説明

情報処理装置

【課題】電源アダプタの安全性を確保しながら、電源アダプタの許容電力の限度まで連続して継続駆動を行って、電源アダプタの電力供給能力を十分に活かすことが可能な消費電力制御が行われる情報処理装置を提供する。
【解決手段】CPU3及び周辺機器を含む回路要素ユニット群5〜9を備えて情報処理を行う本体装置1と、外部電源からの電力を所定の電圧で供給するための電源アダプタ2とを備え、電源アダプタは本体装置に対して着脱自在である。電源アダプタと回路要素ユニット群とを接続する電源ライン10の始端部に接続され、電源アダプタから供給される電源電圧に基づく電力情報信号を出力する電圧検出部11と、電圧検出部からの電力情報信号に応じて、回路要素ユニット群の消費電力を段階的に制御し、電源電圧が低い程、消費電力を低減させる電力制御部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばノート型PC(パーソナルコンピュータ)のような情報処理装置に関し、特に、外部電源からの電力を供給するための電源アダプタを保護する消費電力制御機能を備えた情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、ノート型PCの外観の一例を示す斜視図である。PC本体100は、本体ケース101と、本体ケース101の後部にヒンジ102により回動可能に保持された蓋体103からなる。本体ケース101にはCPUを含む回路要素ユニット群が収容され、蓋体103の内側面には、液晶パネル104が設けられている。
【0003】
CPUを搭載した回路基板、他の回路要素ユニット群、及びバッテリパック等が、本体ケース101の内部に収容されている。本体ケース101の上面部には、キーボード105、タッチパッド106等が設けられている。
【0004】
本体ケース101の外部の、例えば右側面部に電源端子107が設けられ、この電源端子107に電源アダプタ(ACアダプタ)108が接続される。電源アダプタ108は、外部から供給されるAC(交流)電源をDC(直流)電源に変換してPC本体100に供給する。
【0005】
従来、このノート型PCのような情報処理装置の電源アダプタとしては、装置全体の最大消費電力を見積もり、それに見合う電力容量に設計された電源アダプタが使用されている。さらに、情報処理装置の動作に伴う消費電力が、許容電力(通常は電源アダプタの最大出力)を超えた場合、電流FUSEを切断することや、電源アダプタに内蔵された保護装置により出力停止状態にすることで、電源アダプタの安全性を確保している。また、情報処理装置が充電装置を内蔵している場合には、装置の負荷が許容電力を超えないように充電電流を制御することも行われる。
【0006】
上述のような電源アダプタの保護技術には、次のような問題がある。
(1)電流FUSEを切断する構成の場合、FUSEが切断された後には、情報処理装置の修理を行わなければ、再使用することができない。
(2)電源アダプタに内蔵の保護装置を動作させる場合であっても、情報処理装置の動作が停止してしまう。
(3)情報処理装置の一例であるパーソナルコンピュータは、昨今の情報処理能力の向上に伴い、消費電力が増大しており、充電制御だけでは許容電力を超えてしまう恐れがある。
【0007】
このような問題に対処するためには、大容量のACアダプタを用いるなど、コスト面および持ち運び性(小型軽量)などを犠牲にしなければならなかった。これに対して、システムの消費電力を低減し、より低容量のACアダプタの使用を可能とするために消費電力制御を採用することが知られている。
【0008】
従来、パーソナルコンピュータにおける代表的な消費電力制御技術の例としては、周期的にCPUのクロックを止めてCPUを間欠動作させることにより、CPUの平均処理速度を抑える制御技術(以下、スロットリング制御と称する)が知られている。この技術は主にCPUの発熱温度を制御するCPU熱制御対策や、バッテリ駆動時間の延長等に使用されているが、例えば特許文献1には、ACアダプタ保護のための消費電力制御にスロットリング制御を用いることが開示されている。
【0009】
すなわち特許文献1には、CPUを備えた情報処理装置の消費電力から平均消費電力を算出し、平均消費電力が規定値を超えた場合、CPUが消費する消費電力を低減する消費電力制御方法が開示されている。これによれば、一定時間毎に電流センサが検出する電流値を用いて平均消費電力を算出し、算出された平均消費電力が上限値を超えた場合には、CPUのスロットリング制御を行う。この制御方法により、情報処理装置に高負荷が掛かり、消費電力が電源アダプタの仕様を超えた場合に、CPUの消費電力を規定値内に抑える消費電力制御が行われるので、低容量の電源アダプタを使用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−295986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の構成においては、情報処理動作に伴うCPUの消費電力を検出し、その大きさに応じて消費電力制御が行われる。この方法の場合、電源アダプタの許容電力に係わりなく、CPUの消費電力が所定の大きさに達したときに消費電力制御が行われる。そのため、電源アダプタとしては許容電力的に実際には余裕がある状態であっても、CPUの消費電力を低減させるスロットリング制御が行われてしまう。
【0012】
その結果、電力供給能力の小さい電源アダプタを用いた場合には適切な消費電力制御が行われても、電力供給能力の大きい電源アダプタを用いた場合には、電源アダプタの電力供給能力を十分に活用できない事態が発生する。
【0013】
従って、本発明は、電源アダプタの安全性を確保しながら、電源アダプタの許容電力の限度まで連続して継続駆動を行って、電源アダプタの電力供給能力を十分に活用することが可能な消費電力制御が行われる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の情報処理装置は、CPU及び周辺機器を含む回路要素ユニット群を備えて情報処理を行う本体装置と、外部電源からの電力を所定の電圧で供給するための電源アダプタとを備え、前記電源アダプタは前記本体装置に対して着脱自在である。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の情報処理装置は、前記電源アダプタと前記回路要素ユニット群とを接続する電源ラインの始端部に接続され、前記電源アダプタから供給される電源電圧に基づく電力情報信号を出力する電圧検出部と、前記電圧検出部からの前記電力情報信号に応じて、前記回路要素ユニット群の消費電力を段階的に制御し、前記電源電圧が低い程、前記消費電力を低減させる電力制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、高負荷状態で消費電力が増大した場合に、安全性を確保しながら電源アダプタの許容電力の限度まで、情報処理装置を停止させることなく連続して駆動させることが可能である。すなわち、本体装置内での消費電力に係わらず、電源電圧の変動に基づき電源アダプタの実際の状態に適合した制御が行われるので、電源アダプタの電力供給能力を十分に活かすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態におけるノート型PCの主要回路構成を示すブロック図
【図2】同ノート型PCの電圧検出部の構成を示す回路図
【図3】電源アダプタの電源電圧に応じた動作モードを示す図
【図4】従来例のノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の情報処理装置は上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0019】
すなわち、前記電力制御部は、前記電力情報信号に応じて、前記CPUの処理能力を段階的に制御することにより、前記CPUの消費電力を低減させる構成とすることができる。
【0020】
また、前記電力情報信号は、基準電圧に対する前記電源電圧の大小関係を示す信号であり、前記電力制御部は、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低下したことを前記電力情報信号が示した場合、前記CPUの動作モードを省電力モードに移行させるように制御する構成とすることができる。
【0021】
また、前記電力制御部は、前記電力情報信号に応じて、前記CPU以外の少なくとも一種の前記回路要素ユニットを省電力モードに移行させて消費電力を低減させる構成とすることができる。
【0022】
以下、本発明の情報処理装置の一実施形態としてノート型PCを例に挙げ、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるノート型PCの主要回路構成を示すブロック図である。ノート型PCの外観構成は、図3に示した従来例の場合と同様である。
【0024】
図1において、PC本体1には、電源端子(不図示)を介して電源アダプタ2が着脱自在に接続される。PC本体1内には、情報処理のための基本的な要素としてのCPU3、BIOS4が配置されるとともに、周辺機器を含む回路要素ユニット群が収容されている。図1には、無線モジュール5、PCカード6、DVDドライブ7、USBコネクタ8、及び液晶バックライト9が、回路要素ユニット群の例として示されている。
【0025】
電源アダプタ2は、外部の例えば商用電源のAC電圧を所定のDC電圧に変換して供給する。電源アダプタ2からは、実線で示された電源供給ライン10を通じて、CPU3、フラッシュメモリ4、及び無線モジュール5を始めとする回路要素ユニット群に電力が供給される。
【0026】
PC本体1において、電源端子から回路要素ユニット群に対して伸びる電源ライン10の始端部には、電圧検出IC11が接続されている。当該箇所における電圧は実質的に、電源アダプタ2から供給される電源電圧に相当する。電圧検出IC11は電圧検出部を構成し、電源ライン10の始端部での電源電圧に基づき、電力情報信号を生成する。すなわち、電源電圧を基準電圧と比較して、電源電圧の低下を電力情報信号として出力する処理を行う。電圧検出IC11が生成する電力情報信号は、電力制御マイコン(マイクロコンピュータ)12に供給される。
【0027】
電力制御マイコン12は、電力制御部を構成するものであり、電圧検出IC11から供給される電力情報信号に応じて、動作モード制御信号を出力する。動作モード制御信号に基づき、以下のように回路要素ユニット群の消費電力が段階的に制御され、電源アダプタ2の電源電圧が低い程、消費電力が低減させられる。
【0028】
すなわち、CPU3に対する動作モード制御信号は、BIOS4を介して、破線で示す動作モード制御ライン13を通じて供給される。その動作モード制御信号により、CPU3の処理能力が段階的に変更されて、CPU3の消費電力を低減させる制御が行われる。CPU3の処理能力の段階的な変更は、例えば、スロットリング制御を行い、CPU3の動作を通常モードと省電力モード間で移行させる方法により実施することができる。省電力モードは、1段階または任意の複数の段階に設定することができる。
【0029】
この消費電力制御によれば、電源アダプタ2から供給される電源電圧が、電圧検出IC11で設定された基準電圧よりも低下した場合に、電圧検出IC11が出力する電力情報信号が変化し、それに応じて電力制御マイコン12は動作モード制御信号を変化させて、CPU3の動作モードが省電力モードに移行する。
【0030】
従って、高負荷状態でPC本体1の消費電力が増大するのに伴い電源アダプタ2からの電源電圧が低下した場合には、消費電力が低減されて電源アダプタ2の安全性が確保される。従って、PC本体1は、電源アダプタ2の許容電力の限度まで、情報処理を停止することなく連続して駆動される。しかも、PC本体1内での消費電力に係わらず、電源電圧の変動に基づき電源アダプタ2の実際の状態に適合した制御が行われるので、電源アダプタ2の電力供給能力を活用しきることが可能である。
【0031】
電力制御マイコン12からの動作モード制御信号はまた、動作モード制御ライン14を通じて、無線モジュール5、PCカード6、DVDドライブ7、USBコネクタ8、及び液晶バックライト9に対しても供給される。従って、電力制御マイコン12は、電圧検出IC11から供給される電力情報信号に応じて、CPU3以外の少なくとも一種の回路要素ユニットを省電力モードに移行させて、消費電力を低減させることができる。
【0032】
以上のような消費電力制御に際して、CPU3、あるいは無線モジュール5、PCカード6、DVDドライブ7、USBコネクタ8、液晶バックライト9等の他の回路要素ユニットの各々ついて、省電力モードに移行させる優先順位については、ノート型PCの仕様に応じて適宜設定することができる。また、複数の回路要素ユニットの省電力モード移行の組合わせについても、適宜設定することができる。
【0033】
図2は、電圧検出IC11が構成する電圧検出器の具体的な回路例を示す。この電圧検出器における検出端子15は上述のとおり、電源ライン10の始端部に接続されている。検出端子15の電圧は抵抗Ra、Rbにより分割されてヒステリシスコンパレータ16の一方の端子に入力される。ヒステリシスコンパレータ16の他方の端子には、基準電圧源17が供給する基準電圧Vr1が入力される。ヒステリシスコンパレータ16の出力は、インバータ18を介してCMOS回路19に入力され、CMOS回路19からCMOS回路19の出力信号が取り出される。
【0034】
検出端子15の電圧Vsが基準電圧Vr1より大きいと、ヒステリシスコンパレータ16の出力がLとなり、CMOS回路19の出力電圧はGNDと等しくなる。検出端子15の電圧Vsが基準電圧Vr1まで下がると、コンパレータ16の出力が反転し、CMOS回路19の出力電圧はVDDと等しくなる。基準電圧Vr1まで下がっていた検出端子15の電圧Vsが再度上昇して、基準電圧Vr1よりも高く設定された解除電圧を超えると、コンパレータ16の出力が反転してGNDと等しくなる。基準電圧Vr1と解除電圧の差がヒステリシス幅になる。
【0035】
このように、電圧検出IC11は、検出端子15から入力される電源アダプタ2の電源電圧(Vs)を基準電圧Vr1と比較して、基準電圧Vr1に対する電源電圧Vsの大小関係を電力情報信号として出力する。この例では、基準電圧はVr1の一種のみであり、従って、電源電圧の(Vs)の低下は1段階で検出され、CPU3の処理能力等について変更可能な省電力モードは、1段階のみ(動作モードとしては2段階)である。これに対して、例えば図2に示す構成の電圧検出器を複数個に備え、各電圧検出器の基準電圧源17が供給する基準電圧を異ならせることにより、電源アダプタ2の電源電圧(Vs)について、複数段階での変化を検出する構成とすることができる。それに応じて、動作モードを複数の段階に制御することができる。
【0036】
例えば2個の電圧検出器を用いれば、図3に示すように、電源電圧(Vs)の低下を2段階に検出し、動作モードを3段階に制御することができる。図3において、横軸は電源電圧であり、Vroは電源アダプタ2から供給される定格の電源電圧を示す。電源電圧(Vs)の低下は、2個の基準電圧Vr1、Vr2に基づき2段階に検出される。すなわち、Vr1〜Vr0の電圧では通常電圧とみなし、基準電圧Vr1及びVr2よりも低下したときに、動作モードの変更を要する電圧低下とする。
【0037】
これにより、電源電圧(Vs)がVr1≦Vs≦Vr0のときは通常動作モードM0、Vr2≦Vs<Vr1のときは省電力第1モードM1、Vs<Vr2のときは省電力第2モードM2に移行し、CPU3のスロットリング制御が行われ、あるいは他の回路要素ユニットが省電力モードで動作させられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の情報処理装置は、電源アダプタの安全性を確保しながら、電源アダプタの電力供給能力を十分に活かすことが可能であり、ノート型PC等に有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 PC本体
2 電源アダプタ
3 CPU
4 BIOS
5 無線モジュール
6 PCカード
7 DVDドライブ
8 USBコネクタ
9 液晶バックライト
10 電源ライン
12 電圧検出IC
13、14 動作モード制御ライン
15 検出端子
16 ヒステリシスコンパレータ
17 基準電圧源
18 インバータ
19 CMOS回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU及び周辺機器を含む回路要素ユニット群を備えて情報処理を行う本体装置と、外部電源からの電力を所定の電圧で供給するための電源アダプタとを備え、前記電源アダプタは前記本体装置に対して着脱自在である情報処理装置において、
前記電源アダプタと前記回路要素ユニット群とを接続する電源ラインの始端部に接続され、前記電源アダプタから供給される電源電圧に基づく電力情報信号を出力する電圧検出部と、
前記電圧検出部からの前記電力情報信号に応じて、前記回路要素ユニット群の消費電力を段階的に制御し、前記電源電圧が低い程、前記消費電力を低減させる電力制御部とを備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記電力制御部は、前記電力情報信号に応じて、前記CPUの処理能力を段階的に制御することにより、前記CPUの消費電力を低減させる請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記電力情報信号は、基準電圧に対する前記電源電圧の大小関係を示す信号であり、
前記電力制御部は、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低下したことを前記電力情報信号が示した場合、前記CPUの動作モードを省電力モードに移行させるように制御する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記電力制御部は、前記電力情報信号に応じて、前記CPU以外の少なくとも一種の前記回路要素ユニットを省電力モードに移行させて消費電力を低減させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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