説明

感光性樹脂組成物、パターン形成方法、カラーフィルタ、及び表示装置

【課題】遮光剤を含有しながらも、低露光量で直進性・密着性に優れたパターンを形成可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタが使用された表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る感光性樹脂組成物は、光重合性化合物、光重合開始剤、下記式(1)で表される化合物、及び遮光剤を含有する。式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示すが、少なくとも一方は有機基を示す。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。Rは、単結合又は有機基を示す。R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、有機基等を示すが、R及びRが水酸基となることはない。R10は、水素原子又は有機基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタが使用された表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネガ型の感光性樹脂組成物は、紫外線等の電磁波の照射によって硬化する特性を有する。この感光性樹脂組成物は、電磁波を照射した部分を硬化させることにより所望の形状のパターンが得られるため、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム(MEMS)等の種々の用途に広く用いられている。例えば表示装置においては、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイ等におけるカラーフィルタ、ブラックマトリクス等の材料として用いられている。
【0003】
ところで、近年、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイの製造に際しては、ブラックマトリクスによる遮光性を向上させて、表示コントラストをより一層向上させる試みがなされている。このためには、ブラックマトリクスを形成させるための感光性樹脂組成物に遮光剤を多量に含ませることが必要である。
【0004】
しかし、このように感光性樹脂組成物に遮光剤を多量に含ませると、感度が低下し、パターン形成に必要な露光量が増加してしまうという問題があった。また、基板に近い部分ほど硬化が進み難いため、現像中にパターンが基板から剥がれ落ちてしまったり、エッジの部分が侵食されてパターンの直進性が低下したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−052214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、遮光剤を含有しながらも、低露光量で直進性・密着性に優れたパターンを形成可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタが使用された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、特定の化合物を感光性樹脂組成物に含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
本発明の第一の態様は、光重合性化合物、光重合開始剤、下記式(1)で表される化合物、及び遮光剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は有機基を示す。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。Rは、単結合又は有機基を示す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。ただし、R及びRが水酸基となることはない。R、R、R、及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。R10は、水素原子又は有機基を示す。)
【0009】
上記式(1)で表される化合物に類似した構造の化合物として、特許文献2には、下記式で表される塩基発生剤が開示されている。この塩基発生剤は、電磁波照射及び加熱によって環化し、塩基(NHR2122)を生成する。
【0010】
【化2】

(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。ただし、R21及びR22の少なくとも1つは有機基である。R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、R23及びR24の少なくとも1つはハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基である。R25、R26、R27、及びR28は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R25、R26、R27、及びR28は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0011】
しかし、本発明者らが確認したところ、特許文献2に記載された塩基発生剤を感光性樹脂組成物に含有させても、光エネルギが環化のために消費されるため、良好な微小パターニング特性は得られなかった。
これに対して上記式(1)で表される化合物は、R及びRが水酸基となることはないため、環化反応は生じず、良好な微小パターニング特性を得ることが可能である。
なお、上記式(1)で表される化合物は、電磁波照射又は加熱により塩基を発生するため、塩基発生剤としても機能する。また、上記式(1)で表される化合物は、感光性樹脂組成物中に配合されると基板への密着性を高める効果を奏するため、密着増強剤としても機能する。
【0012】
本発明の第二の態様は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、該塗膜又は成形体に対して所定パターン状に電磁波を照射し、現像するパターン形成方法である。
【0013】
本発明の第三の態様は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタであり、本発明の第四の態様は、本発明に係るカラーフィルタが使用された表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮光剤を含有しながらも、低露光量で直進性・密着性に優れたパターンを形成可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタが使用された表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪感光性樹脂組成物≫
本発明に係る感光性樹脂組成物は、光重合性化合物、光重合開始剤、後述する式(1)で表される化合物、及び遮光剤を少なくとも含有するものである。以下、感光性樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0016】
<光重合性化合物>
光重合性化合物としては、特に限定されず、従来公知の光重合性化合物を用いることができる。その中でも、エチレン性不飽和基を有する樹脂又はモノマーが好ましく、これらを組み合わせることがより好ましい。エチレン性不飽和基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノマーとを組み合わせることにより、感光性樹脂組成物の硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。
【0017】
[エチレン性不飽和基を有する樹脂]
エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、例えば、エポキシ化合物と不飽和カルボン酸との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を用いることができる。
【0018】
その中でも、カルド構造を有する樹脂が好ましく、下記式(a−1)で表される樹脂がより好ましい。この式(a−1)で表される樹脂は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(a−1)中、Xは、下記式(a−2)で表される基を示す。
【0021】
【化4】

【0022】
上記式(a−2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Wは、単結合又は下記式(a−3)で表される基を示す。
【0023】
【化5】

【0024】
また、上記式(a−1)中、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0025】
また、上記式(a−1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a−1)中、mは、0〜20の整数を示す。
【0026】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を用いることもできる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0027】
エチレン性不飽和基を有する樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜110mgKOH/gであることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な硬化性を得ることができる。
【0028】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。
【0029】
エチレン性不飽和基を有する樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して5〜80質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0030】
[エチレン性不飽和基を有するモノマー]
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
エチレン性不飽和基を有するモノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0033】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0034】
光重合開始剤として具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(すなわち、ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(すなわち、エチルミヒラーズケトン)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、「IRGACURE OXE02」、「IRGACURE OXE01」、「IRGACURE 369」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 907」(商品名:BASF製)、「NCI−831」(商品名:ADEKA製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
これらの中でも、オキシム系光重合開始剤を用いることが感度の面で特に好ましく、カルバゾール骨格を有するオキシム系光重合開始剤を用いることが特に好ましい。
【0036】
オキシム系光重合開始剤の好ましい例としては、下記式(b−1)で表される光重合開始剤が挙げられる。
【0037】
【化6】

【0038】
上記式(b−1)中、Rb1は、置換基を有していてもよい、複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基を示す。Rb2〜Rb4はそれぞれ独立に1価の有機基を示す。
【0039】
b1における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0040】
b1における縮合環式芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。また、Rb1における芳香族基としては、フェニル基が挙げられる。
【0041】
複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基は、置換基を有していてもよい。特にRb1が芳香族基である場合には、置換基を有していることが好ましい。このような置換基としては、−NO、−CN、−SOb5、−CORb5、−NRb6b7、−Rb8、−ORb8、−O−Rb9−O−Rb10等が挙げられる。
【0042】
b5は、それぞれ独立にアルキル基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。Rb5におけるアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0043】
b6及びRb7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアルコキシ基のアルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により中断されていてもよい。また、Rb6とRb7とが結合して環構造を形成していてもよい。Rb6及びRb7におけるアルキル基又はアルコキシ基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0044】
b6とRb7とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。これらの中でも、モルホリン環が好ましい。
【0045】
b8は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基を示す。Rb8におけるアルキル基は、炭素数1〜6であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0046】
b9及びRb10は、それぞれ独立にアルキル基を表し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。好ましい炭素数やその具体例は、上記Rb1の説明と同様である。
【0047】
これらの中でも、Rb1としては、ピロリル基、ピリジル基、チエニル基、チオピラリル基、ベンゾチエニル基、ナフチル基、置換基を有するフェニル基が好ましい例として挙げられる。
【0048】
上記式(b−1)中、Rb2は、一価の有機基を示す。この有機基としては、−Rb11、−ORb11、−CORb11、−SRb11、−NRb11b12で表される基が好ましい。Rb11及びRb12は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基を示し、これらはハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。また、Rb11とRb12とが結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0049】
b11及びRb12におけるアルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピロキシエトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。
【0050】
b11及びRb12におけるアルケニル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エテニル基、プロピニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、2−(ベンゾオキサゾール−2−イル)エテニル基等が挙げられる。
【0051】
b11及びRb12におけるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜10のものがより好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0052】
b11及びRb12におけるアラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、炭素数7〜12のものがより好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0053】
b11及びRb12における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられる。この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。複素環基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0054】
これらのRb11及びRb12のうち、アルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0055】
また、Rb11とRb12とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、Rb2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基であることが最も好ましい。
【0057】
上記式(b−1)中、Rb3は、1価の有機基を示す。この有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、下記式(b−2)で表される基、又は置換基を有していてもよい複素環基が好ましい。置換基としては、上記Rb1の場合と同様の基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【化7】

【0058】
上記式(b−2)中、Rb13は、酸素原子で中断されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、sec−ペンチレン基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。これらの中でも、Rb13はイソプロピレン基であることが最も好ましい。
【0059】
上記式(b−2)中、Rb14は、−NRb15b16で表される1価の有機基を示す(Rb15及びRb16は、それぞれ独立に1価の有機基を示す)。そのような有機基の中でも、Rb14の構造が下記式(b−3)で表されるものであれば、光重合開始剤の溶解性を向上することができる点で好ましい。
【化8】

【0060】
上記式(b−3)中、Rb17及びRb18は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、Rb17及びRb18はメチル基であることが最も好ましい。
【0061】
b3における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0062】
また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記Rb1の場合と同様の基が挙げられる。
【0063】
上記式(b−1)中、Rb4は、1価の有機基を示す。この中でも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、Rb4はメチル基であることが最も好ましい。
【0064】
また、オキシム系光重合開始剤の好ましい他の例としては、特開2010−15025号公報で提案されている下記式(c−1)で表される光重合開始剤が挙げられる。
【0065】
【化9】

【0066】
上記式(c−1)中、Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、Rc11、ORc11、CORc11、SRc11、CONRc12c13、又はCNを示す。
【0067】
c11、Rc12、及びRc13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及び複素環基の水素原子は、さらにORc21、CORc21、SRc21、NRc22c23、CONRc22c23、−NRc22−ORc23、−NCORc22−OCORc23、−C(=N−ORc21)−Rc22、−C(=N−OCORc21)−Rc22、CN、ハロゲン原子、−CRc21=CRc21c23、−CO−CRc21=CRc22c23、カルボキシル基、又はエポキシ基で置換されていてもよい。Rc21、Rc22、及びRc23は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。
【0068】
上記Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23における置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、また、Rc12とRc13、及びRc22とRc23はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
【0069】
上記式(c−1)中、Rc3及びRc4は、それぞれ独立に、Rc11、ORc11、CORc11、SRc11、CONRc12c13、NRc11CORc12、OCORc11、COORc11、SCORc11、OCSRc11、COSRc11、CSORc11、CN、ハロゲン原子、又は水酸基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。
c3は、−Xc2−を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成していてもよく、Rc3とRc4とが結合して環構造を形成していてもよい。
【0070】
上記式(c−1)中、Xc1は、単結合又はCOを示す。
【0071】
上記式(c−1)中、Xc2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CRc31c32、CO、NRc33、又はPRc34を示す。Rc31、Rc32、Rc33、及びRc34は、それぞれ独立に、Rc11、ORc11、CORc11、SRc11、CONRc12c13、又はCNを示す。Rc31、Rc33、及びRc34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0072】
上記式(c−1)中、Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
【0073】
上記式(c−1)中、Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23におけるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスレニル基等が挙げられる。
【0074】
上記式(c−1)中、Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23におけるアリールアルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0075】
上記式(c−1)中、Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23における複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、ピラゾリジル基、チアゾリジル基、イソチアゾリジル基、オキサゾリジル基、イソオキサゾリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリニル基等の5〜7員環が好ましく挙げられる。
【0076】
上記式(c−1)中、Rc12とRc13とが結合して形成し得る環、Rc22とRc23とが結合して形成し得る環、及びRc3が隣接するベンゼン環と一緒になって形成し得る環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環が挙げられる。
なお、Xc2がNRc33であり、Rc3が隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して、Xc2とともに5員環構造を形成する場合、光重合開始剤はカルバゾール骨格を有することになる。
【0077】
上記式(c−1)中、Rc11、Rc12、Rc13、Rc21、Rc22、及びRc23を置換してもよいハロゲン原子、及びRc4、Rc5におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0078】
上記置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよい。この場合、中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断し得る基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。また、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよい。
【0079】
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
【0080】
<式(1)で表される化合物>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有する。
【0081】
【化10】

【0082】
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示すが、R及びRの少なくとも一方は有機基を示す。
及びRにおける有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0083】
及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合をさらに含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
【0084】
及びRの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合が挙げられる。具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
耐熱性の観点から、R及びRの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0085】
及びRの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH、−NHR、−NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
及びRの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基が好ましい。
【0086】
以上の中でも、R及びRとしては、少なくとも一方が炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基であるか、互いに結合して炭素数2〜20のヘテロシクロアルキル基若しくはヘテロアリール基を形成するものであることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられ、ヘテロアリール基としては、イミダゾリル基、ピラゾリル基等が挙げられる。
【0087】
上記式(1)中、Rは、単結合又は有機基を示す。
における有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。この有機基は、該有機基中に置換基を含んでいてもよい。置換基としては、R及びRにおいて例示したものが挙げられる。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0088】
以上の中でも、Rとしては、単結合、又は炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基から1個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
【0089】
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
及びRにおける有機基としては、R及びRにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R及びRの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0090】
以上の中でも、R及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COOR、−OCOR:Rは炭化水素基を示す)、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、R及びRの両方が水素原子であるか、又はRがメチル基であり、Rが水素原子である。
【0091】
上記式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
、R、R、及びRにおける有機基としては、R及びRにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R及びRの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0092】
なお、上記式(1)中、R及びRが水酸基となることはない。R又はRが水酸基である場合、特許文献1に記載されているとおり、電磁波照射及び加熱によって環化反応が生じる。このため、このような化合物を感光性樹脂組成物に含有させても、光エネルギが環化のために消費され、良好な微小パターニング特性を得ることができない。これに対して上記式(1)で表される化合物は、R及びRが水酸基となることはないため、環化反応は生じず、感光性樹脂組成物に含有させた際に良好な微小パターニング特性を得ることが可能である。
【0093】
、R、R、及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、R、R、R、及びRは、それらの2つ以上が結合して、R、R、R、及びRが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0094】
以上の中でも、R、R、R、及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
また、R、R、R、及びRとしては、それらの2つ以上が結合して、R、R、R、及びRが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
より好ましくは、R、R、R、及びRの全てが水素原子であるか、又はR、R、R、及びRのいずれか1つがニトロ基であり、残り3つが水素原子である。
【0095】
上記式(1)中、R10は、水素原子又は有機基を示す。
10における有機基としては、R及びRにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R及びRの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
上記式(1)で表される化合物は、ベンゼン環のパラ位に−OR10基を有するため、有機溶剤への溶解性が良好である。
【0096】
以上の中でも、R10としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0097】
上記式(1)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0098】
【化11】

【0099】
【化12】

【0100】
【化13】

【0101】
このような上記式(1)で表される化合物は、有機溶剤への溶解性が良好であり、また、感光性樹脂組成物に含有させた際に良好な微小パターニング特性を得ることが可能である。なお、この化合物は、後述する実施例のようにして合成することが可能である。
【0102】
上記式(1)で表される化合物の含有量は、上記光重合開始剤100質量部に対して35〜200質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましく、50〜100質量部であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、良好な微小パターニング特性を得ることができる。
【0103】
<遮光剤>
遮光剤としては黒色顔料を用いることが好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩など、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。これらの中でも、高い遮光性を有するカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0104】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、遮光性に優れるチャンネルブラックを用いることが好ましい。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
【0105】
樹脂被覆カーボンブラックは、樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、ブラックマトリクス形成用の感光性樹脂組成物に使用した場合に、電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイを製造できる。
【0106】
また、カーボンブラックの色調を調整するために、補助顔料として有機顔料を適宜添加してもよい。
【0107】
また、着色剤をネガ型感光性樹脂組成物において均一に分散させるために、さらに分散剤を使用してもよい。このような分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤を用いることが好ましい。特に、遮光剤としてカーボンブラックを用いる場合には、分散剤としてアクリル樹脂系の分散剤を用いることが好ましい。
【0108】
遮光剤の含有量は、感光性樹脂組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、5〜70質量部が好ましく、25〜60質量部がより好ましい。
特に、感光性樹脂組成物を使用してブラックマトリクスを形成する場合には、ブラックマトリクスの膜厚1μm当たりのOD値が4以上となるように、感光性樹脂組成物における遮光剤の量を調整することが好ましい。ブラックマトリクスにおける膜厚1μm当たりのOD値が4以上あれば、ブラックマトリクスに用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができる。
【0109】
なお、遮光剤は、分散剤を用いて適当な濃度で分散させた分散液とした後、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0110】
<有機溶剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、希釈のための有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0111】
上記有機溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、上記光重合性化合物、上記光重合開始剤、及び上記式(1)で表される化合物に対して優れた溶解性を示すとともに、上記遮光剤の分散性を良好にすることができるため好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが特に好ましい。
【0112】
有機溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。
【0113】
<その他の成分>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0114】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性樹脂組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0115】
≪パターン形成方法≫
本発明に係るパターン形成方法は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、該塗膜又は成形体に対して所定パターン状に電磁波を照射し、現像するものである。
【0116】
より具体的には、まず、適切な塗布方法又は成形方法により、塗膜又は成形体を形成する。例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて基板上に感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させることにより、塗膜を形成することができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間、プリベークを行う方法、(2)室温にて数時間〜数日間放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分間〜数時間入れて溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0117】
次いで、塗膜又は成形体に対して所定パターン状に電磁波を照射し、露光する。電磁波は、ネガ型のマスクを介して照射してもよく、直接照射してもよい。露光量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば5〜500mJ/cm程度が好ましい。
【0118】
次いで、露光後の塗膜又は成形体を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0119】
現像後のパターンに対しては、200〜250℃程度でポストベークを行うことが好ましい。
【0120】
≪カラーフィルタ、表示装置≫
本発明に係るカラーフィルタは、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである。
例えば、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて塗膜を形成し、該塗膜に対して所定パターン状に電磁波を照射し、現像することにより、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイのカラーフィルタにおけるブラックマトリクスを形成することができる。
本発明に係る表示装置は、このようなカラーフィルタを備えるものである。表示装置としては、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
<上記式(1)で表される化合物及び比較化合物>
上記式(1)で表される化合物としては、下記式で表される化合物1〜20を準備した。この化合物1〜20の合成法を下記に示す。また、比較のため、下記式で表される比較化合物1〜10を準備した。
【0123】
【化14】

【0124】
【化15】

【0125】
【化16】

【0126】
[化合物1の合成法]
3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド5.90g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物1(4.65g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0127】
[化合物2の合成法]
3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド5.90g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、アニリン3.07ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物2(6.31g,25mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は83%であった。
【0128】
[化合物3の合成法]
3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド5.90g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物3(3.41g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0129】
[化合物4の合成法]
3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド5.90g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、モルホリン2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物4(3.41g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0130】
[化合物5の合成法]
3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物5(4.08g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0131】
[化合物6の合成法]
3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物6(4.08g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0132】
[化合物7の合成法]
2−メチル−3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物7(4.29g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0133】
[化合物8の合成法]
2−メチル−3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物8(3.41g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0134】
[化合物9の合成法]
3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物9(5.55g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0135】
[化合物10の合成法]
3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物9(5.55g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0136】
[化合物11の合成法]
2−メチル−3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物11(5.83g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0137】
[化合物12の合成法]
2−メチル−3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物12(5.83g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0138】
[化合物13の合成法]
3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ピペリジン2.81ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物13(5.62g,23mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は77%であった。
【0139】
[化合物14の合成法]
3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.25g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ピペリジン2.81ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物14(5.62g,23mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0140】
[化合物15の合成法]
2−メチル−3−(2−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ピペリジン2.81ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物15(5.83g,23mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0141】
[化合物16の合成法]
2−メチル−3−(3−ニトロ−4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド7.67g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ピペリジン2.81ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物16(5.83g,23mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0142】
[化合物17の合成法]
3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド5.90g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ピペリジン2.81ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物17(3.41g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0143】
[化合物18の合成法]
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド6.32g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、イミダゾール2.25ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物18(3.62g,15mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は50%であった。
【0144】
[化合物19の合成法]
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド6.32g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、ジエチルアミン2.41ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物19(4.93g,20mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は67%であった。
【0145】
[化合物20の合成法]
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)アクリル酸クロリド6.32g(30mmol)を50mlの乾燥したエーテルに溶解し、トリエチルアミン4.59ml(当量比1.1)、アニリン3.07ml(当量比1.1)を加え、室温にて1時間撹拌した。水50ml、飽和NaHCO水溶液50ml、及び1N塩酸で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン−酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルを支持担体としてカラムクロマトグラフィにより精製を行い、対応する化合物20(4.29g,25mmol)を得た。アクリル酸クロリド基準の収率は83%であった。
【0146】
<感光性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
以下の各成分を、3−メトキシブチルアセテート(MA)/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PM)/シクロヘキサノン(AN)=60/20/20(質量比)の混合溶剤に溶解し、撹拌機で2時間混合した後、孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することにより、固形分濃度15質量%の感光性樹脂組成物を調製した。
・エチレン性不飽和基を有する樹脂
樹脂(A−1)(固形分55%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)・・・310質量部
・エチレン性不飽和基を有するモノマー
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)・・・175質量部
・光重合開始剤
エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)「IRGACURE OXE02」(商品名:BASF製)・・・100質量部
・上記式(1)で表される化合物
上記化合物3・・・100質量部
・着色剤
カーボン分散液「CFブラック」(商品名:御国色素製、固形分25%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)・・・450質量部
【0147】
上記樹脂(A−1)の合成法は下記のとおりである。
まず、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)235g、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。この際、溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標値に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記式(a−4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0148】
【化17】

【0149】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3−メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂(A−1)を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。
なお、この樹脂(A−1)は、上記式(a−1)で表される樹脂に相当する。
【0150】
[実施例2〜6]
下記表1に示すとおり、光重合開始剤としての「IRGACURE OXE02」の代わりに、それぞれ「IRGACURE OXE01」(商品名:BASF社製)、「NCI−831」(商品名:ADEKA製)、「IRGACURE 369」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 907」(商品名:いずれもBASF製)を用いたほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。用いた光重合開始剤の詳細は下記のとおりである。
・「IRGACURE OXE01」:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]
・「NCI−831」:下記式参照
【化18】

・「IRGACURE 369」:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
・「IRGACURE 651」:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
【0151】
[実施例7〜12]
下記表1に示すとおり、上記化合物3の代わりに上記化合物1を用いたほかは、実施例1〜6と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0152】
[実施例13〜24]
下記表2に示すとおり、式(1)で表される化合物の含有量を50質量部としたほかは、実施例1〜12と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0153】
[実施例25〜42]
下記表3に示すとおり、上記化合物3の代わりにそれぞれ上記化合物2,4〜20を用いたほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0154】
[比較例1〜6]
下記表4に示すとおり、上記化合物3を用いなかったほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0155】
[比較例7〜14]
下記表4に示すとおり、上記化合物3の代わりにそれぞれ上記比較化合物1〜8を用いたほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
【表4】

【0160】
[評価]
実施例1〜42、比較例1〜14の感光性樹脂組成物を、ガラス基板(100mm×100mm)上にスピンコーターを用いて塗布し、90℃で120秒間プリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。次いで、ミラープロジェクションアライナー(製品名:TME−150RTO、株式会社トプコン製)を使用し、露光ギャップを50μmとして、20μmのラインパターンの形成されたネガマスクを介して、塗膜に紫外線を照射した。露光量は、20,40,60,120mJ/cmの4段階とした。露光後の塗膜を、26℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間ポストベークを行うことにより、ラインパターンを形成した。
同様に、2,5,10,20μmのラインパターンの形成されたネガマスクを介して、露光ギャップ50μmにて、塗膜に紫外線を照射した。露光量は10mJ/cmとした。露光後の塗膜を、26℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間ポストベークを行うことにより、ラインパターンを形成した。
【0161】
形成されたラインパターンについて、OD測定装置D−200II(グレタグマクベス社製)を使用して、膜厚1μm当たりのOD値を測定した。
また、ラインパターンを光学顕微鏡により観察し、パターン直進性を評価した。パターン直進性は、ラインのエッジにがたつきがないものを「良好」、がたつきがあるものを「不良」として評価した。
また、ラインパターンを光学顕微鏡により観察し、パターン密着性を評価した。パターン密着性は、基板から剥がれずラインパターンが形成されたものを「良好」、ラインパターンは形成されているがパターン欠けが発生しているものを「不良」、基板から剥がれてラインパターンが形成されなかったものを「なし」として評価した。
さらに、現像後の未露光部における残渣の有無について評価した。
結果を下記表5〜8に示す。
【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【0164】
【表7】

【0165】
【表8】

【0166】
この表から分かるように、光重合開始剤に加えて上記式(1)で表される化合物を含有する実施例1〜24の感光性樹脂組成物を用いた場合には、上記式(1)で表される化合物を含有しない比較例1〜6の感光性樹脂組成物を用いた場合よりも、パターン直進性、パターン密着性が大幅に向上した。特に、実施例25〜42から分かるように、光重合開始剤として「IRGACURE OXE02」を用いた場合には、20mJ/cmという低露光量であっても、直進性に優れたラインパターンを形成することができ、10mJ/cmという低露光量であっても、5μmのラインパターンが基板に密着した。さらに、実施例1〜42の感光性樹脂組成物を用いた場合には、現像残渣も存在しなかった。
【0167】
これに対して、上記式(1)で表される化合物の代わりに比較化合物1〜8を含有する比較例7〜14の感光性樹脂組成物を用いた場合には、パターン直進性、パターン密着性のいずれも、実施例1,7,13,19,25〜42よりも劣っており、良好な微小パターニング特性が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物、光重合開始剤、下記式(1)で表される化合物、及び遮光剤を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は有機基を示す。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。Rは、単結合又は有機基を示す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。ただし、R及びRが水酸基となることはない。R、R、R、及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。R10は、水素原子又は有機基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物の含有量が、前記光重合開始剤100質量部に対して35〜200質量部である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合性化合物が、カルド構造を有する樹脂を含有する請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、該塗膜又は成形体に対して所定パターン状に電磁波を照射し、現像するパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項5記載のカラーフィルタが使用された表示装置。

【公開番号】特開2013−80206(P2013−80206A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174872(P2012−174872)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】