説明

感圧接着シート用塗工紙、それを用いた圧着加工品および圧着加工品作製方法

【課題】 各方式(オフセット、インクジェット、電子写真)での印刷・印字適性を兼備えた後糊方式で使用され、高い白紙光沢を有する感圧接着シート用塗工紙、それを用いた圧着加工品および圧着加工品作製方法を提供。
【解決手段】 印刷後の塗工紙の少なくとも一方の面上に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能な後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用するものであって、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂を主成分として含む少なくとも一層の塗工層とを有し、前記塗工紙の表面平滑度が1000〜5000秒、透気度が2000〜10000秒、光沢度が50%以上、紙面pHが4.0〜9.0、かつ用紙水分量が3〜7%であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着シート用塗工紙、それを用いた圧着加工品および圧着加工品作製方法に関するものである。詳しくは、オフセット印刷性、インクジェット記録性、電子写真印字性を兼ね備え、かつ塗工紙上にさらに接着剤層を設けてなる三つ折りもしくは二つ折り葉書等各種葉書システムに用いられている後糊方式に使用可能な感圧接着シート用塗工紙、それを用いた圧着加工品および圧着加工品作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
郵便法の改正に伴い必要情報を記録したシートを二つ折り、又は三つ折りに折り畳み、親展性を持つ葉書システムが実用化され普及している。このような親展性を持つ葉書の基材シートに設けられた接着剤層は常温、常圧では接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧することにより接着性を示し、且つ接着後は再剥離することが可能な接着剤層を有する感圧接着シート(以下、代表的な例である「親展葉書用紙」ともいう)が使用される。
【0003】
親展葉書を作成するシステムは2方式あり、先糊方式と後糊方式がある。先糊方式は、特開平7−276858号公報(特許文献1)や特開2006−2023号公報(特許文献2)に記載されているように、紙基材表面に接着剤層を有している感圧接着シートに印刷をした後、圧着処理を施し親展葉書とする。すなわち、印刷する前に接着剤層(糊)が塗工紙表面に施されているので「先糊」と呼ばれている。先糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にシリカ系顔料と天然ゴム系接着剤を使用することが主流なため、剥離後の印刷面がマット系になっている。
【0004】
一方、特開2002−285106号公報(特許文献3)や特開2006−207076号公報(特許文献4)に記載されているように、塗工紙に印刷をした後、接着剤層を塗布して圧着処理を施し親展葉書とするので「後糊」と呼ばれている。後糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にクリアーニスを使用することが主流なため、塗工紙の光沢を反映し、剥離後の印刷面をマット系からグロス系まで選択することができるので、近年、使用頻度が増加してきている。
【0005】
一方、近年、電子写真、インクジェット等各方式のプリンターのカラー化、高速化及び高画質化が進んでいる。特に、オンデマンド出版物の分野において、比較的手軽で、また1部単位からの少部数でも可変情報への対応が可能であるところから、特に可変情報部(個人の宛名、顧客の好む品々の情報、請求書料金等)を、これまでの印刷法で作製してきた印刷物を各方式のプリンターで作製する傾向が顕著になっている。
【0006】
現在、このような後糊方式の親展葉書作製において使用されている塗工紙は、通常、特開平6−158597号公報(特許文献5)記載のような商業用印刷(オフセット印刷)の分野に用いられてきたものを使用することが一般的であった。前記塗工紙は、通常各種コーターを用いて平均粒子径2μm以下の顔料を基紙の片面あたり10g/m以上塗布し、その後、カレンダ処理して表面を平滑化して製造されている。
【0007】
したがって、これら一般的な塗工紙はオフセット印刷を主眼においているため、反面インクジェット方式でのインク吸収性が極めて低く、滲みの発生や乾燥不良によるインク汚れが発生してしまい使用することが困難である。さらに電子写真で印字する場合でも、塗工紙の透気度が高いために、トナー画像に加熱定着時にブリスターを発生してしまい使用することが困難な場合がある。
【0008】
現在、後糊方式の親展葉書作製において、各印刷・印字方式(オフセット、インクジェット、電子写真)に対応し、かつ高い白紙光沢を有する感圧接着シート用塗工紙は無い。
【0009】
ただし、ここで使用されているインクジェット記録方式は、一般的な家庭で使用されているようなフルカラーで写真画像等を印字できるような方式ではなく、宛名や簡単な情報印字等のためモノカラー印字が主である。このため本用途での塗工紙に求められるインク吸収性は、特開2005−161723号公報(特許文献6)記載のような塗工紙より低くても、滲みの発生や乾燥不良によるインク汚れを生じることなく使用できることである。
【0010】
【特許文献1】特開平7−276858号公報(第2項)
【特許文献2】特開2006−2023号公報(第1項)
【特許文献3】特開2002−285106号公報(第1項)
【特許文献4】特開2006−207076号公報(第1項)
【特許文献5】特開平6−158597号公報(第1項)
【特許文献6】特開2005−161723号公報(第1項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、各方式(オフセット、インクジェット、電子写真)での印刷・印字適性を有し、後糊方式で安定した剥離性を有する親展葉書等が作成可能であり、かつ高い白紙光沢を有する感圧接着シート用塗工紙、それを用いた圧着加工品および圧着加工品作製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の様態を含む。
【0013】
(1)本発明に係る感圧接着シート用塗工紙は、印刷後の塗工紙の少なくとも一方の面上に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能な後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用するものであって、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂を主成分として含む少なくとも一層の塗工層とを有し、前記塗工紙の、表面平滑度が1000〜5000秒、透気度が2000〜10000秒、光沢度が50%以上、紙面pHが4.0〜9.0、かつ用紙水分量が3〜7%であることを特徴とするものである。
(2)前記塗工紙の、20秒でのコッブ吸水度が15〜80g/mである(1)記載の感圧接着シート用塗工紙。
(3)最表塗工層中の全顔料100質量部に対し、有機微粒子顔料が1〜50質量部含有する(1)〜(2)記載の感圧接着シート用塗工紙。
(4)前記有機微粒子顔料が、中空率30〜80%の中空構造を有する中空プラスチックピグメントである(3)記載の感圧接着シート用塗工紙。
【0014】
(5)本発明に係る圧着加工品は、前記(1)〜(4)記載の塗工紙の、少なくとも一方の面上に接着剤層が設けられ、前記接着剤層同士が圧着加工の際に金属鏡面ロールで強圧処理されたことを特徴とするものである。
(6)前記接着剤層間で剥離後の、接着剤層表面の光沢度が55%以上である(5)記載の圧着加工品。
【0015】
(7)本発明に係る圧着加工品作製方法は、(1)〜(4)記載の塗工紙の、少なくとも一方の面上に接着剤層を設け、前記接着剤層同士の圧着加工の際に金属鏡面ロールで強圧処理することを特徴とする方法である。
(8)前記金属鏡面ロールの表面温度が15〜80℃である(7)記載の圧着加工品作製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、各方式(オフセット、インクジェット、電子写真)での印刷・印字適性を有し、後糊方式で安定した剥離性を有する親展葉書等が作成可能であり、かつ高い白紙光沢を有する感圧接着シート用塗工紙およびそれを用いた圧着加工品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明に係る感圧接着シート用塗工紙は、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む少なくとも一層の塗工層とを有しており、前記塗工紙の表面平滑度、透気度、光沢度、紙面pHが特定範囲内であることを特徴とする。
【0018】
塗工紙表面の平滑度は1000〜5000秒であり、好ましくは2000〜5000である。平滑度が1000秒より低い場合、接着剤層を塗布した際、接着界面で十分な接着面積を確保できずに接着力が小さくなってしまい、親展葉書として使用することが困難となることがある。また平滑度が5000秒より高い場合は、インクジェット方式で印字した際、インク吸収性が極端に悪化し、インク滲みや乾燥不良となってしまい、満足な印字物が得られないことがある。
【0019】
塗工紙の透気度は2000〜10000秒であり、好ましくは4000〜10000である。透気度が2000秒より低い場合、接着剤層を塗布し接着した際、接着剤が塗工紙基材へ染込んでしまい、十分な接着力を発現できないことがある。また透気度が10000秒を超えた場合は、インクジェット方式で印字した際のインク吸収性が悪化することがある。
【0020】
塗工紙の光沢度は50%以上であり、好ましくは60%以上である。光沢度が50%より低い場合は、マット調の塗工面となり、光沢感のあるグロス系塗工面とはならず、圧着加工時の強圧処理を施しても、前記接着剤層間で剥離後の、接着剤層表面が光沢感を有する光沢度である55%以上にすることが難しい。
【0021】
塗工紙表面の紙面pHは4.0〜9.0であり、好ましくは6.0〜9.0である。紙面pHが9.0より高い場合、接着剤層を塗布した際、塗工紙基材の塗工層中に存在するアルカリイオン成分や水溶性の塩等が接着剤層に影響を及ぼし、接着力を強くしてしまうために剥離時に塗工紙基材が破壊されてしまい、親展葉書としては使用することが困難となることがある。またpHが4.0より低い場合、用紙の劣化が著しいために耐久性の点で問題が生じたり、経時により黄変してしまうことがある。pH4.0〜9.0を達成するためには、塗工層で使用する顔料、バインダー樹脂、助剤等の薬品を選定し、また原材料薬品に由来するアルカリ金属等不純物の塗工層中へ混入を避けることが有効な手段とである。
【0022】
塗工紙のコッブ吸水度(JIS−P8140記載)は20秒間で15〜80g/mであることが好ましく、より好ましくは15〜60g/mである。コッブ吸収度が15g/mより少ない場合は、インクジェット方式で印字した際、インク吸収性が悪化し、インク滲みや乾燥不良となってしまい満足な印字物が得られないことがある。またコッブ吸収度が80g/mより多い場合は、接着剤が染込み、十分な接着力が発現できないことがある。
【0023】
基紙を構成するパルプについて、その製法及び種類等に特に限定はない。例えばKPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、竹、藁、麻等のような非木材パルプであってもよく、またポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、並びにガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も混用することができる。なお、基紙に用いるパルプとして、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素を用いずに漂白したパルプを用いることが好ましい。
【0024】
また基紙中には、必要に応じて、填料が配合されていてもよい。填料としては、一般に上質紙に用いられる各種の顔料を用いることができ、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物質顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂の微小中空粒子、密実型粒子および貫通孔型粒子などの有機顔料が挙げられる。
【0025】
なお、基紙の抄紙時に、その紙料中に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、パルプ繊維や填料の他に、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も必要に応じて適宜添加することができる。
【0026】
基紙の抄紙方法については特に限定はなく、例えば抄紙pHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等、全ての抄紙方法を適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用することができる。
【0027】
塗工紙の塗工層用顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物材料からなる顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、並びにこれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機材料からなる有機顔料等が挙げられる。本発明では、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイトが好ましく使用され、これら顔料の中から1種類あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。また本発明では、pH4.0〜9.0を達成するために、カオリン、クレー、シリカ、酸化チタン等の中性〜酸性顔料の選定が有効であり、特にカオリンでは不純物の少ない湿式カオリン(例えばアマゾン、CADAM社製)や焼成カオリン等から選定すれば、水溶性の塩等不純物が少なく、アルカリイオン成分を少なくできるので好ましい。
【0028】
ここで最表塗工層には有機微粒子顔料を配合することが好ましい。有機微粒子顔料の配合量は、全顔料100質量部中、1〜50質量部であることが好ましい。含有量が1質量部より少ない場合、圧着加工時の強圧処理後の光沢発現が不十分となることがある。また50質量部より多い場合、塗工層の塗膜強度を維持するためにバインダー量の増加等で、製造原価が高くなる。
【0029】
有機微粒子顔料は、中空構造でかつ中空率が30〜80%である中空プラスチックピグメントが好ましい。中空率が30%より低い場合、圧着加工時の強圧処理後の光沢発現効果が不十分となることがある。また中空率が80%を超える場合、圧着加工時の強圧処理後の光沢発現効果が飽和し、製造コスト高ともなり、好ましくない。
【0030】
上記中空有機微粒子顔料の組成は、特に限定されるものではないが、スチレン、エチレン、塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、及びこれらの共重合体が挙げられる。中でも、スチレン若しくはスチレン−アクリル共重合体が好ましい。中空プラスチックピグメントの平均粒子径としては、5μm以下であることが好ましい。5μmを超えると圧着加工時の強圧処理後の光沢発現効果が不十分となることがある。また中空プラスチックピグメントに用いられる樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50〜120℃の範囲が好ましい。Tgが50℃未満、若しくは120℃を超える場合には、圧着加工時の強圧処理後の光沢発現効果が不十分となることがある。本発明に用いられる中空プラスチックピグメントとして、具体的には、JSR社製のAE851(中空率=55%、平均粒子径=1.0μm、Tg=100℃)やAE852(中空率=55%、平均粒子径=1.3μm、Tg=100℃)を例示することができる。
【0031】
塗工層用バインダー樹脂としては、例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂:スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類:スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂系等の合成ゴムラテックス:ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。本発明では前記バインダー樹脂の中から1種類あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0032】
また各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤及び香料等の少なくとも1種が必要に応じて適宜含まれていてもよい。特に本発明では、塗工層中におけるアルカリイオンや水溶性の塩の含有量を少なくしたいため、pH調整剤等の配合は極力控えたほうが好ましい。またpH4〜9を達成するため、アクリル系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、DADMAC系樹脂などのカチオン系樹脂を配合することも有効な手段である。
【0033】
本発明の感圧接着シート用塗工紙において、基紙上に設けられる塗工層の塗工量は、6〜20g/mが好ましい。塗工量が6g/mより少ない場合は、基紙表面の凹凸を十分に被覆できずに、平滑度を適性化できないことがある。また20g/mより多い場合では、塗工時の乾燥性が悪くなるなど、操業性が低下し、製造原価も高くなるおそれがある。
【0034】
塗工層を形成するための塗工方法としては、一般に従来の塗工装置、例えばブレードコーター、エヤーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロール、並びにメータリングブレード式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター等の塗工装置を適宜に用いることができる。
【0035】
前記塗工層を設けた塗工基材に平滑化処理を施す際には、通常のスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて行われる。前記平滑化処理はオンマシンやオフマシンで適宜施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に応じて適宜調節される。なお基紙表面に予め顔料と接着剤とからなる塗工層が設けられている市販の用紙を用いることも出来る。
【0036】
後糊圧着加工する際の用紙水分量は、圧着加工直後の接着力に影響し、用紙水分量が低いと接着力は小さくなり、用紙水分量が増加してゆくと接着力が大きくなる。特に、乾式電子写真方式で印字した用紙は、熱ロールでのトナー定着処理を施されるので、印字後の用紙水分量は低くなることがある。そのため、後糊圧着加工した際、圧着加工直度、十分な接着力が得られずに、搬送時等で剥離してしまいトラブルの原因となる。さらに、用紙水分量が低いことで、静電気も発生しやすくなり、搬送時や紙揃え等でのトラブルの原因ともなる。
【0037】
すなわち本発明の感圧接着シート用塗工紙を用いて各方式(オフセット、インクジェット、電子写真)で印刷・印字した後、後糊圧着加工する際の用紙水分量は3〜7%であることが好ましく、4〜6%がより好ましい。用紙水分量が3%未満の場合、後糊圧着加工直後に十分な接着力が得られず、圧着葉書として使用することが難しいことや、後糊圧着加工物に静電気が発生し易くなり、搬送系でのトラブルの原因ともなる虞がある。また用紙水分量が7%を超える場合、後糊圧着加工後の接着力が大きくなりすぎるため、再剥離できなくなることがある。
【0038】
後糊方式で親展葉書を作製する際の圧着加工時の強圧処理には、金属の鏡面ロールを使用することが望ましく、ロール温度は15〜80℃が好ましく、より好ましくは20〜60℃である。ロール温度が15℃未満では、十分な接着力の発現が難しく、かつ圧着加工品の剥離後における接着剤層表面の光沢度発現も不十分となることがある。またロール温度が80℃を超えると、接着剤が溶融してしまし、接着力が大きくなりすぎて再剥離できなくなることがある。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。実施例において示す「部」および「%」は、特に明示の無い限り、質量部および質量%である。
【0040】
(実施例1)
[基紙の製造]
LBKP(CSFフリーネス550ml)100質量部のパルプスラリーに、紙力剤としてポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS194−7、荒川化学工業社製)0.2質量部、湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂(商品名:WS570、星光PMC社製)0.2質量部、硫酸バンド1質量部を添加し、これらの混合物を白水で希釈してpH5.3、固形分濃度1.1%の紙料を調製した。この紙料を、長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙に、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を濃度6%で含むサイズプレス液を、サイズプレス装置で塗布量が乾燥質量で2g/mとなるように塗布し、乾燥して、さらにマシンカレンダを用いて平滑度が50秒になるように平滑化処理を施して、坪量が83g/mの基紙を製造した。
【0041】
[塗工液−1の調整]
カオリン(商品名:アマゾンプラスSD、CADAM社製)60質量部と軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)40質量部に、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亞合成社製)0.1質量部を加えコーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:スマーテックスPA−5703C、日本A&L社製)10質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0042】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液−1を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が12g/mとなるように塗工し、塗工層の光沢度、表面平滑度、透気度が表1に示す値となるようにスーパーカレンダ処理を施し、坪量107g/mの塗工紙を得た。得られた塗工紙を23℃、50%RH環境に放置し、十分に調湿を行った。
【0043】
[評価方法]
[光沢度の測定方法]
得られた塗工紙を光沢度計により(JIS−Z8741記載)入射角75度での光沢度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0044】
[平滑度および透気度の測定方法]
得られた塗工紙を王研式透気度平滑度測定機により測定した。測定結果を表1に示す。
【0045】
[紙面pHの測定方法]
得られた塗工紙を、紙面測定用PH計(型式:MPC、共立理化学研究所社製)により測定した。測定結果を表1に示す。
【0046】
[コッブ吸水度の測定]
得られた塗工紙の測定時間20秒でのコッブ吸水度(JIS−P8140記載)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0047】
[オフセット印刷性の評価]
得られた塗工紙を、RI印刷試験機(型式:RI−1、石川島産業機械社製)で、テストインキ(商品名:Printing Ink紙試験用SD50紅B T=13、T&K TOKA社製)を0.5g/金属ロールにより展色胴を回転させ印刷した。印刷物の表面状態を目視観察し表面が破れ(紙ムケ)状態を5段階評価し3点以上を実用レベルとした。評価結果を表1に示す。
5点:一般塗工紙と同等に紙表面が破れない(紙ムケしない)もの
4点:極僅か紙表面に乱れがみられるが(紙ムケしていない)、良好なレベル
3点:若干紙表面が破れているが(紙ムケしている)、実用上問題ないレベル
2点:紙表面が破れている(紙ムケしている)実用上問題あるレベル
1点:紙表面が全面で破れている(紙ムケしている)
【0048】
[インクジェットインク吸収性の評価]
得られた塗工紙を市販のインクジェットプリンター(機種:PM−800C、エプソン社製)でモノクロ印字して、直後の印字部に上質紙をあてて、インクの移りを5段階評価し3点以上を実用レベルとした。評価結果を表1に示す。
5点:全く上質紙にインクが移らない
4点:僅かに上質紙にインクが移るが、実用的に良好なレベル
3点:若干、上質紙にインクが移るが、実用上問題ないレベル
2点:上質紙にインクの移りがあり、実用上問題となるレベル
1点:上質紙にインクが多く移る
【0049】
[電子写真印字適性の評価]
得られた塗工紙を市販の乾式電子写真方式プリンター(機種:Color ImageRUNNER iRC5185N、キヤノン社製)で印字し、直後の画像状態を目視評価した。評価結果を表1に示す。
○:問題なく画像が印字されている。
△:若干トナーの転写不良やブリスター等が発生しているが、実用上問題ないレベル。
×:トナーの転写不良やブリスター等が発生し、画像形成に問題がある。
【0050】
[親展葉書作製および剥離評価]
得られた塗工紙に、UV硬化型圧着ニス(ダイキュアクリヤーUV−1451、DIC社製)をメイヤーバーにて3g/m(固形分)塗布し、高圧水銀ランプ80W/cmで照射処理し、接着剤層を形成した。その後、接着剤層が対向するように二つ折りにして葉書サイズになるように断裁し、ドライシーラー(形式:6860、トッパンフォームズ社製)を用い、ロール間隔180μmに設定したプレスロールを通過させて圧着し、親展葉書を作製した。得られた親展葉書を100mm巾に断裁し、T字剥離(剥離速度300mm/分)で圧着直後の接着力(剥離力)を評価した。評価結果を表1に示す。
測定値100〜300gf:十分な剥離力で実用レベル
測定値301gf以上:剥離力が強すぎて、親展葉書の再剥離時に塗工紙基材が破壊される虞がある。
測定値100gf未満:剥離力が弱すぎて、親展葉書を配送中に剥がれる虞がある。
【0051】
(実施例2)
[塗工液−2の調整]
カオリン(商品名:アマゾンプラスSD、CADAM社製)55質量部と軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)40質量部、中空プラスチックピグメント(商品名:AE852、JSR社製)5質量部を加えコーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:スマーテックスPA−5703C、日本A&L社製)10質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0052】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液−2を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が12g/mとなるように塗工し、塗工層の光沢度、表面平滑度、透気度が表1に示す値となるようにスーパーカレンダ処理を施し、坪量107g/mの塗工紙を得た。得られた塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。
【0053】
(実施例3)
[塗工液−3の調整]
軽質炭酸カルシウム(商品名:コーラルブライト、矢橋工業社製)100質量部に酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:スマーテックスPA−5703C、日本A&L社製)10質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0054】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液−3を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が10g/mとなるように塗工し、次いで、塗工液−2を前記得られた塗工紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量7g/mとなるように塗工し、塗工層の光沢度、表面平滑度、透気度が表1に示す値となるようにスーパーカレンダ処理を施し、坪量117g/m、両面2層の塗工紙を得た。得られた塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。
【0055】
(比較例1)
[塗工液−4の調整]
カオリン(商品名:アマゾンプラスSD、CADAM社製)60質量部と軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)40質量部を加えコーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:スマーテックスPA−5703C、日本A&L社製)10質量部、pH調整剤として苛性ソーダ3質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0056】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液−4を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が12g/mとなるように塗工し、塗工層の光沢度、表面平滑度、透気度が表1に示す値となるようにスーパーカレンダ処理を施し、坪量107g/mの塗工紙を得た。得られた塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。
【0057】
(比較例2)
[塗工紙の作製]
塗工液−2を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が12g/mとなるように塗工し、塗工層の光沢度、表面平滑度、透気度が表1に示す値となるようにスーパーカレンダ処理を施し、坪量107g/mの塗工紙を得た。得られた塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。
【0058】
(比較例3)
実施例1で得られた坪量107g/mの塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。ただし、親展葉書作製時の塗工紙は100℃オーブンで20秒間乾燥し、用紙水分量を2.5%にしたものを使用した。
【0059】
(比較例4)
[塗工紙の作製]
実施例1で得られた坪量107g/mの塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。ただし、親展葉書作製時の塗工紙は50℃、90%RH環境で1日放置し、用紙水分量を8.5%にしたものを使用した。
【0060】
(比較例5)
実施例2で得られた坪量107g/mの塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。ただし、親展葉書作製時の塗工紙は100℃オーブンで20秒間乾燥し、用紙水分量を2.5%にしたものを使用した。
【0061】
(比較例6)
[塗工紙の作製]
実施例2で得られた坪量107g/mの塗工紙を実施例1と同様の評価を行い、表1に結果を示した。ただし、親展葉書作製時の塗工紙は50℃、90%RH環境で1日放置し、用紙水分量を8.5%にしたものを使用した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1が明らかに示しているように、本発明に係る感圧接着シート用塗工紙は、白紙光沢が高く、所定の平滑度および透気度、紙面pHであることで各印字・印刷(オフセット、インクジェット、電子写真)方式に適性を有しており、かつ後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できるものである(実施例1〜3)。しかし、本発明の光沢度、平滑度、透気度、紙面pHおよび用紙水分量の何れかが範囲外の場合、各印字・印刷方式のいずれかの適性を有していないか、若しくは後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できないものである(比較例1〜6)。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、各印刷・印字方式(オフセット、インクジェット、電子写真)で印字でき、かつ高い白紙光沢を有する、感圧接着シート用塗工紙、それを用いた後糊方式での親展葉書作製用の圧着加工品を得るものであり、実用上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能な後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂を主成分として含む少なくとも一層の塗工層とを有し、前記塗工紙の、表面平滑度が1000〜5000秒、透気度が2000〜10000秒、光沢度が50%以上、紙面pHが4.0〜9.0、かつ用紙水分量が3〜7%であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。
【請求項2】
前記塗工紙の、20秒でのコッブ吸水度が15〜80g/mである請求項1記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項3】
最表塗工層中の全顔料100質量部に対し、有機微粒子顔料が1〜50質量部含有する請求項1〜2記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項4】
前記有機微粒子顔料が、中空率30〜80%の中空構造を有する中空プラスチックピグメントである請求項3記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項5】
請求項1〜4記載の前記塗工紙の、少なくとも一方の面に接着剤層が設けられ、前記接着剤層同士が圧着加工の際に金属鏡面ロールで強圧処理されたことを特徴とする圧着加工品。
【請求項6】
前記接着剤層間で剥離後の、接着剤層表面の光沢度が55%以上である請求項5記載の圧着加工品。
【請求項7】
請求項1〜4記載の前記塗工紙の、少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層同士の圧着加工の際に金属鏡面ロールで強圧処理することを特徴とする圧着加工品作製方法。
【請求項8】
前記金属鏡面ロールの表面温度が15〜80℃である請求項7記載の圧着加工品作製方法。

【公開番号】特開2009−121011(P2009−121011A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175523(P2008−175523)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】