説明

成分計測装置

【課題】サンプリングした高温流体のpHあるいは成分を高温状態のままで測定可能な成分計測装置およびその洗浄機構を提供する。
【解決手段】主管路1から流体を取り出す配管の下流側に前記流体のpHあるいは成分濃度を測定する計測装置3と、前記計測装置3で測定後の前記流体を細管に通して前記細管外部を空気で冷却する空冷式熱交換器4と、前記主管路1と前記計測装置3の間の配管に洗浄液を注入する三方バルブ5と、前記三方バルブ5と接続された洗浄液注入装置6と、前記三方バルブ5を開閉して前記計測装置3へ流入する洗浄液の注入有無を制御する制御部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体のpHあるいは成分を高温状態のままで測定する成分計測装置およびその洗浄機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、浸漬型PH計/ORP計の電極を自動的に洗浄する装置であって、測定対象の液体に浸漬可能な電極を有するホルダと、このホルダを昇降可能な状態で収納する洗浄用外筒と、洗浄用外筒の内部に向けて噴射口を有する洗浄液噴射用のノズルと、電極を洗浄用外筒内へ引揚げて電極を噴射口に対向させるアクチュエータとを有し、洗浄時にアクチュエータによりホルダを引揚げて、電極を噴射口に対向させ、ノズルから適切な洗浄圧の洗浄液を噴射することにより電極を洗浄することを特徴とする電極の自動洗浄装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−251285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電極を洗浄するために電極を測定対象の液から引き上げて洗浄する間、測定ができないという問題点があった。さらに、洗浄排液がタンクに流入するという問題点があった。
【0005】
また、主管路から高温流体をサンプリングして計測装置で測定した後にこの高温流体を大気圧下で排出する場合、流体の蒸気圧が大気圧より大きいような高温であると排出口で流体が沸騰し、危険であるという問題点があった。
【0006】
上記の課題を解決するべく、本発明は、サンプリングした高温流体のpHあるいは成分を高温状態のままで測定可能な成分計測装置およびその洗浄機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る成分計測装置は、主管路から流体を取り出す配管の下流側に前記流体のpHあるいは成分濃度を測定する計測装置と、前記計測装置で測定後の前記流体を細管に通して前記細管外部を空気で冷却する空冷式熱交換器と、前記主管路と前記計測装置の間の配管に洗浄液を注入する三方バルブと、前記三方バルブと接続された洗浄液注入装置と、前記三方バルブを開閉して前記計測装置へ流入する洗浄液の注入有無を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様としては、主管路から複数の配管に分岐された分岐部と、前記分岐部で分岐した分岐配管の下流側にそれぞれ接続した前記計測装置と、前記各計測装置の下流側にそれぞれ接続した前記空冷式熱交換器とを備え、前記分岐部と前記計測装置の間のそれぞれの配管に洗浄液を注入する三方バルブと、前記三方バルブと接続された洗浄液注入装置と、前記三方バルブを開閉して前記計測装置へ流入する洗浄液の注入有無を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管に接する金属板を備えていることを特徴とする。
上記成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管は、水平または下方に傾いて配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記成分計測装置において、前記計測装置の前記流体と接する部分へ超音波をあてる超音波発信器を備えることを特徴とする。
上記成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管から大気への伝熱量を確保するために必要な細管長さおよび細管内径より、細管出口の圧力を大気圧にするために要する圧力損失を確保するために必要な細管長さおよび細管内径のほうが大きいことを特徴とする。
【0011】
上記成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管の内径が、1.6mm以上3.6mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サンプリングした高温流体のpHあるいは成分を高温状態のままで測定可能な成分計測装置およびその洗浄機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る全体構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る全体構成図である。
【図3】本発明の実施形態において、細管内の流体の流速を150mL/minにした時の細管の内径と長さの関係を表す図である。
【図4】本発明の実施形態において、細管内の流体の流速を300mL/minにした時の細管の内径と長さの関係を表す図である。
【図5】本発明の実施形態において、細管内の流体の流速を600mL/minにした時の細管の内径と長さの関係を表す図である。
【図6】図3から図5における交点について、細管内の流体の流速と細管内径と細管の長さの関係をまとめた図である。
【図7】本発明の実施形態に係る空冷式熱交換器の部分構成図である。
【図8】本発明の実施形態に係る空冷式熱交換器の別の例の部分構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る成分計測装置の実施形態を説明する。同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る全体構成図である。図1の成分計測装置は、主管路1から流体を取り出す配管の下流側に三方バルブ5、計測装置3、空冷式熱交換器4が順に接続されている。
【0016】
三方バルブ5は、主管路1と計測装置3と洗浄液注入装置6とを接続する3方弁でもよいし、主管路1と計測装置3とを接続する配管の間に2方弁を設け、主管路1と計測装置3との間の配管と洗浄液注入装置6とを接続する配管の間にもう1つの2方弁を設ける構成としてもよい。図示していないが、洗浄液注入装置6は、洗浄液タンクと洗浄液タンクに接続されたポンプから構成されており、ポンプ出口配管は三方バルブ5に接続されている。
【0017】
図3から図5は、130℃、圧力200kPa(ゲージ圧)の熱水流体が細管内を流速150mL/min、300mL/min、600mL/minで通過する場合の細管の内径と長さの関係を表す図である。本発明では、空冷式熱交換器の細管から大気への伝熱量を確保するために必要な細管長さおよび細管内径より、細管出口の圧力を大気圧にするために要する圧力損失を確保するために必要な細管長さおよび細管内径のほうが大きくなるようにする。例えば、図3を用いて言い換えれば、圧力損失が200kPaになるために必要な細管長さと、細管から大気への伝熱量が確保できる細管長さとを表す線の交点の細管内径および細管長さより大きい値にする。
【0018】
図3から図5に示した圧力損失が200kPaになるために必要な細管長さと、細管から大気への伝熱量が確保できる細管長さとを表す線の各交点について、細管内の流体の流速と細管内径と細管の長さの関係を図6に表示した。細管長さの実用的な観点から、より具体的には、空冷式熱交換器4の細管の内径は、1.6mm以上3.6mm以下であることが望ましい。細管の内径が1.6mm未満であると、細管が伝熱する熱量を確保できる細管長さよりも、圧力損失が200kPaになる細管長さが小さくなる。すなわち、伝熱量と圧力損失の条件を両方満たそうとすると、圧力損失が必要以上に大きくなるという問題が生じる。細管の内径が3.6mmより大きくなると圧力損失を200kPa以上にするためには細管長さを非常に長くしなければならなくなり、空冷式熱交換器の大きさが大きくなりすぎて装置の費用が高くなるという問題が生じる。細管内径が、1.6mm以上3.6mm以下であると、伝熱量の確保に必要な細管長さと、圧力損失が200kPaになるために必要な細管長さとが同じ長さになるように細管内径を選択すれば、細管長さを短でき、圧力損失も低くできるので、空冷式熱交換器をよりコンパクトにできる。
【0019】
空冷式熱交換器4の構造としては、例えば、図7や図8に記載されているような熱交換器を用いることができる。
図7の空冷式熱交換器では、計測装置3の出口配管が、細管14の上部の入口部分に接続されている。細管14は上から下へ向けて蛇行して形成されており、放熱を促進させるために、細管14の壁面に接するように金属板(平板)15を設けている。放熱をさらに促進するために送風機で空気を細管外部表面および金属板(平板)15に空気を送風することがより望ましい。送風しなくても十分に放熱できる場合は、送風機13を設けることは必須ではない。細管14を流下して温度が低下した流体は、細管下部の出口から排出される。
【0020】
図8の空冷式熱交換器では、計測装置3の出口配管が、細管上部の入口部分に接続されており、らせん状の細管9,10の外壁に接するように金属板(円筒)11が設けられている。らせん状の細管は、金属板(円筒)11の内側に設けてもよいし、外側に設けてもよい。らせん状の細管及び金属板(円筒)11に接しないように周囲を外壁12で覆っている。らせん状の細管の下方には、送風機を設けてあり、外壁12とらせん状の細管及び金属板(円筒)11との間、および、金属板(円筒)11の内側に空気を送風している。
【0021】
さらに、計測装置3の配管部分には、必要に応じて超音波発信器が備えられている。
制御部7は、少なくとも三方バルブ5、洗浄液注入装置6および計測装置3に信号線が接続されており、必要に応じて空冷式熱交換器4や超音波発信器8へも信号線が接続されている。
【0022】
次に本装置の測定動作について説明する。主管路内の流体は、流体の蒸気圧が外気の気圧より大きくなるような高温である。制御装置7は、主管路1から計測装置3に流体が流れるように三方バルブ5を制御する。計測装置3は、流体のpHあるいは成分濃度を測定する。測定した結果は、信号線を経由して制御装置7へ送られる。計測装置3を出た流体は、空冷式熱交換器4の細管内を流れ、外気と熱交換されて冷却された後、排出される。空冷式熱交換器4には、図示しない温度計が設置されており、細管外表面温度が90℃以上になると送風機13を作動させて放熱を促進させ、細管外表面温度が85℃未満になると送風機13を止めて電力消費を抑える。温度計データや送風機の作動有無は信号線を経由して制御装置7に送信される。
【0023】
より具体的には、例えば、主管路内の流体が温度130℃、圧力200kPa(ゲージ圧)の熱水であり、主管路1から分取したサンプルは、三方バルブ5を経由して計測装置3へ流量300mL/minで供給される。空冷式熱交換器4は、図8に示すような円筒状の熱交換器を用い、細管内径2.5mm、長さ20mの細管を直径0.3mの円筒の金属板11の外周に約20回巻いてコイル状にした。このような構成にすると、空冷式熱交換器4の出口から排出される流体は、90℃まで冷却することができ、流体が沸騰することなく安全に排水を出すことができた。
【0024】
次に本装置の洗浄動作について説明する。
制御装置7は、洗浄液注入装置6から洗浄液を計測装置3へ供給するように三方バルブ5と洗浄液注入装置6を制御する。洗浄液としては、硫酸、塩酸、クエン酸、酢酸から選択される酸を少なくとも1種類以上用いることが望ましい。洗浄液を計測装置3および空冷式熱交換器4に通水後、制御装置7は信号線を介して超音波発信器8を作動させて計測装置3の流体と接する部分へ超音波を当てて、計測装置3の配管内壁およびセンサ部分に付着したスケールを除去する。所定時間洗浄液の供給および超音波洗浄を行った後、洗浄液注入装置6を停止し、洗浄液が計測装置3に流入しないように三方バルブ5を制御する。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る全体構成図である。図1との相違点は、主管路1と三方バルブ5との間に分岐部2を備え、かつ、図1の三方バルブ5、洗浄液注入装置6、計測装置3、空冷式熱交換器4、超音波発信器8をもう一系統備えている点である。制御装置7は、所定時間毎に、各系統を切り替えて作動させ、一方の系列を計測動作中の時に、他方の系列が洗浄動作をさせている。各系列の機構と、計測動作時および洗浄動作時の動作は、図1の成分計測装置と同じである。
【符号の説明】
【0026】
1 主管路
2 分岐部
3 計測装置
4 空冷式熱交換器
5 三方バルブ
6 洗浄液注入装置
7 制御部
8 超音波発信器
9 細管(表側)
10 細管(裏側)
11 金属板(円筒)
12 外壁
13 送風機
14 細管
15 金属板(平板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管路から流体を取り出す配管の下流側に前記流体のpHあるいは成分濃度を測定する計測装置と、
前記計測装置で測定後の前記流体を細管に通して前記細管外部を空気で冷却する空冷式熱交換器と、
前記主管路と前記計測装置の間の配管に洗浄液を注入する三方バルブと、
前記三方バルブと接続された洗浄液注入装置と、
前記三方バルブを開閉して前記計測装置へ流入する洗浄液の注入有無を制御する制御部と
を備えることを特徴とする成分計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成分計測装置において、
前記主管路から複数の配管に分岐された分岐部と、
前記分岐部で分岐した分岐配管の下流側にそれぞれ接続した前記計測装置と、
前記各計測装置の下流側にそれぞれ接続した前記空冷式熱交換器とを備え、
前記分岐部と前記計測装置の間のそれぞれの配管に洗浄液を注入する三方バルブと、
前記三方バルブと接続された洗浄液注入装置と、
前記三方バルブを開閉して前記計測装置へ流入する洗浄液の注入有無を制御する制御部と
を備えることを特徴とする成分計測装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管に接する金属板を備えていることを特徴とする成分計測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管は、水平または下方に傾いて配置されていることを特徴とする成分計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の成分計測装置において、
前記計測装置の前記流体と接する部分へ超音波をあてる超音波発信器を備えることを特徴とする成分計測装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の成分計測装置において、
前記空冷式熱交換器の細管から大気への伝熱量を確保するために必要な細管長さおよび細管内径より、細管出口の圧力を大気圧にするために要する圧力損失を確保するために必要な細管長さおよび細管内径のほうが大きいことを特徴とする成分計測装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の成分計測装置において、前記空冷式熱交換器の細管の内径が、1.6mm以上3.6mm以下であることを特徴とする成分計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−83292(P2012−83292A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231334(P2010−231334)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】