説明

感光性着色組成物用洗浄液及びその評価方法

【課題】 カラーフィルタ用感光性着色組成物の付着により汚染した塗布装置、器具を洗浄するための洗浄効果の高い洗浄液及びその評価方法を提供する。
【解決手段】 平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも成分として含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物を洗浄するための洗浄液であって、前記洗浄液が、溶解度パラメータ(SP値)が8.6以下または8.9以上の溶剤を主成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーの液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(以後、有機ELと記す。)表示装置等に用いられる表示装置用カラーフィルタを製造する際に、塗布工程で用いられる感光性着色組成物により汚染した装置、器具を洗浄するための洗浄液及びその評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイとして、カラーの液晶表示装置や有機EL表示装置が注目されており、これらの表示装置にはカラーフィルタが用いられている。例えば、カラー液晶表示装置には、一例として、透明基板上に遮光性の高いブラックマトリックス層を形成し、その上に複数の着色パターン(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)からなる着色層を設けたカラーフィルタと、そのカラーフィルタ上に透明電極および配向層を備えた基板と、薄膜トランジスタ(TFT素子)、画素電極および配向層を備えた対向電極基板と、これら両基板を所定の間隙をもたせて対向させ、シール部材で密封して、上記間隙に液晶材料を注入して形成された液晶層とから概略構成された透過型の液晶表示装置がある。また、上記のカラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0003】
カラーフィルタの着色パターンの形成方法としては、染色法、印刷法、電着法、インクジェット法、顔料分散法等が知られている。これらの方法の中で、顔料分散法はフォトリソグラフィ法によるため、高精度、高品質、大画面、量産性に適した方法として広く使われている。例えば、感光性樹脂成分とR、G、Bからなる顔料をそれぞれ分散した液状の各色の感光性着色組成物を、順次、ブラックマトリックス基板上に塗布し、所定のパターンで露光し、現像することにより、カラーフィルタが形成される。最近では、ブラックマトリックス基板の黒色層も顔料分散法で形成されているカラーフィルタもある。
【0004】
顔料分散法によるカラーフィルタの着色パターンの形成工程においては、液状の感光性着色組成物の塗布方法としては、スピン塗布法、ロール塗布法、ダイ塗布法、ナイフ塗布法、エクストルージョン塗布法、ビード塗布法、インクジェット法等の種々の塗布方法が用いられている。塗布時における基板裏面等への感光性着色組成物の付着による汚れを洗浄除去する洗浄液としては、例えば、アルカリ溶液やアニオン系界面活性剤含有洗浄液が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、顔料分散法を用いた上記の塗布工程においては、塗布装置吐出部のノズル、配管部、スピンナー等に感光性着色組成物の一部が付着物として残存してしまい、目詰まりを起こしたり、汚染を引き起こすという問題があった。塗布装置吐出部の目詰まりは、生産性を低下させ、塗布不良品を生じる。また、装置や配管に付着した感光性着色組成物が剥離してカラーフィルタに混入すると異物欠陥となり、良品率を低下させてしまうという問題があった。しかし、上記の特許文献1および2に記載の洗浄液を用いて塗布装置や配管部を洗浄すると、新たにアルカリや界面活性剤で装置や配管を汚染させてしまうという問題があった。
【0006】
このため、従来はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の感光性着色組成物に含まれる溶剤を用いて塗布装置や配管部に付着した上記の付着物を洗浄していたが、これらの従来の洗浄溶剤では感光性着色組成物の付着物を十分に洗浄し除去しにくいという問題があった。さらに、これらの洗浄溶剤を用いることにより、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが感光性着色組成物に混じると、感光性着色組成物中の顔料が凝集し異物化した付着物となり、乾燥したこの付着物を洗浄するには、通常の感光性着色組成物そのものを洗浄するときよりも、さらにより高い洗浄力が必要とされるようになるが、これまで有効な洗浄液がなかった。また、上記の凝集した異物がカラーフィルタに混入した場合には、突起状となりカラーフィルタの品質を損なうという新たな問題をひき起こしていた。
さらに、付着、乾燥した感光性着色組成物の洗浄に好適な洗浄液を予め選定するための適切な評価方法がないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−213909号公報
【特許文献2】特開平10−239864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カラーフィルタ用感光性着色組成物の付着により汚染した塗布装置、器具を洗浄するための洗浄効果の高い洗浄液及びその評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも成分として含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物を洗浄するための洗浄液であって、前記洗浄液が、溶解度パラメータ(SP値)が8.6以下または8.9以上の溶剤を主成分とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の感光性着色組成物用洗浄液において、前記洗浄液に、前記感光性着色組成物に含まれる成分の少なくとも1種類を1〜10重量%含有することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の感光性着色組成物用洗浄液において、前記洗浄液に含有される前記感光性着色組成物に含まれる成分が、モノマーまたは分散剤であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性着色組成物用洗浄液において、前記洗浄液の溶剤がジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも成分として含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物を洗浄するための洗浄液の評価方法であって、基材上に塗布し一定時間乾燥させた前記感光性着色組成物を、前記洗浄液に浸漬したときの再溶解性を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄液は、顔料分散法による塗布工程で用いられる感光性着色組成物により汚染された装置、器具を清浄に効率良く洗浄し、付着物を除去することが可能となる。また、本発明の洗浄液は、液組成が比較的簡単であり作製し易く、安価である。
【0014】
本発明の洗浄液の評価方法は、感光性着色組成物により汚染された装置や器具の効果的な洗浄液を予め簡易な方法により選定することができ、洗浄を効果的に迅速に進めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の洗浄液で洗浄されるカラーフィルタ用の感光性着色組成物について説明する。上記の組成物は、平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも含有するものである。
【0016】
本発明において、用いられる顔料としては、公知の赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、黒色顔料等を使用することができる。顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで表示すると、赤色顔料はPR177、PR48:1、PR254、黄色顔料はPY83、PY138、PY139、PY150、緑色顔料はPG7、PG36、青色顔料は PB15番台、PB1、PB19、PB60、PB61、紫色顔料は PV23、黒色顔料はカーボンブラック、金属酸化物系の黒色顔料(チタンブラック、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の酸化物を含む顔料)等を挙げることができる。このような顔料の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分の10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲が望ましい。顔料粒子の平均粒径は1μm以下であり、好ましくは0.01〜0.3μmである。
【0017】
上記の感光性樹脂成分としては、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤等の被膜形成性樹脂分が主体である。
アルカリ可溶型のバインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物の1種以上と、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニル−2−ピロリドンの1種以上とからなるコポリマー等が挙げられ、また、上記のコポリマーにグリシジル基または水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また、非アルカリ可溶型のバインダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレン重合体、1−ビニル−2−ピロリドン重合体、および、これらの共重合体等を挙げることができる。
【0019】
このような樹脂成分は、光重合開始剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に10〜60重量%程度の範囲で含有されることが好ましい。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合性のモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。本発明では、上記のモノマーを1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0021】
このようなモノマーは、感光性着色樹脂組成物の固形分中に10〜50重量%程度含有されることが好ましい。
【0022】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、又はそれらのエステルなどの誘導体、キサントンならびにチオキサントン誘導体、含ハロゲン化合物としてのクロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類、トリアジン類、フルオレノン類、ハロアルカン類、光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類、有機硫黄化合物、過酸化物類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、紫外線により光重合性モノマーの重合性基を重合させるラジカルを発生させることができる化合物であり、単独または複数組み合わせて使用される。
【0023】
本発明において、顔料を分散させる分散剤としては、スチレン/ブチルスチレン共重
合物、長鎖ポリアミノアマイド燐酸塩、ポリアマイド、高分子量ポリカルボン酸塩、酢酸オレイルアミン、テトラアルキルアンモニウム塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸アミノオレエート、リン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。このような分散剤は、顔料100重量部に対して30〜100重量部の範囲で含有させることができる。
【0024】
尚、本発明の感光性着色組成物には、更に添加剤として増感剤、重合停止剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤等を必要に応じて用いることができる。
【0025】
上記の溶剤としては、感光性着色組成物の塗布適性、バインダー樹脂等のポリマーやモノマー、顔料分散剤ないし光重合開始剤に対する溶解性、および、顔料の分散性を考慮して、下記に示す1種または2種以上の溶剤を適宜選択して用いることができる。特に、多価アルコールまたはその誘導体を1種以上含むことが望ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、メトキシメトキシエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコール、ブロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、メチルアミルケトン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチル−α−ヒドロキシイソブチレート、メチル−β−メトキシイソブチレート等が挙げられる。
【0026】
感光性着色組成物の調製法としては、凝集体化している顔料を分散させ易くするため、先ず、顔料、顔料分散剤、溶媒からなる着色液を調製し、その着色液にバインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶媒を少なくとも混合して調製する。上記の着色液の調製においては、顔料分散剤と顔料とを予め均質に混合した後に溶媒に添加したり、顔料分散剤を溶媒中に混ぜた後に顔料を添加したり、顔料と非水溶媒とからなる分散系に顔料分散剤を添加したりして調整することができる。調整には、いずれの分散機を使用してもよく、例えば、ボールミル、サンドミル、ビスコミル、ロールミル、ニーダー、アトライター、ハイスピードミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。
【0027】
上記の感光性着色組成物は着色液として、ガラスやフィルム等の透明基板上に塗布され、所定のカラーフィルタパターンを有するフォトマスクで紫外線でパターン露光し、現像するフォトリソグラフィ工程を繰り返してカラーフィルタが形成される。
【0028】
このカラーフィルタの製造工程においては、塗布装置等の装置、特にその吐出部のノズル、配管部等に感光性着色組成物が付着し、汚染される。この付着した感光性着色組成物を溶解除去するために、本発明の洗浄液は、溶解度パラメータ(SP値)が8.6以下または8.9以上の溶剤を主成分とするものである。2種類以上の混合溶剤であっても、混合溶剤のSP値が上記の範囲内であれば、本発明の洗浄液として用いることができる。
【0029】
SP値の測定方法や計算方法は幾つかあるが、本発明においては、Michael M.Collman, John F. Graf, Paul C. Painter (Pensylvania State Univ.)が書いた、"Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blends" (1991), Technomic Publishing Co. Inc.に記載されている計算方法を用いる。但し、‐COOH基と‐OH基については記載がないため、R. F. Fedorsが書いたPolymer Engineering and Science, 14(2), 147(1974)に記載の値を用いる。
【0030】
また、混合溶剤を用いた洗浄液のSP値は、混合比に基づいて各溶剤のSP値の平均値を求めて使用した。例えば、メチルセロソルブアセテート(メトアセ):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=7:3の場合、次式で求められる。他の混合溶剤も同様にして求めることができる。
混合溶剤のSP値=メトアセのSP値×7/10+PGMEAのSP値×3/10
【0031】
本発明において、洗浄液は、感光性着色組成物に含まれる成分の少なくとも1種類を1〜10重量%含有するのが好ましい。また、洗浄液が、上記の感光性着色組成物に含まれる成分として、モノマーまたは分散剤を含有するのがより好ましい。
【0032】
本発明において、洗浄液の評価方法としては、ガラス等の基材上に感光性着色組成物を塗布し一定時間乾燥させた後に、洗浄液に浸漬し、その再溶解性を目視判定により評価するものであり、迅速かつ簡易に洗浄液を評価し得る。目視判定時には、カラービュアーを併用してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0033】
(洗浄液の洗浄力評価方法)
感光性着色組成物が装置や配管に付着し、乾燥した状態を想定し、2つの場合について評価した。1つは、感光性着色組成物のみが付着し、乾燥した状態である。もう1つは、感光性着色組成物の溶液に溶剤が混入し、付着し、乾燥した状態である。後者の場合は、複数種類の感光性着色組成物を用いるカラーフィルタの製造工程の装置、配管では、しばしば起こり得る状態である。
【0034】
先ず、樹脂ブラックマトリックスに用いる下記組成の黒色パターン用感光性着色組成物の溶液、およびその感光性着色組成物の溶液に各種溶剤が5重量%混入した溶液を準備した。
・バインダー樹脂:アクリル系共重合体
・モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以後、DPHAとも記す)
・顔料:カーボンブラック(平均粒径100nm)
・分散剤:Disperbyk170(ビックケミー社製)
・光重合開始剤:チバガイギー社製イルガキュア369
ジエチルチオキサントン
ビイミダゾール
・溶剤 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後、PGMEAとも記す)
【0035】
次に、洗浄液の評価を同一条件で行なうために、被塗布基材として表面を清浄にした所定の大きさのガラス板(棒状でもよい)に所定の厚さで下記の感光性着色組成物の塗布膜を形成し、一定の温湿度環境下で一定時間(0.5時間、1時間、2時間、それ以上の時間)乾燥した。
次に、各種の洗浄液に上記のガラス板を10分間浸漬した後、ガラス板を軽く振ってから、ガラス板に付着した感光性着色組成物の洗浄液への再溶解性を調べることにより、各洗浄液の洗浄力を評価した。
乾燥した着色組成物の洗浄液への再溶解性は、目視判定により、以下の各表に3段階で示した。
◎:洗浄力大で、付着した感光性着色組成物は完全溶解。
○:洗浄力があり、剥離した着色片は5分以内には溶解する。
×:洗浄力なし。着色片は剥離することはあっても溶解しない。
【0036】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
洗浄液としての各種溶剤の洗浄力を、上記の評価方法に基づいて行なった。その結果を表1に示した。表1は、感光性着色組成物に溶剤が混入していない場合の洗浄性を示すものであり、洗浄液溶剤のSP値の低い溶剤から高い溶剤の順に示してある。
なお、表1およびそれ以降の表においては、感光性着色組成物の乾燥時間が2時間を超える場合の結果は省略した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示されるように、感光性着色組成物の乾燥時間0.5時間において、SP値の低い実施例1のジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後、EDMと記す)、およびSP値の高い実施例2のメチルセロソルブアセテート(以後、メトアセと記す)/シクロヘキサノン=70:30の混合溶剤から実施例6の乳酸エチルまでが洗浄力があることが示された。
一方、SP値が中間となる比較例1のメトアセから比較例6のエチル−3−エトキシプロピオネート(以後、EEPと記す)までは洗浄力がないことが示された。
上記の結果から、SP値が8.6以下または8.9以上の溶剤を主成分とする洗浄液が好適であることが示された。
【0039】
(実施例7〜12、比較例7〜11)
次に、感光性着色組成物に各種溶剤が混入した場合の洗浄液の洗浄性を示す。表2はEDMが混入した場合であり、表3はPGMEAが混入した場合であり、表4は乳酸エチルが混入した場合を示した。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表2に示すように、SP値の低い溶剤EDMが感光性着色組成物に混入した場合には、付着、乾燥した感光性着色組成物の溶解性は向上した。一方、表4に示すように、SP値の高い乳酸エチルが感光性着色組成物に混入した場合には、付着、乾燥した感光性着色組成物の溶解性は大幅に低下した。表3に示すように、SP値が中間のPGMEAは前記両者の中間の洗浄性を示した。
したがって、SP値の高い溶剤は、感光性着色組成物に混入しないように使用する場合には洗浄効果を有するが、感光性着色組成物に混入した場合には、逆に、付着、乾燥した感光性着色組成物の溶解性を低下せしめるものである。一方、SP値の低い溶剤は、感光性着色組成物に混入した場合には、表1に示したように、洗浄液として不適であったメトアセ/シクロヘキサノン(95/5)やPGMEAも洗浄力を示し、むしろ洗浄効果が増加するものである。
上記の結果より、より好ましい洗浄液としてSP値の低い溶剤が好ましく、具体的には、SP値8.56のジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(EDM)が挙げられる。
【0044】
(実施例13〜16)
次に、洗浄液に感光性着色組成物のモノマーを添加した場合の洗浄性を示す。表5は、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を10重量%添加した場合の洗浄液の洗浄性を示した。比較のため、表5の右欄には、モノマー添加なしの場合の結果も併記した。
【0045】
【表5】

【0046】
表5に示すように、洗浄液にモノマーを添加した場合には、モノマー添加なしの場合に比べ、付着、乾燥した感光性着色組成物の溶解性は大幅に向上している。
【0047】
(実施例17〜20、比較例12)
次に、洗浄効果を高めるために、洗浄液に添加するモノマーの適正量を求めた。洗浄液の溶剤はEDMで、モノマーはDPHAである。このとき、感光性着色組成物に溶剤が混入していない場合と、溶剤としてPGMEAが混入した場合の2つの場合について、洗浄液の洗浄性検討を行なった。その結果を表6に示した。
【0048】
【表6】

【0049】
表6に示すように、感光性着色組成物に溶剤が混入していない場合には、洗浄液に添加されるモノマーは1〜10重量%でも十分な洗浄力を示した。しかし、感光性着色組成物に溶剤としてPGMEAが混入した場合には、洗浄効果はやや低下し、モノマー量10重量%では洗浄できなかった。
したがって、洗浄液に添加する前記感光性着色組成物に含まれるモノマーの量は、1〜10重量%が好ましく、より好ましくは、1〜5重量%である。
【0050】
(実施例21〜28)
次に、洗浄液に感光性着色組成物の分散剤を添加した場合の洗浄性を示す。表7は、分散剤としてDisperbyk170(ビックケミー社製)を5重量%添加した場合の洗浄液の洗浄性を示した。比較のため、表7の右欄には、分散剤添加なしの場合の結果も併記した。
【0051】
【表7】

【0052】
表7に示すように、感光性着色組成物に溶剤が混入していない場合、および溶剤としてPGMEAが混入した場合ともに、十分な洗浄力を示した。特に、EDMに分散剤を添加した洗浄液は優れた洗浄効果を示した。


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも成分として含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物を洗浄するための洗浄液であって、
前記洗浄液が、溶解度パラメータ(SP値)が8.6以下または8.9以上の溶剤を主成分とすることを特徴とする感光性着色組成物用洗浄液。
【請求項2】
前記洗浄液に、前記感光性着色組成物に含まれる成分の少なくとも1種類を1〜10重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性着色組成物用洗浄液。
【請求項3】
前記洗浄液に含有される前記感光性着色組成物に含まれる成分が、モノマーまたは分散剤であることを特徴とする請求項2に記載の感光性着色組成物用洗浄液。
【請求項4】
前記洗浄液の溶剤がジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性着色組成物用洗浄液。
【請求項5】
平均粒径1μm以下の顔料と感光性樹脂成分と分散剤と溶剤とを少なくとも成分として含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物を洗浄するための洗浄液の評価方法であって、
基材上に塗布し一定時間乾燥させた前記感光性着色組成物を、前記洗浄液に浸漬したときの再溶解性を評価することを特徴とする感光性着色組成物用洗浄液の評価方法。





























【公開番号】特開2006−291191(P2006−291191A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71897(P2006−71897)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】