説明

情報記憶装置及び再生方法

【課題】HDDにおけるセキュリティを向上する。
【解決手段】記録ビットの物理的配置により磁気ディスク10に記録されるROM情報(Ib)と、記録ビットが磁化されることにより記録されるコンテンツ情報(Io)及び認証情報(Ik)と、を含む磁気記録情報(Ia)をヘッド19で読み出し、当該読み出し後に、ヘッド19を用いてDCイレーズする。また、DCイレーズ後、ROM情報を読み出し、演算部90がこれら情報(Ia),(Ib),(Ik)からコンテンツ情報を取得する。このように、DCイレーズ後にはじめて読み出すことが可能となるROM情報を用いてコンテンツ情報を取得するので、コンテンツ情報取得の際には、磁気ディスク上にコンテンツ情報が残存することが無い。したがって、コンテンツ情報を読み出した後、第三者にコンテンツ情報を取得(不正コピーなど)されることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶装置及び再生方法に関し、特に磁気ビットが形成された情報記憶媒体を備える情報記憶装置、及び磁気ビットが形成された情報記憶媒体から情報を取得する再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクは、パソコンの記憶装置やHDDレコーダー等の記憶装置として一般に普及されている。ハードディスクの記録密度は、年率ほぼ2倍近いペースで増大してきており、10年前に比べて約1000倍の密度になっている。
【0003】
また、最近では、水平記録方式に代えて垂直磁気記録方式を採用することで、更なる記録密度の改善が図られている。また、更なる記録密度の改善手段として、DTM(Discreet Track Media)やBPM(Bit Patterned Media)に関する研究開発が盛んに行われている。特にBPMは、ディスク媒体のクロストラック方向およびダウントラック方向に、磁気的に分断された構成をとるため、隣接トラックへのクロスイレーズやクロストークを抑制できるとともに、ダウントラック方向の遷移ノイズを抑制できるという利点がある。また、BPMでは固定ビットパターンを転写(インプリント)により行うため、STW(Servo Track Write)にかかる工程を大幅に短縮することができる。
【0004】
また、上述したBPM媒体の特徴を利用するものとして、図17に示すように磁気ビットパターンの物理的配置により、大量のコンテンツ情報を記録するBPM-ROMと呼ばれる媒体の提案もなされている。
【0005】
ところで、BPM及びBPM−ROMは、大量のコンテンツを記録できるものの、現在のところ、そのコンテンツ情報の違法コピーや情報の改竄に対するセキュリティを強固なものにする手段についての提案はなされていない。一般に情報記憶媒体のセキュリティにおいては、図18に示すように、情報記憶媒体(磁気ディスク)110にユーザがアクセスできないシステム領域112を設け、当該システム領域112に対して認証情報を記録しておく。そして、切り替え器118は、ヘッド114を用いて読み出される認証情報を外部から入力されるパスワードと照合し、その照合結果に基づいて、デコーダ116にてデコードされたコンテンツ情報を外部へ出力するか否かを管理する。
【0006】
また、例えば、磁気的固定情報を用いてセキュリティを強化する手段として、認証情報を磁気固定パターンに担わせ、コンテンツのコピープロテクトを行う方法が、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−260713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、コンテンツ情報が出力された後、特殊な場合を除いて、コンテンツ情報は、情報記憶媒体に残るのが一般的である。勿論、コンテンツ情報を読み出した後に該コンテンツ情報の消去を行うことも可能ではあるが、実際に情報記憶媒体から完全に消去されたかどうかは、システムを信用するしかない。このため、残存しているコンテンツ情報がなりすまし等により読み出されるなどして、十分なセキュリティが担保されなくなるおそれがある。
【0009】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、情報のセキュリティを向上することが可能な情報記憶装置及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書記載の情報記憶装置は、磁気ビットの物理的配置により第1の情報が記録されるとともに、前記磁気ビットが磁化されることにより前記第1の情報とは異なる第2の情報が記録される情報記憶媒体と、前記情報記憶媒体から前記第1の情報と前記第2の情報とを含む第3の情報を読み出す第1の再生手段と、前記第1の再生手段による前記第3の情報の読み出し後、前記情報記憶媒体から前記第2の情報を消去する消去手段と、前記第2の情報が消去された磁気ビットから、前記第1の情報を読み出す第2の再生手段と、前記第1、第2の再生手段により読み出された前記第1、第3の情報から前記第2の情報を取得する情報取得手段と、を備える情報記憶装置である。
【0011】
これによれば、第1の情報と第2の情報とを含む第3の情報を第1の再生手段で読み出し、当該第3の情報を読み出した後に、消去手段を用いて第2の情報を消去する。また、第2の再生手段を用いて、第2の情報が消去された磁気ビットから第1の情報を読み出し、第1、第2の再生手段により読み出された第1、第3の情報から第2の情報を取得する。このように、第3の情報と、当該第3の情報を読み出した後、第2の情報を消去することによりはじめて読み出すことが可能となる第1の情報と、を用いて第2の情報を得るので、第2の情報の取得後は、情報記憶媒体に第2の情報が残存することが無い。したがって、第2の情報を読み出した後、第三者に第2の情報を取得されることがなくなることから、情報のセキュリティを向上することが可能となる。
【0012】
本明細書記載の再生方法は、磁気ビットの物理的配置により第1の情報が記録され、かつ前記磁気ビットが磁化されることにより前記第1の情報とは異なる第2の情報が記録された情報記憶媒体から、前記第1の情報と前記第2の情報とを含む第3の情報を読み出すステップと、前記読み出された第3の情報に対応する前記第2の情報を、前記情報記憶媒体から消去するステップと、前記第2の情報が消去された磁気ビットから、前記第1の情報を読み出すステップと、前記読み出された前記第1、第3の情報から前記第2の情報を取得するステップと、を備える再生方法である。
【0013】
これによれば、磁気ビットの物理的配置により情報記憶媒体に記録される第1の情報と、磁気ビットが磁化されることにより記録される第2の情報とを含む第3の情報を読み出し、当該第3の情報を読み出した後に、消去手段を用いて第2の情報を消去する。また、第2の情報が消去された磁気ビットから第1の情報を読み出し、これら第1、第3の情報から第2の情報を取得する。このように、第3の情報と、当該第3の情報を読み出した後、第2の情報を消去することによりはじめて読み出すことが可能となる第1の情報と、を用いるので、第2の情報の取得後は、情報記憶媒体に第2の情報が残存することが無い。したがって、第2の情報を読み出した後、第三者に第2の情報を取得されることがなくなることから、情報のセキュリティを向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に記載の情報記憶装置及び再生方法は、情報のセキュリティを向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の情報記憶装置の一実施形態について図1〜図16に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1には一実施形態に係る情報記憶装置としてのハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)100の内部構成が示されている。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体12と、筺体12内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク10、スピンドルモータ14、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)40等と、を備える。なお、筺体12は、実際には、ベースと上蓋(トップ・カバー)とにより構成されているが、図1では、図示の便宜上、ベースのみを図示している。
【0017】
磁気ディスク10は、表面が記録面とされた垂直磁気記録用の記憶媒体であり、スピンドルモータ14によって、その回転軸回りに例えば4200〜15000rpmなどの高速度で回転駆動される。スピンドルモータ14は、図2のメインコントロールユニット60の指示の下、サーボコントローラ54により回転駆動される。なお、磁気ディスク10は、表面と裏面の両面が記録面であっても良い。また、磁気ディスク10は、図1の紙面直交方向に複数枚設けられていても良い。
【0018】
HSA40は、図1に示すように、円筒形状のハウジング部30と、ハウジング部30に固定されたフォーク部32と、フォーク部32に保持されたコイル34と、ハウジング部30に固定されたキャリッジアーム36と、キャリッジアーム36に保持されたヘッドスライダ16と、を備えている。なお、前述のように、磁気ディスク10の表面と裏面の両面が記録面である場合には、キャリッジアーム及びヘッドスライダが磁気ディスク10を挟んで上下対称に一対設けられる。また、磁気ディスクが複数枚設けられている場合には、各磁気ディスクの各記録面に対応して、キャリッジアームとヘッドスライダが設けられる。
【0019】
キャリッジアーム36は、例えばステンレス板を打ち抜き加工したり、アルミニウム材料を押し出し加工することにより成型される。ヘッドスライダ16は、記録素子と再生素子とを含む記録再生ヘッド(以下、単に「ヘッド」と呼ぶ)19(図2、図7、図11参照)を有している。
【0020】
HSA40は、ハウジング部30の中心部分に設けられた軸受部材18を介して、筺体12に回転自在(Z軸回りの回転が自在)に連結されている。また、HSA40が有するコイル34と、筺体12のベースに固定された永久磁石を含む磁極ユニット24とにより構成されるボイスコイルモータ50により、HSA40の軸受部材18を中心とした揺動が行われる。ボイスコイルモータ50は、図2のメインコントロールユニット60の指示の下、サーボコントローラ54により駆動される。なお、図1では、揺動の軌道が、一点鎖線にて示されている。
【0021】
図2には、HDD100の制御系がブロック図にて示されている。このHDD100の制御系は、ヘッド19と接続されたプリアンプ52と、スピンドルモータ14及びボイスコイルモータ50に接続された前述したサーボコントローラ54と、これらを統括制御するメインコントロールユニット60と、当該メインコントロールユニット60に接続されたメモリ56及びデータバッファメモリ58と、を備えている。
【0022】
上記のように構成されるHDD100では、磁気ディスク10に対するデータ(情報)の読み書きは、メインコントロールユニット60の指示の下、プリアンプ52を介して垂直磁気記録再生用のヘッド19によって行われる。この場合、ヘッド19を保持するヘッドスライダ16は、磁気ディスク10の回転によって生じる揚力によって、磁気ディスク10の表面から浮上するため、ヘッド19は磁気ディスク10との間に微小間隔を維持した状態でデータの読み書きを実行する。また、サーボコントローラ54によるボイスコイルモータ50の駆動により、キャリッジアーム36が揺動されることにより、ヘッド19が磁気ディスク10のトラック横断方向にシーク移動して、読み書き対象のトラックを変更する。
【0023】
次に、本実施形態の磁気ディスク10の構成について図3に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図3は、磁気ディスク10の積層構造を概略的に示す図である。この図3に示すように、磁気ディスク10は、ガラス基板10aと、複数の層を順次積層して構成される積層部11と、を備えている。
【0025】
ガラス基板10aの材料としては、例えば、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板等が用いられる。積層部11は、密着層10b、軟磁性裏打ち層(SUL(Soft Under Layer)層)10c、下地層10d、中間層10e、記録ビットから成る垂直磁性層10f、非磁性層10g、保護層10hを有している。このうち、垂直磁性層10fはCo合金(CoCr、CoPt,CoCrPt,CoCrTaなど)等を材料とする。また、保護層10hの表面(上面)には、不図示の潤滑層が設けられている。
【0026】
次に、上記磁気ディスク10の製造方法について、図4に基づいて詳細に説明する。
【0027】
まず、磁気ディスク10にパターニングを施すために用いられる(垂直磁性層10fを記録ビットとするために用いられる)BPM原盤の製造方法について説明する。このBPM原盤の製造においては、まず、BPM原盤の基板(原盤)を用意し、その表面に10nm程度の厚みのレジストを塗布(ステップS10)し、電子線露光を実行する(ステップS12)。
【0028】
この電子線露光では、図5に示すような電子線露光装置(EB露光装置)200が用いられる。この図5に示す電子線露光装置200は、水平面内での移動が可能な二次元ステージ208と、二次元ステージ208上で原盤210を保持して回転駆動するスピンドルモータ206と、原盤210に向けて電子線を発生する電子源202と、電磁石を有する電子線調整系204a及び電子線集束系204bと、を備えている。また、電子線露光装置200は、制御系として、電子源202に接続された電子源コントローラ212、電子線調整系204a及び電子線集束系204bに接続された電子ビームコントローラ214、スピンドルモータ206に接続されたスピンドルモータドライバ216、二次元ステージに接続されたステージドライバ218、及びこれらのコントローラ及びドライバを統括制御するメインコントローラ220等、を備えている。
【0029】
上記のように構成される電子線露光装置200によると、電子源202から発せられた電子線は、電子線調整系204a及び電子線集束系204bにより、原盤210上に集束される。一方、メインコントローラ220は、フォーマッタ222からの情報に基づいてスピンドルモータドライバ216を介してスピンドルモータ206を回転駆動して原盤210の回転位置を調整する。また、メインコントローラ220は、ステージドライバ218を介して二次元ステージ208を駆動し、電子線集束位置に対する原盤210の位置調整も行う。さらに、メインコントローラ220は、フォーマッタ222からの情報に基づいて、電子源コントローラ212を介して電子線の強弱と位置を高速で変調して、原盤210に対するビット情報の記録を行う。
【0030】
上記のようにして電子線露光が行われた後、当該露光後の原盤210に対してエッチングを施すことにより、磁気ディスク10に形成するビットパターン(記録ビット)に対応した凹凸パターンが形成されるようになっている(図4のステップS14)。
【0031】
その後、アッシング等によりレジストを除去する(ステップS16)とともに、原盤の洗浄を行うことにより(ステップS18)、BPM原盤が完成する。
【0032】
これに対し、磁気ディスク10の製造は、図4のステップS20〜S50に沿って実行される。すなわち、まず、磁気ディスク10の基板(ガラス基板)10aを製造し(ステップS20)、当該ガラス基板10a上に、密着層10b、SUL層10c、下地層10d、中間層10e、垂直磁性層10f、保護層10hをスパッタリング法を用いて順次積層(成膜)する(ステップS22〜S30)。そして、各層が順次成膜されたガラス基板に対して、上記ステップS10〜S18を経て製造されたBPM原盤を用いて、ナノインプリント用のレジストを充填する(ステップS32)とともに、UVを照射する(ステップS34)。その後、BPM原盤を剥離する(ステップS36)ことで、ガラス基板上にビット(レジストビット)を形成する。また、上記のようにして形成されたレジストビットに対して、エッチングを行うとともに(ステップS38)、アッシングによりレジストを除去する(ステップS40)ことで、ガラス基板10a上にビットパターン(記録ビット)が形成される。
【0033】
さらに、ビットパターン(記録ビット)が形成されたガラス基板10a上に、金属等の充填層(非磁性層)10g(図3参照)を成膜(ステップS42)した後、逆スパッタリング等により磁気ディスク10の平坦化を行う(ステップS44)。そして、ガラス基板を洗浄(ステップS46)した後に保護層10hを形成し(ステップS48)、潤滑剤を塗布して潤滑層(不図示)を形成する(ステップS50)ことにより、磁気ディスク10が完成する。このような工程を経て製造される磁気ディスク10上には、例えば、図6のようなビットパターン(記録ビット)が形成されるようになっている。この図6に示すビットパターン(記録ビット)は、ダウントラック方向(ヘッドが走査する方向)の長さ(ビット長さ)が25nmであり、最小ビットピッチが40nmとなっている。また、クロストラック方向の長さ(ビット幅)が30nmであり、トラックピッチが50nmとなっている。
【0034】
次に、磁気ディスク10に対するコンテンツ情報(Io)の記録方法について、図7〜図10に基づいて説明する。
【0035】
本実施形態では、図7に示すように、メインコントロールユニット60に含まれる演算部90が、第2の情報としてのコンテンツ情報(Io)及び認証情報(Ik)と、第1の情報としてのROM情報(Ib)とを用いて、第3の情報としての磁気記録情報(Ia)を演算し、当該情報(Ia)をヘッド19を用いて磁気ディスク10上に記録する。ここで、磁気ディスク10への情報(Ia)の記録とは、実際には、磁気ディスク10上の記録ビットへのコンテンツ情報(Io)及び認証情報(Ik)の記録を意味している。図7の演算部90は、図8に示すように、第1プリコード部62と、スクランブル部64と、第2プリコード部66と、エンコード部68とを備えている。
【0036】
図9は、メインコントロールユニット60(演算部90を含む)による磁気記録情報(Ia)を記録する際の処理の流れを示すフローチャートである。この図9に示すように、ステップS102では、メインコントロールユニット60が、外部から入力されるコンテンツ情報(Io)を読み込み、データバッファメモリ58に取り込む。次いで、ステップS104では、メインコントロールユニット60がメモリ56(図2参照)から認証情報(Ik)を読み込み、データバッファメモリ58に取り込む。
【0037】
次いで、ステップS106では、メインコントロールユニット60の指示の下、サーボコントローラ54がボイスコイルモータ50を駆動してヘッド19をコンテンツ情報を書き込む位置に移動する。また、次のステップS108では、メインコントロールユニット60が、ヘッド19を介してROM情報(Ib)(磁気ディスク10に形成された記録ビットの物理的配列に基づく情報)を取得する。
【0038】
次いで、ステップS110では、メインコントロールユニット60(演算部90)が、取得した情報(Io),(Ik),(Ib)を用いて、磁気記録情報(Ia)を演算する。この場合、演算部90では、図8に示すように、コンテンツ情報(Io)が第1プリコード部62にてプリコードされ、当該プリコードされたコンテンツ情報(Io)と認証情報(Ik)とがスクランブル部64にてスクランブルされる。また、当該スクランブルされた情報に、第2プリコード部66にてプリコードされたROM情報(Ib)が加えられてエンコード部68にてエンコードされることにより、磁気記録情報(Ia)が演算される。なお、演算に関しては、図8の方法に限らず、種々の演算を採用することが可能である。
【0039】
図9に戻り、次のステップS112では、メインコントロールユニット60の指示の下、サーボコントローラ54がボイスコイルモータ50を駆動してヘッド19を前述したコンテンツ情報を書き込む位置に移動する。また、次のステップS114では、ヘッド19を用いて当該位置に磁気記録情報(Ia)を記録する。
【0040】
ここで、磁気記録情報(Ia)は、ヘッド19により、ROM情報(Ib)と同一位置に記録される。より具体的には、ROM情報(Ib)及び磁気記録情報(Ia)はセクタ管理されているので、各情報がセクタごとに対応した状態で記録される。
【0041】
本実施形態では、ROM情報(Ib)を構成する記録ビットは、最小ビットピッチの2倍以上の間隔で配置され(すなわち、記録ビットがヘッドの走査方向に関して、少なくとも一側の記録ビットと隣接する)、その間隔(走査方向に関する配列数)の変動量により情報が得られるようになっている。一方、磁気記録情報(Ia)は、記録ビットの磁化方向の変化パターンにより記録される。本実施形態では、垂直磁気記録方式を用いているので、磁気ディスク10の平面(表面)に垂直な磁化方向(上向き又は下向き)の変化パターンにより記録される。この場合、例えば、図10(a)に示すような配列で、磁気ディスク10上に記録ビットが存在していたとすると、図10(b)に示すように、黒色に塗られた記録ビットが下向きに磁化され、白色の記録ビットが上向きに磁化されるなどすることにより、磁気記録情報(Ia)が磁気ディスク10に記録される。
【0042】
図9に戻り、次のステップS116では、サーボコントローラ54がボイスコイルモータ50を駆動してヘッド19を磁気記録情報(Ia)を書き込んだ位置に再度移動する。また、次のステップS118において、磁気記録情報(Ia)が正しく書き込まれているか否かを、メインコントロールユニット60内に設けられたベリファイ部(不図示)が検査する(ベリファイする)。なお、このベリファイにより、磁気記録情報(Ia)が書き込まれていないことが判明した場合には、正しく書き込まれるまで、ステップS112〜S118を繰り返す。以上のようにして、磁気記録情報(Ia)が正しく書き込まれた段階で、図9の全処理が終了する。
【0043】
なお、上記においては説明を省略しているが、実際には、磁気記録情報(Ia)にはECC(Error Correction Code)が付加されており、この情報が、磁気ディスク10に記録されているものとする。
【0044】
次に、上述したようにして磁気ディスク10に記録した情報からコンテンツ情報(Io)を読み出す方法について、図11〜図14に基づいて説明する。
【0045】
本実施形態では、図11に示すように、メインコントロールユニット60に含まれる演算部90、比較器92、出力部94、ECC演算部96、及びヘッド19を用いて行われる。ここで、ヘッド19は第1、第2の再生手段を構成し、演算部90は情報取得手段を構成し、比較器92及び出力部94は出力制御手段を構成し、ECC演算部96は消去禁止手段を構成している。
【0046】
なお、演算部90は、情報の読み出しを行うための構成として、図8の記録用の構成に加えて、図12に示すデコード部72、プリデコード部74、デスクランブル部76、及びプリデコード部78を更に備えている。
【0047】
図13は、メインコントロールユニット60(演算部90、比較器92、出力部94を含む)によるコンテンツ情報(Io)を読み出す(再生する)際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
この図13では、ステップS132において、メインコントロールユニット60が、ヘッド19を用いて磁気記録情報(Ia)を読み出す。このとき読み出される磁気記録情報(Ia)の一例が、図14(a)に示されている。この図14(a)の波形は、磁気記録情報(Ia)の読み出し信号をコンパレータ処理によりデジタル化した出力波形である。この図14(a)に示すように、記録ビットが存在しない部分の出力波形はゼロレベルを示すが、磁気記録情報(Ia)による磁化方向に応じて出力波形が変化するようになっている。
【0049】
図13に戻り、次のステップS134では、ECC演算部96がECCの確認を行う。このECCの確認により再生データに誤りが無いか(訂正不可かどうか)判断し、誤りが無いと判断された場合には、ステップS136に移行する。これに対し、誤りがあった場合には、ステップS132に戻る。
【0050】
ステップS136では、メインコントロールユニット60が、ヘッド19を用いて読み出した磁気記録情報(Ia)が書き込まれていた部分(記録ビット)の磁化を一定方向に向けて、データを消去(DCイレーズ)する。このように、本実施形態では、ステップS134においてECCの確認を実行した後で、データの消去(DCイレーズ)を実行しているので、再生データに誤りがあるような場合にまで、データを消去してしまうような事態を回避することが可能である。
【0051】
次いで、ステップS138では、メインコントロールユニット60がDCイレーズ確認フラグをセットする。このように、DCイレーズ確認フラグをセットすることとしているのは、後で別の情報を書き込む際に、どの記録ビットにデータを書き込むことができるのかを容易に判別できるようにしておく必要があるからである。
【0052】
次のステップS140では、メインコントロールユニット60が、ヘッド19を用いてROM情報(Ib)を再生(取得)する。この場合、ROM情報(Ib)としては、図14(b)に示すような出力波形を取得することができる。また、このステップS140では、このROM情報(Ib)とステップS132で読み出した磁気記録情報(Ia)とを用いて、演算処理を実行する。この場合、図12に示すように、まず、プリデコード部74にてプリデコードされたROM情報(Ib)に磁気記録情報(Ia)を加えたものを演算部90のデコード部72にてデコードし、当該デコードされた情報をデスクランブル部76にてデスクランブルする。このデスクランブルにより、認証情報(Ik)が取り出されるので、残りの情報をプリデコード部78にてプリデコードしたものが、コンテンツ情報(Io)となる。
【0053】
次のステップS142では、メインコントロールユニット60の比較器92(図11参照)が、ユーザから入力されるパスワードを取得し、当該パスワードと認証情報(Ik)とを比較した結果に基づいて、データを出力しても良いか否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合には、ステップS144において出力部94からコンテンツ情報(Io)を外部に出力して、図13の全処理を終了する。一方、ここでの判断が否定された場合には、情報を出力することなく、図13の全処理を終了する。
【0054】
ところで、本実施形態では、図14(a)に示す最密パターン部分(磁化方向の反転が記録ビット1つおきになっている部分)を除けば、記録パターンが存在しない部分が0レベルとなり、記録パターンが存在する部分が0以外のレベルとなる。したがって、最密パターンが存在しなければ、第三者は、図14(a)の情報から図14(b)のROM情報(Ib)を容易に解析することができてしまい、結果的にコンテンツ情報(Io)が容易に取得されてしまうおそれがある。
【0055】
これに対し、図15に示すように、ビット反転間隔を小さくすることにより、出力信号が減少することが知られている。したがって、図16に示すような最密パターンを採用すれば、その出力を、反転間隔が長いパターンの出力の約10%まで減少させることが可能となる。
【0056】
したがって、本実施形態では、図16に示すように、磁気記録情報(Ia)の基本記録ビット長に対して、ROM情報(Ib)の基本記録ビット長を長く設定することにより、最密パターン部分を設け、最密パターン部分の出力をノイズ程度まで小さくする。これにより、図14(a)の情報のみに基づく、図14(b)に示すROM情報(Ib)の正確な解析は不可能になるので、磁気記録情報(Ia)の消去をROM情報(Ib)の読み出しの必要条件とすることが可能となる。
【0057】
一方、図16等に示すように、記録ビットが存在しない部分は、磁気記録情報(Ia)を記録することは不可能であるため、磁気記録情報(Ia)とROM情報(Ib)の基本記録ビット長を同一とすると、磁気記録情報(Ia)の情報量はROM情報(Ib)の半分になってしまう。このように、一方の情報が極端に少なくなると、磁気記録情報(Ia)とROM情報(Ib)のデコードにあたり、情報量の少ない情報が容易に類推されるおそれがある。すなわち、極端な例を挙げれば、磁気記録情報(Ia)が512ByteでROM情報(Ib)が1Byteであったとすると、情報量の少ない側のデータ(ここではROM情報(Ib))が容易に解読されてしまうおそれがある。
【0058】
したがって、本実施形態では、上記観点からは、ROM情報(Ib)の単位領域あたりの記録密度を、磁気記録情報(Ia)の単位領域あたりの記録密度と略同一にする。
【0059】
そこで、本実施形態では、上述したように磁気記録情報(Ia)の基本記録ビット長に対して、ROM情報(Ib)の記録ビット長が長いという条件の下で、ROM情報(Ib)を形成するビットの出現確率を1/2に設定している。すなわち、例えば、図6に示すように、磁気記録情報(Ia)の最短記録ビット長がビットピッチ40nm、最短反転間隔が40nmであるならば、ROM情報(Ib)の最短ビット長をビット2つ分の80nm、最短反転間隔を80nmとするなど、ROM情報(Ib)の基本ビット長を、磁気記録情報(Ia)の基本記録ビット長の2倍に設定し、これにより、磁気記録情報(Ia)の記録密度とROM情報(Ib)の記録密度を同一に設定している。
【0060】
なお、磁気記録情報(Ia)とROM情報(Ib)の信号波形は、DCレベルの変動が大きいと再生が難しくなるため、DCフリーであることが望ましい。
【0061】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、ROM情報(Ib)とコンテンツ情報(Io)及び認証情報(Ik)とを含む磁気記録情報(Ia)をヘッド19で読み出し、当該磁気記録情報(Ia)を読み出した後に、ヘッド19を用いてDCイレーズする。また、DCイレーズ後、ROM情報(Ib)を読み出し、演算部90がこれら情報(Ia),(Ib),(Ik)からコンテンツ情報(Io)を取得する。このように、DCイレーズ後にはじめて読み出すことが可能となるROM情報(Ib)を用いてコンテンツ情報(Io)を取得するので、コンテンツ情報(Io)取得の際には、磁気ディスク10上にコンテンツ情報(Io)が残存することが無い。したがって、コンテンツ情報(Io)を読み出した後、第三者にコンテンツ情報(Io)を取得(不正コピーなど)されることがなくなることから、情報のセキュリティを向上することが可能である。
【0062】
また、本実施形態によると、認証情報(Ik)と外部から入力されるパスワードを用いた認証を実行し、当該認証結果に応じて、コンテンツ情報(Io)の外部出力を制御することとしているので、コンテンツ情報(Io)のセキュリティを更に向上することが可能である。
【0063】
また、本実施形態によると、ROM情報(Ib)の基本ビット長が、磁気記録情報(Ia)の基本記録ビット長の2倍であるので、DCイレーズする前におけるROM情報(Ib)の解読を困難にするとともに、ROM情報(Ib)と磁気記録情報(Ia)との記録密度を同一にすることができる。これにより、コンテンツ情報のセキュリティを向上することが可能である。
【0064】
また、本実施形態によると、磁気記録情報(Ia)にエラー訂正符号(ECC)が含まれており、ECC演算部96がエラー訂正符号を確認してデータに誤りが無いことを確認した段階で、DCイレーズを行うこととしているので、磁気記録情報(Ia)を取得できていない状態で当該情報を消去するような事態を回避することが可能である。
【0065】
なお、上記実施形態においては、磁気記録情報(Ia)にコンテンツ情報(Io)、認証情報(Ik)、ECCなどが含まれている場合について説明したが、これに限られるものではなく、その他の情報を含めることとしても良い。例えば、磁気記録情報(Ia)に位置制御情報を含めることも可能である。この場合、磁気記録情報(Ia)を用いることにより、コンテンツ情報の取得のみならず、ヘッドのアクセス制御を監視することも可能となる。
【0066】
また、上記実施形態では、磁気記録情報(Ia)に認証情報(Ik)を含める場合について説明したが、これに限られるものではなく、磁気記録情報(Ia)には認証情報(Ik)を含めないこととしても良い。この場合、パスワード等による認証を行うことなく、コンテンツ情報(Io)を外部に出力することとなるが、コンテンツ情報(Io)を取得する時点で、DCイレーズを実行するという観点からは、セキュリティの向上を期待することが可能である。
【0067】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施形態に係るHDDの構成を示す平面図である。
【図2】図1のHDDの制御系を示すブロック図である。
【図3】図1の磁気ディスクの構成を示す図である。
【図4】図3の磁気ディスクの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】BPM原盤の製造に用いられる電子線露光装置の構成を示す図である。
【図6】磁気ディスク上の記録ビットの配置例を示す図である。
【図7】磁気ディスクに対する情報の書き込み処理を行う構成について示すブロック図である。
【図8】図7の演算部の構成(書き込み処理を行う構成)を示すブロック図である。
【図9】磁気ディスクに対する情報の書き込み処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】磁気ディスクに情報を書き込んだ状態を模式的に示す図である。
【図11】磁気ディスクからの情報の読み出し処理を行う構成について示すブロック図である。
【図12】図11の演算部の構成(読み出し処理を行う構成)について示すブロック図である。
【図13】磁気ディスクから情報を読み出す処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】磁気ディスクから情報を読み出した際に取得される信号の一例を示す図である。
【図15】ビット反転間隔と出力との関係を示す図である。
【図16】情報(Ia)の基本記録ビット長と、情報(Ib)の基本記録ビット長について説明するための図である。
【図17】従来のBMP媒体のパターンドビットの配列例を示す図である。
【図18】従来の情報記憶媒体(磁気ディスク)から情報を読み出す処理を実行する構成について示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10 磁気ディスク(情報記憶媒体)
19 ヘッド(第1、第2の再生手段)
90 演算部(情報取得手段)
92 比較器(出力制御手段)
94 出力部(出力制御手段)
96 ECC演算部(消去禁止手段)
100 HDD(情報記憶装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ビットの物理的配置により第1の情報が記録されるとともに、前記磁気ビットが磁化されることにより前記第1の情報とは異なる第2の情報が記録される情報記憶媒体と、
前記情報記憶媒体から前記第1の情報と前記第2の情報とを含む第3の情報を読み出す第1の再生手段と、
前記第1の再生手段により読み出された前記第3の情報に対応する前記第2の情報を、前記情報記憶媒体から消去する消去手段と、
前記第2の情報が消去された磁気ビットから、前記第1の情報を読み出す第2の再生手段と、
前記第1、第2の再生手段により読み出された前記第1、第3の情報から前記第2の情報を取得する情報取得手段と、を備える情報記憶装置。
【請求項2】
前記第2の情報には、コンテンツ情報と認証情報とが含まれ、
前記認証情報を用いた認証を実行し、当該認証結果に応じて、前記コンテンツ情報の外部出力を制御する出力制御手段を更に備える請求項1に記載の情報記憶装置。
【請求項3】
前記第1の情報の前記情報記憶媒体上での基本ビット長が、前記第2の情報の基本記録ビット長の2倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記第2の情報には、エラー訂正符号が含まれ、
前記第1の再生手段により前記第3の情報が読み出された段階で、前記エラー訂正符号を参照してエラー訂正が可能か否かを判断し、エラー訂正が不可である場合には、前記消去手段による前記第2の情報の消去を禁止する消去禁止手段を更に備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報記憶装置。
【請求項5】
前記第2の情報には、位置制御情報が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報記憶装置。
【請求項6】
磁気ビットの物理的配置により第1の情報が記録され、かつ前記磁気ビットが磁化されることにより前記第1の情報とは異なる第2の情報が記録された情報記憶媒体から、前記第1の情報と前記第2の情報とを含む第3の情報を読み出すステップと、
前記読み出された第3の情報に対応する前記第2の情報を、前記情報記憶媒体から消去するステップと、
前記第2の情報が消去された磁気ビットから、前記第1の情報を読み出すステップと、
前記読み出された前記第1、第3の情報から前記第2の情報を取得するステップと、を備える再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−49733(P2010−49733A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212258(P2008−212258)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】