説明

情報処理装置および画像形成装置

【課題】入力信号の監視が不要な期間を適切に設定してノイズ検出回路を一時的に停止することで電力消費を低減する。
【解決手段】ノイズ検出回路2は、入力信号に重畳しているノイズを検出し、ノイズ除去回路3は、ノイズ検出回路2により検出されたノイズを入力信号から除去する。そして、マスク期間設定回路4は、ノイズ検出回路によるノイズ検出動作を停止させるマスク期間を設定する。また、記憶回路5は、ノイズ検出回路2によるノイズの検出を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路内でノイズを計測する技術が各種提案されている(例えば特許文献1)。また、入力信号においてノイズを検出するとそのノイズを除去する回路もある。
【0003】
図4は、ノイズの検出および除去を行う回路の一例を示すブロック図である。図4に示す回路では、ノイズ検出回路101が、入力信号の変化の周期などから、入力信号に重畳しているノイズを検出すると、ノイズ除去回路102が入力信号の値を変更してその検出されたノイズを除去し、ノイズを除去した後の入力信号を信号処理回路103に供給する。
【0004】
例えば、プリンタのようなモータや高圧電源回路を有する電子機器においては、電気的なノイズが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成される信号処理回路への入力信号に重畳し、誤動作の原因となる可能性があるため、上述のようなノイズ除去回路が使用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−98981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなノイズ検出回路は、常時、入力信号を監視しているが、上述のような電子機器ではノイズが発生する可能性がある期間がほぼ決まっている(例えばプリンタの場合、印刷動作時)。このように、監視がほぼ不要な期間でもノイズ検出回路を動作させているため、不必要な電力消費が発生してしまっている。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、入力信号の監視が不要な期間を適切に設定してノイズ検出回路を一時的に停止することで電力消費を低減することができる情報処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0009】
本発明に係る情報処理装置は、入力信号に重畳しているノイズを検出するノイズ検出回路と、ノイズ検出回路により検出されたノイズを入力信号から除去するノイズ除去回路と、ノイズ検出回路によるノイズ検出動作を停止させるマスク期間を設定するマスク期間設定回路と、ノイズ検出回路によるノイズの検出を記録する記憶回路とを備える。
【0010】
これにより、マスク期間設定回路により、入力信号の監視が不要な期間を設定してノイズ検出回路を一時的に停止させる。したがって、ノイズ検出回路での電力消費を低減することができる。そして、現在のマスク期間が設定されている状態でのノイズ検出状況を記憶回路に記憶させることで、そのノイズ検出状況に基づいて、適切なマスク期間を設定することができる。
【0011】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記の情報処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、情報処理装置は、ノイズ除去回路により除去されるノイズの時間幅の上限値を設定する除去条件設定回路をさらに備える。
【0012】
これにより、除去すべきノイズの時間幅が可変となるため、ノイズの発生状況に応じて、この時間幅を設定することができる。
【0013】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記の情報処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、情報処理装置は、ノイズ検出回路により検出されたノイズの時間幅を記録する記憶回路をさらに備え、除去条件設定回路は、記憶回路に記憶されているノイズの時間幅の分布に基づいて、上述の上限値を設定する。
【0014】
これにより、除去すべきノイズの時間幅が可変となるため、実機のノイズ発生状況に応じて、この時間幅を自動的に設定することができる。
【0015】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記の情報処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、除去条件設定回路は、記憶回路に記憶されているノイズの時間幅のヒストグラムに基づいて、上述の上限値を設定する。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、上記の情報処理装置のいずれかを備え、マスク期間設定回路は、当該画像形成装置内の駆動系が動作しない期間をマスク期間に設定する。
【0017】
これにより、画像形成装置において、ノイズ検出回路での電力消費を低減することができるとともに、適切なマスク期間を設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、情報処理装置および画像形成装置において、入力信号の監視が不要な期間を適切に設定してノイズ検出回路を一時的に停止することで電力消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す情報処理装置におけるノイズ検出回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、ノイズの検出および除去を行う回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
実施の形態1.
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す装置では、信号処理回路1への入力信号に重畳されているノイズが除去される。この実施の形態では、入力信号は、1ビットのデジタル信号である。つまり、ノイズが重畳すると入力信号の値(ハイまたはロー)が反転する。
【0023】
信号処理回路1は、入力信号を処理する回路である。信号処理回路1は、例えばASICで構成される。また、信号処理回路1は、例えば、図示せぬ駆動系を制御する制御回路であってもよい。
【0024】
ノイズ検出回路2は、入力信号の変化の周期に比べ短い周期の所定のクロック信号で動作し、入力信号に重畳しているノイズを検出するデジタル回路である。
【0025】
ノイズ除去回路3は、ノイズ検出回路2により検出されたノイズを入力信号から除去するデジタル回路である。
【0026】
マスク期間設定回路4は、ノイズ検出回路3によるノイズ検出動作を停止させるマスク期間を設定する回路である。つまり、このマスク期間では、ノイズ検出回路2は動作しない。
【0027】
記憶回路5は、ノイズ検出回路2によるノイズの検出を記録する回路である。記憶回路5としては、不揮発性のメモリなどが使用される。記憶回路5は、ノイズ検出回路2により検出されたノイズのタイミング(例えば、マスク期間開始時または終了時からの時間)、ノイズの時間幅などを記録する。
【0028】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0029】
図2は、図1に示す情報処理装置におけるノイズ検出回路2の動作を説明するタイミングチャートである。
【0030】
ノイズ検出回路2は、入力信号のレベルを監視しており、所定のレベル変化(ここではハイレベルからローレベルへの変化)を検出すると、その時点からマスク期間だけ動作を停止し、マスク期間経過後から入力信号のレベル監視を再開する。例えば、マスク期間では、ノイズ検出回路2へのクロック信号の供給が停止される。
【0031】
このときのマスク期間の長さは、マスク期間設定回路4により設定され、マスク期間の開始時点から図示せぬタイマにより計時が開始され、マスク期間の終了時点に図示せぬタイマによりノイズ検出回路2の動作が再開される。
【0032】
そして、マスク期間以外の期間(つまり、ノイズ監視期間)において、ノイズ検出回路2は、ノイズを検出すると、ノイズの検出を示す信号をノイズ除去回路3に供給するとともに、検出されたノイズの時刻および時間幅を記憶回路5に記録させる。記憶回路5に記録されたノイズ検出の履歴は、記憶回路5から読み出し可能であって、マスク期間の長さに反映される。検出されたノイズの分布に基づいて、マスク期間設定回路4によりマスク期間の長さが設定される。例えば、ノイズがマスク期間終了後の短い時間に多く検出されている場合には、マスク期間が長くされる。
【0033】
ノイズ除去回路3は、入力信号を信号処理回路1へ供給し、ノイズ検出回路2からノイズの検出を示す信号を受け取ると、そのノイズを入力信号から除去する。この実施の形態では、ノイズ除去回路3は、検出されたノイズのタイミングで所定の時間幅だけ入力信号の値を反転させて、ノイズを除去する。
【0034】
以上のように、上記実施の形態1によれば、ノイズ検出回路2は、入力信号に重畳しているノイズを検出し、ノイズ除去回路3は、ノイズ検出回路2により検出されたノイズを入力信号から除去する。そして、マスク期間設定回路4は、ノイズ検出回路によるノイズ検出動作を停止させるマスク期間を設定する。また、記憶回路5は、ノイズ検出回路2によるノイズの検出を記録する。
【0035】
これにより、マスク期間設定回路4により、入力信号の監視が不要な期間を設定してノイズ検出回路2を一時的に停止させる。したがって、ノイズ検出回路2での電力消費を低減することができる。そして、現在のマスク期間が設定されている状態でのノイズ検出状況を記憶回路5に記憶させることで、そのノイズ検出状況に基づいて、適切なマスク期間を設定することができる。
【0036】
また、上記実施の形態1によれば、上述の特許文献1に記載の技術に比べ、ノイズ測定のための回路規模が小さくて済む。このため、ノイズ測定のための回路のコストが低くなる。
【0037】
さらに、上述の特許文献1に記載の技術では、ノイズ測定の結果は、装置やASICの次回開発時にしか反映することが困難であるが、上記実施の形態1によれば、ノイズ測定の結果を、ノイズ測定した実機に反映することができる。
【0038】
実施の形態2.
【0039】
図3は、本発明の実施の形態2に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る情報処理装置は、実施の形態1に係る情報処理装置に除去条件設定回路11を追加し、除去可能なノイズの時間幅を可変とする。
【0040】
除去条件設定回路11は、ノイズ除去回路2により除去されるノイズの時間幅の上限値を設定する回路である。この実施の形態では、除去条件設定回路11は、記憶回路5に記憶されているノイズの時間幅の分布に基づいて、上述の上限値を設定する。なお、この上限値は、外部から設定可能としてもよい。また、除去条件設定回路11は、所定の内蔵プログラムをプロセッサで実行することにより、この上限値を演算するようにしてもよい。
【0041】
この実施の形態では、除去条件設定回路11は、クロック信号のクロック数(つまり周期数)で上限値を設定せず、実時間で設定する。このようにすることで、本装置が搭載される電子機器によって動作クロック周波数が異なっても、同一のノイズ除去特性を得ることができる。例えば、図3に示すすべての回路が1つのASICで構成される場合、そのようなASICは、複数種類の電子機器に使用されるため、電子機器ごとにクロック周波数やノイズの発生状況が異なっても、除去条件設定回路11により、その機器に適したノイズ除去条件(除去すべきノイズの時間幅)を設定することができる。
【0042】
さらに、この実施の形態では、除去条件設定回路11は、記憶回路5に記憶されているノイズの時間幅のヒストグラムに基づいて、上述の上限値を設定する。
【0043】
なお、検出されたノイズの時間幅をヒストグラム化することで、量産前の開発段階などにおいて、ノイズの発生状況を把握しやすくなる。ひいては、このヒストグラムを参照して、開発時の周辺回路や機械的な機構を、ノイズが発生しにくいものに変更したりすることが可能となる。
【0044】
例えば、検出したノイズの所定の割合(例えば90パーセント)が含まれるような時間幅が上述の上限値に設定される。
【0045】
なお、図3におけるその他の構成要素については、実施の形態1のものと同様であるので、その説明を省略する。ただし、ノイズ除去回路2は、除去条件設定回路11により設定された上限値以下の時間幅のみのノイズを除去する。
【0046】
以上のように、上記実施の形態2によれば、除去条件設定回路11は、記憶回路5に記憶されているノイズの時間幅の分布に基づいて、上述の上限値を設定する。
【0047】
これにより、除去条件設定回路11により上述の上限値を適宜変更することができ、除去すべきノイズの時間幅が可変となるため、実機のノイズ発生状況に応じて、この時間幅を自動的に設定することができる。
【0048】
実施の形態3.
【0049】
実施の形態3では、実施の形態1または2の情報処理装置がプリンタなどの画像形成装置に内蔵されている。そして、マスク期間設定回路4は、当該画像形成装置内の駆動系が動作しない期間をマスク期間に設定する。つまり、モータなどの駆動系の制御信号が上述の入力信号に相当し、上述の入力信号がローレベルのときが、駆動系が動作しない期間に相当する。
【0050】
以上のように、上記実施の形態3によれば、画像形成装置において、ノイズ検出回路での電力消費を低減することができるとともに、適切なマスク期間を設定することができる。
【0051】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0052】
例えば、上記実施の形態1または2において、図1または図3に示すすべての回路を1つのASICで構成するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態1〜3において、マスク期間の長さおよびタイミングは、記憶回路5に記録されているノイズ検出の履歴に基づいて、マスク期間設定回路4により設定するようにしてもよいし、通信回路を追加して、外部から入力するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態1〜3において、複数の信号から上述の入力信号(つまりノイズ除去の対象となる信号)を選択するセレクタを設け、ノイズ除去の必要な期間が信号ごとに異なる場合に、複数の信号から、ノイズ除去の必要な信号を選択して、上述のようにしてノイズ除去を行うようにしてもよい。その場合、記憶回路5、信号ごとにまとめて、ノイズ検出を記録するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば、プリンタ、複合機などの画像形成装置、およびモータなどの駆動系を有するその他の電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
2 ノイズ検出回路
3 ノイズ除去回路
4 マスク期間設定回路
5 記憶回路
11 除去条件設定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に重畳しているノイズを検出するノイズ検出回路と、
前記ノイズ検出回路により検出されたノイズを前記入力信号から除去するノイズ除去回路と、
前記ノイズ検出回路によるノイズ検出動作を停止させるマスク期間を設定するマスク期間設定回路と、
前記ノイズ検出回路によるノイズの検出を記録する記憶回路と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記ノイズ除去回路により除去されるノイズの時間幅の上限値を設定する除去条件設定回路をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ノイズ検出回路により検出されたノイズの時間幅を記録する記憶回路をさらに備え、
前記除去条件設定回路は、前記記憶回路に記憶されている前記ノイズの時間幅の分布に基づいて、前記上限値を設定すること
を特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記除去条件設定回路は、前記記憶回路に記憶されている前記ノイズの時間幅のヒストグラムに基づいて、前記上限値を設定することを特徴とする請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の情報処理装置を備え、
前記マスク期間設定回路は、当該画像形成装置内の駆動系が動作しない期間を前記マスク期間に設定すること、
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−77603(P2011−77603A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224068(P2009−224068)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】