説明

情報提供装置、情報提供方法、及びプログラム

【課題】ユーザによる天体観察をより容易にすることを目的とする。
【解決手段】情報提供装置の位置を示す情報から算出された装置位置情報を取得し、情報提供装置の方位を示す情報から算出された方位情報を取得し、情報提供装置の姿勢を示す情報から算出された姿勢情報を取得し、記憶部に記憶された、現実空間の天体の位置に対応する表示部における天体の座標を算出するための位置情報と天体に関する属性を示す属性情報とを含む天体情報から、装置位置情報、方位情報、姿勢情報、表示部の内部パラメータ、及び現在の時刻に基づいて、表示部の視野に含まれる天体の天体情報を読み込み、天体情報に含まれる属性情報に基づいて天体に関する属性を表す画像を生成し、天体情報に含まれる位置情報、装置位置情報、及び現在の時刻に基づいて、表示部における天体の表示座標を算出し、生成した画像を、表示座標に基づいて表示することで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、情報提供方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
天体観察を行うには、一般に星座早見盤が用いられる。また、近年では、ゲーム機器(非特許文献1)やモバイル端末(非特許文献2)にGPS等が備えられ、利用者は、その場から見える星座をゲーム機やモバイル端末のディスプレイに表示させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.astroarts.co.jp/products/hoshizora-navi/index-j.shtml>
【非特許文献2】インターネット<URL:http://ipodtouchlab.com/2008/08/gps-starmap-220.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2に開示されている技術では、星などの情報を得ることは可能であるが、画面と実際の空とを交互に見ることが要求されるため、例えば一等星など特徴のある星の確認はしやすいものの、星が多く見える地域では実際の星が多いが故に、どれがどの星であるかを特定しにくい問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、ユーザによる天体観察をより容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る情報提供装置は、表示部及び記憶部を有する情報提供装置であって、位置検出装置で検出された当該情報提供装置の位置を示す情報から算出された装置位置情報を取得する位置情報取得手段と、方位検出装置で検出された当該情報提供装置の方位を示す情報から算出された方位情報を取得する方位情報取得手段と、姿勢検出装置で検出された当該情報提供装置の姿勢を示す情報から算出された姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、前記記憶部に記憶された、現実空間の天体の位置に対応する前記表示部における前記天体の座標を算出するための位置情報と前記天体に関する属性を示す属性情報とを含む天体情報から、前記位置情報取得手段で取得された装置位置情報、前記方位情報取得手段で取得された方位情報、前記姿勢情報取得手段で取得された姿勢情報、前記表示部の内部パラメータ、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部の視野に含まれる天体の天体情報を読み込む読込手段と、前記天体情報に含まれる属性情報に基づいて前記天体に関する属性を表す画像を生成し、前記天体情報に含まれる位置情報、前記装置位置情報、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部における前記天体の表示座標を算出し、生成した画像を、前記表示座標に基づいて表示する表示制御手段と、を有する。
【0007】
ここで、「位置情報取得手段」は、例えば、後述する計測部40に対応する。「方位情報取得手段」は、例えば、後述する方位情報取得部45に対応する。「姿勢情報取得手段」は、例えば、後述する姿勢情報取得部50に対応する。「読込手段」は、例えば、後述する天体情報読込部60に対応する。「表示制御手段」は、例えば、後述する表示制御部75に対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザによる天体観察をより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】AR提供装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図2】AR提供装置の機能構成の一例を示す図である。
【図3】AR制御処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【図4】拡張画像表示処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
【図5A】拡張画像が表示されたときの一例を示す図である。
【図5B】拡張画像が表示されたときの一例を示す図である。
【図5C】拡張画像が表示されたときの一例を示す図である。
【図5D】拡張画像が表示されたときの一例を示す図である。
【図5E】拡張画像が表示されたときの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るAR提供装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
AR提供装置100は、情報提供装置(コンピュータ)の一例であり、HMD(Head Mounted Display)等であり、AR提供装置100を介して知覚できる現実空間に整合する位置に、AR提供装置100で生成した画像(コンピュータグラフィックス画像)を表示することにより、拡張された現実感(AR:Augmented Reality)を提供する。より具体的には、AR提供装置100は、AR提供装置100を介して知覚できる現実空間の天体に整合する位置に、天体に関する各種の情報を表す画像(拡張画像)を表示する。
【0012】
AR提供装置100は、制御装置5、記憶装置10、通信装置15、表示装置20、方位検出装置25、姿勢検出装置30、及び撮影装置35を有する。
制御装置5は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、必要に応じて、記憶装置10よりプログラムを読み出して、プログラムを実行する。プログラムが実行されることで、AR提供装置100における後述の機能、及び後述のフローチャートに係る処理が実現される。
【0013】
記憶装置10は、記憶部の一例であり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HD(Hard Disk)等であり、各種の情報を記憶する。より詳細に説明すると、記憶装置10(ROM)は、AR提供装置100の電源投入時に最初に読み込まれるプログラム等を記憶する。また、記憶装置10(RAM)は、AR提供装置100のメインメモリとして機能する。また、記憶装置10(HD)は、プログラム以外に制御装置5により算出された数値データ等を記憶する。なお、AR提供装置100は、記憶装置10に記憶される各種の情報を、CD−ROM等の記録媒体から取得してもよいし、ネットワーク等を通じてダウンロードしてもよい。
【0014】
通信装置15は、位置検出装置の一例である衛星と通信を行い、軌道情報を取得する。また、通信装置15は、天体に関する各種の情報(天体情報)を記憶した記憶装置を有する情報処理装置(サーバ等)と通信を行い、天体情報を取得する。通信装置15で取得された天体情報は、記憶装置10に記憶される。また、通信装置15は、サーバ等を介して取得した人工衛星の一覧情報に基づいて、各人工衛星を管理しているサーバ等から、各人工衛星の軌道要素を取得する。通信装置15で取得された軌道要素は、記憶装置10に記憶される。なお、天体情報、及び軌道要素については、通信装置15を介して取得される構成に限られるものでなはく、例えば、記憶装置10に予め記憶されていてもよい。
表示装置20は、表示部の一例であり、透過型の液晶ディスプレイ等であり、各種の画像を表示する。
【0015】
方位検出装置25は、例えば電子コンパスであり、微弱な地磁気(例えば前後方向の地磁気及び左右方向の地磁気)を検知し、地磁気の強さから北の方向を計算してAR提供装置100の方位(方位情報)を算出する。
姿勢検出装置30は、例えばジャイロセンサであり、物体の角速度を検知し、角速度を積分などして角度(AR提供装置100の姿勢(姿勢情報))を算出する。
撮影装置35は、現実空間の撮影を行う。
【0016】
なお、AR提供装置100のハードウェア構成は、これに限られるものではない。例えば、方位検出装置25及び姿勢検出装置30に代えて、方位検出装置25及び姿勢検出装置30の機能を一体とした機能を有する方位姿勢検出装置を採用してもよい。
【0017】
図2は、AR提供装置100の機能構成の一例を示す図である。
AR提供装置100は、計測部40、方位情報取得部45、姿勢情報取得部50、映像取得部55、天体情報読込部60、軌道計測部65、座標補正部70、及び表示制御部75を有する。
計測部40は、位置情報取得手段の一例であり、通信装置15を介して衛星から取得された軌道情報から、AR提供装置100の現在の位置を示す情報(装置位置情報の一例であるAR位置情報)を計測(算出して取得)する。
【0018】
方位情報取得部45は、方位検出装置25で算出された方位情報を取得する。なお、方位情報取得部45は、方位検出装置25から地磁気などの検出された情報を受け取り、方位情報を算出してもよい。
姿勢情報取得部50は、姿勢検出装置30で算出された姿勢情報を取得する。なお、姿勢情報取得部50は、姿勢検出装置30から角速度などの検出された情報を受け取り、姿勢情報を算出してもよい。
映像取得部55は、映像データ取得手段の一例であり、撮影装置35で撮影された現実空間の映像データを取得する。
【0019】
天体情報読込部60は、記憶装置10から天体情報を読み込む。より詳細に説明すると、天体情報読込部60は、まず、計測部40で計測されたAR位置情報、方位情報取得部45で取得された方位情報、及び姿勢情報取得部50で取得された姿勢情報、及び現在の時刻などに基づいて、AR提供装置100を装着しているユーザの視野(AR視野)を特定(推定)する。
本実施形態では、表示装置20の内部パラメータ(焦点距離など)が既知であるので、AR視野は、方位情報、及び姿勢情報により定められる地平座標系における範囲とする。次に、AR視野に含まれる天体を特定し、特定した天体に対応する天体情報を記憶装置10から読み込む。
【0020】
ここで、天体は、宇宙空間にある物体であり、星(恒星、惑星、彗星、流星)、人工衛星などである。また、天体情報には、天体に関する属性を示す属性情報として、天体を識別する天体ID、天体の名称、天体が属する星座名、星座に関する形状、天体の位置(赤経、赤緯)、天体を観測(視認)したときの天体の直径(実視直径)、実際の天体の直径(実直径)、天体の明るさを表す等級(絶対等級)、天体を観測したときの等級(実視等級)、等級の種別、及び天体を発見した者の氏名の情報が含まれる。
【0021】
ここで、本実施形態で採用している座標系について説明する。本実施形態では、天体の絶対位置を示す(赤経、赤緯)を座標値とする赤道座標系、天体の相対位置を示す(方位角、高度)を座標値とする地平座標系、天体に係る拡張画像の表示装置20の画面上での表示位置を示す(x、y)を座標値とする仮想座標系(表示座標系)を採用している。なお、各天体は、AR提供装置と非常に離れて位置しているので、観測者にとってみれば各天体が平面上に映し出されている。そこで、仮想座標系では、2次元の座標系を採用している。
【0022】
軌道計測部65は、位置情報算出手段の一例であり、AR位置情報、現在の時刻、及び人工衛星の軌道要素に基づいて、人工衛星の位置を計測(算出して取得)する。
座標補正部70は、AR位置情報、方位情報、及び姿勢情報などを用いて算出された、拡張画像を表示装置20に表示する位置を示す座標(表示座標)を、映像取得部55で取得された映像データに基づいて補正する。
表示制御部75は、方位情報、姿勢情報、及び天体情報などに基づいて、拡張画像を生成して表示装置20に表示する。
【0023】
図3は、AR提供装置100における各機能により行われるAR制御処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
はじめに、ステップS5では、計測部40は、通信装置15を介して衛星から取得された軌道情報から、いわゆるGPSを利用してAR提供装置100の現在の位置を示す情報(AR位置情報)を特定(測定)する。
次に、ステップS10では、向き特定部(方位情報取得部45及び姿勢情報取得部50)は、AR提供装置100の向き(方位及び姿勢)を特定する。すなわち、方位情報取得部45は、方位検出装置25で算出された方位情報を取得する。姿勢情報取得部50は、姿勢検出装置30で算出された姿勢情報を取得する。
【0024】
次に、ステップS15では、天体情報読込部60は、AR提供装置100の位置及び向き、並びに現在の時刻に基づいて、AR視野に含まれる天体の天体情報を記憶装置10から読み込む(抽出する)。
より具体的には、まず、天体情報読込部60は、表示装置20の内部パラメータ、AR位置情報、方位情報取得部45で取得された方位情報、及び姿勢情報取得部50で取得された姿勢情報に基づいて、方位角及び高度により特定される地平座標上の範囲をAR視野として特定する。
次に、天体情報読込部60は、AR位置情報及び現在の時刻に基づいて、天体情報に含まれる天体の位置(赤経、赤緯)の情報を地平座標系における位置(方位角及び高度)の情報に変換する。そして、天体情報読込部60は、変換した位置(方位角及び高度)がAR視野に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した位置(方位角及び高度)の天体の天体情報を抽出する。
次に、ステップS20では、表示制御部75は、拡張画像表示処理を行う。なお、ステップS5〜S20までの処理は、AR提供装置の電源がONであるときは、繰り返して行われる。また、AR提供装置の電源がONであるときは、映像取得部55により撮影装置35で撮影された現実空間の映像データが取得されているものとする。
【0025】
図4は、AR提供装置100における各機能により行われる拡張画像表示処理に係るフローチャートの一例を示す図である。
はじめに、表示制御部75は、各種の表示モードを記憶装置10から読み込む(ステップS25)。
本実施形態では、表示モードとして、星に関する属性を表す画像を表示するか否かを判断可能な星属性表示モード、星座の情報を表す画像を表示するか否かを判断可能な星座表示モード、星を強調する画像を表示するか否かを判断可能な星強調表示モード、人工衛星に関する属性等を表す画像を表示するか否かを判断可能な人工衛星属性表示モード、風景を手前にして拡張画像を表示するか否かを判断可能な風景表示モードが設けられている。
各表示モードの情報(ON/OFF)は、入力デバイスを介して(例えば、AR提供装置100の任意の個所(例えばフレーム部分)に表示モード毎に設けられるボタンをユーザが押下することにより)、予め設定されている。
【0026】
ステップS30では、表示制御部75は、星属性表示モードがONであるか否か(星に関する属性を表す画像を表示する旨の設定がされているか否か)を判別する。このとき、表示制御部75は、星属性表示モードがONであると判別した場合は、続いて、ステップS35の処理を行い、他方、星属性表示モードがOFFであると判別した場合は、続いて、ステップS40の処理を行う。
ステップS35では、表示制御部75は、抽出された天体情報に基づいて、星に関する属性を表す拡張画像を生成する。より具体的には、表示制御部75は、天体情報に含まれる星の名称、等級の種別、及び天体を発見した者の氏名の情報を読み出し、星の名称、星の等級、天体を発見した者の氏名の少なくとも1つを表す拡張画像を生成する。複数の天体情報が抽出された場合は、夫々の天体情報に対応して拡張画像を生成する。
なお、抽出された全ての天体情報について拡張画像を生成する構成に限られるものではない。例えば、予め定めた、或いは観測者により入力装置を介して指定された等級の星についてのみ拡張画像を生成してもよい。また、例えば、星の名称が設定されている星についてのみ拡張画像を生成してもよい。図5Aに、星に関する属性を表す拡張画像110が表示されたときの一例を示す。
【0027】
ステップS40では、表示制御部75は、星座表示モードがONであるか否か(星座の情報を表す画像を表示する旨の設定がされているか否か)を判別する。このとき、表示制御部75は、星座表示モードがONであると判別した場合は、続いて、ステップS45の処理を行い、他方、星座表示モードがOFFであると判別した場合は、続いて、ステップS50の処理を行う。
ステップS45では、表示制御部75は、抽出された天体情報に基づいて、星座の情報を表す拡張画像を生成する。より具体的には、表示制御部75は、天体情報に含まれる星座に関する形状の情報(星座情報の一例)として規定されている、星(起点)の位置情報、及び該星と星座線により結ばれる星(終点)の位置情報を読み出して座標変換、投影変換を行い、星座線を表す拡張画像を生成する。複数の天体情報が抽出された場合は、夫々の天体情報に対応して拡張画像を生成する。なお、表示制御部75は、天体情報に含まれる星座情報(星座に関する形状の情報及び天体が属する星座名の情報)に基づいて、星座線と星座の名称とを表す拡張画像を生成してもよい。図5Bに、星座の情報を表す拡張画像120が表示されたときの一例を示す。
【0028】
ステップS50では、表示制御部75は、星強調表示モードがONであるか否か(星を強調する画像を表示する旨の設定がされているか否か)を判別する。このとき、表示制御部75は、星強調表示モードがONであると判別した場合は、続いて、ステップS55の処理を行い、他方、星強調表示モードがOFFであると判別した場合は、続いて、ステップS60の処理を行う。
ステップS55では、表示制御部75は、抽出された天体情報に基づいて、星を強調する拡張画像を生成する。より具体的には、表示制御部75は、天体情報に含まれる実視直径の情報(サイズ情報の一例)、及び実視等級の情報(等級情報の一例)に基づいて、本来視認される星の大きさよりも大きく、及び本来視認される星の明るさよりも明るくした、星を強調する拡張画像を生成する。なお、観測者が星を視認できないときは、すなわち、実施直径が「0」であるときは、観測者が識別可能な直径とし、実施等級が「0」であるときは、観測者が識別可能な等級として、星を強調する拡張画像を生成する。
図5Cに、星を強調する拡張画像130が表示されたときの一例を示す。この構成によれば、都市部など、空が明るい地域や、月夜などで空が明るい時間帯であっても、ユーザが星を確認しやすくなる。
なお、ここでは星強調表示モードがON/OFFである例を述べたが、ON/OFFの二値での設定だけなく、スライダーバーのように無段階で強調の度合いを調整するようにしてもよい。
【0029】
ステップS60では、表示制御部75は、人工衛星属性表示モードがONであるか否か(人工衛星に関する属性等を表す画像を表示する旨の設定がされているか否か)を判別する。このとき、表示制御部75は、人工衛星属性表示モードがONであると判別した場合は、続いて、ステップS65の処理を行い、他方、人工衛星属性表示モードがOFFであると判別した場合は、続いて、ステップS70の処理を行う。
ステップS65では、表示制御部75は、抽出された天体情報に基づいて、人工衛星に関する属性等を表す拡張画像を生成する。
より具体的には、表示制御部75は、軌道計測部65により計測された人工衛星の位置、及び現在の時刻に基づいて、AR視野に人工衛星が存在するか否かを判断する。このとき、表示制御部75は、AR視野に人工衛星が存在すると判断したときは、記憶装置10に記憶されている人工衛星属性情報(人工衛星を表すための情報、人工衛星の名称の情報、及び人工衛星の軌道を表すための情報)に基づいて、人工衛星、人工衛星の名称、及び人工衛星の軌道を表す拡張画像を生成する。他方、表示制御部75は、AR視野に人工衛星が存在しないと判断したときは、続いて、ステップS70の処理を行う。図5Dに、人工衛星に関する属性等を表す拡張画像140が表示されたときの一例を示す。
なお、AR視野に人工衛星が存在しないと判断したときは、予め定められた時間(例えば、5分)内に、AR視野に人工衛星が含まれるか否かを判断し、AR視野に人工衛星が含まれると判断した場合は、人工衛星が接近している旨のメッセージ、及び人工衛星の軌道を表す拡張画像を生成してもよい。
また、人工衛星属性情報は、記憶装置10に予め記憶されている構成であってもよいし、通信装置15を介してサーバ等から取得されて記憶装置10に記憶される構成であってもよい。
【0030】
ステップS70では、表示制御部75は、風景表示モードがONであるか否か(風景を手前にして拡張画像を表示する旨の設定がされているか否か)を判別する。このとき、表示制御部75は、風景表示モードがONであると判別した場合は、続いて、ステップS80の処理を行い、他方、風景表示モードがOFFであると判別した場合は、続いて、ステップS75の処理を行う。
ステップS75では、表示制御部75は、生成した拡張画像を表示装置20に表示する。
より具体的には、表示制御部75は、拡張画像を生成する際に用いた天体情報に含まれる天体の位置(赤道座標系での位置)の情報、AR位置情報、現在の時刻、歳差運動等に基づいて、赤道座標系での天体の位置を地平座標系での天体の位置に座標変換し、座標変換した位置について投影変換することで仮想座標系における天体の座標(表示座標)を算出する。
【0031】
他方、座標補正部70は、映像取得部55により取得された映像データを解析して、AR視野に含まれる天体の座標(仮想座標系の座標)を算出する。
このとき、座標補正部70は、映像データの一の画像データでは天体を特定することが困難である場合(十分な輝度がない場合)、複数の画像データの各画素の輝度を累積する。続いて、座標補正部70は、画像データ(AR視野)を小さな領域(小領域)に分割して小領域ごとに輝度を統合(付近の画素を統合)することで、天体を特定する。続いて、座標補正部70は、小領域の中心(或いは、累積した輝度の重心)に座標を割当てることで、天体の座標(映像座標の一例である補正座標)を算出する。
そして、座標補正部70は、基準とする天体について、例えば最も明るい天体(なお、表示座標の天体については絶対等級などにより特定でき、補正座標の天体については輝度などにより特定できる。)について、表示制御部75が算出した表示座標と補正座標とを比較して、夫々の座標にずれがあると判断した場合は、補正座標(換言するならば表示座標と補正座標と)に基づいて表示座標を補正する。例えば、基準とする天体の表示座標が(x,y)であり、補正座標が(x+1,y+1)であり、ずれがあると判断した場合は、他の天体の表示座標が(s,t)であるときは(s+1,t+1)と補正する。この構成によれば、磁場の影響等によって、拡張画像の表示の位置と実際の天体の位置との間にズレが生じてしまい、ユーザが違和感を覚える事態を回避することができる。
【0032】
ここで、座標補正部70は、ずれが規定値を超えたと判断した場合(映像データの天体を特定できなかった場合を含む。)、すなわち、建物や、雲などの障害物により、一部又は全部の天体が見えていない場合は、全ての天体について表示座標と補正座標とを平行移動、回転移動等を行い、表示座標と補正座標とが一致するか否か(拡張画像と画像データとが整合するか否か)を判断する。このとき、一致しないと判断した場合は、座標補正部70は、補正を行わない。
そして、表示制御部75は、表示装置20を透過制御し(天体を視認可能にし)、表示座標(或いは補正された表示座標)に拡張画像を表示する。この構成によれば、建物や、雲などの障害物により、一部又は全部の天体が見えていない場合であっても、観測者は、見えていない天体を把握することができるようになる。なお、表示制御部75は、生成した拡張画像を映像データに重畳して表示装置20に表示してもよい。
【0033】
ステップS80では、表示制御部75は、風景を手前にして拡張画像を表示する。
より具体的には、表示制御部75(座標補正部70)は、ステップS75と同様に、表示座標を算出する。そして、表示制御部75は、映像取得部55により取得された映像データを解析して、天体以外の対象(建物、雲などの風景)を特定し、特定した対象の範囲の座標(風景座標)を算出する。そして、表示制御部75は、表示装置20を透過制御し、風景座標に基づいて、拡張画像から、特定した対象と重なる部分の画像を除去した拡張画像を表示する。図5Eに、風景150を手前にして拡張画像120が表示されたときの一例を示す。
なお、ここでは映像取得部55により取得された映像データを解析して、AR視野に含まれる天体の座標(仮想座標系の座標)を算出したが、例えば記憶装置10に3次元の地図情報をさらに記憶しておき、AR提供装置100の位置・方位・姿勢に基づいてAR視野に建物や山などの障害物が存在しているかどうかを判別してもよい。
【0034】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、AR提供装置100が撮影装置35を有する構成を採用したが、AR提供装置100が撮影装置35を有していない構成を採用してもよい。この場合において、AR提供装置100は、機能構成としては、映像取得部55、及び座標補正部70を有していない。換言するならば、表示座標の補正を行う以外の構成は、上述した実施形態に示す構成と同様である。
また、上述した実施形態では、AR提供装置100は、HMD等の装着型の形態を採用したが、例えば、携帯端末型のAR提供装置を採用してもよい。この場合、透過型の液晶ディスプレイに代えて、非透過型の液晶ディスプレイを採用してもよい。なお、携帯端末型のAR提供装置では、焦点(ユーザと表示装置の距離)を特定するために、ユーザの目の位置を検知するセンサを有する構成を採用してもよいし、映像データを解析(画像データをズーム、平行移動、回転移動などの処理を)して実際の天体と拡張画像との位置合わせを行う構成を採用してもよいし、焦点を予め設定(プリセット)し、携帯端末型のAR提供装置とユーザとの距離をユーザに提示しておく構成を採用してもよい。また、例えば、光学的に透過して映し出される現実空間の対象物に拡張画像を合成表示するヘッドアップディスプレイ型のAR提供装置を採用してもよい。
上述した実施形態の構成によれば、ユーザによる天体観察をより容易にすることができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
5 制御装置
10 記憶装置
15 通信装置
20 表示装置
25 方位検出装置
30 姿勢検出装置
35 撮影装置
100 AR提供装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部及び記憶部を有する情報提供装置であって、
位置検出装置で検出された当該情報提供装置の位置を示す情報から算出された装置位置情報を取得する位置情報取得手段と、
方位検出装置で検出された当該情報提供装置の方位を示す情報から算出された方位情報を取得する方位情報取得手段と、
姿勢検出装置で検出された当該情報提供装置の姿勢を示す情報から算出された姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、
前記記憶部に記憶された、現実空間の天体の位置に対応する前記表示部における前記天体の座標を算出するための位置情報と前記天体に関する属性を示す属性情報とを含む天体情報から、前記位置情報取得手段で取得された装置位置情報、前記方位情報取得手段で取得された方位情報、前記姿勢情報取得手段で取得された姿勢情報、前記表示部の内部パラメータ、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部の視野に含まれる天体の天体情報を読み込む読込手段と、
前記天体情報に含まれる属性情報に基づいて前記天体に関する属性を表す画像を生成し、前記天体情報に含まれる位置情報、前記装置位置情報、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部における前記天体の表示座標を算出し、生成した画像を、前記表示座標に基づいて表示する表示制御手段と、
を有する情報提供装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、星座の情報を表す画像を表示する旨の設定がされている場合、前記属性情報として含まれる星座に関する星座情報に基づいて前記星座の情報を表す画像を生成する請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、天体を強調する画像を表示する旨の設定がされている場合、前記属性情報として含まれる天体の明るさを示す等級情報及び前記天体の大きさを示すサイズ情報に基づいて前記天体を強調する画像を生成する請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記装置位置情報、現在の時刻、及び人工衛星を管理する情報処理装置で管理されている前記人工衛星の軌道要素に基づいて、前記人工衛星の位置情報を算出する位置情報算出手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記人工衛星に関する属性を表す画像を表示する旨の設定がされている場合、前記位置情報算出手段で算出された前記人工衛星の位置情報に基づいて、前記視野に前記人工衛星が含まれると判断した場合、前記人工衛星に対応する、前記記憶部に記憶されている前記人工衛星に関する属性を示す人工衛星属性情報に基づいて、前記人工衛星に関する属性を表す画像を生成する請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
撮影装置により撮影された映像データを取得する映像データ取得手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記映像データ取得手段で取得された映像データを解析して、前記視野に含まれる天体の前記表示部における映像座標を算出し、前記映像座標と前記表示座標とを比較して、夫々の座標にずれがあると判断した場合は、前記映像座標に基づいて前記表示座標を補正する請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記映像データ取得手段で取得された映像データを解析して、天体以外の対象を特定し、特定した対象の範囲の座標を算出し、生成した画像から特定した対象と重なる部分の画像を除去する請求項5に記載の情報提供装置。
【請求項7】
表示部及び記憶部を有する情報提供装置が実行する情報提供方法であって、
位置検出装置で検出された前記情報提供装置の位置を示す情報から算出された装置位置情報を取得する位置情報取得工程と、
方位検出装置で検出された前記情報提供装置の方位を示す情報から算出された方位情報を取得する方位情報取得工程と、
姿勢検出装置で検出された前記情報提供装置の姿勢を示す情報から算出された姿勢情報を取得する姿勢情報取得工程と、
前記記憶部に記憶された、現実空間の天体の位置に対応する前記表示部における前記天体の座標を算出するための位置情報と前記天体に関する属性を示す属性情報とを含む天体情報から、前記位置情報取得工程で取得された装置位置情報、前記方位情報取得工程で取得された方位情報、前記姿勢情報取得工程で取得された姿勢情報、前記表示部の内部パラメータ、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部の視野に含まれる天体の天体情報を読み込む読込工程と、
前記天体情報に含まれる属性情報に基づいて前記天体に関する属性を表す画像を生成し、前記天体情報に含まれる位置情報、前記装置位置情報、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部における前記天体の表示座標を算出し、生成した画像を、前記表示座標に基づいて表示する表示制御工程と、
を有する情報提供方法。
【請求項8】
表示部及び記憶部を有するコンピュータを、
位置検出装置で検出された前記コンピュータの位置を示す情報から算出された装置位置情報を取得する位置情報取得手段と、
方位検出装置で検出された前記コンピュータの方位を示す情報から算出された方位情報を取得する方位情報取得手段と、
姿勢検出装置で検出された前記コンピュータの姿勢を示す情報から算出された姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、
前記記憶部に記憶された、現実空間の天体の位置に対応する前記表示部における前記天体の座標を算出するための位置情報と前記天体に関する属性を示す属性情報とを含む天体情報から、前記位置情報取得手段で取得された装置位置情報、前記方位情報取得手段で取得された方位情報、前記姿勢情報取得手段で取得された姿勢情報、前記表示部の内部パラメータ、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部の視野に含まれる天体の天体情報を読み込む読込手段と、
前記天体情報に含まれる属性情報に基づいて前記天体に関する属性を表す画像を生成し、前記天体情報に含まれる位置情報、前記装置位置情報、及び現在の時刻に基づいて、前記表示部における前記天体の表示座標を算出し、生成した画像を、前記表示座標に基づいて表示する表示制御手段と、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2011−209622(P2011−209622A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79218(P2010−79218)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000191076)新日鉄ソリューションズ株式会社 (136)
【Fターム(参考)】