説明

感熱孔版用ポリプロピレンフイルム及びこれからなる感熱孔版原紙

【課題】 感熱孔版用として優れた穿孔性を有するポリプロピレンフイルム及びこれを用いた感熱孔版原紙を提供すること。
【解決手段】融点が156℃以上のポリプロピレン樹脂(A)とガラス転移温度が50〜120℃である石油樹脂(B)とを含むポリプロピレン系樹脂(C)を含む感熱孔版用ポリプロピレンフイルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーで樹脂薄膜の一部を溶融・穿孔して、孔版印刷を可能とする感熱孔版原紙に用いる熱可塑性樹脂基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷は基材シートに形成した孔を通じてインク等を印刷紙等に転写せしめる技術であるが、感熱孔版印刷では、天然セルロース繊維及び/または合成樹脂繊維からなる多孔性支持層と熱可塑性樹脂基材とを接合した積層体を印刷用基材とし、該熱可塑性樹脂基材の特定部位を、適宜選択された熱源を用いて穿孔し、印刷パターンを形成するものである。
【0003】
ここで熱源としては、可視光〜赤外線のパルス放射、熱ヘッド、レーザー光等のビーム状光線の照射等が提案されている。精緻な画像・文字等を印刷するためには、熱源の形状・サイズを小さくしていくことが求められるが、発生する熱量も小さくなるために、確実に穿孔するためには該熱可塑性樹脂基材が流動を開始するためのエネルギーが小さいことが重要と考えられる。このため、従来から、該材料の改善検討が鋭意行われており、延伸された熱可塑性樹脂フイルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フイルムを延伸した熱可塑性樹脂フイルムで厚みが10μm以下のフイルムが好ましく用いられるとの提案がなされており(特許文献1)、この内、ポリプロピレンフイルムについては、穿孔性を向上するために、ポリプロピレン系共重合体フイルムが感熱孔版用フイルムとして提案されている(特許文献2)。ポリプロピレン系については更に電子線を照射する技術も提案されている(特許文献3)が、非常に薄いフイルムでは電子線の照射効率に劣るため、実用化する上ではコスト面での制約があった。
【0004】
さらにまた、十分な穿孔性を得るために、ポリエステルフイルムを該感熱フイルムとして使用する改良技術の提案が多数(特許文献4〜8)なされ、現在は、広くポリエステルフイルムが感熱孔版原紙として用いられている。
【0005】
しかしながら、ポリエステル系共重合体の場合は腰があり薄膜化が可能である反面、シワが入りやすいという問題があった。
【特許文献1】特公昭54−33117号公報
【特許文献2】特公昭47−1184号公報
【特許文献3】特公平5−30637号公報
【特許文献4】特開昭60−48398号公報
【特許文献5】特開昭60−85996号公報
【特許文献6】特開昭62−149496号公報
【特許文献7】特開2002−127628号公報
【特許文献8】特開2006−249439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定のポリプロピレンフイルムを用いることで、感熱孔版用として優れた穿孔性を有するポリプロピレンフイルム及びこれからなる感熱孔版原紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は以下を特徴とする。
(1)ポリプロピレン樹脂(A)とガラス転移温度が50〜120℃である石油樹脂(B)とを含むポリプロピレン系樹脂(C)を含む感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(2)石油樹脂(B)のポリプロピレン系樹脂(C)中における含有量が1〜15質量%である、上記(1)に記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(3)ポリプロピレン樹脂(A)の融点が156℃以上である、上記(1)または(2)に記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(4)フイルム厚みが1.5〜3.5μmである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(5)縦方向加熱収縮率aと横方向加熱収縮率bとの比a/bが1.5〜3.0である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(6)少なくとも片面の表面光沢度が100〜140%である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
(7)多孔性支持体と上記(1)〜(6)のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルムとが接合されてなる感熱孔版原紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム及びこれからなる感熱孔版原紙はポリプロピレン樹脂に石油樹脂を含有せしめることで、
1.穿孔性に優れ、均一性の高い孔が形成されるため高精細の印刷が可能となる。
2.フイルム剛性が高く、感熱孔版原紙がシワになりにくく印刷がきれいに仕上がる、等の優れた特性・効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0010】
本発明の感熱孔版用ポリプロピレンフイルムは、ポリプロピレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含むポリプロピレン系樹脂(C)から構成される。
【0011】
まず、ポリプロピレン樹脂(A)はその融点は特に指定されるものではないが、フイルム厚みが薄い場合には、ハンドリング性の観点から、156℃以上であることが好ましく、更に好ましくは159℃以上であり、特に好ましくは、162℃以上である。上限値については現在のポリプロピレン樹脂の製造技術に依存しており、工業的に入手可能なポリプロピレンの融点の上限値は167℃前後である。
【0012】
ポリプロピレン樹脂(A)には、本発明の目的に反しない限り、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4メチルペンテン−1等のαオレフインが共重合されていてもよい。また、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリブテン1、ポリ4メチルペンテン1等のポリαオレフイン類が添加されていてもよい。
【0013】
このうち、ポリブテン−1はポリプロピレンと共晶を形成することがあり、少量であれば大きく結晶性を乱さずに相溶することが可能となり、感度をアップすることができる。ポリプロピレン樹脂(A)中の含有量としては、5質量%以下、好ましくは0.5〜3質量%であると剛性を大きく落とさず感度を向上することが可能となるので好ましい。
【0014】
石油樹脂(B)は、ガラス転移温度が50〜120℃であり、この範囲においてガラス転移温度の異なる樹脂を複数選択してもよい。ここで石油樹脂とは脂肪族系石油樹脂,脂環族系石油樹脂,芳香族系石油樹脂,ロジンエステル類,テルペン樹脂,テルペンフェノール樹脂などがあり、脂環族系には芳香族系を水添したものも含まれる。
【0015】
これらの中でも脂環族系石油樹脂、テルペン樹脂の群から選ばれた少なくとも一種であることがポリプロピレン樹脂との相溶性に優れているため好ましく、特にノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の5員環及び/又は6員環の構造を含有する樹脂がより好ましい。具体的には、マルカレッツM890A、M845A(丸善石油化学(株)製)、Oppera PR103J(エクソンモービル社製)が例示される。
【0016】
このような構造の樹脂は剛直な環状構造を有しながら、ポリプロピレンの非晶部との相溶性に優れることから、該剛直構造がポリプロピレンの非晶部の運動を拘束することで、フイルム剛性を高めることができ、特に薄膜フイルムにおいてはハンドリング性を向上することができる。このような石油樹脂(B)のポリプロピレン系樹脂(C)中における含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜12質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。石油樹脂(B)の含有量が1質量%を下回ると穿孔性に劣り、15質量%を超えると耐溶剤の悪化やブロッキングの問題を生じる恐れがある。
【0017】
また、本発明の目的に反しない範囲で、公知の熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤、有機及び/または無機の滑り剤、耐電防止剤等を含有していてもよい。このうち、無機の滑り剤については、異物欠点の原因異物を形成する恐れがあり、薄膜フイルムを製造する上では延伸工程でのフイルムの破断、穿孔工程でのエラーの原因となる可能性が高く、極力添加しないことが望ましい。また、塩素捕獲剤としては、ステアリン酸カルシウム等のいわゆる金属石鹸類と無機系のハイドロタルサイト類が例示されるが、金属石鹸類は熱安定性がそれほど良くないために溶融工程で異物を形成する恐れがある。一方、無機系のものはもともと粒子であるために、上述の通り製膜工程の安定性や穿孔性を阻害する恐れがある。このように一長一短があるため、ポリプロピレン樹脂中の金属石鹸の含有量としては200ppm(質量基準)以下、特に好ましくは100ppm(質量基準)以下としておくことが好ましく、ハイドロタルサイト類としては、100ppm(質量基準)以下、より好ましくは50ppm(質量基準)以下としておくことが好ましい。これら塩素捕獲剤の含有量をできる限り少なくするため、ポリプロピレン樹脂中の残留塩素量を極力低減することが望ましく、15ppm(質量基準)以下、特に好ましくは10ppm(質量基準)以下としておくことが好ましい。
【0018】
また、本発明フィルムに用いられる帯電防止剤等としては、多価アルコール脂肪酸部分エステル、アルキルジアルカノールアミン化合物、アルキルジアルキルベタイン型両性界面活性剤類、等が例示され、ポリプロピレン樹脂中の含有量としては0.01〜1質量%である。
【0019】
本発明フイルムは以上の特性を有するポリプロピレン樹脂を2軸延伸して得られるが、好ましいフイルム厚みは1.5〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜3μmである。
【0020】
フイルム厚みが1.5μm未満の場合は安定して製膜することが困難であり、得られたとしても剛性に劣りハンドリングが困難である。一方、3.5μmを超えた場合は感度特性を損なう可能性がある。
【0021】
本発明フイルムは孔の真円度の観点から縦方向と横方向の加熱収縮率がバランスしていることが望ましく、具体的には縦方向加熱収縮率aと横方向加熱収縮率bとの比a/bが1.5〜3.0であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜2.0である。1.5未満にすることは製膜上困難であり、3.0を超えた場合には孔の扁平率が大きくなることで、インクの透過量が一定しない傾向がある。
【0022】
また、本発明フイルムの少なくとも片面の光沢度は100〜140%であることが好ましく、更に好ましくは、110〜130%である。ここで光沢度は表面粗さを反映する指標であり、表面が粗面化されているほど光沢度は低下する。一方、表面が平滑な程、光沢度は上昇する。従って、光沢度が低く、表面が荒れている場合はフイルムが滑りやすくなり、整った巻き姿のフイルムロールが得難く加工適正が悪化することがある。一方、光沢度が高く、表面が平滑な場合は、滑りが悪くシワが入る等の問題により歩留まりが低下する場合がある。
【0023】
このような光沢度を得るためには、ポリプロピレンに非相溶なポリマー系の添加剤を少量含ませておくことが好ましく、具体的には高密度ポリエチレン、ポリ4メチルペンテン1、ポリスチレン、エチレンプロピレンラバー等が例示される。具体的には溶融押出シート化工程において冷却温度を80〜120℃の範囲とすることが好ましい。この結果、冷却シート中にα型の球晶と共にβ型の球晶が形成され、延伸工程において該β型球晶がα型に転移する際に表面の凹凸を形成するため、目的の光沢度を得ることができる。尚、更に光沢度を制御する方法としては、β型結晶を選択的に形成する核剤を樹脂に添加しておく方法が例示される。
【0024】
また、本発明フイルムの少なくとも片面には後述する多孔性支持体(多孔質基材)との接合性、特に接着性を良好とするため表面濡れ張力を上げておくことが好ましい。表面濡れ張力としては、35〜52mN/mであることが好ましく、更に好ましくは38〜50mN/mである。濡れ張力が35mN/mを下回ると接着性が低くなる恐れがあり、一方、52mN/mを超えるとフイルムをロール状に巻いた際にブロッキングが発生する恐れがある。このような表面濡れ張力を得るためには、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等を用いることで、表面に極性基を導入する方法が好ましい。特にコロナ放電処理はコスト面で有利であり、好ましく用いられる。
【0025】
本発明フイルムは以上の特性を有するものであるが、感熱孔版原紙として使用するためには少なくとも片面が多孔性支持体と接合されてなることが必要である。
【0026】
多孔性支持体は、感熱孔版原紙としての膜強度を保持すると同時にインクの含浸並びに移動が容易であることが求められ、天然セルロース繊維及び/または合成樹脂繊維からなる多孔体であることが好ましい。また、該多孔質支持体と本発明フイルムとの接合においては、一般的にはポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系接着剤が適宜使用されるが、熱圧着、押出ラミネートなど他の方法を用いてもよい。
【0027】
次いで、本発明フイルムの製造方法について説明する。
【0028】
本発明フイルムは、2軸延伸法によって製造されるが、テンター法、チューブラー(バブル)法、何れの方法によってもよい。この中でもテンター法は厚み斑・平面性が良好となるので好ましい。テンター法でも更に同時2軸延伸法と逐次2軸延伸法とがあるが、何れの方法によってもよい。以下逐次2軸延伸法により本発明フイルムを得る方法を説明するが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0029】
ポリプロプレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを押出機を用いて220〜270℃で溶融混練し、フィルターにより樹脂中の異物を除去したT型スリットダイに導いてシート状に溶融押出する。もちろん、ペレットブレンドに拠らず、事前に溶融ブレンドしておいてもよい。
【0030】
次いで溶融押出したシートを80〜120℃にコントロールした冷却ドラム上にエアー圧で密着させながら冷却固化する。ここで、冷却ドラムの温度が80℃を下回ると2軸延伸後のフイルムの表面が平滑過ぎて巻き取りが難しくなる可能性がある。一方、該温度が120℃を超えると結晶化が遅くなり、ライン速度を落とさざるを得ず、経済性が悪化する恐れがある。
【0031】
次いで冷却固化したシートを複数の加熱金属ロールにより予熱し、135〜155℃、好ましくは140〜150℃に該シート温度を上昇せしめ、周速差を設けた1対または複数のロール間で5〜8倍、好ましくは6〜8倍に長手方向に延伸し一軸延伸フイルムとする。次いで該一軸延伸フイルムの幅方向の両端をクリップで把持して加熱オーブンに導いて150〜170℃に予熱した後に幅方向に7〜12倍、好ましくは8〜10倍に延伸し2軸延伸フイルムとし、幅方向に0〜20%のリラックスを許しながら140〜160℃でアニールする。このようにして得られた2軸延伸フイルムの両エッジ部をトリミングした後に必要に応じて、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理等の表面処理を施した後にロール状に巻き取る。巻き取られたフイルムは、20〜40℃の雰囲気中でエージング処理を施された後に多孔性支持体との貼り合わせに適当な製品幅に裁断する。
【0032】
感熱孔版原紙については、上述のようにして得られたフイルムと多孔性支持体とを接合せしめることで得られる。接合方法としては、熱圧着や押出ラミネート、接着などが好適に用いられる。接着により接合する場合、接着剤は本発明フイルム、多孔性支持体いずれに塗布しても構わないが、通常フイルムが薄く剛性にも劣るために、均一に塗布することは技術的な難易度が高いことから、多孔性支持体に塗布してフイルムに貼り合わせることが好ましい。ポリプロプレンフイルムと多孔性支持体とを貼り合わせた後に熱風オーブン中で溶媒等を除去し、接着剤を乾燥固化した後に巻き取る。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例に用いる測定法及び評価法について説明する。
【0034】
(1)融点(Tm)(℃)
セイコー社製RDC220示差走査熱量計を用いて、以下の条件で5回の測定を行い、その内の最大値と最小値の2点を除いた残り3点の平均値をTmとした。
【0035】
<試料の調製:>
検体として4±1mgを測定用のアルミパンに封入する。
【0036】
<測定>
以下の(a)→(b)→(c)のステップでフイルムを溶融・再結晶・再溶融させる。
【0037】
(a)溶融(1st Run):30℃→280℃(昇温速度20℃/分)
(b)再結晶化 :280℃で5分保持後に20℃/分で 30℃まで冷却
(c)再溶融(2nd Run):30℃→280℃(昇温速度20℃/分)
この際に、2nd Runで観測される融解に伴う吸熱ピーク温度をTmとし、該ピーク値が複数ある場合は最もピーク面積が大きいピークをTmとして採用する。
【0038】
(2)ガラス転移点温度(℃)
セイコー社製RDC220示差走査熱量計を用いて、JIS K−7122(1987)に準拠して窒素雰囲気下で5mgの試料を20℃/分の速度で昇温させていった際に、二次転移に伴う比熱の変化をガラス転移点温度(Tg)として求めた。
【0039】
(3)濡れ張力
ホルムアミドとエチレングリコールモノエーテルとの混合液を用いて、JIS C−2330(2001)の7.4.13により測定した(単位:mN/m)。
【0040】
(4)光沢度(%)
JIS K−7105(1981)に準じ、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いて入射角60°受光角60°の条件で測定した5点のデータの平均値を光沢度とした。
【0041】
(5)フイルム厚み(μm)
JIS C−2330(2001)の7.4.1.1によりマイクロメータ法厚さを測定した。
【0042】
(6)加熱収縮率(%)
JIS Z−1712(1997)の7.3に準じて測定した。
【0043】
(7)穿孔感度
感熱印刷原紙としての印刷特性評価として穿孔感度を評価した。ポリプロピレンフイルムを多孔性支持体(和紙)に貼り合わせて原紙を作製し、サーマルヘッドにより印加エネルギー0.09mJおよび0.12mJにて文字画像を製版した。製版された原紙のポリプロピレンフイルム側から顕微鏡で画像部の穿孔状態を観察し、穿孔感度を下記の項目で評価した。
【0044】
◎:所定の穿孔が確実に行われ良好であった。
【0045】
○:ごく一部に所定の穿孔が得られない部分があった。
【0046】
△:所々に所定の穿孔が得られない部分があった。
【0047】
×:所定の穿孔が全く得られない。
【0048】
(8)扁平率
上記(7)と同様に穿孔状態を観察し、孔の長径c及び短径dを測定し、(c−d)/cを扁平率とした。
【0049】
(9)コロナ処理強度
被処理フイルムの単位面積あたりに供給される電力のことであり、以下の式で表される。
【0050】
ここでフイルムの面積とは1分間当たりに処理が施されるフイルム部位の面積を表す。
【0051】
コロナ処理強度(W・min/m2)=供給電力(W)/被処理フイルムの面積(m2/min)
(10)製膜方法
以下の製膜方法により2軸延伸を行いフイルムサンプルを得た。
【0052】
準備されたポリプロピレンペレットをスクリュー径90mmφ/90mmφのタンデム押出機より245℃で溶融押出し、95℃に設定された冷却ドラム上で冷却固化し未延伸シートを得た。次いで該未延伸シートを4本の金属ロールで順次昇温し、所定の温度までフイルム温度を昇温した後に、1対の延伸ロール間で長手方向に所定の倍率に延伸した後に、クリップで該1軸延伸フイルムの両端を把持して、熱風オーブンに導いた。該1軸延伸フイルムは熱風オーブン中で所定の温度に予熱された後に幅方向に9倍延伸し、次いで150℃で幅方向に5%のリラックスを許しながら熱固定した。
【0053】
このようにして得られた2軸延伸フイルムは熱風オーブンを出た後に、ドラム面と反対側をコロナ放電処理を施し、クリップにより把持されていた製膜エッジを除去してロール状に巻き取った。該ロールは1日間、常温で放置した後にスリットして、製品ロールとして巻き取った。
【0054】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(A)としてBorealis製HB300BF(融点163℃)93質量%と、石油樹脂(B)としてOppera PR103J(ガラス転移温度70℃)7質量%とをチップブレンドして、上記(10)項記載の製膜方法に従って、押出機に導き、95℃の冷却ドラム上でシート化した。次いで長手方向に140℃で7倍に延伸し、幅方向に158℃で9倍に延伸した。2軸延伸後コロナ処理強度8W・min/mでコロナ放電処理を施し、41mN/mの濡れ張力とした。得られたフイルムの厚みは1.7μmであった。
【0055】
こうして得られた2軸延伸ポリプロピレンフイルムを和紙と貼り合わせて、印刷特性を評価した結果、穿孔感度が良好で、孔の扁平率も0.20と低めだった。
【0056】
(実施例2)
ポリプロピレン樹脂(A)としてBorealis社製HB300BF 90質量%と、石油樹脂(B)としてOppera PR103J 10質量%とを押出機に導いた。延伸条件としては長手方向に145℃で8倍、幅方向に156℃で9倍とした。2軸延伸後コロナ処理強度15W・min/mでコロナ放電処理を施し、48mN/mの濡れ張力とした。上記以外は実施例1と同様とした。得られたフイルム厚みは3.2μmであった。
【0057】
印刷特性評価の結果は、実施例1にやや劣るものの優れていた。また、扁平率が0.10と低かった。
【0058】
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂(A)としてBorealis製HB300BF 97質量%と、石油樹脂(B)としてOppera PR103J 3質量%とをチップブレンドして用いた。延伸条件としては、長手方向に145℃で7.5倍に延伸し、幅方向に156℃で9倍に延伸した。2軸延伸後コロナ処理強度9W・min/mでコロナ放電処理を施し、43mN/mの濡れ張力とした。上記以外は実施例1と同様とした。得られたフイルムの厚みは2.2μmであった。
【0059】
印刷特性を評価した結果、実施例1にやや劣るものの優れていた。また、扁平率が0.15と低めだった。
【0060】
(実施例4)
ポリプロピレン樹脂(A)としてBorealis製HB300BF 84質量%と、石油樹脂(B)としてOppera PR103J 16質量%とをチップブレンドして用いた。延伸条件としては、長手方向に142℃で6.5倍に延伸し、幅方向に156℃で9倍に延伸した。2軸延伸後コロナ処理強度12W・min/mでコロナ放電処理を施し、46mN/mの濡れ張力とした。上記以外は実施例1と同様とした。得られたフイルムの厚みは2.0μmであった。
【0061】
印刷特性を評価した結果、穿孔感度が優れていた。また、扁平率は0.23とやや高めであったが、ロール状に巻き上げた製品はフイルム層間がブロッキング傾向になった。
【0062】
(実施例5)
ポリプロピレン樹脂(A)としてBorealis製HB300BF 91質量%と、石油樹脂(B)としてOppera PR103J 9質量%とをチップブレンドして用いた。延伸条件としては、長手方向に144℃で6.0倍に延伸し、幅方向に156℃で9倍に延伸した。2軸延伸後コロナ処理強度15W・min/mでコロナ放電処理を施し、48mN/mの濡れ張力とした。上記以外は実施例1と同様とした。得られたフイルムの厚みは4.0μmであった。
【0063】
印刷特性を評価した結果、穿孔感度がやや低かった。また、扁平率も0.25と高めであった。
【0064】
(比較例1)
石油樹脂を添加せずにHB300BFを100質量%で製膜した。延伸条件としては、長手方向に145℃で5.5倍に延伸し、幅方向に156℃で9倍に延伸した。2軸延伸後コロナ処理強度8W・min/mでコロナ放電処理を施し、41N/mの濡れ張力とした。上記以外は実施例1と同様とした。得られたフイルムの厚みは2.5μmであった。
【0065】
印刷特性を評価した結果、穿孔感度が悪かった。また、扁平率も0.30と高めだった。
【0066】
【表1】

【0067】
Tm:融点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)とガラス転移温度が50〜120℃である石油樹脂(B)とを含むポリプロピレン系樹脂(C)を含む感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項2】
石油樹脂(B)のポリプロピレン系樹脂(C)中における含有量が1〜15質量%である、請求項1に記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂(A)の融点が156℃以上である、請求項1または2に記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項4】
厚みが1.5〜3.5μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項5】
縦方向加熱収縮率aと横方向加熱収縮率bとの比a/bが1.5〜3.0である、請求項1〜4のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項6】
少なくとも片面の表面光沢度が100〜140%である、請求項1〜5のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルム。
【請求項7】
多孔性支持体と請求項1〜6のいずれかに記載の感熱孔版用ポリプロピレンフイルムとが接合されてなる感熱孔版原紙。

【公開番号】特開2009−214421(P2009−214421A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60610(P2008−60610)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】