説明

感染性廃棄物の処理システム

【目的】多くの感染性廃棄物を短時間で効率よく良好に加熱滅菌し、それを安全な資源ごみとして回収することのできるシステムを提供する。
【構成】空のトレイが順次搬入される破砕室R1内で感染性廃棄物を破砕し、破砕した感染性廃棄物を破砕室R1内の下部に待機されるトレイ内に落し込み、そのトレイを乾熱室R4に搬入して該トレイ内の感染性廃棄物を不活性雰囲気下で加熱滅菌して非感染性物質とする感染性廃棄物の処理システムである。乾熱室R4にはトレイの搬送経路に沿って発熱体5が配される。又、乾熱室R4には、雰囲気調整室R3,R5が連通され、それら雰囲気調整室R3,R5と乾熱室R4との連通部分、並びに雰囲気調整室R3におけるトレイの搬入口と雰囲気調整室R5におけるトレイの搬出口は、それぞれ仕切ドア22〜25により開閉可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関などから排出される使用済みの注射器やチューブ類といった感染性廃棄物を無害化する処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などの医療機関からは使用済の注射器やチューブ類といった医療用具が日々排出されるが、近年では感染予防の観点から患者の血液や体液に触れた医療用具の使い捨てが行われていることにより、感染の虞のある医療廃棄物(感染性廃棄物)の増加傾向が顕著である。
【0003】
その種の感染性廃棄物は、二次感染の危険性があるので、そのまま廃棄処分することはできず、一般廃棄物とは別に回収して焼却されているが、その際に細心の注意を払わないと二次感染を惹起する虞があり、焼却処理するにも莫大な処理コストが掛かる上、焼却処理中に発生する熱エネルギの多くも有効利用されることなく大気中に放出されている。
【0004】
一方、感染性廃棄物を焼却せず、これを細かく破砕してから加熱殺菌するようにしたシステムも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−102826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1に開示されるシステムによれば、これを構成する殺菌処理槽が筒状壁の外周にジャケットを設けた構造で、そのジャケット内に蒸気が送り込まれるようにしていることから、筒状壁内の感染性廃棄物を効果的に滅菌することは困難である。
【0007】
このため、筒状壁内にも蒸気が供給される構成としているが、これでは汚染されたドレンが外部に流出する危険性があり、しかも蒸気との接触により湿った感染性廃棄物を殺菌処理後に乾燥する必要があることから、処理に多くの時間とコストが掛かるという欠点を有する。
【0008】
又、係るシステムは、感染性廃棄物を所定量ずつ別々に殺菌処理するバッチ式であるから効率が悪く、しかも感染性廃棄物が繊維類や軟化点の低い樹脂を含むものであるとき、それらが筒状体の内壁に付着して断熱層を形成するので、内部を短周期で清掃しなければならないという問題がある。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は多くの感染性廃棄物を短時間で効率よく良好に加熱滅菌し、それを安全な資源ごみとして回収することのできるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は空のトレイが順次搬入される破砕室内で感染性廃棄物を破砕し、破砕した感染性廃棄物を破砕室内の下部に待機されるトレイ内に落し込み、そのトレイを乾熱室に搬入して該トレイ内の感染性廃棄物を不活性雰囲気下で加熱滅菌して非感染性物質とするようにした感染性廃棄物の処理システムであって、前記乾熱室にはトレイの搬送経路に沿って発熱体が配され、前記乾熱室におけるトレイの搬入口には該乾熱室に搬入すべきトレイを待機させる第1の雰囲気調整室が連通されると共に、前記乾熱室におけるトレイの搬出口には該乾熱室から搬出されたトレイを受け入れる第2の雰囲気調整室が連通され、それら雰囲気調整室と乾熱室との連通部分、並びに第1の雰囲気調整室におけるトレイの搬入口と第2の雰囲気調整室におけるトレイの搬出口は、それぞれ仕切ドアにより開閉可能とされ、前記乾熱室と第1の雰囲気調整室および第2の雰囲気調整室には、それぞれ送気ダクトを介して不活性ガスを供給するための給気装置が連結されることを特徴とする。
【0011】
又、以上のようなシステムにおいて、給気装置は、酸素分子を捕捉するフィルタユニットと、このフィルタユニットに圧縮空気を供給するためのコンプレッサと、前記フィルタユニットを透過した窒素主体の不活性ガスを蓄えるガスタンクとを具備して成ることを特徴とする。
【0012】
更に、粉砕室に蒸気を噴霧するためのノズルと、このノズルに供給すべき蒸気を発生する蒸気発生装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
加えて、第2の雰囲気調整室におけるトレイの搬出口に連通して第2の雰囲気調整室から搬出されたトレイ内の非感染性物質を冷却する冷却室が設けられ、この冷却室もトレイの搬出口を有して該搬出口が仕切ドアにより開閉可能とされると共に、該冷却室にはその外部に配される熱交換器との間で冷気の循環が行われることを特徴とし、更には冷却室から搬出されたトレイから非感染性物質を取り出す取出装置と、この取出装置により取り出された非感染性物質を圧縮する圧縮機を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、破砕した感染性廃棄物をトレイに載せた状態で加熱滅菌するようにしていることから、乾熱室の内壁に感染性廃棄物が凝着してしまうことがなく、しかも不活性雰囲気下で滅菌処理が行われるようにしていることから、感染性廃棄物を発火させることなく高温に加熱することができる。このため、滅菌を短時間で確実に行え、しかも感染性廃棄物を燃焼させないので、これまでコストを掛けて焼却処理していた感染性廃棄物を固形燃料などとして使用可能な安全無害の資源ごみとして回収することができる。
【0015】
又、乾熱室に供給する不活性ガスとして、大気中の酸素を除去して窒素ガスを取り出すようにしていることから、不活性ガスを必要に応じて購入する場合に比べてランニングコストを大幅に抑制することができ、加熱滅菌処理中に不活性ガスが不足することもない。
【0016】
更に、粉砕室内に蒸気を噴霧する構成としていることから、粉砕に伴う粉塵の発生を抑制しながら、予備的な滅菌処理を施すことができる。
【0017】
加えて、感染性廃棄物を加熱滅菌した後に冷却室で冷却するようにしていることから、高温状態の非感染性物質が大気に暴露されることによる発火の危険性を防止することができ、しかも冷却後の非感染性物質をトレイから取り出して圧縮するようにしていることから、非感染性物質を塊状固体として容易に運搬することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るシステムの構成例を示した概略図である。
【0019】
図1において、1はコンベヤ(本例においてローラコンベヤ)、2は投入機であり、コンベヤ1は感染性廃棄物を収容した容器W(20〜80リットルの高気密、高液密容器)を搬送してこれを一つずつ投入機2に引き渡し、投入機2はコンベヤ1から受け取った容器Wを上昇せしめてこれを破砕機3内に投入するようになっている。
【0020】
破砕機3は感染性廃棄物を容器Wごと破砕するもので、その内部は破砕ローラ3Aを有する破砕室R1とされ、その上部には容器Wを受け入れる開閉自在な投入口3Bが形成される。又、破砕室R1内の下部には搬送装置C1(チェーンコンベヤ)が設けられると共に、その搬送装置C1上にトレイTが配置され、このトレイT内に破砕された感染性廃棄物が落ち込むようにしてある。
【0021】
尚、トレイTは高熱伝導性を有する金属製(本例においてステンレス製)の受皿であり、後述する加熱滅菌処理に際してトレイT内の感染性廃棄物がトレイTを介して加熱されるようにしている。
【0022】
4は破砕された感染性廃棄物を積んだトレイが破砕室R1から搬入される均し機で、その内部はトレイの搬送経路上に均し板4Aを設けた均し処理室R2とされ、該処理室R2内では均し板4Aによりトレイに積まれた感染性廃棄物の高さ調整が行われる。
【0023】
R3,R5は一つのトレイを収容するに足る狭小空間を形成する雰囲気調整室であり、その両者R3,R5間には加熱滅菌処理を行うための乾熱室R4が設けられる。乾熱室R4は複数(本例において5つ)のトレイを一列状に収容可能な横長の形態であり、その内部にはトレイの搬送経路に沿って発熱体5(本例において遠赤外線パネルヒータ)が配され、その各発熱体5によりトレイの底面が輻射加熱されるようにしてある。しかして、均し処理室R2から搬出されたトレイがその下流の雰囲気調整室R3(第1の雰囲気調整室)に搬入されて待機され、次いで該トレイが乾熱室R4に搬入されて底面を発熱体5による輻射熱で加熱されることにより、該トレイ内における感染性廃棄物の加熱滅菌が行われ、これによって感染性廃棄物を安全無害の非感染性物質とした後、その非感染性物質がトレイに積まれたまま乾熱室R4から雰囲気調整室R5に搬入されるようになっている。
【0024】
R6は非感染性物質を載せたトレイが雰囲気調整室R5から搬入される冷却室、7は冷却室R6から搬出されたトレイから非感染性物質を取り出す取出装置であり、その内部はトレイを傾動させる反転室R7とされ、該反転室R7内にはトレイを載せて旋回する図示せぬ反転台が設けられると共に、これによって傾斜されるトレイの停止位置には該トレイ内の非感染性物質を掻き出すスクレーパコンベヤ8が設けられる。
【0025】
そして、以上のよう取出装置7によりトレイ内から取り出された非感染性物質は、自然落下方式により圧縮機9内に投入されて圧縮された後、これが固形燃料などとして利用可能な最終処理物Xとして排出コンベヤ10上に排出され、それが排出コンベヤ10を通じて所定位置まで搬送されるようになっている。尚、圧縮機9は油圧駆動式のプランジャ形で、図示せぬシリンダの先端には押出用のノズル板が設けられる。
【0026】
ここに、破砕機3から取出装置7までの区間で上記各室R1〜R7は、トレイの通過を許容するようトレイの搬入口および搬出口が連通されると共に、それら各室R1〜R7内にはトレイの搬送経路を成す搬送装置C1〜C7(本例においてチェーンコンベヤ)が設けられる。それら各搬送装置C1〜C7は、トレイの乗り移りを可能とするために各室R1〜R7の連通部分における僅かな間隔を隔てて段差無く配され、各室R1〜R7の連通部分には当該部分を開閉するための仕切ドア21〜26が設けられる。
【0027】
詳しくは、破砕室R1におけるトレイの搬出口と均し処理室R2におけるトレイの搬入口は、その連通部分に配される仕切ドア21により開閉可能とされ、均し処理室R2におけるトレイの搬出口と雰囲気調整室R3におけるトレイの搬入口はその連通部分に配される仕切ドア22により開閉可能とされ、雰囲気調整室R3におけるトレイの搬出口と乾熱室R4におけるトレイの搬入口はその連通部分に配される仕切ドア23により開閉可能とされる。又、乾熱室R4におけるトレイの搬出口と雰囲気調整室R5におけるトレイの搬入口はその連通部分に配される仕切ドア24により開閉可能とされ、雰囲気調整室R5におけるトレイの搬出口と冷却室R6におけるトレイの搬入口はその連通部分に配される仕切ドア25により開閉可能とされ、冷却室R6におけるトレイの搬出口と反転室R7におけるトレイの搬入口はその連通部分に配される仕切ドア26により開閉可能とされる。
【0028】
尚、それら仕切ドア21〜26は、トレイに押されて開放する開き戸方式とすることもできるが、この方式では各室R2〜R7内に仕切ドア21〜26の動作領域を確保しなければならないので、本例では仕切ドア21〜26をスライド式とし、それらが油圧シリンダやモータ駆動のチェーンにより上下方向に開閉動作するようにしている。
【0029】
又、破砕室R1におけるトレイの搬入口と反転室R7におけるトレイの搬出口とは、搬送装置11(図2および図3参照)により連結され、その搬送装置11を通じて空のトレイが反転室R7から破砕室R1に戻され、これが破砕室R1に順次搬入されて往路側の搬送経路を成す搬送装置C1上に載せられるようになっている。
【0030】
ここで、破砕室R1の上部にはノズル31が設けられ、そのノズル31から破砕中の感染性廃棄物に向けて蒸気が噴霧されるようにしている。尚、32は蒸気発生装置であり、これにより発生された蒸気が蒸気導管33を通じてノズル31に供給されるようになっている。これによれば、感染性廃棄物の破砕に伴う粉塵の発生を抑制しながら、ある程度の滅菌効果を得ることができるが、蒸気の噴霧は感染性廃棄物が多量の水分を含まない程度に制限される。
【0031】
一方、乾熱室R4とこれに連なる雰囲気調整室R3,R5には、送気ダクト41を介して給気装置42が連結される。本例において、給気装置42は鐘紡製のPSA式窒素ガス発生装置(KN2−200SP型)であり、これは高分子系素材を材料にして作られるMSC(分子ふるい炭素)を吸着分離材とするフィルタユニット43と、このフィルタユニットに圧縮空気を供給するためのコンプレッサ44と、フィルタユニットを透過した窒素主体の(窒素を主要成分とするもので、それ以外に微量の大気中成分を含む)不活性ガスを蓄えるガスタンク45とを具備して構成される。これによれば、フィルタユニット43により酸素分子を捕捉して大気から窒素主体の不活性ガスを取り出し、これをガスタンク45に蓄えつつ乾熱室R4と雰囲気調整室R3,R5とに供給して、それらの内部を不活性ガスで満たすことができる。
【0032】
尚、乾熱室R4に対するトレイの搬入および搬出に際しては、仕切ドア22,25が閉鎖された状態で仕切ドア23,24が開放されるのであり、このため乾熱室R4に酸素を含んだ外気が流入したり、その内部から不活性ガスが過剰に流出するのを抑制することができる。
【0033】
このため、乾熱室R4内を低酸素濃度(3〜5%)乃至は無酸素状態に保ち、乾熱室R4内で感染性廃棄物を高温(150〜200℃)に加熱しながら、感染性廃棄物を不活性雰囲気下で発火させること無く加熱滅菌することができる。尚、感染性廃棄物を、トレイを介して間接的に加熱する発熱体5は、トレイの搬送経路を成す搬送装置C4(チェーンコンベヤ)の左右両側における無端チェーンの間に設けられる。
【0034】
又、図1に示されるように、冷却室R6は冷気供給管51と冷気排出管52とを介して熱交換器53と連結され、その熱交換器53と冷却室R6との間で冷気の循環が行われるようにしてある。54は水源から供給される水(冷却水)を冷却するためのクーラユニットであり、そのクーラユニット54で生成された冷却水は熱交換器53との間で循環される。尚、冷却室R6内はトレイの搬入時に雰囲気調整室R5から流入する不活性ガスにより低酸素濃度とされ、その低酸素濃度ガス(概ね窒素ガス)が熱交換器53との間で循環されて冷気とされるのであり、このため冷却室R6にトレイが搬入された時点で該トレイ内の非感染性物質が高温状態であっても、これが発火することは無い。
【0035】
又、図1において、60は排ガス処理装置であり、この排ガス処理装置60と上記の各室R1〜R7は排気ダクト61を介して連結される。係る排ガス処理装置60は、活性炭フィルタ62、一次排気ファン63、排気ヒータ64、白金触媒65、及び二次排気ファン66を順に連ねた構成であり、これによれば排気ダクト61を通じて回収した排ガス中から浮遊物質や細菌類を除去し、係る排ガスを清浄ガスとして大気中に放出することができる。
【0036】
図2は上記の処理システムを示した斜視図、図3は同処理システムの平面図を示す。これらの図で明らかなように、本例において、係る処理システムは2ライン構成とされ、その両ラインで同一の処理を並行して行えるようにしてある、但し、本発明はこれを要件とするものでなく、単一のライン構成でも、3列以上の多列ライン構成とすることもできる。
【0037】
ここで、以上のような処理システムを用いた感染性廃棄物の処理方法について説明すると、病院などの医療機関から回収した感染性廃棄物入り容器Wはコンベヤ1により投入機2の位置まで搬送される。そして、先行する容器Wから順に投入機2の昇降台上に載せられ、これが破砕室R1に投入される。破砕室R1内に投入された容器Wとその内容物(感染性廃棄物)は破砕ローラ3Aにより細かく破砕され、これがその下部に待機されるトレイT内に落し込まれる。
【0038】
しかして、1〜数個の容器Wの破砕によりトレイ内に小片状の感染性廃棄物が積み込まれると、仕切ドア21が開放された後、搬送装置C1が駆動して破砕室R1から均し処理室R2にトレイの搬入が行われる。
【0039】
均し処理室R2では、トレイに積まれた感染性廃棄物が均し板4Aにより均され、感染性廃棄物の高さ調整が行われる。尚、均し板4Aはその下方を通過するトレイ内の感染性廃棄物に接触するよう所定の高さ位置に揺動自在に取り付けられるだけであるが、その均し板4Aが昇降する方式としてもよい。
【0040】
次に、搬送装置C2,C3が駆動されつつ仕切ドア22が開放されることにより、トレイ内の感染性廃棄物が均されつつ、均し処理室R2から雰囲気調整室R3にトレイの搬入が行われるが、このとき仕切ドア23は閉鎖されている。そして、雰囲気調整室R3内へのトレイの搬入が完了すると、仕切ドア22の閉鎖後に仕切ドア23が開放され、その状態で搬送装置C3,C4が駆動されることにより雰囲気調整室R3から乾熱室R4にトレイの搬入が行われる。このため、乾熱室R4内へのトレイの搬入に際して、乾熱室R4から高温状態の不活性ガスが多量に流出したり、破砕室R1側から多量の酸素を含んだ空気が乾熱室R4内に流入するのを抑制することができる。尚、乾熱室R4内へのトレイの搬入は、一定時間(本例において12分)単位で行われ、乾熱室R4内では搬入されたトレイが図1における左側から順に収容されていく。
【0041】
このようにして、乾熱室R4内にトレイが順次搬入されて最初のトレイの搬入から一定時間(本例において60分:12分×5トレイ)が経過すると、仕切ドア23,24が開放され、乾熱室R4内における先頭のトレイが雰囲気調整室R5に搬入されつつ、雰囲気調整室R3に待機されていたトレイが乾熱室R4内に搬入される。
【0042】
尚、乾熱室R4内ではトレイの底面に対向する発熱体5によりトレイの加熱が行われ、しかして該トレイに積まれた感染性廃棄物が不活性雰囲気下で発火することなく加熱滅菌(180℃/60分)され、安全無害の非感染性物質とされる。
【0043】
一方、雰囲気調整室R5へのトレイの搬入が完了すると、仕切ドア24が閉鎖され、その後で仕切ドア25が開放されることにより、トレイが雰囲気調整室R5から冷却室R6に搬入される。このため、乾熱室R4からトレイを搬出する際にも乾熱室R4から高温状態の不活性ガスが多量に流出することを抑制することができる。
【0044】
又、冷却室R6へのトレイの搬入時には、仕切ドア25の開放により雰囲気調整室R5内の不活性ガスが冷却室R6に流入するので、トレイ内の非感染性物質が未だに高温状態にあっても、これが発火することはない。しかして、トレイに載せられたまま冷却室R6に搬入された非感染性物質は、低酸素濃度の冷気により急速に冷却される。
【0045】
その後、冷却室R6内のトレイは、仕切ドア26が開放された状態で搬送装置C6,C7が駆動されることにより反転室R7に搬入され、該トレイ内の非感染性物質がスクレーパコンベヤ8により圧縮機9内に掻き出される。そして、非感染性物質は圧縮機9により圧縮され、これが最終処理物Xとして排出コンベヤ10上に払い出される。尚、その最終処理物Xは発電用の固形燃料などとして使用することができ、不燃性の残渣も路盤材などとして余すことなく使用することができる。
【0046】
以上、本発明について説明したが、均し機4は必ずしも必要でなく、これを省略してもよい。又、雰囲気調整室R5を冷却室として利用することもできる。更に、給気装置42として、窒素ガスほか、アルゴンガスなどの不活性ガスが充填されたガスボンベを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る感染性廃棄物の処理システムを示した側面概略図
【図2】同システムの斜視図
【図3】同システムの平面図
【符号の説明】
【0048】
R1 破砕室
R2 均し処理室
R3 第1の雰囲気調整室
R4 乾熱室
R5 第2の雰囲気調整室
R6 冷却室
R7 反転室
C1〜C7 搬送装置
21〜26 仕切ドア
5 発熱体
7 取出装置
9 圧縮機
31 ノズル
32 蒸気発生装置
41 送気ダクト
42 給気装置
43 フィルタユニット
44 コンプレッサ
45 ガスタンク
53 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空のトレイが順次搬入される破砕室内で感染性廃棄物を破砕し、破砕した感染性廃棄物を破砕室内の下部に待機されるトレイ内に落し込み、そのトレイを乾熱室に搬入して該トレイ内の感染性廃棄物を不活性雰囲気下で加熱滅菌して非感染性物質とするようにした感染性廃棄物の処理システムであって、
前記乾熱室にはトレイの搬送経路に沿って発熱体が配され、前記乾熱室におけるトレイの搬入口には該乾熱室に搬入すべきトレイを待機させる第1の雰囲気調整室が連通されると共に、前記乾熱室におけるトレイの搬出口には該乾熱室から搬出されたトレイを受け入れる第2の雰囲気調整室が連通され、それら雰囲気調整室と乾熱室との連通部分、並びに第1の雰囲気調整室におけるトレイの搬入口と第2の雰囲気調整室におけるトレイの搬出口は、それぞれ仕切ドアにより開閉可能とされ、前記乾熱室と第1の雰囲気調整室および第2の雰囲気調整室には、それぞれ送気ダクトを介して不活性ガスを供給するための給気装置が連結されることを特徴とする感染性廃棄物の処理システム。
【請求項2】
給気装置は、酸素分子を捕捉するフィルタユニットと、このフィルタユニットに圧縮空気を供給するためのコンプレッサと、前記フィルタユニットを透過した窒素主体の不活性ガスを蓄えるガスタンクとを具備して成ることを特徴とする請求項1記載の感染性廃棄物の処理システム。
【請求項3】
粉砕室に蒸気を噴霧するためのノズルと、このノズルに供給すべき蒸気を発生する蒸気発生装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の感染性廃棄物の処理システム。
【請求項4】
第2の雰囲気調整室におけるトレイの搬出口に連通して第2の雰囲気調整室から搬出されたトレイ内の非感染性物質を冷却する冷却室が設けられ、この冷却室もトレイの搬出口を有して該搬出口が仕切ドアにより開閉可能とされると共に、該冷却室にはその外部に配される熱交換器との間で冷気の循環が行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感染性廃棄物の処理システム。
【請求項5】
冷却室から搬出されたトレイから非感染性物質を取り出す取出装置と、この取出装置により取り出された非感染性物質を圧縮する圧縮機を備えることを特徴とする請求項4記載の感染性廃棄物の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−314698(P2006−314698A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142927(P2005−142927)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(505178963)メディカルサービス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】