説明

感熱記録体

【課題】細部に至るまで明瞭な画像を形成することができ、しかも同一印加エネルギーで形成された記録画像の濃度ムラを抑制できる医療画像診断用に適した感熱記録体を提供することにある。
【解決手段】支持体上に少なくとも、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を備えた感熱記録体において、感熱記録体を構成する層の少なくとも1つに、下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を含有せしめたことを特徴とする。
【化1】


一般式(1)
(式中、nは3〜50の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体は、比較的安価であり、記録機器がコンパクトで、且つその保守も容易であるため、ファクシミリ、ワードプロセッサー、各種計算機、ビデオプリンター等の出力媒体、POSラベル、乗車券及びその他の用途の記録媒体として、幅広い分野において使用されている。
【0003】
そして、その用途の拡大に伴って、合成紙を支持体とした感熱記録体やポリエステルフィルム等の透明な支持体を用いた感熱記録体が、医療診断機器の画像診断用記録媒体として使用されている。
【0004】
このうち、特に透明な支持体を用いた画像診断用記録媒体には、正確な診断ができるよう、細部に至るまで明瞭な画像が形成できること、同一印加エネルギーで形成された画像に濃度ムラがないこと等の特性が要求される。かかる特性を備えた感熱記録体を得るには、支持体上に形成される各層に厚薄がなく均一な塗工層が形成されていること、及び感熱記録層にハジキやピンホール等の塗工欠陥がないことが重要である。
【0005】
そこで、均一な感熱記録層を得るために、アンカーコート層にジアルキルスルホコハク酸塩を添加した感熱記録体(特許文献1参照)、塗布面状の均一性を得るために、分子中にスルホン酸塩を含むフッ素系化合物を感熱記録層に含有させた感熱記録材料(特許文献2参照)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルを保護層に含有させた感熱記録材料(特許文献3参照)等が提案されている。また、フッ素系界面活性剤組成物として、フィルム等のコーティング剤に使用する材料が提案されている(特許文献4)。しかしながら、必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−074701号公報
【特許文献2】特開2005−199561号公報
【特許文献3】特開2005−047251号公報
【特許文献4】特開2003−292989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、細部に至るまで明瞭な画像を形成することができ、しかも同一印加エネルギーで形成された記録画像の濃度ムラを抑制できる医療画像診断用に適した感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するため、感熱記録体を構成する各層中に配合する添加剤について鋭意検討した。その結果、特定のフッ素系化合物を、感熱記録体を構成する層の少なくとも1つに含有させると、上記課題が達成されることを見出した。即ち、本発明は下記の感熱記録体に係る。
【0009】
項1:支持体上に少なくとも、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を備えた感熱記録体において、感熱記録体を構成する層の少なくとも1つに、下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を含有せしめたことを特徴とする感熱記録体。
【0010】
【化1】

一般式(1)
(式中、nは3〜50の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0011】
項2:前記保護層に前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を、保護層の全固形量に対して0.1〜5.0質量%含有せしめた、項1に記載の感熱記録体。
【0012】
項3:前記感熱記録層と保護層の間に更に、水溶性接着剤と水分散性接着剤を含有する中間層を備えた、項1または2に記載の感熱記録体。
【0013】
項4:前記感熱記録層に更に、下記一般式(2)で表されるフッ素系化合物を含有せしめた、項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【0014】
【化2】

一般式(2)
(式中、mは2〜4の整数、nは1〜8の整数を表し、Mはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を表す。)
【0015】
項5:前記感熱記録体を構成する層の一部または全部が、前記一般式(1)を含有する塗液を用いて、スロットコーティングまたはスライドコーティングのビード塗布方式により遂次塗布または同時多層塗布、並びに乾燥して形成された、項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感熱記録体は、細部に至るまで明瞭な画像を形成することができ、同一印加エネルギーで形成された記録画像の濃度ムラを抑制できる優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、感熱記録体を構成する層の少なくとも1つに、前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物が含有されている。一般式(1)中、nは5〜20の整数が好ましく、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これにより、同一印加エネルギーで形成された記録画像の濃度ムラを抑制でき、且つ細部に至るまで明瞭な画像を形成することができる。
【0018】
前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物については、例えば、特開2006−342087号公報の実施例に記載されている方法で合成することができる。この方法によれば、下記の一般式(3)で表される含フッ素エーテル化合物及び下記の一般式(4)で表されるアルコールを、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤中において、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0019】
【化3】

一般式(3)
(式中、Rは、炭素原子数が1〜6、好ましくは1〜2のアルキル基を示す。)
【0020】
【化4】

一般式(4)
(式中、nは、1〜50、好ましくは8〜22の数を示す。)
【0021】
本発明において優れた効果が得られる理由は、明らかでないが、次のように推測される。感熱記録体を構成する各層のうち、少なくとも1層中に特定のフッ素系化合物を添加することで、フッ素系化合物が添加された層の表面張力が低下し、濡れ性が向上してハジキやピンホールといった塗工欠陥がなくなり、いわゆる“印画抜け(ドット抜け)”による細部画像の不鮮明さが抑制される。更に、特定のフッ素系化合物が塗工直後の塗工層表面近傍に多く存在し易いため、溶媒(水)の蒸発速度を制御する効果があり、その結果、乾燥後の塗工層表面が平滑になり、その上に形成される塗工層の膜厚も均一になり、記録画像の濃度ムラが抑制されると共に、細部に至るまで一層明瞭な画像が形成されると考えられる。また、保護層に添加した場合も、濡れ性が向上してハジキやピンホールといった塗工欠陥がなくなり、乾燥後の塗工層表面が平滑になることで記録画像の濃度ムラが抑制されると共に、細部に至るまで一層明瞭な画像が形成されると考えられる。
【0022】
本発明では、感熱記録層に更に、前記一般式(2)で表されるフッ素系化合物を含有させることが好ましい。一般式(2)中、mは2〜3の整数が好ましく、nは1または2の整数が好ましい。また、Mのアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、特にリチウム塩が好ましい。これにより、濃度ムラを抑制する効果を著しく向上できる。
【0023】
前記一般式(2)で表されるフッ素系化合物の使用割合は、濃度ムラを効果的に抑制する観点から感熱記録層の全固形量に対して0.01〜1.0質量%が好ましく、0.02〜0.8質量%が更に好ましく、0.05〜0.6質量%が特に好ましい。
【0024】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物の使用割合は、感熱記録層の全固形量に対して0.01〜2.0質量%の範囲が好ましく、0.02〜1.5質量%の範囲が更に好ましく、0.05〜1.0質量%の範囲が特に好ましい。これにより、ハジキやピンホールを効果的に減少して均一な塗工層を形成でき、加えてこの層の上に形成される層の膜厚も均一にできる。
【0025】
本発明において、一般式(1)及び一般式(2)で表される特定のフッ素系化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明の所望の効果を損なわない限りであれば、上記特定のフッ素系化合物以外の市販されているその他のフッ素系化合物や界面活性剤も含有することができる。
【0026】
本発明における感熱記録層は、発色成分として少なくともロイコ染料と呈色剤を含有するが、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0027】
感熱記録層に含有されるロイコ染料の具体例としては、例えば3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−トリルアミノ−7−メチルフルオラン、3−トリルアミノ−7−エチルフルオラン、2−(N−アセチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−ベンゾイルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−カルボブトキシアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン等の赤色発色性ロイコ染料;3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−ジフェニルアミノ−6−ジフェニルアミノフルオラン、3−(2−メチル−1−n−オクチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド等の青色発色性ロイコ染料;3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン等の緑色発色性ロイコ染料;3,6−ジメトキシフルオラン、1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレン、1,3,3−トリメチルインドリン−2,2′−スピロ−6′−ニトロ−8′−メトキシベンゾピラン等の黄色発色性ロイコ染料;3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2,4−ジメチル−6−(4−ジメチルアミノアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン等の黒色発色性ロイコ染料等が挙げられる。
【0028】
ロイコ染料の使用量としては特に限定されないが、感熱記録層の全固形量に対して5〜30質量%程度が好ましい。
【0029】
ロイコ染料は、微粒子化した固体粒子の形態で使用してもよいし、ロイコ染料と疎水性樹脂とを含む複合粒子の形態で使用してもよい。
【0030】
ロイコ染料と疎水性樹脂とを含む複合粒子を形成した形態としては、
(1)1種以上のロイコ染料を疎水性樹脂を壁膜としてマイクロカプセル化した形態、
(2)1種以上のロイコ染料を多価イソシアネート等の疎水性樹脂からなる母材中に含有せしめた形態、又は、
(3)1種以上のロイコ染料の微粒子表面に不飽和炭素結合を有する化合物を重合せしめた形態、
が挙げられる。(1)の形態の粒子の作製方法としては、特開昭60−244594号公報に記載された方法が挙げられる。(2)の形態の粒子の作製方法としては、特開平9−263057号公報に記載された方法が挙げられる。(3)の形態の粒子の作製方法としては、特開2000−158822号公報に記載された方法が挙げられる。
【0031】
なお、かかる複合粒子の体積平均粒子径としては、0.5〜3.0μm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5μm程度が望ましい。
【0032】
複合粒子中のロイコ染料は外部との隔離性が高く、熱や湿度による地肌カブリや発色画像の消色が少なく、更に(1)及び(2)の複合粒子はロイコ染料がイソシアネートや有機溶媒に溶解されているため、感熱記録層の透明度が、ロイコ染料を固体微粒子状態で使用する場合に比較して優れているため好ましい。
【0033】
複合粒子を形成する疎水性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ウレア系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア−ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。なかでも、ウレア系樹脂、ウレア−ウレタン系樹脂は耐熱地肌カブリ性に優れるため好ましい。
【0034】
ウレア系樹脂またはウレア−ウレタン系樹脂中にロイコ染料が分散された複合粒子を作製する場合は、例えば多価イソシアネート化合物とロイコ染料とを溶解した油性溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に体積平均粒子径が0.5〜3.0μm程度、より好ましくは0.5〜1.5μm程度となるように乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られる。
【0035】
多価イソシアネート化合物とは水と反応することによりポリウレア、またはポリウレア−ポリウレタンを形成する化合物であり、多価イソシアネート化合物単独であってもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは多価イソシアネート化合物とポリオールの付加物、或いは多価イソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体等の多量体であってもよい。これら多価イソシアネート化合物にロイコ染料を溶解し、この溶液を、ポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解含有している水性媒体中に乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加温することにより、高分子形成性原料を重合させることによって高分子化し、それによってロイコ染料と疎水性樹脂とを含む複合粒子を形成することができる。
【0036】
多価イソシアネート化合物の具体例としては、例えばp−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物等が挙げられる。
【0037】
また、ポリオール化合物の具体例としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、フェニルエチレングリコール、ペンタエリスリトール、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0038】
ポリアミン化合物の具体例としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0039】
これらの多価イソシアネート化合物、多価イソシアネートとポリオールの付加物、及びポリオール化合物等は、前記化合物に限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用してもよい。
更に、複合粒子中には記録感度を高めるため、後述するような増感剤や保存性改良剤等を含有させることもできる。
【0040】
更に、複合粒子中には記録感度を高めるための融点が40〜150℃程度の芳香族有機化合物(増感剤)、耐光性を高めるための2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤、及び記録部の保存性を高めるためのヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の保存性改良剤を含有させることもできる。
【0041】
感熱記録層中の複合粒子の含有比率としては、感熱記録層の全固形量に対して10〜60質量%程度、好ましくは15〜50質量%程度である。
【0042】
ロイコ染料と共に感熱記録層中に含有される呈色剤としては、例えば4,4′−イソプロピリデンジフェノール、4,4′−シクロヘキシリデンジフェノール、2−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−6−〔(2−ヒドロキシフェニル)メチル〕−4−(sec−ブチル)フェノール、2,6−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−4−(sec−ブチル)フェノール、2,2′−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4′−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン等のフェノール性化合物、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−フェニルウレア、4,4′−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4′−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−(p−トルエンスルホニル)−N′−p−ブトキシフェニルウレア等の分子内にスルホニル基とウレイド基を有する化合物、4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩化合物等が挙げられる。なお、呈色剤はロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部程度使用するのが好ましい。
【0043】
更に、感熱記録層は保存性改良剤を含有していてもよい。これにより、記録部の保存性を高めることができる。保存性改良剤の具体例としては、例えば4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,4−ジ(tert−ブチル)−3−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(5−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール類;4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4′−(2−メチル−2,3−グリシジルオキシ)ジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系エポキシ化合物類;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0044】
感熱記録層は増感剤を含有していてもよい。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、ステアリン酸メチレンビスアミド、ステアリン酸エチレンビスアミド、p−ベンジルビフェニル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1−(2−メチルフェノキシ)−2−(4−メトキシフェノキシ)エタン、ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、ベンジル−4−メチルチオフェニルエーテル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル、1−ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル、ベンジル−4−メチルチオフェニルエーテル等が挙げられる。
【0045】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料、呈色剤、例えば特定のフッ素系化合物及び接着剤、並びに必要により保存性改良剤、増感剤、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を支持体上に乾燥後の塗布量が3〜30g/m程度となるように塗布及び乾燥して形成される。
【0046】
接着剤としては、例えば酸化澱粉、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、部分鹸化または完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、及びカゼイン等の水溶性接着剤、並びに、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等の疎水性樹脂から得られるラテックス等の水分散性接着剤が挙げられる。
【0047】
接着剤の含有量は特に限定されないが、感熱記録層の全固形量に対して5〜50質量%程度が好ましい。
【0048】
助剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル−ナトリウム塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の顔料、その他消泡剤、蛍光増白染料、架橋剤等が挙げられる。
【0049】
本発明における支持体は、特に限定されず、紙、合成紙、透明な合成樹脂フィルム、白色顔料を含有する不透明な合成樹脂フィルム等を使用することができる。合成紙や透明な合成樹脂フィルム、特に透明な合成樹脂フィルムを用いた場合、本発明の効果を遺憾なく発揮することができるため、好ましい。なお、合成樹脂フィルムを用いる場合は、感熱記録層との密着性を高めるため、表面にアンカーコート層を設けたり、コロナ放電処理を施すこともできる。更に、導電剤による導電処理を施してもよいし、着色していてもよい。
【0050】
本発明における保護層は、感熱記録層上または必要により設けた中間層上に形成されており、従来から公知の感熱記録体に使用されている保護層を利用できる。
【0051】
本発明では、前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を保護層に含有させることが好ましい。これにより、ハジキやピンホールといった塗工欠陥を効果的に減少して均一な塗工層を形成できる。保護層に含有させる場合の使用割合は、保護層の全固形量に対して0.1〜5.0質量%が好ましく、0.2〜4.0質量%が更に好ましい。一般式(1)で表される特定のフッ素系化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明の所望の効果を損なわない限りであれば、上記特定のフッ素系化合物以外の市販されているその他のフッ素系化合物や界面活性剤も含有することができる。
【0052】
本発明における保護層は、一般に水を媒体とし、例えば特定のフッ素化合物、顔料、接着剤、各種助剤等を混合することにより調製された保護層用塗液を、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成することができる。保護層用塗液の塗布量は、乾燥後の塗布量で0.5〜10g/m程度、好ましくは2〜5g/m程度である。
【0053】
接着剤としては、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。接着剤の具体例としては、例えば、部分鹸化または完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン等の水溶性接着剤、並びに酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等の疎水性樹脂から得られる水分散性接着剤が挙げられる。
【0054】
接着剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは、保護層の全固形量に対して、30〜90質量%程度、特に40〜80質量%程度である。
【0055】
顔料としては、例えば、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の無機顔料、架橋ポリメチルメタクリレート等の有機顔料が挙げられる。粒子径としては、透明性を向上する観点から無機顔料の場合、体積平均粒子径が1μm以下のものが好ましく、有機顔料の場合、体積平均粒子が1〜2μmのものが好ましい。
【0056】
顔料の含有量は特に限定されないが、好ましくは、保護層の全固形量に対して10〜60質量%程度、更に好ましくは15〜50質量%程度である。
【0057】
助剤としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩等の界面活性剤;ポリエチレンワックス、カルナバロウ等のパラフィンワックス、ステアリルリン酸エステルカリウム塩等のエステルワックス等のワックス類;ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩等の滑剤類;グリオキザール、ホルマリン、グリシン、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、ジメチロール尿素、アルキルケテンダイマー、ジアルデヒド澱粉、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ケトン−アルデヒド樹脂、アジピン酸ジヒドラジド、硼砂、硼酸、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系化合物等の耐水化剤、その他の慣用されている消泡剤、蛍光染料、着色染料等が挙げられる。助剤の使用量は、広い範囲から適宜設定することができる。
【0058】
本発明では、感熱記録層と保護層の間に更に、水溶性接着剤と水分散性接着剤を含有する中間層を備えることが好ましい。中間層には前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を含有させることもできる。これにより、バリアー性を高めて感熱記録層と保護層の層間分離を向上すると共に、多層界面における塗液膜の安定性を向上し、厚薄の少ない均一な塗工層を形成して、濃度ムラを効果的に抑制することができる。中間層に前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を含有させる場合は、中間層の全固形量に対して0.05〜2.0質量%の範囲が好ましく、0.10〜1.5質量%の範囲が更に好ましく、0.1〜1.0質量%が特に好ましい。一般式(1)で表される特定のフッ素系化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明の所望の効果を損なわない限りであれば、上記特定のフッ素系化合物以外の市販されているその他のフッ素系化合物や界面活性剤も含有することができる。
【0059】
本発明における中間層は、一般に水を媒体とし、水溶性接着剤、水分散性接着剤、例えば特定のフッ素系化合物、顔料、各種助剤等を混合することにより調製された中間層用塗液を、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成することができる。中間層用塗液の塗布量は、乾燥後の塗布量で0.5〜10g/m程度である。
【0060】
水溶性接着剤としては、保護層に使用できるものの中から適宜選択することができる。また、水分散性接着剤の種類は、水不溶な疎水性樹脂が微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものであれば、特に限定するものではない。分散状態としては、樹脂が分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいは樹脂分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。具体的には、ラテックスの形態が好ましく、例えば、酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、異相粒子構造のポリマーラテックス等が挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組合せて使用することができる。これらの中でも、感熱記録層と保護層との密着性、並びに耐水性を向上する観点から異相粒子構造のポリマーラテックスが好ましい。
【0061】
異相粒子構造のポリマーラテックスは、特にその異相粒子構造は限定されない。異相粒子構造の構造例および調製法は「合成ラテックスの応用(杉村孝明・片岡靖男・鈴木聡一・笠原啓司編集(株)高分子刊行会発行(1993)」に記載されている。異相粒子構造の例としては、コア−シェル構造、複合構造、局在構造、だるま状構造、ラズベリー状構造、多粒子複合構造、みかずき状構造、IPN(相互貫入網目構造)等がある。本発明においてはコア−シェル構造、複合構造、ラズベリー状構造、多粒子複合構造のポリマーラテックスが好ましい。特に異相粒子構造のポリマーラテックスの中でも少なくとも一相にウレタン樹脂成分を含有する異相粒子構造のポリマーラテックスが好ましい。
【0062】
少なくとも一相にウレタン樹脂成分を含有する異相粒子構造のポリマーラテックスは、ウレタン樹脂以外の成分として、例えば天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン系重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル等を含むことができる。
【0063】
これらの中でも、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン系重合体を含むものが好ましい。特に、ポリウレタンアイオノマーを含有する水性媒体中で、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを重合して得られたラテックスがより好ましい。
【0064】
少なくとも一相にウレタン樹脂成分を含有する異相粒子構造のポリマーラテックス中のウレタン樹脂の含有割合は、3〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%である。
【0065】
少なくとも一相にウレタン樹脂成分を含有する異相粒子構造のポリマーラテックスは、例えばパテラコール(登録商標)H2090、H2020A等(DIC社製)として市販されており、容易に入手し利用することができる。
【0066】
顔料及び各種助剤も、保護層に使用できるものの中から適宜選択して使用することができる。なお、中間層における顔料の割合は、バリアー性を向上する観点から、中間層の全固形量に対して35質量%以下、好ましくは15質量%以下が好ましい。
【0067】
感熱記録層用塗液、中間層用塗液及び保護層用塗液の各塗液は、例えば、エアナイフコーティング、ロッドブレードコーティング、バーコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ショート−ドウェルコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スロットコーティング、スライドコーティング等の塗布方法により塗布することができる。
【0068】
本発明では、感熱記録体を構成する層の一部または全部を、前記一般式(1)を含有する塗液を用いて、スロットコーティングまたはスライドコーティングのビード塗布方式により遂次塗布または同時多層塗布、並びに乾燥して形成することが好ましい。これにより、塗布時に塗液が支持体側と接して液溜まりとなるビードの形成を安定させ、本発明の効果を遺憾なく発揮することができる。
【0069】
各塗液は、1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成する遂次塗布を行なってもよく、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。更に、同一の塗液を2層以上に分けて塗布してもよい。
【0070】
同時多層塗布する方法としては、スロットコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティングによる各種ビード塗布及びカーテン塗布を挙げることができる。これらの中でも、スロットコーティング、スライドコーティングによるビード塗布方式を用いた場合、ビードの形成やスライド液面が安定し、本発明の効果を遺憾なく発揮することができるため、好ましい。また、多層界面において発生する塗液の凝集を抑制して、発色成分の凝集物が斑点状に微小な黒ブツとなって記録面に現れる不具合を減少できる。ここで同時多層塗布とは、2層以上の層を塗布するに際し、上下層を同時に塗布する方法であり、下層を塗布した後に乾燥することなく上層を塗布する方法を含む。
【0071】
本発明では、各層を形成し終えた後、また、全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダーによる平滑化処理を施すこともできる。
【0072】
また、本発明の感熱記録体には、支持体の裏面(感熱記録層を設けた面の反対面)に接着剤と顔料を含有する裏面層を設ける等、感熱記録体の製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0073】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0074】
実施例及び比較例で使用した複合粒子及び保護層に配合する顔料の体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所社製)を用いて測定し、呈色剤の体積平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所社製)を用いて測定した。
【0075】
実施例1
・A液(複合粒子分散液)の調製
ロイコ染料として3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン5部、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン6部、及び3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド2部と、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン8部とを、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(商品名:デスモジュールW、住化バイエルウレタン社製)5部、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート〔商品名:TMXDI(登録商標)、日本サイテックインダストリーズ社製〕15部からなる混合溶媒に加熱溶解(150℃)し、この溶液をポリビニルアルコール〔商品名:ポバール(登録商標)PVA−217EE、クラレ社製〕8.5部と、界面活性剤としてアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物〔商品名:オルフィン(登録商標)E1010、日信化学社製〕0.5部を含む水溶液100部に徐々に添加し、ホモジナイザーを用い、回転数10000rpmの攪拌によって乳化分散した。この乳化分散液に、水30部、多価アミン化合物〔商品名:jERキュア(登録商標)T、ジャパンエポキシレジン社製〕3部を水22部に溶解した水溶液を加えて均一化した。この乳化分散液を75℃に昇温し、7時間の重合反応を行い、体積平均粒子径0.8μmのロイコ染料含有複合粒子分散液を調製し、固形分濃度が25%となるように水で希釈した。
【0076】
・B液(呈色剤混合分散液)の調製
4,4′−シクロヘキシリデンジフェノール23部、4,4′−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン14部、4−ヒドロキシ−4′−アリルオキシジフェニルスルホン5部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液60部、及び水18部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて体積平均粒子径が0.28μmとなるまで粉砕して呈色剤混合分散液を得た。
【0077】
・C液(呈色剤分散液)の調製
N−(p−トルエンスルホニル)−N′−フェニルウレア42部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液60部、及び水18部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて体積平均粒子径が0.30μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液を得た。
【0078】
・感熱記録層用塗液の調製
A液88部、B液100部、C液20部、ポリウレタンアイオノマーを含有する水性媒体中で、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーが重合された樹脂ラテックス〔商品名:パテラコール(登録商標)H2090、大日本インキ化学工業社製、固形分濃度41%〕120部、下記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部、及び水45部からなる組成物を混合して感熱記録層用塗液を得た。得られた感熱記録層用塗液を以下、D液ともいう。
【0079】
【化5】

式(5)
【0080】
・E液(カオリン分散液)の調製
カオリン〔商品名:UW−90(登録商標)、エンゲルハード社製〕80部、ポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(商品名:アロンT−50、東亞合成社製)1部、及び水53部を混合し、サンドミルを用いて体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕してカオリン分散液を得た。
【0081】
・F液(焼成カオリン分散液)の調製
焼成カオリン〔商品名:アンシレックス(登録商標)93、エンゲルハード社製〕100部、ポリ(アクリル酸−スチレン−マレイン酸)ナトリウムの40%水溶液(商品名:ポイズ520、花王社製)2.5部、及び水147.5部を強い撹拌により混合し、焼成カオリン分散液を得た。
【0082】
・保護層用塗液の調製
アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス〔商品名:ハイドラン(登録商標)AP−30F、大日本インキ化学工業社製、固形分濃度20%〕100部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール〔商品名:ゴーセファイマー(登録商標)Z−410、日本合成化学工業社製、重合度:約2300、鹸化度:約98モル%〕の8%水溶液650部、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリンの25%水溶液5部、E液28部、F液3.75部、ステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンL−271、中京油脂社製、固形分濃度25%)18部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩(商品名:ウーポール1800、松本油脂製薬社製、固形分濃度35%)3部、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物〔商品名:サーフロン(登録商標)S−145、セイミケミカル社製〕の10%水溶液6部、及び水490部からなる組成物を混合して保護層用塗液を得た。得られた保護層用塗液を以下、G液ともいう。
【0083】
・感熱記録体の作製
青色透明なポリエチレンテレフタレートフィルム〔商品名:メリネックス(登録商標)912、帝人デュポン社製、厚さ175μm〕の片面上に、スロットコーティングによるビード塗布方式を用いて、感熱記録層用塗液(D液)を乾燥後の塗布量が20g/m2となるように遂次塗布及び乾燥して感熱記録層を設け、更にその上に、保護層用塗液(G液)を乾燥後の塗布量が3.5g/m2となるように遂次塗布及び乾燥して保護層を設けて、感熱記録体を得た。
【0084】
実施例2
実施例1の保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液6部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0085】
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部に代えて、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物〔商品名:サーフロン(登録商標)S−145、セイミケミカル社製〕の10%水溶液1部とし、保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液6部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0086】
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液の量を1部に代えて10部とし、保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液30部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0087】
実施例5
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液の量を1部に代えて30部とし、保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液60部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0088】
実施例6
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部に代えて、下記式(6)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0089】
【化6】

式(6)
【0090】
実施例7
・感熱記録層用塗液の調製
A液88部、B液100部、C液20部、ポリウレタンアイオノマーを含有する水性媒体中で、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーが重合された樹脂ラテックス(商品名:パテラコールH2090、大日本インキ化学工業社製、固形分濃度41%)120部、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液5部、及び水45部からなる組成物を混合して感熱記録層用塗液を得た。得られた感熱記録層用塗液を以下、H液ともいう。
・中間層用塗液の調製
ポリウレタンアイオノマーを含有する水性媒体中で、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーが重合された樹脂ラテックス(商品名:パテラコール(登録商標)H2020A、固形分濃度41%、DIC社製)200部、部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217EE、クラレ社製)の10%水溶液200部、アジピン酸ジヒドラジド(商品名:ADH−35、大塚化学社製)の35%分散液23部、オキサゾリン基含有化合物(商品名:エポクロス(登録商標)WS700、固形分濃度25%、日本触媒工業社製)4部、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液3.5部、及び水100部からなる組成物を混合して中間層用塗液を得た。得られた中間層用塗液を以下、I液ともいう。
【0091】
・保護層用塗液の調製
実施例1の保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液20部とした以外は、実施例1と同様にして保護層用塗液を得た。得られた保護層用塗液を以下、J液ともいう。
【0092】
・感熱記録体の作製
青色透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:メリネックス(登録商標)912、厚さ175μm、ヘイズ1%、帝人デュポン社製)の片面上に、支持体側から感熱記録層用塗液(H液)、中間層用塗液(I液)、保護層用塗液(J液)の順にそれぞれ乾燥後の塗布量が20g/m、2g/m、1.5g/mとなるように、スライドコーティングによるビード塗布方式を用いて、3層同時に塗布及び乾燥して、感熱記録層、中間層及び保護層を設けて感熱記録体を得た。
【0093】
実施例8
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部に代えて、下記式(7)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部とし、保護層用塗液(G液)の調製において、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物の10%水溶液6部に代えて、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液6部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0094】
【化7】

式(7)
【0095】
実施例9
実施例7の感熱記録層用塗液(H液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液5部に代えて、前記式(7)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液5部とした以外は、実施例7と同様にして感熱記録体を得た。
【0096】
比較例1
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0097】
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗液(D液)の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部に代えて、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物〔商品名:サーフロン(登録商標)S−145、セイミケミカル社製〕の10%水溶液1部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0098】
比較例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、前記式(5)に示す特定のフッ素系化合物の10%水溶液1部に代えて、下記式(8)に示すフッ素系化合物の10%水溶液1部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0099】
【化8】

式(8)
【0100】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0101】
(塗工欠陥)
記録装置として、感熱プリンターUP−DF500(ソニー社製)を用い、各感熱記録体100枚(17inch×14inch/1枚)を全面ミディアムグレー(光学濃度1.0〜1.2)で印字し、ピンホールの有無を目視で観察し、ピンホール(0.08mm以上)が1つでも出現した枚数を数え、下記の基準で評価した。枚数が少ないほど塗工欠陥が少なく、細部に至るまで明瞭な画像を形成できる。
◎:0枚。
○:1〜4枚。
△:5〜9枚。
×:10枚以上。
【0102】
(濃度ムラ)
記録装置として、感熱プリンターUP−DF500(ソニー社製)を用い、各感熱記録体1枚(17inch×14inch/1枚)を全面ミディアムグレー(光学濃度1.0〜1.2)で印字し、濃度ムラを目視で観察して、下記の基準で評価した。なお、濃度ムラ発生部位の濃度差は、透過濃度計(X−Rite Model 301、X−Rite社製)にて濃度の濃い部分と薄い部分の透過濃度を測定し、その差を示した。濃度差が小さいほど濃度ムラが小さく、厚薄の少ない均一な塗工層が得られている。
◎:濃度ムラが見られず、その濃度差は0である。
○:濃度ムラがほとんど見られないか、若しくは極僅かな濃度ムラが見られるが、その濃度差は0.02未満である。
△:若干の濃度ムラが見られ、その濃度差は0.02以上、0.04未満である。
×:濃度ムラが見られ、その濃度差は0.04以上である。
【0103】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の感熱記録体は、ピンホール等の塗工欠陥がなく、従って印画抜けを生ずることがなく、しかも記録画像の濃度ムラもないため、細部に至るまで明瞭な画像を形成することができ、医療用の画像診断用記録媒体としても適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を備えた感熱記録体において、感熱記録体を構成する層の少なくとも1つに、下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を含有せしめたことを特徴とする感熱記録体。
【化1】

一般式(1)
(式中、nは3〜50の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記保護層に前記一般式(1)で表されるフッ素系化合物を、保護層の全固形量に対して0.1〜5.0質量%含有せしめた、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記感熱記録層と保護層の間に更に、水溶性接着剤と水分散性接着剤を含有する中間層を備えた、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記感熱記録層に更に、下記一般式(2)で表されるフッ素系化合物を含有せしめた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【化2】

一般式(2)
(式中、mは2〜4の整数、nは1〜8の整数を表し、Mはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を表す。)
【請求項5】
前記感熱記録体を構成する層の一部または全部が、前記一般式(1)を含有する塗液を用いて、スロットコーティングまたはスライドコーティングのビード塗布方式により遂次塗布または同時多層塗布、並びに乾燥して形成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。

【公開番号】特開2011−161699(P2011−161699A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24927(P2010−24927)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】