説明

感光性エレメント及びこれを用いた蛍光体パターンの製造法

【課題】 エッジフュージョンの抑制及びPDP用基板の空間への埋め込み性が優れ、高精度で均一な形状の蛍光体パターンを、混色なく、作業性良く形成できる感光性エレメント並びに蛍光体パターンの製造法を提供する。
【解決手段】 支持体フィルム上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を有し、その上に(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を有する感光性エレメント並びに(I)前記感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程、(II)活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により不要部を除去する工程、(IV)焼成により不要分を除去する工程の各工程を含む蛍光体パターンの製造法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感光性エレメント及びこれを用いた蛍光体パターンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、平板ディスプレイの1つとして、プラズマ放電により発光する蛍光体を設けることによって多色表示を可能にしたプラズマディスプレイパネル(以下PDPと記す)が知られている。PDPは、ガラスからなる平板状の前面板と背面板とが互いに平行にかつ対向して配設され、両者はその間に設けられたバリアリブにより一定の間隔に保持されており、前面板、背面板及びバリアリブに囲まれた空間で放電する構造になっている。このような空間には、表示のための蛍光体が塗布され、放電によって封入ガスから発生する紫外線によって蛍光体が発光させられ、この光を観察者が視認できるようになっている。
【0003】従来、この蛍光体を設ける方法としては、各色蛍光体を分散させたスラリー液もしくはペーストをスクリーン印刷等の印刷方法によって塗布する方法が提案されており、特開平1−115027号公報、特開平1−124929号公報、特開平1−124930号公報、特開平2−155142号公報等に開示されている。しかし、上記の蛍光体分散スラリー液は液状であるため、蛍光体の沈澱等による分散不良が生じやすく、またスラリー液に液状の感光性レジストを用いた場合には、暗反応の促進等により保存安定性が乏しくなる等の欠点を有する。さらにスクリーン印刷等の印刷方法は印刷精度に劣るため、将来的なPDPの大画面化への対応は困難である等の問題がある。
【0004】これらの問題点の解決には、蛍光体を含有させた感光性エレメント(感光性フィルムともいう)を用いる方法が提案されている(特開平6−273925号公報)。感光性エレメントを用いる方法とは、蛍光体を含有する感光性樹脂層と支持体フィルムよりなる感光性エレメントの蛍光体を含有する感光性樹脂層を、加熱圧着(ラミネート)により前記PDP用基板の空間に埋め込み、次に、ネガフィルムを用いて、写真法により紫外線等の活性光で像的に露光し、その後、アルカリ水溶液等の現像液で、未露光部分を除去し、さらに、焼成により不必要な有機成分を取り除いて、必要な部分のみに蛍光体パターンを形成するものである。従って、前記PDP用基板の空間に蛍光体パターンを形成する際には、蛍光体の分散性を確認する必要はなく、また、蛍光体分散スラリー液若しくはペーストに比べて保存安定性にも優れている。さらに、写真法を用いるため、精度良く蛍光体パターンを形成することができる。
【0005】しかし、従来の方法により感光性エレメントを使用して蛍光体を含有する感光性樹脂層を、ラミネートにより前記PDP用基板の空間(セル内)に埋め込むと、バリアリブ壁面及び空間底面上に蛍光体パターンを均一な層厚、形状で形成することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】請求項1記載の発明は、エッジフュージョンの抑制及びPDP用基板の空間への埋め込み性(PDP用基板のバリアリブ壁面及びセル底面上における蛍光体を含有する感光性樹脂層の形成性)が優れ、高精度で均一な形状の蛍光体パターンを、混色なく、作業性良く形成できる感光性エレメントを提供するものである。請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、より作業性に優れる感光性エレメントを提供するものである。請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、より作業性に優れる感光性エレメントを提供するものである。請求項4記載の発明は、作業性、環境安全性及びPDP用基板の空間への埋め込み性(PDP用基板のバリアリブ壁面及びセル底面上における蛍光体を含有する感光性樹脂層の形成性)が優れ、高精度で均一な形状の蛍光体パターンを、混色なく形成できる蛍光体パターンの製造法を提供するものである。請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、さらに作業性及び膜べりの抑制に優れる蛍光体パターンの製造法を提供するものである。請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明の効果に加えて、より作業性に優れる蛍光体パターンの製造法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、支持体フィルム上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を有し、その上に(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を有する感光性エレメントに関する。また、本発明は、(A)感光性の熱可塑性樹脂層が、(e)熱可塑性樹脂、(f)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物及び(g)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤を含むものである前記感光性エレメントに関する。また、本発明は、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が、(a)フィルム性付与ポリマ、(b)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤及び(d)蛍光体を含むものである前記感光性エレメントに関する。
【0008】また、本発明は、(I)前記感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程、(II)活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により不要部を除去する工程、(IV)焼成により不要分を除去する工程の各工程を含むことを特徴とする蛍光体パターンの製造法に関する。また、本発明は、(I)〜(III)の各工程を繰り返して、赤、緑及び青に発色する蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層からなる多色のパターンを形成した後、(IV)の工程を行ない多色の蛍光体パターン形成する前記蛍光体パターンの製造法に関する。また、本発明は、(III)現像により不要部を除去する工程において、(A)層及び(B)層が、同一の現像液を使用して現像する前記蛍光体パターンの製造法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の感光性エレメントは、支持体フィルム上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を有し、その上に(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を有するものである。
【0010】本発明における支持体フィルムとしては、化学的及び熱的に安定であり、また、可とう性の物質で構成され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、その中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。支持体フィルムは、後に(A)感光性の熱可塑性樹脂層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されたものであったり、材質であったりしてはならない。支持体フィルムの厚さは、5〜100μmとすることが好ましく、10〜30μmとすることがより好ましい。
【0011】本発明における(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、(e)熱可塑性樹脂、(f)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物及び(g)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤を含有してなる感光性樹脂組成物等が好ましいものとして挙げられる。なお、後述する本発明の蛍光体パターンの製造法は、この(A)感光性の熱可塑性樹脂層を有する本発明の感光性エレメントを使用することにより、混色防止、作業性の向上、膜べりの抑制等が優れたものとなる。
【0012】本発明における(e)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸エステルの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、スチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体、ビニルトルエンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリアクリル酸エステル又はポリメタクリル酸エステルの加水分解物、ポリ酢酸ビニルの加水分解物、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解物、エチレンとアクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解物、スチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物、ビニルトルエンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物等)、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキルでん粉の水溶性塩、ポリビニルピロリドン、不飽和カルボン酸とこれらと共重合可能な不飽和単量体を共重合することにより得られるカルボキシル基を有する樹脂、後述する(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物に使用可能な(a)フィルム性付与ポリマ等が挙げられる。
【0013】本発明における(f)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物としては、後述する(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物に使用可能な(b)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物を使用することができる。
【0014】本発明における(g)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤としては、後述する(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物に使用可能な(c)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤を使用することができる。
【0015】本発明における(e)成分の配合量は、(e)成分及び(f)成分の総量が100重量部として、10〜90重量部とすることが好ましく、20〜80重量部とすることがより好ましい。この配合量が、10重量部未満では、感光性エレメントとした場合に、感光性樹脂組成物が流動によって端部からしみ出したり、フィルム形成性が低下する等の傾向があり、90重量部を超えると、感度が不充分となる傾向がある。
【0016】本発明における(f)成分の配合量は、(e)成分及び(f)成分の総量が100重量部として、10〜90重量部とすることが好ましく、20〜80重量部とすることがより好ましい。この配合量が、10重量部未満では、感度が不充分となる傾向があり、90重量部を超えると、感光性エレメントとした場合に、流動によって端部からしみ出したり、フィルム形成性が低下する等の傾向がある。
【0017】本発明における(g)成分の配合量は、(e)成分及び(f)成分の総量100重量部に対して、0.01〜30重量部とすることが好ましく、0.1〜20重量部とすることがより好ましい。この配合量が、0.01重量部未満では、感度が不充分となる傾向があり、30重量部を超えると、露光表面での活性光の吸収が増大して、内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0018】また、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂は、後述する現像工程において、(A)感光性の熱可塑性樹脂層及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が、同一の現像液を使用して現像できるものであることが、工程を少なくできる点から好ましい。同一の現像液で現像できるものとしては、水又はアルカリ水溶液に可溶なものが挙げられる。
【0019】水又はアルカリ水溶液に可溶な(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリアクリル酸エステル又はポリメタクリル酸エステルの加水分解物、ポリ酢酸ビニルの加水分解物、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解物、エチレンとアクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解物、スチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物、ビニルトルエンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体の加水分解物等)、カルボキシアルキルセルロースの水溶性塩、水溶性セルロースエーテル類、カルボキシアルキルでん粉の水溶性塩、ポリビニルピロリドン、不飽和カルボン酸とこれらと共重合可能な不飽和単量体を共重合することにより得られるカルボキシル基を有する樹脂などが挙げられる。
【0020】不飽和カルボン酸とこれらと共重合可能な不飽和単量体を共重合することにより得られるカルボキシル基を有する樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)と、後述する(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する(a)フィルム性付与ポリマに使用可能なビニル単量体とを共重合して得られるビニル共重合体などを使用することが好ましい。不飽和カルボン酸とこれらと共重合可能な不飽和単量体を共重合することにより得られるカルボキシル基を有する樹脂は、重量平均分子量が、5,000〜300,000とすることが好ましく、20,000〜150,000とすることがより好ましい。この重量平均分子量が、5,000未満では、感光性エレメントとした場合にフィルム形成性及び可とう性が低下する傾向があり、300,000を超えると、現像性(不要部が現像により、容易に除去できる性質)が低下する傾向がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値である。
【0021】また、アルカリ水溶液に可溶な(A)感光性の熱可塑性樹脂層として、公知の各種現像液により現像可能となるように、不飽和カルボン酸とこれらと共重合可能な不飽和単量体を共重合することにより得られるカルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基含有率(酸価(mgKOH/g)で規定できる)を適宜調整することができる。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価が、90〜260とすることが好ましい。この酸価が、90未満では、現像が困難となる傾向があり、260を超えると、耐現像液性(現像により除去されずに残りパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。また、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いて現像する場合には、酸価が、16〜260とすることが好ましい。この酸価が、16未満では、現像が困難となる傾向があり、260を超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。
【0022】また、(A)感光性の熱可塑性樹脂層のフィルム性を良好なものとするために、上記した(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂中に、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0023】本発明における支持体フィルム上に(A)感光性の熱可塑性樹脂層を設ける方法としては、前記(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂を溶解する溶剤に、溶解又は混合させることにより、均一な溶液とし、前記した支持体フィルム上に、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等の公知の塗布方法を用いて、塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0024】(A)感光性の熱可塑性樹脂層を構成する樹脂を溶解する溶剤としては、例えば、水、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、γ−ブチルラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラメチルスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。本発明における(A)感光性の熱可塑性樹脂層の厚さは、特に制限はないが、PDP用基板の空間への埋め込み性等の点から、10〜200μmとすることが好ましく、20〜100μmとすることがより好ましい。
【0025】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層は、作業性の点から、(a)フィルム性付与ポリマ、(b)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤及び(d)蛍光体を含有するものであることが好ましい。
【0026】本発明における(a)フィルム性付与ポリマとしては、ビニル共重合体が好ましく、ビニル共重合体に用いられるビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−フルオロエチル、メタクリル酸2−フルオロエチル、アクリル酸2−シアノエチル、メタクリル酸2−シアノエチル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0027】本発明における(a)フィルム性付与ポリマの重量平均分子量は、5,000〜300,000とすることが好ましく、20,000〜150,000とすることがより好ましい。この重量平均分子量が、5,000未満では、感光性エレメントとした場合にフィルム形成性及び可とう性が低下する傾向があり、300,000を超えると、現像性(不要部が現像により、容易に除去できる性質)が低下する傾向がある。
【0028】また、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が、公知の各種現像液により現像可能となるように、(a)フィルム性付与ポリマのカルボキシル基含有率(酸価(mgKOH/g)で規定できる)を適宜調整することができる。例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を、90〜26とすることが好ましい。この酸価が、90未満では、現像が困難となる傾向があり、260を超えると、耐現像液性(現像により除去されずに残りパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。また、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いて現像する場合には、酸価を、16〜260とすることが好ましい。この酸価が、16未満では、現像が困難となる傾向があり、260を超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。さらに、1,1,1−トリクロロエタン等の有機溶剤現像液を用いる場合には、カルボキシル基を含有しなくてもよい。
【0029】本発明における(b)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物としては、従来、光重合性多官能モノマとして知られているものを全て用いることができる。例えば、多価アルコールのアクリレート又はメタクリレート(ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ヘキサプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等)、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレート(2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA/エピクロルヒドリン系のエポキシ樹脂のアクリル酸又はメタクリル酸付加物等)、分子中にベンゼン環を有する低分子不飽和ポリエステルのアクリレート又はメタクリレート(無水フタル酸/ネオペンチルグリコール/アクリル酸=1/2/2(モル比)の縮合物等)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのアクリル酸又はメタクリル酸との付加物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2価アルコールのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステルとの反応で得られるウレタンアクリレート化合物又はウレタンメタクリレート化合物、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリスチリルエチルアクリレート、ポリスチリルエチルメタクリレート、4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アクリレート、4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)メタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用されるが、本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層は、焼成により不要な有機成分を除去する必要があるため、熱分解性が良好であるポリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0030】本発明における(c)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤としては、例えば、芳香族ケトン(ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等)、ベンゾイン(メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等)、ベンジル誘導体(ベンジルジメチルケタール等)、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体(2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等)、アクリジン誘導体(9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等)などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0031】本発明における(d)蛍光体としては、特に限定はなく、通常の金属酸化物を主体とするものが使用できる。赤色発色の蛍光体としては、例えば、Y22S:Eu、Zn3(PO4)2:Mn、Y23:Eu、YVO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、γ−Zn3(PO4)2:Mn、(ZnCd)S:Ag+In2O等が挙げられる。緑色発色の蛍光体としては、例えば、ZnS:Cu、Zn2SiO4:Mn、ZnS:Cu+Zn2SiO4:Mn、Gd22S:Tb、Y3Al512:Ce、ZnS:Cu,Al、Y22S:Tb、ZnO:Zn、ZnS:Cu,Al+In23、LaPO4:Ce,Tb、BaO・6Al23:Mn等が挙げられる。青色発色の蛍光体としては、例えば、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al、ZnS:Ag,Ga,Al、ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、ZnS:Ag+In23、Ca259Cl:Eu2+、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+、Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1423:Eu2+、BaMgAl1626:Eu2+等が挙げられる。
【0032】本発明における(a)成分の配合量は、(a)成分及び(b)成分の総量が100重量部として、10〜90重量部とすることが好ましく、20〜80重量部とすることがより好ましい。この配合量が、10重量部未満では、感光性エレメントとしてロール状で供給した場合、蛍光体含有感光性樹脂がロール端部からしみ出す(以下エッジフュージョンと記す)ことにより、感光性エレメントのラミネート時にロールからの繰り出しが困難となり、またしみ出した部分がPDP用基板の空間に部分的に過剰に埋め込まれ、製造歩留りが著しく低下する等の問題が生じたり、フィルム形成性が低下する等の傾向があり、90重量部を超えると、感度が不充分となる傾向がある。
【0033】本発明における(b)成分の配合量は、(a)成分及び(b)成分の総量が100重量部として、10〜90重量部とすることが好ましく、20〜80重量部とすることがより好ましい。この配合量が、10重量部未満では、蛍光体を含有する感光性樹脂組成物の感度が不充分となる傾向があり、90重量部を超えると、感光性エレメントにした場合に、蛍光体を含有する感光性樹脂組成物が流動によって端部からしみ出したり、フィルム形成性が低下する等の傾向がある。
【0034】本発明における(c)成分の配合量は、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部に対して、0.01〜30重量部とすることが好ましく、0.1〜20重量部とすることがより好ましい。この配合量が、0.01重量部未満では、蛍光体を含有する感光性樹脂組成物の感度が不充分となる傾向があり、30重量部を超えると、蛍光体を含有する感光性樹脂組成物の露光表面での活性光の吸収が増大して、内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0035】本発明における(d)成分の配合量は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の総量100重量部に対して、10〜300重量部とすることが好ましく、50〜250重量部とすることがより好ましく、70〜200重量部とすることが特に好ましい。この配合量が、10重量部未満では、PDPとして発光させた場合に発光効率が低下する傾向があり、300重量部を超えると、感光性エレメントとした場合に、フィルム形成性が低下したり、可とう性が低下する傾向がある。
【0036】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物には、長期間増粘を起こさず、貯蔵安定性を良好にするために、カルボキシル基を有する化合物を含有させることができる。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪族二塩基酸、芳香族二塩基酸、脂肪族三塩基酸、芳香族三塩基酸等が挙げられる。
【0037】具体的には、例えば、ぎ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸、リノール酸、しゅう酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、マロン酸モノメチル、マロン酸モノエチル、こはく酸、メチルこはく酸、アジピン酸、メチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、クエン酸、サリチル酸、ピルビン酸、リンゴ酸等が挙げられる。中でも、増粘を抑制する効果が高い点から、しゅう酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、クエン酸等が好ましく、しゅう酸、マロン酸、クエン酸等がより好ましい。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0038】カルボキシル基を有する化合物の配合量は、(a)成分100重量部に対して、0.01〜30重量部とすることが好ましい。この配合量が、0.01重量部未満では、保存安定性の効果が低くなる傾向があり、30重量部を超えると、感度が不充分となる傾向がある。
【0039】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物には、蛍光体の分散を良好とするために、分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、無機分散剤(シリカゲル系、ベントナイト系、カオリナイト系、タルク系、ヘクトライト系、モンモリロナイト系、サポナイト系、バイデライト系等)、有機分散剤(脂肪族アマイド系、脂肪族エステル系、酸化ポリエチレン系、硫酸エステル系アニオン活性剤、ポリカルボン酸アミン塩系、ポリカルボン酸系、ポリアマイド系、高分子ポリエーテル系、アクリル共重合物系、特殊シリコン系等)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】分散剤の使用量としては、特に制限はなく、(a)成分100重量部に対して、0.01〜100重量部とすることが好ましい。この使用量が、0.01重量部未満では、添加効果が発現しない傾向があり、100重量部を超えると、パターン形成精度(蛍光体を含有する感光性樹脂組成物からなるパターンを、現像後、寸法的に正確に、所望の形状で得られる性質)が低下する傾向がある。
【0041】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物には、焼成後、PDP用基板から蛍光体が剥離しないようにするために、結着剤を使用することが好ましい。結着剤としては、例えば、低融点ガラス、金属アルコキシド、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。結着剤の使用量としては、特に制限はなく、(d)成分100重量部に対して、0.01〜100重量部とすることが好ましく、0.05〜50重量部とすることがより好ましく、0.1〜30重量部とすることが特に好ましい。この使用量が、0.01重量部未満では、蛍光体の結着効果が発現しない傾向があり、100重量部を超えると、発光効率が低下する傾向がある。
【0042】また、本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する感光性樹脂組成物には、染料、発色剤、可塑剤、顔料、重合禁止剤、表面改質剤、安定剤、密着性付与剤、熱硬化剤等を必要に応じて添加することができる。
【0043】本発明の感光性エレメントは、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する前記各成分を溶解又は分散可能な溶剤に、溶解又は混合させることにより、均一に分散した溶液とし、前記で設けた(A)感光性の熱可塑性樹脂層の上に、塗布、乾燥することにより得ることができる。
(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を構成する前記各成分を溶解又は分散可能な溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラメチルスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン、メチルアルコール、エチルアルコール等があげられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0044】塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、3分〜1時間とすることが好ましい。
【0045】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、特に制限はないが、10〜100μmとすることが好ましく、20〜80μmとすることがより好ましい。この厚さが、10μm未満では、焼成後の蛍光体パターンが薄くなり、発光効率が低下する傾向があり、100μmを超えると、焼成後の蛍光体パターンが厚くなり、蛍光面の発光面積が縮小して発光効率が低下する傾向がある。
【0046】本発明における(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の上には、さらに剥離可能なカバーフィルムを積層することができる。カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられ、支持体フィルムと(A)感光性の熱可塑性樹脂層との接着力よりも、カバーフィルムと(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層との接着力の方が小さいものであることが好ましい。このようにして得られる本発明の感光性エレメントは、ロール状に巻いて保管可能とすることができる。
【0047】本発明の蛍光体パターンの製造法は、(I)前記本発明の感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程、(II)活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により不要部を除去する工程及び(IV)焼成により不要分を除去する工程の各工程を含むことを特徴とする。
【0048】以下、本発明の蛍光体パターンの製造法の各工程について、図1及び図2を用いて詳述する。なお、図1及び図2は、本発明の蛍光体パターンの製造法の各工程を示した模式図である。
【0049】〔(I)前記本発明の感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程〕バリアリブ2が形成されたプラズマディスプレイパネル用基板(PDP用基板)1上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4を含む本発明の感光性エレメントを、加熱ロール5を用いて積層させた状態を図1(I)に示した。
【0050】本発明におけるPDP用基板としては、例えば、透明な接着のための表面処理を施していてもよい、ガラス板、合成樹脂板等の基板に、電極及びバリアリブが形成されたものなどが挙げられる。バリアリブの形成には、特に制限なく、公知の材料を使用できるが、例えば、シリカ、熱硬化性樹脂、低融点ガラス(酸化鉛等)、溶剤などを含むリブ材を用いることができる。また、PDP用基板には、電極及びバリアリブの他に、必要に応じて、誘電膜、絶縁膜、補助電極、抵抗体等が形成されていてもよい。これらのものを、基板へ形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、基板に、蒸着、スパッタリング、メッキ、塗布、印刷等の方法で電極を形成することができ、印刷法、サンドブラスト法、埋め込み法等の方法でバリアリブを形成することができる。
【0051】バリアリブは、通常、高さが20〜500μm、幅が20〜200μmとされる。バリアリブで囲まれた放電空間の形状には、特に制限はなく、格子状、ストライプ状、ハニカム状、3角形状、楕円形状等が可能であるが、通常、図5及び図6等に示すような、格子状又はストライプ状の放電空間が形成される。図5及び図6において、基板1上にはバリアリブ2が形成されており、図5では格子状放電空間9が、図6ではストライプ状放電空間10が形成されている。放電空間の大きさは、PDPの大きさと解像度によって決められ、通常、図5のような格子状放電空間であれば、縦及び横の長さは、50μm〜1mmとなり、図6のようなストライプ状放電空間であれば、間隔は、30μm〜1mmとなる。
【0052】図1(I)の工程において、バリアリブ2が形成されたPDP用基板1上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3及び(B)蛍光体を有する感光性樹脂組成物層4を含む本発明の感光性エレメントを積層させる方法としては、例えば、感光性エレメントにカバーフィルムが存在しているときは、そのカバーフィルムを除去後、PDP用基板のバリアリブを形成した面に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4が接するように、加熱ロール5で加熱圧着させること等により積層することができる。
【0053】加熱圧着時の加熱温度は、10〜130℃とすることが好ましく、20〜120℃とすることがより好ましく、30〜110℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4のPDP基板の空間への埋め込み性が低下する傾向があり、130℃を超えると、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4が熱硬化する傾向がある。また、加熱圧着時の圧着圧力は、1×104〜1×107Paとすることが好ましく、2×104〜5×106Paとすることがより好ましく、4×104〜1×106Paとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、1×104Pa未満では、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4のPDP基板の空間への埋め込み性が低下する傾向があり、1×107Paを超えると、PDP用基板のバリアリブが破壊される傾向がある。
【0054】(A)感光性の熱可塑性樹脂層3及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4を含む本発明の感光性エレメントを前記のように加熱すれば、PDP用基板を予熱処理することは必要ではないが、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の空間への埋め込み性をさらに向上させる点から、PDP用基板を予熱処理することが好ましい。この時の予熱温度は、30〜130℃とすることが好ましく、また、予熱時間は、0.5〜20分間とすることが好ましい。また、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の空間への埋め込み性をさらに向上させる点から、上記圧着ロールの表面が、ゴム、プラスチック等の柔軟性に富んだ材質のものを使用することもできる。なお、柔軟性に富んだ材質の層の厚さは、200〜400μmとすることが好ましい。
【0055】さらに、同様の目的で、4×103Pa以下の減圧下で、上記した圧着及び加熱圧着の操作を行うこともできる。また、積層が完了した後、30〜150℃の範囲で、1〜120分間加熱することもできる。この時、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の上に支持体フィルムが存在する場合には、その支持体フィルムを必要に応じて除去してもよい。このようにして、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4をPDP用基板の空間に均一に形成することができる。
【0056】〔(II)活性光線を像的に照射する工程〕活性光線7を像的に照射する状態を図1(II)に示した。図1(II)の工程において、活性光線7を像的に照射する方法としては、図1(I)の状態の(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の上部に、ネガフィルム、ポジフィルム等のフォトマスク6を介して、活性光線7を像的に照射することができる。この時、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の上に支持体フィルムが存在する場合は、その支持体フィルムを積層したまま活性光線7を像的に照射してもよく、また、支持体フィルムを除去した後に活性光線7を像的に照射してもよい。なお、この時、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3は、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4と同時に光硬化することとなる。
【0057】活性光線7としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、その他から発生する光等が挙げられる。光開始剤の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるので、その場合の活性光源は、紫外線を有効に放射するものにすべきである。また、光開始剤が可視光線に感受するもの、例えば、9、10−フェナンスレンキノン等である場合には、活性光線7としては、可視光が用いられ、その光源としては、前記のもの以外に写真用フラッド電球、太陽ランプ等も使用することができる。
【0058】〔(III)現像により不要部を除去する工程〕現像により不要部を除去した状態を図1(III)に示した。なお、図1(III)において、3′は光硬化後の感光性の熱可塑性樹脂層及び4′は光硬化後の蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層である。図1(III)の工程において、現像方法としては、例えば、図1(II)の状態の後、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の上に支持体フィルムが存在する場合には、これを除去した後、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等の公知の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により現像を行い、不要部を除去する方法等が挙げられる。
【0059】不要部を除去する場合には、まず、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4を溶解しない水、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等を用いて、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の不要部を溶解により除去した後に、現像液を用いて、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の不要部を除去してもよく、また、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3が、前記した(A)感光性の熱可塑性樹脂層3及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4が、同一の現像液を使用して現像できるものである場合には、その現像液を用いて、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の不要部及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の不要部を一工程で除去することもできる。また、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3の不要部及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の不要部を除去する方法として、ドライ現像にて、それぞれ単独に又は一工程で行うこともできる。
【0060】なお、この時、光硬化後の蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4′の上部には、光硬化後の感光性の熱可塑性樹脂層3′が残存することとなり、後述する赤、緑及び青に発色する蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層からなる多色のパターンを形成する際に、混色防止及び膜べり防止の効果に優れたものとなる。
【0061】アルカリ水溶液の塩基としては、水酸化アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等)、炭酸アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩若しくは重炭酸塩等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属ピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等)、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどが挙げられ、中でも、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。現像に用いるアルカリ水溶液のpHは、9〜11とすることが好ましく、また、その温度は、(A)感光性の熱可塑性樹脂層3及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層4の現像性に合わせて調整することができる。また、アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
【0062】水系現像液としては、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなるものが挙げられる。ここで、アルカリ水溶液の塩基としては、前記物質以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2−モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。水系現像液のpHは、8〜12とすることが好ましく、9〜10とすることがより好ましい。
【0063】有機溶剤としては、例えば、三アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90重量%の範囲とされ、また、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することができる。単独で用いる有機溶剤現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20重量%の範囲で水を添加してもよい。
【0064】また、現像後、PDP用基板の空間の表面における蛍光体含有フォトレジストの密着性及び耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプ等による紫外線照射や加熱を行うこともできる。この時の、紫外線の照射量は、通常、0.2〜10J/cm2であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。また、加熱時の温度は、60〜180℃とすることが好ましく、100〜180℃とすることがより好ましい。また、加熱時間は、15〜90分間とすることが好ましい。これらの紫外線の照射と加熱は、照射と加熱を別々に行ってもよく、どちらを先に行ってもよい。
【0065】〔(IV)焼成により不要分を除去する工程〕焼成により不要分を除去した後の蛍光体パターンを形成した状態を図2(IV)に示した。なお、図2(IV)において、8は蛍光体パターンである。図2(IV)の工程において、焼成方法としては、特に制限はなく、公知の焼成方法を使用し、蛍光体及び結着剤以外の不要物を除去し、蛍光体パターンを形成することができる。この時の、焼成温度は、350〜800℃とすることが好ましく、400〜600℃とすることがより好ましい。また、焼成時間は、3〜120分間とすることが好ましく、5〜90分間とすることがより好ましい。
【0066】本発明の蛍光体パターンの製造法は、(I)〜(III)の各工程を1色毎に繰り返して、赤色、緑色及び青色に発色する蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層からなる多色のパターンを形成した後、(IV)の工程を行ない多色の蛍光体パターンを形成することが、膜べりの抑制(1色目及び2色目の光硬化後の蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層は、(III)の工程において、数回現像液にさらされるが、これらの光硬化後の蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層は、光硬化後の感光性の熱可塑性樹脂組成物層に被覆されており、直接、現像液にさらされないために、膜べりを抑制することができる)及び工程数を低減できる点から好ましい。本発明において、赤色、青色及び緑色に発色するそれぞれの蛍光体を単独で含む(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層5は、赤色、青色及び緑色の各色について、どの様な順番でも行うことができる。
【0067】本発明における(I)〜(III)の各工程を1色毎に繰り返して、赤色、緑色及び青色に発色する蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を含む多色パターンを形成した状態を図3に示した。図3において、4′aは1色目のパターン、4′bは2色目のパターン及び4′cは3色目のパターンである。また、本発明における(IV)の工程を行ない多色の蛍光体パターンを形成した状態を図4に示した。図4において、8aは1色目の蛍光体パターン、8bは2色目の蛍光体パターン及び8cは3色目の蛍光体パターンである。
【0068】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。
製造例1〔フィルム性付与ポリマ(a−1)の作製〕撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示す■を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示す■を4時間かけて均一に滴下した。■の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、重量平均分子量が80,000、酸価が130mgKOH/gのフィルム性付与ポリマ(a−1)を得た。
【0069】
【表1】


【0070】製造例2〔フィルム性付与ポリマ(a−2)の作製〕製造例1において、■のメタクリル酸を4重量部に、メタクリル酸メチルを86重量部に、メタクリル酸n−ブチルを10重量部に代えた以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量が80,000、酸価が26mgKOH/gのフィルム性付与ポリマ(a−2)を得た。
【0071】製造例3〔(A)感光性の熱可塑性樹脂層用溶液(A−1)の作製〕表2に示す材料を配合し、(A)感光性の熱可塑性樹脂層用溶液(A−1)を作製した。
【0072】
【表2】


【0073】製造例4〔熱可塑性樹脂層用溶液(A−2)の作製〕表3に示す材料を配合し、熱可塑性樹脂層用溶液(A−2)を作製した。
【0074】
【表3】


【0075】製造例5〔(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)の作製〕表4に示す材料を、ライカイ機を用いて15分間混合し、赤色の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を作製した。
【0076】
【表4】


【0077】製造例6〔(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−2)の作製〕表5に示す材料を、ライカイ機を用いて15分間混合し、赤色の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−2)を作製した。
【0078】
【表5】


【0079】製造例7〔(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−3)の作製〕表6に示す材料を、ライカイ機を用いて15分間混合し、赤色の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−3)を作製した。
【0080】
【表6】


【0081】製造例8〔(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−4)の作製〕表7に示す材料を、ライカイ機を用いて15分間混合し、青色の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−4)を作製した。
【0082】
【表7】


【0083】製造例9〔(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−5)の作製〕表8に示す材料を、ライカイ機を用いて15分間混合し、緑色の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−5)を作製した。
【0084】
【表8】


【0085】〔感光性エレメントの作製〕
実施例1製造例3で得られた(A)感光性の熱可塑性樹脂層用溶液(A−1)を、20μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、80〜110℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して蒸留水を除去し、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を形成した。得られた(A)感光性の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであった。次いで、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、(A)感光性の熱可塑性樹脂層の上に均一に塗布し、80〜110℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して溶剤を除去し、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を形成した。得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。次いで、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、感光性エレメント(i)を作製した。
【0086】得られた感光性エレメント(i)のエッジフュージョン性を下記の方法で評価し、結果を表9に示した。
〔エッジフュージョン性〕ロール状に巻き取られた長さ90mの感光性エレメント(i)を、温度が23℃、湿度が60%Rhで保管し、ロール側面から感光層のしみ出しの様子を、6カ月間にわたって目視で評価した。評価基準は次の通りである。
○:エッジフュージョン性が良好なもの(6カ月間でも感光層のしみ出しがないもの)
×:エッジフュージョン性が不良なもの(6カ月間で感光層のしみ出しが発生したもの)
【0087】実施例2実施例1において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例6で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−2)に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性エレメント(ii)を作製した。なお、感光性エレメント(ii)の(A)感光性の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(ii)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0088】実施例3実施例1において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例8で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−4)に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性エレメント(iii)を作製した。なお、感光性エレメント(iii)の(A)感光性の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(iii)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0089】実施例4実施例1において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例9で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−5)に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性エレメント(iv)を作製した。なお、感光性エレメント(iv)の(A)感光性の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(iv)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0090】比較例1実施例1において、製造例3で得られた(A)感光性の熱可塑性樹脂層用溶液(A−1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、感光性エレメント(v)を作製した。なお、感光性エレメント(v)の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(v)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0091】比較例2比較例1において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例7で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−3)に代えた以外は、比較例1と同様にして、感光性エレメント(vi)を作製した。なお、感光性エレメント(vi)の(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(vi)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0092】比較例3実施例1において、製造例3で得られた(A)感光性の熱可塑性樹脂層用溶液(A−1)を、製造例4で得られた熱可塑性樹脂層用溶液(A−2)に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性エレメント(vii)を作製した。なお、感光性エレメント(vii)の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(vii)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0093】比較例4比較例3において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例8で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−4)に代えた以外は、比較例3と同様にして、感光性エレメント(viii)を作製した。なお、感光性エレメント(viii)の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(viii)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0094】比較例4比較例3において、製造例5で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−1)を、製造例9で得られた(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層用溶液(B−5)に代えた以外は、比較例3と同様にして、感光性エレメント(ix)を作製した。なお、感光性エレメント(ix)の熱可塑性樹脂層の乾燥後の厚さは、70μmであり、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層の厚さは、60μmであった。得られた感光性エレメント(ix)のエッジフュージョン性を、実施例1と同様にして評価し、結果を表9に示した。
【0095】
【表9】


【0096】表9から、比較例2で作製した感光性エレメント(vi)のみが、エッジフュージョン性が劣り、感光性エレメントとしては、使用することが困難なものであった。
〔蛍光体パターンの作製〕
【0097】実施例5〔(I)感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程〕PDP用基板(ストライプ状のバリアリブ、バリアリブ間の開口幅150μm、バリアリブの幅70μm、バリアリブの高さ150μm)のバリアリブが形成された側に、実施例1で得られた感光性エレメント(i)のポリエチレンフィルムを剥がしながら、真空ラミネータ(日立化成工業(株)製、商品名VLM−1型)を用いて、ヒートシュー温度が110℃、ラミネート速度が0.5m/分、気圧が4000Pa以下、圧着圧力が4×105Paで積層した。
【0098】〔(II)活性光線を像的に照射する工程〕次に、感光性エレメント(i)のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、試験用フォトマスクを密着させて、(株)オーク製作所製HMW−590型露光機を使用し、100mJ/cm2で活性光線を像的に照射した。
【0099】〔(III)現像により不要部を除去する工程〕次に、活性光線を照射後、常温で1時間放置した後、1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃で70秒間スプレー現像した。現像後、80℃で10分間乾燥し、東芝電材(株)製東芝紫外線照射装置を使用して、3J/cm2の紫外線照射を行った。
【0100】〔(IV)焼成により不要分を除去する工程〕次に、550℃で30分間加熱処理(焼成)を行い、不必要な樹脂成分を除去して、PDP用基板の空間に蛍光体パターンを形成させた。
【0101】〔蛍光体パターンの評価〕得られた蛍光体パターンの断面を、実体顕微鏡及びSEMにより目視にて観察し、蛍光体パターンの形成状況を評価し、結果を表9に示した。評価基準は次の通りである。
○:蛍光体パターンがPDP用基板の空間(バリアリブ壁面及びセル底面上)に均一に形成されている×:蛍光体パターンがPDP用基板の空間(バリアリブ壁面及びセル底面上)に均一に形成されていない
【0102】実施例6〜8及び比較例6〜9実施例5において、実施例1で得られた感光性エレメント(i)を、表10に示した感光性エレメントに代えた以外は、実施例5と同様にして、蛍光体パターンを形成し、得られた蛍光体パターンの形成状況を評価し、結果を表10に示した。
【0103】
【表10】


【0104】〔多色の蛍光体パターンの作製〕
実施例9実施例5における(I)〜(III)の工程を行って得られた、1色目の赤色のパターンが形成された基板を用いて、実施例7における(I)〜(III)の工程を行い、2色目の青色のパターンを形成し、次いで、実施例8における(I)〜(III)の工程を行い、3色目の緑色のパターンを形成して多色のパターンを作製した。次に、得られた多色のパターンを、実施例5における(IV)の工程を行い、多色の蛍光体パターンを作製した。得られた多色の蛍光体パターンを、EDAX社製 PV9900型「エネルギー分散型X線分析装置(XMA)」(加速電圧 20kV)を用いて、各色毎に、蛍光体の組成を測定し、混色の有無を確認した結果、混色は見られなかった。また、実態顕微鏡及びSEMにより目視にて膜べりの有無を観察した結果、膜べりは見られなかった。
【0105】比較例10実施例9において、実施例1で得られた感光性エレメント(i)を、比較例3で得られた感光性エレメント(vii)とし、実施例3で得られた感光性エレメント(iii)を、比較例4で得られた感光性エレメント(viii)とし、実施例4で得られた感光性エレメント(iv)を、比較例5で得られた感光性エレメント(ix)とした以外は、実施例9と同様にして、多色の蛍光体パターンを作製した。得られた多色の蛍光体パターンを、実施例9と同様にして、混色の有無及び膜べりの有無を確認した結果、混色が見られ、膜べりも見られた。
【0106】表10、実施例9及び比較例10の結果から、(A)感光性の熱可塑性樹脂層及び(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を含む本発明の感光性フィルムを使用した実施例5〜9は、PDP用基板の空間における蛍光体パターンの形成性(PDP用基板のバリアリブ壁面及び空間底面上への埋め込み性)が良好であり、また、これを用いて多色の蛍光体パターンを形成した場合(実施例9)に、混色防止性及び膜べり抑制性が優れたものであった。
【0107】これと比較して、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を含むフィルムを使用しなかった比較例6は、PDP用基板の空間における蛍光体パターンの形成性(PDP用基板のバリアリブ壁面及び空間底面上への埋め込み性)が劣ることがわかる。また、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を含むフィルム(A−1)に代えて、熱可塑性樹脂層を含むフィルム(A−2)を使用した比較例7、比較例8及び比較例9は、PDP用基板の空間における蛍光体パターンの形成性(PDP用基板のバリアリブ壁面及び空間底面上への埋め込み性)は良好であったが、これを用いて多色の蛍光体パターンを形成した場合(比較例10)に、混色及び膜べりが発生するものであることがわかった。
【0108】
【発明の効果】請求項1記載の感光性エレメントは、エッジフュージョンの抑制及びPDP用基板の空間への埋め込み性(PDP用基板のバリアリブ壁面及びセル底面上における蛍光体を有する感光性樹脂層の形成性)が優れ、高精度で均一な形状の蛍光体パターンを、混色なく、作業性良く形成できるものである。請求項2記載の感光性エレメントは、請求項1記載の感光性エレメントの効果を奏し、より作業性に優れる。請求項3記載の感光性エレメントは、請求項1又は2記載の感光性エレメントの効果を奏し、より作業性に優れる。
【0109】請求項4記載の蛍光体パターンの製造法は、作業性、環境安全性及びPDP用基板の空間への埋め込み性(PDP用基板のバリアリブ壁面及びセル底面上における蛍光体を有する感光性樹脂層の形成性)が優れ、高精度で均一な形状の蛍光体パターンを、混色なく形成できるものである。請求項5記載の蛍光体パターンの製造法は、請求項4記載の蛍光体パターンの製造法の効果を奏し、さらに作業性及び膜べりの抑制に優れる。請求項6記載の蛍光体パターンの製造法は、請求項4又は5記載の蛍光体パターンの製造法の効果を奏し、より作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光体パターンの製造法の各工程を示した模式図である。
【図2】本発明の蛍光体パターンの製造法の各工程を示した模式図である。
【図3】蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層からなる多色パターンを形成した状態を示した模式図である。
【図4】多色の蛍光体パターンを形成した状態を示した模式図である。
【図5】バリアリブが形成さされたPDP用基板の一例を示した模式図である。
【図6】バリアリブが形成さされたPDP用基板の一例を示した模式図である。
【符号の説明】
1 …基板
2 …バリアリブ
3 …感光性の熱可塑性樹脂層
3′…光硬化後の感光性の熱可塑性樹脂層
4 …蛍光体を有する感光性樹脂組成物層
4′…光硬化後の蛍光体を有する感光性樹脂組成物層
4′a…1色目のパターン
4′b…2色目のパターン
4′c…3色目のパターン
5 …加熱ロール
6 …フォトマスク
7 …活性光線
8 …蛍光体パターン
8a…1色目の蛍光体パターン
8b…2色目の蛍光体パターン
8c…3色目の蛍光体パターン
9 …格子状放電空間
10 …ストライプ状放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体フィルム上に、(A)感光性の熱可塑性樹脂層を有し、その上に(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層を有する感光性エレメント。
【請求項2】 (A)感光性の熱可塑性樹脂層が、(e)熱可塑性樹脂、(f)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物及び(g)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤を含むものである請求項1記載の感光性エレメント。
【請求項3】 (B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が、(a)フィルム性付与ポリマ、(b)末端にエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光の照射により遊離ラジカルを生成する光開始剤及び(d)蛍光体を含むものである請求項1又は2記載の感光性エレメント。
【請求項4】 (I)請求項1、2又は3記載の感光性エレメントを、バリアリブが形成されたプラズマディスプレイパネル用基板上に、(B)蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層が接するように加熱圧着する工程、(II)活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により不要部を除去する工程、(IV)焼成により不要分を除去する工程の各工程を含むことを特徴とする蛍光体パターンの製造法。
【請求項5】 (I)〜(III)の各工程を繰り返して、赤、緑及び青に発色する蛍光体を含有する感光性樹脂組成物層からなる多色のパターンを形成した後、(IV)の工程を行ない多色の蛍光体パターン形成する請求項4記載の蛍光体パターンの製造法。
【請求項6】 (III)現像により不要部を除去する工程において、(A)層及び(B)層が、同一の現像液を使用して現像する請求項4又は5記載の蛍光体パターンの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平9−199030
【公開日】平成9年(1997)7月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−9644
【出願日】平成8年(1996)1月23日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)