説明

慢性心臓同種移植片拒絶反応を診断する方法

本発明は、ゲノム発現プロファイリング、プロテオミクス発現プロファイリング、またはゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイリングの組合せを用いる、心臓同種移植片の慢性拒絶反応を診断する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願の、2008年4月10日付け出願第61/071,056号、および2009年3月3日付け出願の米国61/157,166号の優先権の恩典を主張し、それらの双方を、本明細書に参照することによって組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、ゲノム発現プロファイリング、プロテオミクス発現プロファイリング、またはゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイリングの組合せを用いる、心臓同種移植の慢性拒絶反応を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
移植は、末期の致命的な臓器不全を有する患者のための主要な療法と考えられる。シクロスポリンおよびタクロリムスなどの免疫抑制薬の利用可能性が同種移植レシピエントの生存率および福祉を改善した一方、できるだけ早期かつ正確な同種移植片拒絶反応の同定、ならびに免疫抑制性薬物の用量の効果的なモニタリングおよび調整は、依然として、同種移植レシピエントの継続的な生存において一義的に重要なことである。
【0004】
同種移植片拒絶反応は、概して、ドナー組織によって発現される非自己抗原へのレシピエントの免疫反応の結果として説明することができる。急性拒絶反応は移植の数日または数週間内に起こるが、慢性拒絶反応はより一層遅いプロセスであり、移植の後に数ヶ月または数年で起こる。
【0005】
目下のところ、侵襲的な生検、たとえば、心内膜心筋、肝臓コア、および腎臓の細針吸引生検は、同種移植片拒絶反応のモニタリングおよび診断のための最も基準になる検査と広く考えられているが、それ自体リスクをともなう侵襲的な手法である(例えば、Mehra MRら、Curr.Opin.Cardiol. 2002年3月;17(2):131-136(非特許文献1))。生検結果はまた、サンプリングエラーおよび観察者間のばらつきのために、肝臓同種移植片拒絶反応を等級分けするためのBanff schema(バンフ・スキーマ)などの国際的なガイドラインの有効性にもかかわらず、再現性および解釈の問題の対象となることがある〔Ormonde(オーモンド)ら、1999年、Liver Transplantation 5:261-268(非特許文献2)〕または改訂されたISHLT移植スケール〔Stewart(スチュワート)ほか、2005年、J Heart Lung Transplant(心肺移植)、2005年;24:1710-20(非特許文献3)〕。慢性心臓拒絶反応をモニタリングするために血管造影法およびIVUSなどの侵襲性の低い画像化(イメージング)技術が開発されたが、これらの選択肢はまた生検に付随するものと同様の制限の影響を受けやすい。
【0006】
心臓同種移植脈管障害(CAV)の発症は、心臓移植レシピエントの長期生存の重要な制限因子および慢性同種移植片拒絶反応(CR)の指標として、広く認められている。目下、CAVの検出のために最も一般的に用いられる標準は冠状動脈血管造影法であり、その手法は、侵襲性であり、そして比較的感度が低い。CAVは、心臓同種移植において影響を受けた冠血管の長さに沿った、脈管損傷(injury)および求心性(concentric)の線維内膜過形成/血管病変によって典型的に特徴付けられる。CAVは、移植の後最初の年を生存した患者の主な死因と考えられるため、早期検出はますます重要になっている。しかし、CAVの早期の診断は、困難な課題であることが多く、部分的には、心臓除神経の結果としての虚血のために、臨床症状が欠如していることによる。現時点では、冠状動脈血管造影法が、CAVのための標準的な診断として使われる。比較的感度の高い技術である血管内超音波法(IVUS)は、移植センターで同程度に広く使われていないにしても、CAVの診断のための別のツールである(Schmaussほか、2008年、Circulation 117:2131-2141(非特許文献4)に概説される)。推定寿命はまた、慢性拒絶反応の効果によっても影響を受ける-心臓レシピエントの長期(すなわち10年)生存率は、おおまかに50%であり、そして、慢性拒絶反応(CR)の発現としての心臓同種移植脈管障害(CAV)の発症によって大幅に制限される。
【0007】
生検によって決定された急性同種移植片拒絶反応の重症度は、標準化された参照指標を提供するために等級分けされうる。国際心肺移植会議(ISHLT)スケールは、心臓移植対象体の生検サンプルを等級分けする手段を提供する(表1)。
【0008】
(表1)国際心肺移植会議による、組織病理学的生検分析のための急性心臓移植拒絶反応の等級分け

【0009】
同種移植片拒絶反応の指標は、一つ以上の限局性または全身性炎症、組織損傷、免疫細胞の同種移植片浸潤、組織および血液由来のタンパク質の組成および濃度の変化、同種移植組織の示差的な酸化、浮腫、内皮の肥厚、コラーゲン含量の増加、心筋内血流の変化、感染、同種移植片および/または周囲組織の壊死、などによって示されるような、高度の、そして限局性の免疫反応が含まれうる。
【0010】
同種移植片拒絶反応は、「急性」または「慢性」であると説明することができる。急性拒絶反応は概して、同種移植を受けている対象体の、組織または器官の同種移植のおよそ6ヶ月以内の拒絶反応であると考えられる。急性拒絶反応はドナー組織に対する細胞性および体液性の攻撃によって特徴付けることができ、迅速な移植片機能不全および組織または器官の不全を導く。慢性拒絶反応は通常、組織または器官の同種移植の6ヶ月以降の拒絶反応であると考えられ、そして同種移植を受けた数年後でありうる。慢性拒絶反応は同種免疫反応によって引き金を引かれた進行性の組織改造によって特徴付けることができ、動脈内の段階的な新生内膜形成を導くことがあり、閉塞性の脈管障害、実質性線維症およびその結果として、移植の失敗および損失の原因となる。通常、それはIUVS(血管内超音波検査)、血管造影法および/または心エコー検査法によって、臨床的に評価または診断され、そして必要であると考えられるなら、生検を更に含むことができる〔たとえば、Tsutsui(ツツイ)ほか、2001 Circulation 104:653-7(非特許文献5);Kobashigawa(コバシガワ)ほか、2005年、J. American College of Cardiology 45:1532-7(非特許文献6);Tuzcuほか、2005年、J American College of cardiology、45:1538-42(非特許文献7)参照〕。拒絶反応の性質および重症度に応じて、慢性、急性を問わず、同種移植を受けている、または受けると思われる患者において観察される指標、または臨床的変数において重複が存在する可能性がある。
【0011】
患者あたりの生検および侵襲的モニタリング技術の回数を減らすための試みがなされてきたが、拒絶反応が始まるか、または進行する部位を正確に指摘することの困難、およびさらに、実際の生検を実行することなく組織を評価することの困難に一部起因して、概して不成功なことがある。非侵襲性のモニタリング技術が研究され、同種移植片拒絶反応の妥当な陰性予測を提供することができるが、臨床的状況において実用性が低い場合がある(Mehraほか、上記(非特許文献1))。
【0012】
慢性同種移植片拒絶反応の分野中で、多数のマーカーが記述され、そして明らかに矛盾する結果が、場合によっては提示されるかもしれない。文献におけるこの対立は、ヒトの体においてゲノム(転写単位30,000以上の範囲と推定される)、多様な細胞タイプ(200以上の範囲と推定される)、器官および組織、および発現したタンパク質またはポリペプチド(80,000以上の範囲と推定される)を複雑にし、器官の拒絶反応を診断するために有用な多数の潜在的な核酸配列、遺伝子、タンパク質、代謝物質またはその組合せを食い違わせる。個人間の変動は、更なる障害、ならびに血漿中のタンパク質濃度のダイナミックレンジ(10-6から103μg/mLまでにわたる、非常に低い濃度で存在する多くのタンパク質を伴う)および少数の最も豊富な血漿タンパク質の圧倒的な量(合計タンパク質質量のおよそ99%を構成する)を提示する。
【0013】
PCT国際公開WO2006/083986(特許文献1)、WO2006/122407(特許文献2)、米国特許出願公開第2008/0153092号(特許文献3)、第2006/0141493号(特許文献4)、米国特許第7026121号(特許文献5)および米国特許第7235358号(特許文献6)明細書は、がんから臓器移植までにわたる種々の病気の状態を診断し、または検出するための(プロテオミクスまたはゲノム)バイオマーカーパネルを使う方法を開示する。
【0014】
Borozdenkovaほか、2004(J. Proteome Research 3:282-288)(非特許文献8)はアルファB-クリスタリンおよびトロポミオシン(tropmyosin)が心臓移植対象体の組において上昇したことを開示する。
【0015】
Roussoulieresほか、2005(Circulation、111:2636-44)(非特許文献9)はヒトの心臓移植のマウスモデルで、急性拒絶反応でのCHD5の関連を開示する。
【0016】
Ishihara(イシハラ)(2008)(J. Mol Cell Cardiology 45:S33)(非特許文献10)は、ADIPOQが心臓移植で有用である可能性があることを開示し、そして、Nakano(ナカノ)(Transplant Immunology、2007 17:130-136)(非特許文献11)は、ADIPOQの上方制御が肝移植対象体で拒絶反応を克服するために必要である可能性があると示唆する。
【0017】
Hedman(ヘドマン)ほか、2007(Pediatr Transplantation 11:481-490(非特許文献12)は、高いAPOB/APOA1比率が小児心臓同種移植レシピエントで血管造影法で検出可能な脈管障害と関係しており、そして低いHDL-Cによりプラバスタチン治療中のこれらの患者で移植脈管障害(vasculpathy)の始まりが予測されることを開示する。
【0018】
IGFBP3、MST1、CDH5のレベルの変化が、急性腎臓同種移植片拒絶反応において観察された〔Fukuda(フクダ)ほか、1998、Growth Horm IGF Res、8:481-6(非特許文献13);Sarwalほか、2003、New England J. Med(ニューイングランドJ.メディ)349:125-138(非特許文献14);Roussoulieresほか、2007、J. Biomed Biotechnol. doi:10.1155/2007/41705(非特許文献15)〕。
【0019】
Matsui(マツイ)ほか、2003(Physiol Genomics 15:199-208)(非特許文献16)は、ネズミ心臓移植モデルで同時刺激シグナルの遮断後に同種移植を寛容化する遺伝子発現プロファイルを開示する。
【0020】
Fildes(フィルデス)ほか2008(Transplant Immunology 19:1-11)(非特許文献17)は、肺移植の後の免疫プロセスでの細胞タイプの役割を考察し、そしてNK細胞タンパク質とAICL(CLEC2B)との相互作用が急性および慢性の拒絶反応での役割をもつかもしれないことを開示する。
【0021】
複数のプラットホーム(プロテオミクス、ゲノミクス)の統合は、種々のがんの診断およびモニタリングのために提案されたが、しかし、タンパク質およびmRNAの発現の間の不一致がこの分野で確認された〔Chen(チェン)ほか、2002、Mol Cell Proteomics1:304-313(非特許文献18);Nishizuka(ニシズカ)ほか、2003、Cancer Research、63:5243-5250(非特許文献19)〕。以前の研究では、ゲノミクスおよびプロテオミクスのデータ間の低い相関関係が報告された〔Gygi(ギジ)SPほか、1999、Mol Cell Biol.、19:1720-1730(非特許文献20);Huber(ヒューバー)ほか、2004、Mol Cell Proteomics、3:43-55(非特許文献21)〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】PCT国際公開WO2006/083986
【特許文献2】PCT国際公開WO2006/122407
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0153092号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0141493号
【特許文献5】米国特許第7026121号
【特許文献6】米国特許第7235358号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Mehra MRら、Curr.Opin.Cardiol. 2002年3月;17(2):131-136
【非特許文献2】Ormondeら、1999年、Liver Transplantation 5:261-268
【非特許文献3】Stewartほか、2005年、J Heart Lung Transplant、2005年;24:1710-20
【非特許文献4】Schmaussほか、2008年、Circulation 117:2131-2141
【非特許文献5】Tsutsuiほか、2001 Circulation 104:653-7
【非特許文献6】;Kobashigawaほか、2005年、J. American College of Cardiology 45:1532-7
【非特許文献7】Tuzcuほか、2005年、J American Colege of cardiology、45:1538-42
【非特許文献8】Borozdenkovaほか、2004(J. Proteome Research 3:282-288)
【非特許文献9】Roussoulieresほか、2005(Circulation、111:2636-44)
【非特許文献10】Ishihara(2008)(J. Mol Cell Cardiology 45:S33)
【非特許文献11】Nakano(Transplant Immunology、2007 17:130-136)
【非特許文献12】Hedmanほか、2007(Pediatr Transplantation 11:481-490
【非特許文献13】Fukudaほか、1998、Growth Horm IGF Res、8:481-6
【非特許文献14】Sarwalほか、2003、New England J. Med 349:125-138
【非特許文献15】Roussoulieresほか、2007、J. Biomed Biotechnol. doi:10.1155/2007/41705
【非特許文献16】Matsuiほか、2003(Physiol Genomics 15:199-208)
【非特許文献17】Fildesほかによる総説2008(Transplant Immunology 19:1-11)
【非特許文献18】Chenほか、2002、Mol Cell Proteomics1:304-313
【非特許文献19】Nishizukaほか、2003、Cancer Research、63:5243-5250
【非特許文献20】Gygi SPほか、1999、Mol Cell Biol.、19:1720-1730
【非特許文献21】Huberほか、2004、Mol Cell Proteomics、3:43-55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
侵襲性が低く、再現可能で、そしてロバストな(サンプリングおよび解釈エラーによる影響が低い)、慢性拒絶反応を含む同種移植片拒絶反応を評価または診断する方法が、大いに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の概略
本発明はゲノム発現プロファイリング、プロテオミクス発現プロファイリング、またはゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイリングの組合せを用いる、心臓同種移植片の慢性拒絶反応を診断する方法に関する。
【0026】
本発明は、ゲノムまたはプロテオミクス発現プロファイリングを用いる、慢性拒絶反応を含む心臓同種移植片の拒絶反応を診断する方法に関する。
【0027】
本発明の1つの面に従い、対象体において慢性同種移植片拒絶反応を診断する方法を提供し、この方法は、a)対象体由来の生物学的サンプルにおいて、1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルを決定する工程であって、ゲノムマーカーが、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5を包含する群より選択される工程、b)1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの発現プロファイルを非拒絶体プロファイルと比較する工程、およびc)1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの発現レベルが非拒絶体プロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうかを決定する工程を含み、ここで、1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの増加または減少が、対象体の拒絶反応状態を示す。
【0028】
本発明の別の面に従い、対象体において慢性的な同種移植片拒絶反応を診断するためのキットを提供し、このキットは、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2またはIFIT5のうちの1または1よりも多くの特異的かつ定量的な検出のための試薬を、そのような試薬の使用、および任意で、結果として生じるデータを分析する方法のための説明書とともに含む。キットはさらに、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2またはIFIT5のいくつかまたは一部をコード化する遺伝子または転写物の1またはそれよりも多くへの選択的なハイブリダイゼーションのための1またはそれよりも多くのオリゴヌクレオチドを含むことができる。対象体の拒絶反応の状態を診断するために、キットの結果を、拒絶反応を示さないカットオフインデックスまたはコントロールを提供する他のアッセイの結果と組み合わせるのに役に立つ説明または他の情報を、キットにおいてまた提供することができる。
【0029】
本発明の別の面に従い、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4およびIFIT5は、コントロールと比較して減少することがあり、およびOSBP2はコントロールと比較して増加しうる。
【0030】
本発明の別の面に従って、本方法はさらに、1またはそれよりも多くの臨床的変数の値を得ること、および1またはそれよりも多くの該臨床的変数をコントロールに対して比較することを含む。
【0031】
本発明の別の面に従って、コントロールは自家のコントロールである。
【0032】
本発明の別の面に従って、本方法は表6にリストされる1またはそれよりも多くのマーカーの発現プロファイルを決定する工程をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の別の面に従って、コントロールは拒絶反応を示さない、同種移植レシピエント対象体または非同種移植レシピエント対象体である。
【0034】
本発明のもう一つの面に従って、1または1よりも多くのゲノムマーカーの発現プロファイルは、1または1よりも多くの該マーカーに対応するRNA配列を検出することによって決定されうる。
【0035】
本発明のもう一つの面に従って、1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルは、PCRによって決定されうる。
【0036】
本発明のもう一つの面に従って、1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルはハイブリダイゼーションによって決定されうる。
【0037】
本発明のもう一つの面に従って、ハイブリダイゼーションはオリゴヌクレオチドに対するものでありうる。
【0038】
本発明のもう一つの面に従って、生物学的サンプルは血液サンプルである。
【0039】
本発明のもう一つの面に従って、a)対象体由来の生物学的サンプルでの1または1よりも多くのプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現プロファイルを決定する段階であって、1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーが、IGFBP3、MST1、CDH5、C1QB、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9によってコード化されるポリペプチドを包含する群より選択される工程、b)1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーの発現プロファイルを非拒絶体プロファイルと比較する工程、およびc)1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーの発現レベルが非拒絶体プロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうかを決定する工程を含む方法であって、1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーのレベルの増加または減少が対象体の拒絶反応状態を示す、方法を提供する。
【0040】
本発明のもう一つの面に従って、対象体において慢性同種移植片拒絶反応を診断するためのキットを提供し、このキットは、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9、IGFBP3、MST1、CDH5およびC1QBによってコード化される1または1よりも多くのポリペプチドの特異的かつ定量的な検出のための試薬を、そのような試薬の使用、および結果として生じるデータを分析する方法のために説明とともに含む。対象体の拒絶反応の状態を診断するために、キットの結果を、拒絶反応を示さないカットオフインデックスまたはコントロールを提供する他のアッセイの結果と組み合わせるのに役に立つ説明または他の情報もまた、キットにおいて提供することができる。
【0041】
本発明のもう一つの面に従い、IGFBP3、MST1、CDH5およびC1QBによってコード化されたポリペプチドのレベルは、コントロールと比較して減少してもよく、そして、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9は、コントロールと比較して増加してもよい。
【0042】
本発明のもう一つの面に従い、本方法はさらに、1またはそれよりも多くの臨床的変数の値を得、そして1またはそれよりも多くの該臨床的変数をコントロールと比較する工程を含む。
【0043】
本発明のもう一つの面に従い、コントロールは自家コントロールである。
【0044】
本発明のもう一つの面に従って、非拒絶体プロファイルは、拒絶反応を示さない、同種移植レシピエント対象体または非同種移植レシピエント対象体から得られる。
【0045】
本発明のもう一つの面に従い、プロテオミクス発現プロファイルは免疫学的アッセイによって決定されうる。
【0046】
本発明のもう一つの面に従い、プロテオミクス発現プロファイルはELISAによって決定されうる。
【0047】
本発明のもう一つの面に従い、プロテオミクス発現プロファイルは質量分析によって決定されうる。
【0048】
本発明のもう一つの面に従い、プロテオミクス発現プロファイルは同位元素標識法またはアイソバリック標識法によって決定されうる。
【0049】
したがって、本発明のいくつかの局面における利益は、移植された組織または器官の生検を伴わずに慢性同種移植片拒絶反応を診断する方法を提供することである。
【0050】
本発明はまた、ゲノム発現プロファイリングおよびプロテオミクス発現プロファイリングを用いる、心臓同種移植片の慢性拒絶反応を診断する方法に関する。本発明のもう一つの面に従って、対象体において同種移植片拒絶反応を診断する方法を提供し、この方法は、a)対象体由来の生物学的サンプルにおいて1または1よりも多くのマーカーのゲノム発現プロファイルを決定する工程であって、該マーカーが、ゲノムマーカーOSBP2、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1、ZCCHC2、242907、CLEC2B、PDK4およびIFIT5を包含する群より選択される、工程、b)生物学的サンプルにおいて、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9、IGFBP3、MST1、CDH5およびC1QBによってコード化されたポリペプチドを包含する群より選択されるプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現プロファイルを決定する工程、c)ゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイルをコントロールプロファイルと比較する工程、およびd)1または1よりも多くのマーカーのゲノムまたはプロテオミクス発現のレベルがコントロールプロファイルと比較して増加するかどうかまたは減少するかどうかを決定する工程を含み、ここで、1または1よりも多くの該マーカーの増加または減少が、拒絶反応の状態を示す。
【0051】
本発明のもう一つの面に従い、ゲノムおよびプロテオミクスマーカーの組合せパネルを用いる、対象体の慢性同種移植片拒絶反応の状態を決定する方法を提供し、この方法は、a)対象体由来の生物学的サンプルにおいてCHPT1、GBP3、242907_atおよびCLEC2Bのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルを決定する工程、b)該生物学的サンプルにおいて、CFHR2、CPN1、GCおよびC1QBによってコード化されるポリペプチドを包含する群から選択されるプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現プロファイルを決定する工程、c)ゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイルをコントロールプロファイルと比較する工程、およびd)ゲノムおよびプロテオミクスマーカーのゲノムまたはプロテオミクス発現レベルがコントロールプロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうかを決定する工程を含み、ここで、ゲノムマーカーCLDC2B、CHPT1、242907_at、GB3の増加およびCFHR2、CPN1およびGCによってコード化されるポリペプチドの増加、およびC1QBによってコード化されるポリペプチドの減少が、対象体の慢性拒絶反応状態を示す。
【0052】
本発明のもう一つの面に従い、本方法はさらに、1またはそれよりも多くの臨床的変数の値を得、1またはそれ以上の該臨床的変数をコントロールと比較する工程を含む。
【0053】
本発明のもう一つの面に従って、コントロールは拒絶反応を示さない、同種移植レシピエント対象体または非同種移植レシピエント対象体である。
【0054】
本発明のもう一つの面に従い、対象体において慢性同種移植片拒絶反応を評価、予測または診断するためのキットを提供し、キットは、OSBP2、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1、ZCCHC2、242907、CLEC2B、PDK4およびIFIT5のゲノムマーカー、ならびにCFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9、IGFBP3、MST1、CDH5およびC1QBによってコード化されるポリペプチドを含むプロテオミクスマーカーを包含する1または1よりも多くのものを特異的かつ定量的に検出するための試薬を、そのような試薬の使用、および任意で、結果として得られるデータを分析する方法のための説明とともに含む。対象体の拒絶反応の状態を診断するために、キットの結果を、拒絶反応を示さないカットオフインデックスまたはコントロールを提供する他のアッセイの結果と組み合わせるのに役に立つ説明または他の情報もまた、キットにおいて提供することができる。
【0055】
したがって、移植された組織または器官の生検を伴わずに、慢性同種移植片拒絶反応を診断する方法を提供することが、本発明のいくつかの局面における利益である。
【0056】
本発明のこの概要は、必ずしも本発明のすべての特長を説明するというわけではない。本発明の他の局面、特長および利益は、本発明の具体的態様の以下の説明を概観することにより、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
これらのおよび他の本発明の特長は、添付の図面を参照して以下の説明からより一層明らかになる。
【0058】
【図1】10の遺伝子のバイオマーカーパネルを用い、安定した対象体(n=6)(黒丸)と慢性拒絶反応(n=7)(黒い菱形)を分類する。このバイオマーカーのパネルのための遺伝子のリストは以下を含む。すなわち、コリンホスホトランスフェラーゼ1、リボソームプロテインS26、グアニル酸結合プロテイン3、キラー細胞レクチン様レセプターサブファミリーC、メンバー1、ジンクフィンガー、CCHCドメイン含有2、242907_at、C-タイプレクチンドメインファミリー2、メンバーB、ピルベートデヒドロゲナーゼキナーゼ、アイソザイム4、オキシステロール結合プロテイン2、テトラトリコペプチドリピート5を有するインターフェロン誘導プロテインである。
【図2】図1の中で確認されるバイオマーカーパネルを、31のサンプルにLDAを用いて適用し、パネルの分類値を評価した。上記の方法によって確認される慢性拒絶反応(実線)を有するものの83%が、正しく分類された。安定した対象体(点描された線)の91%が、正しく分類された。
【図3】バイオマーカーNKG2C、NKGWa、PDK4およびCHPT1の間に示された関係を表す。
【図4】106の遺伝子に対応し、FDR<10%を有する106のプローブセットに基づくヒートマップを表す。
【図5】14の異なって表されたタンパク質グループ(p値<0.05)に基づくヒートマップを表す。タンパク質グループのコードは、ヒートマップの右手側に沿ってリストされる。慢性サンプル(灰色のバー)−最も左の7つのカラム(1〜7);安定サンプル(黒色のバー)−最も右の6つのカラム(8〜13)。
【図6】ゲノム、プロテオミクスおよび組合せのバイオマーカーパネルを用いる12のテストコホートサンプルの分類結果に基づくストリプロット(Striplot)を表す。3つすべての分類子について線形判別式(LD)変数の値(それぞれ、ゲノム、プロテオミクスおよび組合せの分類子の「HP4」、「H4」および「組合せ」)は、分類のカットオフ線をゼロに較正するために、再中心化した(re-centered)。トレーニングセットにおいて、CR(白い星)およびS(黒い星)のサンプルのLD変数値(または分類子「スコア」)の中心を示す。それぞれのテストコホートにおいて、黒丸および黒い四角は、SサンプルとCRサンプルの各々のLD変数/分類子のスコアに対応する。
【図7】図7A〜Tは、慢性心臓同種移植片拒絶反応の診断に役立つ、表6にリストされる核酸マーカーの標的配列(配列番号1〜10、37〜46)を示す。
【図8】図8A〜Rは、慢性心臓同種移植片拒絶反応の診断に役立つ、表8にリストされるプロテオミクスマーカーのアミノ酸配列(配列番号11〜12、14〜17、21〜23、25、27〜28および31〜36)を示す。
【図9】本発明のいくつかの態様によってiTRAQアッセイにおいて特定される例示的なペプチドを表す。リストはさらに、それらの割り当てられたタンパク質グループのコードおよび配列番号47〜421を含む。
【発明を実施するための形態】
【0059】
詳細な説明
次に続く説明では、いくつかの用語が、広範囲に使われ、以下の定義が本発明のいろいろな面の理解を容易にするために提供される。用語の例を含めた本明細書の例の使用は、例示の目的のためだけであり、ここでの本発明の態様の範囲および意味を制限することを意図しない。数値範囲は、その範囲を定める数を含む。本明細書において、「含む(備える)(comprising)」という語がオープンエンドの(制限のない)用語として使われ、「包含し、しかし限定されない」という表現と実質的に等価であり、そして語「含む(comprises)」は同等の意味をもつ。
【0060】
本発明は、組織または器官同種移植、特に心臓同種移植を受けた対象体における拒絶反応を診断する方法を提供する。
【0061】
本発明は、対象体において、同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に関連するゲノム、核酸、プロテオミクス発現プロファイルまたはゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイルの組合せを提供する。ゲノムまたはプロテオミクス発現プロファイルの要素のいくつかは既存の技術において単独では既知であることもある一方、ゲノムまたはプロテオミクスマーカーの特定のセットの発現レベルの変化(コントロールと比較した増加または減少)の特定の組合せは、対象体における同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に役立つ新しい組合せを含む。
【0062】
同種移植片は、同じ種の2つの遺伝的に異なる対象体の間で移植される器官または組織である。同種移植片を受ける対象体は「レシピエント」であり、同種移植片を提供する対象体は「ドナー」である。組織または器官同種移植片は、あるいはまた「移植片(transplant)」、「移植片(graft)」、「同種移植片」、「ドナー組織」または「ドナー器官」などの用語として称することができる。異なる種の2つの対象体の間の移植は、異種移植片である。
【0063】
対象体は文献で周知であるさまざまな症状または臨床的変数を呈することがあるが、それら自体はいずれも同種移植片拒絶反応を予測するまたは診断するものではない。同種移植片の生検に加えて、多数の臨床的変数が、同種移植片拒絶反応があるまたはその疑いがある対象体を評価する際に使われうる。これらの臨床変数から得られる情報は、臨床フィールドにおいて臨床医、医者、獣医または他の施術者によって、対象体の免疫抑制性薬物治療を改変するために、拒絶反応が起こっているかどうか、そしてそれがどれくらい速く進行するかを決定するために使われる。臨床的変数の例は、表2に示す。
【0064】
主流な医療において臨床医が現在利用できる唯一の実用的なツールである臨床的変数(任意で、生検を伴う)は、CR(慢性拒絶体)対象体およびNR(非拒絶体、安定またはコントロール)対象体の間を明確に区別することが必ずしもできない。極端な対象体はCRまたはNRとして正しく分類されるかもしれないが、対象体の大半は中間域にあり、そしてそれらの状態は不明である。このことは同種移植片拒絶反応の評価における臨床的変数の値を否定するものではないが、他の方法がなくて使われるときのそれらの限界を示す。
【0065】
(表2)同種移植片拒絶反応の評価に用いられる可能性がある臨床的変数





【0066】
同種移植片拒絶反応の予測、診断および評価がさまざまな要因によることは、当該技術分野において、同種移植片拒絶反応の予測、診断または評価の必要性のちょうど1つを満たす単一のバイオマーカーの可能性を排除すると見なされる。複数のマーカーを含む戦略は、さまざまな要因によるというこの性質を考慮することができる。あるいはまた、複数のマーカーは、対象体における同種移植片拒絶反応の予測、診断および/または評価を適合させるために、より一層侵襲性でない(例えば、生検が不要)臨床的変数と組み合わせて評価されうる。
【0067】
同種移植片拒絶反応の予測、診断および評価のために使われる方法の如何にかかわらず、器官または組織機能を維持し、より全身的な有害事象を防ぐ視点から、早期に行うことが好ましい。拒絶反応があまりに速く進行したか、または免疫抑制薬の干渉療法で修正するにはあまりに重度である場合、同種移植片拒絶反応の「治癒」はなく、適切に免疫抑制された状態に対象体を保つのみ、または場合によっては、臓器移植するのみである。
【0068】
タンパク質またはポリペプチドデータセット、代謝物質濃度データセット、または核酸発現データセットへの複数の数学的および/または統計的分析の適用は、重要なマーカーの変動するサブセットを示し、どの方法が「最適」または「より一層正確」かについて不確実性を導くことがある。数学に関係なく、根底にある生物学はデータセットにおいて同じである。複数の数学的および/または統計的方法をマイクロアレイデータセットに適用し、そして共通のマーカーの各々についての統計的に有意なサブセットを評価することによって、不確実性を低減し、そして臨床的に妥当な、マーカーの中心的な群を特定することができる。
【0069】
「マーカー」、「生物学的マーカー」または「バイオマーカー」は、互換的に使うことができ、そして概して生物学的サンプル中の検出可能な(そして、場合によっては定量化可能な)分子または化合物を意味する。マーカーは同種移植片の移植の後、対象体において下方制御(低減)されるか、上方制御(増加)されるか、事実上不変である場合がある。マーカーは、「ゲノミクス」マーカー(代替的に「核酸マーカー」とも称される)に関しては、核酸(DNAまたはRNA)、遺伝子または転写物、あるいは転写物の部分または断片を含むことができ、「プロテオミクス」マーカーに関しては、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質またはそれらの前駆体またはアイソフォーム、またはそれらの断片または部分を含むことができ、あるいは選択された分子、それらの前駆体、中間体または分解生成物(例えば、その脂肪酸、アミノ酸、糖類、ホルモン、またはその断片またはサブユニット)(「代謝物質マーカー」または「メタボロミクスなマーカー」)を含むことができる。プロテオミクスマーカーは、遺伝子によってコード化されるポリペプチドであることができる。いくつかの使用法では、これらの用語は、対象体の生体試料での、特定のタンパク質、ペプチド、核酸またはポリヌクレオチド、または代謝物質のレベルまたは量(絶対値として、または別のサンプルまたは標準的な値と比較して)または2つのタンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチドまたは代謝物質のレベルの間の比率のレベルまたは量を意味する。レベルは、濃度、たとえば、ミリリットルあたりのマイクログラムとして;比色強度、たとえば、特定の光波長で透明を0.0不透明を1.0として、それに従って実験サンプルをランク付けして、特定の波長での光の伝送または吸収に基づく数的なスコアを受領することで;または、当該技術分野において既知の、マーカーを定量化するための他の手段に関連して、表すことができる。いくつかの例では、比率は単位のない値として表されうる。「マーカー」はまた、ベースライン値を減算した後の比率または正味の値を意味することもできる。指向性(増加または減少/上または下)の指標の有無にかかわらず、マーカーは「倍率変化」としても表されうる。マーカーの発現の増加または減少は、「下方制御」もしくは「上方制御」、または刺激、生理的事象、対象体の条件に応じた増加または減少の類似した指標として称されうる。マーカーは最初の生体試料で存在し、そして第2の生体試料で不在である場合があり、あるいはまた、マーカーは2つの間で統計的に有意な違いを有して両方に存在しうる。生体試料におけるマーカーの存在、欠如または相対的なレベルの発現は、マーカーを定量化または評価するのに用いられるアッセイの性質に依存し、そしてそのような発現の様式は当業者に精通されている。
【0070】
同種移植片に拒絶反応を示している対象体の発現のレベルが、ある対象体のもの、または拒絶反応を示していない対象体から採取されたサンプルのものと有意に異なるとき、マーカーは示差的に発現されるとして説明できる。示差的に発現されたマーカーは、正常またはコントロールサンプルの発現レベルと比較して過剰発現するかまたは過小発現しうる。
【0071】
「プロファイル」は、1またはそれよりも多くのマーカー、およびそれらの存在、不在、相対的なレベルまたは豊富さ(一つ以上のコントロールと比較して)のセットである。たとえば、代謝物質プロファイルは、代謝物質マーカーの存在、不在、相対的なレベルまたは豊富さのデータセットである。プロテオミクスプロファイルは、プロテオミクスマーカーの存在、不在、相対的なレベルまたは豊富さのデータセットである。ゲノムプロファイルまたは核酸プロファイルは、発現された核酸(例えば、転写物、mRNA、ESTなど)の存在、不在、相対的なレベルまたは豊富さのデータセットである。プロファイルは、代替的に発現プロファイルと呼ばれる場合がある。
【0072】
生体試料でのマーカーの増加または減少、または定量化は、遺伝子産物または転写物の存在および/または相対的な豊富さを測定するために当該技術分野で既知の任意のいくつかの方法でも決定されうる。マーカーのレベルは、絶対値として、またはベースライン値との相対値として、およびカットオフインデックス(例えば、拒絶反応を示さないカットオフインデックス)と比較した対象体のマーカーのレベルとして、決定することができる。あるいはまた、マーカーまたはマーカー群の相対的な豊富さは、コントロールと比較して決定することができる。コントロールは、臨床的に正常な対象体(例えば、同種移植を受けなかったもの)であってよく、または拒絶反応を以前に示さなかった同種移植レシピエントであってよい。
【0073】
いくつかの態様において、コントロールは自家のコントロール、たとえば、同種移植片移植を受ける前に対象体から得られるサンプルまたはプロファイルであってもよい。いくつかの態様において、一つ以上の時点(移植前、移植後、または移植前後)に得られるプロファイルは、以前に同じ対象体から得られた1または複数のプロファイルと比較されうる。長時間にわたり同じ対象体から同じ生体試料を繰り返しサンプリングすることによって、経時的なマーカーレベルまたは発現を示す複合プロファイルを提供することができる。連続したサンプルはまた対象体から、および、各々について得られたプロファイルから得られ、それにより、一つ以上のマーカーの経時的な増加または減少の過程を追うことができる。たとえば、最初のサンプルまたはサンプル群を、移植の前に採取し、次のサンプルを、毎週、隔週、毎月、隔月、または適切な別の間隔で採取してもよく、そして先に採取したサンプルからのプロファイルと比較することができる。サンプルはまた、薬物、たとえば、免疫抑制薬の一連の投与の前、その間、そしてその後に採取することもできる。
【0074】
技術、方法、ツール、アルゴリズム、試薬および特定のマーカーまたはマーカー群のセットを検出および/または定量化するために使用することができるアッセイの他の必要な局面は変動する。重要なのは、マーカーまたはマーカー群のセットを検出するのに用いる特定の方法でなく、検出するマーカーが何かである。文献に反映されているように、無数のバリエーションが可能である。検出または定量化されるマーカーまたはマーカー群のセットが一旦特定されると、適切な試薬に従って、いくつかの技術のうち任意のものがより適切でありうる。特定されるマーカーのセットが提供されているとき、当業者は本明細書に開示された方法を実行するのに適切なアッセイを選ぶことができる(たとえば、核酸マーカーに関して、PCRに基づくまたはマイクロアレイに基づくアッセイ、ELISA、タンパク質または抗体マイクロアレイまたは類似した免疫学的アッセイ、またはいくつかの例において、iTRAQ、iCATまたはSELDIプロテオミクス質量分析に基づく方法の使用)。
【0075】
本発明は、対象体における同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に関連した核酸発現プロファイルとプロテオミクス発現プロファイルを提供する。ゲノムまたはプロテオミクス発現プロファイルの要素のいくつかが既存の技術で個別に公知であることがあるものの、ゲノムまたはプロテオミクスマーカーの特定のセットの発現レベルの変化(コントロールと比較した増加または減少)の特定の組合せは、対象体における同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に役立つ新しい組合せを含む。
【0076】
たとえば、核酸の検出または決定、そして、場合によっては定量化は、制限されないが、配列特異的ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT-PCR、マイクロアレイなどを含む当該技術分野において既知の組換えDNA技術を用いるいくつかの方法またはアッセイのうちの任意の1つによって成し遂げることができる。そのようなアッセイには、配列特異的ハイブリダイゼーション、プライマー伸長法、または侵襲性開裂(invasive cleavage)が含まれる。さらにまた、各々のタイプの反応の生成物を分析し/検出するための多数の方法がある(たとえば、蛍光、ルミネセンス(発光)、質量測定、電気泳動、その他)。さらにまた、反応は、溶液中で、または、ガラススライド、チップ、ビーズなどの固体支持体上で起こりうる。
【0077】
マイクロアレイまたはバイオチップで使用するための、または、PCRに基づくアッセイでの使用のためにプライマーを選ぶまたは設計するためのプローブを設計および選定する方法は、当該技術分野において公知である。一旦、マーカーまたはマーカー群が特定されると、および、核酸の配列がたとえば当該配列を含むデータベースと照合するか提供された適切な配列(たとえば、本明細書に提供される配列表)を有することによって決定されると、当業者はそのような情報を用いて、適切なプローブまたはプライマーを選び、選択されたアッセイを実行する。
【0078】
当業者に既知の組換えDNA技術の一般原則を述べる標準的参考資料は、たとえば、以下のものを含む。すなわち、Ausubel(オースベル)ほか、Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley & Sons(ジョン・ワイリー・アンド・サン社)、ニューヨーク(1998および2001の補遺)、Sambrookほか、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(コールドスプリングハーバー研究所プレス)、Plainview, New York (1989)、Kaufman(コーフマン)ほか、編、Handbook Of Molecular And Cellular Methods In Biology And Medicine、CRC Press(CRCプレス社)、Boca Raton(ボカラトン)(1995)、McPherson(マクファーソン)編、Directed Mutagenesis:A Practical Approach、IRLプレス、Oxford(オックスフォード)(1991)。
【0079】
タンパク質、タンパク質複合体またはプロテオミクスマーカーは、当該技術分野で公知であるいろいろな方法によって、特異的に特定および/または定量化することができ、単独あるいは組み合わせて使われうる。免疫学的すなわち抗体に基づく技術には、酵素結合抗体免疫測定法(ELISA)、標識免疫検定法(RIA)、ウエスタンブロッティング、免疫蛍光、マイクロアレイ、いくつかのクロマトグラフィー技術(すなわち、免疫親和性クロマトグラフィー)、フローサイトメトリー、免疫沈降および同様の他のものなどを含む。そのような方法は、関心対象のタンパク質またはタンパク質複合体と関係した特定のエピトープまたはエピトープ群の組合せに対する抗体または抗体群の特異性に基づく。非免疫性の方法には、タンパク質またはタンパク質複合体それ自体の物理的な特徴に基づくものが含まれる。そのような方法の例には、電気泳動、いくつかのクロマトグラフィー技術(たとえば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、迅速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、アフィニティ(親和性)クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィーなど)、質量分析、配列決定、プロテアーゼダイジェスト(消化)、などが含まれる。そのような方法は、タンパク質またはタンパク質複合体のアミノ酸補足物(complement)およびアミノ酸の特定の配列に由来する質量、電荷、疎水性または親水性に基づく。質量分析を使用する方法の例には、たとえば、PCT国際公開WO 2004/019000、WO 2000/00208、米国特許第6670194号明細書において記述されるものが含まれる。免疫学的および非免疫性の方法は、タンパク質またはタンパク質複合体を特定するか、特徴づけるために組み合わされてもよい。さらにまた、各々のタイプの反応の生成物を分析/検出するための多数の方法がある(たとえば、蛍光、発光、質量測定、電気泳動、その他)。さらにまた、反応は、溶液中で、またはガラスのスライド、チップ、ビーズなどの固体支持体上で起こすことができる。
【0080】
タンパク質アレイまたは抗体アレイまたは他の免疫学に基づくアッセイで使用するために抗体を生産する方法は、当該技術分野で公知である。一旦、マーカーまたはマーカー群が特定され、そしてタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列が、データベースと照合することによって、または提供された適切な配列(たとえば、本明細書に提供する配列表)を有することによって特定されると、当業者は、そのような情報を使って、一つ以上の適切な抗体を調製し、そして選択されたアッセイを実行することができる。
【0081】
バイオマーカーを対象とするモノクローナル抗体の調製のために、培養物において連続細胞系によって抗体分子を生産するために提供される任意の技術を使うことができる。そのような技術には、制限されないが、Kohler(コーラー)およびMilstein(ミルスタイン)によって最初に開発されたハイブリドーマ技術〔1975、Nature(ネイチャー)256:495-497〕、トリオーマ(trioma)技術〔Gustafsson(グスタファソン)ほか、1991、Hum. Antibodies Hybridomas 2:26-32)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborほか、1983、Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を生産するEBVハイブリドーマ技術〔Cole(コール)ほか、1985、In:Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.(アランR.リース社)、pp. 77-96〕が含まれる。ヒト抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることによって〔Cote(コート)ほか、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(米国科学アカデミー会報)80:2026-2030〕、またはインビトロでEBVウイルスでヒトB細胞を形質転換することによって〔Cole(コール)ほか、1985、In:Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.(アランR.リース社)、pp. 77-96〕得ることができる。適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と、バイオマーカーに対し特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによって行われる、「キメラ抗体」の生産のために開発された技術〔Morrison(モリソン)ほか、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855;Neuberger(ニューベルガー)ほか、1984、Nature 312:604-608;Takeda(タケダ)ほか、1985、Nature 314:452-454〕を用いることができ、そのような抗体は、本発明の範囲内である。単鎖抗体の生産のために記述される技術(米国特許第4,946,778号明細書)は、バイオマーカー-特異的抗体を生産するのに適合させることができる。本発明の追加的な態様は、バイオマーカータンパク質に対する望ましい特異性を有する単クローンFab断片の迅速で簡単な識別を可能にするFab発現ライブラリーの構築のために記述される技術を利用する〔Huse(ヒューズ)ほか、1989、Science 246:1275-1281〕。非ヒト抗体は、既知の方法(例えば、米国特許第5,225,539号明細書)によって「ヒト化する」ことができる。
【0082】
バイオマーカーのイディオタイプを含む抗体断片は、当該技術分野で公知である技術によって作製することができる。たとえば、そのような断片は、制限されないが、抗体分子のペプシン消化によって作製することができるF(ab’)2断片、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を減らすことによって作製することができるFab’断片、抗体分子をパパインと還元剤で処理することによって作製することができるFab断片、およびFv断片を含む。合成抗体、例えば、化学合成によって作製される抗体は、本発明において有用である。
【0083】
本明細書に記述され、そして関連した技術において当業者に公知である標準的な参考資料は、免疫学的および非免疫性の技術の両方を記述し、特定のサンプルタイプ、抗体、タンパク質または分析に対するそれらの適合性を記述する。たとえば、免疫学および当業者に公知である免疫学的方法を採用するアッセイの一般原則を述べる標準的な参考資料には、以下が含まれる:たとえば、Harlow(ハーロー)およびLane(レーン)、Antibodies(抗体):A Laboratory Manual(研究所マニュアル)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(コールドスプリングハーバー研究所プレス社)、コールドスプリングハーバー、N. Y.(1999);ハーローおよびレーンは、Using Antibodies(抗体の使用):研究所マニュアル。コールドスプリングハーバー研究所プレス社、ニューヨーク;Coliganほか、編、Current Protocols in Immunology、ジョン・ワイリー・アンド・サン、ニューヨーク、NY(1992-2006);およびRoitt(ロアット)ほか、Immunology、第3版、Mosby-Year Book Europe Limited、ロンドン(1993)。
【0084】
たとえば、ペプチド合成技術の一般原則および当業者に公知である方法を述べる標準的な参考資料は以下を含む:たとえば、Chan(チャン)ほか、Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis (Fmoc固相ペプチド合成)、Oxford University Press(オックスフォード大学出版部)、オックスフォード、イギリス、2005;Peptide and Protein Drug Analysis(ペプチドおよびタンパク質の薬物分析)、編Reid, R,(リード,R.)、Marcel Dekker, Inc.(マルセル・デカー社)、2000;Epitope Mapping(エピトープ・マッピング)、編Westwood(ウェストウッド)ほか、オックスフォード大学出版部、オックスフォードで、英国、2000;Sambrookほか、分子クローニング:研究所マニュアル、第3版、コールドスプリングハーバー・プレス社、コールドスプリングハーバー、NY 2001;およびAusubel(オースベル)ほか、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons、NY、1994年)。
【0085】
対象体の拒絶反応の状態は、「慢性拒絶体」(CR)として、または「非拒絶体」(NR)または「安定」(S)として記載することができ、そして非拒絶体のカットオフインデックスに対するマーカーの濃度の比較によって決定されうる。「非拒絶体カットオフインデックス」は、対象体がCR拒絶反応の状態を有するとして分類されるものを超える、またはその外側の、数値またはスコアである。非拒絶体カットオフインデックスは、代替的に、「コントロール値」、「コントロールインデックス」として、または単に「コントロール」と呼ぶことができる。非拒絶体カットオフインデックスは、コントロール対象体集団の個々のマーカーの濃度であり、そして測定される各々のマーカーについて個別に考慮されてもよく;あるいはまた、非拒絶体カットオフインデックスは、マーカーの濃度の組合せであることができ、そして診断用に提供される対象体のサンプルにおけるマーカーの濃度の組み合わせと比較されうる。コントロール対象体集団は、正常または健康なコントロール集団であることができ、あるいは同種移植レシピエント集団で、同種移植片に拒絶反応を示さなかったか、または示していないものでありうる。コントロールは単一の対象体であることができ、いくつかの態様では、自家コントロールであることができる。コントロールまたはコントロールのプールは、一定、例えば、静的値によって表されることができ、または累積的、すなわちそれを得るのに用いられサンプル集団がサイトごとにもしくは時間とともに変わる可能性があり、そして追加的なデータポイントを組み込みうる。たとえば、中央データ貯蔵所、たとえば、集約的ヘルスケア情報システムなどは、種々のサイト(病院、臨床検査室など)で得られたデータを受け取って保存することができ、単一の病院、コミュニティクリニックで、エンドユーザー(すなわち個々の開業医、医学クリニックまたはセンターなど)が本発明の方法を用いるために、この累積的なデータセットを提供することができる。
【0086】
非拒絶体カットオフインデックスは、代替的に「コントロール値」、「コントロールインデックス」、あるいは単に「コントロール」と呼ぶことができる。いくつかの態様において、カットオフインデックスは、代謝物質カットオフインデックス(対象体の代謝物質プロファイリングのために)、ゲノムカットオフインデックス(対象体のゲノム発現プロファイリングのために)、プロテオミクスカットオフインデックス(対象体のプロテオミクスプロファイリングのために)などであるとしてさらに特徴付けることができる。
【0087】
「生体試料」は概して、対象体由来の体液または組織または器官のサンプルを意味する。たとえば、生体試料は、体液、たとえば、血液、血漿、リンパ液、血清、尿または唾液などでよい。組織または器官のサンプル、たとえば、非液体組織サンプルなどは、消化され、抽出され、またはさもなければ液状形態にすることができ−そのような組織または器官の例には、培養細胞、血球、皮膚、肝臓、心臓、腎臓、すい臓、ランゲルハンス島、骨髄、血液、血管、心臓弁、肺、腸、腸、脾臓、膀胱、ペニス、顔、手、骨、筋肉、脂肪、角膜などが含まれる。複数の生体試料は任意の単一の時点に収集することができる。生体試料または試料群は、同種移植の前、移植時、または移植後を含む任意の時点に対象体から採取することができる。生体試料は、核酸、たとえば、デオキシリボ核酸またはリボ核酸、またはそれらの組合せなどを単鎖か二本鎖形のいずれかで含むことができる。臓器がドナーから摘出される場合、ドナーの脾臓またはそれの一部分はドナーT細胞を得るために生体試料として保持されてもよい。生きているドナーから臓器が摘出される場合、血液サンプルが採取され、そこからドナーT細胞が得られうる。アロ反応性T細胞は、同種移植片の抗原(MHC複合体を含む)とのそれらの特異的相互作用を利用することによって単離することができる。アロ反応性T細胞の特異的な単離を可能にする方法は、参照により本明細書に組み込まれる、たとえば、PCT国際公開WO2005/05721号において、記述される。
【0088】
リンパ球は、リンパ幹細胞起源の有核の白血球である。リンパ球はT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞およびその他など、そして他の免疫調整細胞を含む。「T細胞」は、細胞媒介性免疫およびB細胞の刺激に関与するリンパ球のクラスである。刺激されたB細胞は、特異的抗原のために抗体を生産する。B細胞およびT細胞は双方とも、対象体において非自己抗原を認識するために機能する。非自己抗原は、同種移植片の他、ウイルス、細菌および他の感染性物質を含む。
【0089】
アロ反応性T細胞は、同種抗原に反応して活性化するT細胞である。異物抗原に反応性であるT細胞は、異物反応性T細胞である。異物抗原は、もう一つの種または種群の組織、たとえば、異種移植片など由来の抗原である。アロ反応性T細胞は、移植片拒絶免疫反応の前線である。それらは、外来性の移植片上に存在する同種異型抗原を認識する末梢血単核細胞(PBMC)のサブセット(およそ0.1〜1%)である。それらは、抑制されなければ移植片の拒絶反応および不全につながる抗移植片免疫反応のカスケードを始めるために、外来性の移植片を浸潤しうる。アロ反応性T細胞はしたがって、マーカーの他の供給源と比較して特異性を提供するか、または器官拒絶反応の段階の間を区別するマーカーの補完的な供給源として機能することができる。
【0090】
「対象体」または「患者」という語は概して、ヒトおよび他の霊長類、コンパニオンアニマル(ペット)、動物園および家畜の動物を含む哺乳類および他の動物を意味し、制限されないが、ネコ、イヌ、齧歯動物、ネズミ、マウス、ハムスター、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、家禽、その他が含まれる。対象体は、同種移植片拒絶反応の予測、評価または診断のために試験されるもの、または試験されたものを含む。対象体は、他の方法、本明細書に記述される方法、または現在の臨床診療の方法などを用いて以前に評価または診断されてもよく、または一般的な集団(コントロール対象体)の一部分として選択されてもよい。
【0091】
対象体におけるマーカーの倍率変化は、コントロールと比較して少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0またはそれよりも多くであってよく、またはそれらの間の任意の量でもあってよい。倍率変化は、コントロール値と比較した減少または増加を表しうる。
【0092】
1以上とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16またはそれ以上を含む。
【0093】
「下方制御」または「下方制御される」は、互換的に使うことができ、たとえば、遺伝子、核酸、代謝物質、転写物、タンパク質またはポリペプチドなどのマーカーのレベルの減少を意味しうる。「上方制御」、あるいは、「上方制御される」は互換的に使うことができ、たとえば、遺伝子、核酸、代謝物質、転写物、タンパク質またはポリペプチドなどのマーカーのレベルの増加を意味しうる。また、たとえば、シグナル伝達経路または代謝経路などの経路は、上方制御または下方制御されうる。
【0094】
一旦対象体が任意の方法(ゲノム、プロテオミクスまたは組合せ)によって、慢性拒絶体として、または慢性拒絶体になる危険があると識別されると、治療的処置が、同種移植に対する対象体の免疫反応を変えるために履行されうる。対象体は、より頻繁に臨床的値を追加的にモニタリングされるか、より一層感度の高いモニタリング方法を使用されてもよい。その上、対象体には、対象体の免疫反応を減少させるか、または増やすために、免疫抑制薬剤を投与することができる。たとえ、同種移植片拒絶反応を妨げるために対象体の免疫反応を抑える必要があるとしても、日和見性感染に対して保護するために免疫機能の適切なレベルも必要である。対象体に投与されうる種々の薬剤が既知である。たとえば以下を参照:Goodman(グッドマン)とGilman(ギルマン)の、The Pharmacological Basis of Therapeutics、11版。Ch 52、pp 1405-1431およびその中の引用;LL Brunton、JS Lazo(ラゾー)、KL Parker(パーカー)編。当業者に既知の医学生理学および薬理学の一般原則を示す標準的な参考資料は、以下のものを含む。すなわち、Fauciほか、編、Harrison 's(ハリソンの)Principles Of Internal Medicine、第14版、McGraw-Hill Companies, Inc.(1998)である。他の予防的および治療上の戦略は医学文献において概説される−たとえば、Kobashigawa(コバシガワ)ほか、2006。Nature Clinical Practice。Cardiovascular Medicine 3:203-21。
【0095】
したがって、本発明はさらに、対象体における同種移植片拒絶反応を予測し、評価し、または診断する方法を提供し、当該方法は、本発明に示されるとおり、1)CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5を包含する群から選択される1または複数のマーカーの増加または減少を測定する工程;および2)対象体の「拒絶反応の状態」を決定する工程を含み、ここで、対象体の「拒絶反応の状態」の決定は、コントロールマーカー発現プロファイルに対する対象体のマーカー発現プロファイルの比較に基づく。
【0096】
ゲノム核酸発現プロファイリング
対象体における慢性同種移植片拒絶反応を診断する方法は、本発明によって提供されるように、1)対象体由来の生体試料において1または複数のマーカーの発現プロファイルを決定する工程であって、該マーカーが、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5を包含する群から選択される、工程;2)1または複数のマーカーの発現プロファイルを非拒絶体コントロールプロファイルと比較する工程;および3)1または複数のマーカーの発現レベルがコントロールプロファイルと比較して上方制御されるか、または下方制御されるかどうかを決定する工程を含み、ここで、1または複数の該マーカーの上方制御または下方制御が、拒絶反応の状態を示す。
【0097】
ゲノム方法論を用い、106個の遺伝子を識別し、それらは7つの慢性拒絶反応(CR)サンプルおよび6つの非慢性拒絶反応/安定(S)サンプルの間で示差的に発現された(FDR<10%)。これらの遺伝子のうちの10個は、よりストリンジェントな統計的カットオフ値(FDR <5%および倍率変化>2)に基づいて、バイオマーカーパネルとしてさらに特定された。線形判別分析を使うこのゲノムバイオマーカーパネルの妥当性確認は、10個の遺伝子が一緒に、12個の新しい「テスト」サンプルを83%の感度および特異性で分類することができたことを示した。
【0098】
本明細書で用いられる「遺伝子発現データ」、「遺伝子発現プロファイル」、または「マーカー発現プロファイル」という語句は、生物学的サンプルにおける遺伝子または遺伝子群のセットの発現の相対的または絶対的なレベルに関する情報を意味している。遺伝子の発現のレベルは、遺伝子によってコードされたmRNAなどのRNAのレベルに基づいて決定されうる。あるいは、発現のレベルは、遺伝子によってコードされたポリペプチドまたはその断片のレベルに基づいて決定されうる。
【0099】
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、または「ヌクレオチドポリマー」は、当業者に容易に理解されるように、RNA、DNAまたはRNAおよびDNAの両方、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む、核酸の合成または混合されたポリマーを含むことができ、かつ化学的または生化学的に修飾されうるか、または非天然の、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含みうる。そのような修飾には、たとえば、類似体、ヌクレオチド間修飾、たとえば、非荷電連結(例えば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)、荷電連結(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、および修飾された連結(例えば、アルファアノマーポリヌクレオチド等)を有する一つ以上の天然に存在するヌクレオチドの標識、メチル化、置換が含まれる。また、水素結合および他の化学的相互作用により指定された配列に結合するそれらの能力に関してポリヌクレオチドに似た合成分子が含まれる。
【0100】
オリゴヌクレオチドは、可変的な長さの核酸を含み、それは特定の核酸の検出および/または増幅のための、プローブ、プライマーとして、およびマイクロアレイの製造において、役に立ちうる。オリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、PNA、またはたとえば米国特許第5,948,902号明細書に記載されるような他のポリヌクレオチド部分を含むことができる。そのようなDNA、RNAまたはオリゴヌクレオチドの鎖は、活性化されたモノマーの、不溶性の支持体と連結されうる伸長鎖への連続した付加(5'から3'または3'から5')によって合成されうる。多数の方法が、以降の個々の使用のためのオリゴヌクレオチドの合成について、またはたとえばアレイ内の不溶性の支持体の一部として、当技術分野において公知である(Bernfield MR.およびRottman FM. J. Biol. Chem.(1967)242(18):4134-43;Sulston J.ほか、PNAS(1968)60(2):409-415;Gillam(ジラン)S.ほか
、Nucleic Acid Res.(1975)2(5):613-624;Bonora GM.ほか、Nucleic Acid Res.(1990)18(11):3155-9;Lashkari DA.ほか、PNAS(1995)92(17):7912-5;McGall G.ほか、PNAS(1996)93(24):13555-60;Albert TJ.ほか、Nucleic Acid Res.(2003)31(7):e35;Gao X.ほか、Biopolymers(2004)73(5):579-96;およびMoorcroft(モーアクロフト)MJ.ほか、Nucleic Acid Res.(2005) 33(8):e75)。概して、オリゴヌクレオチドは使われている方法に応じてさまざまな状況の下で、活性化および保護されたモノマーの段階的添加を通して合成される。その後、特定の保護基は更なる伸長を可能にするために除去することができ、その後および一旦合成が完了したならば、望ましければ、すべての保護基を除去し、オリゴヌクレオチドを、完全な鎖の精製のためにそれらの固体支持体からを取り出してもよい。
【0101】
「遺伝子」は、特定の機能的な産物をコードし、かつ翻訳されずかつ転写されない配列をコード領域(コードに対して5’および3’)の近くに含みうる特定の染色体の特定の位置にあるヌクレオチドの規則正しい配列である。そのような非コード配列は、配列の転写および翻訳、または、たとえばイントロンのスプライシングに必要とされる調節配列を含むことができ、あるいは関心対象の突然変異が発生する以外の、まだそれらに帰属されていない何らかの機能を有する可能性がある。遺伝子はまた、1以上のプロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位、終結シグナルまたは他の調節エレメントも含みうる。遺伝子または転写物は核酸を含みうる。
【0102】
「マイクロアレイ」、「アレイ」または「チップ」という用語は、規定の場所で基材の表面に結合された、複数の規定された核酸プローブを意味している。基材は、好ましくは固体でありうる。マイクロアレイは概して、当技術分野において、たとえば、米国特許第5,143,854号〔Pirrung(ピラング)、5,424,186〔Fodor(フォーダー)〕、5,445,934(フォーダー)、5,677,195〔Winkler(ウィンクラー)〕、5,744,305(フォーダー)、5,800,992(フォーダー)、6,040,193(ウィンクラー)そして、フォーダーほか1991、Science、251:767-777において記述されている。これら参照文献の各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0103】
「ハイブリダイゼーション」は、一つ以上のポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが順序づけられた様式(配列特異的)で相互に作用して、水素結合によって安定化される複合体を形成する反応 - 「ワトソン-クリック」塩基対合とも呼ばれる - を含む。変形塩基対合はまた、非標準水素結合を通して起こることがあり、フーグスティーン塩基対合を含む。一部の熱力学的、イオン性またはpHの条件下で、特にリボ核酸の三重らせんが起こる場合がある。これらおよび他の変形水素結合または塩基対合が当技術分野において公知であり、たとえば、参照により本明細書に組み入れられるLehninger(レーニンジャー)-Principles of Biochemistry、第3版〔Nelson(ネルソン)およびCox(コックス)、編、Worth Publishers(ワース・パブリッシャーズ)、ニューヨーク。〕に見出すことができる。
【0104】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で実行することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、任意の2つの核酸分子がお互いにハイブリダイズする難しさを含む。ストリンジェンシーは、たとえば、ハイブリダイゼーションが起こる温度を上げることによって、ハイブリダイゼーションが起こるイオン濃度を減少させることによって、またはそれらの組合せによって、増大させることができる。ストリンジェントな条件下では、互いに少なくとも60%、65%、70%、75%またはそれ以上同一な核酸分子は、互いにハイブリダイズしたまま残るが、同一性の割合が低い分子はハイブリダイズしたまま残ることができない。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、0.2×SSC、0.1%のSDSにおける、50℃、55℃、60℃、65℃、またはその間の温度での一回以上の洗浄があとに続く、およそ44〜45℃での6倍の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーションである。
【0105】
2つの核酸の間のハイブリダイゼーションは、逆平行構成で起こり得- これは「アニーリング」と呼ばれる- 、対合した核酸は相補的と説明される。ハイブリダイゼーションが鎖のうちの1本である第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間で起こることが可能である場合、二本鎖ポリヌクレオチドは「相補的」でありうる。一般に認められた塩基対合則に従って、1つのポリヌクレオチドがもう一つと相補的である程度は相同性と呼ばれ、互いに水素結合すると予想される対向する鎖における塩基の割合に関して定量化可能である。
【0106】
概して、配列特異的ハイブリダイゼーションにはハイブリダイゼーションプローブが関与し、それは定義された配列に特異的にハイブリダイズすることができる。そのようなプローブはわずか1個または数個のヌクレオチドが異なっている配列を区別するように設計することができ、このようにして、高度な特異性を提供する。検出および配列判別を連関させる戦略は、「分子ビーコン」の使用であり、それによって、ハイブリダイゼーションプローブ(分子ビーコン)は、3’および5’にレポーターおよびクエンチャー分子、ならびに、介在配列にとっての適した結合標的の不在によりプローブがヘアピンループを形成するように、3’および5’に相補的な配列をもつ。このヘアピンループは、密接に接近するようリポーターおよびクェンチャーを保ち、蛍光放出を減らす、フルオロフォア(リポーター)のクエンチングをもたらす。しかし、分子ビーコンが標的にハイブリダイズした場合、フルオロフォアおよびクェンチャーは十分に離れて、蛍光がフルオロフォアから発せられることを可能にする。
【0107】
ハイブリダイゼーションで使われるプローブは、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよびRNAオリゴヌクレオチドおよびペプチド核酸を含むことができる。ハイブリダイゼーション条件および特異的なプローブにハイブリダイズするマーカーを特定する方法は、当技術分野で記述されている - 例えば、Brown(ブラウン)T.「Hybridization Analysis of DNA Blots 」Current Protocols in Molecular Biology. FM Ausubel(オースベル)ほか、編、Wiley & Sons(ワイリー・アンド・サン社)(2003). doi: 10.1002/0471142727.mb0210s21参照。本発明に使用するのに適したハイブリダイゼーションプローブは、約10〜約400ヌクレオチド、あるいは約20〜約200ヌクレオチド、または約30〜約100ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは修飾された核酸を含む。
【0108】
特異的な配列は、プライマーまたはプローブを用いてハイブリダイゼーションを行い、このハイブリダイゼーションをその後検出することにより確認されうる。
【0109】
「プライマー」は、短いポリヌクレオチドを含み、通常、標的を用いたハイブリダイズによって関心対象のサンプル中に存在する標的または「テンプレート」と結合して、その後標的と相補的なポリヌクレオチドの重合を進める、遊離3'-OH基を含む。「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、「上流」および「下流」のプライマーからなる「プライマーの対」または「プライマーのセット」、およびDNAポリメラーゼ、および典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素などの重合の触媒を使用して、標的ポリヌクレオチドからコピーが複製される反応である。PCRのための方法は、当技術分野において周知であり、たとえば、Beverly(ベヴァリー)SM. Enzymatic Amplification of RNA by PCR (RT-PCR) in Current Protocols in Molecular Biology〔分子生物学の現在のプロトコルのPCR(RT-PCR)によるRNAの酵素の増幅〕。FMオースベルほか、編、ワイリー・アンド・サン社(2003)。doi: 10.1002/0471142727.mb1505s56において教示されている。複製されたコピーの合成は、標識またはタグ、たとえば、蛍光分子、ビオチンまたは放射性分子をもつヌクレオチドの組み込みを含むことができる。複製されたコピーはその後、従来の方法を用いてこれらのタグによって検出することができる。
【0110】
プライマーを、サザンまたはノーザンブロット分析などのハイブリダイゼーション反応において、プローブとして使うこともできる〔たとえば、Sambrook、J.、Fritsh、E. F.およびManiatis、T. Molecular Cloning(分子クローニング):研究所マニュアル 第2版、コールドスプリングハーバー研究所、コールドスプリングハーバー研究所プレス、コールドスプリングハーバー、N.Y.、1989参照〕。
【0111】
本明細書で用いられる「プローブセット」(または「プライマーセット」)は、一つ以上の発現された核酸または発現された遺伝子を検出するのに用いることができる一群のオリゴヌクレオチドを意味している。検出は、たとえば、PCRおよびRT-PCRにおけるような増幅を通して、またはマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションを通して、または一本鎖または二重鎖核酸の選択的な酵素分解に基づくアッセイにおけるような選択的な破壊および保護を通して行われうる。プローブセット中のプローブは、一つ以上の蛍光性、放射性、または他の検出可能な部分(酵素を含む)を用いて標識することができる。プローブが所望の遺伝子を選択的に検出するのに十分に大きい限り、プローブは任意のサイズで良い - 一般に、約15から約25ヌクレオチドまで、または約30ヌクレオチドまでのサイズ範囲が十分なサイズである。プローブセットは、溶液中にあってよく、例えば、多重PCRに用いられるものである。あるいは、アレイまたはマイクロアレイにおける場合のように、プローブセットは固体表面に付着することができる。
【0112】
本発明の一部の態様において、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5のうちの一つ以上が包含されるゲノムマーカーのセットによって表される核酸の検出のためのプローブセットが提供される。そのようなプローブセットは、対象体の拒絶反応状態を決定することに役立ちうる。プローブセットは、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5のうちの一つ以上に対応する核酸配列の特異的増幅(例えば、PCRまたはRT-PCR)用の、一つ以上のプライマー対を包含しうる。本発明の別の態様において、プローブセットは、マイクロアレイの一部である。
【0113】
配列の区別および検出のための多数の他の方法が当技術分野において既知であることが理解され、その一部はさらに詳細に以下で記述される。アレイ化したプライマー伸長ミニ配列決定、タグマイクロアレイおよび配列特異的伸長などの反応をマイクロアレイ上で実行できることも理解される。そのようなアレイベースの遺伝子型解析プラットホームの1つは、マイクロスフェアベースのタグイット(tag-it)ハイスループットアレイである(Bortolin S.ほか、2004、Clinical Chemistry 50:2028-36)。この方法は、PCRによってゲノムDNAを増幅し、その後広くタグを付けられたプライマーを用いた配列特異的プライマー伸長が続く。産物を次いで、タグイットアレイ上で選別し、Luminex(ルミネックス)xMAPシステムを使用して検出する。
【0114】
配列内のヌクレオチドの、任意の数字表示が特定の配列に関するものであることは、当業者に理解される。また、同じ位置は、配列に番号付けする方法および選択される配列に応じて異なる数字表示が割り当てられうる。さらに、挿入または欠失のような配列の変化は、変異部位およびその周辺の特定のヌクレオチドの相対的な位置、次いで数字表示を変更しうる。たとえば、アクセッション番号CH471094.1、AC007068.17、AC91814.10、AY142147.1、BC005254.1、AB015628.1、AL550908.3、BG503026.1、BG540007.1、BG779277.1、X96719.1、DQ892509.2、DQ895723.2によって表される配列は、すべてヒトCLEC2Bヌクレオチド配列を表すが、一部の配列の違い、およびそれらの間の番号付けの違いを有しうる。もう一つの例として、アクセッション番号NP_005118.2、EAW96127.1、BAA76495.1、BAG36638.1、CAA65480.1、Q92478.2によって表される配列は、すべてヒトCLEC2Bポリペプチド配列を表すが、それらの間で、一部の配列の違いおよび番号付けの違いを有しうる。
【0115】
関心対象の遺伝子の一つ以上の核酸配列が提供された場合、上記の遺伝子の任意のものを含む関心対象の任意の遺伝子の発現の特異的検出のためのプローブ、プライマーまたはプローブセットの選定および/または設計は、関連する技術分野の当業者の能力の範囲内である。さらに、いくつかのプローブ、プライマーまたはプローブセットのうちの任意のもの、あるいは複数のプローブ、プライマーまたはプローブセットは、関心対象の遺伝子を検出するのに用いられ、たとえば、アレイは単一の遺伝子転写物のために複数のプローブを含むことができる - 本明細書に記載される本発明の局面は、例示されたいかなる特定のプローブにも限定されない。
【0116】
配列同一性または配列類似性は、DNASISの中で提供されるような、ヌクレオチド配列比較プログラム(DNAもしくはRNA配列、またはその断片もしくは部分用)またはアミノ酸配列比較プログラム(タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド配列、またはその断片もしくは部分用)を使用して決定されうる(たとえば、しかし限定されるものではないが、以下のパラメータを使用する:GAPペナルティ5、トップ斜線の数5、固定されたGAPペナルティ10、k-ダブル(tuple)2、フローティングギャップ10およびウィンドゥサイズ5)。しかしながら、比較のための配列整列の他の方法は、当技術分野において周知である。たとえば、Smith(スミス)およびWaterman(ウォーターマン)のアルゴリズム(1981、Adv. Appl. Math. 2:482)、Needleman(ニードルマン)およびWunsch(ブンシュ)(J. Mol. Biol. 48:443、1970)、Pearson(ピアソン)& Lipman(リップマン)(1988、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444)、およびこれらのアルゴリズム(例は、GAP、BESTFIT、FASTA、およびBLAST)のコンピューター化された実施、または手動の整列および目視検査。
【0117】
関心対象の核酸または遺伝子、ポリペプチドまたは配列が同定され、および配列(または遺伝子、ポリペプチド、配列、もしくは同様のもの)の部分または断片が提供された場合、類似または実質的に類似である他の配列は、上記で説明したプログラムを使用して同定されうる。たとえば、マイクロアレイまたはプローブ配列を構築する場合、マイクロアレイ実験により「ヒット」(特定の場所でのプローブが、サンプル中の一つ以上の核酸とハイブリダイズする)が確認された場合に(マイクロアレイの製造者または生産者のいずれかにより、または製造者により提供されるデータベース - たとえばHuman Genome U133 Plus 2.0 Arrayの製造者であるAffymetrixのNetAffxデータベース - から)プローブの配列が明らかになるような、配列および位置が公知である。配列供給源の同一性が提供されない場合、それは一つ以上のデータベースの配列ベース検索においてプローブの配列を用いて決定されうる。プロテオミクスアッセイ、たとえばiTRAQによって特定されるペプチドまたはペプチド断片に関して、このペプチドまたは断片の配列を、上述のアミノ酸配列のデータベースに照合するために用いることができる。そのようなデータベースの例はNational Centre for Biotechnology Information(国立バイオテクノロジー情報センター)によって維持されるもの、あるいはEuropean Bioinformatics Institute(欧州バイオインフォマティクス研究所)によって維持されるものを含む。
【0118】
タンパク質またはポリペプチド、核酸またはその断片または部分は、その配列が同じ系統的種、属、科または目で見つかる他のものと区別することができる場合に、特異的に特定されると考えることができる。そのような区別は、配列の比較によって特定することができる。配列または配列群の比較は、BLASTアルゴリズムを使用して行われうる〔Altschul(アルチュール)ほか、1009. J. Mol. Biol 215:403-410〕。BLAST検索はクエリ配列と特定の配列または配列群との、または配列のより大きなライブラリーまたはデータベース(例えば、GenBankまたはGenPept)との比較を可能にし、そして100%の同一性を示す配列だけでなく、より低い程度の同一性を有する配列も同定する。たとえば、複数のアイソフォーム(たとえば、別々の遺伝子、もしくは遺伝子由来核酸転写物の異なるスプライシング、または翻訳後プロセシングのいずれかから生じる)を有するタンパク質に関し、1つのアイソフォームに存在し、かつ一つ以上の他のアイソフォームには存在しないまたは検出されない構造、配列またはモチーフの特異的な検出によって、アイソフォームが同じまたは異なる種に由来する他のアイソフォームから区別される場合、アイソフォームは特異的に同定することができる。
【0119】
本発明の方法へのアクセスは、たとえば、個々のマーカー試験を実施する臨床検査室または他の試験施設によってエンドユーザーに提供されうる - 生物学的サンプルが個々の試験および分析が実施される施設に提供されて、予測方法が適用される;あるいは、開業医が臨床検査室からのマーカー値を受け取って、現場での実行またはインターネットに基づく実行を用いて本発明の予測方法にアクセスしうる。
【0120】
たとえば、複数の中央値、標準誤差、標準偏差などの統計的パラメータの決定、ならびに本明細書に記述する他の統計分析が公知であり、かつ当業者の技術の範囲内である。本明細書に開示されるように、特定の係数、値または指数の使用は単に例示であり、本発明の種々の局面の限定を束縛することを意図しない。
【0121】
たとえば、マイクロアレイ実験、または複合的なRT-PCR実験から得られた遺伝子発現データの多数のものの解釈は、膨大な作業である場合があるが、体系的な特長に光を当てる方法でデータを系統立てるように設計されたアルゴリズムおよび統計ツールを用いることにより、大いに容易化される。視覚化ツールも、たとえば、異なる発現を色の様々な強さおよび色相によって表すゆえに有用である〔Eisen(アイゼン)ほか、1998、Proc Natl Acad Sci 95:14863-14868)。利用できるアルゴリズムおよび統計ツールは、アレイおよび結果として生じるデータセットの複雑さの増加、および処理速度の増加、コンピュータメモリの増加、およびこれらのコストの相対的減少とともに、高度化されてきている。
【0122】
遺伝子発現プロファイルの数学的および統計的な分析は、いくつかのもの - 経路または生物システムの領域における同調的な調節を示す遺伝子グループの識別、2つ以上の生物学的サンプル間の類似点および違いの識別、対象体における特定の事象間またはプロセス間を区別する遺伝子発現プロファイルの特徴の特定など- を成し遂げうる。これは、治療レジメンの有効性または治療レジメンにおける変更を評価すること、特定の病状の進行をモニタリングまたは検出すること、2つの病状間、そうでなければ臨床的に類似した(またはほとんど同一の)病状間を区別することなどを含みうる。
【0123】
クラスタリング法が既知であり、マイクロアレイデータセット、たとえば、階層的クラスタリング、自己組織化マップ、k-平均法または確定的アニーリングに適用されている。〔アイゼンほか、1998、Proc Natl Acad Sci USA 95:14863-14868;Tamayo(タマヨ)、P.ほか1999. Proc Natl Acad Sci USA 96:2907-2912;Tavazoie、S.ほか1999. Nat Genet 22:281-285;Alon、U.ほか1999. Proc Natl Acad Sci USA 96:6745-6750)。そのような方法は、同調的な調節を示す、遺伝子発現プロファイルにおける遺伝子の群を特定するために役立つ可能性があり、また、その他の機能は不明な、同調的な調節を示す他の遺伝子と同じ経路またはシステムに関与すると思われる新規な遺伝子の同定に役立つ可能性もある。
【0124】
生物学的サンプルにおける遺伝子発現のパターンは、その機能的な状態および同一性の特徴的かつ理解しやすい分子像を提供することもできる〔DeRisi(デリシ)1997;Cho 1998;Chu 1998;Holstege 1998;Spellman(スペルマン)1998〕。関連した遺伝子発現パターンを有する2つの異なるサンプルはしたがって、互いに生物学的および機能的に類似している可能性が高く、逆に有意な違いを示す2つのサンプルは、示された複雑な発現パターンによって区別されうるだけでなく、例えば同種移植拒絶反応などの特定の病理学的状態または他の生理的状態の指標である遺伝子産物または転写物の診断サブセットを示しうる。
【0125】
マイクロアレイデータセットに対する複数の数学的および/または統計的分析法の適用は、重要なマーカーの変動するサブセットを示す可能性があり、どの方法が「最良」または「より正確」であるかについて、不確実性がもたらされる。数学に関係なく、根底にある生物学はデータセットにおいて同じものである。複数の数学的および/または統計的方法をマイクロアレイデータセットに適用し、全体と比較して共通のマーカーについて各々の統計的に有意なサブセットを評価することによって、不確実性は低下し、そして臨床的に関連した中心的なマーカーグループが特定される。
【0126】
ゲノム発現プロファイリングマーカー(「ゲノムマーカー」)
本発明は、慢性同種移植拒絶反応を含む、同種移植拒絶反応の評価、予測または診断に役立つマーカーの中心的なグループを提供し、それには、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5が含まれる。
【0127】
検出され、定量化され、かつ適用された3回の改変t検定のうちの少なくとも1回について、非拒絶反応移植(NR)コントロールと比較して全血CRサンプルにおいて統計的に有意な倍率変化を示すことが見いだされた22の遺伝子または転写物(表6)のうち、10のマーカーはユニオンセットにある(3回の試験全てについて統計的に有意である)。22のより大きなセットにおける各々のマーカーについての倍率変化は少なくとも2倍であり、問題の遺伝子または転写物の増加/上方制御または減少/下方制御を示しうる。
【0128】
コリンホスホトランスフェラーゼ1(CPT、CPT1)遺伝子は、脂質代謝と、おそらく細胞増殖の調節に関係する生成物をコード化する。ヒトのCHPT1のヌクレオチド配列は既知である(例えば、GenBankアクセッション番号BC020819、BC050429、NW_001838061とNW_925395)。
【0129】
C-タイプレクチンドメインファミリー2、メンバーB(CLEC2B、CLECSF2)遺伝子は、C-タイプレクチン/C-タイプレクチン様ドメイン(CTL/CTLD)スーパーファミリーのメンバーをコード化する。このファミリーのメンバーは、共通のタンパク質倍率を有し、細胞接着、細胞-細胞シグナリング、グリコプロテインターンオーバー、および炎症および免疫反応での役割などの多様な機能をもつ。コード化されたタイプ2膜貫通タンパク質は、細胞活性化抗原として機能することができる。ヒトのCLEC2Bのヌクレオチド配列は公知である(例えば、GenBank、アクセッション番号CH471094.1、AC007068.17,AC91814.10、AY142147.1、BC005254.1、AB015628.1、AL550908.3、BG503026.1、BG540007.1、BG779377.1、X96719.1、DQ892509.2、DQ895723.2)。
【0130】
RPS26(LOC644166/LOC644191/LOC728937/)は、40Sリボソームタンパク質26に類似したリボソームタンパク質をコード化することができる。この遺伝子座に関連したヌクレオチド配列が公知である(例えばGenBank アクセッション番号XM001721435.1、AC000134.1)。
【0131】
グアニル酸結合タンパク質3(GBP3、DKFZp686E0974、DKFZp686L15228、FLJ10961)をコード化している遺伝子は、グアニル酸結合タンパク質ファミリーのメンバーをコード化し、そして胚中心キナーゼファミリーのメンバーと相互作用をもちうる。ヒトのGBP3のヌクレオチド配列は既知である(例えば、GenBankアクセッション番号NW_001838589、NW_921795およびNM_018284)。
【0132】
KLRC1/KLRC2(キラー細胞レクチン様レセプターサブファミリーC、メンバー1/キラー細胞レクチン様レセプターサブファミリーC、メンバー2)ファミリーの遺伝子は、NK細胞で優先して発現される膜貫通タンパク質である生成物をコード化し、そしてNK細胞、およびいくつかの細胞障害性のT細胞によるMHCクラスI HLA-E分子の認識のためのレセプターとして役割を演じる。ヒトのKLRC1のヌクレオチド配列は公知である(例えば、GenBankアクセッション番号:NM_213658、NM_213657、NM_007328、NM_002259、BC012550、NW_001838052およびNW_925328)。ヒトのKLRC2のヌクレオチド配列は公知である(例えば、GenBankアクセッション番号:NM_002260、NW_001838052、NW_925328、BC112039、BC093644とBC106069)。
【0133】
遺伝子ZCCHC2(ジンクフィンガー、CCHCドメイン含有2)はまた、FLJ20281;KIAA1744;MGC13269;DKFZp451A185として公知である。ヒトのZCCHC2のヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号:NM_017742、NW_001838469、NW_927106、NT_025028.13とBC006340)。
【0134】
PDK4(ピルビン酸塩デヒドロゲナーゼキナーゼ、イソ酵素4)遺伝子は、PDK/BCKDKプロテインキナーゼのファミリーのメンバーであり、そしてミトコンドリアタンパク質をコード化する。それはE1_アルファサブユニットのリン酸化によってミトコンドリアピルビン酸塩デヒドロゲナーゼ複合体を抑制し、このようにして、糖代謝の調節に関与する。ヒトのPDK4のヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号:NM_002612、NW_001839064、NT_079595、NW_923574とBC040239)。
【0135】
OSBP2(オキシステロール結合タンパク質2)−この遺伝子によってコード化される膜結合タンパク質は、プレクストリン相同(PH)ドメインおよびオキシステロール結合領域を含む。ヒトのOSBP2のヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号:NM_030758、NM_002556、BC118914とAF288742)。
【0136】
IFIT5の遺伝子産物(テトラトリコペプチドリピート5を有するインターフェロン誘導タンパク質)は、インターフェロンにより調節されたシグナリングおよび/または増殖での役割をもちうる。ヒトのIFIT5のヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号:NM_012420、BC025786、CR457031、NW_001838005、NW_924884とNT_030059)。
【0137】
本発明は、対象体における同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に関連した遺伝子発現プロファイルを提供する。遺伝子発現プロファイルの要素のいくつかが既存の技術で個々に公知であるかもしれないが、それらの発現レベルの変化の特定の組合せ(コントロールと比較した増加または減少)は、対象体での同種移植片拒絶反応の評価、予測または診断に役立つ新しい組合せを含む。
【0138】
一旦、対象体が慢性拒絶体として同定される、あるいは慢性拒絶体となるリスクがあると同定されると、同種移植片に対する対象体の免疫反応を変えるために治療的な処置を実行しうる。対象体は、より頻繁な臨床的値の追加的なモニタリング、またはより一層感度の高いモニタリング方法の使用を受けることができる。その上、対象体は、対象体の免疫反応を増加させるか、または減少するために、免疫抑制薬剤を投与されうる。たとえ、対象体の免疫反応が同種移植片拒絶反応を防ぐために抑制される必要があるとしても、日和見性の感染から保護するために、免疫機能の適当なレベルも必要である。対象体に投与してもよい種々の薬剤は公知である。すなわち、例えば、グッドマンとギルマンの、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版 Ch 52、pp 1405-1431とその中の引用;LL Brunton、JS Lazo、KL Parker編を参照。他の予防的および治療的な戦略は医学文献において概説されている-例えば、コバシガワほか2006。Nature Clinical Practice。Cardiovascular Medicine 3:203-21である。
【0139】
本発明のバイオマーカーに関連した生物学的経路
本発明のバイオマーカーは、特に免疫プロセスおよび同種移植片拒絶反応に対する対象体の応答の影響を受けるかもしれない生物学的経路と関係している。理論に束縛されることを望まないが、図3はバイオマーカーKLRC2、KLRC1、PKD4およびCHPT1の間の経路ベースの関係を示す。
1.NKG2C(KLRC2)→CD94→NKG2A(KLRC1)
2.NKG2C/NKG2A(KLRC2/KLRC1)→SHP1→ESR1→PDK4およびCHPT1
3.ESR1→PDK4およびCHPT1
【0140】
KLRC2、KLRC1、PKD4とCHPT1は従って、同種移植片拒絶反応プロセスでの生物学的役割をもち、治療上の目標である。
【0141】
理論に束縛されることを望まないが、HLA遺伝子/多形性は、移植の結果(例えば、拒絶反応を示す、拒絶反応を示さない)に影響を及ぼすかもしれない。
【0142】
大規模遺伝子発現分析法、例えばマイクロアレイは、相互作用(しばしば2以上の程度の分離を有する)をもつ遺伝子のグループが一緒に発現され、そして共通の調節要素をもつことがあることを示した。そのような同調的な調節の他の例は、当該技術分野で公知である。例えば、酵母のジオーキシーシフト(DiRisiほか、1997、Science 278:680-686;アイゼンほか、1998。Proc Natl Acad Sci 95:14863-14868)を参照。
【0143】
理論に束縛されることを望んでいないが、本明細書に記述される他の遺伝子または転写物は、例えば、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2またはIFIT5であり、同種移植片拒絶反応プロセスでの生物学的役割をもち、そして治療上の目標である。
【0144】
本発明はまた、対象体の拒絶反応の状態を予測または診断するのに使用するためのキットを提供する。キットは、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5のうちの1つまたは1つ以上の特異的かつ定量的な検出のための試薬を、そのような試薬の使用と結果として生じるデータを分析する方法のための説明とともに含むことができる。キットは、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5のうちの1つまたは1つ以上の特異的で定量的な検出のための試薬を含むことができる。キットは、対象体の拒絶反応の状態を予測または診断するために単独で用いることができ、あるいは臨床的変数を決定するための他の方法または適切であると考えられうる他のアッセイとともに使うことができる。キットは、たとえば、マーカーに選択的にハイブリダイズすることができる標識されたオリゴヌクレオチドを含んでもよい。キットは、たとえば、マーカーの領域を(例えばPCRによって)増幅するために使用可能なオリゴヌクレオチドを更に含むことができる。対象体の拒絶反応の状態を予測または診断するために、キットの結果を、拒絶反応を示さないカットオフのインデックスを提供する他のアッセイの結果と組み合わせるのに役に立つ説明または他の情報もまた提供されうる。キットはさらに、例えばアロ反応T細胞の単離のための試薬、およびアロ反応性細胞の単離のための機器またはツール(例えば、磁気ビーズ、血液採取のためのチューブ、緩衝剤およびその他)を、それらの使用のための説明とともに含むことができる。
【0145】
アロ反応性T細胞プロファイリング
アロ反応性リンパ球、例えばT細胞またはTリンパ球で発現される核酸のプロファイリング(「アロ反応性T細胞プロファイリング」)はまた、同種移植片拒絶反応を診断するために使われうる。アロ反応性T細胞プロファイリングは、単独で、またはゲノム発現プロファイリング、プロテオミクスプロファイリングまたはメタボロミクスプロファイリングと組み合わせて用いることができる。
【0146】
アロ反応性T細胞は、移植片拒絶免疫反応の前線である。それらは、外来性の移植片の上で存在する同種異型抗原を認識する末梢血単核細胞(PBMC)のサブセット(およそ0.1〜1%)である。それらは、外来性の移植片を浸潤して、抗移植片免疫反応のカスケードを始める可能性があり、抑制されない場合それは移植片の拒絶反応および不全につながる。アロ反応性T細胞は従って、マーカーの他の供給源と比較して特異性を提供するか、器官拒絶反応の段階同士を区別するマーカーの補完的な供給源として機能することができる。アロ反応性T細胞集団からの遺伝子発現プロファイルはさらに、様々な臓器移植片にわたって用いることができ、また他の理由(アレルギー、ウイルス感染など)による器官拒絶反応および免疫活性化と区別するのに役立ちうる。
【0147】
アロ反応性T細胞プロファイリングはまた、代謝物質(「メタボロミクス」)、ゲノムまたはプロテオミクスプロファイリングと組み合わせて用いることができる。対象体のゲノムにおける、単一塩基の変化または多形性などのマイナーな変更またはそのゲノムの発現(例えば、示差的な遺伝子発現)は、対象体の小分子代謝物質プロファイルでの急速な反応をもたらす場合がある。小分子代謝物質はまた、環境変化に迅速に反応性でありえ、環境変化の数秒から数分以内に有意な代謝物質変化が明らかになるが、対照的に、タンパク質または遺伝子発現変化は、明らかになるのに数時間あるいは数日がかかる場合がある。臨床的変数のリストは、たとえば、心血管疾患、肥満またはメタボリックシンドロームをモニタリングするのに用いられうる、いくつかの代謝物質を示し−例えば、コレステロール、ホモシステイン、ブドウ糖、尿酸、マロンジアルデヒドおよびケトン体を含む。小分子代謝物質の他の非限定的な例は、表3にリストされる。
【0148】
アロ反応性T細胞からのマーカーは、同種移植片拒絶反応の診断のために単独で使ってもよく、または全血からのマーカーと組み合わせて使ってもよい。
【0149】
同種移植片拒絶反応を診断するためのプロテオミクスプロファイリング
プロテオミクスプロファイリングもまた、同種移植片拒絶反応を診断するために使うことができる。プロテオミクスプロファイリングは、単独で、またはゲノム発現プロファイリング、代謝物質プロファイリングまたはアロ反応性T細胞プロファイリングと組み合わせて使うことができる。
【0150】
いくつかの態様において、本発明は、対象体における慢性同種移植片拒絶反応を診断または決定する方法を提供し、該方法は、1)対象体由来の生体試料において1または複数のプロテオミクスマーカーの発現プロファイルを決定する工程であって、該プロテオミクスマーカーが、IGFBP3、MST1、CDH5、C1QB、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9によってコード化されるポリペプチドを包含するグループから選択される、工程;2)1または複数のプロテオミクスマーカーの発現プロファイルをコントロールプロファイルと比較する工程;および3)1または複数のプロテオミクスマーカーの発現レベルがコントロールプロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうか決定する工程を含み、ここで、増加または減少により1または複数のプロテオミクスマーカーが慢性的拒絶反応の状態であることが示される。
【0151】
本発明はまた、本発明によって提供されるように、対象体で同種移植片拒絶反応を予測、評価または診断する方法を提供し、該方法は、1)IGFBP3、MST1、CDH5、C1QB、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9によってコード化されるポリペプチドを包含する群から選択される1または複数のプロテオミクスマーカーの増加または減少を測定する工程;および2)対象体の慢性「拒絶反応状態」を決定する工程を含み、ここで、対象体の「拒絶反応状態」の決定は、コントロールプロテオミクスマーカー発現プロファイルに対する対象体のプロテオミクスマーカー発現プロファイルの比較に基づく。
【0152】
タンパク質の識別と定量化のための数々の方法が目下利用でき、たとえば、グリコペプチド捕獲〔Zhang(チャン)ほか、2005。Mol Cell Proteomics 4:144-155〕、多次元的タンパク質同定技術(Mud-PIT)Washburn(ウォッシュバーン)ほか、2001 Nature Biotechnology(19:242-247)、そして表面強化されたレーザー脱離イオン化(SELDI-TOF)〔Hutches(ハッチズ)ほか、1993。Rapid Commun Mass Spec 7:576-580〕である。複数のタンパク質サンプルの定量化を可能にするいくつかの同位元素標識化法、例えば相対的および絶対的なタンパク質定量化のためのアイソバリックタグ(iTRAQ)〔Ross(ロス)ほか、2004、Mol Cell Proteomics 3:1154-1169);同位元素コード化アフィニティタグ(ICAT)〔Gygi(ギジ)ほか、1999、Nature Biotecnology 17:994-999〕、同位元素コード化タンパク質標識化(ICPL)〔Schmidt(シュミット)ほか、2004。Proteomics(プロテオミクス)5:4-15)、そしてN末端同位元素タグ付け(NIT)(Fedjaevほか、2007、Rapid Commun Mass Spectrom 21:2671-2679;Namほか、2005。J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 826:91-107)などは、バイオマーカースクリーニング/識別研究に特に役立つ特色であるそれらの高い処理性能のゆえにますます一般的になった。
【0153】
プロテオミクス方法論を用い、血漿サンプル中の14の最も豊富なタンパク質の除去とiTRAQ-MALDI-TOF/TOFの感度との組合せはまた、大規模なスクリーニングおよびCRプロテオミクスバイオマーカーの定量分析のためのもう一つの効果的アプローチであることがわかった。手短に言うと、対象体の血漿サンプル(コントロールおよび同種移植レシピエント)は、14の最も豊富なタンパク質が除去され、iTRAQ-MALDI-TOF/TOFによって定量的に分析された。この分析は、CRサンプルとSサンプルの少なくとも2/3で検出された129の中程度から低度の豊富なタンパク質(グループ)の識別をもたらした。そのうち、14は統計的に有意な、示差的な相対的濃縮(p値<0.5)を有した。14の候補のうちの10はさらに、0.03のp値カットオフに基づいて、「トップの」タンパク質として選択された。一緒にプロテオミクスバイオマーカーパネルを作る10のタンパク質は、妥当性確認プロセスにおいて83%の感度と特異性を示した。
【0154】
このようにして、単一の候補バイオマーカーは、グループ(比較的小さい倍率変化が若干ある)を明確に区別しないかもしれないが、特定されたマーカーを一緒にすると、およそ83%の感度とおよそ83%の特異性の分類を成し遂げた。
【0155】
iTRAQは、慢性同種移植片拒絶反応のプロテオミクスマーカーであるタンパク質、ペプチドまたはその断片を検出するか、レベルを決定するのに用いられる1つの例示的な方法である。本明細書に記述されている他の方法、たとえば、ELISAなどの免疫学的ベースの方法は、プロテオミクスマーカーの検出、またはレベルの決定に役に立つ場合がある。あるいはまた、特異的抗体は、一つ以上のタンパク質、アイソフォーム、前駆体、ポリペプチド、ペプチド、それらの部分または断片に対して上昇するかもしれず、そして特異的抗体はサンプル中の一つ以上のプロテオミクスマーカーの存在を検出するのに用いられた。適切なペプチドを選択する方法、抗血清の生産のために動物(例えばマウス、ウサギなど)を免疫化する方法、ならびに/またはモノクローナル抗体の生産のためにハイブリドーマを生産およびスクリーニングする方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書に開示される引用文献に記述されている。
【0156】
プロテオミクス発現プロファイリングマーカー(「プロテオミクスマーカー」)
1または複数の前駆体、スプライスバリアント、アイソフォームは単一の遺伝子によってコード化されうる。遺伝子とアイソフォーム、コード化される前駆体と変異体は、それぞれのプロテイングループコード(PGC)の下で、表8に示される。
【0157】
CFHR2(補体因子H関連タンパク質2)によってコード化されるポリペプチドは、補体Hに構造的、そして免疫学的に関連する血清タンパク質を含む。CFHR2をコード化するヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBAnkアクセッション番号NM_005666 BC022283.1、X64877.1とBG566607.1)。CFHR2によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列(例えばGenPeptアクセッション番号P36980、CAA60375)は公知である。
【0158】
CPN1(カルボキシペプチダーゼN触媒鎖前駆体)によってコード化されるポリペプチドは、塩基性アミノ酸をペプチドおよびタンパク質のC末端から開裂する血漿メタロプロテアーゼを含み、キニンおよびアナフィラトキシンなどのペプチドの生物活性を調節する役割をもつ。CPN1をコード化するヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_001308、CR608830.1、X14329.1、AW950687.1)。CPN1によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_001073982、P22792、NP_001295、NP_001299、P15169)。
【0159】
APOBによってコード化されるポリペプチド(アポリポタンパク質B-100(前駆体)、APOB100)は、キロミクロンのアポリポタンパク質と低密度リポタンパク質(LDL)を含み、2つの主要な形態、apoB48とapoB100で血漿において見出される。APOBをコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_019287、AK290844、NM_000384)。APOBによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例はGenPeptアクセッション番号NP_000375、P41238、AAB60718、I39470)。
【0160】
HBB(ヘモグロビン、ベータローカス、ベータグロビン)によってコード化されるポリペプチドは、血液中の酸素輸送において役割を果たす。HBBをコード化しているヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_000518、NG_000007、L48217.1)。HBBによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_000509)。
【0161】
HBD(ヘモグロビン、デルタローカス)によってコード化されるポリペプチドは、ヘモグロビンの成分を含む。HBDをコード化しているヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号AF339104.2、AY0.4468.1、BC069307.1、BC070282.1、BU664913.1)。HBDによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号P02042.2、Q4F786、AAH70282.1)。
【0162】
GC(グループ特異的構成要素、DBP、VDBP、ビタミンD-結合タンパク質)によってコード化されるポリペプチドは、アルブミン遺伝子ファミリーの血清タンパク質を含み、標識組織へビタミンDを結合および輸送する役割をもつ。GCをコード化しているヌクレオチド配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号AK298433、NM_000583、M12654.1とBC022310.1)。GBによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_000574、AAD14250、P02774)。
【0163】
C9によってコード化されるポリペプチドは補体構成要素C9前駆体を含み、それは補体システムにおいて、膜攻撃複合体(MAC)の最終的な構成要素であり、C9をコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_001737、BC020721.1、CB157001.1、K02766.1とCB135741.1.)。C9によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPept アクセッション番号NP_001728、P02748)。
【0164】
IGFBP3(インシュリン様成長因子結合タンパク質3、IBP3)によってコード化されるポリペプチドは、血液中のIGF2とIGF2の担体を含む。IGFBP3をコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_000596、NM_000598、NM_001013398)。IGFBP3によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号P17936、NP_001013416、NP_000589、NP_000587)。
【0165】
MST1によってコード化されたポリペプチド(大食細胞刺激1、肝細胞増殖因子様タンパク質、HGFL)は、細胞増殖、細胞運動性および形態形成を調節するポリペプチドを含み、胚性臓器発達、成体器官再生と創傷治癒での役割をもつ。MST1をコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_020998、DC315638.1、L11924.1、AK222893.1とBM672747.1.)。MST1によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_066278、P26927)。
【0166】
CDH5によってコード化されるポリペプチド(カドヘリン-5、血管内皮カドヘリン、VE-カドヘリン)は、内皮接着分子を含み、そして内皮機能と脈管バリア完全性を調節する役割をもちうる。CDH5をコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NM_001795、DC381809.1、X59796.1、U84722.1、AC132186.3とX79981.1)。CDH5によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_001786、P33151)。
【0167】
C1QBによってコード化されるポリペプチド(補体構成要素1、q下位構成要素(subcomponent)、B鎖)は、補体システムのC1タンパク質の第1の下位構成要素C1qの一部分であるポリペプチドを含む。C1QBをコード化している核酸配列は公知である(例えばGenBankアクセッション番号NG_007283、NM_000491)。C1QBによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えばGenPeptアクセッション番号NP_000482.3、P02746.2)。
【0168】
組み合わせのゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイリング
本発明により提供されるように、対象体において慢性同種移植片拒絶反応を診断する方法は、1)対象体由来の生体試料の1または複数のマーカーの発現プロファイルを決定する工程であって、該マーカーが、OSBP2、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1、ZCCHC2、242907、CLEC2B、PDK4およびIFIT5のゲノムマーカー、ならびにCFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9、IGFBP3、MST1、CDH5とC1QBによってコード化されるプロテオミクスマーカーを包含するグループから選択される、工程;2)1または複数の該マーカーの発現プロファイルを非拒絶体プロファイルと比較する工程;そして、3)1または複数の該マーカーの発現レベルがコントロールプロファイルと比較して上方制御または下方制御されるかどうか決定する工程を含み、ここで、1または複数のマーカーの上方制御または下方制御が拒絶反応の状態を示す。
【0169】
本明細書に記述されるように、示差的に発現された遺伝子とタンパク質を特定するために、ロバストな統計的検定をゲノムおよびプロテオミクスプラットホームに適用した。特定された候補を利用して、ゲノム、プロテオミクス、ならびに組合せの、バイオマーカーパネルが、慢性拒絶反応(CR)サンプルと非慢性拒絶反応/安定(S)サンプルの間を区別するために開発された。
【0170】
高処理量のアプローチおよび応用マイクロアレイプラスqPCR、およびマルチプレックスのiTRAQプラスELISAをそれぞれ、慢性拒絶反応の潜在的な全血ゲノムバイオマーカーおよび血漿プロテオミクスバイオマーカーを確認するために採用した。
【0171】
興味深いことには、目下の研究において確認されるゲノムおよびプロテオミクスバイオマーカーパネルは、CRサンプルとSサンプルとの分類において、同程度の性能レベルを有した。そこでは、パネルを横断して10個の遺伝子と10個のタンパク質(グループ)のアイデンティティの間に重複部分があるように見えない。血漿サンプルを使うプロテオミクスプラットホームとは異なり、末梢血がマイクロアレイのために使われた。このように、末梢血中のさらなる循環構成要素、例えば赤血球、血小板、および特に白血球は、示差的に発現された遺伝子の検出に寄与しうる。慢性炎症がCAVの発症において主要な役割を果たすと考えられるとすると、末梢血中の単核細胞(MNC)と多形核細胞(PMN)からの遺伝子発現の影響もまた重要でありうる。
【0172】
遺伝子オントロジーに基づく分析は、慢性心臓同種移植片拒絶反応のゲノムおよびプロテオミクスパネルの間の一致がより一層大きいことを明らかにした。概して、各々のパネルに関係したGO用語のリストは、別個に独特だったが、依然として比較的類似していた。高レベル(GOレベル3〜5)において、ゲノムおよびプロテオミクスパネルからのバイオマーカーは、有意性分析(enrichment analysis)(p < 0.05)を通して、いくつかの類似した生物学的および分子的プロセスに関与していることが示された。これらのプロセスは、制限されないが、免疫反応、脂質輸送、外刺激に対する反応、および糖質結合活性を含む。
【0173】
ゲノムおよびプロテオミクス分類子の感度と特異性が類似していると仮定して、本発明者らはまた、「組合せの」バイオマーカーパネルの可能性を探り、そしてその分類能力を試した。段階的判別分析(SDA)を、各々のプラットホームからの候補の最良の組合せを生み出すために、ゲノムおよびプロテオミクスバイオマーカーパネルに別々に適用した。結果として生じるバイオマーカーパネルは、4つのプローブセットと4つのタンパク質グループコード(PGC)を組み込んだ。
【0174】
組合せのバイオマーカーパネル/分類子は、分類性能の改善を示した(図6)。組合せの分類子がゲノムおよびプロテオミクスの妥当性確認において使われたのと同じテストコホートに適用されたとき、それは100%の感度と83%の特異性(ゲノムおよびプロテオミクス分類子を別々に用いた83%の感度と特異性と比較して)で、CRサンプルとSサンプルを正しく区別することができた。本発明者らの組合せのパネルで観察される強化された性能は、プロテオミクスとゲノムのアプローチの双方を適用することによって、コホートにわたって示差的に発現されることが見出されたバイオマーカーが、プラットホームの特有の偏りに関係しなかった、またはそれによって影響されなかったという事実に部分的による。
【0175】
重要なことに、ゲノムとプロテオミクスパネルは、各々がバイオマーカーのユニークなセットを含むが、CRサンプルとSサンプルの間を区別する同程度の能力を示した。組合せのパネルの妥当性確認の結果も、マルチプラットフォームアプローチと関係した潜在的な利点を強調する。
【0176】
本発明はまた、対象体の拒絶反応の状態の予測または診断での使用のためのキットを提供する。キットは、OSBP2、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1、ZCCHC2、242907、CLEC2B、PDK4とIFIT5のゲノムマーカー、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9、IGFBP3、MST1、CDH5とC1QBによってコード化されるプロテオミクスマーカーを包含する特異的で定量的な検出のための試薬を、このような試薬の使用および結果として生じるデータを分析する方法のための説明とともに含むことができる。キットは、対象体の拒絶反応の状態を予測または診断するために単独で使うことができ、あるいは臨床的変数を測定するための他の方法、または適切であると考えられうる他のアッセイと組み合わせて使うことができる。対象体の拒絶反応の状態を予測または診断するために、キットの結果を、拒絶反応を示さないカットオフインデックスを提供する他のアッセイの結果と組み合わせるのに役に立つ説明または他の情報を提供することができる。
【0177】
他の態様
アロ反応性T細胞プロファイリング、メタボロミクス
アロ反応性T細胞プロファイリングおよび/または代謝物質(「メタボロミクス」)プロファイリングは、ゲノムおよび/またはプロテオミクスプロファイリングと組み合わせて使うことができる。対象体のゲノムにおける、一塩基変化または多形性などのマイナーな変更、またはそのゲノムの発現(例えば示差的な遺伝子発現)は、対象体の小分子代謝物質プロファイルで、急速な反応をもたらすことがある。小分子代謝物質はまた、環境変化に迅速に反応することができ、環境変化の数秒から数分以内に有意な代謝物質変化が明らかになるが、−対照的に、タンパク質または遺伝子発現の変化が明らかになるには数時間あるいは数日がかかる場合がある。臨床的変数のリストには、たとえば、心血管疾患、肥満またはメタボリックシンドロームをモニタリングするのに用いられうるいくつかの代謝物質が示され−例には、コレステロール、ホモシステイン、ブドウ糖、尿酸、マロンジアルデヒドおよびケトン体が含まれる。小分子代謝物質の他の非制限的な例を表3にリストする。
【0178】
(表3)対象体の集団から得られる血清サンプルのNMRスペクトルで特定および定量化される代謝物質

【0179】
種々の技術と方法を、対象体の代謝物質プロファイルを得るために使うことができる。サンプル調製の細目は、使われる方法によって異なり、そのうえ、関心対象の代謝物質によっても異なる−たとえば、サンプル中のアミノ酸と概して水溶性の小分子の代謝物質プロファイルを得る場合、低分子量のカットオフ値2〜10kDaでのサンプルのろ過を含みうる一方、脂質、脂肪酸および他の概して水溶性の乏しい分子の代謝物質プロファイルを得る場合は、有機溶媒での抽出ならびに/または残留物の乾燥および再可溶化の一つ以上のステップを含みうる。マーカーを検出および/または定量化するいくつかの例示的な方法が本明細書中に示されるが、他のものは当業者に公知であり、そしてこの出願で記述される方法と用途ですぐに使用可能である。
【0180】
対象体の代謝物質プロファイルを得るために(単独でか、または組合せで)用いることができる技術および方法のいくつかの例は、制限されないが、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィー(GC-MS)、質量分析、フーリエ変換MS(FT-MS)、高速液体クロマトグラフィーまたは類似の他のものが含まれる。サンプル調製のための例示的な方法と代謝物質プロファイルを得るための技術は、たとえば、Human Metabolome Projectのウェブサイトで見つけることができる〔Wishart(ウィシャート)DSほか、2007。Nucleic Acids Research 35:D521-6)。
【0181】
本発明をさらに、以下の例で例示する。しかし、これらの例は例示の目的だけのものであり、そしていかなる様式であっても、本発明の範囲を制限するのに用いられてはならないことを理解すべきである。
【0182】
方法
対象体と検体
移植でのバイオマーカー標準操作手順に従って対象体を登録した。研究コーディネーターが、St. Paul’s Hospital(バンクーバー、BC)で腎臓移植を待っている対象体にはたらきかけ、同意した39人の対象体が研究に参加した。すべての心臓移植はブリティッシュ・コロンビア・トランスプラント(British Columbia Transplant)(BCT)によって監督され、そしてすべての対象体は標準的な免疫抑制療法を受ける。同意した対象体に由来する血液サンプルを、移植前(ベースライン)、ならびに移植後1、2、3、4、8、12、26週目および6ヵ月ごとに3年間採取した。さらに、移植後1〜5年の間の単一の時点に、同意した対象体から血液サンプルを採取した。血液を、PAXGene(商標)チューブに集め、運搬のために氷浴に置き、一日間-20℃で凍らせ、それからRNA抽出まで-80℃で保存した。
【0183】
心移植対象体データを再検討し、そして25の対象体を分析のために選んだ。移植後1〜13年の間の単一のまたは時系列のサンプルからの合計40の血液サンプルを、RNA抽出とマイクロアレイ分析のために選んだ。4つのベースラインの血液サンプルも処理した。
【0184】
対象体の2つのタイプを採用した:移植を待っている者(新規移植)と2005年3月〜2008年2月の間に年1回の検査が行われる者(移植済)である。新規移植の対象体については、血液サンプルおよび尿サンプルを継続的に、移植前(ベースライン)、移植後1、2、3、4、8、12および26週目、ならびに6ヶ月ごとに3年間集めた。移植済の対象体については、移植の少なくとも1年以内に、通常の移植後検査の際に、一つのサンプルを集めた。健康な個体からの血液サンプルは、ゲノム(全血)とプロテオミクス(血漿)分析のためのコントロールとして用いた。
【0185】
新規移植と移植済の対象体はいずれも、シクロスポリン、プレドニソン、およびミコフェノール酸モフェチルからなる標準的なトリプル免疫抑制療法が後に続くバシリマックス(basilimax)誘導を受けた。シクロスポリンは、女性の場合タクロリムスで置き替え、腎臓障害の場合シロロマス(sirolomus)で置き替えた。移植後3ヵ月以内にISHLT拒絶反応等級2Rまたは3Rのエピソードを示した対象体にはメチルプレドニゾロンを投与した。
【0186】
慢性拒絶反応(CR)のスクリーニングを、St.Paul's Heart Centreによって確立された「心臓同種移植片脈管傷害の長期検査のためのプロトコル(Protocol for Long-term Surveillance of Cardiac Allograft Vasculopathy)」ガイドラインに従ってドブタミン負荷心エコー検査、冠状動脈血管造影法および血管内超音波検査(IVUS)を使って慣例的に実行した。慢性拒絶反応の診断は、血液サンプル採取日に対応する時点でのカルテ調査(すなわち、血管造影法やIVUS測定)に基づいた。この調査のために、CRと安定(S)が、臨床的確認に基づいて確認され、それぞれ、≧50%と≦25%の狭窄と定義された。
【0187】
分析集団
この研究の目的は全血ゲノムバイオマーカーおよび血漿プロテオミクスバイオマーカーを識別することであって、それは、慢性拒絶反応(CR)[臨床的確認と50%よりも多くの狭窄]試料と安定(S)[臨床的確認と25%未満の狭窄]試料とを区別する。17人の患者(新規移植11人、移植済6人)から移植後1〜5年目に集められた合計25の血液サンプルを、ゲノムおよびプロテオミクス分析のために選んだ。対象体のサンプルは、トレーニングコホートとテストコホートに分けた。トレーニングコホートは、13人の患者から移植後1年(7つのCRと6つのS)と2年(1つのCR)に集められた13のサンプルから成った。テストコホートは、12のサンプル(6つのCRと6つのS)から成った。これらのサンプル(2つのCRと5つのS)のうちの7つは後の時点にトレーニングコホートの5人の対象体から集め、そして5つ(4つのCRと1つのS)は非トレーニングコホートの4人の対象体から集めた。患者の個体群統計学は、トレーニングコホートとテストコホートの間で同等であった(表4)。
【0188】
(表4)心臓移植対象体コホートの人口統計学

【0189】
RNA抽出およびマイクロアレイ分析
全RNAを単離するために、PAXgene(商標)血液RNAキット[Cat#762134]を使用して、解凍されたサンプルに対してRNA抽出を行った。4〜10μgのRNAを2.5mlの全血から慣例的に単離し、そしてRNA品質をAgilent BioAnalyzer(アジレント・バイオアナライザー)を使って確かめた。RIN値>5およびA240/A280>1.9のRNA 1.5μgを有するサンプルを、ドライアイスの上でパックし、Affymetrix(アフィメトリクス)マイクロアレイ分析のためにMicroarray Core(MAC)Laboratory、Children’s Hospital、ロサンゼルス、CAにフェデラル・エクスプレスによって輸送した。マイクロアレイ分析は、CAP/CLIA公認のMAC研究所で、一人の技術者によって行った。新しいRNAを、二重鎖cDNA合成のために用いた。続いてcDNAをビオチンで標識し、断片化し、ハイブリダイゼーションカクテルと混ぜて、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0アレイの上にハイブリダイズした。アレイは、プールされた正常な全血から作られた妥当性RNAコントロールと共に、48のバッチで、Affymetrixシステムでスキャンした。マイクロアレイは、アフィメトリクス1.16.0版とaffyPLM1.14.0版BioConductor(バイオコンダクター)パッケージを用いて品質についてチェックされた〔Bolstad(ボルスタット)、B.、Low Level Analysis of High-density Oligonucleotide Array Data: Background, Normalization and Summarization。2004、カリフォルニア大学バークレー校;Irizarryほか、2003。Biostatistics 4(2):249-64〕。より一層低い品質を有するアレイは、同じ時点からの異なるRNAアリコートを用いて繰り返された。
【0190】
プロテオミクス:
血漿処理、除去、トリプシン消化およびiTRAQラベリング
血液サンプルを、EDTAチューブに集め、氷上にすぐに保存し、血漿について2時間以内に処理して保管した。血漿を各々の全血サンプルから遠心分離によって得て、等分し、プロテオミクス分析まで-70℃で保管した。各々のサンプルからの100マイクログラムの全タンパク質を、iTRAQ試薬を用いて調製した。手短に言うと、血漿サンプルは、14の最も豊富な血漿タンパク質(アルブミン、フィブリノゲン、トランスフェリン、IgG、IgA、IgM、ハプトグロビン、α2-マクログロブリン、α1-酸グリコプロテイン、α1-アンチトリプシン、Apoliprotein(アポリプロテイン)-I、アポリプロテイン-II、補体C3およびアポリプロテインB)を、免疫親和性クロマトグラフィー〔Genway Biotech(ジンウェイ・バイオテク);サンディエゴ、CA)〕によって除去し、シークエンスグレードの改変トリプシン〔Promega(プロメガ);マディソン、WI)を用いてトリプシン消化し、製造者のプロトコル〔Applied Biosystems(アプライドバイオシステムズ);フォスターシティー、CA〕に従ってiTRAQ試薬を用いて標識した。標識されたサンプルをプールし、pH2.5〜3.0に酸性化した。iTRAQ標識ペプチドを、強陽イオン交換クロマトグラフィー(PolyLC社、コロンビア、MD、USA)によって単離した。結果として得られる標識ペプチドをプールし、逆相クロマトグラフィー〔Michrom Bioresources Inc.(マイクロン・バイオリソーシーズ社)、オーバーン、CA USA)によってさらに単離し、1実験あたり4枚のプレートで、Probot microfration collector(プロボット・マイクロフラション・コレクター)〔LC Packings(パッキングス)、アムステルダム、オランダ〕を用いて、384スポットのMALDI ABI 4800プレートに直接スポットした。
【0191】
質量分析およびデータ処理
MALDIプレート上へスポットしたペプチドを、4000シリーズ・エクスプローラ3.5版ソフトウェアを使用して制御した4800MALDI TOF/TOFアナライザー(アプライド・バイオシステム;フォスターシティー、CA)で分析した。質量分析計は、1keVのMS/MS衝突エネルギーで、正イオンモードでセットした。各MS/MSランごとに最大1400ショット/スペクトルを集め、総時間は35〜40時間にわたった。ペプチドの同定と定量は、統合した新しいParagon(パラゴン)(商標)サーチアルゴリズム(アプライド・バイオシステム)とPro Group(プロ・グループ)(商標)アルゴリズムとを用いたProteinPilot(プロテインパイロット)(商標)ソフトウェアv2.0(アプライド・バイオシステム/MDS Sciex、フォスターシティー、CA USA)によって行った。データベース検索は、International Protein Index(インターナショナル・プロテイン・インデックス)(IPI HUMAN v3.39)に対して実行した〔Kersey(カージー)ほか、2004。プロテオミクス4:1985-1988)。前駆体許容性を150ppmにセットし、そしてiTRAQ断片許容性を0.2Daにセットした。識別パラメーターを、尿素変性と生物学的修飾に対するIDフォーカスにセットした特別な因子と共に、トリプシン開裂、MMTSによるシステインアルキル化についてセットした。検出したタンパク質の閾値は85%の信頼区間でセットした。
【0192】
プロテオミクス分析
Pro Group(商標)アルゴリズム(アプライド・バイオシステム)は、Paragon(商標)アルゴリズムからのペプチドの証拠を、サンプル中のタンパク質の包括的な概要へと構築した。
【0193】
各々のiTRAQランからの特定されたタンパク質のセットは、重複を避けるために、タンパク質グループに組織化した。各々のiTRAQランは、3つの対象体のサンプルプラス1つのプールされたコントロールサンプルを含む−対象体サンプルが試薬115、116と117の間でランダムに標識される一方、コントロールは一貫してiTRAQ試薬114を用いて標識された。相対的なタンパク質レベル(それぞれ、114と比較して標識115、116と117のレベル)は、対応するペプチド比率を用いるProtein Pilotによって、タンパク質グループごとに推定した。各々のタンパク質グループは複数の特定されたタンパク質から成る可能性があるので、タンパク質グループコードアルゴリズム(PGCA)と称されるインハウスのアルゴリズムを、すべてのiTRAQ実験にわたってタンパク質グループを結びつけるために用いた。PGCAは、各々のiTRAQラン内のすべてのタンパク質グループへの識別コード、およびランにわたって類似したタンパク質グループへの共通のコードを割り当てた。後者のコードは、また、タンパク質グループコード(PGC)と呼ばれ、それは続いて、異なるiTRAQランにわたるタンパク質を適合させるのに用いた。このプロセスは、比較目的のためにすべての実験的なランにわたる関連したタンパク質およびタンパク質ファミリーについての共通の識別子の命名を保証する。
【0194】
統計的分析
移植後1年に慢性拒絶反応(n=6)または安定した経過(n=7)のどちらかを有する対象体に由来する単一の時点のサンプルを、IVUS、血管造影法、ドブタミン負荷心エコー検査および/または臨床検査を使って診断した。この「クリーンなコホート」を、慢性拒絶反応診断用バイオマーカーパネルの発見のために使った。
【0195】
ゲノムデータおよびプロテオミクスデータの双方についての統計的分析は「ファンネル(funnel)」アプローチを使って実行し、それはR 2.6.0版を用いて履行した。
【0196】
ステップ1:プレフィルタリング
・ マイクロアレイの上のすべてのプローブセットは、予めフィルター処理したプローブセットを提供するためにフィルターに通した;
・ PGCAディクショナリーのすべてのタンパク質グループは、予めフィルター処理したタンパク質グループを提供するためにフィルターに通した。
【0197】
ステップ2:ロバストt検定
・ すべての予めフィルター処理したプローブセットとタンパク質グループは、それぞれ、示差的に発現された(DE)プローブセットまたはDEタンパク質グループを提供するために、ロバストt検定を受けた。
【0198】
ステップ3:パネル選定
・ DEプローブセットまたはタンパク質グループはさらに、それぞれ、ゲノムバイオマーカーパネルまたはプロテオミクスバイオマーカーパネルを提供するために分析した。
【0199】
ステップ4:サイズ減少
・ ゲノムおよびプロテオミクスバイオマーカーパネルは、組合せのバイオマーカーパネルを提供するために分極させた(poled)。
【0200】
統計分析は、SAS 9.1版、R 2.6.1版とBioConductor 2.1版を使って実行した〔Gentleman(ゼントルマン)、R.、ほか、Genome Biology、2004。5:p. R80〕。Affymetrix BioConductorパッケージで利用可能なように、ロバストマルチアレイアベレージ(RMA)〔Bolstad(ボルスタット)、ほか、Bioinformatics、2003。19(2):p. 185−93〕技術を、バックグラウンド補正、規格化、および集計のために用いた。続いて、ノイズ最小化を実行し;少なくとも3つのサンプルにわたって一貫して50より低い発現値を有するプローブセットをノイズと見なして更なる分析から除いた。残りのプローブセットを、3つの異なる中程度のT-検定を使って分析した。方法のうちの2つは、Microarrayデータ(limma)BioConductorパッケージについて、Linear Models(線形モデル)で利用でき-ロバスト適合をeBayes(イーベイズ)と組み合わせ、そして最小二乗適合(least square fit)をeBayesと組み合わせた。第3の統計分析法は、マイクロアレイ統計分析(SAM)であり、同じBioConductorパッケージで利用できる。遺伝子は、3つの方法すべてで偽発見率(FDR)< 0.05を有し、かつ3つすべてのt検定で倍率変化> 2 を有する場合(アロ反応性T細胞については倍率変化>1.6)、統計的に有意であると見なされた〔Smyth(スマイス)、G.、Limma:linear models for microarray data, in Bioinformatics and Computational Biology Solutions using R and Bioconductor、R. Gentleman、ほか編。2005、Springer:ニューヨーク)。バイオマーカーパネル遺伝子を、統計的に有意なプローブセットを予め選別した上で段階的判別分析(Stepwise Discriminant Analysis)(SDA)を適用することによって特定した。線形判別分析(LDA)は、バイオマーカーパネルを分類子として操作し、テストするのに用いた。
【0201】
ゲノミクス
ステップ1で、ロバストマルチアレイアベレージ(RMA)技術を、バックグラウンド補正、規格化、および集計(Affy BioConductorパッケージ1.6.7版)のために用いた。ノイズを減らすために、すべてのサンプルにわたって一貫して低い発現値によるプローブセットは、更なる分析から除いた。残りのプローブセットは、limma BioConductorパッケージ(1.9.6版)によりロバストな中程度のt検定(ステップ2)を使って分析した。<10%の偽発見率(FDR)のプローブセットを、統計的に有意であると見なした。バイオマーカーパネル遺伝子は、よりストリンジェントなカットオフ基準、FDR <5%と倍率変化>2(ステップ3)を適用することによって特定した。妥当性確認を、CRサンプルをSサンプルと区別するゲノムパネルの能力を推定するために線形判別分析(LDA)を使って実行した。
【0202】
プロテオミクス
ステップ1で、各々のグループ内で患者の少なくとも2/3に認められなかったPGC(すなわち、7つのAR中5つと6つのNR中4つ)は、更なる分析から除いた。残りのタンパク質グループを、limma Bioconductorパッケージ(1.9.6版)によりロバストな中程度のt検定(ステップ2)を使って分析した。CRサンプルとSサンプルの間の示差的な相対的な濃縮(プールされたコントロールのレベルと比較して)を有するタンパク質グループコードが同定され、プロテオミクスバイオマーカーパネルと見なされた。ステップ3において、続いて、よりストリンジェントなカットオフ値がバイオマーカーパネルタンパク質を選ぶために適用された(p値<0.03)。CRサンプルをSサンプルと区別するプロテオミクスパネルの能力を推定するために、線形判別分析(LDA)を使って妥当性確認を行った。LDAにおいて、患者サンプルおよび/またはプールされたコントロールにおいて未検出の各タンパク質の相対的な濃度は、トレーニングコホートの他のサンプルから算出された平均相対濃度を使って推定した。
【0203】
機能的な豊富化
同定された示差的に発現された遺伝子およびタンパク質(ステップ2)の機能的な豊富化(Functional Enrichment)は、機能分析のために設計されたウェブベースのツールの一式であるBabelomics(バベロミクス)の第3版(Al-Shahrourほか、2006。Nucleic Acids Research W472-476)で利用できる、FatiGOを使って調べられた(Al-Shahrour(アルシャーラー)ほか、2007。Nucleic Acid Reserch 35:W91-96)。
【0204】
組合せ分析
組合せバイオマーカーパネル、すなわちタンパク質およびプローブセットのサブセットを作り出すことは、リーブワンアウトクロスバリデーションにおいて分類精度を最大にした段階的判別分析(SDA)を使って別々に特定した〔Weihs(バイス)、C.、Ligges、U.、Luebke、K.、およびRaabe(レーブ)N.(2005))。klaR Analyzing German Business Cycles。Baier(バイヤー)、D.、Decker(デッカー)、R.およびSchmidt(シュミット)-Thieme(ティーメ)、L.(編). Data Analysis and Decision Support(データ分析と決定支持)、335-343、シュプリンガー・フェルラーク出版、ベルリン)(ステップ3)。続いて、結果として得られたタンパク質およびプローブセットのサブセットを組み合わせてバイオマーカーパネルとした。CRサンプルをSサンプルと区別する組合せパネルの能力を推定するために、線形判別分析(LDA)を使って妥当性確認を行った。SDAとLDAの双方で、いくつかの患者サンプルおよび/またはプールされたコントロールにおいて未検出の各タンパク質については、トレーニングコホートの他のサンプルからの平均的な相対濃度が代替として使われた。
【実施例】
【0205】
実施例1
標準化とプレフィルタリングの後に、25,215のプローブセットが残り、そしてトレーニングコホートのサンプルを使う以降の分析(ステップ2)に含まれた。ロバストテストを使って、合計106のプローブセットがFDR<10%をもつと確認された。これらのプローブセットのCRサンプルとSサンプルの間の相対的な発現レベルを視覚化するためにヒートマップを構築した(図4)。さらに、マイクロアレイ上で存在する残りの遺伝子と比較して示差的に発現された遺伝子に包含される生物学的および分子プロセスのタイプを観察するために過剰提示分析が遂行された。有意な遺伝子オントロジー(GO)用語が確認され、そしてp値<0.05を有するものを表5にまとめた。
【0206】
(表5)ゲノム発現プロファイリングの有意性分析(FatiGo)によって確認される統計的に有意な遺伝子オントロジー用語
p値< 0.05。示されるGO用語(生物学的プロセスと分子機能)は、GOレベル3〜5の間である。

【0207】
106のバイオマーカー候補から、22の示差的に発現されたプローブセットが特定され、それぞれは、慢性拒絶反応患者(CR)からのサンプルとクリーンなコホート(拒絶反応を示さない患者(NR))からのサンプルの間で最低2倍の違いを示した(表6)。10のプローブセットのサブセットは、よりストリンジェントな基準(FDR<5%および倍率変化> 2)を使って特定された。これらの10のプローブセットは、ゲノムバイオマーカーパネルCHPT1、LOC644166/LOC644191/LOC728937/RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2、IFIT5を構成し、かつ各々のサンプルをCRまたはNRとして分類した。バイオマーカーパネルのプローブセット/遺伝子のうちの1つ(OSBP2)はSと比較してCRで下方制御され、残り(CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、IFIT5)は上方制御された。242907_at(未知4)は、少なくとも2倍の増加を見せた名前の付いてない標的である。
【0208】
連帯して12の新しいサンプル(6つのCRと6つのS)を分類するゲノムバイオマーカーパネルの能力を推定するために、妥当性確認を実行した。1つのCRサンプルと1つのSサンプルが誤分類され、それは慢性心臓同種移植片拒絶反応ゲノムバイオマーカーパネルについて83%の感度と特異性に対応する。
【0209】
(表6)慢性心臓同種移植片拒絶反応の全血ゲノムバイオマーカー



* 242907_at-配列番号6のヌクレオチドBLAST検索は、NT_032977.8の58544174-59543814(ヒト1番染色体ゲノムコンティグ、参照アセンブリ)のヌクレオチドと98%の同一性を示す。対象体シーケンスのこの部分に隣接している特徴は、以下を含む。すなわち5’側での1603bp:グアニル酸結合タンパク質2、インターフェロン誘導可能および3’側での42939bp:グアニル酸結合タンパク質1、インターフェロン誘導可能、67kD。
【0210】
実施例2 生物学的経路
バイオインフォマティクス(生命情報科学)と文献ベースのアプローチの組合せを用いることにより、種々の経路を、示差的に発現された選択された遺伝子に基づいて識別した。理論に束縛されることを望まないが、それらの間の相互作用は、本発明者らの本結果でも説明された。図3は、バイオマーカーのNKG2A(KLRC1)、NKG2C(KLRC2)、PDK4およびCHPT1の間の経路に基づく関係を示す。
【0211】
理論に束縛されることを望まないが、バイオマーカー遺伝子および/または遺伝子産物の間の相互作用には、以下が含まれうる。すなわち、
1. NKG2C(KLRC2)→CD94→NKG2A(KLRC1)
NKG2C(KLRC2)→CD94〔Ding(ディング)ほか、1999。Scand, J Immunol 49:459-65;Gunturiほか、2004。Immunol. Res 30:29-34〕
CD94→NKG2A(KLRC1)〔Brooks(ブルックス)ほか、1997。J Exp Med 185:795-800;Brooksほか、1999。 J. Immunol. 162:305-13;Dulphyほか、2002。Int Immunol 14:471-9〕
2. NKG2C/NKG2A(KLRC2/KLRC1)→SHP1→ESR1→PDK4およびCHPT1
NKG2C/NKG2A(KLRC2/KLRC1)→SHP1〔Lin(リン)Chuaほか、2002。Cell Immunol. 219:57-70;Le(ル)Dreanほか、1998。Eur J Immunol 28:264-76〕
SHP1→ESR1〔Grimaldi(グリマルディ)ほか、2002。109:1625-33〕
3. ESR1→PDK4とCHPT1
〔Araki(アラキ)ほか、2006。FEBS J. 273:1669-80;Laganiereほか、2005。ProcNatl Acad Sci USA。102:11651-6〕
【0212】
実施例3:プロテオミクス分析結果
およそ2500のタンパク質グループコード(PGC)の合計が、トレーニングコホートに含まれる13のサンプルのうちの少なくとも1つで見出された。これらのPGCは、プレ濾過された(ステップ1)-7つのCRサンプルと6つのSサンプルの少なくとも2/3(すなわち、5つのCRサンプルと6つのSサンプル)で検出されたPGCが、更なる分析のために使われた。統計分析により、129の分析されたタンパク質のうちの14が、p値<0.05で示差的な相対濃度を有すると同定された(ステップ3)。これらの有意なPGCの、CRサンプルをSサンプルと区別における性能を視覚化するために、ヒートマップを構築した(図5)。これらのタンパク質グループコードに属するすべてのタンパク質の生物学的および分子的な機能を調査するために過剰提示分析も遂行した。p値<0.05を有する有意なGO用語は、表7に示される。
【0213】
(表7)プロテオミクス発現プロファイリングの有意性分析(FatiGo)によって確認される、統計的に有意な遺伝子オントロジー用語
p値< 0.05。示されるGO用語(生物学的プロセスと分子機能)は、GOレベル3〜5の間にある。

【0214】
14のバイオマーカー候補から、10のPGCを、より一層ストリンジェントな基準(p値<0.03)を使用して識別し、プロテオミクスバイオマーカーパネルを構成した(表8)。バイオマーカーパネルPGCのうちの6つ(CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GC、C9)は、Sと比較してCRで増加し、そして4つ(IGFBP3、MST1、CDH5、C1QB)は減少した。
【0215】
(表8)慢性心臓同種移植片拒絶反応のプロテオミクスバイオマーカーパネル


【0216】
12の新しいサンプル(6つのCRと6つのS)を分類するプロテオミクスバイオマーカーパネルの能力を推定するために、ゲノム分析と同様に妥当性確認を実行した。これらのサンプルは、ゲノム妥当性確認のサンプルと同じ時点に、同じ患者からとられた。分類子(バイオマーカーパネルに基づいて作られる)を使うと1つのCRサンプルと1つのSサンプルが誤分類され、これは慢性心臓同種移植片拒絶反応のプロテオミクスバイオマーカーパネルについて、83%の感度と特異性をもたらした。
【0217】
実施例4:組合せ分析の結果
ゲノムおよびプロテオミクス妥当性確認の結果は、CRサンプルとSサンプルの区別について双方のパネルで同じ性能を示した。このように、本発明者らは、双方のプローブセット/遺伝子とタンパク質で構成される「組合せの」バイオマーカーパネルの有用性を調べた。4つのプローブセット/遺伝子(CLEC2B、CHPT1、242907_at、GBP3)と4つのPGC(CFHR2、CPN1、C1QB、GC)は、段階的判別分析(SDA)を使って、別々に同定した(表9)。
【0218】
(表9)慢性心臓同種移植片拒絶反応の組合せバイオマーカーパネル

【0219】
組合せのパネルもまた、前のセクションで説明した同じテストコホートを用いて評価した。組合せパネルの性能は、ゲノムパネルまたはプロテオミクスパネルのいずれかの性能より優れていた。組合せのパネルに基づいて構築した分類子はSサンプルの一つだけを誤分類し、結果として100%の感度と83%の特異性がもたらされた(ゲノム分類子およびプロテオミクス分類子おける83%の感度および特異性と比較した)。
【0220】
ゲノム、プロテオミクス、および組合せの慢性心臓同種移植片拒絶反応バイオマーカーパネルについて妥当性確認の結果をまとめて比較するのを助けるために、視覚化ツールとしてストリプロット(striplot)を構築した(図6)。視覚化を単純化するために、3つすべての分類子についての線形判別式(LD)変数の値は、分類のカットオフラインをゼロに較正するために、再中心化した(re-centered)。「HP4」、「H4」、そして「組合せ」は、それぞれ、ゲノム、プロテオミクス、および組合せの分類子を表す。トレーニングセットにおけるCRサンプルとSサンプルについてのLD変数値の中心(または分類子の「スコア」)は、それぞれ、白い星および黒い星を使って示す。黒丸と黒い四角はそれぞれ、テストコホートにおけるSサンプルとCRサンプルの各々についてのLD変数/分類子のスコアに対応する。正のLD変数を有するサンプルは、CRと分類される。黒い星および白い星(それぞれ、トレーニングコホートにおけるCRサンプルおよびSサンプルの平均LD変数)の間の距離は、パネルが連帯してSからCRを区別する能力を示す。連帯して新しいサンプルを分類する際の各パネルの性能は、黒丸と黒い四角で示される。
【0221】
まるで個々の出版物が参照によって本明細書に組み込まれることが具体的かつ個々に示されるかのように、そしてまるでそれが本明細書に十分に述べられたかのように、すべての言及は参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書での参照の言及は、そのような参照が本発明に対する先行技術であることの承認と解釈されず、またそのように考えられてはならない。
【0222】
本発明の一つ以上の目下の好ましい態様を、例示として記述した。本発明は、実質的に上述したものとして、そして例および図を参照して、すべての態様、改変および変形を含む。多数の変形および改変が請求の範囲において規定する本発明の範囲を離れることなく行われることは、当業者にとって明らかである。そのような改変の例には、実質的に同じやり方で同じ結果を成し遂げるために、本発明の任意の面について既知の等価物の置換が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の慢性同種移植片拒絶反応の状態を決定する方法であって、
a 対象体由来の生物学的サンプルにおける1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルを決定する工程であって、該ゲノムマーカーが、CHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4、OSBP2およびIFIT5を包含する群より選択される、工程、
b 1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの発現プロファイルを、コントロールプロファイルと比較する工程、および
c 1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの発現レベルがコントロールプロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうかを決定する工程
を含み、1または1よりも多くの該ゲノムマーカーの増加または減少が、対象体の慢性拒絶反応状態を示す、前記方法。
【請求項2】
OSBP2が、非拒絶体プロファイルと比較して増加し、かつCHPT1、RPS26、GBP3、KLRC1/KLRC2、ZCCHC2、242907_at、CLEC2B、PDK4およびIFIT5が、コントロールプロファイルと比較して減少する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
コントロールプロファイルが、拒絶反応を示さない同種移植レシピエント対象体または非同種移植レシピエント対象体から得られる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1またはそれよりも多い臨床的変数の値を得ることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、表6から選択される1またはそれよりも多くのマーカーの発現を決定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
1または1よりも多くのゲノムマーカーの発現プロファイルが、1または1よりも多くの該マーカーに対応するRNA配列を検出することによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルが、PCRによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
1または1よりも多くのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルが、ハイブリダイゼーションによって決定される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ハイブリダイゼーションがオリゴヌクレオチドに対する、請求項9記載の方法。
【請求項10】
対象体の慢性同種移植片拒絶反応の状態を決定する方法であって、
a 対象体由来の生物学的サンプルにおける1または1よりも多くのプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現プロファイルを決定する工程であって、該プロテオミクスマーカーが、IGFBP3、MST1、CDH5、C1QB、CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9によってコード化されるポリペプチドを包含する群から選択される、工程、
b 1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーの発現プロファイルをコントロールプロファイルと比較する工程、および
c 1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーの発現レベルがコントロールプロファイルと比較して増加するか、または減少するかどうかを決定する工程
を含み、1または1よりも多くの該プロテオミクスマーカーのレベルの増加または減少が、対象体の慢性拒絶反応状態を示す、前記方法。
【請求項11】
CFHR2、CPN1、APOB、HBB、GCおよびC9によってコード化されるポリペプチドのレベルが、コントロールプロファイルと比較して増加し、かつIGFBP3、MST1、CDH5およびC1QBによってコード化されるポリペプチドのレベルが、コントロールプロファイルと比較して増加する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
コントロールプロファイルが、拒絶反応を示さない同種移植レシピエント対象体または非同種移植レシピエント対象体から得られる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
1またはそれよりも多くの臨床的変数の値を得ることをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
プロテオミクス発現プロファイルが免疫学的アッセイによって決定される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
プロテオミクス発現プロファイルがELISAによって決定される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
プロテオミクス発現プロファイルが質量分析によって決定される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
プロテオミクス発現プロファイルが、同位元素標識法またはアイソバリック標識法によって決定される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
コントロールが自家コントロールである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
コントロールが自家コントロールである、請求項10記載の方法。
【請求項20】
対象体における慢性同種移植片拒絶反応の状態を、ゲノムおよびプロテオミクスマーカーの組合せパネルを用いて決定する方法であって、
a)対象体由来の生物学的サンプルにおいてCHPT1、GBP3、242907_atおよびCLEC2Bのゲノムマーカーのゲノム発現プロファイルを決定する工程、
b)前記生物学的サンプルにおいてCFHR2、CPN1、GCおよびC1QBによってコード化されるポリペプチドを包含する群から選択されるプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現プロファイルを決定する工程、
c)ゲノムおよびプロテオミクス発現プロファイルをコントロールプロファイルと比較する工程、および
d)ゲノムマーカーのゲノム発現レベルまたはプロテオミクスマーカーのプロテオミクス発現レベルがコントロールプロファイルと比較して増加されるか、または減少されるかどうかを決定する工程
を含み、ゲノムマーカーCLDC2B、CHPT1、242907_at、GB3の増加、およびCFHR2、CPN1およびGCによってコード化されるポリペプチドの増加およびC1QBにコード化されるポリペプチドの減少が、対象体の慢性拒絶反応状態を示す、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7P】
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【図7Q】
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【図7R】
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【図7S】
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【図7T】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K−1】
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【図8K−2】
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【図8L】
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【図8M】
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【図8N】
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【図8O】
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【図8P】
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【図8Q】
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【図8R】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図9−8】
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【図9−9】
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【公表番号】特表2011−518548(P2011−518548A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503320(P2011−503320)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000514
【国際公開番号】WO2009/124403
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(300066874)ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア (24)
【Fターム(参考)】