説明

感光性樹脂組成物、これを用いたフォトレジストフィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】波長350nm〜410nmの光線に対して非常に高感度であり、解像性、密着性、露光後の焼き出し性に優れるとともに、安定したスループットが得られ、更に溶剤に対する溶解性が良好で、レジストに析出物が発生し難い感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)下記一般式(1)等で表されるN,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体を含有する感光性樹脂組成物。


(但し、式中のR1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、特に波長350〜410nmの光線による直接描画露光法に好適に用いられる感光性樹脂組成物、これを用いたフォトレジストフィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ用配線、液晶ディスプレイ用配線、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ等の微細な配線や回路が基板上に形成されたプリント配線板は、一般に、いわゆるフォトリソグラフィによって絶縁性のレジストパターンを形成する工程を経て製造されている。フォトリソグラフィでは、例えば、基板上に設けられた感光性樹脂組成物層に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線等の光線を照射して露光した後、露光部と未露光部の現像液に対する溶解性の差を利用して、感光性樹脂組成物層を現像してレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして基板をめっき加工、或いはエッチング加工等した後に、レジストパターンを除去することにより、基板上に配線や回路の導体パターンを形成する。
【0003】
一方、レジストパターン形成の方法として、フォトマスクを用いることなく、パターンのデジタルデータを直接レジストに描画する、いわゆる直接描画露光法が注目されている。この直接描画露光法は、フォトマスクが不要であるので、少量多品種用途、大型基板製造、短納期などに適した描画手法である。直接描画露光法において、光源として可視光レーザーを用いる露光方法もあるが、その場合には、可視光に感度を有するレジストを暗室または赤色灯下で取り扱う必要があるので、作業効率の点で問題があった。
【0004】
上記の点から、近年、短波長域の可視光を用いた直接描画露光法、例えば水銀灯光源光(主波長365nm)、固体レーザー光源光(YAGレーザー第三高調波、主波長355nm)、窒化ガリウム系半導体青色レーザー光源光(主波長405nm)等を用いた直接描画露光法が提案されている。
【0005】
しかし、従来の感光性樹脂組成物やフォトレジストフィルムは、波長365nmの光線を中心とした水銀灯光源の全波長露光に対して設計されているので、例えば、水銀灯光源光のうち波長365nm以下の光線をフィルタ等で99.5%以上カットした活性光線や、半導体レーザーの波長405nmの光線による露光では、感光性樹脂組成物やフォトレジストフィルムの感度が低くなる。したがって、スループット(単位時間当たりの生産性)が低く、十分な解像度、及び良好なレジスト形状を得ることが困難であった。そこで、直接描画に適用可能な感光性樹脂組成物が下記特許文献1〜3に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−208561号公報
【特許文献2】特開2006−154740号公報
【特許文献3】特開2009−58537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2に記載されている増感剤は、波長405nmの光で露光するには有効ではあるものの、波長355nm〜365nmの光には十分な感度を得られないという問題があった。また、上記特許文献3に記載されているピラゾリン化合物は、波長350nm〜410nmの全波長範囲に対して感度を有しているものの、依然としてまだ十分とは言えず、また、波長355〜365nmにおける吸光度と波長405nmにおける吸光度とで大きな差があるので(特許文献3の表3を参照)、波長355〜365nmの光を用いる場合と波長405nmの光を用いる場合とで、硬化に要する露光量(感度)に大きな差が生じ(特許文献3の表4〜6を参照)、安定したスループットを得ることが困難であった。
【0008】
また、感度を向上させるために、増感剤の含有量を増やす方法もあるが、増感剤の溶剤に対する溶解性が低い場合、感光性樹脂組成物を支持フィルムに塗布・乾燥した後に増感剤が析出するといった現象が生じることがある。
【0009】
そこで、本発明は、波長350〜410nmの光線、例えばYAG固体レーザー第三高調波(主波長355nm)、水銀灯光源光(主波長365nm)及び青色半導体レーザー光源光(主波長405nm)のいずれの光線による描画に対して、十分な感度及び解像度、安定したスループットを得ることができ、且つ溶剤に対する溶解性が良好である感光性樹脂組成物、これを用いたフォトレジストフィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、最大波長が350nm〜410nmの範囲内にある活性光源を用いて硬化される感光性樹脂組成物に、特定の光増感剤を含有させることで、波長350nm〜410nmの光線に対して非常に高感度であり、解像性、密着性、露光後の焼き出し性に優れるとともに、安定したスループットが得られ、更に溶剤に対する溶解性が良好で、この組成物から得られるレジストに析出物が発生し難いことから、上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)下記一般式(1)または(2)で表されるN,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体を含有する感光性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
【化1】

(但し、式中のR1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)
【0013】
【化2】

(但し、式中のR5及びR6はそれぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)
【0014】
また、本発明は、支持体、及び本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含み、前記感光性樹脂組成物層が前記支持体上に形成されたフォトレジストフィルムに関するものである。
【0015】
また、本発明は、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層すること、及び波長350nm〜410nmの光線を前記感光性樹脂組成物層の所定部に照射した後、前記所定部以外の部分を現像除去することを含むレジストパターンの形成方法にも関するものである。
【0016】
また、本発明は、本発明のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンが形成された前記回路形成用基板をエッチング又はめっきするプリント配線板の製造方法にも関するものである。
【0017】
なお、本発明における「プリント配線板」は、回路及び/又は配線を構成する導体パターンが形成された基板であり、印刷によるマスキングを経て製造された配線板に限定されない。また、「プリント配線板」は、絶縁基板上に単層の導体パターンが形成されたものに限定されず、複数層の導体パターンがスルーホールを介して接続された異方導電性の多層プリント配線板も含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、増感剤として(D)上記一般式(1)または(2)で表されるN,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体(以下、(D)化合物ともいう。)を用いているため、波長350nm〜410nmの光線に対して非常に高感度であり、且つ解像性、密着性、露光後の焼き出し性に優れる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、波長355〜365nmの光を用いる場合と波長405nmの光を用いる場合とで、硬化に要する露光量(感度)の差が小さいので、安定したスループットが得られる。さらに、増感剤としての(D)化合物は感光性樹脂組成物に使用される溶剤に対して優れた溶解性を示すので、本発明の感光性樹脂組成物によれば、増感剤の析出の生じ難い良好な感光性樹脂組成物の溶液を得ることができる。
溶解性の低い化合物を用いて感光性樹脂組成物層を形成する場合では、レジストパターンに析出物が生じやすく、配線パターン形成に際して断線、短絡等の欠陥を生じる可能性が高くなり、特に、増感剤の析出物が発生した場合、露光光が透過し難いため、析出物の下部の感光性樹脂組成物の光硬化が妨げられ、パターンの抉れなどの不具合を生じるとともに、露光感度も著しく損なわれてしまうおそれがある。すなわち、感光性樹脂組成物に含まれる化合物、特に増感剤は、感光性樹脂組成物に使用される有機溶剤に対して高い溶解性を有することが望まれるのである。したがって、本発明の感光性樹脂組成物を用いた本発明のフォトレジストフィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法によれば、波長350nm〜410nmの光線による露光によっても、解像性、密着性、露光後の焼き出し性に優れるとともに、安定したスループットが得られ、更に増感剤の析出の生じ難い良好なレジスト形状を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
【0020】
〔感光性樹脂組成物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)後述の一般式(1)または(2)で表されるN,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体を含有する。
【0021】
(A)バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系重合体、スチレン系重合体、エポキシ系重合体、アミド系重合体、アミドエポキシ系重合体、アルキド系重合体、フェノール系重合体等が挙げられ、これら重合体のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら重合体の中でも、カルボキシル基含有ポリマーが好ましい。
【0022】
カルボキシル基含有ポリマーとしては、アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、エポキシ系重合体等が例示され、中でも(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、これにエチレン性不飽和カルボン酸及び必要に応じてその他の共重合可能なモノマーを共重合させてなるアクリル系重合体を用いることが好ましく、以下、かかるアクリル系重合体について説明する。但し、本発明で用いられるアクリル系重合体は、以下に限定されるものではない。なお、(メタ)アクリルはアクリル又はそれに対応するメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロはアクリロ又はそれに対応するメタクリロを意味する。
ここで(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするカルボキシル基含有ポリマーとは、(メタ)アクリル酸エステルをもっとも多く含む共重合体であり、全共重合成分に対して、(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上、特には60重量%以上、更には70重量%以上含有することが好ましい。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜20、好ましくは1〜10の脂肪族(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもでき、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0025】
上記その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルシクロヘキサン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
かかるアクリル系重合体については、重量平均分子量が0.5万〜20万が好ましく、更には1万〜10万が好ましく、酸価は100〜300mgKOH/gが好ましく、更には120〜250mgKOH/gが好ましい。
【0027】
かかる重量平均分子量が低すぎると硬化後の感光性樹脂組成物が脆くなることがあり、逆に高すぎると解像度やレジスト剥離性が低下する傾向にある。また、上記酸価が小さすぎると解像度やレジスト剥離性が低下し、逆に大きすぎると細線密着性が低下する傾向にある。
【0028】
上記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は30〜150℃の範囲が好ましく、更には60〜120℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が低すぎると感光性樹脂組成物が流動し易く、フォトレジストフィルムとしてロール状とする時にエッジフュージョンを引き起す傾向にあり、一方、ガラス転移温度が高すぎるとフォトレジストフィルムとして用いた時の基板表面の凹凸への追従性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明で用いられる(B)光重合性化合物としては、特に限定されず、重合性不飽和基を1個有する単量体、重合性不飽和基を2個有する単量体、重合性不飽和基を3個以上有する単量体が挙げられ、これら単量体のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
重合性不飽和基を1個有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
重合性不飽和基を2個有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、オキシエチレン基含有ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、オキシプロピレン基含有ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、オキシエチレン基・オキシプロピレン基含有ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも特に、オキシエチレン基含有ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0032】
重合性不飽和基を3個以上有する単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
(B)光重合性化合物の含有量は、(A)バインダーポリマー100重量部に対して、10〜300重量部、特に40〜200重量部、更に65〜150重量部の範囲から選ぶことが望ましい。(B)光重合性化合物の過少は硬化不良、可撓性の低下、現像速度の遅延を招く傾向にあり、(B)光重合性化合物の過多は粘着性の増大、コールドフロー、硬化レジストの剥離速度低下を招く傾向にある。
【0034】
本発明で用いられる(C)光重合開始剤としては、例えば、(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体、(C2)N−アリールグリシン、(C3)アルキルアミノベンゾフェノン、(C4)アクリジン誘導体、ジアミノアントラキノン等のアントラキノン誘導体、三酢酸リボフラビン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン誘導体、アルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、トリアジン誘導体、クマリン6等のクマリン誘導体、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、トリビフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリアントリルホスフィン、トリフェナントリルホスフィン等のトリアリールホスフィン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、少なくとも(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体を含有させたり、N−アリールグリシン及びトリアリールホスフィンから選ばれる少なくとも一方を更に含有させたりすることができる。
【0035】
(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体としては、例えば、2,2′−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)フェニルビスイミダゾール、2,2′−ビス(2,5−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(4−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(2,3−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5−ビス(3−メトキシフェニル)−4′,5′−ジフェニルビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−4′,5′−ジフェニルビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4′,5,5′−トリフェニルビスイミダゾール等が挙げられ、中でも2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′,4,4′−テトラキス(2−クロロフェニル)−5,5′−ビス(2,3−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4′,5,5′−トリフェニルビスイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビスイミダゾールが好適であり、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(C2)N−アリールグリシンとしては、例えば、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンブチルエステル、N−p−メチルフェニルグリシンエチルエステル、N−メトキシフェニルグリシン等が挙げられ、中でもN−フェニルグリシンが好ましく、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
(C3)アルキルアミノベンゾフェノンとしては、例えば、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられ、中でも4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましく、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(C4)アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、9−(p−メチルフェニル)アクリジン、9−(p−エチルフェニル)アクリジン、9−(p−n−プロピルフェニル)アクリジン、9−(p−iso−プロピルフェニル)アクリジン、9−(p−n−ブチルフェニル)アクリジン、9−(p−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(p−メチキシフェニル)アクリジン、9−(p−エトキシフェニル)アクリジン、9−(p−アセチルフェニル)アクリジン、9−(p−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(p−シアノフェニル)アクリジン、9−(p−クロルフェニル)アクリジン、9−(p−ブロモフェニル)アクリジン、9−(m−メチルフェニル)アクリジン、9−(m−n−プロピルフェニル)アクリジン、9−(m−iso−プロピルフェニル)アクリジン、9−(m−n−ブチルフェニル)アクリジン、9−(m−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(m−メチキシフェニル)アクリジン、9−(m−エトキシフェニル)アクリジン、9−(m−アセチルフェニル)アクリジン、9−(m−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(m−ジエチルアミノフェニル)アクリジン、9−(m−シアノフェニル)アクリジン、9−(m−クロルフェニル)アクリジン、9−(m−ブロモフェニル)アクリジン、9−メチルアクリジン、9−エチルアクリジン、9−n−プロピルアクリジン、9−iso−プロピルアクリジン、9−シアノエチルアクリジン、9−ヒドロキシエチルアクリジン、9−クロロエチルアクリジン、9−メトキシアクリジン、9−エトキシアクリジン、9−n−プロポキシアクリジン、9−iso−プロポキシアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、フェニルベンゾアクリジン、9−クロロエトキシアクリジン等が挙げられ、中でも9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンが好ましく、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、高感度化の観点から、光重合開始剤(C)として、少なくとも(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体を含有することが好ましく、特には(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び他の光重合開始剤を含有することが好ましく、更には(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び(C2)N−アリールグリシンを含有することが好ましい。
【0040】
(C)光重合開始剤の含有量は、(A)バインダーポリマーと(B)光重合性化合物の合計100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましく、特には1〜8重量部、更には1.5〜6重量部であることが好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が少なすぎると必要な感度が得られない傾向にあり、また多すぎると感光性樹脂組成物中に不溶解物を生じる傾向にある。
【0041】
(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び他の光重合開始剤を併用する場合、例えば(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び(C2)N−アリールグリシンを併用する場合は、(A)バインダーポリマーと(B)光重合性化合物の合計100重量部に対して、(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体が0.5〜8重量部、特には1〜7重量部、更には2〜5.5重量部であることが好ましく、(C2)N−アリールグリシンが0.005〜2重量部、特には0.01〜1重量部、更には0.03〜0.5重量部であることが好ましい。
【0042】
本発明で用いられる(D)N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体は、下記一般式(1)または(2)で表される増感剤である。
【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
式(1)中のR1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。式(2)中のR5及びR6はそれぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基であり、好ましくは炭素数4〜15のアルキル基、又は炭素数4〜15のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数4〜10のアルキル基、又は炭素数4〜10のアルコキシ基である。R1〜R6のアルキル基及びアルコキシ基は分枝又は直鎖のアルキル基及びアルコキシ基である。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。アミノ基には、官能基を有する一級又は二級アミノ基が含まれる。
【0046】
R1〜R4は、R1及びR2の組み合わせがR3及びR4の組み合わせと同じであることが好ましい。例えば、R1及びR2がメチル基及びエチル基の組み合わせであれば、R3及びR4もメチル基及びエチル基の組み合わせであることが好ましい。また、R5とR6とが同じであることが好ましい。一般式(1)または(2)で表される増感剤のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明において、一般式(1)および(2)で表される増感剤は、溶解性に関して次のような意義がある。化学物質の一般的な特性として、物質の溶解性には、溶媒分子との親和性、及び結晶性が大きく影響していると考えられている。結晶性では、水素結合・二重結合などにより配座が固定されている場合、その結晶は序列正しく配列し安定化するため、分子間での引力が大きくなり、溶解性は低下すると考えられている。
一般式(1),(2)にある基本骨格N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジンは、π電子を構造内で共有 (共鳴) し安定化すべく平面に近い構造をとり、その配座は固定されていると推測される。そのため、序列正しい配列を有した結晶となり溶解性は低い。しかし、一般式(1)では置換基R1〜R4がオルト位にあり立体障害となることから、構造の平面性が失われ結晶性が低下する。また、一般式(2)ではR5,R6の炭素数が4以上の場合、多くの炭素-炭素単結合軸を有することから自由回転の範囲が広くなり、結晶の配列が乱れ(結晶性の低下)、溶解性が向上するものと推察される。対してR5,R6の炭素数が共に3以下では、その自由回転の範囲が狭いことから結晶性が高く、充分な溶解性が得られないものと考えられることから、上記の通り、R5,R6の炭素数が4以上であることには意義がある。
【0048】
(D)N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体は、極大吸収波長が350nm〜410nmの範囲内にあり、且つ波長355nm及び405nmにおけるモル吸光係数が何れも40,000以上、特に50,000以上のものが好ましい。なお、モル吸光係数の上限は通常500,000である。かかる好適なものの具体例としては、N,N’−ビス〔4−(2−フェニルエテン−1−イル)−フェニル〕−N,N’−ビス(2−エチル−6−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス〔4−(2−フェニルエテン−1−イル)−フェニル〕−N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンが挙げられる。
ここで極大吸収波長およびモル吸光係数は、例えばUV分光光度計(日立製作所社製、商品名:U−3300分光光度計等)を用いて、以下のようにして測定した吸光度を基に算出できる。まず、溶媒としてCHCl等を用い、測定する(D)化合物の希薄溶液(濃度:C(mol・L−1))を調製する。次に、UV分光光度計の測定側に石英セル等に入れた(D)化合物の希薄溶液を、リファレンス側に石英セル等に入れた溶媒(CHCl等)をそれぞれ配置し、吸光度モードにより約550〜300nmまでを連続測定する。そして、波長405nm(または波長355nm)において得られた吸光度Aを、希薄溶液の濃度C(mol・L−1)とセルの光路長L(cm)の積で除して(A/CL)、(D)化合物のモル吸光係数(mol−1・L・cm−1)を算出できる。また、測定した550〜300nmの範囲において、吸光度が最大となる波長を(D)化合物の極大吸収波長(nm)として算出できる。
【0049】
(D)N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体の含有量は、(A)バインダーポリマーと(B)光重合性化合物の合計100重量部に対して、0.005〜2重量部であることが好ましく、特には0.01〜1重量部、更には0.03〜0.5重量部であることが好ましい。(D)N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体の含有量が少なすぎると必要な感度が得られない傾向にあり、また多すぎるとパターン形状が逆台形になる傾向にあり、また支持フィルムに塗布・乾燥した後に析出する傾向にある。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物に、上記の(A)〜(D)の化合物に加えて、さらにクリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンレイク、ブリリアントグリーン、ダイヤモンドグリーン、パテントブルー、チルバイオレット、ビクトリアブルー、ビクトリアピュアブルー、オイルブルー、ベイシックブルー20、ローズアニリン、パラフクシン、エチレンバイオレット等の着色染料、密着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、溶剤、表面張力改質材、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤、等の添加剤を適宜含有させても良い。
【0051】
また、更に酸やトリブロモメチルフェニルスルホンを含有させると、露光後の焼き出し性が良化することとなり好ましい。酸としては、例えば、フタル酸、シュウ酸、あるいはR(COOH)(ただし、Rは直鎖状の炭素数1〜20のアルキル基、nは1〜3の整数である。)で表されるものが好ましい。酸の配合量は、通常、0.005〜1重量%であることが好ましい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60重量%程度の溶液としても良い。この溶液を、後述するフォトレジストフィルムの感光性樹脂組成物層を形成するための塗布液として、使用することができる。
【0053】
〔フォトレジストフィルム〕
本発明のフォトレジストフィルムは、支持体、及び本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含み、前記感光性樹脂組成物層が前記支持体上に形成されたものである。支持体としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられるが、中でもPETフィルムが特に好ましい。また、フォトレジストフィルムをロール状にしておく場合に、粘着性を有する感光性樹脂組成物層の支持体への転着等を防止する目的で、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを積層しても良い。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられるが、中でもポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0054】
本発明のフォトレジストフィルムは、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を含有する塗布液を支持体の片面に塗工し、乾燥して、さらに必要に応じて、その塗工面を保護フィルムで被覆することにより製造することができる。より具体的には、支持体の片面に、ロールコーター法やバーコーター法等で本発明の感光性樹脂組成物を含有する塗布液を均一に塗布し、50〜120℃、もしくは順次温度の高くなるオーブンで乾燥して感光性樹脂組成物層を形成し、次いで、該層の上面に保護フィルムを加圧積層することにより製造することができる。
【0055】
本発明のフォトレジストフィルムにおける感光性樹脂組成物層の厚みは、100μm以下が好ましく、特には10〜70μm、更には15〜50μmが好ましい。かかる厚みが厚すぎると充分な密着性や感度を得ることが困難となる傾向にある。また、上記支持体の厚みは、通常5〜30μmであり、好ましくは12〜20μmである。かかる厚みが薄すぎると支持体が柔軟すぎて取り扱いに不便であり、逆に厚みが厚すぎると被覆対象の基板表面の凹凸部への追従性が低下したり、コストアップとなる傾向にある。上記保護フィルムの厚みは、通常10〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0056】
かくして得られた本発明のフォトレジストフィルムは、例えば、プリント配線板、金属の精密加工の製造工程に用いられるエッチングレジスト、めっきレジストに有用であり、特に、レーザー露光、とりわけ波長350〜410nmの光線による露光でも充分な感度を示し、良好なパターン形成を得ることができる。
【0057】
〔レジストパターンの形成方法〕
次に、本発明のレジストパターンの形成方法について説明する。本発明のレジストパターンの形成方法は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られる感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層し、波長350nm〜410nmの光線を前記感光性樹脂組成物層の所定部(すなわち所望のパターン画像を形成する領域)に照射した後、前記所定部以外の部分を現像除去するものである。回路形成用基板としては、銅や銅系合金等からなる導体膜が積層されたリジッド基板やフレキシブル基板、42アロイやSUS等の基板が挙げられる。また、かかる基板と感光性樹脂組成物との密着性を上げるために、機械的研磨や酸系の薬剤で基板表面の金属面をソフトエッチングしておいても良い。
【0058】
感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層するに際しては、例えば、感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法等の方法で基板上に塗布し、塗膜を50〜120℃で乾燥させることで行うことができる。また、本発明のフォトレジストフィルムを用いる場合には、必要に応じて保護フィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層を加熱しながら基板に圧着して、感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層することができる。
【0059】
次いで、レーザー直接描画露光法やDLP(Digital Light Processing)露光法などの直接描画露光法により、波長350nm〜410nmの光線を用いて、所望のパターン画像を走査露光して感光性樹脂組成物層に直接焼き付ける。かかる直接描画露光法で用いられる光源としては、水銀灯光源、アルゴンレーザー、YAGレーザーの第3高調波、YVOレーザーの第3高調波、半導体レーザー等が用いられる。
【0060】
露光後は、必要に応じて支持体を剥離除去してから現像を行う。本発明の感光性樹脂組成物は希アルカリ現像型であるので、現像は、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリの0.1〜5重量%水溶液を用いて行う。上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。この現像により、感光性樹脂組成物層のうち未露光部(所望のパターン画像を除く領域)が除去されて、レジストパターンが形成される。なお、上記アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤や現像を促進させるために少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0061】
〔プリント配線板の製造方法〕
次に、本発明のプリント配線板の製造方法について説明する。本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンが形成された前記回路形成用基板をエッチング又はめっきするものである。すなわち、回路形成用基板のエッチング及びめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の導体膜等に対して行われる。
【0062】
エッチングは、通常、塩化第二銅−塩酸水溶液や、塩化第二鉄−塩酸水溶液等の酸性エッチング液を用いて、常法に従って行う。希に、アンモニア系のアルカリエッチング液も用いられる。また、めっきを行う場合のめっき方法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。めっきを行うに際しては、脱脂剤、ソフトエッチング剤等のめっき前処理剤を用いて前処理を行うことが好ましい。
【0063】
エッチング又はめっき終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の0.1〜10重量%程度の濃度のアルカリ水溶液からなるアルカリ剥離液、または3〜15重量%水溶液の有機アミン系剥離液(特にモノエタノールアミンを主成分とする)を用いて、レジストパターンの剥離除去を行う。なお、レジストパターンを用いてスルーホール内にめっきを充填する等の場合には、レジストパターンを除去せずに、レジストパターン上に導体膜を積層することもある。以上の工程を経て、プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下「%」「部」とあるのは、重量基準を意味する。
【0065】
・(A)バインダーポリマーとして以下のものを調製した。
〔ポリマー(1)〕
メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸ヒドロキシエチル(重量比25/50/20/5)を重合させて得られた、重量平均分子量85,000の40%メチルエチルケトン溶液。固形分酸価=163.1mgKOH/g。
〔ポリマー(2)〕
アクリル酸/スチレン(重量比30/70)を重合させて得られた、重量平均分子量23,000の45%メチルエチルケトン溶液。固形分酸価=233.3mgKOH/g。
【0066】
・(B)光重合性化合物として以下のものを用いた。
〔BPE−500:商品名、新中村化学工業社製〕
ビスフェノールAの両側にそれぞれ平均5モルのオキシエチレン基を付加したオキシエチレン基含有ビスフェノールA型ジメタクリレート
〔BPE−900:商品名、新中村化学工業社製〕
ビスフェノールAの両側にそれぞれ平均9モルのオキシエチレン基を付加したオキシエチレン基含有ビスフェノールA型ジメタクリレート
〔9G:商品名、新中村化学工業社製〕
ノナエチレングリコールジメタクリレート
【0067】
・(C)光重合開始剤として以下のものを用いた。
〔HABI〕
2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール
〔NPG〕N−フェニルグリシン
〔トリフェニルホスフィン〕
【0068】
・増感剤として以下のものを用いた。
〔増感剤(1)〕
N,N’−ビス[4−(2−フェニルエテン−1−イル)−フェニル]−N,N’−ビス(2−エチル−6−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
〔増感剤(2)〕
N,N’−ビス[4−(2−フェニルエテン−1−イル)−フェニル]−N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
〔増感剤(3)〕
N,N’−ビス[4−(2−フェニルエテン−1−イル)−フェニル]−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
〔増感剤(4)〕
1−フェニル−3−(2−チエニル)エテニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン
〔増感剤(5)〕
N−ブチル−9−クロロアクリドン
【0069】
増感剤(1)〜(5)の波長405nm及び355nmにおけるモル吸光係数:ε(mol−1・L・cm−1)、及び極大吸収波長:λ max(nm)を表1に示す。モル吸光係数及び極大吸収波長は、UV分光光度計(日立製作所社製、商品名:U−3300分光光度計)を用いて以下のようにして測定した吸光度を基に算出したものである。すなわち、まず、溶媒としてCHClを用い、測定する増感剤の希薄溶液(濃度:2.0×10−5mol・L−1)を調製した。次に、UV分光光度計の測定側に石英セルに入れた増感剤の希薄溶液を、リファレンス側に石英セルに入れた溶媒(CHCl)をそれぞれ配置し、吸光度モードにより550〜300nmまでを連続測定した。そして、波長405nm(または波長355nm)において得られた吸光度Aを、希薄溶液の濃度C(mol・L−1)と石英セルの光路長L(cm)の積で除して(A/CL)、増感剤のモル吸光係数(mol−1・L・cm−1)を算出した。また、測定した550〜300nmの範囲において、吸光度が最大となる波長を極大吸収波長(nm)として算出した。
【0070】
【表1】

【0071】
・添加剤として以下のものを用いた。
〔LCV〕ロイコクリスタルバイオレット
〔MG〕マラカイトグリーン
〔o−フタル酸〕
〔TBMPS〕トリブロモメチルフェニルスルホン
【0072】
〔実施例1〜8、比較例1〜3〕
表2に示す如き組成により、感光性樹脂組成物のメチルエチルケトン溶液を調製した。この感光性樹脂組成物溶液を、アプリケーターを用いて、厚さ16μmのPETフィルム上に乾燥後の塗工膜厚が40μmになるよう塗工し、60℃、90℃のオーブンでそれぞれ3分間乾燥して、更にその感光性樹脂組成物層の上から厚さ21μmのポリエチレンフィルムで被覆し、フォトレジストフィルムを得た。得られたフォトレジストフィルムについて、以下の項目を下記の如く評価した。
【0073】
【表2】

【0074】
〔吸光度〕
実施例及び比較例で得られたフォトレジストフィルムについて、感光性樹脂組成物層の露光波長に対する吸光度(Abs)を、上記UV分光光度計を用いて測定した。吸光度の測定は、ポリエチレンフィルム、及びPETフィルムを剥離した感光性組成物層を測定側に置き、吸光度モードにより波長700〜300nmの光で連続測定を行ってUV吸収スペクトルを得た。その中で波長405nm及び365nmにおける吸光度の値を読み取った。その結果を表3に示す。
【0075】
〔波長405nmにおける感度、解像性、密着性〕
上記フォトレジストフィルムのポリエチレンフィルムを剥離した後、感光性樹脂組成物層面が銅張基板上に接するように、かかるフォトレジストフィルムを、ラミネートロール温度100℃、同ロール圧0.3MPa、ラミネート速度1.2m/minにてラミネートした。その後、光透過量が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム(ストーファー21段ステップタブレット)を用いて、オーク製作所社製のLDI露光機DI−μ10(主波長は405nm)によりストーファー21段ステップタブレット全面を均一に露光した。露光後、15分経過してからPETフィルムを剥離し、27℃で0.7%炭酸ナトリウム水溶液をブレークポイント(未露光部分の完全溶解する時間)の2倍の現像時間でスプレーすることにより未露光部分を溶解除去して硬化樹脂画像を得た。各露光量と現像後に残った段数より、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が6段となる露光量、すなわち感度(mJ/cm)を調べた。
【0076】
解像性は、ライン/スペース=400/12.5〜400/50(μm)のパターンデータをステップタブレットの段数が6段となる露光量で直描露光し、上記と同様の現像処理によって未露光部分をきれいに除去することができるスペース幅の最も小さい値により評価した。
また、密着性は、ライン/スペース=12.5/400〜50/400(μm)のパターンデータをステップタブレットの段数が6段となる露光量で直描露光し、上記と同様の現像処理によってラインが蛇行やカケを生じることなく生成されたライン幅間のスペース幅の最も小さい値により評価した。
その結果を露光波長405nm時の結果として表3に示す。感度、解像性及び密着性は、数値が小さいほど評価が良い。
【0077】
〔波長365nmにおける感度、解像性、密着性〕
また、露光の際に、露光光源として、オーク製作所社製の露光機DI−μ10(主波長は405nm)に替えて、波長365nm±30nmの光を透過するフィルタを配置し、5kWショートアークランプを光源とする平行光露光機(オーク製作所社製、商品名:EXM−1201)を用いた以外は、波長405nmにおける感度測定の時と同様にして感度評価を行った。
【0078】
解像性は、ライン/スペース=400/6〜400/50(μm)のパターンマスクを用いた以外は、波長405nmにおける解像性評価のときと同様にして解像性評価を行った。
また、密着性は、ライン/スペース=6/400〜50/400(μm)のパターンマスクを用いた以外は、波長405nmにおける密着性評価のときと同様にして密着性評価を行った。
その結果を露光波長365nm時の結果として表3に示す。
【0079】
〔発色性〕
発色性は、分光色差計(日本電色工業社製、商品名:SQ−2000)を用いて露光前後におけるフォトレジストフィルムのコントラスト差(ΔE)を測定し判断した。
露光前のフォトレジストフィルムのL、a、b値(L1、a1、b1)と、表3中の感度(mJ/cm)に記載した露光量にて照射を行い、15分経過したフォトレジストフィルムのL、a、b値(L2、a2、b2)とをそれぞれ測定し、下記計算式によりコントラスト差(ΔE)を算出した。
ΔE={(L1−L2)+(a1−a2)+(b1−b2)1/2
【0080】
発色性の評価は下記の基準に従った。
◎・・・ΔE>15
○・・・5≦ΔE≦15
×・・・ΔE<5
【0081】
〔析出物の有無〕
感光性樹脂組成物のメチルエチルケトン溶液を、室温(23℃)にて1日放置した後、析出物の有無を目視にて観察して、析出物の有無を評価した。
【0082】
【表3】

【0083】
表3に示す如く、実施例1〜8の感光性樹脂組成物は、波長405nm及び365nmのいずれにおいても、非常に高感度であり、解像性、密着性、露光後の焼き出し性(発色性)に優れている。特に、N−フェニルグリシンやトリフェニルホスフィンを含有する実施例5〜7の感光性樹脂組成物は高感度である。また、実施例1〜8の感光性樹脂組成物は、波長405nmと波長365nmとで、吸光度の差が小さいので、硬化に要する露光量(感度)の差が小さく、安定したスループットを得ることができる。さらに、実施例1〜8の感光性樹脂組成物に含まれる増感剤の溶媒に対する溶解性が良好であり、レジストに増感剤が析出し難いので、後工程のエッチングやめっきの際に支障が生じ難い。
【0084】
一方、比較例1の感光性樹脂組成物は、増感剤の溶媒に対する溶解性が低く、感光性樹脂組成物の溶液や塗工膜に増感剤が析出し易いので、後工程のエッチングやめっきの際に支障が生じるおそれがある。また、比較例2,3の感光性樹脂組成物は、波長405nm及び365nmのいずれにおいても感度が低いのみならず、波長405nmと波長365nmとで、吸光度の差が大きいので、感度の差が大きく、安定したスループットを得ることが困難である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物及びフォトレジストフィルムは、波長350〜410nmの光線に非常に高感度であり、解像性、密着性、露光後の焼き出し性に優れ、また波長355〜365nmと波長405nmとで感度の差が小さく、さらに増感剤が析出し難いので、波長350〜410nmの光線による直接描画露光法に好適に用いられる。また、本発明のレジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物やフォトレジストフィルムを用いるものであるので、プラズマディスプレイ用配線、液晶ディスプレイ用配線、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ等の製造に用いられるセミアディティブ工法に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)下記一般式(1)または(2)で表されるN,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(但し、式中のR1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)
【化2】

(但し、式中のR5及びR6はそれぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基、炭素数4以上のアルコキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基を表す。)
【請求項2】
前記(D)N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン誘導体の極大吸収波長が350nm〜410nmの範囲内にあり、且つ波長355nm及び405nmにおけるモル吸光係数が何れも40,000以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)光重合開始剤として、少なくとも(C1)ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
N−アリールグリシン及びトリアリールホスフィンから選ばれる少なくとも一方を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体、及び請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含み、前記感光性樹脂組成物層が前記支持体上に形成されたことを特徴とするフォトレジストフィルム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層すること、及び波長350nm〜410nmの光線を前記感光性樹脂組成物層の所定部に照射した後、前記所定部以外の部分を現像除去することを含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6記載のレジストパターンの形成方法によってレジストパターンが形成された前記回路形成用基板をエッチング又はめっきすることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2011−237780(P2011−237780A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85062(P2011−85062)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(597175673)ニチゴー・モートン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】