説明

情報処理装置

【課題】 複数のアンテナを順次切り替えて非接触ICカードとの通信を行う場合に、非接触ICカードとの通信に要する時間を短縮するリーダライタ装置を提供する。
【解決手段】 リーダライタ装置10は、送信部11とアンテナ13とのインピーダンス整合を行うマッチング回路15と、送信部11に接続されているアンテナ13を介して搬送波を送信する時の、接続点の電圧を検出する検出器16とを備え、検出器16が電圧の変化を検出した場合に、切替器14により送信部11と接続されるアンテナ13を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触ICカードと広い通信エリアで通信を行うリーダライタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタ装置は、主として送信部、受信部、信号制御部及びアンテナから構成されている。従来のリーダライタ装置と非接触ICカード(以下「ICカード」と称す)との通信では、リーダライタ装置からICカードへの通信を行うために、まず、リーダライタ装置から搬送波を送信しICカードへの電力供給を行うと同時に、10%前後の変調度で搬送波を振幅変調し、これをアンテナから発信する。また、ICカードからリーダライタ装置への通信である受信時においては、リーダライタ装置は、ICカードへの電力供給と同時にICカードからの信号伝送のために、無変調の搬送波を送信部を通じてアンテナより送信している。ICカードからの信号はICカード側のロードスイッチング方式にてリーダライタ装置側に送られる。ロードスイッチング方式とは、リーダライタ装置のアンテナとICカードのアンテナとが電磁的に結合した状態で、ICカード側の電気的な負荷を送信データに従って変動させることで、リーダライタ装置のアンテナ電流を変化させ、信号をICカードからリーダライタ装置に伝達させる方式である。
【0003】
このリーダライタ装置を使用して、ICカードとの通信が可能な範囲である通信エリアを広くする場合には、リーダライタ装置のアンテナ面積を広くするか、若しくはアンテナを複数個用意して、等価的にアンテナ面積が広くなるように、それらを順次切り替えながら通信を行い(例えば、特許文献1参照)、ICカードから返答があったアンテナに固定することで対処している。
【0004】
一つのリーダライタ装置にアンテナを複数個使用し、これを切り替えながら通信を行う方式の場合には、アンテナを順次切り替えていき、もし、ICカードが通信エリアに存在しなければ、リーダライタ装置からのポーリング信号に対するICカードからの返答信号が、返答時間が経過するまでに受信部に返ってこないため、この返答時間を待った後、制御部でICカードなしと判断する。ICカードが通信エリアに存在していれば、返答時間が経過するまでに受信部にICカードからの返答信号が返ってくるため、制御部でICカード有りと判断する。このように、応答信号の有無でICカードの通信エリア内における存在有無を判断していた。
【特許文献1】特開2002−352198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICカードとリーダライタ装置のアンテナとの組み合わせにおいて、ICカードとの通信を行おうとする場合、特に、スキー場ゲートシステムや娯楽施設などのゲート管理システム及び入退室管理システム等にリーダライタ装置を使用しようとする場合には、ICカードと通信可能な範囲として必要なエリアは、子供から大人まで背丈が異なる人に対応できるものであり、かつ、ICカードとの位置決めは、比較的ラフであることが利用者にとって便利であるため、ICカードとの通信エリアを広くする必要がある。この要求を実現するためには、リーダライタ装置のアンテナを広くするか、一つのリーダライタ装置に複数個のアンテナを用意し、これを切り替えて使うことで、アンテナ面積を見かけ上広くする必要がある。
しかしながら、アンテナ面積を単純に大きくすることは、リーダライタ装置の設置場所の影響を受けやすいことや、面積の広いアンテナに給電するため、送信部が大掛かりになりやすいという問題があった。
【0006】
また、アンテナを順次切り替えて、逐次ICカードに対してポーリングを行い、ICカードからの返答信号を得るために一定時間待機し、返答がなければ次のアンテナに切り替える方式では、上述したアンテナ面積が大きいことによる問題は生じない。しかしながら、ポーリング信号の発信から返答信号が帰って来るまでの時間をtとし、アンテナを切り替えるのに要する時間をTとし、アンテナの個数をnとすると、アンテナにかざされているICカードからの信号を受け取るまでの最大時間TMはTM=n(t+T)+tとなる。このtの時間が長いと、リーダライタ装置がICカードとの通信に要する時間、つまり、ICカードがリーダライタ装置にかざされてからリーダライタ装置がICカードと通信を開始するまでの時間や、リーダライタ装置とICカードとが一連の通信を終了するまでの時間が長くなるという問題点がある。
この発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、複数のアンテナを順次切り替えて非接触ICカードとの通信を行う場合に、非接触ICカードとの通信に要する時間を短縮するリーダライタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のアンテナと、該複数のアンテナのうち接続されているアンテナを介して信号を送信する送信手段と、該送信手段と接続されるアンテナを切り替える切替手段とを備え、かつ、非接触ICカードと通信を行うリーダライタ装置において、前記送信手段と前記アンテナとのインピーダンス整合を行うマッチング手段と、前記マッチング手段によるインピーダンス整合が保たれているか否かを検出する検出手段とを備え、前記検出手段によって前記インピーダンス整合が保たれていることが検出された場合に、前記切替手段によって前記送信手段と接続されるアンテナを切り替えることを特徴とするリーダライタ装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、リーダライタ装置は、ポーリング信号を送信することなく、インピーダンス整合が保たれているか否かによって、非接触ICカードがアンテナに近づいたか否かを検出することができる。そして、非接触ICカードがアンテナに近づいていないことを検出した場合には、送信手段と接続されるアンテナを順次切り替えて、当該切り替えたアンテナの近くに非接触ICカードが存在するか否かを順次検出することができるため、非接触ICカードがリーダライタ装置にかざされてからリーダライタ装置が非接触ICカードを検出するまでの時間を短縮することができ、非接触ICカードとの通信に要する時間を短縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリーダライタ装置において、前記検出手段によって前記インピーダンス整合が崩れたことが検出された場合に、非接触ICカードからの応答を受信するためのポーリング信号を送信することを特徴とする。
この構成によれば、リーダライタ装置は、インピーダンスの整合が崩れたことが検出された場合にポーリング信号を送信するため、アンテナに非接触ICカードが近づいた時にのみポーリング信号を送信することができる。このため、アンテナに非接触ICカードが近づいていない時にポーリング信号を送信して応答を待つ必要がなくなり、応答待ちの時間を短縮することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリーダライタ装置において、前記検出手段は、前記インピーダンス整合が保たれているか否かを、前記アンテナと前記送信手段との接続点における電圧又は電流の変化により検出することを特徴とする。
この構成によれば、リーダライタ装置は、前記インピーダンス整合が保たれているか否かを、前記アンテナと前記送信手段との接続点における電圧又は電流の変化により検出するため、電圧値又は電流値を検出するための検出器を用いることにより、容易にインピーダンス整合が保たれているか否かを検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、リーダライタ装置は、ポーリング信号を送信することなく、インピーダンス整合が保たれているか否かによって、非接触ICカードがアンテナに近づいたか否かを検出することができる。そして、非接触ICカードがアンテナに近づいていないことを検出した場合には、送信手段と接続されるアンテナを順次切り替えて、当該切り替えたアンテナの近くに非接触ICカードが存在するか否かを順次検出することができるため、非接触ICカードがリーダライタ装置にかざされてからリーダライタ装置が非接触ICカードを検出するまでの時間を短縮することができ、非接触ICカードとの通信に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して、発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、リーダライタ装置10は、13.56MHzを発振する水晶発振器111、約10%のASK(振幅変調方式)変調を得るための変調器112及び通信を行うのに十分な電力を得るための電力増幅器113で構成される送信部11と、ICカード20からロードスイッチング方式で送られてきた、振幅変調された信号を検波するための検波器121、検波した信号を増幅するための増幅器122及び増幅した信号をデジタル信号に変換するための二値化回路123からなる受信部12と、複数のアンテナ13を切り替えるための切替器14と、アンテナ13の入力インピーダンスと送信部11の出力インピーダンスとの整合を行うマッチング回路15と、インピーダンス整合点における電圧を検出するための検出器16と、この検出器16からの信号レベルを判断し、アンテナ13を選択するためのAD変換機能及び整合点における電圧値を記憶するメモリを有する1チップマイコンを含む制御部17と、アンテナ13A、アンテナ13B、アンテナ13Cで構成される3個のアンテナ13と、信号の送受信を制御するコントローラ部18とで構成されている。
【0013】
切替器14は、アンテナ13A、アンテナ13B、アンテナ13Cが、順次リーダライタ装置10の送信部11と接続されるように切り替えを行う。なお、以下では、アンテナ13A、アンテナ13B、アンテナ13Cを区別して説明しない場合には、「アンテナ13」と表記することとする。
アンテナ13は、一つがプリント板上に形成された2回巻のループアンテナで、約20cm四方の大きさである。このアンテナ13を3個用意して縦に配置する。これにより、上下方向の通信エリアの拡大を図ることができる。なお、用意するアンテナ13は3個に限定されず、任意の個数でよい。
【0014】
アンテナ13の入力インピーダンスと、送信部11の電力増幅器113の出力インピーダンスとが異なるため、マッチング回路15でインピーダンス整合をとっている。従って、リーダライタ装置10からの信号送信時において、検出器16より検出される電圧は一意に決まる電圧値となっている。送信部11が切替器14により他の2つのアンテナ13のそれぞれに接続した場合にも、同様に一意の電圧が得られる。
検出器16は、アンテナ13と送信部11との接続点の電圧を検出する。図2に示すように、検出器16は、高インピーダンス抵抗161を介して直列に接続されたダイオード162と、ダイオード162のカソード側に並列に接続された抵抗163とコンデンサ164とを組み合わせた包絡線検波回路で構成されている。
【0015】
アンテナ13の入力インピーダンスと送信部11の出力インピーダンスとを整合させることで整合点における電圧値を保持しておき、検出器16から出力される電圧値と整合点における電圧値とを比較することで、ICカード20がかざされたかどうかを検出することが可能となる。
ICカード20は、一般的に、図3に示す通り、ICカード20周囲に巻かれたループアンテナ21と、ループアンテナ21と共振させるための共振用コンデンサ22及びICチップ23で構成されており、電源はリーダライタ装置10から供給されるため保持していない。ICチップ23は送受信回路、メモリ、制御回路などで構成されている。
【0016】
次に、動作例について説明する。
リーダライタ装置10の送信部11とアンテナ13Aが接続されている時にICカード20がかざされていない場合には、検出器16には送信部11からの搬送波周波数による電圧が入力され、高インピーダンス抵抗161を介して包絡線検波回路に送られ、直流電圧に変換されて、検出器16より出力される。この電圧は直流のアナログ電圧の出力である。この出力は制御部17の1チップマイコンのAD変換端子に入力され、インピーダンス整合が保たれている時の電圧であるかどうかを1チップマイコンが判断する。
【0017】
入力された電圧がインピーダンス整合が保たれている時の電圧であることが認識されれば、制御部17はアンテナ13AにICカード20がかざされていないと判断し、切替器14に対して制御部17から信号を出し、次のアンテナ13Bに切り替える。従って、リーダライタ装置10は、ICカード20に対してポーリング信号を発して、ICカード20からの応答を待つ必要がない。リーダライタ装置10は、ICカード20がかざされるまで、この手順を順次繰り返している。
【0018】
また、切替器14によりアンテナ13Aが送信部11との接続対象として選択されている時に、ICカード20がアンテナ13Aにかざされた場合には、ICカード20のループアンテナ21がリーダライタ装置10のアンテナ13Aと電磁的に結合されるため、アンテナ13Aの入力インピーダンスが変化し、電力増幅器113の出力インピーダンスとのマッチングがずれることになる。
【0019】
この時、検出器16から出力される電圧は、ICカード20がかざされていない時の電圧と比べて、異なる電圧になる。この電圧が制御部17のAD変換端子に入力され、制御部17が電圧が異なることを認識すると、切替器14に対して接続するアンテナをアンテナ13Aに固定する信号を制御部17から送り、アンテナ13Aはリーダライタ装置10の本体と接続する。また、コントローラ部18に対しても、ポーリング信号を発信してもよいという信号を制御部17から送る。
【0020】
アンテナ13Aが固定されると、リーダライタ装置10からICカード20に対してポーリング信号を送り、ICカード20からの返答を待ち、返答があれば通常の通信を開始する。通常の通信が終了すると、コントローラ部18から通信終了の信号を制御部17に送る。制御部17は再び、アンテナ13を順次切り替えて、次にアンテナ13にICカード20がかざされるまで一連の動作を繰り返すことになる。
【0021】
このように、上述した実施形態においては、リーダライタ装置10のアンテナ13とこれに接続される送信部11との間に電圧の検出器16を置き、かつ、アンテナ13と送信部11とがインピーダンス整合された状態をつくることで、検出器16において最大電圧が発生するようにした。ここに電気的インピーダンスを有したICカード20が近づくことでインピーダンス整合が崩れ、検出器16の電圧が低下するのを検出する。これにより、リーダライタ装置10からポーリング信号を送信する前に、検出器16の状態をみるだけで、ICカード20がリーダライタ装置10にかざされているかどうかを検出することが可能となる。このため、ポーリング信号に対する応答を待ってアンテナ13を切り替える必要がなくなる。従って、ICカード20がリーダライタ装置10にかざされた時に、リーダライタ装置10がICカード20と通信を開始までの時間や、一連の通信を終了するまでの時間を短縮することができ、複数のアンテナ13を使用して通信エリアを拡大しつつ、ICカード20との通信に要する時間を短縮することが可能となる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係るリーダライタ装置10の構成は、検出器16の部分を除き第1の実施形態に係る構成と同じである。また、通信の制御方法についても、第1の実施形態と同じである。ここでは、ICカード20がリーダライタ装置10にかざされた時の、第1の実施形態と異なるICカード20の検出方法について述べる。
【0023】
第2の実施形態では、アンテナ13と送信部11の電力増幅器113とが、マッチング回路15を介して整合がなされている時の電流値を検出器16’で検出する。
検出器16’の構成は、図4に示すように、巻線をしたトロイダルコア165に送信部11からアンテナ13にかけてのラインを通し、巻線の両端に発生する電圧を検出し、これを包絡線検波することで、直流のアナログ電圧を生成して検出を行う構成である。
【0024】
次に動作例について説明する。まず、ICカード20がかざされていない時の電流値(アナログ電圧値)を基準値として、制御部17のメモリに記憶させておく。
そして、第1の実施形態と同様に、切替器14により送信部11と接続するアンテナ13を順次切り替えていく。制御部17が、検出器16’からの出力に基づいて、ICカード20がかざされた時に生じる電流値の変化を検出した場合には、第1の実施形態と同様に、アンテナ13を固定して通常の通信を行う。
【産業上の利用可能性】
【0025】
スキー場ゲートシステムや娯楽施設などのゲート管理システム及び入退室管理システム等、通信エリアを拡大し、かつ、短時間で入退出を管理することが要求されている産業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリーダライタ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施の形態に係る検出器の構成の一例を示す図である。
【図3】同実施の形態に係るICカードの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る検出器の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 リーダライタ装置
11 送信部
111 水晶発振器
112 変調器
113 電力増幅器
12 受信部
121 検波器
122 増幅器
123 二値化回路
13,13A,13B,13C アンテナ
14 切替器
15 マッチング回路
16 検出器
17 制御部
18 コントローラ部
20 ICカード
21 ループアンテナ
22 共振用コンデンサ
23 ICチップ
161 高インピーダンス抵抗
162 ダイオード
163 抵抗
164 コンデンサ
165 トロイダルコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、該複数のアンテナのうち接続されているアンテナを介して信号を送信する送信手段と、該送信手段と接続されるアンテナを切り替える切替手段とを備え、かつ、非接触ICカードと通信を行うリーダライタ装置において、
前記送信手段と前記アンテナとのインピーダンス整合を行うマッチング手段と、
前記マッチング手段によるインピーダンス整合が保たれているか否かを検出する検出手段とを備え、
前記検出手段によって前記インピーダンス整合が保たれていることが検出された場合に、前記切替手段によって前記送信手段と接続されるアンテナを切り替えることを特徴とするリーダライタ装置。
【請求項2】
前記検出手段によって前記インピーダンス整合が崩れたことが検出された場合に、非接触ICカードからの応答を受信するためのポーリング信号を送信することを特徴とする
請求項1に記載のリーダライタ装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記インピーダンス整合が保たれているか否かを、前記アンテナと前記送信手段との接続点における電圧又は電流の変化により検出することを特徴とする
請求項1又は2に記載のリーダライタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−115202(P2006−115202A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300407(P2004−300407)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】