説明

情報提供装置および映像提供システム

【課題】複数のユーザが1つの映像表示面を見るシステムにおいて、複数のユーザのそれぞれに異なる字幕情報を表示する。
【解決手段】映像を表示する映像表示面を見るユーザに副情報を提供する情報提供装置であって、副情報を表示する情報表示面を含み、映像表示面からの光および情報表示面からの光を合成してユーザの眼に与える表示光学系と、ユーザの視野内における映像表示面の位置を検出する検出部と、副情報をユーザの視野内における映像表示面に対応する位置に表示させる表示制御部と、を備える情報提供装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置および映像提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映画館等では、複数のユーザが1つの大型スクリーンに表示された画像を同時に鑑賞する。また、映画館等において提供される画像には、映像とともに、字幕等の文字情報がスクリーンに同時に表示される場合がある。また、映画館等では、立体映画を提供する場合には、複数のユーザのそれぞれが専用のメガネを装着してスクリーンに表示された画像を鑑賞する。
【0003】
特許文献1 特開2002−153684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、映画館等では、スクリーンの端に映像に重ねて文字情報を表示するので、複数の言語の文字情報を同時に表示すると鑑賞の邪魔になってしまう場合があった。このため、映画館等では、複数の言語の文字情報を同時に表示することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、映像を表示する映像表示面を見るユーザに副情報を提供する情報提供装置であって、前記副情報を表示する情報表示面を含み、前記映像表示面からの光および前記情報表示面からの光を合成して前記ユーザの眼に与える表示光学系と、前記ユーザの視野内における前記映像表示面の位置を検出する検出部と、前記副情報を前記ユーザの視野内における前記映像表示面に対応する位置に表示させる表示制御部と、を備える情報提供装置、および、情報提供システムを提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る映像提供システム10を示す。
【図2】本実施形態に係る情報提供装置20の外観の一例を示す。
【図3】本実施形態に係る情報提供装置20の機能構成を示す。
【図4】本実施形態に係る情報提供装置20の処理フローを示す。
【図5】本実施形態に係る情報提供装置20により生成される情報表示面62の虚像の位置、および、映像表示面12に対する副情報の表示位置を示す。
【図6】情報提供装置20が左側に移動した場合における情報表示面62の虚像の位置の移動方向を示す。
【図7】情報提供装置20が後ろ側に移動した場合における情報表示面62の虚像の位置の移動方向を示す。
【図8】映像表示面12がユーザの視野の略中心に見える場合における、情報表示面62上の副情報の表示位置の一例、および、ユーザの視野内の映像表示面12および副情報の位置の一例を示す。
【図9】映像表示面12がユーザの視野の左側に見える場合における、情報表示面62上の副情報の表示位置の一例、および、ユーザの視野内の映像表示面12および副情報の位置の一例を示す。
【図10】映像表示面12を略正面から撮像した画像の一例を示す。
【図11】映像表示面12を左側から撮像した画像の一例を示す。
【図12】映像表示面12を右側から撮像した画像の一例を示す。
【図13】正面から映像表示面12を見た場合における、複数の基準光発光部80の配置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る映像提供システム10を示す。本実施形態に係る映像提供システム10は、映像を少なくとも一人のユーザに鑑賞させる。映像提供システム10は、一例として、大型スクリーンに立体表示用の右眼用画像および左眼用画像を表示して、複数のユーザのそれぞれに立体画像を鑑賞させる。
【0010】
映像提供システム10は、映像表示面12と、送信部14と、少なくとも一つの情報提供装置20を備える。映像表示面12は、少なくも一人のユーザのそれぞれにより見ることができる位置に設けられ、映像を表示する。これにより、映像表示面12は、少なくも一人のユーザのそれぞれに同時に映像を鑑賞させることができる。
【0011】
送信部14は、副情報を少なくとも1つの情報提供装置20のそれぞれに送信する。副情報は、映像表示面12に表示された映像とともにユーザに視覚的に提示する情報である。副情報は、一例として、映像に合成して表示する字幕情報である。
【0012】
送信部14は、一例として、映像表示面12に表示される映像に同期した副情報(字幕情報)を、それぞれの情報提供装置20に送信する。送信部14は、無線で副情報を情報提供装置20のそれぞれに送信してもよいし、ケーブル等を介して副情報を情報提供装置20のそれぞれに送信してもよい。
【0013】
少なくとも一つの情報提供装置20のそれぞれは、映像表示面12を見るユーザのそれぞれに対応して設けられ、対応するユーザに装着される。そして、少なくとも一つの情報提供装置20のそれぞれは、対応するユーザに視覚的に副情報を提供する。
【0014】
より具体的には、情報提供装置20は、対応するユーザの頭部にメガネのように装着される。情報提供装置20は、装着したユーザの右眼および左眼のそれぞれに、映像表示面12により表示された映像の光を透過して与える。これとともに、情報提供装置20は、送信部14から送信された副情報を内部において表示して、装着したユーザの右眼および左眼のそれぞれに映像表示面12により表示された映像に副情報を合成して与える。
【0015】
図2は、本実施形態に係る情報提供装置20の外観の一例を示す。情報提供装置20は、右眼用の表示光学系22−Rと、左眼用の22−Lと、本体部24と、検出部26と、保持部28とを備える。
【0016】
右眼用の表示光学系22−Rは、ユーザが当該情報提供装置20を装着した場合において、ユーザの右眼の前に配置される。右眼用の表示光学系22−Rは、映像表示面12に表示された映像からの光を透過してユーザの右眼へと与えるとともに、内部で副情報を表示して右眼へと与える。
【0017】
左眼用の表示光学系22−Lは、ユーザが当該情報提供装置20を装着した場合において、ユーザの左眼の前に配置される。左眼用の表示光学系22−Lは、映像表示面12に表示された映像からの光を透過してユーザの左眼へと与えるとともに、内部で副情報を表示して左眼へと与える。
【0018】
本体部24は、右眼用の表示光学系22−Rおよび左眼用の表示光学系22−Lを保持する。これとともに、本体部24は、当該情報提供装置20を動作させるための機能ブロック(電源回路および制御回路等)を内蔵する。なお、本体部24内に備えられる機能ブロックは、当該情報提供装置20と別体の他の機器(例えば、ユーザが着座する椅子)に設けられてもよい。
【0019】
検出部26は、ユーザの視野内における映像表示面12の位置を検出する。検出部26は、一例として、右眼用の表示光学系22−Rおよび左眼用の表示光学系22−Lに対して固定された位置から映像表示面12を撮像し、撮像した画像からユーザの視野内における映像表示面12の位置を検出する。これにより、検出部26は、ユーザの視野の移動に伴い、撮像する画角も移動する。従って、検出部26は、撮像画像から、表示光学系22−Rおよび表示光学系22−Lを介して映像表示面12を見ているユーザの視野内における、映像表示面12の位置を検出することができる。
【0020】
保持部28は、当該情報提供装置20をユーザの頭部に固定する。これにより、保持部28は、当該情報提供装置20がユーザの頭部に装着された状態において、ユーザが頭部を移動させても、右眼用の表示光学系22−Rおよび左眼用の表示光学系22−Lのそれぞれをユーザの右眼および左眼の前に配置した状態で固定することができる。
【0021】
図3は、本実施形態に係る情報提供装置20の機能構成を示す。情報提供装置20は、機能ブロックとして、右眼用の表示光学系22−Rと、左眼用の表示光学系22−Lと、検出部42と、表示制御部44と、操作入力部46と、受信部48と、選択部50と、校正部52とを備える。なお、右眼用の表示光学系22−Lおよび左眼用の表示光学系22−Lは、内部構造は共通する。従って、これらを共通して説明する場合には、これらを併せて単に表示光学系22と呼ぶ。
【0022】
表示光学系22は、情報表示面62と、ハーフミラー64と、調整光学系66とを有する。情報表示面62は、表示光学系22の内部に設けられる小型のディスプレイであって、副情報を表示する。
【0023】
ハーフミラー64は、映像表示面12により表示された映像の光を透過して、対応する眼に与える。これとともに、ハーフミラー64は、情報表示面62に表示された副情報の光を反射して、対応する眼に与える。このような、ハーフミラー64は、映像表示面12からの光および情報表示面62からの光を合成してユーザの眼に与えることができる。
【0024】
調整光学系66は、情報表示面62からの光をレンズにより集光して、情報表示面62の虚像を対応する眼に与える。調整光学系66は、表示光学系22から映像表示面12までの距離に応じて、情報表示面62の虚像の位置を変更する。調整光学系66は、一例として、映像表示面12上に情報表示面62の虚像が見えるようにレンズのフォーカス位置を制御する。これにより、調整光学系66は、情報表示面62に表示された副情報を、映像表示面12上に表示されているようにユーザに見せることができる。
【0025】
このように、表示光学系22は、副情報を表示する情報表示面62およびハーフミラー64を有するので、映像表示面12からの光および情報表示面62からの光を合成してユーザの眼に与えることができる。さらに、表示光学系22は、調整光学系66を有するので、映像表示面12上に副情報が表示されているような位置に、情報表示面62の虚像をユーザに見せることができる。
【0026】
検出部42は、表示光学系22に対する映像表示面12の相対位置を検出する。より具体的には、検出部42は、ユーザの視野内における映像表示面12の位置、および、表示光学系22から映像表示面12までの距離を算出する。
【0027】
検出部42は、一例として、撮像部72と、算出部74とを有する。撮像部72は、表示光学系22に対して固定された予め定められた撮像位置において、映像表示面12を撮像する。これにより、撮像部72は、ユーザの視野に対して予め定められた画角で映像表示面12を撮像することができる。
【0028】
算出部74は、撮像部72により撮像された画像中の映像表示面12の位置に基づき、ユーザの視野内における映像表示面12の位置を算出する。算出部74は、一例として、画像中における水平方向における映像表示面12の位置から、ユーザの視野内における映像表示面12の水平方向の位置を算出する。
【0029】
また、算出部74は、撮像部72により撮像された画像中の映像表示面12の形状に基づき、表示光学系22に対する映像表示面12の向きを算出する。算出部74は、一例として、画像中における映像表示面12の4角の位置から画像中における映像表示面12の形状を算出し、算出した映像表示面12の形状から表示光学系22に対する映像表示面12の向きを算出する。
【0030】
さらに、算出部74は、予め定められた倍率に設定された撮像部72により撮像した画像内における映像表示面12の大きさ、予め登録された映像表示面12の現実の大きさ、および、表示光学系22に対する映像表示面12の向きに基づき、表示光学系22から映像表示面12までの距離を算出する。算出部74は、一例として、画像の水平方向の画素数に占める映像表示面12の割合、表示光学系22に対する映像表示面12の向き、撮像時の倍率、および、映像表示面12の現実の大きさから、表示光学系22から映像表示面12の中心までの距離を算出する。
【0031】
検出部42は、このような撮像部72および算出部74を有することにより、表示光学系22に対する映像表示面12の相対位置を検出することができる。即ち、検出部42は、ユーザの視野内における映像表示面12の位置、および、表示光学系22から映像表示面12までの距離を算出することができる。
【0032】
表示制御部44は、表示光学系22に対する映像表示面12の相対位置に応じて、ユーザの視野内における副情報の表示位置および情報表示面62の虚像の生成距離を制御する。より具体的には、表示制御部44は、検出部42により検出されたユーザの視野内における映像表示面12の位置に応じて情報表示面62上における副情報の表示位置を変化させて、副情報をユーザの視野内における映像表示面12に対応する位置に固定しているように見せる。表示制御部44は、一例として、映像表示面12の下端に副情報が固定して見えるように、情報表示面62上における副情報の表示位置を変化させる。
【0033】
また、表示制御部44は、検出部42により検出された表示光学系22から映像表示面12までの距離に応じて調整光学系66のフォーカス位置を変化させて、情報表示面62の虚像が予め定められた距離で固定しているように見せる。表示制御部44は、一例として、情報表示面62の虚像が映像表示面12上の距離に固定して見えるように、調整光学系66のフォーカス位置を変化させる。
【0034】
操作入力部46は、ユーザからの当該情報提供装置20への操作入力を受け付ける。操作入力部46は、当該情報提供装置20の電源投入操作、副情報の表示位置の調整操作および表示すべき副情報の内容の選択操作等を受け付ける。
【0035】
受信部48は、送信部14から送信された副情報を受信する。受信部48は、一例として、当該映像提供システム10内において生成された副情報を受信する。これに代えて、受信部48は、インターネット等を介して外部のサーバ等から副情報を受信してもよい。受信部48は、受信した副情報を表示制御部44に供給する。そして、表示制御部44は、受信部48により受信された副情報を右眼用の表示光学系22−Rおよび左眼用の表示光学系22−Lに供給して、それぞれの情報表示面62に表示させる。
【0036】
選択部50は、送信部14から提供される複数の副情報のうち、ユーザにより指定された副情報を選択する。選択部50は、受信部48に対して、送信部14から送信される複数の副情報のうち、選択した副情報を受信させる。そして、表示制御部44は、選択部50により選択された副情報を情報表示面62に表示させる。
【0037】
例えば副情報が映像とともに表示される字幕情報である場合、選択部50は、複数の言語の字幕情報のうちユーザにより指定された言語の字幕情報を選択する。そして、この場合、表示制御部44は、選択部50により選択された言語の字幕情報を、映像に同期して情報表示面62に表示させる。これにより、表示制御部44は、映像の各シーンに対応する字幕情報を、映像に合成して表示することができる。
【0038】
校正部52は、映像表示面12に対する副情報の表示位置をユーザの指示に応じて校正する。即ち、校正部52は、映像表示面12における何れの位置に副情報を表示するかをユーザの指示に応じて校正する。
【0039】
校正部52は、一例として、副情報の表示に先立って、副情報の表示位置の候補を示すポインタを表示して、映像表示面12に対する副情報の表示位置をユーザに指定させる。校正部52は、一例として、映像表示面12の下端がポインタにより指定された場合、映像表示面12の下端に副情報が表示されるように、表示位置を調整する。そして、表示制御部44は、映像表示面12における校正部52により校正された表示位置に副情報が固定しているように、情報表示面62上における副情報の表示位置を制御する。
【0040】
また、映像提供システム10は、立体画像をユーザに提供してもよい。この場合、映像表示面12は、立体表示用の右眼用画像および左眼用画像を表示する。そして、表示光学系22は、映像表示面12に表示された右眼用画像をユーザの右眼に与え、映像表示面12に表示された左眼用画像をユーザの左眼に与える。
【0041】
即ち、左眼用の表示光学系22−Lは、映像表示面12に表示された左眼用画像の光を透過してユーザの左眼に与えて、右眼用画像の光を遮断する。右眼用の表示光学系22−Rは、映像表示面12に表示された右眼用画像の光を透過してユーザの左眼に与えて、左眼用画像の光を遮断する。これにより、情報提供装置20は、装着しているユーザに立体画像を見せるとともに、立体画像に副情報を合成して見せることができる。
【0042】
図4は、本実施形態に係る情報提供装置20の処理フローを示す。まず、ステップS11において、情報提供装置20は、映像表示面12により表示される映像を鑑賞する何れかのユーザの頭部に装着される。これにより、情報提供装置20は、映像表示面12により表示された映像を、表示光学系22を介してユーザに見せることができる。
【0043】
続いて、ステップS12において、情報提供装置20は、ユーザから電源投入の操作入力が与えられる。これにより、情報提供装置20は、動作を開始することができる。
【0044】
続いて、ステップS13において、情報提供装置20は、視野内における映像表示面12に対する副情報の表示位置を、ポインタ等を用いたユーザの指示に応じて校正する。情報提供装置20は、一例として、映像表示面12の下端領域、上端領域、右端領域または左端領域の何れに副情報を表示するかをユーザの指示に応じて選択する。また、情報提供装置20は、映像表示面12に重なる位置に副情報を表示せずに、映像表示面12の外側に副情報を表示してもよい。これにより、情報提供装置20は、個人差(例えば、眼の位置の違い)により視野内における映像表示面12の位置がユーザ毎に異なる場合であっても、それぞれのユーザ毎に適切な位置に副情報を表示することができる。
【0045】
続いて、ステップS14において、情報提供装置20は、ユーザの指示に応じて表示する副情報の種類を選択する。情報提供装置20は、一例として、複数の言語の字幕情報のうちユーザにより指定された言語の字幕情報を選択する。
【0046】
また、情報提供装置20は、副情報として、字幕情報以外の情報(例えば、館内案内情報)を選択してもよい。また、情報提供装置20は、副情報として、外部サーバからインターネットを介して提供される情報を選択してもよい。これにより、情報提供装置20は、複数のユーザのそれぞれ毎に異なる種類の副情報を表示することができる。
【0047】
続いて、ステップS15において、情報提供装置20は、映像の表示が開始されると、これと同期して副情報の表示を開始する。例えば、送信部14は、映像の表示に同期して副情報の送信を開始する。この場合、情報提供装置20は、送信部14から送信された副情報を順次に表示する。これにより、情報提供装置20は、映像に同期して副情報の表示を開始することができる。また、情報提供装置20は、インターネットを介して外部サーバから副情報を受信するような場合には、例えばユーザによる表示開始操作がされたことに応じて、副情報の表示を開始する。
【0048】
続いて、ステップS16において、情報提供装置20は、映像の内容に同期させて副情報を順次に更新して表示する。例えば、送信部14は、映像の表示に同期して送信する副情報を順次に更新する。この場合、情報提供装置20は、送信部14から送信された副情報が更新される毎に、表示内容を順次に更新する。また、情報提供装置20は、外部サーバ等からインターネットを介して副情報を受信するような場合には、受信したストリームに示された表示時間に従って副情報を順次に表示する。これにより、情報提供装置20は、映像のシーン毎に適切な内容の副情報を表示することができる。
【0049】
また、情報提供装置20は、ステップS16に並行して、ステップS17の処理を実行する。ステップS17において、情報提供装置20は、ユーザの頭部の位置が動いた場合であっても、映像表示面12に対して副情報が固定して見えるように、ユーザの視野内における副情報の表示位置および情報表示面62の虚像の生成距離をリアルタイムで変化させる。
【0050】
即ち、表示制御部44は、表示光学系22に対する映像表示面12の相対位置に応じて、ユーザの視野内における副情報の表示位置、および、副情報を表示する情報表示面62の虚像の距離を変化させる。より具体的には、情報提供装置20は、ユーザの視野内における映像表示面12の位置、および、表示光学系22から映像表示面12までの距離を検出する。そして、情報提供装置20は、ユーザの視野内における映像表示面12の位置に追従させて、ユーザの視野内における副情報の表示位置を変更し、さらに、表示光学系22から映像表示面12までの距離に追従して情報表示面62の虚像の距離を変更する。これにより、情報提供装置20は、ユーザの頭部の位置が動いた場合であっても、映像表示面12に対して副情報が固定しているように、ユーザに見せることができる。
【0051】
情報提供装置20は、映像の表示が終了するまで、ステップS16およびステップS17の処理を実行する。そして、ステップS18において、情報提供装置20は、映像の表示が終了したと判断すると、副情報の表示も終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る映像提供システム10によれば、1つの映像表示面12を見ている複数のユーザのそれぞれに対して、映像表示面12に表示された映像に合成して、ユーザ毎に異なる内容の副情報を表示することができる。例えば、映像提供システム10によれば、1つの映像表示面12を見ている複数のユーザのそれぞれに対して、映像表示面12に表示された映像に合成して、ユーザ毎に異なる言語の字幕情報を提供することができる。
【0053】
図5は、本実施形態に係る情報提供装置20により生成される情報表示面62の虚像の位置、および、副情報の表示位置を示す。図6は、情報提供装置20が左側に移動した場合における情報表示面62の虚像の位置の移動方向を示す。図7は、情報提供装置20が後ろ側に移動した場合における情報表示面62の虚像の位置の移動方向を示す。
【0054】
図5に示されるように、情報提供装置20は、映像表示面12に対して予め設定された位置に副情報が見えるように、当該情報提供装置20内の情報表示面62上における副情報の表示位置を制御する。これとともに、図5に示されるように、情報提供装置20は、映像表示面12と同一の距離に情報表示面62の虚像が見えるように、情報提供装置20内の調整光学系66のフォーカス位置を制御する。
【0055】
そして、図6に示されるように、情報提供装置20は、映像表示面12に対する情報提供装置20の相対位置が水平方向に移動した場合、情報表示面62上における副情報の表示位置を同期して移動させる。情報提供装置20は、一例として、情報提供装置20が映像表示面12に対して相対的に左側に移動すれば、情報表示面62上における副情報の表示位置を右側に移動させる。また、情報提供装置20は、一例として、情報提供装置20が映像表示面12に対して相対的に右側に移動すれば、情報表示面62上における副情報の表示位置を左側に移動させる。
【0056】
また、図7に示されるように、情報提供装置20は、映像表示面12に対する情報提供装置20の相対位置が前後方向に移動した場合、調整光学系66のフォーカス位置を同期して変更する。情報提供装置20は、一例として、映像表示面12に対する情報提供装置20の相対位置が後方向に移動した場合(映像表示面12と情報提供装置20との間の距離が長くなる方向に移動した場合)、調整光学系66のフォーカス位置を遠ざける方向に移動させる。また、情報提供装置20は、一例として、映像表示面12に対する情報提供装置20の相対位置が前方向に移動した場合(映像表示面12と情報提供装置20との間の距離が短くなる方向に移動した場合)、調整光学系66のフォーカス位置を近づける方向に移動させる。
【0057】
図8は、映像表示面12がユーザの視野の略中心に見える場合における、情報表示面62上の副情報の表示位置の一例、および、ユーザの視野内の映像表示面12および副情報の位置の一例を示す。図9は、映像表示面12がユーザの視野の左側に見える場合における、情報表示面62上の副情報の表示位置の一例、および、ユーザの視野内の映像表示面12および副情報の位置の一例を示す。
【0058】
情報提供装置20内の撮像部72により撮像される撮像画像の範囲は、ユーザの頭部の移動に応じて移動する。従って、撮像部72により撮像される撮像画像の範囲は、ユーザの視野に対応して移動する。
【0059】
例えば、図8に示されるように、撮像画像内の水平方向の略中心に映像表示面12が表示されている場合、例えばユーザの視野内においても映像表示面12は水平方向の略中心に位置する。このような場合、情報提供装置20は、情報表示面62における、水平方向の略中心位置に副情報を表示する。これにより、情報提供装置20は、視野内における映像表示面12に対応する位置に、副情報を重ねて表示することができる。
【0060】
また、図9に示されるように、撮像画像内の水平方向の端部側に映像表示面12が表示されている場合、例えばユーザの視野においても映像表示面12は水平方向の対応する端部側に位置する。このような場合、情報提供装置20は、情報表示面62における水平方向の対応する端部側に(例えば視野内における映像表示面12の位置とは逆側の端部側)、副情報を表示する。これにより、情報提供装置20は、視野内における端部側に映像表示面12が位置する場合であっても、映像表示面12に対応する位置に副情報を重ねて表示することができる。
【0061】
図10は、映像表示面12を略正面から撮像した画像の一例を示す。情報提供装置20の検出部42は、撮像した画像に対する映像表示面12の形状および大きさを検出して、ユーザの視野内における映像表示面12の位置および情報提供装置20から映像表示面12までの距離を算出する。
【0062】
ここで、映像提供システム10は、複数の基準光発光部80を備える構成であってもよい。複数の基準光発光部80のそれぞれは、一例として、映像表示面12の4角のそれぞれに対応する位置に設けられ、赤外光等の基準光を発光する。
【0063】
情報提供装置20の検出部42は、映像表示面12を撮像し、撮像した画像内における複数の基準光の発光位置に基づき映像表示面12の形状および大きさを算出する。これにより、検出部42は、映像表示面12の形状および大きさを精度良く且つ簡易に算出することができる。
【0064】
図11は、映像表示面12を左側から撮像した画像の一例を示す。図12は、映像表示面12を右側から撮像した画像の一例を示す。
【0065】
映像表示面12を正面より左側から撮像した場合、図11に示されるように、撮像画像内において映像表示面12の右の縦辺82の長さより映像表示面12の左の縦辺84の長さの方が、長くなる。反対に、映像表示面12を正面より右側から撮像した場合、図12に示されるように、撮像画像内において映像表示面12の右の縦辺82の長さより、映像表示面12の左の縦辺84の長さの方が、短くなる。従って、情報提供装置20の検出部42は、このような撮像画像内における映像表示面12の右の縦辺82と左の縦辺84の比から、映像表示面12に対する情報提供装置20の相対的な向きを検出することができる。
【0066】
また、正面より左右方向にずれた位置から映像表示面12を見ている場合、情報提供装置20から映像表示面12の手前側の縦辺までの距離と、情報提供装置20から映像表示面12の奥側の縦辺までの距離とが大きく異なる。例えば、正面より左側から映像表示面12を見た場合、図11に示されるように、情報提供装置20から右の縦辺82までの距離より、情報提供装置20から左の縦辺84までの距離の方が近い。また、例えば、正面より右側から映像表示面12を見た場合、図12に示されるように、情報提供装置20から右の縦辺82までの距離より、情報提供装置20から左の縦辺84までの距離の方が遠い。
【0067】
そこで、このような場合、情報提供装置20の表示制御部44は、副情報を表示する情報表示面62を水平方向に複数の領域に分割して、分割領域毎に虚像の生成距離を変えてもよい。例えば、図11および図12に示されるように、副情報の左側の表示領域と副情報の右側の表示領域とに分割して、それぞれの表示領域の虚像を異なる距離に生成する。これにより、情報提供装置20は、正面より左右方向にずれた位置から映像表示面12を見た場合において、映像表示面12のそれぞれの領域までの距離と同一の距離に、副情報の虚像を見せることができる。
【0068】
図13は、正面から映像表示面12を見た場合における、複数の基準光発光部80の配置の一例を示す。複数の基準光発光部80が設けられる位置は、映像表示面12の4角のそれぞれに対応する位置に代えて、映像表示面12における予め定められた位置に対応していれば、他の位置であってもよい。
【0069】
複数の基準光発光部80は、図13に示されるように、映像表示面12の上辺の2つの角に対応する位置、右側の縦辺82上の所定位置(例えば略中心位置)に対応する位置、左側の縦辺84上の所定位置(例えば略中心位置)に対応する位置にそれぞれ設けられてもよい。このように設けられている場合であっても、映像表示面12に対する基準光発光部80の相対位置が予め定められていれば、情報提供装置20は、撮像画像内における複数の基準光発光部80の位置から、ユーザの視野内における映像表示面12の位置を検出することができる。また、複数の基準光発光部80のそれぞれが、映像表示面12の上側に設けられていることにより、例えば、ユーザと映像表示面12の他の間に人等の障害物が存在した場合であっても、基準光発光部80からの基準光が検出できる可能性を高くすることができる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
10 映像提供システム、12 映像表示面、14 送信部、20 情報提供装置、22 表示光学系、24 本体部、26 検出部、28 保持部、42 検出部、44 表示制御部、46 操作入力部、48 受信部、50 選択部、52 校正部、62 情報表示面、64 ハーフミラー、66 調整光学系、72 撮像部、74 算出部、80 基準光発光部、82 縦辺、84 縦辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する映像表示面を見るユーザに副情報を提供する情報提供装置であって、
前記副情報を表示する情報表示面を含み、前記映像表示面からの光および前記情報表示面からの光を合成して前記ユーザの眼に与える表示光学系と、
前記ユーザの視野内における前記映像表示面の位置を検出する検出部と、
前記副情報を前記ユーザの視野内における前記映像表示面に対応する位置に表示させる表示制御部と、
を備える情報提供装置。
【請求項2】
前記表示光学系は、前記情報表示面の虚像を前記ユーザの眼に与え、
前記表示制御部は、前記情報表示面の虚像の表示位置を前記映像表示面に対応する距離および位置に制御する
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記副情報を受信する受信部を更に備え、
前記表示制御部は、前記受信部により受信された前記副情報を前記情報表示面に表示させる
請求項1または2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
複数の前記副情報のうち前記ユーザにより指定された副情報を選択する選択部を更に備え、
前記表示制御部は、前記選択部により選択された前記副情報を前記情報表示面に表示させる
請求項1から3の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記映像とともに表示される複数の言語の字幕情報のうち前記ユーザにより指定された言語の字幕情報を選択し、
前記表示制御部は、前記選択部により選択された言語の字幕情報を前記映像に同期して前記情報表示面に表示させる
請求項4に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記表示光学系に対して固定された予め定められた撮像位置において、前記映像表示面を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像中の前記映像表示面の位置に基づき、前記表示光学系に対する前記映像表示面の相対位置を算出する算出部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記表示光学系に対する前記映像表示面の相対位置に応じて前記情報表示面上における前記副情報の表示位置を制御して、前記副情報をユーザの視野内における前記映像表示面に対応する位置に固定しているように見せる
請求項1から5の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記映像表示面における予め定められた複数の位置のそれぞれから発光された複数の基準光を撮像し、
前記算出部は、前記撮像部により撮像された画像中の前記複数の基準光のそれぞれの発光位置に基づき前記映像表示面の位置を算出する
請求項6に記載の情報提供装置。
【請求項8】
前記算出部は、撮像した画像内における前記映像表示面の大きさ、および、予め登録された前記映像表示面の現実の大きさに基づき、前記表示光学系から前記映像表示面までの距離を算出する
請求項6または7に記載の情報提供装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記表示光学系から前記映像表示面までの距離に基づき、前記情報表示面の虚像が前記映像表示面の距離に固定して見えるように、前記副情報の虚像のフォーカス位置を制御する
請求項8に記載の情報提供装置。
【請求項10】
前記映像表示面に対する前記副情報の表示位置を前記ユーザの指示に応じて校正する校正部を更に備える
請求項1から9の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項11】
前記校正部は、前記副情報の表示位置の候補を示すポインタを表示して、前記映像表示面に対する前記副情報の表示位置を前記ユーザに指定させる
請求項10に記載の情報提供装置。
【請求項12】
前記映像表示面は、立体表示用の右眼用画像および左眼用画像を表示し、
前記表示光学系は、前記映像表示面に表示された前記右眼用画像を前記ユーザの右眼に与え、前記映像表示面に表示された前記左眼用画像を前記ユーザの左眼に与える
請求項1から11の何れか1項に記載の情報提供装置。
【請求項13】
映像を少なくとも一人のユーザに表示する映像提供システムにおいて、
前記映像を表示する映像表示面と、
前記少なくとも一人のユーザのそれぞれに対応して設けられ、対応する前記ユーザに装着される、請求項1から12の何れか一項に記載の情報提供装置と、
を備える映像提供システム。
【請求項14】
当該映像提供システムは、表示される前記映像に同期した前記副情報をそれぞれの前記情報提供装置に送信する送信部を更に備え、
それぞれの前記情報提供装置の前記表示制御部は、前記副情報を前記情報表示面に前記映像に同期させて表示させる
請求項13に記載の映像提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3513(P2013−3513A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137337(P2011−137337)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】