説明

感熱孔版印刷装置

【課題】サーマルヘッドの印加電力増大によるコモンドロップの増大を防止し、最適な穿孔状態を得る。
【解決手段】感熱性孔版マスタを所定の送りピッチで移動するようにマスタ搬送手段92を駆動する駆動手段40,41と、副走査方向解像度を設定する副走査方向解像度設定手段10と、副走査方向解像度設定手段10からの信号に基づき、設定された副走査方向の解像度に対応して前記送りピッチを変えるように前記駆動手段を制御する駆動制御手段20と、前記副走査方向解像度設定手段10からの信号に応じて、サーマルヘッド30の発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを所定のエネルギーに調整する穿孔エネルギー調整手段20とを有し、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗を3000Ω/□以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副走査方向解像度設定手段を有する感熱孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
副走査方向解像度設定手段を有する感熱孔版印刷装置としては、本願出願人が特許出願した特許文献1、特許文献2記載の感熱孔版印刷装置がある。特許文献1記載の感熱孔版印刷装置は、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、設定した副走査方向の解像度に対応して最適な穿孔状態が得られる感熱孔版印刷装置を提供することを目的とするもので、プラテンローラを駆動するマスタ送りモータと、副走査方向の解像度を設定する副走査方向解像度設定キーと、副走査方向解像度設定キーからの信号に基づき、マスタ送りモータを制御する駆動制御手段の機能、及び、副走査方向解像度設定キーからの信号に基づき、設定された副走査方向の解像度が高いとき、サーマルヘッドの発熱部の発熱作動時間間隔を遅くする発熱作動時間間隔制御手段の機能を有するマイクロコンピュータとを有し、サーマルヘッドの発熱部における副走査方向の寸法を、副走査方向解像度設定キーで設定できる最高の解像度に対応する感熱性孔版マスタの送りピッチの長さ以下にすることを特徴とする技術である。
【0003】
特許文献2記載の感熱孔版印刷装置は、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、設定した副走査方向の解像度に対応して最適な穿孔状態が得られる感熱孔版印刷装置を提供することを目的とするもので、プラテンローラを駆動するマスタ送りモータと、副走査方向の解像度を設定する副走査方向解像度設定キーと、副走査方向解像度設定キーからの信号に基づき、マスタ送りモータを制御する駆動制御手段の機能、及び、副走査方向解像度設定キーからの信号に応じてサーマルヘッドの個々の発熱部に供給する穿孔用エネルギーを所定のエネルギーに調整する機能とを持つマイクロコンピュータとを有し、サーマルヘッドの発熱部における副走査方向の寸法、副走査方向解像度設定キーで設定できる最高の解像度に対応する感熱性孔版マスタの送りピッチの長さ以下にすることを特徴とする技術である。
【0004】
【特許文献1】特許第2915776号公報
【特許文献2】特許第2960863号公報
【特許文献3】特許第2732532号公報
【特許文献4】特許第3043443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願人が特許出願した特許文献1、特許文献2記載の感熱孔版印刷装置は、出願当初には上記特徴により、感熱性孔版マスタの穿孔状態として主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、設定した副走査方向の解像度に対応してある程度十分な穿孔状態が得られていた。しかし、近年、感熱孔版印刷装置では、更なる高画質化、高耐刷化、高解像度化が進み、使用する感熱性孔版マスタの方向性としては、感熱性孔版マスタに具備されている熱可塑性樹脂フィルムの厚みが増してきており、その為、製版すなわちサーマルヘッドの印加電力もそれに応じて増大せざるを得なくなってきている。
【0006】
サーマルヘッドの印加電力が増大するということは、サーマルヘッドに具備されている発熱部の発熱抵抗体を発熱させた際に生じるサーマルヘッド内部の配線抵抗分による電圧降下(コモンドロップ)の増大を招く。このことは、サーマルヘッドに具備されている多数の発熱部の各発熱抵抗体に印加される電圧に差異が生じることを意味し、結果として狙った穿孔状態、即ち最適な穿孔状態が得られないことになってしまい、近年の高画質化が達成できるようになった感熱性孔版マスタでは、その影響が印刷画像に及んでしまう。
また、副走査方向解像度の設定ができる感熱孔版印刷装置では、高密度方向の解像度を設定した時には、感熱性孔版マスタの穿孔状態も小さくなるので、その差異が上記影響により顕著に発生してしまう。
【0007】
本発明は、サーマルヘッド内部のリード電極等の抵抗分で生じる電圧降下によるサーマルヘッド内部の部位差で生じる感熱性孔版マスタの穿孔状態の差異を低減でき、近年の高画質化に対応した感熱性孔版マスタに対しても、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、尚且つ上述した感熱性孔版マスタの穿孔状態の差異即ち印刷画像品質低下(印刷画像濃度の差異)も低減でき、設定した副走査方向の解像度に対しても最適な穿孔状態即ち最適な印刷画像品質を得ることができるという効果が得られる感熱孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、主走査方向に配列された多数の発熱部を具備するサーマルヘッドに対して、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版マスタをプラテンローラで押圧した状態で、前記主走査方向と直交する副走査方向にマスタ搬送手段により前記感熱性孔版マスタを移動させながら、画像信号に応じて前記発熱部を発熱させて前記熱可塑性樹脂フィルムを位置選択的に溶融穿孔して前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成し、該感熱性孔版マスタを印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラムの内周側からインキを供給して前記穿孔パターンを介して滲み出たインキにより印刷用紙上に前記画像信号に応じたインキ画像を形成する感熱孔版印刷装置において、前記感熱性孔版マスタを所定の送りピッチで移動するように前記マスタ搬送手段を駆動する駆動手段と、前記副走査方向の解像度を設定する副走査方向解像度設定手段と、前記副走査方向解像度設定手段からの信号に基づき、設定された副走査方向の解像度に対応して前記送りピッチを変えるように前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記副走査方向解像度設定手段からの信号に応じて、前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを所定のエネルギーに調整する穿孔エネルギー調整手段とを有し、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗を3000Ω/□以上としたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体へ印加される単位面積当りの印加電力密度が0.05mW/μm2以上であるものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドを駆動する場合の分割数をNとした時、このNがN≦4であるものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体面積比率が
前記発熱抵抗体面積[μm2]÷主走査方向解像度ピッチ[μm]×前記副走査方向解像度設定手段による副走査方向最高解像度ピッチ[μm]≦1
を満足しているものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドの温度を検出するヘッド温度検出手段と、前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記ヘッド温度検出手段で検出された前記サーマルヘッドの温度に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有するものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の感熱孔版印刷装置において、インキの温度を検出するインキ温度検出手段と、前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記インキ温度検出手段により検出されたインキ温度及び前記ヘッド温度検出手段により検出された前記サーマルヘッドの温度に応じて、最適なエネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有するものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体が同時に通電される発熱抵抗体数を検出する印字率検出手段と、前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記印字率検出手段で検出された印字率に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有するものである。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドの印字周期が2.5ms/ライン以下であるものである。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記感熱性孔版マスタが、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂層を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、サーマルヘッド内部内部のリード線等の抵抗分で生じる電圧降下によるサーマルヘッド内部の部位差で生じる感熱性孔版マスタの穿孔状態の差異を低減でき、近年の高画質化に対応した感熱性孔版マスタに対しても、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、尚且つ上述した感熱性孔版マスタの穿孔状態の差異即ち印刷画像品質低下も低減でき、設定した副走査方向の解像度に対しても最適な穿孔状態即ち最適な印刷画像品質を得ることができるという効果が得られる。
請求項2に係る発明によれば、搭載するサーマルヘッドの発熱部の発熱抵抗体へ印加される単位面積当りの印加電力密度が高い場合でも上記効果が得られる。
請求項3に係る発明によれば、サーマルヘッドの制御方法の簡素化を図ることができ、サーマルヘッドの信号系ハーネス低減等のためにサーマルヘッドを駆動するときの分割を細分化しない場合においても上記効果が得られる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、近年の高画質化に対応した感熱性孔版マスタに対しても、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立させることの確実性を増すことができる。
請求項5に係る発明によれば、如何なるサーマルヘッド温度に対しても上記効果が得られることの確実性を増すことができる。
請求項6に係る発明によれば、如何なるインキ温度に対しても上記効果を得ることができる。
請求項7に係る発明によれば、如何なる原稿画像、如何なる入力画像に対しても上記効果が得られることの確実性を増すことができる。
請求項8に係る発明によれば、更なる製版時間の短縮化によって高速性版が可能となる。
請求項9に係る発明によれば、更なる印刷画像の高画質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の一実施例である感熱孔版印刷装置を示している。まず、図1を参照して、この感熱孔版印刷装置の全体構成とその孔版印刷プロセスを説明する。
図1において、符号50は、装置本体キャビネットを示す。装置本体キャビネット50の上部にある、符号80で示す部分は原稿読取部を示し、その下方の符号90で示す部分は製版給版部、その左側に符号100で示す部分は多孔性の印刷ドラム101が配置された印刷ドラム部、その左の符号70で示す部分は排版部、製版給版部90の下方の符号110で示す部分は給紙部、印刷ドラム101の下方の符号120で示す部分は印圧部、装置本体キャビネット50の左下方の符号130で示す部分は排紙部を、それぞれ示している。
【0020】
次に、この感熱孔版印刷装置の動作についてその細部構成を含めて以下に説明する。
先ず、原稿読取部80の上部に配置された原稿載置台(図示せず)に、印刷すべき画像を持った原稿60を載置し、図示しない製版スタートキーを押す。この製版スタートキーの押圧に伴い、先ず排版工程が実行される。すなわち、この状態においては、印刷ドラム部100の印刷ドラム101の外周面に前回の印刷で使用された使用済感熱性孔版マスタ61bが装着されたまま残っている。
【0021】
先ず、印刷ドラム101が反時計回り方向に回転し、印刷ドラム101外周面の使用済感熱性孔版マスタ61bの後端部が排版剥離ローラ対71a,71bに近づくと、同ローラ対71a,71bが回転しつつその一方の排版剥離ローラ71aで使用済感熱性孔版マスタ61bの後端部がすくい上げられ、排版剥離ローラ対71a,71bの左方に配設された排版コロ対73a,73bと排版剥離ローラ対71a,71bとの間に掛け渡された排版搬送ベルト対72a,72bで使用済感熱性孔版マスタ61bが矢印Y1方向へ搬送されつつ排版ボックス74内へ排出され、使用済感熱性孔版マスタ61bが印刷ドラム101の外周面から引き剥がされ、排版工程が終了する。このとき、印刷ドラム101は反時計回り方向への回転を続けている。剥離排出された使用済感熱性孔版マスタ61bは、その後、圧縮板75により排版ボックス74の内部で圧縮される。
【0022】
排版工程と並行して、原稿読取部80では原稿読取が行われる。すなわち、図示しない原稿載置台に載置された原稿60は、分離ローラ81、前原稿搬送ローラ対82a,82b及び後原稿搬送ローラ対83a,83bのそれぞれの回転により矢印Y2からY3方向に搬送されつつ露光読み取りに供される。このとき、原稿60が多数枚あるときは、分離ブレード84の作用でその最下部の原稿のみが搬送される。なお、後原稿搬送ローラ83aは原稿搬送ローラ用モータ83Aによって回転駆動されると共に、前原稿搬送ローラ82aは搬送ローラ83a、82aの間に掛け渡されたタイミングベルト(図示せず)を介して回転駆動され、ローラ82b,83bはそれぞれ従動回転する。原稿60の画像読み取りは、コンタクトガラス85上を搬送されつつ、蛍光灯86により照明された原稿60の表面からの反射光を、ミラー87で反射させレンズ88を通して、CCD(電荷結合素子)等から成る画像センサ89に入射させることにより行われる。すなわち、原稿60の読み取りは、公知の「縮小式の原稿読取方式」で行われ、その画像が読み取られた原稿60は原稿トレイ80A上に排出される。画像センサ89で光電変換された電気信号は、装置本体キャビネット50内の図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に入力されてデジタル画像信号に変換される。
【0023】
一方、この画像読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像情報に基づき製版工程及び給版工程が行われる。すなわち、製版給版部90の所定部位にセットされた感熱性孔版マスタ61は、ロール状に巻かれたロール状態から引き出され、サーマルヘッド30に感熱性孔版マスタ61を介して押圧しているマスタ搬送手段としてのプラテンローラ92、及び送りローラ対93a,93bの回転により、間欠的に搬送路の下流側に搬送される。このように搬送される感熱性孔版マスタ61に対して、サーマルヘッド30の主走査方向に一列に配列された多数の微小な発熱部が、上記A/D変換基板から送られて経由してきたデジタル画像信号または外部のパーソナルコンピュータから入力されるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱部に接触している感熱性孔版マスタ61の熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。このように、画像情報に応じた感熱性孔版マスタ61の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
【0024】
画像情報が書き込まれた製版済感熱性孔版マスタ61aの先端は、給版ローラ対94a,94bにより印刷ドラム101の外周部側へ向かって送り出され、図示しないガイド部材により進行方向が下方へ変えられ、給版位置状態にある印刷ドラム101の拡開したマスタクランパ102(仮想線で示す)へ向かって垂れ下がる。このとき、印刷ドラム101は、排版工程により使用済感熱性孔版マスタ61bが既に除去されている。そして、製版済感熱性孔版マスタ61aの先端が、一定のタイミングでマスタクランパ102によりクランプされると、印刷ドラム101は図中A方向(時計回り方向)に回転しつつ外周面に製版済感熱性孔版マスタ61aを徐々に巻きつけていく。製版済感熱性孔版マスタ61aの後端部は、製版完了後にカッタ95により一定の長さに切断される。
【0025】
一版の製版済感熱性孔版マスタ61aが印刷ドラム101の外周面に巻装されると製版及び給版工程が終了し、印刷工程が開始される。先ず、給紙台51上に積載された印刷用紙62の内の最上位の1枚が、給紙コロ111及び分離コロ対112a,112bによりフィードローラ対113a,113bに向けて矢印Y4方向に送り出され、さらにフィードローラ対113a,113bにより印刷ドラム101の回転と同期した所定のタイミングで印圧部120に送られる。送り出された印刷用紙62が、印刷ドラム101とプレスローラ103との間にくると、印刷ドラム101の外周面下方に離間していたプレスローラ103が上方に移動されることにより、印刷ドラム101の外周面に巻装された製版済感熱性孔版マスタ61aに押圧される。こうして、印刷ドラム101の多孔部及び製版済感熱性孔版マスタ61aの穿孔パターン部(共に図示せず)からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙62の表面に転移されて、印刷画像としてのインキ画像が形成される。
【0026】
このとき、印刷ドラム101の内周側では、インキ供給管104からインキローラ105とドクターローラ106との間に形成されたインキ溜り107にインキが供給され、印刷ドラム101の回転方向と同一方向に、かつ、印刷ドラム101の回転速度と同期して回転しながら印刷ドラム101の内周面に転接するインキローラ105により、インキが印刷ドラム101の内周側に供給される。なお、インキはW/O型のエマルジョンインキである。
【0027】
印圧部120において印刷画像が形成された印刷用紙62は、排紙剥離爪114により印刷ドラム101から剥がされ、吸着用ファン118に吸引されつつ、吸着排紙入口ローラ115及び吸着排紙出口ローラ116に掛け渡された搬送ベルト117の反時計回り方向の回転により、矢印Y5のように排紙部130へ向かって搬送され、排紙台52上に順次に排出積載される。このようにして所謂試し刷りが終了する。
【0028】
次に、図示しないテンキーで印刷枚数をセットし、図示しない印刷スタートキーを押下すると、上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷及び排紙の各工程がセットした印刷枚数分繰り返して行われ、孔版印刷の全工程が終了する。
次に、副走査方向の解像度を設定するための構成、サーマルヘッド30、プラテンローラ92廻り及びこれらに関連する制御構成について詳述する。
図1に示すように、装置本体キャビネット50上部の図示しない操作パネルには、上記インキ画像における副走査方向の解像度を設定するための副走査方向解像度設定手段としての副走査方向解像度設定キー10が配設されている。この副走査方向解像度設定キー10は、例えば複写機等におけるファインモード設定キーと同様な機能を有しており、印刷用紙62上のインキ画像の副走査方向解像度を設定するために、ユーザーが所望する解像度に手動で任意に入力し設定できるものである。副走査方向解像度設定キー10は、この実施例においては1回押す毎に、上記副走査方向の解像度を400DPI又は600DPI(ドット/インチ)の2段階に切り替えて設定できるようになっている。
【0029】
副走査方向解像度設定キー10の近傍の操作パネルには、図1において左から順に400DPI及び600DPIの、副走査方向の解像度の設定を表示するためのLED(発光ダイオード)11が、2個配置されている。
プラテンローラ92は、図示しないタイミングベルトを介して駆動手段としてのマスタ送りモータ40に連結されている。マスタ送りモータ40は、ステッピングモータからなり、回転駆動される。よって、感熱性孔版マスタ61は、マスタ送りモータ40によりプラテンローラ92を介して所定の送りピッチをもって、上記主走査方向と直交する副走査方向に移動される。
【0030】
サーマルヘッド30は、主走査方向400DPI(ドット/インチ)の解像度を有し、その主走査方向に配列される微小な発熱部には、所謂矩形型の発熱抵抗体が用いられている。ここで、サーマルヘッド30の個々の発熱部の発熱抵抗体に供給する穿孔用エネルギーの調整内容を説明するために、まず、サーマルヘッド30における発熱部の詳細構成及びその作用について説明する。
【0031】
孔版印刷装置において、印刷画像の画像濃度は感熱性孔版マスタ61から滲み出るインキの量により決定される。感熱性孔版マスタ61から滲み出るインキ量は、感熱性孔版マスタ61に形成された穿孔パターンを構成する個々の微小な穿孔の開口面積、すなわち穿孔の大きさに比例的である。また、穿孔の大きさは、サーマルヘッド30の個々の発熱部の温度に対応する穿孔用エネルギーに比例的である。したがって、サーマルヘッド30の個々の発熱部の温度に対応する穿孔用エネルギーを調整することにより、最適な印刷画像を得るための穿孔パターンの穿孔の大きさを定めることができる。なお、副走査方向解像度設定手段は、副走査方向解像度設定キー10の代りにタッチパネルを使用してもよく、このタッチパネル上に副走査方向解像度設定値を表示しても構わない。
【0032】
次に、図5を参照して、本実施例における、副走査方向の解像度を可変する制御構成、サーマルヘッド30、マスタ送りモータ40及び原稿搬送ローラ用モータ83Aを駆動制御する構成を説明する。
図5において、符号20はマイクロコンピュータを示す。マイクロコンピュータ20は、後述するように、サーマルヘッド駆動回路27、マスタ送りモータ駆動回路41、原稿搬送ローラ用モータ駆動回路83B及び副走査方向解像度設定キー10の間で、指令信号及びデータ信号を送受信し、感熱孔版印刷装置全体のシステムを制御している。マイクロコンピュータ20は、CPU(中央演算処理装置)、I/O(入出力)ポート及びROM(読み出し専用記憶装置)、RAM(読み書き可能な記憶装置)等を備え、信号バスによって接続された周知の構成を有する。マイクロコンピュータ20は、後述するように、感熱性孔版マスタ61の送りピッチを、副走査方向解像度設定キー10の出力信号に基づき、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に対応した送りピッチに変えるようにマスタ送りモータ40を制御する駆動制御手段、原稿搬送ローラの送りピッチを、原稿搬送ローラ82a,82b、83a,83bを、副走査方向解像度設定キー10の出力信号に基づき、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に対応した送りピッチに変えるように原稿搬送ローラ用モータ83Aを制御する第2の駆動制御手段、及び、副走査方向解像度設定キー10の出力信号に応じて、サーマルヘッド30の個々の発熱部の発熱抵抗体に供給する穿孔用エネルギーを最適な所定のエネルギーに調整する穿孔エネルギー調整手段の各機能を有している。
【0033】
マイクロコンピュータ20のROMには、副走査方向解像度設定キー10で設定される副走査方向の解像度に対応した上記送りピッチを設定するための関係データと、穿孔用エネルギー調整のためのプログラムと、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に応じた最適な大きさの穿孔を形成するための穿孔用エネルギーに対応した通電パルス幅の関係データとが、予め実験的に定められて記憶されている。
副走査方向解像度設定キー10はマイクロコンピュータ20に接続され、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度の設定出力は、LED11に表示されると共に、マイクロコンピュータ20のI/Oポートに入力される。
【0034】
図5において、符号25は復号化回路、符号26は電源をそれぞれ示す。復号化回路25は、上記アナログ/デジタル(A/D)変換基板でデジタル符号化され画像処理がなされた画像信号または外部のパーソナルコンピュータから入力されるデジタル画像信号をイメージデータ信号に復号する機能を有し、サーマルヘッド駆動回路27へイメージデータ信号を出力する。マスタ送りモータ駆動回路41は、1−2相励磁パルスを発生する1−2相励磁回路の出力をマスタ送りモータ40に供給してマスタ送りモータ40を駆動する。原稿搬送ローラ用モータ駆動回路83Bは、マスタ送りモータ駆動回路41と同様な構成を有し、1−2相励磁パルスを発生する1−2相励磁回路の出力を原稿搬送ローラ用モータ83Aに供給して原稿搬送ローラ用モータ83Aを駆動する。
【0035】
サーマルヘッド駆動回路27は、復号化回路25から出力されるイメージデータ信号や、1副走査を示す信号並びにマイクロコンピュータ20から出力される通電パルス幅の指令及びデータ信号を受けてサーマルヘッド駆動信号を出力する駆動回路から主に構成される。また、サーマルヘッド30は、サーマルヘッド駆動回路27からの1主走査分のイメージデータ信号を順次にシフトするシフトレジスタと、このシフトレジスタの各段の出力をラッチするラッチ回路と、黒画素に対応するサーマルヘッド30の発熱部の発熱抵抗体を駆動するためのアンド回路と、このアンド回路の出力信号によりサーマルヘッド30の発熱部の発熱抵抗体を駆動するトランジスタと、逆電流防止用のダイオード等を具備している。
電源26は、サーマルヘッド駆動回路27に接続されていて、サーマルヘッド駆動回路27を介して、サーマルヘッド30の個々の発熱部の発熱抵抗体へ、感熱性孔版マスタ61を溶融穿孔するための穿孔用エネルギーとしての電気エネルギーを供給する形態をとっているが、直接サーマルヘッドへ接続しても構わない。
【0036】
次に、図5を参照して、副走査方向の解像度を可変する例及びその動作プロセスを説明する。
先ず、上述した製版スタートキーを押して製版工程を実行する前に、副走査方向解像度設定キー10を押して、印刷画像の副走査方向の解像度として所望する副走査方向の解像度を設定する。この副走査方向の解像度の設定信号が副走査方向解像度設定キー10からマイクロコンピュータ20に出力されると、マイクロコンピュータ20は、その副走査方向解像度の設定信号に対応した所定の感熱性孔版マスタ送りピッチ設定信号をマスタ送りモータ駆動回路41に送出すると共に、その副走査方向解像度に対応した所定の原稿搬送ローラ送りピッチで原稿搬送ローラ用モータ83Aを駆動制御する信号を原稿搬送ローラ用モータ駆動回路83Bに送出する。これと同時に、マイクロコンピュータ20は、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に応じた最適な大きさの穿孔を形成するための通電パルス幅設定信号をサーマルヘッド駆動回路27へ送出する。そして、マスタ送りモータ駆動回路41は、マイクロコンピュータ20により設定された副走査方向解像度に対応した所定の感熱性孔版マスタ送りピッチ設定信号に基づき、マスタ送りモータ40を駆動する。さらに、マスタ送りモータ40によりプラテンローラ92が回転駆動され、感熱性孔版マスタ61が所定の送りピッチ及び速度で搬送される。
【0037】
また、原稿搬送ローラ用モータ駆動回路83Bは、マイクロコンピュータ20により設定された副走査方向解像度に対応した所定の原稿搬送ローラ送りピッチ設定信号に基づき、原稿搬送ローラ用モータ83Aを駆動し、さらに原稿搬送ローラ用モータ83Aにより前・後原稿搬送ローラ対82a,82b、83a,83bが回転駆動されて原稿60が所定の原稿搬送ローラ送りピッチ及び速度で搬送される。
【0038】
こうして、サーマルヘッド駆動回路27は、電源26からの電力供給を受けて、上記通電パルス幅設定信号及び上記データ信号に基づき、所定の通電パルスを有するサーマルヘッド駆動信号を上記データ信号に応じて生成してサーマルヘッド30の個々の発熱部の抵抗発熱体に出力し、黒画素に対応した発熱部の抵抗発熱体がジュール熱を発生し、感熱性孔版マスタ61が上記データ信号に応じて溶融穿孔される。
【0039】
本実施例は、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗を3000Ω/□以上としたことを特徴としている。
図3はサーマルヘッド30の概略的等価回路を示す。サーマルヘッド30に具備されている多数の発熱部の各発熱抵抗体21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nを発熱させる場合、サーマルヘッド発熱用駆動電源1の電圧をVhd、各発熱抵抗体21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nの抵抗値をRt、発熱抵抗体2(21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2n)の発熱時間をTpとすると、発熱抵抗体2を(Vhd)2/Rt×Tpのエネルギー分発熱させることが望ましく、即ち、サーマルヘッド30に印加する電力をPとすると、発熱抵抗体2をP×Tpのエネルギー分発熱させることが望ましい。なお、図3において、31・・・3i、3i+1、3i+2・・・3nは、発熱抵抗体21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nをそれぞれ駆動する上記トランジスタからなるスイッチである。
【0040】
また、マイクロコンピュータ20が、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に基づいてサーマルヘッド駆動回路27を介してサーマルヘッド30への穿孔用エネルギーを制御する印加制御方式としては、マイクロコンピュータ20が、副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に基づいて発熱抵抗体2の発熱時間Tpを可変して高解像度の時にはその発熱時間Tpを短くするということが一般的であるが、その時に副走査方向解像度設定キー10で設定された副走査方向の解像度に基づいてサーマルヘッド発熱用駆動電源1の電圧Vhdを可変しても構わない。
【0041】
しかしながら、実際には発熱抵抗体2自身に印加される電圧はサーマルヘッド発熱用駆動電源1の電圧Vhdとは異なり、サーマルヘッド発熱用駆動電源1から発熱抵抗体2へ電圧を印加するためのハーネスの抵抗分やコネクタでの接触抵抗分であるR11,R14、サーマルヘッド30内部での配線抵抗分R12、発熱抵抗体21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nをそれぞれ駆動する上記スイッチ31・・・3i、3i+1、3i+2・・・3nを含むドライバICの抵抗分R13等の抵抗分による電圧降下(コモンドロップ)により、実質的には発熱抵抗体2に印加される電圧はサーマルヘッド発熱用駆動電源1より供給される電圧Vhdより低くなってしまう。
【0042】
そこで、本実施例では、既に公知であるコモンドロップ補正手段を使用して、サーマルヘッド30発熱用駆動電源1から発熱抵抗体2へ電力を供給するためのハーネスの抵抗分やコネクタの接触抵抗分であるR11やR14による電圧降下分は上記通電パルス幅等によって補うことができた。
また、サーマルヘッド30内部の配線抵抗分R12による電圧降下のロスを如何なる発熱抵抗体群21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nの各部位においても同一にすることはできないので、実際にはサーマルヘッド30内の発熱抵抗体群21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2nの各部位によって穿孔状態が異なってしまっていた。
【0043】
しかしながら、従来技術として挙げた特許文献1及び特許文献2記載の感熱孔版印刷装置では、その出願当時においては、感熱性孔版マスタの穿孔状態として主走査方向及び副走査方向に繋がることなく、設定した副走査方向の解像度に対応して、ある程度十分な穿孔状態が得られるものができており、特に問題は無かった。
ところが、近年の感熱孔版印刷装置では、更なる高画質化、高耐刷化、高解像度化が進み、使用する感熱性孔版マスタの方向性としては、感熱性孔版マスタに具備されている熱可塑性樹脂フィルムの厚みが増してきており、その為、製版すなわちサーマルヘッドの印加電力もそれに応じて増大せざるを得なくなってきており、サーマルヘッドに流れる電流が増加し、その結果としてサーマルヘッド発熱用駆動電源から発熱抵抗体2へ電力を供給するためのハーネスの抵抗分やコネクタの接触抵抗分であるR11やR14による電圧降下分、サーマルヘッド内部の配線抵抗分R12、サーマルヘッドに具備されている発熱抵抗体2を駆動するスイッチ3(31・・・3i、3i+1、3i+2・・・3n)を含むドライバICの抵抗分R13等の抵抗分による電圧降下(コモンドロップ)であるR11×Ihd、R12×Ihd、R13××Ihd、R14××Ihdの電圧降下即ち電圧ロスが増大してしまっていた。ここに、IhdはVhdを印かした際に流れる電流である。
【0044】
そこで、本実施例では、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2はシート抵抗を3000Ω/□以上のもので構成した。
その効果としては、サーマルヘッド30を1ビット駆動する(1つの発熱抵抗体)を駆動する時のサーマルヘッド30を駆動する部分の合成抵抗をRgとすると、Rg=R11+R12+Rt+R13+R14となる。ここで、R12の値は、サーマルヘッド30の部位によって異なるが、便宜上R12と表記している。そして、Vhd=√(P×R)で求められる電圧Vhdをサーマルヘッド発熱用駆動電源1から発熱抵抗体2へ印加すると(Rは一般的にはサーマルヘッド30の平均抵抗値。)、Ihd=Vhd/(R11+R12+Rt+R13+R14)となり、Ihdの値はRtの値に大きく依存することが判る。また、Rtは,R11、R12、R13、R14の値と比較すると、かなり差異がある。Rtが数千Ωであるのに対して、R11、R12、R13、R14はミリΩ単位程度で数値的な差異がある。
【0045】
従って、R11、R12、R13、R14に対しては(ここでもサーマルヘッド30の部位によってR12の値は異なるが、便宜上R12と表記している。)、サーマルヘッド30に流れる電流が大きくなればなるほど、Ihd×R11、Ihd×R12、Ihd×R13、Ihd×R14で算出される電圧降下即ち電圧ロスが大きくなってしまう。
【0046】
本実施例では、Ihd×R11、Ihd×R14等の電圧降下分は、公知技術のコモンドロップ補正手段等で補うことが可能であるので、特にIhd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下が生じてしまうことに着目し、Rtを高く、即ちサーマルヘッド30に具備されている発熱部の抵抗発熱体2のシート抵抗を3000Ω/□以上である抵抗発熱体にすることにより、Ihd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下を低減し、サーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異を少なくし、穿孔状態の差異が実際に印刷画像に現れないようにすることが可能となった。
【0047】
本実施例では、副走査方向解像度の設定ができ、高密度方向の解像度を設定した時には感熱性孔版マスタ61の穿孔状態が小さくなるので、その際にIhd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下によりサーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異が顕著に発生してしまうという問題を解決することができる。
【0048】
本実施例は、サーマルヘッド発熱用駆動電源1から、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の抵抗発熱体2へ印加される単位面積当りの印加電力密度が0.05mW/μm2以上である。感熱孔版印刷装置に搭載されるサーマルヘッドの発熱抵抗体寸法に関しては、特許文献3や特許文献4など数多くの公報に記載されており、感熱孔版印刷装置に搭載されるサーマルヘッドの抵抗発熱体の形状に関してはある程度使用範囲が決まってくる。本実施例は、それらの公報と同様にサーマルヘッドの発熱抵抗体寸法が決められる。本実施例は、例えば特許文献3に記載されているように、主走査方向のドットピッチと副走査方向のドットピッチを等しくするとともに発熱抵抗体の主走査方向の長さを発熱抵抗体の副走査方向の長さより短くし、サーマルヘッドに設けられた各発熱抵抗体の副走査方向の長さを副走査方向に隣接する2つのドット状の穿孔間に未製版部分からなる隙間部分が設けられるように副走査方向のドットピッチより短くし、各発熱抵抗体によって熱可塑性樹脂フィルムに加えられる熱エネルギーを主走査方向に隣接する2つのドット状の穿孔間にも未製版部分からなる隙間部分が設けられるように小さくすることにより、副走査方向にも主走査方向にも独立した穿孔が施されるようにしてもよい。また、本実施例は、特許文献4に記載されているように、サーマルヘッドに設けられた各抵抗発熱体の主走査方向長の主走査ピッチに対する比率が30〜70%、各抵抗発熱体の副走査方向長の副走査ピッチに対する比率が60〜95%であるように構成してもよい。
【0049】
本実施例は、上述のように発熱抵抗体の形状により使用範囲が決まり、その使用範囲の形状において、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2へ印加される単位面積当りの印加電力密度が0.05mW/μm2以上である時にはサーマルヘッド30への投入電力即ち0.05×発熱抵抗体2の面積の値が大きくなる時に上記効果、つまり、Ihd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下によりサーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異が顕著に発生してしまうという問題を解決できるという効果が得られる。なお、サーマルヘッド30への投入電力自身が高くなるということは、Ihd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下が増加することを意味している。
そこで、本実施例は、抵抗発熱体2の形状により決まる使用範囲の形状において、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2へ印加される単位面積当りの印加電力密度を0.05mW/μm2以上に設定しており、Ihd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下によりサーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異が顕著に発生してしまうという問題を解決できるという効果が得られる。
【0050】
一般的に感熱孔版印刷装置に搭載するサーマルヘッドの電力密度は高い。例えば図4に示すように、感熱孔版印刷装置に搭載するサーマルヘッド((株)リコー製A400用サーマルヘッド)の電力密度0.1053mW/μm2は他社製用サーマルヘッド)の電力密度0.0103mW/μm2に比べて一桁違うレベルである。したがって、感熱孔版印刷装置に搭載するサーマルヘッドは、寿命関連等も十分に考慮して抵抗発熱体の形状等を決定する。
【0051】
本実施例は、サーマルヘッドを駆動する場合の分割数をNとした時、このNの値がN≦4となるように構成している。このことは、上述したようにVhd=√(P×R)で求められる電圧Vhdをサーマルヘッド発熱用駆動電源1から発熱抵抗体2へ印加すると(Rは一般的にはサーマルヘッド30の平均抵抗値。)、Rtが数千Ωであるのに対して、R11、R12、R13、R14はミリΩ単位程度であるという数値的差異があるので、便宜上Rtのみで考えると、1ビットのみの通電では発熱抵抗体2に流れる電流IhdはVhd/Rtで算出できる。サーマルヘッド30は多数の発熱抵抗体2を有しており、ベタ画像印刷時などにおいては、同時に複数の発熱抵抗体を駆動して発熱させることになる。
【0052】
図3に示す概略等価回路からも分かるように、多数の発熱抵抗体2は並列に接続されており、例えばN個の発熱抵抗体2を並列に接続した場合の合成抵抗Rgとしては、N個の発熱抵抗体2の各抵抗値をRt1、Rt2、Rt3・・・Rtnとすると、1/Rg=(1/Tt1)+(1/Tt2)+・・・(1/Ttn)という関係式からRg=N/Rtとなり、発熱抵抗体2に流れる電流が増加して上述した電圧降下及び電圧ロスが大きくなる。
本実施例では、サーマルヘッド30を駆動する場合の分割数をNとした時、Nの値がN≦4、すなわち、4分割や2分割等のように同時駆動数が少ない時にも、Ihd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下によりサーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異が顕著に発生してしまうという問題を解決できるという効果が得られる。また、感熱孔版印刷装置に搭載するサーマルヘッドとしては、サイズ的にはA3サイズ若しくはB4サイズが主流であり、解像度としては300〜600dpiが一般的である。このような状況下においては、サーマルヘッドとして4分割より多い分割数の時には上記効果としてはそれ程大きい効果が得られず、上述したようにN≦4で発熱抵抗体2に流れる電流が大きい場合に上記効果が大きくなる。
【0053】
本実施例では、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体面積比率が発熱抵抗体面積[μm2]÷主走査方向解像度ピッチ[μm]×副走査方向解像度設定手段により設定された副走査方向最高解像度ピッチ[μm]≦1という条件を満足させることを特徴としている。この条件を満足することにより、副走査方向解像度設定手段10によって設定された最高の副走査方向解像度においても感熱性孔版マスタ61の穿孔状態として主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、副走査方向解像度設定手段で設定した副走査方向解像度に対応して十分な穿孔状態が得られる。発熱抵抗体の形状等に関しては、使用する感熱性孔版マスタの熱収縮等の諸特性及びサーマルヘッド30の寿命関連を考慮して決定すればよい。
【0054】
本実施例では、マイクロコンピュータ20は、サーマルヘッド30の印字周期を2.5ms/Line(ライン)以下に設定している。これは、サーマルヘッド30の印字周期が速く(短く)なればなるほどサーマルヘッド30の蓄熱作用が増大し、サーマルヘッド30の部位によって蓄熱量が異なってしまい、上述した穿孔状態の差異がより顕著になってしまうからである。したがって、本実施例では、サーマルヘッド30の印字周期が2.5ms/ライン以下であることにより、更なる製版時間の短縮化によって高速製版が可能となる。
【0055】
本実施例は、感熱性孔版マスタ61が、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂層からなる。
近年、感熱性孔版マスタとしては、熱可塑性樹脂フィルムに多孔性樹脂層を塗布し、その下に繊維等からなる多孔性支持体を貼り付けたものが使用されており、多孔性樹脂層を一層設けることにより、繊維等からなる多孔性支持体の凹凸での穿孔性劣悪化を抑制し、多孔性樹脂層によってインキの分散性がかなり良くなってくるために高画質化を図ることが可能となる。
【0056】
本実施例は、このような感熱性孔版マスタを使用するとことにより、従来の感熱性孔版マスタである熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体との張り合わせからなるものと比べ、印刷画像品質としてはかなり高画質となる。そういった少なくとも感熱性孔版マスタである熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とからなる感熱性孔版マスタにおいては、上述したIhd×R12によるサーマルヘッド30内部での電圧降下によりサーマルヘッド30内の部位(サーマルヘッド30内の駆動抵抗発熱体の部位)による穿孔状態の差異が顕著に発生してしまうという問題を解決できるという効果が得られ、サーマルヘッド30で穿孔された穿孔状態に対してより忠実な印刷画像を得ることが可能となる。
【0057】
次に、上述したサーマルヘッド内の部位による穿孔状態に関して説明する。図6は上述した問題を解決してない感熱孔版印刷装置において400dpiのサーマルヘッド30内の部位による穿孔状態の概略を示す。図6(a)−1は、副走査方向解像度設定キー10で400dpiを設定した際の穿孔状態であって、サーマルヘッド30内のR12等の抵抗分で生じる電圧降下の影響が少ない部位の穿孔状態を示す。図6(a)−2は、副走査方向解像度設定キー10で400dpiを設定した際の穿孔状態であって、サーマルヘッド30内のR12等の抵抗分で生じる電圧降下の影響が多い部位の穿孔状態を示す。図6(b)−1は、副走査方向解像度設定キー10で600dpiを設定した際の穿孔状態であって、サーマルヘッド30内のR12等の抵抗分で生じる電圧降下の影響が少ない部位の穿孔状態を示す。図6(b)−2は、副走査方向解像度設定キー10で600dpiを設定した際の穿孔状態であって、サーマルヘッド30内のR12等の抵抗分で生じる電圧降下の影響が多い部位の穿孔状態を示す。
当然、副走査方向解像度設定キー10で設定した副走査方向解像度が高い程、感熱性孔版マスタ61の穿孔が小さくなり、上述したサーマルヘッド30内のR12等の抵抗分で生じる電圧降下の影響は、最悪で穿孔不良になる可能性もある。そういった場合には、無論印刷画像の濃度低下(濃度ムラの発生)、印刷画像品質等の劣悪化が考えられる。また、上述した近年の感熱性孔版マスタとしては高画質化が図られており、濃度ムラ等の発生が顕著に発生してしまう。
【0058】
本実施例では、図6(a)−2のように穿孔が小さくなる状態を極力図6(a)−1の穿孔状態に近づけることが可能であり、特に図6(b)−2の穿孔が小さくなる状態(最悪時には穿孔不良の発生)を極力図6(b)−1の穿孔状態に近づけることが可能となり、近年の高画質化を図っている感熱性孔版マスタにおいても、穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、尚且つサーマルヘッド30内の部位による穿孔状態の差異も低減でき、設定した副走査方向解像度に対応して最適な穿孔状態が得られる感熱孔版印刷装置を提供することが可能となる。
【0059】
図7は本実施例と同様な感熱孔版印刷装置において、サーマルヘッドに具備されている発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗をそれぞれ2000Ω/□、2500Ω/□、3000Ω/□、3500Ω/□としたものについて印刷画像の濃度ムラを確認した結果を示す。ここに、これらの感熱孔版印刷装置の実施条件は、
A3―400dpi(発熱抵抗体総数:4608dots)
発熱抵抗体2分割駆動(同時駆動dot数:2304dots)
ライン周期:2.0ms/ライン
サーマルヘッド投入電力:0,079W/dot
副走査方向解像度:600dpi
この測定結果から、発熱抵抗体のシート抵抗が3000Ω/□より小さければ、印刷画像の濃度ムラが見受けられて印刷画像品質が低下してしまい、発熱抵抗体のシート抵抗が3000Ω/□以上であれば、印刷画像の濃度ムラが無いか若干見受けられて良好な印刷画像が得られることが分かる。
【0060】
図8は本発明の他の実施例の電装系を示す。この実施例は、上記実施例とは以下の点が異なる。
本実施例は、サーマルヘッド30の温度を検出するヘッド温度検出手段としてのサーミスタ35と、印刷ドラム101の内部もしくは近傍に設置されていてインキ溜り107のインキの温度を検出するインキ温度検出手段としてのサーミスタ42を有する。マイクロコンピュータ20は、サーミスタ35、42の出力信号に基づいて、サーマルヘッド駆動回路27への指令信号により、電源26からサーマルヘッド駆動回路27を介してサーマルヘッド30の個々の発熱部に供給する穿孔用エネルギーとしてサーミスタ35で検出されたサーマルヘッド30の温度及びサーミスタ42で検出されたインキ温度に応じた最適な所定のエネルギーに調整する。従って、マイクロコンピュータ20は、サーマルヘッド30の発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、サーミスタ35で検出されたサーマルヘッド30の温度及びサーミスタ42で検出されたインキ温度に応じて最適な所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段の機能を有する。
【0061】
サーマルヘッド駆動回路27は、復号化回路25から出力されるイメージデータ信号や、マイクロコンピュータ20から出力される通電パルス幅及びライン周期設定の指令及びデータ信号を受けてサーマルヘッド駆動信号をサーマルヘッド30へ出力する駆動回路から主に構成される。サーマルヘッド駆動回路27は、復号化回路25からのイメージデータに基づいて、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2の同時に駆動される発熱抵抗体数(印字度合としての駆動分割内の印字率)を製版前に計数(検出)する印字率検出手段を有し、電源26からサーマルヘッド駆動回路27を介してサーマルヘッド30の個々の発熱部に供給する穿孔用エネルギーを、上記印字率検出手段で検出された印字率に応じて最適な所定のエネルギーに調整する。従って、サーマルヘッド駆動回路27は、電源26からサーマルヘッド駆動回路27を介してサーマルヘッド30の個々の発熱部に供給する穿孔用エネルギーを、上記印字率検出手段で検出された印字率に応じて最適な所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段の機能を有する。
【0062】
なお、マスタ搬送手段は、上記実施例のように、プラテンローラ92をマスタ送りモータ40で駆動する方式に限らず、例えば図2に示すような駆動方式であっても良い。図2に示す製版部は、図1の製版部に対して、マスタ搬送手段としてのマスタ搬送ローラ対91a,91bをプラテンローラ92の下流側に配設したこと、ステッピングモータから成る、駆動手段としてのマスタ送りモータ91Aを、図示しないタイミングベルトを介してマスタ搬送ローラ対91a,91bの駆動ローラ91aに連結したこと、及びプラテンローラ92に図示しないタイミングベルトを介して連結されたマスタ送りモータ40を削除して、プラテンローラ92を従動回転するようにしたことのみ相違する。図2の駆動方式によれば、マスタ送りモータ91Aの回転駆動によりマスタ搬送ローラ対91a,91bが感熱性孔版マスタ61を搬送・移動し、プラテンローラ92は感熱性孔版マスタ61を押圧しつつ従動回転される。
【0063】
上記実施例によれば、主走査方向に配列された多数の発熱部を具備するサーマルヘッド30に対して、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版マスタ61をプラテンローラ30で押圧した状態で、前記主走査方向と直交する副走査方向にマスタ搬送手段としてのプラテンローラ92、ローラ対93a,93bまたは91a,91bにより感熱性孔版マスタ61を移動させながら、画像信号に応じて前記発熱部を発熱させて前記熱可塑性樹脂フィルムを位置選択的に溶融穿孔して前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成し、該感熱性孔版マスタ61を印刷ドラム101の外周面に巻装し、前記印刷ドラム101の内周側からインキを供給して前記穿孔パターンを介して滲み出たインキにより印刷用紙上に前記画像信号に応じたインキ画像を形成する感熱孔版印刷装置において、前記感熱性孔版マスタ61を所定の送りピッチで移動するように前記マスタ搬送手段を駆動する駆動手段としてのマスタ送りモータ40または91Aと、前記副走査方向の解像度を設定する副走査方向解像度設定手段としての副走査方向解像度設定キー10と、前記副走査方向解像度設定手段10からの信号に基づき、設定された副走査方向の解像度に対応して前記送りピッチを変えるように前記駆動手段40または91Aを制御する駆動制御手段としてのマイクロコンピュータ20と、前記副走査方向解像度設定手段10からの信号に応じて、前記サーマルヘッド30の前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを所定のエネルギーに調整する穿孔エネルギー調整手段としてのマイクロコンピュータ20とを有し、前記サーマルヘッド30に具備されている前記発熱部の発熱抵抗体2のシート抵抗を3000Ω/□以上としたので、サーマルヘッド内部にあるリード電極等の抵抗分で生じる電圧降下によるサーマルヘッド内部の部位差で生じる穿孔状態の差異を低減することができ、近年の高画質化に対応した感熱性孔版マスタに対しても、穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立し、尚且つ上述した穿孔状態の差異即ち印刷画像品質低下も低減でき、設定した副走査方向解像度に対応して最適な穿孔状態即ち最適な印刷画像品質が得られる感熱孔版印刷装置を提供することが可能となるという効果が得られる。
【0064】
上記実施例によれば、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2へ印加される単位面積当りの印加電力密度が0.05mW/μm2以上であるので、サーマルヘッドに具備されている発熱部の発熱抵抗体へ印加される単位面積当りの印加電力密度が高くても、上記効果が得られる。
【0065】
上記実施例によれば、サーマルヘッド30を駆動する場合の分割数をNとした時、このNがN≦4であるので、サーマルヘッド制御方法の簡素化、サーマルヘッドへの信号系ハーネス低減等のためにサーマルヘッドを分割駆動するときの分割を細分化しない場合においても、上記効果が得られる。
【0066】
上記実施例によれば、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体面積比率が
発熱抵抗体面積[μm2]÷主走査方向解像度ピッチ[μm]×副走査方向解像度設定手段10による副走査方向最高解像度ピッチ[μm]≦1
を満足しているので、近年の高画質化に対応した感熱性孔版マスタに対しても、感熱性孔版マスタの穿孔が主走査方向及び副走査方向に繋がることなく独立させることの確実性を増すことができる感熱孔版印刷装置を提供することができる。
【0067】
上記他の実施例によれば、サーマルヘッド30の温度を検出するヘッド温度検出手段としてのサーミスタ35と、サーマルヘッド30の発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、サーミスタ35で検出されたサーマルヘッド30の温度に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段としてのマイクロコンピュータ20とを有するので、如何なるサーマルヘッド温度に対しても上記効果が得られることの確実性を増すことができる感熱孔版印刷装置を提供することができる。
【0068】
上記他の実施例によれば、サーマルヘッド30の温度を検出するヘッド温度検出手段としてのサーミスタ35と、インキの温度を検出するインキ温度検出手段としてのサーミスタ42と、サーマルヘッド30の発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、サーミスタ35、42により検出されたインキ温度及びサーマルヘッド30の温度に応じて、最適なエネルギーに調整するエネルギー調整手段としてのマイクロコンピュータ20とを有するので、如何なるインキ温度に対しても上記効果を得ることができる。
【0069】
上記他の実施例によれば、サーマルヘッド30に具備されている発熱部の発熱抵抗体2が同時に通電される発熱抵抗体数を検出する印字率検出手段と、サーマルヘッド30の発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記印字率検出手段で検出された印字率に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段としてのマイクロコンピュータ20とを有するので、如何なる原稿画像、如何なる入力画像に対しても上記効果が得られることの確実性を増すことができる。
【0070】
上記実施例によれば、サーマルヘッド30の印字周期が2.5ms/ライン以下であるので、更なる製版時間の短縮化によって高速製版が可能となる。
【0071】
上記実施例によれば、感熱性孔版マスタ61が、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂層を有するので、更なる印刷画像の高画質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】同実施例の製版部を示す正面図である。
【図3】同実施例のサーマルヘッドの概略的等価回路を示す回路図である。
【図4】同実施例及びファクシミリの各サーマルヘッドの電力密度例を示す図である。
【図5】同実施例の電装系を示すブロック図である。
【図6】感熱孔版印刷装置の感熱性孔版マスタ穿孔状態例を示す図である。
【図7】サーマルヘッドに具備されている発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗をそれぞれ2000Ω/□、2500Ω/□、3000Ω/□、3500Ω/□とした感熱孔版印刷装置について印刷画像の濃度ムラを測定した結果を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例の電装系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1 サーマルヘッド発熱用駆動電源
2、21・・・2i、2i+1、2i+2・・・2n 発熱抵抗体
31・・・3i、3i+1、3i+2・・・3n スイッチ
10 副走査方向解像度設定キー
20 マイクロコンピュータ
25 復号化回路
26 電源
27 サーマルヘッド駆動回路
30 サーマルヘッド
35、42 サーミスタ
40 マスタ送りモータ
41 マスタ送りモータ駆動回路
61 感熱性孔版マスタ
83A 原稿搬送ローラ用モータ
83B 原稿搬送ローラ用モータ駆動回路
R11、R14 ハーネスの抵抗分
R12 サーマルヘッド内部の配線抵抗分
R13 ドライバICの抵抗分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に配列された多数の発熱部を具備するサーマルヘッドに対して、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版マスタをプラテンローラで押圧した状態で、前記主走査方向と直交する副走査方向にマスタ搬送手段により前記感熱性孔版マスタを移動させながら、画像信号に応じて前記発熱部を発熱させて前記熱可塑性樹脂フィルムを位置選択的に溶融穿孔して前記画像信号に応じた穿孔パターンを形成し、該感熱性孔版マスタを印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラムの内周側からインキを供給して前記穿孔パターンを介して滲み出たインキにより印刷用紙上に前記画像信号に応じたインキ画像を形成する感熱孔版印刷装置において、
前記感熱性孔版マスタを所定の送りピッチで移動するように前記マスタ搬送手段を駆動する駆動手段と、
前記副走査方向の解像度を設定する副走査方向解像度設定手段と、
前記副走査方向解像度設定手段からの信号に基づき、設定された副走査方向の解像度に対応して前記送りピッチを変えるように前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記副走査方向解像度設定手段からの信号に応じて、前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを所定のエネルギーに調整する穿孔エネルギー調整手段とを有し、
前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体のシート抵抗を3000Ω/□以上としたことを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体へ印加される単位面積当りの印加電力密度が0.05mW/μm2以上であることを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドを駆動する場合の分割数をNとした時、このNがN≦4であることを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体面積比率が
前記発熱抵抗体面積[μm2]÷主走査方向解像度ピッチ[μm]×前記副走査方向解像度設定手段による副走査方向最高解像度ピッチ[μm]≦1
を満足していることを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、
前記サーマルヘッドの温度を検出するヘッド温度検出手段と、
前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記ヘッド温度検出手段で検出された前記サーマルヘッドの温度に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有することを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の感熱孔版印刷装置において、
インキの温度を検出するインキ温度検出手段と、
前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記インキ温度検出手段により検出されたインキ温度及び前記ヘッド温度検出手段により検出された前記サーマルヘッドの温度に応じて、最適なエネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有することを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、
前記サーマルヘッドに具備されている前記発熱部の発熱抵抗体が同時に通電される発熱抵抗体数を検出する印字率検出手段と、
前記サーマルヘッドの前記発熱部に個々に供給する穿孔用エネルギーを、前記印字率検出手段で検出された印字率に応じた所定の穿孔用エネルギーに調整するエネルギー調整手段とを有することを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、
前記サーマルヘッドの印字周期が2.5ms/ライン以下であることを特徴とする感熱孔版印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の感熱孔版印刷装置において、
前記感熱性孔版マスタが、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂層を有することを特徴とする感熱孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−320073(P2007−320073A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150079(P2006−150079)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】