説明

成分測定装置

【課題】シール部材の密封性能が周方向において変化してしまい、周方向の全範囲に亘って略均一な密封性能が得られないという問題があった。
【解決手段】第1の嵌合溝を有する上ケース7と、第2の嵌合溝を有する中ケース9と、両ケース間に介在される無端状に連続した十字形シール80と、を備えている。十字形シールは、第1の嵌合溝71に嵌合され且つ周方向に連続した第1の突条部80aと、第2の嵌合溝72に嵌合され且つ周方向に連続した第2の突条部80bと、第1のケース及び第2のケース間に介在され且つ周方向に連続した封止部80cと、を有している。第1の突条部80aは、第1の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されて他方の側面を第1の嵌合溝の側面に押圧する弾性突起部82を有する。第2の突条部80bは、第2の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されて他方の側面を第2の嵌合溝の側面に押圧する弾性突起部84を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液中の血糖値のような体液中の所定成分の量や性質等を測定する成分測定装置に関し、特に、筐体等を構成する部材相互の突合せ部におけるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
体液中の所定成分を検出し、その所定成分の量や性質等を測定するために、種々の体液成分測定装置が用いられている。このような体液成分測定装置の例としては、例えば、血液中のブドウ糖濃度を測定する血糖計を挙げることができる。
しかし、この血糖計によって測定される血糖測定の課題として、血糖計に血液が付着した場合の交差感染の問題がある。これを解決するために、血糖計には、血糖値を測定した後に、付着した血液等の汚れを容易に清掃できることが望まれている。
【0003】
一般に、血糖計等の成分測定装置は、成分測定を行うための中心的役割りを果たす測定機構部と、その測定機構部を覆って保護する筐体とから構成されている。筐体は、測定機構部の出し入れ、部品交換等を可能とするために、2つ又は3以上の部品(例えば、上ケースと下ケース)によって構成されており、必要時に、分解・組立が可能とされている。そのため、筐体には、必然的に部品相互間の突合せ部が発生し、その突合せ部に血液等の汚れが付着したり、その汚れが突合せ部から筐体内に入り込むおそれがあった。
【0004】
そこで、血糖計等の成分測定装置の筐体には、一般的に、パッキンを用いた防水構造が採用されており、水洗い等の清掃作業が容易に行えるようになっている。そのような防水構造は、一般的には、突き合される2つの部品間にパッキンを介在させ、2つの部品でパッキンを押圧して密着させることによって行われている。この場合、パッキンを弾性変形させるために、ある程度大きな締付力を2つの部品に加える必要がある。そのため、筐体の組立のために多数のネジが必要であったり、筐体自体の剛性を十分に大きくする必要があった。
【0005】
このような問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、電子機器の筐体の分割面に設けるパッキンの構造に関するものが記載されている。この電子機器の防滴構造は、着脱可能に嵌合される第1のケース及び第2のケースからなる電子機器の筐体に適用されるもので、第1のケースの開口端面に周溝が形成され、その周溝を用いて周状のパッキンが第1のケースと第2のケースの間に介在されている。パッキンは、周溝に係合する第1の凸部と、その第1の凸部から延設されて2つのケース間に挟持される支持部と、第1の凸部と反対側に設けられて第2のケースの開口端面に押圧される第2の凸部とを有している、ことを特徴としている。
【0006】
この特許文献1に係る電子機器の防滴構造(以下「第1の従来例」という。)によれば、ケースの分割面の溝部に、一対の凸部の間に支持部が張り出した断面略十字形の周状パッキンを設けた構造なので、組立て性が良好であり、安定性に優れ、一般的な筐体の肉厚範囲内で実現可能である、という効果が期待される。
【0007】
また、特許文献2には、簡易組立式で電磁シールド効果の良好な電波シールド室の側壁のシールド用に用いられるパッキンに関するものが記載されている。この特許文献2に係る組立式電波シールド室のシールド用パッキンは、室の側壁を、複数の矩形ブロック板に形成したパネルで構成し、その各パネルの突き合わせ側部に断面台形状のシール係合溝を有する外枠部材を設置する。この相隣接するパネルの外枠部材間に、対向するシール係合溝に嵌着する断面略十字形状のパッキンにおける室内方向に突出する突条部全面に相隣接する各パネルの内壁面のシールド部材間のシールドを連続させるよう接続する金網シールドを被着したものを介在させて組み付ける、ことを特徴としている。
【0008】
この特許文献2に係る組立式電波シールド室のシールド用パッキン(以下「第2の従来例」という。)によれば、電波シールド室側壁における各パネル間の継目部分からの電波漏洩を防止し、電波シールド室のシールド効果を向上する、という効果が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−193496号公報
【特許文献2】実開昭63−134594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した第1の従来例の場合には、第1のケースの開口端面に設けた周溝の断面形状が四角形をなしていて、その周溝に嵌合されるパッキンの第1の凸部は、その周溝に見合う形状とされて、同程度の大きさで四角形に形成されていた。そのため、第1のケースに対して第2のケースを押圧したとき、第1のケースの周溝に対するパッキンの密封性能が周方向において変化してしまい、密封不良を生じるおそれがある。これにより、例えば、血糖計に血液が付着した場合、突合せ部に血液が入り込み清掃し難くなったり、また、内部に血液や洗浄水が浸入し、血糖計自体が正しく機能しなくなる可能性があるという問題があった。
【0011】
即ち、成形上のバラツキとして、第1の凸部の形状が周方向において均一でない状態でパッキンが製造されると、押圧されたときに、ある部分では周溝の外側の側壁に第1の凸部が圧接され、他の部分では周溝の内側の側壁に第1の凸部が圧接される状態が発生する。すると、パッキン全体において第1の凸部が、ある部分では周溝の外側の側壁に圧接され、他の部分では周溝の内側の側壁に圧接されるため、全体として第1の凸部が波打った状態になって筐体に装着される。その結果、第1の凸部の中心が周方向に波打った状態になることにより、周方向においてパッキンの密封性能が不均一となり、筐体の突合せ部における密封不良を生じるおそれがあった。
【0012】
また、第2の従来例の場合には、側部パネルに設けたシール係合溝の断面形状が開口側を広くした台形をなしており、これに係合される十字パッキンの嵌合突部が、シール係合溝の形状に対応させて先細の断面台形に形成されていた。そのため、嵌合突部がシール係合溝から抜け出し易い構造となっており、この十字パッキンで2つの側部パネルの突合せ部間を密封するためには、十分に大きな力で十字パッキンを締付けることが必要となる。その結果、十字パッキンをつぶすために多数のネジ止めが必要であったり、筐体自体の剛性を十分に大きく設定する必要があり、装置全体が大型化するという問題があった。なお、筐体を熱溶着や接着剤等を使用して固定すると、その後の分解修理が困難或いは修理不能になるという問題がある。
【0013】
解決しようとする問題点は、前述したような従来の技術においては、シール部材の密封性能が周方向において変化してしまい、周方向の全範囲に亘って略均一な密封性能が得られないという問題があった。また、シール部材をつぶすために多数のネジ止めが必要であったり、筐体自体の剛性を十分に大きく設定する必要があり、装置全体が大型化するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、分離可能に係合される第1のケース及び第2のケースと、これら第1のケース及び第2のケースの互いの開口端面が当接される突合せ部に介在される無端状に連続したシール部材と、を備えている。第1のケースの開口端面には、平行な一対の内側側面を有する無端状に連続された第1の嵌合溝を設けると共に、第2のケースの開口端面には、平行な一対の内側側面を有する無端状に連続された第2の嵌合溝を設ける。また、シール部材は、第1の嵌合溝に嵌合され且つ周方向に連続した第1の突条部と、第2の嵌合溝に嵌合され且つ周方向に連続した第2の突条部と、第1のケース及び第2のケース間に介在され且つ周方向に連続した封止部と、を有している。第1の突条部は、第1の嵌合溝より小さく且つ平行な一対の外側側面を有するベース部と、そのベース部の一方の外側側面から側方へ突出するように形成され且つ第1の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されてベース部の他方の外側側面を当該他方の外側側面に相対する第1の嵌合溝の内側側面に押圧する弾性突起部と、を有している。更に、第2の突条部は、第2の嵌合溝より小さく且つ平行な一対の外側側面を有するベース部と、そのベース部の一方の外側側面から側方へ突出するように形成され且つ第2の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されてベース部の他方の外側側面を当該他方の外側側面に相対する第2の嵌合溝の内側側面に押圧する弾性突起部と、を有することを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、血糖計等の成分測定装置において、その筐体の突合せ部におけるシール部材による密封性能を、そのシール部材の周方向の全範囲に亘って略均一に設定することができ、装置全体で略均一な密封性能が得られる。また、成分測定装置を、剛性を上げたり、大型化することなく、比較的簡単な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の成分測定装置の第1の実施例を示す組立斜視図である。
【図2】図1に示す成分測定装置の平面図である。
【図3】図1に示す成分測定装置の右側面図である。
【図4】図1に示す成分測定装置の正面図である。
【図5】図1に示す成分測定装置の平面側から見た分解斜視図である。
【図6】図1に示す成分測定装置の底面側から見た分解斜視図である。
【図7】図1に示す成分測定装置の採取具装着部及びその近傍の構成部品を分解した斜視図である。
【図8】本発明の成分測定装置の第1の実施例に係る採取具(チップ)を示すもので、図8Aは斜視図、図8Bは背面図、図8Cは側面図、図8Dは図8CのZ−Z線断面図である。
【図9】本発明の成分測定装置に採取具(チップ)を装着した状態の、図4に示すY−Y線断面図である。
【図10】本発明の成分測定装置の採取具装着部を断面して拡大した採取具(チップ)の離脱動作の説明図である。
【図11】図1に示す成分測定装置の筐体を断面してシール部材による封止状態を現した説明図である。
【図12】本発明の成分測定装置の第1の実施例に係るシール部材と第1のケース及び第2のケースとを断面して示した説明図である。
【図13】図12に示したシール部材と第1のケース及び第2のケースとの嵌合状態を現した説明図である。
【図14】本発明の成分測定装置の第2の実施例に係るシール部材と第1のケース及び第2のケースとを断面して示した説明図である。
【図15】図14に示したシール部材と第1のケース及び第2のケースとの嵌合状態を現した説明図である。
【図16】本発明の成分測定装置の他の実施例に係るシール部材を示すもので、図16Aは第3の実施例に係るシール部材、図16Bは第4の実施例に係るシール部材、図16Cは第5の実施例に係るシール部材、図16Dは第6の実施例に係るシール部材、図16Eは第7の実施例に係るシール部材、図16Fは第8の実施例に係るシール部材である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の成分測定装置を実施する形態の例について、図面を参照して説明する。図1〜図13は、本発明の成分測定装置の第1の実施例に係る血糖計1及びシール部材を示す図である。また、図14〜図16は、本発明の成分測定装置の他の実施例に係るシール部材を示す図である。なお、本発明は、この第1の実施例に示した血糖計1に限定されるものではない。
【0018】
図1〜図6に示す血糖計1は、医師や看護師等が、携帯電話のように手に持って操作するもので、その主な機能は、血液中の血糖値を測定したり、その血糖値の測定に関連する患者の氏名、投与する薬剤の確認や測定データの管理等を行うことができる装置である。この血糖計1は、中空の容器からなる筐体2と、その筐体2に内蔵された電源部3と、血糖値等を測定する測定部4と、入力事項や確認事項、測定結果等を表示する表示部5と、測定部4や表示部5の動作や表示等を制御する制御部6等を備えて構成されている。
【0019】
図1〜図4に示すように、筐体2は、人が片手で持って操作部の操作ボタンを容易に押圧操作できるように少し細長であって、人に持ち易い胴部11を有する立体形状とされている。この筐体2は、上下に重ね合わされる上ケース7及び下ケース8と、上下ケース7,8の内部に形成された空間内に収納される中ケース9とによって構成されている。中ケース9は下ケース8の凹部内に収容され、この中ケース9を覆い隠すように上ケース7が下ケース8の上に重ね合わされる構造となっている。そして、上ケース7と下ケース8を重ね合わせた状態で、3つのケース7,8,9が複数個の固定ねじによって組立・分解可能に構成されている。
【0020】
図1及び図2等に示すように、上ケース7の略中央部には、その表裏面を貫通する略長方形をなす開口窓15が設けられている。開口窓15には、これに見合う形状を有するパネルカバー16が嵌合されている。パネルカバー16の上面は、これよりも適宜に大きく形成された正面パネル17によって全面が覆われている。正面パネル17は、上ケース7の上面の背面側に配置された複数の操作スイッチを有するスイッチ群18をも覆うことができる大きさとなっている。スイッチ群18は、スイッチ用配線基板19を介して中ケース9に収納されており、各操作スイッチの入力部が上ケース7の操作部20の所定位置に臨むように構成されている。
【0021】
下ケース8の凹部内には、中ケース9を弾性的に支持するマウント部材40が設けられている。マウント部材40としては、例えば、O−リングを適用することができ、そのO−リングで中ケース9の下面を下方から支持している。そのため、下ケース8の凹部内には、マウント部材40を収容するための略四角形をなす保持溝41が設けられている。このマウント部材40で中ケース9の下面周縁を支持することにより、O−リングを圧縮したときの弾性とシール性を利用して、中ケース9を弾性的に支持している。
【0022】
図5及び図11に示すように、中ケース9は、上面に開口された略長方形をなす底の浅い容器状の部材からなり、下ケース8の凹部内に嵌まり合う大きさに形成されている。この中ケース9には、電源部3と表示部5と制御部6等が収納されている。電源部3は、中ケース9の底面部に設けた電池収納部47に収納される携帯用電源としての二次電池48を備えている。この二次電池48の電力により、測定部4や制御部6の動作、或いは表示部5の表示等が制御されるようになっている。この電源部3に用いられる二次電池としては、リチウムイオン電池が好適であるが、その他のニッカド電池やニッケル水素電池等を使用できることは勿論である。
【0023】
この中ケース9の電源部の上側に制御部6のメイン配線基板24と表示部3の平面表示パネル23が配置されている。そして、表示部3の背面側にスイッチ用配線基板19が配置されている。この筐体2の組立時、中ケース9に収納されている平面表示パネル23の表示面が、上ケース7に装着されているパネルカバー16の内側に対向される。平面表示パネル23としては、例えば、液晶パネルが好適であるが、有機ELパネルやその他の表示パネルを用いることができることは勿論である。
【0024】
メイン配線基板24には、所定形状に形成された電気回路が印刷配線等によって設けられている。そして、メイン配線基板24には、予め設定された所定の機能を実行するためのマイクロコンピュータ、予め所定のプログラムが記憶されたROMやRAM等の記憶装置、コンデンサや抵抗その他の電子部品が実装されている。このメイン配線基板24の上面に、図示しないスペーサを介して平面表示パネル23が取り付けられている。
【0025】
スイッチ用配線基板19の下方には、バーコードユニット58が配設されている。このバーコードユニット58は、患者や看護師等の識別タグのバーコードをスキャンして、患者や使用者の情報を読み込む装置である。このバーコードユニット58が、下ケース8の背面に設けた切欠き部27に受発光部を臨ませた状態で、筐体2に取り付けられている。
【0026】
図5及び図6に示すように、第1のケースの一具体例を示す上ケース7の周縁部7aの開口端面には、断面形状が四角形をなすと共にその断面形状が周方向に連続する無端状に連続された第1の嵌合溝71が設けられている。なお、第1の嵌合溝71の一対の内側側面は平行となるように形成されている。この第1の嵌合溝71に対応させて、第2のケースの一具体例を示す中ケース9の側面部9aの開口端面には、同じく断面形状が四角形をなすと共にその断面形状が周方向に連続する無端状に連続された第2の嵌合溝72が設けられている。第2の嵌合溝72の一対の内側側面は平行となるように形成されている。そして、これら第1の嵌合溝71と第2の嵌合溝72を用いて、上ケース7の開口端面と中ケース9の開口端面との間に、シール部材の第1の具体例を示す十字形シール80が介在されている。
【0027】
十字形シール80は、図12に示すような形状を有している。即ち、十字形シール80は、断面形状が十字形状をなしており、その断面形状が周方向に連続されて、全体として無端状に連続された略長方形をなすシール部材として形成されている。十字形シール80の4つの角部に形成されたクランク状の変形部は、筐体2を固定する固定ねじを避けるために設けたものである。
【0028】
この十字形シール80は、第1の嵌合溝71に嵌合される第1の突条部80aと、第2の嵌合溝72に嵌合される第2の突条部80bと、上ケース7の周縁部7aと中ケース9の側面部9aとの間に挟持される内外の封止部80c,80dとを有している。第1の突条部80aの反対側に第2の突条部80bが設けられている。そして、両突条部80a、80bの長手方向の中間部において、その長手方向と直交する方向の一側に第1の封止部80cが設けられ、この第1の封止部80cの反対側に第2の封止部80dが設けられている。
【0029】
第1の突条部80aは、第1の嵌合溝71よりも小さい断面四角形で平行な一対の外側側面を有するベース部81と、そのベース部81の第1の封止部80c側の外側側面から側方へ突出するように形成された2つの断面形状が半円形をなす弾性突起部82とを有している。ベース部81の高さJ1は、第1の嵌合溝71の深さH1よりも少し小さく形成し(J1<H1)、また、ベース部81の幅L1は、第1の嵌合溝71の幅K1よりも少し小さく形成している(L1<K1)。一方、ベース部81の一方の外側側面から弾性突起部82の頂上部までの幅M1は、第1の嵌合溝71の幅K1よりも少し大きく形成している(M1>K1)。
【0030】
第2の突条部80bは、第2の嵌合溝72よりも小さい断面四角形で平行な一対の外側側面を有するベース部83と、そのベース部83の第1の封止部80c側の外側側面から側方へ突出するように形成された2つの断面形状が半円形をなす弾性突起部84とを有している。ベース部83の高さJ2は、第2の嵌合溝72の深さH2よりも少し小さく形成し(J2<H2)、また、ベース部83の幅L2は、第2の嵌合溝72の幅K2よりも少し小さく形成している(L2<K2)。一方、ベース部83の一方の外側側面から弾性突起部84の頂上部までの幅M2は、第2の嵌合溝72の幅K2よりも少し大きく形成している(M2>K2)。
【0031】
なお、この説明では、第1の嵌合溝71と第2の嵌合溝72の寸法を異ならせ、これに対応させて第1の突条部80aと第2の突条部80bの寸法を異ならせた場合について説明したが、第1の嵌合溝71と第2の嵌合溝72の寸法を一致させ、第1の突条部80aと第2の突条部80bの寸法を一致させる構成としてもよいことは勿論である。通常、これらの寸法は、互いに一致させて構成するのが一般的であるが、その寸法を異ならせて設定することは自由である。
【0032】
また、十字形シール80の第1の封止部80cの先端面から第2の封止部80dの先端面までの長さは、中ケース9の側面部9aにおける肉厚と同じ長さに設定している。そして、上ケース7の周縁部7aには、筐体2を組み合わせたときに、第1の突条部80aの外側を覆うように上ケース7の側面部85が設けられている。更に、この側面部85に対応させて下ケース8には、上ケース7の側面部85を覆う下ケース8の側面部86が設けられている。これらの側面部85,86は、第1及び第2の嵌合溝71,72に沿って平行をなすように設けられている。
また、第1の嵌合溝71及び第2の嵌合溝72の一対の内側側面、並びに、ベース部81及びベース部83の一対の外側側面は平行であることが好ましいが、ここで言う「平行」とは、成形時に金型から抜くために設けられた僅かなテーパ形状をも包含し得るものである。
【0033】
この十字形シール80を用いることにより、上ケース7と中ケース9の間のシール性を十分に高めることができる。これにより、血糖計1の防水性を向上させて、電源部3、表示部5、制御部6等が血液や水等によって汚されるのを効果的に防ぐことができる。なお、十字形シール80の材質としては、例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、アクリルゴムその他各種のシール用材料を用いることができる。
【0034】
図1〜図4に示すように、筐体2の長手方向の一側は、下ケース8側に少し湾曲した先細の湾曲部28として形成されており、その先端に開口部29が設けられている。湾曲部28は、上ケース7に設けた内向きのコ字状部分からなる上湾曲部28aと、下ケース8に設けた外向きのコ字状部分からなる下湾曲部28bとの組み合わせからなり、上湾曲部28aと下湾曲部28bを重ね合わせることにより、全体として下ケース8側に湾曲された湾曲部28が形成されている。従って、湾曲部28の先端に設定された開口部29は、筐体2の中心を通る部分よりも下ケース8側に若干傾いた位置において斜め下方へ向けて開口されている。
【0035】
この筐体2の開口部29に測定部4が配設されている。筐体2の開口部29には、リング筐体31が固定されている。リング筐体31は、筐体2に固定するための固定部31aと、この固定部31aに連続して一体に形成された筒軸部31bとを有している。図5に示すように、固定部31aは、開口部29を閉じるように内側に展開された端面部31cを有しており、その端面部31cの略中央部に、直径を少し小さくした円筒状の筒軸部31bが外側へ突出するように形成されている。更に、固定部31aには、リング筐体31を筐体2に固定するための複数の係合爪(本実施例では上下の2箇所)45が設けられている。これに対応して、筐体2の開口部29の上下2箇所には、爪受部29aが設けられている。
【0036】
この筐体2の開口部29内に、検体の一具体例を示す血液の成分を測定する測定部4が配設されている。図7〜図10に示すように、測定部4は、測光ブロック33と、イジェクト部材35と、イジェクト操作子36と、内リング37等を備えて構成されている。測光ブロック33は、採血した血液から血糖値を光学的に測定する装置である。この測光ブロック33は、血液検体の呈色濃度と赤血球の赤色濃度とを測定し、呈色濃度から得られるグルコース値を赤色濃度から得られるヘマトクリット値を用いて補正しつつグルコース濃度を定量して、血糖値を測定することができるものである。この測光ブロック33が、筐体2に支持固定されている。
【0037】
図7及び図10に示すように、測光ブロック33は、平板状のベース部33aと、このベース部33aの前側に2段構造で形成された円形の軸部33b、33cとを有している。ベース部33aに連続して直径の大きな第1の軸部33bが設けられ、この第1の軸部33bに連続して直径の小さな第2の軸部33cが設けられている。この測光ブロック33の第2の軸部33cには、二種類の波長の光を一つの試験紙に照射するための照射口38が開口されている。この測光ブロック33は、リング筐体31の内側に挿入され、その筒軸部31bの内側に2つの軸部33b、33cが同心上に配置されている。
【0038】
また、筒軸部31bの内側には内リング37が配置されていて、その内リング37の背面側に第2の軸部33cが対向設置されている。内リング37は、貫通穴41が中央に設けられた円筒部37aと、この円筒部37aの一方の端面側に連続して半径方向外側へ展開するように設けられたフランジ部37bとを有している。フランジ部37bは、リング筐体31の筒軸部31bの内側に嵌合されており、このフランジ部37bを介して内リング37がリング筐体31に固定されている。
【0039】
このとき、円筒部37aは、リング筐体31の筒軸部31bの内側において同一軸心線上に配置されている。その結果、リング筐体31の固定部31aと内リング37の円筒部37aとの間には、リング状をなす空間部が形成されている。このリング状をなす空間部を、後述するイジェクト部材35の枠体部61が長手方向に摺動する。そして、リング筐体31と内リング37とにより、採取具(チップ)50を着脱可能に支持することができる採取具装着部43が構成されている。ここで、リング筐体31の筒軸部31bは、採取具50を嵌合固定する採取具保持部として機能し、内リング37は、採取具50が当接することによって、試験紙57と測定ブロック33との距離を一定にするための採取具位置決め部を構成している。
【0040】
採取具50は、図8A〜図8Dに示すような構成を有している。即ち、採取具50は、円板状に形成されたベース部51と、このベース部51の一方の面に形成されたノズル部52と、ベース部51の他方の面に形成された円筒部53とからなっている。ベース部51の外径は、筒軸部31bの外径と略同じ寸法に形成されている。また、ノズル部52は、ベース部51の中央に立設されており、その中心部には軸方向へ貫通する採取孔54が設けられている。ノズル部52の先端部は先細に形成されていて、その先端面には検体を吸引し易くするための凹溝52aが設けられている。
【0041】
採取具50の円筒部53は、採取具装着部43の空間部に見合う大きさに形成されていて、その外径は、筒軸部31bの穴に嵌まり合うことができる大きさであり、その内径は、円筒部37aを覆う大きさである。更に、円筒部53の先端部には、弾性片からなる複数の係合爪(本実施例では4個)55が設けられており、この係合爪55が着脱可能に係合される突条32が筒軸部31bの内周面に設けられている。この係合爪55を、筒軸部31bの内周面に接触させ、押し込んで係合爪55が突条32を乗り越えることにより、筒軸部31b(採取具保持部)による採取具50の保持力を高めて外れ難くすることができる。本実施例の係合爪55は、周方向に連続する円弧状の凸部として形成されており、その外周面には、摩擦抵抗を高めるための山形凸部55aが設けられている。
【0042】
この採取具50の円筒部53の内側には、採取孔54に連通された試験紙収納部56が設けられている。この試験紙収納部56には、血液を採取して所定量の血液を保持する試験紙57が収納されている。この試験紙に保持された血液に、測光ブロック33から照射される所定の光を照射することにより、血液中の成分を測定することができる。また、採取具50の円筒部53の内面は段差を有しており、この段差に内リング37の端部が当接することにより、採取具50の測光ブロック33への正確な位置決めがなされる。即ち、内リング37は、採取具位置決め部として機能する。
【0043】
採取具装着部43に装着された採取具50を離脱させるためにイジェクト部材35が設けられている。イジェクト部材35は、図7に示すような構成を有している。即ち、イジェクト部材35は、採取具50に直接接触して押し出す枠体部61と、この枠体部61が固定されると共に所定距離だけ摺動動作される摺動プレート62とからなっている。枠体部61は、円弧状に湾曲させた2枚の円弧片61a,61aを左右方向に対向させることによって構成されている。この枠体部61は、測光ブロック33の第1の円形軸部33bに移動可能に装着され、その円形軸部33bの外側を軸方向へ所定距離だけ進退移動される。
【0044】
イジェクト部材35の摺動プレート62は、長手方向の中途部を90度に折り曲げたような形状をなしており、その折り曲げ部の一側に固定部62aが設けられ、その折り曲げ部の他側に連結部62bが設けられている。固定部62aは、枠体部61を構成する一対の円弧板61a,61aに対応する大きさを有するU字形状の部材として形成されている。そして、固定部62aの一面において連結部62bと反対側へ突出するように、一対の円弧板61a,61aが立設されている。連結部62bの略中央部には、イジェクト操作子36と連結するための挿通穴63が設けられている。
【0045】
イジェクト操作子36は、図10に示すような状態でイジェクト部材35に固定されている。イジェクト操作子36は、上ケース7の湾曲部28における凸側の外部に露出されるように設けられている。そのため、上ケース7には、図5に示すように、イジェクト操作子36の移動を許容するための長穴65が設けられている。長穴65は、筐体2の前後方向へ所定の長さだけ直線的に延在されて設けられており、イジェクト操作子36の脚部36aが摺動可能に係合されている。
【0046】
図10に示すように、イジェクト操作子36の裏面にはねじ穴が設けられており、摺動プレート62の挿通穴63に挿通される固定ねじ66により締め付けられてイジェクト部材35に固定されている。固定ねじ66には、リング状のスペーサ67が装着されていて、このスペーサ67と摺動プレート62の間には圧縮コイルばね68が介在されている。また、イジェクト部材35は、図7に示す引張コイルばね69により引っ張られて、内リング37から離れる後方へ常に付勢されている。引張コイルばね69の一端は摺動プレート62に設けたばね受け穴63bに掛け止められ、その他端は筐体2のばね受け部に掛け止められている。
【0047】
図5に示す符号70は採取具ケースである。この採取具ケース70は、予め採取具50が収納され、開口部がフィルム等で封止されて乾燥状態が保たれている。採取具ケース70は、採取具装着部43に対して採取具50を装着したり、排出したりする場合に使用される。開口部のフィルムを剥がし、採取具50が収納された状態で採取具ケース70を採取具装着部43に被せることにより、嵌合力の差によって自動的に採取具50を採取具装着部43に装着することができる。
【0048】
即ち、採取具収納部に採取具50が収納されている採取具ケース70を採取具装着部43に被せ、その採取具ケース70を所定深さまで押し込む。これにより、採取具50の円筒部53がリング状に開口された筒軸部31bに差し込まれ、円筒部53の先端に設けた4つの係合爪55が、リング筐体31の筒軸部31bの内面と内リング37の円筒部37aの外面との間に入り込む。この筒軸部31bと円筒部53との間に発生する保持力により、採取具50が採取具装着部43に保持されて固定される。採取具50の採取具ケース70への取り付け力(嵌合力)は弱いので、採取具ケース70を引っ張れば、採取具50が採取具装着部43に保持されたまま、採取具ケース70が採取具50から分離される。これにより、採取具50の取付作業が完了し、この状態において、検体である血液中の血糖値等の測定が可能となる。
【0049】
図1、図2に示す符号75はスキャンボタンである。このスキャンボタン75は、バーコードユニット58を用いてバーコード情報をスキャニングするためのオン・オフスイッチである。
前述した上ケース7、下ケース8、中ケース9、リング筐体31の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を用いることができる。しかしながら、ある程度の強度及び耐久性を有する各種のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0050】
このような構成を有する血糖計1は、例えば、次のようにして組み立てることができる。この組立手順は、血糖計1を組み立てるための一実施例を示すものであり、本発明は、この組立手順に限定されるものではないことは勿論である。
【0051】
まず、中ケース9の凹部内に電源部3と表示部5と制御部6を収容し、必要な箇所をねじ止めして固定する。次に、中ケース9の長手方向の一端である前面に測定部4の測光ブロック33を取り付ける。次に、下ケース8の凹部内に設けた保持溝41にマウント部材40を装着する。そして、下ケース8の凹部内に中ケース8を収容する。
【0052】
次に、中ケース9の開口端面に設けた無端状に連続する第2の嵌合溝72に、同じく無端状に連続して形成された十字形シール80の第2の突条部80bを嵌め込む。このとき、図12に示すように、第2の嵌合溝72の開口側の両縁には、その全周に亘って連続する比較的大きな面取り部を設け、更に、第2の突条部80bのベース部83を第2の嵌合溝72より少し小さく形成している(L2<K2)。そのため、第2の突条部80bが第2の嵌合溝72内に入り込むための抵抗となる部分は、第2の突条部80bに設けた弾性突起部84のみである(M2>K2)。従って、第2の突条部80bを第2の嵌合溝72に嵌め込む力は比較的小さくてすみ、第2の嵌合溝72に対して第2の突条部80bを、その全長に亘って容易に嵌め込むことができる。
【0053】
次に、第2の嵌合溝72に十字形シール80が装着されている中ケース9を保持している下ケース8の上に上ケース7を重ね合わせ、上ケース7を下ケース8側に押し付ける。このとき、図12に示すように、上ケース7の開口端面に設けた無端状に連続する第1の嵌合溝71の両縁には、その全周に亘って連続する比較的大きな面取り部を設け、更に、第1の突条部80aのベース部81の幅を第1の嵌合溝71の幅より少し小さく形成している(L1<K1)。そのため、第1の突条部80aが第1の嵌合溝71内に入り込むための抵抗となる部分は、第1の突条部80aに設けた弾性突起部82のみである(M1>K1)。従って、第1の突条部80aを第1の嵌合溝71に嵌め込む力は比較的小さくてすみ、第1の嵌合溝71に対して第1の突条部80aを、その全長に亘って容易に嵌め込むことができる。
【0054】
これにより、図17に示す状態となり、十字形シール80が上ケース7の開口端面と中ケース9の開口端面との間に介在される。これにより、十字形シール80の第1の突条部80aが第1の嵌合溝71に嵌合され、第2の突条部80bが第2の嵌合溝72に嵌合されると共に、側方に突出する内外の封止部80c,80dが上ケース7の開口端面と中ケース9の開口端面とによって挟持される。このとき、第1の突条部80aの高さJ1は第1の嵌合溝71の深さH1より小さいため、ベース部81の先端面が第1の嵌合溝71の底面に当接することがなく、その先端面に反力は作用しない。同様に、第2の突条部80bの高さJ2は第2の嵌合溝72の深さH2より小さいため、ベース部83の先端面が第2の嵌合溝72の底面に当接することがなく、その先端面に反力は作用しない。
【0055】
一方、第1の嵌合溝71に嵌合された第1の突条部80aは、第1の嵌合溝71の幅K1よりも第1の突条部80aの幅M1が大であるため、弾性変形を最も生じ易い弾性突起部82に応力が集中して発生する。この第1の嵌合溝71の一方の側壁から弾性突起部82に作用する反力R1により、ベース部81の弾性突起部82と反対側の面が、第1の嵌合溝71の他方の側壁に圧力F1によって押し付けられる。同様に、第2の嵌合溝72に嵌合された第2の突条部80bは、第2の嵌合溝72の幅K2よりも第2の突条部80bの幅M2が大であるため、弾性変形を最も生じ易い弾性突起部84に応力が集中して発生する。この第2の嵌合溝72の一方の側壁から弾性突起部84に作用する反力R2により、ベース部83の弾性突起部84と反対側の面が、第2の嵌合溝72の他方の側壁に圧力F2によって押し付けられる。
【0056】
このような第1の嵌合溝71と第1の突条部80aとの間の嵌合状態,及び、第2の嵌合溝72と第2の突条部80bとの間の嵌合状態は、十字形シール80の長手方向の全範囲に亘って同様に作用している。そのため、十字形シール80の第1の突条部80aの弾性突起部82と反対側の側面の全面が第1の嵌合溝71の内側側面に圧接され、第2の突条部80bの弾性突起部84と反対側の側面の全面が第2の嵌合溝72の内側側面に圧接される。これにより、十字形シール80の第1の突条部80a及び第2の突条部80bが、それぞれ波打つことなく略直線状に延在される。従って、十字形シール80の全周に亘って均一なシール性を確保することができ、十字形シール80の全長に亘る密閉性のムラを無くすことができる。
【0057】
これと同時に、十字形シール80の内外の封止部80c、80dには、上側からは上ケース7の開口端面が圧接され、下側からは中ケース9の開口端面が圧接される。そのため、これらの接合面から水やホコリ等が内部に入り込むのを確実に防止することができ、十分な密封性能を果たすことができる。
【0058】
図14及び図15には、本発明に係るシール部材の第2の実施例を示す。この実施例で示すシール部材は、断面形状をT字形に形成したものである。このT字形シール90は、前記実施例に示した十字形シール80における第2の封止部80dを廃止したもので、その他の構成は同様である。即ち、T字形シール90は、第1の突条部80aと第2の突条部80bと封止部80cとによって構成されている。なお、第2の封止部80dを廃止したことに伴って、上ケース7の第1の嵌合溝71の一方の側縁を延長させると共に、中ケース9の第2の嵌合溝72の一方の側縁も延長させ、それらの先端面が互いに接触し得るように構成している。このような構成とすることによっても、前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0059】
図16A〜16Fには、本発明に係るシール部材のその他の実施例を示す。図16Aに示すシール部材91は、前記第1の実施例として示した十字形シール80の弾性突起部82,84の形状を、断面長方形の突起形状をなす弾性突起部91a,91bとして形成したものである。図16Bに示すシール部材92は、弾性突起部82,84の形状を、断面台形の突起形状をなす弾性突起部92a,92bとして形成したものである。更に、図16Cに示すシール部材93は、弾性突起部82,84の形状を、断面円弧形の突起形状をなす弾性突起部93a,93bとして形成したものである。
【0060】
また、図16Dに示すシール部材94は、前記第2の実施例として示したT字形シール90の弾性突起部82,84の形状を、断面長方形の突起形状をなす弾性突起部94a,94bとして形成したものである。図16Eに示すシール部材95は、弾性突起部82,84の形状を、断面台形の突起形状をなす弾性突起部95a,95bとして形成したものである。更に、図16Fに示すシール部材96は、弾性突起部82,84の形状を、断面円弧形の突起形状をなす弾性突起部96a,96bとして形成したものである。これらの実施例に示すような形状に弾性突起部を形成することによっても、前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
この実施例で示した血糖計1は、例えば、次のようにして使用することができる。血液の採取は、まず、指先を専用の穿刺器具で穿刺し、その穿刺部から皮膚上に少量(例えば、0.3〜1.5μL程度)の血液を流出させる。この指先に盛り上がった少量の血液に、血糖計1の先端に装着されている採取具50のノズル部52の先端を当接させる。これにより、指先の血液は、凹溝52aを経て採取孔54内に入り込み、毛細管現象により吸引されて内側に流れ、円筒部53内に収容されている試験紙57の中央部に到達する。この試験紙57に到達した血液は、その表面から内部に染み込み、半径方向外側へ向かって放射状に広がって行く。
【0062】
この血液の展開と同時に、血液中のブドウ糖と試験紙57に担持されている試薬とが反応を開始し、ブドウ糖の量に応じて呈色する。この呈色した試験紙57の色を測定(測色)し、呈色の強度(濃淡)を測定することにより、血糖値を求めることができる。
【0063】
測定終了後、採取具50を採取具装着部43から排出する場合には、例えば、胴部11を握って親指をイジェクト操作子36の窪みに合わせ、そのイジェクト操作子36を前側に押圧してイジェクト部材35を前方にスライドさせるだけでよい。このとき、図9に示す状態から、イジェクト操作子36を前方に押圧すると、これと一体のスライド部材35が同じ距離だけ移動される。その結果、イジェクト部材35の先端に設けた一対の枠体部61の先端が採取具50の係合爪55の端部を前方に押圧し、採取具50を採取具装着部43から離脱させる。これにより、所定の廃棄容器に採取具50を廃棄することができる。
【0064】
この場合、血糖計1を操作する作業者は、血糖計1を片手で持った状態において、片手操作によって採取具50を血糖計1から容易に分離させ、廃棄することができる。しかも、筐体2には湾曲部28が設けられ、その湾曲部28の凸側にイジェクト操作子36が配置され、湾曲部28の先端に採取具装着部43が配置されているため、イジェクト操作子36の移動する方向に採取具50が放出される。そのため、所望の空間部に放出方向の狙いを定めることができると共に、その空間部に採取具50を簡単且つ確実に放出させることができる。従って、採取具50に手を触れることなく、その採取具50の廃棄処理を安全性を保持して簡単且つ迅速に行うことができる。
【0065】
また、採取具ケース70を用いて採取具50の廃棄処理を行うこともできる。この場合には、まず、採取具収納部が空になっている採取具ケース70を採取具装着部43に装着された採取具50に被せる。この状態で、イジェクト操作子36を押圧し、イジェクト部材35を前側に摺動させる。これにより、前述したようにして採取具50が前側に押し出され、採取具ケース70に収納された状態で採取具装着部43から離脱される。これにより、作業者が採取具50に手を触れることなく、その採取具50の廃棄処理を安全に、しかも簡単且つ迅速に行うことができる。
【0066】
本発明によれば、シール部材を十字形又はT字形に形成すると共に、対向する2片となっている2つの突条部の一方の側面に長手方向に連続する弾性突起部を設ける構成とした。そのため、これら突条部を嵌合溝に嵌め合わせると、弾性突起部が弾性変形し、このとき嵌合溝の一方の側面から受ける反力により、突条部の反対側の面が嵌合溝の他方の側面に圧接される。これにより、シール部材の一方の面の全体が嵌合溝の一方の側面に圧接されるため、シール部材の長さ方向の全長に亘って密封性能を略均一に設定することができ、防水性を高めて洗浄時等における水の筐体内への入り込みを確実に防ぐことができる。しかも、2つのケースを重ね合わせるために大きな荷重を必要とすることがなく、また、一度組み立てると、シール自体が有する保持力によって筐体が分離するのを抑制することができる。
【0067】
以上説明したが、本発明の成分測定装置は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、構成や形状、材料等において、本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【0068】
なお、前記実施例では、体液として血液を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、リンパ液、髄液、唾液等であってもよい。更に、体液(血液)中の測定目的とする成分として、ブドウ糖(血糖値)を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、コレステロール、尿酸、クレアチニン、乳酸、ヘモグロビン(潜血)、各種アルコール類、各種糖類、各種タンパク質、各種ビタミン類、ナトリウム等の各種無機イオン、PCBやダイオキシン等の環境ホルモンであってもよい。更にまた、前記実施例では、所定成分の量を測定するものとして説明したが、所定成分の性質を測定するものであってもよく、また、所定成分の量及び性質の双方を測定するものであってもよい。
【0069】
また、前記実施例においては、上ケースを第1のケースとし、中ケースを第2のケースとして説明したが、上ケースを第1のケースとし且つ下ケースを第2のケースとして、これらのケース間にシール部材を介在させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1・・血糖計(成分測定装置)、 2・・筐体、 3・・電源部、 4・・測定部、 7・・上ケース(第1のケース)、 8・・下ケース、 9・・中ケース(第2のケース)、 71・・第1の嵌合溝、 72・・第2の嵌合溝、 80・・十字形シール(シール部材)、 80a・・第1の突条部、 80b・・第2の突条部、 80c,80d・・封止部、 81,83・・ベース部、 82,84・・弾性突起部、 90・・T字形シール(シール部材)、 91,92,93,94,95,96・・シール部材、 91a,91b,92a,92b,93a,93b,94a,94b,95a,95b,06a,96b・・弾性突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離可能に係合される第1のケース及び第2のケースと、
前記第1のケース及び前記第2のケースの互いの開口端面が当接される突合せ部に介在される無端状に連続したシール部材と、を備え、
前記第1のケースの前記開口端面には、平行な一対の内側側面を有する無端状に連続された第1の嵌合溝を設けると共に、
前記第2のケースの前記開口端面には、平行な一対の内側側面を有する無端状に連続された第2の嵌合溝を設け、
前記シール部材は、前記第1の嵌合溝に嵌合され且つ周方向に連続した第1の突条部と、前記第2の嵌合溝に嵌合され且つ周方向に連続した第2の突条部と、前記第1のケース及び前記第2のケース間に介在され且つ周方向に連続した封止部と、を有し、
前記第1の突条部は、前記第1の嵌合溝より小さく且つ平行な一対の外側側面を有するベース部と、前記ベース部の一方の外側側面から側方へ突出するように形成され且つ前記第1の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されて当該ベース部の他方の外側側面を当該他方の外側側面に相対する当該第1の嵌合溝の内側側面に押圧する弾性突起部と、を有し、
前記第2の突条部は、前記第2の嵌合溝より小さく且つ平行な一対の外側側面を有するベース部と、前記ベース部の一方の外側側面から側方へ突出するように形成され且つ前記第2の嵌合溝に嵌合された状態において弾性変形されて当該ベース部の他方の外側側面を当該他方の外側側面に相対する当該第2の嵌合溝の内側側面に押圧する弾性突起部と、を有する
ことを特徴とする成分測定装置。
【請求項2】
前記弾性突起部は、断面形状が半円形をなしている
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項3】
前記弾性突起部は、断面形状が矩形をなしている
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項4】
前記弾性突起部は、断面形状が三角形をなしている
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項5】
前記成分測定装置は、血液中のブドウ糖濃度を測定する血糖計である
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−30963(P2011−30963A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182880(P2009−182880)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】