0058】
次に、図7に示すようにセクタが分割されている場合を説明する。スプリットセクタの場合でも、少なくとも1つのスプリットセクタについてはシンクマークが記録されていることがある。この場合は、シンクマークが記録されていないスプリットセクタについては第1実施形態と同様にパリティ合格率計算回路602のみにより符号語206の先頭位置を特定することができる。
【0059】
セクタが分割され、全てのスプリットセクタについてシンクマークが記録されていない場合は、それぞれのスプリットセクタの符号語候補に対して上述したパリティ合格率計算回路602による判定を行う。図7の例で説明すると、シンクマーク204A、204Bが記録されていない場合、符号語206Aの先頭位置と符号語206Bの先頭位置をパリティ合格率から求める。符号語206Aの先頭位置の候補が5つあり、符号語206Bの先頭位置の候補も5つある場合、5×5=25の符号語候補に対してパリティ合格率を計算し、この計算結果に対して第1の実施形態の中で説明した符号語先頭位置の3つの決定方法のいずれかを用いる。
【0060】
このように第2の実施形態を実施することによって、シンクマークが記録されていないディスクから読み出した信号系列からも符号語の先頭位置を検出することができる。シンクマークを記録しないので、記録密度を向上することができる。
【0061】
また、第2の実施形態ではすべてのシンクマークを記録しない形態であったが、例えば複数スプリットされていた場合にはシンクマークを記録するものと記録しないものをあらかじめ決めておくこともできる。このことにより、先頭位置候補がスプリット数が増えることによる先頭位置の組み合わせパターンの増大を抑えることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。実施形態はハードディスクドライブを説明したが、光ディスクを用いる情報再生装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
510・・・符号語先頭位置検出回路、602・・・パリティ合格率計算回路、604・・・判定回路、606・・・シンクマーク検出回路、512・・・LDPC復号器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体から読み出した情報を再生する情報再生装置であって、
前記記録媒体から読み出した情報に含まれる複数の符号語候補について低密度パリティチェック検査行列のパリティ合格率を計算する計算手段と、
前記計算手段により計算された前記パリティ合格率に基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記符号語候補を繰り返し復号による反復処理で復号する復号手段と、
を具備する情報再生装置。
【請求項2】
前記選択手段は、閾値以上の前記パリティ合格率を有する符号語候補を選択する、あるいは最大の前記パリティ合格率を有する符号語候補を選択する請求項1記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記選択手段は、単一の符号語候補が前記閾値以上のパリティ合格率を有する場合、当該単一の符号語候補を選択する請求項2記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記記録媒体から読み出した情報に含まれるシンクマークを検出する検出手段をさらに具備し、
前記選択手段は、前記検出手段により検出された前記シンクマークと前記計算手段により計算されたパリティ合格率とに基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択する請求項1記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記検出手段によって前記シンクマークの検出ができなかった場合に、前記計算手段は前記パリティ合格率を計算する請求項4記載の情報再生装置。
【請求項6】
記録媒体から読み出した情報を再生する情報再生方法であって、
前記記録媒体から読み出した情報に含まれる複数の符号語候補について低密度パリティチェック検査行列のパリティ合格率を計算し、
計算された前記パリティ合格率に基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択し、
選択された前記符号語候補を繰り返し復号による反復処理で復号すること
を具備する情報再生方法。
【請求項7】
前記選択することは、閾値以上の前記パリティ合格率を有する符号語候補を選択する、あるいは最大の前記パリティ合格率を有する符号語候補を選択することである請求項6記載の情報再生方法。
【請求項8】
前記選択することは、単一の符号語候補が前記閾値以上のパリティ合格率を有する場合、当該単一の符号語候補を選択することである請求項7記載の情報再生方法。
【請求項9】
前記記録媒体から読み出した情報に含まれるシンクマークを検出することをさらに具備し、
前記選択することは、検出された前記シンクマークと計算された前記パリティ合格率とに基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択することである請求項6記載の情報再生方法。
【請求項10】
前記シンクマークの検出ができなかった場合に、前記パリティ合格率が計算される請求項9記載の情報再生方法。
【請求項11】
符号語がシンクマーク非記録セクタ毎に記録される記録媒体と、
前記記録媒体から信号を読み出すヘッドと、
前記ヘッドを介して前記記録媒体から読み出した信号を処理し、前記ディスクに記録された前記符号語を再生する情報再生手段と
を具備する情報再生装置であって、
前記情報再生手段は、
前記記録媒体から読み出した信号に含まれる複数の符号語候補について低密度パリティチェック検査行列のパリティ合格率を計算する計算手段と、
前記計算手段により計算された前記パリティ合格率に基づいて前記複数の符号語候補の一つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記符号語候補を繰り返し復号による反復処理で復号する復号手段と、
を具備する情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160229(P2012−160229A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18963(P2011−18963)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】