説明

情報処理装置および表示制御方法

【課題】複数のディスプレイを一つの仮想画面として使用する環境における操作性の向上を図る。
【解決手段】情報処理装置は、第1の筐体と、前記第1の筐体に移動可能に取り付けられた第2の筐体と、前記第1の筐体上に配置され、仮想画面内の第1画面領域が割り当てられる第1のディスプレイと、前記第2の筐体上に配置され、前記仮想画面内の第2画面領域が割り当てられる第2のディスプレイと、移動制御手段とを含む。移動制御手段は、前記仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイとの間の境界に重ならない位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のディスプレイを含む情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、PDAといった様々な情報処理装置が開発されている。情報処理装置の多くは、単一の物理画面上に、ドキュメント、イメージ等を表示する。例えば、物理画面上に表示されるドキュメント内の位置は、スクロール動作によって移動することができる。ユーザは、物理画面上のスクロールバーを、マウスを用いて操作すること、またはキーボードの矢印キーを押すことによって、スクロール動作を制御することができる。また、ドキュメントのスクロール時に、ドキュメント内の表示部品の物理画面上の位置を適切にするためにそのドキュメントの移動量を自動調整する表示制御技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−28000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の表示制御技術は、単一の物理画面を使用することを前提としており、複数のディスプレイ(複数の物理画面)を一つの仮想画面として使用する環境における操作性については考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、複数のディスプレイを一つの仮想画面として使用する環境における操作性の向上を図ることができる情報処理装置および表示制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、情報処理装置は、第1の筐体と、前記第1の筐体に移動可能に取り付けられた第2の筐体と、前記第1の筐体上に配置され、仮想画面内の第1画面領域が割り当てられる第1のディスプレイと、前記第2の筐体上に配置され、前記仮想画面内の第2画面領域が割り当てられる第2のディスプレイと、移動制御手段とを具備する。前記移動制御手段は、前記第1画面領域と前記第2画面領域との間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、前記仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されているか否かを判定し、前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイとの間の境界に重ならない位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】同実施形態の情報処理装置の使用形態の例を示す図。
【図3】同実施形態の情報処理装置の使用形態の他の例を示す図。
【図4】同実施形態の情報処理装置のシステム構成を示すブロック図。
【図5】同実施形態の情報処理装置における仮想画面と2つの物理画面との関係を示す図。
【図6】同実施形態の情報処理装置で用いられるウィンドウ制御プログラムの構成例を示すブロック図。
【図7】同実施形態の情報処理装置によって実行される入力オブジェクト移動処理の例を示す図。
【図8】同実施形態の情報処理装置によって実行される入力オブジェクト移動処理の別の例を示す図。
【図9】同実施形態の情報処理装置によって実行される入力オブジェクト移動処理の手順の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、一実施形態に係る情報処理装置の構成を説明する。この情報処理装置は、例えば、バッテリ駆動可能な携帯型パーソナルコンピュータ10として実現されている。
【0009】
図1は、コンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における斜視図である。本コンピュータ10は、第1の筐体11と、第2の筐体12とを含む。第2の筐体12は、連結部(ヒンジ)14を介して第1の筐体11に移動可能に取り付けられている。第2の筐体12上には液晶表示装置(LCD)13から構成されるディスプレイが配置されている。同様に、第1の筐体11上にも、液晶表示装置(LCD)15から構成されるディスプレイが配置されている。第1の筐体11は、例えば、コンピュータ本体として機能するベースユニットであってもよい。第2の筐体12は、ベースユニットに取り付けられた蓋部であってもよい。
【0010】
LCD13は、例えば、タッチスクリーンディスプレイとして実現してもよい。タッチスクリーンディスプレイは、ペン又は指によってタッチされたLCD13の画面上の位置(タッチ位置)を検知するように構成されている。タッチスクリーンディスプレイはタッチ検知可能ディスプレイとも称される。例えば、LCD13の上面には透明のタッチパネルを配置してもよい。LCD13と透明のタッチパネルとによって上述のタッチスクリーンディスプレイが実現される。ユーザは、LCD13の表示画面上に表示された各種入力オブジェクト(例えば、ボタン、フォルダやファイルを表すアイコン、入力フィールド、等)を指先やペンなどを用いて選択することができる。表示画面上のタッチ位置を示す座標データはタッチスクリーンディスプレイからコンピュータ10内のCPUに入力される。
【0011】
第2の筐体12の下端部は、第1の筐体11の後端部にヒンジ部14によって支持されている。第2の筐体12は、第1の筐体11に対して第1の筐体11の上面が露出される開放位置と第1の筐体11の上面が第2の筐体12によって覆われる閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。また、第2の筐体12の上面上の所定位置、例えば、LCD13の右側には、本コンピュータ10をパワーオンまたはパワーオフするためのパワーボタン16が設けられている。
【0012】
第1の筐体11上のLCD15も、タッチスクリーンディスプレイ(すなわち、タッチ検知可能ディスプレイ)として実現してもよい。このタッチスクリーンディスプレイは、ペン又は指によってタッチされたLCD15の画面上の位置(タッチ位置)を検知するように構成されている。例えば、LCD15の上面には透明のタッチパネルを配置してもよい。LCD15と透明のタッチパネルとによって上述のタッチスクリーンディスプレイが実現される。
【0013】
第1の筐体11上のLCD15は、第2の筐体12のLCD13とは独立したディスプレイである。これらLCD13,15は仮想画面環境を実現するためのマルチディスプレイとして使用することができる。この場合、コンピュータ10のオペレーティングシステムによって管理される一つの仮想画面がLCD13,15に割り当てられる。一つの仮想画面は、LCD13に表示される第1画面領域とLCD15に表示される第2画面領域とを含む。仮想画面においては第1画面領域と第2画面領域は連続している。第1画面領域および第2画面領域はLCD13,15にそれぞれ割り当てられる。第1画面領域および第2画面領域の各々には、任意のアプリケーションウィンドウ、任意のオブジェクト等を表示することができる。
【0014】
2つのLCD13,15間はヒンジ部14によって物理的に隔てられている。換言すれば、2つのタッチスクリーンディスプレイ、つまり2つの物理画面、の表面は不連続であり、これら不連続の2つのタッチスクリーンディスプレイが一つの仮想画面を構成する。
【0015】
本実施形態では、コンピュータ10は、図2に示す横位置(ランドスケープモード)、図3に示す縦位置(ポートレートモード)のいずれの状態でも使用することができる。ランドスケープモードでは、一つの仮想画面内の2つのタッチスクリーンディスプレイは上下方向に並べられた状態で使用される。一方、ポートレートモードでは、一つの仮想画面内の2つのタッチスクリーンディスプレイは左右方向に並べられた状態で使用される。さらに、各タッチスクリーンディスプレイに表示される画面イメージの向きは、使用されるモード(ランドスケープモード、ポートレートモード)に応じて自動的に変更される。換言すれば、画面イメージの向きは、重力の向きに整合するように変更される。
【0016】
図1に示すように、第1の筐体11の上面上の所定位置、例えば、LCD15の両側には2つのボタンスイッチ17,18が設けられている。これらボタンスイッチ17,18の各々には任意の機能を割り当てることが出来る。例えば、ボタンスイッチ17は、仮想キーボードをLCD13またはLCD15に表示するためのボタンスイッチ等として利用し得る。
【0017】
なお、以上の説明では、コンピュータ10が、互いに隔てられた不連続の2つのタッチスクリーンディスプレイを含む場合を想定したが、コンピュータ10が互いに隔てられた不連続の3つまたは4つのタッチスクリーンディスプレイを含んでもよい。
【0018】
次に、図4を参照して、本コンピュータ10のシステム構成を説明する。ここでは、コンピュータ10が2つのタッチスクリーンディスプレイを含む場合を想定する。
本コンピュータ10は、CPU111、ノースブリッジ112、主メモリ113、グラフィクスコントローラ114、サウスブリッジ115、BIOS−ROM116、ハードディスクドライブ(HDD)117、エンベデッドコントローラ118、重力センサ119等を備えている。
【0019】
CPU111は、コンピュータ10の動作を制御するために設けられたプロセッサであり、HDD117から主メモリ113にロードされる、オペレーティングシステム(OS)および各種アプリケーションプログラム等を実行する。
【0020】
アプリケーションプログラムには、ウィンドウ制御プログラム201が含まれている。このウィンドウ制御プログラム201は、フォーカスされた入力オブジェクトの位置を変更するための処理を実行する。入力オブジェクトは、入力用の表示オブジェクト、例えば、ボタン、入力フィールド、アイコン等を意味する。この技術分野では、入力オブジェクトは、入力コントロール、または入力コントロールオブジェクトと称されることもある。フォーカスされた入力オブジェクトとは、操作対象となるアクティブな入力オブジェクトを意味する。例えば、現在アクティブなウィンドウ内の入力オブジェクト(ボタン、入力フィールド、等)は、フォーカスされた入力オブジェクトであるとして扱ってもよい。なお、デスクトップ画面もウィンドウの一つである。アクティブウィンドウは最前面に位置するウィンドウである。
【0021】
ウィンドウ制御プログラム201は、仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが第1画面領域と第2画面領域との間の境界に重なっているか否か、つまりフォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されているか否かを判定する。2つのLCD13,15は不連続であるので、もしフォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されているならば、入力オブジェクトが2つの部分に分割され、一方がLCD13に表示され、他方がLCD15に表示される。このような状況は、入力オブジェクトの視認性を低下させると共に、入力オブジェクトをタッチしにくくする。
【0022】
ウィンドウ制御プログラム201は、フォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されていること、つまり第1画面領域と第2画面領域との間の境界に重なっていることを検出した場合、そのフォーカスされた入力オブジェクトを境界に重ならない位置に移動させる。このような入力オブジェクトの移動制御機能により、ソフトウェア開発者は、仮想画面が2つの物理画面に分割されていることを意識することなくソフトウェアを開発することができる。
【0023】
ウィンドウ制御プログラム201は、上述の入力オブジェクト移動制御処理を実現するために、例えば、以下の機能を含んでいる。
(1)入力オブジェクトがフォーカスされた時、この入力オブジェクトが2つの物理画面の境界に跨っているか否かをチェックする機能
(2)入力オブジェクトが2つの物理画面間の境界に跨っている場合、入力オブジェクトを例えば画面スクロールによって物理画面間の境界に重ならない位置に移動させる機能
(3)入力オブジェクトへの入力が完了した時、入力オブジェクトを元の位置に戻す機能
また、CPU111は、BIOS−ROM116に格納されたシステムBIOS(Basic Input Output System)も実行する。システムBIOSはハードウェア制御のためのプログラムである。ノースブリッジ112はCPU111のローカルバスとサウスブリッジ115との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ112には、主メモリ115をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。グラフィクスコントローラ114は、コンピュータ10のディスプレイモニタとしてそれぞれ使用される2つのLCD13,15を制御する表示コントローラである。グラフィクスコントローラ114は、ノースブリッジ112を介してCPU111から受信される描画要求に基づいてビデオメモリ(VRAM)に表示データを描画するための表示処理(グラフィクス演算処理)を実行する。ビデオメモリには、LCD13に表示される画面イメージに対応する表示データを格納する記憶領域と、LCD15に表示される画面イメージに対応する表示データを格納する記憶領域とが割り当てられている。グラフィクスコントローラ114は、LCD13,15上に表示される画面イメージの向きを変更する画面回転機能も有している。グラフィクスコントローラ114の画面回転機能は、例えば、OSに含まれる表示ドライバ、または専用のユーティリティプログラムによって制御してもよい。
【0024】
LCD13上には透明のタッチパネル13Aが配置されている。LCD13とタッチパネル13Aとによって第1のタッチスクリーンディスプレイが実現される。同様に、LCD15上にも透明のタッチパネル15Aが配置されている。LCD15とタッチパネル15Aとによって第2のタッチスクリーンディスプレイが実現される。タッチパネル13A,15Aの各々は、例えば、抵抗膜方式または静電容量方式等を用いて、タッチパネル(タッチスクリーンディスプレイ)上のタッチ位置を検出するように構成されている。また、タッチパネル13A,15Aの各々としては、複数のタッチ位置を同時に検知可能なマルチタッチパネルを使用してもよい。
【0025】
サウスブリッジ115は、HDD121を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラやSerial ATAコントローラを内蔵している。エンベデッドコントローラ(EC)118は、ユーザによるパワーボタンスイッチ16の操作に応じてコンピュータ10をパワーオン/パワーオフする機能を有している。また、エンベデッドコントローラ(EC)118は、タッチパネル13A,15Aの各々を制御するタッチパネルコントローラ301を含んでいる。
【0026】
重力センサは、重力の向きに対する本コンピュータ10の傾きを検出する。上述の表示ドライバまたはユーティリティプログラムは、重力センサからの出力信号に基づいて、本コンピュータが横位置(ランドスケープモード)または縦位置(ポートレートモード)のいずれの状態であるかを判定し、その判定結果に応じて、LCD13,15上に表示される画面イメージの向きを変更することができる。さらに、重力センサによってコンピュータ10が傾けられたことが検出されたことをトリガに、フォーカスされた入力オブジェクトが2つの物理画面間の境界に跨っているか否かを判定してもよい。またさらに、重力センサによって検出されるコンピュータ10の傾けられた方向は、入力オブジェクトの移動方向の決定のために使用することもできる。この場合、ウィンドウ制御プログラム201は、重力センサによってコンピュータ10の傾きが検出された場合、フォーカスされた入力オブジェクトが2つの物理画面間の境界に跨っているか否かを判定する。フォーカスされた入力オブジェクトが2つの物理画面間の境界に跨っているならば、ウィンドウ制御プログラム201は、その入力オブジェクトを、コンピュータ10が傾けられた方向に向けて、例えば、コンピュータ10の2つの筐体11,12の内で、重力の向きに対してより下方側に位置する筐体に向けて、移動させる。2つの物理画面間の境界に重ならないように入力オブジェクトを移動させてもよいが、入力オブジェクトを、コンピュータ10を傾けた方向に向けて所定量だけ移動させてもよい。ユーザは、コンピュータ10を傾かせる操作を何度か行うことで、入力オブジェクトを希望の位置に移動させることができる。
【0027】
次に、図5を参照して、仮想画面と2つの物理画面との関係について説明する。
図5の右下は横位置モードにおける画面割り当てを示している。「画面A」はLCD13の物理画面を表し、「画面B」はLCD15の物理画面を表している。「画面A」、「画面B」それぞれの解像度(横方向画素数×縦方向画素数)は例えば800×512である。横位置モードでは、仮想画面は縦長(例えば、800×1024)に設定される。仮想画面内の上側画面領域はLCD13の物理画面に割り当てられ、仮想画面内の下側画面領域はLCD15の物理画面に割り当てられる。100は、仮想画面内の2つの画面領域間の境界を表している。
【0028】
図5の左下は縦位置モードにおける画面割り当てを示している。「画面A」はLCD13の物理画面を表し、「画面B」はLCD15の物理画面を表している。「画面A」、「画面B」それぞれの解像度は例えば512×800である。縦位置モードでは、仮想画面は横長(例えば、1024×800)に設定される。仮想画面内の左側画面領域はLCD15の物理画面に割り当てられ、仮想画面内の右側画面領域はLCD13の物理画面に割り当てられる。100は、仮想画面内の2つの画面領域間の境界を表している。
【0029】
このように、仮想画面内の画面領域間の境界位置は、縦位置モードと横位置モードとの間で異なる。ウィンドウ制御プログラム201は、現在の使用形態(縦位置モードまたは横位置モード)に関連づけられた画面境界位置情報に基づいて、フォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されているか否か、つまり2つの画面領域間の境界に重なっているか否かを判定する。
【0030】
次に、図6を参照して、ウィンドウ制御プログラム201の構成について説明する。
ウィンドウ制御プログラム201は、入力コントロールオブジェクト検出部211、重なり判定部212、および入力コントロールオブジェクト移動部213を含む。入力コントロールオブジェクト検出部211は、フォーカスされた入力オブジェクトを検出する。例えば、あるウィンドウがアクティブになった時、入力コントロールオブジェクト検出部211は、そのアクティブウィンドウ内の入力オブジェクトを、フォーカスされた入力オブジェクトとして検出する。重なり判定部212は、仮想画面上の2つの画面領域間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、フォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されているか否か、つまりフォーカスされた入力オブジェクトが2つの画面領域間の境界に重なっているか否かを判定する。この場合、重なり判定部212は、例えば、物理画面上のフォーカスされた入力オブジェクトの位置を示すオブジェクト位置情報と、上述の画面境界位置情報とから、フォーカスされた入力オブジェクトと画面境界との間の位置関係を調べ、フォーカスされた入力オブジェクトが2つのLCD13,15に跨って表示されているか否か、つまりフォーカスされた入力オブジェクトが2つの画面領域間の境界に重なっているか否かを判定する。なお、入力オブジェクトのサイズは入力オブジェクト毎に異なるかもいれない。したがって、重なり判定部212は、画面境界位置情報とオブジェクト位置情報のみならず、フォーカスされた入力オブジェクトのサイズを用いて、重なりの有無を判定してもよい。これにより、重なり判定部212は、フォーカスされた入力オブジェクトが2つの画面領域間の境界に重なっているか否かをより精度よく判定することができる。
【0031】
重なり判定部212がフォーカスされた入力オブジェクトが2つの画面領域間の境界に重なっていると判定した場合、入力コントロールオブジェクト移動部213は、フォーカスされた入力オブジェクトを境界に重ならない位置に移動させる。コンピュータ10の現在の使用形態が横位置モードであれば、入力コントロールオブジェクト移動部213は、入力オブジェクトを左方向または右方向のいずれかに向けて移動させる。より少ない移動量で入力オブジェクトが物理画面間の境界に重ならなくなるように、左方向または右方向の一方が移動方向として決定される。コンピュータ10の現在の使用形態が縦位置モードであれば、入力コントロールオブジェクト移動部213は、入力オブジェクトを上方向または下方向のいずれかに向けて移動させる。より少ない移動量で入力オブジェクトが境界に重ならなくなるように、上方向または下方向の一方が移動方向として決定される。
【0032】
入力オブジェクトの移動は、例えば、ウィンドウ内のスクロールまたは画面全体のスクロールによって実行してもよい。
【0033】
図7は、入力オブジェクトの移動制御の例を示している。図7の上部は、フォーカスされた入力オブジェクト200が2つの画面領域間の境界に重なっている状態、換言すれば、2つのLCD13,15に跨って表示されている状態を示している。この場合、図7の下部に示されるように、フォーカスされた入力オブジェクト200は、LCD13,15間の境界に重ならないように、例えば左方向(ここではLCD15側)に向けて移動される。
【0034】
図8は、入力オブジェクトの移動制御の他の例を示している。図8の左部は、アクティブウィンドウ300内の入力フィールド301が2つの画面領域間の境界に重なっている状態、換言すれば、入力フィールド301が2つのLCD13,15に跨って表示されている状態を示している。この場合、もしウィンドウ300のウィンドウ内スクロールが許可されているならば、ウィンドウ制御プログラム201は、図8の右上に示すように、ウィンドウ300内の画面イメージを例えば右方向にスクロールする。
【0035】
一方、もしウィンドウ300のウィンドウ内スクロールが禁止されているならば、ウィンドウ制御プログラム201は、図8の右下に示すように、ウィンドウ300全体を例えば右方向に移動する。この場合、ウィンドウ300のみを右方向に移動させてもよいが、画面イメージ全体を右方向にスクロールしてもよい。
【0036】
次に、図9を参照して、ウィンドウ制御プログラム201によって実行される入力オブジェクト移動処理の手順を説明する。
【0037】
ウィンドウ制御プログラム201は、まず、アクティブウィンドウを検出する(ステップS101)。次いで、ドラッグ制御プログラム201は、アクティブウィンドウ内の入力オブジェクト(入力コントロールオブジェクト)のリストを生成する(ステップS102)。ドラッグ制御プログラム201は、アクティブウィンドウ内の入力オブジェクトの中に、仮想画面内の2つの画面領域間の境界、つまり2つの物理画面の境界、に重なっている入力オブジェクトが存在するか否かを判定する(ステップS103)。仮想画面内の2つの画面領域間の境界に重なっている入力オブジェクトが存在するならば(ステップS103のYES)、ウィンドウ制御プログラム201は、アクティブウィンドウがウィンドウ内スクロールが許可されたスクロール可能ウィンドウであるか否かを判定する(ステップS104)。
【0038】
アクティブウィンドウがスクロール可能ウィンドウであるならば(ステップS104のYES)、ウィンドウ制御プログラム201は、ウィンドウ内スクロールによって、2つの画面領域間の境界に重なっている入力オブジェクトを、その境界に重ならない位置に移動させる(ステップS105)。
【0039】
アクティブウィンドウがスクロール可能ウィンドウでないならば(ステップS104のNO)、ウィンドウ制御プログラム201は、ウィンドウの位置を移動(ウィンドウスクロール)することによって、2つの画面領域間の境界に重なっている入力オブジェクトを、その境界に重ならない位置に移動させる(ステップS106)。
【0040】
なお、以上の説明では、ウィンドウ制御プログラム201が、仮想画面内の2つのディスプレイに跨って表示されているフォーカスされた入力オブジェクトを自動的に検出し、その入力オブジェクトを2つのディスプレイ間の境界に重ならない位置に移動させる例を説明したが、ユーザによって本コンピュータ10が傾けられたことをトリガに、入力オブジェクトを移動させる処理を開始するようにしてもよい。この場合、重力センサ119によって本コンピュータ10が傾けられたことが検出された時に、ウィンドウ制御プログラム201は図9の処理を開始する。そして、ウィンドウ制御プログラム201は、2つの画面領域間の境界に重なっているフォーカスされた入力オブジェクトを、本コンピュータ10の傾きに対応する方向に移動させる。例えば、横位置モードにおいて、重力の向きに対してLCD13の位置がLCD15よりも下方側に位置するように本コンピュータ10がユーザによって傾けられた場合には、ウィンドウ制御プログラム201は、2つの画面領域間の境界に重なっているフォーカスされた入力オブジェクトを、LCD13側に向けて移動させる。一方、横位置モードにおいて、重力の向きに対してLCD15の位置がLCD13よりも下方側に位置するように本コンピュータ10がユーザによって傾けられた場合には、ウィンドウ制御プログラム201は、2つの画面領域間の境界に重なっているフォーカスされた入力オブジェクトを、LCD15側に向けて移動させる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの画面領域間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、フォーカスされた入力オブジェクトの位置が2つのディスプレイに跨って表示されているか否かが判定され、その判定結果に応じて、フォーカスされた入力オブジェクトの位置が移動される。
【0042】
よって、ヒンジ等によって隔てられた2つのディスプレイを一つの仮想画面として使用する環境における操作性の向上を図ることができる。もし、フォーカスされた入力オブジェクトが隔てられた2つのタッチスクリーンディスプレイに跨って表示されると、その入力オブジェクトに対するタッチ操作の操作性が著しく低下される。本実施形態の入力オブジェクト移動処理は、このようなタッチ操作の操作性の低下を防止することができる。
【0043】
なお、本実施形態のコンピュータ10は第1の筐体11と第2の筐体12とを有しているが、コンピュータ10のシステムを構成するコンポーネントのほとんど全てを必ずしも第1の筐体11内に設ける必要はなく、例えば、コンポーネントの一部またはほとんど全てを第2の筐体12内に設けても良い。この意味で、第1の筐体11と第2の筐体12はほぼ対等の関係のユニット同士であってもよいと云える。
【0044】
また、本実施形態では、2つのディスプレイがそれぞれタッチスクリーンディスプレイである場合を例示したが、2つのディスプレイは必ずしもタッチスクリーンディスプレイである必要はない。
【0045】
また、本実施形態の入力オブジェクト移動処理はコンピュータプログラムによって実現されているので、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じて、このコンピュータプログラムを複数のディスプレイを有するコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に得ることが出来る。
【0046】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…コンピュータ、11…第1の筐体、12…第2の筐体、13,15…LCD、13A,15A…タッチパネル、111…CPU、201…ウィンドウ制御プログラム、211…入力コントロールオブジェクト検出部、212…重なり判定部、213…入力コントロールオブジェクト移動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、
前記第1の筐体に移動可能に取り付けられた第2の筐体と、
前記第1の筐体上に配置され、仮想画面内の第1画面領域が割り当てられる第1のディスプレイと、
前記第2の筐体上に配置され、前記仮想画面内の第2画面領域が割り当てられる第2のディスプレイと、
前記第1画面領域と前記第2画面領域との間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、前記仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されているか否かを判定し、前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイとの間の境界に重ならない位置に移動させる移動制御手段とを具備する情報処理装置。
【請求項2】
前記移動制御手段は、アクティブウィンドウ内の入力オブジェクトを前記フォーカスされた入力オブジェクトとして検出する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1のディスプレイおよび前記第2のディスプレイはそれぞれタッチスクリーンディスプレイである請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
重力センサをさらに具備し、
前記移動制御手段は、前記重力センサによって前記情報処理装置の傾きが検出された場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されているか否かを判定し、前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記情報処理装置の傾きの方向に向けて移動させる請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
仮想画面内の第1および第2の画面領域がそれぞれ割り当てられる第1および第2の隔てられたディスプレイを含む情報処理装置のための表示制御方法であって、
前記第1画面領域と前記第2画面領域との間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、前記仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されているか否かを判定し、
前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイとの間の境界に重ならない位置に移動させる表示制御方法。
【請求項6】
さらに、アクティブウィンドウ内の入力オブジェクトを前記フォーカスされた入力オブジェクトとして検出する請求項5記載の表示制御方法。
【請求項7】
仮想画面内の第1および第2の画面領域がそれぞれ割り当てられる第1および第2の隔てられたディスプレイを含むコンピュータに入力オブジェクトの位置を移動させるためのプログラムであって、
前記第1画面領域と前記第2画面領域との間の境界位置を示す画面境界位置情報に基づいて、前記仮想画面上のフォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されているか否かを判定する手順と、
前記フォーカスされた入力オブジェクトが前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイに跨って表示されている場合、前記フォーカスされた入力オブジェクトを前記第1のディスプレイと前記第2のディスプレイとの間の境界に重ならない位置に移動させる手順とを前記コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−248465(P2011−248465A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118621(P2010−118621)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】