説明

感光性樹脂積層体

【課題】本発明は、高感度で、且つホールドタイムによる感度低下(すなわち感度変化)が少なく(すなわち保存安定性に優れ)生産性が良好な感光性樹脂積層体を提供することを目的とする。また本発明は、該感光性樹脂積層体を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光及び現像することを含むレジストパターンの形成方法及び導体パターンの製造方法を提供することも目的とする。
【解決手段】支持体フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層と、保護フィルムとを少なくとも含む積層体であり、該保護フィルムが特定構造を含む酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤のフェノール当量が3.1×10-3以下であり、該保護フィルム中の該酸化防止剤の含有量が1ppmより多く3000ppm以下であり、該感光性樹脂組成物が特定構造の光重合性不飽和化合物を含有する感光性樹脂積層体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂積層体並びにその用途に関し、詳しくはプリント配線板、BGA(Ball grid array)及びCSP(Chip size package)等の半導体パッケージ用基板、リードフレーム用基板並びにCOF(Chip on film)用配線板等の製造に適した感光性樹脂積層体、並びにそれを用いたレジストパターンの形成方法及び導体パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板、BGA、CSP等の半導体パッケージ用基板、リードフレーム用基板、COF用配線板等の製造用のレジストとして、支持体フィルムと感光性樹脂層と保護フィルムとから成る、いわゆるドライフィルムレジスト(以下DFRと略称)が用いられている。DFRは、一般に支持体フィルム上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層し、さらに該感光性樹脂層上に保護フィルムを積層することにより作製される。ここで用いられる感光性樹脂層を形成するために、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物を用いるのが一般的である。
【0003】
また、支持体フィルムとしては活性光を透過する透明なフィルムが用いられる。このようなフィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。一般的には、適度な可とう性と強度とを有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられる。
【0004】
また、保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、及びシリコーン等で表面処理したポリエステルフィルム、等が用いられることがある。コスト及び感光性樹脂層との剥離特性の観点からポリオレフィンフィルムが一般に用いられる(特許文献1〜3を参照のこと)。
【0005】
DFRを用いてプリント配線板を作製するためには、まず保護フィルムを剥離した後、銅張積層板やフレキシブル基板等の永久回路作成用基板上にラミネーター等を用いDFRを積層し、配線パターンマスクフィルム等を通して感光性樹脂層の露光を行う。次に必要に応じて支持体層を剥離し、現像液により未露光部分の感光性樹脂層を溶解若しくは分散除去し、基板上にレジストパターンを形成させる。
【0006】
レジストパターン形成後(すなわちパターニング後)、回路を形成させるプロセスは大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、銅張積層板等の銅面のレジストパターンによって覆われていない露出部分をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去するエッチング法である。第二の方法は、上記と同様の銅面の露出部分に銅、半田、ニッケル又は錫等のめっき処理を行った後、同様にレジストパターン部分を除去し、さらに、レジストパターン部分の除去によって現れた銅張積層板等の銅面をエッチングするめっき法である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。
【0007】
DFRを用いたパターニング工程では、活性光線に対する感光性樹脂層の感度がしばしば回路形成時の生産性の観点から問題となる場合がある。また、DFRは通常支持体フィルムと感光性樹脂層と保護フィルムとの3層構造からなるロール状の感光性樹脂積層体として提供されるが、ロール状である期間放置したのちパターニングを行うと感光性樹脂層の感度が低下するという問題が生じる事がある。このようなロール状のDFRがホールドタイムを経ることにより感度低下が起こると、レジストパターンの解像性及び密着性が低下し、製品不良の原因となることが長年の問題であった。
【0008】
このため、感光性樹脂積層体の出荷前検査で、ホールドタイム経過後の感度を測定するために、塗工から出荷までの間に放置時間が必要となり、該感光性樹脂積層体の生産性において、問題が生じることがあった。
【0009】
また以上のような感度低下があるために、レジストパターン形成後にレジストパターンの画像の解像性及び密着性が低下する問題が生じることがあった。
【0010】
特許文献4においては、保護フィルムが含有する酸化防止剤の量が180ppm以下0ppm以上の場合、高感度でホールドタイムによる感度変化(すなわち感度低下)が少ない感光性樹脂積層体を得られることを見出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−123018号公報
【特許文献2】特開平11−153861号公報
【特許文献3】特開2002−323759号公報
【特許文献4】特願2004−267497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、保護フィルム製造の観点では、酸化防止剤量が180ppm以下の原料を製膜した場合、熱による原料変成が起こりやすいため、加熱を抑え、保護フィルムの生産性を抑えた製膜が必要であるという問題点があった。
【0013】
本発明は、酸化防止剤含有量が1ppmより多い保護フィルムを積層してなる、高感度で、且つホールドタイムによる感度低下(すなわち感度変化)が少ない(すなわち保存安定性が良好である)感光性樹脂積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、該感光性樹脂積層体を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成する工程、該感光性樹脂層を露光する工程、及び該感光性樹脂層を現像する工程を含む、レジストパタ−ンの形成方法及び導体パターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため検討した結果、後述の特定の酸化防止剤の含有量が1ppmより多く3000ppm以下である保護フィルムと、ある特定の光重合性化合物を含む感光性樹脂組成物とを用いて形成されている感光性樹脂積層体により、感光性樹脂積層体の生産性を向上できることを発見し、本発明に至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0015】
[1] 支持体フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層と、保護フィルムとを少なくとも含む積層体であり、
該保護フィルムが、下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される構造を含む酸化防止剤を含有し、
該酸化防止剤のフェノール当量が3.1×10-3以下であり、
該保護フィルム中の該酸化防止剤の含有量が、1ppmより多く3000ppm以下であり、
該感光性樹脂組成物が、下記一般式(II):
【化2】

(式中、R6及びR7は各々独立に水素又はCH3を示し、AはC24を示し、BはCH2CH(CH3)を示し、n4+n5は2〜30の整数を示し、n6+n7は0〜30の整数を示し、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数を示し、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数を示す。−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−及び−(B−O)−の順序は、何れがビスフェニル基側であってもよい。)
で表される光重合性不飽和化合物を含有する、感光性樹脂積層体。
[2] 該酸化防止剤が、下記一般式(III):
【化3】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数10〜30のアルキル基を示す。)
で表される化合物である、[1]に記載の感光性樹脂積層体。
[3] 該フェノール当量が2.0×10-3以下である、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂積層体。
[4] 該保護フィルムがポリエチレンフィルムである、[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂積層体。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する方法であって、
該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、
該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、
該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、
を含む、レジストパターンの形成方法。
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いて導体パターンを製造する方法であって、
該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、
該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、
該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程と、
を含む、導体パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の酸化防止剤の含有量が1ppmより多く3000ppm以下である保護フィルムを使用し、且つ特定の光重合性不飽和化合物を含有する感光性樹脂組成物を使用することにより、高感度で、且つホールドタイムによる感度低下(すなわち感度変化)が少なく(すなわち保存安定性に優れ)塗工直後に出荷できることによって生産性が良好な、感光性樹脂積層体を提供できる。さらに、本発明によれば、該感光性樹脂積層体を用いて、基板上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光及び現像することを含むレジストパターンの形成方法及び導体パターンの製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0018】
<感光性樹脂積層体>
一態様において、本発明は、支持体フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層と、保護フィルムとを少なくとも含む積層体であり、該保護フィルムが、下記一般式(I):
【化4】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される構造を含む酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤のフェノール当量が3.1×10-3以下であり、該保護フィルム中の該酸化防止剤の含有量が、1ppmより多く3000ppm以下であり、該感光性樹脂組成物が、下記一般式(II):
【化5】

(式中、R6及びR7は各々独立に水素又はCH3を示し、AはC24を示し、BはCH2CH(CH3)を示し、n4+n5は2〜30の整数を示し、n6+n7は0〜30の整数を示し、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数を示し、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数を示す。−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−及び−(B−O)−の順序は、何れがビスフェニル基側であってもよい。)
で表される光重合性不飽和化合物を含有する、感光性樹脂積層体を提供する。
【0019】
本発明の感光性樹脂積層体は、典型的には、支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムが、この順に積層されてなる積層体である。なお、本発明の感光性樹脂積層体は、典型的には支持体フィルムと感光性樹脂層と保護フィルムとからなるが、例えば、感光性樹脂層と支持体フィルムとの間に、感光性を有しない現像可能な1つ以上の樹脂層をさらに有してもよい。
【0020】
[支持体フィルム]
本発明の感光性樹脂積層体において用いる支持体フィルムは、感光性樹脂の支持体として機能するものであればよいが、好ましくは、平滑性が高く、露光に用いられる活性光線に対して透過性が高い有機ポリマーフィルムである。
【0021】
支持体フィルムのヘーズは、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。ヘーズが5.0以下である場合、活性光線の透過性が良好である。上記ヘーズは、ヘーズメーター(例えば、日本電色工業製のHAZE METER NDH2000)で測定される値である。
【0022】
支持体フィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、特に好ましくは、9〜16μmである。支持体フィルムとしての強度を保つという観点から、該厚みは5μm以上であることが好ましく、微細な配線を作製するために感光性樹脂層の解像性を良好に保つという観点から25μm以下であることが好ましい。本明細書で記載する厚みは、マイクロメータ(例えば、ミツトヨ製のデジマチック標準外側マイクロメータMDE−MJ)で測定される値である。
【0023】
好ましい支持体フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリメタクリル酸メチル共重合体、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン共重合体、ポリアミド、セルロース誘導体等のフィルムが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0024】
[保護フィルム]
保護フィルムとしては、平滑性が高く、支持体フィルムよりも感光性樹脂層との粘着性が低いフィルムが用いられる。保護フィルムは典型的には有機ポリマーフィルムである。
【0025】
保護フィルムの厚みは、10〜60μmであることが好ましく、特に好ましくは15〜50μmである。該厚みは、保護フィルム自体の平滑性を保つ観点から10μm以上であることが好ましく、感光性樹脂積層体を構成するフィルムとしての操作性を保つ観点から60μm以下であることが好ましい。
【0026】
保護フィルムの好ましい例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエステル、又はシリコーン処理若しくはアルキッド処理により剥離性を向上させたポリエステル;等のフィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムが一般的に用いられ、ハンドリング性とコストとの観点から、好ましくはポリエチレンフィルムが用いられる。
【0027】
上記のうち、ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン樹脂を、インフレーション成形法又はT−ダイによるキャストフィルム成形法等で押出した後、延伸処理することによってフィルム化して得ることができる。
【0028】
本発明において、保護フィルムは、下記一般式(I):
【化6】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される構造を含み且つフェノール当量が3.1×10-3以下である酸化防止剤(以下、単に酸化防止剤ということもある)を含有する。
【0029】
本発明者は、感光性樹脂層と保護フィルムとが積層されている(典型的には両者が接して積層されている)感光性樹脂積層体を製造する場合、保護フィルム中に存在する酸化防止剤が、感光性樹脂積層体製造後に時間とともに流出(ブリード)して感光性樹脂層に一部移行するのではないかと考えた。この移行により、露光時に該酸化防止剤が感光性樹脂層におけるラジカル重合を阻害して、レジストとしての本来の充分な感度を感光性樹脂層が発現しなくなることが理解できる。また、感光性樹脂積層体をロール状で保管した時に時間とともに酸化防止剤のブリード量が多くなり、感度が低下することが理解できる。従って、充分な感度を有するとともにホールドタイムによる感度変化(すなわち感度低下)が少ない感光性樹脂積層体を得るためには、保護フィルムが含有する酸化防止剤を感光性樹脂層に移行しにくくすることが必要である。本発明者は、保護フィルム中に、上記一般式(I)で表される構造を含み且つフェノール当量が3.1×10-3以下である酸化防止剤を含有させることにより、酸化防止剤の流出(ブリード)を防止できることを見出した。これにより、感度低下が少ない感光性樹脂積層体を得ることができ、感光性樹脂積層体の生産性を上げることができた。
【0030】
本発明において用いる酸化防止剤のフェノール当量は、酸化防止剤の流出(ブリード)防止の観点から、3.1×10-3以下であり、好ましくは、2.0×10-3以下である。また、該フェノール当量の下限としては、酸化防止剤としての効力及び分散性の観点から、4.0×10-4以上が好ましく、1.0×10-3以上がさらに好ましく、1.5×10-3以上が最も好ましい。フェノール当量が上記範囲内である酸化防止剤としては、長鎖のアルキル鎖を有する化合物を例示でき、該化合物は酸化防止剤の流出(ブリード)の防止の点で特に有利である。
【0031】
ここでいうフェノール当量とは、上記一般式(I)で表される構造(すなわちフェニル基又はアルキル置換フェニル基)の数を酸化防止剤の分子量で割った値を意味する。フェノール当量を本発明の所定の範囲内とすることによって酸化防止剤のブリードが防止できる理由としては、酸化防止剤が長鎖のアルキル鎖を含むことにより、酸化防止剤と保護フィルムの構成ポリマー(例えばポリオレフィン)との親和性が向上すること、又は、長鎖のアルキル鎖の嵩高さによって酸化防止剤の感光性樹脂層への移行速度が極端に低下すること、又はその両方が同時に生じていることが考えられる。なお、フェノール当量の算出の際、上記一般式(I)で表される構造の数は、フェノールが4−ニトロアニリン及び亜硝酸と反応して発色することを利用し、550nm吸光度から含有量を定量する等の方法で確認され、酸化防止剤の分子量は、例えばガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)で確認される。
【0032】
上記一般式(I)で表される構造の特に好ましい例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(イルガノックス1076)、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9−側鎖アルキルエステル(イルガノックス)1135等が挙げられる。
【0033】
本発明において用いる酸化防止剤の好ましい例としては、イルガノックス1076、イルガノックス1135、イルガノックス565及びイルガノックス259(以上、スペシャリティケミカルズ)、並びにスミライザーGP及びスミライザーGS、等が挙げられる。
【0034】
本発明において用いる酸化防止剤は、下記一般式(III):
【化7】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数10〜30のアルキル基を示す。)
で表される化合物であることが、ホールドタイムによる感度低下抑制の観点から好ましい。R3の炭素数は、より好ましくは、15〜25である。
【0035】
保護フィルム中の酸化防止剤の含有量は、1ppmより多く、好ましくは180ppmより多い。該含有量が1ppmより多いことにより、熱による原料変成が起こりにくくなるため、保護フィルム製膜時のポリマー混練工程での加熱温度及び撹拌力を低下させることなく保護フィルムを生産性よく製造できる。該含有量は、より好ましくは300ppm以上、さらに好ましくは400ppm以上である。保護フィルム中の酸化防止剤の含有量の上限は、感光性樹脂の感度変化防止の観点から3000ppm以下であり、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
【0036】
保護フィルム中の酸化防止剤の含有量の制御は、保護フィルム作製時において、例えば、保護フィルムの構成ポリマー(例えばポリオレフィン樹脂)に対する酸化防止剤の仕込み量の制御によって行われる。保護フィルム中の酸化防止剤の上記含有量は、仕込み量から換算される値である。なお、保護フィルム中の酸化防止剤の上記含有量は、例えばGC−MS法によって直接確認することもできる。
【0037】
なお、本発明においては、高感度で且つホールドタイムによる感度低下が少ないという感光性樹脂積層体の性能を阻害しない範囲で、上記一般式(I)で表される構造を含み且つフェノール当量が3.1×10-3以下である酸化防止剤に加えて、他の種類の追加の酸化防止剤を適宜併用することもできる。使用できる追加の酸化防止剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0038】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、アルキル化フェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオプロピオネート。
【0039】
また、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール等も挙げられる。
【0040】
また、ヒドラジン系酸化防止剤として、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等も使用できる。また他にも、従来公知のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、重金属不活性化剤等が適用できる。
【0041】
上述のように、保護フィルムが含有する追加の酸化防止剤は、保護フィルム成形時に効果を奏し、且つ感光性樹脂組成物の光ラジカル重合を阻害しないことが好ましい。保護フィルム中の追加の酸化防止剤の好適な含有量は180ppm以下である。
【0042】
一方、感光性樹脂層の高感度化は、感光性樹脂組成物中の光重合開始剤の種類及び配合量からのアプローチからでも可能であるが、例えば、光重合開始剤の配合量を多くすれば保存安定性が悪化する。ホールドタイムによる感度の経時変化を抑制するという観点では、感光性樹脂層に移行しにくい酸化防止剤を使用した特定の保護フィルムを感光性樹脂積層体の材料として使用することは極めて有用である。これによって感光性樹脂積層体の感度を上げることができるからである。
【0043】
保護フィルムは、本発明において用いる酸化防止剤、及び上述した追加の酸化防止剤の他に、添加剤として、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、充填剤等をさらに含有してもよい。これらの添加剤は、例えば、保護フィルム作製時に原料中に適宜混合することによって保護フィルム中に含有させることができる。
【0044】
[感光性樹脂層]
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物からなる層である。本発明において、感光性樹脂組成物は、下記一般式(II):
【化8】

(式中、R6及びR7は各々独立に水素又はCH3を示し、AはC24を示し、BはCH2CH(CH3)を示し、n4+n5は2〜30の整数を示し、n6+n7は0〜30の整数を示し、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数を示し、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数を示す。−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−及び−(B−O)−の順序は、何れがビスフェニル基側であってもよい。)
で表される光重合性不飽和化合物を含有する。
【0045】
上記一般式(II)で表される化合物においては、感度の観点から、n4+n5及びn6+n7がそれぞれ30以下である。
【0046】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキサイドと平均6モルのエチレンオキサイドとを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレ−ト(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、及びビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−200)等が挙げられる。
【0047】
感光性樹脂層の保存安定性は、感光性樹脂組成物が上記一般式(II)で表される光重合性不飽和化合物を含有することによって良好となる。よって、本発明において、感光性樹脂層に移行しにくい酸化防止剤を使用した特定の保護フィルムと、上記一般式(II)で表される光重合性不飽和化合物を含有する感光性樹脂組成物で形成された感光性樹脂層とを併用することによって、感光性樹脂積層体の感度を上げることができる。従って、これらの特定の保護フィルム及び感光性樹脂組成物を感光性樹脂積層体の材料として用いることは極めて有用である。
【0048】
上記一般式(II)で表される光重合性不飽和化合物の、感光性樹脂組成物中の含有量は、好ましくは0.1〜70質量%の範囲である。該含有量は、レジストパターンの解像度の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、感光性樹脂層を硬化させて得られる硬化膜の柔軟性の観点から70質量%以下であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは5〜40質量%である。
【0049】
感光性樹脂組成物としては、好ましくは、(a)カルボキシル基の酸当量が100〜600であり、且つ重量平均分子量が5000〜500000であるバインダー用樹脂(以下、(a)バインダー用樹脂ともいう)、(b)光重合性不飽和化合物、並びに(c)光重合開始剤、を含有する組成物を使用できる。上記組成物において、(b)光重合性不飽和化合物は、上記一般式(II)で表される光重合性不飽和化合物を含有し、より好ましくは上記一般式(II)で表される光重合性不飽和化合物からなる。上記組成物は、レジストパターン形成性能という点で有利である。
【0050】
((a)バインダー用樹脂)
(a)バインダー用樹脂は、カルボキシル基の酸当量が100〜600となる量でカルボキシル基を含むことが好ましい。カルボキシル基の酸当量は、より好ましくは300〜400である。本明細書で記載するカルボキシル基の酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する樹脂(例えば線状重合体)の質量(グラム)を意味する。(a)バインダー用樹脂中のカルボキシル基は、感光性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性及び剥離性を与えるために必要である。該酸当量は、現像耐性、解像性及び密着性の観点から100以上であることが好ましく、現像性及び剥離性の観点から600以下であることが好ましい。
【0051】
(a)バインダー用樹脂の重量平均分子量は、5000〜500000であることが好ましい。該重量平均分子量は、より好ましくは10000〜200000である。(a)バインダー用樹脂の重量平均分子量は、解像性の観点から500000以下であることが好ましく、エッジフューズの観点から5000以上であることが好ましい。
【0052】
なお、酸当量は、自動滴定装置(例えば、平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555))を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを用いて電位差滴定法により測定される。
【0053】
また、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用))により、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求められる。
【0054】
(a)バインダー用樹脂は、典型的には、下記の第一の単量体の重合、又は下記の第一の単量体と第二の単量体との共重合によって得ることができる。第一の単量体及び第二の単量体の各々は、1種又は2種以上で使用できる。
【0055】
第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を1個有するカルボン酸又はカルボン酸無水物である。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。
【0056】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を1個有し、感光性樹脂層の現像性、エッチング及びめっきの工程での耐性、感光性樹脂層を硬化させて形成した硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。また、高解像度の点で、フェニル基を有するビニル化合物(例えば、スチレン)が好ましい。
【0057】
(a)バインダー用樹脂は、上記単量体(1種、又は2種以上の混合物)を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈して得た溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより合成することが好ましい。該混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、上記のような溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合又は乳化重合を用いてもよい。
【0058】
感光性樹脂組成物中の(a)バインダー用樹脂の含有量は、好ましくは20〜90質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。露光及び現像によって形成されるレジストパターンが、レジストとしての特性、例えば、テンティング、エッチング及び各種めっきの工程において充分な耐性等を有するという観点から、上記含有量は20〜90質量%であることが好ましい。
【0059】
((b)光重合性不飽和化合物)
(b)光重合性不飽和化合物としては、光重合性不飽和基,例えば(メタ)アクリル基を有する化合物を好ましく使用できる。使用できる(b)光重合性不飽和化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルキシ)プロピルフタレート、フェノキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
また、(b)光重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル基を有するウレタン化合物も挙げられる。該ウレタン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基とを有する化合物(例えば2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレート等)とのウレタン化合物等が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマ−PP1000)との反応物がある。
【0061】
(b)光重合性不飽和化合物は、下記一般式(IV):
【化9】

(式中、R4及びR5は各々独立に水素又はCH3を示し、n1、n2及びn3は各々独立に3〜20の整数を示す。)
で表される化合物を含むことが好ましい。このような化合物は、DFRのホールドタイムによる感度低下が少ないという観点から好ましい。
【0062】
上記一般式(II)及び(IV)で表される化合物は、それぞれ、2種以上併用してもよい。また、上記一般式(II)で表される化合物に、上記一般式(IV)で表される化合物及び/又は前述したその他の光重合性不飽和化合物を1種以上組み合わせてもよい。
【0063】
上記一般式(IV)で表される化合物においては、沸点及び臭気の観点から、n1、n2及びn3が各々独立に3以上であることが好ましい。また、単位質量あたりの光活性部位の濃度に起因する感度の観点から、n1、n2及びn3が各々独立に20以下であることが好ましい。
【0064】
上記一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、例えば、平均12モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均3モル付加したグリコールのジメタクリレートが好ましいものとして挙げられる。
【0065】
感光性樹脂組成物中の(b)光重合性不飽和化合物の含有量は、好ましくは3〜70質量%の範囲である。該含有量は、感度の観点から3質量%以上であることが好ましく、エッジフューズの観点から70質量%以下であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜55質量%である。
【0066】
((c)光重合開始剤)
(c)光重合開始剤としては、光重合性樹脂の合成において一般的に用いられる光重合開始剤を使用できる。(c)光重合開始剤は、下記一般式(V):
【化10】

(式中、X、Y及びZは各々独立に水素、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン基を示し、p、q及びrは各々独立に1〜5の整数を示す。)で表される光重合開始剤を含むことが、高感度の観点から好ましい。
【0067】
上記一般式(V)で表される光重合開始剤においては、2個のロフィン基を結合する共有結合は、1,1’−、1,2’−、1,4’−、2,2’−、2,4’−又は4,4’−位についているが、合成の容易さの観点から、1,2’−位についている化合物が好ましい。
【0068】
感光性樹脂組成物中の、上記一般式(V)で表される光重合開始剤の含有量としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、さらに好ましくは1.5〜4質量%である。上記含有量が0.1質量%以上である場合、画像形成性が良好であり、20質量%以下である場合、現像時の耐凝集性が良好である。
【0069】
2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(p−メトシキフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられるが、特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が保存安定性の観点から好ましい。
【0070】
(c)光重合開始剤として、上記一般式(V)で表される光重合開始剤と、p−アミノフェニルケトンとを併用することは、感光性樹脂組成物の感度、解像度及び密着性の観点から好ましい。p−アミノフェニルケトンとしては、例えば、p−アミノベンゾフェノン、p−ブチルアミノフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ビス(エチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、p,p’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0071】
また、(c)光重合開始剤としては、上記で示された化合物の1種以上とともに又はこれに代えて、他の光重合開始剤を使用することも可能である。他の光重合開始剤としては、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され、樹脂原料の重合を開始させる任意の化合物を使用できる。
【0072】
他の光重合開始剤としては、例えば、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン化合物;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のケタール類;等が挙げられる。
【0073】
また、例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類と、ジメチルアミノ安息香酸アルキルエステル化合物等の三級アミン化合物との組み合わせも挙げられる。
【0074】
また、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等も挙げられる。また、N−アリール−α−アミノ酸化合物を用いることも可能である。これらの中では、N−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0075】
また、ピラゾリン系化合物、アクリドン系化合物、クマリン系化合物、アントラセン化合物等を使用してもよい。
【0076】
ピラゾリン系化合物としては、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチニル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(2,4−ジブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−n−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−n−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(3,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、が挙げられる。このなかでも1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンが好ましい。
【0077】
アクリドン系化合物としては、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン、2−クロロ−10−ブチルアクリドン、10−N−ブチル−2−クロロアクリドン等が挙げられる。
【0078】
クマリン系化合物としては、クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−メチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、7−アミノシクロペンタ[c]クマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジエチルアミノクマリン、4,6−ジエチル−7−ジメチルアミノクマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられる。
【0079】
アントラセン化合物としては、アントラセン、9−メチルアントラセン、9−エチルアントラセン、9−プロピルアントラセン、9−ブチルアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン−2−カルボン酸化合物(特開2008−100973号公報記載)等が挙げられる。
【0080】
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。該含有量が0.1質量%未満であると感度が低い傾向がある。また、該含有量が20質量%を超えると、露光時にフォトマスクを通した光の回折による感光性樹脂層のかぶりが発生しやすくなり、その結果として解像性が低くなる傾向がある。
【0081】
感光性樹脂組成物は、染料、顔料等の着色物質を含有できる。使用できる着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。
【0082】
感光性樹脂組成物は、光照射により発色する発色系染料を含有できる。使用できる発色系染料としては、例えば、ロイコ染料又はフルオラン染料と、ハロゲン化合物との組み合わせが挙げられる。
【0083】
ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリ−ン]等が挙げられる。
【0084】
ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2、3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。
【0085】
トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0086】
このような発色系染料の中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせ、及び、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。
【0087】
感光性樹脂組成物の熱安定性及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物に下記のラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類等のような安定剤を含有させることが好ましい。
【0088】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジフェニルニトロソアミン、ペンタエリスリトール3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸テトラエステル(エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバスペシャリティーケミカルズ(株)製 IRGANOX245))等が挙げられる。
【0089】
他の安定剤として、ビスフェノールAの両側にそれぞれ平均1モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールの両側にさらにプロピレンオキシドを付加した化合物が挙げられる。
【0090】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、及びビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0091】
また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0092】
上記した安定剤の感光性樹脂組成物中の合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。この量は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、感度を維持するという観点から3質量%以下が好ましい。
【0093】
また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有できる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、及び、p−トルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
なお典型的な態様において、感光性樹脂組成物に適当な溶媒を添加して使用に供する。
【0094】
感光性樹脂層の膜厚は、感度が良好であるという効果の観点から0.1〜40μmであることが好ましい。上記の効果がより良好であるという観点から、該膜厚は0.1〜15μmであることがより好ましく、0.1〜5μmであることがさらに好ましい。
【0095】
[感光性樹脂積層体の製造]
本発明の感光性樹脂積層体は、例えば以下のような方法で製造できる。上記感光性樹脂組成物をメチルエチルケトン等の適当な溶媒に溶解し、得られた感光性樹脂組成物溶液を前述の支持体フィルム上に塗工し、乾燥工程によって溶媒を除去して、支持体フィルム上に感光性樹脂層を積層する。次に、該感光性樹脂層の支持体フィルム積層側の表面とは反対側の表面に、ラミネーターによる熱圧着等の方法で、前述の保護フィルムを積層する。以上により、支持体フィルム、感光性樹脂層及び保護フィルムの順の積層構造を有する感光性樹脂積層体が得られる。前述のように、支持体フィルムよりも保護フィルムの方が感光性樹脂層との密着力が充分小さく、保護フィルムを感光性樹脂層から容易に剥離できることが保護フィルムとしての重要な特性である。
【0096】
<レジストパターンの形成方法>
別の態様において、本発明は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する方法であって、該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、を含む、レジストパターンの形成方法を提供する。以下に、本発明のレジストパターンの形成方法についての具体的な例を説明する。
【0097】
(A)ラミネート工程:
本工程においては、感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層と基板の表面(例えば銅面)とが接着するように両者を重ね、これを上下1対のホットロールの間に通して両者をラミネートすることにより、感光性樹脂層と基板とを圧着させる。これにより、基板上に感光性樹脂層を形成する。
【0098】
上記のホットロールの温度は50〜120℃、ラミネート速度は0.1〜6.0m/分であることが好ましい。上下1対のホットロールは、エアーシリンダー又はスプリングによりピンチされている。ロール圧力は、ホットロールの単位長さ当たりの圧力として、0.1〜1.0MPa/cmが好ましく、0.2〜0.5MPa/cmがより好ましい。
【0099】
ラミネーターとしては、1対のラミネートロールを用いる1段式ラミネーター、2対以上のラミネートロールを用いる多段式ラミネーター、ラミネートする部分を容器で覆って真空ポンプで減圧又は真空にする真空ラミネーター等が使用される。
【0100】
また、ラミネート前に基板と感光性樹脂層との密着性を高めるために種々の処理(前処理)をしてもよい。例えば、物理的に基板表面を荒らす方法として、バフロール研磨が挙げられる。また、銅を腐食させる能力を持つ酸性液を前処理液として使用し、必要に応じて25〜50℃に加温した該前処理液で、浸漬法又はスプレー法によって基板を処理する。
【0101】
前処理液としては、硫酸と過酸化水素水との混合液、過硫酸アンモニウム又は過硫酸ナトリウムの水溶液、過硫酸アンモニウム又は過硫酸ナトリウムの水溶液と硫酸との混合液、硝酸と硝酸金属塩と有機酸との混合物水溶液、酢酸金属塩と有機酸との混合物水溶液等が挙げられる。該有機酸としては、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、アクリル酸、グリコール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0102】
化学研磨剤、ソフトエッチング剤又は表面粗化剤として市販されている薬液であって、上記成分を含むものもまた好ましく使用できる。例としては、CPE−900及びCPE−500(いずれも三菱ガス化学製、商品名)、並びにCZ−8100及びCB−801(いずれもメック製、商品名)が挙げられる。
【0103】
(B)露光工程:
本工程においては、基板上に形成された感光性樹脂層を露光する。好ましくは、所望の導体パターンが描画されたフォトマスクを支持体フィルム上に微小なギャップを介して乗せるか、又は該支持体フィルムに密着させた状態で、紫外線光源を用いて露光する。また、投影レンズを用いてフォトマスク像を感光性樹脂層に結像させて露光してもよい。フォトマスク像を投影して感光性樹脂層を露光する場合、支持体フィルムを感光性樹脂層から剥離して感光性樹脂層を露光してもよいし、支持体フィルムがついたまま感光性樹脂層を露光してもよい。紫外線光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等が挙げられる。より微細なレジストパターンを得るためには平行光光源を用いることが好ましい。
【0104】
(C)現像工程:
本工程においては、露光後の感光性樹脂層を現像することによって基板上にレジストパターンを形成する。露光時に支持体フィルムを感光性樹脂層から剥離していない場合は、支持体フィルムを剥離する。その後、アルカリ現像液を用いて感光性樹脂層を現像する。具体的には、感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂組成物からなる場合は未露光部分を溶解又は分散除去し、感光性樹脂層がポジ型感光性樹脂組成物からなる場合は露光部分を溶解又は分散除去する。これによりレジストパターンが基板上に形成される。
【0105】
現像工程で用いられるアルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が挙げられる。最も一般的には、0.2〜2.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液が用いられる。現像後の水洗水は、レジストパターンの密着性、解像度、及び裾引き防止の観点から脱イオン化していない水が好ましい。例えば水道水が好ましく挙げられる。以上の工程により、所望のレジストパターンを形成することができる。
【0106】
<導体パターンの製造方法>
別の態様において、本発明は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いて導体パターンを製造する方法であって、該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程と、を含む、導体パターンの製造方法を提供する。導体パターンの製造方法において、ラミネート工程、露光工程及び現像工程は前述したレジストパターンの形成方法におけるこれらの工程と同様に実施できる。本態様においては、レジストパターン形成後、さらに以下の工程を経ることにより、導体パターンを製造できる。
【0107】
(D)導体パターン形成工程:
本工程においては、前述の現像工程によって基板上に形成されたレジストパターンを残した状態で、レジストパターンによって覆われていない部分の基板表面(例えば銅面)をエッチング液でエッチングするか、又はレジストパターンによって覆われていない部分の基板表面(例えば銅面)に銅、はんだ、ニッケル又は錫等のめっき処理を行う。これにより導体パターンが形成される。
【0108】
剥離工程:
なお、本発明の導体パターンの製造方法によって導体パターンを形成した後、典型的には、レジストパターンをアルカリ剥離液によって基板から除去する剥離工程を行う。剥離工程で用いられるアルカリ水溶液としては、現像で用いたアルカリ水溶液よりもさらに強いアルカリ性のアルカリ水溶液を使用する。剥離用のアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミン化合物等の水溶液が挙げられる。最も一般的には1〜5質量%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液が用いられる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明の実施の形態の例をさらに詳しく説明する。表1に、各々の実施例及び比較例の保護フィルムを構成する樹脂の種類、酸化防止剤の種類、酸化防止剤のフェノール当量、保護フィルム中の酸化防止剤の含有量、及び感光性樹脂組成物の配合量を示す。但し、表1に示す配合量のうちB−1〜B−4に関しては溶媒を含む溶液の量として記載している。また表1において略号で表した、感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称を表2に示す。なお表1中、Irg1076とは、イルガノックス1076(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート BASF社製)であり、BHTとはヨシノックスBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール 吉富ファインケミカル社製)である。
【0110】
1)感光性樹脂積層体の製造
表1に示す成分の混合溶液を支持体フィルム上にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で1分間乾燥して、10μm厚みの感光性樹脂層を形成する。さらに感光性樹脂層の上に保護フィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得る。支持体フィルムには、R340G(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、16μm厚み)を使用する。また、保護フィルムには22μm厚みの高圧法低密度ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ株式会社製、LS2340S)、又は20μm厚みのポリプロピレンフィルムを用いる。
【0111】
2)配線板作製
(整面)
35μm厚の圧延銅箔を積層した銅張積層板を基板として用い、該基板の表面を湿式バフロール研磨(スリーエム(株)製、商品名スコッチブライト(登録商標)#600、2連)する。
(ラミネート)
感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥しながらラミネーターAL−70(旭化成製、商品名)を用いて感光性樹脂層を基板上にラミネートする。ラミネート条件は、ラミネート速度:1.5m/分、ラミネートロール温度:105℃、ラミネート圧力:0.35MPa/cmとする。
(露光)
マスクフィルムを通して、超高圧水銀ランプ(株式会社オーク製作所製HMW−201KB)により、表3で示される27段ステップタブレットが13段になる露光量で感光性樹脂層を露光する。
(現像)
支持体フィルムを剥離した後、30℃の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて最小現像時間の2倍の時間期間にわたり現像を行い、未露光部分を溶解除去することによって感光性樹脂層を現像する。
[フェノール当量]
使用した保護フィルムが含有する酸化防止剤(公称の酸化防止剤種類)について、上記一般式(I)で表される構造の数を分子量で除して算出する。
[酸化防止剤含有量]
使用した保護フィルムにおける酸化防止剤の仕込み量を、酸化防止剤を除く保護フィルムの原料の仕込み量で除した値である。
【0112】
[感度試験]
表1に示す保護フィルムを張り合わせた状態の感光性樹脂積層体を、保護フィルムを剥離しながら銅張積層板にラミネ−トし、得られた積層体を、27段ステップタブレットを通して露光し、現像する。得られた硬化レジストの最高の残膜段数を感度とする。ここで用いられる27段ステップタブレットとは、種々の濃さの長方形のマスクが並んでおり、一段あたり光学濃度が0.05ずつ増えているものである。表3に、使用されるステップタブレットの段数、光学濃度、及び光透過率を示す。
[ホールドタイム感度試験]
表1に示す保護フィルムを張り合わせた状態の感光性樹脂積層体を23℃、50%の環境下で保存し、2週間後に上記感度試験と同様の方法にて感度を評価する。
上記感度試験における感度と上記ホールドタイム感度試験における感度との差を感度差とする。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、プリント配線板、BGA及びCSP等の半導体パッケージ用基板、リードフレーム用基板並びにCOF用配線板等の製造用に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体フィルムと、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層と、保護フィルムとを少なくとも含む積層体であり、
該保護フィルムが、下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される構造を含む酸化防止剤を含有し、
該酸化防止剤のフェノール当量が3.1×10-3以下であり、
該保護フィルム中の該酸化防止剤の含有量が、1ppmより多く3000ppm以下であり、
該感光性樹脂組成物が、下記一般式(II):
【化2】

(式中、R6及びR7は各々独立に水素又はCH3を示し、AはC24を示し、BはCH2CH(CH3)を示し、n4+n5は2〜30の整数を示し、n6+n7は0〜30の整数を示し、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数を示し、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数を示す。−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−及び−(B−O)−の順序は、何れがビスフェニル基側であってもよい。)
で表される光重合性不飽和化合物を含有する、感光性樹脂積層体。
【請求項2】
該酸化防止剤が、下記一般式(III):
【化3】

(式中、R1及びR2は各々独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は炭素数10〜30のアルキル基を示す。)
で表される化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項3】
該フェノール当量が2.0×10-3以下である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項4】
該保護フィルムがポリエチレンフィルムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する方法であって、
該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、
該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、
該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、
を含む、レジストパターンの形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂積層体を用いて導体パターンを製造する方法であって、
該保護フィルムを剥離しながら基板上に該感光性樹脂層をラミネートすることにより該基板上に該感光性樹脂層を形成するラミネート工程と、
該基板上に形成された該感光性樹脂層を露光する露光工程と、
該露光後の感光性樹脂層を現像することによって該基板上にレジストパターンを形成する現像工程と、
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程と、
を含む、導体パターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−88388(P2012−88388A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232741(P2010−232741)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】