説明

感染性廃棄物の圧縮減容化装置

【課題】医療廃棄物等の感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、感染性物質の飛散を確実に防止できるようにした感染性廃棄物の圧縮減容化装置を提供すること。
【解決手段】感染性廃棄物Wを収容する容器2と、容器2の開口部を封鎖する蓋部材3と、容器2内に投入した感染性廃棄物Wを、昇降機構5により昇降するようにした圧縮盤4と、容器2内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構6と、容器2内の気体を吸引して容器2内を負圧に保持する吸引機構7と、吸引機構7によって吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構8と、吸引気体殺菌機構8で高温殺菌された気体を冷却する冷却機構9と、冷却機構9で冷却された気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性廃棄物の圧縮減容化装置に関し、特に、医療廃棄物等の感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、感染性の細菌、真菌、ウィルス等の微生物や微粒子等を含む感染性物質(本明細書において、単に、「感染性物質」という。)の飛散を防止するようにした感染性廃棄物の圧縮減容化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、医療機関において発生する医療廃棄物は、医療機関においてドラム缶等の容器に収容した後、金属溶融施設や焼却施設に搬送し、容器ごと溶融処理や焼却処理を行うようにしている。
しかしながら、医療廃棄物のうち、特に、手術着、ガーゼ、包帯等の繊維製品は嵩張り、搬送コストが嵩むという問題があった。
【0003】
この問題に対処するため、本件特許出願人は先に、医療廃棄物を圧縮減容化して搬送できるようにした医療廃棄物の加熱殺菌処理装置を提案した(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0004】
この加熱殺菌処理装置は、医療廃棄物を収容する圧力容器と、この圧力容器内を加圧する加圧装置と、医療廃棄物をマイクロ波加熱するマイクロ波発振器とを備えた加熱殺菌機を、車両の荷台に設置するようにして、車両を医療廃棄物の発生現場に移動させ、医療廃棄物の発生現場で医療廃棄物の加熱殺菌処理を行うようにしたものである。
そして、この加熱殺菌処理装置は、速やかに医療廃棄物の加熱殺菌処理を行うとともに、医療廃棄物を圧縮減容化できるという大きな利点を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204374号公報
【特許文献2】特開2008−93231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本件特許出願人が先に提案した上記医療廃棄物の加熱殺菌処理装置を、さらに改良し、医療廃棄物等の感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、感染性物質の飛散を確実に防止できるようにした感染性廃棄物の圧縮減容化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置は、容器内に投入した感染性廃棄物を、昇降機構により昇降するようにした圧縮盤によって圧縮減容化する圧縮減容化装置において、容器の開口部を封鎖する蓋部材と、容器内の殺菌を行う容器内殺菌機構と、容器内の気体を吸引して容器内を負圧に保持する吸引機構と、該吸引機構によって吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構と、該気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、容器内から吸引し、吸引気体殺菌機構で高温殺菌された気体を、冷却する冷却機構を備え、該冷却機構によって冷却した気体を吸着脱臭機構に導入した後、大気中に放出するようにすることができる。
【0009】
また、昇降機構が、圧縮盤の降下及び停止を繰り返しながら容器内に投入した感染性廃棄物を圧縮減容化する制御機構を備えることができる。
【0010】
また、感染性廃棄物を紙製の袋に入れ、容器内に投入するようにすることができる。
【0011】
また、架体に第1の昇降機構を配設し、該第1の昇降機構を蓋部材に取り付けて蓋部材を昇降させるとともに、蓋部材に配設した第2の昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるようにすることができる。
【0012】
また、架体に昇降機構を配設し、該昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるとともに、圧縮盤の上方に設けた蓋部材を前記昇降機構に昇降自在に案内されるようにすることによって、所定の範囲で蓋部材を圧縮盤に従動させるようにすることができる。
【0013】
また、容器内殺菌機構に、容器内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構、加熱高温殺菌機構、紫外線照射機構、殺菌線照射機構、光触媒殺菌機構、放電・プラズマ照射機構、軟X線照射機構のいずれか1つの機構又は2つ以上の機構を組み合わせたものを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置によれば、容器内に投入した感染性廃棄物を、昇降機構により昇降するようにした圧縮盤によって圧縮減容化する圧縮減容化装置において、容器の開口部を封鎖する蓋部材と、容器内の殺菌を行う容器内殺菌機構と、容器内の気体を吸引して容器内を負圧に保持する吸引機構と、該吸引機構によって吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構と、該気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構とを備えたことから、感染性廃棄物を圧縮減容化して搬送、処理できることから、搬送コストを含む感染性廃棄物の処理コストを低廉にできるという、本件特許出願人が先に提案した医療廃棄物の加熱殺菌処理装置の利点を享有しながら、感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、(a)蓋部材による容器の開口部の封鎖、(b)容器内の殺菌を行う容器内殺菌機構による容器内の消毒、特に、消毒液噴霧機構による容器内への消毒液の噴霧による容器内の消毒及び湿潤化、(c)吸引機構により容器内の気体を吸引することによる容器内の負圧保持、(d)吸引気体殺菌機構による吸引機構によって吸引された気体の高温殺菌、(e)吸着脱臭機構による吸引機構によって吸引された気体に含まれる悪臭成分(アセトアルデヒド、アセトン等のその他の有害成分を含む。以下、本明細書において同じ。)の吸着脱臭によって、感染性物質の飛散を確実に防止することができ、作業環境に悪影響を与えることなく、感染性廃棄物を安全に圧縮減容化することができる。
さらに、容器内殺菌機構として消毒液噴霧機構を用い、消毒液噴霧機構によって容器内に消毒液を噴霧することにより、感染性廃棄物を収容した容器を溶融処理等する際に、感染性物質の飛散を防止し、感染性廃棄物を安全に処理することができるという付随的な効果も期待できる。
【0015】
また、容器内から吸引し、吸引気体殺菌機構で高温殺菌された気体を、冷却する冷却機構を備え、該冷却機構によって冷却した気体を吸着脱臭機構に導入した後、大気中に放出するようにすることにより、吸着脱臭機構に用いられている吸着脱臭剤の機能を十分に発揮させることができるとともに、作業環境に与える影響を一層低減することができる。
【0016】
また、昇降機構が、圧縮盤の降下及び停止を繰り返しながら容器内に投入した感染性廃棄物を圧縮減容化する制御機構を備えることにより、感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、感染性廃棄物を入れた袋が局部的に一気に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
【0017】
また、感染性廃棄物を紙製の袋に入れ、容器内に投入するようにすることにより、紙製の袋が、例えば、消毒液噴霧機構によって容器内に噴霧された消毒液によって湿潤し、袋が局部的に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
【0018】
また、架体に第1の昇降機構を配設し、該第1の昇降機構を蓋部材に取り付けて蓋部材を昇降させるとともに、蓋部材に配設した第2の昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるようにすることにより、圧縮減容化装置全体の高さを低く抑えることができ、圧縮減容化装置の運搬や高さ方向に制限のある設置場所においても使用可能となる。
【0019】
また、架体に昇降機構を配設し、該昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるとともに、圧縮盤の上方に設けた蓋部材を前記昇降機構に昇降自在に案内されるようにすることによって、所定の範囲で蓋部材を圧縮盤に従動させるようにすることにより、圧縮盤及び蓋部材の昇降を1台の昇降機構によって行うことができ、装置の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、容器内殺菌機構に、容器内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構、加熱高温殺菌機構、紫外線照射機構、殺菌線照射機構、光触媒殺菌機構、放電・プラズマ照射機構、軟X線照射機構のいずれか1つの機構又は2つ以上の機構を組み合わせたものを用いることにより、感染性廃棄物の種類等に対応した容器内殺菌機構を用いることによって、感染性物質の飛散を確実に防止することができ、作業環境に悪影響を与えることなく、感染性廃棄物を安全に圧縮減容化することができる。
なお、容器内殺菌機構に、容器内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構と他の容器内殺菌機構を組み合わせて用いることによって、消毒液の使用量を低減できるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置を示す概念図である。
【図2】本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置の一実施例を示す側面図である。
【図3】同感染性廃棄物の圧縮減容化装置の一部切り欠き断面の要部拡大図である。
【図4】同感染性廃棄物の圧縮減容化装置の作動を説明する正面図で、(a)は廃棄物を投入した状態を、(b)は蓋部材を下降させ容器を封鎖した状態を、(c)は圧縮盤を下降し廃棄物を圧縮減容化した状態を示す。
【図5】本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置の別の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に、本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置の概念図を示す。
この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1は、感染性廃棄物Wを収容する容器2と、容器2の開口部を封鎖する蓋部材3と、容器2内に投入した感染性廃棄物Wを、昇降機構5により昇降するようにした圧縮盤4と、容器内殺菌機構としての容器2内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構6と、容器2内の気体を吸引して容器2内を負圧に保持する吸引機構7と、吸引機構7によって吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構8と、吸引気体殺菌機構8で高温殺菌された気体を冷却する冷却機構9と、冷却機構9で冷却された気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構10とを備え、吸着脱臭機構10を通過した気体を大気中に放出するようにすることができるようにしている。
【0024】
この場合において、感染性廃棄物Wを収容する容器2には、従来、感染性廃棄物を収容する容器として使用されている汎用のドラム缶等の金属製の容器や合成樹脂製の容器を広く使用することができる。
また、蓋部材3は、容器2の開口部を実質的に封鎖することができるものである限り、特にその構造は限定されるものではないが、周囲に縁部を形成することにより、上昇した圧縮盤4が収容することができる金属製のものを好適に使用することができる。
また、圧縮盤4は、所要の強度(剛性)を有する金属製の板材からなるものを好適に使用することができる。
【0025】
昇降機構5には、油圧シリンダ等の汎用の昇降装置を広く使用することができる。
この場合、昇降機構5が、圧縮盤4の降下及び停止を繰り返しながら(寸動させながら)容器2内に投入した感染性廃棄物Wを間欠的に圧縮減容化する制御機構(図示省略)を備えることが好ましい。
これにより、感染性廃棄物Wを圧縮減容化する際に、感染性廃棄物Wを入れた袋が局部的に一気に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
【0026】
感染性廃棄物Wを入れる袋には、合成樹脂製の袋を使用することもできるが、クラフト紙等の汎用の紙製の袋を使用することが好ましい。
これにより、紙製の袋に感染性廃棄物Wを入れて容器2内に投入するようにすることにより、紙製の袋が消毒液噴霧機構6によって容器内に噴霧された消毒液によって湿潤し、袋が局部的に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
また、合成樹脂製の袋を使用した場合に、袋が局部的に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを防止するために、袋に当接する圧縮盤4の適宜箇所、例えば、周面や下面に、袋を傷つけて空気抜きの孔を形成する刃片(図示省略)を設けることができる。
【0027】
容器内殺菌機構としての容器2内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構6の噴霧ノズルは、本実施例においては、蓋部材3に配設するようにしている。
そして、消毒液は、タンクTから送出ポンプPを介して噴射ノズルから容器2内に噴霧されるようにする。
また、消毒液噴霧機構6から容器2内に噴霧する消毒液には、感染性廃棄物Wに対応した、エチルアルコール、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の汎用の消毒液を広く使用することができる。
【0028】
ここで、容器内殺菌機構には、上記の容器2内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構6のほか、スポットヒータ等の加熱高温殺菌機構、紫外線照射機構、キセノンランプ等を用いた殺菌線照射機構、二酸化チタン等を用いた光触媒殺菌機構、ストリーマ放電技術(ダイキン工業株式会社)等を用いた放電・プラズマ照射機構、軟X線照射機構のいずれか1つの機構又は2つ以上の機構を組み合わせたものを用いることができる。
これにより、感染性廃棄物の種類等に対応した容器内殺菌機構を用いることによって、感染性物質の飛散を確実に防止することができ、作業環境に悪影響を与えることなく、感染性廃棄物を安全に圧縮減容化することができる。
なお、容器内殺菌機構に、容器2内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構6と他の容器内殺菌機構を組み合わせて用いることによって、消毒液の使用量を低減できるメリットがある。
【0029】
容器2内の気体を吸引して容器2内を負圧に保持する吸引機構7には、リングブロー等の汎用の吸引装置を広く使用することができる。
【0030】
吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構8には、スポットヒータ等の汎用の加熱装置(800℃程度まで加熱できるものが好ましい。)を広く使用することができる。
これにより、消毒液噴霧機構6から容器2内に噴霧する消毒液では滅菌処理されにくい有芽胞菌等の微生物を確実に殺菌することができる。
【0031】
吸引気体殺菌機構8で高温殺菌された気体を冷却する冷却機構9には、気体が流通する配管に配設した冷却フィン等の空冷装置を含む汎用の吸引装置を広く使用することができる。
【0032】
冷却機構9で冷却された気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構10には、活性炭、含水珪酸マグネシウム(商品名「セピオ」)等の汎用の吸着脱臭剤を用いることができる。
【0033】
以下、この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の使用方法について説明する。
[設計基準]
この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の設計基準(一例)は、以下のとおりである。
(1)消毒液噴霧機構6から容器2内に噴霧する消毒液(エチルアルコール(70%))の噴霧量は、消毒液噴霧機構6の2台設置する噴霧ノズル1台当たり150mL/minに設定する。
(2)消毒液を噴霧中に容器2(直径:580mm、高さ:870mmの容量約220Lのドラム缶を使用)内を負圧に保持するように、吸引機構7による気体の最大吸引量を360L/minに設定する。
(3)吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構8としてスポットヒータを使用し、最大吸引量における排出口温度を420℃に設定する。
【0034】
[基本動作]
次に、感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の基本動作(一例)について説明する。
(1)容器2を感染性廃棄物の圧縮減容化装置1に設置し、紙製の袋に入れた感染性廃棄物Wを投入する。
この場合、吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構8としてスポットヒータが設定温度に達するまでは圧縮減容化の操作は開始しないようにする。
(2)蓋部材3を降下させ、容器2の開口部を封鎖する。吸引機構7による気体の吸引量を180L/minに設定する。
(3)この状態で、20秒間消毒液を噴霧しながら、吸引機構7によって容器2内の気体を吸引する。
この間の消毒液の噴霧量は、150mL/minの噴霧ノズルを2台使用することにより、合計300mL/minとし、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(4)その後、昇降機構5によって圧縮盤4の降下及び停止を繰り返しながら(寸動させながら)容器2内に投入した感染性廃棄物Wを間欠的に圧縮減容化する。
寸動は2cm刻みで、その時の圧縮盤4の下降速度は約2cm/sec、停止時間は1.5秒に設定されている。圧縮盤4の下降は、圧縮盤4の圧力が8tに達した時に圧力スイッチ(図示省略)が作動し、停止するよう設定されている。したがって、450mm下降するのに約60秒を要する。ただし、圧縮盤4の停止圧力に達しなくとも、容器2の底部から350mmの位置で圧縮盤4が停止するよう設定されている。
この間の消毒液の噴霧量は、150mL/minの噴霧ノズルを1台使用することにより、150mL/minとし、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(5)圧縮盤4が停止した状態を1分間保持する。
この間は消毒液の噴霧は停止するが、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(6)圧縮盤4が上昇し、蓋部材3の位置まで上昇した時点で圧縮盤4を停止する。
圧縮盤4の上昇速度は約4.5cm/secに設定されており、約10秒で蓋部材3の位置まで上昇する。
この間の消毒液の噴霧量は、150mL/minの噴霧ノズルを2台使用することにより、合計300mL/minとし、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(7)圧縮盤4が蓋部材3の位置まで上昇し、その状態を1分間保持する。
この間は消毒液の噴霧は停止するが、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(8)圧縮盤4が蓋部材3の位置まで上昇した後、蓋部材3を容器2から約10mm持ち上げ、停止する。この時の上昇速度は約4.5cm/secに設定されている。
(9)蓋部材3を容器2から約10mm持ち上げ、停止した状態を2分間保つ。
この間は消毒液の噴霧は停止するが、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
(10)蓋部材3を圧縮盤4と共に、新たな感染性廃棄物Wを投入することが可能な所定の高さ位置まで(例えば、400mm)上昇させる。
この間は消毒液の噴霧は停止するが、気体の吸引量は360L/minに設定されている。
蓋部材3が所定の高さ位置まで上昇させて停止し、消毒液の噴霧及び気体の吸引を停止し、1工程を終了する。
なお、(1)〜(10)の行程は、制御機構(図示省略)によって自動運転で行うことができる。
(11)そして、新たな感染性廃棄物Wを投入する場合は、上記(1)〜(10)の行程を繰り返すようにする。
(12)すべての工程が完了すると、容器2の専用の蓋を手動で被せ、容器2を密封し、従来と同様、例えば、金属溶融施設に搬送し、容器ごと溶融処理を行うようにする。
【0035】
[性能試験結果]
次に、感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の性能試験結果(一例)について説明する。
(A)袋に感染性物質として大腸菌ファージを3.2×1010PUF投入した廃棄物
(B)袋に感染性物質として表皮ブドウ球菌を6.0×10CFU投入した廃棄物
(C)袋に感染性物質として感熱殺菌器評価用BIの自家製粉末を5.4×10CFU投入した廃棄物
を用いた感染性物質の飛散試験において、
(1)吸引機構7の吸入部
(2)吸着脱臭機構10の排気部
(3)蓋部材3の近傍(容器2の外部)
(4)圧縮減容化装置1の近傍(図2に示す圧縮減容化装置1を覆う覆い12の中央付近)
における感染性物質の飛散状況(細菌数)を測定したところ、いずれも良好な結果を得られた。
具体的には、例えば、試験(B)では、いずれの箇所においても、1(CFU/120L−air)以下となり、試験(A)及び試験(C)では、「(1)吸引機構7の吸入部」において、最大100(CFU/120L−air)の感染性物質(細菌数)を計測したが、「(2)吸着脱臭機構10の排気部」においてはいずれの場合においても、1(CFU/120L−air)以下となり、覆い12内における感染性物質(細菌)の飛散は認められなかった。
また、(A)〜(C)の条件で、
(1)容器2の外側
(2)蓋部材3の側面
(3)吸引機構7の吸入部
のそれぞれの箇所を拭き取り、100cm当たりの感染性物質(細菌数)を計測したところ、試験(A)〜(C)のいずれの場合においても、100(CFU/100cm)以下であり、問題ないことを確認した。
【0036】
[作用効果]
この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の作用効果は、以下のとおりである。
感染性廃棄物Wを圧縮減容化して搬送、処理できることから、搬送コストを含む感染性廃棄物Wの処理コストを低廉にできる。
また、感染性廃棄物Wを圧縮減容化する際に、(a)蓋部材3による容器2の開口部の封鎖、(b)消毒液噴霧機構6による容器2内への消毒液の噴霧による容器2内の消毒及び湿潤化、(c)吸引機構7により容器2内の気体を吸引することによる容器2内の負圧保持、(d)吸引気体殺菌機構8による吸引機構7によって吸引された気体の高温殺菌、(e)吸着脱臭機構10による吸引機構7によって吸引された気体に含まれる悪臭成分の吸着脱臭によって、感染性物質の飛散を確実に防止することができ、作業環境に悪影響を与えることなく、感染性廃棄物Wを安全に圧縮減容化することができる。
また、容器2内から吸引し、吸引気体殺菌機構8で高温殺菌された気体を、冷却する冷却機構9を備え、この冷却機構9によって冷却した気体を吸着脱臭機構10に導入した後、大気中に放出するようにすることにより、吸着脱臭機構10に用いられている吸着脱臭剤の機能を十分に発揮させることができるとともに、作業環境に与える影響を一層低減することができる。
さらに、消毒液噴霧機構6によって容器2内に消毒液を噴霧することにより、感染性廃棄物Wを収容した容器2を溶融処理等する際に、感染性物質の飛散を防止し、感染性廃棄物Wを安全に処理することができるという付随的な効果も期待できる。
【0037】
また、昇降機構5が、圧縮盤4の降下及び停止を繰り返しながら(寸動させながら)容器2内に投入した感染性廃棄物Wを圧縮減容化する制御機構を備えることにより、感染性廃棄物Wを圧縮減容化する際に、感染性廃棄物Wを入れた袋が局部的に一気に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
【0038】
また、感染性廃棄物Wを紙製の袋に入れ、容器2内に投入するようにすることにより、紙製の袋が消毒液噴霧機構6によって容器内に噴霧された消毒液によって湿潤し、袋が局部的に膨らんで破裂し、その衝撃で感染性物質が飛散することを確実に防止することができる。
【0039】
次に、図2〜図4に、感染性廃棄物の圧縮減容化装置の具体的な一実施例を示す。
この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1は、圧縮減容化装置1の架体11に、昇降機構5として、第1の昇降機構5Aを配設し、この第1の昇降機構5Aを蓋部材3に取り付けて蓋部材3を昇降させるとともに、蓋部材3に配設した第2の昇降機構5Bを圧縮盤4に取り付けて圧縮盤4を昇降させるようにしたものである。
これにより、圧縮減容化装置1全体の高さを低く抑えることができ、圧縮減容化装置1の運搬や高さ方向に制限のある設置場所においても使用可能となる。
【0040】
また、図5に、感染性廃棄物の圧縮減容化装置の具体的な他の実施例を示す。
この感染性廃棄物の圧縮減容化装置1は、架体11に昇降機構5を配設し、この昇降機構5を圧縮盤4に取り付けて圧縮盤4を昇降させるとともに、圧縮盤4の上方に設けた蓋部材3を昇降機構5に昇降自在に案内されるようにすることによって、所定の範囲(蓋部材3が容器2から持ち上げられる範囲)で蓋部材3を圧縮盤4に従動させるようにするようにしたものである。
これにより、圧縮盤4及び蓋部材3の昇降を1台の昇降機構5によって行うことができ、装置の簡素化を図ることができる。
この場合、蓋部材3が安定して昇降するように、架体11に設けたガイド部材13aによって蓋部材3に立設したガイド棒13bを案内するようにしている。
また、昇降機構5の昇降のストロークが長くなり、圧縮減容化装置1全体の高さが高くなるため、圧縮減容化装置1を搬送する際に、図5の二点鎖線に示すように、昇降機構5を90°揺動可能に構成することが好ましい。
【0041】
なお、図2〜図4及び図5に記載した感染性廃棄物の圧縮減容化装置1の構成及び作用は、図1に記載した感染性廃棄物の圧縮減容化装置1と同様である。
【0042】
また、感染性廃棄物の圧縮減容化装置1は、必ずしもその必要はないが、図2の二点破線で示すように、フィルム又は布製の覆い12で覆った状態で使用することようにすることができる。
この場合、覆い12には、吸着脱臭機構10を通過した気体を大気中に放出するための排気口を開口するとともに、覆い12内を清浄に維持するためのHEPAフィルタ等を備えた換気装置を配設するようにする。
【0043】
以上、本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の感染性廃棄物の圧縮減容化装置は、感染性廃棄物を圧縮減容化する際に、感染性物質の飛散を確実に防止できることから、医療廃棄物等の感染性廃棄物を処理する用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 感染性廃棄物の圧縮減容化装置
2 容器
3 蓋部材
4 圧縮盤
5 昇降機構
6 消毒液噴霧機構(容器内殺菌機構)
7 吸引機構
8 吸引気体殺菌機構
9 冷却機構
10 吸着脱臭機構
11 架体
W 感染性廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に投入した感染性廃棄物を、昇降機構により昇降するようにした圧縮盤によって圧縮減容化する圧縮減容化装置において、容器の開口部を封鎖する蓋部材と、容器内の殺菌を行う容器内殺菌機構と、容器内の気体を吸引して容器内を負圧に保持する吸引機構と、該吸引機構によって吸引された気体を高温殺菌する吸引気体殺菌機構と、該気体に含まれる悪臭成分を吸着脱臭する吸着脱臭機構とを備えたことを特徴とする感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項2】
容器内から吸引し、吸引気体殺菌機構で高温殺菌された気体を、冷却する冷却機構を備え、該冷却機構によって冷却した気体を吸着脱臭機構に導入した後、大気中に放出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項3】
昇降機構が、圧縮盤の降下及び停止を繰り返しながら容器内に投入した感染性廃棄物を圧縮減容化する制御機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項4】
感染性廃棄物を紙製の袋に入れ、容器内に投入するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項5】
架体に第1の昇降機構を配設し、該第1の昇降機構を蓋部材に取り付けて蓋部材を昇降させるとともに、蓋部材に配設した第2の昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項6】
架体に昇降機構を配設し、該昇降機構を圧縮盤に取り付けて圧縮盤を昇降させるとともに、圧縮盤の上方に設けた蓋部材を前記昇降機構に昇降自在に案内されるようにすることによって、所定の範囲で蓋部材を圧縮盤に従動させるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。
【請求項7】
容器内殺菌機構が、容器内に消毒液を噴霧する消毒液噴霧機構、加熱高温殺菌機構、紫外線照射機構、殺菌線照射機構、光触媒殺菌機構、放電・プラズマ照射機構、軟X線照射機構のいずれか1つの機構又は2つ以上の機構を組み合わせたものからなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の感染性廃棄物の圧縮減容化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235278(P2011−235278A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23010(P2011−23010)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(599049657)ニッポウ興産株式会社 (5)
【Fターム(参考)】