説明

慢性気管支炎及び慢性閉塞性気管支肺病を予防及び治療する上で有用な製剤を調製するためのピラゾール誘導体の使用

本発明は、慢性気管支炎及び慢性閉塞性気管支肺病を予防及び治療する上で有用な製剤を調製するためのピラゾール誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療及び予防に有用な医薬製品を調製するための、カンナビノイドCBに対するアンタゴニストであるピラゾールに由来する化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アナンダミドなどの内在性カンナビノイドは、咳嗽の及び気管支の筋収縮の顕著な阻害を生じる。
【0003】
マリファナの喫煙は気管支拡張性活動を示すことが観察されており、気管支喘息を含むさまざまな病理を治療するためにカンナビノイド受容体アゴニストを使用することは公知の慣例である(Tashkin DP, Shapiro BJ, Lee YE, Harper EC: 実験的に誘発した喘息におけるマリファナ喫煙の効果、Am. Rev. Respir. Dis. 1975, 112:377−386; Tashkin DP: 健常者及び喘息者における気化した(aerolized)デルタ−9−テトラヒドロカンナビノールの気管支への効果、Am. Rev. Resp. Dis. 1977, 115:57−65; : Vachon L., Fitzgerald MX, Solliday NHほか: マリファナ喫煙の単回投与効果; 正常被験者における気管支のダイナミクス及び呼吸中枢感受性、N. Engl. J. Med. 1973, 288:985−989)。
【0004】
呼吸経路におけるカンナビノイド受容体の存在は、米国特許出願第2002/0035150に記載されている。前記出願において、SR141716AによってカンナビノイドCB受容体を遮断することはそれ自体、気管支運動性の効果を有さないが、カプサイシンの投与により生じる気管支収縮及び咳嗽を有意に増大させることが示されている。
【0005】
カンナビノイドCB受容体をSR141716Aで遮断することは、マウス腹膜炎モデルにおける好中球遊走に及ぼす2つの生成されたカンナビノイドアゴニストであるHU210及びWIN55212−2の抗炎症性効果を阻害する(Smith SR, Denhardt G, Terminelli C: マウス腹膜炎モデルにおけるカンナビノイド受容体リガンドの抗炎症性活性、Eur. J. Pharmacol. 2001, 432:107−119)。
【発明の開示】
【0006】
驚くべきことに、ピラゾール由来のCB受容体アンタゴニストは気管支肺レベルで活性があり、慢性気管支炎の治療に使用できることが本発明によって明らかとなった。
【0007】
本発明によると、「ピラゾール由来のカンナビノイド受容体アンタゴニスト」という表現は、コード名SR141716の下で公知であり、その国際的な非商標名がリモナバントであり、欧州特許第656354号に記載のN−ピペリジノ−5−(4−クロロフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−メチルピラゾール−3−カルボキサミド、及び欧州特許第1150961号に記載のN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドを意味するよう企図される。
【0008】
リモナバントを使用して実施される臨床研究は、リモナバントが肥満患者の空腹感、カロリー摂取、及び体重を低下させることを示している(G.Le Fur, 2003, 35, カンナビノイド研究に関する第1回欧州ワークショップ、Madrid, Spain, 4−5 April 2003 及びDrug RD, 2002, 3(1), 65−66)。
【0009】
ニコチン中毒におけるSTRATUS臨床研究の結果は、リモナバントが喫煙を停止させるのを促進することを示している(Annual Scientific Session Am. Coll. Cardiol., 9 March 2003, New Orleans)。
【0010】
リモナバント及びN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体に対するピラゾール由来のアンタゴニストは、気管支肺レベルで活性があることがいまや示されている。したがって、本発明によると、カンナビノイドCB受容体に対するアンタゴニストであるピラゾール由来の化合物は、慢性気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患、及び慢性肺疾患と関連した慢性気管支炎も予防及び治療するのに有用である医薬製品を調製するために使用できる。
【0011】
本発明に記載の医薬組成物は、カンナビノイドCB受容体に対するアンタゴニストであるピラゾール由来の化合物の効果的な投与量、及び少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤も含有する。
【0012】
前記賦形剤は、望まれる医薬形態及び投与の方法に従って、当業者に公知の通常の賦形剤から選択される。
【0013】
経口、舌下、皮下、筋内、静脈内、局所的(topical)、局所的(local)、気管内、鼻内、経皮的又は直腸投与のための本発明の医薬組成物において、活性主体は従来の医薬賦形剤との混合物として単位投与形態において、動物及びヒトへ、前述の疾病の障害を予防又は治療するために投与できる。
【0014】
適切な単位投与形態は、錠剤、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、粉末、顆粒及び経口溶液若しくは懸濁液などの経口投与のための形態、舌下、頬内、気管内、眼内又は鼻内投与のための及び吸入による投与のための形態、局所的、経皮的、皮下、筋内又は静脈内投与のための形態、直腸投与及びインプラントのための形態を含む。局所適用のために、本発明に記載の化合物は、クリーム、ジェル、軟膏又はローションにおいて使用できる。
【実施例1】
【0015】
動物モデル。
【0016】
バクテリアLPS(リポ多糖類)による活性化後の気管支肺空間における細胞の遊走。
【0017】
28ないし30gの体重のマウスをLPSの10μgへの気管内暴露により刺激する。LPSの注入の24時間後、前記動物をペントバルビタールで麻酔し、気管支肺洗浄を実施する。前記洗浄液を回収し、遠心分離した後、前記細胞を再懸濁する。細胞数を計数し、標準的な形態学的基準に従って好酸球、好中球及び単核細胞を識別する。
【0018】
LPSの気管内注入は、前記マウスの気管支肺空間において単核細胞及び好中球の数における顕著な増加を誘発する。これらの細胞のLPS誘発性動員に及ぼすリモナバントによる治療の効果を研究する。
【0019】
LPSの1時間前にリモナバントを動物へ、1回の腹腔内投与あたり0.3ないし30mg/kgの範囲の投与量で投与する。80%を超えるまで好中球細胞の遊走を阻害する効果的な投与量50(ED50)は、2.3(±0.3)mg/kgである。細胞遊走の阻害は単核細胞に関して類似しており、ED50は1.9(±0.5)mg/kgに等しい。
【0020】
このバクテリアLPS誘発性モデルは、特に、組織障害を生じる介在物質の放出を伴う好中球細胞及び多形核細胞の気管支肺組織への浸潤を生じる気管支肺レベルにおいて従来使用される。好中球のこの浸潤はLPSにより直接刺激された単核細胞(気管上皮細胞における防御の第一遮蔽を構成するマクロファージ、及びTリンパ球)の活性化の結果であり、それが好中球の血管外遊走及び活性化された単核細胞へ向けての後者の誘引を生じる介在物質(ケモカイン)を放出する。事象のこの道筋は、タバコの喫煙及び環境公害により誘発される慢性閉塞性肺疾患の病原性を完全に特徴付ける(COPDの診断、対応、及び予防に対する地球規模戦略、National Heart, Lung and Blood Institute, WHO, Executive Summary of April 1998 Meeting)。
【0021】
結論として、バクテリアのLPSにより誘発される活性化後の、気管支肺レベルでの単核細胞及び好中球細胞の両者の遊走に及ぼすリモナバントの阻害効果は、慢性気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患の徴候に関して治療上の興味に向けての理由である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患の治療及び予防に有用な医薬製品を調製するための、リモナバント及びN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体に対するアンタゴニストであるピラゾールに由来する化合物の使用。
【請求項2】
カンナビノイドCB受容体に対するアンタゴニストである化合物がリモナバントである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
カンナビノイドCB受容体に対するアンタゴニストである化合物がN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドである、請求項1に記載の使用。

【公表番号】特表2007−529481(P2007−529481A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503374(P2007−503374)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000620
【国際公開番号】WO2005/099690
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】