説明

感圧接着剤組成物

物理的混合物中に1種又はそれ以上の両親媒性ポリエステルを保湿剤と共に含む切り替え可能な感圧接着剤(PSA)組成物を用いる低アレルギー性接着物品。この接着剤は、イオン含量の低い液体との接触時にはこの接着剤の剥離強度が低下して簡単に除去できるが、血液、汗及び他の体液のようなイオン性液体との接触時には強く接着したまま残る。この接着剤組成物は、種々の医療用物品又は他の同様な用途に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚への貼付に適した、切り替え可能な(switchable)感圧接着剤(PSA)を用いる接着物品及びその使用方法に関する。別の態様において、本発明は、1種又はそれ以上の両親媒性ポリエステルと保湿剤との物理的混合物を含む水分散性PSA組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤は、種々の工業、一般消費及び医療用途に使用されている。医療用PSAは、包帯、創傷被覆材、鎮痛剤又は経皮薬物送達パッチ、監視用センサー、刺激電極などのような密封又は非密封接着物品として使用するために種々のバッキングに適用される。望ましくは、PSAの性質によって、医療用物品は、運動又は発汗のような変化する状態にもかかわらず装着者(貼付者)の皮膚に接着したまま残る。更に、この物品は装着者の皮膚を刺激しないような方法で除去可能でなければならない。皮膚の敏感な部位にPSA物品を適用する場合に又は物品の反復適用が必要な状況では、除去時の皮膚損傷を最小限に抑えることが特に重要である。
【0003】
PSA物品の除去によって引き起こされる皮膚の炎症を減少させると同時にPSAの粘着性を改善する目的は、優れた接着は一般的に除去による外傷を増強する危険を増すため、矛盾すると思われる。1つの提案解決法は、ラテックス及び/又はアクリル樹脂を含む接着剤組成物の利用である。これらの接着剤を用いる物品が除去の間に皮膚損傷を最小にすることができないだけでなく、ラテックス及び/又はアクリルポリマーの使用が、ラテックス及び/又はアクリル皮膚アレルギーのある人々によるこれらの物品の使用を妨げる。別の提案解決法は、化学物質との接触によって又は温度変化若しくは放射線照射によって「非活性化」されるPSAを用いる医療用物品を使用することである。しかし、典型的には、非活性化用の化学物質は、刺激の強い、皮膚に対して刺激性のある溶剤であり、熱、低温及び/若しくは放射線への暴露は患部には不都合であり且つ/又は不適当であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、装着者の皮膚を刺激しない方法で簡便に除去できる頑強な医療用感圧接着物品に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様においては、皮膚への貼付に適した感圧接着剤(PSA)が提供される。PSAは、1種又はそれ以上の水分散性スルホン化ポリエステル及びポリエステルとの物理的混合物中の保湿剤を含む。PSAは約6〜約8.5の範囲のpHを有する。
【0006】
本発明の別の実施態様においては、1種又はそれ以上の両親媒性水分散性ポリエステル、保湿剤及び任意的な分子量1,500/モル未満のコールドフロー低減剤(cold flow reducing agent)を含んでなる感圧接着剤(PSA)が提供される。PSAは両親媒性水分散性ポリエステルを80重量%超及びコールドフロー低減剤を約0〜約4重量%含む。PSAは、このPSAの平均乾燥標準剥離強度の約75%未満の平均湿潤標準剥離強度、約0.1〜約10重量ポンド/インチ(lbf/in)の範囲のループタック、約−10〜約15℃の範囲のガラス転移温度(Tg)及び約6重量%超の水分吸収量(moisture mass uptake)を有する。
【0007】
本発明の更なる実施態様においては、皮膚への貼付に適した、切り替え可能な接着物品が提供される。この物品は、バッキング及びこのバッキングに適用された感圧接着剤(PSA)を含む。このPSAは、物理的混合物中に1種又はそれ以上の水分散性スルホン化ポリエステルを保湿剤と共に含む。このPSAは約6〜約8.5の範囲のpHを有する。
【0008】
本発明の更に別の実施態様においては、切り替え可能な接着物品の皮膚への貼付及び皮膚からの除去(剥離)のための方法が提供される。この方法は、(a)バッキング及び前記バッキングの第1面に適用された少なくとも1種のスルホン化水分散性ポリエステルを含む感圧接着剤(PSA)を含む切り替え可能な接着物品を皮膚に接着させ;(b)前記PSAに低イオン液体を適用し;そして(c)前記工程(b)の後で、前記物品を前記皮膚から除去する(前記工程(b)の後の前記PSAの平均皮膚剥離強度は、前記工程(b)の前の前記PSAの平均皮膚剥離強度の約75%未満である)ことを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、新規PSAブレンドを用いる感圧接着物品を提供する。本発明の接着剤組成物は、非刺激性の、イオン含量の低い液体(例えば水)との接触時に剥離強度が大幅に低下される。しかし、この「切り替え可能な」PSAは、血液、汗などのようなイオン性液体への暴露時には基材(例えば皮膚)にしっかりと接着したままである。その低アレルギー性処方と共に、これは本発明のPSAを皮膚への貼付に並びに創傷被覆材及び縫合剤、アスレチックテープ又は医療用テープ、経皮薬物送達用の非密封パッチ及び電極又はセンサーのような医療機器の貼付用テープ又はタブなどへの使用に特に適するようにする。
【0010】
本発明のPSAは、物理的混合物中に1種又はそれ以上の両親媒性ポリエステルを保湿剤と共に含む。このポリエステルの両親媒性が、低イオン液体中に分散できる接着剤の能力に寄与する。一実施態様において、低イオン液体は水を含むことができ、両親媒性ポリエステルは水分散性であることができる。別の実施態様において、両親媒性ポリエステルは、米国特許第5,552,495号及び第5,543,488号(両特許を引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたような水分散性スルホン化ポリエステルであることができる。
【0011】
一実施態様によれば、接着剤は少なくとも1種の線状スルホン化ポリエステル及び/又は少なくとも1種の分岐スルホン化ポリエステルのブレンドを含むことができる。一実施態様において、線状水分散性スルホン化ポリエステル縮合ポリマーは、
(i)スルホモノマーでない少なくとも1種の二官能価ジカルボン酸;
(ii)全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づき、約4〜25モル%の、芳香環に結合した少なくとも1つのスルホン酸基を含む少なくとも1種の二官能価スルホモノマーの残基(前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はアミノである);
(iii)(A)ジオール部分又はジオール及びジアミン部分の総モル%に基づき、少なくとも15モル%の、式H(−OCH2CH2−)nOH及びHRN(−OH2CH2O−)nNRH[式中、nは2〜約20であり、Rは水素又はC1〜C6アルキルである]を有するジオール又はジアミン、
(B)ジオール部分又はジオール及びジアミン部分の総モル%に基づき、約0.1〜約15モル%未満の、式H(−OCH2CH2−)nOH[式中、nは2〜約500である]を有するポリ(エチレングリコール)の部分(このような部分のモル%はnの値に反比例する)
を含む少なくとも1種のジオール又はジオールとジアミンの混合物;
(iv)ヒドロキシカルボン酸、モノ−カルボン酸及びアミノアルカノールから選ばれた二官能価モノマー反応体の部分0〜約40モル%
の反応生成物を含む(前記ポリマーは、実質的に等しいモル比の酸当量(100モル%)及びジオール又はジオール及びジアミン当量(100モル%)を含む)。
【0012】
別の実施態様によれば、分岐水分散性スルホン化ポリエステル縮合ポリマーは、
(a)スルホモノマーでない少なくとも1種の二官能価ジカルボン酸;
(b)酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づき、約1〜20モル%の、芳香環に結合した少なくとも1種のスルホン酸基を含む少なくとも1種の二官能価スルホモノマーの残基(前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はアミノである);
(c)2個の−C(R12−OH基を有するグリコール又は2個の−C(R12−OH基を有するグリコールと2個の−NRH基を有するジアミンの混合物から選ばれた少なくとも1種の二官能価反応体[ここで反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、反応体中のR1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数6〜10のアリール基である];
(d)1個の−C(R−)2−OH基を有するヒドロキシカルボン酸、1個の−NRH基を有するアミノカルボン酸、1個の−C(R−)2−OH基及び1個の−NRH基を有するアミノ−アルコール又は前記二官能価反応体の混合物[ここで反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基である]0〜約40モル%;並びに
(e)ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ及びそれらの混合物から選ばれた少なくとも3個の官能基を含む「多官能価」又は「分岐含有」反応体1〜40モル%
の反応生成物を含み、全ての前記百分率は200モル%に等しい全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ基含有反応体の合計に基づき、前記ポリマーはヒドロキシル及びアミノ基含有反応体(100モル%)に対して酸基含有反応体(酸100モル%)の部分を含む。
【0013】
別の実施態様によれば、分岐水分散性スルホン化ポリエステル縮合ポリマーは、
(I)スルホモノマーでない少なくとも1種の二官能価ジカルボン酸;
(II)全ての酸、ヒドロキシル及びアミノ当量の合計に基づき、約2〜15モル%の、芳香環に結合した少なくとも1種のスルホン酸基を含む少なくとも1種の二官能価スルホモノマーの残基(前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はアミノである);
(III)(A)ジオール部分又はジオール及びジアミン部分の総モル%に基づき、約0.1〜85モル%の、式H(−OCH2CH2−)nOH及びHRN(−OH2CH2O−)NRH[式中、nは2〜約20であり、Rは水素又はC1〜C6アルキルである]を有するジオール又はジアミン(このような部分のモル%はnの値に反比例する);
(B)ジオール部分又はジオール及びジアミン部分の総モル%に基づき、約0.1〜15モル%の、式H(−OCH2CH2−)nOH[式中、nは2〜約500である]を有するポリ(エチレングリコール)の部分(このような部分のモル%はnの値に反比例する);並びに
(C)2個の−C(R12−OH基を有するグリコール又は2個の−C(R12−OH基を有するグリコールと2個の−NRH基を有するジアミンの混合物から選ばれたジオール成分又はジオール・ジアミン混合物0〜約99モル%超(ここで反応体中のR1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数6〜10のアリール基である)
を含む少なくとも1種のジオール又はジオール及びジアミンの混合物;
(IV)1個の−C(R−)2−OH基を有するヒドロキシカルボン酸、1個の−NRH基を有するアミノカルボン酸、1個の−C(R−)2−OH基及び1個の−NRH基を有するアミノアルカノールとそれらの混合物からなる群から選ばれた二価モノマー反応体(前記反応体中のRは水素又は炭素数1〜6のアルキル基である)0〜40モル%;更に
(V)ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ及びそれらの混合物から選ばれた少なくとも3個の官能基を含む「多官能価」又は「分岐誘発」反応体約0.1〜40モル%
の反応生成物を含む(前記ポリマーは、実質的に等しいモル比の酸当量(100モル%)及びジオール又はジオール及びジアミン当量(100モル%)を含む)。
【0014】
本発明の線状及び分岐ポリエステルは種々の量のモノマー及びモノマーの群の種々の構成を有するが、以下の示すように、いくつかの特定の群の適当なモノマー及びこれらの群の好ましいモノマーは同一である。
【0015】
本発明のスルホネート含有水分散性接着剤及びコポリマーは、スルホモノマーでない1種若しくはそれ以上のジカルボン酸及び1種若しくはそれ以上のジオール又は1種若しくはそれ以上のジオールと1種若しくはそれ以上のジアミンの組合せの反復交互残基又は部分を有するポリエステルアミドを含むポリエステルを含む(前記モル百分率は、合計200モル%に関して100モル%のジカルボン酸残基並びに100モル%のジオール又はジオール及びジアミン残基に基づく)。或いは、ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸及び/又はアミノアルカノールのような、混合官能価を有するモノマーの残基を含むことができる。
【0016】
(I)、(i)及び(a)の残基の構成に使用する適当な二官能価ジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は2種若しくはそれ以上のこれらの酸の混合物がある。適当なジカルボン酸の例としては、コハク酸;グルタル酸;アジピン酸;アゼライン酸;セバシン酸;フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;フタル酸;テレフタル酸;及びイソフタル酸が挙げられる。テレフタル酸をポリエステルのジカルボン酸成分として用いる場合には、少なくとも5モル%の1種の他の酸を更に用いる場合に優れた結果が得られる。これらの酸の対応する酸無水物、エステル及び酸塩化物の使用も用語「ジカルボン酸」に含まれることを理解すべきである。
【0017】
(II)、(ii)及び(b)の二官能価スルホモノマー成分は、金属スルホネート基を含むジカルボン酸若しくはそのエステル又は金属スルホネート基を含むグリコール又は金属スルホネート基を含むヒドロキシル酸であることができる。スルホン酸塩の陽イオンは、NH4+又は金属イオンLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+、Fe3+などであることができる。
【0018】
本発明のポリエステル中の残基又は反応体(II)、(ii)及び(b)は、芳香核に結合した−SO3M基(ここでMは水素、NH4+又は金属イオンである)を含む二官能価モノマーであることができる。この二官能価モノマー成分は、−SO3M基を含むジカルボン酸又はジオール付加物であることができる。スルホン酸塩基の陽イオンは、NH4+又は金属イオンLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+、Fe3+などであることができる。ポリエステルの水安定性が望ましい一実施態様によれば、スルホン酸塩基の陽イオンは一価陽イオン、例えばNH4+、Li+、Na+又はK+であることができる。
【0019】
−SO3M基は芳香核に結合し、芳香核の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル及びメチレンジフェニルが挙げられる。
【0020】
反応体(II)、(ii)及び(b)中に任意選択で存在する非金属スルホネート基の陽イオン部分は、25℃で水中において10-3〜10-10、好ましくは10-5〜10-8のイオン化定数を有する脂肪族、脂環式又は芳香族塩基性化合物であることができる窒素含有塩基に由来する窒素ベースの陽イオンである。特に好ましい窒素含有塩基は、入手のし易さ、コスト及び有用性のために、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、イエタノールアミン(iethanolamine)、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン及びピペラジンである。
【0021】
反応体(II)は、約4〜約12モル%、約6〜約10モル%の範囲又は8モル%の濃度で存在できる。約4モル%以下の量ではポリエステルは水溶性がより低く、約12モル%より多量ではポリエステルは感水性がわずかに過剰である可能性がある。
【0022】
一実施態様によれば、反応体(ii)及び独立して反応体(b)は、総酸当量に基づき、約2〜約25モル%又は4〜15モル%の範囲の量で存在できる。
【0023】
(III)(A)及び(iii)(A)の好ましいジオールの例としては、入手し易さにより、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びそれらの混合物が挙げられる。(III)(A)の濃度は約10〜約80モル%又は20〜80モル%の範囲であることができる。この範囲外の量では、ポリエステルはより低い軟化点及びより高いTgを有する可能性がある。
【0024】
(III)(A)及び(iii)(A)の部分は、nの値が低い場合には、それぞれ(III)(B)及び(iii)(B)と同一であることができる。一実施態様によれば、(B)は異なる部分であり、ポリ(エチレングリコール)である。(III)(B)及び(iii)(B)の適当なポリ(エチレングリコール)の例としては、比較的高分子量のポリエチレングリコールが挙げられ、そのいくつかは、「Carbowax」の名称で市販されているUnion Carbideの製品である。約500〜約5000の分子量を有するポリ(エチレングリコール)が特に適当である。
【0025】
(B)の部分は好ましくは、nが10〜30の場合には特に、好ましくはより高い軟化点のために約1〜5モル%の濃度である。(III)、(iii)及び(c)のグリコール成分の残りの部分は、脂肪族、脂環式及びアルアルキルグリコールからなることができる。これらのグリコールの例としては、ネオペンチルグリコール;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシレンジオール及びネオペンチルグリコールが挙げられる。ポリエステルは、2種又はそれ以上の前記グリコールから製造できる。好ましいグリコールとしては、入手し易さ、コスト及び有用性により、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール類が挙げられる。
【0026】
ジアミンである(III)及び(c)の二官能価モノマー成分の例としては、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;2,2,4−トリメチルヘキサ−メチレンジアミン;4−オキサヘプタン−1,4−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン;1,4−シクロヘキサンビスメチルアミン;1,3−シクロヘキサンビスメチルアミン;ヘプタ−メチレンジアミン;ドデカ−エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0027】
部分III(C)の量は、ポリマーのTg及び軟化点を最適化にするように選択できる。部分III(C)は、ポリエステル中に約0〜約99モル%、約20〜約80モル%又は30〜70モル%の範囲で存在できる。
【0028】
成分(IV)、(iv)及び(d)に関して、アミノアルコール又はアミノアルカノールである二官能価成分としては、芳香族、脂肪族、複素環式及び他の型が挙げられる。具体例としては、5−アミノペンタノール−1,4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール、5−アミノ−2−エチル−ペンタノール−1,2−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−1−アミノエタン、3−アミノ−2,2−ジ−メチルプロパノール、ヒドロキシル−エチルアミンなどが挙げられる。一般に、これらのアミノアルコールは2〜20個の炭素原子、1個の−NRH基及び1個の−CR2−OH基を含む。
【0029】
成分(IV)、(iv)及び(d)に関して、アミノカルボン酸である二官能価モノマー成分としては、芳香族、脂肪族、複素環式及び他の型が挙げられる。具体例としては、6−アミノカプロン酸、カプロラクタムとして知られるそのラクタム、ω−アミノウンデカン酸、3−アミノ−2−ジメチルプロピオン酸、4−(β−アミノエチル)安息香酸、2−(β−アミノプロポキシ)安息香酸、4−アミノメチルシクロ−ヘキサンカルボン酸、2−(β−アミノプロポキシ)シクロヘキサンカルボン酸などが挙げられる。一般に、これらの化合物は2〜20個の炭素原子を含む。
【0030】
これらの部分(IV)、(iv)及び(d)は、コスト及び性能のためにあまり好ましくないが、存在することができる。これらの部分の濃度は約20モル%未満、約10モル%未満の範囲又は0モル%であることができる。
【0031】
ポリエステル組成物は、ヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選ばれた少なくとも3個の官能基を含む多官能価反応体(V)及び(e)の存在によって分岐される。(V)及び(e)の好ましい多官能価反応体の例は、トリメチルプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物及びジメチロールプロピオン酸である。一実施態様によれば、入手し易さ及び効果的な結果のために、TMPを使用できる。
【0032】
この分岐剤(V)及び(e)の量は、約0〜約20モル%、約0.1〜約10モル%又は1〜7モル%の範囲であることができる。分岐剤が非常に多量の場合にはポリエステルはゲル化し易い可能性があるのに対し、少量ではポリエステルは不良な性能をもたらす性質を有する可能性がある。
【0033】
一実施態様において、ポリエステルを製造するための重縮合反応体条件は、触媒の存在下において150〜230℃の温度であることができる。重縮合反応用触媒は酸触媒であることができる。一実施態様によれば、触媒は有機金属化合物、例えば錫又はチタン含有化合物であることができる。酸触媒の適当な例としては、ジブチル錫オキシド、シュウ酸第一錫、チタンテトライソプロポキシド、ブチル錫酸(butylstannoic acid)及びp−トルエンスルホン酸が挙げられ、ブチル錫酸が最も好ましい。一実施態様によれば、ブチル錫酸触媒は、反応体の総重量に基づき、約0〜約0.5重量%、約0.01〜約0.2重量%の範囲又は0.1重量%の量で存在する。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、接着剤組成物は1種又はそれ以上のスルホン化ポリエステルを、総接着剤組成物の約80重量%超、約90重量%超又は95重量%超の量で含む。一実施態様において、接着剤は1種の線状スルホン化ポリエステルと1種の分岐スルホン化ポリエステルとのブレンドを含み、それは総接着剤組成物の少なくとも98重量%を占める。
【0035】
例えば粘着性、ガラス転移温度(Tg)、インヘレント粘度、分子量などのような本発明のポリエステルの性質に関する値は大きく異なることができる。接着剤組成物が2種又はそれ以上のスルホン化ポリエステルのブレンドを含む本発明の一実施態様によれば、個々のポリマーの相対重量比も大きく異なることができる。結局のところ、個々のポリエステルは、例えばTgのような最終接着剤組成物の性質を得るために選択し且つ/又はブレンドすることができる。本発明の接着剤組成物の性質の範囲については以下で詳述する。
【0036】
本発明の接着剤組成物はまた、物理的混合物中にスルホン化ポリエステル又はポリエステルと共に保湿剤を含む。本明細書中で使用する用語「保湿剤」は、外部の相対湿度の幅広い変動にもかかわらず、長期間にわたって組成物の含水量を狭い範囲内に保持することができる吸湿性化合物を意味する。本発明の一実施態様によれば、保湿剤は、総接着剤組成物の約0.01〜約20重量%、約0.5〜10重量%又は1〜4重量%の範囲の量で存在できる。
【0037】
一般に、保湿剤は無機、有機又は有機金属であることができる。保湿剤の例としては、塩化カルシウム、グルクロン酸、乳酸、尿素、アセトアミドMEA、アスパラギン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリアオール(1,2,6-hexanetriaol)、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、グレセロール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、コーンシロップ、天然はちみつ及びそれらの任意の混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施態様によれば、多数のヒドロキシル官能価を有する有機保湿剤(例えばポリオール)を本発明の接着剤組成物中に使用できる。別の実施態様において、本発明の接着剤の保湿剤はプロピレングリコール、エチレングリコール及び/又はグリセロールを含む。
【0038】
一般に、保湿剤は、それが一定の相対湿度及び温度において環境から吸収する水の量によって特徴付けられる。一実施態様によれば、本発明の組成物の保湿剤は相対湿度(RH)50%及び温度70〜80°Fにおいて接着剤組成物の約6〜約30重量%、約7〜約27重量%又は8〜25重量%の範囲の水を吸収することができる。これに対して、同様な条件下で通常の可塑剤は典型的には約5重量%未満の水を吸収する。
【0039】
保湿剤の分子量及び結晶構造は接着剤組成物の最終的性質に影響を与える可能性がある。一般に、結晶性保湿剤の添加は接着剤組成物のガラス転移温度を上昇させ、その結果としてより脆い、柔軟でない接着剤を生成する。一実施態様によれば、本発明の保湿剤は非晶質であって、約1,500g/モル未満、約1,000g/モル未満、約750g/モル未満又は150g/モル未満の分子量を有することができる。
【0040】
更に、本発明の接着剤の保湿剤は皮膚を刺激しない。皮膚接触が認可されている化合物の総合目録は、皮膚接触が認可された化合物についての米国食品医薬局(the United States Food and Drug Adiministration)のGenerally Recognized as Safe(GRAS)リストに含まれている。GRASリストは、ワールドワイドウェブ上でhttp://vm.cfsan.fda.gov/〜dms/eafus.htmlでアクセスできる。一実施態様において、本発明の接着剤ブレンドの保湿剤はGRASリストに記載されているものであることができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物は任意選択でpH調節剤を含む。一実施態様において、pH調節剤は、接着剤ブレンドの最終pHを約6.0〜約8.5又は約6.5〜約8.25又は7〜8の範囲となるように調節するのに充分な量で添加できる。本発明の組成物に使用するのに適当なpH調節剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、クエン酸塩緩衝剤、燐酸塩緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、他の緩衝剤などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、スルホン化ポリエステル若しくはポリエステル、保湿剤及び任意選択のpH調節剤以外の添加剤を含むことができる。一実施態様において、接着剤ブレンドは更に、1種又はそれ以上の粘着付与剤及び/又は可塑剤を含む。粘着付与剤は接着剤のTgを上昇させ、それが軟化点を上昇させて、コールドフローを防ぐ。可塑剤はTgを低下させ、それが接着剤の柔軟性及び耐久性を増加させる。一実施態様において、接着剤ブレンドは、総接着剤組成物の約0〜約10重量%、約0〜約4重量%又は0〜1重量%の範囲の1種又はそれ以上の粘着付与剤及び/又は可塑剤を含む。スルホン化ポリエステル又はポリエステルの性質及び量は、最終組成物のTg及び他の性質を調整するように選択し且つ/又は調節できるので、別の実施態様において、本発明の接着剤は実質的に粘着付与剤及び/又は可塑剤を含まない。
【0043】
更に、ワックス、コールドフロー低減剤及び水分散性スルホン化ポリエステル以外のポリマーのような調節剤を本発明の接着剤配合物に添加できる。一実施態様において、分子量が約1,500g/モル未満、約1,000g/モル未満、約750g/モル未満又は150g/モル未満で且つ融点が約40℃未満又は35℃未満のポリエチレングリコールを、コールドフロー低減剤として接着剤ブレンドに添加できる。別の実施態様において、本発明の接着剤ブレンドは、親水性及び/又は疎水性ポリマーのような、水分散性スルホン化ポリエステル以外のポリマーを含むことができる。更に、紫外線吸収剤、成核剤、着色剤、顔料、溶剤、充填剤、架橋剤及び/又は放射線硬化性物質、光開始剤、粘度調節剤及び界面活性剤のような他の添加剤も、必要に応じて少量で存在できる。本発明の接着剤組成物は、約0〜約20重量%、約0〜約10重量%、約0〜約4重量%又は0〜0.99重量%の範囲の1種又はそれ以上のワックス、コールドフロー低減剤、水分散性スルホン化ポリエステル以外のポリマー及び1種又はそれ以上の前のパラグラフに記載した添加剤を含むことができる。
【0044】
接着剤組成物は更に、例えば水又は他の液体への分散性のようなその物理的性質を制御するために1種又はそれ以上の化合物を更に含むことができる。一実施態様において、分散性制御剤は塩であることができる。ここで使用する用語「塩」は、全体的電荷が中性のイオン化合物を意味する。別の実施態様において、分散性制御剤は塩化ナトリウム(NaCl)であることができる。一実施態様によれば、接着剤ブレンドは約0〜約10重量%、約0〜約5重量%、約0〜約3重量%又は約0〜約1重量%の範囲の分散性制御剤を含む。一実施態様によれば、本発明の接着剤組成物は、水を含む液体中に約10%、約25%、約50%、約75%、約95%、約99%又は完全に分散できる。本発明の接着剤組成物は、特殊医療用途へのその使用のために接着剤に1種又は以上の改質剤を含むこともできる。一実施態様によれば、接着剤組成物は経皮薬物送達用の1種又はそれ以上の医薬成分を含むことができる。別の実施態様によれば、本発明の接着剤は抗菌剤及び/又は抗細菌剤を含むことができる。更なる実施態様によれば、接着剤は創傷治癒を促進する化学成分を含むことができる。更に別の実施態様によれば、接着剤は、医療用物品、例えば生体用電極及び導電接着剤が有利であり得る他の用途に使用するために当業界で知られた任意の手段によって導電性にすることができる。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、その成分が皮膚非刺激剤であるので、低アレルギー性であることができる。本発明の接着剤組成物のポリエステル及び保湿剤は、例えばアクリル樹脂及び/又はラテックスのような皮膚を刺激する可能性のある化合物を約0〜約10モル%、約0〜約2モル%又は0〜1モル%範囲で含む。一実施態様によれば、接着剤組成物の1種又はそれ以上のポリエステルは、約0〜約15モル%、約0〜約10モル%、約0〜約5モル%又は0〜4モル%の範囲のラテックス及び/又はアクリル部分を含む。別の実施態様において、本発明のスルホン化ポリエステルは実質的にアクリル又はラテックス部分を含まない。更なる実施態様において、本発明のポリエステル及び保湿剤は、米国食品医薬品局のGenerally Recognized as Safe(GRAS)リストによって承認されており、皮膚接触について認可されている。一実施態様によれば、本発明の接着剤は、ラテックス及び/又はアクリルアレルギーを有する人々の皮膚に、アレルギー反応を誘発することなく貼付するための医療用物品を含む物品に使用できる。
【0046】
以下に詳述するように、本発明の接着剤ブレンドの特性及び性能は、ガラス転移温度(Tg)、保持力(hold power)、ループタック、水分吸収量(moisture mass uptake)(MMU)及び切り替え可能性によって定義できる。
【0047】
接着剤ブレンドのガラス転移温度は、PSAの低温性能の指標である。ガラス転移温度が低い接着剤は良好な粘着性を有するが、コールドフローの傾向があり、それがその組成物を用いる接着物品がクリープを起こす傾向を増す。ガラス転移温度が高い接着剤はコールドフローに耐えられるが、脆く且つど粘着性がより低い傾向がある。一実施態様において、本発明の接着剤組成物は約−10〜約15℃又は6〜10℃の範囲のガラス転移温度を有する。一実施態様において、2種のスルホン化ポリエステルのブレンドを含む本発明のブレンドのTgは、大きく異なる個々のガラス転移温度を有する水分散性スルホン化ポリエステルの相対量を調整することによって制御できる。典型的には、示差走査熱量測定法(DSC)又は動的機械分析(DMA)を用いて、接着剤のガラス転移温度を測定する。
【0048】
保持力(hold power)は、基材に貼付した接着剤が、剪断破壊を受ける前に静重量の力に耐えることができる時間量を評価する。一般に、接着剤が強力であるほど保持時間は長い。一実施態様において、本発明のPSAは、Pressure Sensitive Tape Council(PSTC)17に概説された手法に従って測定した場合に、約20分超、約30分超又は約50分超の保持時間を有する。
【0049】
ループタックは、PSAが表面に接着したまま残る能力を測定するのに使用する1つの方法である。一実施態様において、本発明の接着剤ブレンドのループタックは、PSTC−16に開示された手法によって測定した場合に、約0.01〜約10重量ポンド/インチ(lbf/in)、約1〜約7 lbf/in又は1.2〜5 lbf/inの範囲である。本発明のいくつかの接着剤ブレンドに関する保持力及びループタックの具体的な値を、下記実施例部分の例2に示す。
【0050】
接着剤の水分吸収量(MMU)は、その環境から水分を吸収し且つ保持する接着剤の能力を評価する。一実施態様において、本発明の接着剤ブレンドは、下記実施例部分の例3に概説した手法に従って測定した場合に、約4.5重量%超、約6重量%超又は約8重量%超の水分吸収量を有する。
【0051】
本発明の一実施態様において、PSAは「切り替え可能」である。本明細書中で使用する用語「切り替え可能」は、接着剤が低イオン液体との接触時に剥離強度の低下を起こせることを意味する。本明細書中で定義する「剥離強度」は、PSTC−101中で概説された手法に従って測定した場合に、180°の角度で基材から接着剤を除去するのに必要な単位幅当たりの力を意味する。剥離強度は、本明細書中では、接着剤をはぎ取られる基材に応じて分類する:「標準剥離強度」は、ステンレススチール基材を用いて測定した剥離強度を意味し、「皮膚剥離強度」は、基材として装着者の前腕の皮膚を用いて測定した剥離強度を意味する。
【0052】
基材に関係なく、剥離強度の低下は下記式に従って定義できる:(平均乾燥剥離強度−平均湿潤剥離強度)/(平均乾燥剥離強度)(百分率として表す)。ここで使用する用語「乾燥剥離強度」は、除去される接着物品の長さ全体にわたって平均した、低イオン液体との接触前の接着剤の剥離強度を意味し、「平均湿潤剥離強度」は、除去される接着物品の長さ全体にわたって平均した、低イオン液体との接触後のPSAの剥離強度を意味する。
【0053】
一実施態様において、接着剤組成物は、約5重量ポンド/インチ(lbf/in)超、約10 lbf/in超又は15 lbf/in超の平均乾燥標準剥離強度と約4 lbf/in未満、約3.5 lbf/in未満又は3.0 lbf/in未満の平均湿潤標準剥離強度を有する。別の実施態様によれば、平均湿潤標準剥離強度は、平均乾燥標準剥離強度の約75%未満、約50%未満又は約35%未満であることができる。結果として、本発明の接着剤ブレンドは、約25%超、約50%超又は65%超の平均標準剥離強度の低下を引き起こすことができる。
【0054】
更に別の実施態様において、本発明の接着剤は、約0.1 lbf/in超、約0.5 lbf/in超又は1 lbf/in超の平均乾燥皮膚剥離強度と約0.09 lbf/in未満、約0.05 lbf/in未満又は0.01 lbf/in未満の平均湿潤皮膚剥離強度を有することができる。一実施態様において、本発明の組成物の平均湿潤皮膚剥離強度は、接着剤ブレンドの平均乾燥皮膚剥離強度の約50%未満、約25%未満、約10%未満又は5%未満であることができる。それに応じて、本発明の接着剤ブレンドは、約50%超、約75%超、約90%超又は95%超の平均皮膚剥離強度の低下を受けることができる。
【0055】
一実施態様において、本発明の接着剤の切り替え可能性は、低イオン液体との接触によって活性化できる。本明細書中で使用する用語「低イオン液体」は、イオン含量が約5g/リットル(g/L)未満、約1.5g/L未満又は0.1g/L未満の液体を意味する。一実施態様において、低イオン液体は極性液体であることができる。別の実施態様において、低イオン液体は水を含むことができる。切り替え可能な接着物品と低イオン液体との接触の持続時間及び方法は、接着物品及び基材の寸法、位置、形状、ドウェル時間及び他の同様な性質によって大きく異なることができる。本発明の物品を皮膚に貼付する実施態様において。低イオン液体接触の持続時間及び方法は更に、物品の位置、装着者の皮膚の感受性及び他の関連因子に左右される。
【0056】
一実施態様において、切り替え可能な接着剤組成物は、皮膚又は他の基材、例えばスチール若しくは他の表面への噴霧によって適用される接着剤水溶液中に使用できる。別の実施態様においては、本発明のブレンド接着剤は、切り替え可能な接着物品を作成するための当業界で知られた任意の適当なバッキングに適用できる。一般に、両面バッキングは、接着剤の構造一体性と基材の保護の両方を提供する。バッキング自体が吸収性であることができ、且つ/又は吸収材料を使用することもできる。本発明の接着物品に使用するバッキングは実質的に伸縮性であることもできるし(例えば包帯)、或いは実質的に伸縮性でないこともできる(例えばテープ)。バッキングは、更なる強度を得るために、有機若しくは無機材料によって又は当業界で知られた組み立て若しくは接着剤適用の任意の方法若しくはパターンによって強化することができる。
【0057】
本発明の接着物品に使用するバッキングは、皮膚と適合する任意の天然若しくは合成の織布若しくは不織布材料、例えば綿、レーヨン、絹又は繊維から構成されることができる。一実施態様によれば、本発明の物品のバッキングは低アレルギー性であることができる。一実施態様において、バッキングは、空気及び水蒸気に対して透過性であるように、且つ更に、低イオン液体が接着剤と直接接触する通路を提供するように、充分に多孔性である。バッキングは、快適さのために容易に成形可能であることもできるが、耐久性であるように充分な強度及び限られた伸展性を有することもできる。更に、バッキングは、接着剤が凝集破壊を受ける傾向を制限するような方法で接着剤組成物がバッキングの一方の面と結合を生じる程度まで、接着剤組成物と相容性でなければならない。
【0058】
PSA組成物は分散液(水性分散液又は溶剤分散液)として又はホットメルト適用法によってバッキングに適用できる。溶液として適用する場合には、接着剤組成物は一般に、当業界でよく知られた常法、例えば押出塗布、吹付塗布、ロール塗布、はけ塗り、ナイフ塗布、浸漬塗布などによって適用できる。更に、物品には、その最終用途に必要な更なる加工、例えば積層を行うことができる。
【0059】
この用途において、本発明の切り替え可能な接着物品は、この物品を皮膚又は他の繊細な表面に適用し且つそれを呼び圧力で固定することによって使用できる。一実施態様において、切り替え可能な接着物品は、除去の前に、その切り替え可能性を活性化するために低イオン液体と接触させることができる。その後、物品は基材から除去できる。例えば、切り替え可能な接着物品は、呼び指圧を用いて基材に接着させることができる。その後、前記性質を有する低イオン液体を、接着剤と接触するような方法で物品に適用し、それによって前述のように標準剥離強度又は皮膚剥離強度の低下を引き起こすことができる。前述のように、具体的な液体接触測時間及び接触方法は、物品の寸法、形状、構造、位置及びドウェル時間によって異なる。一般に、ドウェル時間が長い物品は、大きいほど、硬質であるほど、長い接触時間と密接な接触方法(例えば直接浸漬)を必要とする。他の接触方法としては、例えば湿潤、布のような別の湿潤物品を用いた飽和、噴霧、シャワー又は接着剤と接触し且つその切り替え可能性を遂行するように充分に多孔質のバッキングを通して低イオン液体を移動させる任意の他の適当な手段が挙げられる。接着剤が切り替えられると、物品は、患部に損傷又は外傷を起こさない方法で除去できる。一実施態様において、接着剤組成物は、接着剤の剥離強度が低下した時期を示す、例えば変色指示薬のような指示薬を含むことができる。更に、物品の除去後に接着剤が基材上に残る場合には、残渣は更なる低イオン流体で洗い流すことができる。
【0060】
本発明を医療用途への使用に関して前述したが、本発明の組成物、物品及び方法は他の用途に、特に接着物品の除去時における基材の損傷を最小限に抑えるのが望ましい場合に適合させることができることは明らかであろう。一実施態様において、本発明は、基材からの物品及び接着剤の完全除去が望ましい仮接着物品及び/又は組成物に使用できる。例えば、本発明は、例えばラベル、テープ、ステッカー又は例えばセラミック、磁器製品、ガラスなどのような繊細な表面に貼付される他の接着物品のような用途に合わせて変えることができる。また、本発明の物品及び方法は、溶剤との接触が不適当な基材、例えば台所用品に使用できる。更に、本発明の物品はその水分散性のため、再パルプ化性が高く、従ってリサイクル可能な物品への使用に適する。
【実施例】
【0061】
以下の例は、当業者に本発明を調製及び使用するための教示をするために本発明を例証することを目的とし、本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0062】
例1−接着剤ブレンドの調製
この例は、いくつかの対照ブレンド、比較ブレンド及び本発明の接着剤ブレンドの調製を示す。
【0063】
以下の例中の接着剤組成物は、1種の分岐スルホン化ポリエステル(Eastman Chemical Company(Kingsport,Tennessee)から製品名AQ1045(登録商標)として市販されている)と1種の線状スルホン化ポリエステル(Eastman Chemical Companyから製品名AQ55S(登録商標)として市販されている)とのブレンドを含む。
【0064】
対照ブレンド1は、前記線状スルホン化ポリエステル240.00gを1パイントのスチール缶中で205℃(400°F)の温度で溶融させることによって調製した。次いで、前記分岐スルホン化ポリエステル60.00gを加え、4:1の重量比で分岐スルホン化ポリエステルと線状スルホン化ポリエステルを含む得られたブレンドを、ステンレススチール軸撹拌機に連結されたスパイラルワイヤーブレードを用いて30分間混合した。容器の内容物を剥離紙上に注ぎ、実験台上で周囲条件下において24時間冷却させた。対照ブレンド2、3及び4を、以下の表Iに示すように、分岐ポリマー対線状ポリマーの重量比をそれぞれ2:1、6:1及び8:1とする以外は同様にして調製した。
【0065】
比較ブレンド5及び6を、4:1の分岐ポリマー対線状ポリマー重量比を用いて、対照ブレンド1と同様にして調製した。比較ブレンド5及び比較ブレンド6には更にそれぞれ2重量%(6.0g)及び6重量%(18.0g)のグリセロールトリアセテート(Eastman Chemical Companyから製品名TRIACETIN(登録商標)として市販されている一般的な可塑剤)を含ませた。比較ブレンド7及び8を、対照ブレンド1と同様な4:1のポリマー重量比を用いて、更にそれぞれが2重量%(6.0g)及び6重量%(18.0g)のジプロピレングリセロールジベンゾエート(Velsicol Chemical Corporationから製品名BENZOFLEX(登録商標)9−88として市販されている別の一般的な可塑剤)を含む以外は同様にして調製した。操作上、可塑剤は分岐スルホン化ポリエステルとの混合前に添加し、得られたブレンドを、対照ブレンド1〜4に関して前述した方法に従って処理した。
【0066】
本発明のブレンド9〜12及び本発明のブレンド13〜16は、種々のポリマー重量比で、更にそれぞれが2重量%(6.0g)及び6重量%(18.0g)の保湿剤グリセロールを含む以外は対照ブレンド1〜4と同様にして調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
例2−接着剤ブレンドの性質
対照ブレンド1〜4及び本発明のブレンド9〜16について、平均乾燥剥離強度、ループタック及び保持力に関する値を測定した。以下の表IIはその結果を示す。
【0069】
ループタックは、PSTC−16に記載された方法に従って測定した。保持力は、PSTC−107に記載された方法に従って測定した。以下の表IIは対照ブレンド1〜4及び本発明のブレンド9〜16に関するループタック及び保持力の結果を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
例3−本発明の接着剤ブレンド中における保湿剤の有用性
この例は、本発明の接着剤ブレンド中における保湿剤の有用性を例証する。
【0072】
水分吸収量は、接着剤ブレンドが吸収できる水分の量を評価する。対照ブレンド2、比較ブレンド5〜8並びに本発明のブレンド10及び14の水分吸収量を試験するために、各組成物を例1に記載した方法に従って調製した。しかし、剥離紙の代わりに、約0.4gの各ブレンドの溶融サンプルを直径80mmのアルミニウムパンに移した。次いで、サンプルを実験台上で周囲条件下において24時間冷却させた。次に、サンプルを真空オーブン中に50℃において508mm(20インチ)Hgの真空下で窒素スイープをしながら8時間、次いで50℃において712mm(28インチ)Hgの真空下で窒素スイープをせずに16時間入れて、サンプルを充分に乾燥させた。状態調整されたサンプルを秤量し、次いで相対湿度100%及び23℃(75°F)の湿度室に24時間入れた。前記環境への暴露後の各ブレンドの最終重量を記録した。水分吸収量を、下記式に従って求めた:(最終湿潤重量−初期乾燥重量)/(最終湿潤重量)(百分率で表す)。
【0073】
次に、対照ブレンド2、比較ブレンド5〜8並びに本発明のブレンド10及び14のループタックを測定した。ループタックは、接着剤が基材に接着したまま残る能力を評価する。最初に、150℃(302°F)に加熱されたナイフコーターを用いて各ブレンドの1.0milの層を厚さ2.0milのMylarバッキング上に塗布することによって、接着剤ストリップを作成した。接着剤塗布バッキングを冷却させてから、2.5mm×17.5mmのストリップにカットした。次いで、各ブレンドのループタックを、PSTC−16に記載された方法に従って測定した。クロスヘッド変位速度(crosshead displacement rate)は300mm(12インチ)/分であり、ループの上部からステンレススチールプレートまでの最初の距離は2インチであった。最大変位は1.75インチであり、ドウェル時間は1秒であった。
【0074】
表IIIは、対照ブレンド2、比較ブレンド5〜8並びに本発明のブレンド10及び14に関する水分吸収量及びループタックの結果を要約する。
【0075】
【表3】

【0076】
表IIIに示した結果によれば、一般的な可塑剤の代わりに保湿剤を用いる本発明のブレンド10及び14は、一般的な可塑剤を用いる比較ブレンド5〜8よりも多くの水分を吸収し、より高いループタックを有する。
【0077】
例4−スチール上における本発明の接着剤ブレンドの切り替え可能性
以下の例は、ステンレススチール基材に適用した場合の本発明の接着剤の切り替え可能性を示す。スチール上における本発明の接着剤の切り替え可能性は、低イオン液体との接触時の標準剥離強度の低下を意味する。
【0078】
重量比4:1の分岐スルホン化ポリエステルと線状スルホン化ポリエステル及び2重量%のグリセロールを含む本発明のブレンド10を、例1に記載した方法に従って調製した。例2に記載した方法に従ってブレンドを厚さ2.0milのMylarバッキング上に塗布することによって、接着剤を接着テープに組み入れた。次に、テープを幅5mm(0.2in)のストリップにカットし、PSTC 101に記載されたような手動2−lbローラーに4回通すことによって40mm×125mm×1.3mm(16in×4.9in×0.05in)のステンレススチールプレートに接着させた。10分のドウェル時間後に、接着剤ストリップをUTMを用いて300mm(12インチ)/分のクロスヘッド変位速度で角度180°で除去した。得られた平均乾燥標準剥離強度を記録した。
【0079】
平均標準湿潤剥離強度を測定するために、本発明のブレンド14を用いる別の感圧性テープストリップを、前述のようにしてステンレススチールプレート上に適用した。次いで、プレートを脱イオン水の浴中に1時間完全に沈めた。浴からプレートを取り出し、接着剤ストリップの剥離強度を、前述の平均乾燥剥離強度と同様にして測定した。以下の表IVはその結果を要約する。
【0080】
【表4】

【0081】
表IVに示される標準剥離強度の結果の低下によって示されるように、本発明の接着剤組成物は、ステンレススチール基材に接着させた場合、脱イオン水のような低イオン液体との接触時に切り替え可能である。
【0082】
例5−皮膚上における本発明の接着剤の切り替え可能性
以下の例は、皮膚に適用した場合の本発明の接着剤の切り替え可能性を示す。皮膚上における切り替え可能性は、本発明の接着剤の皮膚剥離強度の低下を意味する。
【0083】
本発明のブレンド14を、例1において前述したようにして調製した。溶融ブレンドを、205℃(400°F)に加熱された1milギャップのドクターブレードを用いて剥離紙上に塗布した。次に、直径8milの繊維から構成され且つ0.011g/ヤードの重量を有する厚さ17.0milの布バッキングを冷たい接着剤上に押しつけ、ピンチローラー型ラミネーターを用いて固定した。長さ12インチ(300mm)及び幅0.5インチ(12.7mm)の接着剤試験ストリップをカットし、装着者の前腕の皮膚に接着した。ストリップを、PSTC−101に概説された方法に記載されたようにして2−lb手動ローラーに4回通して固定させた。
【0084】
10分のドウェル時間後に、物品を、Instron 4201 UTMによって300mm(12インチ)/分のクロスヘッド変位速度で角度180°で除去した。得られた平均乾燥剥離強度を記録した。
【0085】
平均湿潤皮膚剥離強度を測定するために、脱イオン水で飽和させた布タオルを物品の全表面積に30分間かけていおいた。30分後、布を取り除き、テープをUTMによって180°の角度で300mm(12インチ)/分の速度で皮膚からはがした。得られた平均湿潤皮膚剥離強度及び平均乾燥皮膚剥離強度並びに平均皮膚剥離強度の低下を以下の表Vに示す。
【0086】
【表5】

【0087】
表Vに示される皮膚剥離強度の結果の低下によって示されるように、本発明の接着剤組成物は、皮膚に接着させた場合、脱イオン水のような低イオン液体との接触時に切り替え可能である。
【0088】
例6−本発明の接着剤の分散性の制御
以下の例は、本発明の接着剤ブレンドに対する分散性制御剤の効果を例示する。
【0089】
本発明のブレンド10の4つのサンプルを、例1に記載した方法に従って調製し、本発明のブレンド17、18、19及び20を作成するために、塩化ナトリウム(NaCl)を更にそれぞれ1、3、5及び10重量%加えた。これらのブレンドを例1に記載したようにして冷却させてから、1インチのディスクにカットした。次いで、サンプルを脱イオン水50mL中に1時間沈めた。各サンプルの相対的分散性を目視観察して、以下の結果を得た;
本発明のブレンド17(NaCl 1重量%)は、混濁した水によって明らかなように、ほとんど完全に分散され、元のサンプルの形状は識別できなかった。
【0090】
本発明のブレンド18(NaCl 3重量%)は分散し始めたが、元の形状のほとんどを保持していた。このサンプルは非常に膨潤していた。
【0091】
本発明のブレンド19(NaCl 5重量%)は中程度に膨潤していたが、本発明のブレンド18より元の形状に近かった。サンプルの縁端部はわずかに分散しているように見えた。
【0092】
本発明のブレンド20(NaCl 10重量%)はごくわずかに膨潤していたが、元の形状と非常に類似しており、それほど分散していないように見えた。
【0093】
この例の結果は、10重量%以下の塩の混和が本発明の接着剤組成物の水分散度に影響を及ぼし得ることを示している。
【0094】
定義
本明細書中で使用する表現(“a”、“an”、“the”及び“said”)は、1つ又はそれ以上を意味する。
【0095】
本明細書中で使用する用語「及び/又は」は、2つ又はそれ以上の品目のリストに用いられる場合には、列挙された品目の任意の1つを単独で又は列挙された品目の2つ若しくはそれ以上の任意の組合せを使用できることを意味する。例えば、組成物が成分A、B及び/又はCを含むと記載されている場合には、組成物はAを単独で;Bを単独で;Cを単独で;A及びBを組合せで;A及びCを組合せで;B及びCを組合せで;又はA、B及びCを組合せで含むことができる。
【0096】
本明細書中で使用する用語「両親媒性(amphiphilic)」は、親水性及び疎水性を共に有する物質に関連する。
【0097】
本明細書中で使用する用語「平均乾燥皮膚剥離強度」は、接着剤が低イオン液体で切り替えられない場合に、接着剤及び/又は接着物品を装着者の皮膚に対して180°の角度で装着者の皮膚から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。皮膚剥離強度は、例5に記載した方法に従って測定できる。
【0098】
本明細書中で使用する用語「平均乾燥標準剥離強度」は、低イオン液体との接触がない場合に、接着剤及び/又は接着物品をステンレススチール基材に対して180°の角度でステンレススチール基材から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。標準剥離強度は、例4に記載したPSTC−101の変法に従って測定できる。
【0099】
本明細書中で使用する用語「平均皮膚剥離強度」は、物品長さ全体にわたって平均された、接着剤及び/又は接着物品を装着者の皮膚に対して180°の角度で装着者の皮膚から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。皮膚剥離強度は例5に記載した方法に従って測定できる。
【0100】
本明細書中で使用する用語「平均標準剥離強度」は、物品長さ全体にわたって平均された、接着剤及び/又は接着物品をステンレススチール基材に対して180°の角度でステンレススチール基材から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。標準剥離強度は、例4に記載したPSTC−101の変法に従って測定できる。
【0101】
本明細書中で使用する用語「平均湿潤皮膚剥離強度」は、接着剤を低イオン液体と接触させた後に、接着剤及び/又は接着物品を装着者の皮膚に対して180°の角度で装着者の皮膚から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。皮膚剥離強度は、例5に記載した方法に従って測定できる。
【0102】
本明細書中で使用する用語「平均湿潤標準剥離強度」は、接着剤を低イオン液体と接触させた後に、接着剤及び/又は接着物品をステンレススチール基材に対して180°の角度でステンレススチール基材から除去するのに必要な平均力/単位幅を意味する。標準剥離強度は、例4に記載したPSTC−101の変法に従って測定できる。
【0103】
本明細書中で使用する用語「コールドフロー低減剤」は、接着剤のコールドフローの傾向を低減させるために接着剤組成物に添加する物質を意味する。
【0104】
本明細書中で使用する用語「含んでなる(“comprising”、“comprises”、“comprise”)」は、この用語の前に挙げられた対象からこの用語の後に挙げられた1つ又はそれ以上の要素までの遷移に用いられるオープンエンドな遷移用語であり、遷移用語の後に列挙された1つ又はそれ以上の要素だけが必ずしもその対象を構成するのではない。
【0105】
本明細書中で使用する用語「含む(“containing”、“contains”、“contain”)」は、「含んでなる」と同じオープンエンドな意味を有する。
【0106】
本明細書中で使用する用語「分散性制御剤」は、流体中の組成物の分散度を制御するために組成物に添加する物質を意味する。
【0107】
本明細書中で使用する用語「ドウェル時間」は、接着物品が基材に接着したまま残る時間量を意味する。
【0108】
本明細書中で使用する用語「ガラス転移温度」又は「Tg」は、その温度未満では、接着剤が脆くなり且つ接着を生じなる温度を意味する。
【0109】
本明細書中で使用する用語「有する(“having”、“has”、“have”)」は、「含んでなる」と同じオープンエンドな意味を有する。
【0110】
本明細書中で使用する用語「保持力」は、接着剤組成物が、剪断破壊を受ける前に垂直静的重量の力を受けることができる時間の量(分)を意味する。保持力は、PSTC Procedure 107に従って測定できる。
【0111】
本明細書中で使用する用語「保湿剤」は、外部の相対湿度の幅広い変動にもかかわらず、長期間にわたって組成物の含水量を狭い範囲内に保持することができる吸湿性物質を意味する。
【0112】
本明細書中で使用する用語「低アレルギー性」は、アレルギー反応を引き起こす可能性が少ないことを意味する。
【0113】
本明細書中で使用する用語「挙げる」及び「挙げられる」は、「含んでなる」と同じオープンエンドな意味を有する。
【0114】
本明細書中で使用する用語「イオン」は、電子を獲得するか又は失うことによってもたらされる正電荷又は負電荷を有する1つ又はそれ以上の原子を意味する。
【0115】
本明細書中で使用する用語「イオン液体」は、イオン含量が約5g/リットルより多い液体を意味する。
【0116】
本明細書中で使用する用語「低イオン液体」又は「イオン含量の低い液体」は、約5g/リットル未満又は約1.5g/リットル未満又は0.1g/リットル未満のイオンを含む液体を意味する。
【0117】
本明細書中で使用する用語「水分吸収量」又は「MMU」は、接着剤組成物がその環境から吸収できる、接着剤の最終湿潤重量の百分率で表される水の量を意味する。例2は、接着剤組成物の水分吸収量を測定する方法を記載している。
【0118】
本明細書中で使用する用語「分子量」は、一分子中の全ての原子の原子量の和を意味する。
【0119】
本明細書中で使用する用語「中性pH」又は「pH−中性」は、約6〜約8.5、約6.5〜約8.25又は7〜8の範囲のpHを有する物質に関連する。
【0120】
本明細書中で使用する用語「呼び圧力(nominal pressure)」は、物品を表面に接着させるために物品に適用される、典型的には人の手又は匹敵するものによって適用される圧力の量を意味する。
【0121】
本明細書中で使用する用語「非晶質」は、規則正しい配列の反復パターンでは配列されていない原子又は分子を含む物質に関連する。
【0122】
本明細書中で使用する用語「皮膚非刺激剤(non-skin irritant)」は、装着者の皮膚と刺激しない物質を意味する。一般に、皮膚非刺激剤は、皮膚刺激を引き起こすことが典型的に知られている成分、例えばラテックス及び/又はアクリル樹脂を含まない。更に、皮膚非刺激剤と見なされる物質は、米国食品医薬品局によってGenerally Recognized as Safe(GRAS)リストに掲載されることができる。
【0123】
本明細書中で使用する用語「物理的混合物」は、成分が化学的には結合も一体化もされていない組成物の状態を意味する。
【0124】
本明細書中で使用する用語「可塑剤」は、接着剤のガラス転移温度を低下させ且つ接着剤の柔軟性及び耐久性を増大させるために接着剤に添加される物質を意味する。
【0125】
本明細書中で使用する用語「極性」は、1つ又はそれ以上の極性基を含む任意の量の物質を含む物質に関連する。
【0126】
本明細書中で使用する用語「ポリマー比」又は「ポリマー重量比」は、分岐ポリエステル対線状ポリエステルの重量比を意味する。
【0127】
本明細書中で使用する用語「ポリオール」は、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化合物を意味する。
【0128】
本明細書中で使用する用語「平均皮膚剥離強度の低下」は、(接着剤組成物の平均乾燥皮膚剥離強度と平均湿潤皮膚剥離強度の差)を(平均乾燥皮膚剥離強度)で割って、百分率で表したものを意味する。皮膚剥離強度は、例5に記載した方法に従って測定できる。
【0129】
本明細書中で使用する用語「平均標準剥離強度の低下」は、(接着剤組成物の平均乾燥標準剥離強度と平均湿潤標準剥離強度の差)を(平均乾燥標準剥離強度)で割って、百分率で表したものを意味する。標準剥離強度は、例4に記載したPSTC−101の変法に従って測定できる。
【0130】
本明細書中で使用する用語「相対湿度」は、空気が特定の温度で保持できるであろう最大量に対するその特定温度における空気中の水蒸気の量の比を百分率で表したものである。
【0131】
本明細書中で使用する用語「塩」は、化合物が全電荷を中性に保持する、陽イオンと陰イオンを含む化合物を意味する。
【0132】
本明細書中で使用する用語「皮膚刺激剤」は、皮膚刺激を引き起こし得る化合物及び/又は部分、例えばアクリル樹脂及びラテックスを意味する。
【0133】
本明細書中で使用する用語「切り替え可能な」は、低イオン液体との接触時に剥離強度を著しく低下させる接着剤組成物の性質に関連する。
【0134】
本明細書中で使用する用語「タック」又は「ループタック」は、接着剤の他着性又は表面にしっかりと接着できる接着剤の能力を意味する。ループタックは、PSTC Procedure 16に従って測定されるタックの特定の型である。
【0135】
本明細書中で使用する用語「粘着付与剤」は、軟化点を上昇させ且つコールドフローを防ぐために接着剤に添加される添加剤を意味する。
【0136】
本明細書中で使用する用語「水」は、脱イオン水、水道水及びそれらの任意の混合物を意味する。
【0137】
本明細書中で使用する用語「水分散性」は、例えば水のような極性物質を含む液体中に分散されることができる物質の性質である。
【0138】
前述の本発明の好ましい形態は説明のためにのみ使用するものであり、本発明の範囲を解釈するために限定された意味で使用すべきではない。前述の例となる実施態様の明らかな変更形態は、本発明の精神から逸脱することなく、当業者によって容易に実施できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上の水分散性スルホン化ポリエステル及び該ポリエステルとの物理的混合物中の保湿剤を含んでなり、約6〜約8.5の範囲のpHを有する、皮膚への貼付に適した感圧接着剤(PSA)組成物。
【請求項2】
前記PSAが切り替え可能である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PSAが前記PSAの平均乾燥標準剥離強度の約75%未満の平均湿潤標準剥離強度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記平均乾燥標準剥離強度が約5重量ポンド/インチより大きく且つ前記平均湿潤標準剥離強度が約4重量ポンド/インチ未満である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記PSAが前記PSAの平均乾燥皮膚剥離強度の約50%未満の平均湿潤皮膚剥離強度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記平均乾燥皮膚剥離強度が0.1重量ポンド/インチより大きく且つ前記平均湿潤皮膚剥離強度が約0.09重量ポンド/時未満である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記保湿剤が相対湿度50%及び温度70〜80°Fにおいて約6重量%より多くの水を吸収する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記保湿剤が相対湿度50%及び温度70〜80°Fにおいて前記接着剤組成物の8〜25重量%の範囲の水を吸収する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記保湿剤が非晶質である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記非晶質保湿剤が150g/モル未満の分子量を有する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記保湿剤が皮膚非刺激剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記保湿剤がプロピレングリコール、エチレングリコール及び/又はグリセロールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記PSAが約0.01〜約20重量%の範囲の前記保湿剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記PSAが1〜4重量%の前記保湿剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記PSAが約6.5〜約8.25の範囲のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記PSAが約80重量%超の前記水分散性スルホン化ポリエステルを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記PSAが約90重量%超の前記水分散性スルホン化ポリエステルを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記PSAが約0.5〜約10重量%の範囲の前記保湿剤を含む請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記PSAが95重量%超の前記水分散性スルホン化ポリエステルを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記PSAが1〜4重量%の範囲の前記保湿剤を含む請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記PSAが任意的にpH調節剤を含み、前記PSAが前記水分散性スルホン化ポリエステル、前記保湿剤及び前記pH調節剤以外の成分を約0〜約10重量%の範囲で含む請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記PSAが約0〜約10重量%の範囲の粘着付与剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記PSAが約0〜約10重量%の範囲の可塑剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記PSAが約0〜約4重量%の範囲の、分子量1,500/モル未満のポリエチレングリコールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記PSAが約0〜約20重量%の範囲の、前記水分散性スルホン化ポリエステル以外のポリマーを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記PSAが約0〜約10モル%の範囲の皮膚刺激剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記スルホン化ポリエステルが約0〜約10モル%の範囲のアクリル及び/又はラテックス部分を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記PSAが約0.1〜約10重量ポンド/インチの範囲のループタックを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記PSAが約−10〜約15℃の範囲のガラス転移温度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記PSAが少なくとも1種の分岐スルホン化ポリエステル及び/又は少なくとも1種の線状スルホン化ポリエステルのブレンドを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記PSAが約6%超の水分吸収量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記PSAが約0〜約10重量%の範囲の分散性制御剤を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
80重量%超の1種又はそれ以上の両親媒性水分散性ポリエステル;保湿剤;及び約0〜約4重量%の、分子量約1,500g/モルのコールドフロー低減剤を含んでなる感圧接着剤(PSA)であって、前記PSAの平均乾燥標準剥離強度の約75%未満の平均湿潤標準剥離強度、約0.1〜約10重量ポンド/インチの範囲のループタンク、約−10〜約15℃の範囲のガラス転移温度及び約6重量%超の水分吸収量を有する感圧接着剤。
【請求項34】
前記PSAが約6.5〜約8.25の範囲のpHを有する請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記PSAが約90重量%超の前記両親媒性水分散性ポリエステルを含む請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記PSAが約0.5〜約10重量%の範囲の前記保湿剤を含む請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記PSAが約95重量%超の前記両親媒性水分散性ポリエステルを含む請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記PSAが1〜4重量%の範囲の前記保湿剤を含む請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記両親媒性水分散性ポリエステルが水分散性スルホン化ポリエステルである請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記コールドフロー低減剤が約750g/モル未満の分子量を有する請求項33に記載の組成物。
【請求項41】
前記PSAが少なくとも1種の線状両親媒性水分散性ポリエステル及び/又は少なくとも1種の分岐両親媒性水分散性ポリエステルのブレンドを含む請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
バッキング及び前記バッキングに適用された感圧接着剤(PSA)を含んでなる、皮膚への貼付に適した切り替え可能な接着物品であって、前記PSAが1種又はそれ以上の水分散性スルホン化ポリエステル及び前記ポリエステルとの物理的混合物中の保湿剤を含み、前記PSAが約6〜約8.5の範囲のpHを有する物品。
【請求項43】
前記バッキングが充分に多孔性であり、且つ前記PSAが、低イオン液体を前記バッキングに適用する場合に前記低イオン液体が前記バッキングを通って移動して前記PSAと接触することによって前記PSAの平均湿潤皮膚剥離強度を前記PSAの平均乾燥皮膚剥離強度の50%未満まで低下させるように充分に切り替え可能である請求項42に記載の物品。
【請求項44】
前記物品が創傷被覆材、縫合剤、医療用テープ、アスレチックテープ、医療機器の接着用のタブ若しくはテープ又は経皮薬物送達用接着装置である請求項42に記載の物品。
【請求項45】
(a)バッキング及び前記バッキングの第1面に適用された少なくとも1種のスルホン化水分散性ポリエステルを含む感圧接着剤(PSA)を含む切り替え可能な接着物品を皮膚に接着させ;
(b)前記PSAに低イオン液体を適用し;そして
(c)前記工程(b)の後で、前記物品を前記皮膚から除去する(前記工程(b)の後の前記PSAの平均皮膚剥離強度は、前記工程(b)の前の前記PSAの平均皮膚剥離強度の約75%未満である)
ことを含んでなる、切り替え可能な接着物品の皮膚への貼付及び皮膚からの除去のための方法。
【請求項46】
前記PSAが約6.5〜約8.25の範囲のpHを有する請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記バッキングが充分に多孔性であって、前記バッキングの第2面に適用された水を前記バッキングを通して移動させて、前記バッキングの第1面上の前記PSAと接触させる請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記バッキングが充分に多孔性であって、前記バッキングの第2面に適用された水を前記バッキングを通して移動させて前記バッキングの第1面に適用された前記PSAの面積の少なくとも約10%と接触させる請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記低イオン液体が極性である請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記低イオン液体が約5g/L未満のイオンを含む請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記低イオン液体が水を含む請求項45に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505825(P2010−505825A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531383(P2009−531383)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/020063
【国際公開番号】WO2008/042103
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】