説明

感圧式接着剤および感圧式接着フィルム

【課題】 本発明の目的は、光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じず、光漏れ現象も発生しないだけではなく、リワーク性にも優れる感圧式接着層の形成が可能な感圧式接着剤、及び該感圧式接着剤を用いてなる感圧式接着フィルムを提供すること。
【解決手段】 水酸基および/またはカルボキシル基を有し、ガラス転移温度が−60〜0℃の共重合体(C)と、イソシアネート系硬化剤(D)とを含有する感圧式接着剤であって、前記共重合体(C)が、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)、及び他の単量体(c)をラジカル共重合してなるものであり(但し、(a)〜(c)の合計を100重量%とする)、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧式接着剤およびこの感圧式接着剤を用いた感圧式接着フィルムに関する。詳しくは、本発明は、ガラス等の被着体に光学フィルムを貼着する際に好適に用いられる感圧式接着剤に関する。さらに詳しくは、貼着後、高温高圧下、高温下、高温高湿度下に置かれても、被着体を汚染させることなく剥離可能な粘着フィルム(感圧式接着フィルム)を形成し得る感圧式接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置は、電子計算機、電子時計、携帯電話、テレビジョン等の家庭用・業務用電化製品、車両搭載用の機器等に活用され、様々な過酷な条件下で使用される機会が多くなっている。これらの表示装置を構成する表示部材には、偏光フィルムや位相差フィルム等の各種光学フィルムが用いられている。
偏光フィルムや位相差フィルム等の各種光学フィルムは、感圧式接着剤を用いて、被着体であるガラスまたは他の光学フィルムに貼着される。一旦、被着体に貼着した後、貼着状態に不具合が発見された場合、ガラス等から偏光フィルムまたは位相差フィルムが剥がされ、新たな偏光フィルムまたは位相差フィルムが貼着される。この貼り直す作業のことを「リワーク」という。リワークの際には、感圧式接着層が被着体表面に残存しないことが要求されている。
【0003】
ところで、偏光フィルムは、色素で染色された延伸ポリビニルアルコールフィルムが、トリアセチルセルロース系保護フィルムまたはシクロオレフィン系保護フィルムで挟まれた構成のものである。偏光フィルムは、これら材料の特性故に寸法安定性に乏しく、特に高温下または高温高湿条件下では、フィルムの収縮による寸法の変化が激しい。
【0004】
光学フィルム/感圧式接着層/被着体からなる積層体が、高温下または高温高湿条件下に置かれ、光学フィルムの寸法が変化すると、感圧式接着層と被着体との貼着界面に気泡が生じたり(発泡)、光学フィルムが被着体から浮き上がったり、または剥がれたりする。
そこで、用いられる感圧式接着剤の主たるポリマー成分の分子量または架橋度を調整して、接着力を大きくすることによって、光学フィルムの寸法変化に抗して、過酷な環境下でも発泡、浮き・剥がれが生じないようにする試みが従来なされてきた。
【0005】
しかし、単に接着力を高くすることによって光学フィルムの寸法変化に抗しようとすると、高温下または高温高湿条件下で生じる光学フィルムの寸法変化に起因する応力分布が不均一となり、光学フィルムの四隅に集中したり周辺端部に集中したりする。その結果、光学フィルムが液晶表示装置に用いられる偏光フィルムである場合、液晶表示装置の四隅や周辺端部から光が漏れる、いわゆる「光漏れ現象」が発生するという問題が生じた。
【0006】
過酷な条件下でも被着体との界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じない光学フィルム貼着用の粘着剤(感圧式接着剤)の開発に関し、以下の技術が提案されてきた。
【0007】
アルキル(メタ)アクリレートと、架橋剤に対する反応性を有する重合性単量体との共重合体でありかつ重量平均分子量が100万以上である高分子量(メタ)アクリル系共重合体と、重量平均分子量3万以下の低分子量(メタ)アクリル系共重合体と、架橋構造を形成可能な官能基を分子内に少なくとも2個有する多官能性化合物とからなる偏光板用粘着剤、ならびにこの粘着剤から形成された層を有する偏光板が提案されている(特許文献1:特開平10−279907号公報)。
【0008】
光透過性フィルムの一面に(メタ)アクリル系樹脂と染料を含有する粘着剤層を設けてなり、この(メタ)アクリル系樹脂が、重量平均分子量が20万以上の高分子量体と重量平均分子量が20万未満の低分子量体とから構成され且つ官能基を有する、電子ディスプレイ用着色粘着剤付フィルムが提案されている(特許文献2:特開2002−372619号公報)。
【0009】
樹脂成分として、(A)重量平均分子量50万〜200万の(メタ)アクリル酸エステル単独重合体または共重合体と、(B)重量平均分子量5000以上50万未満の(メタ)アクリル酸エステル単独重合体または共重合体とを含み、かつ(A)成分および(B)成分のうちの少なくとも一方が、分子中に窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体である粘着剤組成物が提案されている(特許文献3:特開2001−89731号公報)。
【0010】
反応性官能基を有する単量体および他の単量体をラジカル共重合してなる重量平均分子量100万以上200万以下の共重合体と、この共重合体の存在下でカルボキシル基を有する単量体および他の単量体をラジカル共重合してなる重量平均分子量1万以上10万以下の共重合体(B)と、共重合体(A)および/または共重合体(B)と反応可能な反応性官能基を少なくとも2個有する多官能性化合物とからなる粘着剤、およびこの粘着剤からなる粘着層が光学部材の少なくとも一方の面に形成されている光学部材が提案されている(特許文献4:特開2004−331697号公報)。
【0011】
さらに、アルキル(メタ)アクリレート共重体、酸化防止剤、および硬化剤からなる粘着組成物で、この粘着組成物のゲル分率を調整した粘着組成物が提案されている(特許文献5:特開2003−49143号公報)。
【0012】
これらの特許文献1〜5に記載される感圧式接着剤は、過酷な条件下での使用に耐えうるように改善されているが、ガラス等の被着体に貼付後、高温高圧下、高温下、高温高湿下に曝した後に貼り直しを行った場合、感圧式接着剤と被着体であるガラスの密着性が高まっているため、被着体であるガラスに感圧式接着剤が残ってしまうことがある。
かつては、高温高圧下、高温下、高温高湿下に曝した後に剥されることはなく、貼り合わせ直後に不具合を確認し、不具合があった場合にリワークが可能であれば問題はなかった。しかし最近では、作業工程の短縮、リサイクルの観点から、高温高圧下、高温下、高温高湿下に曝した後、偏光フィルムを剥離するケースが増えてきたため、リワークの要求特性が高くなっている。
【特許文献1】特開平10−279907号公報
【特許文献2】特開2002−372619号公報
【特許文献3】特開2001−89731号公報
【特許文献4】特開2004−331697号公報
【特許文献5】特開2003−49143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じず、光漏れ現象も発生しないだけではなく、リワーク性にも優れる感圧式接着層の形成が可能な感圧式接着剤、およびこの感圧式接着剤を用いてなる感圧式接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によれば、水酸基および/またはカルボキシル基を有し、ガラス転移温度が−60〜0℃の共重合体(C)と、イソシアネート系硬化剤(D)とを含有する感圧式接着剤であって、
前記共重合体(C)が、
(1)置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)、および前記(a)および(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)であって水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含む単量体(c)をラジカル共重合してなるものであり(但し、(a)〜(c)の合計を100重量%とする)、
(2)高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含み、
(2−1)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線上完全に独立した、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A1)のピークと、重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B1)のピークとを含み、前記高分子量成分(A1)のピークと前記低分子量成分(B1)のピークとの面積比が、(A1)/(B1)=60/40〜90/10であるか、もしくは、
(2−2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線の最小値の両側に位置する、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A2)のピークと重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B2)のピークとを含み、前記高分子量成分(A2)のピークと前記低分子量成分(B2)のピークとの面積比が、(A2)/(B2)=60/40〜90/10であるか、もしくは
(2−3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおいて、分子量15万以上の重合体分子からなり重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A3)のピークと、分子量15万未満の重合体分子からなり重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B3)のピークとを含み、前記高分子量成分(A3)ピークと前記低分子量成分(B3)ピークとの面積比が、(A3)/(B3)=60/40〜90/10である、
ことを特徴とする感圧式接着剤が提供される。
【0015】
本発明の別の一側面によれば、 以下の(I)〜(III)を含む、感圧式接着剤の製造方法が提供される:
(I)置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)および前記(a)(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)であって水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含む単量体(c)を、重合転化率が60〜90%になるまでラジカル共重合して、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分を含む共重合体を得ること;
(II)次いで単量体(c)を必要に応じて加え、重合転化率が80〜100%になるまで前記(a)〜(c)をさらにラジカル共重合し(但し、(a)〜(c)の合計を100重量%とする)、
(2−1)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線上完全に独立した、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A1)のピークと、重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B1)のピークとを含み、前記高分子量成分(A1)のピークと前記低分子量成分(B1)のピークとの面積比が、(A1)/(B1)=60/40〜90/10であるか、もしくは、
(2−2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線の最小値の両側に位置する、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A2)のピークと重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B2)のピークとを含み、前記高分子量成分(A2)のピークと前記低分子量成分(B2)のピークとの面積比が、(A2)/(B2)=60/40〜90/10であるか、もしくは
(2−3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおいて、分子量15万以上の重合体分子からなり重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A3)のピークと、分子量15万未満の重合体分子からなり重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B3)のピークとを含み、前記高分子量成分(A3)ピークと前記低分子量成分(B3)ピークとの面積比が、(A3)/(B3)=60/40〜90/10である、
高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含む共重合体(C)であって、水酸基および/またはカルボキシル基を有し、ガラス転移温度が−60〜0℃である共重合体(C)を得ること;および
(III)前記共重合体(C)とイソシアネート系硬化剤(D)とを混合すること。
【0016】
本発明のさらに別の一側面によれば、偏光フィルムおよび位相差フィルムからなる群より選ばれる光学フィルムと、前記光学フィルムの少なくとも一方の面に設けられた感圧式接着層であって、上記本発明の一側面による感圧式接着剤から形成される感圧式接着層とを含む、感圧式接着フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下または高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じず、光漏れ現象も発生しないだけではなく、リワーク性にも優れる感圧式接着層の形成が可能な感圧式接着剤、及び該感圧式接着剤を用いてなる感圧式接着フィルムを提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る感圧式接着剤は、感圧式接着剤の主たる成分である共重合体(C)とイソシアネート系硬化剤(D)とを含み、両者が反応することにより感圧式接着層を形成する。
共重合体(C)は、水酸基および/またはカルボキシル基を有し、そのガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)は−60〜0℃である。共重合体(C)は、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)、および上記(a)(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)を構成成分とする。この単量体(c)は、少なくとも、水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含んでいる。
【0019】
この共重合体(C)は、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含有する。
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)の排出曲線の示す形態によって、共重合体(C)には以下の3つのタイプがある。
(2−1) 高分子量成分(A1)と低分子量成分(B1)とが、GPC上、完全に独立したピークを形成しているタイプ。
(2−2) 高分子量成分(A2)と低分子量成分(B2)とが、GPCの排出曲線上の最小値(谷部)で繋がった連続ピークを示すタイプ。この最小値を境に高分子量側を高分子量成分(A2)、低分子量側を低分子量成分(B2)とする。多くの場合、最小値は、分子量約分子量約2万〜20万の間にある。
(2−3) 高分子量成分(A3)と低分子量成分(B3)とが、GPCの排出曲線上の連続ピークを示し、明確な最小値を有しないタイプ。この場合は、分子量15万を境に、高分子量側を高分子量成分(A3)、低分子量側を低分子量成分(B3)とする。
【0020】
共重合体(C)に含まれる高分子量成分(A)と低分子量成分(B)は、それぞれ上記(2−1)〜(2−3)のいずれかのタイプに分類されて特定される、(A1)と(B1)、(A2)と(B2)、(A3)と(B3)のいずれかである。いずれの特定方法によっても、高分子量成分(A)は重量平均分子量が50万〜220万と規定され、低分子量成分(B)は重量平均分子量が1000〜10万と規定され、GPCにおいて高分子量成分(A)ピークと低分子量成分(B)ピークとの面積比は(A)/(B)=60/40〜90/10である。
【0021】
共重合体(C)を構成する、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)とは、水酸基やカルボキシル基等の官能基を有しないアルキルメタクリレート(つまり、エステル部のアルキル基がこれらの官能基を持たないアルキル基である。)という意である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有していてもよい。このアルキル基の炭素数は、反応性(重合性)の観点から、1〜6であることが好ましい。
【0022】
具体的には、単量体(a)として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタアクリレート等を挙げることができる。これらは、単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0023】
置換基を有しないアルキルアクリレート(b)とは、水酸基やカルボキシル基等の官能基を有しないアルキルアクリレート(つまり、エステル部のアルキル基がこれらの官能基を持たないアルキル基である。)という意である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有していてもよい。このアルキル基の炭素数は、貼着後の耐久性試験において発泡しにくくなることから、2〜6であることが好ましい。
【0024】
具体的には、単量体(b)として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート等を挙げることができる。これらは、単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記(a)(b)と共重合可能なその他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)としては、次の(c1)〜(c3)が挙げられる。
(c1):水酸基および/またはカルボキシル基を有し、かつエチレン性不飽和二重結合を有する単量体。共重合体(C)に水酸基および/またはカルボキシル基を導入するために用いられる。
(c2):水酸基やカルボキシル基以外の置換基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体。
(c3):上記の単量体のいずれにも分類されないエチレン性不飽和二重結合を有するその他の単量体。
単量体(c2)および(c3)は、任意に使用される成分である。
【0026】
水酸基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c1)としては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルのような、エステル部分に水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
ここで、「2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」とは、「2−ヒドロキシエチルアクリレート」、「2−ヒドロキシエチルメタクリレート」と併記すべきところを略記したものである。他も同様である。
【0027】
カルボキシル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c1)としては、アクリル酸、メタクリル酸、β―カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸等が挙げられる。
【0028】
これら例示の単量体(c1)は、いずれか1種類を用いてもよいし、複数種を任意に組み合わせて使用してもよい。
上記単量体(c1)と併用し得る、その他の置換基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、たとえば、アミノ基、アミド基、マレイミド基、イタコンイミド基、ヌクレンイミド基およびエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の置換基と、エチレン性不飽和二重結合とを有する単量体が挙げられる。単量体(c2)も、複数種を併用することができる。
【0029】
アミノ基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
アミド基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0031】
マレイミド基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0032】
イタコンイミド基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等が挙げられる。
【0033】
ヌクレンイミド基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンヌクレンイミド等が挙げられる。
【0034】
エポキシ基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記の単量体のいずれにも分類されない、エチレン性不飽和二重結合を有するその他の単量体(c3)としては、
スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン等のジビニル系単量体;
1、4−ブチルジアクリレート、1、6−ヘキシルジアクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート系単量体;および
2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェイト等のリン酸基含有単量体等が挙げられる。
【0036】
なかでも、ジビニル系単量体またはジアクリレート系単量体等の多官能単量体を用いると、形成される感圧式接着層の耐久性(耐熱性、耐湿熱性)が向上するので好ましい。但し、共重合体(C)を得る際に多官能単量体を用いるとゲル化し易いので、少量用いることが好ましい。具体的には、共重合体(C)の形成に用いられる単量体(a)(b)(c)の合計を100重量%とした場合、多官能単量体の配合量は0.001〜3重量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
共重合体(C)の形成に用いられる単量体(a)(b)(c)の合計を100重量%とした場合、後述するように高温高圧下、高温下、高温高湿下に曝した後の適切なリワーク性を得る観点から、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)の量は、5重量%以上〜15重量%未満であることが重要である。
さらに、共重合体(C)のTgは−60〜0℃であることが重要であり、−55〜−5℃であることが好ましい。このTgが−60℃よりも低いと、高温下、高温高湿下で感圧式接着層の浮き・剥がれ、発泡等が生じ易くなる。
【0038】
一般に、感圧式接着層を形成するための主たる成分は、Tgが0℃以下の領域にあることが必要である。一般的なアクリル系感圧式接着剤の場合、主成分であるアクリル系共重合体のTgを下げるためには、それを構成する単量体として、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)を主成分とする必要がある。一方、Tgを上昇させる成分である、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は、全く使用されないか、使用される場合であっても、Tgを制御するためにごく少量しか使用されない。
【0039】
本発明においても、共重合体(C)のTgが−60〜0℃であるようにするためには、共重合体(C)の形成に用いられる単量体は、量的には、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)が主たる成分である必要がある。
しかし、本発明者らの知見によると、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)が多すぎると、形成される共重合体の主鎖の柔軟性が高くなり過ぎる。その結果、そのような共重合体と後述する硬化剤(D)との反応によって形成される感圧式接着層は、高温下または高温高湿度下において過度に軟化するので、被着体に感圧式接着フィルムを貼着した後に高温下または高温高湿度下に長期間曝すと、浮き・剥がれ、発泡等が生じ易くなることが判明した。
【0040】
そこで、一般的なアクリル系感圧式接着剤の場合には全く使用されないか、使用される場合であってもTgを制御するためにごく少量しか使用されない、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)を5重量%以上〜15重量%未満と、従来のアクリル系感圧式接着剤に比してやや多めに使用することが、本発明において特徴的であり、極めて重要である。
すなわち、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)のメチル基の存在により、形成される共重合体(C)の主鎖の立体障害が大きくなり、主鎖の並進、振動、回転運動が抑制される。その結果、被着体に感圧式接着フィルムを貼着した後に高温下または高温高湿度下に長期間曝しても、浮き・剥がれ、発泡等が生じないという効果を発揮すると考えられる。
【0041】
置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)が少なすぎると、主鎖の並進、振動、回転運動が大きくなりすぎるので、上記のような過酷な環境に耐えられず、浮き・剥がれ、発泡等が生じ易くなる。
一方、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)が多すぎると主鎖の並進、振動、回転運動が抑制され過ぎるので、感圧式接着層が剛直になる。この場合、上記のような過酷な環境によって基材たる光学フィルムが寸法変化すると、剛直な感圧式接着層がその寸法変化に抵抗し過ぎてしまい、その抵抗力が基材たる光学フィルムの周辺端部に集中し、その結果、周辺端部の光漏れ現象が発生してしまう。
置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)が15〜35重量%だと、耐久性に優れると共に光漏れ現象も生じにくい。ところで、耐久性よりも光漏れに対し厳しい要求が課される場合がある。そのような場合には、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)を5重量%以上〜15重量%未満とすることが重要である。例えば、大画面テレビ用の光学フィルムには、光漏れに対して厳しい要求が課されるので、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は10〜15重量%未満が好ましい。
【0042】
共重合体(C)は、後述するイソシアネート系硬化剤(D)と反応するための官能基として、水酸基および/またはカルボキシル基を有する必要がある。水酸基やカルボキシル基の導入のために用いられる、水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)の量は、共重合体(C)を構成する単量体の合計100重量%中、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましい。この単量体(c1)が0.01重量%未満であると、感圧式接着層としての凝集力が不足し、高温下または高温高湿下で感圧式接着フィルムの浮き・剥がれ、発泡等が生じ易くなる。一方、この単量体(c1)が10重量%を超えると、架橋度が高くなりすぎて感圧式接着性(粘着性)が乏しくなるので好ましくない。
【0043】
上記のように、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)の量、水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)の量、および共重合体(C)のTgを考慮して、共重合体(C)の形成に用いられる、(a)および(c1)以外の単量体の量、すなわち置換基を有しないアルキルアクリレート(b)、水酸基やカルボキシル基以外の置換基およびエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c2)、および上記の単量体のいずれにも分類されないエチレン性不飽和二重結合を有するその他の単量体(c3)の量を、適宜選択することができる。
たとえば、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)は、45重量%以上であることが好ましく、50〜78重量%であることがより好ましい。
【0044】
共重合体(C)は、上記したように高分子量成分(A)と低分子量成分(B)の2つの共重合体成分を含有する。この二つの共重合体成分は、GPCの排出曲線のピーク形状により、次の三つのタイプに分けられる。
すなわち、(2−1)共重合体(C)が、GPCの排出曲線上、完全に独立したピークを有する場合には、共重合体(C)は、高分子量側を高分子量成分(A1)とし、低分子量側を低分子量成分(B1)として、(A1)と(B1)を含有する。
(2−2)共重合体(C)が、GPCの排出曲線上、連続したピークを有し、最小値(谷部)、具体的には分子量約2万〜20万の間に最小値を有する場合には、共重合体(C)は、その最小値を境に高分子量側を高分子量成分(A2)とし、低分子量側を低分子量成分(B2)として、(A2)と(B2)を含有する。
(2−3)共重合体(C)が、GPCの排出曲線において分子量約2万〜20万の間に明確な最小値を有しない場合は、共重合体(C)は、分子量15万を境に、分子量15万以上の重合体分子からなる共重合体を高分子量成分(A3)とし、分子量15万未満の重合体分子からなる共重合体成分を低分子量成分(B3)として、(A3)と(B3)を含有する。
【0045】
上記のように特定される高分子量成分(A1)、(A2)、および(A3)の重量平均分子量は、50万〜220万であり、70万〜200万であることが好ましい。上記のように特定される低分子量成分(B1)、(B2),および(B3)の重量平均分子量は、1000〜10万であり、5000〜8万であることが好ましい。
高分子量成分(A)の重量平均分子量が50万よりも小さいと、後述するイソシアネート系硬化剤(D)と反応させても感圧式接着層の凝集力が不足し、浮き・剥がれ、発泡等が生じる。一方、高分子量成分(A)の重量平均分子量が220万より大きいと、粘度が高くなり塗工等の作業性が劣り、光学特性を維持できなくなる。
一方、重量平均分子量が1000より小さい低分子量成分(B)を用いると、凝集力が不足して浮き・剥がれ、発泡等が生じやすい。また、重量平均分子量が10万を超える低分子量成分(B)を用いると、フィルムの伸縮に起因する応力集中を十分に吸収・緩和できなくなり、光漏れ現象が発生する。
【0046】
さらに、高分子量成分(A1)、(A2)、(A3)と低分子量成分(B1)、(B2)、(B3)とのGPCにおけるピークの面積比は、(A1)/(B1)=60/40〜90/10であるか、または(A2)/(B2)=60/40〜90/10であるか、または(A3)/(B3)=60/40〜90/10であることが重要であり、それぞれ65/35〜85/15であることが好ましい。
低分子量成分(B)の占める割合が少なすぎると、光学フィルムの伸縮に起因する応力集中を十分に吸収・緩和できなくなり、光漏れ現象が発生する。一方、低分子量成分(B)の占める割合が多すぎると、感圧式接着層の凝集力が不足して浮き・剥がれ、発泡等が生じやすい。
さらに、60/40〜90/10の割合で高分子量成分(A)と低分子量成分(B)が含まれていることにより、過酷な条件下に置かれた後でもリワーク性が良好な接着層を得ることができる。
【0047】
このような共重合体(C)は、種々の方法で得ることができる。たとえば、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とをそれぞれ別個に得ておき、両者を混合することよって得ることもできるし、高分子量成分(すなわち、上記(A1)〜(A3)のいずれかを構成する高分子量成分)を含む共重合体を得た後、得られた共重合体の存在下で単量体を重合して低分子量成分を得、両者を含む組成物として共重合体(C)を得ることもできる。
高温下または高温高湿下での光学特性を維持する観点からは、後者の方法がより好ましい。
【0048】
以下に、より好ましい方法である、高分子量成分を得た(第1段階の重合)後に、得られた高分子量成分の存在下で単量体を重合(第2段階の重合)して低分子量成分を得る方法について、より詳細に説明する。
たとえば、高分子量成分は、第1段階で使用する上記単量体(a)〜(c)の合計100重量部に対して、0.01〜1重量部の重合開始剤、さらに好ましくは0.01〜0.1の重合開始剤を用いて、塊状重合、溶液重合などの方法、好ましくは溶液重合により得られる。
【0049】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物が用いられ、重合開始剤は2種類以上を併用しても良い。
溶液重合の場合、重合溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等が用いられる。重合溶媒は2種類以上混合して用いても良い。
【0050】
重合開始剤のうちアゾ系化合物としては、たとえば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等が挙げられる。
【0051】
有機過酸化物としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0052】
まず、上記のように重合開始剤の配合量を制御して、上記単量体(a)〜(c)を、重合転化率が60〜90%になるまで重合することが好ましく、この第1段階の重合によりまず系中に、共重合体(C)の高分子量成分(A)を構成する共重合体を得ることができる。この第1段階の重合により得られる共重合体は、高分子量成分(A)を主体とするが、それ以外の共重合成分を含んでいてもよい。
ここで、重合転化率とは、単量体を重合して得られる共重合体の重量を、原料として用いた単量体の総重量で除した値である。より具体的には、重合途中の溶液をごく少量サンプリングして、150℃で20分程度加熱し、固形分を求める。単量体は前記加熱条件では揮発してしまうが、共重合体は揮発しない。そこで、溶液の固形分量を求めることによって、含まれる共重合体の量を求めることができ、それにもとづいて重合転化率が算出される。
【0053】
次いで、必要に応じて新たな単量体(a)〜(c)および/または重合開始剤を加え、第2段階の重合として、第1段階の重合後に系中に残った単量体(および必要に応じて添加される新たな単量体)をさらにラジカル重合させて、低分子量成分(B)を形成する。これにより、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)を含む共重合体(C)を得ることができる。
第2段階の重合での共重合体(C)の重合転化率は80〜100%であることが好ましく、90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることがさらに好ましい。すなわち、第2段階の重合工程で必要に応じて追加する単量体も含め、重合に使用した単量体の合計100重量%のうち、反応系中に残留する単量体が好ましくは20重量%未満になるまで、より好ましくは10重量%未満になるまで、さらに好ましくは5重量%未満になるまでラジカル共重合して低分子量成分を形成することによって、共重合体(C)を得ることができる。
【0054】
この第2段階の重合では、新たに単量体(c)を追加することが好ましく、なかでも、水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c1)を追加することがより好ましい。単量体(c1)は、上記したように高分子量成分(A)および低分子量成分(B)の重合に使用される全単量体の合計100重量%中、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましい。このうち、第1段階の重合の際に使用される単量体(c1)の量は、0.008〜8重量%であることが好ましく、0.04〜6重量%であることがより好ましく、第2段階の重合の際に新たに追加される単量体(c2)の量は、0.002〜2重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%であることがより好ましい。単量体(c1)を追加し、低分子量成分(B)中にも積極的に水酸基および/またはカルボキシル基を導入することによって、光学フィルムをカットした際の端部からの感圧式接着剤のはみ出し防止に効果を奏する。
【0055】
第2段階の重合で低分子量成分(B)を形成する際には、第1段階で用いた重合開始剤よりも過量の、具体的には第1段階で用いた重合開始剤量の5〜50重量倍程度の重合開始剤を使用することが好ましい。より具体的には、第2段階で使用される単量体(a)〜(c)の合計100重量部に対して、0.05〜50重量部の重合開始剤、さらに好ましくは0.05〜5重量部の重合開始剤を使用することが好ましい。
さらに、分子量を低分子側に制御するために、低分子量成分(B)の合成時には、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用しても良い。
このようにしてGPCにおいて、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)との面積比が、(A)/(B)=60/40〜90/10の共重合体(C)を好ましく得ることができる。
【0056】
上記のようにして得られた水酸基および/またはカルボキシル基を有する共重合体(C)と、イソシアネート系硬化剤(D)とを混合することによって、感圧式接着剤を得ることができる。イソシアネート系硬化剤(D)は、感圧式接着フィルムを得る際に、共重合体(C)の水酸基および/またはカルボキシル基と反応し、感圧式接着層を形成する。
混合に際しては、共重合体(C)は有機溶剤中に溶解した溶液状態であることが好ましい。
【0057】
イソシアネート系硬化剤(D)としては、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、2〜4個有するものがより好ましい。
イソシアネート系硬化剤(D)を用いることにより、安定した感圧式接着物性が得られ、基材への密着性にもれているため、有用な硬化剤である。
【0058】
イソシアネート系硬化剤(D)の例としては、
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;
これらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;
これらポリイソシアネート化合物のビュレット体またはイソシアヌレート体;および
これらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。これらは単独で用いられるほか、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
イソシアネート系硬化剤(D)は、共重合体(C)100重量部に対して、0.01〜5重量部用いることが好ましい。0.01重量部未満であると、感圧式接着層の凝集力が低下しやすく、15重量部を超えると被着体への感圧式接着性が乏しくなるので好ましくない。さらに好ましくは0.03〜10重量部であり、特に0.05〜2重量部が好ましい。
【0059】
感圧式接着剤には、イソシアネート系硬化剤(D)以外の硬化剤、たとえばエポキシ系硬化剤、エチレンイミン系硬化剤、金属キレート系硬化剤、アミン系硬化剤の1種以上を、イソシアネート系硬化剤(D)と組み合わせて使用することができる。これらのイソシアネート系硬化剤(D)以外の硬化剤を配合する場合の配合量は、共重合体(C)100重量部に対して0.01〜8重量部であることが好ましい。
【0060】
エポキシ系硬化剤の例としては、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0061】
エチレンイミン系硬化剤の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0062】
金属キレート硬化剤の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。
【0063】
さらに、アミン系硬化剤の例としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメチレン樹脂などが挙げられる。
【0064】
感圧式接着剤には、さらにシランカップリング剤を配合することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シランカップリング剤は、感圧式接着層とガラスとの接着性向上に効果があり、高温高湿度下における感圧式接着フィルムの浮き・剥がれ、発泡等の発生防止に特に効果を奏するものである。
【0065】
感圧式接着剤中のシランカップリング剤の含有量は、共重合体(C)100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましい。0.01重量部未満であると、その物性の改善効果が乏しく、2重量部を越えると、感圧式接着剤が高価になるのみならず、浮き・剥がれ、発泡等の原因となる恐れがある。
【0066】
さらに感圧式接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、感圧式接着付与樹脂、可塑剤、消泡剤、レベリング調整剤等の公知の添加剤の1種以上を任意で配合しても良い。
【0067】
本発明に係る感圧式接着剤を使用することにより、光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下または高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じず、光漏れ現象も発生しないだけではなく、リワーク性にも優れる感圧式接着層の形成が可能となる。
【0068】
次に、上記感圧式接着剤を用いて得られる感圧式接着フィルムについて説明する。
この感圧式接着フィルムは、上記感圧式接着剤からなる感圧式接着層が、各種表示部材に用いられる光学フィルムの少なくとも一方の面に形成されているものである。
感圧式接着フィルムは、各種表示部材の形成に好適に用いられ、たとえば、液晶表示部材のガラスに対して、好適に貼付し、使用される。
光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム等が挙げられ、偏光フィルムが好ましい。
【0069】
感圧式接着フィルムは、感圧式接着剤を上記の光学フィルム表面に塗工し、乾燥して感圧式接着層を形成することにより形成できる。好ましくは、得られた感圧式接着層上に剥離シートを積層する。必要に応じて、接着層のエージングをしてもよい。
あるいは、光学フィルム上の感圧式接着層の形成は、感圧式接着剤を剥離シートに塗工し、乾燥して感圧式接着層を形成したのち、これを光学フィルムと貼り合わせて、剥離シート上の感圧式接着層を光学フィルム上に転写する、いわゆる「転写法」によることもできる。
【0070】
感圧式接着層の形成は、通常使用されている塗布装置を用いて行なうことができる。塗布装置としては、たとえば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーターなどが挙げられる。
感圧式接着層の厚み(乾燥後)は、1〜200μmであることが好ましい。1μm未満であると感圧式接着性が乏しくなる恐れがあり、200μmを越えると感圧式接着フィルムの製造、取り扱いが難しくなる恐れがある。
【0071】
上記のようにして得られる感圧式接着層は、25℃における貯蔵弾性率が、0.01×105Pa〜5×105Paであることが好ましい。より好ましくは、0.05×105〜3×105である。貯蔵弾性率は、TAインスツルメント・ジャパン社製の粘弾性試験機「RDA−III」を用いて測定することができる。
【0072】
感圧式接着層の25℃における貯蔵弾性率が0.01×105Paより小さい場合には、ガラス等の被着体に貼り合わせた後、高温下または高温高湿下に長期間曝すと、感圧式接着層が軟化して、浮き・剥がれ、発泡等が発生しやすくなる恐れがある。一方、感圧式接着層の25℃における貯蔵弾性率が5×105Paより大きい場合には、耐熱性は十分に高くなるが、室温では感圧式接着層は硬いので、被着体に感圧式接着フィルムを貼り合わせる際、感圧式接着層が被着体に十分になじまず、感圧式接着力が低下する傾向にある。
【実施例】
【0073】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0074】
以下の製造例および比較製造例においては便宜的に、重量平均分子量が10万以上の共重合成分を「高分子量成分(A)」、重量平均分子量が10万未満の共重合成分を「低高分子量成分(B)」として連番を付けた。また、共重合体は、本件発明の実施形態であるか否かに関わらず「C」として連番を付けた。
【0075】
<製造例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記載する。)にn−ブチルアクリレート93部、メチルメタクリレート5部、アクリル酸1.5部、アセトン100部、AIBN(2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、以下「AIBN」と記述する。)0.03部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で転化率が75%になるまで4.5時間反応させ、重量平均分子量が100万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、転化率が100%になるまでさらに6時間反応させ、Tgが−47.4℃の共重合体(C1)の溶液を得た。
【0076】
共重合体(C1)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が100万、Tgが−47.8℃の高分子量成分(A1−1)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が3万、Tgが−46.0℃の低分子量成分(B1−1)とを含有していた。高分子量成分(A1−1)と低分子量成分(B1−1)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−1)/(B1−1)=75/25であった。
【0077】
なお、高分子量成分(A1−1)のTgは、使用した各単量体が均等に重合したものとして、各単量体から得られる単独重合体のガラス転移温度をもとに、以下の式(1)により求めた値である。低分子量成分(B1−1)のTgは、未反応で残った各単量体と追加した各単量体の量および各単量体から得られる単独重合体のガラス転移温度をもとに、以下の式(1)により求めた値である。共重合体(C1)のTgは、共重合体(C1)を構成する各単量体(すなわち配合した単量体)から得られる単独重合体のガラス転移温度をもとに、以下の式(1)により求めた値である。
【0078】
式(1)(FOXの式):
1/Tg =〔(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wn/Tgn)〕
/100 (ここで、温度は絶対温度である。)
Wn:単量体nの重量%
Tgn:単量体nからなる単独重合体のガラス転移温度
【0079】
<製造例2>
反応容器にn−ブチルアクリレート87.98部、n−ブチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、ライトアクリレート4EG−A(PEG#200ジアクリレート、共栄社化学(株)製、以下同じ)0.02部、アセトン100部、AIBN0.03部を仕込み、製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで4.5時間反応させ、重量平均分子量が98万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、転化率が100%になるまでさらに6時間反応させ、Tgが−46.4℃の共重合体(C2)の溶液を得た。
【0080】
共重合体(C2)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が98万、Tgが−46.8℃の高分子量成分(A1−2)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が3.1万、Tgが−45.0℃の低分子量成分(B1−2)とを含有していた。高分子量成分(A1−2)と低分子量成分(B1−2)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−2)/(B1−2)=75/25であった。
なお、微量であったライトアクリレート4EG−Aは除外して、Tgを求めた。
【0081】
<製造例3>
反応容器にn−ブチルアクリレート88部、メチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、アセトン100部、AIBN0.03部を仕込み、製造例1と同様にして、転化率が65%になるまで4時間反応させ、重量平均分子量が101万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部、AIBN0.2部を添加し、転化率が100%になるまでさらに6時間反応させ、Tgが−42.5℃の共重合体(C3)の溶液を得た。
【0082】
共重合体(C3)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が101万、Tgが−42.8℃の高分子量成分(A1−3)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が2.8万、Tgが−41.8℃の低分子量成分(B1−3)とを含有していた。高分子量成分(A1−3)と低分子量成分(B1−3)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−3)/(B1−3)=65/35であった。
【0083】
<製造例4>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート87.98部、メチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.5部、ライトアクリレート4EG−A 0.02部とした以外は製造例2と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が100万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、アクリル酸0.5部の代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部を添加した以外は製造例2と同様に、転化率が100%になるまで反応させ、Tgが−37℃の共重合体(C4)の溶液を得た。
【0084】
共重合体(C4)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が100万、Tgが−43.1℃の高分子量成分(A1−4)と、分子量15万以上の重合体を含有せず、重量平均分子量が3.1万、Tgが−41.8℃の低分子量成分(B1−4)とを含有していた。高分子量成分(A1−4)と低分子量成分(B1−4)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−4)/(B1−4)=75/25であった。
なお、微量であったライトアクリレート4EG−Aは除外して、Tgを求めた。
【0085】
<製造例5>
反応容器に、n−ブチルアクリレート88部、メチルメタクリレート10部、アクリル酸2部、アセトン100部、AIBN0.03部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で転化率が100%になるまで6時間反応させ、重量平均分子量が105万、分子量15万未満の成分は含有しない、Tgが−42.4℃の高分子量共重合体(A1−5)の溶液を得た。得られた共重合体溶液をトルエンで希釈し、不揮発分濃度を40%に調整した。
【0086】
別の反応容器に、n−ブチルアクリレート78部、メチルメタクリレート20部、アクリル酸2部、トルエン150部、AIBN0.03部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で転化率が100%になるまで6時間反応させ、Tgが−42.4℃、重量平均分子量が3万、分子量15万以上の成分は含有しない、低分子量共重合体(B1−5)の溶液を得た(不揮発分濃度:40%)。
【0087】
次いで、高分子量成分(A1−5)と低分子量成分(B1−5)との重量比が、(A1−5)/(B1−5)=75/25になるように両共重合体溶液を混合し、Tgが−31.7℃の共重合体(C5)溶液を得、GPCを測定した。高分子量成分(A1−5)と低分子量成分(B1−5)との面積比は、(A1−5)/(B1−5)=75/25であった。
【0088】
<製造例6>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート87.98部、メチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.5部、ライトアクリレート4EG−A 0.02部とした以外は製造例2と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が98万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、酢酸エチル150部、トルエン50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部、AIBN0.2部を添加し、転化率が100%になるまでさらに6時間反応させ、Tgが−42.8℃の共重合体(C6)の溶液を得た。
【0089】
共重合体(C6)は、GPCにおいて、分子量12万に最小値を有する連続したピークを示し、この最小値よりも高分子量側の高分子量成分(A2−6)と、最小値よりも低分子量側の低分子量成分(B2−6)とを含有し、高分子量成分(A2−6)の重量平均分子量は100万、低分子量成分(B2−6)の重量平均分子量は3万、両者の面積比は、(A2−6)/(B2−6)=75/25であった。
【0090】
<製造例7>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート87.98部、メチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.5部、ライトアクリレート4EG−A 0.02部とした以外は製造例2と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が95万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、酢酸エチル200部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部、AIBN0.2部を添加し、転化率が100%になるまでさらに6時間反応させ、Tgが−42.8℃の共重合体(C7)の溶液を得た。
【0091】
共重合体(C7)は、GPCにおいて、明確な最小値を有しない連続したピークを示し、分子量15万以上の高分子量側の高分子量成分(A3−7)と、分子量15万未満の低分子量成分(B3−7)とを含有し、高分子量成分(A3−7)の重量平均分子量は100万、低分子量成分(B3−7)の重量平均分子量は8万、両者の面積比は、(A3−7)/(B3−7)=75/25であった。
【0092】
<比較製造例1>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部、アセトン75部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が160万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.25部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−54.1℃の共重合体(C8)の溶液を得た。
【0093】
共重合体(C8)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が160万、Tgが−54.3℃の高分子量成分(A1−8)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が3.4万、Tgが−53.4℃の低分子量成分(B1−8)とを含有していた。高分子量成分(A1−8)と低分子量成分(B1−8)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−8)/(B1−8)=75/25であった。
【0094】
<比較製造例2>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート58部、メチルメタクリレート40部、アクリル酸1.5部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が100万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−7℃の共重合体(C9)の溶液を得た。
【0095】
共重合体(C9)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が100万、Tgが−7.4℃の高分子量成分(A1−9)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が2.5万、Tgが−5.8℃の低分子量成分(B1−9)とを含有していた。高分子量成分(A1−9)と低分子量成分(B1−9)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−9)/(B1−9)=75/25であった。
【0096】
<比較製造例3>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート76部、メチルメタクリレート22部、アクリル酸1.5部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が58%になるまで3.4時間反応させ、重量平均分子量が104万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−32.4℃の共重合体(C10)の溶液を得た。
【0097】
共重合体(C10)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が104万、Tgが−32.1℃の高分子量成分(A1−10)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が3万、Tgが−32.9℃の低分子量成分(B1−10)とを含有していた。高分子量成分(A1−10)と低分子量成分(B1−10)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−10)/(B1−10)=58/42であった。
【0098】
<比較製造例4>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート76部、メチルメタクリレート22部、アクリル酸1.5部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が90%になるまで5.5時間反応させ、重量平均分子量が110万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−32.4℃の共重合体(C11)の溶液を得た。
【0099】
共重合体(C11)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が110万、Tgが−32.1℃の高分子量成分(A1−11)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が2.8万、Tgが−34.9℃の低分子量成分(B1−11)とを含有していた。高分子量成分(A1−11)と低分子量成分(B1−11)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−11)/(B1−11)=90/10であった。
【0100】
<比較製造例5>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート76部、メチルメタクリレート22部、アクリル酸1.5部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで4.5時間反応させ、重量平均分子量が100万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、アセトン50部、トルエン150部、アクリル酸0.5部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−32.4℃の共重合体(C12)の溶液を得た。
【0101】
共重合体(C12)は、GPCにおいて、分子量18万に最小値を有する連続したピークを示し、この最小値よりも高分子量側の高分子量成分(A2−12)と、最小値よりも低分子量側の低分子量成分(B2−12)とを含有していた。高分子量成分(A2−12)の重量平均分子量は100万、低分子量成分(B2−12)の重量平均分子量は12万、両者の面積比は、(A2−12)/(B2−12)=75/25であった。
【0102】
<比較製造例6>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート76部、メチルメタクリレート22部、アクリル酸1.5部とし、トルエン75部、アセトン25部、AIBN0.03部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が45万、Tgが−32.1℃の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−32.4℃の共重合体(C13)の溶液を得た。
【0103】
共重合体(C13)は、GPCにおいて、明確な最小値を有しない連続したピークを示し、分子量15万以上の高分子量側の高分子量成分(A3−13)と、分子量15万未満の低分子量成分(B3−12)とを含有していた。高分子量成分(A3−13)の重量平均分子量は45万、低分子量成分(B3−13)の重量平均分子量は3万、両者の面積比は、(A3−13)/(B3−13)=75/25であった。
【0104】
<比較製造例7>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート76部、メチルメタクリレート22部、アクリル酸1.5部とし、アセトン50部、AIBN0.03部とした以外は製造例1と同様にして、転化率が75%になるまで反応させ、重量平均分子量が250万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。
次いで、トルエン200部、アクリル酸0.5部、AIBN0.2部を添加し、製造例1と同様にして、転化率が100%になるまでさらに反応させ、Tgが−32.4℃の共重合体(C14)の溶液を得た。
【0105】
共重合体(C13)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が250万、Tgが−32.1℃の高分子量成分(A1−14)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が3万、Tgが−33.2℃の低分子量成分(B1−14)とを含有していた。高分子量成分(A1−14)と低分子量成分(B1−14)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−14)/(B1−14)=75/25であった。
【0106】
<比較製造例8>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部とし、アセトン100部およびAIBN0.03部の代わりに、酢酸エチル100部、過酸化ベンゾイル0.2部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで10時間反応させ、Tgが−49.3℃、重量平均分子量が150万、分子量15未満の成分を含まない高分子量共重合体(A1−15)の溶液を得た。得られた共重合体溶液を酢酸エチルで稀釈し、不揮発分濃度を20%に調整した。
【0107】
別途、単量体組成を、n−ブチルアクリレート65部、メチルメタクリレート30部、アクリルアマイド5部とし、トルエン150部およびAIBN0.03部の代わりに、トルエン100部、AIBN2部およびn−ラウリルメルカプタン2部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで6時間反応させ、Tgが−17.2℃、重量平均分子量が1万、分子量15万以上の成分を含まない低分子量共重合体(B1−15)の溶液を得た。得られた共重合体溶液をトルエンで希釈し、不揮発分濃度40%に調整した。
【0108】
次いで、高分子量共重合体(A1−15)と低分子量共重合体(B1−15)との重量比が、(A1−15)/(B1−15)=100/150になるように、両共重合体溶液を混合し、Tgが−31.1℃の共重合体(C15)溶液を得た。
共重合体(C15)は、分子量15万未満の重合体を含有せず重量平均分子量が150万、Tgが−49.3℃の高分子量成分(A1−15)と、分子量15万以上の重合体を含有せず重量平均分子量が1万、Tgが−17.2℃の低分子量成分(B1−15)とを含有していた。高分子量成分(A1−15)と低分子量成分(B1−15)とは、GPCの排出曲線において、独立した2つのピークを示し、両者の面積比は、(A1−15)/(B1−15)=75/25であった。
共重合体(C15)を構成する置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は、約18%であった。
【0109】
<比較製造例9>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部とし、アセトン100部およびAIBN0.03部の代わりに、過酸化ベンゾイル0.3部、酢酸エチル40部、トルエン60部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで10時間反応をさせ、Tgが−49.3℃、重量平均分子量が100万、分子量15未満の成分を含まない高分子量共重合体(A1−16)溶液を得た。得られた共重合体溶液を、酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度20%に調整した。
【0110】
別途、単量体組成を、メチルメタクリレート99部、アクリル酸1部とし、トルエン150部およびAIBN0.03部の代わりに、AIBN1部、酢酸エチル40部、トルエン60部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで6時間反応させ、Tgが105℃、重量平均分子量が2万であり、分子量15万以上の成分を含まない低分子量共重合体(B1−16)溶液(不揮発分濃度50%)を得た。
【0111】
次いで、高分子量共重合体(A1−16)と低分子量共重合体(B1−16)との重量比が、(A1−16)/(B1−16)=48/52になるように両共重合体溶液を混合し、Tgが10.5℃の共重合体(C16)溶液を得た。共重合体(C16)についてGPCを測定したところ、2つの独立したピークを有し、高分子量共重合体(A1−16)と低分子量共重合体(B1−16)との面積比は、(A1−16)/(B1−16)=48/52であった。
共重合体(C16)を構成する置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は、約51.5%であった。
【0112】
<比較製造例10>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート98部、アクリル酸1部、アクリルアミド1部とし、アセトン100部およびAIBN0.03部の代わりに、酢酸エチル100部、AIBN0.03部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで8時間反応させ、Tgが−52.3℃、重量平均分子量が70万であって、分子量10万未満の成分を含まない高分子量共重合体(A3−17)溶液を得た。得られた共重合体溶液を酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度を25%に調整した。
【0113】
別途、単量体組成を、n−ブチルアクリレート86.4部、メチルメタクリレート13.6部とし、トルエン150部およびAIBN0.03部の代わりに、酢酸エチル200部、AIBN0.03部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで4時間反応させ、Tgが−40.7℃、重量平均分子量が30万であって、分子量10万以上の成分を含む高分子量共重合体(A3−17’)溶液を得た。得られた共重合体溶液を、酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度を25%に調整した。
次いで、高分子量共重合体(A3−17)と(A3−17’)との重量比が、(A3−17)/(A3−17’)=100/30になるように両共重合体溶液を混合し、Tgが−49.7℃の共重合体(C17)溶液を得た。共重合体(C17)を構成する置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は、約3.1%であった。
なお、共重合体(C17)は、GPCにおいて、明確な最小値を有しない連続したピークを示し、分子量15万を境に高分子両側と低分子量側の面積比は、83/17であり、高分子量両側の重量平均分子量は55万、低分子量側の重量平均分子量は8万であった。
【0114】
<比較製造例11>
単量体組成を、n−ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部とし、アセトン100部およびAIBN0.03部の代わりに、酢酸エチル100部、AIBN0.2部とした以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで12時間反応させ、Tgが−49.3℃、重量平均分子量が150万であって、分子量15万未満の成分を含まない高分子量共重合体(A1−18)溶液を得た。得られた共重合体溶液を酢酸エチルで希釈し、不揮発分濃度を20%に調整した。
【0115】
別途、単量体組成を、n−ブチルアクリレート100部とし、トルエン150部およびAIBN0.03部の代わりに、トルエン100部、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー5部、AIBN2部を用いた以外は製造例6と同様にして、転化率が100%になるまで6時間反応させ、Tgが−54℃、重量平均分子量が7000であって、分子量15万以上の成分を含まない低分子量共重合体(B1−18)溶液を得た。得られた共重合体溶液をトルエンで希釈し、不揮発分濃度を40%に調整した。
【0116】
次いで、高分子量共重合体(A1−18)と低分子量共重合体(B1−18)との重量比が、(A1−18)/(B1−18)=100/100になるように両共重合体溶液を混合し、Tgが−51.7℃の共重合体(C18)溶液を得た。
共重合体(C18)を構成する置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)は、0%であった。共重合体(C18)についてGPCを測定したところ、2つの独立したピークを有し、高分子量共重合体(A1−18)と低分子量共重合体(B1−18)の面積比は、(A1−18)/(B1−18)=50/50であった。
【0117】
以上の製造例をまとめて、表1〜表3に示す。
表1〜3中の単量体の略号を以下に示す。
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
2HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
4EG−A:ライトアクリレート4EG−A(PEG#200ジアクリレート、共栄社化学(株)製)
AAm:アクリルアミド
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
なお、共重合体の重量平均分子量は、GPC測定で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、GPC測定条件は以下のとおりである。
【0122】
装置:Shodex GPC System−21(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KF−602.5を1本、Shodex KF−606Mを2本(昭和電工(株)製)の合計3本を連結して使用。
【0123】
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.1wt%
試料注入量:50μl
【0124】
<実施例1>
製造例1で得られた共重合体(C1)溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系硬化剤(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体;以下同じ)を有効成分で0.2部、シランカップリング剤1(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;以下同じ)を有効成分で0.1部添加してよく攪拌し、粘着組成物(感圧式接着剤組成物)を得た。得られた粘着組成物について後述する種々の試験をした。
【0125】
<実施例2〜3>
共重合体(C1)溶液に代えて、製造例2〜3で得られた共重合体(C2)〜(C3)溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着組成物を得て、実施例1と同様に評価した。
【0126】
<実施例4〜7>
共重合体(C1)溶液に代えて、製造例4〜7で得られた共重合体(C4)〜(C7)溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着組成物を得て、実施例1と同様に評価した。
【0127】
<比較例1>
比較製造例1で得られた共重合体(C8)溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系硬化剤を有効成分で0.05部、シランカップリング剤1を有効成分で0.1部を添加し、よく撹拌して粘着組成物を得た。実施例1と同様に評価したところ、耐熱性試験、耐湿熱性試験で発泡が発生した。
【0128】
<比較例2〜7>
共重合体(C1)溶液に代えて、比較製造例2〜7で得られた共重合体(C9)〜(C14)溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着組成物を得て、実施例1と同様に評価した。
【0129】
<比較例8>
比較製造例8で得られた共重合体(C15)溶液の固形分250部に対して、エポキシ系硬化剤1を有効成分で0.02部を添加し、よく撹拌して粘着組成物を得た。
得られた粘着組成物を、実施例1と同様に評価したところ、基材密着性が著しく悪く、耐熱性試験、耐湿熱性試験で顕著な発泡が見られた。
【0130】
<比較例9>
比較製造例9で得られた共重合体(C16)溶液の固形分100部に対して、エポキシ系硬化剤2(エチレングリコールジグリシジルエーテル;以下同じ)を有効成分で0.05部を添加し、よく撹拌して粘着組成物を得た。
得られた粘着組成物を、実施例1と同様に評価したところ、基材密着性、リワーク性が著しく悪く、光漏れ現象が発生し、耐熱性試験、耐湿熱性試験で顕著な発泡が見られた。
【0131】
<比較例10>
比較製造例10で得られた共重合体(C17)溶液の固形分130部に対して、エポキシ系硬化剤1を有効成分で0.6部を添加し、よく撹拌して粘着組成物を得た。
得られた粘着組成物を実施例1と同様に評価した結果、基材密着性、リワーク性が著しく悪かった。
【0132】
<比較例11>
比較製造例11で得られた共重合体(C18)溶液の固形分200部に対して、エチレンイミン系硬化剤(トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート)を有効成分で0.25部、酸化防止剤としてフェノール系化合物(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル)を有効成分で2.5部、およびシランカップリッング剤2(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を有効成分で1部を添加し、よく撹拌して粘着組成物を得た。
得られた粘着組成物を、実施例1と同様に評価した結果、基材密着性、リワーク性が著しく悪く、耐熱性試験、耐湿熱性試験で発泡が見られた。
【0133】
<比較例12>
イソシアネート系硬化剤の代わりにエポキシ系硬化剤1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着組成物を得て、実施例1と同様に評価した。評価した結果、基材密着性が著しく悪かった。
【0134】
各種試験は以下のようにして行なった。
<基材密着性およびリワーク性>
各実施例および各比較例で得られた粘着組成物をポリエステル製剥離フィルム(厚さ38μm)に塗工し、100℃で2分間乾燥させて、膜厚25μmの粘着層を形成した。得られた粘着層に偏光フィルム(厚さ180μm)を貼り合せ、23℃、50%RH雰囲気下で7日間放置して反応を進行させ(エージング)、粘着フィルム1を得た。
得られた粘着フィルム1を幅25mmに裁断し、剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を厚さ0.7mmのガラス板に23℃、50%RH雰囲気下で貼着し、50℃雰囲気下で5kg/cm2の圧力をかけて15分保持して貼り合せた後、JIS Z 0237に準じてロール圧着した。
【0135】
圧着24時間後、80℃で500時間静置した。その後、23℃、50%RH雰囲気下で、剥離試験器を用いて、180度ピール、引っ張り速度300mm/分で、偏光フィルムをガラス板から剥離し、ガラス板表面および粘着層面を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。
4:粘着層はガラス板表面に全く転移しておらず、粘着層表面も平滑である。
3:粘着層はガラス板表面に転移してはいないが、粘着層表面にわずかに凹凸が生じている。
2:粘着層の一部がガラス板表面に転移し、粘着層表面にも顕著な凹凸が生じている。
1:粘着層がガラス板表面に完全に転移している。
【0136】
<光漏れ現象>
各実施例および各比較例で得られた粘着組成物をポリエステル製剥離フィルム(厚さ38μm)に塗工し、90℃で60秒間乾燥させて、膜厚25μmの粘着層を形成した。得られた粘着層に偏光フィルム(厚さ180μm)を貼り合せ、23℃、50%RH雰囲気下で7日間放置して反応を進行させた(エージング)。偏光フィルムの吸収軸の軸方向が、辺に対して45°の角度になるように、200mm×200mmに裁断して、粘着フィルム2を得た。
粘着フィルム2の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を、厚さ0.7mmのガラス板の両面に、それぞれの偏光フィルムの吸収軸の軸方向が直交するように配置して、50℃雰囲気下で5kg/cm2の圧力をかけ、15分保持して貼り合せた後、80℃の雰囲気中に500時間放置した後室温に戻し、四隅もしくは周辺端部からの光漏れ現象の有無を観察した。評価基準は以下の通りである。
4:光漏れが全く認められない。
3:光漏れがほとんど認められない。
2:光漏れがやや目立つ。
1:光漏れが極めて顕著である。
【0137】
<耐熱性および耐湿熱性>
光漏れ現象の項に記載した粘着フィルム2の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を厚さ0.7mmのガラス板の片面に、50℃雰囲気下で5kg/cm2の圧力をかけ、15分保持して貼り合せた後、70℃の雰囲気中に500時間放置した(耐熱性試験)。
別に、同様にして粘着フィルム2とガラス板とを貼り合わせた後、60℃、90%RHの恒温恒湿槽に500時間放置した(耐湿熱性試験)。
放置後、室温に戻し、粘着フィルム2の、浮き・剥がれ、発泡の発生状態を観察した。
【0138】
「発泡」とは、粘着層とガラスとの界面(周辺端部以外)に、比較的大きな気泡が発生している状態である。
「浮き・剥がれ」とは、粘着フィルム2がガラスから浮き上がり、剥がれてしまっている状態である。それぞれの評価基準は以下の通りである。
4:発生せず。
3:軽微な発生が認められる。
2:発生が散見される。
1:顕著な発生が認められる。
以上の評価結果を表4〜6に示す。
【0139】
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
表4〜6中の略号は以下の通りである。
【0143】
イソシアネート系硬化剤:トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体
エポキシ系硬化剤1:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン
エポキシ系硬化剤2: エチレングリコールジグリシジルエーテル
エチレンイミン系硬化剤:トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート
酸化防止剤:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル
シランカップリング剤1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤2:3−アミノプロピルトリメトキシシラン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基および/またはカルボキシル基を有し、ガラス転移温度が−60〜0℃の共重合体(C)と、イソシアネート系硬化剤(D)とを含有する感圧式接着剤であって、
前記共重合体(C)が、
(1)置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)、および前記(a)および(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)であって水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含む単量体(c)をラジカル共重合してなるものであり(但し、(a)〜(c)の合計を100重量%とする)、
(2)高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含み、
(2−1)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線上完全に独立した、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A1)のピークと、重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B1)のピークとを含み、前記高分子量成分(A1)のピークと前記低分子量成分(B1)のピークとの面積比が、(A1)/(B1)=60/40〜90/10であるか、もしくは、
(2−2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線の最小値の両側に位置する、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A2)のピークと重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B2)のピークとを含み、前記高分子量成分(A2)のピークと前記低分子量成分(B2)のピークとの面積比が、(A2)/(B2)=60/40〜90/10であるか、もしくは
(2−3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおいて、分子量15万以上の重合体分子からなり重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A3)のピークと、分子量15万未満の重合体分子からなり重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B3)のピークとを含み、前記高分子量成分(A3)ピークと前記低分子量成分(B3)ピークとの面積比が、(A3)/(B3)=60/40〜90/10である、
ことを特徴とする感圧式接着剤。
【請求項2】
置換基を有しないアルキルメタクリレート(a)のアルキル基の炭素数が1〜6であり、前記アルキル基が直鎖アルキル基、分岐構造を有する鎖状アルキル基、および環状アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の感圧式接着剤。
【請求項3】
共重合体(C)100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(D)を0.01〜10重量部含有する、請求項1または2記載の感圧式接着剤。
【請求項4】
共重合体(C)が、置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)および前記(a)(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)であって水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含む単量体(c)を、重合転化率が60〜90%になるまでラジカル共重合して、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分を含む共重合体を合成し、次いで単量体(c)を必要に応じて加え、重合転化率が80〜100%になるまで前記(a)〜(c)をさらにラジカル共重合することにより得られるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の感圧式接着剤。
【請求項5】
以下の(I)〜(III)を含む、感圧式接着剤の製造方法:
(I)置換基を有しないアルキルメタクリレート(a):5重量%以上〜15重量%未満、置換基を有しないアルキルアクリレート(b)および前記(a)(b)と共重合可能な他のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c)であって水酸基および/またはカルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(c1)を含む単量体(c)を、重合転化率が60〜90%になるまでラジカル共重合して、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分を含む共重合体を得ること;
(II)次いで単量体(c)を必要に応じて加え、重合転化率が80〜100%になるまで前記(a)〜(c)をさらにラジカル共重合し(但し、(a)〜(c)の合計を100重量%とする)、
(2−1)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線上完全に独立した、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A1)のピークと、重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B1)のピークとを含み、前記高分子量成分(A1)のピークと前記低分子量成分(B1)のピークとの面積比が、(A1)/(B1)=60/40〜90/10であるか、もしくは、
(2−2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおける排出曲線の最小値の両側に位置する、重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A2)のピークと重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B2)のピークとを含み、前記高分子量成分(A2)のピークと前記低分子量成分(B2)のピークとの面積比が、(A2)/(B2)=60/40〜90/10であるか、もしくは
(2−3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにおいて、分子量15万以上の重合体分子からなり重量平均分子量が50万〜220万の高分子量成分(A3)のピークと、分子量15万未満の重合体分子からなり重量平均分子量が1000〜10万の低分子量成分(B3)のピークとを含み、前記高分子量成分(A3)ピークと前記低分子量成分(B3)ピークとの面積比が、(A3)/(B3)=60/40〜90/10である、
高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とを含む共重合体(C)であって、水酸基および/またはカルボキシル基を有し、ガラス転移温度が−60〜0℃である共重合体(C)を得ること;および
(III)前記共重合体(C)とイソシアネート系硬化剤(D)とを混合すること。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法により得られる感圧式接着剤。
【請求項7】
偏光フィルムおよび位相差フィルムからなる群より選ばれる光学フィルムと、前記光学フィルムの少なくとも一方の面に設けられた感圧式接着層であって、請求項1〜4または請求項6のいずれかに記載の感圧式接着剤から形成される感圧式接着層とを含む、感圧式接着フィルム。

【公開番号】特開2009−108113(P2009−108113A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278733(P2007−278733)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】