説明

感光体性能測定装置および画像形成装置

【課題】短時間で感光体の性能を測定することができる感光体性能測定装置を実現する。
【解決手段】本発明は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段10と、荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズ11と、荷電粒子ビームの通過を制限するアパーチャ12と、荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段13と、荷電粒子ビームが感光体18に当たることによって発生する2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出手段16と、光源17を有する感光体性能測定装置において、性能測定時に前記電子レンズの少なくとも2つは屈折力を変化させ、該屈折力を変化させる電子レンズはアパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側と感光体側のそれぞれに少なくとも1つ配置してあり、測定の第1段階から第2段階への移行時にアパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側の電子レンズ11の屈折力を調整し、且つ、感光体側の電子レンズ14の屈折力を弱める構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置で用いられる感光体の性能測定装置に関し、さらには、その感光体性能測定装置で評価された感光体を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等に応用される画像形成装置の一例を図9に示す。
図9に示す画像形成装置では、像担持体としての円筒状に形成された感光体ドラム111を有し、その周辺には帯電手段112(図では帯電ローラによる接触式のものを示しているが、この他、帯電ブラシや、非接触式のコロナチャージャ等を用いることもできる)、光走査装置117、現像装置113、転写手段114(図では転写ローラを示しているが、コロナチャージャ等を用いるものであってもよい)、クリーニング装置115を有している。また、符号116は定着装置を示している。
【0003】
感光体ドラム111は、接地された金属等の導電性を持つ円筒の外側表面に、暗中では誘電体、光が当たると電導体となる光導電性の感光体材料が塗布されている。
感光体ドラム111は図中の矢印方向へ等速回転され、帯電手段112によって感光体表面に均一に電荷が与えられる。
次に、光走査装置117によって感光体ドラム111の一部に光が当てられる。感光体ドラム111の光の当たった部分は電導体となり、感光体表面の電荷が導電性を持つ円筒を介して逃げることにより感光体表面の電荷が無くなる。また、光の当たらなかった部分の電荷はそのまま保持される。この様にして静電潜像が形成される。
【0004】
次に、現像装置によって感光体表面と同じ極性の電荷に帯電されたトナーが感光体表面の電荷の無くなった部分にのみ付着し、トナー画像として可視像化される。
感光体上のトナー画像は、図示しない給紙部から給紙される転写紙やOHPシート等のシート状記録媒体S上に転写手段114によって静電力及び圧力により転写され、定着装置116によって熱及び圧力を加えることにより定着される。
トナー画像を定着されたシート状記録媒体Sは装置外へ排出され、トナー画像転写後の感光体111はクリーニング装置115によりクリーニングされて残留トナーや紙粉が除去される。
【0005】
ここで、感光体の製造方法によっては何度も上記のサイクルを繰り返していると、帯電から現像に移る間に光走査装置117によって光を当てていない場所でも電荷が逃げてしまう個所が発生することがある。これは何度も高電圧をかけているうちに感光体が変質または劣化し、恒常的な電荷の通り道が出来てしまうためである。このような個所が発生するとトナーが不必要な所に付着し、出力画像としては地汚れとなり、著しく画像品質を落とすこととなる。
【0006】
そこで、この様な地汚れの発生しない感光体の製造方法を確立する必要があるが、これまでの感光体の性能評価では、地汚れが発生するかどうかは実際に画像形成装置を組み立てた後、長時間の連続画像出力実験を行わなければならず、非常に非効率であった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−295696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は先に、感光体の性能測定に応用できる技術として、静電潜像の測定方法および測定装置を提案している(特許文献1参照)。
この先願技術では、荷電粒子ビームを照射して、測定を行う装置内で静電潜像を形成する手段を持ち、潜像形成後の短い時間内に測定を行うことができ、また、非破壊で測定することが可能な、静電潜像の測定方法および装置を得ることを課題としている。そして、この静電潜像の測定方法および装置では、感光体等の試料面を荷電粒子ビームで走査し、この走査で得られる検出信号により試料面の静電潜像を測定するものである。より具体的には、荷電粒子ビームを走査する装置内で、試料に対して帯電させ、光学系を介して帯電した試料を露光させることにより、試料上に静電潜像(電荷分布)を生成させる。そして電荷分布を有する試料を移動させながら試料面の静電潜像を測定する。また、帯電手段は電子ビームを照射させる手段とし、試料からの2次電子を検出する手段を設けている。
【0009】
上記の先願技術では、荷電粒子ビームを走査する装置内で、試料上に電荷分布を形成させる手段(例えば帯電手段と露光手段)を有することにより、従来は極めて困難であった、試料の表面電荷分布を測定することが可能となるが、帯電、露光による潜像形成の後に試料の表面電荷分布を測定する構成なので、荷電粒子ビームの照射手段の他に、潜像形成用の露光手段等を必要とし、測定装置の大型化の問題や、測定に時間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、感光体面を荷電粒子ビームで走査して性能測定を行う技術を応用し、より簡易な構成で且つ短時間で感光体の性能を測定することができる構成の感光体性能測定装置を提供することを目的としている。そして本発明は、感光体性能測定装置で性能を評価され、選別された感光体を用いて、地汚れの発生しにくい良好な画像を出力できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための手段として、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段と、前記荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズと、前記荷電粒子ビームの通過を制限するアパーチャと、前記荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段と、前記荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出手段と、光源とを有する感光体性能測定装置において、性能測定時に前記電子レンズの少なくとも2つは屈折力を変化させ、該屈折力を変化させる電子レンズは前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側と感光体側のそれぞれに少なくとも1つ配置してあり、測定の第1段階から第2段階への移行時に前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側の電子レンズの屈折力を調整(例えば弱めるか、強めるか)し、且つ、感光体側の電子レンズの屈折力を弱めることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段と、前記荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズと、前記荷電粒子ビームを絞るアパーチャと、前記荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段と、前記荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次電子を検出する2次電子検出手段と、光源とを有する感光体性能測定装置において、性能測定時に前記電子レンズの少なくとも1つは屈折力を変化させ、該屈折力を変化させる電子レンズは前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側に配置されており、測定の第1段階では前記ビーム偏向手段の機能を停止させ、第2段階への移行時に前記ビーム偏向手段を機能させ、前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側の電子レンズの屈折力を調整(例えば弱めるか、強めるか)し、且つ、感光体側の電子レンズの屈折力を感光体上に焦点が合うように調整することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感光体性能測定装置において、前記性能測定時に屈折力を変化させる電子レンズは、印加電圧発生手段によって屈折力を変化させることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、プログラムの保存及び実行が可能なプログラミング制御装置を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、基準時間発生手段を有することを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、前記2次電子検出手段からの2次電子検出信号の強度の時間変化から前記感光体面上の2次電子発生量の分布を濃度に置き換えた画像に変換する画像変換手段を有することを特徴とする。
さらに、請求項7記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、前記印加電圧発生手段は、低電圧の可変電圧発生手段と、電圧増幅手段を有し、前記可変電圧発生手段と電圧増幅手段は、信号線を除いて電気的に分離されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して可視像化した後、像担持体上の可視像を記録媒体に転写して画像を形成する画像形成装置において、前記像担持体として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置よって性能を評価され、選別された感光体を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光体性能測定装置では、測定の第1段階では感光体表面に均一に強力な荷電粒子ビームを当てることにより、感光体表面を均一に帯電させ、第2段階では荷電粒子ビームを弱めて走査させ、荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次荷電粒子を2次荷電粒子検出手段で検出して2次電子の発生量の分布を得るので、先願技術のような露光手段は必要がなく、簡易な構成で且つ短時間で感光体の性能を測定することが可能でとなる。従って感光体の性能評価および選別を容易に行うことが可能となる。
なお、ここでの性能とは、露光されない状態で帯電が保持されるか否かのことである。帯電が保持されない(性能が悪い)と、この感光体を用いた画像形成装置は地汚れが発生し、著しく画像性能を落とすことになる。
本発明では、上記の感光体性能測定装置により性能を評価され、選定された感光体を用いて画像形成装置を構成することにより、地汚れの発生しにくい良好な画像を出力できる画像形成装置を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る感光体性能測定装置は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段と、前記荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズと、前記荷電粒子ビームの通過を制限するアパーチャと、前記荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段と、前記荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出手段と、光源とを有する構成である。そして、本発明の感光体性能測定装置による測定、評価の概要としては、以下のようなものである。
(1)感光体の測定範囲全体に均一に強力な荷電粒子ビームを当てることにより、感光体表面を均一に帯電させる。この際、感光体に負荷をかけることにより加速試験にもなる。
(2)荷電粒子ビームを弱めて走査させ、2次電子の発生量の分布を得る。
(3)測定範囲全体の面積に対する電荷の失われている個所の面積比から感光体の性能を評価する。
(4)評価結果から性能の良い感光体を選別して、画像形成装置の作像部に組み込む。
【0017】
本発明の感光体性能測定装置は、性能測定時に電子レンズの少なくとも2つは屈折力を変化させ、その2つの電子レンズの内、少なくとも1つはアパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側に配置され(あるいは、性能測定時に電子レンズの少なくとも2つは屈折力を変化させ、その電子レンズはアパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側と感光体側のそれぞれに配置され)、且つ、性能測定時にビーム偏向手段の機能状態と停止状態を切り替えることより、荷電粒子ビームを測定範囲全体に強力に均一に当てることと弱めて走査させることの切替が可能となる。また、電子レンズの屈折力を変化させるためには、印加電圧発生手段を用いる。
【0018】
さらに本発明の感光体性能測定装置では、プログラムの保存及び実行が可能なプログラミング制御装置を有している。このプログラミング制御装置を有することにより、一連の測定作業を自動化でき、測定の効率化が図れる。
また、帯電及び電荷が逃げて行く過程は刻々と状態が変わって行く過渡現象であり、比較測定を行う場合に条件を揃えるためには時間管理が重要であり、そのために基準時間発生手段を有していなければならない。
【0019】
次に、本発明の感光体性能測定装置では、2次電子の発生量の分布を得るために、2次電子検出手段からの2次電子検出信号の強度の時間変化から感光体面上の2次電子発生量の分布を濃度に置き換えた画像に変換する画像変換手段を有することにより、既存の様々な画像処理ツールを使用することができ、測定範囲全体の面積に対する電荷の失われている個所の面積比も容易に算出できる。
【0020】
また、本発明の感光体性能測定装置では、電子レンズの屈折力を変化させる印加電圧発生手段を有し、この印加電圧発生手段は低電圧の可変電圧発生手段と、電圧増幅手段で構成し、低電圧の可変電圧発生手段で低電圧で電圧可変を行い、電圧増幅手段で増幅し、高電圧の電圧可変を行っている。ここで、可変電圧発生手段と電圧増幅手段は、信号線を除いて電気的に分離されていることが望ましい。電気的に分離とは高電圧の電流が急激に変化した時発生する磁場変化や電波が相手側に伝わり誘導電流を発生させることが無い状態にすることである。具体的には空間的に離す、それぞれの手段を独立に電気伝導性を持つ筐体で覆う、別々の経路でアースを取る等がある。これにより、高電圧を扱う電圧増幅手段で発生するノイズが可変電圧発生手段を破壊することが防げる。
【0021】
本発明では、上記の感光体性能測定装置よって性能を評価され、選定された感光体を用いて画像形成装置を構成することにより、地汚れの発生しにくい良好な画像を出力できる画像形成装置を実現することが可能となる。
また、画像形成装置が廃棄された際に、本発明の感光体性能測定装置で感光体の劣化の程度を判定することにより、劣化の程度が小さいものはリサイクルでき、資源の有効活用が可能となる。
【0022】
以下、本発明の具体的な構成、動作および作用を、図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
図1に本発明の第1の実施例を示す。性能を評価する感光体18は、電子を照射する側と反対の面を接地させた状態で配置される。ここでは円筒状の感光体18の内側を接地する。なお、図示の例では、感光体全体をそのまま測定装置の真空槽(以下、チャンバと言う)25内に入れた状態を示しているが、感光体の一部を切り出した小片やテスト用に作成した平板の試料(サンプル)であっても構わない。
【0024】
一方、チャンバ25内には、荷電粒子ビーム照射部15が設置されている。そして測定時には、チャンバ内は図示しない真空排気装置によって真空状態に排気される。なお、真空排気後に微量の不活性ガス等を導入することも可能である。
荷電粒子ビーム照射部15は、荷電粒子ビーム発生手段10と、複数の電子レンズ11,13,14、アパーチャ12等で構成されており、測定に用いる荷電粒子ビーム(ここでは電子ビームを用いるが、イオン等の電荷を持った粒子のビームであったら何でも構わない)は、荷電粒子ビーム発生手段10で発生する。荷電粒子ビーム発生手段10の詳細は図示しないが、電子を発生させるフィラメント、該電子を引き出す電極、加速する電極、ビーム照射を開始及び停止する機構等からなる。
【0025】
荷電粒子ビーム発生手段10で発生した電子ビームは、電子レンズ(ここでは、コンデンサーレンズとする)11によって収束させられる。コンデンサーレンズ11はコイルまたは電極からなり、いずれの場合も印加する電圧によって電子ビームの収束度合いを変えることができる。このコンデンサーレンズ11よって収束させられた電子ビームは、アパーチャ12で通過を制限され、アパーチャ12の開口を通った電子ビームのみが感光体18へ向かうことになる。
【0026】
アパーチャ12の開口を通った電子ビームは、ビーム偏向手段としての電子レンズ(以下、走査レンズと言う)13によって偏向される。走査レンズ13は複数のコイルまたは電極からなり、一定の電圧変化パターンを与えることにより電子ビームが偏向され、感光体上を2次元的に走査することができる。
さらに、走査レンズ13の後段にも電子レンズ(以下、対物レンズと言う)14が設けられており、この対物レンズ14によって再度電子ビームは収束させられる。対物レンズ14の構造は基本的にコンデンサーレンズ11と同じである。
【0027】
対物レンズ14で収束された電子ビームが感光体18に当ると、電子が感光体18に留まり、感光体表面が帯電すると共に、2次電子として感光体18から飛び出す電子もある。この2次電子は、2次荷電粒子検出手段16によって捕獲され、捕獲された2次電子量に比例する検出電流となる。
2次荷電粒子検出手段16の構造の一例としては、シンチレータ(蛍光体)と光電子増倍管を組み合わせたものであり、シンチレータの表面に印加された引き込み電圧の電界により2次電子はシンチレータに引き付けられて捕獲され、シンチレーション光に変換される。この光はライトパイプを通って光電子増倍管で増幅され、2次電子検出信号となる。
【0028】
ここで、図2は2次荷電粒子検出手段16と感光体18との間の空間における電位分布を等高線で示した図である。
感光体18の負極性に帯電している部分(Q1,Q2)では、感光体18から飛び出した2次電子(e11,e12)は実線の電位等高線に従い、矢印G1,G2で示すように、2次荷電粒子検出手段のシンチレータ24へ到達する。
一方、負極性の帯電量が少ない部分(Q3)では破線の電位等高線が示す様にQ3に近い方が電位が高く、感光体18から飛び出した2次電子(e13)は矢印G3で示すように、感光体18に戻ってしまい、2次荷電粒子検出手段へは到達しない。故に、電子ビームを走査させて2次電子検出信号の強度変化を測ることにより、感光体表面の帯電状態を測定することができる。
【0029】
2次荷電粒子検出手段16からの2次電子検出信号は画像変換手段20により2次電子発生量の分布を濃度に置き換えた画像データに変換される。この画像データはプログラミング制御装置22によって静止画、または動画ファイルとしてメモリに記録される。また、光源(例えばランプ、LED等)17は感光体18に光を当てて無帯電状態に(除電)するために用いる。
【0030】
感光体性能測定装置の電子ビーム照射部15を構成する荷電粒子ビーム発生手段10や、電子レンズ(コンデンサーレンズ11、走査レンズ13、対物レンズ14)は、プログラミングの保存及び実行が可能なプログラミング制御装置22によって制御を行う。制御装置22を、プログラミングの保存及び実行が可能な構成とすることにより、帯電電位や光に対する感度の異なる様々な感光体18に対して最適な測定条件を決定し、メモリに保存しておき、必要なときに呼び出して使うことで、様々な感光体に対して最適な測定条件で測定を行うことができる。
【0031】
次に本発明の感光体性能測定装置による具体的な測定手順を示す。
準備段階として、感光体18の表面にある帯電を無くし、初期状態を揃えるために、光源17を一定時間点灯させる。
そして第1段階として、荷電粒子ビーム照射部15により、感光体18に多量の電子ビームを照射し、感光体18を帯電させる。
また、多量の電子ビームを長時間照射することにより、感光体18の劣化を早める効果を与えることもできる。
なお、照射の時間が感光体18に与えるダメージの大きさを決定するので、複数の感光体で比較測定するためには照射時間を厳密に管理することが重要である。
【0032】
この第1段階では、図1に示すように、コンデンサーレンズ11でアパーチャ12近傍に焦点を結ぶように電子ビームを収束させることにより、荷電粒子ビーム発生手段10で発生した電子ビームのほとんどが感光体18に到達する様にしている。さらに対物レンズ13によって感光体近傍に焦点を結ぶように電子ビームが収束され、走査レンズ13により感光体表面を2次元的に走査することにより、一様な帯電状態を作り出す。
【0033】
次に第2段階として、感光体に照射する電子の量を10分の1〜数千分の1に減少させて電子ビームを走査させ、2次荷電粒子検出手段16へ到達する2次電子量を測定し、感光体18の性能を測定する。負極性の帯電量が少ない部分は電荷が逃げてしまった所であり、この個所の面積の多い感光体は地汚れが生じやすい悪い感光体ということになる。
【0034】
第2段階で、感光体18に照射する電子ビームの量を減少させる方法としては、測定の第1段階から第2段階への移行時に、アパーチャ12より荷電粒子ビーム発生手段10側の電子レンズであるコンデンサーレンズ11の屈折力を調整することにより可能である。より具体的には、図3(a)に示すように、コンデンサーレンズ11の屈折力を弱めるか、あるいは、図3(b)に示すように、コンデンサーレンズ11の屈折力を強めることよって、アパーチャ12を通る電子量を可変させることにより可能である。
【0035】
図4(a),(b)に、図3の(a),(b)にそれぞれ対応した、光源と電子レンズへの印加電圧と、感光体到達電流のタイムチャートを示す。
電子照射量を可変する手段としては、アパーチャ12の開口径を変化させる方法も考えられるが、このためにはメカ機構が必要であり、切替時間が数十ミリ秒はかかってしまい、潜像現象の様な数マイクロ秒単位で状態が変化する系を観測するには遅すぎるので望ましく無い。
また、測定中も量は少ないとは言え電子が当たっているために感光体の劣化が進み、時間によって状態が変わるため、ここでも時間管理をした上で測定しなければならない。
【0036】
この様に本装置による測定は時間管理が重要である。従って、装置各部に命令を発信するプログラム制御装置22は、命令を発信するタイミングを管理するために、基準時間発生手段23が接続されていることが望ましい。
基準時間発生手段23とは、水晶発振子の様な一定時間間隔で電気信号を発生させる部分と、該電気信号をカウントし、規定のカウント数で新たな電気信号を発生させる部分とからなる。
【0037】
また、荷電粒子ビーム発生手段10や、電子レンズ(コンデンサーレンズ11、走査レンズ13、対物レンズ14)を制御する手段としては、まず、プログラム制御装置22の命令により数ボルトの電圧を発生させる低電圧の可変電圧発生手段21と、その電圧を数百ボルトに増幅する電圧増幅手段19を有し、低電圧の可変電圧発生手段21と電圧増幅手段19が別々の筐体に分離されていることが望ましい。これは、電圧増幅手段19では高電圧を扱うために、強度の強いノイズが発生し易く、このノイズによって、低電圧の可変電圧発生手段21及びプログラム制御装置22の弱電素子を破壊してしまわないためである。
【0038】
[実施例2]
次に本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例との違いは、図5に示すように、測定時の第1段階で、感光体18を帯電させる方法が異なる点であり、その他の構成、動作は第1の実施例と同様である。
本実施例では、図5に示すように、コンデンサーレンズ11でアパーチャ12近傍に焦点を結ぶように電子ビームを収束させることにより、荷電粒子ビーム発生手段10で発生した電子のほとんどが感光体18に到達する様にしており、さらに、対物レンズ14の屈折力を弱め、感光体18の広い範囲に電子ビームが照射される様にしている。また、ここでは、ビーム偏向手段である走査レンズ13は機能を停止させている。
図6(a),(b)に、光源17と電子レンズ(コンデンサーレンズ11と対物レンズ14)への印加電圧と感光体到達電流のタイムチャートの例を2例示す。
【0039】
なお、図7に示すように、対物レンズ14の屈折力を調整し、感光体18より荷電粒子ビーム発生手段10側に焦点を結ぶように電子ビームを収束させてもよく、上記と同じ効果が得られるので構わない。
図8(a),(b)に、この場合の光源17と電子レンズ(コンデンサーレンズ11と対物レンズ14)への印加電圧と感光体到達電流のタイムチャートの例を2例示す。
【0040】
さて、以上の実施例1または実施例2に示した構成、動作の感光体性能測定装置よって感光体の性能を測定し、性能を評価することにより、性能の良い感光体を選定でき、選定された感光体を用いて図9に示したような画像形成装置を構成することにより、地汚れの発生しにくい良好な画像を出力できる画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施例を示す感光体性能測定装置の概略構成図である。
【図2】2次荷電粒子検出手段と感光体との間の空間における電位分布を等高線で示した図である。
【図3】測定の第1段階から第2段階への移行時に、アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側のコンデンサーレンズの屈折力を調整して感光体表面への電子量を調整する場合の説明図である。
【図4】図3の(a),(b)にそれぞれ対応した、光源と電子レンズへの印加電圧と、感光体到達電流のタイムチャートを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す感光体性能測定装置の概略構成図である。
【図6】図5に示す構成で、光源と電子レンズ(コンデンサーレンズと対物レンズ)への印加電圧と感光体到達電流のタイムチャートの例を2例示した図である。
【図7】第2の実施例の別の例を示す感光体性能測定装置の概略要部構成図である。
【図8】図7に示す構成で、光源と電子レンズ(コンデンサーレンズと対物レンズ)への印加電圧と感光体到達電流のタイムチャートの例を2例示した図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10:荷電粒子ビーム発生手段
11:コンデンサーレンズ(電子レンズ)
12:アパーチャ
13:走査レンズ(ビーム偏向手段)
14:対物レンズ(電子レンズ)
15:荷電粒子ビーム照射部
16:2次荷電粒子検出手段
17:光源
18:感光体
19:電圧増幅手段
20:画像変換手段
21:低電圧の可変電圧発生手段
22:プログラム制御装置
23:基準時間発生手段
25:チャンバ
111:感光体ドラム
112:帯電手段
113:現像装置
114:転写手段
115:クリーニング装置
116:定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段と、前記荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズと、前記荷電粒子ビームの通過を制限するアパーチャと、前記荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段と、前記荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次荷電粒子を検出する2次荷電粒子検出手段と、光源とを有する感光体性能測定装置において、
性能測定時に前記電子レンズの少なくとも2つは屈折力を変化させ、該屈折力を変化させる電子レンズは前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側と感光体側のそれぞれに少なくとも1つ配置してあり、測定の第1段階から第2段階への移行時に前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側の電子レンズの屈折力を調整し、且つ、感光体側の電子レンズの屈折力を弱めることを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項2】
荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子ビーム発生手段と、前記荷電粒子ビームを屈曲させる電子レンズと、前記荷電粒子ビームを絞るアパーチャと、前記荷電粒子ビームを偏向させるビーム偏向手段と、前記荷電粒子ビームが感光体に当たることによって発生する2次電子を検出する2次電子検出手段と、光源とを有する感光体性能測定装置において、
性能測定時に前記電子レンズの少なくとも1つは屈折力を変化させ、該屈折力を変化させる電子レンズは前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側に配置されており、測定の第1段階では前記ビーム偏向手段の機能を停止させ、第2段階への移行時に前記ビーム偏向手段を機能させ、前記アパーチャより荷電粒子ビーム発生手段側の電子レンズの屈折力を調整し、且つ、感光体側の電子レンズの屈折力を感光体上に焦点が合うように調整することを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の感光体性能測定装置において、
前記性能測定時に屈折力を変化させる電子レンズは、印加電圧発生手段によって屈折力を変化させることを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、
プログラムの保存及び実行が可能なプログラミング制御装置を有することを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、
基準時間発生手段を有することを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、
前記2次電子検出手段からの2次電子検出信号の強度の時間変化から前記感光体面上の2次電子発生量の分布を濃度に置き換えた画像に変換する画像変換手段を有することを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置において、
前記印加電圧発生手段は、低電圧の可変電圧発生手段と、電圧増幅手段を有し、前記可変電圧発生手段と電圧増幅手段は、信号線を除いて電気的に分離されていることを特徴とする感光体性能測定装置。
【請求項8】
像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して可視像化した後、像担持体上の可視像を記録媒体に転写して画像を形成する画像形成装置において、
前記像担持体として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光体性能測定装置よって性能を評価され、選別された感光体を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−206030(P2007−206030A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28647(P2006−28647)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】