説明

情報処理装置

【課題】メモリ保護を実現しつつ、複数のプロセッサコアのいずれかに異常が生じた際に、スムーズに代替処理を行わせること。
【解決手段】複数の処理手段と、複数の処理手段によってアクセスされ、各処理手段に対して使用可能な専用領域が割り当てられている共有メモリと、複数の処理手段の動作状態を管理する管理手段と、複数の処理手段の識別情報を保持したハードウエア手段と、を備え、管理手段は、複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合にその代替処理を行うように他の処理手段に指示すると共に、ハードウエア手段により保持された異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、代替処理を行う処理手段に使用可能とする情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア・プロセッサに代表される、処理手段を複数備える情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の処理手段を備える情報処理装置が普及している。例えば、一パッケージ内に複数のプロセッサコア(CPUコア)を封入して各プロセッサコアが独立して処理を行うマルチコア・プロセッサ、CPU等のプロセッサを複数個備えるマルチプロセッサ処理装置等が知られている。
【0003】
この種の情報処理装置において、複数の処理手段は、それぞれ固有のタスクを実行している場合がある。例えば、近年、車載制御装置の分野においては、複数の制御装置が有する機能を一の制御装置に統合する動きが見られるが、この場合、元々複数の制御装置がそれぞれ有していた機能は、各処理手段に割り当てられるのが通常である。このように、複数の処理手段を有する情報処理装置では、各処理手段がそれぞれ重要な機能を発揮している場合があり、いずれかの処理手段に異常が発生した際に、他の処理手段によって代替処理を行う必要が生じる場合がある。
【0004】
特許文献1には、特定のプロセッサで発生した異常を検出する異常検出手段を備え、その検出結果に基づいて、特定のプロセッサ以外の他のプロセッサのいずれかに、特定のプロセッサに割り当てられた特定制御を代替させるマルチプロセッサシステムについて記載されている。このシステムでは、例えば、コア0が車両制御のための処理を、コア1〜3が情報制御のための処理を行っており、コア0に異常が生じた場合には、コア1のオペレーティングシステム(OS;登録商標)を情報制御用OSから車両制御用OSに切り替え、その際に、レジストリや設定ファイルの書き換えを行って情報制御用OSのコンフィギュレーションを変更させている。
【0005】
また、複数の処理手段を備える情報処理装置において、処理手段間でデータを共有したり、外部機器との間で入出力されるデータを各処理手段が参照できるようにするために、共有メモリにデータを格納することが行われている。共有メモリにおいては、各処理手段が無制限書き込み等を行うことのないように、種々のアクセス制限が行われるのが通常である。
【0006】
特許文献2には、メモリの所定領域に対する各プロセッサのアクセス権限に関する情報を保持するアクセス権限情報保持手段と、上記アクセス権限に関する情報に基づいて各プロセッサによるメモリへのアクセスを管理するメモリ管理手段と、を備えるマルチプロセッサシステムについて記載されている。アクセス権限情報は、アドレス情報やアクセス権限の種類(「リード」、「ライト」、「バースト転送」、「コード転送」、「データ転送」等)とCPUとの関係を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−305317号公報
【特許文献2】特開2008−123031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、共有メモリ保護の観点について何ら記載されていない。特許文献2に記載されているように、複数の処理手段のそれぞれには、共有メモリへのアクセス可能な範囲(アドレス領域やアクセス種類)に関して制限が設けられていることが多いため、代替処理を行おうとする処理手段による共有メモリへのアクセス要求が拒絶されてしまう場合がある。
【0009】
このように、許可されないアクセス要求がなされた場合には、システムリセットが行われることがあり、その結果、代替処理をスムーズに行うことができないという事態が生じ得る。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、メモリ保護を実現しつつ、複数の処理手段のいずれかに異常が生じた際に、スムーズに(エラーやシステムリセットを発生させることなく)代替処理を行わせることが可能な情報処理装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
複数の処理手段を備える情報処理装置であって、
前記複数の処理手段によってアクセスされ、各処理手段に割り当てられた専用領域が設定されている共有メモリと、
前記複数の処理手段の動作状態を管理する管理手段と、
前記複数の処理手段の識別情報を保持したハードウエア手段と、
を備え、
前記管理手段は、前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、該異常状態となった処理手段の代替処理を行うように他の処理手段に指示すると共に、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とする、
情報処理装置である。
【0012】
この本発明の一態様によれば、複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、異常状態となった処理手段の代替処理を行うように他の処理手段に指示すると共に、ハードウエア手段により保持された異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、代替処理を行う処理手段に使用可能とするため、メモリ保護を実現しつつ、複数の処理手段のいずれかに異常が生じた際に、スムーズに代替処理を行わせることができる。
【0013】
本発明の一態様において、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持しており、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段により保持された識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、前記代替処理を行う処理手段により保持された識別情報に代えて前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を参照することにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とするものとしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様において、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持しており、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段により保持された識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、前記代替処理を行う処理手段により保持された識別情報を書き換えることにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とするものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様において、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持すると共に、前記共有メモリへのアクセス時には、自己が保持する識別情報をアクセス要求と共に前記管理手段に出力する手段であり、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段が出力した識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、自己が保持する識別情報に代えて、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を出力するように前記代替処理を行う処理手段に指示することにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とするものとしてもよい。
【0016】
情報処理装置。
【0017】
また、本発明の一態様において、
前記代替処理を行う指示は、アイドル状態となっている処理手段に対してなされることを特徴とするものとしてもよい。
【0018】
情報処理装置。
【0019】
また、本発明の一態様において、
前記ハードウエア手段は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)から前記複数の処理手段の識別情報がダウンロードされることにより、前記複数の処理手段の識別情報を保持するレジスタである。
【0020】
また、本発明の一態様において、
前記管理手段は、例えば、RTOS(Real-Time Operating System)である。
【0021】
また、本発明の一態様において、
前記複数の処理手段は、プロセッサコアであり、
マルチコア・プロセッサとして構成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、メモリ保護を実現しつつ、複数の処理手段のいずれかに異常が生じた際に、スムーズに代替処理を行わせることが可能な情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例に係る情報処理装置1のシステム構成例である。
【図2】第1実施例に係る情報処理装置1において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。
【図3】第2実施例に係る情報処理装置2において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る情報処理装置3のシステム構成例である。
【図5】第3実施例に係る情報処理装置3において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施例に係る情報処理装置について説明する。本発明の各実施例に係る情報処理装置は、一パッケージ内に複数のプロセッサコア(CPUコア;以下省略)を封入したマルチコア・プロセッサ、或いはCPU等のプロセッサを複数個備えるマルチプロセッサ処理装置として構成されるが、以下の説明では、マルチコア・プロセッサとして構成されるものとする。
【0026】
<第1実施例>
[構成、基本機能]
図1は、本発明の第1実施例に係る情報処理装置1のシステム構成例である。情報処理装置1は、主要な構成として、プロセッサコア10#1、10#2と、識別ID保持用レジスタ20と、RTOS(Real-time operating system)30と、共有メモリ40と、を備える。これらの構成要素は、例えばバス(シリアル回線であってもよい)50によって通信可能に接続されている。プロセッサコアの個数に特段の制限はないが、本実施例においては二個とした。
【0027】
プロセッサコア10#1、10#2は、図示しないプログラムメモリに格納された命令列をフェッチして一時的に格納する命令バッファ、フェッチする命令列のアドレスを示すプログラムカウンタ、命令バッファに格納された命令列をデコード(復号)する命令デコーダ、命令デコーダによりデコードされた命令を実行するための演算器、演算器による演算結果等が格納される専用レジスタ、一次キャッシュメモリ等を有しており、それぞれが特定のタスクに係る処理を実行する。
【0028】
また、プロセッサコア10#1、10#2は、それぞれ、自己の識別ID等を保持した内部レジスタ12#1、12#2を有する。
【0029】
識別ID保持用レジスタ20は、プロセッサコア10#1、10#2の識別ID等を保持している。
【0030】
これらのレジスタが保持する識別IDは、情報処理装置1の起動時やリカバリー時等にROM(Read Only Memory)15やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等からダウンロードされる。なお、処理速度の点からレジスタが適しているが、レジスタに代えて、不揮発性のメモリ、その他のハードウエア手段等が用いられても構わない。
【0031】
RTOS30は、プロセッサコア10#1、10#2のいずれか、又はその他のプロセッサコアにより実行される。RTOS30は、OSEK、ITRON、その等のリアルタイムオペレーティングシステムである。RTOS30は、通常のオペレーティングシステムが有する機能を実現しており、プロセッサコア10#1、10#2の動作状態を管理している。
【0032】
共有メモリ40は、例えばRAM(Random Access Memory)である。共有メモリ40には、プロセッサコア10#1、10#2のそれぞれが使用可能な専用領域40#1、40#2が設定されている。
【0033】
共有メモリ40における専用領域に対する排他制御は、RTOS30により行われる。RTOS30は、いずれかのプロセッサコアから共有メモリ40へのアクセス要求がなされると、要求元のプロセッサコアが有する内部レジスタ12#1又は12#2が保持する識別IDを参照し、識別IDとアクセス要求に含まれる共有メモリ40のアドレスを比較する。そして、専用領域が割り当てられたプロセッサコア以外のプロセッサコアが当該専用領域へのアクセス要求を行った場合には、これを拒絶し、エラー処理を実行する。これによって、専用領域が割り当てられたプロセッサコア以外のプロセッサコアが当該専用領域を使用しないように管理している(メモリ保護の実現)。
【0034】
[代替処理]
第1実施例に係るRTOS30は、動作状態を管理しているプロセッサコア10#1、10#2のいずれかが異常状態となった場合には、異常状態となったプロセッサコアの代替処理を行うように他のプロセッサコアに指示する。係る代替処理の指示は、無条件に行うのではなく、各プロセッサコアが実行している命令の重要度、緊急性等を考慮して、代替処理を指示しない場合があっても構わない。
【0035】
また、三個以上のプロセッサコアを備える場合、アイドル状態等、処理に余裕がある状態のプロセッサコアに対して代替処理を指示するように、予めRTOS30の機能が設定されていると好適である。
【0036】
また、第1実施例に係るRTOS30は、代替処理を指示する際には、内部レジスタ12#1又は12#2が保持する識別IDに代えて、識別ID保持用レジスタ20により保持された識別IDのうち、異常状態となったプロセッサコアの識別情報を参照する。
【0037】
これによって、代替処理を行うプロセッサコアが、異常状態となったプロセッサコアに割り当てられている共有メモリ40の専用領域を使用することが可能となる。
【0038】
図2は、第1実施例に係る情報処理装置1において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。本図では、プロセッサコア10#2が異常状態となったものとする。また、ROM15の図示を省略している。
【0039】
(1)まず、プロセッサコア10#2からRTOS30に、異常状態となったことを示す割り込み信号等が送信される。なお、これに代えて、RTOS30がポーリング等を行ってプロセッサコア10#2の異常を発見してもよい。
【0040】
(2)次に、RTOS30は、プロセッサコア10#1に代替指示を送信する。
【0041】
(3)その後、プロセッサコア10#1から共有メモリ40へのアクセス要求がなされる。
【0042】
(4)RTOS30は、プロセッサコア10#1の内部レジスタ12#1を参照せず、識別ID保持用レジスタ20により保持された識別IDのうちプロセッサコア#2の識別IDを参照するため、(5)プロセッサコア10#1によるプロセッサコア#2用の専用領域の使用を許可する。
【0043】
以上説明した本実施例の情報処理装置1によれば、RTOS30が代替処理を指示する際に、内部レジスタ12#1又は12#2が保持する識別IDに代えて、識別ID保持用レジスタ20により保持された識別IDのうち、異常状態となったプロセッサコアの識別情報を参照するため、メモリ保護を実現しつつ、複数のプロセッサコアのいずれかに異常が生じた際に、スムーズに(エラーやシステムリセットを発生させることなく;以下同じ)代替処理を行わせることができる。
【0044】
また、レジスタ等に保持された情報を変更せず、RTOS30の処理を介して代替処理を実現するため、異常状態となったプロセッサコアが復帰した際に、速やかに元の状態に復帰することができる。すなわち、円滑にリカバリーを行うことができる。
【0045】
<第2実施例>
[構成、基本機能]については、第1実施例と共通するため、各構成要素について同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
[代替処理]
第2実施例に係るRTOS30は、第1実施例と同様、動作状態を管理しているプロセッサコア10#1、10#2のいずれかが異常状態となった場合には、異常状態となったプロセッサコアの代替処理を行うように他のプロセッサコアに指示する。係る代替処理の指示は、無条件に行うのではなく、各プロセッサコアが実行している命令の重要度、緊急性等を考慮して、代替処理を指示しない場合があっても構わない。
【0047】
また、第2実施例に係るRTOS30は、代替処理を指示する際には、内部レジスタ12#1又は12#2のうち、代替処理を指示するプロセッサコアが有する内部レジスタの内容を、異常状態となったプロセッサコアの識別IDに書き換える処理を実行する。異常状態となったプロセッサコアの識別IDは、識別ID保持用レジスタ20から取得する。ここで、「書き換える」処理は、プロセッサコアに指示して「書き換えさせる」処理を含む。
【0048】
これによって、代替処理を行うプロセッサコアが、異常状態となったプロセッサコアに割り当てられている共有メモリ40の専用領域を使用することが可能となる。
【0049】
図3は、第2実施例に係る情報処理装置2において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。本図では、プロセッサコア10#2が異常状態となったものとする。また、ROM15の図示を省略している。
【0050】
(1)まず、プロセッサコア10#2からRTOS30に、異常状態となったことを示す割り込み信号等が送信される。なお、これに代えて、RTOS30がポーリング等を行ってプロセッサコア10#2の異常を発見してもよい。
【0051】
(2)次に、RTOS30は、プロセッサコア10#1に代替指示を送信する。(3)この際に、RTOS30は、プロセッサコア10#1の内部レジスタ12#1の内容をプロセッサコア10#2の識別IDに書き換える(又は書き換えさせる)。
【0052】
(4)その後、プロセッサコア10#1から共有メモリ40へのアクセス要求がなされる。
【0053】
(5)RTOS30は、プロセッサコア10#1の内部レジスタ12#1を参照し、識プロセッサコア#2の識別IDを読み取り、(6)プロセッサコア10#1によるプロセッサコア#2用の専用領域の使用を許可する。
【0054】
以上説明した本実施例の情報処理装置2によれば、RTOS30が代替処理を指示する際に、代替処理を指示するプロセッサコアの内部レジスタの内容を、異常状態となったプロセッサコアの識別IDに書き換えるため、メモリ保護を実現しつつ、複数のプロセッサコアのいずれかに異常が生じた際に、スムーズに代替処理を行わせることができる。
【0055】
<第3実施例>
[構成、基本機能]
図4は、本発明の第3実施例に係る情報処理装置3のシステム構成例である。本実施例の情報処理装置3は、情報伝達経路のみが第1及び第2実施例と相違するため、各構成要素について同一の符号を付し、説明を省略する。なお、本実施例の場合、識別ID保持用レジスタが細分化され、プロセッサコア10#2の識別IDのみを保持したレジスタが10#1に接続され、プロセッサコア10#1の識別IDのみを保持したレジスタが10#2に接続される態様であってもよい。
【0056】
[代替処理]
第3実施例に係るRTOS30は、第1実施例と同様、動作状態を管理しているプロセッサコア10#1、10#2のいずれかが異常状態となった場合には、異常状態となったプロセッサコアの代替処理を行うように他のプロセッサコアに指示する。係る代替処理の指示は、無条件に行うのではなく、各プロセッサコアが実行している命令の重要度、緊急性等を考慮して、代替処理を指示しない場合があっても構わない。
【0057】
また、第3実施例に係るRTOS30は、代替処理を指示する際には、代替処理を行うプロセッサコアに対し、自己が保持する識別IDに代えて、識別ID保持用レジスタ20により保持された異常状態となったプロセッサコアの識別IDを出力するように指示する。
【0058】
これによって、代替処理を行うプロセッサコアが、異常状態となったプロセッサコアに割り当てられている共有メモリ40の専用領域を使用することが可能となる。
【0059】
図5は、第3実施例に係る情報処理装置3において、代替処理が指示される際の情報伝達の順序を示す図である。本図では、プロセッサコア10#2が異常状態となったものとする。また、ROM15の図示を省略している。
【0060】
(1)まず、プロセッサコア10#2からRTOS30に、異常状態となったことを示す割り込み信号等が送信される。なお、これに代えて、RTOS30がポーリング等を行ってプロセッサコア10#2の異常を発見してもよい。
【0061】
(2)次に、RTOS30は、プロセッサコア10#1に代替指示を送信する。(3)この際に、RTOS30は、プロセッサコア10#1に対し、内部レジスタ12#1が保持する識別IDに代えて、識別ID保持用レジスタ20により保持されたプロセッサコア10#2の識別IDを出力するように指示する。
【0062】
(4)プロセッサコア10#1は、識別ID保持用レジスタ20からプロセッサコア10#2の識別IDを読み取り、(5)共有メモリ40へのアクセス要求をRTOS30に出力する際には、プロセッサコア10#2の識別IDと共にアクセス要求を出力する。
【0063】
(6)RTOS30は、プロセッサコア10#2の識別IDと共に入力されたアクセス要求であるため、プロセッサコア10#1によるプロセッサコア#2用の専用領域の使用を許可する。
【0064】
以上説明した本実施例の情報処理装置3によれば、RTOS30が代替処理を指示する際に、代替処理を行うプロセッサコアに対し、自己が保持する識別IDに代えて、識別ID保持用レジスタ20により保持された異常状態となったプロセッサコアの識別IDを出力するように指示するため、メモリ保護を実現しつつ、複数のプロセッサコアのいずれかに異常が生じた際に、スムーズに代替処理を行わせることができる。
【0065】
なお、第3実施例の情報処理装置3においては、RTOS30の指示に応じて識別IDを切り替える機能を、各プロセッサコアが実行するプログラムが有していることが必要となる。このため、予め各プロセッサコアが実行するプログラムに、RTOS30の指示に応じて識別IDを切り替えるための命令列を包含させておく必要がある。
【0066】
これに対し、第1実施例及び第2実施例の場合、上記のようなプログラムの追加機能は必要がなく、RTOS30の機能修正のみで本発明が実現できるという有利さが存在する。
【0067】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1、2、3 情報処理装置
10#1、10#2 プロセッサコア
12#1、12#2 内部レジスタ
15 ROM
20 識別ID保持用レジスタ
30 RTOS
40 共有メモリ
40#1、40#2 専用領域
50 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理手段を備える情報処理装置であって、
前記複数の処理手段によってアクセスされ、各処理手段に割り当てられた専用領域が設定されている共有メモリと、
前記複数の処理手段の動作状態を管理する管理手段と、
前記複数の処理手段の識別情報を保持したハードウエア手段と、
を備え、
前記管理手段は、前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、該異常状態となった処理手段の代替処理を行うように他の処理手段に指示すると共に、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持しており、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段により保持された識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、前記代替処理を行う処理手段により保持された識別情報に代えて前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を参照することにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持しており、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段により保持された識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を用いて、前記代替処理を行う処理手段により保持された識別情報を書き換えることにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記複数の処理手段は、それぞれ自己の識別情報を保持すると共に、前記共有メモリへのアクセス時には、自己が保持する識別情報をアクセス要求と共に前記管理手段に出力する手段であり、
前記管理手段は、
前記複数の処理手段が出力した識別情報を参照することにより、前記共有メモリの専用領域が割り当てられた処理手段以外の処理手段が当該専用領域を使用しないように管理する手段であり、
前記複数の処理手段のうち一の処理手段が異常状態となった場合に、自己が保持する識別情報に代えて、前記ハードウエア手段により保持された前記異常状態となった処理手段の識別情報を出力するように前記代替処理を行う処理手段に指示することにより、前記異常状態となった処理手段に割り当てられた専用領域を、前記代替処理を行う処理手段に使用可能とすることを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記代替処理を行う指示は、アイドル状態となっている処理手段に対してなされることを特徴とする、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記ハードウエア手段は、ROM(Read Only Memory)又はEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)から前記複数の処理手段の識別情報がダウンロードされることにより、前記複数の処理手段の識別情報を保持するレジスタである、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記管理手段は、RTOS(Real-Time Operating System)である、
情報処理装置。
【請求項8】
前記複数の処理手段は、プロセッサコアであり、
マルチコア・プロセッサとして構成される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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