情報表示装置
【課題】 マイクを搭載した情報表示装置を含む機器においてのマイク部のためのスペース確保の必要性を無くし、機器の設計の自由度を向上し、機器の小型化を促進することを目的とする。
【解決手段】 マイク素子10は、ガラス基板7と、ガラス基板7上に設けられた振動電極6aと、振動電極6aとの組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定電極5aと、固定電極5aに設けられた音孔1を通して進入した音圧によって振動電極6aが振動したとき、振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部3及び4を備えている。このマイク素子10を構成するガラス基板7及び振動電極6a及び固定電極5a及び出力部3及び4は、可視光を透過する部材で構成されている。情報表示装置100の情報表示画面上にこのマイク素子10を設置する。
【解決手段】 マイク素子10は、ガラス基板7と、ガラス基板7上に設けられた振動電極6aと、振動電極6aとの組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定電極5aと、固定電極5aに設けられた音孔1を通して進入した音圧によって振動電極6aが振動したとき、振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部3及び4を備えている。このマイク素子10を構成するガラス基板7及び振動電極6a及び固定電極5a及び出力部3及び4は、可視光を透過する部材で構成されている。情報表示装置100の情報表示画面上にこのマイク素子10を設置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置に関し、特に可視光を透過するマイク素子を搭載する情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイアフラム(振動板)を音によって振動させて、その振動の変化に基づいて音に対応する電気信号を取り出すマイクロホン(音響センサ)が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
図17は、上記特許文献1に開示されたマイクロホンの概略構成を示した図である。この特許文献1に開示されたマイクロホンは、図17に示すように、シリコンからなる基板50上にSiNからなるダイアフラム51と、ダイアフラム51の端部に配置された金属からなる電極52aと、その電極52aと対向するように所定の間隔を隔てて配置された電極52bとを備えている。そして、音によってダイアフラム51が振動されると、このダイアフラム51の振動によって、ダイアフラム51の端部に配置された電極52aも振動する。これにより、電極52aと電極52bとの間の電極間距離が変化するので、電極52aおよび52bからなるコンデンサの静電容量が変化する。この結果、電極52bの電位が変化するので、その電位の変化を音に対応する電気信号として出力する。
【特許文献1】特許第3556676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術のマイクロホンでは、シリコンからなる基板50及び金属からなる電極52a及び52bがそれぞれ可視光を透過できる部材で構成されていないため、携帯電話のような小型情報機器に搭載される際、スペース確保のための設計の自由度及び機器の小型化を阻害する要因となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、可視光を透過するマイク素子を情報表示画面上に設置し、その情報表示画面を含む機器の設計の自由度を向上し、機器の小型化を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の情報表示装置は、基板と、基板上に設けられた可動の電極と、可動の電極との組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定の電極と、固定の電極に設けられた音孔を通して進入した音圧によって可動の電極が振動したとき、振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子を備え、基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、マイク素子を情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0007】
すなわち、マイク素子を構成する基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光に対して透過することにより、情報表示装置の情報を表示する面上に設置することができるため、情報表示装置を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要がなくなり、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0008】
請求項2の情報表示装置は、基板と、基板上に設けられた可動の電極と、可動の電極とともに振動されることによって発電可能な圧電体の電極と、音圧によって可動の電極及び圧電体の電極が振動したとき、圧電体の電極に生じる歪によって発電された電圧の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子備え、基板及び可動の電極及び圧電体の電極及び出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、マイク素子を情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0009】
すなわち、マイク素子を構成する基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光に対して透過することにより、情報表示装置の情報を表示する面上に設置することができるため、情報表示装置を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要がなくなり、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0010】
請求項3の情報表示装置は、請求項1又は請求項2に記載のマイク素子を、複数個用いてアレイ状に構成し、情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0011】
すなわち、可視光を透過するマイク素子を情報表示画面上に設置する際、マイク素子を複数個用いてアレイ状に構成することにより、拾音の指向性を制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可視光を透過するマイク素子を搭載した情報表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を詳述する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態によるマイク素子10の上面図である。マイク素子10の表面は保護膜2によって被覆され、複数の微小な音響ホール1を有している。音響ホール1を通過した音圧は、後述するマイク素子10内に形成された静電容量検知の機構を用いて静電容量変化の信号に変換され、その静電容量変化の信号は振動電極用パッド電極3と固定電極用パッド電極4の端子によって出力される。出力した静電容量変化の信号は、例えばスピーカによって出力されたり、デジタル信号に変換して記憶されたりする。
【0015】
図2は、図1のマイク素子10の内部構造を説明するために保護膜2を取り除き、層間膜12を局所的に取り除いた状態を示している。固定電極5aは、固定電極5aと一体の固定電極用引き出し配線部5bを介して固定電極用パッド電極4に接続されている。固定電極5aの下には空隙を介して、後述する振動電極6a(図3参照)が設けられていて、その振動電極6aと振動電極の固定部6bは一体である。振動電極の固定部6bは、振動電極の固定部6bと一体の振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。又、振動電極の固定部6bは、点線で示されるように凹部6dを有している。
【0016】
図1及び図2におけるAB間の断面図を図3に示し、CD間の断面図を図4に示す。
【0017】
図3において、ガラス基板7上に、開口部である空隙8を有する層間膜9が形成されている。この空隙8を覆うように設けられた振動電極6aは、それと一体である振動電極の固定部6bで層間膜9上に固定され、また一体である振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。振動電極の固定部6bの上には層間膜12が形成されていて、層間膜12は空隙11を有している。その上に保護膜2を被覆し、音響ホール1を設けられている固定電極5aが形成されている。固定電極5a及び振動電極6aはキャパシタを構成し、音響ホール1から導入される音圧の変化がこのキャパシタの静電容量の変化量に変換され、その静電容量変化量の信号を振動電極用パッド電極3及び固定電極用パッド4を端子として出力する。
【0018】
図4は、図1及び図2におけるCD間の断面図を示している。図2の振動電極の凹部6dは図4の振動電極の開口部13に対応している。後述する音響ホール1から導入されるウエットエッチング液は空隙11を形成し、さらにこの開口部13を通過して空隙8を形成する。
【0019】
尚、それぞれ、ガラス基板7は本発明の「基板」、振動電極6aは本発明の「可動の電極」、固定電極5aは本発明の「固定の電極」、音響ホール1は本発明の「音孔」、振動電極用パッド電極3及び固定電極用パッド電極4は本発明の「出力部」の一例である。
【0020】
以下、図3に示されるマイク素子の構造について、製造プロセスを示す図5〜図8を参照しながら説明する。
【0021】
第1工程(図5(a)参照):ガラス基板7上に、モノシランまたはジクロロシランを原料ガスとするプラズマCVD法により層間膜9として窒化シリコン(SiN)を3μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、この窒化シリコンをパターニングする。この後、プラズマCVD法あるいは常圧CVDを用いて、例えばリン添加シリコン酸化膜(Phosphorous Silicate Glass:PSG)10μmを表面に成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、窒化シリコン表面のリン添加シリコン酸化膜を除去し、窒化シリコン膜の開口部のみにリン添加シリコン酸化膜を残し、犠牲層14を形成する。犠牲層には、リン(P)を含むシリコン酸化膜を用いることが一般的であるが、フッ酸(HF)に可溶であれば、どの膜を用いてもよい。この犠牲層は、後にHFによるエッチングで除去するため、最終的な構造体には残らない層である。犠牲層の厚みは、最終的な電極間のエアギャップ距離となることから、容量(C=e*S/t、e:誘電率、S:電極面積、t:エアギャップ距離)、つまり感度に反映されるとともに、音響センサ100の構造の強固性にも大きな影響を及ぼす。
【0022】
第2工程(図5(b)参照):LowPressure−CVD法(以下LP−CVD法)により高弾性率膜のポリシリコン膜(Poly−Si)を表面に0.5〜1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6a並びにそれと一体の固定部6b及び引出し配線部6cを形成する。振動電極には、ポリシリコンを用いることが一般的であるが、その他の導電性のある材料を用いてもよい。
【0023】
第3工程(図5(c)参照):プラズマCVD法あるいは常圧CVDを用いて例えばリン添加シリコン酸化膜(PSG)を表面に3μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6aを介して犠牲層14上に犠牲層15を形成する。
【0024】
第4工程(図6(d)参照):その上にプラズマCVD法を用いて窒化シリコン膜を10μm成膜し、同様にCMP法にてリン添加シリコン酸化膜の表面以外の窒化シリコン膜を除去し、層間膜12を形成する。
【0025】
第5工程(図6(e)参照):スパッタリング法により透明電極膜としてIndium Tin Oxide膜(以下ITO膜)を表面に1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、固定電極5aを形成する。この際、固定電極用の引出し配線(図示せず)も同時に形成される。
【0026】
第6工程(図7(f)参照):ITO膜の変質を抑制するために、100℃以下の低温スパッタリング法によりSiNによる保護膜を表面に1μm成膜する。さらにフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて音響ホール1、及び振動電極用パッド電極3(図3参照)のための開口部16を形成する。この音響ホール1は、音が入ってきた際に、空気の通り道となる機能を有する。
【0027】
第7工程(図7(g)参照):フッ酸(HF)を用いたウエットエッチングにより、音響ホール1を介して振動膜の上下の犠牲層14及び15を除去し空隙8及び11を形成する。
【0028】
第8工程(図8(h)参照):スパッタリング法によりITO膜1μmを堆積し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いる工程により振動電極用パッド電極3を形成して、本実施形態のマイク素子が完成される。
【0029】
図9は、以上の工程によって完成したマイク素子10を、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイ部等の情報表示画面40上に、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いて取り付けた情報表示装置100を示している。
【0030】
第1実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0031】
本実施形態のマイク素子10は、図8(h)に参照されるガラス基板7、層間膜9及び12の窒化シリコン、振動電極6aのポリシリコン、固定電極5a及び振動電極用パッド電極3のITO膜を構成要素とし、それぞれの構成要素は可視光を透過することを特徴としているため、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルム等を用いることにより、情報表示装置100の情報表示画面40上の任意の場所に設置することができる。これにより情報表示装置100を含む機器において、マイクを搭載するためのスペースを確保する必要が無く、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0032】
(第2実施形態)
以下より圧電体を用いたマイク素子の実施形態を示す。
【0033】
図10は、本発明の一実施形態によるマイク素子20を上部電極21aが設けられている上面側から見た図である。上部電極21aは上部電極用引き出し配線部21bを介して上部電極用パッド電極4と接続されている。振動電極の固定部6bは、上部電極21aとの間に設けられた圧電膜22を挿み、振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3と接続されている。又、振動電極の固定部6bは凹部6dを設けているため、振動電極の開口部24を有している。ここで構造理解の容易のために図10におけるAB間の断面図を図11に示し、CD間の断面図を図12に示す。
【0034】
図11において、上部電極21及びその下層に形成された振動電極6aに挿まれるように圧電体からなる圧電膜22が形成されている。上部電極21aは、上部電極21aと一体の上部電極用引き出し配線部21bを介して上部電極用パッド電極23に接続されている。振動電極6aは、振動電極6aと一体の固定部6bによって下層の層間膜上に固定され、さらに振動電極6aと一体の振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。
【0035】
ここで振動電極6aが振動することで、振動電極6a上に設けられた圧電膜22に歪みが発生し、その歪みの変化に対して圧電膜22の上下間に電圧が発生する。この電圧の変化を振動膜用パッド電極3と上部電極用パッド電極23の端子間で計測することで、音圧の変化を読み取る機構となっている。
【0036】
図12は、図10におけるCD間の断面図を示している。振動電極の凹部6d(図10参照)を設けることによって形成される振動電極の開口部24は、図12の振動電極の開口部13に対応している。後述するウエットエッチング液はこの開口部13を通過して空隙8を形成する。
【0037】
尚、それぞれ、ガラス基板7は本発明の「基板」、振動電極6aは本発明の「可動の電極」、圧電膜22は本発明の「圧電体の電極」、振動電極用パッド電極3及び上部電極用パッド電極23は本発明の「出力部」の一例である。
【0038】
以下、図11に示されるマイク素子の構造について、製造プロセスを示す図13及び図14を参照しながら説明する。
【0039】
第1工程(図13(a)参照):ガラス基板7上に、プラズマCVD法により層間膜9として窒化シリコン膜(SiN)を3μm成膜する。フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、層間膜をパターニングした後、プラズマCVD法あるいは常圧CVD法により犠牲層14としてリン添加シリコン酸化膜(PSG)を表面に10μm成膜し、CMP法により、リン添加シリコン酸化膜を7μm除去する。
【0040】
第2工程(図13(b)参照):低圧CVD法によりポリシリコン膜(Poly−Si)を0.5〜1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6a及び固定部6b及び引出し配線部6cを形成する。
【0041】
第3工程(図13(c)参照):CVD法により圧電膜(PZT、Pb(Zr,Ti)O3)を1μm表面に成膜し、熱アニーリング法を用いて、650℃にて30分の処理を行った後に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動膜の上面に圧電膜22を形成する。
【0042】
第4工程(図14(d)参照):スパッタリング法により透明電極膜(ITO)を表面に1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、圧電膜の上層に上部電極21及び引出し配線(図示せず)、並びに振動電極用パッド電極3を形成する。
【0043】
第5工程(図14(e)参照):フッ酸を用いたウエットエッチングにより、犠牲層上層の振動膜の一部に設けた開口部13(図11参照)を通して、犠牲層14を除去し、空隙8を形成し、本実施形態のマイク素子が完成される。
【0044】
図9のマイク素子10をマイク素子20に置き換えると、同図はマイク素子20を、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイ部等の情報表示画面40上に、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いて取り付けた情報表示装置100を示している。
【0045】
第2実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0046】
本実施形態のマイク素子20は、ガラス基板7、層間膜9の窒化シリコン、振動電極6aのポリシリコン、圧電膜22のPZT、上部電極21及び振動電極用パッド電極3のITO膜を構成要素とし、それぞれの構成要素は可視光を透過することを特徴としているため、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルム等を用いることにより情報表示装置の情報表示面上の任意の場所に設置することができる。これにより情報表示装置を含む機器において、マイクを搭載するためのスペースを確保する必要が無く、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0047】
(第3実施形態)
以下より本発明のマイク素子を複数アレイ状に搭載した情報表示装置の実施形態を示す。
【0048】
図15に、本発明のマイク素子30を複数個用いて情報表示装置のディスプレイ40にアレイ状に配置した情報表示装置100を示す。マイク素子30は第1実施形態のマイク素子10(図1参照)若しくは第2実施形態のマイク素子20(図10参照)である。本発明のマイク素子30は可視光を透過する性質上、情報表示装置100の情報表示画面40上の任意の場所に設置でき、情報表示装置100を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要性がなくなり、設計の自由度を向上させることができる。ここでディスプレイ40及びマイク素子30は正方形であるとし、ディスプレイのそれぞれの一辺には同数のマイク素子を設置し、並びにそれぞれの最近傍のマイク素子間隔は均一であるとする。又、ディスプレイ40の一辺に設置されたマイク素子の数をM(個)とし、最近傍のマイク素子間隔をd(mm)とする。
【0049】
ここで式(1)に示されるようにπを円周率、fを音の周波数(Hz)、θをディスプレイ面の垂直方向に対する指向性角度(°)、cを音速(340000mm/sec)すると、特性因子Ωを導き出すことができる。
【0050】
【数1】
【0051】
さらに式(2)に示されるように、この特性因子Ωと一辺のマイク素子の数M(個)を用いることによって指向性強度を示す関数G(θ)を導き出すことができる。
【0052】
【数2】
【0053】
図16(a)は、上記式(1)及び(2)を用いてマイク個数Mを10、マイク間隔dを35mmに配置した場合の指向特性を示している。ここで縦軸は指向性強度G(θ)を表し、横軸はディスプレイ面の垂直方向に対する指向性角度θ(°)を表している。また図16(b)は、マイク個数を3、マイク間隔を174mmに配置した場合の指向特性を示している。
【0054】
第3実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0055】
図16(a)及び(b)に示されるように、ディスプレイの一辺のように同じ長さ領域においてマイク個数とマイク間隔を変えることによって、マイクの指向特性を制御することができる。すなわちマイク素子の個数及び設置場所、設置間隔によって、拾音の指向性を任意に制御することができる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記実施形態において特許請求の範囲の範囲内での変更を、以下に変形例として例示する。
【0058】
(第1変形例)本実施形態では可視光に透過する基板としてガラス基板を用いたが、本発明はこれに限らず、例えば石英基板も適用可能である。
【0059】
(第2変形例)本実施形態では可視光に透過する層間膜及び保護膜として窒化シリコン(SiN)を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばシリコンカーバイト(SiC)や酸化シリコンに炭素を添加したものであるSiOC等も適用可能である。
【0060】
(第3変形例)本実施形態では可視光に透過する固定電極及びパッド電極としてIndium Tin Oxide(ITO)を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばSnO2やIndium Zinc Oxide(IZO)等も適用可能である。
【0061】
(第4変形例)本実施形態では可視光に透過する圧電体としてPZT、Pb(Zr,Ti)O3を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばAINやZnO等も適用可能である。
【0062】
(第5変形例)本実施形態では基板上にマイク構造体を形成してマイク素子を作製し、そのマイク素子を情報表示装置の情報表示画面上に設置したが、本発明はこれに限らず、情報表示装置の情報表示画面上に設けられた可視光を透過する保護膜等を基板として、その上にマイク構造体を形成してもよい。
【0063】
(第6変形例)本実施形態ではマイク素子を搭載する情報表示画面としてカーナビゲーションシステムのディスプレイ部を用いたが、本発明はこれに限らず、例えば携帯電話のディスプレイ部やデジタルカメラのディスプレイ部などの小型機器に搭載される情報表示画面並びにテレビ等に使用されるLCDディスプレイやブラウン管ディスプレイなどの比較的大型機器に搭載される情報表示画面上に本発明のマイク素子を設置してもよい。
【0064】
(第6変形例)本実施形態ではマイク素子を情報表示装置の情報表示画面に設置する際、ポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いたが、本発明はこれに限らず、例えばポリエステル材の両面接着フィルムを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図5】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図6】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図7】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図8】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による情報表示装置の図である。
【図10】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図12】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図13】図11に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図14】図11に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図15】本発明の一実施形態による情報表示装置の図である。
【図16】指向性強度を指向性角度の関数で導き出す式である。
【図17】従来例のシリコンマイクの断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 音響ホール
2 保護膜
3 振動電極用パッド電極
4 固定電極用パッド電極
5a 固定電極
5b 固定電極用引き出し配線部
6a 振動電極
6b 振動電極の固定部
6c 振動電極用引き出し配線部
7 ガラス基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置に関し、特に可視光を透過するマイク素子を搭載する情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイアフラム(振動板)を音によって振動させて、その振動の変化に基づいて音に対応する電気信号を取り出すマイクロホン(音響センサ)が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
図17は、上記特許文献1に開示されたマイクロホンの概略構成を示した図である。この特許文献1に開示されたマイクロホンは、図17に示すように、シリコンからなる基板50上にSiNからなるダイアフラム51と、ダイアフラム51の端部に配置された金属からなる電極52aと、その電極52aと対向するように所定の間隔を隔てて配置された電極52bとを備えている。そして、音によってダイアフラム51が振動されると、このダイアフラム51の振動によって、ダイアフラム51の端部に配置された電極52aも振動する。これにより、電極52aと電極52bとの間の電極間距離が変化するので、電極52aおよび52bからなるコンデンサの静電容量が変化する。この結果、電極52bの電位が変化するので、その電位の変化を音に対応する電気信号として出力する。
【特許文献1】特許第3556676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術のマイクロホンでは、シリコンからなる基板50及び金属からなる電極52a及び52bがそれぞれ可視光を透過できる部材で構成されていないため、携帯電話のような小型情報機器に搭載される際、スペース確保のための設計の自由度及び機器の小型化を阻害する要因となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、可視光を透過するマイク素子を情報表示画面上に設置し、その情報表示画面を含む機器の設計の自由度を向上し、機器の小型化を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の情報表示装置は、基板と、基板上に設けられた可動の電極と、可動の電極との組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定の電極と、固定の電極に設けられた音孔を通して進入した音圧によって可動の電極が振動したとき、振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子を備え、基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、マイク素子を情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0007】
すなわち、マイク素子を構成する基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光に対して透過することにより、情報表示装置の情報を表示する面上に設置することができるため、情報表示装置を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要がなくなり、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0008】
請求項2の情報表示装置は、基板と、基板上に設けられた可動の電極と、可動の電極とともに振動されることによって発電可能な圧電体の電極と、音圧によって可動の電極及び圧電体の電極が振動したとき、圧電体の電極に生じる歪によって発電された電圧の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子備え、基板及び可動の電極及び圧電体の電極及び出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、マイク素子を情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0009】
すなわち、マイク素子を構成する基板及び可動の電極及び固定の電極及び出力部が可視光に対して透過することにより、情報表示装置の情報を表示する面上に設置することができるため、情報表示装置を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要がなくなり、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0010】
請求項3の情報表示装置は、請求項1又は請求項2に記載のマイク素子を、複数個用いてアレイ状に構成し、情報表示画面上に設置したことをその要旨とする。
【0011】
すなわち、可視光を透過するマイク素子を情報表示画面上に設置する際、マイク素子を複数個用いてアレイ状に構成することにより、拾音の指向性を制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可視光を透過するマイク素子を搭載した情報表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を詳述する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態によるマイク素子10の上面図である。マイク素子10の表面は保護膜2によって被覆され、複数の微小な音響ホール1を有している。音響ホール1を通過した音圧は、後述するマイク素子10内に形成された静電容量検知の機構を用いて静電容量変化の信号に変換され、その静電容量変化の信号は振動電極用パッド電極3と固定電極用パッド電極4の端子によって出力される。出力した静電容量変化の信号は、例えばスピーカによって出力されたり、デジタル信号に変換して記憶されたりする。
【0015】
図2は、図1のマイク素子10の内部構造を説明するために保護膜2を取り除き、層間膜12を局所的に取り除いた状態を示している。固定電極5aは、固定電極5aと一体の固定電極用引き出し配線部5bを介して固定電極用パッド電極4に接続されている。固定電極5aの下には空隙を介して、後述する振動電極6a(図3参照)が設けられていて、その振動電極6aと振動電極の固定部6bは一体である。振動電極の固定部6bは、振動電極の固定部6bと一体の振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。又、振動電極の固定部6bは、点線で示されるように凹部6dを有している。
【0016】
図1及び図2におけるAB間の断面図を図3に示し、CD間の断面図を図4に示す。
【0017】
図3において、ガラス基板7上に、開口部である空隙8を有する層間膜9が形成されている。この空隙8を覆うように設けられた振動電極6aは、それと一体である振動電極の固定部6bで層間膜9上に固定され、また一体である振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。振動電極の固定部6bの上には層間膜12が形成されていて、層間膜12は空隙11を有している。その上に保護膜2を被覆し、音響ホール1を設けられている固定電極5aが形成されている。固定電極5a及び振動電極6aはキャパシタを構成し、音響ホール1から導入される音圧の変化がこのキャパシタの静電容量の変化量に変換され、その静電容量変化量の信号を振動電極用パッド電極3及び固定電極用パッド4を端子として出力する。
【0018】
図4は、図1及び図2におけるCD間の断面図を示している。図2の振動電極の凹部6dは図4の振動電極の開口部13に対応している。後述する音響ホール1から導入されるウエットエッチング液は空隙11を形成し、さらにこの開口部13を通過して空隙8を形成する。
【0019】
尚、それぞれ、ガラス基板7は本発明の「基板」、振動電極6aは本発明の「可動の電極」、固定電極5aは本発明の「固定の電極」、音響ホール1は本発明の「音孔」、振動電極用パッド電極3及び固定電極用パッド電極4は本発明の「出力部」の一例である。
【0020】
以下、図3に示されるマイク素子の構造について、製造プロセスを示す図5〜図8を参照しながら説明する。
【0021】
第1工程(図5(a)参照):ガラス基板7上に、モノシランまたはジクロロシランを原料ガスとするプラズマCVD法により層間膜9として窒化シリコン(SiN)を3μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、この窒化シリコンをパターニングする。この後、プラズマCVD法あるいは常圧CVDを用いて、例えばリン添加シリコン酸化膜(Phosphorous Silicate Glass:PSG)10μmを表面に成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、窒化シリコン表面のリン添加シリコン酸化膜を除去し、窒化シリコン膜の開口部のみにリン添加シリコン酸化膜を残し、犠牲層14を形成する。犠牲層には、リン(P)を含むシリコン酸化膜を用いることが一般的であるが、フッ酸(HF)に可溶であれば、どの膜を用いてもよい。この犠牲層は、後にHFによるエッチングで除去するため、最終的な構造体には残らない層である。犠牲層の厚みは、最終的な電極間のエアギャップ距離となることから、容量(C=e*S/t、e:誘電率、S:電極面積、t:エアギャップ距離)、つまり感度に反映されるとともに、音響センサ100の構造の強固性にも大きな影響を及ぼす。
【0022】
第2工程(図5(b)参照):LowPressure−CVD法(以下LP−CVD法)により高弾性率膜のポリシリコン膜(Poly−Si)を表面に0.5〜1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6a並びにそれと一体の固定部6b及び引出し配線部6cを形成する。振動電極には、ポリシリコンを用いることが一般的であるが、その他の導電性のある材料を用いてもよい。
【0023】
第3工程(図5(c)参照):プラズマCVD法あるいは常圧CVDを用いて例えばリン添加シリコン酸化膜(PSG)を表面に3μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6aを介して犠牲層14上に犠牲層15を形成する。
【0024】
第4工程(図6(d)参照):その上にプラズマCVD法を用いて窒化シリコン膜を10μm成膜し、同様にCMP法にてリン添加シリコン酸化膜の表面以外の窒化シリコン膜を除去し、層間膜12を形成する。
【0025】
第5工程(図6(e)参照):スパッタリング法により透明電極膜としてIndium Tin Oxide膜(以下ITO膜)を表面に1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、固定電極5aを形成する。この際、固定電極用の引出し配線(図示せず)も同時に形成される。
【0026】
第6工程(図7(f)参照):ITO膜の変質を抑制するために、100℃以下の低温スパッタリング法によりSiNによる保護膜を表面に1μm成膜する。さらにフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて音響ホール1、及び振動電極用パッド電極3(図3参照)のための開口部16を形成する。この音響ホール1は、音が入ってきた際に、空気の通り道となる機能を有する。
【0027】
第7工程(図7(g)参照):フッ酸(HF)を用いたウエットエッチングにより、音響ホール1を介して振動膜の上下の犠牲層14及び15を除去し空隙8及び11を形成する。
【0028】
第8工程(図8(h)参照):スパッタリング法によりITO膜1μmを堆積し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いる工程により振動電極用パッド電極3を形成して、本実施形態のマイク素子が完成される。
【0029】
図9は、以上の工程によって完成したマイク素子10を、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイ部等の情報表示画面40上に、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いて取り付けた情報表示装置100を示している。
【0030】
第1実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0031】
本実施形態のマイク素子10は、図8(h)に参照されるガラス基板7、層間膜9及び12の窒化シリコン、振動電極6aのポリシリコン、固定電極5a及び振動電極用パッド電極3のITO膜を構成要素とし、それぞれの構成要素は可視光を透過することを特徴としているため、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルム等を用いることにより、情報表示装置100の情報表示画面40上の任意の場所に設置することができる。これにより情報表示装置100を含む機器において、マイクを搭載するためのスペースを確保する必要が無く、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0032】
(第2実施形態)
以下より圧電体を用いたマイク素子の実施形態を示す。
【0033】
図10は、本発明の一実施形態によるマイク素子20を上部電極21aが設けられている上面側から見た図である。上部電極21aは上部電極用引き出し配線部21bを介して上部電極用パッド電極4と接続されている。振動電極の固定部6bは、上部電極21aとの間に設けられた圧電膜22を挿み、振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3と接続されている。又、振動電極の固定部6bは凹部6dを設けているため、振動電極の開口部24を有している。ここで構造理解の容易のために図10におけるAB間の断面図を図11に示し、CD間の断面図を図12に示す。
【0034】
図11において、上部電極21及びその下層に形成された振動電極6aに挿まれるように圧電体からなる圧電膜22が形成されている。上部電極21aは、上部電極21aと一体の上部電極用引き出し配線部21bを介して上部電極用パッド電極23に接続されている。振動電極6aは、振動電極6aと一体の固定部6bによって下層の層間膜上に固定され、さらに振動電極6aと一体の振動電極用引き出し配線部6cを介して振動電極用パッド電極3に接続されている。
【0035】
ここで振動電極6aが振動することで、振動電極6a上に設けられた圧電膜22に歪みが発生し、その歪みの変化に対して圧電膜22の上下間に電圧が発生する。この電圧の変化を振動膜用パッド電極3と上部電極用パッド電極23の端子間で計測することで、音圧の変化を読み取る機構となっている。
【0036】
図12は、図10におけるCD間の断面図を示している。振動電極の凹部6d(図10参照)を設けることによって形成される振動電極の開口部24は、図12の振動電極の開口部13に対応している。後述するウエットエッチング液はこの開口部13を通過して空隙8を形成する。
【0037】
尚、それぞれ、ガラス基板7は本発明の「基板」、振動電極6aは本発明の「可動の電極」、圧電膜22は本発明の「圧電体の電極」、振動電極用パッド電極3及び上部電極用パッド電極23は本発明の「出力部」の一例である。
【0038】
以下、図11に示されるマイク素子の構造について、製造プロセスを示す図13及び図14を参照しながら説明する。
【0039】
第1工程(図13(a)参照):ガラス基板7上に、プラズマCVD法により層間膜9として窒化シリコン膜(SiN)を3μm成膜する。フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、層間膜をパターニングした後、プラズマCVD法あるいは常圧CVD法により犠牲層14としてリン添加シリコン酸化膜(PSG)を表面に10μm成膜し、CMP法により、リン添加シリコン酸化膜を7μm除去する。
【0040】
第2工程(図13(b)参照):低圧CVD法によりポリシリコン膜(Poly−Si)を0.5〜1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動電極6a及び固定部6b及び引出し配線部6cを形成する。
【0041】
第3工程(図13(c)参照):CVD法により圧電膜(PZT、Pb(Zr,Ti)O3)を1μm表面に成膜し、熱アニーリング法を用いて、650℃にて30分の処理を行った後に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、振動膜の上面に圧電膜22を形成する。
【0042】
第4工程(図14(d)参照):スパッタリング法により透明電極膜(ITO)を表面に1μm成膜し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、圧電膜の上層に上部電極21及び引出し配線(図示せず)、並びに振動電極用パッド電極3を形成する。
【0043】
第5工程(図14(e)参照):フッ酸を用いたウエットエッチングにより、犠牲層上層の振動膜の一部に設けた開口部13(図11参照)を通して、犠牲層14を除去し、空隙8を形成し、本実施形態のマイク素子が完成される。
【0044】
図9のマイク素子10をマイク素子20に置き換えると、同図はマイク素子20を、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイ部等の情報表示画面40上に、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いて取り付けた情報表示装置100を示している。
【0045】
第2実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0046】
本実施形態のマイク素子20は、ガラス基板7、層間膜9の窒化シリコン、振動電極6aのポリシリコン、圧電膜22のPZT、上部電極21及び振動電極用パッド電極3のITO膜を構成要素とし、それぞれの構成要素は可視光を透過することを特徴としているため、高透明タイプのポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルム等を用いることにより情報表示装置の情報表示面上の任意の場所に設置することができる。これにより情報表示装置を含む機器において、マイクを搭載するためのスペースを確保する必要が無く、設計の自由度を向上させ、機器の小型化を促進できる。
【0047】
(第3実施形態)
以下より本発明のマイク素子を複数アレイ状に搭載した情報表示装置の実施形態を示す。
【0048】
図15に、本発明のマイク素子30を複数個用いて情報表示装置のディスプレイ40にアレイ状に配置した情報表示装置100を示す。マイク素子30は第1実施形態のマイク素子10(図1参照)若しくは第2実施形態のマイク素子20(図10参照)である。本発明のマイク素子30は可視光を透過する性質上、情報表示装置100の情報表示画面40上の任意の場所に設置でき、情報表示装置100を含む機器においてのマイク部のスペース確保をする必要性がなくなり、設計の自由度を向上させることができる。ここでディスプレイ40及びマイク素子30は正方形であるとし、ディスプレイのそれぞれの一辺には同数のマイク素子を設置し、並びにそれぞれの最近傍のマイク素子間隔は均一であるとする。又、ディスプレイ40の一辺に設置されたマイク素子の数をM(個)とし、最近傍のマイク素子間隔をd(mm)とする。
【0049】
ここで式(1)に示されるようにπを円周率、fを音の周波数(Hz)、θをディスプレイ面の垂直方向に対する指向性角度(°)、cを音速(340000mm/sec)すると、特性因子Ωを導き出すことができる。
【0050】
【数1】
【0051】
さらに式(2)に示されるように、この特性因子Ωと一辺のマイク素子の数M(個)を用いることによって指向性強度を示す関数G(θ)を導き出すことができる。
【0052】
【数2】
【0053】
図16(a)は、上記式(1)及び(2)を用いてマイク個数Mを10、マイク間隔dを35mmに配置した場合の指向特性を示している。ここで縦軸は指向性強度G(θ)を表し、横軸はディスプレイ面の垂直方向に対する指向性角度θ(°)を表している。また図16(b)は、マイク個数を3、マイク間隔を174mmに配置した場合の指向特性を示している。
【0054】
第3実施形態の作用及び効果を以下に述べる。
【0055】
図16(a)及び(b)に示されるように、ディスプレイの一辺のように同じ長さ領域においてマイク個数とマイク間隔を変えることによって、マイクの指向特性を制御することができる。すなわちマイク素子の個数及び設置場所、設置間隔によって、拾音の指向性を任意に制御することができる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記実施形態において特許請求の範囲の範囲内での変更を、以下に変形例として例示する。
【0058】
(第1変形例)本実施形態では可視光に透過する基板としてガラス基板を用いたが、本発明はこれに限らず、例えば石英基板も適用可能である。
【0059】
(第2変形例)本実施形態では可視光に透過する層間膜及び保護膜として窒化シリコン(SiN)を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばシリコンカーバイト(SiC)や酸化シリコンに炭素を添加したものであるSiOC等も適用可能である。
【0060】
(第3変形例)本実施形態では可視光に透過する固定電極及びパッド電極としてIndium Tin Oxide(ITO)を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばSnO2やIndium Zinc Oxide(IZO)等も適用可能である。
【0061】
(第4変形例)本実施形態では可視光に透過する圧電体としてPZT、Pb(Zr,Ti)O3を用いたが、本発明はこれに限らず、例えばAINやZnO等も適用可能である。
【0062】
(第5変形例)本実施形態では基板上にマイク構造体を形成してマイク素子を作製し、そのマイク素子を情報表示装置の情報表示画面上に設置したが、本発明はこれに限らず、情報表示装置の情報表示画面上に設けられた可視光を透過する保護膜等を基板として、その上にマイク構造体を形成してもよい。
【0063】
(第6変形例)本実施形態ではマイク素子を搭載する情報表示画面としてカーナビゲーションシステムのディスプレイ部を用いたが、本発明はこれに限らず、例えば携帯電話のディスプレイ部やデジタルカメラのディスプレイ部などの小型機器に搭載される情報表示画面並びにテレビ等に使用されるLCDディスプレイやブラウン管ディスプレイなどの比較的大型機器に搭載される情報表示画面上に本発明のマイク素子を設置してもよい。
【0064】
(第6変形例)本実施形態ではマイク素子を情報表示装置の情報表示画面に設置する際、ポリエチレンテレフタレート材の両面接着フィルムを用いたが、本発明はこれに限らず、例えばポリエステル材の両面接着フィルムを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図5】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図6】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図7】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図8】図3に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による情報表示装置の図である。
【図10】本発明の一実施形態によるマイク素子の上面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図12】本発明の一実施形態によるマイク素子の断面図である。
【図13】図11に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図14】図11に示した一実施形態によるマイク素子の製造プロセスを示す図である。
【図15】本発明の一実施形態による情報表示装置の図である。
【図16】指向性強度を指向性角度の関数で導き出す式である。
【図17】従来例のシリコンマイクの断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 音響ホール
2 保護膜
3 振動電極用パッド電極
4 固定電極用パッド電極
5a 固定電極
5b 固定電極用引き出し配線部
6a 振動電極
6b 振動電極の固定部
6c 振動電極用引き出し配線部
7 ガラス基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた可動の電極と、
前記可動の電極との組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定の電極と、
前記固定の電極に設けられた音孔を通して進入した音圧によって前記可動の電極が振動したとき、前記振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子を備え、
前記基板及び前記可動の電極及び前記固定の電極及び前記出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、前記マイク素子を情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられた可動の電極と、
前記可動の電極とともに振動されることによって発電可能な圧電体の電極と、
音圧によって前記可動の電極及び前記圧電体の電極が振動したとき、前記圧電体の電極に生じる歪によって発電された電圧の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子備え、
前記基板及び前記可動の電極及び前記圧電体の電極及び前記出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、前記マイク素子を情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマイク素子を、複数個用いてアレイ状に構成し、情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた可動の電極と、
前記可動の電極との組み合わせによってキャパシタを形成するように設けられた固定の電極と、
前記固定の電極に設けられた音孔を通して進入した音圧によって前記可動の電極が振動したとき、前記振動によるキャパシタの静電容量の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子を備え、
前記基板及び前記可動の電極及び前記固定の電極及び前記出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、前記マイク素子を情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられた可動の電極と、
前記可動の電極とともに振動されることによって発電可能な圧電体の電極と、
音圧によって前記可動の電極及び前記圧電体の電極が振動したとき、前記圧電体の電極に生じる歪によって発電された電圧の変化を音声信号として出力する出力部とを含むマイク素子備え、
前記基板及び前記可動の電極及び前記圧電体の電極及び前記出力部が可視光を透過する部材で構成されると共に、前記マイク素子を情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマイク素子を、複数個用いてアレイ状に構成し、情報表示画面上に設置したことを特徴とする情報表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−124306(P2007−124306A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314317(P2005−314317)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]