説明

慣性質量ダンパーを用いた制振装置

【課題】安価な構造により慣性質量ダンパーの負担力を低減することができる。
【解決手段】上端部4bが上部階3Aに固定されるとともに、V字頂点部4aが下部梁3Bに接合治具10を介して摺動可能に設けられた制振ダンパーの機能を有するブレース4と、他端5bが第1ダンパー取付治具8を介して下部梁3Bに固定され、一端5aが接合治具10に固定された慣性質量ダンパー5とを備え、ブレース4と慣性質量ダンパー5とが直列に接合され、下部梁3Bに対して支持されるオイルダンパー6が慣性質量ダンパー5に並列に接合された制振装置1Aを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性質量ダンパーを用いた制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錘の慣性モーメントを利用して、錘を回転させることで実際の質量より桁違いに大きな慣性質量効果を発揮する機構(以下、慣性質量ダンパーという)が知られている。このような慣性質量ダンパーでは、ダンパー両端の相対加速度に比例した反力が生じるため、想定外の入力時には過大な反力が作用してダンパー本体やこれに取り付けられる本体構造物が破損するおそれがあった。そこで、回転錘とボールねじ機構との間に摩擦材を介して接合することにより過負荷防止機能を設ける方法が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、相対振動を回転運動に変換して回転錘に伝達する振動伝達機構としてのボールねじ機構と回転錘との間に、回転錘を振動伝達機構に対してトルク伝達可能に連結するとともに、それらの間で伝達されるトルクが所定の制限値を超えた時点で回転錘を振動伝達機構に対して相対回転させてトルク伝達を制限するトルク制限機構を介装し、トルク制限機構を滑り材の摩擦力を利用したり、あるいは汎用のトルク保持装置を利用する慣性質量ダンパーについて記載されている。
【0004】
ところで、振動低減機構として、構造体を支持体に対して弾性支持する付加バネと、回転体の回転により回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーと、を構造体とそれを支持する支持体との間に直列に介装した付加制振機構を設けたものが広く知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−19347号公報
【特許文献2】特開2008−101769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の制震装置では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の慣性質量ダンパーでは、既往技術の摩擦材を用いた過負荷防止機構によれば残留変形を生じずに反力を頭打ちにできるという高性能な特性が得られるが、特殊な回転摩擦機構を組み込んでいることから、このような過負荷防止機能が高価となる問題があり、安価な慣性質量ダンパーを使用しつつ同等の効果を発揮するものが求められており、その点で改良の余地があった。
また、特許文献2に示す振動低減機構にあっては、構造物の固有振動数と同調させることで大きな応答低減効果が得られる。そのため、さらに付加ばねに非線形性を考慮することで、構造物の最大応答値をあまり変化させずにダンパー負担力を大幅に低下できることから、これを実現する具体的な構造架構形態が必要とされていた。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、安価な構造により慣性質量ダンパーの負担力を低減することができる慣性質量ダンパーを用いた制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る慣性質量ダンパーを用いた制振装置は、建物の隣り合う柱と上下方向に隣り合う梁とによって囲まれる架構内に介装される慣性質量ダンパーを用いた制振装置であって、一端が上階梁及び下階梁のいずれか一方の第1梁に固定され、他端が他方の第2梁に摺動可能に設けられ、制振ダンパーの機能を有するブレースと、一端が第2梁に固定され、他端がブレースの他端に固定された慣性質量ダンパーとを備え、ブレースと慣性質量ダンパーとが直列に接合されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、地震の振動などにより第1梁と第2梁とが相対変位すると、ブレースと第2梁とが慣性質量ダンパーを介して相対変位することになる。そして、例えば軸降伏形ブレースダンパーや摩擦ダンパー等の制振ダンパーの機能を有するブレースが用いられることで、慣性質量ダンパーの負担力が大きくなっても直列に配置したブレースにより荷重が頭打ちされて過大な反力が生じるのが防止される。そのため、慣性質量ダンパーの負担力頭打ちさせることができ、過負荷防止機構と同様のフェールセーフ機構を実現することができる。
【0010】
また、本発明に係る慣性質量ダンパーを用いた制振装置では、慣性質量ダンパーには、第2梁に対して支持される付加減衰機構が並列に接合されていることが好ましい。
この場合、静的剛性をもたない慣性質量ダンパーに対して、オイルダンパー等の付加減衰機構によって振動を減衰させることができるので、残留変形も抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る慣性質量ダンパーを用いた制振装置では、慣性質量ダンパーには、第2梁に対して弾性支持される付加ばねが並列に接合されていることが好ましい。
この場合、静的剛性をもたない慣性質量ダンパーに対して、付加ばねの弾性によって復元性が付与されるので、残留変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の慣性質量ダンパーを用いた制振装置によれば、直列に配置したブレースにより慣性質量ダンパーの荷重が頭打ちされて過大な反力が生じるのを抑制するとともに、慣性質量ダンパーの負担力を低下させることができるため、慣性質量ダンパーに過負荷防止機構を設ける必要がなくなる。したがって、一般的に用いられる部材による単純な機構により建物に制振装置を組み込むことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態による制振装置の構成を示す立断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による制振装置の構成を示す立断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態による制振装置の構成を示す立断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態による制振装置の構成を示す立断面図である。
【図5】図4に示すA−A線断面図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例による制振装置の構成を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による慣性質量ダンパーを用いた制振装置について、図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態による制振装置1Aは、建物の隣り合う柱2(2A、2B)と上下方向に隣り合う梁3(上部梁3A、下部梁3B)とによって囲まれる架構R内に介装されている。すなわち、制震ダンパー装置1Aは、架構Rの面内において、上部梁3A(第1梁)に固定されるとともに下部梁3B(第2梁)に対して水平方向に摺動可能に設けられたV字型のブレース4が設けられ、このブレース4のV字頂点部4aと下部梁3Bとが慣性質量ダンパー5を介して接続され、さらにV字頂点部4aと他方の柱2(第2柱2B)とがオイルダンパー6(付加減衰機構)を介して接続されている。
【0016】
ブレース4は、V字状の一対の上端部4b、4b(固定端)がそれぞれ架構Rの角部(柱2と上部梁3Aとの接合部)に一体的に固定され、V字頂点部4a(摺動端)が下部梁3Bの上面3aに設けられているリニアガイド7によって摺動可能な接合治具10に接続されている。また、ブレース4として、軸降伏形ブレースダンパー(例えば清水建設株式会社の「CSダンパー」等)や摩擦ダンパーが採用されている。
【0017】
接合治具10には、ブレース4のV字頂点部4aが固定されるとともに、摺動方向Xの一端10aに慣性質量ダンパー5の軸方向(ストローク方向)の一端5aが接続され、さらに摺動方向Xの他端10bにオイルダンパー6の軸方向の一端6aが接続されている。接合治具10は、下部梁3Bに設けられたリニアガイド7に沿って変位する構成となっている。
【0018】
リニアガイド7は、長手方向が下部梁3Bの材軸方向に平行となるようにして下部梁3Bの上面3aに固定される案内レールであって、このレールに沿って接合治具10が摺動可能に支持されている。
【0019】
慣性質量ダンパー5は、軸方向の一方(図1で右側)の一端5aが接合治具10を介してブレース4に固定され、他方(図1で左側)の他端5bが第1ダンパー取付治具8を介して下部梁3Bと接続されている。このとき、第1ダンパー取付治具8は、下部梁3Bの上面3aに固定され、慣性質量ダンパー5の軸方向への変位を拘束している。
【0020】
オイルダンパー6は、互いに相対変位する部材間(上部梁3Aと下部梁3Bとの間)に介装され、両端の相対速度に比例した負担力を備え、慣性質量ダンパー5に対して軸方向が同軸線上となっている。つまり、オイルダンパー6は、同調時に慣性質量ダンパー5に生じる増幅された変位が伝達され、この増幅された変位のエネルギーを吸収する機能を有し、軸方向の一方(図1で左側)の一端6aが接合治具10を介してブレース4に固定され、他方(図1で右側)の他端6bが第2ダンパー取付治具9を介して下部梁3Bと接続されている。このとき、第2ダンパー取付治具9は、下部梁3Bの上面3aに固定され、オイルダンパー6の軸方向への変位を拘束している。
【0021】
次に、上述した制振装置1Aの作用について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本制振装置1Aでは、地震の振動などにより上部梁3Aと下部梁3Bとが相対変位すると、ブレース4と下部梁3Bとが慣性質量ダンパー5を介して相対変位することになる。そして、制振ダンパーの機能を有するブレース4が用いられることで、慣性質量ダンパー5の負担力が大きくなっても直列に配置したブレース4により荷重が頭打ちされて過大な反力が生じるのが防止される。そのため、慣性質量ダンパー5の負担力を頭打ちさせることができ、過負荷防止機構と同様のフェールセーフ機構を実現することができる。
【0022】
また、本制振装置1Aでは、慣性質量ダンパー5には、下部梁3Bに対して支持されるオイルダンパー6が並列に接合されているので、静的剛性をもたない慣性質量ダンパー5に対して、付加減衰機構をなすオイルダンパー6によって振動を減衰させることができ、残留変形も抑制することができる。
【0023】
上述のように本第1の実施の形態による慣性質量ダンパーを用いた制振装置では、直列に配置したブレース4により慣性質量ダンパー5の荷重が頭打ちされて過大な反力が生じるのを抑制することができるため、慣性質量ダンパー5に過負荷防止機構を設ける必要がなくなる。したがって、一般的に用いられる部材による単純な機構により建物に制振装置1を組み込むことが可能となるので、コストの低減を図ることができる。
【0024】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0025】
(第2の実施の形態)
図2に示すように、第2の実施の形態の制振装置1Bは、ブレース4が上下方向に反転した逆V型のブレース4を架構Rの面内に配置したものである。
つまり、ブレース4は、一対の下端部4c、4c(固定端)がそれぞれ架構Rの角部(柱2と下部梁3Bとの接合部)に一体的に固定され、V字頂点部4d(摺動端)が接合治具10に接続している。ここで、接合治具10は、上部梁3Aの下面3bに対して接合していない状態であり、ブレース4のV字頂点部4dが固定されるとともに、摺動方向Xの一端10aに慣性質量ダンパー5の軸方向(ストローク方向)の一端5aが接続され、さらに摺動方向Xの他端10bにオイルダンパー6の軸方向の一端6aが接続されている。
【0026】
そして、慣性質量ダンパー5は、軸方向の一方(図1で右側)の一端5aが接合治具10を介してブレース4に固定され、他方(図1で左側)の他端5bが第1ダンパー取付治具8を介して上部梁3Aと接続されている。
一方、オイルダンパー6は、軸方向の一方(図1で左側)の一端6aが接合治具10を介してブレース4に固定され、他方(図1で右側)の他端6bが第2ダンパー取付治具9を介して上部梁3Aと接続されている。
【0027】
本第2の実施の形態による制振装置1Bでは、上述した第1の実施の形態と同様に、地震の振動などにより上部梁3Aと下部梁3Bとが相対変位すると、ブレース4と上部梁3Aとが慣性質量ダンパー5を介して相対変位することになる。そして、制振ダンパーの機能を有するブレース4が用いられるので、慣性質量ダンパー5の負担力が大きくなっても直列に配置したブレース4により荷重が頭打ちされて過大な反力が生じるのが防止されるという作用、効果を奏する。
【0028】
(第3の実施の形態)
図3に示すように、第3の実施の形態による制震装置1Cは、上述した第1の実施の形態の制震装置1A(図1)の構成を一部変更した構成であって、ブレース4にリリーフ機構付きオイルダンパー(以下、ブレース用オイルダンパー11という)を介装し、さらに上述した第1の実施の形態で接合治具10と下部梁3Bとの間に設けられるオイルダンパー6に代えて復元ばね12(付加ばね)を設けた構成となっている。なお、慣性質量ダンパー5は、第1の実施の形態と同様の構成であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0029】
ブレース用オイルダンパー11は、その軸方向を、ブレース4を構成する一対の直線部41、42のそれぞれの材軸方向Jに向けた状態で、各直線部41、42に組み込まれており、リリーフ弁等のリリーフ機構を設けることで過負荷が防止される特性を有している。
ここで、ブレース4の長さ寸法が大きい場合には、ブレース用オイルダンパー11に鋼材(鋼管等)を材軸方向に一体化して延長し、その両端にクレビスやボールジョイントを設けた構成としても良い。
【0030】
復元ばね12は、ばねの伸縮方向(付勢方向)の一方(図1で左側)の端部12aが接合治具10を介してブレース4に固定され、他方(図1で右側)の端部12bが第2ダンパー取付治具9を介して下部梁3Bと接続されている。
【0031】
第3の実施の形態による制振装置1Cでは、相対変位が生じて慣性質量ダンパー5の負担力が大きくなっても、慣性質量ダンパー5に対して接合治具10を介して直列に配置されるブレース4のリリーフ荷重によって頭打ちとなるため、反力を抑制することができ、過大な反力が生じることがなくなる効果を奏する。
さらに、慣性質量ダンパー5には上部梁3Aに対して弾性支持される復元ばね12が並列に接合されているため、静的剛性をもたない慣性質量ダンパー5やブレース用オイルダンパー11に対して、復元ばね12の弾性によって復元性を付与させることができるので、残留変形を抑制することができる。
【0032】
(第4の実施の形態)
次に、図4および図5に示すように、第4の実施の形態による制振装置1Dは、上述した第1〜第3の実施の形態では層間(上部梁3Aと下部梁3Bとの間の架構R)に設置する構成としたが、これに代えて建物の2層、あるいは3層など複数層(本第4の実施の形態では2層)にわたって配置された構成となっている。
この場合、上部梁3Aと下部梁3Bとの間に中間階の中間梁3Cが設けられており、その中間梁3Cの位置は制振装置1Dと干渉しないように架構面に対して直交する方向にずれた位置に配置されている。
【0033】
ブレース4は、上部梁3Aと中間梁3Cとの間の上部架構Raに設けられる上部ブレース4Aと、中間梁3Cと下部梁3Bとの間の下部架構Rbに設けられる下部ブレース4Bとからなる。
上部ブレース4Aは、V型をなし、その一対の上端部4b、4bが上部梁3Aに固定されるとともに、V字頂点部4aが中間梁3Cに対して第1接合治具10Aを介して摺動可能に支持されている。この上部ブレース4Aは、鋼材ダンパーまたは摩擦ダンパー等のブレースダンパーが採用されている。
下部ブレース4Bは、略逆V型をなし、その一対の下端部4c、4cが下部梁3Bに固定されるとともに、V字頂点部4dが中間梁3Cに対して第2接合治具10Bを介して摺動可能に支持されている。この下部ブレース4Bは、降伏しない部材からなる耐震ブレースが採用されている。
【0034】
上部ブレース4Aに接続される第1接合治具10Aは、中間梁3Cの材軸方向中央部に配置され、摺動可能に支持するリニアガイド7が中間梁3Cの側方に設けられている。
下部ブレース4Bに接続される第2接合治具10Bは、中間梁3Cの材軸方向で第1接合治具10Aよりも柱2A寄りの位置、すなわち第1接合治具10Aに対して慣性質量ダンパー5を介して設けられ、そのリニアガイド7が中間梁3Cの側方に設けられている。
そのため、第1接合治具10Aおよび第2接合治具10Bは、それぞれのリニアガイド7に対して横向きの状態で摺動可能に係合した構成となっている。
【0035】
慣性質量ダンパー5は、下部梁3Bと上部梁3Aとの相対変位を同調時に増幅させる機能を有するとともに減衰機構を備えており、軸方向の一方(図4で右側)の一端5aが第1接合治具10Aを介して上部ブレース4Aに固定され、他方(図4で左側)の他端5bが第2接合治具10Bを介して下部ブレース4Bに固定されている。
【0036】
また、第1接合治具10Aにおける摺動方向Xで慣性質量ダンパー5と反対側の端部(他端10b)は、復元ばね12を介して柱2(第2柱2B)に接続されている。
復元ばね12は、ばねの伸縮方向P(付勢方向)の一方(図1で左側)の端部12aが第1接合治具10Aを介して上部ブレース4に固定され、他方(図1で右側)の端部12bが連結部材13を介して第2柱2Bに接続されている。
【0037】
このように構成される第4の実施の形態による制振装置1Dでは、2層をまたいで設置することで、慣性質量ダンパー5に作用する変位を稼ぐことができ、つまりブレース4と慣性質量ダンパー5とを直列に配置した本制振装置に生じる相対変位が大きくなるので、制震効果を増大することができる。これは、制振装置に変位拡大機構を設けた場合において、その等価な減衰係数や慣性質量が増大するのと同様の効果である。
【0038】
以上、本発明による慣性質量ダンパーを用いた制振装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1の実施の形態および第2の実施の形態では慣性質量ダンパー5と並列にオイルダンパー6を設けているが、これに限らず、例えば慣性質量ダンパーに減衰機能をもたせたものを採用することも可能であり、その場合にはオイルダンパーは不要となる。また、接合治具10の両側に慣性質量ダンパー5を配置するようにしても良い。
【0039】
また、複数層(2層)をまたいで制振装置を設置する場合において、第4の実施の形態では鋼材ダンパーまたはオイルダンパーよりなるブレース4を上層側の上部架構Raに配置しているが、上部架構Raと下部架構Rbとのいずれか一方に配置されれば良い。
【0040】
さらに、本実施の形態による制振装置は、新設構造物が適用対象であることに限定されることはなく、既存構造物の柱梁2、3に上記のブレース4等を接合してもよい。
また、図6のように既存柱梁の架構Rの面内に鉄骨枠14を設け、この枠中に上述した実施の形態による制振装置(図6では第1の実施の形態による制振装置1A)を配置することで、RC構造物でも鉄骨構造物でも同様の効果が得られる。なお、この鉄骨枠14と躯体(柱梁)との間の隙間には、モルタル等が充填された構造となっている。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A〜1D 制振装置
2、2A、2B 柱
3A 上部梁(第1梁)
3B 下部梁(第2梁)
3C 中間梁
4 ブレース
5 慣性質量ダンパー
6 オイルダンパー(付加減衰機構)
7 リニアガイド
8 第1ダンパー取付治具
9 第2ダンパー取付治具
10、10A、10B 接合治具
11 ブレース用オイルダンパー
12 復元ばね(付加ばね)
R 架構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の隣り合う柱と上下方向に隣り合う梁とによって囲まれる架構内に介装される慣性質量ダンパーを用いた制振装置であって、
固定端が上階梁及び下階梁のいずれか一方の第1梁に固定されるとともに、摺動端が他方の第2梁に摺動可能に設けられた制振ダンパーの機能を有するブレースと、
一端が前記第2梁に固定され、他端が前記ブレースの摺動端に固定された慣性質量ダンパーと、
を備え、
前記ブレースと前記慣性質量ダンパーとが直列に接合されていることを特徴とする慣性質量ダンパーを用いた制振装置。
【請求項2】
前記慣性質量ダンパーには、前記第2梁に対して支持される付加減衰機構が並列に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の慣性質量ダンパーを用いた制振装置。
【請求項3】
前記慣性質量ダンパーには、前記第2梁に対して弾性支持される付加ばねが並列に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の慣性質量ダンパーを用いた制振装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122228(P2012−122228A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272690(P2010−272690)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】