説明

情報処理装置

【課題】WDT機能による起動不良の検知を補い、ロック現象解消のためのリセットを行うことが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】ウォッチドッグタイマが計時したカウント値をクリアするクリア信号を一定周期で出力し、当該カウント値がタイムアウトした場合にリセットを行う第1リセット手段と、自己の装置が具備する特定のハードウェアから、前記クリア信号及び当該クリア信号以外の汎用信号を出力させるためのプログラムを含んだBIOSを記憶する記憶手段と、電源のオンに伴い前記記憶手段に記憶されたBIOSを実行する起動手段と、前記電源のオンに伴い計時を開始する計時手段と、前記計時手段による計時時間が所定時間を経過するまでに、前記汎用信号が出力されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記汎用信号が出力されないと判定された場合にリセットを行う第2リセット手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BIOS(Basic Input/Output System)を実行しハードウェアの初期化を行う情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)等のBIOSを搭載する情報処理装置では、電源スイッチをオンとすると電源供給が開始され、BIOSを用いてハードウェアを初期化する起動処理が実行される。この起動処理時に何らかの要因によりエラーが発生した場合、起動処理が停止するロック現象が発生する。ロック現象を解消するためにはユーザが手動で電源のオフ/オン(リセット)を行う必要があるが、操作に不慣れな初心者等の場合、適切な操作を行うことができない可能性がある。
【0003】
一方、上記の問題に対し、一部の機器では起動処理時にウォッチドッグタイマ(以下、WDTという)を起動し、このWDTがタイムアウトした場合にハードウェアのリセットを自動的に行うことでロック現象の解消を図っている。例えば、特許文献1には、電源オン時にWDTとBIOSとを起動し、BIOS本体に付加されたタイマ再起動処理によってWDTのカウント値を周期的にクリアし、この再起動処理が走らずWDTがタイムアウトした場合にPCサーバのリセットを行うWDT機能に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、上述した再起動処理が正常に動作しない場合、自動的にリセットすることが可能であるが、この再起動処理が正常に動作しているにも関わらず他の処理に不具合が生じた場合には、リセットを行うことができないという問題がある。特に、BIOSの起動を表す画面の表示処理に不具合が発生した場合には、ユーザは起動が正常に行われているか否かを直ちに判断することができないため、対応に戸惑う可能性がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、WDT機能による起動不良の検知を補い、ロック現象解消のためのリセットを行うことが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ウォッチドッグタイマが計時したカウント値をクリアするクリア信号を一定周期で出力し、当該カウント値がタイムアウトした場合にリセットを行う第1リセット手段と、自己の装置が具備する特定のハードウェアから、前記クリア信号及び当該クリア信号以外の汎用信号を出力させるためのプログラムを含んだBIOSを記憶する記憶手段と、電源のオンに伴い前記記憶手段に記憶されたBIOSを実行する起動手段と、前記電源のオンに伴い計時を開始する計時手段と、前記計時手段による計時時間が所定時間を経過するまでに、前記汎用信号が出力されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記汎用信号が出力されないと判定された場合にリセットを行う第2リセット手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、WDT機能による起動不良の検知を補い、ロック現象解消のためのリセットを行うことが可能な情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、情報処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した情報処理装置の起動時の動作手順を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る情報処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。情報処理装置1は、PC(Personal Computer)やPOS端末等であって、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスで構成される表示装置2に文字や画像を表示する機能を有している。
【0011】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、I/Oコントローラ13と、シリアルI/O14と、BIOS151を記憶する記憶手段としてのROM(Read Only memory)15と、PCI16と、HDD(Hard Disk Drive)17と、USB(Universal Serial Bus)18と、CRTコネクタ19と、WDT(ウォッチドッグタイマ)20と、第1リセット回路21と、計時手段及び判定手段としてのタイマ回路22と、第2リセット手段としての第2リセット回路23と、電源回路24と、電源スイッチ25とを備えている。
【0012】
CPU11は、ROM15に記憶されたBIOS151やHDD17に記憶された所定の制御プログラムを実行し、情報処理装置1を構成する各部の動作を統括的に制御する。
【0013】
また、CPU11には、メモリ12の読み出し及び書き出しを制御するメモリコントローラ111と、表示装置2への表示を制御する表示制御手段としてのVGAコントローラ112とが搭載されている。VGAコントローラ112は、RGB号線L1及び同期信号線L2によりCRTコネクタ19と接続されており、RGB号線L1を介して画像データを送出するとともに、同期信号線L2を介してHSYNC及びVSYNCを送出する。メモリ12は、主記憶装置であって、CPU11のワークエリアとして機能する。
【0014】
また、CPU11には、入出力を制御するI/Oコントローラ13が接続されている。I/Oコントローラ13には、シリアルI/O14、BIOS151等を記憶したROM15、拡張バスであるPCI16、補助記憶装置のHDD17、外部機器を接続するためのUSB18等が接続されている。
【0015】
BIOS151には、情報処理装置1が具備する各部の初期化処理に係るプログラムや設定が含まれている。例えば、上述したHSYNC/VSYNC等の汎用信号をVGAコントローラ112等の特定のハードウェアから出力させるためのプログラムが含まれている。また、BIOS151には、上述した汎用信号以外の信号として、後述するWDT20が計時するカウント値のクリアを行うクリア信号を、CPU11から所定周期で出力させるためのプログラムが含まれている。なお、各プログラムの起動順序については特に問わないものとする。
【0016】
CPU11は、情報処理装置1の起動時にBIOS151を実行することで、CPU11に接続された各部を動作可能な状態に初期化する。即ち、CPU11は情報処理装置1の起動時において、BIOS151を実行する起動手段として機能する。具体的に、CPU11は、BIOS151に含まれたプログラムとの協働により、VGAコントローラ112から画像データ、HSYNC及びVSYNCをCRTコネクタ19へ出力させることで、表示装置2へBIOS151を起動したことを示すBIOS起動画面等の表示を行う。
【0017】
CRTコネクタ19には、表示装置2が接続されている。CRTコネクタ19は、VGAコントローラ112から入力される画像データを、一定周期で入力されるHSYNC及びVSYNCの同期タイミングに従い表示装置2へ出力することで、当該表示装置2に画像データを表示させる。
【0018】
WDT20は、電源スイッチ25の押下等により電源回路24から電力の供給が開始されると計時を開始する。また、WDT20は、CPU11からクリア信号を受け付けると計時したカウント値をクリアした後、再度計時を開始する。
【0019】
第1リセット回路21は、WDT20のカウント値を監視し、予め定められた時間(タイムアウト値)を経過すると、電源回路24をオフとした後再度オンとすることで情報処理装置1のリセットを行う。即ち、CPU11と第1リセット回路21との協働により、第1リセット手段が実現されている。
【0020】
タイマ回路22は、同期信号線L2に接続されており、時間を計時するRTC(Real Time Clock)等の計時装置(図示せず)を用いることで計時機能を具備している。タイマ回路22は、電源スイッチ25の押下等により電源回路24から電力の供給が開始されると計時を開始し、予め定められた時間が経過するまでにHSYNC又はVSYNCが入力(出力)されたか否かを判定する。即ち、タイマ回路22は、計時手段及び判定手段として機能する。
【0021】
タイマ回路22は、計時開始から所定時間内にHSYNC又はVSYNCの入力を確認すると、BIOS151が起動したと判断し計時を停止する。一方、BIOS151の起動不良やハードウェアの不具合等により、計時開始から所定時間内にHSYNC及びVSYNCの何れも入力されないと、タイマ回路22はタイムアウトと判断し、第2リセット回路23へリセット信号を出力する。
【0022】
なお、HSYNC又はVSYNCの入力判断の指標となる時間は、正常動作時に予め確認された電源供給の開始からHSYNC又はVSYNCがCRTコネクタ19に出力されるまでの時間に基づいて設定されているものとする。また、本実施形態では、HSYNC又はVSYNCの入力を確認する形態としたが、これに限らず、HSYNC及びVSYNCの両信号の入力を確認する形態としてもよい。
【0023】
第2リセット回路23は、タイマ回路22からリセット信号を受け付けると、電源回路24をオフとした後再度オンとすることで情報処理装置1のリセットを行い、ロック現象を解消する。この動作により、BIOS151が再度実行される。
【0024】
電源回路24は、情報処理装置1の各部へ電力を供給する電源ユニットである。電源回路24は、ユーザによる電源スイッチ25の押下に応じてオンとオフとを切り替え、オン時において各部への電力供給を開始する。また、電源回路24は、第2リセット回路23の制御に従い、自己の状態をオフからオンへ移行する。
【0025】
以下、図2を参照して、情報処理装置1の起動時におけるタイマ回路22及び第2リセット回路23の動作について説明する。ここで、図2は、情報処理装置1の起動時の動作手順を示すタイミングチャートである。
【0026】
まず、情報処理装置1のユーザによる電源スイッチ25の押下により、電源回路24がオン状態になると(ステップS11)、電源回路24は情報処理装置1の各部に電力の供給を開始する(ステップS12)。
【0027】
ステップS12の電力供給に伴い、CPU11ではROM15に記憶されたBIOS151を実行することで、情報処理装置1の各部を動作可能な状態に初期化する(ステップS13)。なお、BIOSが正常に実行された場合、このステップS13において、HSYNCやVSYNC等の汎用信号を出力させるための処理や、クリア信号を一定周期で出力させるための処理が順次実行される。
【0028】
一方、ステップS12の電力供給に伴い、タイマ回路22では計時を開始する(ステップS14)。続いて、タイマ回路22は、所定時間経過したか否かを判断し、経過していないと判断した場合には(ステップS15;No)、HSYNC又はVSYNCが入力されたか否かを判断する(ステップS16)。ここで、HSYNC及びVSYNCの入力を確認できない場合(ステップS16;No)、ステップS15に再び戻る。また、HSYNC又はVSYNCの入力を確認した場合(ステップS16;Yes)、タイマ回路22は計時を停止し(ステップS17)、処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS15において、所定時間を経過したと判定した場合(ステップS15;Yes)、タイマ回路22はリセット信号を第2リセット回路23へ出力することで、電源回路24のリセットを実行する(ステップS18)。
【0030】
電源回路24では、第2リセット回路23からリセット制御を受け付けると(ステップS19;Yes)、供給する電力の状態をオフからオンとした後(ステップS20)、ステップS12に戻ることで電力供給を再び開始する。なお、第2リセット回路23から制御がなされない場合 (ステップS19;No)、電力供給を継続する。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、BIOS151の実行に伴いVGAコントローラ112から出力されるHSYNC又はVSYNCに基づいてBIOS151の実行状態を判定する。これにより、CPU11からクリア信号の出力が正常に動作したにも関わらず、HSYNC及びVSYNCが出力されない場合には、自動的に電源のリセットを行うことができるため、ロック現象を解消することができる。また、BIOS起動画面の表示に係るHSYNC及びVSYNCをBIOS151の実行動作の正常判定に用いることで、BIOS起動画面が表示されない場合、自動的に電源のリセットを行うことができるため、ユーザに不具合を意識させることなく情報処理装置1を再起動させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。
【0033】
例えば、本実施形態では、VGAコントローラ112から出力されるHSYNC及びVSYNCを、BIOS151の実行動作の正常判定に用いる形態としたが、これに限らず、他のハードウェアから出力される汎用信号(例えば、一定周期のクロック信号)を用いて、BIOS151の実行動作の正常判定を行う形態としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 情報処理装置
2 表示装置
11 CPU
111 メモリコントローラ
112 VGAコントローラ
12 メモリ
13 I/Oコントローラ
14 シリアルI/O
15 ROM
151 BIOS
16 PCI
17 HDD
18 USB
19 CRTコネクタ
20 WDT
21 第1リセット回路
22 タイマ回路
23 第2リセット回路
24 電源回路
25 電源スイッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2004−38529公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッチドッグタイマが計時したカウント値をクリアするクリア信号を一定周期で出力し、当該カウント値がタイムアウトした場合にリセットを行う第1リセット手段と、
自己の装置が具備する特定のハードウェアから、前記クリア信号及び当該クリア信号以外の汎用信号を出力させるためのプログラムを含んだBIOSを記憶する記憶手段と、
電源のオンに伴い前記記憶手段に記憶されたBIOSを実行する起動手段と、
前記電源のオンに伴い計時を開始する計時手段と、
前記計時手段による計時時間が所定時間を経過するまでに、前記汎用信号が出力されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記汎用信号が出力されないと判定された場合にリセットを行う第2リセット手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記BIOSは、一定周期の前記汎用信号を出力させるためのプログラムを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
表示装置に画像を表示させる表示制御手段を備え、
前記BIOSは、前記表示制御手段から前記汎用信号としてHSYNC及びVSYNCを前記表示装置に出力させるためのプログラムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記所定時間を経過するまでに前記HSYNC又は前記VSYNCが出力されたか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2リセット手段は、前記判定手段により前記汎用信号が出力されたと判定された場合、前記計時手段による計時を停止することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記汎用信号の出力判定に係る前記所定時間は、正常動作時における前記電源のオンのタイミングから前記汎用信号の出力が開始されるまでの時間に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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