説明

成型冷凍麺塊の製造方法

【課題】生産効率が良く、割れや破損の生じにくい、ゆで調理済みの冷凍麺塊の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理する。(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する。そして、このときトレーは、変形可能な材料からなり、かつ底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型する。(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍された麺塊の製造方法に関する。本発明の方法は、冷凍食品の製造分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
冷凍麺塊は、冷凍時に成型することができ、麺塊の形状を様々としうるので、用途や使い勝手に合わせて多様な形状の冷凍麺塊が製造されている。冷凍麺塊には、例えば、調味料や具材を収納するための窪みを有するものや、麺塊を分割することができるように分割のための溝が形成されているものがある。
【0003】
具材類を収納した冷凍麺塊に関して、特許文献1(特開2003-310189)は、成型容器内に麺と凍結具材類とを充填するに際して、麺を充填したあと、その上から凍結具材類を添加し、その状態で凍結後、搬送工程の途中において、容器・麺具材結合体を上下反転させ、成型容器の底部に適度の衝撃を加えることにより、凍結具材類が割れることもなく、効率的に成型容器から具材類一体化冷凍麺を取り出すことができる技術を提案する。また、特許文献2(登実用新案第3155263号)は、冷凍麺の中央部に円形の凹部を設け、凹部に冷凍具材を直接収納したことを特徴とする冷凍麺を提案する。
【0004】
一方、溝付き麺塊に関して、特許文献3(特許第3009393号)は、一つまたは複数の溝を下面に有する麺塊からなり、前記麺塊を構成する小麺塊どうしが前記溝の上の部分で連結していて、解凍時に前記溝の部分で分割することによって喫食量を調整することを可能にしてなる冷凍麺であって、前記溝の断面の形が前記麺塊の内部にいくに従って狭まっている三角形状または台形状であり、前記溝の入口の幅が5〜20mmであり、かつ前記小麺塊どうしを連結する部分の厚さが5〜10mmである、冷凍麺を提案する。さらに特許文献4(特開2002-000205)は、冷凍麺塊の上面および/または下面に設けられる溝状凹部により、麺塊断面の厚さが薄い連結部が形成され、前記連結部が危弱部と、それよりも麺塊断面の厚さが厚い連結補強部から成り、且つ前記連結部において分割可能としたことを特徴とする冷凍麺を提案する。さらに特許文献5(特開2004-081163、特許3610056号)複数個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体からなり、前記面接触の部分で複数個の麺塊に分割可能であることを特徴とする冷凍麺を提案する。
【0005】
他方、麺塊を容器に充填して成型・凍結した後は、凍結麺塊を容器から離脱させる(脱パン)工程を経る。このための技術としては、前掲特許文献1に示されているように、成型容器を反転させ、成型容器の底部に適度の衝撃を加えるのが一般的であるが、成型容器にひねりを加えることにより脱パンする方法も開発されており、例えば、特許文献6(特開平4-154529、特許2793031号)は、帯状の2面のガイド面を互いに対向させて平行に配置し、両ガイド面の間に、品物を中に入れた可撓性のある容器の搬送路を形成するとともに、この搬送路の中途部には、前記容器の前後方向長さに対応する範囲内で、前記ガイド面の側縁の高さを左右で異ならせて前記搬送路を捩じる品物剥離区間を形成したことを特徴とする容器から品物を剥離する装置を提案する。また、特許文献7(特開平8-205840)は、冷凍パン中で冷凍した冷凍内容物(魚介類)を冷凍パンから離脱する際に、冷凍パンの底板を内側に湾曲させて、冷凍内容物を冷凍パンより離脱させることを特徴とする脱パン方法を提供する。また、特許文献8(特開2000-166495、特許3913914号公報)は、ひねり部を含む冷凍麺用フリーザ装置を提案する。さらに、特許文献9(特開2010-254375)は、極めて簡単な構造で製造コストを低減しながら、容器から内容物を確実に分離できる技術として、複数組の分離移送部が、可撓性のある容器を捻って内容物を容器から分離することができる技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-310189
【特許文献2】登実用新案第3155263号
【特許文献3】特許第3009393号
【特許文献4】特開2002-000205
【特許文献5】特開2004-081163(特許3610056号)
【特許文献6】特開平4-154529(特許2793031号)
【特許文献7】特開平8-205840
【特許文献8】特開2000-166495(特許3913914号)
【特許文献9】特開2010-254375
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
窪みや溝を有するように成型された冷凍麺塊は、部分的に薄い部分を持つために、通常の冷凍麺塊に比較して、成形容器からの離脱時に割れや破損が生じることが多く、そのため生産効率が悪いことが問題とされてきた。さらに、窪みや溝を有する成型された冷凍麺塊は、通常の製品より嵩高くなるが、よりコンパクトな形状とし、保存や解凍調理にも適したものとする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1] 凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
[2] 凹部が、冷凍具材を収納するための窪み状のものであるか、又は冷凍麺塊を分割するための溝状のものである、[1]に記載の製造方法。
[3] 冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に麺塊重量に対し30〜75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させ;そして
(4)冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする
工程を含む、製造方法。
[4] 冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)小麦粉及び副原料を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
[5] トレーが、ゆで調理済みの麺の水切れを促進するための複数の細溝を有している、[1]〜[4]のいずれか一に記載の製造方法。
[6] トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積を210〜310cm2/200g(麺塊重量)とするものである、[1]〜[5]のいずれか一に記載の製造方法。
[7] 鍋による加熱調理用の冷凍麺製品を製造するための、[6]に記載の方法。
[8] 麺塊重量が、150〜250gである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9] 麺が、うどん、そば又はラーメンである、[1]〜[8]のいずれか一に記載の方法。
[10] 工程(1)が、小麦粉を主体とする100重量部あたりでん粉12〜17重量部を含む粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、幅2.9〜3.8mm、厚さ2.6〜3.4mmの麺とし、麺を95℃以上の水で10〜12分間ゆでるものである、[1]〜[9]のいずれか一に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、凹部を有する冷凍麺類の製造工程におけるロス(例えば、麺塊の破損)を大幅に減じることができる。また、凹部を有する冷凍製品のサイズを、よりコンパクトすることができる。
【0010】
また、本発明においては冷凍麺塊を具材を収納するための容器として用いているので、製品において、プラスチック製容器や包装材料を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例で施策したトレーの写真である。
【図2】図2は、本発明に用いられるトレーであって、凹部が窪み状の冷凍麺塊を製造するために、円形の凸部を有するものの例を示した図である。
【図3】図3は、本発明に用いられるトレーであって、凹部が溝状の冷凍麺塊を製造するために、凸部が溝状であるものの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、分割可能なゆで調理済み冷凍麺塊や具材付冷凍麺塊の製造方法を提供する。本発明の方法は、麺類のうち、特にうどん、そば及びラーメンに用いるのに適している。
【0013】
製麺工程:
本発明の方法は、穀類粉及び副原料を加水ミキシングして得た麺生地を製麺する工程を含む。
【0014】
[原料]
本発明では、小麦等の穀物粉を用いる。本発明で「穀物粉」というときは、特に記載した場合を除き、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉)、そば粉(一番粉(内層粉、更科粉)、二番粉(中層粉)、三番粉(表層粉)、末粉)、米粉(圧扁粉、胴搗粉、ロールミル粉、ピンミル粉、しん粉、白玉粉、道明寺粉、酵素処理した米粉)又はそれらの混合物が含まれる。また、「穀物粉」には、上記以外のイネ科穀物(例えば、ライ麦、大麦、トウモロコシ、ひえ、テフ)、上記以外の雑穀(例えば、アマランサス)、芋・根類(例えば、片栗、くず、タピオカ、馬鈴薯)、豆類(例えば、大豆、ひよこ豆、えんどう豆)の種子の全部又は一部の粉が含まれる。
【0015】
本発明においては、粉体原料の大部分が、すなわち少なくとも50%が、小麦粉、そば粉及びそれらの混合物からなる群より選択されるものであることが好ましい。
【0016】
粉体は、小麦粉及び/又はそば粉以外に、他の粉類を含むことができる。好ましくは、粉体100重量部あたりでん粉10〜20重量部、より好ましくは12〜17%を含む。なお、本明細書で量又は割合を数値で示す場合は、その数値は、特に記載した場合を除き、重量に基づくものである。
【0017】
本発明に用いることのできる「でん粉」は、原料、製法、粒度とも特に限定されないが、例えば、小麦、馬鈴薯でん粉、タピオカ、トウモロコシ、カンショ、サゴ等に由来するものを用いることができる。加工でん粉を用いてもよい。加工でん粉とは、でん粉に物理的、酵素的または化学的処理を行ったものをいう。これらの処理を導入することで、でん粉の水への溶解性、糊化温度、加熱溶解時粘性の安定性、物性安定性が改善されている。加工でん粉には、アセチル化アビジン酸架橋でん粉、アセチル化リン酸架橋でん粉、アセチル化酸化でん粉、オクテニルコハク酸でん粉ナトリウム、酢酸でん粉、酸化でん粉、ヒドロキシプロピルでん粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉、でん粉グリコール酸ナトリウム、でん粉リン酸エステルナトリウム、焙焼でん粉、酸処理でん粉、アルカリ処理でん粉、漂白でん粉、酵素処理でん粉が含まれる。
【0018】
加工でん粉の使用は、麺の熟成時間を節減するのみならず、麺の食感に滑らかさと適度な弾力を持たせ、かつ解凍調理後も、食感を劣化させない作用を有する。このような観点から、加工でん粉の使用は、冷凍食品としての麺類の製造に適している。
【0019】
本発明の方法においては、でん粉に加えて、又は代えて、小麦たんぱくを用いてもよい。小麦たんぱくの使用は、麺の延びを抑制することができ、また麺が折れたり、麺塊が割れ足りするのを抑制しうる。また本発明がそばに対して適用される場合には、つなぎとしての役割を果たす。このような観点から、小麦たんぱくの使用は、凹部を有する冷凍麺類の製造に、特にそばの場合に、適している。
【0020】
本発明の方法においては、副原料として、上述のもの以外に、食塩、かんすい、卵白、着色剤等を用いることができる。
【0021】
[製麺]
本発明の方法においては、上述の原料に、加水し、ミキシングし、必要に応じ熟成させ、圧延し、そして切り出すことにより、製麺する。製麺のための条件及び設備は、従来技術を用いることができる。
【0022】
本発明の方法が、うどんを製造するためのものである場合、冷凍した際の麺自体のの破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、麺は、幅2.7〜4.0mm、厚さ2.4〜3.6mmであることが好ましく、幅2.9〜3.8mm、厚さ2.6〜3.4mmであることがより好ましい。
【0023】
本発明の方法が、そばを製造するためのものである場合、冷凍した際の麺自体のの破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、麺は、幅2.7〜4.0mm、厚さ2.4〜3.6mmであることが好ましく、幅1.1〜2.2mm、厚さ1.1〜2.2mmであることがより好ましい。
【0024】
本発明の方法が、ラーメンを製造するためのものである場合、冷凍した際の麺自体のの破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、麺は、幅2.7〜4.0mm、厚さ2.4〜3.6mmであることが好ましく、幅1.0〜2.1mm、厚さ1.0〜2.1mmであることがより好ましい。
【0025】
ゆで調理工程:
本発明の方法は、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで調理する工程を含む。
ゆで調理のための設備は、従来技術を用いることができる。
【0026】
本発明で「ゆで調理上有効な時間」というときは、特に記載した場合を除き、冷凍ゆで麺として適するゆで加減に麺をゆでるのに有効な時間をいう。当業者であれば、対象となる麺の種類、及び太さを考慮して、また必要であれば予備的な実験をして、直ちに決定することができる。
【0027】
本発明の方法が、うどんを製造するためのものである場合、上述のサイズに製麺された麺であれば、凍した際の麺自体の破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、95℃以上、好ましくは97℃以上の水で、ゆで調理上有効な時間として、9〜13分間を例示することができ、また10〜12分間をより好ましいものとして例示することができる。
【0028】
本発明の方法が、そばを製造するためのものである場合、上述のサイズに製麺された麺であれば、冷凍した際の麺自体の破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、95℃以上、好ましくは98℃以上の水で、ゆで調理上有効な時間として、0.5〜3分間を例示することができ、また1〜2分間をより好ましいものとして例示することができる。
【0029】
本発明の方法が、ラーメンを製造するためのものである場合、上述のサイズに製麺された麺であれば、冷凍した際の麺自体の破損のしやすさの程度、麺塊の脱パン時の破損しやすさの程度を考慮して、95℃以上、好ましくは98℃以上の水で、ゆで調理上有効な時間として、0.5〜3分間を例示することができ、また1〜2分間をより好ましいものとして例示することができる。
【0030】
冷凍成型工程:
本発明においては、ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する。このトレーは、変形可能な材料からなり、かつ冷凍麺に凹部を設けるための凸部を底面に有する。
【0031】
トレー材料は、金属でもプラスチックでもよいが、本発明においては後述する脱パン工程はトレーの変形により冷凍麺塊を離脱させるものであるから、変形可能な材料である必要がある。変形は、トレーを繰り返し利用可能とすることから、可逆的であることが好ましい。具体的なトレーの素材として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを上げることができる。
【0032】
本発明が、具材付き冷凍麺塊の製造方法である場合、冷凍麺塊の凹部が窪み状に成型される。このためのトレーは、典型的には、頭部フラットの円錐台形の凸部を有する。凸部を円錐台形とすることにより、麺中央部に形成される凹部への具材の収容が容易となり、また、方形にするよりも、具材の凹部からのはみ出しを減じることができる。凸部の形状はまた、具材の量にもよるが、麺塊の割れにくさ、麺の均一充填のしやすさ等の観点からは、広く、薄く(高さが30mm未満、好ましくは25mm未満、より好ましくは20mm未満。例えば、10〜18mm)、上面は球状よりは平らであることが好ましい。球状である場合、特定の箇所の麺塊が薄くなり、その部分が特に破損しやすくなると考えられるからである。
【0033】
本発明が、必要に応じ、2つに分割できる冷凍麺塊の製造方法である場合、冷凍麺塊の凹部が溝状に成型される。このためのトレーは、典型的には、逆V字形の凸部を有する。凸部断面が逆V字型となるようにすることにより、必要の際には分割しやすく、かつ製造ラインでは割れにくいようにすることができる。凸部の高さはまた、具材の量にもよるが、麺塊の製造ラインでの割れにくさ、麺の均一充填のしやすさ等の観点からは、最も薄い場所での麺塊の厚みが、40mm以下、好ましくは38mm以下、より好ましくは36mm以下となるようにする。これより厚みがあると、冷凍麺塊を必要の際に、意図した箇所で手作業により分割することが困難になるからである。
【0034】
鍋調理に特に適したものとするためには、トレーにおいて、麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積を210〜310cm2/200g(麺塊重量)とし、麺塊の底面積を広く形成するとよい。
【0035】
麺量が多い場合、麺塊に高さ(厚み)を持たせず、板状にすることが好ましい場合がある。麺塊の高さは、例えば35mm以下、好ましくは33mm以下、より好ましくは31mm以下とするとよい。
【0036】
トレーにおいては、内側の底面及び側面に、スリットを形成することにより、麺を充填した際に、水がよく切れ、また冷凍した麺との接触面積を減らすことができるために、脱パンが容易となる。
【0037】
脱パン工程:
本発明は、冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる工程を含む。本発明の特徴の一つは、冷凍成形後脱パンに際し、トレーを反転し、ハンマー等を用いて衝撃を与えるのではなく、左右等への捻りをトレーに加えて、変形させることにより、トレーから冷凍麺塊を離脱させることである。このような脱パンを行うためには、前掲特許文献9(特開2010-254375)に記載された分離装置を適用することができる。この分離装置は、詳細は当該文献に記載されている通りであるが、具体的には、以下の構成を備える。内容物を収納してなる容器1を分離隙間2で挟んで移送する複数組の分離移送部3と、各々の分離移送部3を駆動する駆動機構4とを備えている。分離装置は、複数組の分離移送部3を容器1の移送方向に配設して、容器1を複数組の分離移送部3に移送するように構成している。さらに、分離移送部3は、容器1を移送する分離隙間2の両面に配設してなる一対の回転軸5を備えている。駆動機構4は、一対の回転軸5を互いに反対方向に回転して分離隙間2で容器1を移送させる方向に一対の回転軸5を回転駆動している。さらに、隣接して配設してなる分離移送部3を構成してなる一対の回転軸5は、その両端部を回転中心軸mに対して互いに反対方向に偏心している。分離装置は、隣接する分離移送部3の分離隙間2で移送される容器1の前後を反対に捻る方向に対角を押圧しながら移送して、容器1に付着している内容物を容器1から分離する。
【0038】
本発明者らの検討によると、このような分離装置を用いることにより、凹部を設けているために脱パン工程において通常はとりわけ破損しやすい麺塊が、ほとんど破損することなく、脱パン可能となる。
【0039】
具材との一体化:
本発明が、具材付き冷凍麺の製造方法である場合、本発明においては冷凍麺塊の凹部が窪み状に成型され、そして準備された冷凍具材を準備を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とすることができる。具材をそのまま麺塊凹部に収容することは、麺塊に具材を保持するための容器の役割を果たさせるもので、製品化に際し、具材のためのプラスチック製の個包装や容器等を削減することができる。また、製品全体の容積を小さくすることができる。
【0040】
包装工程:
本発明の方法は、包装工程を含んでいてもよい。ここでいう包装には、個包装(一次包装)と外装(二次包装)とが含まれる。本発明が、具材付き冷凍麺の製造方法である場合、本発明においては冷凍具材と冷凍麺塊とを一体的に包装することができる。
【0041】
その他:
本発明においては、麺塊を構成する加熱調理済み麺の量は、適宜設定することができる。麺量の下限は、特に制限はないが、例えば30g、50g、80gとすることができる。上限も様々とすることができるが、例えば1000g、500g、300gとすることができる。麺量範囲の例は、一〜三人前程度の量、重量としては100g〜300gである。典型的には、1食分、則ち、150g〜250gとし、具材の量を、その25〜60%とすることができる。
【0042】
本発明は、具付の、各種の冷凍麺類に適用することができる。例えば、肉うどん、きつねうどん、きざみうどん、たぬきうどん、天ぷらうどん、かき揚げうどん、カレーうどん、豚肉入り付け汁うどん、わかめうどん、山菜うどん、きのこうどん、しっぽくうどん、鍋焼きうどん、あんかけうどん、牛すきうどん、ちからうどん、かぼちゃほうとう、おろしうどん、とろろそば、肉そば、天ぷらそば、かき揚げそば、わかめそば、山菜そば、きのこうどん、しっぽくそば、しょうゆ味ラーメン、みそ味ラーメン、豚骨ラーメン、冷麺、ちゃんぽん、あんかけそば、ミートソーススパゲッティ、あさりスパゲッティ、きのこスパゲッティ、山菜スパゲッティ、野菜のクリームスパゲッティに適用することができる。
【0043】
具材のほか、濃縮つゆを製品に含めてもよい。この場合、麺と具材とを一体的に包装した上に冷凍つゆの小袋を添付し、さらに製品用の包装を施すことができる。
【0044】
本発明においては、麺と具材とが一体的であることから、同時包装が容易である。また、麺の中央部に直に(具材を別の容器に収容することなく)具材を収容しているので、容器や包装材料を削減することができ、かつ調理時にも具材と麺塊とを一体のまま加熱調理に供することができ、調理時の取り扱い性にも優れる。
【実施例】
【0045】
[うどんの製造]
小麦粉85重量部に対し、加工でん粉15重量部を含む粉体に、予め食塩を溶解した水(10%)を加え、真空ミキシングを高速で10分間、ついで低速で2分間行うことにより生地を得て、圧延し、包丁切により、3.4×3.0mmの生うどんを得た。うどんを充分量の沸騰水中で約11分間ゆで上げ、直ちに水洗して冷水中で冷却し、ゆでうどんを得た。本実施例では、特に記載のない限り、このゆでうどんを用いた。
【0046】
[凹部を有する冷凍うどんの製造試験1]
うどん成型トレーの試作
全体のサイズは173mm×150mm×51mmの容器を準備した。3種類の形状のトレーを試作した。いずれの場合も、具材の収納性を考慮し、凹部がうどん底面の中央に配置されるように設計した。また、それぞれのトレーはスリットが無いものを用い、通常よりもトレーへの投入前の水切りを多くすることにより、水分量を調整した。
【0047】
トレー(1):底面の中心から半径45mmの半球状に窪みを形成させ、平坦な部分を形成させなかった(図1左)。
【0048】
トレー(2):底面から、30mm程度の深さで、平らな部分を有する窪みを形成した。カーブの角度は(1)と同じ(図1中)。
【0049】
トレー(3):底面から、15mm程度の深さで平らな部分を有する窪みを設置した。カーブの角度は(1)と同じ(図1右)。
【0050】
脱パン試験
それぞれのトレーにゆでうどん200gずつを投入し、軽くならした後に、-30℃の冷凍庫内で急速冷凍した。それぞれのトレーにつき10個の冷凍うどんを試作した。冷凍後、逆さにしたトレーの上部から軽くハンマーで叩いて、トレーからうどんを脱離させた。
【0051】
トレー(1)を用いたものは、脱離の際にすべての麺塊が凹部から割れ、取り出すことができなかった。トレー(2)を用いたものは、10個中6個に破損が生じた。トレー(3)を用いたものは10個中3個に破損が見られたが、7個は破損がないものを得ることができた。
【0052】
この上記のように、トレー(3)のような形状であれば、製造可能と考えられたので、この形状において、更なる破損の少ない離脱方法(脱パン方法)の検討を行った。
【0053】
[凹部を有する冷凍うどんの製造試験2]
具材つきの冷凍うどんを製造した。トレー(3)を用い、製造試験1と同様に、冷凍うどんを製造した。
【0054】
脱パン
2種類の脱パン機を用いて比較試験を行った。
【0055】
ハンマー式:前掲特許文献1(特開2003-310189)に記載されている方法、すなわちトレーを上下反転させ、トレー底部にハンマーにより衝撃を加えて脱離させた。
【0056】
捻り式:前掲特許文献9(特開2010-254375)に記載されている方法、すなわちトレーを捻って変形させることにより、トレーから冷凍うどんを脱離させた(図2)。
【0057】
下表のように、捻り式を用いることにより、破損の数を圧倒的に抑えることができた。
【0058】
【表1】

【0059】
また、捻り式の脱パン機を用いることにより、ハンマー式の場合にはかなりの音量で発生する機械音も気にならなかった。
【0060】
具材の製造
3種類の具材を製造した。
【0061】
(1)肉うどん用具材
牛肉、たまねぎ、ねぎを、しょうゆ、砂糖、風味調味料、かつお節エキスとともに煮込んで、肉うどん用具材を得た。具材は、100gずつ、適切な大きさの具材成形容器に充填し、凍結し、冷凍うどんの凹部に収容可能な大きさの冷凍塊とした。一方、しょうゆ、砂糖、食塩、タンパク加水分解物、牛脂、果糖ブドウ糖液糖、かつお節、発酵調味料、昆布エキス、魚介エキス、ビーフエキス、酵母エキス等を用いて、つゆを調製した。つゆは袋に36gずつ袋に小分けして冷凍した。
【0062】
(2)天ぷらうどん用具材
ごぼう、小麦粉、でん粉、食塩を使用して、冷凍うどんの凹部に収容可能な大きさの、30gのごぼうかき揚げ天ぷらを製造した。ごぼうかき揚げ天ぷらは冷凍した。一方、醤油、砂糖、食塩、かつお節エキス発酵調味料等を用い、つゆを調製した。つゆは30gずつ袋に小分けして冷凍した。
【0063】
(3)きつねうどん用具材
油揚げを、砂糖、醤油等で調味しつつ煮て、きつねうどん用具材を製造した。具材を冷凍した。一方、醤油、かつお節エキス、こんぶエキス、さば節、にぼし等を用い、つゆを調製した。つゆは33gずつ袋に小分けして冷凍した。
【0064】
仕上げ
冷凍した具材を、冷凍麺塊の中央の凹部に収容し、透明フィルムでラップした。ラップの上につゆをのせ、全体を製品用包装でピロ―包装し、製品とした。
【0065】
[溝状凹部を有する冷凍うどんの製造試験]
1/2に分割するための溝状凹部を有する冷凍麺塊を製造するためのトレーを使用し、各200gの冷凍うどんを製造した。上記と同様、 2種類の脱パン機を用いて比較試験を行った。結果を下表に示した。
【0066】
【表2】

【0067】
捻り式を用いることで、脱パン時における製品の割れも0.2%程度に抑えることが可能であった。
【0068】
[参考(麺塊凹部の成形方法に関する検討)]
具材を収容するための凹部の形成
人の手により麺を掻き分けて凹部を形成しようとしたところ、一時的には凹部ができるものの、うどんの弾力により、凹部が変形したり、サイズが小さくなったりし、同じ形状のものを作成することが困難であった。
【0069】
また、3爪状麺棒(特開2001-286267(特許4061612)参照)を用いて掻き分けても、同様であった。また9爪状麺棒(同公報参照)により掻き分けた場合には、凹部が安定して形成できるものの、充分な大きさの凹部を形成することができなかった。
【0070】
底面に凸部を有するトレーに入れた場合には、そのまま冷凍することによりトレーの形状に沿った凹部が形成され、良好であった。
【0071】
冷凍麺塊を分割するための溝状凹部の形成
手作業、又は爪状麺棒により、掻き分けることにより溝を形成することは困難であった。
【0072】
また、上から溝の形状の重石をのせて、溝をつけようとした場合には、麺がその重石によって切断された、いわゆる短麺や、圧縮されて変形した麺が多く見られた。
【0073】
一方、底面に溝形成のための凸部を有するトレーに入れた場合には問題なく成形することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項2】
凹部が、冷凍具材を収納するための窪み状のものであるか、又は冷凍麺塊を分割するための溝状のものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に麺塊重量に対し30〜75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させ;そして
(4)冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする
工程を含む、製造方法。
【請求項4】
冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3〜3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項5】
トレーが、ゆで調理済みの麺の水切れを促進するための複数の細溝を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積を210〜310cm2/200g(麺塊重量)とするものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
鍋による加熱調理用の冷凍麺製品を製造するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
麺塊重量が、150〜250gである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
麺が、うどん、そば又はラーメンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)が、小麦粉を主体とする100重量部あたりでん粉12〜17重量部を含む粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、幅2.9〜3.8mm、厚さ2.6〜3.4mmの麺とし、麺を95℃以上の水で10〜12分間ゆでるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate