説明

情報処理装置

【課題】反射部材による外観性の低下を防止し、反射部材を保護すると共に、表示画面のベゼルの強度向上を図ることが可能な情報処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る情報処理装置は、表示部と、複数の検出器と、座標検出部と、反射部材と、ベゼルとを具備する。表示部は、表示画面を有する。検出器は、表示画面の周縁にて離間した複数の位置に設けられ、それぞれ、表示画面に沿って、不可視領域を含む所定の波長帯域の光を走査し、光の反射光を検出する。座標検出部は、複数の検出器の検出結果に基づいて指示された座標を検出する。反射部材は、表示画面の周縁に沿って選択的に配置され、検出部からの光を反射する再帰反射性を有する。ベゼルは、可視領域の光の透過量を制限する選択透過性材料からなるベゼルであって、表示画面の周囲を装飾的に囲う第1の部位と検出器と反射部材とを遮るように第1の部位から延設された第2の部位とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画面にタッチパネルを有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に備わるディスプレイに搭載されるタッチパネルとしては、赤外線方式、静電容量方式、抵抗膜方式等の種々の検出原理のものが実用化されている。赤外線方式のタッチパネルは、他の検出原理のものに比べ検出範囲の大型化のコストが低いこと等から、比較的大型のディスプレイに採用されることが多い。
【0003】
赤外線方式のタッチパネルは、ディスプレイの画面に沿って赤外線が照射され、画面を指示したユーザの指等の遮蔽物による赤外線の遮断を検出し、画面上での遮蔽物の位置を判定するものである。赤外線方式のタッチパネルには、赤外線の反射を利用する赤外線反射型のタッチパネルがある。
【0004】
赤外線反射型のタッチパネルでは、赤外線の照射及び検出を行う検出器と、赤外線を反射する反射部材が設けられる。検出器は通常2基用いられ、画面の2つの隅部にそれぞれ配置される。各々の検出器は、赤外線を発光する発光部と赤外線を受光する受光部とを備える。発光部から発光される赤外線は走査機構によって光軸方向が周期的に変更され、所定の角度範囲(例えば90度範囲)で投光される。反射部材は、2基の検出器からの赤外線の投光範囲に相当する位置である画面の3辺に沿った位置に配置される。
【0005】
反射部材は再起反射性(入射光を入射方向と同方向に反射する特性)を有し、入射した赤外線を検出器に向けて反射する。検出器の受光部は受光した赤外線の強度に応じた電気信号を出力する。赤外線反射型のタッチパネルでは、二つの検出器の受光部より出力される二つの信号を用いて、画面上での遮蔽物の位置(座標)の判定が行われる。すなわち、画面上に遮蔽物が存在すれば、赤外線は遮蔽物によって遮断されるので、受光部から得られる赤外線の反射光量に対応した信号のレベルが下がり、この時点で、各検出器毎の走査機構から得られる二つの走査角度の情報をもとに、画面上での遮蔽物の位置(座標)が判定される。
【0006】
このような赤外線反射型のタッチパネルを採用した公知の技術としては、例えば、CRTの辺上に設けられた光回帰性反射体と、この光回帰性反射体に対向する走査型光送受器とを備える座標入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−72501号公報(段落[0043]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る座標入力装置では画面の周囲に光回帰性反射体が露出する構成となっている。光回帰性反射体は表面に波状模様等が現れたり、それ自体の色調が限定されるという性質上、特許文献1に記載の装置のように表示画面の周囲に光回帰性反射体を露出させたデザインを採用した場合、外観性が損なわれる恐れがある。また、露出している光回帰性反射体が汚れ、あるいは傷つくことなどによって、指示座標の検出精度が低下するおそれがある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、反射部材による外観性の低下を防止し、反射部材を保護すると共に、表示画面のベゼルの強度向上を図ることが可能な情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る情報処理装置は、表示部と、複数の検出器と、座標検出部と、反射部材と、ベゼルとを具備する。
上記表示部は、表示画面を有する。
上記検出器は、上記表示画面の周縁にて離間した複数の位置に設けられ、それぞれ、上記表示画面に沿って、不可視領域を含む所定の波長帯域の光を走査し、上記光の反射光を検出する。
上記座標検出部は、上記複数の検出器の検出結果に基づいて表示画面上で指示された座標を検出する。
上記反射部材は、上記表示画面の周縁に沿って選択的に配置され、上記検出部からの上記光を反射する再帰反射性を有する。
上記ベゼルは、可視領域の光の透過量を制限する選択透過性材料からなるベゼルであって、上記表示画面の周囲を装飾的に囲う第1の部位と上記検出器と上記反射部材とを遮るように上記第1の部位から延設された第2の部位とを有する。
【0011】
本発明では、可視領域の光の透過量を制限する選択透過性材料からなるベゼルの第2の部位によって検出器と反射部材との間での光の授受を可能としながら、反射部材の表出による情報処理装置の外観への悪影響を防止することができる。また、反射部材が汚れ、あるいは傷つくことによっての座標検出精度の低下を防止でき、さらには第1の部位に第2の部位が延設されることによってのベゼルの強度向上を図ることが可能である。
【0012】
上記反射部材は、上記表示画面の周縁部に設けられた支持部材に固定されていてもよい。
この構成によれば、支持部材によって反射部材を支持することが可能となる。ベゼルと反射部材は独立に支持されているため、ベゼルが外力あるいは熱等により変形する場合であっても反射部材による光の反射に影響がなく、遮蔽物の位置検出を精度よく行うことが可能である。
【0013】
上記反射部材は、上記ベゼルの上記第2の部位に固定されていてもよい。
この構成によれば、反射部材がベゼルの第2の部位に直接固定されることにより、空気層による光の屈折による影響を低減することができる。また、反射部材とベゼルの第2の部位との間に隙間が存在する場合に比べ、光路長を短くすることができ、光の減衰を抑えることができる。さらには、支持部材に反射部材を固定する場合に比べ、ベゼルの小型化を図ることができる。
【0014】
上記反射部材は、上記ベゼルに光透過性を有する接着剤によって固定されていてもよい。
この構成によれば、接着剤による光の減衰を抑制することが可能である。上記反射部材は、上記ベゼルに光透過性を有する接着剤によって固定されていてもよい。この構成によれば、
【0015】
上記情報処理装置は、リモートコントローラからの光信号を受信可能な受信部をさらに有し、上記ベゼルの上記第1の部位は、上記受信部を覆うように構成されたものであってもよい。
この構成によれば、ベゼルを受信部のカバーとして用いることが可能である。ベゼルは可視光領域の光の透過量を制限するものであるので、受信部のカバーとして利用することができる。このため、操作信号受光部として別の部品を設ける必要がなく、ベゼルをシームレスなデザインとすることができ、部品点数を削減することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の目的によれば、反射部材による外観性の低下を防止し、反射部材を保護すると共に、表示画面のベゼルの強度向上を図ることが可能な情報処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る情報処理装置の外観を示す平面図である。
【図2】情報処理装置からベゼルを除いた状態を示す平面図である。
【図3】検出器の詳細を示す斜視図である。
【図4】座標検出部の構成を示すブロック図である。
【図5】ベゼルの配置を示す断面図である。
【図6】検出動作を説明する模式図である。
【図7】レシーバゲインを示すグラフである。
【図8】選択透過性材料の分光透過率を示すグラフである。
【図9】第2の実施形態に係る情報処理装置のベゼルの配置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置1について説明する。
【0020】
<情報処理装置の構成>
図1は、第1の一実施形態に係る情報処理装置1の外観を示す平面図である。
図2は、情報処理装置1からベゼル3を除いた状態を示す平面図である。
【0021】
これらの図に示すように、情報処理装置1は、支持部10と本体部15から構成されている。支持部10は本体部15の下方に設けられ、本体部15を支持する。支持部10は、空間を有し、キーボード等を収容することが可能に構成されている。また、情報処理装置1は、その背面側に設けられたスタンド11を有する。
【0022】
本体部15は、表示画面2と、ベゼル3と、筐体4と、反射部材5と、検出器6とを備える。表示画面2の面に平行な一方向をX方向、表示画面2の面に平行でありX方向に垂直な方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。即ち、表示画面2はX−Y平面に平行な面である。図1に示す、情報処理装置1の表示画面2が表れている側を情報処理装置1の前面側とし、その反対側を情報処理装置1の背面側とする。
【0023】
筐体4は表示器及びそのほか情報処理装置を構成する各種のデバイスを収容する。表示画面2は表示器(表示部)において映像を表示する面である。表示器としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CR(Cathode Ray Tube)等が用いられる。表示画面2は、ユーザによって指示(ポインティング)される面でもある。本実施形態に係る情報処理装置1の表示画面2は矩形であるものとするが、これに限られない。表示画面2の4辺について、1辺を第1の辺2aとし、第1の辺2aと対向する辺を第2の辺2bとする。他の2辺のうち一方を第3の辺2cとし、他方を第4の辺2dとする。
【0024】
ベゼル3は表示画面2の周囲四辺を装飾的に囲う枠である。
図5はベゼル3の配置を示す断面図である。ベゼル3は、情報処理装置1の前面側に臨む第1の部位3aと、検出器6と反射部材5を遮るように第1の部位3aから延設された第2の部位3bとからなる。図5に示すように、ベゼル3の第1の部位3aは情報処理装置1の前面側に臨み、筐体4によって支持されている。第2の部位3bは第1の部位3aの、表示画面2側から延設されている。第2の部位3bは、表示画面2の4辺のうち、後述する反射部材5が設けられている辺、即ち、第1の辺2a、第2の辺2b及び第3の辺2cに沿って設けられている。第1の部位3aは、例えば2.0mm以上3.0mm以下の厚みを有するものとすることができる。また、第2の部位3bは、例えば0.5mm以上2.0mm以下の厚みを有するものとすることができる。
【0025】
ベゼル3は、選択透過性材料からなる。選択透過性材料とは、光の透過率が波長によって異なる材料である。ベゼル3を構成する材料の選択透過性は、検出器6によって投光される波長帯の光を透過し、可視光領域の光の透過量を制限するものとされる。例えば、検出器6を850nmの波長を有する赤外光を投光するものとし、ベゼル3の材料を当該850nmの波長を有する赤外光を選択的に透過させる選択透過性材料とすることが可能である。
【0026】
図8は、ベゼル3に用いることが可能な特定の選択透過性材料の分光透過率データの例である。この分光透過率データは、第2の部位3bの厚みが2.0mmのベゼル3について測定されたものである。同図に示すように、この選択透過性材料では、、波長が約700nm以下の可視光波長帯域の光の透過を制限し、700nm以上の波長帯域の光を選択的に透過させることが可能である。
【0027】
図2に示すように情報処理装置1には受信部12が設けられている。受信部12は、外部からリモートコントローラによって情報処理装置1を操作するための光信号を受光する。光信号は赤外線等の不可視領域の光の明滅信号であり、受信部12によって電気信号に変換される。受信部12は、可視光による受信部12の誤動作を防止するために、可視光を遮断するカバーにより覆われている必要がある。ここで、ベゼル3は可視光領域の光の透過量を制限する材料によって構成されているため、ベゼル3の第1の部位3aを受信部12のカバーとして利用することが可能である。
【0028】
図1及び図2に戻って、反射部材5は再帰反射性を有し、検出器6から放出された光を反射する。再帰反射性とは、入射光を、入射した方向と同方向に反射する性質である。反射部材5は表示画面2の4辺のうち3辺に沿って設けられる。本実施形態では、反射部材5は第1の辺2a、第2の辺2b及び第3の辺2cに沿って設けられるものとする。反射部材5のうち、第1の辺2aに沿う部分を第1の部分5a、第2の辺2bに沿う部分を第2の部分5b、第3の辺2cに沿う部分を第3の部分5cとする。反射部材5は帯状であり、表示画面2の周囲四辺における第1の辺2a、第2の辺2b及び第3の辺2cに沿って配置された支持部材9(図3及び図5参照)に取り付けられている。支持部材9は、例えば、表示画面2の最前面に配置された保護パネルなどの前面側に設けられている。支持部材9は、表示画面2に対して直交する成分を含む方向に沿った内壁面9aを有し、この内壁面9aに反射部材5が支持されている。
【0029】
上記のように、支持部材9は表示画面2の最前面に設けられ、さらに支持部材9の前面側はベゼル3によって覆われ、見かけ上ベゼル3に収容されている。支持部材9とベゼル3との配置関係をさらに説明すれば、支持部材9の前面側の端部とベゼル3の裏側面との間には隙間が確保されている。このためベゼル3が外力あるいは熱等により変形する場合であっても反射部材5にまでその影響が及ぶ危険が低減される。
【0030】
検出器6は表示画面2に沿って光を投光し、反射部材5によって反射された光を検出する。この情報処理装置1には2基の検出器6が用いられている。2基の検出器6は、例えば、表示画面2の左上隅と右上隅に配置されている。すなわち、2基の検出器6は、反射部材5が設けられていない辺と、この辺に隣接する他の辺との角の部分、即ち、第1の辺2aと第4の辺2dの角の部分及び第2の辺2bと第4の辺2dの角の部分に設けられる。以後、第1の辺2aと第4の辺2dの角(表示画面2の右上隅)に設けられる検出器6を「第1の検出器6R」と呼び、第2の辺2bと第4の辺2dの角(表示画面2の左上隅)に設けられる検出器6を「第2の検出器6L」と呼ぶ。検出器6の構造の詳細については後述する。
なお、2基の検出器6の位置は必ずしも表示画面2の角の部分であることに限らない。例えば、第4の辺2dにおいて互いに離間した位置に配置されればよい。
【0031】
図3は、検出器6の詳細を示す斜視図である。図3には、表示画面2の右上隅に配置された第1の検出器6Rが示されているが、第2の検出器6Lも同様の構成を有する。同図に示すように、第1の検出器6Rはエミッタ6Raとレシーバ6Rbを有する。
【0032】
エミッタ6Raは表示画面2に沿って光を投光する。エミッタ6Raは光源と、光源より出射された光を収束させる光学系と、光学系によって収束された光を走査する走査機構等によって構成される。光源はLED(Light Emitting Diode)、LD(laser diode)等であり、不可視領域(赤外領域又は紫外領域)の波長を有する光を生成する。光学系はレンズ等である。走査機構は、ガルバノスキャナ、ポリゴンスキャナ等であり、入射する光を所定範囲内に走査することが可能に構成されている。
【0033】
エミッタ6Raは、走査機構により光の軸の方向を所定の角度範囲(例えば90度)で周期的に変更しつつ反射部材5に対して光を投光する。具体的には、図2及び図6において、第1の検出器6Rに搭載されているエミッタ6Raは反射部材5の第2の部分5b及び第3の部分5cに対して光を走査する。第2の検出器6Lのエミッタ6Laは、反射部材5の第1の部分5a及び第3の部分5cに対して光を走査する。
【0034】
レシーバ6Rbは、同一の検出器6に搭載されているエミッタ6Raから放出され、反射部材5から戻ってくる光を受けて、光の強度に応じた電気信号を出力する。レシーバ6Rbの出力は後述する座標検出部7に送信される。
【0035】
なお、本実施形態では、図3に示すように、一つの第1の検出器6Rに二つのレシーバ6Rb,6Rbがエミッタ6Raの両側に配置され、検出可能範囲を補うようにしている。
【0036】
図4は座標検出部7の構成を示すブロック図である。
情報処理装置1は、表示画面2上で指示された座標を2基の検出器6により得られた検出結果に基づいて検出する座標検出部7を有する。
【0037】
同図に示すように、座標検出部7は、駆動回路71(駆動回路71R、駆動回路71L)、増幅回路72(増幅回路72R、増幅回路72L)、走査機構制御回路73、角度検出回路74(角度検出回路74R、角度検出回路74L)、演算回路75を有する。ここで、符号にRが付けられた回路は第1の検出器6Rの系に対応する回路であり、符号にLが付けられた回路は第2の検出器6Lの系に対応する回路である。
【0038】
駆動回路71Rはエミッタ6Raの光源に駆動電流を供給する。同様に駆動回路71Lはエミッタ6Laの光源に駆動電流を供給する。
増幅回路72Rはレシーバ6Rbの出力を増幅し、角度検出回路74Rに出力する。同様に増幅回路72Lはレシーバ6Lbの出力を増幅し、角度検出回路74Rに出力する。
走査機構制御回路73はエミッタ6Ra内及びエミッタ6La内の夫々の走査機構を制御する。
【0039】
角度検出回路74Rは増幅回路72Rの出力である増幅されたレシーバ6Rbの出力が最も低下したタイミングを走査機構制御回路73から供給される走査タイミング基準信号をもとに検出し、検出されたタイミングを角度情報に置換して出力する。ここで、走査機構制御回路73から供給される走査タイミング基準信号とは、例えば、走査機構の走査角度を0度であるときに走査機構制御回路73から角度検出回路74Rに出力される信号である。角度検出回路74Rは、この走査タイミング基準信号が入力されたタイミングとレシーバ6Rbの出力が最も低下したタイミングとの差を求め、この差を角度情報に置換する。すなわち、走査機構の走査角度が0度のとき光の軸が表示画面2の第1の辺2aに平行となるように設定されている場合、表示画面2上でユーザにより指示された座標と第1の検出器6Rとを結ぶ直線と、上記の表示画面2の第1の辺2a(直線)とがなす角度が上記の第1の角度情報として求められることとなる。そして、角度検出回路74Rは求めた角度情報を演算回路75に出力する。角度検出回路74Lも、角度検出回路74Rと同様に、増幅回路72Lの出力である増幅されたレシーバ6Lbの出力が最も低下したタイミングを走査機構制御回路73から供給される走査タイミング基準信号をもとに検出し、検出されたタイミングを第2の角度情報に置換して演算回路75に出力する。これにより求められる角度は、表示画面2上でユーザにより指示された座標と第2の検出器6Lとを結ぶ直線と、表示画面2の第2の辺2b(直線)とがなす角度である。
【0040】
演算回路75は、角度検出回路74Rと角度検出回路74Lより入力された2つの角度情報をもとに表示画面2上でユーザにより指示された座標を検出する。
【0041】
<座標検出の動作>
以上のように構成された情報処理装置1による座標検出の動作について説明する。
図6は座標検出の動作を説明する模式図である。
【0042】
表示画面2上にユーザの指やスタイラスペン等の遮蔽物Sが接触(接近)すると、以下に示すようにして、その接触された位置の座標が第1の検出器6R、第2の検出器6L、および座標検出部7により検出される。
【0043】
まず、第1の検出器6Rの動作から説明する。
駆動回路71Rからエミッタ6Raの光源に駆動電流が供給され、エミッタ6Raから特定の波長を有する光が放出されるとともに、走査機構制御回路73からエミッタ6Raの走査機構に制御信号が供給される。これにより走査機構が駆動され、光源から放出された光が走査される。
【0044】
エミッタ6Raから放出され、表示画面2上を通過した光は、選択透過性材料からなるベゼル3の第2の部位3bを通過して反射部材5に到達し、反射部材5によって反射される。ここで、反射部材5は再帰反射性を有するため、反射部材5に入射した光は入射した方向、即ち、第1の検出器6Rの方向に向かって反射される。反射部材5によって反射された光は、ベゼル3の第2の部位3bを通過して検出器6に到達する。
【0045】
表示画面2上のある位置を指示する遮蔽物Sが存在する場合、エミッタ6Raによって走査されている光のうち、遮蔽物Sに向かって照射された光は遮蔽物Sによって遮られる。このため反射部材5に光が到達しないことによって、レシーバ6Rbでの受光量が低下する。したがって、このとき増幅回路72Rの出力も低下し、角度検出回路74Rにて、この出力低下時のタイミングと走査機構制御回路73から供給される走査タイミング基準信号のタイミングとの差から上記第1の角度情報が得られる。角度検出回路74Rによって検出された角度をθRとする。
【0046】
第2の検出器6Lにおいても第1の検出器6Rと同様の動作が行われることで上記第2の角度情報が得られる。この角度をθLとする。
【0047】
演算回路75は、角度検出回路74Rから出力された角度θRと、角度検出回路74Lから出力された角度θLから表示画面2上における遮蔽物Sの位置の座標を求める。
【0048】
上述のように、反射部材5はベゼル3の第2の部位3bによって隠されているものの、ベゼル3は選択透過性材料で構成されているため、検出器6と反射部材5との光の授受は妨げられることはない。また、ベゼル3によって可視光の透過量が制限されることによって、ユーザから反射部材5が見えることがない。
【0049】
<レシーバゲインの調整>
反射部材5とベゼル3の第2の部位3bと隙間の大きさ、ベゼル3の表面状態ならびに成形状態(成形ムラ等)等によっては、部位間での光の透過率に差が生まれることがある。そこで、レシーバのゲインを調整することによって、この問題を解消することとする。
【0050】
図7はレシーバの出力の例を示すグラフである。
図7(A)は選択透過性材料からなるベゼル3で反射部材5を覆っていないときのレシーバの出力分布を示し、図7(B)はベゼル3で反射部材5を覆ったときのレシーバの出力分布を示す。同図において、実線のプロットは一方のレシーバ6Rbの出力を示し、破線のプロットは他方のレシーバ6Lbの出力を示す。グラフの横軸は光の角度であり、縦軸はレシーバの出力である。
【0051】
図7(A)と図7(B)を比較すると、両レシーバ6Rb,6Lbの出力は共に図中W1に示す角度領域付近でベゼル3の光透過率の低下によるものと考えられる減衰が見られる。そこで、両レシーバ6Rb,6Lbの出力が閾値より低下した角度範囲を調べておき、この角度範囲においては、両レシーバ6Rb,6Lbの出力に対する増幅回路72R,72Lの増幅率(ゲイン)を上げるように構成することが望ましい。例えば、本情報処理装置1の起動時に、プログラムに従って制御部が検出器6及び座標検出部7を駆動させ、両レシーバ6Rb,6Lbの出力が閾値より低下した角度範囲を調べ、この結果をメモリに格納する。以後、制御部は、実際の座標検出において、メモリに記憶された角度範囲を設定し、この角度範囲において両レシーバ6Rb,6Lbの出力に対する増幅回路72R,72Lの増幅率(ゲイン)を予め決められた調整値だけ高くする。
【0052】
以上のように、本実施形態の情報処理装置1によれば次のような効果が得られる。
情報処理装置1では、可視領域の光の透過量を制限する選択透過性材料からなるベゼル3の第2の部位3bによって検出器6と反射部材5との間での光の授受を可能としながら、反射部材5の表出による情報処理装置1の外観への悪影響を防止することができる。また、反射部材5が汚れ、あるいは傷つくことによる座標検出精度の低下を防止でき、さらには第1の部位3aに第2の部位3bが延設されることによってのベゼルの強度向上を図ることが可能である。
【0053】
また、ベゼル3と反射部材5は独立に支持されているため、ベゼル3が外力あるいは熱等により変形する場合であっても反射部材5による光の反射に影響がなく、遮蔽物Sの位置検出を精度よく行うことが可能である。
【0054】
さらに、ベゼル3は情報処理装置1の前面側の臨む第1の部位3aと、反射部材5を覆う第2の部位3bが一体的に形成されているため、埃等の進入を防止し、デザイン性を向上させることが可能である。また、強度を維持したまま、第2の部位3bの厚さを薄くすることができ、第2の部位3bによる光の減衰を低減することが可能である。さらに、第1の部位3aと第2の部位3bを一体的に形成することにより部品点数を抑え、情報処理装置1の組み立て時の工数を減らすことが可能である。
【0055】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る情報処理装置20について説明する。
第1の実施形態に係る情報処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0056】
情報処理装置20は第1の実施形態に係る情報処理装置1と比較して、反射部材5の取り付け方法が異なる。
図10はベゼル3の配置を示す断面図である。
【0057】
同図に示すように、ベゼル3の第1の部位3aは情報処理装置1の前面側に臨み、筐体4によって支持されている。第2の部位3bは第1の部位3aの、表示画面2側から延設されている。第2の部位3bは、反射部材5が設けられている辺、即ち、第1の辺2a、第2の辺2b及び第3の辺2cに沿って設けられている。ベゼル3は、選択透過性材料を一体成形することにより形成することができる。反射部材5は、ベゼル3の第2の部位3bの裏側3cに取り付けられている。
【0058】
反射部材5は、第2の部位3bに接着剤により貼付される。ここで、この接着剤を光透過性を有するものとすることにより、接着剤による光の減衰が抑制され、遮蔽物Sの位置検出の精度を向上させることが可能である。
【0059】
反射部材5がベゼル3の第2の部位3bに直接固定されることにより、空気層による光の屈折による影響を低減することができる。また、反射部材5とベゼル3の第2の部位3bとの間に隙間が存在する場合に比べ、光路長を短くすることができ、光の減衰を抑えることができる。さらには、支持部材9に反射部材5を固定する場合に比べ、ベゼル3の小型化を図ることが可能である。
【0060】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0061】
上述の各実施形態において、情報処理装置には2基の検出器が設けられるものとしたが、検出器は2基に限られない。より多数の検出器を配置することにより、指示物の位置検出精度を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置
2 表示画面
3 ベゼル
3a 第1の部位
3b 第2の部位
5 反射部材
6 検出器
6R 第1の検出器
6L 第2の検出器
7 座標検出部
9 支持部材
12 受信部
20 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を有する表示部と、
前記表示画面の周縁にて離間した複数の位置に設けられ、それぞれ、前記表示画面に沿って、不可視領域を含む所定の波長帯域の光を走査し、前記光の反射光を検出する複数の検出器と、
前記複数の検出器の検出結果に基づいて表示画面上で指示された座標を検出する座標検出部と、
前記表示画面の周縁に沿って選択的に配置され、前記検出部からの前記光を反射する再帰反射性を有する反射部材と、
可視領域の光の透過量を制限する選択透過性材料からなるベゼルであって、前記表示画面の周囲を装飾的に囲う第1の部位と前記検出器と前記反射部材とを遮るように前記第1の部位から延設された第2の部位とを有するベゼルと
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記反射部材は、前記表示画面の周縁部に設けられた支持部材に固定されている
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記反射部材は、前記ベゼルの前記第2の部位に固定されている
情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記反射部材は、前記ベゼルに光透過性を有する接着剤によって固定されている
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、リモートコントローラからの光信号を受信可能な受信部をさらに有し、
前記ベゼルの前記第1の部位は前記受信部を覆う
情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−81441(P2011−81441A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230757(P2009−230757)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】