説明

懸濁重合により製造される溶融成形可能なテトラフルオロエチレン/フッ化ビニルエーテルコポリマー

テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーは、フッ素含有の有機溶媒を本質的に含まない水性媒体、フリーラジカル開始剤およびテロゲンを含み、加圧されかつ攪拌される反応容器内で、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとを共重合させることによって、懸濁重合法で製造される。反応容器の内容物は、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルのコポリマーを凝固させるために、重合反応の間に十分に攪拌される。約1×106Pa・S未満の溶融粘度を有する、溶融成形可能で強靭なコポリマーは、反応容器から直接分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融成形可能なテトラフルオロエチレン/フッ化ビニルエーテルコポリマーを製造するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン(TFE)のようなフッ化モノマーから製造されたポリマーは、強靭性、耐化学性および耐熱性、腐食防止、剥離性、清浄性、低引火性および耐候性を含む物性に優れている。高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーは、フッ化ポリマーのうち熱安定性が最も優れているが、溶融流動性が非常に低く、これらのポリマーの成形を難しくする。TFEポリマーの溶融流動性は、エチレン性不飽和モノマーと共重合させることによって増加させることができ、溶融押出または射出成形により成形が可能に十分に高い流動性を有するプラスチックを製造できることが知られている。
【0003】
ベリー(Berry)の米国特許公報(特許文献1)およびブロ(Bro)の米国特許公報(特許文献2)には、TFEとエチレン性不飽和コモノマーを重合させることによって、破損せずに180゜に曲げられる透明なフィルムにホットプレスされ得る強靭なポリマーを製造することが開示されている。重合は、ベリーが教示した通り、フッ素系界面活性剤を使用して水性分散重合法で行われたり、ブロが教示した通り、フッ化非水性液体溶媒で行われることができる。米国特許公報(特許文献3)では、ハリス(Harris、Jr)らは、特別にTFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)をフッ素系溶媒で共重合させて、有用な最終製品に溶融成形可能な程度に十分な溶融流動性を有する、溶融加工性のポリマーを製造することが開示されている。
【0004】
TFE共重合のさらなる開発において、カルーソン(Carlson)の米国特許公報(特許文献4)およびグレシャム(Gresham)らの米国特許公報(特許文献5)には、溶融加工性のTFE/PAVEコポリマーを重合するにあたって、連鎖移動剤(CTA)使用の利点が開示されている。連鎖移動剤の使用によっては、溶融加工の容易性を減少させることなく、2つの非常に好ましい2次属性、すなわち(1)増加した熱安定性のための不安定な末端基の減少および(2)押出時に膨潤を減少させる狭い分子量分布を付与する。カルーソンは、フッ素系溶媒で共重合を実施し、グレシャムは、フッ素系界面活性剤を使用して水性分散重合を実施して、TFE/PAVEコポリマーのコロイド状態で安定した分散液を製造した。
【0005】
溶融加工性のないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を製造するためのテトラフルオロエチレン(TFE)の一般的な重合法には、(1)分散重合および(2)懸濁重合の2つの方法が周知である。水性懸濁重合法は、界面活性剤(分散剤)をほとんどまたは全く使用せず、有機溶媒を使用しないという長所があり、水性媒体からポリマーを直接分離できる。これら全ては、分散重合と対照をなすもので、分散重合では、多量の界面活性剤を用いるので、追加費用が発生し、界面活性剤の回収および/または処理を要する。さらに、分散重合では、生成物を分離するために、凝固および洗浄のような次の工程を必要とする。
【0006】
ナカガワ(Nakagawa)らの米国特許公報(特許文献6)には、懸濁重合でテトラフルオロエチレン/フッ化(アルキルビニルエーテル)コポリマーを製造しようという試みが記載されている。しかし、使われた媒体が、水とフッ化炭化水素又は塩化フッ化炭化水素との混合媒体である。
【0007】
界面活性剤および溶媒の使用を排除し、かつ最小化することができ、コポリマー生成物を簡単に分離することができる改善されたテトラフルオロエチレンコポリマーの製造方法が求められている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,559,752号明細書
【特許文献2】米国特許第2,952,669号明細書
【特許文献3】米国特許第3,132,123号明細書
【特許文献4】米国特許第3,642,742号明細書
【特許文献5】米国特許第3,635,926号明細書
【特許文献6】米国特許第4,499,249号明細書
【特許文献7】米国特許第6,013,719号明細書
【特許文献8】米国特許第3,245,972号明細書
【特許文献9】米国特許第5,405,923号明細書
【特許文献10】米国特許第4,380,618号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フッ素含有の有機溶媒を本質的に含まない水性媒体、フリーラジカル開始剤およびテロゲンを含有する、加圧されかつ攪拌される反応容器内で、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとを共重合させることによって、懸濁重合法でテトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造する方法を提供する。テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルのコポリマーを凝固させるために、反応容器の内容物は、重合中に十分に攪拌される。約1×106Pa・S未満の溶融粘度を有し、溶融成形可能で強靭なコポリマーは、反応容器から直接分離される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、反応容器の内容物が界面活性剤を含まず;テロゲンがフッ素不含有の有機化合物を含み;反応容器の攪拌が、重合で製造されたテトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを約90重量%より多くを凝固させるのに十分であるように本方法が実行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、懸濁重合法を用いて溶融成形可能で強靭なテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニルエーテル(FVE)のコポリマーを製造することに関する。本発明の目的では「コポリマー」という用語は、2つ以上のコモノマーから誘導された反復単位を含むポリマーを単独重合体に含むことを意図する。
【0012】
「溶融成形可能の」という用語は、製造されたコポリマーの特性を示すために使われ、このようなポリマーを、マイクロパウダーと呼ぶことがある、低溶融粘度のPTFEなどの溶融流動性を有するものと見なされているポリマーと区別する。
【0013】
ラヒザニ(Lahijani)の米国特許公報(特許文献7)に教示された通り、低溶融粘度(MV)のPTFEは、熱安定性、化学的不活性、潤滑性および高MV PTFEと同様の高い溶融温度を有する。このPTFEの非常に低いMVは、このPTFEを溶融流動性とするが、このPTFEの非常に低い分子量は、強度を低下させるので、これらの低MV PTFEから溶融押出により成形された物品は、取扱に際して破損する。例えば、MVの測定(ASTM D1238−527)で押出されたビーズ(beading)は、僅かの曲げによっても破損し、射出成形で形成された引っ張り試験用サンプルは、引っ張り試験器でのクランピングによっても破れるので、樹脂は、測定可能な引っ張り強度を有しない。したがって、溶融流動性があっても、低MV PTFEは、溶融成形が不可能であり、マイクロパウダーを液体潤滑剤における添加剤や支持基材に使用するコーティング剤における添加剤のような用途に降格させる。
【0014】
したがって、溶融成形が可能であることは、ポリマーは、ASTM D1238−527に記載されたように、毛細管を介して押出されることができ、フィルムや薄壁チューブのような物品に成形され得るのに十分な強靭性と完全性とを有していることを意味する。
【0015】
強靭なポリマーは、薄膜に成形されることができ、破損せずに180゜に曲げられるポリマーと定義される。本発明で、強靭性に寄与する本質的な物性の2種類は、(1)フッ化ビニルエーテル含量と、(2)ポリマーの溶融粘度である。
【0016】
本方法は、ポリマーの総重量を基準にして、約1〜約20重量%のフッ化ビニルエーテル、より好ましくは、約3〜約20重量%のフッ化ビニルエーテル、より一層好ましくは、約3〜約15重量%のフッ化ビニルエーテル、最も好ましくは、約3〜約10重量%のフッ化ビニルエーテルを含有するテトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフッ化ビニルエーテルを用いる。
【0017】
製造されるコポリマーは、約1×106Pa・S未満の溶融粘度、好ましくは、約1×102Pa・S〜約1×106Pa・S、より好ましくは、 約5×102Pa・S〜約5×104Pa・S、最も好ましくは、 約1×103Pa・S〜約3.5×104Pa・Sの溶融粘度を有する。
【0018】
フッ化ビニルエーテルコモノマーは、好ましくは、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)であり、ここで、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を含むものである。例えば、PAVEは、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)またはペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)であることができる。必要に応じて、2つ以上のフッ化ビニルエーテルが使用することができ、例えば、PMVEとPPVEが使用することができる。
【0019】
本発明のさらに好ましい形態において、本方法は、FVEと共に、5重量%までのフルオロオレフィンコモノマー単位を含有する、TFEとFVEとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフルオロオレフィンを用いる。本発明の最も好ましい形態において、フルオロオレフィンは、ヘキサフルオロプロピレンである。
【0020】
本発明の方法は、高分子量PTFEに対して当該技術分野に周知のTFE懸濁重合と同様に行われることができ、攪拌される反応容器に水を予め充填する工程、脱酸素する工程、所定の圧力までにTFEで加圧する工程、使用する場合、フッ化ビニルエーテル(FVE)とフルオロオレフィンコモノマーを添加する工程、および重合反応を開始し維持するのに十分な濃度でフリーラジカル開始剤を添加する工程を含む。本発明では、テロゲンが添加され、好ましくは、プレチャージに添加される。付加的に、本発明で、水性媒体は、フッ素含有の有機溶媒を本質的に含まない。TFEは、重合が進行する間に、所定の基準によって、例えば、特定の圧力を維持するように、または特定の供給速度で、反応容器に注入される。ある重合では、重合が進行する間に、追加のフッ化ビニルエーテル(および使用する場合にはフルオロオレフィンコモノマー)を反応容器に添加することが有利である。
【0021】
本発明の方法では、使用可能なあらゆる圧力も用いられる。高圧は、反応速度の増加において低圧に比べて有利である。低圧は、コモノマー結合の増加において高圧に比べて有利である。一般的に、約0.3〜7MPaの範囲の圧力が使われ、0.7〜3.5MPaの範囲の圧力が好ましい。0.7〜2.5MPaの範囲の圧力がより好ましく、0.7〜1.9MPaの範囲の圧力が特に好ましい。
【0022】
TFEの懸濁重合で使用する既知の重合温度が本発明の実施に使用することができる。温度の選択は、一般的に開始剤の温度依存度によって決定される。一般的に、本発明による共重合は、約0℃〜約100℃の温度、より好ましくは、約10℃〜約90℃、最も好ましくは、約15℃〜約75℃の温度で行われる。
【0023】
アンダーソン(Anderson)らの米国特許公報(特許文献8)に記載されたような標準懸濁重合法と同様に、本発明の方法でも、TFEとフッ化ビニルエーテルコモノマーが水中で溶解し、重合して、小さい固形の水に濡れた核を形成すると考えられる。水に濡れた核の大きさが十分に大きくなった時、水に濡れた核は、水性媒体を攪拌することで凝固され、凝集された水に濡れない粒子を形成する。さらなる重合が、主に凝集された水に濡れない粒子の表面において増加された速度で生じ、見掛け上、溶解したモノマーと水に濡れた粒子との接触よりはむしろ気体状態のモノマーと水に濡れない凝集体との直接接触により生じると考えられる。しかし、標準懸濁重合との大きな違いは、フッ化ビニルエーテルコモノマーの使用と共に、溶融成形可能なコポリマーを得るためのテロゲンの添加だけでなく、開始剤の増加された添加量である。
【0024】
高分子量PTFEの懸濁重合法と同様に、本重合法でも、反応容器をテトラフルオロエチレンコポリマーを凝固させるために十分に攪拌させる。好ましい実施形態において、攪拌器は、アテン(Aten)の米国特許公報(特許文献9)に記載された通り、約300〜約800rpmの範囲で稼働される。ポリマーは、重合中に凝固するため、生成されたポリマーから水性媒体をドレインし、乾燥させることによって、水性媒体から直接分離することができる。これら全ては、分散重合と対照をなすもので、分散重合では、分離するために、凝固および洗浄のような次の工程が必要である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、溶融成形可能なTFEコポリマーの約90重量%より多く、より好ましくは、約95重量%より多く、最も好ましくは、約98重量%より多くを凝固させるように、攪拌が十分に行われる。一般的に、本発明の実施形態において、攪拌は、溶融成形可能なTFEコポリマーを約90重量%〜約100重量%凝固させるように十分に実施される。後述する本発明の実施例において、液相に残っている固体の量が、一般的に2.0重量%未満であり、しばしば、1.0重量%未満であることが分かる。
【0026】
懸濁重合法は、ポリマーの分子量を減少させるテロゲンの存在下に実施し、テロゲンは、また連鎖移動剤(CTA)として知られている。そのメカニズムは、成長する鎖状ポリマーラジカルによりテロゲンから水素や他の容易に抽出できるラジカル基を抽出することで構成され、成長する鎖状ポリマーラジカルは、成長するポリマーチェインを終結させる。テロゲン分子それ自体は、ラジカルとして残され、これにより、慣用句である「連鎖移動」となる。本発明の方法で使用するテロゲンは、好ましくは、フッ素を含有しない有機化合物である。反応が低分子量のポリマーを成功的に重合するのに比較的少量のテロゲンを必要とするという点から、テロゲンは、「活性」と定義することができる。テトラフルオロエチレン、フッ化ビニルエーテルおよびテロゲンのプレチャージを反応容器にプレチャージし、重合が進行する間に、テトラフルオロエチレンを追加に注入することにより、重合反応を実施する時に、テロゲンは、プレチャージ内に存在するテトラフルオロエチレンおよびテロゲンを基準にして、好ましくは、約0.1モル%〜約20モル%、より一層好ましくは、約0.5モル%〜約10モル%、最も好ましくは約0.5モル%〜約5モル%の濃度で存在する。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態において、テロゲンは、1〜6個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素である。好ましいテロゲンの一例は、エタンである。
【0028】
本発明の懸濁重合法は、単一の液相、すなわちフッ素含有の有機溶媒を本質的に含まない水性媒体で行われる。水は、便利で、広い温度範囲で液体であり、安価で且つ安全である。
【0029】
本発明のコポリマーを製造するための反応法で、開始剤は、高分子量の粒状PTFEの標準重合反応に対して通常使用する量よりも高濃度で使用する。増加した開始剤濃度は、分子量を減少させ、重合速度を維持するのに役立つ。開始剤の量は、重合温度と開始剤の種類によって決まるが、本発明の場合、その使用量が高分子量の粒状PTFEを得るのに使用する量の10〜500倍になることができる。本発明の実施で使用することができる開始剤には、使用する温度範囲で有効なTFE重合用フリーラジカル開始剤ならどんなものでも使用することができる。水性重合で通常使用する開始剤は、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、またはこれらの組み合わせのような熱活性化した水溶性フリーラジカル開始剤、または過マンガン酸カリウム/シュウ酸/重亜硫酸カリウム、過硫酸カリウム/重亜硫酸カリウム/硫酸鉄、または臭素酸カリウム/重亜硫酸カリウム/シュウ酸などのような化学活性化したレドックス系であることができる。
【0030】
本発明の方法は、反応容器の内容物が界面活性剤を本質的に含まない状態で、すなわち界面活性剤の量が、存在する水の量を基準にして約0.010重量%未満である状態で実施することが好ましい。本発明に係る好ましい方法では、重合後に回収および/または処理による費用が追加的に発生する分散重合法に通常使われているフッ素系界面活性剤の使用を最小化したり、または使用しない。
【0031】
本発明の方法により製造されるポリマーは、押出、射出成形、回転成形および回転ライニングのような標準プラスチック加工法で成形することができる。該ポリマーは、フィルム、シートおよび繊維のような成形物品にも製造されることができる。該ポリマーは、弁、パイプ、タンクライナーとして使用することができる。これらは、小さいオリフィスを経て管に押出させることができ、ワイヤ被覆に適している。これらは、トレイ、ラックおよび容器のような物品に成形することもできる。
【0032】
(試験方法)
毛細管を介しての押出により測定される溶融粘度(毛細管または押出粘度)は、米国特許公報(特許文献10)に記載された通り、変形されたASTM法D1238−52Tで372℃で測定する。
【0033】
フッ化ポリマー組成は、380℃で押圧された0.095〜0.105mm厚みのフィルム上でフーリエ変換赤外(FTIR)分光法で測定される。4.25μmでのFTIRバンドは、内部厚み標準として使用する。PPVE含量は、10.1μmでのFTIRバンドから測定し、0.97×(4.25μm吸収度に対する10.1μm吸収度の比率)の重量%で計算する。PEVE含量は、9.18μmでのFTIRバンドから測定し、0.75+1.28×(4.25μm吸収度に対する9.18μm吸収度の比率)の重量%で計算する。PMVE含量は、11.2μmでのFTIRバンドから測定し、7×(4.25μm吸収度に対する11.2μm吸収度の比率)の重量%で計算する。
【0034】
強靭なポリマーは、曲げ試験で測定する。ポリマーは、約2mil(50μm)〜約10mil(250μm)の厚みを有する5cm×5cm大きさの透明フィルムにホットプレスされる。フィルムをあたかも一枚の紙を畳むように180゜に曲げて半分に畳む。ポリマーは、破損せずに曲げられる場合、強靭なものと見なされる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
重合は、ジャケット内に包まれている37.9リットル−ステンレス製オートクレーブで実施し、ジャケットを介して熱伝逹液が加熱または冷却のために循環する。このオートクレーブには、2つの刃を有し45゜の角度をなしている平らなダウンドラフト攪拌器が垂直軸に装着されて具備されている。圧力は、絶対値として報告される。
【0036】
オートクレーブは、脱塩水21.3Lとクエン酸1gで充填される。酸素を除去した後、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)300gをストップコックを介して充填する。オートクレーブを25℃まで冷却させ、エタンを注入して圧力を3.4kPaまで上昇させる。オートクレーブを65℃でTFEで1.83MPaまで加圧する。開始剤として、総27gのAPSを注入する。開始後に、TFE供給弁を開き、反応の次の過程の間に、圧力が1.83MPaに維持されるように、追加のTFEモノマーをオートクレーブに継続して供給する。APS溶液を80分間1分当り0.225gの速度でオートクレーブに継続して注入する。同時に、追加のPEVEを80分間に1分当り4.5gの速度で、開始時から追加されるPEVEの合計360gに対してオートクレーブに注入する。反応が進行される間、温度は、65℃に維持される。開始時から100分間の反応が測定された後、2449gのTFEがポリマーに転換された。この際、TFE供給弁を閉じ、過量のモノマーをオートクレーブから取り出す。ポリマーは、水性媒体をドレインして、粒状の濡れたポリマーを残すことによって、反応容器から直接分離する。重合の濡れた生成物は、約150℃で24〜48時間空気循環式オーブン内で乾燥させることにより完成される。
【0037】
生成されたポリマーは、7.09重量%のPEVEコモノマーを含有し、毛細管押出で測定した溶融粘度は、3.1×103Pa・Sであった。分離後、水相に残った固体ポリマーは、水相を基準にして0.58重量%である。生成されたコポリマーは、破損せずに、曲げ試験を通過できる。
【0038】
(実施例2〜13)
実施例1の手順が実施例2〜13にも反復され、方法条件と生成されたコポリマーを表1に示した。生成された全てのコポリマーは、破損せずに、曲げ試験を通過できる。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを懸濁重合法で製造する方法において、
フッ素含有の有機溶媒を本質的に含まない水性媒体、フリーラジカル開始剤およびテロゲンを含有する、加圧されかつ攪拌される反応容器内で、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとを共重合させる工程と、
テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとのコポリマーを凝固させるために、前記反応容器の内容物を重合の間に十分に攪拌する工程と、
約1×106Pa・S未満の溶融粘度を有する、前記溶融成形可能で強靭なコポリマーを、前記反応容器から直接分離する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、約1〜約20重量%のフッ化ビニルエーテルを含有する、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフッ化ビニルエーテルを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、約3〜約20重量%のフッ化ビニルエーテルを含有する、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフッ化ビニルエーテルを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、約3〜約15重量%のフッ化ビニルエーテルを含有する、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフッ化ビニルエーテルを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、約3〜約10重量%のフッ化ビニルエーテルを含有する、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフッ化ビニルエーテルを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、5重量%までのフルオロオレフィンコモノマー単位を含有する、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーを製造するために十分な量のフルオロオレフィンコモノマーを用いる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロオレフィンがヘキサフルオロプロピレンであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応容器の前記内容物は界面活性剤を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記テロゲンはフッ素不含有の有機化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記テロゲンが1〜6個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの溶融粘度が、約1×102Pa・S〜約1×106Pa・Sの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの溶融粘度が、約5×102Pa・S〜約5×104Pa・Sの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの溶融粘度が、約1×103Pa・S〜約3.5×104Pa・Sの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応容器内の前記内容物の攪拌は、前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの約90重量%より多くを凝固させるのに十分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応容器内の前記内容物の攪拌は、前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの約95重量%より多くを凝固させるのに十分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記反応容器内の前記内容物の攪拌は、前記テトラフルオロエチレンとフッ化ビニルエーテルとの溶融成形可能で強靭なコポリマーの約98重量%より多くを凝固させるのに十分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記重合は、前記反応容器にテトラフルオロエチレン、フッ化ビニルエーテルおよびテロゲンを含むプレチャージを供給し、前記重合の進行中に、追加のテトラフルオロエチレンを前記反応容器に注入することによって行われ、前記テロゲンが、前記プレチャージに存在するテトラフルオロエチレンおよびテロゲンを基準にして約0.1モル%〜約20モル%の濃度で存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
追加のフッ化ビニルエーテルが、前記重合の進行中に、前記反応容器に添加されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フッ化ビニルエーテルは、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)であり、前記アルキル基は、1〜6個の炭素原子を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523761(P2006−523761A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509784(P2006−509784)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/010709
【国際公開番号】WO2004/094492
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】